JP2002092839A - 磁気記録媒体及びそれを備える磁気記録装置 - Google Patents

磁気記録媒体及びそれを備える磁気記録装置

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JP2002092839A
JP2002092839A JP2000272669A JP2000272669A JP2002092839A JP 2002092839 A JP2002092839 A JP 2002092839A JP 2000272669 A JP2000272669 A JP 2000272669A JP 2000272669 A JP2000272669 A JP 2000272669A JP 2002092839 A JP2002092839 A JP 2002092839A
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JP2000272669A
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English (en)
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Fumiyoshi Kirino
文良 桐野
Norio Ota
憲雄 太田
Teruaki Takeuchi
輝明 竹内
Koichiro Wakabayashi
康一郎 若林
Harumi Sakamoto
晴美 坂本
Masaki Sekine
正樹 関根
Hiroyuki Awano
博之 粟野
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Hitachi Maxell Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱的安定性に優れ、超高密度記録に好適な磁
気記録媒体及び磁気記録装置を提供する。 【解決手段】 磁気記録媒体100は基板1上に情報記
録膜3と強磁性膜4を備える。情報記録膜3は垂直磁化
を有する非晶質のフェリ磁性材料から構成される。かか
る材料は磁気異方性が大きく活性化体積も大きいので高
い熱安定性を有する。それゆえ超高密度記録を実現でき
る。更に強磁性膜4を情報記録膜3よりも飽和磁化の大
きな材料を用いて構成する。強磁性膜4からの漏れ磁束
は情報記録膜3よりも大きくなる。MRヘッドなどの再
生用磁気ヘッドを用いて再生すると大きな再生信号が得
られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気的に情報を記
録する磁気記録媒体及びそれを備える磁気記録装置に関
し、特に、熱的安定性に優れ、高性能で且つ高信頼性を
有する磁気記録媒体及びそれを備える磁気記録装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年の高度情報化社会の進展にはめざま
しいものがあり、各種形態の情報を統合したマルチメデ
ィアが急速に普及してきている。マルチメディアの一つ
としてコンピュータ等に装着される磁気ディスク装置が
知られている。現在、磁気ディスク装置は、記録密度を
向上させつつ小型化する方向に開発が進められている。
また、それに並行して装置の低価格化も急速に進められ
ている。
【0003】磁気ディスクの高密度化を実現するために
は、1)ディスクと磁気ヘッドとの距離を狭めること、
2)磁気記録媒体の保磁力を増大させること、3)信号
処理方法を高速化すること、4)磁気記録媒体の熱揺ら
ぎを低減すること、等が要望されている。
【0004】磁気記録媒体において高密度磁気記録を実
現するには、磁性膜の保磁力の増大が必要である。磁気
記録媒体の磁性膜には、Co−Cr−Pt(−Ta)系
の材料が広く用いられていた。この材料は、20nm程
度のCoの結晶粒子が析出した結晶質材料である。かか
る材料を用いた磁気記録媒体において、例えば、40G
bits/inchを超える面記録密度を実現するた
めには、記録時や消去時に磁化反転が生じる単位(磁気
クラスター)を更に小さくするとともに、その粒子サイ
ズの分布を小さくして、磁性膜の構造や組織を精密に制
御しなければならない。このように制御することによ
り、再生時に媒体から発生するノイズを低減することが
できる。しかし、結晶粒子サイズに分布が存在してしま
うと、特に、サイズの小さな粒子が存在していると、熱
減磁や熱揺らぎが生じて、形成した磁区が安定に存在で
きない場合があった。特に、記録密度の増大に伴って磁
区が微細化されると熱減磁や熱揺らぎの影響は著しい。
結晶粒子を微細化して媒体から発生するノイズを低減し
ようとすると、熱揺らぎが急激に大きくなり、特に、結
晶粒子径が10nm〜8nm以下になると、熱揺らぎの
発生が顕著であった。それゆえ、熱減磁や熱揺らぎの低
減の観点から、結晶粒子サイズの分布を制御することが
重要な技術になりつつある。それを実現する方法とし
て、例えば、米国特許4652499号には基板と磁性
膜との間にシード膜を設ける方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、磁性膜
として強磁性膜を用いた磁気ディスクにおいては、上述
のシード膜を設ける方法を用いて磁性膜における磁性粒
子径及びその分布を制御することには限界があった。例
えば、40Gbits/inchを超える超高密度記
録を行なう場合に、シード膜材料、成膜条件、シード膜
の構造等を調整しても、粒子径分布はブロードであり、
粗大化した粒子や微細化した粒子が混在していた。情報
を記録する場合(磁化を反転させる場合)、微細化した
粒子は周囲の磁性粒子からの漏洩磁界の影響を受ける。
一方、粗大化した粒子は周囲の磁性粒子に相互作用を与
える。また、磁性粒子中、平均より大きな粒子径の磁性
粒子は、記録/再生の際にノイズの増大を引き起こし、
平均より小さな粒子径の磁性粒子は、記録/再生の際に
熱揺らぎを増大させることもある。これにより確実に情
報を記録することが困難であった。また、磁性粒子中に
様々な大きさの磁性粒子が混在する結果、磁化反転の起
きた領域と起きていない領域との境界線は全体として粗
いジグザグのパターンを呈し、これもまたノイズ増大の
一因となる。
【0006】また、高密度記録のためには磁性層が熱的
に安定であることも重要である。磁性層の熱的安定性に
ついては、(Ku・V)/(k・T)で表される値を指
標とすることができる。ここで、Ku:磁気異方性エネ
ルギー、V:活性化体積、k:ボルツマン定数、T:温
度である。この値が大きいほど、磁性層は熱的に安定で
ある。それゆえ、磁性層の熱的安定性を高めるには、活
性化体積V及び磁気異方性エネルギーKuを大きくする
必要がある。このことはCo−Cr系の垂直磁気記録用
の磁性膜においても同様である。
【0007】このような要求を満足するために、希土類
元素と鉄族元素からなるフェリ磁性体の非晶質合金を、
情報記録用の磁性膜に用いることが検討されている。し
かし、この材料は磁壁移動型の材料であるために磁壁が
移動しやすく、情報記録時に磁界を印加して情報を記録
する場合に、磁性層に微小磁区を安定して形成すること
が困難であった。
【0008】本発明は、このような状況に鑑みてなされ
たものであり、本発明の第1の目的は、活性化体積が実
質的に大きく、熱的安定性に優れた磁気記録媒体及びそ
れを備える磁気記録装置を提供することにある。
【0009】本発明の第2の目的は、磁化遷移領域にお
いて磁区の形状がジグザグパターンになりにくくすると
ともに、このジグザグパターンを反映しない低ノイズの
磁気記録媒体及びそれを備える磁気記録装置を提供する
ことにある。
【0010】本発明の第3の目的は、磁気異方性が大き
く、記録した情報の安定性に優れ、微小磁区を確実に形
成することが可能な磁気記録媒体及びそれを備える磁気
記録装置を提供することにある。
【0011】本発明の第4の目的は、簡素化された積層
構造を有し、量産に適した磁気記録媒体及びそれを備え
る磁気記録装置を提供することにある。
【0012】本発明の第5の目的は、40Gbits/
inch(6.20Gbits/cm)を超える超
高密度記録に好適な磁気記録媒体及びそれを備える磁気
記録装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の態様に従
えば、磁気ヘッドを用いて情報が再生される磁気記録媒
体において、基板と、基板面に対して垂直な方向に磁化
容易軸を有するX線的に非晶質のフェリ磁性材料から構
成されるフェリ磁性層と、強磁性材料から構成される強
磁性層とを備えることを特徴とする磁気記録媒体が提供
される。
【0014】本発明の第1の態様の磁気記録媒体は、基
板面に対して垂直な方向に磁化容易軸を有するフェリ磁
性材料からなるフェリ磁性層を備えており、かかるフェ
リ磁性層は、結晶粒界の存在しない非晶質構造であるた
めに熱揺らぎに強く、またフェリ磁性材料から構成され
ているために異方性も大きい。それゆえ、かかるフェリ
磁性層を、情報を記録するための記録層として用いるこ
とにより微小磁区の形成が可能となるので、高密度に情
報を記録することが可能となり熱安定性にも優れる。フ
ェリ磁性層に記録された情報は磁気ヘッドを用いて再生
される。
【0015】本発明の第1の態様の磁気記録媒体におい
て、強磁性層は、フェリ磁性層と接し且つ磁気ヘッドに
近い側に形成し得る。例えば、基板と反対側に磁気ヘッ
ドが配置されて記録再生される場合は、基板上にフェリ
磁性層及び強磁性層をこの順で形成した構造にし得る。
この場合、強磁性層は、基板面に対して垂直な方向に磁
化容易軸を有し、フェリ磁性層の飽和磁化よりも大きな
飽和磁化を有することが好ましい。強磁性層をフェリ磁
性層と接して設けることによりフェリ磁性層と強磁性層
は磁気的に結合し、情報再生時には、フェリ磁性層の磁
化が強磁性層に磁気的に転写される。したがって、情報
再生時に、再生用の磁気ヘッドを用いて、強磁性層から
の磁気フラックス、または磁気フラックスの変化量を検
出すれば、フェリ磁性層に記録された情報を大きな再生
信号強度で再生することができる。このように、強磁性
層は、フェリ磁性層から発生する磁気フラックスを実質
的に増幅させる再生層として機能する。かかる強磁性層
は、Coを主体とする合金あるいはCoの酸化物を主体
とする磁性薄膜が好適であり、これらに、Cr、Pt、
Pd、Ta、Nb、Si及びTiのうちより選ばれる少
なくとも1種類の元素が含まれても良い。かかる材料か
ら形成される強磁性層は、フェリ磁性層をサビや腐食か
ら防止することもできる。
【0016】本発明の第1の態様の磁気記録媒体におい
て、フェリ磁性層を構成する材料は、希土類−遷移金属
(鉄族元素)材料が好ましい。かかる希土類−遷移金属
材料において、希土類元素には、Tb、Gd、Dy及び
Hoのうちの少なくとも一種が好ましく、遷移金属はF
e、Co及びNiのうちの少なくとも一種が好ましい。
【0017】本発明の第2の態様に従えば、磁気ヘッド
を用いて情報が再生される磁気記録媒体において、基板
と、基板面に対して垂直な方向に磁化容易軸を有する人
工格子膜と、強磁性材料から構成される強磁性層とを備
えることを特徴とする磁気記録媒体が提供される。
【0018】本発明の第2の態様に従う磁気記録媒体に
おいて、人工格子膜は情報を記録するための記録層とし
て用いることができ、例えば、鉄族元素から構成される
薄膜と希土類元素から構成される薄膜とを交互に積層し
た構造にし得る。かかる人工格子膜は、第1の態様の磁
気記録媒体のフェリ磁性層と同様に熱揺らぎに強い。更
に、かかるフェリ磁性層を構成する非晶質フェリ磁性材
料よりも異方性が大きいので、熱的安定性に優れ、高密
度記録に極めて好適である。また、上記人工格子膜にお
いて、鉄族元素にはFe、Co及びNiの内より選ばれ
る少なくとも1種類の元素が好適であり、希土類元素に
はTb、Gd、Dy及びHoの内より選ばれる少なくと
も1種類の元素が好適である。また鉄族元素から構成さ
れる薄膜は、Fe、Co、Niのうちより選ばれる少な
くとも2種類の元素からなる2層膜を用いてもよい。
【0019】また、上記人工格子膜において、鉄族元素
から構成される層は、Fe、Co、Niのうちより選ば
れる少なくとも2種類の元素から構成された合金薄膜を
用いて形成しても良い。また、鉄族元素から構成される
薄膜の副格子磁化と希土類元素から構成される薄膜の副
格子磁化の向きが反平行になるように、かかる人工格子
膜を構成することが好ましい。また、再生信号出力の大
きさに寄与する飽和磁化が大きくなるように、鉄族元素
の副格子磁化が希土類元素の副格子磁化より優勢になる
ように構成することが最も好ましい。
【0020】本発明の第2の態様の磁気記録媒体におい
て、強磁性層は、第1の態様の磁気記録媒体と同様に、
人工格子膜から発生する磁気フラックスを実質的に増幅
させる再生層として機能させることができる。すなわ
ち、強磁性層を、基板面に対して垂直な方向に磁化容易
軸を有し、且つ、人工格子膜の飽和磁化よりも大きな飽
和磁化を有するように構成し、磁気ヘッドに近い側に人
工格子膜と接して形成する。これにより人工格子膜と強
磁性層は磁気的に結合し、情報再生時には、人工格子膜
の磁化が強磁性層に磁気的に転写され、人工格子膜に記
録された情報を大きな再生信号強度で再生することがで
きる。また、強磁性層は、単層の状態において垂直磁気
異方性エネルギーが小さく垂直磁化膜にならないような
材料を用いて構成することもでき、この場合は、情報記
録膜と磁気的に結合させることによって垂直磁気異方性
を誘起させるようにすればよい。
【0021】本発明の第1及び第2の態様の磁気記録媒
体において、強磁性層は、フェリ磁性層や人工格子膜に
形成された記録磁区の磁壁の移動を抑制する効果(ピン
止め効果)をも有する。
【0022】また、本発明の第1及び第2の態様の磁気
記録媒体において、フェリ磁性層や人工格子膜に形成さ
れた記録磁区の磁壁の移動を抑制するための磁壁移動制
御層(ピン止め層)を更に別に備え得る。すなわち、磁
気記録媒体を、情報を記録するためのフェリ磁性層また
は人工格子膜と、フェリ磁性層または人工格子膜から発
生する磁気フラックスを実質的に増大させる強磁性層
と、フェリ磁性層または人工格子膜に形成された記録磁
区の磁壁の移動を抑制するための磁壁移動制御層とを備
える構成にし得る。特に、情報記録層に磁壁移動型の磁
性材料を用いた場合は、情報記録により形成される磁壁
の位置が定まりにくくなる。これを防止するためには磁
壁移動制御層に磁化回転型の材料を用いればよく、この
ように、磁壁移動型材料と磁化回転型材料とを組み合わ
せて用いることが特に好ましい。
【0023】磁壁移動制御層を設ける場合は、フェリ磁
性層(または人工格子膜)は強磁性層と磁壁移動制御層
との間に形成されていることが好ましく、強磁性層が情
報を再生するための磁気ヘッドに近い側に、磁壁移動制
御層が磁気ヘッドに遠い側に位置するように積層されて
いることが望ましい。また、フェリ磁性層(または人工
格子膜)と強磁性層と磁壁移動制御層の磁化容易軸は、
それら各層が磁気記録媒体を構成している状態で、いず
れも同じ向きであることが好ましい。
【0024】フェリ磁性層(または人工格子膜)と強磁
性層と磁壁移動制御層は、それぞれの層が有する保磁力
を比較した場合に、フェリ磁性層(または人工格子膜)
の保磁力が最も大きくなるように構成されることが好ま
しい。
【0025】また、フェリ磁性層(または人工格子膜)
と強磁性層と磁壁移動制御層のそれぞれの層が有する飽
和磁化を比較した場合、強磁性が最も大きな飽和磁化を
有することが好ましい。これによりフェリ磁性層(また
は人工格子膜)に記録された情報をより一層大きな再生
信号強度で再生することができる。
【0026】磁壁移動制御層は、磁化回転型の磁性材料
から構成されていることが好ましく、例えば、Co、C
o酸化物またはCo−Cr合金を主体とし、これにP
t、Pd、Ta、Nb及びTiから選ばれる少なくとも
一種類の元素を含む合金から構成されていることが好ま
しい。かかる材料を用いて磁壁移動制御層を構成するこ
とにより、フェリ磁性層(または人工格子膜)に形成さ
れる記録磁区の磁壁の位置を高精度に確定することがで
きるとともに、記録磁区のサイズや形状を所望のサイズ
や形状にすることができる。これによりフェリ磁性層
(または人工格子膜)に超高密度に情報を記録すること
ができ、記録した情報を低ノイズで再生することができ
る。
【0027】本発明の第1及び第2の態様の磁気記録媒
体において、フェリ磁性層や人工格子膜の有する磁気異
方性は、高密度記録の観点から、基板面に垂直方向の垂
直磁気異方性エネルギーが、3×10erg/cm
(3J/cm)以上であることが好ましく、特に6×
10erg/cm(6J/cm)以上であること
が好ましい。
【0028】また、フェリ磁性層や人工格子膜を構成す
る材料は、飽和磁化が100emu/cm以上で、保
磁力が3kOe(約238.74kA/m)以上である
ような磁気特性を有することが好ましく、また、膜厚は
100nm以下であることが好適である。ここで、フェ
リ磁性層または人工格子膜の飽和磁化や保磁力の値は、
それらを構成する材料の組成を変化させることにより調
節することができる。これにより、磁気記録装置の磁気
ヘッドの特性に合わせた磁気特性を有する磁気記録媒体
を提供できる。
【0029】本発明において、磁性膜または人工格子膜
の熱的安定性を高めるという観点から、KuV/kT
(Ku:結晶磁気異方性定数、V:活性化体積、k:ボ
ルツマン定数、T:温度)で表される関係において、磁
性膜または人工格子膜における活性化体積Vが当該磁性
膜または人工格子膜に形成される1つの記録磁区の体積
とほぼ等しくなるように、磁性膜または人工格子膜を構
成する材料を選択することが好ましい。かかる材料とし
ては、磁性膜の場合には、Tb−Fe−Co、Tb−D
y−Fe−Co、Tb−Gd−Fe−Co、Gd−Dy
−Fe−Co、Gd−Ho−Fe−Co、Dy−Ho−
Fe−Co、Ho−Fe−Co、Dy−Fe−Coが好
適であり、人工格子膜の場合には、希土類元素とFeと
Coの交互積層膜、希土類元素とFeCo合金の交互積
層膜、特にTb/Fe/Co膜が好適である。
【0030】本発明において、強磁性膜は、Coを主体
とする合金またはCoの酸化物を主体とする磁性薄膜か
ら構成することができ、それらにCr、Pt、Pd、T
a、Nb、Si及びTiのうちの少なくとも1種類の元
素が含まれていても良い。あるいは、強磁性膜は、C
o、Ni及びFeのうちの少なくとも1種類の元素とP
t、Pd及びRhのうちの少なくとも1種類の元素とを
交互に積層した交互積層多層膜を用いて構成しても良
い。若しくは、強磁性膜は、Co、Ni及びFeのうち
の少なくとも1種類の元素とPt、Pd及びRhのうち
の少なくとも1種類の元素とを用いて構成される合金層
と、Pt、Pd及びRhのうちの少なくとも1種類の元
素を用いて構成される層とを交互に積層した交互積層多
層膜を用いて構成しても良い。
【0031】本発明の磁気記録媒体において、基板は、
例えば、ガラス、樹脂またはAl合金から構成すること
ができる。基板は、表面に凹凸のテクスチャを有するこ
とが好ましい。基板表面のテクスチャは、記録や消去の
際に記録磁区の磁壁の移動の障壁になるので、記録磁区
の記録や消去に伴う磁壁の移動が抑制され、記録再生時
のノイズを減少させることができる。また、情報記録膜
としてのフェリ磁性層や人工格子膜に形成される磁区の
媒体上における位置を所望の位置に制御できるので、高
密度記録にとって好適である。また、かかるテクスチャ
を有する基板を用いることで、基板上に形成される上述
のフェリ磁性層や人工格子膜の磁気異方性の向きも制御
することができる。また、テクスチャは、基板表面を加
工することにより構成しても、基板上に凹凸を有する薄
膜を形成することにより構成してもよい。
【0032】本発明の第3の態様に従えば、磁気ヘッド
を用いて情報が再生される磁気記録媒体において、基板
と、基板面に垂直な方向に磁化容易軸を有する非晶質の
フェリ磁性材料から構成されるフェリ磁性層と、強磁性
材料から構成される強磁性層と、上記フェリ磁性層に形
成される磁壁の移動を抑制するための磁壁移動制御層と
を備えることを特徴とする磁気記録媒体が提供される。
【0033】本発明の第4の態様に従えば、磁気ヘッド
を用いて情報が再生される磁気記録媒体において、基板
と、基板面に垂直な方向に磁化容易軸を有する人工格子
膜と、強磁性材料から構成される強磁性層と、上記フェ
リ磁性層に形成される磁壁の移動を抑制するための磁壁
移動制御層とを備えることを特徴とする磁気記録媒体が
提供される。
【0034】本発明の第3及び第4の態様に従う磁気記
録媒体の各層の機能は、つぎに説明するとおりである。
【0035】基板面に垂直な方向に磁化容易軸を備える
フェリ磁性層または人工格子膜は、情報が記録される磁
性層であり、活性化体積及び磁気異方性エネルギーが大
きいので熱安定性に優れている。
【0036】強磁性層は、フェリ磁性層または人工格子
膜から発生する磁界を実質的に増大する機能を有してい
るので、情報再生時に強磁性層からの漏洩磁界を検出す
ることにより高い再生信号出力を得ることができる。
【0037】磁壁移動制御層は、フェリ磁性層または人
工格子膜に形成される記録磁区の磁壁の移動を抑制する
ことができ、フェリ磁性層または人工格子膜に形成され
る記録磁区を高精度に位置付け且つその位置を安定して
維持することができる。
【0038】本発明の第3及び第4の態様の磁気記録媒
体は、これら3種類の磁性層を備えているので、超高密
度に情報を記録することができるとともに、記録した情
報を高い再生信号出力で再生することができる。
【0039】本発明の第5の態様に従えば、本発明の第
1〜第4のいずれかの態様に従う少なくとも一つの磁気
記録媒体と、情報を記録または消去するための磁気ヘッ
ドと、磁気記録媒体を駆動するための駆動装置とを備え
ることを特徴とする磁気記録装置が提供される。
【0040】本発明の磁気記録装置は、本発明の第1〜
第4のいずれかの態様の磁気記録媒体を装着しているの
で、画像や音声、コードデータなどの情報を、低熱揺ら
ぎ、低熱減磁、低ノイズで高密度記録することができ
る。
【0041】本発明の磁気記録装置において、磁気記録
媒体へ記録した情報を再生するための磁気ヘッドは、例
えば、磁気記録媒体から発生する磁気フラックス(磁
束)の変化に対応して抵抗が変化する特性(磁気抵抗効
果)を有するMR(Magneto-Resistive)ヘッドやGM
R(Giant Magneto-Resistive)ヘッドを用いて構成し
得る。
【0042】本発明の磁気記録装置は、少なくとも情報
を記録する際に磁気記録媒体を加熱するための光を照射
する光ヘッドを備えることが好ましい。かかる光ヘッド
から発生させる光としては、パルス状に変調された光パ
ルスを用いることが好ましく、特に、一定幅のパルスの
集合体であるマルチパルスであることが最も好ましい。
【0043】また、かかる磁気記録装置は、情報の記録
を行なう際に、磁気記録媒体にパルス状の光を照射する
と同時に、光照射領域に磁気ヘッドから磁界を印加して
情報の記録を行なうことができる。このとき、磁気記録
媒体に印加する磁界は光パルスに同期したパルス磁界に
し得る。このように、情報記録の際に、磁気記録媒体に
パルス状の光を照射すると同時に、磁気ギャップの狭い
磁気ヘッドにより磁界を印加して、高い周波数で記録を
行なうことにより、微小記録磁区を形成することが可能
である。例えば、磁気ヘッドの記録周波数を30MHz
以上、より好適には50MHz以上にすることができ、
これにより高密度に情報を記録することができる。これ
は、光ヘッドからのレーザー光を磁気記録媒体に照射す
ると、磁気記録媒体の磁性膜の光照射領域では、光エネ
ルギーが熱エネルギーに変換されて磁性膜の光照射領域
の保磁力が低下する。保磁力の低下した磁性膜に磁気ヘ
ッドから高い記録周波数で磁界を印加することにより高
速に記録を行なうことが必要である。このように本発明
の磁気記録装置では、情報記録時に光加熱により媒体の
保磁力を低下させることができるので、高保磁力を有す
る磁気記録媒体を用いても確実に情報を記録することが
できる。すなわち、通常の磁気ヘッドは5kOe(約9
7.9kA/m)程度の磁界を発生できるので、5kO
e(約397.9kA/m)よりも高保磁力の磁気記録
媒体に情報を記録することができる。それゆえ高密度記
録用の磁気記録装置として好適である。
【0044】また、かかる磁気記録装置は、記録用の磁
気ヘッドを用いて、一定幅、一定長さの磁区を形成する
ことにより情報の記録あるいは消去を行なうことができ
る。そして、磁気記録媒体に形成される記録磁区のトラ
ック方向における幅が記録用の磁気ヘッドのギャップ幅
より狭くなるように記録磁区を形成することができる。
すなわち、光ヘッドからの光照射により磁性膜の保磁力
を低下させつつ磁界を印加することによって、磁性膜に
極めて微小な磁区を形成することができる。従来、磁気
記録方式において、磁気記録媒体に形成される磁区を微
小化するには、磁気ヘッドのギャップ長を短くするとと
もに、トラック幅を狭くしなければならなかった。しか
しながら磁気ヘッドの加工の問題やサーボ上の限界があ
るために磁区を微小化することは困難であった。また、
微小化した磁区を安定に存在させるためには磁性膜の保
磁力を高めなければならない。しかし、現状の磁気ヘッ
ドでは、発生可能な磁界強度も限界があり、高保磁力の
磁性膜を磁化させることは困難であった。また、光磁気
記録方式のように、磁気光学効果を利用した再生方式の
場合は、光の波長の制約が大きく、必ずしも高密度記録
には適していない。それゆえ、上述の磁気記録装置のよ
うに、光照射により媒体を加熱しつつ磁界を印加して情
報を記録、再生および消去する方法は、高密度記録を実
現するための有効な手段である。
【0045】本発明の磁気記録装置には、各種形態の情
報を記録、再生あるいは消去することができる。記録、
再生あるいは消去する情報としては、例えば、音声情
報、コードデータ、画像情報、磁気記録装置を制御する
ための制御情報のうちから選ばれる少なくとも1種の情
報であることが特に好ましい。
【0046】本発明の磁気記録装置は、磁気記録媒体の
面記録密度が40Gbits/inch(6.20G
bits/cm)を超える高密度記録を実現すること
が可能となる。
【0047】
【発明の実施の形態】以下、本発明の磁気記録媒体及び
それを備える磁気記録装置の実施例について詳細に説明
するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
【実施例1】本実施例では、本発明に従う磁気記録媒体
として、図1の概略断面図に示すような断面構造を有す
る磁気記録媒体を作製した。磁気記録媒体100は、基
板1上に下地膜2、情報記録膜3、強磁性膜4及び保護
膜5を順次積層した構造を有する。図1において、情報
記録膜3はTb/Fe/Co人工格子膜から構成され、
強磁性膜4はCo−Cr合金膜から構成される。以下、
磁気記録媒体100の製造方法について、適宜、成膜し
た膜の組成や構造についての分析を付け加えながら説明
する。
【0049】まず、基板1として、直径2.5インチ
(6.35cm)のガラス基板を用意した。次いで、こ
の基板1上に、下地膜2として窒化シリコン膜を膜厚1
0nmで形成した。下地膜2は、情報記録膜3の保護や
基板1との接着性を向上するために設けられる層であ
る。下地膜2の成膜には、マグネトロンスパッタ法を用
いた。ターゲットにはSiを用い、放電ガスには
Arを用いた。放電ガス圧力は10mTorr(約1.
33Pa)、投入RF電力は1kW/150mmφとし
た。
【0050】つぎに、下地膜2上に情報記録膜3を成膜
した。情報記録膜3は、Tb層、Fe層及びCo層から
なる三層構造の薄膜を周期的に積層した人工格子膜であ
る。三層構造薄膜の各層の膜厚は、Fe(1nm)/C
o(0.1nm)/Tb(0.2nm)である。かかる
情報記録膜(人工格子膜)3の成膜法として、Tb、F
e及びCoの3源からなる多源同時スパッタ法を用い
た。三層構造薄膜の各層の膜厚は、基板の公転速度とス
パッタ時の投入電力の組合せにより所望の値に精密に制
御できる。ここでは、投入DC電力を、Tb成膜時に
0.3kW、Co成膜時に0.15kW、そして、Fe
成膜時に0.7kWとした。基板の回転数は30rpm
とした。また、放電ガスには高純度のArガスを用い、
スパッタ時の放電ガス圧力は3mTorr(約399m
Pa)とした。かかるスパッタ条件のもとで、三層構造
薄膜Fe(1nm)/Co(0.2nm)/Tb(0.
4nm)を周期的に積層した構造を有する人工格子膜
(情報記録膜)を約40nm膜厚で形成した。この人工
格子膜は磁壁移動型の磁性膜である。
【0051】このような人工格子膜を成膜する場合、初
期排気時の真空度が重要である。ここでは、4×10
−9Torr(約532×10−9Pa)まで排気した
後に成膜を行なった。ここで、情報記録膜3を成膜する
際の数値は絶対的なものではなく、スパッタの方式など
により変化する。このように情報記録膜3を人工格子膜
として構成することにより、Tb−Fe−Co非晶質合
金膜を情報記録膜として用いた場合と比べて、垂直磁気
異方性エネルギーを増大することができ、情報記録膜の
熱的安定性を向上させことができる。また、かかる情報
記録膜3の磁化は、遷移金属の磁化と希土類元素の磁化
の差となり、本実施例では、遷移金属の磁化が希土類元
素の磁化よりも優勢になるように構成した。
【0052】つぎに、情報記録膜3上に強磁性層4とし
てCo67Cr33膜を形成した。強磁性層4は、情報
記録膜3と磁気的な交換相互作用を生じるように、膜厚
15nmにて成膜した。この膜厚は、情報記録膜3と交
換結合力が及ぶ最大の膜厚である。強磁性層4の成膜で
は、磁気的な結合を生じさせるために、情報記録膜3で
あるTb/Fe/Co交互積層人工格子膜を形成した後
に、途中真空を破ることなく連続で成膜を行なった。こ
こで、強磁性層4であるCo−Cr膜は、結晶化させな
いと良好な磁性を示さないことから、ECR(Electron
Cyclotron Resonance)スパッタ法に代表される共鳴吸
収を用いて励起した粒子をターゲットに衝突させ、発生
したスパッタ粒子を一定の引き込み電圧をバイアスとし
てターゲットと基板の間に印加することにより粒子の有
するエネルギーを一定に揃えてスパッタした。かかる方
法を用いれば、基板温度を高くすることなく低温で成膜
することができるので、Tb/Fe/Co交互積層人工
格子膜の層間拡散を抑制できる。かかる層間拡散が生じ
ると、特に、垂直磁気異方性エネルギーの低下や保磁力
の低下をきたす恐れがある。それゆえ、成膜時の基板温
度は低くすることが望ましく、上述のECRスパッタ法
は、Co−Cr系磁性膜のような結晶質磁性膜を低温で
形成する方法として有効な成膜手法である。っまた、T
b−Fe−Co非晶質合金を用いた場合も、この薄膜を
結晶化することなくCo−Cr膜を形成できる。かかる
スパッタの条件として、スパッタ時の圧力を0.3mT
orr(約39.9mPa)、投入マイクロ波電力を
0.7kWとした。また、マイクロ波により励起された
プラズマを引き込むために500VのDCバイアス電圧
を印加した。スパッタガスにはArを使用した。
【0053】最後に、こうして得られた強磁性層4上
に、保護膜5としてC(カーボン)膜を5nmの膜厚に
て成膜した。成膜にはマイクロ波を用いたECRスパッ
タ法を用いた。ターゲット材料にはC(カーボン)を、
放電ガスにはArをそれぞれ用いた。スパッタ時の圧力
は0.3mTorr(約39.9mPa)、投入マイク
ロ波電力は0.5kWである。また、マイクロ波により
励起されたプラズマを引き込むために500VのDCバ
イアス電圧を印加した。カーボン膜の膜質は、このよう
なスパッタの条件や電極構造に大きく依存しているの
で、この条件は絶対的なものではない。こうして図1に
示す積層構造を有する磁気記録媒体を得た。
【0054】つぎに、作製した磁気記録媒体100の磁
気特性を測定した。VSM(Vibration Sample Magneto
meter)によるM−Hループから、角型比SおよびS
ともに1.0であり、良好な角型性を有していた。ま
た、保磁力:Hcは3.9kOe(約310.362k
A/m)であった。また、情報記録膜の、基板面と垂直
な方向の垂直磁気異方性エネルギーが4×10erg
/cmであった。
【0055】次いで、磁気記録媒体100の活性化体積
を測定した。活性化体積の測定では、情報記録膜に記録
された磁区を、MFMや偏光顕微鏡を用いて観察し、磁
区の寸法を測定することによって求めた。活性化体積の
測定の結果、本実施例の磁気記録媒体の情報記録膜の活
性化体積は、磁気記録媒体として広く用いられているC
o−Cr−Pt系磁性膜における値の約5倍と著しく大
きかった。このことは、本実施例の情報記録膜は、熱揺
らぎや熱減磁の小さく、熱的安定性に優れていることを
示している。
【0056】つぎに情報記録膜3と強磁性膜4の飽和磁
化を求めた。強磁性膜4の飽和磁化は380emu/c
であり、情報記録膜3の飽和磁化230emu/c
よりも大きな値であった。また、情報記録膜3と強
磁性膜4の交換結合力は強く、情報記録膜3と強磁性膜
4が磁気的に単層膜のように振舞うことが、振動試料型
の磁力計(VSM)による測定よりわかった。このよう
に、情報記録膜3より大きな飽和磁化を有する材料を強
磁性膜4として用いるのは、情報記録膜3に形成された
磁区からの磁束を強磁性膜4で増大させるためである。
これにより、磁気記録媒体を、磁気ヘッドを用いて再生
したときに大きな再生出力が得られる。
【0057】つぎに、情報記録膜3及び強磁性膜4の構
造をX線回折法により調べた。その結果、Co−Crに
よる回折ピークのみが得られた。また、高分解能透過型
電子顕微鏡(高分解能TEM)により情報記録膜3及び
強磁性膜4の組織や構造を調べたところ、明確な格子が
見られたのは強磁性膜4であるCo−Cr膜のみであっ
た。これにより、その他の膜は、非晶質であるか、極微
細な組織の集合体であることがわかった。特に、情報記
録膜3は、Fe(1nm)/Co(0.1nm)/Tb
(0.2nm)三層構造薄膜からなる所望の膜厚の人工
格子膜となっていることがわかった。三層構造薄膜の各
層の膜厚はX線を用いた測定値とも良く一致していた。
【0058】つぎに、保護膜5上に潤滑剤を塗布するこ
とによって磁気ディスクを完成させた。そして同様のプ
ロセスにより複数の磁気ディスクを作製し、磁気記録装
置に同軸上に組み込んだ。磁気記録装置の概略構成を図
2及び図3に示す。図2は磁気記録装置200の上面の
図であり、図3は、磁気記録装置200の図2における
破線A−A’方向の断面図である。記録用磁気ヘッドと
して、2.1Tの高飽和磁束密度を有する軟磁性膜を用
いた薄膜磁気ヘッドを用いた。また、記録信号は、巨大
磁気抵抗効果を有するデュアルスピンバルブ型GMR磁
気ヘッドにより再生した。磁気ヘッドのギャップ長は
0.12μmであった。記録用磁気ヘッド及び再生用磁
気ヘッドは一体化されており、図2及び図3では磁気ヘ
ッド53として示した。この一体型磁気ヘッドは磁気ヘ
ッド用駆動系54により制御される。複数の磁気ディス
ク10はスピンドル52により同軸回転される。ここ
で、磁気ヘッド面とフェリ磁性層との距離は12nmに
保った。この磁気ディスク10に40Gbits/in
ch(6.20Gbits/cm)に相当する信号
(700kFCI)を記録してディスクのS/Nを評価
したところ、34dBの再生出力が得られた。また、こ
のディスクの欠陥レートを測定したところ、信号処理を
行なわない場合の値で、1×10−5以下であった。
【0059】ここで、磁気力顕微鏡(MFM)を用い
て、記録部分(記録磁区)の磁化状態を観察した。観察
の結果、磁化遷移領域に特有なジグザグパターンが観測
されなかった。図4(A)に、記録部分の磁化状態の様
子を模式的に示した。本実施例の磁気記録媒体には磁化
遷移領域に特有なジグザグパターンが殆ど存在しないた
めに、Co−Cr−Pt系の情報記録膜を備える磁気記
録媒体に比べてノイズレベルが著しく小さくなったと考
えられる。更には、情報記録膜が微細粒子の集合体であ
ることもノイズレベルが低い原因であると考えられる。
なお、比較のために、Co−Cr−Pt系の情報記録膜
を備える従来の磁気記録媒体について同様の記録を行な
い、情報記録膜の記録部分の磁化状態を観察した。図4
(B)に、磁化状態の様子を模式的に示した。図4
(B)に示したように、隣同士の記録磁区の間や記録磁
区の中に、周囲と逆向きの磁化を有する微小な逆磁区が
観察された。一方、本実施例の磁気記録媒体では、図4
(A)に示したように、隣同士の記録磁区の間や記録磁
区の中に、微小な逆磁区は殆ど観察されなかった。隣同
士の記録磁区の間や記録磁区の中に、微小な逆磁区が殆
ど存在しないこともノイズレベルが低い原因の1つであ
る。
【0060】本実施例では、情報記録膜を構成する人工
格子膜としてTb/Fe/Co系を用いた場合を示した
が、Tbの代わりにGd、DyまたはHoのいずれの希
土類元素を用いてもよく、Gd−Tb、Gd−Dy、G
d−Ho、Tb−DyまたはTb−Hoのような2種類
の希土類元素を用いて構成してもよい。また、人工格子
膜を構成する遷移金属膜として、Feからなる薄膜とC
oからなる薄膜のFe/Co二層膜を用いたが、Fe−
Co,Fe−Ni,Co−Niなどの合金からなる層を
用いて構成することもできる。
【0061】図1に示す積層構造において下地膜2は必
ず形成しなければならない膜ではなく、かかる下地膜2
の代わりに、情報記録膜に形成される記録磁区の磁壁の
移動を制御するための制御膜を形成することも可能であ
る。また、下地膜2の成膜では、Siをターゲットに、
Ar/Nを放電ガスに用いた反応性スパッタ法により
成膜してもよい。また、下地膜には、窒化シリコン以外
に、酸化シリコンなどの酸化物膜や窒化シリコン以外の
窒化物(例えば窒化アルミニウム)、更にはSi−Al
−O−Nなどの酸窒化物を用いても良い。
【0062】また、情報記録膜の成膜ではDCマグネト
ロンスパッタ法により作製したが、ここでは、RFマグ
ネトロンスパッタ法やエレクトロンサイクロトロンレゾ
ナンスを利用したスパッタ法(ECRスパッタ法)を用い
て行ってもよい。
【0063】また、本実施例では、強磁性膜としてCo
−Cr系を用いたが、Co−Cr−Ta系やCo−Cr
−Pt系、Co−Cr−Pt−Ta系などの強磁性膜を
用いてもよい。この場合、Coの濃度とそれ以外の元素
の濃度の割合が重要であり、その割合が垂直磁気異方性
エネルギーを決定する。強磁性膜中のCoの濃度は60
at%〜70at%程度が好ましい。また、本実施例に
おいて、強磁性膜としてCo系の材料を用いたのは、F
e系の材料より飽和磁化が大きいからである。
【0064】また、保護膜の成膜では、スパッタガスに
Arを使用したが、窒素を含むガスを用いて成膜しても
よい。窒素を含むガスを用いると、粒子が微細化すると
ともに、得られる保護膜(カーボン膜)が緻密化し、保
護性能をさらに向上させることができる。また、保護膜
の作製にECRスパッタ法を用いたのは、2〜3nmの
極薄膜でも、緻密でかつピンホールフリーで、しかも、
カバレージの良いカーボン膜が得られるからである。こ
れに加えて、保護膜を作製する場合に情報記録膜が受け
るダメージを著しく小さくすることができるという特徴
もある。高密度化の進行とともに、情報記録膜の薄膜化
が進むので、成膜時に受けるダメージによる磁気特性の
低下は致命的になる。保護膜の成膜には、ECRスパッ
タ法の他にDCスパッタ法を用いても良い。この場合、
形成する保護膜の膜厚が5nm以上の場合に用いること
が望ましい。これより薄い場合は不向きな場合がある。
これは、1)情報記録膜表面のカバレージが悪くなる恐
れがある、2)保護膜の密度や硬度が十分でなくなる恐
れがある、などの理由による。
【0065】
【実施例2】本実施例では、強磁性膜にCoO膜を用い
た以外は、実施例1と同様の材料及び方法を用いて磁気
記録媒体を製造した。以下では、強磁性膜であるCoO
膜の成膜方法についてのみ説明し、情報記録膜以外の膜
の成膜方法については実施例1と同様であるので説明を
省略する。
【0066】強磁性膜の成膜ではECRスパッタ法を用
いた。このスパッタ法を用いると、CoOのストイキオ
メトリを維持したまま成膜することができる。CoOの
ECRスパッタ法による成膜の条件は、スパッタ時の圧
力が0.3mTorr(約39.9mPa)、投入マイ
クロ波電力が0.7kWである。また、マイクロ波によ
り励起されたプラズマを引き込むために500WのRF
バイアス電圧を印加した。ここでは、スパッタガスにA
rを使用した。VSMによる測定の結果、CoO膜のみ
の飽和磁化は450emu/cmであった。なお、R
Fスパッタ法やDCスパッタ法を用いると、ストイキオ
メトリのずれを生じ、磁気特性が変化するので好ましく
ない。以上が強磁性膜の成膜方法である。
【0067】つぎに、CoOからなる強磁性膜を備える
本実施例の磁気記録媒体の磁気特性を測定した。VSM
によるM−Hループから、情報記録膜と強磁性膜の2層
の磁性膜の角型比S及びSは1.0であり、良好な角
型性を有していた。また、保磁力:Hcは3.7kOe
(約294.446kA/m)であった。また、情報記
録膜の、基面板に垂直な方向の垂直磁気異方性エネルギ
ーが5×10erg/cmであり、情報記録膜は基
板面に垂直な方向に大きな磁気異方性を有する磁性体で
あった。
【0068】つぎに、実施例1と同様の方法により、磁
気記録媒体の活性化体積を測定したところ、磁気記録媒
体として広く用いられているCo−Cr−Pt系情報記
録膜における値の約5倍と大きかった。それゆえ、本実
施例の磁気記録媒体の情報記録膜は熱的安定性に優れて
いる。
【0069】つぎに、実施例1と同様に、保護層上に潤
滑剤を塗布して磁気ディスクを複数作製し、得られた複
数の磁気ディスクを磁気記録装置に同軸上に組み込ん
だ。磁気記録装置の構成は実施例1と同様であり、図2
及び図3に示すような構成にした。得られた磁気ディス
クの記録再生特性を評価した。記録再生特性の評価で
は、磁気ヘッドと磁気記録媒体との距離を12nmに保
ち、このディスクに40Gbits/inch(6.
20Gbits/cm)に相当する信号(700kF
CI)を記録してディスクのS/Nの評価を行なった。
その結果、34dBの再生出力が得られた。また、この
ディスクの欠陥レートを測定したところ、信号処理を行
なわない場合の値で、1×10−5以下であった。
【0070】ここで、磁気力顕微鏡(MFM)により、
記録部分(記録磁区)の磁化状態を観察したところ、磁
化遷移領域に特有なジグザグパターンが観測されなかっ
た。また、隣り合う2つの記録磁区の間や記録磁区の中
には、周囲と異なる向きの逆磁区は観察されなかった。
そのために、ノイズレベルがCo−Cr−Pt系の通常
の磁気記録媒体に比べて著しく小さかった。
【0071】本実施例では、強磁性膜にはCoOを用い
たが、CoO以外に、例えば垂直磁気異方性を有し且つ
情報記録膜よりも大きな飽和磁化を有するCo−CoO
系の強磁性膜を用いても同様の効果が得られる。
【0072】
【実施例3】本実施例は、基板表面に凹凸のテクスチャ
を有する基板を用いた以外は、実施例1と同様の材料及
び方法を用いて、図1と同様の積層構造を有する磁気記
録媒体を作製した。基板表面へのテクスチャの形成に
は、例えば、1)基板の表面を研磨と同時に設ける方
法、2)アイランド状の極薄の薄膜を形成し、これをテ
クスチャとして用いる、などの手法があり、いずれの方
法を用いても良い。このようなテクスチャを有する基板
上に、実施例1と同様にして各膜を積層して磁気記録媒
体を作製した。
【0073】かかる磁気記録媒体の磁気特性を調べたと
ころ、実施例1で作製した磁気記録媒体と同様の磁気特
性を有していることがわかった。次いで、実施例1と同
様に、磁気ディスクを複数作製し、得られた複数の磁気
ディスクを磁気記録装置に同軸上に組み込んだ。磁気記
録装置の構成は実施例1と同様であり、図2及び図3に
示すような構成にした。そして得られた磁気ディスクの
記録再生特性を評価した。その結果、実施例1の磁気デ
ィスクよりもノイズレベルが約1dB低かった。このよ
うにノイズレベルが低下したのは、MFMによる解析の
結果から、基板表面に形成されたテクスチャの凹凸のた
めに、記録磁区の磁壁の移動が抑制され、情報を記録し
た後の磁化反転領域のジグザグパターンが平坦になった
ためであることがわかった。この基板のテクスチャによ
る磁壁の移動の抑制効果は、用いる磁性材料に依存する
ことはない。また、基板表面にテクスチャを設ける代わ
りに、情報記録膜の形成の前に下地膜の表面に凹凸を形
成しても良い。本実施例から、表面にテクスチャを有す
る基板は、記録磁区の形成精度の向上及びノイズの低減
に効果があることがわかる。
【0074】
【実施例4】本実施例では、強磁性層にCo/Pt交互
積層多層膜を用いた以外は、実施例1と同様の材料及び
方法を用いて磁気記録媒体を製造した。磁気記録媒体の
構造は、実施例1の磁気記録媒体と同様であり、図1を
参照することができる。基板1には、実施例1と同様
に、2.5インチ(6.35cm)サイズのガラス基板
を用い、かかる基板上に、実施例1と同様の条件にて、
下地膜2として窒化シリコンを、情報記録膜3としてT
b/Fe/Co人工格子膜を順次形成した。
【0075】次いで、情報記録膜3上に強磁性層4とし
てPt/Co交互積層多層膜を8nmの膜厚にて成膜し
た。Pt/Co交互積層多層膜は、Pt薄膜とCo薄膜
からなる2層構造薄膜を周期的に順次積層して得られ
る。Pt/Co交互積層多層膜の成膜には、Pt及びC
oの2源からなる多源同時スパッタ法を用いた。ここ
で、2層構造薄膜の各層の膜厚はPt(0.5nm)/
Co(0.9nm)とした。2層構造薄膜の各層の膜厚
は、基板の公転速度とスパッタ時の投入電力の組合せに
より所望の値に精密に制御できる。本実施例では、投入
DC電力を、Pt成膜時に0.3kWに、Co成膜時に
0.6kWに制御した。成膜時の基板の回転数は30r
pmである。また、スパッタ時の放電ガス圧力は3mT
orr(約399mPa)、放電ガスには高純度のAr
ガスを用いた。
【0076】このような交互積層多層膜を作製する場
合、初期排気時の真空度が重要であり、本実施例では、
4×10−9Torrまで排気した後に成膜を開始し
た。これらの値は絶対的なものではなく、スパッタの方
式などに応じて変更することができる。ここで、交互積
層多層膜の成膜に、DCマグネトロンスパッタ法を用い
たが、RFマグネトロンスパッタ法やエレクトロンサイ
クロトロンレゾナンスを利用したスパッタ法(ECRス
パッタ法)を用いてもよい。特に、微細な結晶の集合体
となるCo層を成膜する場合には、ECRスパッタを用
いることが効果的である。
【0077】最後に、強磁性層4上に保護層5を実施例
1と同様の方法により成膜することによって磁気記録媒
体を作製した。
【0078】つぎに、こうして作製した磁気記録媒体の
磁気特性を測定した。VSMによるM−Hループから、
角型比SおよびSともに1.0であり、良好な角型性
が得られた。また、保磁力:Hcは3.9kOe(約3
10.362kA/m)であった。また、情報記録膜の
磁気異方性は、基板表面と平行方向の面内磁気異方性エ
ネルギーが1×10erg/cmであり、基板表面
に垂直な方向の垂直磁気異方性エネルギーは4×10
erg/cmであった。また、磁気記録媒体の活性化
体積を測定したところ、Co−Cr−Pt系磁性膜を備
える磁気記録媒体の約5倍と著しく大きな値を有してい
た。このことは、情報記録膜を構成している材料が、熱
揺らぎや熱減磁が小さく熱的安定性に優れていることを
示している。
【0079】また、情報記録膜及び強磁性膜の構造をX
線回折法により調べたところ、回折ピークは得られなか
った。このことから、情報記録膜及び強磁性膜全体が非
晶質であるか、あるいは、微結晶の集合体であることが
わかる。また、高分解能透過型電子顕微鏡(高分解能T
EM)により情報記録膜及び強磁性膜の組織や構造を調
べたところ、格子が見られたのは情報記録膜及び強磁性
膜に含まれるFe及びCo粒子のみであり、それ以外の
部分は非晶質構造を有していることがわかった。特に、
情報記録膜は、Fe(1nm)/Co(0.1nm)/
Tb(0.2nm)の三層構造薄膜が周期的に積層され
た所望の膜厚を有する人工格子膜であることがわかっ
た。三層構造薄膜の各層の膜厚はX線を用いた測定値と
も良く一致していた。また、強磁性膜もPt/Coの交
互積層膜となっていた。
【0080】つぎに、実施例1と同様の方法により、磁
気記録媒体の活性化体積を測定したところ、磁気記録媒
体として広く用いられているCo−Cr−Pt系磁性膜
における値の約5倍と大きかった。このことは、情報記
録膜が熱的安定性に優れていることを示している。
【0081】つぎに、実施例1と同様に、保護層上に潤
滑剤を塗布して磁気ディスクを複数作製し、得られた複
数の磁気ディスクを磁気記録装置に同軸上に組み込ん
だ。磁気記録装置の構成は実施例1と同様であり、図2
及び図3に示すような構成にした。得られた磁気ディス
クの記録再生特性を評価した。記録再生特性の評価で
は、磁気ヘッドと磁気記録媒体との距離を12nmに保
ち、このディスクに40Gbits/inch(6.
20Gbits/cm)に相当する信号(700kF
CI)を記録してディスクのS/Nの評価を行なった。
その結果、34dBの再生出力が得られた。また、この
ディスクの欠陥レートを測定したところ、信号処理を行
なわない場合の値で、1×10−5以下であった。
【0082】ここで、磁気力顕微鏡(MFM)を用い
て、記録部分(記録磁区)の磁化状態を観察したとこ
ろ、磁化遷移領域に特有なジグザグパターンが観測され
なかった。本実施例の磁気記録媒体には磁化遷移領域に
特有なジグザグパターンが殆ど存在しないために、Co
−Cr−Pt系の磁性膜を備える磁気記録媒体に比べて
ノイズレベルが著しく小さくなっていると考えられる。
更には、磁性膜が微細粒子の集合体であることもノイズ
レベルが低い原因であると考えられる。本実施例の磁気
記録媒体では、隣同士の記録磁区の間や記録磁区の中
に、周囲と逆向きの磁化を有する微小な逆磁区は観察さ
れなかった。このことも、ノイズレベルが低い原因の1
つである。
【0083】本実施例は、強磁性膜にCo/Pt系の交
互積層磁性膜を用いたが、Coの代わりにFeやNiを
用いても良い。また、Ptの代わりにPdやRhを用い
ることも可能であり、同様の効果が得られる。
【0084】
【実施例5】本実施例では、情報記録膜の保磁力を高め
るために情報記録膜を構成する材料の組成を変更した以
外は、実施例1と同様の積層構造を有する磁気記録媒体
(図1参照)を実施例1と同様の方法により作製した。
情報が記録される情報記録膜の保磁力を高めることによ
り更なる高密度記録が可能である。
【0085】かかる磁気記録媒体の磁気特性を測定し
た。VSMの測定によって得られたM−Hループから、
角型比SおよびSともに1.0であり、良好な角型性
を示していた。また、保磁力:Hcは3.9kOe(約
310.362kA/m)であった。また、情報記録膜
のキュリー温度は260℃、補償温度は室温以下であ
り、鉄族元素の副格子磁化が優勢な組成であった。かか
る情報記録膜の磁気異方性を求めたところ、基板表面と
平行方向の面内磁気異方性エネルギーが1×10er
g/cmであり、基板と垂直方向の垂直磁気異方性エ
ネルギーが4×10 erg/cmであった。この垂
直磁気異方性エネルギーの値は、Tb−Fe−Co非晶
質合金の値の4倍以上であった。
【0086】つぎに、磁気記録媒体の活性化体積を測定
した。活性化体積の測定は、実施例1と同様である。活
性化体積の測定の結果、本実施例の磁気記録媒体の情報
記録膜の活性化体積は、磁気記録媒体として広く用いら
れているCo−Cr−Pt系磁性膜における値の約60
倍と著しく大きかった。また、Tb−Fe−Co系非晶
質合金における値の1.2倍であった。このことは、本
実施例の情報記録膜は、熱揺らぎや熱減磁の小さい熱的
安定性に優れた材料であることを示している。
【0087】次いで、情報記録膜及び強磁性膜の構造を
X線回折法により調べたところ、Co−Crによる回折
ピークのみが得られた。更に、高分解能透過型電子顕微
鏡(高分解能TEM)により情報記録膜及び強磁性膜の
組織や構造を調べたところ、明確な格子が見られたのは
強磁性膜であるCo−Cr膜のみであり、その他の膜
は、非晶質であるか、極微細な組織の集合体であること
がわかった。特に、情報記録膜は、Fe(1nm)/C
o(0.1nm)/Tb(0.2nm)三層構造薄膜か
らなる所望の膜厚の人工格子膜となっていることがわか
った。三層構造薄膜の各層の膜厚はX線を用いた測定値
とも良く一致していた。
【0088】つぎに、磁気記録媒体の表面にテープクリ
ーニングを行なった後、潤滑剤を塗布して磁気ディスク
を完成させた。そして同様のプロセスにより複数の磁気
ディスクを作製し、磁気記録装置に同軸上に組み込ん
だ。磁気記録装置の概略構成を図5に示す。図5(A)
は磁気記録装置300の上面の図であり、図5(B)
は、図5(A)に示した磁気記録装置300の磁気ヘッ
ド53近傍の部分拡大断面図である。
【0089】磁気記録装置300において、光ヘッド5
5と磁気ヘッド53は、図5(B)に示すように、磁気
ディスク51を介して互いに対向するように配置されて
いる。光ヘッド55は、波長:630nmの半導体レー
ザー(不図示)と、開口比:NAが0.60のレンズ5
6を備える。図5(A)及び(B)において磁気ヘッド
53は、記録用磁気ヘッド及び再生用磁気ヘッドが一体
化された一体型の磁気ヘッドである。記録用磁気ヘッド
には、2.1Tの高飽和磁束密度を有する軟磁性膜を用
いた薄膜磁気ヘッドを用いた。記録用磁気ヘッドのギャ
ップ長は0.12μmであった。再生用磁気ヘッドに
は、巨大磁気抵抗効果を有するデュアルスピンバルブ型
GMR磁気ヘッドを用いた。この一体型磁気ヘッド53
は磁気ヘッド用駆動系54により制御され、磁気ヘッド
駆動系54で用いた制御情報に基づいて光ヘッド55の
位置の制御が行なわれる。複数の磁気ディスク51はス
ピンドル52により同軸回転される。磁気ヘッド53
は、情報の記録時または再生時に、磁気ヘッド53の底
面と磁気ディスク51の表面との距離が12nmになる
ように制御される。
【0090】かかる磁気記録装置300を駆動させて、
磁気ディスク51に40Gbits/inch(6.
20Gbits/cm)に相当する信号(700kF
CI)を記録した後、記録した情報を再生したところ、
36dBの再生出力が得られた。ここで、情報の記録で
は、光ヘッド55により、磁気ディスク51にレーザー
パワー6mW、パルス間隔20nsのマルチパルスレー
ザー光を連続して照射するとともに、磁気ヘッド53に
より一定変調させた磁界を印加した。なお、光ヘッドか
ら、レーザーパワー15mW、パルス間隔10nsの微
小光パルスを照射するとともに、当該微小光パルスに同
期したパルス磁界を、磁気ヘッドを用いて印加すること
によって磁気ディスクに情報を記録することもできる。
この磁気ディスクの欠陥レートを測定したところ、信号
処理を行なわない場合の値で、6×10−6以下であっ
た。
【0091】ここで、磁気力顕微鏡(MFM)を用い
て、記録部分(記録磁区)の磁化状態を観察した。形成
されていた記録磁区のサイズは、トラック方向の幅が7
0nmであり、磁気ヘッドのギャップ長よりも短かっ
た。また、パルス磁界とパルス光を用いて情報の記録を
行い、それによって形成された記録磁区は、トラック方
向の幅が50nmであり、磁気ヘッドのギャップ長より
も更に短かった。
【0092】
【実施例6】本実施例では、情報記録膜の保磁力を高め
るために情報記録膜を構成する材料組成を変更した以外
は、実施例4と同様の材料及び方法により磁気記録媒体
を作製した。すなわち、ガラス基板上に下地膜である窒
化シリコンと、情報記録膜であるTb/Fe/Co交互
積層人工格子膜と、強磁性膜であるCo/Pt交互積層
人工格子膜と、カーボン保護膜を順次形成した。本実施
例の磁気記録媒体も、実施例5の磁気記録媒体と同様
に、情報が記録される情報記録膜の保磁力を高めている
ので高密度記録が可能である。
【0093】本実施例の磁気記録媒体について磁気特性
の測定を行なった。VSMの測定によって得られたM−
Hループから、角型比SおよびSともに1.0であ
り、良好な角型性を示していた。また、保磁力:Hcは
13.9kOe(約1106.162kA/m)であ
り、実施例2で作製した磁気記録媒体の保磁力よりも大
きかった。また、情報記録膜のキュリー温度は270
℃、補償温度は90℃であり、希土類元素の副格子磁化
が優勢な組成であった。情報記録膜の飽和磁化は100
emu/cmであり、強磁性膜の飽和磁化は450e
mu/cmであった。また、情報記録膜の磁気異方性
を求めたところ、基板表面と平行方向の面内磁気異方性
エネルギーが1×10erg/cmであり、基板と
垂直方向の垂直磁気異方性エネルギーが4×10er
g/cmであった。この垂直磁気異方性エネルギーの
値は、磁気記録媒体として広く用いられているCo−C
r−Pt系磁性膜における値の1.2倍以上であった。
【0094】つぎに、磁気記録媒体の活性化体積を測定
した。活性化体積の測定は、実施例1と同様である。活
性化体積の測定の結果、本実施例の磁気記録媒体の情報
記録膜の活性化体積は、前述のCo−Cr−Pt系磁性
膜における値の約6倍と著しく大きかった。このこと
は、本実施例の磁気記録媒体の情報記録膜は、熱揺らぎ
や熱減磁の小さい熱的安定性に優れた材料であることを
示している。
【0095】次いで、また、情報記録膜及び強磁性膜の
構造をX線回折法により調べたところ、回折ピークは得
られなかった。このことから、情報記録膜及び強磁性膜
全体が非晶質であるか、あるいは、微結晶の集合体であ
ることがわかる。また、高分解能透過型電子顕微鏡(高
分解能TEM)により情報記録膜及び強磁性膜の組織や
構造を調べたところ、格子が見られたのは情報記録膜及
び強磁性膜に含まれるFe及びCo粒子のみであり、そ
れ以外の部分は非晶質構造を有していることがわかっ
た。特に、情報記録膜は、Fe(1nm)/Co(0.
1nm)/Tb(0.2nm)の三層構造薄膜が周期的
に積層された所望の膜厚を有する人工格子膜であること
がわかった。三層構造薄膜の各層の膜厚はX線を用いた
測定値とも良く一致していた。また、強磁性膜もPt/
Coの交互積層膜となっていた。
【0096】つぎに、磁気記録媒体の表面にテープクリ
ーニングを行なった後、潤滑剤を塗布して磁気ディスク
を完成させた。そして同様のプロセスにより複数の磁気
ディスクを作製し、実施例5で示した磁気記録装置と同
じ構造の磁気記録装置に組み込んだ。
【0097】磁気記録装置を駆動させて、磁気ディスク
に40Gbits/inch(6.20Gbits/
cm)に相当する信号(700kFCI)を記録した
後、記録した情報を再生した。その結果、36dBの再
生出力が得られた。また、この磁気ディスクの欠陥レー
トを測定したところ、信号処理を行なわない場合の値
で、6×10−6以下であった。ここでの情報の記録で
は、磁気ディスクに、光ヘッドにより、パルス間隔20
nsのマルチパルスレーザー光をレーザーパワー6mW
にて連続して照射するとともに、磁気ヘッドにより一定
変調させた磁界を印加した。また、光ヘッドから出射さ
せる光として、レーザーパワー15mW、パルス間隔1
0nsの微小光パルスを用い、磁気ヘッドから発生させ
る磁界として、微小光パルスに同期したパルス磁界を用
いてもよい。更には、光ヘッドからのレーザー光をデフ
ォーカスさせた状態で磁気ディスクに照射しつつ、磁気
ヘッドを用いて磁界を印加することによって情報の記録
を行なうこともできる。
【0098】本実施例の磁気記録装置のように、情報記
録時に、磁気ディスクにレーザー光を照射すると、情報
記録膜の光照射領域において光吸収が生じ、光エネルギ
ーが熱エネルギーに変換される。これにより情報記録膜
の光照射部分では、温度が上昇して保磁力が低下する。
同時に、かかる情報記録膜の光照射部分に、薄膜磁気ヘ
ッドから記録情報に応じた極性の磁界を印加することに
よって情報を記録する。本実施例の磁気記録装置では、
磁気記録媒体を構成する情報記録膜の保磁力が磁気ヘッ
ドの印加磁界強度よりも高くても確実に且つ高密度に情
報を記録することができる。
【0099】ここで、磁気力顕微鏡(MFM)を用い
て、記録部分(記録磁区)の磁化状態を観察した。観察
の結果、磁化遷移領域に特有なジグザグパターンは観測
されなかった。また、形成されていた記録磁区のサイズ
は、トラック方向の幅が70nmであり、磁気ヘッドの
ギャップ長よりも短かった。また、パルス磁界とパルス
光を用いて情報の記録を行った場合には、形成された記
録磁区は、トラック方向の幅が50nmであり、磁気ヘ
ッドのギャップ長よりも更に短かった。
【0100】
【実施例7】本実施例では、実施例1と同一の磁気記録
媒体を用い、かかる磁気記録媒体を、図6に示すように
磁気ヘッド53’及び光ヘッド55’が磁気ディスク5
1に対して同じ側に配置されている以外は、実施例4の
磁気記録装置(図5(A)参照)と同じ構造を有する磁
気記録装置に組み込んで記録/再生/消去を行なった。
本実施例の磁気記録装置では、光ヘッド55’から出射
する光は、磁気ディスク51の基板側から入射するので
はなく、基板と反対側から入射する。かかる磁気記録装
置は、光ヘッドと磁気ヘッドをマージすることができる
ので、ヘッドのサーボ機構を単純にすることができ、装
置構成を簡素化することができる。
【0101】かかる磁気記録装置を駆動して、磁気ディ
スクに40Gbits/inch(6.20Gbit
s/cm)に相当する信号(700kFCI)を記録
した。情報の記録では、磁気ヘッドの底面と磁気ディス
ク表面との距離を12nmに保った。また、磁気記録媒
体に、光ヘッドから20ns間隔のマルチパルス光をレ
ーザーパワー6mWにて連続して照射すると同時に、磁
気ヘッドから一定の変調した磁界を印加して情報を記録
した。かかる方法を用いて磁気ディスクに情報を記録
し、記録した情報を再生したところ36dBの再生出力
が得られた。また、光ヘッドから出射させる光として、
パルス間隔10ns、パワー15mWの微小光パルスを
用い、磁気ヘッドから発生させるパルス磁界を微小パル
スと同期させることによって磁気ディスクに情報を記録
することもできる。
【0102】また、磁気ディスクに記録された記録磁区
を、実施例1と同様にMFMにより観察したところ、磁
気ヘッドのギャップ幅よりも更に小さい磁区が形成され
ていた。本実施例の磁気記録装置では、磁気記録媒体の
磁性膜が磁気ヘッドの印加磁界強度よりも高い保磁力を
有していても、レーザー光照射による加熱により磁性膜
の保磁力を低下させて記録することができる。最後に、
このディスクの欠陥レートを測定したところ、信号処理
を行なわない場合の値で、1×10−5以下であった。
【0103】
【実施例8】この実施例では、図7の概略断面図に示す
ような断面構造を有する磁気記録媒体を作製した。磁気
記録媒体70は、基板71上に下地膜72、第1磁性膜
73、第2磁性膜74、第3磁性膜75及び保護膜76
を順次積層した構造を有する。第1磁性膜73は第2磁
性膜に形成される磁壁の移動を抑制するための層(磁壁
移動制御層)であり、Co−Cr−Pt膜を用いて構成
される。第2磁性膜74は情報が記録される層(情報記
録層)であり、Tb−Fe−Co膜を用いて構成され
る。第3磁性膜は再生時に再生信号出力を高めるための
層であり、Pt/Co交互積層多層膜を用いて構成され
る。以下、磁気記録媒体70の製造方法について説明す
る。
【0104】〔下地膜の成膜〕まず、基板71として、
直径2.5インチ(約6.35cm)のガラス基板を用
意した。かかる基板1上に、下地膜72としてCr80
Ti20合金膜をDCマグネトロンスパッタ法により形
成した。下地膜72は、第1磁性膜73の配向性を制御
することができる。ターゲット材料にはCr−Ti合金
を、放電ガスには純Arをそれぞれ使用した。スパッタ
時の圧力は3mTorr(約399mPa)、投入DC
電力は1kW/150mmφである。また、スパッタは
室温にて行なった。スパッタを室温にて行なうことによ
り、形成される合金膜が微細になり、その結果、下地膜
72上に形成される第1磁性膜73の結晶粒子を微細化
することができるからである。下地膜72の膜厚は10
nmとした。
【0105】〔第1磁性膜の成膜〕次いで、下地膜72
上に第1磁性膜73として、Co53Cr35Pt12
からなる垂直磁化膜をDCスパッタ法により形成した。
ターゲット材料にはCo−Cr−Pt合金を、放電ガス
には純Arをそれぞれ使用した。スパッタ時の圧力は3
mTorr(約399mPa)、投入DC電力は1kW
/150mmφである。また、成膜時の基板温度は20
0℃とした。
【0106】ここで、成膜された第1磁性膜の断面構造
を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、
第1磁性膜73の膜厚は10nmであり、Cr−Ti膜
(下地膜)からエピタキシャル成長していることがわか
った。
【0107】次いで、第1磁性膜単体の磁気特性を調べ
たところ、保磁力は2.8kOe(約222.824k
A/m)であり、垂直磁気異方性エネルギーは8×10
erg/cm、飽和磁化は300emu/mlであ
った。
【0108】また、成膜された第1磁性膜の表面には、
磁性膜中の結晶粒子に対応した凹凸が形成されていた。
かかる凹凸の寸法を調べたところ、ある一つの山(凸
部)の頂点(凸部の中央)から最も近い山の頂点(凸部
の中央)までの基板面に平行な方向の距離は2μmであ
った。また、山(凸部の中央)と谷(凹部の中央)との
距離は4nmであった。
【0109】〔第2磁性膜の成膜〕次いで、第1磁性膜
73上に第2磁性膜74として、Tb−Fe−Co非晶
質膜を、第1磁性膜73の成膜後に真空を破ることなく
形成した。第2磁性膜74の組成はTb21Fe69
10であり、遷移金属の副格子磁化が優勢の組成であ
る。第2磁性膜74の成膜にはRFマグネトロンスパッ
タ法を用いた。スパッタリングでは、Tb−Fe−Co
合金をターゲット材料に、純Arを放電ガスにそれぞれ
使用した。成膜した第2磁性膜74の膜厚は20nmで
ある。スパッタ時の圧力は3mTorr(約399mP
a)、投入DC電力は1kW/150mmφである。
【0110】得られた第2磁性膜74の保磁力は3.5
kOe(約278.53kA/m)であり、飽和磁化は
250emu/ml、垂直磁気異方性エネルギーは7×
10 erg/cm以上であった。
【0111】〔第3磁性膜〕次いで、第2磁性膜74上
に第3磁性膜75としてPt/Co交互積層多層膜を形
成した。第3磁性膜75は再生特性を向上させるための
層である。Pt/Co交互積層多層膜は、Pt薄膜とC
o薄膜からなる2層構造薄膜を周期的に順次積層して得
られる。Pt/Co交互積層多層膜の成膜には、Pt及
びCoの2源のターゲットからなる2源同時スパッタ法
を用いた。ここで、2層構造薄膜の各層の膜厚はPt
(0.5nm)/Co(0.9nm)とした。2層構造
薄膜の各層の膜厚は、基板の公転速度とスパッタ時の投
入電力の組合せにより所望の値に精密に制御できる。本
実施例では、投入DC電力を、Pt成膜時に0.3kW
に、Co成膜時に0.6kWに制御した。成膜時の基板
の回転数は30rpmである。また、スパッタ時の放電
ガス圧力は3mTorr(約399mPa)、放電ガス
には高純度のArガスを用いた。成膜された第3磁性膜
全体の膜厚は10nmとした。
【0112】かかる第3磁性膜単体の保磁力は2kOe
(約159.16kA/m)であり、垂直磁気異方性エ
ネルギーは4×10erg/cm以上、飽和磁化は
500emu/mlであった。
【0113】〔保護膜の成膜〕最後に、第3磁性膜75
上に保護膜76としてC(カーボン)膜を5nmの膜厚
でECRスパッタ法により形成した。ターゲット材料に
Cを、放電ガスにArをそれぞれ用いた。スパッタ時の
圧力は0.3mTorr(約399mPa)、投入マイ
クロ波電力は0.7kWである。また、マイクロ波によ
り励起されたプラズマを引き込むために500WのRF
バイアス電圧を印加した。
【0114】〔磁気特性の測定〕こうして図7に示す積
層構造を有する磁気記録媒体70を作製し、得られた磁
気記録媒体70の磁気特性を測定した。VSM(Vibrat
ion Sample Magnetometer)による測定からM−Hルー
プを得た。その結果から、角型比S及びSは1.0で
あり、良好な角型性が得られたことが分かった。また、
保磁力:Hcは4.5kOe(約358.11kA/
m)、飽和磁化:Msは300emu/cm であっ
た。また、M−Hループの形状から、第1〜第3磁性膜
は交換結合していることがわかった。また、基板面に垂
直な方向の垂直磁気異方性エネルギーが8×10er
g/cmであり、基板面に対して垂直な方向に大きな
磁気異方性を有することがわかった。また、磁気記録媒
体の磁性膜の活性化体積を測定したところ、Ku・v/
kT=250であった。このことは、磁気記録媒体の磁
性膜が熱的安定性に優れていることを示している。
【0115】〔磁気記録装置〕つぎに、磁気記録媒体7
0の表面上に潤滑剤を塗布することによって磁気ディス
クを完成させた。そして同様のプロセスにより複数の磁
気ディスクを作製し、実施例1と同様に、図2及び3に
示す磁気記録装置に同軸上に組み込んだ。かかる磁気記
録装置を用いて情報の記録及び再生を行った。記録及び
再生時には磁気ヘッド面と磁性膜との距離を12nmに
保った。磁気ディスクに40Gbits/inch
相当する信号(700kFCI)を記録してディスクの
S/Nを評価したところ、34dBの再生出力が得られ
た。
【0116】次いで、磁気ディスクに一定のパターンを
記録し、タイムインターバルアナライザにより磁性膜に
形成された磁区のエッジの揺らぎを測定した。測定の結
果、第1磁性膜を備えない磁気ディスクよりも揺らぎを
1/10以下に低減することができた。また、磁気ディ
スクの欠陥レートを測定したところ、信号処理を行なわ
ない場合の値で1×10−5以下であった。ここで、磁
気力顕微鏡(MFM)により、記録した部分の磁化状態
を観察したところ、磁化遷移領域に特有なジグザグパタ
ーンが観測されなかった。そのために、ノイズレベルを
低減できたと考えられる。また、情報を記録するための
第2磁性膜が非晶質であることもノイズレベルを低減で
きた一因である。
【0117】本実施例では、第2磁性膜に形成される磁
区のサイズや位置を制御するための第1磁性膜としてC
o−Cr−Pt系の垂直磁化膜を用いたが、かかる材料
に、例えば、Co粒界でのCrの偏析を促進させるため
のTaやNbなどを添加した4源系合金や5源系合金を
用いても良い。この場合、結晶粒子間の磁気的相互作用
がさらに低減されるので、第2磁性膜に形成される磁区
の位置決めの精度を向上させることができる。第1磁性
膜を構成する材料は、磁壁移動型の磁性膜に用いられる
ような材料ではなく、磁壁の移動を抑制するピンニング
サイトが存在し、磁性粒子同士の磁気的相互作用が弱く
なっているような材料が好適である。そして第1磁性膜
の異方性の向きは、第2磁性膜と同一であることが好ま
しい。
【0118】第1磁性膜を構成する材料は、Co合金系
以外の材料を用いることもでき、例えば、Co−CoO
部分酸化膜などの磁性膜や、10nmφに粒子化させた
希土類−鉄族元素の非晶質合金膜を用いても良い。この
ような粒子化により磁壁移動のピンニングサイトを磁性
膜内に形成することができる。
【0119】また、この実施例では、第2磁性膜にTb
−Fe−Co系の非晶質のフェリ磁性膜を用いたが、T
bの代わりにDyやHo、Gdなどを用いても同様の効
果が得られた。これらの元素の中で、Tbが最も大きな
垂直磁気異方性が得られ、Dy>Ho>Gdの順で垂直
磁気異方性の大きさが変化する。また、希土類元素をT
bだけで構成する代わりに、複数の希土類元素を組み合
わせて、例えば、Tb−Gd、Tb−Dy、Tb−H
o、Gd−Dy、Gd−Ho、Dy−Hoなどの2元素
合金、更には3元素以上の合金を用いても良い。これに
より、垂直磁気異方性エネルギーの制御を行なうことが
できる。ここで、希土類元素の組成は、垂直磁化膜とな
る20at%以上、30at%以下が好ましい。かかる
範囲にすることにより、基板に対して垂直方向に磁化容
易磁区を有するフェリ磁性体を得ることができるからで
ある。
【0120】また、遷移金属としてFe−Co合金を用
いたが、Fe−Ni、Co−Niなどの合金を用いても
良い。これらの合金は、Fe−Co>Fe−Ni>Co
−Niの順で異方性エネルギーは減少する。
【0121】以上、本発明に従う磁気記録媒体及び磁気
記録装置を実施例により説明したが、本発明はこれらに
限定されるものではない。
【0122】例えば、上記実施例1〜8で用いた基板は
一例であり、いずれのサイズのディスク基板を用いるこ
ともできる。また、基板を構成する材料としてガラスの
代わりに、例えば、AlやAl合金などの金属基板や樹
脂基板を用いることもできる。また、基板表面上にNi
P膜をメッキ法などにより形成した基板を用いてもよ
い。
【0123】また、上記実施例では、情報記録膜として
希土類−遷移金属の人工格子膜を用いたが、これに限ら
ず、例えば、Tb−Fe−Co、Dy−Fe−Co、H
o−Fe−Co、Gd−Fe−Co、Tb−Dy−Fe
−Co、Tb−Gd−Fe−Co、Tb−Ho−Fe−
Co、Gd−Ho−Fe−Co、Gd−Dy−Fe−C
o、Dy−Ho−Fe−Coのような希土類−遷移金属
のフェリ磁性非晶質膜を用いて構成してもよい。かかる
フェリ磁性非晶質膜の成膜には、例えば真空蒸着法や、
DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッ
タ法などのスパッタ法を用いることができる。
【0124】また、磁気記録媒体の積層構造も上記実施
例に限定されるものではなく、例えば軟磁性材料からな
る軟磁性膜を形成することも可能である。かかる軟磁性
膜は、当該軟磁性膜と磁気ヘッドとの間に情報記録膜が
介在するように形成することが好ましい。また、磁気記
録媒体を構成する層のうち、磁性を有する層、例えば上
記実施例の情報記録膜や強磁性層、第1〜第3磁性膜と
接することなく、非磁性層を介在させて形成されること
が望ましい。これにより、情報記録時に、磁気ヘッドと
軟磁性膜との間で磁気回路が形成され、磁気記録膜に対
して、磁気ヘッドからの磁場が膜面に垂直な方向にのみ
印加される。また、磁気ヘッドと軟磁性膜との間で磁気
的カップリングが生じるので、情報記録膜には、磁気ヘ
ッドからの磁場が狭い領域に大きな磁界強度で印加さ
れ、微小な記録磁区を磁気記録膜に形成することができ
る。かかる軟磁性膜には、例えば、Ni−FeやFe−
Ta−C、Fe−Hf−N、Al−Si−Fe、Gd−
Fe、Gd−Fe−Coなどの磁性材料を用いることが
できる。
【0125】
【発明の効果】本発明の第1の態様の磁気記録媒体で
は、フェリ磁性層が、垂直磁気異方性を有する非晶質の
フェリ磁性材料から構成され、大きな活性化体積を有し
ているので、熱減磁や熱揺らぎが小さく熱的安定性に優
れる。それゆえ、高密度記録用の磁気記録媒体として極
めて好適である。また、フェリ磁性層よりも飽和磁化の
大きな強磁性材料を用いて強磁性層を構成することによ
り、フェリ磁性層に微小な磁区を形成しても強磁性層か
ら増幅された再生信号出力を得ることができる。また、
フェリ磁性層は非晶質構造を有するので、磁性膜の結晶
配向性を制御するためのシード層を形成する必要がな
く、磁気記録媒体の積層構造を簡素化できる。それゆえ
本発明の磁気記録媒体を大量に且つ低価格で提供するこ
とができる。
【0126】また、本発明の第2の態様の磁気記録媒体
は、基板面に垂直な方向に磁化容易磁区を有する人工格
子膜を備えており、かかる人工格子膜は磁気異方性が大
きいので熱揺らぎに強い。それゆえ人工格子膜を例えば
情報記録層として用いることにより、熱安定性に優れた
磁気記録媒体を提供することができる。かかる磁気記録
媒体も第1の態様の磁気記録媒体と同様に超高密度記録
に好適である。
【0127】本発明の第3及び第4の態様の磁気記録媒
体は、磁壁移動型の非晶質フェリ磁性層または人工格子
膜の磁壁の移動を抑制するための磁壁移動制御層を備え
るので、フェリ磁性層または人工格子膜に微小な記録磁
区を所望のエッジ形状で形成できるとともに、エッジの
位置を高精度に画定させることができる。それゆえ、フ
ェリ磁性層または人工格子膜に形成された記録磁区の揺
らぎを低減でき、高密度記録された情報を確実に再生す
ることができる。
【0128】本発明の磁気記録装置は、高保磁力を有す
る磁気記録媒体に確実に情報を記録することができるの
で、超高密度記録用の次世代磁気記録装置として極めて
好適であり、40Gbits/inch(6.20G
bits/cm)を超える面記録密度を実現すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う磁気記録媒体の断面構造を模式的
に示す図である。
【図2】本発明の一例である磁気記録装置の上面の概略
構成図である。
【図3】図2の磁気記録装置のA−A’方向における概
略断面図である。
【図4】MFMの観察による記録部分の磁化状態の様子
を模式的に示した図であり、図4(A)は本発明の磁気
記録媒体の記録部分の磁化状態の様子であり、図4
(B)はCo−Cr−Pt系の磁性膜を情報記録膜とし
て備える従来の磁気記録媒体の記録部分の磁化状態の様
子である。
【図5】実施例5において用いた、光ヘッドを備える磁
気記録装置の概略構成図である。
【図6】光ヘッドを備える磁気記録装置の実施例5とは
別の概略構成図であり、磁気ヘッドと光ヘッドが磁気デ
ィスクに対して同じ側に配置されている様子を示す。
【図7】実施例8で作製した磁気記録媒体の断面構造を
模式的に示す図である。
【符号の説明】
1、71 基板 2、72 下地膜 3 情報記録膜 4 強磁性膜 5、76 保護膜 51 磁気ディスク 52 スピンドル 53、53’ 磁気ヘッド 54 磁気ヘッド駆動系 55、55’ 光ヘッド 56 レンズ 70 磁気記録媒体 73 第1磁性膜 74 第2磁性膜 75 第3磁性膜 200、300 磁気記録装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹内 輝明 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 若林 康一郎 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 坂本 晴美 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 関根 正樹 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 (72)発明者 粟野 博之 大阪府茨木市丑寅一丁目1番88号 日立マ クセル株式会社内 Fターム(参考) 5D006 BB01 BB02 BB07 BB08 DA03 FA09

Claims (70)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気ヘッドを用いて情報が再生される磁
    気記録媒体において、 基板と、 基板面に対して垂直な方向に磁化容易軸を有する非晶質
    のフェリ磁性材料から構成されるフェリ磁性層と、 強磁性材料から構成される強磁性層とを備えることを特
    徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 上記強磁性層は、基板面に垂直な方向に
    磁化容易軸を有するとともに、上記フェリ磁性層の飽和
    磁化よりも大きな飽和磁化を有し、上記フェリ磁性層と
    接して上記磁気ヘッドに近い側に形成されていることを
    特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 上記フェリ磁性層は情報が記録される層
    であり、上記強磁性層は上記フェリ磁性層から発生する
    磁気フラックスを増大させる層であることを特徴とする
    請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 上記フェリ磁性層は情報が記録される層
    であり、上記強磁性層は上記フェリ磁性層の磁壁の移動
    を抑制する層であり且つ上記フェリ磁性層と基板との間
    で上記フェリ磁性層に接して設けられていることを特徴
    とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 更に、上記フェリ磁性層に形成された磁
    壁の移動を抑制するための磁壁移動制御層を備えること
    を特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 上記磁壁移動制御層は、磁化回転型の磁
    性材料を用いて構成されていることを特徴とする請求項
    5に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 上記磁壁移動制御層は、Co、Coの部
    分酸化物及びCo−Cr合金のいずれか一種の材料を主
    体とし、これにPt、Pd、Ta、Nb及びTiからな
    る群から選ばれた少なくとも一種の元素を含む合金から
    構成されていることを特徴とする請求項6に記載の磁気
    記録媒体。
  8. 【請求項8】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁移
    動制御層の磁化容易軸の向きが同じであることを特徴と
    する請求項5〜7のいずれか一項に記載の磁気記録媒
    体。
  9. 【請求項9】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁移
    動制御層の保磁力のうち、フェリ磁性層の保磁力が最も
    大きいことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に
    記載の磁気記録媒体。
  10. 【請求項10】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁
    移動制御層の飽和磁化のうち、強磁性層の飽和磁化が最
    も大きいことを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項
    に記載の磁気記録媒体。
  11. 【請求項11】 上記強磁性層と磁壁移動制御層との間
    にフェリ磁性層が位置するとともに、上記磁気ヘッドに
    近い側に強磁性層が位置し、磁気ヘッドに遠い側に磁壁
    移動制御層が位置するようにそれらが積層されているこ
    とを特徴とする請求項5〜10のいずれか一項に記載の
    磁気記録媒体。
  12. 【請求項12】 上記フェリ磁性層の基板面に対して垂
    直方向の垂直磁気異方性エネルギーが5×10erg
    /cm以上であることを特徴とする請求項1〜11の
    いずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  13. 【請求項13】 上記フェリ磁性層を構成するフェリ磁
    性材料は、鉄族元素を含み且つ鉄族元素の副格子磁化が
    優勢であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか
    一項に記載の磁気記録媒体。
  14. 【請求項14】 上記フェリ磁性層に記録情報としての
    磁区が形成され、上記フェリ磁性層の熱的安定性が、K
    uV/kT(Ku:結晶磁気異方性定数、V:活性化体
    積、k:ボルツマン定数、T:温度)で表されるとき
    に、上記フェリ磁性層における活性化体積Vが、上記フ
    ェリ磁性層に形成される1つの磁区の体積とほぼ等しい
    ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載
    の磁気記録媒体。
  15. 【請求項15】 上記フェリ磁性層は、100emu/
    cm以上の飽和磁化、3kOe以上の保磁力及び10
    0nm以下の膜厚を有することを特徴とする請求項1〜
    14のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  16. 【請求項16】 上記強磁性層は、Coを主体とする合
    金、またはCoとCoの酸化物との混合物を主体とする
    磁性薄膜から構成されることを特徴とする請求項1〜1
    5のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  17. 【請求項17】 上記強磁性層は、更に、Cr、Pt、
    Pd、Ta、Nb、Si及びTiからなる群から選ばれ
    た少なくとも1種類の元素を含むことを特徴とする請求
    項16に記載の磁気記録媒体。
  18. 【請求項18】 上記強磁性層は、Co、Ni及びFe
    からなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素から構
    成される層と、Pt、Pd及びRhからなる群から選ば
    れる少なくとも1種類の元素から構成される層とを交互
    に積層した交互積層多層膜であることを特徴とする請求
    項1〜15のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  19. 【請求項19】 上記強磁性層は、Co、Ni及びFe
    からなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素とP
    t、Pd及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1
    種類の元素とから構成される合金層と、Pt、Pd及び
    Rhからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素か
    ら構成される層とを交互に積層した交互積層多層膜であ
    ることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記
    載の磁気記録媒体。
  20. 【請求項20】 磁気ヘッドを用いて情報が再生される
    磁気記録媒体において、 基板と、 基板面に対して垂直な方向に磁化容易軸を有する人工格
    子膜と、 強磁性材料から構成される強磁性層とを備えることを特
    徴とする磁気記録媒体。
  21. 【請求項21】 上記強磁性層は、基板面に対して垂直
    な方向に磁化容易軸を有するとともに上記人工格子膜の
    飽和磁化よりも大きな飽和磁化を有し、且つ上記人工格
    子膜と接して上記磁気ヘッドに近い側に形成されている
    ことを特徴とする請求項20に記載の磁気記録媒体。
  22. 【請求項22】 上記人工格子膜は情報が記録される層
    であり、上記強磁性層は人工格子膜から発生する磁気フ
    ラックスを増大させる層であることを特徴とする請求項
    20または21に記載の磁気記録媒体。
  23. 【請求項23】 上記人工格子膜は情報が記録される層
    であり、上記強磁性層は人工格子膜磁性層の磁壁の移動
    を抑制する層であり且つ上記人工格子膜と基板との間に
    人工格子膜に接して設けられていることを特徴とする請
    求項20に記載の磁気記録媒体。
  24. 【請求項24】 更に、上記フェリ磁性層に形成された
    磁壁の移動を抑制するための磁壁移動制御層を備えるこ
    とを特徴とする請求項20または21に記載の磁気記録
    媒体。
  25. 【請求項25】 上記磁壁移動制御層は、磁化回転型の
    磁性材料を用いて構成されていることを特徴とする請求
    項24に記載の磁気記録媒体。
  26. 【請求項26】 上記磁壁移動制御層は、Co、Coの
    部分酸化物及びCo−Cr合金のいずれか一種の材料を
    主体とし、これにPt、Pd、Ta、Nb及びTiから
    なる群から選ばれた少なくとも一種の元素を含む合金か
    ら構成されていることを特徴とする請求項25に記載の
    磁気記録媒体。
  27. 【請求項27】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁
    移動制御層の磁化容易軸の向きが同じであることを特徴
    とする請求項24〜26のいずれか一項に記載の磁気記
    録媒体。
  28. 【請求項28】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁
    移動制御層の保磁力のうち、フェリ磁性層の保磁力が最
    も大きいことを特徴とする請求項24〜27のいずれか
    一項に記載の磁気記録媒体。
  29. 【請求項29】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁
    移動制御層の飽和磁化のうち、強磁性層の飽和磁化が最
    も大きいことを特徴とする請求項24〜28のいずれか
    一項に記載の磁気記録媒体。
  30. 【請求項30】 上記強磁性層と磁壁移動制御層との間
    にフェリ磁性層が位置するとともに、上記磁気ヘッドに
    近い側に強磁性層が位置し、磁気ヘッドに遠い側に磁壁
    移動制御層が位置するようにそれらが積層されているこ
    とを特徴とする請求項24〜29のいずれか一項に記載
    の磁気記録媒体。
  31. 【請求項31】 上記人工格子膜の基板面に対して垂直
    方向の垂直磁気異方性エネルギーが5×10erg/
    cm以上であることを特徴とする請求項20〜30の
    いずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  32. 【請求項32】 上記人工格子膜が、鉄族元素から構成
    される層と希土類元素から構成される層とを交互に積層
    した交互積層多層膜であることを特徴とする請求項20
    〜31のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  33. 【請求項33】 上記鉄族元素はFe、Co及びNiか
    らなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素であり、
    上記希土類元素はTb、Gd、Dy及びHoからなる群
    から選ばれる少なくとも1種類の元素であることを特徴
    とする請求項32に記載の磁気記録媒体。
  34. 【請求項34】 上記鉄族元素から構成される層は複数
    の層から構成され、該複数の層は、Fe、Co及びNi
    のうちより選ばれる少なくとも2種類の元素から構成さ
    れる2層膜であることを特徴とする請求項32に記載の
    磁気記録媒体。
  35. 【請求項35】 上記鉄族元素から構成される層が、F
    e、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも2
    種類の元素からなる合金から構成される薄膜であること
    を特徴とする請求項32に記載の情報記録媒体。
  36. 【請求項36】 上記人工格子膜に記録情報としての磁
    区が形成され、人工格子膜の熱的安定性が、KuV/k
    T(Ku:結晶磁気異方性定数、V:活性化体積、k:
    ボルツマン定数、T:温度)で表されるときに、該人工
    格子膜における活性化体積Vが、人工格子膜に形成され
    る1つの磁区の体積とほぼ等しいことを特徴とする請求
    項20〜35のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  37. 【請求項37】 上記人工格子膜は、100emu/c
    以上の飽和磁化、3kOe以上の保磁力及び100
    nm以下の膜厚を有することを特徴とする請求項20〜
    36のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  38. 【請求項38】 上記強磁性層は、Coを主体とする合
    金、またはCoとCoの酸化物との混合物を主体とする
    磁性薄膜から構成されることを特徴とする請求項20〜
    37のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  39. 【請求項39】 上記強磁性層は、更に、Cr、Pt、
    Pd、Ta、Nb、Si及びTiからなる群から選ばれ
    た少なくとも1種類の元素を含むことを特徴とする請求
    項38に記載の磁気記録媒体。
  40. 【請求項40】 上記強磁性層は、Co、Ni及びFe
    からなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素から構
    成される層とPt、Pd及びRhからなる群から選ばれ
    る少なくとも1種類の元素から構成される層とを交互に
    積層した交互積層多層膜であることを特徴とする請求項
    20〜37のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  41. 【請求項41】 上記強磁性層は、Co、Ni及びFe
    からなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素とP
    t、Pd及びRhからなる群から選ばれる少なくとも1
    種類の元素とから構成される合金層と、Pt、Pd及び
    Rhからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素か
    ら構成される層とを交互に積層した交互積層多層膜であ
    ることを特徴とする請求項20〜37のいずれか一項に
    記載の磁気記録媒体。
  42. 【請求項42】 上記基板が、ガラス、樹脂及びAl合
    金からなる群から選ばれた材料を用いて形成されている
    ことを特徴とする請求項1〜41のいずれか一項に記載
    の磁気記録媒体。
  43. 【請求項43】 上記基板の表面に凹凸のテクスチャを
    有することを特徴とする請求項1〜42のいずれか一項
    に記載の磁気記録媒体。
  44. 【請求項44】 上記テクスチャにより、情報記録時に
    おける記録磁区の磁壁の移動が抑制されることを特徴と
    する請求項43に記載の磁気記録媒体。
  45. 【請求項45】 更に、カーボンからなる保護層を基板
    から最も遠い位置に備えることを特徴とする請求項1〜
    44のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
  46. 【請求項46】 磁気ヘッドを用いて情報が再生される
    磁気記録媒体において、 基板と、 基板面に垂直な方向に磁化容易軸を有する非晶質のフェ
    リ磁性材料から構成されるフェリ磁性層と、 強磁性材料から構成される強磁性層と、 上記フェリ磁性層に形成される磁壁の移動を抑制するた
    めの磁壁移動制御層とを備えることを特徴とする磁気記
    録媒体。
  47. 【請求項47】 上記磁壁移動制御層は、磁化回転型の
    磁性材料を用いて構成されていることを特徴とする請求
    項46に記載の磁気記録媒体。
  48. 【請求項48】 上記磁壁移動制御層は、Co、Coの
    部分酸化物及びCo−Cr合金のいずれか一種の材料を
    主体とし、これにPt、Pd、Ta、Nb及びTiから
    なる群から選ばれた少なくとも一種の元素を含む合金か
    ら構成されていることを特徴とする請求項47に記載の
    磁気記録媒体。
  49. 【請求項49】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁
    移動制御層の磁化容易軸の向きが同じであることを特徴
    とする請求項46〜48のいずれか一項に記載の磁気記
    録媒体。
  50. 【請求項50】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁
    移動制御層の保磁力のうち、フェリ磁性層の保磁力が最
    も大きいことを特徴とする請求項46〜49のいずれか
    一項に記載の磁気記録媒体。
  51. 【請求項51】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁
    移動制御層の飽和磁化のうち、強磁性層の飽和磁化が最
    も大きいことを特徴とする請求項46〜50のいずれか
    一項に記載の磁気記録媒体。
  52. 【請求項52】 上記強磁性層と磁壁移動制御層との間
    にフェリ磁性層が位置するとともに、上記磁気ヘッドに
    近い側に強磁性層が位置し、磁気ヘッドに遠い側に磁壁
    移動制御層が位置するようにそれらが積層されているこ
    とを特徴とする請求項46〜51のいずれか一項に記載
    の磁気記録媒体。
  53. 【請求項53】 磁気ヘッドを用いて情報が再生される
    磁気記録媒体において、 基板と、 基板面に垂直な方向に磁化容易軸を有する人工格子膜
    と、 強磁性材料から構成される強磁性層と、 上記フェリ磁性層に形成される磁壁の移動を抑制するた
    めの磁壁移動制御層とを備えることを特徴とする磁気記
    録媒体。
  54. 【請求項54】 上記磁壁移動制御層は、磁化回転型の
    磁性材料を用いて構成されていることを特徴とする請求
    項53に記載の磁気記録媒体。
  55. 【請求項55】 上記磁壁移動制御層は、Co、Coの
    部分酸化物及びCo−Cr合金のいずれか一種の材料を
    主体とし、これにPt、Pd、Ta、Nb及びTiから
    なる群から選ばれた少なくとも一種の元素を含む合金か
    ら構成されていることを特徴とする請求項54に記載の
    磁気記録媒体。
  56. 【請求項56】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁
    移動制御層の磁化容易軸の向きが同じであることを特徴
    とする請求項53〜55のいずれか一項に記載の磁気記
    録媒体。
  57. 【請求項57】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁
    移動制御層の保磁力のうち、フェリ磁性層の保磁力が最
    も大きいことを特徴とする請求項53〜56のいずれか
    一項に記載の磁気記録媒体。
  58. 【請求項58】 上記フェリ磁性層、強磁性層及び磁壁
    移動制御層の飽和磁化のうち、強磁性層の飽和磁化が最
    も大きいことを特徴とする請求項53〜57のいずれか
    一項に記載の磁気記録媒体。
  59. 【請求項59】 上記強磁性層と磁壁移動制御層との間
    にフェリ磁性層が位置するとともに、上記磁気ヘッドに
    近い側に強磁性層が位置し、磁気ヘッドに遠い側に磁壁
    移動制御層が位置するようにそれらが積層されているこ
    とを特徴とする請求項53〜58のいずれか一項に記載
    の磁気記録媒体。
  60. 【請求項60】 請求項1、20、46及び53のいず
    れか一項に記載の少なくとも一つの磁気記録媒体と、 情報を記録または消去するための磁気ヘッドと、 磁気記録媒体を駆動するための駆動装置とを備えること
    を特徴とする磁気記録装置。
  61. 【請求項61】 上記磁気ヘッドを用いて上記磁性層に
    一定幅、一定長さの磁区を形成して情報の記録または消
    去を行なうことを特徴とする請求項60に記載の磁気記
    録装置。
  62. 【請求項62】 更に、磁気記録媒体に光を照射するた
    めの光ヘッドを備えることを特徴とする請求項60また
    は61に記載の磁気記録装置。
  63. 【請求項63】 情報記録時に上記光ヘッドにより磁気
    記録媒体に光を照射して加熱しつつ、上記磁気ヘッドに
    より磁界を印加して情報の記録または消去を行なうこと
    特徴とする請求項62に記載の磁気記録装置。
  64. 【請求項64】 更に、磁気フラックスの変化に応じて
    抵抗が変化する素子を備え、該素子を用いて情報を再生
    することを特徴とする請求項60〜63のいずれか一項
    に記載の磁気記録装置。
  65. 【請求項65】 上記光ヘッドは、パルス状の光を磁気
    記録媒体に照射することを特徴とする請求項62または
    63に記載の磁気記録装置。
  66. 【請求項66】 上記パルス状の光は一定幅のパルスか
    ら構成されるマルチパルスであることを特徴とする請求
    項65に記載の磁気記録装置。
  67. 【請求項67】 上記磁気ヘッドは、上記パルス状の光
    に同期したパルス状の磁界を磁気記録媒体に印加するこ
    とを特徴とする請求項65または66に記載の磁気記録
    装置。
  68. 【請求項68】 上記磁気ヘッドの記録周波数が50M
    Hz以上であることを特徴とする請求項67に記載の磁
    気記録装置。
  69. 【請求項69】 磁気記録媒体のトラックに形成される
    記録磁区のトラック方向における幅が磁気ヘッドのギャ
    ップ幅よりも狭くなるように記録を行なうことを特徴と
    する請求項60〜68のいずれか一項に記載の磁気記録
    装置。
  70. 【請求項70】 40Gbits/inchを超える
    面記録密度を有することを特徴とする請求項60〜69
    のいずれか一項に記載の磁気記録装置。
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