JP2002126803A - フランジを有する形鋼の圧延方法 - Google Patents

フランジを有する形鋼の圧延方法

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JP2002126803A JP2000319476A JP2000319476A JP2002126803A JP 2002126803 A JP2002126803 A JP 2002126803A JP 2000319476 A JP2000319476 A JP 2000319476A JP 2000319476 A JP2000319476 A JP 2000319476A JP 2002126803 A JP2002126803 A JP 2002126803A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 寸法精度や表面性状の良好な複数の製品シリ
ーズのフランジを有する形鋼をロールの組み替えを行う
ことなく製造する。 【解決手段】 粗圧延機に互いにフランジ部深さが異な
る成形孔型を2つまたはそれ以上配置し、製品のフラン
ジ幅、ウェブ厚およびフランジ厚に応じて成形孔型群に
一部または全部を使用してフランジ幅、ウェブ厚および
フランジ厚を調整して、粗形鋼片の断面を造り分ける。
また、粗ユニバーサル圧延機に近接配置し孔型深さを自
在に調整可能としたエッジャー圧延機によりフランジ幅
の圧下を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、H形鋼、I形鋼、
溝形鋼等のフランジを有する形鋼の圧延において、寸法
精度と表面性状の良好なフランジ幅の異なる製品を効率
的かつ自在に製造する圧延方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱間圧延によるH形鋼の製造工程を例に
とると、例えば図6に示すように、二重式粗圧延機1
(以下、「粗圧延機」と称する)、一対の上下水平ロー
ルと一対の左右竪ロールを有する粗ユニバーサル圧延機
2と、この粗ユニバーサル圧延機2に近接して配設され
たエッジャー圧延機33、および仕上げユニバーサル圧
延機4からなる圧延装置列により圧延成形される。
【0003】H形鋼の素材としては、一般に連続鋳造で
製造されるスラブやブルーム、ビームブランクなどが用
いられる。スラブを素材とした場合、粗圧延機1におい
て,図7のようにロール10に複数配置された孔型のう
ち、まず孔型の中央部に突起を有するエッジング孔型1
01〜103により順次、スラブの短辺部を上下から複
数パスで圧下してフランジ幅を生成させてドッグボーン
状の中間鋼片56を成形する。次に、この中間鋼片56
を90°ないしは270°転回し、製品のウェブ面から
フランジ先端までの長さ(以下、「フランジ脚長」と称
する)にフランジ部深さdが近い成形孔型104により
複数パスでウェブ厚を圧下するとともにフランジを整形
し、ウェブ厚tw"に対するフランジ厚tf"の比tf"/t
w"およびフランジ脚長L"が製品の厚み比tf/twおよ
びフランジ脚長Lとほぼ同等か近い粗形鋼片57にまで
圧延を行う。こうして得られた粗形鋼片57を粗ユニバ
ーサル圧延機2でウェブとフランジの圧下率をほぼバラ
ンスさせた状態で製品の厚みにほぼ等しくなるまで圧延
する。その際、粗ユニバーサル圧延機2に近接して配置
したエッジャー圧延機33には製品のフランジ脚長Lよ
りもわずかに孔型深さDの小さい孔型ロール3cを使用
し、図10に示すようなフランジ62の幅中心dからの
ウェブ61の中心cのずれ(以下、「ウェブ中心偏り」
と称する)が一定量以上に大きくならないように、フラ
ンジ先端の整形を行う際にウェブ中心偏りを修正してい
る。ユニバーサル圧延でウェブとフランジの圧下率をバ
ランスさせる理由としては、圧延ウェブ波の発生を抑制
することの他に、エッジャー圧延機の孔型ロールの孔型
深さDが一定であることからユニバーサル圧延でフラン
ジ脚長が大きく変化するのを抑制するためである。こう
してほぼ製品寸法にまで整形された被圧延材に対し、仕
上げユニバーサル圧延機4でフランジをウェブに対して
直角にし、厚みを最終寸法に仕上げる。
【0004】現在、同一ウェブ高さの製品シリーズにお
いても、フランジ幅シリーズやウェブ厚とフランジ厚の
サイズが多数あり、少量多シリーズ・多サイズの生産と
なっている。例えば、ウェブ高さ600mmシリーズにお
いては、フランジ幅は200mm,250mm、300mmと
3シリーズあり、厚みサイズは10種類以上でフランジ
厚/ウェブ厚の比の範囲は1.3〜2.4程度に及ぶ。
これに対して、一般にはフランジ幅シリーズごとに粗圧
延機1およびエッジャー圧延機33のロールを保有し、
ロール交換を行うことによって、前述の圧延方法で製造
している。そのために、ロールの保有数が増えるととも
に、ロール組み替え回数が増加し生産性の低下を招いて
いる。また、同一の孔型で広範囲なフランジ厚/ウェブ
厚に対応するためにサイズに応じて素材寸法を変更した
り、フランジ厚/ウェブ厚の比が大きいサイズでは粗圧
延機の成形孔型でウェブ厚が小さくなるまで圧延してい
る。そのため、鋼片管理が煩雑になったり、パス回数の
増大を招き生産性を低下させるとともに、温度低下が大
きくなり以降の圧延負荷制約を回避したり、必要仕上が
り温度を確保するために加熱炉の抽出温度を高くする必
要が生じる。
【0005】同一孔型ロールにより複数のフランジ幅シ
リーズの製品を製造することを目的としたものとして、
特開平8−229601号公報、特開平9−27180
1号公報、特開平10−109101号公報に、粗圧延
機の同一ロールを用いて、フランジ幅の異なる粗形鋼片
を製造する方法が開示されている。特開平8−2296
01号公報では、図8に示すように同一ロールに2つの
エッジング孔型と2つの成形孔型を配置して異なる製品
フランジ幅シリーズを製造する例が示されており、エッ
ジング孔型でフランジ外側に付けた溝が折れ込み疵にな
るのを防止する孔型条件を規定している。
【0006】特開平9−271801号公報は、図9の
ように粗圧延機に複数配置した成形孔型の孔型ウェブ部
のフラットな部分でフランジ先端を圧下する圧延と、造
形孔型(成形孔型)による圧延をそれぞれ所要回数行う
ことによりフランジ幅の異なる粗形鋼片を造形するもの
である。特開平10−109101号公報は、複数の孔
型を有する粗圧延機で最大フランジ幅で粗形鋼片を造形
した後、フランジ内側の傾斜角および間隔が目標鋼片寸
法にほぼ等しく、フランジ部深さがこの鋼片サイズのう
ち最小のフランジ高さ(フランジ脚長)以下である孔型
でフランジ先端を目標フランジ幅まで圧下する圧延方法
である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】特開平8−22960
1号公報の圧延方法では、2つの成形孔型はそれぞれ別
個に異なるフランジ幅シリーズに対応しており、成形孔
型数以上のフランジ幅シリーズへの対応や、広範囲なフ
ランジ厚/ウェブ厚に対する断面寸法調整への自由度が
十分ではない。また、エッジング孔型を2つとしたため
に新たな孔型形状の制約も生じている。その結果、前述
したようにフランジ幅シリーズやサイズによって素材寸
法を変更したり、フランジ厚/ウェブ厚の比が大きいサ
イズを製造する場合、粗圧延機の成形孔型での圧延終了
のウェブ厚を小さくする必要があるためパス回数の増大
を招くという問題は基本的に解決されない。
【0008】特開平9−271801号公報の技術で
は、左右方向の拘束のない状態でフランジ幅のみの圧延
を行うため、通材が不安定になりフランジ形状が不均一
になりやすい。しかも、フランジのみを圧下するためフ
ランジ厚が著しく増大し、特にフランジ幅圧下量の大き
い細幅シリーズのフランジ厚/ウェブ厚の比が小さいサ
イズにおいて肉余りが生じやすい。また、フランジ幅圧
下パスと孔型による整形圧延を繰り返すことになるた
め、パス回数が増大し圧延時間増大や温度低下を招く。
加えて、2つの孔型をまたがり孔型ウェブ部で圧延を行
うため、孔型形状や孔型配置にも制約が生じる。
【0009】特開平10−109101号公報の圧延方
法では、フランジ幅圧下によるパス回数の増大があり、
同様にフランジのみの部分圧延となるためにフランジ厚
の著しい増大を招くとともに、フランジ幅圧下が大きい
とフランジ内側の中央部が凹んだ状態になりやすい。ま
た、孔型フランジ部の断面積をフランジ幅圧下前の被圧
延材フランジ部断面積とほぼ同じかそれ以上とするた
め、フランジ幅の小さいシリーズを製造するにも延伸分
だけではフランジ断面積はそれほど小さくならず、特に
フランジ厚/ウェブ厚の比が小さいサイズにおいてフラ
ンジ肉量過多となりスリ下げ疵が発生する。
【0010】このように、いずれの方法においても、パ
ス回数の増大を招いたり、複数のフランジ幅シリーズや
厚みサイズにそれぞれ適正な寸法形状の粗形鋼片を造り
分ける機能が十分でない。粗圧延機の成形孔型による圧
延ではウェブ圧下に比べフランジ圧下が小さいために圧
延負荷が高くなり、一般に粗圧延機のミルパワーはユニ
バーサル圧延機に比べ小さいために、粗圧延機でフラン
ジ厚/ウェブ厚の比を製品のそれに等しくなるまで圧延
する場合には圧延能率が低下しやすい。また、フランジ
厚/ウェブ厚の比が大きいサイズではウェブ厚が小さく
なるまで粗圧延機で圧延するため、パス回数が多くな
り、温度低下も大きくなることから、加熱温度を高くし
なければならない。このように、従来技術では、圧延時
間や圧延温度、圧延負荷等の要件に関して、粗圧延機に
よる圧延工程と粗ユニバーサル圧延工程との間で圧延バ
ランスを最適にしつつ、サイズの造り分けを自由にする
ことができなかった。
【0011】これには、粗圧延機で圧延終了のウェブ厚
を柔軟に設定でき、かつフランジ形状の崩れを抑制しつ
つフランジ幅あるいはフランジ厚を柔軟に調整できる圧
延方法を実現する必要がある。本発明は、こうした課題
の解決を図ったもので、少ない断面の素材から粗圧延機
の同一ロールにより複数のフランジ幅シリーズ、厚みサ
イズの製品を効率的に造り分けるためのフランジを有す
る形鋼の圧延方法を提供することを目的とするものであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために、粗圧延機の成形孔型におけるフラン
ジ部深さの違いによるフランジ成形特性の差に着目し
た。粗圧延機の成形孔型による圧延において、フランジ
部深さが大きい孔型では、フランジ先端が孔型で圧下さ
れるまではウェブ面より張り出したフランジ部の断面積
(以下、「フランジ片側面積」と称する)は増加し、フ
ランジ先端圧下開始後もフランジ片側面積の減少量が小
さいのに対し、フランジ部深さが小さい孔型ではフラン
ジ先端の圧下が早いパスから始まり、フランジ片側面積
の減少量も大きい。また、フランジ部深さがL1,L2
(L1<L2)のそれぞれの孔型にフランジ先端が充満
後、同一の孔型あるいはもう一方の孔型で1パス圧延し
た際の、フランジ脚長とフランジ厚は図5のように変化
する。すなわち、同一孔型で圧延を繰り返す場合、断面
A,Bから2種類の断面A1,B1にしか制御できない
のに対し、2孔型を組み合わせることにより4種類の断
面A1,A2,B1,B2に造り分けることができる。
これをさらに多パスで組み合わせることにより広範囲に
フランジ形状を造り分けることが可能となり、粗圧延終
了のウェブ厚の設定にも自由度が増し、複数のフランジ
幅シリーズや広範囲なフランジ厚/ウェブ厚の比に柔軟
に対応できる。
【0013】すなわち、本発明は、成形孔型を刻設した
二重式の粗圧延機におけるフランジを有する形鋼の圧延
方法において、前記粗圧延機のロールに互いにフランジ
部深さが異なる2つまたはそれ以上の成形孔型群を配置
しておき、製品のフランジ幅、ウェブ厚およびフランジ
厚に応じて、該成形孔型群の一部あるいは全部の成形孔
型を使用してフランジ幅、ウェブ厚およびフランジ厚を
調整し、粗圧延終了の粗形鋼片の断面を造り分ける圧延
を行うことを特徴とするフランジを有する形鋼の圧延方
法である。
【0014】また、本発明は、粗圧延機、ユニバーサル
圧延機およびエッジャー圧延機によるフランジを有する
形鋼の圧延方法において、前記粗圧延機のロールに互い
にフランジ部深さが異なる2つまたはそれ以上の成形孔
型群を配置しておき、製品のフランジ幅、ウェブ厚およ
びフランジ厚に応じて、該成形孔型群の一部あるいは全
部の成形孔型を使用してフランジ幅、ウェブ厚およびフ
ランジ厚を調整し、粗形鋼片の断面を造り分けた後、前
記粗ユニバーサル圧延機により被圧延材のウェブ部とフ
ランジ部の厚みを圧下し、該粗ユニバーサル圧延機に近
接配置した孔型深さを自在に調整できるよう装置構成し
たエッジャー圧延機により、被圧延材のフランジ脚長に
応じて孔型深さを調整してフランジ幅を圧下することに
より被圧延材の断面を造り分ける圧延を行うことを特徴
とするフランジを有する形鋼の圧延方法である。
【0015】そして、本発明では、前記粗圧延機でフラ
ンジ部深さが異なる2つ以上の成形孔型により圧延を行
うに際し、1)フランジ部深さが大きい方の孔型で所定
パス圧下した後フランジ部深さが小さい方の孔型で圧
延、2)フランジ部深さが小さい方の孔型で所定パス圧
下した後フランジ部深さが大きい方の孔型で圧延、3)
フランジ部深さが異なる孔型で繰り返し圧延、のいずれ
か1つの圧延を行うことを特徴とするフランジを有する
形鋼の圧延方法である。また、本発明は、前記フランジ
部深さが異なる2つ以上の成形孔型により圧延を行うに
際し、フランジ部深さが大きい方の孔型で圧延した後フ
ランジ部深さが小さい方の孔型でウェブ厚を圧下する圧
延を行うことが好ましい。
【0016】さらには、前記粗圧延機の成形孔型により
圧延を行うに際し、被圧延材のウェブ厚に対するフラン
ジ厚の比が製品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了
ことを特徴とするフランジを有する形鋼の圧延方法であ
る。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明についてスラブを素材とし
たH形鋼の製造を例にして図1および図2により説明す
る。この場合、粗圧延機1には、孔底幅と孔底中央の突
起形状がそれぞれ異なる3つのエッジング孔型11〜1
3と、2つの異なるフランジ部深さd1、d2の成形孔
型14,15が配置されている。ここで、エッジング孔
型11〜13は同一ロールで製造する全フランジ幅シリ
ーズで共通に使用し、後に成形孔型14,15でフラン
ジ幅シリーズ、厚みサイズに応じて寸法を造り分けるの
に適した形状とする。フランジ部深さの小さい成形孔型
14は、同一の孔型ロールから製造するフランジ幅シリ
ーズのうち、最小フランジ幅シリーズのものに適正な形
状とし、フランジ部深さの大きい成形孔型15は、最大
フランジ幅シリーズのものに適正な形状とする。
【0018】まず、第1孔型11でスラブの短辺を上下
からウェブ高さ方向に圧下し誘導用の溝を付与する。次
に第2孔型12で第1孔型で付けた溝を案内にしつつ複
数パスでウェブ高さ方向にスラブ幅を圧下してフランジ
を生成する。次に第3孔型13で溝をなだらかしてドッ
グボーン状の中間鋼片51を生成する。この中間鋼片5
1ではフランジ厚よりもウェブ厚の方が通常大きい。次
に、同一の孔型ロールから製造するフランジ幅シリーズ
のうち、最小フランジ幅シリーズのものは、フランジ部
深さの小さい成形孔型14で所定ウェブ厚まで圧延し、
最大フランジ幅シリーズのものは、フランジ部深さの大
きい成形孔型15で所定ウェブ厚まで圧延する。
【0019】ここで、フランジ幅が中間シリーズの場
合、成形孔型15のみを使用するとフランジ肉量が過剰
となる場合が多く、その場合には、図2のように最初に
成形孔型14で圧延を行いフランジ脚長とフランジ片幅
断面積を減少させた後、成形孔型15でウェブ圧下を行
いフランジ脚長とフランジ片幅断面積を増加させると、
パス回数を増加させることなく適切な粗形鋼片に制御で
きる。あるいは、フランジ幅の調整量が大きくない場合
には、最初に成形孔型15で圧延を行い、最後に成形孔
型14でフランジ幅のみを圧下してフランジ形状を調整
することも可能である。
【0020】また、最小フランジ幅シリーズの中でもフ
ランジ厚/ウェブ厚の比が大きいサイズでフランジ片幅
断面積を増やしたい場合、図4(a)のように最初に成
形孔型14で圧延した後成形孔型15で圧延するか、あ
るいは図4(b)のように最初に成形孔型15で圧延し
た後成形孔型14で圧延する。逆に、最大フランジ幅シ
リーズの中でもフランジ厚/ウェブ厚の比が小さいサイ
ズでフランジ片幅断面積を減少させたい場合、成形孔型
14で多少圧延した後成形孔型15で圧延するか、成形
孔型15で圧延した後成形孔型14で多少圧延すればよ
い。もちろん、図4(c)、(d)のように成形孔型1
4と15を繰り返し使用してフランジ断面積を調整する
ことも可能であり、調整量に応じて組み合わせを決めれ
ばよい。
【0021】フランジ部深さが大きい孔型で圧延をした
後、フランジ部深さが小さい孔型で圧延する場合、各パ
スでウェブ厚を圧下すると、パス回数を増加させること
なく、フランジ厚の著しい増加や形状の崩れを抑制して
適切な形状の粗形鋼片に制御できる。次に、粗圧延機1
で成形したそれぞれのフランジ幅シリーズ、厚みサイズ
に対応した粗形鋼片を、粗ユニバーサル圧延機2とエッ
ジャー圧延機3からなる圧延工程において、図3のよう
に粗ユニバーサル圧延機2でウェブ厚とフランジ厚を圧
下し、エッジャー圧延機3でフランジ幅を圧下する。こ
の場合、フランジ脚長がそれぞれ異なり、ウェブ中心偏
りが大きくなるのを防止するために、エッジャー圧延機
3には、フランジ圧下ロール3aとウェブ拘束ロール3
bを備え、孔型深さ(フランジ圧下ロール3aとウェブ
拘束ロール3bの外周面の相対距離)を自在に変更でき
る機構を有するもの(以下、「孔型深さ可変式エッジャ
ー圧延機」と称する)を適用することが好ましい。例え
ば、図3でD1、D2、D3のように被圧延材フランジ
脚長に応じて孔型深さを調整してウェブ中心偏りを常に
一定量以下に抑制するように圧延する。説明ではロール
3bはウェブ拘束ロールとしたが、ウェブ中心偏りが大
きい場合にはウェブ拘束ロールによりウェブ厚を圧下す
ることになる。このエッジャー圧延機3としては、例え
ば特1828792号公報に開示されているような、左
右2分割式のフランジ幅圧下ロールと、フランジ幅圧下
ロールとは回転自在に勘合した偏心リングの外周面に回
転自在に装着されたウェブ拘束リングロールからなるエ
ッジャー圧延機などを採用すればよい。なお、粗ユニバ
ーサル圧延においてもウェブ中心偏りの発生を抑制する
ため、フランジ幅に応じて被圧延材の上下方向の中心線
と圧延機の上下方向の中心線が一致するように、各パス
ごとにテーブルを昇降させるか圧延ロールを昇降させる
ことが望ましい。
【0022】ところで、従来の圧延方法では粗圧延機で
製品のフランジ厚/ウェブ厚の比にほぼ等しくなるまで
圧延を行うためパス回数が多く、粗ユニバーサル圧延機
が2基ある場合などでは粗圧延機での圧延が全体の圧延
ピッチの制約になったり、ウェブ厚が小さい状態で粗ユ
ニバーサル圧延工程に搬送するため温度が低下して、必
要な圧延仕上がり温度が確保できなくなり、抽出温度を
上げる必要が生じる場合が多い。そこで、粗圧延機で
は、従来のようにフランジ厚/ウェブ厚の比が製品のそ
れに近くなるまでの圧下は行わず、図1、3に示すよう
に従来に比べウェブ厚が大きい段階、すなわちフランジ
厚/ウェブ厚の比tf'/tw'が製品のフランジ厚/ウェ
ブ厚の比tf/twよりも小さい断面で粗圧延を終了し、
ユニバーサル圧延工程での圧下量を増加させる。ユニバ
ーサル圧延ではウェブ厚の圧下に加えフランジ厚の圧下
も行えるため、粗圧延でウェブを強圧下する場合に比べ
荷重を小さくできる。こうすることにより、圧延パス回
数を削減し、温度低下を抑え抽出温度を下げることもで
きる。また、フランジに比べウェブの圧下が大きい粗圧
延のパス回数を削減することにより、長手方向の先後端
のウェブがフランジに対して先行したクロップの長さを
短くできたり、成形孔型からの噛み出しによるフランジ
外面のスリ下げ疵の発生を低減できる等の効果もある。
【0023】各フランジ幅シリーズ、厚みサイズに対し
て適正な粗圧延終了の断面形状は、ユニバーサル圧延で
のフランジ幅の変化量を考慮して、エッジャー圧延機で
各パスのフランジ圧下量がフランジ整形に必要な圧下量
とフランジ内側にスリ下げを生じない圧下量の適正な範
囲となるように決定する。ここで、粗圧延機おける少な
くとも一つの成形孔型は、同一ロールで成形する全フラ
ンジ幅シリーズ・サイズの中でフランジ肉量が最小のサ
イズに対して適正となるようにフランジ部深さを決定
し、少なくとも一つの成形孔型は同一ロールで成形する
全フランジ幅シリーズ・サイズの中でフランジ肉量が最
大のサイズに対して適正となるようにフランジ部深さを
決定することが好ましく、その間のサイズは両孔型を組
み合わせることによる造り分けられる。また、フランジ
部深さが異なるそれぞれの成形孔型は仕上孔型形状と
し、孔型ウェブ高さ部の寸法はほぼ同じにする。
【0024】上記例では、フランジ幅シリーズ、厚みサ
イズによらず3つのエッジング孔型を共用とし、成形孔
型を2つとしたが、本発明はこれに限定されるわけでは
なく、基本はフランジ部深さの異なる成形孔型を2つ以
上配置したことにあり、ロール胴長に余裕がある場合に
は、さらに孔底幅の異なるエッジング孔型や、フランジ
部深さの異なる成形孔型を配置することは、造形の自由
度を増すために有効である。また、粗圧延機と粗ユニバ
ーサル圧延機やエッジャー圧延機の構成も複数基ある場
合など上記例に限定されるものではないことを付け加え
ておく。素材に関してもスラブに限定されるわけでな
く、ブルームやビームブランクを素材とした場合にも、
上記圧延方法は同様に適用できる。
【0025】以上、H形鋼の圧延について説明したが、
I形鋼や溝形鋼などについても、同様の圧延方法により
粗形鋼片の断面形状を調整し、フランジ幅や厚みの異な
る製品を同一ロールから製造できる。
【0026】
【実施例】ウェブ高600mmシリーズのH形鋼について、
フランジ幅200mmシリーズのウェブ厚/フランジ厚サイ
ズ9mm/12mmおよび9mm/22mm、フランジ幅250mmシリー
ズのサイズ12mm/19mmおよび12mm/28mm、フランジ幅30
0mmシリーズのサイズ12mm/28mmの5種類を、1250mm×2
50mmスラブから、図1に示す孔型ロールの粗圧延機と、
2組の粗ユニバーサル圧延機と孔型深さ可変式エッジャ
ー圧延機、および仕上げユニバーサル圧延機を使用し、
ロールの組み替えを行わずに製造した。全サイズとも成
形孔型での圧延パス回数は7パスで、粗圧延終了のウェ
ブ厚は140mmとした。従来、12mm/28mmサイズはフラン
ジ厚/ウェブ厚の比が製品とほぼ等しくなるように、ウ
ェブ厚60mmになるまで粗圧延機で圧延していたが、本発
明では粗圧延仕上終了のウェブ厚を140mmにするため
に、2つの成形孔型のフランジ部深さを従来孔型に対し
多少変更し、それぞれ90mmと150mmにした。
【0027】5種類のH形鋼のうち、フランジ断面積が
最大のフランジ幅300mmシリーズのサイズ12mm/28mmに
ついては、成形孔型15のみを使用し、フランジ断面積
が最小のフランジ幅200mmシリーズのサイズ9mm/12mmに
ついては、成形孔型14のみを使用した。フランジ幅20
0mmシリーズのサイズ9mm/22mmでは成形孔型14で5パ
ス圧延後、成形孔型15で2パス圧延を行い、フランジ
幅250mmシリーズのサイズ12mm/19mmと12mm/28mmにつ
いてはそれぞれ、成形孔型14で2パス、1パス圧延
後、成形孔型15で5パス、6パス圧延を行った。本発
明の方法では、いずれのサイズもフランジ角落ちやフラ
ンジ幅不良、疵の発生などなく良好な製品が製造でき
た。
【0028】一方、従来の圧延法により、成形孔型14
のみでフランジ幅200mmシリーズを、成形孔型15のみ
でフランジ幅250mmと300mmシリーズを製造したところ、
フランジ幅200mmシリーズと300mmシリーズのサイズ12mm
/28mmは粗圧延終了のウェブ厚を60mmまで小さくしない
とフランジ角落ちは解消しなかった。その場合の成形孔
型でのパス回数は15パスであった。また、フランジ幅
250mmシリーズのサイズ12mm/19mmについてはスラブ幅
を100mm小さくしないとエッジャー圧延機でのスリ下げ
疵が抑制できなかった。フランジ幅200mmシリーズのサ
イズ9mm/12mmと9mm/22mmについては粗圧延終了のウェ
ブ厚を140mmとすると、9mm/12mmはスリ下げ疵が発生
し、9mm/22mmはフランジ角落ちが生じた。
【0029】また、本発明の方法で粗圧延終了のウェブ
厚を140mmと大きくしてパス回数を減らし、粗ユニバー
サル圧延工程での圧下率を高めたことにより、圧延ピッ
チのネックであった粗圧延機の圧延時間が最大1分30
秒ほど短縮され、加えて、ウェブ厚を大きく粗ユニバー
サル圧延工程へ搬送するために温度低下が小さくなり、
必要圧延仕上温度を確保するのに加熱炉の抽出温度を従
来に比べ50℃低減できた。
【0030】
【発明の効果】以上のように本発明の圧延方法により、
複数のフランジ幅シリーズや厚みサイズの製品について
もロール組み替えを行うことなく、粗圧延機で適正なフ
ランジ幅、ウェブ厚、フランジ厚の粗形鋼片に柔軟に調
整することができ、フランジ肉量の過不足やフランジ内
面のスリ下げによる折れ込み疵などのない良好なフラン
ジを有する形鋼製品を製造でき、ロール保有数を削減
し、作業率や歩留を向上させることができる。さらに
は、粗圧延機でのパス回数の削減によって、圧延能率の
向上と加熱温度低減による燃料原単位の向上も図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による粗形鋼片の造り分けに関する代表
的な孔型ロールと粗圧延方法の説明である。
【図2】本発明による2つの成形孔型を使用した粗圧延
方法の説明図である。
【図3】本発明の粗ユニバーサル圧延方法とエッジャー
圧延方法の説明図である。
【図4】本発明による2つの成形孔型を使用した圧延パ
ターンを示す図である。
【図5】孔型形状の違いによるフランジ形状の変化を説
明する模式図である。
【図6】従来の代表的なH形鋼の製造方法の説明図であ
る。
【図7】従来の基本的な粗圧延方法の説明図である。
【図8】従来の粗形鋼片の造り分けに関する粗圧延方法
の説明図である。
【図9】従来の粗形鋼片の造り分けに関する粗圧延方法
の説明図である。
【図10】H形鋼のウェブ中心偏りの説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐伯 英二 大阪府堺市築港八幡町1番地 新日本製鐵 株式会社堺製鐵所内 (72)発明者 山下 浩 大阪府堺市築港八幡町1番地 新日本製鐵 株式会社堺製鐵所内 Fターム(参考) 4E002 AB06 AC03 BA03 BB02 BB10 CA17 CA18 CB09 4E016 AA06 AA07 BA01 CA08 DA06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成形孔型を刻設した二重式の粗圧延機に
    おけるフランジを有する形鋼の圧延方法において、前記
    粗圧延機のロールに互いにフランジ部深さが異なる2つ
    またはそれ以上の成形孔型群を配置しておき、製品のフ
    ランジ幅、ウェブ厚およびフランジ厚に応じて、該成形
    孔型群の一部あるいは全部の成形孔型を使用してフラン
    ジ幅、ウェブ厚およびフランジ厚を調整し、粗圧延終了
    の粗形鋼片の断面を造り分ける圧延を行うことを特徴と
    するフランジを有する形鋼の圧延方法。
  2. 【請求項2】 粗圧延機、ユニバーサル圧延機およびエ
    ッジャー圧延機によるフランジを有する形鋼の圧延方法
    において、前記粗圧延機のロールに互いにフランジ部深
    さが異なる2つまたはそれ以上の成形孔型群を配置して
    おき、製品のフランジ幅、ウェブ厚およびフランジ厚に
    応じて、該成形孔型群の一部あるいは全部の成形孔型を
    使用してフランジ幅、ウェブ厚およびフランジ厚を調整
    し、粗形鋼片の断面を造り分けた後、前記粗ユニバーサ
    ル圧延機により被圧延材のウェブ部とフランジ部の厚み
    を圧下し、該粗ユニバーサル圧延機に近接配置した孔型
    深さを自在に調整できるよう装置構成したエッジャー圧
    延機により、被圧延材のフランジ脚長に応じて孔型深さ
    を調整してフランジ幅を圧下することにより被圧延材の
    断面を造り分ける圧延を行うことを特徴とするフランジ
    を有する形鋼の圧延方法。
  3. 【請求項3】 粗圧延機でフランジ部深さが異なる2つ
    以上の成形孔型により圧延を行うに際し、1)フランジ
    部深さが大きい方の孔型で所定パス圧下した後フランジ
    部深さが小さい方の孔型で圧延、2)フランジ部深さが
    小さい方の孔型で所定パス圧下した後フランジ部深さが
    大きい方の孔型で圧延、3)フランジ部深さが異なる孔
    型で繰り返し圧延、のいずれか1つの圧延を行うことを
    特徴とする請求項1または2記載のフランジを有する形
    鋼の圧延方法。
  4. 【請求項4】 フランジ部深さが異なる2つ以上の成形
    孔型により圧延を行うに際し、フランジ部深さが大きい
    方の孔型で圧延した後フランジ部深さが小さい方の孔型
    でウェブ厚を圧下する圧延を行うことを特徴とする請求
    項3記載のフランジを有する形鋼の圧延方法。
  5. 【請求項5】 粗圧延機の成形孔型により圧延を行うに
    際し、被圧延材のウェブ厚に対するフランジ厚の比が製
    品のそれよりも小さい断面で粗圧延を終了することを特
    徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフランジ
    を有する形鋼の圧延方法。
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