JP2002088570A - 取り扱い性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法 - Google Patents

取り扱い性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法

Info

Publication number
JP2002088570A
JP2002088570A JP2000271242A JP2000271242A JP2002088570A JP 2002088570 A JP2002088570 A JP 2002088570A JP 2000271242 A JP2000271242 A JP 2000271242A JP 2000271242 A JP2000271242 A JP 2000271242A JP 2002088570 A JP2002088570 A JP 2002088570A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
yarn
undrawn yarn
polyester
less
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2000271242A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4517481B2 (ja
Inventor
Katsuhiko Mochizuki
克彦 望月
Akira Kidai
明 木代
Yuhei Maeda
裕平 前田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2000271242A priority Critical patent/JP4517481B2/ja
Publication of JP2002088570A publication Critical patent/JP2002088570A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4517481B2 publication Critical patent/JP4517481B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】高速紡糸において巻締まりなく安定して製糸す
ることができ、強度等機械的特性に優れるとともに、夏
場の搬送等による高温環境下でも経時変化が少なく寸法
安定性、仮撚加工や延伸等の工程通過性に優れたポリエ
ステル系未延伸糸およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 実質的にポリトリメチレンテレフタレー
トから構成され、極限粘度が0.7〜1.2であるポリ
トリメチレンテレフタレート繊維からなるマルチフィラ
メントであって、以下の(1)〜(5)の要件を満足す
ることを特徴とするポリエステル系未延伸糸。 (1)破断強度 :2.0cN/dtex以上 (2)破断伸度 :55〜130% (3)複屈折度 :0.04〜0.07 (4)遅延収縮率 :2%以下 (5)50℃乾熱収縮率:10%以下

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリトリメチレン
テレフタレートを主成分としたポリエステル系未延伸糸
に関し、さらに詳しくは繊維構造および寸法の安定性、
仮撚加工や延伸等の工程通過性に優れたポリエステル系
未延伸糸およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレートを主成分と
するポリエステル繊維は、機械的特性をはじめ様々の優
れた特性を有しているため、最も衣料用に適した合成繊
維として世界中で大量生産されている。
【0003】一方、ポリトリメチレンテレフタレート繊
維(以下PTT繊維と略記する)は、特開昭52−53
20号公報や特開昭52−8124号公報などにみられ
るように古くから研究されており、伸長弾性回復性に優
れるとともに、ヤング率が低いために布帛にした際にソ
フト風合いを呈し、衣料用に好適な素材であることが知
られている。
【0004】しかしながら、原料の1,3プロパンジオ
ールが比較的高価であるため、合成繊維としての工業生
産は行われていなかった。
【0005】近年になり、米国特許第5,304,69
1号明細書などで開示されているように、安価な1,3
プロパンジオールの合成法が見い出されたため、PTT
繊維の工業生産の可能性が急速に高まってきている。
【0006】PTT繊維はメチレン鎖の部分が大きく屈
曲しており、その屈曲部の伸長・回復により高い伸縮特
性を有する。そのため、例えば仮撚加工糸や強撚糸とし
た場合に優れたストレッチ性を示すため、高い自由度が
要求される衣服に最適な素材といえる。
【0007】ところが、本発明者らの検討により、この
ような特異な分子形態を有することに起因する紡糸・延
伸での巻締まりやパッケージ内外層での物性差、またそ
れに伴う加工工程での工程通過性不良や染色欠点等、多
くの問題が発生することがわかった。また、PTT未延
伸糸は環境温度に敏感であり、高温での保管により容易
に経時変化し、前記問題点が顕在化する。そのため、特
に夏場のトラック輸送に耐えうる高品質の未延伸糸が得
られていなかった。このように、PTT未延伸糸は加工
条件の適正化が困難であるばかりか、保管には厳密な温
度管理が要求され、さらには最終製品までの工程日数の
大幅な短縮が必要なため用途が大幅に限定されてしま
う。
【0008】この解決手段として、特開昭52−812
3号公報や国際公開WO99/27188に開示されて
いるように、紡糸、延伸工程を連続して行う直接紡糸延
伸法を用いる方法があるが、該方法は延伸糸の製造に関
する発明であり、延伸工程を経るため本発明の目的とす
る物性を示す未延伸糸を得ることはできない。
【0009】また、PTT繊維の未延伸糸を得る方法と
して、特開平11−302919号公報に口金下で除冷
してから引き取った後、糸条を十分に冷却して巻き取る
方法が開示されている。該方法を用いれば、確かに巻締
まりを抑制しつつ巻き取ることができるが、繊維内部構
造が固定されていないため経時変化が生じ、前記のよう
な問題が顕在化して品質の悪い未延伸糸しか得られな
い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
問題点を解決しようとするものであり、ポリトリメチレ
ンテレフタレートを主成分とする未延伸糸の巻締まりや
繊維内部の歪み緩和に起因する工程通過性不良、染色性
不良等の問題を解決し、取り扱い性や汎用性に優れたポ
リエステル系未延伸糸およびその製造方法を提供するも
のである。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記した課題を解決する
ため本発明のポリエステル系未延伸糸およびその製造方
法は、次の構成を有する。すなわち、 [1]実質的にポリトリメチレンテレフタレートから構
成され、極限粘度が0.7〜1.2であるポリトリメチ
レンテレフタレート繊維からなるマルチフィラメントで
あって、以下の(1)〜(5)の要件を満足することを
特徴とするポリエステル系未延伸糸である。
【0012】 (1)破断強度 :2.0cN/dtex以上 (2)破断伸度 :55〜130% (3)複屈折度 :0.04〜0.07 (4)遅延収縮率 :2%以下 (5)50℃乾熱収縮率:10%以下 [2]沸騰水収縮率が3〜20%であることを特徴とす
る前記[1]記載のポリエステル系未延伸糸。
【0013】[3]温度変調DSCにおける冷結晶化熱
量△Hが10J/g以下であることを特徴とする前記
[1]または[2]記載のポリエステル系未延伸糸。
【0014】[4]温度変調DSCにおける結晶化度が
30%以上であることを特徴とする前記[1]〜[3]
のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸。
【0015】[5]糸の太さ斑U%(ノーマルモード)
が1%以下であることを特徴とする前記[1]〜[4]
のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸。
【0016】[6]CF値が3以上であることを特徴と
する前記[1]〜[5]のいずれか1項記載のポリエス
テル系未延伸糸。
【0017】[7]前記[1]〜[6]のいずれか1項
記載のポリエステル系未延伸糸が巻き付けられ、サドル
が4mm未満でかつバルジ率が10%未満であることを
特徴とするチーズ状未延伸糸パッケージ。
【0018】[8]ポリトリメチレンテレフタレートを
主成分とする極限粘度が0.75以上のポリエステルを
溶融紡糸し、紡糸糸条を一旦冷却固化した後、内部雰囲
気温度が120〜220℃の加熱筒装置で0.01秒以
上熱処理し、再び冷却してから残留伸度55〜130%
になるような紡糸速度で糸条を引き取り、引き続いて弛
緩率0〜3%で弛緩させた後、0.2cN/dtex以
下の張力で巻き取ることを特徴とするポリエステル系未
延伸糸の製造方法。
【0019】[9]紡糸引き取り後、ゴデーロール間で
弛緩処理する際に、内部雰囲気温度が100〜150℃
の熱処理装置で熱処理を施すことを特徴とする前記
[8]記載のポリエステル系未延伸糸の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明において、ポリエステル系
未延伸糸を構成するポリエステルとは、その構成単位の
少なくとも90モル%がテレフタル酸を主たる酸成分と
し、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分
として得られるポリトリメチレンテレフタレート(以下
PTTと略記する)である。ただし、10モル%、より
好ましくは6モル%以下の割合で、他のエステル結合の
形成可能な共重合成分を含んでいてもよく、他のポリマ
ーやコポリマーを少量ブレンドしてもよい。また、共重
合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク
酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ
酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸な
どのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレン
グリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコー
ル、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコ
ール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙
げることができるが、これらに限定されるものではな
い。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタ
ン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤
としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添
加してもよい。
【0021】本発明においては、未延伸糸を形成するP
TTの極限粘度は0.7〜1.2のものである。極限粘
度が0.7未満では、如何なる紡糸条件を適用しても本
発明の目的とする強度を満足することができない。一
方、極限粘度が1.2を越えるPTT繊維は製造が困難
であるとともに、得られる未延伸糸の糸加工工程での加
工張力の増大により糸切れ、毛羽の発生を誘発し、加工
性が低下してしまう。極限粘度の好ましい範囲は、製造
の容易さ、後の糸加工性を考慮すると0.75〜1.1
5の範囲が好ましく、0.8〜1.1がより好ましい。
【0022】また、本発明のポリエステル系未延伸糸は
下記(1)〜(5)の要件を同時に満足することが重要
である。
【0023】 (1)破断強度 :2.0cN/dtex以上 (2)破断伸度 :55〜130% (3)複屈折度 :0.04〜0.07 (4)遅延収縮率 :2%以下 (5)50℃乾熱収縮率:10%以下 破断強度は延伸や仮撚、整経や製織を行う際の工程通過
性や、布帛の機械的特性に大きく影響する。前記生産性
や製品の品質を満足するためには、2.0cN/dte
x以上とするものであり、好ましくは2.5cN/dt
ex以上、より好ましくは3.0cN/dtexであ
る。
【0024】また、破断伸度は延伸や仮撚工程での加工
性を良好にするために55%以上とするものであり、延
伸や仮撚で得られる糸の太さ斑を小さくし、より均質な
糸とするために130%以下とするものである。破断伸
度の好ましい範囲は60〜120%であり、より好まし
くは65〜110%である。
【0025】また、複屈折度は未延伸糸の機械的特性と
密接な関係があり、特に仮撚加工工程における毛羽や断
糸を防止し、良好な工程通過性を得るために複屈折度は
0.04以上とするものである。また、複屈折度は0.
07以下とするものである。複屈折度が0.07を越え
ると巻締まりや高温における遅延収縮を十分に抑えるこ
とが困難になる。複屈折度の好ましい範囲は0.045
〜0.065である。
【0026】また、PTT繊維は未延伸糸パッケージか
ら解舒され、応力から解放されると除々に収縮する、い
わゆる遅延収縮と呼ばれる現象が生じる。この現象はパ
ケージ内においてもゆっくりと進行しており、パッケー
ジ形状が崩れて解舒性不良を起こしたり、パッケージ端
面周期に同期した糸の太さ斑が発生する等、さまざまな
問題を起こす。そのため遅延収縮率は低いほうがよく、
2%以下であることが重要である。好ましくは1.5%
以下であり、より好ましくは1.2%以下である。
【0027】同様に、50℃の乾熱処理における収縮率
は、環境温度に左右されず良好な品質を長時間維持する
ために10%以下であることが重要である。特に夏場の
トラック輸送においては環境温度が50℃にも達する。
そのため50℃乾熱収縮率は好ましくは5%以下、より
好ましくは3%以下である。
【0028】また、沸騰水収縮率は延伸や仮撚加工での
セット性や工程通過性を考慮すると3〜20%の範囲で
あることが好ましい。沸騰水収縮率が3%未満では仮撚
で捲縮セット性の低下があり、20%を越えると量産に
おける収縮率のバラツキが大きくなってしまうので好ま
しくない。沸騰水収縮率は5%〜15%がより好まし
い。
【0029】本発明のポリエステル系未延伸糸は温度変
調DSCにおける冷結晶化熱量△Hccが10J/g以
下であることが好ましい。PTT繊維は、可逆成分であ
るガラス転移温度と非可逆成分である冷結晶化ピーク温
度が近接しているため、通常のDSCでは正確な冷結晶
化熱量を測定することが困難である。そのため、正常な
ガラス転移シグナル(可逆)とエンタルピー緩和部分
(非可逆)を分離することが可能な温度変調DSC(T
emperature Modulated DSC)
が有効な測定手法となる。
【0030】ここで、温度変調DSCとは、等速昇温
(直流成分)に小刻みのサイン波の温度振動(交流成
分)を与えて昇温させ、全熱流束曲線を可逆熱流束曲線
と非可逆熱流束曲線に分離できる示差走査熱量計であ
る。我々が調査した結果、PTTはPETと比較してガ
ラス転移点が低く、常温においても分子運動性が損なわ
れず逐次結晶化と非晶配向の緩和が容易に起こる。その
ため冷結晶化熱量が大きい従来の未延伸糸では前記の緩
和現象により寸法変化が生じてしまう。それを抑制する
ため、予め未延伸糸をパッケージングする前に結晶化を
促進させ、繊維構造の固定化を行う必要がある。冷結晶
化熱量△Hccが小さいほど繊維構造がより固定化されて
いることを示し、好ましくは△Hcc10J/g以下、よ
り好ましくは5J/g以下、さらに好ましくは2J/g
以下である。
【0031】また、温度変調DSCの融解熱量△Hmお
よび冷結晶化熱量△Hccから算出される結晶化度Xcは
30%以上であることが好ましい。PTT繊維の寸法変
化は、前記したように逐次結晶化と非晶部の配向緩和に
よるものであり、PTT繊維の場合は特に逐次結晶化の
影響が大きい。熱処理を行わない従来法で巻き取った未
延伸糸の紡糸直後の結晶化度は30%未満であるが、室
温下において徐々に結晶化が進み、保管する温度によっ
ては結晶化度が35%を越えることもある。逐次結晶化
による収縮を防ぐ手段としては冷蔵保管という方法もあ
るが、取り扱い性の問題がある。そのため常温で分子運
動性が低く、経時変化しにくい高結晶化度の構造をとっ
ていることが好ましい。結晶化度は好ましくは30%以
上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40
%以上である。なお、結晶化度Xcは下式によって求め
た。また、結晶化度が100%のときの△Hmの値14
5(J/g)はJournal of Polymer
Science:PartB,36,2499(19
98)の文献値30kJ/molをJ/gの単位に変換
して用いた。
【0032】結晶化度Xc(%)=[(△Hm−△Hc
c)/145(Xc100%の△Hm)]×100 △Hm:温度変調DSCの全熱流束カーブから求めた融解
熱量(J/g) △Hcc:温度変調DSCの非可逆熱流束カーブから求めた
冷結晶化熱量(J/g) また、本発明のポリエステル系未延伸糸は、紡糸、巻取
後の遅延収縮が最小限に抑えられているため、極めて均
一性の高い未延伸糸が得られる。糸長手方向の太さ斑の
指標であるウースター斑を小さくすることにより、延伸
や仮撚等の糸加工における加工張力の変動を抑制し、工
程安定性を高めることで生産性を向上させることが可能
となるばかりか、得られる糸からなる布帛の染め斑等の
欠点が少なくなり、品位の高い製品を得ることができ
る。ウースター斑は好ましくは1%以下であり、より好
ましくは0.8%以下である。
【0033】また、本発明のポリエステル系未延伸糸に
は交絡処理が施され、CF値が3以上であることが好ま
しい。CF値を3以上とすることで、製糸や糸加工、製
織時の単糸切れを抑制することができる。CF値はより
好ましくは5以上である。
【0034】また、本発明のポリエステル系未延伸糸を
構成する繊維の断面形状は、丸断面、三角断面、マルチ
ローバル断面、中空断面、偏平断面、W断面、X型断面
その他の異形断面であってもよく、目的に合わせて適宜
選択すればよい。
【0035】本発明のポリエステル系未延伸糸はチーズ
状パッケージに巻かれていることが好ましい。パッケー
ジフォームは延伸や仮撚等の糸加工における糸の解舒性
に影響を与えるため、良好なパッケージフォームが要求
される。通常、パッケージフォームで問題となるのは、
サドル(耳立ち)とバルジ(ふくらみ)であり、いずれ
も小さい方が高速解舒性に優れる。本発明者らの考案し
た方法に従えば、パッケージに巻き取る前に繊維内部構
造が安定化するため、パケージフォームが良好なチーズ
とすることが可能である。延伸、仮撚で要求される解舒
速度は500〜800m/分にも達するが、その速度で
解舒張力の変動が小さく、安定して糸加工を行うために
はサドルが4mm未満、バルジ率が10%未満であるこ
とが好ましい。より好ましくはサドルが3mm未満、バ
ルジ率が7%未満である。なお、サドル及びバルジ率は
4kg巻きパッケージで測定を行った。
【0036】次に、本発明のポリエステル系未延伸糸の
製造方法の一例を示す。
【0037】本発明のポリエステル系未延伸糸の主原料
となるPTTの製造方法として、公知の方法をそのまま
用いることができる。用いるPTTの極限粘度[η]
は、紡糸時の曳糸性を高め、実用的な強度の糸を得るた
めに0.75以上であることが好ましく、0.85以上
であることがより好ましい。なお、PTT原料中に含ま
れる環状2量体を主成分とするオリゴマーは、紡糸時に
口金汚れ及び口金下ハウジングでの針状結晶の析出を促
し、製糸性に悪影響を及ぼすので、オリゴマー含有量は
少ないほどよく、好ましくは2重量%以下、より好まし
くは1.5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下
にするとよい。オリゴマー量を少なくするための方法と
しては固相重合が有効な手段となる。液相重合によりP
TTの極限粘度[η]を0.4〜0.7とした後、固相
重合温度180〜215℃、暴露時間2〜20時間で、
窒素、アルゴン等の不活性ガス下もしくは真空度10t
orr以下、より好ましくは1torr以下の減圧下で
行うことができる。また、重合時に生成するビス(3−
ヒドロキシプロピル)エーテルは軟化点の低下や、強度
等の機械的特性を低下させる傾向があるため少ないほど
よく、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量
%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。
【0038】また、本発明のポリエステル系未延伸糸は
重合を行った後、そのまま紡糸する直連重紡で行っても
よいし、一旦チップ化した後、乾燥もしくは固相重合
し、紡糸してもよいが、前記したようにオリゴマー量を
少なくするために一旦チップ化した後、固相重合するこ
とが好ましい。
【0039】溶融紡糸を行うに際しての紡糸温度は、口
金での吐出を安定させるためにPTTの融点よりも15
〜60℃高い温度で行うことが好ましく、25〜50℃
高い温度で行うことがより好ましい。また、紡糸でのオ
リゴマー析出を抑制し、紡糸性を向上させるために、必
要に応じて口金下に2〜20cmの加熱筒やMO(モノ
マー、オリゴマー)吸引装置、ポリマ酸化劣化あるいは
口金孔汚れ防止用の空気、スチーム、N2などの不活性
ガス発生装置を設置してもよい。
【0040】ここで、本発明のポリエステル系未延伸糸
の製造方法を図をもって説明する。
【0041】図1は本発明で好ましく用いられる紡糸装
置の概略図である。まず、紡糸口金1から吐出された糸
条は冷却チムニー2によって一旦冷却・固化された後、
内部雰囲気温度が120〜220℃の加熱筒装置3で熱
処理される。熱処理を受けた紡糸糸条は給油装置4で油
剤を付与され、交絡ノズル5で適度に交絡を与えられた
後、ゴデーロール6及び8で引き取られ、巻取機9で巻
き取られる。ゴデーロール6と8との間の弛緩率は0〜
3%が好ましく、さらにゴデーロール8と巻取機9との
間で弛緩処理してもよい。また、ゴデーロール間に雰囲
気温度100〜150℃の熱処理装置7、例えば加熱空
気やスチームを熱媒とした熱処理装置を用いることも本
発明の目的を達成する有効な手段となる。
【0042】PTT繊維はPET繊維と比較して結晶化
速度が速いため、前記加熱筒装置3で0.01秒以上熱
処理することで結晶化が進行する。加熱筒装置3の熱処
理ゾーンの長さは熱処理時間が0.01秒以上になるよ
うに設計すればよく、例えば紡糸速度3000m/分で
は熱処理ゾーンの長さ50cm以上、紡糸速度4000
m/分では67cm以上あればよい。なお、加熱筒3に
よる熱処理は過度に行うと糸斑の悪化を招くので、熱処
理時間は好ましくは0.05秒以下である。
【0043】加熱筒から出た糸条は引き続き給油装置4
にて紡糸油剤が付与させる。給油装置は加熱筒出口側に
設置することが肝要であり、糸斑を抑制するために加熱
筒下20〜200cmに設置するとよい。
【0044】紡糸油剤は平滑剤、乳化剤、帯電防止剤な
どを含むものを付与する。具体的には、流動パラフィン
等の鉱物油、オクチルパルミテート、ラウリルオレエー
ト、イソトリデシルステアレート等の脂肪酸エステル、
ジオレイルアジペート、ジオクチルセバケート等の2塩
基酸ジエステル、トリメチロールプロパントリラウレー
ト、ヤシ油等の多価アルコールエステル、ラウリルチオ
ジプロピオネート等の脂肪族含硫黄エステル、ポリオキ
シエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンヒマ
シ油エーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエー
テル、トリメチロールプロパントリラウレート等のノニ
オン界面活性剤、アルキルスルホネート、アルキルホス
フェート等の金属塩あるいはアミン塩等のアニオン界面
活性剤、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、
アルカンスルホネートナトリウム塩等テトラメチレンオ
キシド/エチレンオキシド共重合体、プロピレンオキシ
ド/エチレンオキシド共重合体、非イオン系界面活性
剤、等を挙げることができ、製糸、整経、製織の各工
程、特に製織時の筬、綜絖の通過性を向上させる処方を
採用する。必要に応じて、さらに防錆剤、抗菌剤、酸化
防止剤、浸透剤、表面張力低下剤、転相粘度低下剤、摩
耗防止剤、その他の改質剤等を併用する。
【0045】油剤付着量は、糸に対して0.3〜1.2
重量%とすることが、高次工程通過性の点で好ましい。
【0046】交絡ノズル5は図1に示すように紡糸線上
に設置してもよいし、ゴデーロール間または巻取機前に
設置してもよいが、糸条の収束性を高め、ゴデーロール
上での走行を安定させるために紡糸線上に設置すること
が好ましい。また、CF値を10以上に高くしたい場合
は、さらに糸条張力の低いゴデーロール間や巻取機前に
交絡ノズルを追加設置することが好ましい。また、ゴデ
ーロール6および8の引取速度は、未延伸糸の残留伸度
が55〜130%になるように設定すればよく、引取速
度を2200〜5800m/分にすることで、前記の残
留伸度範囲を満足することができる。より好ましい引取
速度は2500〜5000m/分、さらに好ましくは2
800〜4200m/分である。
【0047】また、ゴデーロール間の弛緩率は走行糸条
の安定性(ゴデーロール上でのピクツキや糸揺れ)と繊
維内部構造の歪み抑制を両立させることが肝要であり、
そのため弛緩率は0〜3%であることが好ましい。弛緩
率は高い方が繊維内部の歪みが小さく、熱安定性が向上
するので、前記熱処理装置7による熱収縮応力を利用し
て糸条の走行安定性を保持しつつ弛緩率を高くすること
も好ましい方法のひとつである。
【0048】次に、ゴーデーロール間で弛緩処理された
糸条は巻取機で巻き取られるが、このときの糸条張力は
好ましくは0.2cN/dtex以下であり、より好ま
しくは0.15cN/dtex以下、さらに好ましくは
0.10cN/dtex以下である。前記のごとく低張
力で巻き取ることにより、繊維内部構造の歪みを抑制
し、遅延収縮量が小さく安定構造のパッケージとするこ
とができる。さらに巻取機のローラーベイルを強制駆動
し、ローラーベイル速度をパッケージ表面速度に対し
0.05〜1%オーバーフィードしてリラックス巻取す
ることにより、パッケージフォームをより良好にするこ
とができる。
【0049】
【実施例】以下、本発明を実施例で詳細に説明する。な
お実施例中の各特性値は次の方法で求めた。 A.極限粘度 オルソクロロフェノール(以下OCPと略記する)10
ml中に試料ポリマを0.10g溶かし、25℃にてオ
ストワルド粘度計を用いて測定した。 B.強伸度 未延伸糸をオリエンテック(株)社製 TENSILO
N UCT−100でJIS L 1013(化学繊維
フィラメント糸試験方法)に示される定速伸長条件で測
定した。なお、破断伸度はS−S曲線における最大強力
を示した点の伸びから求めた。 C.複屈折度 未延伸糸をOLYMPUS社製BH−2偏光顕微鏡を用
いレターデーションΓと光路長dを測定し、複屈折度Δ
n=Γ/dを求めた。なお、dは繊維中心でのΓと繊維
径より求めた。 D.遅延収縮率 未延伸糸パッケージから糸を採取後、速やかに2×10
-3cN/dtexの荷重を架け、採取から2分以内に糸
長L1を測定し、温度25℃±2℃、相対湿度65%±
10%の雰囲気下で120時間放置後の糸長L2を測定
し、次式により算出した。
【0050】 遅延収縮率(%)=[(L1−L2)/L1]×100 E.50℃乾熱収縮率 JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方
法)に準じて測定した。未延伸糸パッケージから検尺機
でカセを採取し、90×10-3cN/dtexの実長測
定荷重を架けてカセ長L1を測定し、引き続いて実長測
定荷重をはずし、50℃雰囲気のオーブンに15分間投入し
た後取り出し、再び実長測定荷重を架けてカセ長L2を
測定し、次式により50℃乾熱収縮率を算出した。
【0051】50℃乾熱収縮率(%)=[(L1−L2)
/L1]×100 F.沸騰水収縮率 JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方
法)に準じて測定した。未延伸糸パッケージから検尺機
でカセを採取し、90×10-3cN/dtexの実長測
定荷重を架けてカセ長L1を測定し、引き続いて実長測
定荷重をはずし、沸騰水中に15分間投入した後取り出
し、風乾し、再び実長測定荷重を架けてカセ長L2を測
定し、次式により沸騰水収縮率を算出した。
【0052】 沸騰水収縮率(%)=[(L1−L2)/L1]×100 G.冷結晶化熱量、結晶化度 TA Instruments社製DSC2920Mo
dulated DSCを用い、加熱温度0〜250
℃、昇温速度1℃/min、温度変調振幅±0.5℃、
温度変調周期60秒、試料重量約10mg、試料に容器
アルミニウム製開放型容器を使用して測定した。得られ
た熱流束曲線のうち、非可逆熱流束曲線から冷結晶化熱
量△Hccを、全熱流束曲線から融解熱量△Hmをそれぞ
れ求めた。なお、結晶化度は次式によって求めた。ま
た、結晶化度が100%のときの△Hmの値145(J
/g)はJournal of Polymer Sc
ience:PartB,36,2499(1998)
に記載の文献値30kJ/molをJ/gの単位に変換
して用いた。
【0053】結晶化度Xc(%)=(△Hm−△Hcc)
/145(Xc100%の△Hm)×100 △Hm:温度変調DSCの全熱流束カーブから求めた融解
熱量(J/g) △Hcc:温度変調DSCの非可逆熱流束カーブから求めた
冷結晶化熱量(J/g) Xc100%の△Hm:145(J/g) H.ウースター斑 糸長手方向の太さ斑(ノーマルテスト)は、ツェルベガ
ーウースター(株)社製USTER TESTER M
ONITOR Cで測定した。条件は、糸速度50m/
分で1分間供給し、ノーマルモードで平均偏差率(U
%)を測定した。 I.交絡度CF値 JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方
法)7.13の交絡度に示される条件で測定した。試験
回数は50回とし、交絡長の平均値L(mm)から下式
よりCF値(Coherence Factor)を求
めた。
【0054】CF値=1000/L J.サドル及びバルジ率 図2に示す未延伸糸パッケージの中央部の巻厚L1と、
端面部の巻厚L2を測定し、L2からL1を引いた値をサ
ドルの大きさとした。また、図2に示す未延伸糸パッケ
ージの最内層の巻き巾L3及び、最大巻き巾を示すL4を
測定し、次式によってバルジ率を算出した。
【0055】 バルジ率(%)=[(L4−L3)/L3]×100 K.延伸性延伸糸の糸切れ欠点を、延伸糸1000kg
当たりの糸切れ回数で評価した。 糸切れ回数が10回以下であれば○、10〜20回で
△、20回を越える場合は×として3段階評価を行っ
た。延伸条件は汎用のホットロール−ホットロール延伸
機を用い、延伸温度60℃、セット温度130℃、延伸
倍率は残留伸度40%になるように設定した。 L.仮撚性 仮撚加工糸の糸切れ欠点を、加工糸1000kg当たり
の糸切れ回数で評価した。糸切れ回数が10回以下であ
れば○、10〜20回で△、20回を越える場合は×と
して3段階評価を行った。仮撚加工条件は汎用のフリク
ション仮撚機を用い、加工速度300m/分、ディスク
回転数2750rpm(直径58mmウレタンディスク
使用)、熱板温度150℃(熱板長2.0m)、延伸倍
率は残留伸度40%になるように設定した。
【0056】実施例1 ジメチルテレフタル酸19.4kg、1,3−プロパン
ジオール15.2kgおよび触媒としてテトラブチルチ
タネート、艶消し剤として2酸化チタンを添加し、14
0℃〜230℃でエステル化反応を行った後、さらに、
250℃温度一定の条件下で3時間重縮合反応を行い極
限粘度[η]が0.68のPTTプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを120℃で1時間予備乾燥した
後、1.2〜0.7hpaの減圧下、200℃で4時間
固相重合することにより、極限粘度[η]が0.98の
PTT樹脂を得た。得られたPTT樹脂は、Tg48
℃、Tm227℃、2酸化チタン含有量0.35重量%
であり、クロロホルムに可溶なオリゴマー含有量は0.
9重量%であった。
【0057】次に図1に示す紡糸機を用い、前記PTT
樹脂を溶融し、紡糸温度265℃で36孔の紡糸口金1
から吐出し、チムニー2で冷却、口金下1.5mに設置
した長さ1.7m(実効加熱長1.55m、加熱筒内径
20mm)の加熱筒装置3に紡糸糸条を通し、加熱筒温
度180℃で熱処理し、加熱筒下0.45mに設置した
ガイド給油装置4にて紡糸油剤を付与しながら周速度3
500m/分の第1ゴデーロール6及び周速度3460
m/分の第2ゴデーロール8(ゴデーロール間の弛緩率
1.14%)で引き取り、巻取機9にて張力0.1cN
/dtexで巻き取り100dtex、36フィラメン
トの未延伸糸を得た。また、後工程での加工性を良好に
するために紡糸線上に交絡ノズル5を設置し、作動圧空
圧0.1MPaで交絡を付与した。
【0058】得られた未延伸糸は良好なパッケージフォ
ームであり、強度は3.1cN/dtex、破断伸度は
84.2%、複屈折度は0.057であり、遅延収縮率
が1.3%、50℃乾熱収縮率が1.4%であり、力学
的特性、熱安定性ともに十分実用に耐える特性を示し
た。物性値を表1に示す。
【0059】また、実施例1で得られた未延伸糸の延伸
性、仮撚加工性試験したところ、極めて良好な加工性を
示した。物性値を表1に示す。
【0060】実施例2 実施例1で製造したPTTプレポリマーを用い、固相重
合時間を1時間とした以外は実施例1と同じ条件で実施
した。実施例2の未延伸糸は実施例1と比較してやや低
強度であったが、熱安定性は高いものであった。また、
延伸性は実施例1同様に良好であったが、仮撚加工性が
若干悪かった。物性値を表1に示す。
【0061】実施例3 実施例1で製造したPTTプレポリマーを用い、固相重
合時間を6時間とした以外は実施例1と同じ条件で実施
した。実施例2の未延伸糸は実施例1同様、良好な諸特
性を示し、延伸性、仮撚加工性ともに極めて安定してい
た。物性値を表1に示す。
【0062】比較例1 実施例1で製造したPTTプレポリマーを3.0〜0.
7hpaの減圧下、140℃で6時間乾燥して使用した
以外は実施例1と同じ条件で実施した。乾燥後の極限粘
度は乾燥前と変わらず0.68であった。比較例1の未
延伸糸は熱安定性は高いものの、強度が低く、そのため
延伸性、仮撚加工性ともに悪いものであった。物性値を
表1に示す。
【0063】実施例4 第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度を
それぞれ2500m/分、2485m/分(ゴデーロー
ル間の弛緩率0.6%)とし、巻取後の繊度を120d
texとした以外は実施例1と同じ条件で実施した。実
施例4の未延伸糸は実施例1と比較して低強度、高伸度
であるため、延伸性、仮撚加工性が若干劣るものであっ
たが、生産には十分耐えうる加工性を示した。物性値を
表1に示す。
【0064】実施例5、実施例6 第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度を
それぞれ4000m/分、3940m/分(ゴデーロー
ル間の弛緩率1.5%)とし、巻取後の繊度を92dt
exとした以外は実施例1と同じ条件で実施した(実施
例5)。また、第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロー
ル8の周速度をそれぞれ5000m/分、4850m/
分(ゴデーロール間の弛緩率3.0%)とし、巻取後の
繊度を85dtexとした以外は実施例1と同じ条件で
実施した(実施例6)。実施例5および実施例6の未延
伸糸は実施例1同様、良好な諸特性を示し、延伸性、仮
撚加工性ともに極めて安定していた。それぞれの実施例
の物性値を表1に示す。
【0065】比較例2 第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度を
それぞれ2000m/分、1990m/分(ゴデーロー
ル間の弛緩率0.5%)とし、巻取後の繊度を140d
texとした以外は実施例1と同じ条件で実施した。比
較例2の未延伸糸は実施例1と比較して低強度、高伸度
で低複屈折度(配向性低い)であるとともに、遅延収縮
率2.3%、50℃乾熱収縮率12%と熱安定性も低
く、パッケージフォームもバルジ率が高く、悪いもので
あった。そのため加工時の解舒張力が不安定であるとと
もに、延伸性、仮撚加工性も極めて悪いものであった。
物性値を表1に示す。
【0066】比較例3 第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度を
それぞれ6000m/分、5820m/分(ゴデーロー
ル間の弛緩率3.0%)とし、巻取後の繊度を81dt
exとした以外は実施例1と同じ条件で実施した。比較
例3の未延伸糸は実施例1と比較して高強度であった
が、遅延収縮率が3.0%と高いためにサドル4.2m
m、バルジ率11%とともに高く、パッケージフォーム
が不良であった。そのため延伸性は優れているものの、
仮撚加工において加撚張力の変動が大きく不安定である
ため糸切れが多発した。物性値を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】表中「弛緩率」とは「第1ゴデーロール6
と第2ゴデーロール8間の弛緩率」を、「GD間熱処理
装置」とは「ゴーデーロール間に設置したスチームコン
ディショナー」を、「50℃乾熱収縮」とは、「乾熱5
0℃での未延伸糸の収縮率」を、「冷結晶化熱量」と
は、「温度変調DSCでの非可逆熱流速曲線から得た冷
結晶化熱量」を、「融解熱量」とは、「温度変調DSC
での全熱流速曲線から得た融解熱量」を示す。
【0069】実施例7 加熱筒装置3の温度を140℃とした以外は実施例1と
同じ条件で実施した。
【0070】実施例7の未延伸糸は実施例1と比較して
遅延収縮率、50℃乾熱収縮率ともに若干高く、パッケ
ージフォームも劣るものであった。また、延伸性、仮撚
加工性ともに実施例1よりは劣るが、十分実用に耐えう
るレベルであった。実施例7の物性値を表2に示す。
【0071】比較例4、比較例5 加熱筒装置3の温度を100℃および230℃とした以
外は実施例1と同じ条件で実施した。加熱筒温度100
℃の比較例4の未延伸糸は実施例1と比較して遅延収縮
率が3.5%、50℃乾熱収縮率21.6%と高く、熱
安定性が低いものであった。また、パッケージフォーム
が悪いために仮撚加工で糸切れが多発した。また、加熱
筒温度230℃の比較例5は加熱筒部での糸切れが多発
し、サンプリングできなかった。比較例4の物性値を表
2に示す。
【0072】比較例6 第2ゴデーロール8の周速度を3535m/分(ゴデー
ロール間のストレッチ率1%)とした以外は実施例1と
同じ条件で実施した。比較例6の未延伸糸は実施例1と
同様に高強度であったが、遅延収縮率が2.3%と高い
ためにサドル4.2mm、バルジ率10%とともに高
く、パッケージフォームが不良であった。そのため延伸
性は良好であるものの、仮撚加工で糸切れが多発した。
物性値を表2に示す。
【0073】比較例7 第2ゴデーロール8と巻取機9の間の張力(巻取張力)
が0.22cN/dtexになるように巻取機の速度を
変更した以外は実施例1と同じ条件で実施した。 比較
例7の未延伸糸は実施例1と同様、高強度であったが、
遅延収縮率が2.2%と高いためにサドル4.5mm、
バルジ率12%とともに高く、パッケージフォームが極
めて悪かった。そのため解舒不良による張力変動により
延伸性、仮撚加工性ともに悪かった。物性値を表2に示
す。
【0074】実施例8 第2ゴデーロール8の周速度を3400m/分(ゴデー
ロール間の弛緩率2.86%)とした以外は実施例1と
同じ条件で実施した。実施例8の未延伸糸は実施例1と
同様、良好な諸特性を示し、パッケージフォームも実施
例1より優れていた。また、延伸性、仮撚加工性ともに
極めて安定していた。物性値を表2に示す。
【0075】実施例9 加熱筒装置3の温度を210℃とし、ゴデーロール間に
内部温度125℃のスチームコンディショナー(実効加
熱長0.38m)を設置して弛緩熱処理した以外は実施
例8と同じ条件で実施した。実施例9の未延伸糸は実施
例1よりもさらに遅延収縮率、50℃乾熱収縮率が小さ
く、パッケージフォームも極めて良好であった。また、
その他の諸特性も良好であり、延伸性、仮撚加工性とも
に実施例1よりも優れていた。物性値を表2に示す。
【0076】比較例8 加熱筒装置3を取り外し、第1ゴデーロール6及び第2
ゴデーロール8の周速度を3000m/分(ゴデーロー
ル間は定長処理)とした以外は実施例1と同じ条件で実
施した。比較例8の未延伸糸は遅延収縮率が3.2%と
高く、さらに50℃乾熱収縮率が40.5%と極めて高
いために経時的に収縮特性や糸径が変化し、パッケージ
内外層差や端面周期斑が大きく品質が悪いものであっ
た。また、パッケージのサドルが4.2mmと高いため
に解舒不良による張力変動により延伸性、仮撚加工性が
極めて悪かった。物性値を表2に示す。
【0077】比較例9 第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロール8の周速度を
それぞれ4000m/分、3940m/分(ゴデーロー
ル間の弛緩率1.5%)とした以外は比較例8と同じ条
件で実施した。比較例9の未延伸糸は実施例1同様に高
強度であったが、遅延収縮率が4.1%と高く、さらに
50℃乾熱収縮率も19.8%と高いために比較例8同
様、経時的に収縮特性や糸径が変化し、パッケージ内外
層差や端面周期斑が大きく品質が悪いものであった。ま
た、パッケージのサドルが4.8mmと高いために解舒
不良による張力変動により延伸性、仮撚加工性が極めて
悪かった。物性値を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【発明の効果】本発明は、ポリトリメチレンテレフタレ
ートを主成分とする未延伸糸に関するものであり、巻締
まりや繊維内部の歪み緩和に起因する工程通過性不良、
染色性不良等の問題を解決し、取り扱い性や汎用性に優
れたポリエステル系未延伸糸を得ることができるもので
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル系未延伸糸を得るための
紡糸装置の一例を示す概略図である。
【図2】未延伸糸パッケージのサドルおよびバルジ率を
説明するための概略図である。
【符号の説明】
1:紡糸口金 2:チムニー 3:加熱筒装置 4:給油装置 5:交絡ノズル 6:第1ゴデーロール 7:熱処理装置(スチームコンディショナー) 8:第2ゴデーロール 9:巻取機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L035 BB52 BB56 CC02 DD20 EE06 EE08 EE20 4L045 AA05 BA03 BA49 BA51 BA52 BA60 CA25 DA09 DA12 DA17 DA21 DA44 DA49 DC03 DC06 DC36

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】実質的にポリトリメチレンテレフタレート
    から構成され、極限粘度が0.7〜1.2であるポリト
    リメチレンテレフタレート繊維からなるマルチフィラメ
    ントであって、以下の(1)〜(5)の要件を満足する
    ことを特徴とするポリエステル系未延伸糸。 (1)破断強度 :2.0cN/dtex以上 (2)破断伸度 :55〜130% (3)複屈折度 :0.04〜0.07 (4)遅延収縮率 :2%以下 (5)50℃乾熱収縮率:10%以下
  2. 【請求項2】沸騰水収縮率が3〜20%であることを特
    徴とする請求項1記載のポリエステル系未延伸糸。
  3. 【請求項3】温度変調DSCにおける冷結晶化熱量△H
    が10J/g以下であることを特徴とする請求項1また
    は2記載のポリエステル系未延伸糸。
  4. 【請求項4】温度変調DSCにおける結晶化度が30%
    以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1
    項記載のポリエステル系未延伸糸。
  5. 【請求項5】糸の太さ斑U%(ノーマルモード)が1%
    以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1
    項記載のポリエステル系未延伸糸。
  6. 【請求項6】CF値が3以上であることを特徴とする請
    求項1〜5のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸
    糸。
  7. 【請求項7】請求項1〜6のいずれか1項記載のポリエ
    ステル系未延伸糸が巻き付けられ、サドルが4mm未満
    でかつバルジ率が10%未満であることを特徴とするチ
    ーズ状未延伸糸パッケージ。
  8. 【請求項8】ポリトリメチレンテレフタレートを主成分
    とする極限粘度が0.75以上のポリエステルを溶融紡
    糸し、紡糸糸条を一旦冷却固化した後、内部雰囲気温度
    が120〜220℃の加熱筒装置で0.01秒以上熱処
    理し、再び冷却してから残留伸度55〜130%になる
    ような紡糸速度で糸条を引き取り、引き続いて弛緩率0
    〜3%で弛緩させた後、0.2cN/dtex以下の張
    力で巻き取ることを特徴とするポリエステル系未延伸糸
    の製造方法。
  9. 【請求項9】紡糸引き取り後、ゴデーロール間で弛緩処
    理する際に、内部雰囲気温度が100〜150℃の熱処
    理装置で熱処理を施すことを特徴とする請求項8記載の
    ポリエステル系未延伸糸の製造方法。
JP2000271242A 2000-09-07 2000-09-07 取り扱い性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4517481B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000271242A JP4517481B2 (ja) 2000-09-07 2000-09-07 取り扱い性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000271242A JP4517481B2 (ja) 2000-09-07 2000-09-07 取り扱い性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002088570A true JP2002088570A (ja) 2002-03-27
JP4517481B2 JP4517481B2 (ja) 2010-08-04

Family

ID=18757556

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000271242A Expired - Fee Related JP4517481B2 (ja) 2000-09-07 2000-09-07 取り扱い性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4517481B2 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003069034A1 (en) * 2002-02-12 2003-08-21 Zimmer Ag A process for the production and for the winding of polyester multi-filament yarns as well as the polyester multi-filament yarns obtainable by said method and a device for the winding of one or more multi-filament yarns
WO2003083190A1 (de) * 2002-03-28 2003-10-09 Zimmer Ag Verfahren zum spinnen und aufspulen von polyester-multifilament-garnen unter verwendung von spinnadditiven sowie durch das spinn-verfahren erhältliche polyester-multifilamente-garne
US6689461B2 (en) 2001-04-17 2004-02-10 Asahi Kasei Kabushiki Kaisha False twisted yarn of polyester composite fiber and method for production thereof
US6824869B2 (en) 2001-11-06 2004-11-30 Asahi Kasei Fibers Corporation Polyester type conjugate fiber package
JP2006283200A (ja) * 2005-03-31 2006-10-19 Toray Ind Inc ポリエステル分割型複合繊維パッケージおよび製造方法
JP2007524764A (ja) * 2003-02-05 2007-08-30 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー 紡糸アニールしたポリ(トリメチレンテレフタレート)糸
CN114959927A (zh) * 2022-05-18 2022-08-30 浙江新乐纺织化纤有限公司 一种复合仿麻效果涤纶长丝的生产工艺

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11229276A (ja) * 1998-02-18 1999-08-24 Asahi Chem Ind Co Ltd 加工性の優れたポリエステル繊維
JPH11302919A (ja) * 1998-04-23 1999-11-02 Asahi Chem Ind Co Ltd チ−ズ状パッケ−ジ及びその製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11229276A (ja) * 1998-02-18 1999-08-24 Asahi Chem Ind Co Ltd 加工性の優れたポリエステル繊維
JPH11302919A (ja) * 1998-04-23 1999-11-02 Asahi Chem Ind Co Ltd チ−ズ状パッケ−ジ及びその製造方法

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6689461B2 (en) 2001-04-17 2004-02-10 Asahi Kasei Kabushiki Kaisha False twisted yarn of polyester composite fiber and method for production thereof
US6824869B2 (en) 2001-11-06 2004-11-30 Asahi Kasei Fibers Corporation Polyester type conjugate fiber package
US6982118B2 (en) 2001-11-06 2006-01-03 Asahi Kasei Fibers Corporation Polyester type conjugate fiber package
WO2003069034A1 (en) * 2002-02-12 2003-08-21 Zimmer Ag A process for the production and for the winding of polyester multi-filament yarns as well as the polyester multi-filament yarns obtainable by said method and a device for the winding of one or more multi-filament yarns
CN1316080C (zh) * 2002-02-12 2007-05-16 齐默尔股份公司 用于制造和卷绕聚酯复丝纱线的方法以及可通过所述方法获得的聚酯复丝纱线和用于卷绕一股或多股复丝纱线的装置
WO2003083190A1 (de) * 2002-03-28 2003-10-09 Zimmer Ag Verfahren zum spinnen und aufspulen von polyester-multifilament-garnen unter verwendung von spinnadditiven sowie durch das spinn-verfahren erhältliche polyester-multifilamente-garne
JP2007524764A (ja) * 2003-02-05 2007-08-30 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー 紡糸アニールしたポリ(トリメチレンテレフタレート)糸
KR101197816B1 (ko) 2003-02-05 2012-11-05 이 아이 듀폰 디 네모아 앤드 캄파니 방사 어닐링된 폴리(트리메틸렌 테레프탈레이트)사
JP2006283200A (ja) * 2005-03-31 2006-10-19 Toray Ind Inc ポリエステル分割型複合繊維パッケージおよび製造方法
CN114959927A (zh) * 2022-05-18 2022-08-30 浙江新乐纺织化纤有限公司 一种复合仿麻效果涤纶长丝的生产工艺

Also Published As

Publication number Publication date
JP4517481B2 (ja) 2010-08-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3249107B2 (ja) ポリトリメチレンテレフタレート繊維
WO2000078839A1 (fr) Resine d'acide polyactique, articles textiles obtenus a l'aide de cette resine, et procedes de production de ces articles textiles
KR100695694B1 (ko) 폴리에스테르사 및 그 제조방법
JP2001164433A (ja) ポリプロピレンテレフタレート仮撚糸およびその製造方法
JP4720014B2 (ja) 潜在捲縮発現性を有するポリエステル複合糸およびその製造方法、パッケージ
KR20020025994A (ko) 폴리트리메틸렌 테레프탈레이트 이형사
JP3683251B2 (ja) 延伸糸パッケージ及びその製造法
JP2009256857A (ja) 分繊用ポリ乳酸マルチフィラメントおよびそれを用いたポリ乳酸モノフィラメントの製造方法
JP4517481B2 (ja) 取り扱い性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法
JP3885468B2 (ja) 嵩高性ポリエステル系複合糸およびその製造方法ならびに布帛
JP3599707B2 (ja) 延伸糸パーン
JP3463597B2 (ja) 光沢に優れた脂肪族ポリエステル仮撚糸
JP3520848B2 (ja) ポリエステル糸およびその製造方法
JP3753658B2 (ja) ポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメント糸
JP4337344B2 (ja) チーズ状パッケージの製造方法および繊維製品の製造方法
JP2001064824A (ja) ポリプロピレンテレフタレート高配向未延伸糸およびその製造方法
JP4788480B2 (ja) 分割型複合部分延伸糸およびその製造方法
JP3693552B2 (ja) ポリエステル繊維の製造方法
JP4725200B2 (ja) 均一染色性に優れた分割型複合繊維およびその製造方法
JP2002161436A (ja) カチオン染料可染ポリトリメチレンテレフタレート繊維
JP2003129337A (ja) ポリトリメチレンテレフタレート繊維及びその製造方法
JP3910038B2 (ja) 前配向糸パッケージとその製造方法
JP2004277910A (ja) 分繊用脂肪族ポリエステルマルチフィラメント
JP2002220738A (ja) 高速仮撚用延伸糸及びその製造方法
JPH06280114A (ja) 高収縮性ポリエステル繊維

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070808

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100125

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100202

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100402

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100427

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100510

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130528

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130528

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees