JP2002125588A - 液状乳成分より調製され、かつuht殺菌された乳飲料 - Google Patents

液状乳成分より調製され、かつuht殺菌された乳飲料

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 液状乳成分を用いて調製され、かつUH
T殺菌された乳飲料の乳化安定性を向上させる。 【解決手段】 液状乳成分を用いて調製され、かつUH
T殺菌された乳飲料の糖濃度を、5重量%以下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液状乳成分を含有
し、かつUHT殺菌された低糖乳飲料に関する。詳しく
は、熱安定性および長期間の保存安定性に優れ、PET
ボトル用に適した低糖乳飲料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】乳成分が入った飲料においては、保存時
における乳成分の分離が従来より問題となっており、長
時間の保存とともに上部に乳成分が浮上する。この現象
はミルクコーヒーなどではよく知られているが、浮上し
た乳成分は凝集、合一して、いわゆるネックリングの状
態へと至る。この場合、再分散性は悪くなり、再分散後
も乳成分の塊が上部に浮遊した状態となる。
【0003】特に最近では、缶入り飲料に代わり、PE
Tボトル入り飲料が普及してきているため、乳成分の乳
化安定性がより重要視されている。これは、PETボト
ルは透明容器なので消費者は飲料の外観を見ることがで
き、PETボトル飲料において乳成分の分離が起こった
場合には、消費者に不快な印象を与え、商品価値が低下
したり、クレームの原因につながる可能性があるためで
ある。
【0004】一方、ミルクコーヒーやミルク紅茶などの
乳成分を含む乳飲料には乳原料として脱脂粉乳、全脂粉
乳、加糖練乳、生クリーム、牛乳などが単独で若しくは
これらを組み合わせて使用されている。その中でも脱脂
粉乳や全脂粉乳などの粉乳は、糖の中に粉乳を含んだ調
整糖の形で飲料に使用されたり、コストをかけずにコク
味を増す目的として使用されたりする。
【0005】しかし、最近ではミルクコーヒーやミルク
紅茶などに乳原料として牛乳を使用する場合が多く見受
けられる。これは牛乳が粉乳よりも口当たりの滑らかさ
が損なわれないためである。また、コクやまろやかさを
与えるために、生クリームなどが添加される場合もあ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような、牛乳、生
クリームなどの液状乳成分では、製造工程で厳しい加熱
過程を経る粉乳と異なり、乳清タンパク質の変性が少な
く、生乳の状態とほとんど同じである。また、PETボ
トル飲料では、缶入り飲料の様に過酷な加熱殺菌(レト
ルト殺菌)ではなく、高温短時間殺菌(UHT殺菌)を
行うため、乳清タンパク質の加熱によるダメージが少な
い。従って、牛乳、生クリームなどの液状乳成分より調
製されたPETボトル飲料では、未変性の乳清タンパク
質が多く残存し、乳エマルションの凝集が起こりやすく
なる。この場合、時間の経過とともに乳成分が浮上し、
乳成分がPETボトルの上部に層を形成する。さらに時
間が経過すると、乳エマルションの破壊が起こり、オイ
ルオフへと至る。
【0007】乳成分の浮上を抑制するための手段の一つ
として、糖の濃度を増加することにより飲料の粘性を増
大させる方法が用いられているが、この場合、糖濃度増
加に伴い、飲料のカロリーが上昇するなどの問題が生じ
ている。従って上記の理由から、液状乳成分より調製さ
れるPETボトル飲料において、糖濃度を増加させずに
乳成分の浮上を抑制する手法の開発が望まれていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記実情に
鑑み、種々検討した結果、牛乳、生クリームなどの液状
乳成分を含有する乳飲料に限っては、糖濃度が低下する
ほど乳清タンパク質の変性が促進され、乳エマルション
の凝集が抑制されるためにUHT殺菌後の乳化安定性が
向上し、乳成分の浮上も抑制されることを見出し、本発
明を完成した。
【0009】すなわち、本発明の要旨は、液状乳成分を
用いて調製され、かつUHT殺菌された乳飲料であっ
て、糖濃度が5重量%以下であることを特徴とする乳飲
料に存する。更に、前記乳飲料に蔗糖脂肪酸エステルを
併用することを特徴とする乳飲料に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の乳飲料は、糖濃度が5重量%以下である。本発
明で使用する糖としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類
または糖アルコール類が挙げられるが、中でも糖アルコ
ールが好ましい。単糖類としては、ぶどう糖、果糖、木
糖、ソルボース、ガラクトース、異性化糖などが挙げら
れ、二糖類としては、蔗糖、麦芽糖、乳糖、異性化乳
糖、パラチノースなどが挙げられる。オリゴ糖類として
は、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオ
リゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、パ
ラチノースなどが挙げられるが、中でも一般的に用いら
れており、最も使用量が多い蔗糖を好ましく用いること
ができる。
【0011】また、糖アルコール類としては、エリスリ
トール、ソルビトール,キシリトール,マンニトール等
の単糖アルコール類、マルチトール,イソマルチトー
ル,ラクチトール等の2糖アルコール類、マルトトリイ
トール,イソマルトトリイトール,パニトール等の3糖
アルコール類、オリゴ糖アルコール等の4糖以上アルコ
ール類、粉末還元麦芽糖水飴などが挙げられるが、これ
らのなかでは、単糖アルコールが好ましく、特にエリス
リトールを好ましく用いることができる。
【0012】エリスリトールは、四炭糖の糖アルコール
であり、工業的にはブドウ糖の酵母による発酵で製造さ
れているが、キノコ、地衣類など天然界やワイン、醤油
など食品中にも存在する。また、非常に結晶化しやすい
が、温度を上げれば砂糖と同様な水溶性を示す。さら
に、甘味の強さが砂糖の75〜80%であり、カロリー
が0という特徴を有する。このため、ミルク紅茶やミル
クコーヒーなどの乳飲料にも低カロリー甘味料として使
用されている。
【0013】本発明の乳飲料は、糖濃度が5重量%以下
であるが、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以
下である。糖濃度が低下するにつれて、乳化安定性が向
上する。このため、乳化安定性の上では糖濃度0がよい
が、飲料の甘味度を保つためには、一般に0.1重量%
以上が必要とされる。添加量が0.1重量%未満では、
糖の甘味が感じられないため好ましくない。さらに、飲
料の低カロリー化のために、いわゆる微糖規格として販
売される飲料を考慮した場合、糖の含量としては1〜4
重量%が最も好ましい。
【0014】本発明の乳飲料は、液状乳成分より調製さ
れる。液状乳成分とは、生乳を原料として、これより種
々の処理加工技術で製造される液体状の乳製品である。
液状乳成分としては、例えば、牛乳、加工乳、脱脂乳、
生クリーム、ホエー、バターミルク、加糖練乳、無糖練
乳などが挙げられるが、中でも牛乳、生クリームが好ま
しい。尚、生クリームとは、牛乳から分離したクリーム
であって、高脂肪分のものである。これらの乳成分をそ
れぞれ混合して使用しても構わない。一方、全脂粉乳、
脱脂粉乳、調製粉乳、粉末クリーム、粉末ホエーなどの
粉末乳製品は乾燥の際に厳しい加熱工程を経るため、飲
料に添加する前から乳清タンパク質が変性した状態とな
っており、糖濃度を低下させても乳化安定性向上の効果
が達成されない。また、液状乳成分の乳飲料中の含有量
は、牛乳換算で5〜60重量%、好ましくは10〜30
重量%である。
【0015】本発明では、抗菌剤としてHLBが10以
上の蔗糖脂肪酸エステルを併用することが好ましい。本
発明の乳飲料は、乳成分を含有するために、UHT殺菌
を行なってもコーヒー中に耐熱芽胞菌が残存する可能性
があるためである。併用する蔗糖脂肪酸エステルとして
は、モノエステル含量が50%以上であり、構成脂肪酸
の70%以上がパルミチン酸またはステアリン酸のもの
が好ましい。特に、抗菌性を有する乳化剤として広く利
用されている、モノエステル含量が70%以上であり、
構成脂肪酸の80%以上がパルミチン酸である蔗糖脂肪
酸エステルが最も好ましい。蔗糖脂肪酸エステルのHL
Bは、好ましくは15以上、一般に17以下である。蔗
糖脂肪酸エステルの乳飲料中の含有量は、0.03〜
0.1重量%が好ましい。
【0016】本発明の乳飲料には、その他の乳化剤、安
定剤、香料、ビタミンなどの公知の配合剤等を加えても
よい。その他の乳化剤として、HLB10未満の蔗糖脂
肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸
モノグリセリド、モノグリセリド、レシチン、リゾレシ
チン、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸
エステル等を添加して例示できるが、これらのなかで
は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを好ましく用いるこ
とができる。
【0017】ポリグリセリン脂肪酸エステルはポリグリ
セリンと脂肪酸から構成される。ポリグリセリン脂肪酸
エステルを構成するポリグリセリンの重合度としては、
平均重合度が2〜20、好ましくは平均重合度が4〜1
2である。脂肪酸の具体例としては、ミリスチン酸、パ
ルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸など
の炭素数14〜22の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げ
られるが、炭素数が少ない方が好ましい。なかでもミリ
スチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましく、特
にミリスチン酸が好ましい。なお、ポリグリセリン脂肪
酸エステルは曇点を指標として特性づけられるが、本発
明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは20%
塩化ナトリウム水溶液中1重量%で測定した曇点範囲が
90℃以上であることが好ましい。ポリグリセリン脂肪
酸エステルの乳飲料中の含有量は、0.01〜0.1重
量%が好ましい。
【0018】また、本発明においては、乳化安定性の向
上効果を損なわない範囲であれば、その他の甘味料とし
て、必要に応じ合成甘味料、非糖質天然甘味料、アミノ
酸系甘味料などの高甘味度甘味料を併用してもかまわな
い。エリスリトールはステビア、アスパルテームなどの
高甘味度甘味料と併用すると、苦み、後味などの癖を改
善する効果がある。高甘味度甘味料としては、アスパル
テーム、ステビアの他、サッカリン、サッカリンナトリ
ウム、グリチルリチン、アセスルファムカリウム、スク
ラロース等が挙げられる。
【0019】本発明の乳飲料は、未変性の乳清タンパク
質を含む乳成分を含有する飲料である。乳飲料のpHと
しては、通常、5.5〜7.0の中性または弱酸性であ
ることが好ましい。乳飲料としては、例えばミルクコー
ヒー、カフェオレ、ミルク紅茶等が例示できるが、好ま
しくはミルク紅茶である。本発明の乳飲料は、糖、液状
乳成分、コーヒーや紅茶等の抽出液を混合し、さらに乳
化剤の水溶液を添加後、重曹によりpHを調整してから
加熱殺菌を行なうことにより製造される。ここで用いる
加熱殺菌はUHT殺菌である。レトルト殺菌は、121
℃、20〜40分の条件で行われるため、乳清タンパク
質が完全に変性してしまい本発明の効果が得られないこ
とがある。
【0020】PETボトル用飲料などに用いられるUH
T殺菌は、レトルト殺菌より高温、例えば、殺菌温度1
30〜150℃で、且つ、121℃での殺菌価(Fo)
が10〜50に相当する超高温殺菌である。UHT殺菌
は飲料に直接水蒸気を吹き込むスチームインジェクショ
ン式や飲料を水蒸気中に噴射して加熱するスチームイン
フュージョン式などの直接加熱方式、プレートやチュー
ブなど表面熱交換器を用いる間接加熱方式など公知の方
法で行うことができ、例えばプレート式殺菌装置を用い
ることができる。
【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に具体的に説
明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の
実施例に限定されるものではない。また、比、%および
部はいずれも重量比、重量%および重量部を表す。 [製造例]デカグリセリン(平均重合度9.15、平均分子
量695、水酸基価900)188g(0.27モル)とミリスチン酸
(純度99%、平均分子量228)62g(0.27モル)を加熱ジ
ャケット付き攪拌型反応槽に仕込み、25%水酸化ナトリ
ウム0.025g(対原料合計0.0025wt%)を加えて、窒素気
流下、240℃に昇温して3時間反応させた後、更に260℃
で4時間反応させてデカグリセリンミリスチン酸エステ
ル234gを得た。
【0022】[実施例1]紅茶葉(ティンブラ茶)10
0gを80℃の脱塩水1000gで抽出し、紅茶抽出液
を得た。続いて、紅茶抽出液250g、牛乳500g、
エリスリトール75gを混合し、さらに脱塩水を加えて
全量を2500gとした。これを高圧ホモジナイザーを
用いて60〜70℃の温度で150kg/50kgcm-2
の圧力で均質化後、プレート式UHT殺菌装置(日阪製
作所製STS−100)により殺菌温度137℃、殺菌
時間(ホールド時間)60秒の条件で殺菌し、無菌状態
で殺菌済みの500mLPETボトルに充填し、冷却する
ことによりミルク紅茶を得た。40℃で2ヶ月間保存し
た後のミルク紅茶について、FormalAction
社製、TurbiScan MA2000によりクリーム
オフ量を測定した。評価結果を表1にまとめて示した。
【0023】<Turbiscan MA2000によ
るクリームオフ量の測定>光源を一定時間間隔でサンプ
ル管の上下方向にスキャンすることにより、サンプルか
らの後方散乱光を検出し、測定時間に対して後方散乱光
強度の変化率を観測することにより、クリームオフの状
態を把握することができる。サンプル管上部の測定によ
り、クリームオフ量の情報が得られる。時間とともに後
方散乱光強度の変化率が正に大きくなるほどクリームオ
フ量が多く、乳化安定性は劣る。そこで、表1における
クリームオフ量を次のように評価した。
【0024】*クリームオフ量評価基準 ◎:15時間での後方散乱光強度の変化率が10%未満 ○:15時間での後方散乱光強度の変化率が10%以上
11%未満 △:15時間での後方散乱光強度の変化率が11%以上
12%未満 [比較例1]エリスリトールの代わりに砂糖を150g
使用し、実施例1と同様にミルク紅茶を調製し、評価を
行った。評価結果を表1に示した。
【0025】
【表1】
【0026】[実施例2]紅茶葉(ティンブラ茶)10
0gを80℃の脱塩水1000gで抽出し、紅茶抽出液
を得た。続いて、紅茶抽出液250g、牛乳500g、
生クリーム12.5g、エリスリトール25gを混合
し、続いて表2記載の乳化剤2.5gを脱塩水497.
5gに溶解した乳化剤水溶液500gを加え、さらに脱
塩水を加えて全量を2500gとした。これを高圧ホモ
ジナイザーを用いて60〜70℃の温度で150kg/
50kgcm-2の圧力で均質化後、プレート式UHT殺菌
装置(日阪製作所製STS−100)により殺菌温度1
37℃、殺菌時間(ホールド時間)60秒の条件で殺菌
し、無菌状態で殺菌済みの500mLPETボトルに充填
し、冷却することによりミルク紅茶を得た。40℃で2
ヶ月間保存した後のミルク紅茶について、Formal
Action社製、TurbiScan MA2000に
よりクリームオフ量を測定した。また、PETボトルの
目視観察により、40℃で2ヶ月保存後のクリームの再
分散性について評価した。評価結果を表2にまとめて示
した。
【0027】表2におけるクリームオフ量およびクリー
ムの再分散性は以下のように評価した。 *クリームオフ量評価基準 ◎:15時間での後方散乱光強度の変化率が8%未満 ○:15時間での後方散乱光強度の変化率が8%以上9
%未満 △:15時間での後方散乱光強度の変化率が9%以上1
0%未満 *クリーム再分散性評価基準 ◎:軽く揺らしただけで分散する ○:暫く揺らすと分散する △:クリームが壁面に付着し分散しにくい ×:クリームが塊が浮遊する <比較例2>エリスリトールの代わりに砂糖を150g
使用し、実施例2と同様にミルク紅茶を調製し、評価を
行った。評価結果を表2に示した。
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】本発明により、加熱殺菌後、長期間の乳
化安定性を保持することができる乳飲料が提供される。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液状乳成分を用いて調製され、かつUHT
    殺菌された乳飲料であって、糖濃度が5重量%以下であ
    ることを特徴とする乳飲料。
  2. 【請求項2】液状乳成分が、牛乳または生クリームであ
    る請求項1に記載の乳飲料。
  3. 【請求項3】糖が単糖類、二糖類、オリゴ糖類または糖
    アルコール類である請求項1または2に記載の乳飲料
  4. 【請求項4】蔗糖脂肪酸エステルを含有する請求項1乃
    至3のいずれかに記載の乳乳飲料
  5. 【請求項5】ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する
    請求項1乃至4のいずれかに記載の乳飲料。
  6. 【請求項6】乳飲料が、ミルクコ−ヒ−またはミルク紅
    茶である請求項1乃至5のいずれかに記載の乳飲料。
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