JP2002128732A - 小分子捕捉能を有する固体有機金属化合物 - Google Patents
小分子捕捉能を有する固体有機金属化合物Info
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Abstract
上も安定な無機ゼオライトに類似する多孔質の固体有機
金属化合物を提供する。 【解決手段】 下記の一般式(1)で表わされる組成を
有する固体有機金属化合物。式(1)中、Mはn価の原
子価を有する金属を表わし、Lはm個のカルボキシル基
を有する有機多塩基酸を表わし、nは2または3であ
り、nが2の場合はmは3以上の整数であり、nが3の
場合はmは2以上の整数であり、aおよびbは、n×a
=m×bの関係を満たす整数である。好適なM(金属)
としてランタンなど、また、好適な有機多塩基酸として
トリメシン酸などが用いられる。 a[Mn+]・b[Lm−] (1)
Description
技術分野に属し、特に、水などの小分子を捕捉する機能
を有する新規な固体有機金属化合物に関する。
ト)は、内部の空孔に特定の大きさの分子を捕捉するこ
とによって、吸着剤、分離剤、イオン交換体、触媒など
の広範囲の分野に利用されている。このゼオライトは、
安定な多孔性構造を有するが、内部の空孔が比較的大き
く水などの小分子の選択的捕捉には適しておらず、ま
た、密度も大きく重い材料となるのが難点であった。
ークで固定化することによって得られる多孔質の固体有
機金属化合物(有機金属錯体)が、「有機ゼオライト」
として注目されている。この有機ゼオライトは、軽量で
あり、各種の化学的特性を容易に付与することができ、
さらに、回収が容易で再利用可能であるため省資源や環
境保全の観点からも、従来のゼオライト(無機ゼオライ
ト)のような材料に代わる新しい機能性材料として期待
されている。しかし、実用的な機能を有するとともに安
定な構造を保持するよう具現化されたものは、未だきわ
めて少ない。本発明の目的は、水などの小分子を捕捉す
ることができ、構造上も安定な新しいタイプの多孔質の
固体有機金属化合物を提供することにある。
複数のカルボキシル基(カルボキシアニオン)を有する
有機多塩基酸から成る配位子をビルディングブロックと
して低原子価金属の金属イオンを固定化し、低分子を捕
捉する機能を持つ多孔質で安定な不溶性の固体有機金属
化合物(有機金属錯体)の合成に成功し本発明を導き出
した。
で表わされる固体有機化合物を提供するものである。 a[Mn+]・b[Lm−] (1) 式(1)中、Mはn価の原子価を有する金属を表わし、
Lはm個のカルボキシル基を有する有機多塩基酸を表わ
し、nは2または3であり、nが2の場合はmは3以上
の整数であり、nが3の場合はmは2以上の整数であ
り、aおよびbは、n×a=m×bの関係を満たす整数
である。
属化合物として好適な具体例は、Mが3価の原子価(す
なわち、n=3)を有する遷移元素であり、且つ、aが
1から4の整数である固体有機金属化合物であり、特に
好ましい例は、有機多塩基酸が下記の式(2)、(3)
または(4)で表わされるものである。
いて、Xは−COO−または末端が−COO−である官
能基または原子団を表わす。式(1)で表わされる本発
明の固体有機金属化合物として好適な別の具体例は、M
が2価の原子価を有する(すなわち、n=2)遷移元素
であり、且つ、aが2または3である固体有機金属化合
物であり、特に好ましい例は、有機多塩基酸が下記の式
(4)で表わされるものである。
または末端が−COO−である官能基または原子団を表
わす。
体有機金属化合物は、有機多塩基酸の塩(一般的にはナ
トリウム塩)と金属の塩(一般的には塩化物または硝酸
塩)を常温下に水中で混合することにより簡単に合成す
ることができる(後述の実施例参照)。
シル基(カルボキシアニオン)を有するものであり、よ
り具体的には次の一般式(6)で表わすことができる。 A(COO−)m (6) Aは有機多塩基酸のスペーサー部に相当し、このスペー
サー部が、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素(飽和脂肪
族炭化水素および不飽和脂肪族炭化水素)、ならびに脂
環族炭化水素から導かれる官能基または原子団から成る
各種の有機多塩基酸を使用することができる(図1〜図
3参照)。スペーサー部は、ヘテロ原子を含むこともで
き、さらに、特定の官能基または原子団で化学修飾する
こともできる。例えば、前述の式(2)、(3)、
(4)および(5)で表わされる有機多塩基酸における
Xとして、下記の式(7)または(8)で表わされるよ
うな光学活性なアミノ酸側鎖を有し末端が−COO−で
ある官能基または原子団を用いることもできる。
斉炭素原子を表わし、また、Phはフェニル基を表わ
す。本発明の固体有機金属化合物を構成する有機多塩基
酸は、上述のような有機多塩基酸のうち、カルボキシル
基の配置として放射状または発散型のものが好ましい。
すなわち、前述の式(2)、(3)、(4)および
(5)で表わされる有機多塩基酸で例示されるように、
カルボキシル基が有機多塩基酸分子の周縁部または端部
に配置されたような分子構造を有する有機多塩基酸が好
ましい。
価、すなわち、2価または3価の原子価(n=2または
3)を有する金属イオンを、上述したような有機多塩基
酸のカルボキシル基(カルボキシアニオン)と結合させ
ることによって、不溶性固体に固定化することによって
得られるものである。
有機金属化合物は、上記の式(1)で示されるように、
金属イオンの電荷と有機多塩基酸のカルボキシアニオン
の電荷とが中和している、すなわち、n×a=m×bの
関係を満たす。さらに、n=2の場合、すなわち、2価
の金属イオンが固定化された有機金属化合物を得るには
mが3以上であること、すなわち、少なくとも3個のカ
ルボキシル基を有する有機多塩基酸を用いることが必要
であり、また、n=3の場合、すなわち、3価の金属イ
オンが固定化された有機金属化合物を得るにはmが2以
上であること、すなわち、少なくとも2個のカルボキシ
ル基を有する有機多塩基酸を用いることが必要である。
これらの条件を満たす本発明の有機金属化合物が不溶性
となるのは、金属イオンと有機多塩基酸のカルボキシア
ニオンとが結合されて分子間ネットワークが形成された
ことに因ると理解される。図2のAは、n=3の金属イ
オンとm=2の有機多塩基酸を用いた場合、また、図2
のBは、n=2の金属イオンとm=3の有機多塩基酸を
用いた場合にそれぞれ得られる金属有機化合物において
形成されていると推測される分子間ネットワークを模式
的に示すものである。
は、その塩(例えば、塩化物)が水中で安定であり、有
機多塩基酸の塩と水中で混合されることによって不溶性
の有機金属錯体を生成し得るものである。例えば、Al
(アルミニウム)は3価の金属ではあるが、その塩(塩
化アルミニウム)は水中で不安定であり水酸化アルミニ
ウムとなってしまうので適していない。また、本発明の
有機金属化合物は、よく知られているような有機化合物
を配位子とする水溶性の金属錯体でもない。
する金属(M)として好適な例は、3価の原子価を有す
る遷移元素(遷移金属)であり、特に好ましいのはLa
(ランタン)、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウ
ム)のような希土類元素である。この場合、使用する有
機多塩基酸のカルボキシル基の数(m)は原理的には2
以上であればよいが、一般的に入手できる有機多塩基酸
の保有するカルボキシル基の数は限られている(一般に
mが6以下)ので、上記式(1)においてaの値が1か
ら4の整数から成る組成の有機金属化合物が得られる。
例えば、好ましい有機多塩基酸として前述の式(2)
〔2塩基酸〕、(3)〔3塩基酸〕および(4)〔4塩
基酸〕で表わされる有機多塩基酸を用いた場合は、それ
ぞれ、a=2でb=3、a=1でb=1、およびa=4
でb=3の組成から成る有機金属化合物が得られる。
(M)として好適な別の例は、2価の原子価を有する遷
移元素(遷移金属)、例えば、Pd(パラジウム)、R
h(ロジウム)、Ru(ルテニウム)のような白金族元
素、Cu(銅)などである。この場合、使用する有機多
塩基酸のカルボキシル基の数(m)は、原理的には3以
上であればよいが、上述したように一般的に入手できる
有機多塩基酸の保有するカルボキシル基の数は限られて
いるので、上記式(1)においてaの値が2または3の
整数から成る組成の有機金属化合物が得られる。例え
ば、好ましい有機多塩基酸として前述の式(5)で表わ
される有機多塩基酸〔3塩基酸〕を用いた場合、a=3
でb=2の組成から成る有機金属化合物が得られる。な
お、本発明の有機金属化合物は、原子価が同じである2
種以上の金属を用いて合成したものも含む。したがっ
て、式(1)においてMは、そのような複数の金属も表
示するものとする(例えば、後述の実施例の錯体17参
照)。
される組成を有することは、有機多塩基酸の塩と金属の
塩とを水中で混合して得られる生成物を元素分析、赤外
線吸収スペクトル測定、蛍光X線分光分析などで分析す
ることにより確認される(後述の実施例参照)。
本発明の有機金属化合物は、次のような特性を有するこ
とが明かにされている(後述の実施例参照)。 (1)本発明の有機金属化合物は、水をはじめとするほ
とんどの有機溶媒(アルコール類、ケトン類、ジメチル
スルホキシドなど)に不溶である。分解するには酸およ
びアルカリが有効である。
線回折分析による明確な粉末X線回折パターンを示し、
結晶性である。本発明の有機金属化合物においては、金
属イオンと配位子(有機多塩基酸)のカルボキシアニオ
ンとの間で規則的な分子間ネットワークが形成されてい
るものと理解される。
優れた熱安定性を示す。熱重量分析により300℃付近
までの熱安定性を調べたところ、固体中に取り込まれて
いる水の脱離による重量減少は見られる(一般的に約7
から20パーセント)が、分解による重量減少は認めら
れない。本発明の有機金属化合物が非分解性であること
は、加熱前後の赤外吸収スペクトルが殆ど同一であるこ
とからも確認されている。
量に含むことが示すように、本発明の有機金属化合物
は、ゲスト吸着能を有する多孔質である。すなわち、本
発明の有機金属化合物は、小分子を捕捉する機能を有
し、特に水に対する捕捉能に優れ、また、用いる金属
(金属イオン)と有機多塩基酸の組合せによっては炭酸
ガスのような小分子に対して選択的捕捉能のある有機金
属化合物を得ることもできる。
有機多塩基酸を化学的に修飾する(例えば、光学活性な
アミノ酸側鎖を付ける)ことによって、同じゲスト分子
(被吸着物質)に対する吸着特性を変えることができ
る。
にするため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に
よって制限されるものではない。実施例1:有機金属化合物の合成と分析 図1〜図3に示す各種の有機多塩基酸(配位子)とLa
(ランタン)およびその他の金属から本発明に従う有機
金属化合物(錯体)を合成し、得られた生成物につき、
元素分析および下記のように各種の分析を行った。
IR−350型)により測定した。 試料調整:KBr(乾燥粉末臭化カリウム)と試料粉末
をメノウ乳鉢でよく混合した。試料形成器(ミニプレ
ス)を用いて混合粉末を透明な錠剤とした。それを以下
の条件で測定した。 測定条件: 分解能:4cm−1 アポタイゼーション:cosine アパーチャー:5.0mm ゼロフィリング:×1 スピード:2.0mm/sec 待ち時間:0 ビームスプリッター:KBr
ク社製Rint2500)によって得られた。ターゲッ
トCu、出力40kv・30mA、スキャンスピード4
度毎分、測定範囲(2θ)5〜45度の条件にて測定し
た。
メンツ社製TG/DTA220)を使用した。 測定条件: スタート温度:30℃ リミット温度:300℃ 昇温レート:10℃/min 保持時間:0sec サンプリング:0.5sec
フィリップス株式会社PW2404型)を用いた。 試料調整:試料となるランタン錯体、またはその他金属
錯体の粉末を約0.2g計りとり、専用の試料錠剤形成
器(ミニプレス)を使用して、試料錠剤とした。その錠
剤の正確な重さを量った。 測定:ホウ素からウランまでの元素に対して定量を行っ
た。標準サンプルなしの定量計算をプログラムUniquant
で行った。より正確を期すため、計算時にそれら錯体の
元素分析結果(C、Hの含有率)を入力し補正を行っ
た。
機金属化合物(錯体)の合成法および分析結果を詳述す
る。本発明の有機金属化合物を合成するに当っては、用
いる有機多塩基酸と金属の種類に応じてカルボキシル基
(カルボキシアニオン)の負電荷と金属(金属イオン)
の正電荷が中和するモル比〔式(1)におけるa:b〕
となるように有機多塩基酸のナトリウム塩と金属の塩を
混合した。
ランタン錯体(錯体1) 水10mlに炭酸ナトリウム(1.06g、10mmo
l)を入れ、溶けるまで過熱攪拌した。沸騰している炭
酸ナトリウム水溶液中に4,4’−ビフェニルジカルボ
ン酸(2.42g、10mmol)を少しずつ加えてい
った。全部加えた後、中性であることを確認した。溶液
を室温に戻し、ろ過後溶媒を留去、乾燥したところ、
4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジナトリウム塩
(2.9672g、収率104%)を得た。元素分析:
C=51.97、H=3.39.水100mlに塩化ラ
ンタン7水和物(1.8g、4.85mmol)を溶か
し、最少量の水で溶かした4,4’−ビフェニルジカル
ボン酸ジナトリウム塩(1.39g、4.85mmo
l)水溶液をゆっくりと滴下した。一滴目より白色のも
のが析出した。滴下後20分ほど攪拌を続けろ過により
回収し、五酸化リン下、減圧乾燥した。得られた4,
4’−ビフェニルジカルボン酸ランタン錯体(収量1.
67g、収率103.5%)の粉末X線回折パターンよ
りピークはいくつもみられ、結晶性であることがわかっ
た(図7のA参照)。またこの錯体のIR、元素分析、
TGについて解析を行った。IR:−CO=1575c
m−1(図5のA参照) 元素分析:C=46.61、
H=3.05 T:−7.5wt%(図6のA参照)。
2) 水10mlと炭酸ナトリウム(1.6g、15mmo
l)を30ml三角フラスコに入れ、過熱攪拌した。沸
騰したらトリメシン酸(2.1g、10mmol)をゆ
っくりと加えていった。すべて加えた後pH=7になっ
ているのを確認したら室温に戻し、ろ過した。ろ液を濃
縮し、乾燥させると白色のトリメシン酸ナトリウム塩
(2.99g、収率108%)を得た。元素分析:C=
30.59、H=2.10。水100mlと塩化ランタ
ン7水和物(2.0g、5.4mmol)を500ml
三角フラスコに入れ、溶けるまで攪拌した。溶けたら、
最少量の水に溶かしたトリメシン酸ナトリウム塩(1.
0g、3.6mmol)水溶液ををゆっくりと滴下して
いった。10分攪拌ろ過し、ろ紙上の白色固体を五酸化
リン下減圧乾燥した。得られた錯体の収量は1.24
g、収率99.9%であった。この固体のIR、TG、
蛍光X線、粉末X線回折パターンについて測定を行っ
た。粉末X線回折パターンより鋭いピークが見られた
が、結晶性は低いようであった(図7のB参照)。I
R:−CO=1550cm−1(図5のB参照) 元素
分析:C=27.50、H=2.00 TG:−16.
82wt%(図6のB参照) 蛍光X線分光分析よりL
a=42.45%。
シ−1−フェニル)アントラセンランタン錯体(錯体
3) 水10mlと炭酸ナトリウム(0.53g、5mmo
l)を入れ、溶けるまで過熱攪拌した。沸騰している炭
酸ナトリウム水溶液中に9,10−ビス(3,5−カル
ボキシ−1−フェニル)アントラセン(1.26g、
2.5mmol)を少しずつ加えていった。全部加えた
後、中性であるのを確認した。溶液を室温に戻し、ろ過
後溶媒を留去し、9,10−ビス(3,5−カルボキシ
−1−フェニル)アントラセンテトラナトリウム塩を得
た。このナトリウム塩をそのまま次のランタン化に用い
た。水100mlと塩化ランタン7水和物(1.71
g、4.63mmol)を溶かし、最少量の水で溶かし
た9,10−ビス(3,5−カルボキシ−1−フェニ
ル)アントラセンテトラナトリウム塩(1.37g、
2.30mmol)水溶液をゆっくりと滴下した。一滴
目より白色のものが析出した。滴下後24時間ほど攪拌
を続けろ過により回収し、五酸化リン下、減圧乾燥し
た。得られた9,10−ビス(3,5−カルボキシ−1
−フェニル)アントラセン錯体(収量1.58g、収率
100.0%)の粉末X線回折パターンよりピークはい
くつもみられ、結晶性であることがわかった。またこの
錯体のIR、元素分析、TGについて解析を行った。I
R:−CO=1559cm−1(図5のC参照) 元素
分析:C=45.24、H=3.00 TG:−12.
55wt%。
08mmol)を溶かし、最少量の水で溶かしたトリメ
シン酸ナトリウム塩(0.20g、0.72mmol)
水溶液をゆっくりと滴下した。一滴目より青色のものが
析出した。滴下後14時間ほど攪拌を続けろ過により回
収し、五酸化リン下、減圧乾燥した。得られたトリメシ
ン酸銅錯体(収量0.25g、収率112.9%)のI
R、元素分析、TGについて解析を行った。また粉末X
線回折パターンの測定、蛍光X線分光分析も行った。粉
末X線回折パターンには、するどいピークがいくつも見
られ、結晶性であることがわかった。IR:−CO=1
708cm−1、1579cm−1フリーのカルボニルが
残っているが、金属と配位したものと比べると小さい。
元素分析:C=28.15、H=2.72 TG:−1
9.71wt%。色は青から緑に変化。蛍光X線分光分
析より、Cu=37.06wt%、理論値Cu=31.
52wt%。
16) 水100mlにテトラクロロパラジウム(II)酸カリウ
ム(1.0g、3.1mmol)を500ml三角フラ
スコに入れ、溶けるまで攪拌した。溶けたら、最少量の
水に溶かしたトリメシン酸ナトリウム塩(0.38g、
1.36mmol)水溶液をゆっくりと滴下していっ
た。20分攪拌後溶液はにごり始め、茶褐色だった溶液
の色はだんだんと薄くなった。4日間攪拌を続けたが溶
液は透明なままであったので、そのまま冷暗所に1週間
置いておき、沈殿を熟成させた。ろ過により回収し、五
酸化リン下減圧乾燥した。得られた錯体の収量は0.4
5g、収率91.1%であった。この固体のIR、TG
について測定を行った。熱分析結果、この錯体の色は茶
色から黒へと変わり、重量は150℃付近から最終的に
は40wt%程度減少した。IR:−CO=1556c
m−1、元素分析:C=22.14、H=2.29 T
G:−10.0wt%(30℃〜150℃)。
カルボン酸:Pd:Cu=2:1:2(錯体17) 水40mlにテトラクロロパラジウム(II)酸カリウム
(0.3g、0.91mmol)、塩化銅(II)2水和
物(0.31g、1.81mmol)を三角フラスコに
入れ、溶けるまで攪拌した。溶けたら、最少量の水に溶
かしたトリメシン酸ナトリウム塩(0.5g、1.81
mmol)水溶液をゆっくりと滴下していった。一滴目
から析出物は見られた。溶液はナトリウム塩を加える前
は茶褐色であったが、加え終えた後は若草色に変わっ
た。24時間攪拌後、ろ過により回収し、五酸化リン下
減圧乾燥した。得られた錯体の収量は0.56gであっ
た。この固体の組成を、トリメシン酸:Pd:Cu=
2:1:2としたとき、収率は96.0%であった。こ
の固体の元素分析、IR、TGについて測定を行った。
また、蛍光X線分光分析、蒸気吸着量測定も行った。I
R:−CO=1708cm−1、1577cm−1 元素
分析:C=22.14、H=2.29 TG:−22.
11wt%。蛍光X線分光分析より、Pd:17.2w
t%、Cu=26.0wt%、モル比Pd:Cu=1:
25。
体20) 水10mlと炭酸ナトリウム(1.6g、15mmo
l)を30ml三角フラスコに入れ、過熱攪拌した。沸
騰したらトリメシン酸(2.1g、10mmol)をゆ
っくりと加えていった。すべて加えたのちpH=7にな
っているのを確認したら室温に戻し、ろ過した。ろ液を
濃縮し、乾燥させると白色のトリメシン酸ナトリウム塩
(2.99g、収率108%)を得た。元素分析:C=
30.59、H=2.10。水100mlと硝酸スカン
ジウム4水和物(1.64g、5.4mmol)を50
0ml三角フラスコに入れ、溶けるまで攪拌した後、最
少量の水に溶かしたトリメシン酸ナトリウム塩(1.0
g、3.6mmol)水溶液をゆっくりと滴下していっ
た。10分攪拌後ろ過し、ろ紙上の白色固体を、五酸化
リン下減圧乾燥した。収率98.5%であった。なお、
錯体19は、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ナトリ
ウムと硝酸スカンジウムを水中で混合することにより同
様に合成した。
体22) 水10mlと炭酸ナトリウム(1.6g、15mmo
l)を30ml三角フラスコに入れ、過熱攪拌した。沸
騰したらトリメシン酸(2.1g、10mmol)をゆ
っくりと加えていった。すべて加えたのちpH=7にな
っているのを確認したら室温に戻し、ろ過した。ろ液を
濃縮し、乾燥させると白色のトリメシン酸ナトリウム塩
(2.99g、収率108%)を得た。元素分析:C=
30.59、H=2.10。水100mlと塩化イット
リウム6水和物(1.64g、5.4mmol)を50
0ml三角フラスコに入れ、溶けるまで攪拌した。溶け
たら、最少量の水に溶かしたトリメシン酸ナトリウム塩
(1.0g、3.6mmol)水溶液をゆっくりと滴下
していった。10分攪拌後ろ過し、ろ紙上の白色固体
を、五酸化リン下減圧乾燥した。収率96.5%であっ
た。なお、錯体21は、4,4’−ビフェニルジカルボ
ン酸ナトリウムと塩化イットリウムを水中で混合するこ
とにより同様に合成した。
物)も上述の場合と同様に合成し分析を行った。その分
析結果を表1にまとめている。いずれの場合も元素分析
値(C、H、金属)がほぼ計算値と一致した。また、残
存しているNaやClも実質的に認められなかった。さ
らにIRにおいては、遊離のカルボン酸に由来する17
00cm−1付近の伸縮振動が認められなかった。以上
を総合し、全てのカルボキシアニオンが金属イオンに過
不足なく結合し、図1〜図3に示される組成から成る錯
体であると判断された。
定 実施例1で合成した本発明の有機金属化合物(錯体)に
ついて、ガス・蒸気吸着装置を用いて、下記のように、
水、各種有機溶媒、炭酸ガスなどに対する吸着等温特性
を測定し、これらの分子に対する捕捉能を調べた。
ELSORP 18SP−V)を使用した。錯体試料
(0.2gから0.5g)を測定容器に入れ、真空下、
温度80℃から250℃にて乾燥した。これにより錯体
に配位している水や錯体形成時に付着した溶媒などが取
り除かれる。室温に戻したのち、これを測定サンプルと
した。 測定:サンプルを装置に連結し、まず吸着しない気体と
してヘリウムガスを用い、サンプル管の死容積(サンプ
ル管の体積から粉体の体積を差し引いた正味のサンプル
部の体積)を求めた。真空状態からそれぞれのゲスト分
子(被吸着物質)の飽和蒸気圧まで数十段階にわけて、
体積既知の前室にゲスト分子の蒸気を導入し、圧力が安
定したら、前室とサンプル管を隔てているパイプを開
き、各段階の圧力降下を測定した。実際の圧力降下か
ら、体積増加分の圧力降下を差し引いたものが吸着によ
るものである。これより錯体が取り込んだゲスト分子の
量を算出した。
吸着物質の25℃における吸着等温線を示す。水の吸着
等温線は、急峻な立ち上がりを示すラングミュア型とな
る。錯体1gあたりの吸着量は、相対圧0.5付近で9
0ccである。これをモル比に換算すると、ランタン1
原子あたり2分子もの水が固体内に吸着されていること
を示している。単位重量あたりの吸着量は無機ゼオライ
ト類に勝るとも劣らないものである。被吸着物質がメタ
ノールの場合、水に比べ吸着量が激減する(相対比0.
5付近では錯体1gあたり20cc)。メタノール1分
子の体積が水分子の2倍と考えたとしても同様に吸着量
は減少する。ことことより、本発明のランタン錯体の孔
は非常に狭く、水分子ふるいとしての挙動に類似してお
り、小分子の精密分離という観点から非常に興味深い。
錯体1(ビフェニル配位子)と錯体3(テトラカルボン
酸配位子)を比べた場合、単位重さあたりの被吸着物質
の割合はほぼ同じである。しかしながら、錯体3のほう
が総合的に2倍近い吸着能を示す。これは、配位子とな
る有機多塩基酸として直交型分子を用いれば固体中の充
填効率が下がり隙間が多くなるためと理解される。
の)の吸着特性 光学活性なアミノ酸側鎖をもつランタン錯体(錯体13
および14a)についてもメタノール、エタノール、ア
セトン、酢酸エチルなどの吸着等温線(25℃)を測定
した(図9のA:錯体13、図9のB:錯体14a)。
錯体1gあたりの吸着量が、アミノ酸側鎖を持たない錯
体に比べて3から6倍ほど増加した。例えば、被吸着物
質がメタノールの場合、相対圧0.5付近での吸着量
は、錯体1で約20cc/gであるが、錯体13および
14aでは約100cc/gにもなる。これをモル比に
換算すると、ランタン1原子あたり約3.5分子ものゲ
スト分子が固体内に吸着されていることを示している。
光学活性なアミノ酸側鎖は対称性が低く、固体内でのリ
ガンド同士の充填を阻害するし、そのために錯体はより
隙間の多いものになったものと考えられる。水の吸着等
温線に関しては、アミノ酸をつけることにより立ち上が
りの鈍い等温線になる。特に錯体13(ビフェニル−バ
リン)の場合は、シグモイド型の等温線になっている。
相対圧があがるにつれ、吸着量がゆるやかに増加するの
も特徴のひとつである。立ち上がりが鈍くなった原因と
しては、バリンのイソプロピル基による孔の疎水性の増
加が考えられる。また、吸着量がゆるやかに増加するの
は、孔の大きさがかなり大きくなっているためであると
予想される。
〜22)についても同様な吸着実験を行ったが、吸着等
温線の特徴ならびに吸着量は、アミノ酸を持たないラン
タン錯体(錯体1〜12、18)とほぼ同様なものとな
った図10のAに、錯体17についての吸着等温線を示
す。この錯体17は、炭酸ガスの吸着が他の錯体よりも
かなり多かった(大気圧付近で錯体1gあたり約19c
c)(図10のB参照)。
それから得られる本発明の有機金属化合物(錯体)を例
示するものである。
それから得られる本発明の有機金属化合物(錯体)を例
示するものである。
それから得られる本発明の有機金属化合物(錯体)を例
示するものである。
ると推測される分子間ネットワークを模式的に示すもの
である。
赤外吸収スペクトルである。
熱熱重量曲線である。
X線回折の回折パターンである。
等温線である。
吸着等温線である。
定した吸着等温線である。
Claims (5)
- 【請求項1】 下記の一般式(1)で表わされる組成を
有することを特徴とする固体有機金属化合物。 a[Mn+]・b[Lm−] (1) 〔式(1)中、Mはn価の原子価を有する金属を表わ
し、Lはm個のカルボキシル基を有する有機多塩基酸を
表わし、nは2または3であり、nが2の場合はmは3
以上の整数であり、nが3の場合はmは2以上の整数で
あり、aおよびbは、n×a=m×bの関係を満たす整
数である。〕 - 【請求項2】 Mが3価の原子価を有する遷移元素であ
り、aが1から4の整数であることを特徴とする請求項
1の固体有機金属化合物。 - 【請求項3】 有機多塩基酸が下記の式(2)、(3)
または(4)で表わされるものであることを特徴とする
請求項2の固体有機金属化合物。 【化1】 【化2】 【化3】 〔但し、式(2)、(3)または(4)において、Xは
−COO−または末端が−COO−である官能基または
原子団を表わす。〕 - 【請求項4】 Mが2価の原子価を有する遷移元素であ
り、aが2または3であることを特徴とする請求項1の
固体有機金属化合物。 - 【請求項5】 有機多塩基酸が下記の式(4)で表わさ
れるものであることを特徴とする請求項4の固体有機金
属化合物。 【化4】 〔但し、式(5)において、Xは−COO−または末端
が−COO−である官能基または原子団を表わす。〕
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