JP2002079076A - 半導体超微粒子の製造方法及び製造装置 - Google Patents

半導体超微粒子の製造方法及び製造装置

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JP2002079076A JP2001154766A JP2001154766A JP2002079076A JP 2002079076 A JP2002079076 A JP 2002079076A JP 2001154766 A JP2001154766 A JP 2001154766A JP 2001154766 A JP2001154766 A JP 2001154766A JP 2002079076 A JP2002079076 A JP 2002079076A
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Soichiro Saida
壮一郎 齊田
Manabu Kawa
学 加和
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粒径分布が狭く且つ吸発光特性の優れた半導
体超微粒子を生産性良く製造する方法を提供する。 【解決手段】 電気陰性度が2.0以下である陽性元素
を含有する第1物質と下記一般式(1)で表されるカル
コゲン化合物類である第2物質とを半導体原料とし両者
を管状流通反応器内部の液相中で接触させてカルコゲン
化物半導体結晶を生成させ、かつ両者の接触時点の該液
相のレイノルズ数が1以上であることを特徴とする半導
体超微粒子の製造方法。 M12E (1) (但し、一般式(1)においてM1及びM2は周期表第1
族元素又はオニウム残基を表し、Eは周期表第16族元
素を表し、M1及びM2は互いに異なっていてもよい。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体超微粒子の製
造法に関する。詳しくは、アルコール類のような安全か
つ安価な溶媒を反応溶媒として使用し、半導体原料を管
状流通反応器に連続的に供給することで半導体超微粒子
を工業的に有利に製造する方法である。本発明の製造方
法により得られる半導体超微粒子は、粒径分布が狭いた
め、ディスプレイや発光ダイオード等の光学部材の原料
として好適に利用される。また、吸発光帯の波長半値幅
が狭いという特徴を有するので、蛍光免疫分析や細胞マ
ーカー等、発光性の生物学的分析試薬としても利用可能
である。更に、着色した半導体超微粒子は顔料等の色材
としても利用可能である。
【0002】
【従来の技術】半導体材料はその材料特有の吸発光能を
持っており、既に発光体材料として広く使用されてい
る。粒径が1〜30nm程度の半導体超微粒子は量子効
果によりバルクとは異なる性質を示すことが知られてい
る。例えば、半導体結晶のエキシトン準位への電子励起
に起因する光吸収(エキシトン吸収)及び該準位からの
発光(エキシトン発光)は、該粒径の関数としてその吸
発光帯波長を精密に制御可能である点が有用である。し
かも該粒径分布を狭くすることでエキシトン吸発光帯の
波長半値幅が小さくなる、つまり吸発光の色純度やエネ
ルギー分布の特定波長領域への集中性が向上するという
特徴がある。かかる性質を有する超微粒子は、コロイド
粒子、ナノ結晶(Nanocrystal)、ナノ粒子
(Nanoparticle)、或いは量子ドット(Q
uantum dot)等とも呼称される場合がある。
【0003】従来、半導体超微粒子は例えば下記の方法
で製造されてきた。 (a)分子ビームエピタキシー法あるいはCVD法等の
高真空プロセス。この方法により組成が高度に制御され
た高純度の半導体超微粒子が得られるが、原理的に基板
上に堆積し固着したものであり分散性(即ち溶媒や合成
樹脂等の媒質への分散可能性)が極端に悪いものであっ
た。しかもホスフィンやアルシン等の有毒気体を原料と
する場合があり、且つ高価な製造装置を要するので生産
性の点で産業上の利用に制限があった。 (b)半導体原料を高温の液相有機媒体に注入して熱分
解させて各種溶媒への優れた分散性を有する半導体結晶
を成長させる方法(以下、ホットソープ法と呼ぶ)。例
えばC.B.Murrayら;J.Am.Chem.S
oc.,115巻8706−8715(1993)に報
告されている方法である。この方法には、粒径分布が極
めて狭く結晶性が良く発光能に優れた半導体超微粒子が
得られる特徴がある。 (c)化合物半導体を構成する少なくとも2種の原料水
溶液を疎水性有機溶媒中の逆ミセルとして存在させ該逆
ミセル同士の衝突に伴う物質移動を利用して該逆ミセル
相中にて比較的粒径分布が狭く各種溶媒への優れた分散
性を有する半導体結晶を成長させる方法(以下、逆ミセ
ル法と呼ぶ)。例えばB.S.Zouら;Int.J.
Quant.Chem.,72巻、439−450(1
999)に報告されている方法である。汎用的な反応釜
において公知の逆ミセル安定化技術が利用でき、しかも
水の関与した反応であり、比較的低温で行われるため簡
便な方法である。 (d)金属アルコキシド類や酢酸塩等の金属塩類を、水
や硫化水素等の水素化カルコゲニド類やその金属塩(例
えばアルカリ金属水酸化物やアルカリ金属硫化物等)と
溶液反応させ、各種溶媒への優れた分散性を有する金属
酸化物や金属硫化物の結晶を生成させる方法(以下、ゾ
ル−ゲル法と呼ぶ)。例えば酸化亜鉛ナノ結晶を製造す
る場合に酢酸亜鉛と水酸化リチウムとをエタノール中で
反応させる方法がL.Spanhelら;J.Am.C
hem.Soc.,113巻,2826頁(1991)
において知られている。かかるゾル−ゲル法の特徴は、
安価で取り扱いの容易な金属原料を用いて比較的簡便に
ナノ結晶を合成可能であることにある。
【0004】従って、前記(b)、(c)、(d)の液
相製造法は前記(a)の高真空プロセスに比べて各種溶
媒への優れた分散性を有する製品を与えしかも工業的生
産に適した方法であると考えられるが、従来いずれも主
にバッチ(回分)式反応器を使用した比較的小規模の反
応スケールでのみ検討されてきた。粒径分布の狭い半導
体結晶超微粒子(ナノ結晶)を前記ゾル−ゲル法で得る
反応は、生成する半導体結晶が反応溶媒に実質的に不溶
であるため高度に速度論支配の反応である。従って、液
相反応系全体として可及的均一にむらなく反応を行わせ
るために、半導体原料を液相に注入した時点から可及的
短時間で該原料を反応系全体に均一分散することが好ま
しい。かかる均一分散が十分に行われないと、製品の粒
径分布が大きくなるので前記エキシトン吸発光帯の波長
半値幅も大きくなるという好ましくない結果を与える。
バッチ式反応器における反応のスケールアップにより高
速製造を図ると、反応液相が大容積になればなるほど攪
拌効率が低下するので前記の可及的短時間での均一分散
が困難になるというバッチ式反応器に共通な制約が致命
的に製品の粒径分布を大きくする原因となるという問題
があり、かかる問題点を克服する高速製造方法が求めら
れていた。
【0005】超微粒子の製造方法として、米国特許56
52192号(1997年)公報には、原料溶液を流通
反応器に連続的に供給し、次いでこれを加圧と加熱を施
す反応ゾーンに移送せしめる結果起こる化学反応により
超微粒子の核生成と粒子成長を進行させる方法が開示さ
れている。この発明は、触媒能を有する遷移金属酸化物
を、水を流通溶媒とした水熱合成法の提供を趣旨とし、
実施例にはSUS316鋼製の管状反応器を用いた水熱
合成の例が開示されている。しかし、この発明の教示す
る手順を前記逆ミセル法による半導体超微粒子の製造に
この方法を適用しようとすると、半導体原料注入時の攪
拌効率が不十分であるため製品の粒径分布が広がる点、
前記の加圧と加熱を施す反応ゾーンを通過するため急激
な核発生や結晶成長により粒径分布の制御性が極端に悪
化する場合がある点、及び該加熱のためエタノール等の
水よりも低沸点の好ましい溶媒の使用に制限が生じる点
に問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上前記実情に
鑑みてなされたものであり、粒径分布が狭い半導体超微
粒子を前記ゾル−ゲル法により連続的かつ高速に、特に
アルコール類のように安全かつ安価な溶媒を使用して製
造する工業的に有利な方法とこれに用いられる製造装置
を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記目的を
達成するため鋭意検討を重ねた結果、管状流通反応器を
用いて半導体超微粒子を前記ゾル−ゲル法により製造す
る際の各種条件、特に、半導体原料が液相に注入される
際の攪拌効率を確保することにより粒径分布の狭い半導
体超微粒子を連続的かつ高速に製造できることを見いだ
し本発明に到達した。
【0008】即ち、本発明の第1の要旨は、電気陰性度
が2.0以下である陽性元素を含有する第1物質と下記
一般式(1)で表されるカルコゲン化合物類である第2
物質とを半導体原料とし両者を管状流通反応器内部の液
相中で接触させてカルコゲン化物半導体結晶を生成さ
せ、かつ両者の接触時点の該液相のレイノルズ数が1以
上であることを特徴とする半導体超微粒子の製造方法、
に存する。 M12E (1) 但し、一般式(1)においてM1及びM2は周期表第1族
元素又はオニウム残基を表し、Eは周期表第16族元素
を表し、M1及びM2は互いに異なっていてもよい。
【0009】本発明の第2の要旨は、液体の注入に定常
流ポンプを使用する前記製造方法に使用される管状流通
反応器、に存する。本発明の第3の要旨は、前記製造方
法で得る製品液を透析して脱塩することを特徴とする半
導体超微粒子の精製方法、に存する。
【0010】
【発明実施の形態】以下、本発明につき詳細に説明す
る。 [カルコゲン化物半導体結晶]本発明におけるカルコゲ
ン化物半導体結晶とは、電気陰性度が2.0以下である
陽性元素とカルコゲン元素(周期表第16族元素)とを
必須構成元素とする半導体結晶であり、複数種の陽性元
素及び/又はカルコゲン元素が1つの半導体結晶中に含
有されていてもよい。使用されるカルコゲン元素として
は、酸素、硫黄、セレン、及びテルルが重要であり、特
に酸素及び/又は硫黄を含有するカルコゲン化物半導体
結晶を主体とする半導体超微粒子は、本発明の製造方法
により極めて有利に製造される。これは、本発明の製造
方法に使用可能な酸素原子又は硫黄原子を化学構造中に
含有する半導体原料が安価かつ安定に入手可能であるこ
とが一因である。
【0011】なお、本発明における電気陰性度は、例え
ば理化学辞典,第5判,912頁(岩波書店;1998
年)に記載の表のように、ポーリングの定義による数値
である。前記の陽性元素としては、マグネシウム、チタ
ン、バナジウム、タンタル、クロム、モリブデン、タン
グステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜
鉛、カドミウム、水銀、ホウ素、アルミニウム、ガリウ
ム、インジウム、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、
ビスマス等が例示される。
【0012】本発明におけるカルコゲン化物半導体結晶
の例を組成式で表すと、SnO2、Sn(II)Sn(IV)
3、SnS2、SnS、SnSe、SnTe、PbS、
PbSe、PbTe等の周期表第14族元素と周期表第
16族元素との化合物、Al23、Al2Se3、Ga2
3、Ga2Se3、Ga2Te3、In23、In23
In2Se3、In2Te3等の周期表第13族元素と周期
表第16族元素との化合物、ZnO、ZnS、ZnS
e、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、
HgS、HgSe、HgTe等の周期表第12族元素と
周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合
物半導体)、As23、As2Se3、As2Te3、Sb
23、Sb2Se3、Sb2Te3、Bi23、Bi2
3、Bi2Te 3等の周期表第15族元素と周期表第1
6族元素との化合物、Cu2O、Cu2Se等の周期表第
11族元素と周期表第16族元素との化合物、NiO等
の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合
物、CoO、CoS等の周期表第9族元素と周期表第1
6族元素との化合物、Fe34等の酸化鉄類やFeS等
の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、
MnO等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との
化合物、MoS2、WO2等の周期表第6族元素と周期表
第16族元素との化合物、VO、VO2、Ta25等の
周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、T
iO2、Ti25、Ti23、Ti59等の酸化チタン
類(結晶型はルチル型、ルチル/アナターゼの混晶型、
アナターゼ型のいずれでも構わない)やZrO2等の周
期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、Mg
S、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元
素との化合物、CdCr24、CdCr2Se4、CuC
24、HgCr2Se4等のカルコゲンスピネル類、あ
るいはBaTiO3等が挙げられる。
【0013】これらのうち実用的に重要なものは、例え
ばSnO2、SnS2、SnS、SnSe、SnTe、P
bS、PbSe、PbTe等の周期表第14族元素と周
期表第16族元素との化合物、Ga23、Ga23、G
2Se3、Ga2Te3、In 23、In23、In2
3、In2Te3等の周期表第13族元素と周期表第1
6族元素との化合物、ZnO、ZnS、ZnSe、Zn
Te、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、
HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合物半導
体、As23、As23、As2Se3、As2Te3、S
23、Sb23、Sb2Se3、Sb2Te3、Bi
23、Bi23、Bi2Se3、Bi2Te3等の周期表第
15族元素と周期表第16族元素との化合物、Fe34
等の酸化鉄類やFeS等の周期表第8族元素と周期表第
16族元素との化合物、前記の酸化チタン類やZrO2
等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合
物、MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第
16族元素との化合物である。
【0014】これらの中でも、SnO2、In23、G
23、Ga23、In23、In23、ZnO、Zn
S、CdO、CdS、前記の酸化チタン類やZrO2
MgS等は高い屈折率を有ししかも毒性の高い陰性元素
を含まないので耐環境汚染性や生物への安全性の点で好
ましく、この観点ではSnO2、In23、ZnO、Z
nS、前記の酸化チタン類やZrO2等の毒性の高い陽
性元素を含まない組成は更に好ましく、中でもZnO、
あるいは前記の酸化チタン類(高屈折率性のためにはル
チル型結晶が特に好ましい)やZrO2等の酸化物半導
体結晶は最も好ましい。なお、ルチル型酸化チタン結晶
粒子の長波長側吸収端はバルク状態では通常400nm
付近であるが、該結晶粒子の数平均粒径を本発明の範囲
である0.5〜30nm程度とすることで該長波長側吸
収端波長をより短波長にずらすことが可能となり、可視
領域での無色性を向上させる長所が生じる場合がある。
また、酸化鉄類等、可視領域に吸収能のある着色した半
導体結晶は、顔料等の色材用途に重要である。
【0015】実用的に重要な可視領域とその近傍に発光
帯を有するZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、Cd
O、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS等の
II−VI族化合物半導体、In23、In23等が重要で
あり、中でも半導体結晶の粒径の制御性と発光能から好
適なのはZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、Cd
O、CdS、CdSe等のII−VI族化合物半導体であ
り、特にZnSe、CdS、CdSe等がこの目的では
更に好適に用いられる。
【0016】前記で例示した任意のカルコゲン化物半導
体結晶の組成には、必要に応じて微量のドープ物質(故
意に添加する不純物の意味)として例えばAl、Mn、
Cu、Zn、Ag、Cl、Ce、Eu、Tb、Er等の
元素を加えても構わない。 [コアシェル型半導体結晶]前記カルコゲン化物半導体
結晶は、例えばA.R.Kortanら;J.Am.C
hem.Soc.,112巻,1327頁(1990)
あるいは米国特許5985173号公報(1999)に
報告されているように、その半導体結晶の電子励起特性
を改良する目的で内核(コア)と外殻(シェル)からな
るいわゆるコアシェル構造とすると、該コアを成すカル
コゲン化物半導体結晶の量子効果の安定性が改良される
場合があるので、エキシトン吸発光帯を利用する用途に
好適な場合がある。この場合、シェルの半導体結晶の組
成として、禁制帯幅(バンドギャップ)がコアよりも大
きなものを起用することによりエネルギー的な障壁を形
成せしめることが一般に有効である。これは、外界の影
響や結晶表面での結晶格子欠陥等の理由による望ましく
ない表面準位等の影響を抑制する機構によるものと推測
される。
【0017】かかるシェルに好適に用いられる半導体結
晶の組成としては、コア半導体結晶のバンドギャップに
もよるが、バルク状態のバンドギャップが温度300K
において2.0電子ボルト以上であるもの、例えばB
N、BAs、GaNやGaP等のIII−V族化合物半導
体、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、C
dS等のII−VI族化合物半導体、MgSやMgSe等の
周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等が
好適に用いられる。これらのうちより好ましいシェルと
なる半導体結晶組成は、BN、BAs、GaN等のIII
−V族化合物半導体、ZnO、ZnS、ZnSe、Cd
S等のII−VI族化合物半導体、MgS、MgSe等の周
期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等のバ
ルク状態のバンドギャップが温度300Kにおいて2.
3電子ボルト以上のものであり、最も好ましいのはB
N、BAs、GaN、ZnO、ZnS、ZnSe、Mg
S、MgSe等のバルク状態のバンドギャップが温度3
00Kにおいて2.5電子ボルト以上のものであり、化
学合成上ZnSは最も好適に使用される。
【0018】本発明の半導体結晶本体に用いられる特に
好適なコア−シェル組成の組み合わせ例を組成式で表現
すると、CdSe−ZnS、CdSe−ZnO、CdS
e−CdS、CdS−ZnS、CdS−ZnO等が挙げ
られる。 [半導体超微粒子]本発明の製造方法により得られる半
導体超微粒子は、前記カルコゲン化物半導体結晶を主体
とし、該半導体結晶の粒径が数nm〜数10nm程度の
大きさを有するものである。該半導体結晶は、前記コア
シェル型等の複数組成が分布した半導体結晶であっても
よい。ここで言う半導体超微粒子の主体とは、後述する
超微粒子表面の有機成分を除いた中心部分を意味する。
【0019】また、製造に用いられる液相媒質の構成成
分、配位子、界面活性剤等の有機分子あるいはこれらが
何らかの化学変化を受けて生成する有機構造等の有機成
分をその表面及び表面近傍に保持していても構わない。
かかる粒子表面及び表面近傍に保持される有機成分と半
導体組成との結合様式に制限はないが、例えば配位結
合、共有結合、イオン結合等の比較的強い化学結合、あ
るいはファンデアワールス力、水素結合、疎水−疎水相
互作用、分子鎖の絡み合い効果等の比較的弱い可逆的な
引力相互作用等が例示される。
【0020】該有機成分の含量は、生成する半導体超微
粒子の表面積(即ち粒径にも関連)にもよるが、後述す
る単離精製工程を経て十分に精製された状態で、半導体
超微粒子中、通常1〜90重量%、半導体超微粒子の分
散性や化学的安定性の点で好ましくは5〜80重量%、
更に好ましくは10〜70重量%、最も好ましくは15
〜60重量%程度である。該有機成分含量は、例えば各
種元素分析や熱重量分析等により測定される。また、該
有機成分の化学種や化学的環境についての情報を赤外吸
収スペクトル(IR)や核磁気共鳴(NMR)、あるい
はXAFS(X−ray absorption fi
ne structure)等スペクトルから得られ
る。
【0021】本発明の製造方法により得られる半導体超
微粒子の粒径に制限はないが、透過型電子顕微鏡(TE
M)で観察される数平均粒径として、通常1〜20n
m、量子効果による吸発光能制御の顕著な発現とその制
御性の点で好ましくは1.5〜15nm、更に好ましく
は2〜12nm、最も好ましくは2.5〜10nm程度
となる。本発明の製造方法で得られる半導体超微粒子
は、前記のようにその表層として有機成分を含有する場
合があるが、TEMで観察される粒子像はかかる有機成
分を含まない部分、即ち比較的原子番号の高い元素を含
む半導体組成の部分に由来するものと考えられる。電子
顕微鏡で観察困難な原子番号の小さい元素で構成される
半導体超微粒子の場合には、おおよその粒径は原子間力
顕微鏡(AFM)又は高分解能走査型電子顕微鏡(SE
M)等により見積もることができる。
【0022】前記数平均粒径の決定に当たり使用する各
粒子の粒径は、与えられたTEM観察により得られる半
導体結晶粒子像と同面積の円の直径を該粒子像の粒径と
定義し、例えば公知の画像データの統計処理手法により
前記数平均粒径を算出するが、かかる統計処理に使用す
る観察像の数(統計処理データ数)は可及的多いことが
当然望ましく、本発明においては、再現性の点で無作為
に選ばれた該観察像の個数として最低でも50個以上、
好ましくは80個以上、更に好ましくは100個以上と
する。
【0023】半導体超微粒子のエキシトン吸発光帯の波
長は前記数平均粒径の関数でありこれが前記範囲外の場
合には実用的に重要な吸発光波長が得られないだけでな
く、反応後の単離精製に支障を来す場合がある。なお、
半導体結晶構造の生成は、前記のTEM観察における半
導体結晶格子像の観察の他、超微粒子の粉末X線回折、
元素分析、あるいはXAFSによる元素分析と原子間距
離測定等の分析手段で確認可能である。
【0024】[半導体超微粒子の粒径分布]本発明の製
造方法により得られる半導体超微粒子の粒径分布に制限
はないが、例えば、半導体結晶の量子効果により制御さ
れる前記エキシトン吸発光帯の特性を利用する場合、該
粒径分布を変えることで必要とする吸発光帯の波長幅を
変化させることが可能であり、用途にもよるが該波長幅
を狭くすることが好ましい場合が多い。
【0025】本発明の製造方法により得られる半導体超
微粒子の主体である半導体結晶の粒径分布は、通常、前
記数平均粒径に対する標準偏差として±40%以内、好
ましくは±30%以内、更に好ましくは±20%以内、
最も好ましくは±10%以内とする。この標準偏差の範
囲を超えた粒子直径分布の場合、量子効果によりエキシ
トン吸発光帯の波長幅を狭くする目的を十分に達成する
ことが困難となる。
【0026】[製造工程]本発明の半導体超微粒子の製
造方法は、前記陽性元素を含有する第1物質と後述する
カルコゲン化合物類である第2物質とを半導体原料とし
両者を管状流通反応器内部の液相中で接触させてカルコ
ゲン化物半導体結晶を生成させ、かつ両者の接触時点の
該液相のレイノルズ数が1以上であることを特徴とする
ものである。前記第1物質は通常気体としては使用せ
ず、溶液や融液等の液体として使用するのが好ましい。
前記第2物質は例えば水や硫化水素のように気体として
容易に使用可能なものもあるので、かかる気体を液相に
注入してもよいが、溶液や融液等の液体として使用する
のが反応の制御性の点で好ましい。これら半導体原料の
具体例は後述する。
【0027】前記以外の半導体原料等の追加成分(たと
えばドープ物質等)を必要に応じて併用してもよく、か
かる追加成分は、例えば前記第1及び/又は第2物質へ
の混合、あるいは別途添加等、任意の方法で使用してよ
い。前記第1及び/又は第2物質の注入方法は、これら
が後述する攪拌効率の条件(レイノルズ数が1以上)を
満たしながら管状流通反応器内部で混合される限りにお
いて制限はないが、例えば一方をあらかじめ流通させて
おきここに他方を注入する方法、アルコール類等の液相
媒質をあらかじめ流通させておきここに両者を注入して
混合する方法等が例示される。
【0028】半導体原料を溶液として使用する場合の溶
媒、又は半導体原料を注入する液相媒質として使用する
溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノ
ール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プ
ロトン性アミド類、ピリジン、ルチジン、コリジン、キ
ノリン類の含窒素芳香族化合物等の有機窒素化合物、ジ
ブチルスルフィド等のジアルキルスルフィド類、ジメチ
ルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキル
スルホキシド類、及び水等が代表的であり、これらのう
ち、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、
ピリジン、ジメチルスルホキシド、水は好適に使用さ
れ、中でもメタノールとエタノールは更に好適である。
かかる溶媒は、単独でも必要に応じ複数種を混合して使
用しても構わず、更に適当なその他の溶剤(例えばアセ
トンやテトラヒドロフラン等)を添加して使用してもよ
い。
【0029】半導体原料を溶液として使用する場合の濃
度は、通常1×10-6〜10モル/L、好ましくは1×
10-5〜3モル/L、更に好ましくは1×10-5〜1モ
ル/L、最も好ましくは1×10-5〜0.5モル/L程
度とする。製造する半導体超微粒子の種類によっては、
遷移金属元素等の陽性元素への該溶媒の配位力を調節す
る目的で、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のリン酸塩類
を添加しても良い。
【0030】本発明の製造方法に用いられる製造装置の
構造は、必要に応じ、これら2種類の工程がそれぞれ複
数箇所存在しかつ連通した管状反応器であってもよい。
つまり、例えば複数のパイプに半導体原料を注入しこれ
らを1本のパイプに集約して半導体結晶を成長させる並
列注入法も可能である。[精製方法]本発明の製造方法
で生成した半導体超微粒子は、管状反応器出口から吐出
される反応液相(本発明では「製品液」と称する)中に
副生成物(例えば塩類)と共存して含有されている。従
って、かかる副生成物を除去する精製工程を経て使用さ
れることが望ましい。以下、2つの典型的な反応例を挙
げて説明する。
【0031】第1例は下記式(2)の反応、即ち酢酸亜
鉛と水酸化リチウムをエタノール中で接触させて酸化亜
鉛結晶を生成させるゾル−ゲル法反応を本発明の製造方
法により実施する場合であり、副生成物として酢酸リチ
ウムが必ず生成する。つまり製品液は、エタノール中に
酢酸リチウムと酸化亜鉛超微粒子とが含有されたものと
なる。第2例は下記式(3)の反応、即ち前記式(2)
における水酸化リチウムの代わりに硫化水素ガスを使用
して硫化亜鉛結晶を生成させる場合であり、副生成物と
して酢酸が生成する。かかる場合の製品液は、エタノー
ル中に酢酸と硫化亜鉛超微粒子とが含有されたものとな
る。
【0032】
【化2】 Zn(AcO)2+LiOH → ZnO+2AcOLi+H2O (2)
【0033】
【化3】 Zn(AcO)2+H2S → ZnS+2AcOH (3) 但し、式(2)及び(3)においてAcはアセチル基
(CH3CO)を表す。前記第1例に代表される反応、
つまり第2物質として金属カルコゲニド類を使用する場
合、必ず塩類が副生成物として生成するので、脱塩精製
を行うことが望ましく、例えば透析やゲル濾過法等が好
適であり、特に透析が好ましい。透析は、メタノールや
エタノール等の炭素数4以下程度の低級アルコール類を
使用し、セルロース膜等市販のものを使用して行ってよ
い。この時、透析効率を増大したり透析膜の変性を緩和
する目的で適度の水を低級アルコール類に混合してもよ
い。かかる透析により脱塩した製品液をそのまま濃縮し
て半導体超微粒子を得てももよいが、超微粒子の凝集が
起きる場合があるので、後述する有機配位子を半導体結
晶表面に結合させて超微粒子の溶解性と非凝集性を高め
てから濃縮するのが好ましい場合が多い。
【0034】前記式(3)に代表される反応、つまり第
2物質として水や硫化水素等のカルコゲン化水素類を使
用する場合には、前記式(2)の場合と異なり塩類が副
成しないので前記脱塩精製の後の製品液と同様に、その
まま濃縮したりあるいは有機配位子を半導体結晶表面に
結合させた後濃縮してもよい。 [攪拌効率を表すレイノルズ数]本発明の要件の1つ
は、攪拌効率の指標である下記レイノルズ数の値であ
る。
【0035】製造方法においては管状反応器内部を通常
液相が満たしているので、これが流通する場合の攪拌効
率を見積もる指標として下記式(4)で定義するレイノ
ルズ数Reを導入する。本発明の製造方法は、複数の半
導体原料どうしの接触時点の液相媒質の該Reが1以上
であることを特徴とするものである。
【0036】
【数1】Re=Duρ/μ (4) 但し前記式(4)においてDは液相が流通する流路の断
面積と同面積の円の直径(単位はメートル:m)を、u
は液相の流速(単位はメートル毎秒:m/sec)を、
ρは液相の密度(単位:キログラム毎立方メートル:g
/m3)を、μは液相の粘度(単位:ポアズ)を、それ
ぞれ表す。前記Dは通常使用される巻き尺、定規、ノギ
ス等の測量手法で測ることができ、前記uは送液ポンプ
の供給量を測定すればD値から計算できる。前記ρは液
相を一定体積分取し重量を測定することで求めることが
できる。前記μは粘度測定から実測することができる。
【0037】実際の製造に使用される温度におけるこれ
ら諸量の実測が困難な場合でも、測定可能な温度域での
複数の値から外挿することで見積もることが可能であ
り、かかる場合はこの数値を使用する。前記外挿値の算
出方法は、密度ρについては、温度に対する密度の実測
値のプロットを市販の表計算ソフトウエア等を必要に応
じて利用して行い、ここから求まる近似式から所望の温
度における計算値を算出する。粘度μについては、絶対
温度の逆数に対する粘度の実測値の対数のプロットを市
販の表計算ソフトウエア等を必要に応じて利用して行
い、ここから求まる近似式から所望の温度における計算
値を算出する。なお、絶対温度の逆数と液体の粘度の対
数とが比例するという理論式が化学便覧・基礎編(改訂
4版、丸善(株)、1993年)のII−36頁に記載さ
れている。
【0038】前記の通り攪拌効率の低下は半導体超微粒
子の粒径分布に悪影響を与えるので、製品の粒径分布を
狭くする目的では、前記した半導体原料どうしの接触時
点の反応液相のレイノルズ数Reは可及的大きいことが
望ましく、好ましくは10以上、更に好ましくは30以
上である。 [攪拌機構]前記攪拌効率を向上して製品の粒径分布を
好ましく制御するために、前記レイノルズ数Reの効果
だけでなく、適当な攪拌機構を設計し液相の流路に設置
することがしばしば好ましい結果を与える。これは、流
路の立体形状を好ましく制御することによる乱流発生効
果、あるいは攪拌機構の運動によるせん断効果(前記式
(4)における流速uを増大する因子とも考えられる)
の2つの効果によるものと考えられる。
【0039】液相媒質を攪拌する機構には、前記のレイ
ノルズ数の条件を満たす限りにおいて制限はなく、例え
ば化学工学便覧(丸善)に記載のような公知の任意の方
法が適用可能であり、例えば、タービン翼、ファンター
ビン翼、湾曲羽根ファンタービン翼、矢羽根タービン
翼、ファウドラー翼、ブルマージン翼、傾斜羽根タービ
ン翼、プロペラ翼、螺旋帯、螺旋軸、いかり型、パドル
型、くし型等任意形状の翼を持った攪拌翼やスクリュ等
の任意形状の攪拌機構を、軸回転運動、軸方向の往復運
動等任意の運動をさせて構わず、かかる攪拌機構の設置
方式は反応器内部空間において偏心傾斜攪拌、側面攪拌
等任意の位置が可能である。前記の任意の攪拌機構にド
ラフトチューブやじゃま板等の任意の補助攪拌機構を併
用しても構わない。この他、スタティックミキサー、液
体の噴射攪拌や流体進行経路の分岐と再合流を繰り返す
方法(メッシュ(網目)、グラスウール、グラスフィル
ター等の微細な流路を有する多孔質体も含む)、静置型
スクリュ等、運動性を持たない攪拌機構の使用も可能で
ある。なお、前記静置型スクリュとは、反応液相又は液
相媒体が流通する流路に静置され該液相中での乱流の発
生を目的とし、全体として棒状の形状を持つ攪拌装置で
あってその形状の空間的広がりが占める最大径が管状反
応器の流路の内径以下の物体を意味し、例えば棒状の軸
の表面に任意の凹凸立体形状を設けたもの、棒状の軸に
多くのじゃま板をつけたもの、湾曲又は屈曲を連続させ
た軸もしくはかかる軸を複数組み合わせたもの等が具体
的に挙げられる。
【0040】設置部の流路が湾曲もしくは屈曲している
場合には、この形状に沿って、前記静置型スクリュ等の
運動性を持たない攪拌機構を湾曲もしくは屈曲させてよ
い。前記の各種攪拌翼やスクリュ等、液相が実際に流通
可能な断面積を減少させる攪拌機構を設置する場合、該
攪拌機構の断面積は設置部の元の流路断面積の通常1〜
99%であり、この下限は機械的強度の点で好ましくは
5%、更に好ましくは10%であり、この上限は流通量
を大きくする点で好ましくは90%、更に好ましくは8
0%である。かかる静置型スクリュの反応液相又は液相
媒体が流通する流路内での設置場所に制限はないが、製
品の粒径分布に最も大きな影響を与える半導体原料どう
しの接触が起きる地点への設置が効果的である。
【0041】なお、前記任意の攪拌機構を流路に設置し
た場合の前記レイノルズ数Reの算出に用いるDは対象
とする地点での流路の断面図において流路の断面積から
攪拌機構の断面積を差し引いた面積と同面積の円の直径
とする。 [製造装置]本発明の製造方法に使用する代表的な製造
装置の概念図を図1に示す。かかる装置は、大別して半
導体原料供給系、反応系、及び製品貯蔵系の3つの部分
から通常構成されるが、かかる概念図の構成に制限され
るものではない。以下、これを例として説明する。 (a)半導体原料供給系・・・第1原料漕1に蓄えられ
た前記第1物質の溶液である第1原料2は、第1原料流
路3を通って第1原料送液ポンプ4に供給され、第1原
料注入流路5を通って反応器6に供給される。一方、漕
8に蓄えられた前記第2物質の溶液である第2原料9
は、第2原料流路10を通って第2原料送液ポンプ11
に供給され、第2原料注入流路12を通って反応器6に
供給される。なおここで第1物質と第2物質とを入れ替
えて反応系への供給順序を逆にしても構わない。ここ
で、半導体原料の溶液はいずれも、原料漕中及び/又は
原料流路中にて温度調節を受けてもよい。適した温度範
囲は使用する原料の性質によって異なるが、一般に温度
が低すぎると反応液中で半導体原料の析出や溶媒の凍結
が起こる場合があり、またこれが高すぎると溶媒の気化
や内圧上昇もしくは半導体原料の変性等が起こる場合が
ある。適した調節温度は通常、−20〜150℃、好ま
しくは−10〜120℃、更に好ましくは0〜100℃
程度である。 (b)反応系・・・2種の半導体原料の溶液(2及び
9)は反応器内の地点15で合一、混合され、反応が開
始される。地点15の形状は、通常T字型又はY字型ジ
ャンクションとする。生成する反応液相16は反応流路
17を流れ、製品貯漕19に蓄えられる。この間、反応
液相16は、反応流路17中で任意時間の反応後期の熟
成を受けてもよく、この時に熟成加熱装置18により必
要に応じ加熱されてもよい。
【0042】なお、本発明の製造方法の最も顕著な特徴
と効果は、地点15とその直後の反応条件、即ち温度と
物質混合の高度の制御性にある。地点15とその直後の
反応液相の好ましい温度範囲は、目的とする半導体結晶
種にもよるが通常−20〜150℃、更に好ましくは−
10〜120℃、最も好ましくは0〜100℃である。
地点15における攪拌効率が高いことが製品の半導体超
微粒子の粒径分布を狭くする上で好ましいので、前記攪
拌機構をここに設置することが好ましい。 (c)製品貯蔵系・・・製品貯漕19は、アルゴン等不
活性ガスや製造工程で発生する気体を流出させるガス抜
き口を通常有する。
【0043】前記の製造装置において液相が流通あるい
は滞留する内部空間は、製品の劣化を抑制する目的で、
通常乾燥した不活性ガス(例えばアルゴンや窒素等)雰
囲気下とするのが望ましく、遮光措置が好ましい場合も
ある。また、前記製造装置中の任意の流路、反応器、送
液ポンプ等の送液方法、あるいは貯漕の材質は、その内
容物に対して化学的に安定であり10気圧程度の内圧に
耐え、150℃以下の耐熱性があればよい。
【0044】また、流路や反応器の形状に制限はなく、
例えば、均一内径の管状、均一内厚の板状、内径や内厚
が連続変化するくさび型、流路断面積に周期を持たせた
蛇腹型等の断面形状の制御が可能であるが、通常管状が
反応条件の制御性の点で最も好ましい。更に、流路の進
行方式には、直進、蛇行、曲がり角、分岐及び合流、流
路を波打たせた波型、ループ形状等が可能であり、その
進行方向としては、重力方向に対して垂直、水平、ある
いは任意角度を有する傾斜等が可能である。
【0045】貯漕の形状にも制限はなく、例えば、球
形、楕円球形、円筒形、円錐形、直方体等が可能であ
る。貯漕が有する内容物の流出入口の位置にも制限はな
く、例えば貯漕の底部、壁面部、天井部等が可能であ
る。なお半導体原料の溶液の貯槽を送液ポンプの入り口
よりも高い位置に設置することにより、重力を利用した
好適な注入が可能となる場合がある。この効果は、特に
高速製造において半導体原料の注入に使用する送液ポン
プの安定な高速送液性を助ける場合に有効となる。該貯
槽の位置は注入先に対してサイホンの原理で重力送液が
可能であればよく、具体的には、両者の液面高度差とし
て通常5mm以上、好ましくは10mm以上、更に好ま
しくは100mm以上である。この高度差条件を逸脱す
ると、前記安定送液性が顕著でなくなる場合がある。
【0046】使用する送液ポンプはプランジャーポン
プ、ダイヤフラムポンプ、遠心ポンプ等の汎用の機械的
なポンプであって良いが、適切な送液性を確保可能であ
る限りにおいてポンプを使用しない任意方法(例えば高
低差を利用して送液する方法や加圧ガスを吹き込んで液
を圧送する方法等)を併用あるいは代用してもよい。前
記安定送液性は、粒径分布の制御を目的とする本発明の
製造方法においてとりわけ重要であるので、原料液体
類、即ち半導体原料の溶液及び/又は液相媒質の注入に
定常流ポンプを使用することが好ましい。ここでいう定
常流ポンプとは、例えばピストン機構を有する脈動送液
方式でなく連続した送液が可能なポンプを意味し、その
送液速度のふれ幅は平均値の±30%以内、好ましくは
±15%以内、更に好ましくは±5%以内である。この
ふれ幅を逸脱すると、前記脈動送液に近づき製品の粒径
分布への悪影響が顕著となる場合がある。
【0047】前記装置中の任意の流路や反応器の途中、
あるいは任意の貯漕内容物の流出入口付近に、任意の形
状・材質の弁(バルブ)を付設してもよい。また、任意
の流路や反応器、あるいは任意の貯漕に内圧を制御する
圧力弁を設置してもよい。また、前記装置中の任意箇所
を必要に応じ加熱又は冷却してもよく、必要に応じて反
応液を加圧又は減圧してもよい。
【0048】半導体原料の供給流路、液相媒質の供給流
路、及び半導体原料が注入された後の反応液相の流路の
いずれかが予備流路を有することが好ましい。これは、
本発明の製造方法の性能を本質的に規定する装置構造条
件ではないが、現実的な安定高速生産性の確保において
産業上重要な点である。つまり、例えば半導体原料の析
出や副反応等に起因する流路の閉塞等の故障が生じた場
合、これを復旧しながら該予備流路を使用して製造活動
を継続することが可能となるからである。従って、かか
る予備流路の分岐点は、予備管の接続作業等装置上の待
ち時間を最小として直ちに該予備流路の使用が可能とな
るように、ボールバルブ等のバルブ操作が可能な接続と
することが望ましい。また、かかる予備流路の本数に制
限はなく、これらの設置位置は必ずしも同じ分岐点を有
さなくともよい。分岐した予備流路に更に補足的な予備
流路を設けてもよい。 [ゾル−ゲル法に使用される半導体原料]ゾル−ゲル法
に使用される電気陰性度が2.0以下である陽性元素を
含有する第1物質は、通常溶媒に対して溶解する性質を
持つものであることが望ましい。その具体例としては、
前記に例示した陽性元素の陽イオンの塩、例えば、過塩
素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸銅、
過塩素酸亜鉛、過塩素酸カドミウム、過塩素酸水銀等の
過塩素酸塩、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化
銅、塩化亜鉛、塩化カドミウム、塩化水銀等の塩化物、
硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸銅、硫酸亜
鉛、硫酸カドミウム、硫酸水銀等の硫酸塩、硝酸マグネ
シウム、硝酸カルシウム、硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸銀、
硝酸カドミウム、硝酸水銀等の硝酸塩、リン酸マグネシ
ウム、リン酸三カルシウム、リン酸銅、リン酸亜鉛、リ
ン酸カドミウム等のリン酸塩、酢酸マグネシウム、酢酸
カルシウム、酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸カドミウム、酢酸
水銀、蟻酸亜鉛、蟻酸カドミウム等の有機酸塩、水酸化
マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物等が挙げ
られる。これらのうち、過塩素酸亜鉛や過塩素酸カドミ
ウム等の過塩素酸塩、硝酸マグネシウム、硝酸銅、硝酸
亜鉛、硝酸銀、硝酸カドミウム、硝酸水銀等の硝酸塩、
酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、酢酸カドミウム等の酢酸
塩等が好適に用いられ、中でも硝酸亜鉛や硝酸カドミウ
ム等の硝酸塩及び酢酸亜鉛や酢酸カドミウム等の酢酸塩
は最も好適である。なお、過塩素酸塩や硝酸塩は爆発性
を有し、特に過塩素酸塩は爆発危険性が大きいので取り
扱いに厳重な注意が必要である。
【0049】また、前記第1物質の具体例としてテトラ
イソプロピルオルソチタネート、テトラエチルオルソシ
リケート、トリブチルオルソアルミネート等の陽性元素
のアルコキシド類も使用可能である。ゾル−ゲル法に使
用される電気陰性度が1.9以上である陰性元素を含有
する第2物質は、下記一般式(1)で表されるカルコゲ
ン化合物類である。
【0050】
【化4】M12E (1) 但し、一般式(1)においてM1及びM2は周期表第1族
元素又はオニウム残基を表し、Eは周期表第16族元素
を表し、M1及びM2は互いに異なっていてもよい。な
お、ここでいうオニウム残基とは、アンモニウム残基、
ホスホニウム残基、スルホニウム残基(いずれも水素原
子及び/又は炭素数1〜18のアルキル基が窒素原子、
リン原子、硫黄原子に結合しており、1級、2級、3
級、あるいは4級のいずれでもよい)を表す総称であ
る。
【0051】前記一般式(1)の具体例としては、硫化
ナトリウム、セレン化ナトリウム、テルル化ナトリウム
等の周期表第16族元素のアルカリ金属塩、硫化アンモ
ニウム、セレン化アンモニウム等の周期表第16族元素
のアンモニウム塩、水硫化ナトリウム、水セレン化ナト
リウム等の周期表第16族元素のモノ水素化モノアルカ
リ金属塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。こ
れらのうち、反応性や化合物の安定性・操作性の点で、
硫化ナトリウム、セレン化ナトリウム等の周期表第16
族元素のアルカリ金属塩、水酸化リチウム、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が
特に好適に用いられる。なお、一方の半導体原料が気体
である場合、他種の半導体原料を含有する原料溶液中に
該気体を直接導入することも可能である。かかる気体の
直接導入法に用いられる気体半導体原料は、硫化水素、
セレン化水素、テルル化水素等の周期表第16族元素の
水素化物である。
【0052】使用する半導体原料における前記の陽性元
素の陰性元素に対するモル比は、通常0.6〜4、好ま
しくは0.7〜3、更に好ましくは0.8〜2、最も好
ましくは0.9〜1.5程度とする。 [有機配位子]本発明の製造方法で生成したカルコゲン
化物半導体結晶を主体とする半導体超微粒子を製品液か
ら単離する際に使用してもよい前記有機配位子は、半導
体結晶表面との結合性又は配位性(共有結合、イオン結
合、配位結合、水素結合等)を有する官能基(以下「配
位官能基」と称する)をその化学構造に含有する。かか
る配位官能基としては、1級アミノ基(−NH2)、2
級アミノ基(−NHR;但しRはメチル基、エチル基、
プロピル基、ブチル基、フェニル基等の炭素数6以下の
炭化水素基である;以下同様)、3級アミノ基(−NR
12;但しR1及びR2は独立にメチル基、エチル基、プ
ロピル基、ブチル基、フェニル基等の炭素数6以下の炭
化水素基である;以下同様)、ピリジル基等の窒素含有
官能基、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、リン酸
基、亜リン酸基、ホスフィンセレニド基等のリン含有官
能基等の周期表第15族元素を含有する官能基、水酸
基、カルボキシル基、β−ジケトン基、β−ジケトネー
ト基等の酸素含有官能基、メルカプト基(又はチオール
基)、スルフィド結合、スルホキシド基、チオ酸基(−
COSH)、ジチオ酸基(−CSSH)、キサントゲン
酸基、キサンテート基、イソチオシアネート基、チオカ
ルバメート基、チオフェン環等の硫黄含有官能基等の周
期表第16族元素を含有する官能基等が例示される。こ
れらのうち好ましく利用されるのは、1級アミノ基やピ
リジル基等の窒素含有官能基、ホスフィン基、ホスフィ
ンオキシド基、リン酸基等のリン含有官能基、メルカプ
ト基等の硫黄含有官能基であり、中でも1級アミノ基や
ピリジル基等の窒素含有官能基、あるいはメルカプト基
等の硫黄含有官能基等は更に好ましく用いられ、メルカ
プト基は最も好ましく用いられる。なお、リン酸基は酸
化物半導体超微粒子に対して特に好ましく用いられる。
【0053】以下、前記配位子の具体例を挙げる。 (a)硫黄含有配位子・・・メルカプトエタン、1−メ
ルカプト−n−ブタン、1−メルカプト−n−ヘキサ
ン、メルカプトシクロヘキサン、1−メルカプト−n−
オクタン、1−メルカプト−n−デカン等のメルカプト
アルカン類、下記一般式(5)で表される片末端がメル
カプト基となったポリエチレングリコール類、下記一般
式(6)で表されるポリエチレングリコール類のω−メ
ルカプト脂肪酸エステル類、下記一般式(7)で表され
る1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキル−1
−チオール類、チオフェノール、4−メチルチオフェノ
ール、4−tert−ブチルチオフェノール、4−ヒド
ロキシチオフェノール等のチオフェノール誘導体、6−
メルカプト−n−ヘキサノール等のω−メルカプトアル
コール類、ジブチルスルフィド、ジヘキシルスルフィ
ド、ジオクチルスルフィド等のジアルキルスルフィド
類、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジ
オクチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類、
ジブチルジスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ジオ
クチルジスルフィド等のジアルキルジスルフィド類、チ
オ尿素、チオアセタミド等のチオカルボニル基を有する
化合物、チオフェン等の硫黄含有芳香族化合物、あるい
は下記一般式(6)のエステル類の原料となるω−メル
カプト脂肪酸類等。
【0054】
【化5】HS−(CH2CH2O)n−R1 (5)
【0055】
【化6】 HS−(CH2m−COO−(CH2CH2O)n−R1 (6) 但し、一般式(5)及び一般式(6)においてR1は水
素原子、炭素数6以下の炭化水素基、又はベンゼン環を
表し、nは重合度を表す自然数であり通常2≦n≦1
5、過度の立体的障害を避ける観点で好ましくは2≦n
≦10、更に好ましくは2≦n≦5である。また、一般
式(6)においてmは自然数であり通常1≦n≦20、
過度の立体的障害を避ける観点でその上限値は好ましく
は15、更に好ましくは12であり、一方該mの下限値
は超微粒子表面を外界から遮蔽する観点で好ましくは
5、更に好ましくは8である。
【0056】
【化7】HS−(CH22−RF (7) 但し一般式(7)において、RFはトリフルオロメチル
基(CF3−)又はジフルオロメチレン基(−CF2−)
を含有する炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を
表す。 (b)リン含有配位子・・・トリエチルホスフィン、ト
リブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオ
クチルホスフィン、トリデシルホスフィン等のトリアル
キルホスフィン類、トリエチルホスフィンオキシド、ト
リブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィン
オキシド、トリオクチルホスフィンオキシド(略称TO
PO)、トリデシルホスフィンオキシド等のトリアルキ
ルホスフィンオキシド類、トリフェニルホスフィンやト
リフェニルホスフィンオキシド等の芳香族ホスフィンあ
るいは芳香族ホスフィンオキシド類、n−ブチルホスホ
ン酸、n−ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、
ドデシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸等のホスホン
酸類、ジオクチルホスフィン酸等のホスフィン酸類等。 (c)窒素含有配位子・・・ピリジンやキノリン等の窒
素含有芳香族化合物、トリエチルアミン、トリブチルア
ミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリ
デシルアミン、トリフェニルアミン、メチルジフェニル
アミン、ジエチルフェニルアミン、トリベンジルアミン
等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン、
ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミ
ン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン等の2級アミ
ン類、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミ
ン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシ
ルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、アニリン
等の1級アミン類、ニトリロ三酢酸トリエチルエステル
等のアミノ基を有するカルボン酸エステル類等。
【0057】[流通量と反応液相の吸発光帯の半値幅]
本発明においては、全ての半導体原料の注入が完了した
時点における管状反応器内部の反応液相の流通量(単
位:立方センチメートル毎時、cm3/h)を以下「流
通量」(Q)と称する。高速製造性の点から該流通量Q
は可及的大きいことが望ましいが、具体的な目安とし
て、10cm3/h以上であることが好ましく、より好
ましくは100cm3/h以上、更に好ましくは500
cm3/h以上、最も好ましくは1000cm3/h以上
である。
【0058】前記流通量Qの条件が、以下に説明する流
出する反応液相が与える吸発光帯の半値幅(即ち生成す
るカルコゲン化物半導体結晶の粒径分布を反映)の条件
と両立することが、前記攪拌効率の効果の主たるもので
ある。まず第1に、流通量Qが10cm3/h以上であ
り、しかも管状反応器から吐出される反応液相の吸収ス
ペクトルにおいて該半導体結晶に由来するエキシトン吸
収帯が観測されることが本発明の製造方法の望ましい状
態である。ここでいう「エキシトン吸収帯が観測され
る」状態とは、該吸収スペクトルの長波長端にエキシト
ン吸収帯による極大もしくは肩が観測される状態であ
る。かかる極大もしくは肩がエキシトン吸収帯によるも
のであることは、運転条件を変えて製品の粒径や粒径分
布を変えた場合に、該極大もしくは肩の波長が変動する
ことにより確認される。かかる吸収スペクトルの測定
は、必要に応じて採取する反応液相を適当な溶媒で希釈
して行ってもよい。
【0059】本発明の製造方法の更に望ましい状態は、
前記エキシトン吸収帯において、そのピーク波長λAp
λApより長波長側で該吸収帯強度がそのピーク強度の半
分となる波長λAhにより下記式(8)で定義される吸収
半値幅ΔλAが80nm以下である状態である。
【0060】
【数2】ΔλA=2(λAh−λAp) (8) 該ΔλAは、より好ましくは70nm以下、更に好まし
くは60nm以下、最も好ましくは55nm以下であ
る。
【0061】製品の発光能(特にエキシトン発光帯の波
長半値幅が小さいこと)を利用する場合には、管状流通
反応器から吐出する反応液相の流通量Qが10cm3
h以上であり、しかもその発光スペクトルにおいてカル
コゲン化物半導体結晶に由来するエキシトン発光帯が観
測される場合には、該エキシトン発光帯において、その
ピーク波長λLpとλLpより長波長側で該発光帯強度がそ
のピーク強度の半分となる波長λLhにより下記式(9)
で定義される発光半値幅ΔλLが80nm以下であるこ
とが望ましい。
【0062】
【数3】ΔλL=2(λLh−λLp) (9) 但し、観測された発光帯がエキシトン発光帯であること
は、運転条件を変えて製品の粒径や粒径分布を変えた場
合に、該発光帯の極大もしくは肩の波長が変動すること
により確認される。かかる発光スペクトルの測定は、必
要に応じて採取する反応液相を適当な溶媒で希釈して行
ってもよい。該ΔλLは、より好ましくは60nm以
下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは45
nm以下である。
【0063】流通量Q(単位:cm3/h)と前記吸収
半値幅ΔλA(単位:nm)との比Q/ΔλAが1以上で
あることが、本発明の製造方法の新規性である攪拌効率
による優れた効果を特徴づける指標である。かかるQ/
ΔλAの値は、より好ましくは5以上、更に好ましくは
10以上、最も好ましくは15以上である。但し、反応
液相の半導体原料濃度を低くして半導体超微粒子の製造
速度を低下させると見かけ上該Q/ΔλAの値は大きく
なる場合があるので、前記濃度条件を満たすことが実際
には好ましいことは言うまでもない。
【0064】[生産性指数]本発明の半導体超微粒子の
製造方法の生産性を評価するために、反応器の内容積1
cm3当たり、24時間(1日)に生産可能な半導体超
微粒子重量(単位:g)で定義される生産性指数Z(単
位:g/cm3/日)を定義する。例えば、バッチ(回
分)法の場合、ある反応器を使用して1回の反応が2時
間で終了し、これにより0.3gの超微粒子を得ること
ができるとすると、24時間当たりの生産可能な重量は
0.3×(24/2)=3.6(g)となり、これを反
応器の内容積(単位:cm3)で除することでZが算出
される。
【0065】反応器の内部空間が完全に反応液相で満た
されない場合には、全反応時間における該反応液相の平
均体積を反応器の内容積に代用する。本発明の半導体超
微粒子の製造方法は、通常、Zが0.001〜20程度
となるが、この値は大きいほど好ましい。具体的には、
Zの値は好ましくは0.005〜20程度、更に好まし
くは0.01〜20程度、最も好ましくは0.03〜2
0程度である。
【0066】
【実施例】以下、実施例により本発明の具体的態様を更
に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
り、これらの実施例によって限定されるものではない。 [測定装置] (1)透過型電子顕微鏡(TEM):日立製作所(株)
製、H−9000UHR型透過電子顕微鏡(加速電圧3
00kV、観察時の真空度約7.6×10-9Tor
r)。 (2)発光スペクトル:日立製作所(株)製のF250
0分光蛍光光度計。 (3)吸収スペクトル:ヒューレットパッカード社製H
P8453型紫外・可視吸光光度計。
【0067】[管状流通反応器の寸法]反応に使用した
反応器の外観の寸法は断面部が1辺2.5×10-2メー
トルの正方形、長さが2.4×10-1メートルであり、
断面の中心部から反応器の長さ方向に内径4.2×10
-3メートルの穴を貫通させた。反応液が流れる方向の穴
はそのまま反応流路に通じているが、反応液が流れる逆
方向の穴はネジ栓で封鎖した。撹拌棒を使用する場合は
撹拌棒付きのネジ栓で封鎖した。
【0068】[送液ポンプ]反応に使用した送液ポンプ
は島津製作所製高速液体クロマトグラフィ用送液ポンプ
LC−6Aを転用し、定常流を実現した。流路を保温す
るため、LC−6Aを分解して流路全てにリボンヒータ
ーを巻き付け加熱した。 [媒質槽と原料漕の位置]媒質槽と原料漕は送液ポンプ
の入り口まで確実に送液するよう、槽の下部に液の抜き
出し口を設け、抜き出し口が送液ポンプの入り口より高
くなる位置に設置した。媒質槽の抜き出し口は送液ポン
プの入り口より1×10-1メートル高い位置に、原料漕
の抜き出し口は送液ポンプの入り口より2×10-1メー
トル高い位置に設置した。
【0069】[予備流路]媒質槽と原料漕の流路にはバ
ルブの切り替え式で溶媒のみを流すことができるよう、
予備流路を設置した。溶媒のみを送液した後に徐々に原
料送液に切り替えてゆくことで反応をゆっくり立ち上げ
ることができるようになり、異常反応を防ぐことができ
た。また、反応後に溶媒のみを送液することで流路に残
る残存物を洗い流すことができ、洗浄操作が容易となっ
た。
【0070】[実施例1:ゾル−ゲル法によるZnO超
微粒子の連続流通製造] (1) 原料液の作製 室温の大気下、関東化学(株)から供給された酢酸亜鉛
2水和物(1.971g)をキシダ化学(株)から供給
されたエタノール(45mL)中で撹拌しながら75℃
にて1時間撹拌を続けたところ、かすかに白濁したエタ
ノール溶液が得られた。この液を50mLのパイレック
ス(登録商標)ガラス製三角フラスコに入れて第1原料
とし、図1の第1原料漕1に相当する部分に装着した。
【0071】一方、室温の大気下、キシダ化学(株)か
ら供給された水酸化リチウム1水和物(0.5292
g)を前記エタノール(45mL)中で撹拌しながら7
5℃にて10分撹拌を続けたところ、かすかに白濁した
エタノール溶液が得られた。2分間、汎用の超音波洗浄
機を用いて超音波照射を加えたところエタノール溶液の
白濁感はかなり低減した。この加熱と超音波処理をさら
に2回繰り返したところほとんど無色透明なエタノール
溶液が得られた。この液を0.2μmの孔径をもつメン
ブランフィルターでろ過し、このろ液を50mLのパイ
レックスガラス製三角フラスコに入れ第2原料とし、図
1記載の第2原料漕8に相当する部分に装着した。 (2) 流通法によるZnO超微粒子の製造 図1において第1原料予備加熱装置7、第2原料予備温
度調節装置13、反応加熱装置14、及び熟成加熱装置
18にそれぞれ相当する温度調節部分の温度設定を、そ
れぞれ50℃、20℃、50℃、及び50℃とした。温
度調節を受ける領域は、第2原料9が反応器6に注入さ
れる4.4秒前までであった。第1原料送液ポンプを毎
分5.7mL、第2原料送液ポンプを毎分5.7mLの
能力でそれぞれ駆動し、送液を開始した(各ポンプは図
1における4及び11にそれぞれ相当する)。図1にお
ける反応器6内部の地点15に相当する部分で前記の液
相媒質と半導体原料とが合流しこの地点でのレイノルズ
数Reは20であった。ZnO超微粒子を含む薄黄色の
製品液が、製品貯漕19に相当するガラス製50mLバ
イヤルビンに回収された。 (3) ZnO超微粒子の濃縮 得られたZnO超微粒子を濃縮するために、キシダ化学
(株)から供給されたヘキサン1.9673gをガラス
製5mLバイヤルビンに移し取り、この中に前記製品液
1.0352gを添加し、5分間振り混ぜたところ、乳
白色の析出物を含んだ懸濁液が得られた。このバイヤル
ビンに栓をして、3000rpmで15分間遠心分離し
た。遠心分離後、上澄み液は廃棄し、残った沈殿物に乾
燥窒素ガスを吹き付け予備乾燥し、次いで室温で15時
間真空乾燥した。このようにして約7.3mgの濃縮完
固されたZnO超微粒子を得た。このことから、実施例
1によるZnO超微粒子の製造速度は、24時間当たり
109gと計算され、前記で定義された生産性指数Z
(g/cm3/日)は37.6であった。 (4) 吸収スペクトルの測定 前記製品液をエタノール中に約2重量%程度の濃度で希
釈し、ヒューレットパッカード社製HP8453型紫外
・可視吸光光度計で測定したところ、312nmにピー
クを持つZnO結晶の吸収スペクトルを与えた。得られ
たスペクトルを図2に示す。吸収ピークの位置から数平
均粒径3.2nmのZnO超微粒子が製造されたと推定
された。
【0072】[比較例:バッチ式反応器を使用した製造
例]前記のC.B.Murrayら;J.Am.Che
m.Soc.,115巻8706−8715(199
3)に報告されている方法に従ったホットソープ法を、
フラスコを使用するバッチ法により行いCdSe超微粒
子を合成した。即ち、Aldrich社から供給された
トリオクチルホスフィンオキシド(73mL)をフラス
コに仕込んで200℃で約20分間真空乾燥し、これを
大気圧の乾燥アルゴン雰囲気下300℃に加熱し、ここ
に下記の半導体原料の溶液を50mLの注射器で加え
た。但しここで半導体原料の溶液とは、ジメチルカドミ
ウム(13.35ミリモル)をトリオクチルホスフィン
(25mL、以下TOPと略記)に溶解した溶液、セレ
ン(単体;10ミリモル)を溶解したTOP溶液(10
mL)、及び追加のTOP(15mL)、を乾燥窒素雰
囲気のドライボックス内で混合調製したものである(総
体積は51mL)。この原料溶液を加えると180℃程
度まで反応温度が低下したが、その後250℃程度まで
上昇し、原料注入後延べ2時間反応を継続した。その
後、反応液をメタノールと混合して半導体超微粒子を析
出させ遠心分離する精製操作を行って、300mgの超
微粒子を得た。こうして得た超微粒子は、発光スペクト
ルが前記の文献と一致したので、目的とするCdSe超
微粒子であるものと確認した。反応器の内容積の代わり
に反応液の総体積(124mL)を使用して前記で定義
された生産性指数Z(g/cm3/日)を算出すると、
0.029であったことから、前記実施例に示した本発
明の製造方法に比べると、本比較例のバッチ法装置をた
とえスケールアップしたとしてもその生産性ははるかに
劣るものであることがわかる。
【0073】
【発明の効果】本発明の半導体超微粒子の製造方法は、
粒径分布が狭い良質の半導体超微粒子を従来にない高い
生産性で与える。
【図面の簡単な説明】
【図1】ゾル−ゲル法の製造装置例を表す概念図であ
る。
【図2】実施例1において得られたZnO超微粒子の吸
収スペクトル図である。
【符号の説明】
1 第1原料漕 2 第1原料 3 第1原料流路 4 第1原料送液ポンプ 5 第1原料注入流路 6 反応器 7 第1原料予備加熱装置 8 第2原料漕 9 第2原料 10 第2原料流路 11 第2原料送液ポンプ 12 第2原料注入流路 13 第2原料予備加熱装置 14 反応加熱装置 15 合一地点 16 反応液相 17 反応流路 18 熟成加熱装置 19 製品貯漕
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G075 AA27 AA70 BA02 BD16 EB21 EC11 FB01 FC13 5F041 CA03 CA41 CA42 CA43 CA44 CA46

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電気陰性度が2.0以下である陽性元素
    を含有する第1物質と下記一般式(1)で表されるカル
    コゲン化合物類である第2物質とを半導体原料とし両者
    を管状流通反応器内部の液相中で接触させてカルコゲン
    化物半導体結晶を生成させ、かつ両者の接触時点の該液
    相のレイノルズ数が1以上であることを特徴とする半導
    体超微粒子の製造方法。 【化1】M12E (1) (但し、一般式(1)においてM1及びM2は周期表第1
    族元素又はオニウム残基を表し、Eは周期表第16族元
    素を表し、M1及びM2は互いに異なっていてもよい。)
  2. 【請求項2】 第1物質が遷移金属塩類である請求項1
    に記載の半導体超微粒子の製造方法。
  3. 【請求項3】 第2物質が水酸化物類又は硫化物類であ
    る請求項1又は2に記載の半導体超微粒子の製造方法。
  4. 【請求項4】 管状流通反応器が、第1物質と第2物質
    の接触時点の液相を攪拌する機構を有するものである請
    求項1〜3のいずれかに記載の半導体超微粒子の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の半導体
    超微粒子の製造方法により得られた製品液を透析して脱
    塩することを特徴とする半導体超微粒子の精製方法。
  6. 【請求項6】 原料液体類の注入部位に定常流ポンプを
    有する請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法に使用
    される管状流通反応器。
  7. 【請求項7】 第1物質と第2物質の接触時点の液相を
    攪拌する機構を有する請求項6に記載の管状流通反応
    器。
  8. 【請求項8】 半導体原料の溶液の貯槽がこれを送液す
    るポンプよりも高い位置に設置されてなる請求項6又は
    7に記載の管状流通反応器。
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