JP2002124140A - 絶縁電線 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性、難燃性、柔軟性、加工性等の諸特
性を維持しながら、高温雰囲気においても形状を保持で
きる薄肉被覆電線を提供する。 【解決手段】 ホ゜リオレフィン樹脂組成物の内層とホ゜リアミト゛樹
脂の外層により被覆された絶縁電線であって、該樹脂組
成物は(a)メルトインテ゛ックス0.1〜5ｇ/10分、コモノマー含有量10質
量％であり、分子内に酸素原子を含むエチレン共重合体、
(b)メルトインテ゛ックス0.1〜5ｇ/10分、密度0.920〜0.945、テ゛ュロ
メータ硬さ50〜65である直鎖状低密度ホ゜リエチレン、(c)テ゛ュロメータ
硬さ60以上のホ゜リオレフィン樹脂、(d)不飽和カルホ゛ン酸またはそ
の誘導体により変性されたホ゜リオレフィン樹脂及び金属水酸化
物を、(b)の含有量は、(a)の含有量と等しいかまたはそ
れ以上であり、(a)〜(d)の合計は１００重量部であり、
(e)の含有量は(a)〜(d)の合計100重量部に対して30〜30
0重量部である被覆電線。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ポリオレフィン樹
脂組成物の内層とポリアミド樹脂の外層により被覆され
た被覆電線の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車用電線の被覆には、機械的強度、
電線押出加工性、柔軟性、着色性、経済性などの点か
ら、主としてポリ塩化ビニル（ＰＶＣ）が使用されてき
た。しかし、ＰＶＣは、塩素含有ポリマーであるので、
燃焼時に有害な塩素ガスを発生し、地球環境を汚染する
などの理由から、問題視されている。このような背景か
ら、電線被覆材料としてＰＶＣに代えてハロゲンフリー
材料が使用されるようになっている。従来のハロゲンフ
リー材料は、耐熱性、耐摩耗性を重視して、オレフィン
系エラストマー、例えばプロピレン−エチレン−プロピ
レン共重合体に難燃剤として金属水酸化物を添加し、更
に滑剤として脂肪酸塩などを添加した組成物が使用され
ている。

【０００３】特に、自動車用電線被覆材料には、益々高
い難燃性が要求されるようになっており、オレフィン系
樹脂に金属水酸化物を配合した難燃性樹脂組成物を電線
被覆として用いることが提案されている（例えば、特開
平５−１９４７９５号公報、特開平１０−３４０６３６
号公報、特開平１０−３４０６３７号公報など）。しか
し、要求される難燃性を満たすには、多量の金属水酸化
物を配合する必要がある。しかし、そのような樹脂組成
物では、耐摩耗性や引張強度などの機械的強度が極端に
低下する恐れがある。そこで、比較的硬度の高いポリプ
ロピレンや高密度ポリエチレンの配合量を増すことも考
えられるが、被覆電線の柔軟性が損なわれ、また樹脂組
成物の加工性も悪くなる。

【０００４】一方、電線被覆を複数層構造とし、外層は
難燃剤配合量の少ない又は全く含まないオレフィン系樹
脂から形成し、内層は難燃剤を多量に配合した難燃化オ
レフィン樹脂から形成して、耐摩耗性と柔軟性を両立さ
せた被覆電線も提案されている（特開平６−１７６６３
１号公報）。しかし、このような複数層被覆電線は、高
温における変形性が十分ではない。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐摩耗性、
難燃性、柔軟性、加工性等の諸特性を維持しながら、高
温、例えば１８０℃の高温雰囲気においても形状を保持
できる薄肉被覆電線を提供しようとするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、ポリオレフィン樹脂組成物からなる内
層、およびポリアミド樹脂からなる外層により被覆され
た絶縁電線であって、該ポリオレフィン樹脂組成物は、
（ａ）メルトインデックスが０．１〜５ｇ／１０min．
であり、コモノマーの含有量が１０〜５５質量％であっ
て、分子内に酸素原子を含むエチレン共重合体少なくと
も５質量部、（ｂ）メルトインデックスが０．１〜５ｇ
／１０min．、密度が０．９２０〜０．９４５、デュロ
メータ硬さが５０〜６５である直鎖状低密度ポリエチレ
ン少なくとも５質量部、（ｃ）デュロメータ硬さが６０
以上のポリオレフィン樹脂少なくとも５質量部、（ｄ）
不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性されたポ
リオレフィン樹脂少なくとも５質量部、および（ｅ）金
属水酸化物を含んでなり、（ｂ）の含有量は、（ａ）の
含有量と等しいかまたはそれ以上であり、（ａ）〜
（ｄ）の合計は１００重量部であり、（ｅ）の含有量は
（ａ）〜（ｄ）の合計１００重量部に対して３０〜３０
０重量部であることを特徴とする被覆電線を提供する。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下、本発明の被覆電線の内層お
よび外層の樹脂組成物に含まれる各成分について説明す
る。 ＜内層＞エチレン共重合体（ａ）は、メルトインデック
ス（ＭＦＲ）が０．１〜５ｇ／１０min．であり、コモ
ノマーの含有量が１０質量％であって、分子内に酸素原
子を含むエチレン共重合体である。エチレン共重合体の
種類は、メルトインデックスおよびコモノマー含有量が
上記範囲にあり、分子内に酸素原子を含む限り、特に限
定されない。好ましいエチレン共重合体の例は、エチレ
ン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル
共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体など
である。ＭＦＲが上記範囲外であると、押出加工性が低
下する。コモノマーの含有量が１０質量％以下である
と、難燃剤の取り込み性が悪く、折り曲げ白化などが起
こりやすい。更に柔軟性が貧しくなる。コモノマーの含
有量が５５質量％を超えると、軟化温度が低くなり、組
成物の取り扱いが難しい。酸素原子を含むことで、難燃
性に有利になる。酸化原子を含むことで極性ができ、フ
ィラーの取り込み性が良くなる。

【０００８】直鎖状低密度ポリエチレン（ｂ）は、メル
トインデックスが０．１〜５ｇ／１０min．、密度が
０．９２０〜０．９４５、デュロメータ硬さが５０〜６
５の直鎖状低密度ポリエチレンであり、これら特性が満
足される限り、特に限定されない。ＭＦＲが上記範囲外
であると、組成物の押出加工が難しい。デュロメータ硬
さ上記範囲外であると、柔軟性または磨耗特性が悪くな
る。密度は、硬さの指標となるので、デュロメータ硬さ
を上記の範囲とするには、上記の密度であることが好ま
しい。

【０００９】内層に含まれる直鎖状低密度ポリエチレン
（ｂ）の含有量は、エチレン共重合体（ａ）の含有量と
等しいかまたはそれ以上である。エチレン共重合体
（ａ）の含有量が直鎖状低密度ポリエチレン（ｂ）の含
有量より多いと、被覆の耐摩耗性が低くなる。

【００１０】ポリオレフィン樹脂（ｃ）は、デュロメー
タ硬さが６０以上であるポリオレフィン樹脂であり、ポ
リオレフィンの種類は、デュロメータ硬さが６０以上で
ある限り、特に限定されない。好ましいポリオレフィン
樹脂の例は、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなど
である。デュロメータ硬さが６０未満では、耐磨耗性が
悪くなる。

【００１１】変性ポリオレフィン樹脂（ｄ）は、不飽和
カルボン酸またはその誘導体により変性されたポリオレ
フィン樹脂である。不飽和カルボン酸またはその誘導体
は、ポリオレフィン樹脂の変性に従来から用いられてい
るものならば、いずれも使用できる。好ましい不飽和カ
ルボン酸の例は、マレイン酸、フマル酸などであり、マ
レイン酸が特に好ましい。好ましい誘導体の例は、無水
マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエ
ステルなどであり、無水マレイン酸が特に好ましい。変
性されるポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、高
密度ポリエチン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポ
リエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体などが
例示できるが、これらに限定されない。

【００１２】金属水酸化物（ｅ）は、樹脂組成物に難燃
性を付与するために配合される。金属酸化物の例として
は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化
カルシウムなどが例示できる。これらの金属酸化物の粒
子は、好ましくは、シランカップリング剤（例えば、ア
ミノシラン、ビニルシラン、エポキシシランなど）、チ
タネートカップリング剤、高級脂肪酸などにより、表面
処理されている。上記の表面処理剤は、インテグラルブ
レンド（配合剤として混合時に添加する）を行ない、添
加することもできる。

【００１３】本発明の内層用樹脂組成物には、従来電線
被覆用オレフィン系樹脂に通常配合される添加剤ならい
ずれも配合できる。そのような添加剤の例は、酸化防止
剤、金属不活性剤（例えば、銅害防止剤など）、加工助
剤（例えば、滑剤、ワックスなど）、着色剤、難燃助剤
（例えば、ホウ酸亜鉛、シリコン系難燃剤など）、帯電
防止剤等である。添加剤の量は、添加剤の種類に応じて
適宜選択すればよい。

【００１４】＜外層＞本発明の被覆電線の外層を形成す
るのはポリアミド樹脂である。ポリアミド樹脂は、従来
の電線被覆に用いられているものならいずれでもよい。
好ましいポリアミド樹脂の例は、ナイロン６、ナイロン
６６、ナイロン１１、ナイロン１２、ナイロン６１０、
ナイロン６１２、ポリアミドエラストマーなどである。
これらは、二種以上をブレンドして用いてもよい。

【００１５】ポリアミド樹脂には、耐衝撃剤（または柔
軟化剤）として、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、
アクリルゴム、ＮＢＲゴム、不飽和カルボン酸またはそ
の誘導体で変性されたポリオレフィン樹脂、可塑剤（例
えば、ポリエステル系可塑剤など）、またはこれらの混
合物がブレンドされていてよい。さらに、ポリアミド樹
脂には、窒素系難燃剤（例えば、メラミンシアヌレート
など）、難燃助剤（例えば、ホウ酸亜鉛、シリコン系難
燃剤など）、クレー、炭酸カルシウム、タルク、酸化防
止剤、金属不活性剤、加工助剤（例えば、滑剤など）、
着色剤等の添加剤が配合されてもよい。

【００１６】本発明の被覆電線は、内層および外層を、
従来既知のタンデムまたはコモン押出により、電線導体
上に押出被覆成形して製造することができる。内層及び
外層の厚さの比は、９：１〜１：９の範囲から任意に選
択することができるが、好ましくは５：５〜９：１の範
囲である。

【００１７】

【実施例】実施例１〜５及び比較例１〜５ 表１又は表２に示す樹脂及び添加剤を配合し、押出成形
機を用いて、同表に示す厚さの内層及び外層（合計厚さ
０．２ｍｍ）を圧縮導体ＩＳＯ ０．５sq（７／SB軟銅
線）に被覆し、被覆電線を作成した。

【００１８】得られた被覆電線について、以下の特性を
評価した。難燃性、引張強さ／伸び、及び耐摩耗性 それぞれＪＡＳＯ Ｄ ６１１に準拠して測定した。な
お、耐摩耗性は、荷重７Ｎにおいて１５０回以上を合格
とする。柔軟性 電線を折り曲げた時の手感触により判断した。加工性 電線端末から被覆を剥離した時の、ヒゲの形成の有無に
より判断した。熱変形性 被覆電線を１８０℃の雰囲気に１０分間放置した後、３
００ｇｆの荷重を１分間かけた時に、被覆が溶融し、導
体が露出するか否かで判定した。被覆が形状保持でき
ず、導体が露出した場合を不合格とした。結果を表１お
よび表２に示す。なお、表中の「部」は「重量部」であ
る。

【００１９】

【表１】

【００２０】

【表２】 注：１）エチレン−酢酸ビニル共重合体（東ソー株式会
社製ウルトラセン。メルトインデックス：２．４ｇ／１
０min．酢酸ビニル含量：２．５質量％）。 ２）直鎖状低密度ポリエチレン（日本ポリオレフィン株
式会社製ジェイレクス。メルトインデックス：０．８ｇ
／１０min．密度：０．９３５。デュロメータ硬さ：５
７）。 ３）ポリプロピレン(ブロック)（トクヤマ株式会社製。
デュロメータ硬さ：６５）。 ４）無水マレイン酸変性ポリプロピレン（日本ポリオレ
フィン株式会社製アドテックス）。 ５）ポリアミド樹脂１：ナイロン６；２：耐衝撃材入り
ナイロン６；３：ナイロン１２（いずれも宇部興産株式
会社製UBEナイロン）。 ６）キスマ（協和株式会社製）。 ７）メラミンシアヌレート（日産化学株式会社製）。 ８）老化防止剤１：ヒンダードフェノール系老化防止剤
（吉富製薬株式会社製）；２：アミン系老化防止剤（精
工化学株式会社製）。

【００２１】表２の結果から、以下のことが分かる。比
較例１のように、オレフィン系樹脂組成物の被覆（内
層）のみでは、熱変形性が劣る。比較例２のように、Ｅ
ＶＡの割合が高いと、耐摩耗性が劣る。比較例３のよう
に、高硬度樹脂（ポリプロピレン樹脂）および変性ポリ
オレフィン樹脂が含まれないと、耐摩耗性が劣る。比較
例４のように、ＥＶＡおよびＬＬＤＰＥが含まれない
と、柔軟性が劣る。比較例５のように、水酸化マグネシ
ウムが少なければ、難燃性が劣る。

フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｃ０８Ｌ 23/26 Ｈ０１Ｂ 7/34 Ｂ Ｈ０１Ｂ 7/18 7/18 Ｂ 7/17 Ｚ Ｆターム(参考） 4J002 BB03W BB03Y BB06X BB07X BB12Y BB21Z BF03X BG04X BG06X DE076 DE086 DE146 GQ01 5G313 AB02 AB03 AB09 AC02 AD03 AE02 AE05 5G315 CA03 CA04 CB02 CC09 CD02 CD04 CD09 CD14

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ポリオレフィン樹脂組成物からなる内
   層、およびポリアミド樹脂からなる外層により被覆され
   た絶縁電線であって、該ポリオレフィン樹脂組成物は、 （ａ）メルトインデックスが０．１〜５ｇ／１０min．
   であり、コモノマーの含有量が１０〜５５質量％であっ
   て、分子内に酸素原子を含むエチレン共重合体少なくと
   も５質量部、 （ｂ）メルトインデックスが０．１〜５ｇ／１０mi
   n．、密度が０．９２０〜０．９４５、デュロメータ硬
   さが５０〜６５である直鎖状低密度ポリエチレン少なく
   とも５質量部、 （ｃ）デュロメータ硬さが６０以上のポリオレフィン樹
   脂少なくとも５質量部、 （ｄ）不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性さ
   れたポリオレフィン樹脂少なくとも５質量部、および （ｅ）金属水酸化物 を含んでなり、（ｂ）の含有量は、（ａ）の含有量と等
   しいかまたはそれ以上であり、（ａ）〜（ｄ）の合計は
   １００重量部であり、（ｅ）の含有量は（ａ）〜（ｄ）
   の合計１００重量部に対して３０〜３００重量部である
   ことを特徴とする被覆電線。
2. 【請求項２】 内層の厚さ対外層の厚さの比は、１：９
   〜９：１である請求項１に記載の被覆電線。