JP2002103082A - ガスシールドアーク溶接用ワイヤ - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用ワイヤ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 能率を重要視した高入熱・高パス間温度の溶
接条件下において溶着金属の機械的性質を確保しなが
ら、横向き溶接のような入熱に制限があるため溶接欠陥
を生じ易い低入熱溶接条件下での溶接作業性を同時に満
足し得る溶接ワイヤを提供する。 【解決手段】 炭酸ガスシールドアーク溶接用ワイヤ
を、メッキ層を含んだ組成(質量比)で、C:0.005〜
0.09%、Si:0.65〜1.2%、Mn:1.5〜2.2%、Ti:0.15〜0.
30%、B:0.0005〜0.0025%、Cu:0.5%以下、K:0.0001〜
0.0030%、S:0.005〜0.025%、残部:実質的にFeからな
り、かつ、CE(1):0.45%以上、KEQ:0.02〜0.10とす
る。ここに、 KEQ=(50×K+0.5×S)/(Ti+Si+Al) CE(1)=C+Mn/6+Si/24

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軟鋼、490N/mm2および52
0N/mm2級高張力鋼板の炭酸ガスシールドアーク溶接に使
用するソリッドワイヤに係り、建築鉄骨の溶接施工にお
いて推奨される許容溶接条件の上限である溶接入熱40kJ
/cm、最高パス間温度350℃のような特に高入熱・高パス
間温度での溶接に使用されるガスシールドアーク溶接用
ワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】鋼構造物の溶接には、炭酸ガスシールド
アーク溶接が最も一般的な溶接方法として用いられてい
るが、その溶接条件は、溶接の高能率化のために高入熱
かつ高パス間温度(たとえば490N/mm2級高張力鋼板で40
kJ/cm入熱時で溶接線近傍の温度350℃程度でも強度が低
下しない)を採用する方向に移ってきている。このよう
な高入熱・高パス間温度条件の溶接では、溶接金属の強
度が低下するとともに衝撃特性(靱性)も劣化する。こ
の問題を解決する手段として、従来から、Ti、Bを添加
することが行われている。例えば、特公昭43-12258号公
報には、ワイヤ中にSi、Mn等の脱酸性元素を含有すると
もに、Al、Ti、ZrおよびVの中の1種以上を含有し、さら
にBを含有したワイヤが開示されている。また、特公昭5
5-149797号公報には、Bを基本成分として含有し、さら
にTi、Moの1種以上を含有するワイヤが提案されてい
る。しかしながら、上記提案のTi、B含有ワイヤは、高
パス間温度で溶接する場合を想定したものではなく、そ
のため、高入熱・高パス間温度で溶接した場合には溶接
金属の機械的性質が不十分となる。
【0003】かかる問題を解決し、高入熱・高パス間温
度での溶接条件に対応するために、特開平10-230387公
報では、C、Si、Mn、Ti、B、Sを含有し、BとTiの比率
およびBとSの積を規制したワイヤが、特開平11-90678号
公報ではTi、BおよびAl、Zrの1種以上を含有し、さらに
C、Si、Mn、Moを所定量含むワイヤが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の方法では、高入熱・高パス間温度条件で溶接した場合
に、溶接金属の機械的特性の改善が期待されるが、横向
き溶接のように10kJ/cm以下になるような低入熱溶接条
件では、溶接作業性、すなわちビード外観が悪く、上記
2つの条件、すなわち高入熱・高パス間温度条件と低入
熱溶接条件とを同時に満足するワイヤは提案されていな
かった。これは、実用上求められる広い溶接条件に対す
る溶接作業性についての考慮が払われておらず、いいか
えれば、高入熱、高パス間温度条件における溶接金属の
機械的性質の確保を重要視するあまり、溶接作業性、特
に健全な溶接部を容易に得るための溶接作業性が軽視さ
れる傾向にあったためである。
【0005】本発明は、このような従来技術の問題点を
解決することを目的とし、能率を重要視した高入熱・高
パス間温度の溶接条件下において溶接金属の機械的性質
を確保しながら、横向き溶接のような入熱に制限がある
ため溶接欠陥を生じ易い低入熱溶接条件下での溶接作業
性を同時に満足し得る溶接ワイヤを提供することを目的
とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、大入熱溶
接における溶接金属の機械的特性の確保と低入熱溶接に
おける溶接ビード形状に及ぼす合金元素の影響について
総合的な検討を行い、 大入熱溶接における溶接金属の機械的性質を確保する
ためには、ある程度以上に合金元素を含有させることが
必要であること、 溶接ビード形状を滑らかにするにはKやSの添加が有効
であること、特に、TiやSi等のビード外観を劣化させる
元素の含有量に応じて添加することが有効であることを
見出し、本発明を完成した。
【0007】すなわち、本発明に係る炭酸ガスシールド
アーク溶接用ワイヤは、メッキ層を含んだ組成が、質量
比で、C:0.005〜0.09%、Si:0.65〜1.2%、Mn:1.5〜
2.2%、Ti:0.15〜0.30%、B:0.0005〜0.0025%、Cu:0.5
%以下、K:0.0001〜0.0030%、S:0.005〜0.025%、残
部:実質的にFeからなり、かつ、CE(1):0.45%以上、KE
Q:0.02〜0.10となっている。ここに、 KEQ=(50×K+0.5×S)/(Ti+Si+Al) CE(1)=C+Mn/6+Si/24 である。
【0008】また、本発明に係る炭酸ガスシールドアー
ク溶接用ワイヤはCr、MoおよびNiを含有することができ
る。その場合の組成は、質量比で、C:0.005〜0.09%、
Si:0.65〜1.2%、Mn:1.5〜2.2%、Ti:0.15〜0.30%、
B:0.0005〜0.0025%、Cu:0.5%以下、K:0.0001〜0.003
0%、S:0.005〜0.025%、さらにCr:0.30%以下、Mo:0.5
0%以下、Ni:2%以下のうち1種または2種以上を含有し、
残部:実質的にFeからなり、かつ、CE(2):0.45%以上、
KEQ:0.02〜0.10となっている。ここに、 KEQ=(50×K+0.5×S)/(Ti+Si+Al) CE(2)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4 である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る炭酸ガスシー
ルドアーク溶接用ワイヤの実施形態を、その含有成分の
限定理由と併せて具体的に説明する。本発明に係る炭酸
ガスシールドアーク溶接用ワイヤは、質量比で、以下に
説明する諸元素を含有する。
【0010】C:0.005〜0.09% Cは、溶接金属の強度を確保するのに必要であり、脱酸
元素としての効果もある。0.005%未満では溶接金属の強
度が不足し、一方0.09%を超えると靱性が低下する。こ
のため、0.005%以上、0.09%以下とした。
【0011】Si:0.65%〜1.2% Siは脱酸元素として、CO2溶接やMAG溶接ワイヤに不可欠
な元素であるが、0.65%未満では溶接時の脱酸効果が不
十分となりブロホールが発生しやすい。一方、1.2%を超
えると、溶接金属中の含有量が過多となり、靱性が劣化
するとともに、溶接の際の溶融金属の粘性が大きくなり
すぎ、低入熱接時のビード外観が劣化し溶接欠陥を生じ
易くなる。したがって0.65%以上、1.2%以下とした。
【0012】Mn:1.5〜2.2% MnはSiとともに脱酸元素として不可欠な元素であるだけ
でなく、溶接金属の機械的性質を向上させる元素であ
る。その含有量が1.5%未満では、溶接金属中での含有量
が不足して十分な強度、靱性を得ることができない。し
かし、2.2%を超えると溶接金属中での含有量が過多とな
り靱性が劣化する。このため、1.5%以上、2.2%以下とし
た。
【0013】Ti:0.15〜0.30% Tiは、本発明の対象とする比較的入熱の高いガスシール
ドアーク溶接用ワイヤおいて、アークを安定させてスパ
ッタを減少させ、ブローホールの発生を防止させる効果
があり、高電流を用いた大入熱溶接では不可欠の元素で
ある。また、溶接金属の靱性を向上させる効果もある。
しかし、0.15未満ではこの効果に乏しく、一方、0.30%
を超えると、溶接の際の溶融金属の粘性が大きくなり過
ぎ、低入熱時のビード外観が劣化し、溶接欠陥を生じ易
くなる。したがって0.15%以上、0.30%以下に限定する。
【0014】B:0.0005〜0.0025% Bは溶接金属組織において、粗大なフェライトの生成を
抑制して組織を微細化し、靱性を向上するのに有効であ
る。しかし、ワイヤ中のB含有量が0.0005%未満では、こ
の効果を得るのに十分でない。一方、0.0025%を超えて
添加しても、さらなる靱性改善効果には乏しく、高温割
れを生じ易くさせる不利がある。したがって、0.0005%
以上、0.0025%以下とした。
【0015】Cu:0.5%以下 Cuは、アーク溶接用ワイヤの外面に施されるCuメッキ層
等から溶接金属中に移行する元素である。その量があま
りに多いときには、溶接ビード割れの原因になる。した
がって、その量はメッキとして施されている分を含んで
0.5%以下に限定する。
【0016】CE(炭素当量)は:0.45%以上とし、特別
に合金を添加しない場合には、 CE(1)=C+Mn/6+Si/24 によって定義できるパラメータである。CE(1)が0.45%未
満では高入熱・高パス間温度条件での溶接を行ったと
き、溶接金属の強度が不十分となるため0.45%以上が必
要である。なお、一般的には0.8%を超えないことが好ま
しい。0.8%を超えると、低入熱溶接を行ったとき溶接金
属の硬化が著しく、耐割れ性、靱性が低下する。なお、
Ni、CrおよびMoを含む請求項2記載の発明においては、
上記炭素当量(CE)にはこれらの元素の影響を考慮し
て、 CE(2)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4 とする。CE(2) もCE(1)と同様の理由により0.45%以上と
した。
【0017】K:0.0001〜0.0030% 本発明においてはKが添加される。Kはビード表面を滑ら
かにするのに効果的な元素であるが、0.0001%未満では
この効果に乏しく、一方、0.0030%を超えと溶接の際の
アークが不安定になる。したがって、Kは、0.0001%以
上、0.0030%以下の範囲で添加するのが好ましい。な
お、Kは、主としてメッキ層中から添加される。
【0018】S:0.005〜0.025% Sは、鋼に不可避的に含有される不純物であるが、0.025
%超えると、溶融金属の鋼割れ感受性を害することがあ
る。しかしながら、Sには溶接ビードの母材とのなじみ
を良くして形状を滑らかにする効果があり、低減しすぎ
ると溶接作業性を害することがあるため、0.005%以上、
0.025%以下の範囲とするのが好ましい。
【0019】KEQ:0.02〜0.10 KEQは、 KEQ=(50×K+0.5×S)/(Ti+Si+Al) によって定義されるパラメータであり、上記KおよびSの
含有量を、ワイヤ中の溶接ビード外観劣化原因元素であ
るTi、SiおよびAlの含有量と結びつけるものである。す
なわち、KおよびSの含有量は、ワイヤ中の溶接ビード外
観劣化原因元素であるTi、SiおよびAlの含有量に比例さ
せて含有させるのが好ましく、そのため上記式で定義さ
れるKEQを0.02〜0.10の範囲にとるのが好ましい。上記K
EQが小さすぎるときには溶接ビード外観が改善されず、
一方、大きすぎるときには、大入熱溶接の際にかえって
溶接ビードの形状が劣化する。
【0020】上記成分のほかに、主に溶接金属の強度を
向上させる目的でCr、Mo、Niを添加してもよい。それら
の成分はCr:0.3%以下、Mo:0.50%以下、Ni:2%以下が
望ましい。
【0021】上記成分のほかの残部は、実質的にFeおよ
び不可避的不純物である。不可避的不純物としては、本
発明に係る鋼を溶製する際に添加した脱酸材であるAl、
Ca等のほかN等が挙げられる。これらの量は通常鋼に含
まれる範囲であれば特に問題がないが、Alは、0.02%以
下、Caは20ppm以下、好ましくは10ppm以下、Nは80ppm以
下、好ましくは50ppm以下に制限するのがよい。
【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
表1に示す組成を有する規格記号SM490Aの鋼板を用い、
表 2に示す合金成分を有するワイヤを用いて、表3に示
す条件で溶接試験を行った。なお、溶接部の開先形状は
図1(溶接条件Aのとき)および図2(溶接条件Bのとき)
に示すとおりである。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】試験結果は、表4に示す。試験No.1〜4およ
び6は本発明請求項1に記載の発明に対応し、試験No.5は
本発明請求項2に記載の発明に対応するが、これらの場
合、大入熱・高パス間温度溶接条件(溶接条件Aのと
き)でも引張強度が520級ワイヤとして十分な強度と靱
性を有する溶接金属が得られ、低入熱溶接(溶接条件B
のとき)におけるビード外観も良好であった。また、こ
れに対して試験No.7〜9の比較例においては化学組成が
本発明の条件を外れており、十分な強度が得られなかっ
たり、低入熱溶接におけるビード外観が不良であったも
のであり、また、不純物等のかみ込みが発生し溶接欠陥
の発生が避けられなかった。
【0027】
【表4】
【0028】
【発明の効果】本発明に係る溶接ワイヤを用いれば、高
入熱・高パス間温度の溶接条件において十分な強度と靱
性を有する溶接金属が得られるとともに、横向き溶接の
ような小入熱溶接において良好な溶接性のもとに溶接を
行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実験に用いた下向き溶接用開先の模
式図である。
【図2】 本発明の実験に用いた横向き溶接用開先の模
式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 時乗 健次 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 佐々 仁孝 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メッキ層を含んだ組成が、質量比で、
    C:0.005〜0.09%、Si:0.65〜1.2%、Mn:1.5〜2.2%、T
    i:0.15〜0.30%、B:0.0005〜0.0025%、Cu:0.5%以下、
    K:0.0001〜0.0030%、S:0.005〜0.025%、残部:実質的
    にFeからなり、かつ、CE(1):0.45%以上、KEQ:0.02〜
    0.10であることを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶
    接用ワイヤ。ここに、 CE(1)=C+Mn/6+Si/24 KEQ=(50×K+0.5×S)/(Ti+Si+Al)
  2. 【請求項2】 メッキ層を含んだ組成が、質量比で、
    C:0.005〜0.09%、Si:0.65〜1.2%、Mn:1.5〜2.2%、T
    i:0.15〜0.30%、B:0.0005〜0.0025%、Cu:0.5%以下、
    K:0.0001〜0.0030%、S:0.005〜0.025%、さらにCr:0.
    30%以下、Mo:0.50%以下、Ni:2%以下のうちの1種また
    は2種以上を含有し、残部:実質的にFeからなり、か
    つ、CE(2):0.45%以上、KEQ:0.02〜0.10であることを
    特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用ワイヤ。ここ
    に、 CE(2)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4 KEQ=(50×K+0.5×S)/(Ti+Si+Al)
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