JP2002081537A - パワートレインの制御装置 - Google Patents

パワートレインの制御装置

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JP2002081537A
JP2002081537A JP2001160085A JP2001160085A JP2002081537A JP 2002081537 A JP2002081537 A JP 2002081537A JP 2001160085 A JP2001160085 A JP 2001160085A JP 2001160085 A JP2001160085 A JP 2001160085A JP 2002081537 A JP2002081537 A JP 2002081537A
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ratio
control
switching
speed ratio
path
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JP2001160085A
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Inventor
Hiromasa Yoshida
裕将 吉田
Hidetoshi Nobemoto
秀寿 延本
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Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ローモードの動力伝達経路とハイモードの動
力伝達経路との切換動作の終了を精度よく判定し、該経
路切換動作中一時中断していた変速比のフィードバック
制御を適正なタイミングで再開することを課題とする。 【解決手段】 ロークラッチを解放しハイクラッチを締
結することによりローモードの経路からハイモードの経
路に切り換える。変速比のフィードバック制御は、実ト
ロイダルレシオRtrが切換レシオRtmの手前の所定
レシオRtaに到達した時刻t1に中断し、ロークラッ
チ圧ELが所定油圧P2まで低下した時刻t4に再開す
る。ロークラッチが解放状態に移行するのと同期して変
速制御を再開するから、再開時において変速比が急変す
ることがなく、滑らかに変化する。また、変速制御に空
白時間が生じず、違和感が発生しない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用パワートレイ
ン、特に、無段変速機構を有する変速機を備えたパワー
トレインの制御装置に関し、車両用駆動装置の技術分野
に属する。
【0002】
【従来の技術】近年、無段変速式の変速機を備えたパワ
ートレインが実用化されつつある。このパワートレイン
では、一般に、変速機は無段変速機構と遊星歯車機構と
を有する。無段変速機構は、例えば、一対の入出力ディ
スク間にパワーローラを傾転可能に介設したトロイダル
式のものや、縮径拡径可能な一対の入出力プーリ間にベ
ルトを張設したベルト式のもの等が採用される。
【0003】変速機には、無段変速機構と遊星歯車機構
とを経由する動力伝達経路と、無段変速機構のみを経由
する動力伝達経路とが形成される。前者の経路はローモ
ードの経路であり、比較的大きな変速機の変速比(最終
変速比)が得られる。したがってこの経路は後退時や発
進時に用いられる。後者の経路はハイモードの経路であ
り、比較的小さな最終変速比が得られる。したがってこ
の経路は高速走行時に用いられる。
【0004】変速機の目標変速比は車速やエンジン負荷
等の車両の走行状態に応じて設定される。そして、それ
が実現するように上記経路の選択と無段変速機構の変速
比の制御とが行なわれる。動力伝達経路はクラッチ等の
摩擦締結要素の作動によって動力伝達状態とされる。し
たがって、経路の切換えを伴う目標変速比が設定された
ときは、ローモードの経路を達成するロークラッチとハ
イモードの経路を達成するハイクラッチとの掛け替えが
行なわれる。
【0005】無段変速式の変速機はショックのない滑ら
かな変速が特徴である。したがって、このような経路の
切換え時においてもいかにショックのない滑らかな変速
を実現させるかが最重要課題の一つである。基本的に、
ローモードとハイモードとで同じ最終変速比を実現する
無段変速機構の変速比が唯一存在し、無段変速機構の変
速比がこの変速比(切換変速比)にあるときに経路の切
換えを行なうことが知られている。これにより、無段変
速機構の変速比を連続的に変化させながら、変速機の最
終変速比を急変させずに滑らかに変化させることが可能
となる。
【0006】本出願人は、このような経路切換え時の制
御をさらに以下のように種々改良した発明についてすで
に提案を行なった(特願平10−372957号)。す
なわち、経路を切り換えるために行なうクラッチの掛替
えには時間を要するから、経路の切換動作中は無段変速
機構の変速比を上記の切換変速比に維持するようにし
て、変速機の最終変速比がモードの切換え前後で変動す
ることを抑制する。また、その際、ロークラッチとハイ
クラッチとを両方締結すれば無段変速機構の変速比を上
記の切換変速比に固定することができるから、経路の切
換動作中は両方のクラッチを締結状態として、無段変速
機構の変速比の制御を中断する。さらに、ローモードと
ハイモードとでは無段変速機構を通過するトルクの流れ
が逆転し、またトルクに応じて無段変速機構に作用する
応力が変化するから、経路の切換動作中にその応力の変
化分の埋め合わせをして、無段変速機構の変速比ないし
変速機の最終変速比がモードの切換え前後で変動するこ
とを抑制する。そして、パワーローラの傾転には慣性が
作用するから、パワーローラの傾転制御を上記の切換変
速比が得られる手前で停止して、パワーローラが切換変
速比が得られる傾転角で停止することを図る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしそれでもなお解
決すべき課題が残存する。すなわち、上記のように、経
路の切換動作中において、ロークラッチとハイクラッチ
との両方を締結し、これにより無段変速機構の変速比を
安定に切換変速比に維持する一方、無段変速機構の変速
比の制御については、これを中断した場合には、その変
速比の制御を再開するタイミングが極めて重要となる。
【0008】例えば、経路が完全に切り換わる前から変
速比の制御を再開すると、経路が切り換わったときに変
速比が著しく変動してショックが発生することになる。
つまり、経路が完全に切り換わる前はロークラッチとハ
イクラッチとの両方が締結状態であり、無段変速機構の
変速比が切換変速比に固定されている状態であるから、
この状態ではいくら無段変速機構の変速比を制御しても
変速比は変化することがない。そして、その状態から、
解放される側のクラッチが解放されて経路が切り換わ
り、変速比の制御が可能な状態となったときに、変速比
が一気に急激に変化することになるのである。
【0009】逆に、経路が切り換わっているのに変速比
の制御が再開されないと、変速制御に空白が生じ、その
結果、例えば加速中にエンジン回転が著しく高くなる等
の違和感が発生する。
【0010】本発明は、無段変速式の変速機を備えたパ
ワートレインにおける上記のような不具合に対処するも
ので、経路の切換えの終了を精度よく判定し、もってよ
り一層ショックのない滑らかな変速を実現させることを
課題とする。併せて、そのような経路の切換え終了判定
のためにセンサや機器が増加してコストアップが発生す
ることのないように対策することも課題とする。以下、
その他の課題を含め、本発明を詳しく説明する。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち、上記課題を解
決するため、本願の請求項1に記載の発明は、無段変速
機構と歯車機構とを経由する経路を動力伝達状態とする
摩擦締結要素と、無段変速機構のみを経由する経路を動
力伝達状態とする摩擦締結要素とを有する変速機を備
え、車両の走行状態に応じて設定される上記変速機の目
標変速比が実現するように上記経路の選択と上記無段変
速機構の変速比の制御とを行なう変速制御手段が設けら
れたパワートレインの制御装置であって、経路の切換え
を伴う目標変速比が設定されたときは、その経路の切換
動作中、変速制御手段による変速比の制御を中断させる
中断手段と、その経路の切換動作において解放される摩
擦締結要素の状態に基いて経路の切換えの終了を判定す
る判定手段と、該判定手段により経路の切換えの終了が
判定されたときは、変速制御手段による変速比の制御を
再開させる再開手段とが設けられていることを特徴とす
る。
【0012】この発明によれば、経路の切換えの終了
が、経路の切換動作において解放される摩擦締結要素の
状態に基いて判定されるから、経路の切換えの終了が合
理的で精度よく判定される。つまり、経路の切換動作が
すなわち摩擦締結要素の掛替動作であるから、解放され
る側の摩擦締結要素の状態がすなわち経路の切換動作の
進捗状況を示す。したがって、この解放側摩擦締結要素
の状態をみることによって経路の切換えの終了を精度よ
く判定することができる。
【0013】特に、経路の切換動作中に解放側摩擦締結
要素と締結側摩擦締結要素との両方を締結状態とする場
合は、解放側摩擦締結要素がまだ締結状態にあるときに
締結側摩擦締結要素がすでに締結状態にあるから、その
後は、この解放側摩擦締結要素の状態だけをみることに
よって経路の切換えの終了を十分精度よく判定すること
ができる。
【0014】そして、経路の切換えの終了が判定された
ときは、変速比の制御が遅滞なく再開されるから、変速
比の制御が、経路の切換えの終了との関係において、早
すぎたり遅すぎたりすることなく適正なタイミングで再
開されることになる。その結果、変速比が一気に急変し
てショックが発生したり、変速制御に空白が生じて違和
感が発生することが回避される。
【0015】次に、請求項2に記載の発明は、上記請求
項1に記載の発明において、判定手段は、解放される摩
擦締結要素に供給される作動圧が所定値よりも低くなっ
たときに、経路の切換えの終了を判定することを特徴と
する。
【0016】この発明によれば、解放側摩擦締結要素の
状態がより具体化される。すなわち、解放側摩擦締結要
素に供給される作動圧が所定値よりも低くなったときに
経路の切換えの終了が判定される。つまり、上記のよう
な状態は、解放側摩擦要素が締結状態になく解放状態に
あり、変速比の制御が可能な状態であることを示してい
るから、上記のような状態に移行したときが、変速比の
制御を再開する適正なタイミングとして採用可能なもの
である。
【0017】次に、請求項3に記載の発明は、上記請求
項2に記載の発明において、変速比の制御の再開後にお
ける無段変速機構の変速比の変化の状態に基いて判定用
所定値を補正する補正手段が備えられていることを特徴
とする。
【0018】この発明によれば、実際の変速比の変化の
状態に基いて変速比の制御を再開するタイミングが学習
補正されるから、最終的に、ショックのない滑らかな変
速が実現する適正なタイミングで変速比の制御が再開さ
れることになる。
【0019】次に、請求項4に記載の発明は、上記請求
項1に記載の発明において、判定手段は、解放される摩
擦締結要素の解放動作が開始してから、作動油の温度ま
たは圧力の少なくとも一方に応じて設定される所定時間
が経過したときに、経路の切換えの終了を判定すること
を特徴とする。
【0020】この発明によれば、請求項2に記載の発明
と同様に、解放側摩擦締結要素の状態がより具体化され
る。すなわち、解放側摩擦締結要素の解放動作が開始し
てから所定時間が経過したときに経路の切換えの終了が
判定される。ここで、所定時間は作動油の温度または圧
力の少なくとも一方に応じて設定される。つまり、上記
のような状態は、解放側摩擦要素が締結状態になく解放
状態にあり、変速比の制御が可能な状態であることを示
しているから、上記のような状態に移行したときが、変
速比の制御を再開する適正なタイミングとして採用可能
なものである。
【0021】次に、請求項5に記載の発明は、上記請求
項4に記載の発明において、変速比の制御の再開後にお
ける無段変速機構の変速比の変化の状態に基いて判定用
所定時間を補正する補正手段が備えられていることを特
徴とする。
【0022】この発明によれば、請求項3に記載の発明
と同様に、実際の変速比の変化の状態に基いて変速比の
制御を再開するタイミングが学習補正されるから、最終
的に、ショックのない滑らかな変速が実現する適正なタ
イミングで変速比の制御が再開されることになる。
【0023】一方、請求項6に記載の発明は、上記各発
明と同様に、無段変速機構と歯車機構とを経由する経路
を動力伝達状態とする摩擦締結要素と、無段変速機構の
みを経由する経路を動力伝達状態とする摩擦締結要素と
を有する変速機を備え、車両の走行状態に応じて設定さ
れる上記変速機の目標変速比が実現するように上記経路
の選択と上記無段変速機構の変速比の制御とを行なう変
速制御手段が設けられたパワートレインの制御装置であ
って、経路の切換えを伴う目標変速比が設定されたとき
は、その経路の切換動作中、変速制御手段による変速比
の制御を中断させる中断手段と、その経路の切換動作が
終了したときに変速比が上記制御の中断中の変速比から
ずれるように無段変速機構を操作する変速比ずらし手段
と、その結果生じる変速比の挙動に基いて経路の切換え
の終了を判定する判定手段と、該判定手段により経路の
切換えの終了が判定されたときは、変速制御手段による
変速比の制御を再開させる再開手段とが設けられている
ことを特徴とする。
【0024】この発明によっても、経路の切換えの終了
が合理的で精度よく判定される。つまり、前述したよう
に、経路の切換動作中は、摩擦締結要素の両方を締結し
て変速比を切換変速比に固定すると共に、変速比の制御
についてはこれを中断する。上記両摩擦締結要素を締結
している間は変速比を制御しても変速比は変化せず切換
変速比に固定している。そして、解放側摩擦締結要素が
締結状態から解放状態に移行した時点で経路が実質的に
切り換わり変速比の制御が可能となる。すなわち、変速
比の制御が再開され、変速比が変速制御手段に委ねら
れ、固定の切換変速比から変速制御手段が指令する変速
比に変化する。前述したようにこの経路の切換え時にお
いてショックのない滑らかな変速を実現させるために
は、この変速比の制御の再開時における変速比(変速制
御手段の指令による変速比)と、変速比の制御の中断中
における変速比(固定の切換変速比)とを一致させるの
が本来である。
【0025】しかし、見方を変えれば、両者が一致しな
ければ変速比が変化するのであるから、そのことによっ
て経路の切換えが終了したことが検知できる。より具体
的にいえば、制御中断中の変速比が固定であるから、制
御再開時の変速比を制御中断中の変速比に一致させずに
敢えてわざと意図的にずらせてやれば変速比が変化す
る。しかもその変速比の変化は、解放側摩擦要素が解放
状態に移行し、経路が実質的に切り換わった時点で起こ
る。したがって、そのような変速比の変化・挙動をみる
ことで、経路の切換えの終了が極めて正確に判定でき
る。そこで、この発明では、変速比ずらし手段によっ
て、敢えてわざと意図的に、経路の切換動作が終了した
ときに変速比が制御中断中の変速比からずれるように予
め無段変速機構を操作しておき、その結果生じる変速比
の挙動に基いて経路の切換えの終了を判定するようにし
たのである。前述したように変速比の制御の中断中は変
速比は切換変速比に固定して変化しないから、この制御
の中断中から前もって無段変速機を上記のように操作し
ておいても問題はない。そして経路が切り換わった時点
で変速比が変化し、その切り換わりの瞬間が検知でき
る。
【0026】その場合に、変速比はそもそも車両の変速
制御においてセンシングする基本的状態量の一つであ
り、この経路の切換え終了判定のためだけに新たにセン
シングするということはない。よって新たに別段のセン
サや機器を備える必要がなく、コストアップを招来しな
い。
【0027】なお、変速比の挙動をみるにあたっては、
変速比の変化が大きいほど挙動がはっきりし、経路切換
えの判定がし易い。しかし一方で、変速比の変化が大き
過ぎると不快なショックに結びつくから、ショック有感
領域に属しない範囲内で可及的に大きな変化が生じるよ
うに変速比を本来達成すべき変速比からずらすようにす
る(つまりずらし量を決定する)。
【0028】次に、請求項7に記載の発明は、上記請求
項6に記載の発明において、判定手段は、変速比が制御
中断中の変速比からずれたときに、経路の切換えの終了
を判定することを特徴とする。
【0029】この発明によれば、経路切換え終了判定の
具体的一例が示される。この場合は、変速比がそれまで
固定していた制御中断中の変速比からずれて変化したこ
とをもって経路の切換え終了を判定する。したがって、
経路の切換え終了がごく単純・容易に判定できる。
【0030】次に、請求項8に記載の発明は、上記請求
項6に記載の発明において、判定手段は、変速比が制御
中断中の変速比から所定量以上ずれたときに、経路の切
換えの終了を判定することを特徴とする。
【0031】この発明の場合は、単に変速比がそれまで
固定していた制御中断中の変速比からずれただけでな
く、所定量以上ずれたことをもって経路の切換え終了を
判定する。したがって、上記所定量をどのように設定す
るかによって、終了判定をされ易くしたりされ難くした
りすることができる。例えば、変速比ずらし手段によっ
て変速比が大きくずれるように操作したとき(つまりず
らし量を大きくしたとき)は、経路の切換え終了判定が
され易くなるから、上記所定量を大きくしてよい。逆
に、変速比が小さくずれるように操作したとき(つまり
ずらし量を小さくしたとき)には、経路の切換え終了判
定がされ難くなるから、上記所定量を小さくする。この
ように、状況に応じて適切な判定が実現するように判定
基準を変化させることができる。
【0032】次に、請求項9に記載の発明は、上記請求
項6から8のいずれかに記載の発明において、変速比ず
らし手段は、トルクが小さいほど変速比が大きくずれる
ように無段変速機構を操作することを特徴とする。
【0033】前述したように、変速比の変化が大きいほ
ど経路切換えの終了判定が容易となるがショックも出易
くなる。ここでトルクの大小とショックの大小とは相関
関係にある。よって、この発明のように、トルクが小さ
く、ショックが相対的に小さくて済むときには、変速比
が大きくずれるように(つまりずらし量を大きく)し
て、判定精度を確保することができる。逆に、トルクが
大きく、ショックが相対的に大きくなるときには、変速
比が小さくずれるように(つまりずらし量を小さく)し
て、不快なショックを抑制することができる。これによ
り判定精度とショックとの均衡を図ることができる。
【0034】また、変速比が同程度ずれるように(つま
りずらし量を同じに)しても、トルクが小さいときは、
変速比は実際には少ししか変化せず、トルクが大きいと
きには、変速比は実際には大きく変化する傾向にある。
よって、この発明のように、トルクが小さいときに変速
比を大きくずれるようにすることで、実際の変速比のず
れ量(変化量)を判定に適切な大きさまで拡大すること
ができる。逆に、トルクが大きいときに変速比を小さく
ずれるようにしても、実際の変速比のずれ量(変化量)
は判定に適切な大きさに維持される。以下、発明の実施
の形態を通して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0035】
【発明の実施の形態】[全体構成]図1および図2に示
すように、本実施の形態に係るパワートレイン10は、
エンジン1の出力軸2にトーショナルダンパ3を介して
連結されたインプットシャフト11と、該シャフト11
の外側に遊嵌合された中空のプライマリシャフト12
と、これらのシャフト11,12に平行に配置されたセ
カンダリシャフト13とを有する。これらのシャフト1
1〜13はいずれも車幅方向に延びる。インプットシャ
フト11およびプライマリシャフト12の軸線上にはト
ロイダル式の第1、第2無段変速機構20,30と、こ
れらに軸方向の荷重を付与するローディングカム機構4
0とが配設されている。セカンダリシャフト13の軸線
上には遊星歯車機構50とロークラッチ60およびハイ
クラッチ70とが配設されている。インプットシャフト
11およびプライマリシャフト12の軸線とセカンダリ
シャフト13の軸線との間にはローモードギヤ列80と
ハイモードギヤ列90とが介設されている。
【0036】第1、第2無段変速機構20,30は、対
向面がトロイダル面の入力ディスク21,31および出
力ディスク22,32と、これらの入出力ディスク2
1,22;31,32間に介設されて動力を伝達するパ
ワーローラ23,33とを有する。入力ディスク21,
31はプライマリシャフト12の端部に結合されてい
る。両力ディスク22,32は一体化されてプライマリ
シャフト12の中間部に回転自在に支持されている。
【0037】インプットシャフト11の反エンジン側の
端部にはローモードギヤ列80の第1ギヤ81が結合さ
れている。この第1ギヤ81と第1無段変速機構20の
入力ディスク21との間にローディングカム機構40が
介設されている。一体化された出力ディスク22,32
の外周にはハイモードギヤ列90の第1ギヤ91が設け
られている。セカンダリシャフト13の反エンジン側の
端部にはローモードギヤ列80の第2ギヤ82が回転自
在に支持されている。この第2ギヤ82はアイドルギヤ
83を介して第1ギヤ81に連結されている。セカンダ
リシャフト13の中間部には遊星歯車機構50が配設さ
れている。遊星歯車機構50のピニオンキャリヤ51と
ローモードギヤ列80の第2ギヤ82との間にこれらを
連結または切断するロークラッチ60が介設されてい
る。
【0038】遊星歯車機構50のエンジン側にはハイモ
ードギヤ列90の第2ギヤ92が回転自在に支持されて
いる。この第2ギヤ92は第1ギヤ91と噛み合ってい
る。第2ギヤ92と遊星歯車機構50のサンギヤ52と
が連結されている。遊星歯車機構50のインターナルギ
ヤ53がセカンダリシャフト13に結合されている。遊
星歯車機構50のエンジン側にハイモードギヤ列90の
第2ギヤ92とセカンダリシャフト13とを連結または
切断するハイクラッチ70が介設されている。
【0039】セカンダリシャフト13のエンジン側の端
部に出力ギヤ列4を介してディファレンシャル装置5が
連結されている。出力ギヤ列4は第1、第2ギヤ4a,
4bおよびアイドルギヤ4cでなる。ディファレンシャ
ル装置5から左右に延びる駆動軸6a,6bが左右の駆
動輪(図示せず)に連結されている。
【0040】インプットシャフト11の反エンジン側の
端部にはオイルポンプ100が配置されている。オイル
ポンプ100はインプットシャフト11によりローモー
ドギヤ列80の第1ギヤ81を介して駆動される。
【0041】[無段変速機構] 〈機械的構成〉無段変速機構20,30の構成について
第1無段変速機構20を例にとりさらに説明する。図3
に示すように、パワーローラ23はシャフト24を介し
てトラニオン25に支持されている。シャフト24は入
出力ディスク21,22のほぼ半径方向に延びる。各パ
ワーローラ23,23は両ディスク21,22の対向ト
ロイダル面の円周上の180°反対側にほぼ水平姿勢で
上下に平行に配置されている。パワーローラ23はその
周面の180°反対側の2箇所で両ディスク21,22
のトロイダル面と接触している。
【0042】トラニオン25は支持部材26,26に支
持されている。支持部材26,26は当該パワートレイ
ン10のケース101に取り付けられている。トラニオ
ン25は両ディスク21,22の接線方向であってシャ
フト24に直交する水平方向の軸心X回りの回動と、該
軸心X方向の直線往復運動とが可能である。トラニオン
25には軸心X方向に延びるロッド27が連設されてい
る。ケース101の側面には変速制御ユニット110が
取り付けられている。変速制御ユニット110は上記ロ
ッド27およびトラニオン25を介してパワーローラ2
3を傾転させる。
【0043】変速制御ユニット110は油圧制御部11
1とトラニオン駆動部112とを有する。トラニオン駆
動部112は増速用および減速用のピストン113,1
14を備える。ピストン113,114はロッド27に
取り付けられている。ピストン113,114により増
速用および減速用の油圧室115,116が形成されて
いる。
【0044】上方のトラニオン25では、増速用油圧室
115がパワーローラ23側に、減速用油圧室116が
反パワーローラ23側に配置されている。下方のトラニ
オン25では、増速用油圧室115が反パワーローラ2
3側に、減速用油圧室116がパワーローラ23側に配
置されている。
【0045】油圧制御部111で生成された増速用油圧
PHが油路117,118を介して増速用油圧室11
5,115に供給される。同じく油圧制御部111で生
成された減速用油圧PLが図示しない油路を介して減速
用油圧室116,116に供給される。これらの油圧P
H,PLの制御により無段変速機構20,30の変速比
が制御される。
【0046】〈概略動作〉無段変速機構20,30の動
作の概略を第1無段変速機構20を例にとって説明す
る。まず、図3に示す油圧制御部111により、上下の
トラニオン25,25の増速用油圧室115,115に
供給されている増速用油圧PHが、減速用油圧室11
6,116に供給されている減速用油圧PLに対して所
定の釣り合い状態より相対的に高くされると、上方のト
ラニオン25は図面上、右側に、下方のトラニオン25
は左側にそれぞれ水平移動する。
【0047】このとき、図示されている出力ディスク2
2が矢印c方向に回転しているとすると、上方のパワー
ローラ23は、右側への移動により、上記出力ディスク
22からは下向きの力を受け、図面の手前側にあって反
矢印c方向に回転している入力ディスク21からは上向
きの力を受ける。また、下方のパワーローラ23は、左
側への移動により、上記出力ディスク22からは上向き
の力を受け、入力ディスク21からは下向きの力を受け
る。その結果、上下のパワーローラ23,23とも、入
力ディスク21との接触位置が半径方向の外側に、出力
ディスク22との接触位置が半径方向の内側に移動する
ように傾転し、当該無段変速機構20の変速比が小さく
なる(増速)。
【0048】これとは逆に、上下のトラニオン25,2
5の減速用油圧室116,116に供給されている減速
用油圧PLが、増速用油圧室115,115に供給され
ている増速用油圧PHに対して所定の釣り合い状態より
相対的に高くされると、上方のトラニオン25は図面
上、左側に、下方のトラニオン25は右側にそれぞれ水
平移動する。そして、上方のパワーローラ23は、出力
ディスク22からは上向きの力を受け、入力ディスク2
1からは下向きの力を受ける。また、下方のパワーロー
ラ23は、出力ディスク22からは下向きの力を受け、
入力ディスク21からは上向きの力を受ける。その結
果、上下のパワーローラ23,23とも、入力ディスク
21との接触位置が半径方向の内側に、出力ディスク2
2との接触位置が半径方向の外側に移動するように傾転
し、当該無段変速機構20の変速比が大きくなる(減
速)。
【0049】以上のような第1無段変速機構20につい
ての構成および作用は第2無段変速機構30についても
同様である。加えて、図1、図2に示すように、第1、
第2無段変速機構20,30の入力ディスク21,31
がプライマリシャフト12の両端部にそれぞれスプライ
ン嵌合されて常に同一回転する。また、第1、第2無段
変速機構20,30の出力ディスク22,32が一体化
されて同じく同一回転する。したがって、第1、第2無
段変速機構20,30の変速比が常に同じ値に制御され
る。
【0050】[油圧制御回路] 〈全体構成〉次に、このパワートレイン10の油圧制御
回路を説明する。油圧制御回路は、変速制御ユニット1
10と、ケース101の下部に取り付けられたクラッチ
制御ユニット120(図3参照)とにより構成される。
【0051】図4に示すように、この油圧制御回路20
0には、レギュレータバルブ202と、リリーフバルブ
204と、マニュアルバルブ205とが備えられてい
る。レギュレータバルブ202はオイルポンプ100か
ら吐出される作動油の圧力を所定のライン圧に調整して
メインライン201に出力する。リリーフバルブ204
はメインライン201から供給されるライン圧を元圧と
して所定のリリーフ圧を生成し、これをリリーフ圧ライ
ン203に出力する。マニュアルバルブ205は運転者
の切換え操作によってDレンジ、Rレンジ、Nレンジお
よびPレンジの選択を可能とする。マニュアルバルブ2
05はメインライン201をDレンジでは第1、第2出
力ライン206,207に、Rレンジでは第1、第3出
力ライン206,208に連通させ、NレンジおよびP
レンジではライン圧を遮断する。
【0052】油圧制御回路200には、オイルポンプ1
00の吐出圧を元圧として一定圧を生成するレデューシ
ングバルブ211が備えられている。レギュレータバル
ブ202およびリリーフバルブ204にはライン圧制御
用リニアソレノイドバルブ209およびリリーフ圧制御
用リニアソレノイドバルブ210がそれぞれ備えられて
いる。これらのリニアソレノイドバルブ209,210
はレデューシングバルブ211で生成された一定圧に基
づいて制御圧を生成する。制御圧がレギュレータバルブ
202およびリリーフバルブ204の制御ポート202
a,204aに供給されることによりライン圧およびリ
リーフ圧が各リニアソレノイドバルブ209,210に
出力される制御信号によって調整される。
【0053】レデューシングバルブ211で生成された
一定圧はオンオフソレノイドバルブ213にも導かれ
る。オンオフソレノイドバルブ213はフェールセーフ
バルブ212を作動させる。オンオフソレノイドバルブ
213は通常時はオンであり、一定圧をフェールセーフ
バルブ212の制御ポート212aに供給する。これに
より該バルブ212のスプールが右側に移動する。一
方、オンオフソレノイドバルブ213はフェールセーフ
時等にはオフであり、一定圧を制御ポート212aから
オフドレインする。これにより該バルブ212のスプー
ルが左側に移動する。
【0054】また、油圧制御回路200には、レギュレ
ータバルブ202のドレインポートから導かれた潤滑ラ
イン281が配設されている。この潤滑ライン281に
は、潤滑油圧を所定値に調整するリリーフバルブ282
や、第1、第2開閉バルブ283,284等が配置され
て、第1、第2無段変速機構20,30や遊星歯車機構
50等のパワートレイン各部に対する潤滑油の供給を制
御する。
【0055】〈変速制御弁〉油圧制御回路200には、
変速制御弁としての前進用三層弁220および後退用三
層弁230が備えられている。また、これらの三層弁2
20,230を選択的に作動させるシフトバルブ240
が備えられている。変速制御弁220,230はライン
圧およびリリーフ圧に基づいて前進時および後退時のそ
れぞれにおいて増速用油圧PHおよび減速用油圧PLを
生成する。
【0056】シフトバルブ240は制御ポート240a
に制御圧としてライン圧が供給されるか否かによりスプ
ールの位置が決定する。ライン圧が供給されないときは
スプールが右側に位置してメインライン201とライン
圧供給ライン241とが連通する。このライン圧供給ラ
イン241は前進用三層弁220に通じる。ライン圧が
供給されたときはスプールが左側に位置してメインライ
ン201とライン圧供給ライン242とが連通する。こ
のライン圧供給ライン242は後退用三層弁230に通
じる。
【0057】シフトバルブ240の制御ポート240a
にライン圧が供給されるのは、通常時においては、マニ
ュアルバルブ205がRレンジに位置したときである。
このときフェールセーフバルブ212のスプールが右側
に移動し、ライン圧が第3出力ライン208を介して制
御ポート240aに供給される。これに対し、通常時で
あってもマニュアルバルブ205がDレンジに位置した
ときは、シフトバルブ240の制御ポート240aにラ
イン圧が供給されない。また、フェールセーフ時には、
フェールセーフバルブ212のスプールが左側に移動
し、シフトバルブ240と第3出力ライン208とが遮
断されるから、マニュアルバルブ205がRレンジに位
置していても、シフトバルブ240の制御ポート240
aにはライン圧が供給されない。
【0058】前進用および後退用の三層弁220,23
0はほぼ同一の構成である。両三層弁220,230と
もボア221,231に軸方向に移動可能に嵌合された
スリーブ222,232と、これらのスリーブ222,
232に同じく軸方向に移動可能に嵌合されたスプール
223,233とを有する。両三層弁220,230は
図3に示す変速制御ユニット110における油圧制御部
111のバルブボディ111aに収納されている。
【0059】三層弁220,230の中央部にはライン
圧ポート224,234が設けられている。これらのラ
イン圧ポート224,234にはシフトバルブ240か
ら導かれたライン圧供給ライン241,242が接続さ
れている。また、三層弁220,230の両端部には第
1、第2リリーフ圧ポート225,226,235,2
36が設けられている。これらのリリーフ圧ポート22
5,226,235,236にはリリーフ圧ライン20
3が接続されている。さらに、上記ライン圧ポート22
4,234と第1リリーフ圧ポート225,235との
間には増速圧ポート227,237が設けられている。
同じく上記ライン圧ポート224,234と第2リリー
フ圧ポート226,236との間には減速圧ポート22
8,238が設けられている。これらの増速圧ポート2
27,237および減速圧ポート228,238から導
かれたライン243,244;245,246がシフト
バルブ240に接続されている。
【0060】シフトバルブ240のスプールが右側に位
置すると、ライン243が増速用ライン247と接続
し、ライン245が減速用ライン248と接続する。こ
れにより、前進用三層弁220の増速圧ポート227と
増速用油圧室115,115とが連通し、減速圧ポート
228と減速用油圧室116,116とが連通する。
【0061】シフトバルブ240のスプールが左側に位
置すると、ライン244が増速用ライン247と接続
し、ライン246が減速用ライン248と接続する。こ
れにより、後退用三層弁230の増速圧ポート237と
増速用油圧室115,115とが連通し、減速用ポート
238と減速用油圧室116,116とが連通する。
【0062】〈変速制御弁の動作〉三層弁220,23
0の動作を図5を用いて説明する。ただし、図5におい
ては三層弁220,230の向きが図4とは左右反対に
なっている。スリーブ222とスプール223の位置関
係が図示したような中立位置にある状態から、例えば前
進用三層弁220のスリーブ222が相対的に図面上、
左側(矢印g方向)に移動すると、ライン圧ポート22
4と増速圧ポート227との連通度、および第2リリー
フ圧ポート226と減速圧ポート228との連通度がそ
れぞれ増大する。これにより、増速用油圧PHが上昇
し、減速用油圧PLが低下する。
【0063】逆に、スリーブ222が相対的に右側(矢
印h方向)に移動すると、ライン圧ポート224と減速
圧ポート228との連通度、および第1リリーフ圧ポー
ト225と増速圧ポート227との連通度がそれぞれ増
大する。これにより、減速用油圧PLが上昇し、増速用
油圧PHが低下する。
【0064】このような動作は後退用三層弁230につ
いても同様である。そして、これらの三層弁220,2
30のスリーブ222,232を移動させるステップモ
ータ251,252が備えられている。ステップモータ
251,252はリンク部材253,254を介してス
リーブ222,232と連結している。また、スリーブ
222,232の移動に応じてスプール223,233
をスプリング229,239のバネ力に抗して移動させ
るカム機構260が備えられている。
【0065】このカム機構260は、図5、図6に示す
ように、プリセスカム261と、シャフト262と、従
動レバー263と、前進用および後退用の駆動レバー2
64,265とで構成されている。プリセスカム261
は、第2無段変速機構30の上方に位置するトラニオン
35のロッド37の端部に取り付けられている。プリセ
スカム261の一方の端面が螺旋面状のカム面261a
である。
【0066】シャフト262は、油圧制御部111のバ
ルブボディ111aに回動自在に支持されている。シャ
フト262は、前進用および後退用三層弁220,23
0のスプール223,233の一端側にこれらに直交す
る方向に配置されている。
【0067】従動レバー263は、上記シャフト262
の一端部に取り付けられている。従動レバー263の揺
動端が上記プリセスカム261のカム面261aに当接
している。
【0068】駆動レバー264,265は、同じく上記
シャフト262に取り付けられている。駆動レバー26
4,265の揺動端が三層弁220,230のスプール
223,233の一端に設けられた切り込み223a,
233aに係合している。
【0069】第2無段変速機構30の上方のパワーロー
ラ33が傾転すると、上方のトラニオン35およびロッ
ド37が軸心X回りに一体的に回転する。これにより、
プリセスカム261がこれらと一体的に回動し、従動レ
バー263が所定量揺動する。さらに、シャフト262
を介して駆動レバー264,265が同じ角度だけ揺動
し、その結果、その揺動角度に応じた量だけ前進用およ
び後退用三層弁220,230のスプール223,23
3が軸方向に移動する。そのスプール223,233の
位置は、第2無段変速機構30のパワーローラ33(お
よび第1無段変速機構20のパワーローラ23)の傾転
角、つまり無段変速機構20,30の変速比に対応す
る。
【0070】〈変速比の制御動作−トラクション力〉無
段変速機構20,30の変速比(トロイダルレシオR
t)の制御の具体的動作について前進時を例にとり説明
する。まず、油圧制御回路200において、ライン圧制
御用リニアソレノイドバルブ209およびリリーフ圧制
御用リニアソレノイドバルブ210により、レギュレー
タバルブ202およびリリーフバルブ204の制御圧が
生成される。そして、その制御圧に応じたライン圧とリ
リーフ圧とが生成される。
【0071】ライン圧は、メインライン201からシフ
トバルブ240およびライン241を介して三層弁22
0のライン圧ポート224に供給される。リリーフ圧
は、ライン203を介して三層弁220の第1、第2リ
リーフ圧ポート225,226に供給される。ステップ
モータ251で三層弁220を制御することにより、こ
れらのライン圧とリリーフ圧とに基いて差圧ΔPの制御
が行われる。差圧ΔPは、変速制御ユニット110の増
速用油圧室115,115に供給される増速用油圧PH
と、減速用油圧室116,116に供給される減速用油
圧PLとの間の差圧である(ΔP=PH−PL)。
【0072】この差圧制御は、無段変速機構20,30
のトラニオン25,35ないしパワーローラ23,33
を図6に示すような所定の中立位置から軸心X,X方向
に沿って移動させる制御である。中立位置では、ローラ
23,33はディスク21,22,31,32の回転を
受けることがなく、その傾転が進行しない。しかし、軸
心X,X方向に沿って移動することにより、ローラ2
3,33はディスク21,22,31,32の回転を受
けて、その傾転が進行する。つまりトロイダルレシオR
tが変化する。
【0073】いま、例えば、トルクが無段変速機構2
0,30を入力ディスク21,31側から出力ディスク
22,32側に通過しているとする。入力ディスク2
1,31はa,a方向に回転することによりパワーロー
ラ23,33をb,b方向に駆動する。したがって、パ
ワーローラ23,33およびトラニオン25,35に
は、入力ディスク21,31の回転方向a,aと同方向
への引きずり力が作用する。また、パワーローラ23,
33はb,b方向に回転することにより出力ディスク2
2,32をc,c方向に駆動する。したがって、パワー
ローラ23,33およびトラニオン25,35には、出
力ディスク22,32の回転方向c,cと反対方向への
反力が作用する。その結果、パワーローラ23,33お
よびトラニオン25,35には、トラニオン駆動部11
2へ近づく方向のトラクション力T1,T1が作用す
る。
【0074】逆に、例えば、トルクが無段変速機構2
0,30を出力ディスク22,32側から入力ディスク
21,31側に通過しているとする。出力ディスク2
2,32のc,c方向の回転によりパワーローラ23,
33がb,b方向に駆動されるから、パワーローラ2
3,33およびトラニオン25,35には、出力ディス
ク22,32の回転方向c,cと同方向への引きずり力
が作用する。また、パワーローラ23,33のb,b方
向の回転により入力ディスク21,31がa,a方向に
駆動されるから、パワーローラ23,33およびトラニ
オン25,35には、入力ディスク21,31の回転方
向a,aと反対方向への反力が作用する。その結果、パ
ワーローラ23,33およびトラニオン25,35に
は、トラニオン駆動部112から離れる方向のトラクシ
ョン力T2,T2が作用する。
【0075】したがって、中立位置では差圧ΔPはゼロ
ではなく、これらのトラクション力T1,T2と釣り合
うだけの差圧ΔPが必要となる。そして、それだけの差
圧ΔPが生成するように増速用油圧PHおよび減速用油
圧PLが供給される。
【0076】〈変速比の制御動作−スリーブとスプール
の動き〉トロイダルレシオRtを小さく(増速)する場
合は、ステップモータ251により前進用三層弁220
のスリーブ222を図5、図6において左側(g方向)
に移動させる。すると、三層弁220のライン圧ポート
224と増速圧ポート227との連通度、および第2リ
リーフ圧ポート226と減速圧ポート228との連通度
が大きくなる。これにより、図4に示す増速圧ライン2
47から増速用油圧室115,115に供給される増速
用油圧PHは増圧され、減速圧ライン248から上記減
速用油圧室116,116に供給される減速用油圧PL
は減圧される。
【0077】その結果、差圧ΔPが大きくなり、トラニ
オン25,35ないしパワーローラ23,33が図6に
示すd1,d1方向に移動する。この移動により、パワ
ーローラ23,33は、入力ディスク21,31との接
触位置が半径方向の外側に、出力ディスク22,32と
の接触位置が半径方向の内側に変位するように傾転す
る。そして、第1、第2無段変速機構20,30は増速
し、トロイダルレシオRtが小さくなる。
【0078】一方、第2無段変速機構30のパワーロー
ラ33が上記のように傾転することにより、カム機構2
60におけるプリセスカム261が同方向(図5に示す
e方向)に同じ角度だけ回転し、これに伴って該カム機
構260の従動レバー263、シャフト262および駆
動レバー264がいずれも図6に示すf方向に回動す
る。その結果、三層弁220のスプール223がスプリ
ング229のバネ力によってg方向、すなわち図5、図
6の左方向に移動する。この方向は最初にステップモー
タ251によりスリーブ222を移動させた方向である
から、上記のようにいったん増大したライン圧ポート2
24と増速圧ポート227との連通度、および第2リリ
ーフ圧ポート226と減速圧ポート228との連通度が
当初の中立状態に復帰する。
【0079】これにより、差圧ΔPは再び小さくなって
トロイダルレシオRtの制御動作が終了する。すなわ
ち、トロイダルレシオRtが所定量変化したうえで、パ
ワーローラ23,33が再び中立位置に保持される。そ
の場合に、この制御動作は、スプール223がスリーブ
222との間の位置関係において所定の中立状態となる
位置まで移動した時刻で終了する。その位置はステップ
モータ251によりスリーブ222を移動させた位置で
ある。また、カム機構260を介してパワーローラ2
3,33およびトラニオン25,35の傾転角に対応付
けられた位置である。したがって、スリーブ222の位
置がパワーローラ23,33およびトラニオン25,3
5の傾転角に対応し、ステップモーター251の制御量
が第1、第2無段変速機構20,30の変速比に対応す
る。その結果、ステップモーター251に対するパルス
制御によりトロイダルレシオRtを制御することができ
る。
【0080】なお、以上の制御動作および作用はステッ
プモータ251により三層弁220のスリーブ222を
図5、図6において反対方向の右側(h方向)に移動さ
せた場合も同様である。その場合は、トラニオン25,
35ないしパワーローラ23,33が図6に示すd2,
d2方向に移動して、トロイダルレシオRtは大きくな
る(減速)。
【0081】〈経路切換用制御弁〉以上のような変速比
制御用の構成に加えて、油圧制御回路200には、図4
に示すように、ロークラッチ60およびハイクラッチ7
0の制御用として2個のデューティソレノイドバルブ2
71,272が備えられている。そして、マニュアルバ
ルブ205から導かれた第1出力ライン206がローク
ラッチ用デューティソレノイドバルブ271に、第2出
力ライン207がハイクラッチ用デューティソレノイド
バルブ272にそれぞれ接続されている。
【0082】ロークラッチ用デューティソレノイドバル
ブ271により、第1出力ライン206からのライン圧
が調整されてロークラッチ60の締結のための作動圧
(ロークラッチ圧)が生成される。このロークラッチ圧
は、正常時には、フェールセーフバルブ212およびロ
ークラッチライン274を介してロークラッチ60の油
圧室に供給される。これにより、ロークラッチ圧の大き
さに応じた締結力でロークラッチ60が締結される。
【0083】一方、ハイクラッチ用デューティソレノイ
ドバルブ272により、第2出力ライン207からのラ
イン圧が調整されてハイクラッチ70の締結のための作
動圧(ハイクラッチ圧)が生成される。このハイクラッ
チ圧は、ハイクラッチライン275を介してハイクラッ
チ70の油圧室に供給される。これにより、ハイクラッ
チ圧の大きさに応じた締結力でハイクラッチ70が締結
される。
【0084】これらのデューティソレノイドバルブ27
1,272は、その制御信号のデューティ率が0%のと
きは全閉となってクラッチ圧を出力せず、100%のと
きは全開となってライン圧をそのままクラッチ圧として
出力し、その中間のデューティ率ではその値に応じたク
ラッチ圧を生成する。
【0085】ロークラッチライン274およびハイクラ
ッチライン275にはそれぞれアキュムレータ276,
277が備えられている。アキュムレータ276,27
7はロークラッチ圧、ハイクラッチ圧をロークラッチ6
0、ハイクラッチ70に緩やかに供給させ、クラッチ6
0,70の締結時におけるショックの発生を抑制する。
【0086】マニュアルバルブ205から導かれた第3
出力ライン208は、前述したように、正常時には、フ
ェールセーフバルブ212を介してシフトバルブ240
の制御ポート240aに接続される。そして、マニュア
ルバルブ205がRレンジの位置に移動したときに、ラ
イン圧がシフトバルブ240の制御ポート240aに供
給されて、シフトバルブ240のスプールを左側、すな
わち後退時用の位置に移動させる。
【0087】フェールセーフ時等には、フェールセーフ
バルブ212を作動させるオンオフソレノイドバルブ2
13がオフとなって、フェールセーフバルブ212のス
プールが左側に移動する。これにより、ロークラッチ用
デューティソレノイドバルブ271とロークラッチライ
ン274との間、および第3出力ライン208とシフト
バルブ240との間がそれぞれ遮断される。ロークラッ
チ60の油圧室に通じるロークラッチライン274がフ
ェールセーフバルブ212のドレインポート212bと
連通し、ロークラッチ圧が該ドレインポート212bか
ら速やかに排出される。
【0088】[制御システム]本実施の形態に係るパワ
ートレイン10は、以上のような機械的構成と油圧制御
回路200とを有する他、図7に示すように、コントロ
ールユニット300を備える。コントロールユニット3
00は、油圧制御回路200を用いて、第1、第2無段
変速機構20,30の変速比制御と、クラッチ60,7
0の締結制御とを行うことにより、パワートレイン10
の全体としての変速比(ユニットレシオRu)を制御す
る。
【0089】コントロールユニット300は、当該車両
の車速を検出する車速センサ301、エンジンの回転数
を検出するエンジン回転数センサ302、スロットル開
度を検出するスロットル開度センサ303、運転者によ
って選択されているレンジを検出する選択レンジセンサ
304、アクセルペダルの非踏み込みを検出するアイド
ルスイッチ305、作動油の温度を検出する油温センサ
306、入力ディスク21,31および出力ディスク2
2,32の回転数を検出する入力回転数センサ307お
よび出力回転数センサ308(図1参照)、メインライ
ン201内のライン圧の値を検出するライン圧センサ3
09、並びにロークラッチライン274内およびハイク
ラッチライン275内のロークラッチ圧およびハイクラ
ッチ圧の値を検出するロークラッチ圧センサ310およ
びハイクラッチ圧センサ311等からの信号を入力す
る。
【0090】コントロールユニット300は、上記信号
が示す当該車両の走行状態ないしエンジン1の運転状態
に応じて、ライン圧制御用およびリリーフ圧制御用のリ
ニアソレノイドバルブ209,210、オンオフソレノ
イドバルブ213、ロークラッチ60用およびハイクラ
ッチ70用のデューティソレノイドバルブ271,27
2、前進用三層弁220用および後退用三層弁230用
のステップモータ251,252、並びにエンジン1の
点火プラグ312等に制御信号を出力する。
【0091】[制御動作第1例]〈ギヤードニュートラ
ルと走行モード〉このパワートレイン10では、Nレン
ジが選択されているときは、ロークラッチ60およびハ
イクラッチ70の両方が解放状態である。したがって、
インプットシャフト11側からセカンダリシャフト13
側に伝達される動力は、遊星歯車機構50やセカンダリ
シャフト13には伝達されない。つまり、動力が差動装
置5から駆動輪へ出力されることはない。
【0092】このとき、遊星歯車機構50においては、
ハイモードギヤ列90からの動力によりサンギヤ52が
駆動される。しかし、ローモードギヤ列80からの動力
はロークラッチ60の入力側の回転部材60a(図1参
照)まで伝達されるだけで、ピニオンキャリヤ51へは
伝達されない。また、セカンダリシャフト13に結合さ
れたインターナルギヤ53は固定されている。したがっ
て、ピニオンキャリヤ51はサンギヤ52の回転に連動
して無負荷状態で回転している。
【0093】この状態で、トロイダルレシオRtを所定
値に設定して、ピニオンキャリヤ51の回転速度を制御
すると、ロークラッチ60の入、出力側回転部材60
a,60b(図1参照)の回転速度を等しくすることが
できる。つまり、トロイダルレシオRtを上記所定値に
制御することにより、ロークラッチ60を接続しても、
インターナルギヤ53ないしセカンダリシャフト13の
回転をゼロとすることができる。これにより、いわゆる
ギヤードニュートラル(GN)の状態が得られる。
【0094】ステップモータ251,252に出力する
制御信号のパルス数NとトロイダルレシオRtとの関係
は例えば図8に示すような特性を有する。パルス数Nが
増加(プラス側に変化)すると、トロイダルレシオRt
が小さくなる(増速側に変化する)。このとき、三層弁
220,230のスリーブ222,232は、前述した
ように、図5、図6に示した矢印g方向に移動する。こ
のようにスリーブ222,232がパルスモータ25
1,252から離れる方向gをプラス(+)側とする。
【0095】逆に、パルス数Nが減少(マイナス側に変
化)すると、トロイダルレシオRtが大きくなる(減速
側に変化する)。このとき、三層弁220,230のス
リーブ222,232は、前述したように、図5、図6
に示した矢印h方向に移動する。このようにスリーブ2
22,232がパルスモータ251,252に近づく方
向hをマイナス(−)側とする。
【0096】ギヤードニュートラルの状態が得られると
きのトロイダルレシオ(GNレシオRtn)は1より小
さい。また、そのGNレシオRtnを実現させるパルス
数(GNパルス数Nn)は相対的にプラス側にある。
【0097】一方、ステップモータ251,252に出
力する制御信号のパルス数NとユニットレシオRuとの
関係は例えば図9に示すような特性を有する。パルス数
NがGNパルス数Nnにあるときは、ユニットレシオR
uは、符号アまたはイで示すように無限大となる。この
GNパルス数Nnからパルス数が減少(マイナス側に変
化)して、トロイダルレシオRtが大きくなると(減速
側に変化すると)、サンギヤ52への入力回転速度が低
下する。これにより、遊星歯車機構50のインターナル
ギヤ53が前進方向に回転し始める。すなわち、パルス
数Nの減少、ないしスリーブ位置のマイナス側への移
動、およびトロイダルレシオRtの増大に伴って、ユニ
ットレシオRuが小さくなっていく(増速側に変化して
いく)前進ローモード特性LFが実現する。
【0098】逆に、GNパルス数Nnからパルス数が増
加(プラス側に変化)して、トロイダルレシオRtが小
さくなると(増速側に変化すると)、サンギヤ52への
入力回転速度が上昇する。これにより、遊星歯車機構5
0のインターナルギヤ53が後退方向に回転し始める。
すなわち、パルス数Nの増加、ないしスリーブ位置のプ
ラス側への移動、およびトロイダルレシオRtの減少に
伴って、ユニットレシオRuが大きくなっていく(減速
側に変化していく)Rレンジでの後退ローモード特性L
Rが実現する。
【0099】また、前進ローモードLFで発進したの
ち、パルス数Nが減少していって、ユニットレシオRu
が小さくなっていき、図8、図9に符号ウで示すよう
に、所定の切り換えポイント(パルス数Nm,トロイダ
ルレシオRtm,ユニットレシオRum)に到達する
と、ロークラッチ60が切断されると共にハイクラッチ
70が締結される。すなわち、クラッチ60,70の掛
け替えが行なわれる。これにより、インプットシャフト
11からの動力が、第1、第2無段変速機構20,3
0、ハイモードギヤ列90およびハイクラッチ70を介
してセカンダリシャフト13に伝達される。この状態で
は、ハイモードギヤ列90のギヤ比が1であるとすれ
ば、ユニットレシオRuはトロイダルレシオRtに等し
くなり、図8に示すトロイダルレシオRtの特性とほぼ
同じとなる。すなわち、パルス数Nの増加、ないしスリ
ーブ位置のプラス側への移動、およびトロイダルレシオ
Rtの減少に伴って、ユニットレシオRuが小さくなっ
ていく(増速側に変化していく)前進ハイモード特性H
Fが実現する。
【0100】〈モード切換時におけるパルス数の補正〉
図10に示すように、前進ローモードLFにおいてエン
ジン1により車両を駆動している正駆動状態にあるとき
には循環トルクが発生する。つまり、矢印iで示すよう
に、エンジン1からのトルクがインプットシャフト11
の反エンジン側の端部からローモードギヤ列80を介し
てセカンダリシャフト13側へ伝達される一方で、該セ
カンダリシャフト13上の遊星歯車機構50で生じる反
力としてのトルクが矢印jで示すようにハイモードギヤ
列90を介して無段変速機構20,30の出力ディスク
22,32に還流される。そして、この還流トルクが、
矢印kで示すように、入力ディスク21,31、プライ
マリシャフト12およびローディングカム機構40等を
介して上記ローモードギヤ列80側に再び伝達される。
したがって、この前進ローモードLFでは、無段変速機
構20,30においては、正駆動状態で、トルクは出力
ディスク22,32側から入力ディスク21,31側へ
伝達されることになり、パワーローラ23,33および
トラニオン25,35には、トロイダルレシオRtを小
さくしようとする、図6に示す増速方向のトラクション
力T2,T2が作用することになる。
【0101】一方、前進ハイモードHFにおいて正駆動
状態にあるときには、インプットシャフト11に入力さ
れたエンジン1からの回転は、ローディングカム機構4
0から無段変速機構20,30の入力ディスク21,3
1に入力され、それぞれパワーローラ23,33を介し
て出力ディスク22,32に伝達されると共に、さら
に、ハイモードギヤ列90からハイクラッチ70を介し
てセカンダリシャフト13に伝達される。したがって、
このハイモードHFでは、無段変速機構20,30にお
いては、正駆動状態で、トルクは入力ディスク21,3
1側から出力ディスク22,32側へ伝達されることに
なり、パワーローラ23,33およびトラニオン25,
35には、トロイダルレシオRtを大きくしようとす
る、図6に示す減速方向のトラクション力T1,T1が
作用することになる。
【0102】また、前進ローモードLFにおいてエンジ
ン1が車両の走行慣性により駆動されている逆駆動状態
にあるときは、正駆動状態にあるときとは逆に、トルク
が入力ディスク21,31側から出力ディスク22,3
2側へ伝達され、パワーローラ23,33およびトラニ
オン25,35には減速方向のトラクション力T1,T
1が作用する。さらに、前進ハイモードHFにおいて逆
駆動状態にあるときも、正駆動状態にあるときとは逆
に、トルクが出力ディスク22,32側から入力ディス
ク21,31側へ伝達され、パワーローラ23,33お
よびトラニオン25,35には増速方向のトラクション
力T2,T2が作用する。
【0103】したがって、例えば、正、逆いずれかの同
一駆動状態のままで、ロー、ハイのモードの切換えが起
こったときや、ロー、ハイいずれかの同一モードのまま
で、正、逆の駆動状態の切換えが起こったときには、無
段変速機構20,30を通過するトルクの伝達方向が反
転し、それに伴って、パワーローラ23,33およびト
ラニオン25,35に作用するトラクション力の方向も
また反転する。
【0104】このとき、前述の図6を参照して説明した
ように、各無段変速機構20,30のトラニオン25,
35にはトラクション力T1またはT2に対抗し得るだ
けの差圧ΔPが供給されて中立位置に保持されているの
ではあるが、現実には、そのような差圧ΔPを直接受け
ているのはトラニオン駆動部112に配置されたピスト
ン113,114およびその近傍部分だけであるので、
それ以外の例えば入出力ディスク21,22,31,3
2に近い位置に配置されているロッド27,37や、ト
ラニオン本体25,35、あるいはこれらの連設部分、
ないしはローラ支持シャフト24,24、さらには該シ
ャフト24,24とトラニオン25,35との連結部分
等は、トラクション力T1またはT2によって引きずら
れるように撓んだり、歪んだりして物理的変形を生じ、
その結果、パワーローラ23,33が中立位置から増速
方向(d1方向:トラクション力T2の場合)または減
速方向(d2方向:トラクション力T1の場合)に若干
オフセットしているのである。
【0105】それゆえ、例えば、具体的一例として、正
駆動状態のままでローモードLFからハイモードHFへ
の切換えが起こったときには、パワーローラ23,33
は、トラクション力T2,T2によって増速方向にオフ
セットした位置から、トラクション力T1,T1によっ
て減速方向にオフセットした位置へ、本来の中立位置を
挟んで、瞬間的に移動することになる。
【0106】図11に、モード切換ポイントトロイダル
レシオRtmを実現し得るパルス数ないしスリーブ位置
が変速機構20,30を通過する伝達トルク(入力トル
ク)によってどのように変化するかを調べた実験結果を
グラフで示す。この図11から明らかなように、トルク
がゼロのときは、ローモードLFのときも、ハイモード
HFのときも、あるいは正駆動のときも、逆駆動のとき
も、前述した理論値としてのモード切換ポイントパルス
数Nmないしモード切換ポイントスリーブ位置Smにお
いて、モード切換ポイントトロイダルレシオRtmが実
現する。
【0107】しかし、トルクが大きくなるに従って、モ
ード切換ポイントトロイダルレシオRtmを実現するこ
とのできるパルス数ないしスリーブ位置が、上記理論値
Nm,Smから大きくずれていく。例えば、ローモード
LFの正駆動状態(図中のf1の特性ライン)では、ト
ルクの増大に伴い、パルス数ないしスリーブ位置を上記
理論値Nm,Smから次第に減速方向に大きくずらして
いかないと、モード切換ポイントトロイダルレシオRt
mが実現しないことになる。このことは、ローモードL
Fの正駆動状態で、前述したように、パワーローラ2
3,33が増速方向にオフセットしており、かつそのオ
フセット量がトルクに応じて変化するものであることを
示す。このような特性は、他の3種の状態(図中のf
2,f3,f4の各特性ライン)においても同様であ
る。
【0108】したがって、例えば、モードの切換時に、
ローモードLFの正駆動状態でのトルクがTr1で、ハ
イモードHFの正駆動状態でのトルクがTr2であれ
ば、両者間でのパルス数の偏差Δn(=N2−N1)を
埋め合わせしないと、モードの切換えと同時に著しいト
ロイダルレシオRtないしユニットレシオRuの変動が
起こり、不快なショックが発生することになる。
【0109】本実施の形態に係る無段変速機構20,3
0を搭載したパワートレイン10においては、このよう
な不具合を解消するための対策が講じられている。
【0110】なお、上記の4種の特性ラインf1〜f4
は、それぞれトルクの関数として次のような近似式1〜
4(数1〜数4)が与えられる。なお、Xはトルク、K
11〜K14、K21〜K24、K31、K41、α、
およびβはそれぞれ定数である。
【0111】
【数1】
【0112】
【数2】
【0113】
【数3】
【0114】
【数4】
【0115】〈パワーローラの傾転運動〉図12に示す
ように、モード切換ポイント(ウ)は、ローモードLF
およびハイモードHFのいずれにおいても、同じトロイ
ダルレシオRtmで同じユニットレシオRumが得られ
る唯一のポイントである。したがって、このポイント
(ウ)でモードの切換えを行なうことにより、切換え前
後でユニットレシオRuの著しい変動のない、したがっ
て切換えショックの発生しない円滑なモードの切換えが
実現する。そして、この切換ポイントトロイダルレシオ
Rtmを実現させる切換ポイントパルス数(Nm:トル
クゼロの場合)ないし切換ポイントスリーブ位置(S
m:トルクゼロの場合)といった各種の物理量が、前述
の図8、図9および図11に示すように、理論的にただ
一点対応して定まっている。なお、上記の切換ポイント
トロイダルレシオRtmを実現させる切換ポイントパル
ス数ないし切換ポイントスリーブ位置がトルクに応じて
変化することは前述の通りである。
【0116】それゆえ、理論上は、実トロイダルレシオ
Rtrが切換ポイントトロイダルレシオRtmに到達
し、したがって、パルス数ないしスリーブ位置が切換ポ
イントパルス数Nmないし切換ポイントスリーブ位置S
mに到達したときに、そのパルス数ないしスリーブ位置
の制御を停止すれば、実トロイダルレシオが上記切換ポ
イントトロイダルレシオRtmにおいて安定することに
なる。しかし、このモード切換ポイント(ウ)の近傍に
おいては、該切換ポイントに接近するようにパワーロー
ラ23,33が連続的に傾転しており、したがって、現
実には、その連続的な傾転運動による慣性等が働く結
果、実トロイダルレシオRtrが切換ポイントトロイダ
ルレシオRtmに到達してから、パルス数ないしスリー
ブ位置の制御を停止したのでは、パワーローラ23,3
3が傾転し過ぎ、その結果、実トロイダルレシオRtr
が切換ポイントトロイダルレシオRtmを越えてより減
速側(ローモードLFからハイモードHF、およびハイ
モードHFからローモードLFのいずれのモード切換え
においても、トロイダルレシオRtは、その切換え前
は、増速側から減速側に変化している)に行き過ぎるこ
とになるのである(図12に鎖線で示す領域に進入す
る)。
【0117】そして、パワーローラ23,33の傾転運
動の慣性は伝達トルクが大きくなるに従って大きくなる
から、上記のパワーローラ23,33の行き過ぎ量も伝
達トルクに応じて大きくなる。したがって、モードの切
換え動作中に、そのようなパワーローラ23,33の行
き過ぎに起因する実レシオの切換ポイントから減速側へ
のずれを考慮しないと、モード切換動作の進行に伴って
著しいトロイダルレシオRtないしユニットレシオRu
の変動が起こり、不快なショックが発生することにな
る。
【0118】本実施の形態に係る無段変速機構20,3
0を搭載したパワートレイン10においては、このよう
な不具合を解消するための対策もまた講じられている。
【0119】〈タイムチャート〉次に、前進ローモード
LFと前進ハイモードHFとの切換時の具体的制御動作
の一例を詳しく説明する。この制御は、基本的に、モー
ド切換ポイント(ウ)近傍における制御であり、各モー
ド達成用の摩擦締結要素としてのロークラッチ60とハ
イクラッチ70との掛け替えが行なわれる。すなわち、
ローモードLFからハイモードHFへの切換えであれ
ば、ロークラッチ60を切断し、ハイクラッチ70を締
結する。逆に、ハイモードHFからローモードLFへの
切換えであれば、ハイクラッチ70を切断し、ロークラ
ッチ60を締結する。そして、このクラッチ60,70
の掛け替え動作は、実トロイダルレシオRtrが切換ポ
イントトロイダルレシオRtmに到達することをもって
開始され、その掛け替え動作中は、実トロイダルレシオ
Rtrが切換ポイントトロイダルレシオRtmに一定に
保持されるように、前進用ステップモータ251に対す
るパルス数Nの制御が行われる。
【0120】一方、このようなモードの切換時以外の通
常時は、基本的に、図13〜図15に示すように、前進
ローモードLF、前進ハイモードHF、および後退ロー
モードLRのそれぞれにおいて、車速Vやスロットル開
度TVO等の車両の走行状態をパラメータとして予め設
定された変速線図に基づく変速比(トロイダルレシオR
tおよびユニットレシオRu)のフィードバック制御が
行なわれている。
【0121】この変速比制御は、特に図14に示すよう
に、まず実車速Vと実スロットル開度TVOとを上記変
速線図にあてはめて目標エンジン回転数Neoを求め、
次にこの目標エンジン回転数Neoと実車速Vとから目
標ユニットレシオRuoを算出して、さらにこの目標ユ
ニットレシオRuoが得られる目標トロイダルレシオR
toを設定したのち、この目標トロイダルレシオRto
が実現するように、ステップモータ251,252に対
するパルス制御(スリーブ位置制御)を介してトロイダ
ルレシオRtをフィードバック制御するものである。
【0122】なお、各変速線図には、モード切換ポイン
トユニットレシオRumの傾きを有するモード切換ライ
ンMが表されている。
【0123】図16のタイムチャートを参照してさらに
説明する。なお、このタイムチャートは、一例として、
例えばアクセルペダルが踏み込まれ続けて、車速が増加
していき、その結果、正駆動状態でローモードLFから
ハイモードHFへの切換えが起こる場合を示している。
【0124】まず時刻t1までの期間中、および時刻t
4以降の期間中は、上記の走行状態および変速線図に基
づく通常の変速比のフィードバック(F/B)制御が行
なわれる。そして、これらの時刻t1から時刻t4まで
の期間中にモードの切換制御(動力伝達経路の切換制
御)が実行される。
【0125】まず時刻t1までの期間中はローモードL
Fが達成されている。すなわち、オンオフソレノイドバ
ルブ213がON、ロークラッチ用デューティソレノイ
ドバルブ271に対するデューティ率DLが100%
(DL1)、およびハイクラッチ用デューティソレノイ
ドバルブ272に対するデューティ率DHが0%(DH
1)である。ロークラッチ60の油圧室にはロークラッ
チ圧ELとしてライン圧がそのまま供給され、ロークラ
ッチ60は完全締結状態である。ハイクラッチ70の油
圧室にはハイクラッチ圧EHが供給されず、ハイクラッ
チ70は完全解放状態である。
【0126】この時刻t1までの期間中は、変速比のフ
ィードバック制御により、目標ユニットレシオRuoが
増速側に変化するように設定されていく。したがって、
図中鎖線で示すように、目標トロイダルレシオRtoが
減速側に変化するように設定されていって、この目標ト
ロイダルレシオRtoが実現するようにトロイダルレシ
オRtがフィードバック制御される。その結果、図中実
線で示すように、実トロイダルレシオRtrが目標トロ
イダルレシオRtoに追随するように減速側に変化して
いく。このとき、三層弁220についてのパルス数Nな
いしスリーブ位置Sは共にマイナス側に変化していく。
【0127】そして、符号カで示すように、実トロイダ
ルレシオRtrが、切換ポイントトロイダルレシオRt
mより手前の増速側の所定トロイダルレシオRtaに到
達した時刻t1において、変速比のフィードバック制御
が停止される。また、パルス数Nないしスリーブ位置S
が、符号キで示すように、その時刻t1における所定パ
ルス数Naおよび所定スリーブ位置Saに固定される。
このパルス数N等の固定は時刻t1から所定時間Taが
経過するまで続けられる。
【0128】ここで、上記所定トロイダルレシオRta
は、図17に示すように、時刻t1に無段変速機構2
0,30を通過するトルクTr1に応じて補正される。
トルクTr1がゼロでパワーローラ23,33の傾転慣
性が生じないときは、所定トロイダルレシオRtaは理
論値としての切換ポイントトロイダルレシオRtmとさ
れる。しかし、トルクTr1が大きくなり、したがって
パワーローラ23,33の傾転慣性が大きくなるに伴っ
て、所定トロイダルレシオRtaはより増速側の値に設
定される。これにより、パワーローラ23,33は慣性
により減速側への傾転を続けたのち停止し、その結果、
符号クで示すように、時刻t1よりのちの時刻txにお
いて、実トロイダルレシオRtrが切換ポイントトロイ
ダルレシオRtmに到達して、該レシオRtmで安定す
る。そして、少なくとも、モードの切換えが終了して再
び通常の変速比のフィードバック制御が再開される時刻
t4が経過するまでは、実トロイダルレシオRtrが上
記切換ポイントトロイダルレシオRtmに安定に固定す
るように、前進用ステップモータ251へのパルス制御
が行われる。これにより、著しい変速比変動および切換
えショックの発生しない円滑なクラッチ60,70の掛
け替えが実現する。
【0129】これに対し、実トロイダルレシオRtrが
切換ポイントトロイダルレシオRtmに到達するまで、
符号ケで示すように、パルス数Nないしスリーブ位置S
をマイナス側にフィードバック制御し続け、そして、実
トロイダルレシオRtrが切換ポイントトロイダルレシ
オRtmに到達してから、その制御を停止していたので
は、符号コで示すように、実トロイダルレシオRtrが
切換ポイントトロイダルレシオRtmを越えてさらに減
速側に行き過ぎ、その結果、変速比が切換ポイント変速
比からずれて、クラッチ60,70の掛け替え時に不快
なショックが発生したり、または、符号サで示すよう
に、エンジン回転数Neが不必要に上昇したりするので
ある。
【0130】なお、実トロイダルレシオRtrが所定ト
ロイダルレシオRtaに到達した時刻t1における上記
所定パルス数Naおよび所定スリーブ位置Saは、すな
わち、上記伝達トルクTr1のもとで所定トロイダルレ
シオRtaを実現させることのできるパルス数Nおよび
スリーブ位置Sであるということができる。しかし、さ
らに、前述の図11で説明したトラクション力に起因し
て発生する目標値からのずれ現象も加味されている。
【0131】さらに、この時刻t1で、ハイモードHF
に切り換わった後に時刻t4から再開される変速比のフ
ィードバック制御で用いられるその再開始時の目標トロ
イダルレシオRtbが算出される。その場合にも、前述
の図11で説明したトラクション力に起因して発生する
目標値からのパルス数ないしスリーブ位置のずれ現象が
加味される。
【0132】一方、実トロイダルレシオRtrが所定ト
ロイダルレシオRtaに到達した時刻t1で、ロークラ
ッチ用デューティ率DLが0%(DL2)とされ、ハイ
クラッチ用デューティ率DHが所定デューティ率(DH
2)に設定される。これにより、ロークラッチ60が開
放され始める一方、ハイクラッチ70が締結され始め
る。すなわち、実トロイダルレシオRtrが所定トロイ
ダルレシオRtaに到達したことをもってクラッチ6
0,70の掛け替え動作が開始されるのである。
【0133】ここで、パルス数Nないしスリーブ位置S
が時刻t1における所定パルス数Naおよび所定スリー
ブ位置Saに固定され続ける上記所定時間Taは、実質
的に、このクラッチ60,70の掛け替え動作の開始に
伴い、ハイクラッチ圧EHが所定油圧P1にまで上昇し
て、ロー、ハイの両クラッチ60,70ともが、符号タ
で示すように、締結状態となるのに要する時間とされて
いる。そして、ロー、ハイの両クラッチ60,70とも
が締結状態となったときには、パルス数Nないしスリー
ブ位置Sの如何に拘らず、トロイダルレシオRTは切換
えポイントトロイダルレシオRtmに堅持される。した
がって、時刻t1で実トロイダルレシオRtrが所定ト
ロイダルレシオRtaに到達さえすれば、あとはクラッ
チ60,70の掛け替え動作の開始によってトロイダル
レシオが切換えポイントトロイダルレシオRtmに安定
的に保持されるから、もはやパルス数N等のフィードバ
ック制御は行う意味がなく、それゆえ時刻t1で変速比
のフィードバック制御が停止されて、パルス数N等が上
記所定パルス数Na等に固定されるのである。
【0134】なお、図18に示すように、上記所定時間
Taは、油温が高いほど短くなるように設定される。こ
れは、油温が高いときは作動油ないし潤滑油の粘性が低
く、締結側摩擦要素(この場合はハイクラッチ70)の
締結動作が応答性よく進行すると共に、また実トロイダ
ルレシオRtrが切換えポイントトロイダルレシオRt
mに速やかに到達するからである。これにより、このモ
ード切換えに要する制御時間の短縮化が図られる。
【0135】そして、上記所定時間Taが経過した時刻
t2以降は、ハイクラッチ用デューティ率DHが100
%のデューティ率(DH3)に向けてさらに高められ
る。これにより、ロー、ハイの両クラッチ60,70と
もが締結状態となった状態から、ロークラッチ60の開
放動作およびハイクラッチ70の締結動作がさらに進
む。すなわち、ローモードからハイモードへの移行が開
始される。
【0136】このとき、時刻t2から時刻t3までの第
2所定時間Tbが経過する間に、パルス数Nないしスリ
ーブ位置Sのフィードフォワード(F/F)制御が実行
される。すなわち、時刻t1におけるトルクTr1をモ
ード切換え前のローモードLFでのトルクとし、時刻t
2におけるトルクTr2をモード切換え後のハイモード
HFでのトルクとする。そして、前述の図11を参照し
て説明したように、ロー、ハイの両モードLF,HFで
同一値の切換ポイントトロイダルレシオRtmが保持実
現するように、その切換ポイントトロイダルレシオRt
m実現パルス数N1,N2の偏差Δnだけステップモー
タ251に対するパルス数Nを修正する。ここで、Rt
m実現パルス数N1,N2の算出には、前述の特性近似
式f1〜f4が用いられる。特に、この場合は、ローモ
ードLFで正駆動状態でのRtm実現パルス数N1の算
出に特性近似式f1が、またハイモードHFで正駆動状
態でのRtm実現パルス数N2の算出に特性近似式f2
が用いられる。
【0137】これにより、符号チで示すように、パルス
数Nは第2所定時間Tbの間にフィードフォワード制御
によって応答性よく速やかに偏差Δnだけ増速側にプラ
スされる。したがって、ロー、ハイの両クラッチ60,
70ともが締結状態となった状態からハイモードへの移
行が開始され、その結果、パワーローラ23,33が前
述のトラクション力T2,T2によって増速方向にオフ
セットした位置から、反対方向に作用するトラクション
力T1,T1によって減速方向にオフセットした位置へ
移動することになっても、符号ツで示すように、著しい
トロイダルレシオないしユニットレシオの変動が起こら
ず、不快なショックの発生が抑制されることになる。
【0138】これに対し、符号テで示すように、パルス
数Nをハイモードへの移行の開始前と同じ値に固持した
ときには、パワーローラ23,33のオフセット方向の
反転に起因する、符号トで示すようなトロイダルレシオ
の減速方向への変動を回避できず、その結果、変速比が
切換ポイント変速比からずれて不快な切換ショックが発
生したり、または、符号ナで示すように、エンジン回転
数(Ne)がここでもまた不必要に上昇したりするので
ある。
【0139】なお、このパルス数の偏差Δnは、換言す
れば、現状の実トロイダルレシオである切換ポイントト
ロイダルレシオRtmと、ハイモードHFに切り換わっ
た後に時刻t4から再開される変速比のフィードバック
制御で用いられる目標トロイダルレシオRtbとの間の
差分Δrを修正するものである。
【0140】一方、時刻t2から時刻t3までの第2所
定時間Tbが経過する間、エンジン1の点火時期Igが
所定量ΔIgだけリタードされて、入力トルクの低減が
図られる。その場合に、上記リタード量ΔIgは、図1
9に示すように、時刻t2における入力トルクTr2に
応じて補正され、該トルクTr2が大きくなるほど、リ
タード量ΔIgが大きく、つまりトルクダウン量が大き
くなるように設定される。これにより、ハイクラッチ7
0の締結ショックが抑制されるばかりでなく、その締結
動作の進行に伴うトルク変動が抑制され、したがってパ
ワーローラ23,33のオフセット反転量も低減され
て、モード切換えショックがより一層確実に低減される
ことになる。
【0141】そして、第2所定時間Tbが経過し、時刻
t3に至った以降は、パルス数Nのフィードバック制御
は依然として停止される一方、オンオフソレノイドバル
ブ213がオフとされる。これにより、フェールセーフ
バルブ212のスプールが左側に移動して、ロークラッ
チライン274が該バルブ212のドレインポート21
2bに連通する。それゆえ、符号ハで示すように、ロー
クラッチ圧ELがこのドレインポート212bから速や
かに排出され、ロークラッチ60が早期に完全開放状態
となって、切り換わり後のハイモードHFにおける変速
比のフィードバック制御を早期に実行することが可能と
なる。
【0142】これに対し、オンオフソレノイドバルブ2
13がオンのままであると、ロークラッチ圧ELがデュ
ーティソレノイドバルブ271のデューティ率により排
出されることになり、符号ヒで示すように、遠心残圧等
が残って、ハイモードHFが完全に実現するのに時間が
かかることになる。
【0143】また、時刻t3から所定時間Tdが経過し
た段階で、ハイクラッチ用デューティ率DHが100%
とされる(DH3)。
【0144】そして、時刻t3から所定時間Tcが経過
した段階(時刻t4)で、ハイクラッチ70が完全締結
され、ロークラッチ60が完全解放されたハイモードH
Fに完全に切り換わり、上記トロイダルレシオRtbを
目標とする変速比のフィードバック制御が再開される。
【0145】〈変速比のフィードバック制御の再開タイ
ミング〉以上のように、時刻t1は、実トロイダルレシ
オRtrが所定レシオRtaに到達した時刻であり、ま
た、ロー、ハイのモード切換制御が開始する時刻であ
る。時刻t2は、ハイクラッチ圧EHが所定油圧P1ま
で上昇した時刻であり、また、ロー、ハイの両クラッチ
60,70が共に締結状態となった時刻である。時刻t
3は、ステップモータ251に対するパルス数Nの補正
が終了した時刻であり、また、オンオフソレノイドバル
ブ213がオフとされることにより、解放される側の摩
擦締結要素であるロークラッチ60の解放動作が開始さ
れる時刻である。時刻t4は、ロー、ハイのモード切換
制御が終了する時刻であり、また、変速制御が再開され
る時刻である。
【0146】本実施の形態においては、時刻t4は、ロ
ークラッチ圧ELが所定油圧P2まで低下した時刻に設
定される。つまり、ロークラッチ60が締結状態にな
く、解放状態に移行し、その結果、変速比のフィードバ
ック制御が可能な状態に復帰したと考えられる時刻に設
定される。この場合、所定時間Tcは、単に時刻t3と
時刻t4との間の時間である。
【0147】経路切換終了判定用の所定油圧P2は、図
20に示すように、入力トルクが大きいほど高い油圧に
設定される。入力トルクが大きいほどロークラッチ60
が滑り易く、締結状態でなくなる傾向が大きいから、そ
の場合は、所定油圧P2が高くてもロークラッチ60が
解放状態に移行したと考えられるからである。
【0148】また、これとは別に、上記所定時間Tcを
直接設定するようにしてもよい。この場合、所定時間T
cは、経路切換終了判定用の所定時間である。この所定
時間Tcは、図21に示すように、ライン圧が高いほど
長い時間に設定される。ライン圧が高いほどロークラッ
チ圧ELが低下し難く、したがってロークラッチ60が
解放され難く、締結状態が長く続く傾向が大きいから、
その場合は、所定時間Tcを長くしてロークラッチ60
が解放状態に移行するのを待つのである。
【0149】また、経路切換終了判定用の所定時間Tc
は、同じく図21に示すように、油温が低いほど長い時
間に設定される。作動油は温度が低いほど粘性が増大し
て流動性が低下する。それゆえ、ロークラッチ圧ELが
低下し難く、したがってロークラッチ60が解放され難
く、締結状態が長く続く傾向が大きいから、その場合
は、所定時間Tcを長くしてロークラッチ60が解放状
態に移行するのを待つのである。
【0150】〈フローチャート〉 (時刻t4をロークラッチ圧ELで決定する場合) ・時刻t1まで 以上の制御動作を実現する具体的プログラムの一例を図
22〜図24のフローチャートを参照して説明する。ま
ず、時刻t4を、ロークラッチ圧ELが所定油圧P2ま
で低下した時刻に設定する場合について説明する。
【0151】ステップS1〜S18までの動作は時刻t
1に至るまでの制御動作である。まず、ステップS1
で、図7に示す各センサやスイッチ301〜311から
の信号に基づき、現時刻における各種の状態量を検出す
る。状態量には、車速、エンジン1のスロットル開度、
選択されているレンジ、油温、実トロイダルレシオ、ラ
イン圧、ロークラッチ圧、ハイクラッチ圧等が含まれ
る。
【0152】次いで、ステップS2で、入力トルクTr
を推定する。この入力トルクTrの推定はエンジン回転
数や吸入空気量等から周知の方法により求められる。次
いで、ステップS3で、エンジン点火時期タイミングI
gを設定する。この点火時期タイミングIgもまたエン
ジン回転数や吸入空気量等から周知の方法により求めら
れる。
【0153】次いで、ステップS4で、上記入力トルク
Trに応じてモード切換判定レシオ(所定トロイダルレ
シオ)Rtaを設定する。その場合に、モード切換判定
レシオRtaは、前述の図17に示すように、入力トル
クTrが大きいほど小さい値(増速側の値)に求められ
る。
【0154】次いで、ステップS5で、実トロイダルレ
シオRtrが上記モード切換判定レシオRtaよりも大
きいか否かを判定する。その結果、大きくないとき、つ
まり実トロイダルレシオRtrがモード切換判定レシオ
Rtaより増速側であるときは、ステップS6に進ん
で、上記入力トルクTrの値を第1トルク値Tr1とす
る。
【0155】次いで、ステップS7で、トロイダルレシ
オの目標値Rtoをモード切換理論値(切換ポイントト
ロイダルレシオ)Rtmとし、ステップS8,S9で、
ハイクラッチデューティ率DHを第1デューティ率DH
1(0%)とし、ロークラッチデューティ値DLを第1
デューティ率DL1(100%)とする。さらに、ステ
ップS10で、オンオフソレノイドバルブ213に対す
る指示値をオンとする。
【0156】次のステップS11〜S13は、変速比の
フィードバック制御のためのパルス数偏差ΔNを設定す
るルーティンである。まず、ステップS11で、変速線
図に基いて目標ユニットレシオRuoないし目標トロイ
ダルレシオRtoを設定したのち、該目標トロイダルレ
シオRtoに対する実トロイダルレシオRtrの偏差Δ
Rtを算出する。
【0157】次いで、ステップS12で、入力トルク、
変速比、走行モード、およびレンジに応じて、PID制
御の指数Qにおける比例項ゲイン(変速比制御における
フィードバックゲイン)Gを設定する。この比例項ゲイ
ンGは、トルクが大きいほど、またトロイダルレシオが
GNレシオRtnに近いほど小さい値に設定される。さ
らに、走行モードがローモードLF,LRであるときは
ハイモードHFであるときに比べて小さい値に設定さ
れ、またレンジが後退レンジLrであるときは前進レン
ジであるときに比べて小さい値に設定される。
【0158】次いで、ステップS13で、パルス数偏差
ΔNを設定する。すなわち、まず次式(数5)に比例項
ゲインGを代入してPID制御指数Qを算出する。
【0159】
【数5】
【0160】ここで、Hは積分項ゲイン、およびIは微
分項ゲインである。そして、予め図25に示すように設
定されたマップに基いて、算出した指数Qに応じたステ
ップモータ251,252に出力する制御信号のパルス
数偏差ΔNを求める。
【0161】ここで、上記マップでは、指数Qの絶対値
が大きくなるほどパルス数偏差ΔNも大きくなるように
設定されている。また、指数Qが正のとき(実トロイダ
ルレシオが目標トロイダルレシオよりも大きいとき)に
は、パルス数偏差ΔNを正として、パルス数Nを増加さ
せ、これにより実トロイダルレシオを小さくし、逆に、
指数Qが負のとき(実トロイダルレシオが目標トロイダ
ルレシオよりも小さいとき)には、パルス数偏差ΔNを
負として、パルス数Nを減少させ、これにより実トロイ
ダルレシオを大きくするように設定されている(図8参
照)。
【0162】そして、ステップS14〜S17におい
て、ステップモータ251、デューティソレノイドバル
ブ271,272、オノフソレノイドバルブ213、お
よびエンジン1の点火時期をそれぞれ制御することによ
り、前述したような時刻t1までの制御動作が得られ
る。
【0163】なお、ステップS18は、時刻t4以降に
おいて変速比のフィードバック制御が再開されたときの
み実行される。
【0164】・時刻t1〜時刻t2 ステップS5で実トロイダルレシオRtrがモード切換
判定レシオRtaに到達したと判定されたときには、ス
テップS5からステップS19に進む。この場合のステ
ップS1〜S5、S19〜S25、S14〜S18まで
の動作は時刻t1から時刻t2に至るまでの制御動作で
ある。
【0165】ステップS19では、実トロイダルレシオ
Rtrがモード切換判定レシオRtaに到達した直後に
限り、第1タイマーtim1をセットする。そして、ス
テップS20で、該タイマーtim1が第1所定期間T
aを過ぎたか否かを判定する。その結果、まだ第1所定
期間Taを過ぎていないとき、つまり時刻t2に至るま
では、ステップS21で、入力トルクTrの値を第2ト
ルク値Tr2とする。
【0166】また、ステップS22で、ステップモータ
251に対するパルス数偏差ΔNとしてゼロを代入す
る。これにより、変速比のフィードバック制御が一時中
断される。次いで、ステップS23,S24で、ハイク
ラッチ用デューティ率DHを所定の棚圧である第2デュ
ーティ率DH2とし、またロークラッチ用デューティ率
DLを0%である第2デューティ率DL2とする。さら
に、ステップS25で、オンオフソレノイドバルブ21
3に対する指示値をオンとする。
【0167】そして、ステップS14〜S17におい
て、ステップモータ251、デューティソレノイドバル
ブ271,272、オノフソレノイドバルブ213、お
よびエンジン1の点火時期をそれぞれ制御することによ
り、前述したような時刻t1から所定時間Taが経過す
る時刻t2までの制御動作が得られる。
【0168】・時刻t2〜時刻t3ステップS20で第
1タイマーtim1が第1所定期間Taを過ぎたと判定
されたときには、ステップS20からS26に進む。こ
の場合のステップS1〜S5、S19〜S20、S26
〜S33、S14〜S18までの動作は時刻t2から時
刻t3に至るまでの制御動作である。
【0169】ステップS26では、第1所定時間Taが
経過した直後に限り、上記第1、第2トルク値Tr1,
Tr2をそれぞれ前述の特性近似式f1,f2に代入
し、パルス数N1,N2、およびその偏差Δnを求め
る。次いで、ステップS27で、同じく第1所定時間T
aが経過した直後に限り、第2タイマーtim2をセッ
トする。
【0170】次いで、ステップS28で、第2タイマt
im2が第2所定時間Tbを過ぎたか否かを判定し、ま
だ過ぎていないとき、つまり時刻t2から時刻t3まで
の間は、ステップS29に進んで、この第2所定時間T
bの間に上記パルス数偏差Δnだけ三層弁220のスリ
ーブ222が移動するように、ステップモータ251へ
の出力信号のパルス数偏差ΔNを設定する。これによ
り、モード切換時におけるパルス数の補正が行なわれ
る。
【0171】次いで、ステップS30で、オンオフソレ
ノイドバルブ213に対する指示値をオンとし、またス
テップS31で点火時期Igを所定値ΔIgだけリター
ドしてトルクダウンを図る。
【0172】次いで、ステップS32で、ロークラッチ
デューティ率DLを第2デューティ率DL2とし、ま
た、ステップS33で、ハイクラッチデューティ率DH
として、上記第2所定時間Tbおよび所定時間Tdの間
に、該ハイクラッチデューティ率DHが上記第2デュー
ティ率DH2から第3デューティ率DH3まで変化する
ような値に設定する。ここで、この第3デューティ率D
H3の値は100%とされている。
【0173】そして、ステップS14〜S17におい
て、ステップモータ251、デューティソレノイドバル
ブ271,272、オノフソレノイドバルブ213、お
よびエンジン1の点火時期をそれぞれ制御することによ
り、前述したような時刻t2から所定時間Tbが経過す
る時刻t3までの制御動作が得られる。
【0174】・時刻t3〜所定時間Td経過時刻ステッ
プS28で第2タイマtim2が第2所定時間Tbを過
ぎたと判定されたときには、ステップS28からS34
に進む。この場合のステップS1〜S5、S19〜S2
0、S26〜S28、S34〜S36、S32〜S3
3、S14〜S18までの動作は時刻t3から所定時間
Tdが経過するまでの制御動作である。
【0175】ステップS34では、第2タイマーtim
2が上記第2所定時間Tbと所定時間Tdとの和以上に
大きいか否かが判定される。そして、NOのとき、つま
り時刻t3から所定時間Tdが経過するまでは、ステッ
プS35に進み、ここで、再びパルス数偏差ΔNがゼロ
とされる。これにより、変速比のフィードバック制御が
中断状態とされる。また、ステップS36でオンオフソ
レノイドバルブ213に対する指示信号としてOFFが
設定される。これにより、ロークラッチ圧ELがフェー
ルセーフバルブ212のドレインポート212bから排
出されて速やかに低下し始める。
【0176】そして、ステップS32およびS33を経
由したうえで、ステップS14〜S17において、ステ
ップモータ251、デューティソレノイドバルブ27
1,272、オノフソレノイドバルブ213、およびエ
ンジン1の点火時期をそれぞれ制御することにより、時
刻t3から所定時間Tdが経過するまでの制御動作が得
られる。
【0177】・所定時間Td経過時刻〜時刻t4 ステップS34で時刻t3から所定時間Tdが経過した
と判定されたときには、ステップS34からS37に進
む。この場合のステップS1〜S5、S19〜S20、
S26〜S28、S34、S37〜S45、S14〜S
18までの動作は所定時間Td経過時刻から時刻t4に
至るまでの制御動作である。
【0178】ステップS37では、前述の図20に示す
ような特性により、入力トルクTrに基いて、この経路
切換制御の終了判定用閾値としての所定油圧P2を設定
する。次のステップS38〜S40では、所定油圧P2
を学習補正する。すなわち、前回の変速比のフィードバ
ック制御の再開時の結果に基いて、換言すれば、前回の
切換制御終了時における実トロイダルレシオRtrの変
化状態に基いて、所定油圧P2を修正する。
【0179】ステップS38で、前回のレシオ変化αが
所定値αoより大きかったか否かを判定する。ここで、
所定値αoは、例えばほぼゼロに近い小さな値である。
そして、YESの場合は、ステップS39で、所定油圧
P2をΔP2だけ小さくする。一方、NOの場合は、ス
テップS40で、所定油圧P2をΔP2だけ大きくす
る。
【0180】つまり、経路切換終了の判定が早すぎて、
変速比のフィードバック制御が、経路の切換えの終了と
の関係において、早く再開されたときは、図16に鎖線
で示すように、ロークラッチ60が実際に解放状態とな
って経路が切り換わったときに、実トロイダルレシオR
trに大きな変動αが発生する。
【0181】したがって、このように変速比が急変した
ときは、変速比のフィードバック制御の再開のタイミン
グが早すぎたとして、ステップS39で、所定油圧P2
をより小さく補正することで、ロークラッチ60が確実
に解放状態になることを担保する。逆に、このような変
速比の急変がないときは、変速比のフィードバック制御
をなるべく早く再開して、空白期間のない、違和感のな
い変速制御とするために、ステップS40で、所定油圧
P2をより大きく補正することで、フィードバック制御
の再開タイミングを早くする。これを繰り返すことによ
り、最終的に、ショックのない滑らかな変速が実現する
適正なタイミングで変速比のフィードバック制御が再開
されることになる。
【0182】そして、ステップS41で、ロークラッチ
圧ELが所定油圧P2より低くなったか否かを判定し、
低くなるまでは、つまり時刻t4に至るまでは、ステッ
プS42で、ステップモータ251に対するパルス数偏
差ΔNとしてゼロを代入する。これにより、変速比のフ
ィードバック制御が引き続き中断状態とされる。
【0183】次いで、ステップS43で、ハイクラッチ
用デューティ率DHを100%である第3デューティ率
DH3とする。これにより、ハイクラッチ圧EHがライ
ン圧にまで高められ、ハイクラッチ70が完全締結状態
に移行する。
【0184】また、ロークラッチ用デューティ率DLを
0%である第2デューティ率DL2とする。次いで、ス
テップS45で、オンオフソレノイドバルブ213に対
する指示信号としてOFFが設定される。これにより、
ロークラッチ圧ELが引き続きフェールセーフバルブ2
12のドレインポート212bから排出されて速やかに
低下する。
【0185】そして、ステップS14〜S17におい
て、ステップモータ251、デューティソレノイドバル
ブ271,272、オノフソレノイドバルブ213、お
よびエンジン1の点火時期をそれぞれ制御することによ
り、所定時間Td経過時刻から時刻t4までの制御動作
が得られる。
【0186】・時刻t4以降 ステップS41でロークラッチ圧ELが所定油圧P2よ
り低くなったと判定されたときには、ステップS41か
らS46に進む。この場合のステップS1〜S5、S1
9〜S20、S26〜S28、S34、S37〜S4
1、S46〜S48、S11〜S18までの動作は時刻
t4以降の制御動作である。
【0187】この時刻t4以降の制御動作と、それまで
行なわれていた所定時間Td経過時刻〜時刻t4の制御
動作との違いは、パルス数偏差ΔNをゼロとせずに、ス
テップS11〜S13において、変速比のフィードバッ
ク制御のためのパルス数偏差ΔNを設定することであ
る。つまり、変速比のフィードバック制御が再開される
のである。その他、ステップS46〜S48は、前述の
ステップS43〜S45と同様である。すなわち、ハイ
クラッチデューティ率DHが100%の第3デューティ
率DH3に維持され、またロークラッチデューティ率D
Lが0%の第2デューティ率DL2に維持され、さらに
オンオフソレノイドバルブ213に対する指示信号がO
FFに維持される。
【0188】そして、ステップS14〜S17におい
て、ステップモータ251、デューティソレノイドバル
ブ271,272、オノフソレノイドバルブ213、お
よびエンジン1の点火時期をそれぞれ制御することによ
り、ハイクラッチ70が完全締結状態となり(EH=ラ
イン圧)、かつロークラッチ60が完全解放状態となっ
て(EL<P2)、モードが完全にハイモードに切り換
わった時刻t4以降の制御動作が得られる。そして、変
速比の通常のフィードバック制御が再開されて、走行状
態に応じた変速比制御が実行されることになる。
【0189】なお、このとき、ステップS18が実行さ
れる。すなわち、実トロイダルレシオRtrの変化αの
状態が検出される。そして、その結果が次回の所定油圧
P2の学習補正に用いられる。
【0190】(時刻t4を所定時間Tcで決定する場
合)次に、時刻t4を所定時間Tcで決定する場合の具
体的制御プログラムの一例を説明する。ただし、上記フ
ローチャートと相違する部分のみ説明し、同じ部分の説
明は省略する。
【0191】すなわち、図26に示すように、ステップ
S37’で、前述の図21に示すような特性により、ラ
イン圧や油温に基いて、この経路切換制御の終了判定用
閾値としての所定時間Tcを設定する。なお、ライン圧
はトルクに応じて設定されている。したがって、この所
定時間Tcの設定においても、トルクが考慮されている
ことになる。
【0192】次いで、ステップS38で、前回のレシオ
変化αが所定値αoより大きかったときは、ステップS
39’で、所定時間TcをΔTcだけ長くする。一方、
NOの場合は、ステップS40’で、所定時間TcをΔ
Tcだけ短くする。
【0193】つまり、実トロイダルレシオRtrが急変
したときは、変速比のフィードバック制御の再開のタイ
ミングが早すぎたとして、ステップS39’で、所定時
間Tcをより長く補正することで、ロークラッチ60が
確実に解放状態になることを担保する。逆に、このよう
な変速比の急変がないときは、変速比のフィードバック
制御をなるべく早く再開して、空白期間のない、違和感
のない変速制御とするために、ステップS40’で、所
定時間Tcをより短く補正することで、フィードバック
制御の再開タイミングを早くする。
【0194】そして、ステップS41’で、第2タイマ
ーtim2が第2所定時間Tbと上記所定時間Tcとの
和以上に大きくなったか否かを判定し、NOの場合は、
ステップS42以下に進んで、所定時間Td経過時刻〜
時刻t4の制御動作を実行し、YESの場合は、ステッ
プS46以下に進んで、時刻t4以降の制御動作を実行
する。
【0195】なお、この制御を行なう場合は、ロークラ
ッチ圧センサ310やハイクラッチ圧センサ311は不
要となる。
【0196】また、以上においては、第1所定時間Ta
を油温によって補正し、かつステップS19でこれを第
1タイマーtim1により計時するようにしたが、これ
に代えて、ローモードクラッチ60とハイモードクラッ
チ70の両方が締結状態になったか否かを判定するもの
として、締結側の摩擦締結要素(この場合はハイクラッ
チ70)の油圧EHが所定値P1以上に高くなった時刻
をt2としてもよい。
【0197】さらに、両クラッチ60,70の入力側回
転部材と出力側回転部材との間のスリップ量がともに所
定値以下となったときに、三層弁220のスリーブ22
2をパルス数偏差Δnだけ移動させるようにしてもよ
い。
【0198】[制御動作第2例]上記制御動作第1例で
は、モード切換制御の終了時刻t4を解放側クラッチ圧
ELまたは所定時間Tcで決定した。そのうち解放側ク
ラッチ圧ELで決定するときは、モード切換動作(クラ
ッチ60,70の掛替動作)の進捗状況を直接検出する
ことになるから判定精度に優れる。しかし該クラッチ圧
ELの検出手段(ロークラッチ圧センサ310)が必要
となる。これに対し、所定時間Tcで決定するときに
は、そのような油圧検出手段は必要ないが、上記クラッ
チ圧ELのようなモード切換動作に直接関連する物理量
を検出しないから判定精度にやや劣る傾向がある。そこ
で、この制御動作第2例では、ロークラッチ圧センサ3
10等の別段の機器類を新たに必要とせず、モードの切
換動作に直接関連する物理量、特に変速比をみて、安価
に、精度よく、モードの切換終了を判定しようとするも
のである。
【0199】〈動作概要〉図27のタイムチャートに示
すように、この制御動作第2例では、クラッチ60,7
0の掛替動作中に行なうパルス数Nの制御が第1例と異
なる。つまり、モードの切換終了時刻t4においてショ
ックのない滑らかな変速を実現させるためには、該時刻
t4に再開する変速比のフィードバック制御で達成され
る変速比Rtrを、それまでの時刻t1〜時刻t4にお
ける変速比のフィードバック制御の停止中に達成される
変速比Rtmに一致させるのが本来である。そして、そ
のために、上記第1例では、図11及び数1〜数4から
求めたパルス数N1,N2の偏差Δn(補正量)だけス
テップモータ251を制御した(時刻t2〜時刻t
3)。
【0200】これに対し、この第2例では、上記の最適
偏差(本来偏差)Δnよりも所定のずらし量nzだけ小
さい偏差(ずらし偏差)Δnj(=Δn−nz)だけス
テップモータ251を補正する(時刻t2〜時刻t
3′)。すなわち、モード切換動作(クラッチ60,7
0の掛替動作)の終了時刻t4において、変速比(実ト
ロイダルレシオ)Rtrが制御停止中の変速比(切換ポ
イントトロイダルレシオ)Rtmからずれるように、無
段変速機構20,30を操作するのである。
【0201】これにより、符号マで示すように、ローク
ラッチ60が実質的に解放状態に移行し、モードが実質
的に切り換わり、変速比のフィードバック制御が再び可
能な状態となる時刻t4において、変速比Rtrに減速
側へのずれ・変化が生じる。つまり変速比Rtrはモー
ドの切換動作に直接関連する物理量である。よってその
ような変速比Rtrの挙動を入出力回転数センサ30
7,308を介して検出することで、モードの切換終了
時刻t4を極めて精度よく正確に判定することができ
る。その結果、実質的な変速比のフィードバック制御を
早すぎたり遅すぎたりせず適正なタイミングで円滑に再
開することが可能となる。
【0202】その場合に、変速比(実トロイダルレシ
オ)Rtrはそもそも変速比のフィードバック制御にお
いてセンシングする基本的状態量の一つであって(図2
2のステップS1参照)、上記時刻t4の決定のためだ
けに新たにセンシングするようなものではない。よって
ロークラッチ圧センサ310等の別段の機器類を新たに
備える必要がなく、コストアップを招来しない。
【0203】〈判定の具体的手法〉モードの切換終了判
定(時刻t4の決定)は、単に、変速比Rtrがそれま
で固定していた切換ポイントトロイダルレシオRtmか
らずれた(変化した)ということだけで行なってもよ
い。変速比Rtrが減速側・増速側のどちらの方向に変
化したかは問題とならず、最も単純・容易な判定手法の
一つである。
【0204】あるいは、変速比Rtrがそれまで固定し
ていた切換ポイントトロイダルレシオRtmから所定量
以上ずれた(変化した)ときに、モードの切換終了判定
(時刻t4の決定)を行なうこともできる。例えば図2
7に示した例のように、変速比Rtrが減速側に変化す
る場合は、切換ポイントトロイダルレシオRtmから減
速側に所定量だけシフトした所定変速比Rtfを設定
し、実変速比Rtrがこの所定変速比Rtfよりも減速
側に変化したときにモードの切換終了を判定するのであ
る。これに準じて、変速比Rtrが増速側に変化する場
合は、所定変速比Rtfを切換ポイントトロイダルレシ
オRtmより増速側に設定する。変速比Rtrの増速側
への変化は、上記とは逆に、最適偏差(本来偏差)Δn
よりも所定のずらし量nzだけ大きい偏差(ずらし偏
差)Δnj(=Δn+nz)だけステップモータ251
を制御することにより実現する。
【0205】この手法においては、上記判定用レシオR
tfを切換レシオRtmから大きくシフトさせたときに
は終了判定がされ難くなり、逆に、上記判定用レシオR
tfを切換レシオRtmから小さくシフトさせたときに
は終了判定がされ易くなる。一方、ずらし量nzを小さ
くしたときにも終了判定がされ難くなり、逆に、ずらし
量nzを大きくしたときには終了判定がされ易くなる。
さらに、トルクが小さいときにも変速比Rtrの実際の
変化量が小さくなって終了判定がされ難くなり、逆に、
トルクが大きいときには変速比Rtrの実際の変化量が
大きくなって終了判定がされ易くなる。
【0206】このように、種々の要因によって終了判定
がされ易くなったりされ難くなったりするから、この手
法においては、状況に応じて上記判定用レシオRtfを
変更することにより、適正な判定基準を設けることが可
能となる。例えば、トルクが小さいときや、ずらし量n
zが小さいときには、判定用レシオRtfのシフト量を
小さくして、終了判定が確実に行なわれるようにする。
【0207】〈ずらし量とショックとの関係〉時刻t4
に変速比Rtrにずれ・変化が生じると、それに伴いシ
ョックが発生する。図28は、クラッチ60,70の掛
替動作中に行なうパルス数Nの補正量と加速度G(ショ
ック)との関係を示す特性図である。補正量が本来偏差
Δnのときは、加速度Gはほとんど生じない。変速比R
trが実際にほとんど変化しないからである。一方、本
来偏差Δnからのずらし量nzが、正の方向(増速側)
にも、または負の方向(減速側)にも大きくなるに従っ
て加速度Gが大きくなる。変速比Rtrが実際に大きく
変化するからである。また、同じずらし量nzであって
も、トルク(スロットル開度や吸入空気量で代表され
る)が大きくなるに従ってやはり加速度Gが大きくな
る。無段変速機構20,30に作用する応力が大きくな
って変速比Rtrのずれ・変化が大きくなるからであ
る。
【0208】ここで、所定の加速度Go以上において乗
員はショックを感じる。すなわち有感領域である(G≧
Go)。したがって、このショック有感領域に属しない
範囲内(G<Go)で、できるだけ大きく変速比Rtr
が変化するように、ずらし量nzを正の場合も負の場合
も大きく設定することが好ましい。ショックの回避と判
定精度の向上との両立が図られる。例えば、トルクが小
さいときほど、変速比Rtrが判定に十分な程度に実際
にずれるように、ずらし量nzを大きくする。逆に、ト
ルクが大きいときほど、ショックGが有感領域に入らな
いように、ずらし量nzを小さくする。
【0209】〈フローチャート〉以上の制御動作第2例
を実現する具体的プログラムの一例を図29〜図30の
フローチャートを参照して説明する。ただし、第1例と
相違する部分のみ説明し、同じ部分の説明は省略する。
【0210】すなわち、ステップS20で第1タイマー
tim1が第1所定時間Taを過ぎたと判定されたとき
は、ステップS26aにおいて、本来偏差Δnとずらし
量nzとからずらし偏差Δnjを求める(Δnj=Δn
−nz)。これにより、時刻t2〜時刻t3′におい
て、ステップモータ251が本来偏差Δnでなくずらし
偏差Δnjだけ補正される。つまり、終了時刻t4にお
いて変速比Rtrが切換変速比Rtmからずれるように
無段変速機構20,30を操作する。
【0211】なお、このとき、ずらし量nzは、図28
に示したように、ショック有感領域に入らない範囲内で
(G<Go)、トルク(第2入力トルクTr2)に応じ
て、可及的に大きな量に設定する。
【0212】そして、ステップS34で時刻t3から所
定時間Tdが経過したと判定されたときには、ステップ
S37aで、入力トルク(第2入力トルクTr2)に基
いて、上記判定用レシオRtfを設定する。そして、ス
テップS41aで、実レシオRtrがこの判定用レシオ
Rtf以上に大きくなるまで減速側に変化したか否かを
判定し、YESのときに時刻t4を検出して変速比のフ
ィードバック制御を再開する。
【0213】なお、このとき、判定用レシオRtfは、
図31に示したように、トルクが小さいときほど小さな
変速比(増速側の変速比、あるいは切換レシオRtmか
らのシフト量の少ない変速比)に設定する。これによ
り、前述したように、終了判定がされ難い状況下でも終
了判定が確実に行なわれることになる。
【0214】[他の変速形態] 〈有段マニュアルシフト−その1〉本実施の形態に係る
パワートレイン10を用いて他の変速形態を実現するこ
とができる。運転者の希望により変速モードを上記のよ
うな本来の自動無段変速と他の変速形態との間で適宜切
り換えることのできる汎用性に富むパワートレインが得
られる。
【0215】例えば、図32に示すように、本実施の形
態に係るパワートレイン10を手動の有段変速(図例で
は前進7段)に用いることができる。このとき、モード
切換ラインMの変速比(モード切換ポイントユニットレ
シオRum)を所定の一つのギヤ段(図例では第3段)
の変速比とする。こうすることにより、ロー、ハイの切
換えに時間が要することが不具合として顕在化しない。
【0216】つまり、例えば、鎖線で示すように、2速
と3速とをモード切換ラインMを挟んで設定した場合
は、2−3変速および3−2変速がモード(動力伝達経
路)の切換えを伴うことになって応答性に劣る。これに
対し、モード切換ラインMを一つの変速段位とした場合
は、モードの切換動作が隠蔽されて、特に応答性を重視
するマニュアル変速にとって好ましい結果が得られる。
【0217】〈有段マニュアルシフト−その2〉図33
は、モード切換ラインMを第1速とし、これを境とし
て、ハイモードでは手動の有段変速(図例では前進5
段)を行い、ローモードでは自動の無段変速を行なう場
合を示す。マニュアル変速領域においてモード切換ライ
ンMを跨ぐことがなく、これによっても応答性が確保さ
れる。
【0218】また、自動変速領域においては滑らかなク
リープ力が得られ、トルクコンバータを搭載したパワー
トレインのごときドライブフィーリングが得られる。
【0219】〈自動有段変速〉図34は、本実施の形態
に係るパワートレイン10を自動の有段変速(図例では
前進5段)に用いた場合を例示する。上記と同じく、モ
ード切換ラインMを一つの変速段位としている(図例で
は2速)。また、1速以下の変速域を自動無段変速域と
している。
【0220】全運転領域において、トルクコンバータを
搭載した自動有段変速機のごときドライブフィーリング
が得られる。
【0221】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、モード
の切換動作の終了を精度よく判定することができるか
ら、いったん中断した変速制御を良好なタイミングで再
開することができる。したがって、変速制御の再開時に
変速比が急変してショックが発生したり、空白時間が生
じて違和感が発生することがなくなり、ショックのない
滑らかな変速という無段変速式の変速機を搭載したパワ
ートレインの特徴を損なうことがない。また、本発明に
よれば、その場合に、別段の新たな機器を用いず、既存
の一般的な機器を使って、モードの切換動作に直接関連
する物理量(変速比)に基いてモードの切換え終了判定
をするから、コストアップを招かず、安価に、精度よく
判定できる。本発明は、トロイダル式やベルト式等の無
段変速機を備えたパワートレイン一般に広く好ましく適
用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るトロイダル式無段
変速機を備えたパワートレインの機械的構成を示す骨子
図である。
【図2】 上記変速機の要部の具体的構造を展開状態で
示す平面図である。
【図3】 図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】 上記変速機の油圧制御の回路図である。
【図5】 図3のB方向からみた変速制御用三層弁の周
辺の部分断面図である。
【図6】 図3のC方向からみた変速制御機構周辺の部
分断面図である。
【図7】 上記パワートレイン全体の制御システムを示
すブロック図である。
【図8】 ステップモータのパルス数とトロイダルレシ
オとの関係を示す特性図である。
【図9】 ステップモーターのパルス数とユニットレシ
オとの関係を示す特性図である。
【図10】 循環トルクの説明図である。
【図11】 ステップモータのパルス数とトルクとの関
係を示す特性図である。
【図12】 ユニットレシオとトロイダルレシオとの関
係を示す特性図である。
【図13】 前進ローモードで用いられる変速線図であ
る。
【図14】 前進ハイモードで用いられる変速線図であ
る。
【図15】 後退ローモードで用いられる変速線図であ
る。
【図16】 正駆動状態でローモードからハイモードへ
の切換制御動作のタイムチャートである。
【図17】 同制御で用いられるトルクとモード切換開
始判定用トロイダルレシオとの関係を示すマップであ
る。
【図18】 同制御で用いられる油温と第1所定時間と
の関係を示すマップである。
【図19】 同制御で用いられるトルクとリタード量と
の関係を示すマップである。
【図20】 同制御で用いられるトルクとモード切換終
了判定用ロークラッチ圧との関係を示すマップである。
【図21】 同じくライン圧および油温とモード切換終
了判定用経過時間との関係を示すマップである。
【図22】 同制御の具体的動作の一例を示すフローチ
ャートである。
【図23】 同じくフローチャートである。
【図24】 同じくフローチャートである。
【図25】 同制御動作で用いられる指数と、ステップ
モータへ出力する制御信号のパルス数との関係を示すマ
ップである。
【図26】 同制御の具体的動作の別の例を示すフロー
チャートである。
【図27】 同制御の具体的動作のさらに別の例を示す
タイムチャートである。
【図28】 同制御で用いられるパルス数の補正量と加
速度(ショック)との関係を示す特性図である。
【図29】 同制御の具体的動作の一例を示すフローチ
ャートである。
【図30】 同じくフローチャートである。
【図31】 同制御で用いられる入力トルクと終了判定
用レシオとの関係を示すマップである。
【図32】 上記パワートレインを用いて有段マニュア
ルシフトを実現する場合の変速線図である。
【図33】 別の形態の有段マニュアルシフトを実現す
る場合の変速線図である。
【図34】 自動有段変速を実現する場合の変速線図で
ある。
【符号の説明】
1 エンジン 10 パワートレイン 20,30 無段変速機構 50 遊星歯車機構(歯車機構) 60 ロークラッチ(摩擦締結要素) 70 ハイクラッチ(摩擦締結要素) 200 油圧制御回路 220,230 変速制御用三層弁 251,252 ステップモータ 271 ロークラッチ用デューティソレノイド
バルブ 272 ハイクラッチ用デューティソレノイド
バルブ 300 コントロールユニット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J552 MA02 MA09 MA30 NA01 PA02 QA26C QB04 QB07 SA07 SA45 TA01 VA32Z VA34Z VA37Z VA42Y VA48Z VA53Z VA62Z VA70Z VB01Z VC01Z VC03Z VD05Z

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無段変速機構と歯車機構とを経由する経
    路を動力伝達状態とする摩擦締結要素と、無段変速機構
    のみを経由する経路を動力伝達状態とする摩擦締結要素
    とを有する変速機を備え、車両の走行状態に応じて設定
    される上記変速機の目標変速比が実現するように上記経
    路の選択と上記無段変速機構の変速比の制御とを行なう
    変速制御手段が設けられたパワートレインの制御装置で
    あって、経路の切換えを伴う目標変速比が設定されたと
    きは、その経路の切換動作中、変速制御手段による変速
    比の制御を中断させる中断手段と、その経路の切換動作
    において解放される摩擦締結要素の状態に基いて経路の
    切換えの終了を判定する判定手段と、該判定手段により
    経路の切換えの終了が判定されたときは、変速制御手段
    による変速比の制御を再開させる再開手段とが設けられ
    ていることを特徴とするパワートレインの制御装置。
  2. 【請求項2】 判定手段は、解放される摩擦締結要素に
    供給される作動圧が所定値よりも低くなったときに、経
    路の切換えの終了を判定することを特徴とする請求項1
    に記載のパワートレインの制御装置。
  3. 【請求項3】 変速比の制御の再開後における無段変速
    機構の変速比の変化の状態に基いて判定用所定値を補正
    する補正手段が備えられていることを特徴とする請求項
    2に記載のパワートレインの制御装置。
  4. 【請求項4】 判定手段は、解放される摩擦締結要素の
    解放動作が開始してから、作動油の温度または圧力の少
    なくとも一方に応じて設定される所定時間が経過したと
    きに、経路の切換えの終了を判定することを特徴とする
    請求項1に記載のパワートレインの制御装置。
  5. 【請求項5】 変速比の制御の再開後における無段変速
    機構の変速比の変化の状態に基いて判定用所定時間を補
    正する補正手段が備えられていることを特徴とする請求
    項4に記載のパワートレインの制御装置。
  6. 【請求項6】 無段変速機構と歯車機構とを経由する経
    路を動力伝達状態とする摩擦締結要素と、無段変速機構
    のみを経由する経路を動力伝達状態とする摩擦締結要素
    とを有する変速機を備え、車両の走行状態に応じて設定
    される上記変速機の目標変速比が実現するように上記経
    路の選択と上記無段変速機構の変速比の制御とを行なう
    変速制御手段が設けられたパワートレインの制御装置で
    あって、経路の切換えを伴う目標変速比が設定されたと
    きは、その経路の切換動作中、変速制御手段による変速
    比の制御を中断させる中断手段と、その経路の切換動作
    が終了したときに変速比が上記制御の中断中の変速比か
    らずれるように無段変速機構を操作する変速比ずらし手
    段と、その結果生じる変速比の挙動に基いて経路の切換
    えの終了を判定する判定手段と、該判定手段により経路
    の切換えの終了が判定されたときは、変速制御手段によ
    る変速比の制御を再開させる再開手段とが設けられてい
    ることを特徴とするパワートレインの制御装置。
  7. 【請求項7】 判定手段は、変速比が制御中断中の変速
    比からずれたときに、経路の切換えの終了を判定するこ
    とを特徴とする請求項6に記載のパワートレインの制御
    装置。
  8. 【請求項8】 判定手段は、変速比が制御中断中の変速
    比から所定量以上ずれたときに、経路の切換えの終了を
    判定することを特徴とする請求項6に記載のパワートレ
    インの制御装置。
  9. 【請求項9】 変速比ずらし手段は、トルクが小さいほ
    ど変速比が大きくずれるように無段変速機構を操作する
    ことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のパ
    ワートレインの制御装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010203502A (ja) * 2009-03-02 2010-09-16 Nissan Motor Co Ltd 自動変速機の制御装置
WO2014038134A1 (ja) * 2012-09-10 2014-03-13 日産自動車株式会社 車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法

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