JP2002096193A - Pbを含まないSn合金系ハンダ用活性化ロジンフラックスの製造方法 - Google Patents

Pbを含まないSn合金系ハンダ用活性化ロジンフラックスの製造方法

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JP2002096193A JP2000286828A JP2000286828A JP2002096193A JP 2002096193 A JP2002096193 A JP 2002096193A JP 2000286828 A JP2000286828 A JP 2000286828A JP 2000286828 A JP2000286828 A JP 2000286828A JP 2002096193 A JP2002096193 A JP 2002096193A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi系など
の、所謂Pb−freeハンダに用いた際、材料劣化、
あるいは、耐久性障害を起こすことがなく、また、その
高い熔融温度における使用にも耐え、十分な清浄化作用
を有する新規な活性化ロジンフラックスの製造方法を提
供する。 【解決手段】 原料ロジンに、アルミナ(Al23)と
他の金属酸化物とから構成される混合酸化物の微粉末
と、前記混合酸化物の微粉末を担体とし、担体表面に水
素化脱硫反応に対する固体触媒を担持してなる脱硫触媒
微粒子とを添加し、水素ガス気流下、加熱して、水素化
脱硫により原料ロジンに含まれるイオウ分を除去すると
ともに、前記混合酸化物の微粉末表面を水素還元して、
付活性した固体酸とすることで、活性化ロジンフラック
スとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Pbを含まないS
n合金ハンダ用活性化ロジンフラックスと、その製造方
法に関する。より具体的には、従来のSn−Pbハンダ
に代わり、今後電子工業分野において使用されるであろ
う、Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi系など、Pb
を含まないSn合金ハンダ、所謂Pb−freeハンダ
を用いる際ハンダ付け用フラックスとして利用する、ロ
ジンを基剤とする活性化フラックスの製造方法に関す
る。所謂Pb−freeハンダ、特には、構成成分にA
gを含むSn−AgあるいはSn−Ag−Bi系ハンダ
に適するハンダ用活性化ロジンフラックスの製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】ハンダ付け作業の工程は、電子回路製造
において、不可欠な工程である。その際、ハンダ合金自
体の表面酸化皮膜、あるいは、ハンダ付けされるプリン
ト回路基板上の銅箔表面の自然酸化被膜を除去し、接合
する金属面へのハンダの濡れや馴染みを良好とする必要
がある。この接合面の清浄化前処理として、ハンダ付け
ペーストまたはフラックスと呼ばれるものが用いられて
いる。ハンダ付けでは、ハンダ合金の熔融とロウ付け接
合とを同時に行うため、この加熱時にフラックス処理が
なされる。
【0003】従来、ハンダ付けには、ハンダ材料として
Sn−Pb合金が利用されてきた。このSn−Pb合金
を利用するハンダ付けでは、古くから、ハンダ付け用ペ
ーストとも呼ばれるフラックス、例えば、塩化亜鉛微粉
末をパラフィンに懸濁したもの、あるいは、塩化アンモ
ニウム微粉末をロジンに懸濁したものが利用されてい
る。一般には、このフラックス(ハンダ付け用ペース
ト)中に懸濁されている無機成分が酸化被膜を浸食破壊
し、一方、有機成分は、前記の過程で露出する金属面を
覆い、空気との接触を断って再び酸化膜が形成されるの
を防止する役割を持つとされている。
【0004】すなわち、酸化被膜の除去は、次ぎに述べ
る過程により達成されると考えられている。例えば、塩
化亜鉛微粉末をパラフィンに懸濁したフラックス(ハン
ダ付け用ペースト)では、微粉末状の塩化亜鉛が酸化錫
などに作用して、パラフィンは、空気との接触を断つ。
例えば、塩化亜鉛は酸化錫に作用して、錫の塩化物に変
換して、亜鉛の酸化物となる結果、Pb−Snハンダ合
金上の酸化被膜を浸食破壊する機構などが想定される。
【0005】また、塩化アンモニウム微粉末をロジンに
懸濁したフラックス(ハンダ付け用ペースト)でも、塩
化アンモニウムが酸化錫に作用する無機成分であり、ロ
ジンは、前記のパラフィンと同様に、空気との接触を断
つ役割を持つ有機成分とも考えられる。その場合、例え
ば、塩化アンモニウムが酸化錫に作用して、一旦塩化錫
などへと変換して、表面から溶出させる。その後、ロジ
ンの主成分である樹脂酸、アビエチン酸などは、溶出し
た塩化錫に対して、カルボン酸として作用して、カルボ
ン酸塩に変換する。一方、塩化錫から遊離する塩化物イ
オン種は、塩化アンモニウムを再生する。生成した錫の
アビエチン酸塩などは、融解しているロジン中に溶解す
る。結果として、酸化錫は、錫のアビエチン酸塩に変換
され、Pb−Snハンダ合金上の酸化被膜が除去される
とも考えられる。銅表面においても、類似する反応によ
り酸化被膜の除去が達成されると考えられる。
【0006】従って、塩化アンモニウム微粉末をロジン
に懸濁したフラックス(ハンダ付け用ペースト)では、
塩化アンモニウムは、フラックス活性増強作用を有する
無機成分となっている。アビエチン酸などのロジン中に
含まれる樹脂酸は、水に不溶であり、その酸強度は高く
ないが、塩化アンモニウムは、仮に、アンモニアと塩化
水素として機能すると、酸強度を示すものとなる。ロジ
ン自体の酸性は、含まれているアビエチン酸などの樹脂
酸がカルボン酸として、プロトン供与体として作用する
結果で得られるが、塩化アンモニウムなどを添加する
と、フラックス全体としては、酸強度の増強が図られ
る。
【0007】このように、従来のフラックスにおいて、
基剤として利用されるロジンは、無機成分微粒子を分散
させる溶媒の機能を有する以外に、ロジンの主成分であ
る樹脂酸、アビエチン酸とその類縁体は、酸化被膜の金
属酸化物をアビエチン酸塩などに変換し、そのアビエチ
ン酸塩を溶解する溶媒の機能をも有する。しかも、樹脂
酸、アビエチン酸とその類縁体は、沸点は280℃以上
と高沸点であり、上記の反応をおこさせる温度、例え
ば、リフロー温度近くでも、空気を遮断するという第三
の役割にも適したものである。ロジン自体、100℃程
度で軟化するが、常温では固体であり、塩化アンモニウ
ム微粉末を均一に分散させ、その分散状態を保持する上
でも、好ましいものである。
【0008】従来、ハンダ材料として利用されてきたS
n−Pb合金は、リフローした際、周囲に若干鉛あるい
は鉛化合物を微細な浮遊飛沫として放散する懸念を持っ
ている。この鉛あるいは鉛化合物、例えば、酸化鉛、二
塩化鉛、四塩化鉛などは、毒性物質であり、微少量であ
っても、長期間摂取し、体内への蓄積すると、健康への
悪影響を与えるものである。電子回路製造におけるハン
ダ付け作業の工程自体では、これら鉛あるいは鉛化合物
に作業者が曝露されないように、十分に配慮された管理
環境下で作業が行われる。しかしながら、この管理の網
を逃れる極微細な浮遊微粉末も僅かにはあり、また、除
去・回収された鉛あるいは鉛化合物の廃棄の問題は依然
として残る。さらに、製品として出荷された電子回路
は、やがて廃棄されるが、その中に残るSn−Pb合金
は、焼却処理した際、ハンダ付け作業と同様に鉛あるい
は鉛化合物を発生させ、環境汚染の要因となることも懸
念されている。
【0009】上記の問題を抜本的に回避するため、ハン
ダ材料としてSn−Pb合金の使用をやめ、それに代わ
る、Pbを含まないSn合金系ハンダ(所謂Pb−fr
eeハンダ)、具体的には、Sn−AgあるいはSn−
Ag−Bi系ハンダなどの使用が進んでいる。これらの
ハンダ材料では、主成分のSnに対して、その融点を下
げるため、Ag、Biなどを加えた合金となっている
が、これらの酸化物をも効果的に除去できるフラックス
が必要となる。従来、Sn−Pb合金に利用されていた
ロジンを基剤とするフラックスでは、Pb−freeハ
ンダ、例えば、Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi系
ハンダに用いた際、材料劣化、あるいは、耐久性障害を
起こすことが判明した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、従来の
Sn−Pb合金に利用されていたロジンを基剤とするフ
ラックスは、Pb−freeハンダ、例えば、Sn−A
gあるいはSn−Ag−Bi系ハンダに用いた際、上述
する材料劣化、あるいは、耐久性障害を起こすという問
題を持つため、Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi系
ハンダなどのPb−freeハンダに適合する新たなフ
ラックスの開発が必要と考えた。加えて、従来のSn−
Pb合金と比較して、Sn−AgあるいはSn−Ag−
Bi系などのPb−freeハンダは、その熔融温度が
高いので、より高いリフロー温度においても、高い作業
性を維持でき、また、作業環境に対しても悪影響を及ぼ
すことのない新たな活性化ロジンフラックスの開発が望
まれる。
【0011】本発明は、前記の課題を解決するもので、
本発明の目的は、Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi
系などのPb−freeハンダに用いた際、材料劣化、
あるいは、耐久性障害を起こすことがなく、また、その
高い熔融温度における使用にも耐え、十分な清浄化作用
を有する新規な活性化ロジンフラックスと、その活性化
ロジンフラックスを高い生産性で、かつ、簡便な工程に
より製造する方法を提供することにある。また、同時に
作業環境に対しても悪影響を及ぼす飛散成分などを含ま
ない新規な活性化ロジンフラックスと、それを簡便な工
程により製造する方法を提供することをも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課
題を解決すべく、鋭意研究・検討を進め、後述するよう
に、従来のロジンを基剤とするフラックスをSn−Ag
あるいはSn−Ag−Bi系などのPb−freeハン
ダに用いた際、材料劣化、あるいは、耐久性障害を起こ
す要因を特定し、その要因を除くことにより、Sn−A
gあるいはSn−Ag−Bi系などのPb−freeハ
ンダに対しても、材料劣化、あるいは、耐久性障害の発
生を抑制した活性化ロジンフラックスとすることができ
ることを見出した。具体的には、従来のSn−Pb合金
ハンダ用ロジンフラックスにおいては、その活性化の目
的で添加されている、フラックス活性増強作用を有する
無機成分として、塩化アンモニウムなどが利用されてい
たが、これに由来する塩化物イオンなどのハロゲン(塩
素、臭素、あるいはヨウ素)が、材料劣化、あるいは、
耐久性障害を起こす要因となっており、また、基剤に用
いるロジン中には、若干量のイオウ分が、例えば、SO
3H、SO4 2-なとの形状で残留しており、このイオウ分
も材料劣化、あるいは、耐久性障害を起こす要因となり
得ることを見出した。例えば、Sn−AgあるいはSn
−Ag−Bi系などのPb−freeハンダを用いた
際、銀のハロゲン化物、硫化物を生成し、材料劣化、あ
るいは、耐久性障害を起こす要因となり得ることを見出
した。従って、これらの要因物質を排除し、フラックス
活性増強作用を有する無機成分として、固体酸として機
能する、アルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから
構成される混合酸化物を利用し、一方、基剤に用いるロ
ジンは、脱硫処理を施し、含有されるイオウ分を除去
し、その脱硫処理の際、前記混合酸化物を担体とする脱
硫触媒を利用した水素化脱硫を採用することで、用いた
脱硫触媒をそのまま含有したロジン系基剤を用い、固体
酸として機能する混合酸化物が添加・分散されてなる活
性化ロジンフラックスとなるという着想に達し、本発明
を完成するに至った。
【0013】すなわち、本発明の活性化ロジンフラック
スの製造方法は、Pbを含まないSn合金系ハンダ用活
性化ロジンフラックスを製造する方法であって、前記活
性化ロジンフラックスは、アビエチン酸を主成分として
含有するロジン系基剤とフラックス活性増強作用を有す
る無機成分とを含み、原料ロジン中に含有されるイオウ
を除去する脱硫処理の工程と、前記脱硫処理を施してな
るロジン系基剤中に添加・分散されるフラックス活性増
強作用を有する無機成分として、アルミナ(Al23
と他の金属酸化物とから構成される混合酸化物の微粉末
を前記原料ロジンに添加する工程とを含み、前記脱硫処
理では、脱硫触媒を利用して、原料ロジンを加熱下、水
素ガス気流中で水素化脱硫を施し、また、前記脱硫触媒
には、フラックス活性増強作用を有する無機成分として
も利用される前記アルミナ(Al23)と他の金属酸化
物とから構成される混合酸化物の微粉末を担体とし、こ
の微粉末状の担体表面に水素化脱硫反応に対する固体触
媒を担持してなる脱硫触媒を用いることを特徴とするP
bを含まないSn合金系ハンダ用活性化ロジンフラック
スの製造方法である。その際、前記フラックス活性増強
作用を有する無機成分を添加・分散する工程の後、前記
ロジンに添加・分散されている、アルミナ(Al23
と他の金属酸化物とから構成される混合酸化物の微粉末
を、加熱下、水素ガス気流中で処理する工程と、ロジン
系基剤中に含まれている蒸発性不純物有機分子を、水素
ガス気流中、加熱して蒸散除去する工程とを設け、水素
ガス気流中、加熱してなされる、この二つの工程を同一
の工程として実施することを特徴とする工程を用いると
好ましい。
【0014】加えて、前記水素化脱硫処理の工程と、前
記混合酸化物微粉末の水素気流中、加熱処理の工程およ
び蒸発性不純物有機分子の水素気流中、加熱蒸散・除去
の工程とは、同一のオートクレーブ装置を用いて、これ
ら三種の処理工程を一連に実施することが好ましい。
【0015】前記の工程構成を採用する際、前記混合酸
化物微粉末の水素気流中、加熱処理の工程および蒸発性
不純物有機分子の水素気流中、加熱蒸散・除去の工程に
おいて、前記オートクレーブ装置中、前記ロジンを保持
する容器底部から、水素ガスを加熱中、液状となる前記
ロジンをその気泡で攪拌するように噴射して導入する手
法を利用することがより好ましい。
【0016】例えば、上記本発明の活性化ロジンフラッ
クスの製造方法において、前記アルミナ(Al23)と
他の金属酸化物とから構成される混合酸化物は、二成分
系混合酸化物のAl23−Cr23またはAl23−N
iOであり、前記混合酸化物の微粉末は、それを構成す
る二成分の水酸化物の微粉末を混合し、その混合物を酸
素を含む雰囲気ガス中、100〜200℃の範囲に選択
される所定の温度で加熱し、脱水によって微粉末状の混
合酸化物としたものであるという構成をとることができ
る。
【0017】従って、上記本発明の活性化ロジンフラッ
クスの製造方法において、前記微粉末状の担体表面に水
素化脱硫反応に対する触媒を担持してなる脱硫触媒は、
前記担体に用いるアルミナ(Al23)と他の金属酸化
物とから構成される混合酸化物は、二成分系混合酸化物
のAl23−Cr23またはAl23−NiOであり、
また、担持される水素化脱硫反応に対する固体触媒は、
Co−Mo混合酸化物系触媒であり、前記Al23−C
23またはAl23−NiOの二成分系混合酸化物微
粉末と、微粉末状のCoの水酸化物およびMoの水酸化
物とを混合し、その混合物を酸素を含む雰囲気ガス中、
100〜200℃の範囲に選択される所定の温度で加熱
し、脱水によってCo−Mo混合酸化物がAl23−C
23またはAl23−NiOの二成分系混合酸化物担
体上に担持されてなる複合体の微粉末であるという構成
とすることができ、この構成はより好ましい態様とな
る。
【0018】また、本発明の活性化ロジンフラックスの
製造方法においては、前記混合酸化物微粉末の水素気流
中、加熱処理の工程における加熱温度は、200℃を中
心に、その前後30℃の範囲内に選択することが好まし
い。一方、本発明の活性化ロジンフラックスの製造方法
においては、前記混合酸化物微粉末の水素気流中、加熱
処理の工程における、水素圧は、1〜3気圧の範囲に選
択することが好ましい。
【0019】本発明の活性化ロジンフラックスの製造方
法は、更に、製造された活性化ロジンフラックスを、最
終的に窒素ガスを満たす容器内に封入する工程を設ける
ことができ、前記の付加的な工程を設けると一般に、よ
り好ましいものとなる。
【0020】本発明のPbを含まないSn合金系ハンダ
用活性化ロジンフラックスは、ここに述べた様々な態様
・構成をとる、本発明の活性化ロジンフラックスの製造
方法により製造されるPbを含まないSn合金系ハンダ
用活性化ロジンフラックスである。
【0021】すなわち、上記の製造方法で得られる本発
明のPbを含まないSn合金系ハンダ用活性化ロジンフ
ラックスは、上記の水素化脱硫処理を施すことにより、
原料ロジン中に含まれているイオウ分が除去された、ア
ビエチン酸を主成分として含有するロジン系基剤中に、
その水素化脱硫処理に際して、脱硫触媒とした、アルミ
ナ(Al23)と他の金属酸化物とから構成される混合
酸化物の微粉末を担体とし、その上に脱硫触媒として利
用される固体触媒物質を担持した複合体微粒子がそのま
ま含まれており、この複合体微粒子の担体部、アルミナ
(Al23)と他の金属酸化物とから構成される混合酸
化物微粉末は、フラックス活性増強作用を有する微粉末
状の無機成分として機能し、必要に応じて、原料ロジン
へそれを補完する量の混合酸化物の微粉末を添加するこ
とで、合計すると必要量の混合酸化物微粉末が分散され
た活性化ロジンフラックスとなったものである。
【0022】なお、原料ロジンなどに由来する、蒸発性
不純物有機化合物の蒸散・除去処理は、Pb−free
ハンダ、例えば、Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi
系ハンダの熔融温度およびそれ以下の温度において蒸発
性を示す、蒸発性有機化合物不純物を除去する処理を意
味する。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明のSn−AgあるいはSn
−Ag−Bi系などのPb−freeハンダ用活性化ロ
ジンフラックスは、従来Sn−Pbハンダ用ロジン系フ
ラックスをSn−AgあるいはSn−Ag−Bi系など
のPb−freeハンダに転用した際、材料劣化、耐久
性障害を引き起こす要因と特定される因子が除去された
ものである。さらには、フラックス活性を増強する目的
で添加・分散される無機成分として、Sn−Agあるい
はSn−Ag−Bi系などのPb−freeハンダに適
するものを添加し、より好ましい活性化フラックスとし
たものであり、本発明の製造方法を利用することで、よ
り簡便に製造することができるものである。
【0024】以下に、本発明のSn−AgあるいはSn
−Ag−Bi系などのPb−freeハンダ用活性化ロ
ジンフラックスにおいて達成された改善点、その改善効
果を生む作用について、以下に詳しく説明する。加え
て、その改善点を持たせるため、本発明の活性化ロジン
フラックスの製造方法において、その一連の工程にも、
対応した工夫がなされている。その製造工程、その工程
手順、ならびに、各工程の持つ作用に関しても、併せて
説明する。
【0025】先ず、本発明者らが検討・研究により判明
させた、従来Sn−Pbハンダ用ロジン系フラックスを
Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi系などのPb−f
reeハンダに転用した際、材料劣化、耐久性障害を引
き起こす要因について、簡単に述べる。
【0026】上でも説明したとおり、従来のロジン系フ
ラックスは、マツ科植物から得られる樹脂油のうち、精
油などの揮発性物質を留去した後の残留樹脂であるロジ
ンを基剤とし、そのフラックス活性を増強するための無
機成分として、塩化アンモニウム微粉末などを添加・分
散したものである。フラックス活性、すなわち、酸化被
膜の除去は、加熱状態において、最終的には、金属酸化
物がアビエチン酸によりアビエチン酸塩とされ、液状と
なっているロジン中に溶出されることで得られる。添加
される無機成分、例えば、塩化アンモニウムは、プロト
ン供与体となることで、フラックス活性の増強を図るも
のである。
【0027】これら基剤ロジン以外の成分のうち、Sn
−AgあるいはSn−Ag−Bi系などのPb−fre
eハンダ用フラックスとして用いた際、問題となる成分
の特定を行った。そのため、従来のロジン系フラックス
に関して、蛍光X線スペクトルを測定して、含まれる不
純物元素を分析した。
【0028】従来の実用に供せられているSn−Pbハ
ンダ用ロジン系フラックスについて、蛍光X線スペクト
ルを測定すると、図3の(B)に示す測定例に見られる
ように、塩素ならびに臭素を含有することが判る。加え
て、イオウが含有されていることも見出された。同時
に、基剤として利用されている粗精製ロジンについて、
蛍光X線スペクトルを測定すると、図1の(B)に示す
測定例に見られるように、塩素ならびに臭素は観測され
ないが、イオウが含有されていることが見出された。
【0029】この比較から、従来の実用フラックスに含
まれる塩素、臭素は、従来のロジン系フラックスにおけ
るフラックス活性を増強している成分に由来するもので
あることが判明した。また、高温(ハンダ付け温度)、
例えば、250℃においては、図3の(A)に模式的に
示すように、H+Cl-やH+Br-のような状態を形成して、プ
ロトン供与体として機能すると想定される。これらのプ
ロトン供与能が、フラックス活性を増強していると考え
られる。
【0030】このように、Sn−Pbハンダ用ロジン系
フラックスにはハロゲン化物イオン、通常、塩化物イオ
ン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)が含まれているため、
Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi系などのPb−f
reeハンダに転用すると、主にAgとCl-やBr-等のハ
ロゲン化物イオンから銀ハロゲン化物が生成する。この
銀ハロゲン化物の生成が、材料劣化や耐久性障害の主要
な要因となっていることを見出した。
【0031】本発明の活性化ロジンフラックスの製造方
法により得られる活性化ロジンフラックスでは、この銀
ハロゲン化物の生成を防止するため、フラックス中にハ
ロゲン化物イオンを構成要素として含む化合物を含有し
ないようにしている。具体的には、従来のSn−Pbハ
ンダ用ロジン系フラックスでは、フラックスの活性化を
行う無機成分として、ハロゲン化物イオンを含み、プロ
トン供与体としても機能する塩化アンモニウム微粉末な
どを添加・分散しているが、本発明の活性化ロジンフラ
ックスでは、フラックスの活性化を行う無機成分とし
て、アルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから構成
される混合酸化物微粉末を利用する。このアルミナ(A
23)と他の金属酸化物とから構成される混合酸化物
は、固体酸としての機能を有しており、この固体酸微粉
末をロジン系基剤中に分散することでフラックス全体の
酸強度の増強を図り、活性化ロジンフラックスとしてい
る。
【0032】次いで、従来の実用フラックスを、Sn−
AgあるいはSn−Ag−Bi系などのPb−free
ハンダ用フラックスとして用いた際、基剤ロジンに由来
する不純物成分のうち、問題となる成分の特定を行っ
た。上述したように、基剤として利用する粗精製ロジン
には、イオウが含有されている。この粗精製ロジン中に
含有されるイオウ成分を特定するため、粗精製ロジンの
FT−IRスペクトルを測定した。例えば、図1の
(A)に示す、粗精製ロジンをエタノールに溶解した試
料のFT−IRスペクトルの測定例にも見られるよう
に、本来アビチエン酸分子にはない、SO4 2-ならびに
SO3 -に由来する振動に帰属される吸収が観測された。
この結果から、粗精製ロジン中にはイオウ分が不純物と
して含まれ、少なくとも、SO4 2-ならびにSO3 -を相
当量、すなわち、FT−IRスペクトルの検出にかかる
程度あることが判明した。
【0033】従来の実用フラックス、つまり、Sn−P
bハンダ用ロジン系フラックスについても、常温におい
て、FT−IRスペクトルを測定した。例えば、図2の
(B)に示す測定例に示されるように、やはり、SO4
2-に由来する振動、加えて、SO3Hに由来する振動が
観測された。
【0034】この結果に基づき、従来のロジン系フラッ
クスにおいて、原料の粗精製ロジン自体に含まれる不純
物イオウは、どのような状態で残留しているかを検討し
た。検討した結果、図2の(A)に模式的に示すよう
に、不純物イオウは、常温において、遊離したS
4 2-、SO3Hに加えて、一部アビチエン酸分子内にス
ルホンとして存在することが予測された。すなわち、イ
オウ成分のうち、相当部分は、有機分子中、例えば、ア
ビチエン酸の骨格上にスルホン(−SO2−)として結合
していると考えられる。また、スルホ基(−SO3H)やス
ルホオキシ基(−SO4H)などの存在の可能性も考えられ
る。
【0035】また、高温(ハンダ付け温度)、例えば、
250℃においては、図3の(A)に模式的に示すよう
に、遊離しているSO3 -+なども、H+Cl-やH+Br-と同
様にプロトン供与体として機能すると想定される。従来
の活性化フラックスでは、塩化アンモニウムなどに由来
するH+Cl-やH+Br-によりフラックス活性の増強が図られ
ているものの、粗精製ロジン自体に含まれる不純物イオ
ウの相当部分は、プロトン供与能を有するSO3 -+
どであり、これによっても、一部フラックス活性の増強
がなされていることを解明した。
【0036】このように、従来のSn−Pbハンダ用ロ
ジン系フラックスにおいて、粗精製ロジン自体に含まれ
る不純物イオウは、プロトン供与能を有するSO3 -+
などとして、フラックス活性の増強に寄与している。し
かしながら、Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi系な
どのPb−freeハンダ用フラックスとして用いた
際、不純物イオウは還元を受けると、S2-などとなり、
銀と硫化銀を生成すると、材料劣化あるいは耐久性障害
を引き起こす要因ともなることが判明した。
【0037】本発明の活性化ロジンフラックスでは、こ
の硫化銀の生成を防止するため、用いるロジン系基剤と
して、原料ロジンに含まれるイオウ不純物を除去する処
理を施した変性ロジンを利用したものである。上で述べ
たように、原料ロジン中に含有されるイオウ分は、遊離
したSO4 2-、SO3Hに加えて、一部アビチエン酸分子
内にスルホンとして存在することが予測される。すなわ
ち、イオウ成分のうち、相当部分は、有機分子中、例え
ば、アビチエン酸の骨格上にスルホン(−SO2−)とし
て結合していると考えられ、例えば、スルホ基(−SO
3H)やスルホオキシ基(−SO4H)などの存在の可能性も
考えられる。本発明の活性化ロジンフラックスの製造方
法では、このようなアビチエン酸分子内に存在するイオ
ウ分をも効果的に除去するため、脱硫触媒を利用して、
原料ロジンを加熱下、水素ガス気流中で水素化脱硫を施
している。
【0038】本発明の活性化ロジンフラックスの製造方
法の最大の特徴は、この水素化脱硫に利用される脱硫触
媒として、先に述べたフラックスの活性化を行う無機成
分として利用される、アルミナ(Al23)と他の金属
酸化物とから構成される混合酸化物微粉末自体を担体と
して、その上に脱硫触媒として利用される固体触媒物質
を担持した複合体微粒子を利用することで、脱硫処理後
は最早不要となる触媒粒子を、その担体部である混合酸
化物微粉末自体をフラックスの活性化を行う無機成分と
してそのまま利用するようにした点である。なお、フラ
ックスの活性化を行う無機成分として必要となる量に、
前記の脱硫触媒の担体部として添加する量のみでは達し
ない場合には、その不足分を補完するため、予め原料ロ
ジンに、アルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから
構成される混合酸化物微粉末自体を補足的に添加する。
この補足的な添加と、脱硫触媒の担体部としての添加と
は、いずれも、水素化脱硫工程を実施する前、原料ロジ
ンに対して行う構成とすることで、両者の添加は、その
前後は問わないものとなる。従って、本発明の活性化ロ
ジンフラックスの製造方法では、脱硫触媒の担体部とし
ての添加とそれを補足するため混合酸化物微粉末自体の
添加とを、単一の添加工程で実施する構成としたもので
ある。
【0039】現実的には、かかる添加工程においては、
原料ロジンへ微粉末を添加し、均一に分散を図るため、
一度に全量を添加する手法に代えて、攪拌により分散化
を行いつつ、徐々に添加する手法を採用することもでき
る。従って、場合によっては、脱硫触媒の担体部として
の添加と、それに対する補足的な添加との間で、各部分
工程を分離する形態となることもあるが、水素化脱硫工
程を実施する前に、原料ロジンに対して、両者の添加が
なされる限り、それは単一の工程で実施されたと見倣す
べきものである。
【0040】不可避的に、本発明の活性化ロジンフラッ
クスの製造方法においては、水素化脱硫工程において、
原料ロジンとともに、それに添加されている脱硫触媒複
合体微粒子、ならびに、必要に応じて、補足的に添加さ
れる混合酸化物微粉末も、加熱下、水素ガスと接触され
ることになる。すなわち、脱硫触媒の表面が、水素還元
状態に曝されると同程度に、その担体部などのアルミナ
(Al23)と他の金属酸化物とから構成される混合酸
化物微粉末の表面も、水素還元状態に曝される。それに
よって、水素化脱硫反応で生成するS2-やH2Sによ
り、アルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから構成
される混合酸化物表面が被毒され、その本来の機能であ
る固体酸としての機能を阻害するような弊害は未然に回
避されている。
【0041】本発明の活性化ロジンフラックスにおいて
は、フラックス活性増強作用を有する無機成分として、
アルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから構成され
る混合酸化物の微粉末を利用している。上でも述べた通
り、水素化脱硫の工程において脱硫触媒として利用す
る、アルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから構成
される混合酸化物微粉末自体を担体として、その上に脱
硫触媒として利用される固体触媒物質を担持した複合体
微粒子も、その担体部のアルミナ(Al23)と他の金
属酸化物とから構成される混合酸化物の微粉末をフラッ
クス活性増強作用を有する無機成分の一部として利用す
る。従って、水素化脱硫工程を終えた後も、前記脱硫触
媒として添加されている複合体微粒子をそのまま残すよ
うにしている。
【0042】なお、最終的に活性化ロジンフラックスに
含有させる、アルミナ(Al23)と他の金属酸化物と
から構成される混合酸化物微粉末の全体量は、そのフラ
ックス活性増強作用の機構と、強弱に応じて、ロジン系
基剤のフラックス活性を所望の範囲に上昇させるように
適宜選択することができる。
【0043】具体的には、フラックス活性増強作用を有
する無機成分として利用される、アルミナ(Al23
と他の金属酸化物とから構成される混合酸化物微粉末
は、実際にハンダ付けを行う際、固体酸として機能し
て、フラックス全体の酸強度を増強する作用を有する。
この固体酸の機能は、当然のことながら、その総表面積
の大小に依存する。従って、本発明の活性化ロジンフラ
ックスにおいては、微粉末とすることで、単位重量当た
りの表面積をより大きくしている。また、フラックス全
体に、混合酸化物微粉末が均一に分散する構成とする。
【0044】一般に、固体酸として機能する際、金属の
酸化物(Al23、V23など)は、部分的に、その表
面にOHを有し、これからH+(プロトン)を供与する
ことで、酸強度を発揮する。従って、フラックスに添加
した際、フラックス活性を増強する作用の大小は、当
然、これら固体酸の表面の酸点(酸活性中心)の強度に
依存する。つまり、その表面に何らかの処理を施すこと
によって、表面の酸点(酸活性中心)の強度が増強され
ている、あるいは、酸点(酸活性中心)の発現がなされ
ている固体酸の微粉末を含有することがより好ましい。
【0045】本発明の活性化ロジンフラックスの製造方
法においては、このような付活性処理として、水素雰囲
気中で加熱して、水素還元条件に保持することによっ
て、表面の酸点(酸活性中心)の強度の増強を図る、あ
るいは、酸点(酸活性中心)の発現を図る工程構成とな
っている。先ず、既に述べたように、原料ロジンに水素
化脱硫を施す際、原料ロジン中には、アルミナ(Al2
3)と他の金属酸化物とから構成される混合酸化物微
粉末も、脱硫触媒と同様に添加されており、水素化脱硫
工程では、ロジン全体が水素雰囲気中で加熱されるた
め、水素還元条件に保持する処理がなされていることに
なる。
【0046】水素化脱硫工程に付随して、水素還元によ
る付活性処理が進み、固体酸表面の酸点(酸活性中心)
の強度の増強、あるいは、酸点(酸活性中心)の発現が
一定の水準に達するものの、添加される混合酸化物微粉
末の全体量を減ずる際には、水素還元による付活性処理
をより高い水準とすることが望ましい。すなわち、前記
水素化脱硫工程に加えて、更なる水素還元による付活性
処理を行う工程を設けることが好ましい。その際、前記
水素化脱硫工程と、この混合酸化物微粉末に対する水素
還元による付活性処理の工程とを、連続して実施する構
成とすることがより好ましい。
【0047】本発明の活性化ロジンフラックスの製造方
法では、好ましくは、水素還元による付活性処理の工程
として、混合酸化物の微粉末を、加熱下、水素ガス気流
中で処理する工程を設けるとともに、ロジン系基剤中に
含まれている蒸発性不純物有機分子を、水素ガス気流
中、加熱して蒸散除去する工程とを設け、水素ガス気流
中、加熱してなされる、この二つの工程を同一の工程と
して実施する工程構成を採用する。蒸発性不純物有機分
子の蒸散除去は、水素ガス気流中、加熱している限り進
行するため、水素化脱硫工程においても、一定水準まで
その除去は進んでいるが、前記の構成をとり、延べ加熱
時間を増すことで一層除去が進み、より好ましいものと
なる。
【0048】具体的には、本発明の活性化ロジンフラッ
クスにおいて、そのフラックス活性を増強する作用を有
する微粉末状の無機成分として利用する、アルミナ(A
23)と他の金属酸化物とから構成される混合酸化物
としては、Al23−NiO、Al23−Cr23、A
23−CdOなどを挙げることができる。なかでも、
Al23−NiOまたはAl23−Cr23を用いるこ
とが好ましい。
【0049】なお、酸化ニッケル(II);NiOは、N
iO1.2程度の黒色酸化物となることもあることが知ら
れている。この場合、水素還元状態におき、余剰の酸素
を除去すると、NiOに変換することも可能である。ま
た、固体のNiOは、水素気流中では比較的低温でニッ
ケルに還元される。また、酸化クロム(III);Cr2
3は、酸化クロム触媒に利用され、単独、あるいは他の
酸化物と複合した状態で、例えば、水素化・脱水素の反
応に触媒活性を示す。これらの金属酸化物では、例え
ば、水素還元状態に置かれると、構成している酸素が部
分的にOからOHに変換され、酸強度の増加が起こると
いう点も本発明では利用している。
【0050】本発明の活性化ロジンフラックスにおいて
は、ロジン系基剤中に含まれる、主成分のアビエチン酸
などに由来するフラックス活性を増強する無機成分とし
て、混合酸化物微粉末の総添加量は、例えば、変性ロジ
ン100重量部当たり、Al 23−NiOやAl23
Cr23のような固体酸の微粉末を、0.1〜4.0重
量部、好ましくは0.1〜1.0重量部添加することが
好ましい。この固体酸の微粉末は、ロジン系基剤中に均
一に分散させるものであるので、平均粒子径が0.01
〜1.0μm、好ましくは、0.01〜0.1μmの範
囲にある微細粒子であることが好適である。
【0051】フラックス活性を増強する無機成分として
利用する固体酸の微粉末は、粗精製ロジンの水素化脱硫
処理に用いるCo−Mo触媒(脱硫触媒)などの担体と
しても利用するが、その際、Co−Mo触媒(脱硫触
媒)などの触媒金属を、担体とする固体酸の微粉末10
0重量部当たり、0.1〜2.0重量部、好ましくは、
0.1〜1.0重量部の範囲に選択することが好まし
い。前記の範囲に選択すると、所望の脱硫触媒活性を得
るために添加する、固体酸の微粉末を担体とするCo−
Mo触媒(脱硫触媒)自体で、フラックスにおいて目標
とする固体酸の微粉末の添加量の相当部分を賄うものと
なり、より好ましいものである。
【0052】なお、Al23−NiOやAl23−Cr
23のようなアルミナ(Al23)と他の金属酸化物
(NiOやCr23)とから構成される混合酸化物の平
均組成は、アルミナ(Al23)と他の金属酸化物(N
iOやCr23)との比率が、アルミナ(Al23)1
モル当たり、他の金属酸化物(NiOやCr23)が、
0.8〜1.2モル、好ましくは、0.9〜1.1モル
の範囲となるもの(混合物)を用いることが好ましい。
【0053】このアルミナ(Al23)と他の金属酸化
物とから構成される混合酸化物は、例えば、二成分系混
合酸化物のAl23−Cr23またはAl23−NiO
などは、前記の平均組成に従って、それを構成する二成
分の水酸化物の微粉末を混合し、その混合物を酸素を含
む雰囲気ガス中、100〜200℃の範囲に選択される
所定の温度で加熱し、脱水によって微粉末状の混合酸化
物としたものを用いることができる。前記の手段で調製
すると、その平均組成の制御が容易である。また、酸素
を含む雰囲気ガス、具体的には、大気中において加熱焼
成し、脱水する結果、表面には、若干のOHは残留する
ものの、概ね、Oで覆われなものとなる。そのため、こ
の状態では、固体酸として、十分な酸強度を示さない
が、水素還元による付活性処理を施すことで、固体酸表
面の酸点(酸活性中心)の強度の増強、あるいは、酸点
(酸活性中心)の発現がなされる。水素還元による付活
性処理を施すことで、Al23−NiOは、強い酸とな
り、Al23−Cr23は、やや強い酸となる。従っ
て、フラックス全体として、所望のフラックス活性をを
達成するため、必要となる添加量はより少なくできるの
で、好ましい。
【0054】前記の水素還元による付活性処理によっ
て、固体酸表面の酸点(酸活性中心)の強度の増強、あ
るいは、酸点(酸活性中心)の発現がなされ、表面に生
成されるOHは多くなっているが、酸素を含む雰囲気中
に放置する間に徐々に酸化を受け、表面に生成されてい
るOHは消失していく。本発明の活性化ロジンフラック
スは、このOHを利用して、ハンダ付けが成される金属
表面に存在する自然酸化膜の除去を行う。
【0055】本発明の活性化ロジンフラックスの製造方
法において、水素化脱硫工程に利用する脱硫触媒は、前
記の微粉末状の混合酸化物表面にCo−Mo触媒などを
担持したものを利用する。すなわち、担体とする混合酸
化物の微粉末を、前記の手段で作製した上で、Co−M
o触媒などその表面上に、上述する比率となるように被
覆する。この種の担持触媒は、公知の手段で調製するこ
とができる。例えば、Co−Mo触媒を、担体のAl2
3−Cr23またはAl23−NiO上に担持してな
る触媒は、一旦Al23−Cr23またはAl23−N
iOの微粉末を上記の手法で作製し、この微粉末に、微
粉末状のCoの水酸化物およびMoの水酸化物とを混合
し、その混合物を酸素を含む雰囲気ガス中、100〜2
00℃の範囲に選択される所定の温度で加熱し、脱水に
よってCo−Mo混合酸化物がAl 23−Cr23また
はAl23−NiOの二成分系混合酸化物担体上に担持
されてなる複合体の微粉末とすることができる。
【0056】本発明の活性化ロジンフラックスに用いる
ロジン系基剤は、ロジンに含まれる樹脂酸をフラックス
活性成分とするものである。市販されている粗精製ロジ
ンは、マツ科植物から得られる樹脂油のうち、精油など
の揮発性物質を留去した後の残留樹脂であり、高沸点の
樹脂油複数を含有している。この粗精製ロジンは、マツ
の種類によって組成は若干変動するものの、主な成分
は、樹脂油であり、約90%を占め、中性成分10%を
含んでいる。樹脂油のうち、主成分は、アビエチン酸と
その類縁体であり、前記類縁体は、例えば、ジヒドロア
ビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、無水アビエチン酸
などが主なものである。中性成分には、エステル体(−
COO−R)が含まれるが、その他に、カルボキシル基(−
COOH)に代わり、ホルミル基(−CHO)やメチロール基
(−CH2OH)となったものも含まれる。これら樹脂油成
分は、蒸留精製を加え、ロジン油(沸点:280℃以
上)としたものも入手可能である。本発明の活性化ロジ
ンフラックスにおいては、このアビエチン酸や混在して
いるその類縁体を主にフラックス成分として利用する。
例えば、アビエチン酸自体は、その融点は172℃〜1
75℃であり、ハンダ付け温度においては、液体となる
が、容易には蒸発しない。
【0057】従って、本発明の活性化ロジンフラックス
に用いるロジン系基剤は、アビエチン酸とその類縁体
(例えば、ジヒドロアビエチン酸、デヒドロアビエチン
酸、無水アビエチン酸)の樹脂酸以外の中性成分、なら
びに不純物成分を予め除去するなど、精製処理を施した
ロジンを用いることが一層好ましい。
【0058】しかしながら、本発明の活性化ロジンフラ
ックスの製造方法において、原料ロジンとして利用され
るものは、その工程中、蒸発性不純物有機化合物の除去
がなされるため、粗精製ロジンを用いることが、寧ろ、
その目的にはより合致している。しかしながら、アビエ
チン酸とその類縁体に対して、その分子内骨格上にスル
ホン(−SO2−)として結合している酸化状態のイオウ
を含むものは、その沸点は、より高くなっており、前も
って低沸点成分の除去などの精製処理を施すとも、除去
されない。すなわち、低沸点成分の除去などの精製処理
を施したロジンを原料とする際にも、本発明の活性化ロ
ジンフラックスの製造方法における特徴である水素化脱
硫を設ける利点は、粗精製ロジンを用いる際と本質的に
遜色のないものである。
【0059】なお、Sn−AgあるいはSn−Ag−B
i系などのPb−freeハンダでは熔融温度が高くな
り、それに伴い、従来のSn−Pbハンダを用いていた
際には、さほど問題とはなっていなかった、粗精製ロジ
ン中に不純物として含有されている蒸発性有機化合物
(VOC分子:volatile organic compound)の蒸散量
も配慮すべき量となる。粗精製ロジンは、揮発性留分は
予め除かれているものの、ロジン油(沸点:280℃以
上)よりも沸点の低い蒸発性の成分はなお残留してお
り、これらの比較的沸点の低い成分は予め留去すること
が好ましい。これらの比較的沸点の低い成分は、ハンダ
付け特性に影響を与えないが、環境大気へ放散すると、
大気汚染、さらには、地球環境の汚染、温室効果ガスの
発生源ともなり得る。
【0060】また、粗精製ロジンに含有される副成分有
機化合物のうち、そのハンダ付け温度において、簡単に
蒸発してしまう蒸発性有機化合物は、フラックス活性に
なんらの関与しない。さらには、ロジン系基剤は、再酸
化防止の被覆液膜という機能も重要であり、この機能に
対しても、前記の蒸発性有機化合物は、不要なものであ
る。つまり、ハンダ付け温度において、蒸発して、作業
環境を汚染する懸念のある蒸発性有機化合物不純物の除
去をも行った変性ロジンを用いることがよりこのまし
い。
【0061】従って、本発明の活性化ロジンフラックス
の製造方法においては、この蒸発性有機化合物不純物の
除去を図る目的で、前記ロジンに添加・分散されてい
る、アルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから構成
される混合酸化物の微粉末を、加熱下、水素ガス気流中
で処理する工程と、ロジン系基剤中に含まれている蒸発
性不純物有機分子を、水素ガス気流中、加熱して蒸散除
去する工程とを設け、好ましくは、水素ガス気流中、加
熱してなされる、この二つの工程を同一の工程として実
施する構成とする。加えて、粗精製ロジンを脱硫触媒の
存在下、水素化脱硫処理する際、蒸発性有機化合物不純
物の除去も併せて進む。その結果、水素化脱硫処理を施
すことで得られる変性ロジン自体、その水素化脱硫処理
に用いる反応容器内圧力、加熱温度において、蒸発する
蒸発性有機化合物不純物を含まないものとなり、例え
ば、標準大気圧における沸点200℃以下の蒸発性有機
化合物を含まないものとすることができる。本発明の活
性化ロジンフラックスの製造方法においては、最終的
に、変性ロジン中に残留する沸点200℃以下の蒸発性
有機化合物の総和が、変性ロジンに対して、200pp
m(重量ppm)以下、より好ましくは100ppm
(重量ppm)以下となるように、前記ロジン系基剤中
に含まれている蒸発性不純物有機分子を、水素ガス気流
中、加熱して蒸散除去する工程の条件、加熱温度、水素
気流の圧力(反応容器内圧力)、ならびに、処理時間を
選択することが好ましい。また、沸点が250℃〜ハン
ダ付け温度(例えば、220℃)の範囲の比較的沸点の
高い有機化合物不純物に関しても、その総和を、多くと
も、50ppm(重量ppm)以下とするように、前記
水素気流中の加熱条件を選択することが好ましい。具体
的には、加熱温度を200℃前後、より具体的には、2
00℃を中心に、その前後30℃の範囲に選択し、一
方、水素気流の圧力(反応容器内圧力)は、1〜3気圧
の範囲に選択することが望ましい。
【0062】一方、本発明の活性化ロジンフラックスの
製造方法においては、粗精製ロジン中に不純物として存
在するイオウ分の除去には、石油精製の分野では公知の
手法である、水素化脱硫の手法を転用している。石油中
のイオウ化合物を除去する手法としては、硫酸やアルカ
リを用いる化学処理法もあるが、このような化学処理法
を適用すると、アビエチン酸などは、灯油などの石油製
品と異なり高沸点であるため、蒸留によって、用いた試
薬を除去することは容易でない。本発明の活性化ロジン
フラックスの製造方法においては、固体触媒を用いる水
素化脱硫の手法を利用し、また、用いた固体触媒自体、
その後、その担体部を固体酸として利用することで、脱
硫工程に用いた試薬類を除去する必要性を排除してい
る。また、脱硫処理で除去されるイオウ分は、H2Sの
形態として、反応系外に水素気流とともに送り出すこと
で、固形状のイオウが残留することを回避している。
【0063】かかる水素化脱硫反応においては、脱硫触
媒が水素ガスと密に接触することが望ましく、加熱によ
り液状となっているロジンを攪拌して、水素気流との密
な接触を確保する。その際、水素ガス気流中、加熱を要
する反応であるので、オートクレーブ装置(加圧反応
釜)を用いるのが一般的であり、また、オートクレーブ
装置中、加熱下、液状となっているロジンを保持する容
器底部から、水素ガスを導入して、気泡を形成して、接
触面積を増すとともの、この気泡により攪拌をも行う構
成とすることが望ましい。
【0064】水素化脱硫の工程以外に、混合酸化物微粉
末の水素気流中、加熱処理の工程および蒸発性不純物有
機分子の水素気流中、加熱蒸散・除去の工程も、水素ガ
ス気流中、加熱を要する工程であるので、同一のオート
クレーブ装置を利用し、これら三種の処理工程を一連に
実施することが好ましい。その場合、混合酸化物微粉末
の水素気流中、加熱処理の工程および蒸発性不純物有機
分子の水素気流中、加熱蒸散・除去の工程も、水素ガス
気流との十分な接触を図るため、オートクレーブ装置
中、加熱下、液状となっているロジンを保持する容器底
部から、水素ガスを導入して、気泡を形成して、接触面
積を増すとともの、この気泡により攪拌をも行う構成と
することが望ましい。
【0065】この水素化脱硫処理は、ロジンの主成分で
あるアビエチン酸などの沸点よりも十分に低い温度で行
うことが望ましいので、脱硫触媒として、混合酸化物微
粉末上に担持したコバルト−モリブデン触媒(Co−M
o触媒)などを用いて、5気圧を超えない加圧条件下、
280℃よりは低い温度で行うことが好ましい。前記の
水素圧、温度範囲であれば、ロジンの主成分であるアビ
エチン酸自体に対する水素還元反応など、不要な副次反
応はなく、目的の水素化脱硫処理のみを選択的に行え
る。
【0066】例えば、粗精製ロジン中の固形不純物を予
め除去し、加熱して流動化したものに、混合酸化物微粉
末の担体上に、例えば、Co−Mo触媒を薄く担持した
脱硫触媒微粒子を0.1〜2.0%の範囲で添加し、均
一に混合させる。水素化脱硫処理条件としては、加圧可
能な反応容器内において、加熱温度250℃前後、やや
加圧条件(例えば、加圧圧力:1〜3気圧)で、水素ガ
スを液状のロジン中に吹き込む手法を用いるとよい。か
かる水素化脱硫処理を施した後、ロジン系基剤中に残留
するイオウ分は、30ppm(重量ppm)以下、好ま
しくは、10ppm(重量ppm)以下とすることが好
ましい。
【0067】一方、水素化脱硫処理により、上記の濃度
範囲まで、粗精製ロジンに含まれていたイオウ分の除去
を行うために行うためには、水素化脱硫触媒として、前
記のCo−Mo触媒の他に、MoS2触媒なども、混合
酸化物微粉末の担体上に薄く担持した脱硫触媒微粒子に
作製して、用いることもできる。また、Co−Mo触媒
などの水素化脱硫反応の触媒を担持する担体に用いる、
アルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから構成され
る混合酸化物のうち、例えば、Al23−NiOやAl
23−Cr23は、イオウ分の存在下において、担体自
体の損傷を起こさないものであり、好適に利用できる。
加えて、Al23−NiOやAl23−Cr23に含ま
れるNiOやCr23は、アルコールには不溶であるの
で、例えば、原料ロジンに用いる粗精製ロジンと混合す
る際、アルコール溶媒を利用することもできる。
【0068】例えば、担体となる、アルミナ(Al
23)と他の金属酸化物とから構成される混合酸化物微
粉末上に担持されたCo−Mo触媒においては、担体粒
子100重量部当たり、Co−Mo触媒の担持量は、合
計0.1〜1.0重量部、より好ましくは0.1〜0.
2重量部に選択することが好ましい。一方、担体粒子自
体の平均粒子径は、0.1〜10μm、好ましくは、
0.1〜1.0μmの範囲にある微細粒子が好適であ
る。加熱温度250℃前後、やや加圧条件(例えば、加
圧圧力:1〜3気圧)で水素還元反応を行うので、粗精
製ロジン100重量部当たり、担体上に担持したCo−
Mo触媒などの水素化脱硫触媒を、0.1〜1.0重量
部、好ましくは0.1〜0.2重量部添加することが好
ましい。前記の水素化脱硫触媒添加量の範囲に選択し、
水素還元条件として、反応温度を120〜300℃、好
ましくは、150〜250℃の範囲、より好ましくは、
150〜200℃、あるいは、200℃前後に選択し、
反応容器に供給する水素分圧を、1.2〜5.0気圧
(なお、1気圧は、1.01325×105Paであ
る)、好ましくは、1.5〜3.0気圧の範囲に選択
し、より好ましくは、2.0気圧前後として処理を行
う。
【0069】粗精製ロジンが含有しているイオウ分の量
に応じて、反応時間は適宜選択するものではあるが、通
常の品質であれば、前記の反応条件において、20〜1
00分間の処理、好ましくは、20〜30分間の処理を
行うことで、残留するイオウ分を10ppm以下の好ま
しい範囲まで低減することができる。
【0070】この水素化脱硫処理で還元されたイオウ分
は、硫化水素(H2S)として気相に出る。また、加熱
条件でこの反応を行うので、粗精製ロジン中に残留して
いる比較的沸点の低い蒸発性有機化合物不純物も同時に
蒸発する。この時、循環する水素ガス中に混入する硫化
水素ならびに蒸発性有機化合物不純物は、循環により反
応容器から取り出され、それぞれ分離・回収される。従
って、環境大気へ硫化水素ならびに蒸発性有機化合物不
純物が放散されることはなく、環境汚染をも防止でき
る。加えて、例えば、イオウ分がチオフェン(C4
4S)のような形状で存在している際には、水素化脱硫
処理によってブタン(C410)のような炭化水素化合
物なども副生する。これら副生物の蒸発性有機化合物
も、同じく分離・回収される。
【0071】なお、ロジンの主成分である樹脂酸のなか
には、前記の水素化還元過程で還元され、変性するもの
のあるが、これらも高沸点のカルボン酸であり、変性ロ
ジン中に残るが全く問題ない。
【0072】なお、脱硫触媒を担持する担体として、A
23−NiOやAl23−Cr23のような固体酸の
微粉末を利用する際、前記担体微粉末を、最終的には、
フラックス活性を増強させる無機成分としても利用する
上で、その固体酸の機能が十分に残されるように、担持
する脱硫触媒、例えばCo−Mo触媒は、前記固体酸の
微粉末上に薄く存在するようにすることがより好まし
い。
【0073】勿論、本発明の製造方法のように、フラッ
クス活性増強作用を有する微粉末状の無機成分として、
水素化脱硫処理に用いる脱硫触媒を担持する担体として
も機能するAl23−NiOやAl23−Cr23のよ
うな固体酸微粉末を選択することにより、水素化脱硫処
理とこの固体酸微粉末を水素還元して、その活性化を図
る工程とを、一連に実施でき、大幅な作業性の向上が図
れる。
【0074】水素化脱硫処理を行った後、変性ロジン
は、液温度を常温(室温)に下げると、固体となり、反
応の際、例えば、流動性を増す目的で加えたアルコール
などの希釈溶媒を加えていても、これら希釈溶媒と分離
される。分離された精製済みの変性ロジンは、水素ガス
の気泡などを僅かに内部に閉じ込めていこともある。こ
の水素ガスの気泡などは、変性ロジンを窒素ガス中で再
度加熱して液状として、脱気、蒸散させて、除去するこ
とができる。この最終処理を施した後、再固化させて、
然るべき容器内に密閉保管する。その際、酸素を含む雰
囲気のまま、容器内に密閉保管すると、水素還元によ
り、その表面の付活性化が成されている固体酸微粉末
は、残留している酸素によって、徐々にその活性が損な
われる。従って、この残留する酸素による活性の低下を
回避するため、容器内に密閉保管する際、最終的に窒素
ガスを満たす容器内に封入する工程を設けることがより
好ましい。
【0075】例えば、本発明のSn−AgあるいはSn
−Ag−Bi系などのPb−freeハンダ用活性化ロ
ジンフラックスの製造方法は、例えば、下記する工程に
より活性化ロジンフラックスを調製する形態とすること
がより好ましい。その際、既に説明した通り、一連の水
素気流下、加熱を伴う工程は、例えば、図5に例示する
ような、オートクレーブ装置(加圧反応容器)を用いて
行うことが望ましい。
【0076】(固体酸微粒子、脱硫触媒の作製:別途工
程)工程1 二成分系混合酸化物Al23−Cr23やAl
23−NiOを、構成する二成分の水酸化物の微粉末を
混合し、その混合物を酸素を含む雰囲気ガス中、100
〜200℃で加熱し、脱水によって微粉末状の混合酸化
物を作製する。
【0077】工程2 工程1で作製される微粉末状の混
合酸化物に、Co−Mo触媒(脱硫触媒)の組成に対応
する微粉末状のCoの水酸化物およびMoの水酸化物と
を混合し、混合物を酸素を含む雰囲気ガス中、100〜
200℃で加熱し、脱水によってCo−Mo混合酸化物
を混合酸化物担体上に担持する。
【0078】(脱硫処理・VOC分子除去処理)工程3 水素化脱硫に用いる、Co−Mo触媒(脱硫触
媒)を担持した複合微粒子と、補足分の固体酸微粒子と
を予め混合する。
【0079】なお、前記脱硫触媒用担体として、固体酸
微粒子を用いる。
【0080】工程4 水素還元装置(圧力反応器)の容
器内に、粗精製ロジンをに充填し、混合した脱硫触媒微
粒子と補足分の固体酸微粒子を加え、圧力反応器を閉
じ、系内を水素ガス雰囲気に置換する。
【0081】工程5 例えば、反応温度200℃、水素
圧数気圧(3気圧程度)の条件で、水素ガスを反応容器
に連続的に流入して、水素化還元・脱硫をする。
【0082】特には、ロジンを保持する容器の底部か
ら、水素ガスを気泡を形成しつつ導入し、攪拌する。
【0083】工程6 前記反応中に気相に蒸発する不純
物、気体状の生成物、例えば、蒸発性有機化合物、H2
Sの除去を行う。
【0084】工程7 所定の反応時間経過した後、反応
容器内温度を室温へ冷却し、変性ロジンを回収する。
【0085】(付加的後処理)工程8 前記反応に用いた水素ガスの除去を行う。
【0086】必要に応じて、不要な希釈溶媒の除去も行
う。
【0087】工程9 処理・調製済みの活性化ロジンフ
ラックスを所望の容器に入れ、容器内を窒素ガスに置き
換えた上で、密封する。 以上の一連の工程で、工程7が終了した時点で、脱硫処
理、蒸発性有機化合物不純物除去の処理は本質的に終了
する。また、前記脱硫触媒微粒子として混合・分散され
ていいる、脱硫触媒用担体に用いている固体酸の微粉末
自体、例えば、Al23−NiOやAl23−Cr23
のような固体酸の微粉末は、水素還元による活性化が同
時に行われ、フラックス活性を増強させる無機成分とも
なるので、この状態で既に活性化ロジンフラックスとな
っている。その後、通常、反応中に用いた水素ガスの除
去など、付加的な後工程として、その次に記す工程8お
よび工程9を設ける。
【0088】すなわち、前記する脱硫触媒用担体とフラ
ックス活性を増強させる無機成分という複合機能を持
つ、表面に脱硫触媒を担持した固体酸の微粉末を用い
て、水素化脱硫処理を行うと、得られる変性ロジンは、
図4に模式的に示すように、アビチエン酸の分子上にス
ルホンとして存在するイオウは除去されて、イオウ分を
含まないアビチエン酸のみとなる。また、その間に複合
機能を持つ固体酸の微粉末が分散されたものとなる。こ
の段階で、この複合機能を持つ固体酸の微粉末が分散し
た変性ロジンは、そのまま活性化ロジンフラックスとな
っている。しかも、前記の水素化脱硫に際して、ロジン
に含まれる蒸発性有機化合物の除去に加えて、複合機能
を持つ固体酸の微粉末は、当然に水素還元環境に置か
れ、その活性化、酸強度の増強または酸点の発現処理も
達成されているので、実質的には僅かな工程で、また、
簡便に目的とする活性化ロジンフラックスを高い生産性
で製造することができる。
【0089】本発明の活性化ロジンフラックスの製造方
法によって作製されるPb−freeハンダ用フラック
スは、上に説明したように、VOC分子が少なく、イオ
ウ不純物もなく、さらに、ハンダ付け温度においては、
フラックス活性に十分な程度に酸性は高く、一方、室温
においては、その酸性は、用いるロジンとほとんど差が
ない程に低いという、ハンダ用フラックスに最適な性質
を持つ。具体的には、フラックスの活性化に利用され
る、水素還元で付活性処理を施した混合酸化物の微粉末
は、ハンダ付け温度においては、その表面に導入された
OHにより固体酸として機能し、また、そのH供与能も
高いため、その酸強度も強いものとなる。一方、ハンダ
付け金属面上の表面酸化物の除去により、その表面にO
Hとして付加されているHが消費される結果、ハンダ付
け後においては、混合酸化物の微粉末表面には、最早、
OHが残っておらず、不要な酸性を残さないものとな
る。従って、従来のロジン系フラックスのように、ハン
ダ付け後、残留する酸強度による腐食進行などの不具合
を生ずることはないものである。
【0090】
【実施例】以下に実施例により、本発明のSn−Agあ
るいはSn−Ag−Bi系ハンダなどのPb−free
ハンダ用フラックス、その調製方法をより具体的に説明
する。ここに挙げる実施例は、本発明における最良の実
施の形態の一例ではあるものの、本発明はこの実施例に
限定されるものではない。
【0091】(実施例1)上に述べた検討結果に基づ
き、Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi系などのPb
−freeハンダ用フラックスとして、以下に述べる構
成のロジン系フラックスを調製した。具体的には、水素
化脱硫処理を施した変性ロジンをロジン系基剤に用い、
この水素化脱硫処理の触媒として、Al23−NiOや
Al23−Cr23のような固体酸粉末を担体として、
その担体上にCo−Mo触媒を薄くのせた、Co−Mo
触媒−固体酸兼担体微粒子(Al23−Cr23)を用
いた。そして、水素化脱硫処理の後、変性ロジン中に分
散されているCo−Mo触媒−固体酸兼担体微粒子(A
23−Cr23)をそのまま、フラックス活性を増強
するために添加する無機成分として利用することとし
た。なお、この変性ロジンは、前記水素化脱硫処理の間
に、イオウ分の除去に加えて、原料の粗精製ロジン中に
不純物として残留していたVOC分子も除去されたもの
となる。
【0092】前記構成のロジン系フラックスを、上述す
る工程1〜工程9からなる一連の手順により調製した。
各工程の具体的な手順・条件を次ぎに述べる。
【0093】(固体酸微粒子、脱硫触媒の作製)工程1 固体酸微粒子:Al23−Cr23微粉末を、これを構
成する二成分の水酸化物の微粉末を混合し、その混合物
を大気中、100〜200℃で加熱し、含まれる水酸基
から脱水することによって微粉末状の混合酸化物を作製
した。この固体酸(Al23−Cr23)微粒子の平均
粒子径は5μmであり、平均組成は、Al23:Cr2
3の比率が、1:1のものを用いた。
【0094】工程2 予め、工程1により作製したAl23−Cr23微粉末
を担体とし、水素化脱硫処理に用いる触媒として、Co
−Mo触媒をその表面に担持したCo−Mo触媒−固体
酸兼担体微粒子の複合体粒子を作製した。担体のAl2
3−Cr23微粉末に、Co−Mo触媒(脱硫触媒)
の組成に対応する、微粉末状のCoの水酸化物およびM
oの水酸化物とを混合し、混合物を酸素を含む雰囲気ガ
ス中、100〜200℃で加熱し、脱水によってCo−
Mo混合酸化物をAl23−Cr23混合酸化物担体上
に担持した。具体的には、担体の固体酸(Al23−C
23)微粒子100重量部当たり、Co−Mo触媒金
属を合計0.5重量部を担持して、Co−Mo触媒−固
体酸兼担体微粒子に調製したものを利用した。
【0095】(脱硫処理・VOC分子除去処理)工程3 本実施例では、水素化脱硫工程において、粗精製ロジン
100g当たり、前記のCo−Mo触媒−固体酸兼担体
微粒子1.0gを用いた。
【0096】図5に模式的に構成を示すオートクレーブ
装置の圧力反応器に、原料の粗精製ロジン(固形)を入
れ、工程2で調製したCo−Mo触媒−固体酸兼担体微
粒子、ならびに、工程1で調製した固体酸(Al23
Cr23)微粒子を予め混合した上で、粗精製ロジンに
加えた。
【0097】圧力反応器を閉じ、容器底部の水素ガス導
入口から、水素を流し、容器内を水素雰囲気とする。一
方、容器外に設置するヒーターで加熱し、150℃とす
ることで、粗精製ロジンを溶融する。容器底部から導入
される水素ガスにより、液状のロジンはバブリング攪拌
され、Co−Mo触媒−固体酸兼担体微粒子と固体酸
(Al23−Cr23)微粒子は、ロジン内に均一に分
散される。
【0098】工程4工程6 前記混合・均一化を行った後、容器内の水素圧、加熱温
度を、この水素化脱硫処理の反応条件に合わせて調整
し、反応を行う。具体的には、水素化脱硫処理の反応条
件として、反応温度を250℃、水素化還元に用いる水
素圧を2.5気圧に選択した。水素化脱硫反応の際も、
水素ガスを容器底部から一定流量で導入し、気泡を形成
して、ロジンの攪拌、脱硫触媒との密な接触がなされる
ようにしている。前記の反応条件で水素ガス導入・バブ
リングを行いつつ、約30分間加熱反応を行った。
【0099】この加熱反応において、生成するH2Sな
らびにVOC分子(メタンなど)は、水素ガス中に含ま
れるが、排気口部から水素ガスとともに圧力反応器外へ
出る。その後、これらは常法に従って分離・除去した。
【0100】加えて、この水素還元条件において、Co
−Mo触媒−固体酸兼担体微粒子と固体酸(Al23
Cr23)微粒子固体酸表面の活性化も進行する。
【0101】工程7 前記の反応時間経過した後、加熱をやめ反応容器内温度
を室温まで冷却させた。本実施例においては、水素化脱
硫触媒自体は、その担体に用いている固体酸微粒子は、
フラックスに添加される活性を増強する無機成分として
も利用する。従って、この段階において、ロジン中に固
体酸微粒子が均一に分散されている目的の活性化フラッ
クスとなっている。
【0102】(付加的後処理)工程8工程9 実質的には、活性化ロジンフラックス調製は終了してい
るが、前記反応に用いた水素ガスの除去を行った。つま
り、室温に達した際、ロジンは固化するため、然るべき
温度に降下した時点で、容器底部からの水素ガスの導入
を止め、窒素ガスを反応器の上部に導入し、内部を窒素
ガス置換を行う。
【0103】この水素ガスの除去後、加圧反応器(水素
還元装置)中には、窒素ガスが満たれ、そのまま室温ま
で冷却する。得られる処理・調製済みの活性化ロジンフ
ラックスは、所定の容器に入れ、窒素ガスに置換の上密
封した。
【0104】(実施例2)本発明の製造方法で作製され
る活性化ロジンフラックスが、Sn−AgあるいはSn
−Ag−Bi系ハンダなどのPb−freeハンダに対
して、所望のフラックス活性を有することを検証した。
加えて、本発明の活性化ロジンフラックスを用いると、
材料劣化、耐久性障害の発生が抑えられていることを検
証した。
【0105】具体的には、上記実施例1において調製さ
れたハンダ用フラックスを、Pb−freeハンダの一
つである、Sn−Ag−Cu−Biハンダを用いたハン
ダ付けに適用した。このSn−Ag−Cu−Biハンダ
の熔融温度は210℃であり、従来のSn−Pbハンダ
の熔融温度183℃よりも高く、従来、そのハンダ付け
に際し、銅の表面酸化物の除去が困難であった。実施例
1記載のハンダ用フラックスを利用して、電子回路多層
基板(PWB)に数百のチップ抵抗をハンダ付けし、そ
のハンダ付け特性を評価した。実施例1記載のハンダ用
フラックスを使用すると、配線パターン銅表面上におけ
る熔融ハンダの広がりが良く、従来のSn−Pbハンダ
を用いた際と同様のフィレットが形成されている。すな
わち、従来のロジン系フラックスを用いたSn−Pbハ
ンダによるハンダ付けと比較して、遜色のない良好なハ
ンダ付けが行えている。
【0106】ハンダ付け後、120℃/−40℃間の熱
サイクル加速耐久試験を実施し、ハンダ付け部における
不良発生の有無を検証した。換算使用時間10年に相当
する範囲では、ハンダ付け部のハンダ表面の腐食などは
観察されなかった。ハンダ付け部の剥がれ・割れなどの
兆候は見出されないが、前記熱サイクル加速耐久試験終
了後ハンダ材内部を詳細に観測すると、このSn−Ag
−Cu−Biハンダ特有の微細亀裂が僅かに観測されて
いる。
【0107】
【発明の効果】本発明の活性化ロジンフラックスの製造
方法で作製されるPb−freeハンダ用フラックス
は、従来のロジン系フラックスの持つ、ロジンを基剤と
する利点、すなわち、空気を遮断する高沸点有機物の機
能と金属表面の酸化被膜の溶解除去に利用されるカルボ
ン酸、生成する金属カルボン酸塩に対する溶媒としての
機能を生かしつつ、水素還元による付活性処理によっ
て、固体酸表面の酸点(酸活性中心)の強度の増強、な
らびに、酸点(酸活性中心)の発現がなされた固体酸で
ある、アルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから構
成される混合酸化物の微粉末によって、フラックスの活
性化がなされており、所謂Pb−freeハンダ、例え
ば、Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi系ハンダ用フ
ラックスに適するものとしたものである。先ず、フラッ
クスに分散させるフラックス活性の増強を図る無機成分
には、ハロゲン化物イオンを構成要素としない、金属酸
化物の混合酸化物を用いるので、Pb−freeハンダ
のうち、Sn−AgあるいはSn−Ag−Bi系ハンダ
などに含まれる銀に対して、銀の塩化物や臭化物などの
生成が防止できる。また、用いるロジン基剤は、粗精製
ロジン中に含まれるイオウ分を除去する水素化脱硫処理
を施しているので、銀の硫化物の生成をも回避できる。
さらには、ハンダ付け温度が高くなることに備えて、蒸
発性有機化合物も予め除去されており、作業環境などの
汚染も防止できる。
【0108】フラックスの活性化に利用される、水素還
元で付活性処理を施した混合酸化物の微粉末は、ハンダ
付け温度においては、固体酸として機能し、また、その
酸強度も強いが、ハンダ付け金属面上の表面酸化物の除
去により、付加された水素が消費される結果、ハンダ付
け後においては、不要な酸性を残さないものとなる。従
って、従来のロジン系フラックスのように、ハンダ付け
後、残留する酸強度による腐食進行などの不具合を回避
できるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】粗精製ロジン中に不純物としてイオウが含まれ
ることを示す分析結果を示し、(A)は、FT−IRス
ペクトル測定例、(B)は、蛍光X線スペクトル測定例
である。
【図2】粗精製ロジンを基剤に用いる従来のSn−Pb
合金ハンダ用ロジン系フラックス中にSO3Hならびに
SO4 2-の形状のイオウ不純物が存在することを示す図
であり、(B)は、常温におけるSn−Pb合金ハンダ
用ロジン系フラックスのFT−IRスペクトル測定例、
(A)は、SO3HならびにSO4 2-の存在状態を模式的
に説明する図である。
【図3】従来のSn−Pb合金ハンダ用ロジン系フラッ
クス中に、イオウに加え、塩素ならびに臭素が存在する
ことを示す図であり、(B)は、Sn−Pb合金ハンダ
用ロジン系フラックスの蛍光X線スペクトル測定例、
(A)は、高温(使用温度:250℃)における、塩素
ならびに臭素の存在状態を模式的に説明する図である。
【図4】本発明の活性化ロジンフラックスの一例を示す
図であり、ロジン系基剤およびフラックス活性増強用の
無機成分の構成、その存在状態を模式的に説明する図で
ある。
【図5】本発明の活性化ロジンフラックスの製造方法に
おいて、原料ロジンの水素化脱硫工程、ならびに、フラ
ックス活性増強用の無機成分となる、アルミナ(Al2
3)と他の金属酸化物とから構成される混合酸化物の
微粉末に対する、水素還元による付活性処理の実施に利
用可能なオートクレーブ装置の構成を模式的に示す図で
ある。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Pbを含まないSn合金系ハンダ用活性
    化ロジンフラックスを製造する方法であって、 前記活性化ロジンフラックスは、アビエチン酸を主成分
    として含有するロジン系基剤とフラックス活性増強作用
    を有する無機成分とを含み、 原料ロジン中に含有されるイオウを除去する脱硫処理の
    工程と、 前記脱硫処理を施してなるロジン系基剤中に添加・分散
    されるフラックス活性増強作用を有する無機成分とし
    て、アルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから構成
    される混合酸化物の微粉末を前記原料ロジンに添加する
    工程とを含み、 前記脱硫処理では、脱硫触媒を利用して、原料ロジンを
    加熱下、水素ガス気流中で水素化脱硫を施し、また、前
    記脱硫触媒には、フラックス活性増強作用を有する無機
    成分としても利用される前記アルミナ(Al23)と他
    の金属酸化物とから構成される混合酸化物の微粉末を担
    体とし、この微粉末状の担体表面に水素化脱硫反応に対
    する固体触媒を担持してなる脱硫触媒を用いることを特
    徴とするPbを含まないSn合金系ハンダ用活性化ロジ
    ンフラックスの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記フラックス活性増強作用を有する無
    機成分を添加・分散する工程の後、 前記ロジンに添加・分散されている、アルミナ(Al2
    3)と他の金属酸化物とから構成される混合酸化物の
    微粉末を、加熱下、水素ガス気流中で処理する工程と、 ロジン系基剤中に含まれている蒸発性不純物有機分子
    を、水素ガス気流中、加熱して蒸散除去する工程とを設
    け、 水素ガス気流中、加熱してなされる、この二つの工程を
    同一の工程として実施することを特徴とする請求項1に
    記載の活性化ロジンフラックスの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記水素化脱硫処理の工程と、前記混合
    酸化物微粉末の水素気流中、加熱処理の工程および蒸発
    性不純物有機分子の水素気流中、加熱蒸散・除去の工程
    とは、同一のオートクレーブ装置を用いて、これら三種
    の処理工程を一連に実施することを特徴とする請求項2
    に記載の活性化ロジンフラックスの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記混合酸化物微粉末の水素気流中、加
    熱処理の工程および蒸発性不純物有機分子の水素気流
    中、加熱蒸散・除去の工程において、 前記オートクレーブ装置中、前記ロジンを保持する容器
    底部から、水素ガスを加熱中、液状となる前記ロジンを
    その気泡で攪拌するように噴射して導入することを特徴
    とする請求項2または3に記載の活性化ロジンフラック
    スの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記アルミナ(Al23)と他の金属酸
    化物とから構成される混合酸化物は、二成分系混合酸化
    物のAl23−Cr23またはAl23−NiOであ
    り、 前記混合酸化物の微粉末は、それを構成する二成分の水
    酸化物の微粉末を混合し、その混合物を酸素を含む雰囲
    気ガス中、100〜200℃の範囲に選択される所定の
    温度で加熱し、脱水によって微粉末状の混合酸化物とし
    たものであることを特徴とする請求項1−4のいずれか
    に記載の活性化ロジンフラックスの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記微粉末状の担体表面に水素化脱硫反
    応に対する触媒を担持してなる脱硫触媒は、前記担体に
    用いるアルミナ(Al23)と他の金属酸化物とから構
    成される混合酸化物は、二成分系混合酸化物のAl23
    −Cr23またはAl23−NiOであり、また、担持
    される水素化脱硫反応に対する固体触媒は、Co−Mo
    混合酸化物系触媒であり、 前記Al23−Cr23またはAl23−NiOの二成
    分系混合酸化物微粉末と、微粉末状のCoの水酸化物お
    よびMoの水酸化物とを混合し、その混合物を酸素を含
    む雰囲気ガス中、100〜200℃の範囲に選択される
    所定の温度で加熱し、脱水によってCo−Mo混合酸化
    物がAl23−Cr23またはAl23−NiOの二成
    分系混合酸化物担体上に担持されてなる複合体の微粉末
    であることを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載
    の活性化ロジンフラックスの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記混合酸化物微粉末の水素気流中、加
    熱処理の工程における加熱温度は、200℃を中心に、
    その前後30℃の範囲内に選択することを特徴とする請
    求項2−6のいずれかに記載の活性化ロジンフラックス
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記混合酸化物微粉末の水素気流中、加
    熱処理の工程における、水素圧は、1〜3気圧の範囲に
    選択することを特徴とする請求項2−7のいずれかに記
    載の活性化ロジンフラックスの製造方法。
  9. 【請求項9】 更に、製造された活性化ロジンフラック
    スを、最終的に窒素ガスを満たす容器内に封入する工程
    を設けることを特徴とする請求項1−8のいずれかに記
    載の活性化ロジンフラックスの製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1−9のいずれかに記載の活性
    化ロジンフラックスの製造方法により製造されるPbを
    含まないSn合金系ハンダ用活性化ロジンフラックス。
JP2000286828A 2000-09-21 2000-09-21 Pbを含まないSn合金系ハンダ用活性化ロジンフラックスの製造方法 Withdrawn JP2002096193A (ja)

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