JP2002088570A - 取り扱い性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法 - Google Patents
取り扱い性に優れたポリエステル系未延伸糸およびその製造方法Info
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Abstract
ることができ、強度等機械的特性に優れるとともに、夏
場の搬送等による高温環境下でも経時変化が少なく寸法
安定性、仮撚加工や延伸等の工程通過性に優れたポリエ
ステル系未延伸糸およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 実質的にポリトリメチレンテレフタレー
トから構成され、極限粘度が0.7〜1.2であるポリ
トリメチレンテレフタレート繊維からなるマルチフィラ
メントであって、以下の(1)〜(5)の要件を満足す
ることを特徴とするポリエステル系未延伸糸。 (1)破断強度 :2.0cN/dtex以上 (2)破断伸度 :55〜130% (3)複屈折度 :0.04〜0.07 (4)遅延収縮率 :2%以下 (5)50℃乾熱収縮率:10%以下
Description
テレフタレートを主成分としたポリエステル系未延伸糸
に関し、さらに詳しくは繊維構造および寸法の安定性、
仮撚加工や延伸等の工程通過性に優れたポリエステル系
未延伸糸およびその製造方法に関する。
するポリエステル繊維は、機械的特性をはじめ様々の優
れた特性を有しているため、最も衣料用に適した合成繊
維として世界中で大量生産されている。
維(以下PTT繊維と略記する)は、特開昭52−53
20号公報や特開昭52−8124号公報などにみられ
るように古くから研究されており、伸長弾性回復性に優
れるとともに、ヤング率が低いために布帛にした際にソ
フト風合いを呈し、衣料用に好適な素材であることが知
られている。
ールが比較的高価であるため、合成繊維としての工業生
産は行われていなかった。
1号明細書などで開示されているように、安価な1,3
プロパンジオールの合成法が見い出されたため、PTT
繊維の工業生産の可能性が急速に高まってきている。
曲しており、その屈曲部の伸長・回復により高い伸縮特
性を有する。そのため、例えば仮撚加工糸や強撚糸とし
た場合に優れたストレッチ性を示すため、高い自由度が
要求される衣服に最適な素材といえる。
ような特異な分子形態を有することに起因する紡糸・延
伸での巻締まりやパッケージ内外層での物性差、またそ
れに伴う加工工程での工程通過性不良や染色欠点等、多
くの問題が発生することがわかった。また、PTT未延
伸糸は環境温度に敏感であり、高温での保管により容易
に経時変化し、前記問題点が顕在化する。そのため、特
に夏場のトラック輸送に耐えうる高品質の未延伸糸が得
られていなかった。このように、PTT未延伸糸は加工
条件の適正化が困難であるばかりか、保管には厳密な温
度管理が要求され、さらには最終製品までの工程日数の
大幅な短縮が必要なため用途が大幅に限定されてしま
う。
3号公報や国際公開WO99/27188に開示されて
いるように、紡糸、延伸工程を連続して行う直接紡糸延
伸法を用いる方法があるが、該方法は延伸糸の製造に関
する発明であり、延伸工程を経るため本発明の目的とす
る物性を示す未延伸糸を得ることはできない。
して、特開平11−302919号公報に口金下で除冷
してから引き取った後、糸条を十分に冷却して巻き取る
方法が開示されている。該方法を用いれば、確かに巻締
まりを抑制しつつ巻き取ることができるが、繊維内部構
造が固定されていないため経時変化が生じ、前記のよう
な問題が顕在化して品質の悪い未延伸糸しか得られな
い。
問題点を解決しようとするものであり、ポリトリメチレ
ンテレフタレートを主成分とする未延伸糸の巻締まりや
繊維内部の歪み緩和に起因する工程通過性不良、染色性
不良等の問題を解決し、取り扱い性や汎用性に優れたポ
リエステル系未延伸糸およびその製造方法を提供するも
のである。
ため本発明のポリエステル系未延伸糸およびその製造方
法は、次の構成を有する。すなわち、 [1]実質的にポリトリメチレンテレフタレートから構
成され、極限粘度が0.7〜1.2であるポリトリメチ
レンテレフタレート繊維からなるマルチフィラメントで
あって、以下の(1)〜(5)の要件を満足することを
特徴とするポリエステル系未延伸糸である。
る前記[1]記載のポリエステル系未延伸糸。
量△Hが10J/g以下であることを特徴とする前記
[1]または[2]記載のポリエステル系未延伸糸。
30%以上であることを特徴とする前記[1]〜[3]
のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸。
が1%以下であることを特徴とする前記[1]〜[4]
のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸糸。
する前記[1]〜[5]のいずれか1項記載のポリエス
テル系未延伸糸。
記載のポリエステル系未延伸糸が巻き付けられ、サドル
が4mm未満でかつバルジ率が10%未満であることを
特徴とするチーズ状未延伸糸パッケージ。
主成分とする極限粘度が0.75以上のポリエステルを
溶融紡糸し、紡糸糸条を一旦冷却固化した後、内部雰囲
気温度が120〜220℃の加熱筒装置で0.01秒以
上熱処理し、再び冷却してから残留伸度55〜130%
になるような紡糸速度で糸条を引き取り、引き続いて弛
緩率0〜3%で弛緩させた後、0.2cN/dtex以
下の張力で巻き取ることを特徴とするポリエステル系未
延伸糸の製造方法。
弛緩処理する際に、内部雰囲気温度が100〜150℃
の熱処理装置で熱処理を施すことを特徴とする前記
[8]記載のポリエステル系未延伸糸の製造方法。
未延伸糸を構成するポリエステルとは、その構成単位の
少なくとも90モル%がテレフタル酸を主たる酸成分と
し、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分
として得られるポリトリメチレンテレフタレート(以下
PTTと略記する)である。ただし、10モル%、より
好ましくは6モル%以下の割合で、他のエステル結合の
形成可能な共重合成分を含んでいてもよく、他のポリマ
ーやコポリマーを少量ブレンドしてもよい。また、共重
合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク
酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ
酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸な
どのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレン
グリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコー
ル、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコ
ール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙
げることができるが、これらに限定されるものではな
い。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタ
ン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤
としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添
加してもよい。
TTの極限粘度は0.7〜1.2のものである。極限粘
度が0.7未満では、如何なる紡糸条件を適用しても本
発明の目的とする強度を満足することができない。一
方、極限粘度が1.2を越えるPTT繊維は製造が困難
であるとともに、得られる未延伸糸の糸加工工程での加
工張力の増大により糸切れ、毛羽の発生を誘発し、加工
性が低下してしまう。極限粘度の好ましい範囲は、製造
の容易さ、後の糸加工性を考慮すると0.75〜1.1
5の範囲が好ましく、0.8〜1.1がより好ましい。
下記(1)〜(5)の要件を同時に満足することが重要
である。
性や、布帛の機械的特性に大きく影響する。前記生産性
や製品の品質を満足するためには、2.0cN/dte
x以上とするものであり、好ましくは2.5cN/dt
ex以上、より好ましくは3.0cN/dtexであ
る。
性を良好にするために55%以上とするものであり、延
伸や仮撚で得られる糸の太さ斑を小さくし、より均質な
糸とするために130%以下とするものである。破断伸
度の好ましい範囲は60〜120%であり、より好まし
くは65〜110%である。
密接な関係があり、特に仮撚加工工程における毛羽や断
糸を防止し、良好な工程通過性を得るために複屈折度は
0.04以上とするものである。また、複屈折度は0.
07以下とするものである。複屈折度が0.07を越え
ると巻締まりや高温における遅延収縮を十分に抑えるこ
とが困難になる。複屈折度の好ましい範囲は0.045
〜0.065である。
ら解舒され、応力から解放されると除々に収縮する、い
わゆる遅延収縮と呼ばれる現象が生じる。この現象はパ
ケージ内においてもゆっくりと進行しており、パッケー
ジ形状が崩れて解舒性不良を起こしたり、パッケージ端
面周期に同期した糸の太さ斑が発生する等、さまざまな
問題を起こす。そのため遅延収縮率は低いほうがよく、
2%以下であることが重要である。好ましくは1.5%
以下であり、より好ましくは1.2%以下である。
は、環境温度に左右されず良好な品質を長時間維持する
ために10%以下であることが重要である。特に夏場の
トラック輸送においては環境温度が50℃にも達する。
そのため50℃乾熱収縮率は好ましくは5%以下、より
好ましくは3%以下である。
セット性や工程通過性を考慮すると3〜20%の範囲で
あることが好ましい。沸騰水収縮率が3%未満では仮撚
で捲縮セット性の低下があり、20%を越えると量産に
おける収縮率のバラツキが大きくなってしまうので好ま
しくない。沸騰水収縮率は5%〜15%がより好まし
い。
調DSCにおける冷結晶化熱量△Hccが10J/g以
下であることが好ましい。PTT繊維は、可逆成分であ
るガラス転移温度と非可逆成分である冷結晶化ピーク温
度が近接しているため、通常のDSCでは正確な冷結晶
化熱量を測定することが困難である。そのため、正常な
ガラス転移シグナル(可逆)とエンタルピー緩和部分
(非可逆)を分離することが可能な温度変調DSC(T
emperature Modulated DSC)
が有効な測定手法となる。
(直流成分)に小刻みのサイン波の温度振動(交流成
分)を与えて昇温させ、全熱流束曲線を可逆熱流束曲線
と非可逆熱流束曲線に分離できる示差走査熱量計であ
る。我々が調査した結果、PTTはPETと比較してガ
ラス転移点が低く、常温においても分子運動性が損なわ
れず逐次結晶化と非晶配向の緩和が容易に起こる。その
ため冷結晶化熱量が大きい従来の未延伸糸では前記の緩
和現象により寸法変化が生じてしまう。それを抑制する
ため、予め未延伸糸をパッケージングする前に結晶化を
促進させ、繊維構造の固定化を行う必要がある。冷結晶
化熱量△Hccが小さいほど繊維構造がより固定化されて
いることを示し、好ましくは△Hcc10J/g以下、よ
り好ましくは5J/g以下、さらに好ましくは2J/g
以下である。
よび冷結晶化熱量△Hccから算出される結晶化度Xcは
30%以上であることが好ましい。PTT繊維の寸法変
化は、前記したように逐次結晶化と非晶部の配向緩和に
よるものであり、PTT繊維の場合は特に逐次結晶化の
影響が大きい。熱処理を行わない従来法で巻き取った未
延伸糸の紡糸直後の結晶化度は30%未満であるが、室
温下において徐々に結晶化が進み、保管する温度によっ
ては結晶化度が35%を越えることもある。逐次結晶化
による収縮を防ぐ手段としては冷蔵保管という方法もあ
るが、取り扱い性の問題がある。そのため常温で分子運
動性が低く、経時変化しにくい高結晶化度の構造をとっ
ていることが好ましい。結晶化度は好ましくは30%以
上、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40
%以上である。なお、結晶化度Xcは下式によって求め
た。また、結晶化度が100%のときの△Hmの値14
5(J/g)はJournal of Polymer
Science:PartB,36,2499(19
98)の文献値30kJ/molをJ/gの単位に変換
して用いた。
c)/145(Xc100%の△Hm)]×100 △Hm:温度変調DSCの全熱流束カーブから求めた融解
熱量(J/g) △Hcc:温度変調DSCの非可逆熱流束カーブから求めた
冷結晶化熱量(J/g) また、本発明のポリエステル系未延伸糸は、紡糸、巻取
後の遅延収縮が最小限に抑えられているため、極めて均
一性の高い未延伸糸が得られる。糸長手方向の太さ斑の
指標であるウースター斑を小さくすることにより、延伸
や仮撚等の糸加工における加工張力の変動を抑制し、工
程安定性を高めることで生産性を向上させることが可能
となるばかりか、得られる糸からなる布帛の染め斑等の
欠点が少なくなり、品位の高い製品を得ることができ
る。ウースター斑は好ましくは1%以下であり、より好
ましくは0.8%以下である。
は交絡処理が施され、CF値が3以上であることが好ま
しい。CF値を3以上とすることで、製糸や糸加工、製
織時の単糸切れを抑制することができる。CF値はより
好ましくは5以上である。
構成する繊維の断面形状は、丸断面、三角断面、マルチ
ローバル断面、中空断面、偏平断面、W断面、X型断面
その他の異形断面であってもよく、目的に合わせて適宜
選択すればよい。
状パッケージに巻かれていることが好ましい。パッケー
ジフォームは延伸や仮撚等の糸加工における糸の解舒性
に影響を与えるため、良好なパッケージフォームが要求
される。通常、パッケージフォームで問題となるのは、
サドル(耳立ち)とバルジ(ふくらみ)であり、いずれ
も小さい方が高速解舒性に優れる。本発明者らの考案し
た方法に従えば、パッケージに巻き取る前に繊維内部構
造が安定化するため、パケージフォームが良好なチーズ
とすることが可能である。延伸、仮撚で要求される解舒
速度は500〜800m/分にも達するが、その速度で
解舒張力の変動が小さく、安定して糸加工を行うために
はサドルが4mm未満、バルジ率が10%未満であるこ
とが好ましい。より好ましくはサドルが3mm未満、バ
ルジ率が7%未満である。なお、サドル及びバルジ率は
4kg巻きパッケージで測定を行った。
製造方法の一例を示す。
となるPTTの製造方法として、公知の方法をそのまま
用いることができる。用いるPTTの極限粘度[η]
は、紡糸時の曳糸性を高め、実用的な強度の糸を得るた
めに0.75以上であることが好ましく、0.85以上
であることがより好ましい。なお、PTT原料中に含ま
れる環状2量体を主成分とするオリゴマーは、紡糸時に
口金汚れ及び口金下ハウジングでの針状結晶の析出を促
し、製糸性に悪影響を及ぼすので、オリゴマー含有量は
少ないほどよく、好ましくは2重量%以下、より好まし
くは1.5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下
にするとよい。オリゴマー量を少なくするための方法と
しては固相重合が有効な手段となる。液相重合によりP
TTの極限粘度[η]を0.4〜0.7とした後、固相
重合温度180〜215℃、暴露時間2〜20時間で、
窒素、アルゴン等の不活性ガス下もしくは真空度10t
orr以下、より好ましくは1torr以下の減圧下で
行うことができる。また、重合時に生成するビス(3−
ヒドロキシプロピル)エーテルは軟化点の低下や、強度
等の機械的特性を低下させる傾向があるため少ないほど
よく、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量
%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。
重合を行った後、そのまま紡糸する直連重紡で行っても
よいし、一旦チップ化した後、乾燥もしくは固相重合
し、紡糸してもよいが、前記したようにオリゴマー量を
少なくするために一旦チップ化した後、固相重合するこ
とが好ましい。
金での吐出を安定させるためにPTTの融点よりも15
〜60℃高い温度で行うことが好ましく、25〜50℃
高い温度で行うことがより好ましい。また、紡糸でのオ
リゴマー析出を抑制し、紡糸性を向上させるために、必
要に応じて口金下に2〜20cmの加熱筒やMO(モノ
マー、オリゴマー)吸引装置、ポリマ酸化劣化あるいは
口金孔汚れ防止用の空気、スチーム、N2などの不活性
ガス発生装置を設置してもよい。
の製造方法を図をもって説明する。
置の概略図である。まず、紡糸口金1から吐出された糸
条は冷却チムニー2によって一旦冷却・固化された後、
内部雰囲気温度が120〜220℃の加熱筒装置3で熱
処理される。熱処理を受けた紡糸糸条は給油装置4で油
剤を付与され、交絡ノズル5で適度に交絡を与えられた
後、ゴデーロール6及び8で引き取られ、巻取機9で巻
き取られる。ゴデーロール6と8との間の弛緩率は0〜
3%が好ましく、さらにゴデーロール8と巻取機9との
間で弛緩処理してもよい。また、ゴデーロール間に雰囲
気温度100〜150℃の熱処理装置7、例えば加熱空
気やスチームを熱媒とした熱処理装置を用いることも本
発明の目的を達成する有効な手段となる。
速度が速いため、前記加熱筒装置3で0.01秒以上熱
処理することで結晶化が進行する。加熱筒装置3の熱処
理ゾーンの長さは熱処理時間が0.01秒以上になるよ
うに設計すればよく、例えば紡糸速度3000m/分で
は熱処理ゾーンの長さ50cm以上、紡糸速度4000
m/分では67cm以上あればよい。なお、加熱筒3に
よる熱処理は過度に行うと糸斑の悪化を招くので、熱処
理時間は好ましくは0.05秒以下である。
にて紡糸油剤が付与させる。給油装置は加熱筒出口側に
設置することが肝要であり、糸斑を抑制するために加熱
筒下20〜200cmに設置するとよい。
どを含むものを付与する。具体的には、流動パラフィン
等の鉱物油、オクチルパルミテート、ラウリルオレエー
ト、イソトリデシルステアレート等の脂肪酸エステル、
ジオレイルアジペート、ジオクチルセバケート等の2塩
基酸ジエステル、トリメチロールプロパントリラウレー
ト、ヤシ油等の多価アルコールエステル、ラウリルチオ
ジプロピオネート等の脂肪族含硫黄エステル、ポリオキ
シエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンヒマ
シ油エーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエー
テル、トリメチロールプロパントリラウレート等のノニ
オン界面活性剤、アルキルスルホネート、アルキルホス
フェート等の金属塩あるいはアミン塩等のアニオン界面
活性剤、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、
アルカンスルホネートナトリウム塩等テトラメチレンオ
キシド/エチレンオキシド共重合体、プロピレンオキシ
ド/エチレンオキシド共重合体、非イオン系界面活性
剤、等を挙げることができ、製糸、整経、製織の各工
程、特に製織時の筬、綜絖の通過性を向上させる処方を
採用する。必要に応じて、さらに防錆剤、抗菌剤、酸化
防止剤、浸透剤、表面張力低下剤、転相粘度低下剤、摩
耗防止剤、その他の改質剤等を併用する。
重量%とすることが、高次工程通過性の点で好ましい。
に設置してもよいし、ゴデーロール間または巻取機前に
設置してもよいが、糸条の収束性を高め、ゴデーロール
上での走行を安定させるために紡糸線上に設置すること
が好ましい。また、CF値を10以上に高くしたい場合
は、さらに糸条張力の低いゴデーロール間や巻取機前に
交絡ノズルを追加設置することが好ましい。また、ゴデ
ーロール6および8の引取速度は、未延伸糸の残留伸度
が55〜130%になるように設定すればよく、引取速
度を2200〜5800m/分にすることで、前記の残
留伸度範囲を満足することができる。より好ましい引取
速度は2500〜5000m/分、さらに好ましくは2
800〜4200m/分である。
の安定性(ゴデーロール上でのピクツキや糸揺れ)と繊
維内部構造の歪み抑制を両立させることが肝要であり、
そのため弛緩率は0〜3%であることが好ましい。弛緩
率は高い方が繊維内部の歪みが小さく、熱安定性が向上
するので、前記熱処理装置7による熱収縮応力を利用し
て糸条の走行安定性を保持しつつ弛緩率を高くすること
も好ましい方法のひとつである。
糸条は巻取機で巻き取られるが、このときの糸条張力は
好ましくは0.2cN/dtex以下であり、より好ま
しくは0.15cN/dtex以下、さらに好ましくは
0.10cN/dtex以下である。前記のごとく低張
力で巻き取ることにより、繊維内部構造の歪みを抑制
し、遅延収縮量が小さく安定構造のパッケージとするこ
とができる。さらに巻取機のローラーベイルを強制駆動
し、ローラーベイル速度をパッケージ表面速度に対し
0.05〜1%オーバーフィードしてリラックス巻取す
ることにより、パッケージフォームをより良好にするこ
とができる。
お実施例中の各特性値は次の方法で求めた。 A.極限粘度 オルソクロロフェノール(以下OCPと略記する)10
ml中に試料ポリマを0.10g溶かし、25℃にてオ
ストワルド粘度計を用いて測定した。 B.強伸度 未延伸糸をオリエンテック(株)社製 TENSILO
N UCT−100でJIS L 1013(化学繊維
フィラメント糸試験方法)に示される定速伸長条件で測
定した。なお、破断伸度はS−S曲線における最大強力
を示した点の伸びから求めた。 C.複屈折度 未延伸糸をOLYMPUS社製BH−2偏光顕微鏡を用
いレターデーションΓと光路長dを測定し、複屈折度Δ
n=Γ/dを求めた。なお、dは繊維中心でのΓと繊維
径より求めた。 D.遅延収縮率 未延伸糸パッケージから糸を採取後、速やかに2×10
-3cN/dtexの荷重を架け、採取から2分以内に糸
長L1を測定し、温度25℃±2℃、相対湿度65%±
10%の雰囲気下で120時間放置後の糸長L2を測定
し、次式により算出した。
法)に準じて測定した。未延伸糸パッケージから検尺機
でカセを採取し、90×10-3cN/dtexの実長測
定荷重を架けてカセ長L1を測定し、引き続いて実長測
定荷重をはずし、50℃雰囲気のオーブンに15分間投入し
た後取り出し、再び実長測定荷重を架けてカセ長L2を
測定し、次式により50℃乾熱収縮率を算出した。
/L1]×100 F.沸騰水収縮率 JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方
法)に準じて測定した。未延伸糸パッケージから検尺機
でカセを採取し、90×10-3cN/dtexの実長測
定荷重を架けてカセ長L1を測定し、引き続いて実長測
定荷重をはずし、沸騰水中に15分間投入した後取り出
し、風乾し、再び実長測定荷重を架けてカセ長L2を測
定し、次式により沸騰水収縮率を算出した。
dulated DSCを用い、加熱温度0〜250
℃、昇温速度1℃/min、温度変調振幅±0.5℃、
温度変調周期60秒、試料重量約10mg、試料に容器
アルミニウム製開放型容器を使用して測定した。得られ
た熱流束曲線のうち、非可逆熱流束曲線から冷結晶化熱
量△Hccを、全熱流束曲線から融解熱量△Hmをそれぞ
れ求めた。なお、結晶化度は次式によって求めた。ま
た、結晶化度が100%のときの△Hmの値145(J
/g)はJournal of Polymer Sc
ience:PartB,36,2499(1998)
に記載の文献値30kJ/molをJ/gの単位に変換
して用いた。
/145(Xc100%の△Hm)×100 △Hm:温度変調DSCの全熱流束カーブから求めた融解
熱量(J/g) △Hcc:温度変調DSCの非可逆熱流束カーブから求めた
冷結晶化熱量(J/g) Xc100%の△Hm:145(J/g) H.ウースター斑 糸長手方向の太さ斑(ノーマルテスト)は、ツェルベガ
ーウースター(株)社製USTER TESTER M
ONITOR Cで測定した。条件は、糸速度50m/
分で1分間供給し、ノーマルモードで平均偏差率(U
%)を測定した。 I.交絡度CF値 JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方
法)7.13の交絡度に示される条件で測定した。試験
回数は50回とし、交絡長の平均値L(mm)から下式
よりCF値(Coherence Factor)を求
めた。
端面部の巻厚L2を測定し、L2からL1を引いた値をサ
ドルの大きさとした。また、図2に示す未延伸糸パッケ
ージの最内層の巻き巾L3及び、最大巻き巾を示すL4を
測定し、次式によってバルジ率を算出した。
当たりの糸切れ回数で評価した。 糸切れ回数が10回以下であれば○、10〜20回で
△、20回を越える場合は×として3段階評価を行っ
た。延伸条件は汎用のホットロール−ホットロール延伸
機を用い、延伸温度60℃、セット温度130℃、延伸
倍率は残留伸度40%になるように設定した。 L.仮撚性 仮撚加工糸の糸切れ欠点を、加工糸1000kg当たり
の糸切れ回数で評価した。糸切れ回数が10回以下であ
れば○、10〜20回で△、20回を越える場合は×と
して3段階評価を行った。仮撚加工条件は汎用のフリク
ション仮撚機を用い、加工速度300m/分、ディスク
回転数2750rpm(直径58mmウレタンディスク
使用)、熱板温度150℃(熱板長2.0m)、延伸倍
率は残留伸度40%になるように設定した。
ジオール15.2kgおよび触媒としてテトラブチルチ
タネート、艶消し剤として2酸化チタンを添加し、14
0℃〜230℃でエステル化反応を行った後、さらに、
250℃温度一定の条件下で3時間重縮合反応を行い極
限粘度[η]が0.68のPTTプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーを120℃で1時間予備乾燥した
後、1.2〜0.7hpaの減圧下、200℃で4時間
固相重合することにより、極限粘度[η]が0.98の
PTT樹脂を得た。得られたPTT樹脂は、Tg48
℃、Tm227℃、2酸化チタン含有量0.35重量%
であり、クロロホルムに可溶なオリゴマー含有量は0.
9重量%であった。
樹脂を溶融し、紡糸温度265℃で36孔の紡糸口金1
から吐出し、チムニー2で冷却、口金下1.5mに設置
した長さ1.7m(実効加熱長1.55m、加熱筒内径
20mm)の加熱筒装置3に紡糸糸条を通し、加熱筒温
度180℃で熱処理し、加熱筒下0.45mに設置した
ガイド給油装置4にて紡糸油剤を付与しながら周速度3
500m/分の第1ゴデーロール6及び周速度3460
m/分の第2ゴデーロール8(ゴデーロール間の弛緩率
1.14%)で引き取り、巻取機9にて張力0.1cN
/dtexで巻き取り100dtex、36フィラメン
トの未延伸糸を得た。また、後工程での加工性を良好に
するために紡糸線上に交絡ノズル5を設置し、作動圧空
圧0.1MPaで交絡を付与した。
ームであり、強度は3.1cN/dtex、破断伸度は
84.2%、複屈折度は0.057であり、遅延収縮率
が1.3%、50℃乾熱収縮率が1.4%であり、力学
的特性、熱安定性ともに十分実用に耐える特性を示し
た。物性値を表1に示す。
性、仮撚加工性試験したところ、極めて良好な加工性を
示した。物性値を表1に示す。
合時間を1時間とした以外は実施例1と同じ条件で実施
した。実施例2の未延伸糸は実施例1と比較してやや低
強度であったが、熱安定性は高いものであった。また、
延伸性は実施例1同様に良好であったが、仮撚加工性が
若干悪かった。物性値を表1に示す。
合時間を6時間とした以外は実施例1と同じ条件で実施
した。実施例2の未延伸糸は実施例1同様、良好な諸特
性を示し、延伸性、仮撚加工性ともに極めて安定してい
た。物性値を表1に示す。
7hpaの減圧下、140℃で6時間乾燥して使用した
以外は実施例1と同じ条件で実施した。乾燥後の極限粘
度は乾燥前と変わらず0.68であった。比較例1の未
延伸糸は熱安定性は高いものの、強度が低く、そのため
延伸性、仮撚加工性ともに悪いものであった。物性値を
表1に示す。
それぞれ2500m/分、2485m/分(ゴデーロー
ル間の弛緩率0.6%)とし、巻取後の繊度を120d
texとした以外は実施例1と同じ条件で実施した。実
施例4の未延伸糸は実施例1と比較して低強度、高伸度
であるため、延伸性、仮撚加工性が若干劣るものであっ
たが、生産には十分耐えうる加工性を示した。物性値を
表1に示す。
それぞれ4000m/分、3940m/分(ゴデーロー
ル間の弛緩率1.5%)とし、巻取後の繊度を92dt
exとした以外は実施例1と同じ条件で実施した(実施
例5)。また、第1ゴデーロール6及び第2ゴデーロー
ル8の周速度をそれぞれ5000m/分、4850m/
分(ゴデーロール間の弛緩率3.0%)とし、巻取後の
繊度を85dtexとした以外は実施例1と同じ条件で
実施した(実施例6)。実施例5および実施例6の未延
伸糸は実施例1同様、良好な諸特性を示し、延伸性、仮
撚加工性ともに極めて安定していた。それぞれの実施例
の物性値を表1に示す。
それぞれ2000m/分、1990m/分(ゴデーロー
ル間の弛緩率0.5%)とし、巻取後の繊度を140d
texとした以外は実施例1と同じ条件で実施した。比
較例2の未延伸糸は実施例1と比較して低強度、高伸度
で低複屈折度(配向性低い)であるとともに、遅延収縮
率2.3%、50℃乾熱収縮率12%と熱安定性も低
く、パッケージフォームもバルジ率が高く、悪いもので
あった。そのため加工時の解舒張力が不安定であるとと
もに、延伸性、仮撚加工性も極めて悪いものであった。
物性値を表1に示す。
それぞれ6000m/分、5820m/分(ゴデーロー
ル間の弛緩率3.0%)とし、巻取後の繊度を81dt
exとした以外は実施例1と同じ条件で実施した。比較
例3の未延伸糸は実施例1と比較して高強度であった
が、遅延収縮率が3.0%と高いためにサドル4.2m
m、バルジ率11%とともに高く、パッケージフォーム
が不良であった。そのため延伸性は優れているものの、
仮撚加工において加撚張力の変動が大きく不安定である
ため糸切れが多発した。物性値を表1に示す。
と第2ゴデーロール8間の弛緩率」を、「GD間熱処理
装置」とは「ゴーデーロール間に設置したスチームコン
ディショナー」を、「50℃乾熱収縮」とは、「乾熱5
0℃での未延伸糸の収縮率」を、「冷結晶化熱量」と
は、「温度変調DSCでの非可逆熱流速曲線から得た冷
結晶化熱量」を、「融解熱量」とは、「温度変調DSC
での全熱流速曲線から得た融解熱量」を示す。
同じ条件で実施した。
遅延収縮率、50℃乾熱収縮率ともに若干高く、パッケ
ージフォームも劣るものであった。また、延伸性、仮撚
加工性ともに実施例1よりは劣るが、十分実用に耐えう
るレベルであった。実施例7の物性値を表2に示す。
外は実施例1と同じ条件で実施した。加熱筒温度100
℃の比較例4の未延伸糸は実施例1と比較して遅延収縮
率が3.5%、50℃乾熱収縮率21.6%と高く、熱
安定性が低いものであった。また、パッケージフォーム
が悪いために仮撚加工で糸切れが多発した。また、加熱
筒温度230℃の比較例5は加熱筒部での糸切れが多発
し、サンプリングできなかった。比較例4の物性値を表
2に示す。
ロール間のストレッチ率1%)とした以外は実施例1と
同じ条件で実施した。比較例6の未延伸糸は実施例1と
同様に高強度であったが、遅延収縮率が2.3%と高い
ためにサドル4.2mm、バルジ率10%とともに高
く、パッケージフォームが不良であった。そのため延伸
性は良好であるものの、仮撚加工で糸切れが多発した。
物性値を表2に示す。
が0.22cN/dtexになるように巻取機の速度を
変更した以外は実施例1と同じ条件で実施した。 比較
例7の未延伸糸は実施例1と同様、高強度であったが、
遅延収縮率が2.2%と高いためにサドル4.5mm、
バルジ率12%とともに高く、パッケージフォームが極
めて悪かった。そのため解舒不良による張力変動により
延伸性、仮撚加工性ともに悪かった。物性値を表2に示
す。
ロール間の弛緩率2.86%)とした以外は実施例1と
同じ条件で実施した。実施例8の未延伸糸は実施例1と
同様、良好な諸特性を示し、パッケージフォームも実施
例1より優れていた。また、延伸性、仮撚加工性ともに
極めて安定していた。物性値を表2に示す。
内部温度125℃のスチームコンディショナー(実効加
熱長0.38m)を設置して弛緩熱処理した以外は実施
例8と同じ条件で実施した。実施例9の未延伸糸は実施
例1よりもさらに遅延収縮率、50℃乾熱収縮率が小さ
く、パッケージフォームも極めて良好であった。また、
その他の諸特性も良好であり、延伸性、仮撚加工性とも
に実施例1よりも優れていた。物性値を表2に示す。
ゴデーロール8の周速度を3000m/分(ゴデーロー
ル間は定長処理)とした以外は実施例1と同じ条件で実
施した。比較例8の未延伸糸は遅延収縮率が3.2%と
高く、さらに50℃乾熱収縮率が40.5%と極めて高
いために経時的に収縮特性や糸径が変化し、パッケージ
内外層差や端面周期斑が大きく品質が悪いものであっ
た。また、パッケージのサドルが4.2mmと高いため
に解舒不良による張力変動により延伸性、仮撚加工性が
極めて悪かった。物性値を表2に示す。
それぞれ4000m/分、3940m/分(ゴデーロー
ル間の弛緩率1.5%)とした以外は比較例8と同じ条
件で実施した。比較例9の未延伸糸は実施例1同様に高
強度であったが、遅延収縮率が4.1%と高く、さらに
50℃乾熱収縮率も19.8%と高いために比較例8同
様、経時的に収縮特性や糸径が変化し、パッケージ内外
層差や端面周期斑が大きく品質が悪いものであった。ま
た、パッケージのサドルが4.8mmと高いために解舒
不良による張力変動により延伸性、仮撚加工性が極めて
悪かった。物性値を表2に示す。
ートを主成分とする未延伸糸に関するものであり、巻締
まりや繊維内部の歪み緩和に起因する工程通過性不良、
染色性不良等の問題を解決し、取り扱い性や汎用性に優
れたポリエステル系未延伸糸を得ることができるもので
ある。
紡糸装置の一例を示す概略図である。
説明するための概略図である。
Claims (9)
- 【請求項1】実質的にポリトリメチレンテレフタレート
から構成され、極限粘度が0.7〜1.2であるポリト
リメチレンテレフタレート繊維からなるマルチフィラメ
ントであって、以下の(1)〜(5)の要件を満足する
ことを特徴とするポリエステル系未延伸糸。 (1)破断強度 :2.0cN/dtex以上 (2)破断伸度 :55〜130% (3)複屈折度 :0.04〜0.07 (4)遅延収縮率 :2%以下 (5)50℃乾熱収縮率:10%以下 - 【請求項2】沸騰水収縮率が3〜20%であることを特
徴とする請求項1記載のポリエステル系未延伸糸。 - 【請求項3】温度変調DSCにおける冷結晶化熱量△H
が10J/g以下であることを特徴とする請求項1また
は2記載のポリエステル系未延伸糸。 - 【請求項4】温度変調DSCにおける結晶化度が30%
以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1
項記載のポリエステル系未延伸糸。 - 【請求項5】糸の太さ斑U%(ノーマルモード)が1%
以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1
項記載のポリエステル系未延伸糸。 - 【請求項6】CF値が3以上であることを特徴とする請
求項1〜5のいずれか1項記載のポリエステル系未延伸
糸。 - 【請求項7】請求項1〜6のいずれか1項記載のポリエ
ステル系未延伸糸が巻き付けられ、サドルが4mm未満
でかつバルジ率が10%未満であることを特徴とするチ
ーズ状未延伸糸パッケージ。 - 【請求項8】ポリトリメチレンテレフタレートを主成分
とする極限粘度が0.75以上のポリエステルを溶融紡
糸し、紡糸糸条を一旦冷却固化した後、内部雰囲気温度
が120〜220℃の加熱筒装置で0.01秒以上熱処
理し、再び冷却してから残留伸度55〜130%になる
ような紡糸速度で糸条を引き取り、引き続いて弛緩率0
〜3%で弛緩させた後、0.2cN/dtex以下の張
力で巻き取ることを特徴とするポリエステル系未延伸糸
の製造方法。 - 【請求項9】紡糸引き取り後、ゴデーロール間で弛緩処
理する際に、内部雰囲気温度が100〜150℃の熱処
理装置で熱処理を施すことを特徴とする請求項8記載の
ポリエステル系未延伸糸の製造方法。
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