JP2002083599A - 正極合剤およびニッケル亜鉛電池 - Google Patents

正極合剤およびニッケル亜鉛電池

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JP2002083599A
JP2002083599A JP2000271823A JP2000271823A JP2002083599A JP 2002083599 A JP2002083599 A JP 2002083599A JP 2000271823 A JP2000271823 A JP 2000271823A JP 2000271823 A JP2000271823 A JP 2000271823A JP 2002083599 A JP2002083599 A JP 2002083599A
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positive electrode
beta
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oxide
nickel oxyhydroxide
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JP2000271823A
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Keizo Koga
景三 古賀
Kenta Yamamoto
賢太 山本
Osamu Takahashi
修 高橋
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保存劣化の少ない、高出力高容量のニッケル
亜鉛電池を提供する。 【解決手段】 ニッケル亜鉛電池1は、正極部3と負極
合剤5の間にセパレータ4を配したインサイドアウト構
造の電池である。正極部3は、正極活物質であるベータ
型オキシ水酸化ニッケル、導電性金属酸化物、導電剤で
ある黒鉛粉末を少なくとも含む混合粉末を中空円筒状に
ペレット成形したものである。導電性金属酸化物は、電
気抵抗率が1×10-4〜1×10-2Ωcmの範囲内にあ
る。導電性金属酸化物の金属Mと、ベータ型オキシ水酸
化ニッケルのNiとの元素モル比M/Niは、0.1〜
8%の範囲内にある。黒鉛粉末は、ベータ型オキシ水酸
化ニッケル100質量部に対して、3〜8質量部の範囲
内にある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、正極合剤およびこ
れを用いるニッケル亜鉛電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、小型の携帯用電子機器、とりわ
け、携帯用ゲーム機、デジタルカメラの普及は非常にめ
ざましい。今後もますますその普及が予想され、それに
伴って、電源となる電池の需要も急速に拡大すると考え
られる。こうした電子機器は一般に作動電圧が高くかつ
大電流を必要とするため、その電源としては重負荷での
放電特性に優れていなければならない。
【0003】この要求を満たす電池の中で最も普及して
いるのは、二酸化マンガンを正極、亜鉛を負極に使用
し、電解液に高濃度アルカリ水溶液を使用したアルカリ
マンガン電池である。この電池は二酸化マンガン、亜鉛
ともに安価であり、また、単位重量当たりのエネルギー
密度が高いことから、小型携帯用電子機器用の電源をは
じめ、幅広く用いられている。
【0004】このような小型携帯用機器での使用を鑑
み、アルカリマンガン電池は更なる重負荷放電特性の向
上を目指すべく、電池材料からその電池構成に至るま
で、現在までに数多くの改良がなされてきた。しかしな
がらこの電池系は、正極活物質である二酸化マンガンの
放電が均一固相反応であるために、放電によって電圧が
徐々に低下し、右下がりの放電曲線を描くため、上述し
たような、高電圧、大電流を必要とする小型携帯用電子
機器においては、こういったアルカリマンガン電池の放
電挙動では基本的に僅かしか許容できず、機器の使用可
能時間は、様々な改良がなされた現在においてもごく僅
かでしかない。加えて、小型携帯用電子機器は、いずれ
もその市場投入初期は比較的高電圧、大電流で作動する
傾向があり、今後そういった新規の機器にも対応可能
な、より重負荷特性に優れた電池が必要不可欠である。
【0005】このような要求を満たす電池として、ニッ
ケル亜鉛電池が従来より提案されてきた。この電池は、
正極にオキシ水酸化ニッケル、負極に亜鉛を使用した電
池であり、アルカリマンガン電池よりも作動電圧の高
い、重負荷特性に優れた電池である。
【0006】オキシ水酸化ニッケルには、高密度型のベ
ータ型オキシ水酸化ニッケル(β−NiOOH)と、低
密度型のガンマ型オキシ水酸化ニッケル(γ−NiOO
H)の二種類あり、ベータ型オキシ水酸化ニッケルは、
保存劣化がガンマ型オキシ水酸化ニッケルよりも著し
い。それゆえ、ニッケル亜鉛電池にオキシ水酸化ニッケ
ルを使用する場合は、例えば特開平10−214621
号公報などのように、保存劣化の小さい、ガンマ型オキ
シ水酸化ニッケルを使用する方法が従来より提案されて
きた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ようにガンマ型オキシ水酸化ニッケルはベータ型オキシ
水酸化ニッケルより密度が低く、これを用いて構成する
電池は、確かにアルカリマンガン電池と比較して高い作
動電位が得られるものの、放電容量は小さくなってしま
うという難点がある。すなわち、ベータ型オキシ水酸化
ニッケルに比べ低密度で容量が小さく、大電流で使用さ
れる場合に十分な放電容量を維持することが難しい。
【0008】本発明は、このような課題に鑑みてなされ
たものであり、保存劣化の少ない、高出力高容量の電池
を得ることができる正極合剤およびこの正極合剤を用い
たニッケル亜鉛電池を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の正極合剤は、正
極活物質であるベータ型オキシ水酸化ニッケルと導電剤
である黒鉛粉末とを少なくとも含む正極合剤において、
上記正極合剤が、導電性金属酸化物を含有するものであ
る。ここで、上述導電性金属酸化物は、電気抵抗率が1
×10-4〜1×10-2Ωcmの範囲内にある。また、導
電性金属酸化物の金属Mと、ベータ型オキシ水酸化ニッ
ケルのNiとの元素モル比M/Niは、0.1〜8%の
範囲内にある。また、導電性金属酸化物は、平均粒径が
0.01〜2μmの範囲内にある。また、導電性金属酸
化物は、酸化コバルト、酸化インジウム、錫とインジウ
ムの酸化物、アンチモンと錫の酸化物、フッ素添加酸化
インジウム、またはフッ素添加酸化錫から選ばれる1ま
たは2以上の酸化物からなる。また、黒鉛粉末は、ベー
タ型オキシ水酸化ニッケル100質量部に対して、3〜
8質量部の範囲内にある。また、ベータ型オキシ水酸化
ニッケルは、粒子の形状が略球状である。また、ベータ
型オキシ水酸化ニッケルの平均粒径は19〜40μmの
範囲にある。
【0010】また、本発明のニッケル亜鉛電池は、正極
活物質であるベータ型オキシ水酸化ニッケルと導電剤で
ある黒鉛粉末とを少なくとも含む混合粉末を中空円筒状
にペレット成形した正極を外周部に、負極活物質である
亜鉛と電解液及び亜鉛と電解液を均一に分散させておく
ためのゲル化剤とを少なくとも含むゲル状負極を中心部
に配し、正極と負極の間にセパレータを配した、インサ
イドアウト構造であるニッケル亜鉛電池において、上記
正極は、導電性金属酸化物を含有するものである。ここ
で、導電性金属酸化物は、電気抵抗率が1×10-4〜1
×10-2Ωcmの範囲内にある。また、導電性金属酸化
物の金属Mと、ベータ型オキシ水酸化ニッケルのNiと
の元素モル比M/Niは、0.1〜8%の範囲内にあ
る。また、導電性金属酸化物は、平均粒径が0.01〜
2μmの範囲内にある。また、導電性金属酸化物は、酸
化コバルト、酸化インジウム、錫とインジウムの酸化
物、アンチモンと錫の酸化物、フッ素添加酸化インジウ
ム、またはフッ素添加酸化錫から選ばれる1または2以
上の酸化物からなる。また、黒鉛粉末は、ベータ型オキ
シ水酸化ニッケル100質量部に対して、3〜8質量部
の範囲内にある。また、ベータ型オキシ水酸化ニッケル
は、粒子の形状が略球状である。また、ベータ型オキシ
水酸化ニッケルの平均粒径は19〜40μmの範囲にあ
る。
【0011】本発明の正極合剤およびニッケル亜鉛電池
によれば、正極合剤は導電性金属酸化物を含有する。こ
こで、導電性金属酸化物が導電性を有するので、導電剤
としての黒鉛の添加量を少なく抑えることができる。導
電性酸化物の比重は黒鉛の比重よりも大きいので、正極
内の正極活物質の充填量を増加させることができる。ま
た、導電性金属酸化物は黒鉛よりも導電性が高いので、
放電電圧を高くすることができる。また、導電性金属酸
化物はベータ型オキシ水酸化ニッケルの表面を被着また
は被覆するので、アルカリ電解液中のアルカリイオンが
ベータ型オキシ水酸化ニッケルの結晶格子中に取り込ま
れるのを抑制することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、正極合剤およびニッケル亜
鉛電池に係る発明の実施の形態について、図1,2およ
び表1,2を参照しながら説明する。
【0013】図1は本発明に係るニッケル亜鉛電池の一
構成例を示す縦断面図である。このニッケル亜鉛電池1
は、電池缶2と、正極部3と、セパレータ4と、負極合
剤5と、封口部材6と、ワッシャー7と、負極端子板8
と、集電ピン9とを備えている。
【0014】電池缶2は、例えば鉄にニッケルめっきが
施されており、ニッケル亜鉛電池1の外部正極端子とな
る。
【0015】正極部3は、電池缶2の内部に積層された
3つの正極ペレット3a,3b,3cからなっている。
この正極ペレット3a,3b,3cは、ベータ型オキシ
水酸化ニッケルと、導電性金属酸化物と、導電剤として
例えば黒鉛粉末と、電解液である水酸化カリウム水溶液
とを含む正極合剤を中空円筒状に成形したものである。
【0016】つぎに、正極合剤に含まれているベータ型
オキシ水酸化ニッケル、導電性金属酸化物、および黒鉛
粉末について具体的に説明する。
【0017】まず、正極活物質であるベータ型オキシ水
酸化ニッケルについて説明する。正極活物質であるオキ
シ水酸化ニッケルは、ニッケル水素電池、ニッケルカド
ミウム電池などの二次電池の活物質として用いられ、優
れた放電性能を示すことは周知の事実である。オキシ水
酸化ニッケルにはベータ型、ガンマ型の二種類がある。
通常、これらのオキシ水酸化ニッケルは、硫酸や硝酸な
どの水溶液中で、水酸化ニッケルを正極として充電する
方法、すなわち電解酸化法により容易に得られる。この
際、電気化学量論的範囲で水酸化ニッケルを充電すれ
ば、ベータ型オキシ水酸化ニッケルを得ることができ
る。
【0018】電解酸化法によるオキシ水酸化ニッケルを
正極活物質とした場合は、特にベータ型オキシ水酸化ニ
ッケルにおいて、結晶格子中に硫酸イオンや硝酸イオン
が残留し易いことから価数低下を起こしやすいため、保
存性が低く自己放電が大きい正極となってしまう。従っ
て、一次電池用の正極活物質に使用するには自己放電の
低減が必須となることから、その解決策として従来は、
オキシ水酸化ニッケルの中でも自己放電の少ない、ガン
マ型オキシ水酸化ニッケルが使用されてきた。
【0019】一方、水酸化ニッケルを適当な酸化剤、例
えば次亜塩素酸ナトリウムと、適当なアルカリ種、例え
ば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム
とを含む液相中で酸化させる方法、すなわち化学酸化法
によりオキシ水酸化ニッケルを合成すると、その過程に
おいて、上述した硫酸イオンや硝酸イオンなどの不純物
イオンが合成液相中に存在しないことから、従来よりも
自己放電の少ない、1次電池用の正極活物質により適し
たオキシ水酸化ニッケルが得られる。ちなみに、この時
の酸化反応は以下の通りである。2Ni(OH)2 +C
lO- →2NiOOH+Cl- +H2
【0020】この時、液相中のpHにより、生成するオ
キシ水酸化ニッケルが異なる。すなわち、pHがある値
以下では高密度のベータ型オキシ水酸化ニッケル(β−
NiOOH、理論密度:4.68g/cm3 )が、それ
より上の領域では低密度のガンマ型オキシ水酸化ニッケ
ル(γ−NiOOH、理論密度:3.79g/cm3
が生成する。
【0021】ニッケル亜鉛電池1において、より大きな
電池容量を得るためには、正極活物質であるオキシ水酸
化ニッケルは、化学酸化法によって得られたオキシ水酸
化ニッケルの中でも、高密度のベータ型オキシ水酸化ニ
ッケルを使用するのが望ましい。
【0022】またこの際、出発原料となる水酸化ニッケ
ルは、粒子個々の形状が略球状である、高密度水酸化ニ
ッケルと呼ばれるものを用いることが望ましい。通常の
水酸化ニッケルは非球状で、タップ(Tap)密度1.
4〜1.8(g/cm3 )、バルク(Bulk)密度
1.0〜1.4(g/cm3 )なのに対し、上述の高密
度水酸化ニッケルと呼ばれるものは粒子が略球状であ
り、タップ(Tap)密度2.0〜2.5(g/c
3 )、バルク(Bulk)密度1.4〜1.8(g/
cm3 )と高密度である。
【0023】なお、タップ(Tap)密度とバルク(B
ulk)密度(「かさ密度」ともいう)の測定方法はつ
ぎの通りである。すなわち、対象となる粉末を特定の容
器に自然落下充填し、この時の質量をA(g)、体積を
B(cm3 )、容器を持ち上げて容器の底を机などに2
00回軽くぶつけた(タッピング)後の体積をC(cm
3 )とすると以下の式で定義される。 バルク(Bulk)密度=A/B(g/cm3 ) タップ(Tap)密度=A/C(g/cm3
【0024】ベータ型オキシ水酸化ニッケルを生成した
ときにおいて、非球状である水酸化ニッケルを原料とす
るときは、粒子の形状が非球状であるベータ型オキシ水
酸化ニッケルが得られる。これに対して、略球状である
水酸化ニッケルを原料とするときは、粒子の形状が略球
状であるベータ型オキシ水酸化ニッケルを得ることがで
き、バルク密度およびタップ密度の高いものが得られ
る。
【0025】略球状のベータ型オキシ水酸化ニッケルの
タップ(Tap)密度とバルク(Bulk)密度はつぎ
の範囲内にあることが望ましい。すなわち、略球状のベ
ータ型オキシ水酸化ニッケルのタップ(Tap)密度は
2.2〜2.7g/cm3 の範囲にあることが望まし
い。また、バルク(Bulk)密度は1.6〜2.2g
/cm3 の範囲にあることが望ましい。
【0026】タップ密度およびバルク密度がこれらの範
囲の下限値よりも小さいと、放電容量を大きくすること
が困難になるからである。また、タップ密度およびバル
ク密度がこれらの範囲の上限値よりも大きなベータ型オ
キシ水酸化ニッケルは製造することが困難だからであ
る。
【0027】図2は、略球状のベータ型オキシ水酸化ニ
ッケル(A)と、非球状のベータ型オキシ水酸化ニッケ
ル(B)を示す図である。ここで、図2Aおよび図2B
において、それぞれ上段は略球状のベータ型オキシ水酸
化ニッケルおよび非球状のベータ型オキシ水酸化ニッケ
ルの電子顕微鏡写真を示すものであり、またそれぞれの
下段は上段の写真の粒子の外形をわかりやすいように示
したものである。
【0028】図2Aに示されたベータ型オキシ水酸化ニ
ッケルは、粒子の形状が略球状である。すなわち、粒子
の表面は角が取れ比較的滑らかであり、全体の形状は若
干細長いものや若干扁平に近いものもあるが全体として
は略球状を呈している。
【0029】これに対して、図2Bに示されたベータ型
オキシ水酸化ニッケルは、非球状である。すなわち、そ
の形状は、大きな固まりを砕いて粉々にしたような形状
であり、それぞれの粒子が角張っており、全体の形状も
平板に近いもの、細長いもの、立方体に近いものなど様
々である。
【0030】略球状のベータ型オキシ水酸化ニッケル
は、以下の平均粒径と粒度分布の範囲内にあることが望
ましい。すなわち、略球状のベータ型オキシ水酸化ニッ
ケルの平均粒径は、19〜40μmの範囲内にあること
が望ましい。平均粒径が19μmより小さいか、40μ
mよりも大きくなると、電池製造が困難となるからであ
る。また、略球状のベータ型オキシ水酸化ニッケルの粒
度分布は、5〜80μmの範囲内にあることが望まし
い。
【0031】また、略球状のベータ型オキシ水酸化ニッ
ケルの平均粒径は、19〜25μmの範囲内にあり、粒
度分布が5〜70μmの範囲にあることがさらに望まし
い。なお、粒度分布の最小値はふるい下5%の値であ
り、粒度分布の最大値はふるい下95%の値である。
【0032】つぎに、正極合剤に含まれる、導電性金属
酸化物について説明する。この導電性金属酸化物は、電
気抵抗率が1×10-4〜1×10-2Ωcmの範囲内にあ
ることが望ましい。
【0033】黒鉛(グラファイト)の電気抵抗率は、面
内においては4〜7×10-5Ωcmであり、垂直方向に
おいてはこの約104 倍である(理化学事典(岩波書
店))。黒鉛粉末を正極に添加した場合は、黒鉛粉末の
電気抵抗率はこれらの値の中間の値となる。上述した導
電性金属酸化物の電気抵抗率の望ましい範囲は、黒鉛粉
末の電気抵抗率に比較して小さな値となることがわか
る。
【0034】また、正極合剤中における導電性金属酸化
物の添加量は、導電性金属酸化物の金属Mと、ベータ型
オキシ水酸化ニッケルのNiとの元素モル比M/Ni
が、0.1〜8%の範囲内にあることが望ましい。ただ
し、導電性金属酸化物に2以上の金属を含む場合、また
は(かつ)2以上の導電性金属酸化物を添加する場合
は、元素モル比M/Niの金属Mにはそれぞれの金属の
元素モルの合計の値を適用する。
【0035】また、導電性金属酸化物は、平均粒径が
0.01〜2μmの範囲内にあることが望ましい。平均
粒径が0.01μmよりも小さいと、取り扱いが困難と
なり、オキシ水酸化ニッケル、黒鉛及び水酸化カリウム
水溶液との混合において、導電性金属酸化物が混合容器
中で舞ってしまい、所定量の混合ができなくなるという
欠点が生じるからであり、2μmよりも大きいとオキシ
水酸化ニッケル粒子表面に十分なる量の導電性金属酸化
物を被着もしくは被覆するには、導電性金属酸化物を多
量に混合しなくてはならなくなるという欠点が生じるか
らである。
【0036】導電性金属酸化物としては、つぎのものを
挙げることができる。すなわち、導電性金属酸化物とし
ては、例えば、酸化コバルト、酸化インジウム(In2
3)、錫とインジウムの酸化物(ITO:Indiu
m Tin Oxide)、錫とアンチモンの酸化物
(ATO:Antimony Tin Oxide)、
フッ素添加酸化インジウム(FIO:Fluorine
Indium Oxide)、またはフッ素添加酸化
錫(FTO:Fluorine Tin Oxide)
などから選ばれる1または2以上の酸化物からなるもの
とすることができる。
【0037】なお、ITOは、酸化インジウムをベース
に錫を固溶化してものであり、錫とインジウムの配合比
が0.01〜0.2の範囲内のものが望ましい。ATO
は、酸化錫をベースにアンチモンを固溶化したものであ
り、アンチモンと錫の配合比が0.01〜0.25の範
囲内のものが望ましい。FIOは、酸化インジウムを一
部フッ素化したものであり、フッ素とインジウムとの配
合比が0.001〜0.1の範囲のものが望ましい。ま
たFTOは、酸化錫を一部フッ素化したものであり、フ
ッ素と錫との配合比が0.001〜0.1の範囲のもの
が望ましい。これら導電性金属酸化物は、加熱混合溶融
法あるいはスパッタリング法などによって得ることがで
きる。
【0038】なお、導電性金属酸化物は、酸化コバル
ト、酸化インジウム、錫とインジウムの酸化物、アンチ
モンと錫の酸化物、フッ素添加酸化インジウム、または
フッ素添加酸化錫から選ばれる1または2以上の酸化物
からなるものに限定されるわけではない。上述の電気抵
抗率の範囲に入るものであれば、このほかの導電性金属
酸化物も採用することができる。
【0039】上述した化学酸化法によるベータ型オキシ
水酸化ニッケルにおいては、アルカリ電解液中でアルカ
リカチオンをその結晶格子中に取り込んで電解液の希薄
化を引き起こし、電池の放電性能を低下させてしまう傾
向がある。
【0040】しかし、導電性金属酸化物をベータ型オキ
シ水酸化ニッケル粒子の表面に存在させることにより、
アルカリ電解液中のアルカリカチオンがベータ型オキシ
水酸化ニッケルの結晶格子中に侵入することを抑制し、
保存性の低下を抑制しつつ高出力高容量なニッケル亜鉛
電池を得ることができる。
【0041】ここで、導電性金属酸化物を用いることと
したのは、金属単体では電池内で金属が溶出し負極活物
質である亜鉛表面に析出したりして電池諸特性に悪影響
を及ぼすおそれがあるからであり、またCaOなどの低
活性酸化物では正極内の導電性が十分に得られないから
である。
【0042】つぎに、黒鉛粉末について説明する。正極
活物質の利用率を高くするために、正極合剤中に導電剤
として黒鉛粉末が混合されるが、この際の黒鉛粉末の含
有量は、ベータ型オキシ水酸化ニッケル100質量部に
対して、3〜8質量部の範囲内にあることが望ましい。
【0043】黒鉛粉末の含有量が3質量部よりも少ない
と、正極において電子伝導性を向上させる効果が十分で
なく、8質量部よりも多いと、正極における電子伝導性
を向上させる効果は十分であるが、正極活物質としての
オキシ水酸化ニッケルの充填量が減少し、電池放電容量
が小さくなってしまうからである。
【0044】また、黒鉛粉末の含有量は、ベータ型オキ
シ水酸化ニッケル100質量部に対して、5〜7質量部
の範囲内にあることがさらに望ましい。本発明に係るニ
ッケル亜鉛電池1では、正極合剤中の黒鉛粉末の含有量
を上述のようにすることにより、適度な電子伝導性、高
い電池放電容量を得ることができる。
【0045】つぎに、セパレータ4は、一方に底を有す
る中空円筒状をしており、正極部3の内側に配される。
セパレータ4としては、ポリビニルアルコール、レーヨ
ン、ポリオレフィンなどを材料とした不織布が用いられ
る。
【0046】つぎに、負極合剤5は、負極活物質となる
粒状亜鉛と、水酸化カリウム水溶液を使用した電解液
と、粒状亜鉛と電解液をゲル状に均一に分散させておく
ためのゲル化剤とからなる。負極合剤5は、正極部3の
内側に配される中空円筒状のセパレータ4の内空間に充
填される。
【0047】そして、正極部3と、負極合剤5が充填さ
れたセパレータ4とが内部に収納された電池缶2の開口
部には、封口部材6がこの開口部を封口するために嵌合
されている。封口部材6はプラスチック材からなり、更
に封口部材6を覆うようにワッシャー7と負極端子板8
とが取り付けられている。更に、上記ワッシャー7が取
り付けられた封口部材6の貫通孔には、上方から錫めっ
きされた黄銅製の集電ピン9が圧入されている。
【0048】これにより、負極の集電は、負極端子板8
に溶接された釘状の集電ピン9が封口部材6の中央部に
形成された貫通孔に圧入されて、負極合剤に達すること
で確保されている。また、正極の集電は、正極部3と電
池缶2とが接続されることで確保される。そして、電池
缶2の外周面は、図示しない外装ラベルによって覆われ
ており、電池缶2の下部に正極端子が位置している。
【0049】この電池における正極反応、負極反応、全
反応および理論起電力は以下の通りである。 正極:NiOOH+H2 O+e- →Ni(OH)2 +O
-0 =0.49V 負極:Zn+20H- →ZnO+H2 O+2e-0 =−1.25V 全反応:2NiOOH+Zn+H2 O→2Ni(OH)
2 +ZnO 理論起電力:E0 =1.74V
【0050】このように、放電反応によって、オキシ水
酸化ニッケルと亜鉛から、水酸化ニッケルと酸化亜鉛が
生成する。
【0051】なお、上述の発明の実施の形態では、一次
電池であるニッケル亜鉛電池について説明したが、この
一次電池に限定されるわけではなく、このほか二次電池
であるニッケル亜鉛電池についても、本発明が適用でき
ることはもちろんである。また、上述の発明の実施の形
態では、円筒形のニッケル亜鉛電池について説明した
が、この円筒形電池に限定されるわけではなく、このほ
か扁平形など他の形状のニッケル亜鉛電池についても、
本発明が適用できることはもちろんである。また、本発
明は上述の実施の形態に限らず本発明の要旨を逸脱する
ことなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんで
ある。
【0052】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について説明
する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるも
のではないことはもちろんである。まず、以下に述べる
実施例および比較例において用いた、ベータ型オキシ水
酸化ニッケルおよび導電性金属酸化物について説明す
る。
【0053】ベータ型オキシ水酸化ニッケルとしては、
つぎの3種類のものを用いた。すなわち、電解酸化法に
よるベータ型オキシ水酸化ニッケル、化学酸化法による
非球状のベータ型オキシ水酸化ニッケル、および化学酸
化法による略球状のベータ型オキシ水酸化ニッケルであ
る。
【0054】電解酸化法によるベータ型オキシ水酸化ニ
ッケルはつぎのように製造した。ベータ型オキシ水酸化
ニッケルは、硫酸や硝酸などの水溶液中で、非球状の水
酸化ニッケルを正極として充電することにより得られ
る。この際、電気化学量論的範囲で水酸化ニッケルを充
電することにより、非球状のベータ型オキシ水酸化ニッ
ケルを得ることができる。
【0055】化学酸化法による非球状のベータ型オキシ
水酸化ニッケルは、つぎのように製造した。出発原料で
ある水酸化ニッケル(形状:非球状)を、次亜塩素酸ナ
トリウムを含むアルカリ液相中で酸化させ、非球状のベ
ータ型オキシ水酸化ニッケルを合成した。得られたベー
タ型オキシ水酸化ニッケルの性状は、形状:非球状、タ
ップ密度:1.8g/cm3 、バルク密度:1.4g/
cm3 である。
【0056】化学酸化法による略球状のベータ型オキシ
水酸化ニッケルはつぎのように製造した。出発原料であ
る水酸化ニッケル(形状:略球状、タップ密度:2.3
g/cm3 、バルク密度:1.8g/cm3 )を、次亜
塩素酸ナトリウムを含むアルカリ液相中で酸化させ、ベ
ータ型オキシ水酸化ニッケルを合成した。得られたベー
タ型オキシ水酸化ニッケルの性状は、形状:略球状、タ
ップ密度:2.5g/cm3 、バルク密度:2.0g/
cm3 、平均粒径:20μm、粒度分布:5〜70μm
である。
【0057】つぎに、導電性金属酸化物について説明す
る。ここでは、つぎの5種類の導電性金属酸化物を用い
た。すなわち、酸化コバルト(CoO)、酸化インジウ
ム(In2 3 )、錫とインジウムの酸化物(ITO:
Indium Tin Oxide)、錫とアンチモン
の酸化物(ATO:Antimony Tin Oxi
de)、フッ素添加酸化インジウム(FIO:Fluo
rine Indium Oxide)、およびフッ素
添加酸化錫(FTO:Fluorine Tin Ox
ide)である。
【0058】これらの導電性金属酸化物の性状は以下の
通りである。酸化コバルト(CoO)は、平均粒径:1
μm、電気抵抗率:7×10-3Ωcmである。酸化イン
ジウム(In2 3 )は、平均粒径:1μm、電気抵抗
率:8×10 -3Ωcmである。錫とインジウムの酸化物
(ITO)は、Sn/In重量比:0.1、平均粒径:
0.1μm、電気抵抗率:5×10-4Ωcmである。錫
とアンチモンの酸化物(ATO)は、Sb/Sn重量
比:0.2、平均粒径:0.3μm、電気抵抗率:7×
10-4Ωcmである。フッ素添加酸化インジウム(FI
O)は、F/In重量比:0.02、平均粒径:0.1
μm、電気抵抗率:3×10-4Ωcmである。フッ素添
加酸化錫(FTO)は、F/Sn重量比:0.05、平
均粒径:0.2μm、電気抵抗率:1×10-3Ωcmで
ある。
【0059】つぎに、黒鉛粉末について説明する。ここ
で用いた黒鉛粉末の性状は、平均粒径:6μm、粒度分
布:1〜25μm、灰分0.3重量%以下の高純度粉末
黒鉛である。
【0060】つぎに、実施例および比較例の具体的内容
について説明する。最初に、正極合剤に導電性金属酸化
物を添加した場合の効果について検討した。
【0061】実施例1 電解酸化法によるベータ型オキシ水酸化ニッケル100
質量部、黒鉛6質量部、酸化コバルト(CoO)2%
(ベータ型オキシ水酸化ニッケルのNiに対する導電性
金属酸化物の金属Mの元素モル比M/Ni)、40質量
%水酸化カリウム水溶液10質量部を混合して正極合剤
とし、これを中空円筒状に加圧成形して正極ペレットを
作製した。
【0062】そして、この中空円筒状の正極ペレットを
3個直列に重ねて電池缶の内側に挿入し、全体して1個
の正極部とした。つぎに、この正極部の内側に、不織布
からなるセパレータ(親水化処理したポリオレフィン系
セパレータ)を挿入し、電解液を約1g注入後、負極活
物質である粒状亜鉛(アルミニウム、ビスマス、インジ
ウムを微量含有する亜鉛合金)100質量部、酸化亜鉛
0.05質量%を含む40質量%水酸化カリウム水溶液
50質量部、ゲル化剤としてポリアクリル酸ナトリウム
(商品名:サンフレッシュDK−500、三洋化成工業
社製)およびポリアクリル酸樹脂(商品名:カーボボー
ル941、昭和電工社製)1質量部(質量比は、ポリア
クリル酸ナトリウム:ポリアクリル酸樹脂=3:1)を
混合し、ゲル状としたゲル状負極合剤を充填した。最後
に、電池缶の開口部を、ワッシャーと集電ピンとが取り
付けられた封口部材により封口して、インサイドアウト
構造である単3形のニッケル亜鉛電池(アルカリ電池)
を作製した。
【0063】実施例2 ここでは、導電性金属酸化物として、錫とインジウムの
酸化物(ITO)2%を用いた。その他の条件について
は実施例1と同様である。
【0064】実施例3 化学酸化法による非球状のベータ型オキシ水酸化ニッケ
ル100質量部、黒鉛6質量部、酸化コバルト(Co
O)2%、40質量%水酸化カリウム水溶液10質量部
を混合して正極合剤とし、これを中空円筒状に加圧成形
して正極ペレットを作製した。その他の条件については
実施例1と同様である。
【0065】実施例4〜8 実施例4〜8においては、導電性金属酸化物としてつぎ
のものを用いた。すなわち、実施例4では酸化インジウ
ム(In2 3 )2%を、実施例5では錫とインジウム
の酸化物(ITO)2%を、実施例6ではフッ素添加酸
化インジウム(FIO)2%を、実施例7では錫とアン
チモンの酸化物(ATO)2%を、実施例8ではフッ素
添加酸化錫(FTO)2%をそれぞれ用いた。実施例4
〜8において、その他の点についてはそれぞれ実施例3
と同様である。
【0066】実施例9 化学酸化法による略球状のベータ型オキシ水酸化ニッケ
ル100質量部、黒鉛6質量部、酸化コバルト(Co
O)2%、40質量%水酸化カリウム水溶液10質量部
を混合して正極合剤とし、これを中空円筒状に加圧成形
して正極ペレットを作製した。その他の条件については
実施例1と同様である。
【0067】実施例10〜14 実施例10〜14においては、導電性金属酸化物として
つぎのものを用いた。すなわち、実施例10では酸化イ
ンジウム(In2 3 )2%を、実施例11では錫とイ
ンジウムの酸化物(ITO)2%を、実施例12ではフ
ッ素添加酸化インジウム(FIO)2%を、実施例13
では錫とアンチモンの酸化物(ATO)2%を、実施例
14ではフッ素添加酸化錫(FTO)2%をそれぞれ用
いた。実施例10〜14において、その他の点について
は、それぞれ実施例9と同様である。
【0068】比較例1 電解酸化法によるベータ型オキシ水酸化ニッケル100
質量部、黒鉛10質量部、40質量%水酸化カリウム水
溶液10質量部を混合し正極合剤とし、これを中空円筒
状に加圧成形して正極ペレットを作製した。その他の点
については実施例1と同様である。
【0069】比較例2 ここでは、正極活物質として化学酸化法による非球状の
ベータ型オキシ水酸化ニッケル100質量を用いた。そ
の他の点については比較例1と同様である。
【0070】比較例3 ここでは、正極活物質として化学酸化法による略球状の
ベータ型オキシ水酸化ニッケル100質量を用いた。そ
の他の点については比較例1と同様である。
【0071】上述のようにして作製した各単3型ニッケ
ル亜鉛電池について電池特性を測定した。電池特性とし
ては、容量比(%)と維持率(%)を測定した。容量比
(%)はつぎのように測定した。上述のようにして作製
した各単3型ニッケル亜鉛電池において、室温で1.5
Wの定電力で、電池電圧が1.0Vになるまで放電しそ
の放電容量を測定した。そして、実施例1の放電容量を
100として、各電池の放電容量を相対的な値で表し、
この値を容量比(%)とした。
【0072】維持率(%)はつぎのように測定した。上
記各電池を未放電状態で60℃雰囲気中20日間保存し
た後、同様にその放電容量を測定した。同一仕様電池に
おいて60℃雰囲気中にしない時の放電容量に対する、
60℃雰囲気中20日間保存後の放電容量の比を維持率
(%)として算出した。
【0073】実施例1〜14、および比較例1〜3につ
いて、容量比(%)および維持率(%)を測定した結果
は、表1に示すとおりである。
【0074】
【表1】
【0075】まず、実施例1〜2と、比較例1とを比較
してみる。実施例1〜2,および比較例1においては、
正極活物質として電解酸化法によるベータ型オキシ水酸
化ニッケルを用いている点で共通している。比較例1で
は黒鉛が10質量部である。これに対して、実施例1で
は黒鉛6質量部と、導電性金属酸化物として酸化コバル
ト(CoO)2%が配合されている。実施例2では黒鉛
6質量部と、導電性金属酸化物として錫とインジウムの
酸化物(ITO)2%が配合されている。
【0076】その結果、容量比(%)については、比較
例1が95%であるのに対して、実施例1および2では
100〜102%と高くなっている。また、維持率
(%)については、比較例1が30%であるのに対し
て、実施例1および2では45〜47%と著しく高くな
っている。
【0077】このように、容量比(%)および維持率
(%)の双方が高くなったのは、つぎの理由によるもの
と考えられる。導電性金属酸化物を正極に混合すると電
極の導電性が高くなる。実施例1および2では、導電性
が高くなる分を見越して黒鉛の添加量を10質量部(比
較例1)から6質量部へと下げている。そして充填密度
が上がる分だけ正極体積が小さくなるので、充填量を増
やすことができた。また、それでも正極の導電性が上が
っていると考えられ、同じ定電力放電を行った場合に
は、比較例1に比べ、実施例1および2の方が放電電圧
が高くなり、放電電圧が1Vに達するまでの時間が結果
的に長くなったと考えられる。
【0078】維持率(%)が高くなるのは、電池保存
中、アルカリカチオン(K+ )がベータ型オキシ水酸化
ニッケルの結晶格子中に取り込まれる傾向を導電性金属
酸化物が抑制したためと考えられる。結晶格子中にアル
カリカチオンが取り込まれると保存劣化が進行しやすい
ことがわかっている。実施例1および2においては、導
電性金属酸化物がベータ型オキシ水酸化ニッケル表面の
一部を被着または被覆することにより、ベータ型オキシ
水酸化ニッケルの結晶格子中にアルカリカチオンが取り
込まれるのを防止していると考えられる。
【0079】ここで、「被着」および「被覆」について
詳細に説明する。「被着」とは、ベータ型オキシ水酸化
ニッケルの粒子表面の少なくとも一部に接触している状
態であると定義する。実施例1および2においては、ベ
ータ型オキシ水酸化ニッケル粒子と導電性金属酸化物粒
子がほぼ均一に混合され、少なくとも一部で、それぞれ
が接触している状態になっている。このことは電子顕微
鏡の観察で確認されている。
【0080】「被覆」とは「被着」の下位概念であり、
導電性金属酸化物粒子が、ベータ型オキシ水酸化ニッケ
ルとの混合行程中に一部溶融し、形を変えてベータ型オ
キシ水酸化ニッケル粒子表面の一部を覆った状態と定義
する。二次イオン質量分析法(secondary i
on mass spectrometry;SIM
S)によりベータ型オキシ水酸化ニッケルの粒子表面の
一部を分析した場合に、ベータ型オキシ水酸化ニッケル
が検出されず導電性金属酸化物のピークのみが検出され
ることが確認されている。
【0081】つぎに、実施例3〜8と、比較例2とを比
較してみる。実施例3〜8,および比較例2において
は、正極活物質として化学酸化法による非球状のベータ
型オキシ水酸化ニッケルを用いている点で共通してい
る。比較例2では黒鉛が10質量部である。これに対し
て、実施例3では黒鉛6質量部と、導電性金属酸化物と
して酸化コバルト(CoO)2%が配合されている。実
施例4では黒鉛6質量部と、導電性金属酸化物として酸
化インジウム(In2 3 )2%が配合されている。実
施例5では黒鉛6質量部と、導電性金属酸化物として錫
とインジウムの酸化物(ITO)2%が配合されてい
る。実施例6では黒鉛6質量部と、導電性金属酸化物と
してフッ素添加酸化インジウム(FIO)2%が配合さ
れている。実施例7では黒鉛6質量部と、導電性金属酸
化物としてアンチモンの酸化物(ATO)2%が配合さ
れている。実施例8では黒鉛6質量部と、導電性金属酸
化物としてフッ素添加酸化錫(FTO)2%が配合され
ている。
【0082】その結果、容量比(%)については、比較
例2が97%であるのに対して、実施例3〜8では10
2〜104%と高くなっている。また、維持率(%)に
ついては、比較例2が52%であるのに対して、実施例
3〜8では62〜64%と非常に高くなっている。
【0083】このように、容量比(%)および維持率
(%)の双方が高くなったのは、実施例1および2にお
いて述べたと同様の理由によるものと考えられる。すな
わち、導電性金属酸化物を正極に混合すると電極の導電
性が高くなる。実施例3〜8では、黒鉛の添加量を10
質量部(比較例2)から6質量部へと下げている。そし
て充填密度が上がる分だけ正極体積が小さくなるので、
充填量を増やすことができる。また、それでも正極の導
電性が上がっていると考えられ、同じ定電力放電を行っ
た場合には、比較例2に比べて、実施例3〜8の方が放
電電圧が高くなり、放電電圧が1Vに達するまでの時間
が結果的に長くなったと考えられる。
【0084】維持率(%)が高くなるのは、電池保存
中、アルカリカチオン(K+ )がベータ型オキシ水酸化
ニッケルの結晶格子中に取り込まれる傾向を導電性金属
酸化物が抑制したためと考えられる。すなわち、実施例
3〜8においては、導電性金属酸化物がベータ型オキシ
水酸化ニッケル表面の一部を被着または被覆することに
より、ベータ型オキシ水酸化ニッケルの結晶格子中にア
ルカリカチオンが取り込まれるのを防止していると考え
られる。
【0085】一方、実施例3〜8を、実施例1および2
と比較してみる。容量比(%)については、実施例1お
よび2が100〜102%であるのに対して、実施例3
〜8では102〜104%とわずかに高くなっているが
ほとんど同程度の値である。これとは対照的に、維持率
(%)については、実施例1および2が45〜47%で
あるのに対して、実施例3〜8では62〜64%と著し
く高くなっている。
【0086】このように、維持率(%)が著しく高くな
るのは、つぎのような理由によるものと考えられる。実
施例1および2のベータ型オキシ水酸化ニッケルは、硫
酸や硝酸などの水溶液中で、水酸化ニッケルを正極とし
て充電する方法、すなわち電解酸化法によって得られ
る。これを正極活物質とした場合は、結晶格子中に硫酸
イオンや硝酸イオンが残留し易いことから価数低下を起
こしやすいため、保存性が低く自己放電が大きい正極と
なってしまう。
【0087】これに対して、実施例3〜8では、水酸化
ニッケルを適当な酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム
と、適当なアルカリ種、例えば水酸化リチウム、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウムとを含む液相中で酸化させ
る方法、すなわち化学酸化法によりオキシ水酸化ニッケ
ルを合成すると、その過程において、上述した硫酸イオ
ンや硝酸イオンなどの不純物イオンが合成液相中に存在
しないことから、実施例1および2よりも自己放電の少
ない、1次電池用の正極活物質としてより適したベータ
型オキシ水酸化ニッケルが得られると考えられる。
【0088】つぎに、実施例9〜14と、比較例3とを
比較してみる。実施例9〜14,および比較例3におい
ては、正極活物質として化学酸化法による略球状のベー
タ型オキシ水酸化ニッケルを用いている点で共通してい
る。比較例3では黒鉛が10質量部である。これに対し
て、実施例9では黒鉛6質量部と、導電性金属酸化物と
して酸化コバルト(CoO)2%が配合されている。実
施例10では黒鉛6質量部と、導電性金属酸化物として
酸化インジウム(In2 3 )2%が配合されている。
実施例11では黒鉛6質量部と、導電性金属酸化物とし
て錫とインジウムの酸化物(ITO)2%が配合されて
いる。実施例12では黒鉛6質量部と、導電性金属酸化
物としてフッ素添加酸化インジウム(FIO)2%が配
合されている。実施例13では黒鉛6質量部と、導電性
金属酸化物としてアンチモンの酸化物(ATO)2%が
配合されている。実施例14では黒鉛6質量部と、導電
性金属酸化物としてフッ素添加酸化錫(FTO)2%が
配合されている。
【0089】その結果、容量比(%)については、比較
例3が133%であるのに対して、実施例9〜14では
137〜139%と高くなっている。また、維持率
(%)については、比較例3が52%であるのに対し
て、実施例9〜14では62〜64%と非常に高くなっ
ている。
【0090】このように、容量比(%)および維持率
(%)の双方が高くなったのは、実施例1および2にお
いて述べたと同様の理由によるものと考えられる。
【0091】一方、実施例9〜14を、実施例3〜8と
比較してみる。容量比(%)については、実施例3〜8
が102〜104%であるのに対して、実施例9〜14
では137〜139%と著しく高くなっている。これと
は対照的に、維持率(%)については、実施例3〜8が
62〜64%であるのに対して、実施例9〜14では6
2〜64%と同程度の値である。
【0092】このように、容量比(%)が著しく高くな
るのは、使用する正極剤において、実施例3〜8で用い
た非球状のベータ型オキシ水酸化ニッケルの密度(タッ
プ密度:1.8g/cm3 、バルク密度:1.4g/c
3 )よりも実施例9〜14で用いた略球状のベータ型
オキシ水酸化ニッケルの密度(タップ密度:2.3g/
cm3 、バルク密度:1.8g/cm3 )の方が高いの
で、その結果実施例9〜14の方が実施例3〜8より
も、電池1本当たりの正極合剤の重量を大きくすること
ができ、すなわち正極容量を大きくすることができたた
めである。
【0093】つぎに、正極合剤中に含まれる導電性金属
酸化物の濃度の効果について検討した。
【0094】実施例15〜23 実施例15〜23においては、実施例9における正極合
剤に含まれる酸化コバルトCoO2%を、種々の濃度に
変化させてその効果を検討した。具体的には、実施例1
5ではCoOを0.05%に、実施例16ではCoOを
0.1%に、実施例17ではCoOを0.2%に、実施
例18ではCoOを0.5%に、実施例19ではCoO
を1%に、実施例20ではCoOを4%に、実施例21
ではCoOを6%に、実施例22ではCoOを8%に、
実施例23ではCoOを10%に、配合した。その他の
条件については実施例9と同様である。
【0095】実施例24〜32 実施例24〜32においては、実施例11における正極
合剤に含まれる錫とインジウムの酸化物(ITO)2%
を、種々の濃度に変化させてその効果を検討した。具体
的には、実施例24ではITOを0.05%に、実施例
25ではITOを0.1%に、実施例26ではITOを
0.2%に、実施例27ではITOを0.5%に、実施
例28ではITOを1%に、実施例29ではITOを4
%に、実施例30ではITOを6%に、実施例31では
ITOを8%に、実施例32ではITOを10%に、配
合した。その他の条件については実施例11と同様であ
る。
【0096】実施例15〜32について、容量比(%)
および維持率(%)を測定した結果は表1に示すとおり
である。まず、実施例15〜23について、実施例9を
併せてみてみる。容量比(%)は、酸化コバルトCoO
の配合量が0.05%から0.5%と高くなるにつれ
て、133%から138%と高くなっている。一方、酸
化コバルトCoOの配合量が1%から10%と高くなる
につれて、138%から131%と低くなっている。こ
のように、酸化コバルトCoOの配合量が0.5%およ
び1%のところで最大値が発生している。
【0097】これはつぎの理由によるものと考えられ
る。酸化コバルトCoOの配合量が0.05%から0.
5%と高くなるにつれて、133%から138%と高く
なるのは、導電性金属酸化物の添加量の増加による正極
の導電性向上の効果によるものと考えられる。一方、酸
化コバルトCoOの配合量が1%から10%と高くなる
につれて、138%から131%と低くなるのは、導電
性金属酸化物の添加量の増加に伴い正極活物質であるベ
ータ型オキシ水酸化ニッケルの配合量が下がること、す
なわち同一容積中に正極を収納しなくてはならないため
にベータ型オキシ水酸化ニッケルの配合量を下げざるを
得ないことにより、実質的に放電容量が小さくなってし
まうものと考えられる。
【0098】つぎに、維持率(%)は、酸化コバルトC
oOの配合量が0.05%から10%と高くなるにつれ
て、54%から65%とほぼ単調に高くなっている。こ
のように、導電性金属酸化物の添加量が増加するに従い
電池保存中の維持率(%)が高くなるのは、導電性金属
酸化物が多いほど、電池保存中アルカリカチオン
(K+ )がベータ型オキシ水酸化ニッケルの結晶中に取
り込まれる傾向を抑制するためと考えられる。
【0099】つぎに、実施例15〜23と、導電性金属
酸化物を添加していない比較例3とを比較してみる。容
量比(%)については、実施例16〜22において13
4〜138%であり、比較例3の133%よりも高い値
を示している。維持率(%)については、全実施例すな
わち実施例15〜23において54〜65%であり、比
較例3の52%よりも高い値を示している。これらのこ
とから、酸化コバルトCoOを添加しない場合に比べ
て、酸化コバルトCoOを0.1〜8%の範囲で添加す
ることにより、容量比(%)および維持率(%)の双方
が向上することがわかる。
【0100】つぎに、実施例24〜32について、実施
例11を併せてみてみる。容量比(%)は、錫とインジ
ウムの酸化物(ITO)の配合量が0.05%から1%
と高くなるにつれて、133%から140%と高くなっ
ている。一方、錫とインジウムの酸化物(ITO)の配
合量が1%から10%と高くなるにつれて、140%か
ら133%と低くなっている。このように、錫とインジ
ウムの酸化物(ITO)の配合量が1%のところで最大
値が発生している。これは実施例15〜23において述
べたと同じ理由によるものと考えられる。
【0101】つぎに、維持率(%)は、錫とインジウム
の酸化物(ITO)の配合量が0.05%から10%と
高くなるにつれて、55%から67%とほぼ単調に高く
なっている。このように、導電性金属酸化物の添加量が
増加するに従い電池保存中の維持率(%)が高くなるの
は、実施例15〜23において述べたと同じ理由による
ものと考えられる。
【0102】つぎに、実施例24〜32と、導電性金属
酸化物を添加していない比較例3とを比較してみる。容
量比(%)については、実施例25〜31において13
6〜140%であり、比較例3の133%よりも高い値
を示している。維持率(%)については、全実施例すな
わち実施例24〜32において55〜67%であり、比
較例3の52%よりも高い値を示している。これらのこ
とから、錫とインジウムの酸化物(ITO)を添加しな
い場合に比べて、錫とインジウムの酸化物(ITO)を
0.1〜8%の範囲で添加することにより、容量比
(%)および維持率(%)の双方が向上することがわか
る。
【0103】上述の実施例15〜23、および実施例2
4〜32の検討結果から、導電性金属酸化物を添加しな
い場合に比べて、導電性金属酸化物を0.1〜8%の範
囲で添加することにより、容量比(%)および維持率
(%)の双方が向上することがわかる。
【0104】つぎに、正極合剤中に導電性金属酸化物を
添加することによる、黒鉛粉末の最適添加量に対する効
果について検討した。
【0105】実施例33〜39 実施例33〜39においては、実施例11における正極
合剤に含まれる黒鉛粉末6質量部を、種々の濃度に変化
させてその効果を検討した。具体的には、実施例33で
は黒鉛粉末を2質量部に、実施例34では黒鉛粉末を3
質量部に、実施例35では黒鉛粉末を4質量部に、実施
例36では黒鉛粉末を5質量部に、実施例37では黒鉛
粉末を7質量部に、実施例38では黒鉛粉末を8質量部
に、実施例39では黒鉛粉末を9質量部に、配合した。
その他の条件については実施例11と同様である。
【0106】比較例4〜9 比較例4〜9においては、比較例1における正極合剤に
含まれる黒鉛粉末10質量部を、種々の濃度に変化させ
た。具体的には、比較例4では黒鉛粉末を3質量部に、
比較例5では黒鉛粉末を4質量部に、比較例6では黒鉛
粉末を6質量部に、比較例7では黒鉛粉末を8質量部
に、比較例8では黒鉛粉末を12質量部に、比較例9で
は黒鉛粉末を14質量部に、配合した。その他の条件に
ついては比較例1と同様である。
【0107】実施例33〜39および比較例4〜9につ
いて、容量比(%)および維持率(%)を測定した結果
は表2に示すとおりである。
【0108】
【表2】
【0109】まず、実施例33〜39について、実施例
11を併せてみてみる。容量比(%)は、黒鉛粉末の配
合量が2質量部から6質量部と高くなるにつれて、11
5%から139%と高くなっている。一方、黒鉛粉末の
配合量が6質量部から9質量部と高くなるにつれて、1
39%から127%と低くなっている。このように、黒
鉛粉末の配合量が6質量部のところで最大値が発生して
いる。
【0110】これはつぎの理由によるものと考えられ
る。容量比(%)において、配合量が6質量部のところ
でピークがあるのは、黒鉛粉末添加比率が増加していく
に従い正極の導電性が上がり結果的に放電容量が増加し
ていくが、その反面、黒鉛粉末の添加比率増加に従い正
極活物質であるベータ型オキシ水酸化ニッケルの含有比
率が下がるため、正極中に占めるベータ型オキシ水酸化
ニッケルの絶対量が少なくなっていくためと考えられ
る。黒鉛粉末添加比率が小さいうちは黒鉛添加比率の増
加による放電容量向上効果の方が、ベータ型オキシ水酸
化ニッケルの絶対量の低下による放電容量減少作用より
大きいため、結果的に放電容量は黒鉛添加比率増加に伴
って増加する。しかし、ある黒鉛添加比率以上において
ベータ型オキシ水酸化ニッケルの絶対量の低下による放
電容量減少作用が、黒鉛添加比率の増加による放電容量
向上効果を上回ってしまうためと考えられる。
【0111】容量比(%)の変化の傾向からみると、黒
鉛粉末の添加量3〜8質量部の範囲で容量比(%)が一
段と高くなっている。また、黒鉛粉末の添加量5〜7質
量部の範囲で容量比(%)がさらに一段と高くなってい
る。
【0112】つぎに、維持率(%)をみると、黒鉛粉末
の添加量が2質量部から9質量部と高くなるに従い、維
持率(%)は65%から63%と低くなっている。しか
し、数値的にはほとんど変化していない。このように、
維持率(%)がほとんど変わらないのは、電池保存中、
アルカリカチオンがベータ型オキシ水酸化ニッケルの結
晶格子中に取り込まれる傾向が、黒鉛添加比率に左右さ
れないためと考えられる。
【0113】上述の容量比(%)および維持率(%)の
結果から、黒鉛粉末の添加量は3〜8質量部の範囲内に
あることが望ましいと考えられる。また、黒鉛粉末の添
加量は5〜7質量部の範囲内にあることがさらに望まし
いと考えられる。
【0114】つぎに、比較例4〜9について、比較例1
を併せてみてみる。容量比(%)は、黒鉛粉末の配合量
が3質量部から10質量部と高くなるにつれて、67%
から95%と高くなっている。一方、黒鉛粉末の配合量
が10質量部から14質量部と高くなるにつれて、95
%から87%と低くなっている。このように、黒鉛粉末
の配合量が10質量部のところで最大値が発生してい
る。これは、実施例33〜39で述べた理由と同様な理
由によるものと考えられる。容量比(%)の変化の傾向
をみると、黒鉛粉末の添加量8〜12質量部の範囲で容
量比(%)が一段と高くなっている。
【0115】つぎに、維持率(%)をみると、黒鉛粉末
の添加量が3質量部から14質量部と高くなるに従い、
維持率(%)は31%から30%と低くなっている。し
かし、数値的にはほとんど変化していない。。このよう
に、維持率(%)がほとんど変わらないのは、実施例3
3〜39で述べたと同じ理由によるものと考えられる。
容量比(%)および維持率(%)の結果から、黒鉛粉末
の添加量は8〜12質量部の範囲内にあることが望まし
いと考えられる。
【0116】つぎに、実施例33〜39と、比較例4〜
9を比較する。比較例4〜9においては、黒鉛粉末の添
加量が8〜12質量部の範囲内にあることが望ましいと
考えられた。これに対して、実施例33〜39において
は、黒鉛粉末の添加量が3〜8質量部の範囲内にあるこ
とが望ましいと考えられ、また、黒鉛粉末の添加量が5
〜7質量部の範囲内にあることがさらに望ましいと考え
られた。
【0117】これらのことから、導電性金属酸化物を添
加したベータ型オキシ水酸化ニッケルを使用する実施例
33〜39においては、正極中の導電剤である黒鉛粉末
の添加量を少なくしても、高い放電容量が得られること
が分かる。この理由はつぎのように考えられる。正極に
導電性金属酸化物を混合する場合においては、導電性金
属酸化物が導電性を有しているために、その分、導電剤
としての黒鉛の添加量を少なく抑えることができる。黒
鉛は導電性金属酸化物に比べ比重が小さく成形密度も大
きくない。その黒鉛の添加量を少なくできれば結果とし
て正極成形密度が上がり、一定体積中により多くの正極
活物質を充填することができる。つまり、結果として高
容量化がより可能となる。
【0118】以上のことから、本実施例によれば、正極
合剤に含まれる導電性金属酸化物が導電性を有するの
で、導電剤としての黒鉛の添加量を少なく抑えることが
できる。導電性酸化物の比重は黒鉛の比重よりも大きい
ので、正極内の正極活物質の充填量を増加させることが
できる。また、導電性金属酸化物は黒鉛よりも導電性が
高いので、放電電圧を高くすることができる。この結
果、大電流で使用される場合においても高容量なニッケ
ル亜鉛電池を提供することができる。また、導電性金属
酸化物は、ベータ型オキシ水酸化ニッケルの表面を被着
または被覆するので、アルカリ電解液中のアルカリイオ
ンがベータ型オキシ水酸化ニッケルの結晶格子中に取り
込まれるのを抑制することができる。この結果、ニッケ
ル亜鉛電池の保存劣化を抑制することができる。
【0119】
【発明の効果】本発明は、以下に記載されるような効果
を奏する。正極合剤が導電性金属酸化物を含有するの
で、保存劣化の少ない、高出力高容量のニッケル亜鉛電
池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ニッケル亜鉛電池に係る発明の実施の形態を示
す図である。
【図2】略球状のベータ型オキシ水酸化ニッケル(A)
と、非球状のベータ型オキシ水酸化ニッケル(B)を示
す図である。
【符号の説明】
1‥‥ニッケル亜鉛電池、2‥‥電池缶、3‥‥正極
部、4‥‥セパレータ、5‥‥負極合剤、6‥‥封口部
材、7‥‥ワッシャー、8‥‥負極端子板、9‥‥集電
ピン
フロントページの続き (72)発明者 高橋 修 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 5H024 AA01 AA14 CC02 CC14 DD18 EE06 FF09 HH01 HH04 HH13 5H050 AA02 BA04 CA03 CB13 DA10 EA09 EA12 FA17 HA02 HA05 HA12 HA17

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 正極活物質であるベータ型オキシ水酸化
    ニッケルと導電剤である黒鉛粉末とを少なくとも含む正
    極合剤において、 上記正極合剤は、導電性金属酸化物を含有することを特
    徴とする正極合剤。
  2. 【請求項2】 導電性金属酸化物は、電気抵抗率が1×
    10-4〜1×10-2Ωcmの範囲内にあることを特徴と
    する請求項1記載の正極合剤。
  3. 【請求項3】 導電性金属酸化物の金属Mと、ベータ型
    オキシ水酸化ニッケルのNiとの元素モル比M/Ni
    は、0.1〜8%の範囲内にあることを特徴とする請求
    項2記載の正極合剤。
  4. 【請求項4】 導電性金属酸化物は、酸化コバルト、酸
    化インジウム、錫とインジウムの酸化物、アンチモンと
    錫の酸化物、フッ素添加酸化インジウム、またはフッ素
    添加酸化錫から選ばれる1または2以上の酸化物からな
    ることを特徴とする請求項3記載の正極合剤。
  5. 【請求項5】 導電性金属酸化物は、平均粒径が0.0
    1〜2μmの範囲内にあることを特徴とする請求項4記
    載の正極合剤。
  6. 【請求項6】 黒鉛粉末は、ベータ型オキシ水酸化ニッ
    ケル100質量部に対して、3〜8質量部の範囲内にあ
    ることを特徴とする請求項3記載の正極合剤。
  7. 【請求項7】 ベータ型オキシ水酸化ニッケルは、粒子
    の形状が略球状であることを特徴とする請求項6記載の
    正極合剤。
  8. 【請求項8】 ベータ型オキシ水酸化ニッケルの平均粒
    径は19〜40μmの範囲にあることを特徴とする請求
    項7記載の正極合剤。
  9. 【請求項9】 正極活物質であるベータ型オキシ水酸化
    ニッケルと導電剤である黒鉛粉末とを少なくとも含む混
    合粉末を中空円筒状にペレット成形した正極を外周部
    に、負極活物質である亜鉛と電解液及び亜鉛と電解液を
    均一に分散させておくためのゲル化剤とを少なくとも含
    むゲル状負極を中心部に配し、正極と負極の間にセパレ
    ータを配した、インサイドアウト構造であるニッケル亜
    鉛電池において、 上記正極は、導電性金属酸化物を含有することを特徴と
    するニッケル亜鉛電池。
  10. 【請求項10】 導電性金属酸化物は、電気抵抗率が1
    ×10-4〜1×10-2Ωcmの範囲内にあることを特徴
    とする請求項9記載のニッケル亜鉛電池。
  11. 【請求項11】 導電性金属酸化物の金属Mと、ベータ
    型オキシ水酸化ニッケルのNiとの元素モル比M/Ni
    は、0.1〜8%の範囲内にあることを特徴とする請求
    項10記載のニッケル亜鉛電池。
  12. 【請求項12】 導電性金属酸化物は、酸化コバルト、
    酸化インジウム、錫とインジウムの酸化物、アンチモン
    と錫の酸化物、フッ素添加酸化インジウム、またはフッ
    素添加酸化錫から選ばれる1または2以上の酸化物から
    なることを特徴とする請求項11記載のニッケル亜鉛電
    池。
  13. 【請求項13】 導電性金属酸化物は、平均粒径が0.
    01〜2μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1
    2記載のニッケル亜鉛電池。
  14. 【請求項14】 黒鉛粉末は、ベータ型オキシ水酸化ニ
    ッケル100質量部に対して、3〜8質量部の範囲内に
    あることを特徴とする請求項11記載のニッケル亜鉛電
    池。
  15. 【請求項15】 ベータ型オキシ水酸化ニッケルは、粒
    子の形状が略球状であることを特徴とする請求項14記
    載のニッケル亜鉛電池。
  16. 【請求項16】 ベータ型オキシ水酸化ニッケルの平均
    粒径は19〜40μmの範囲にあることを特徴とする請
    求項15記載のニッケル亜鉛電池。
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