JP2002076385A - シリコン太陽電池用下地基板とシリコン太陽電池およびこれらの製造方法 - Google Patents

シリコン太陽電池用下地基板とシリコン太陽電池およびこれらの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 結晶質Siの結晶粒界密度を増大させること
なく、光閉じ込め効果の向上を図り、それによってより
高い光電変換効率を有するSi太陽電池およびその製造
方法を得る。 【解決手段】 支持体11上に金属反射層12と拡散防
止層13が順次積層されている下地基板101であっ
て、上記拡散防止層13表面が、イオンミリング法によ
りイオンビームを斜めに照射することによりスプーンカ
ット形状の凹部が複数形成された凹凸形状であることを
特徴とするシリコン太陽電池用下地基板101とこの製
造方法を提供し、この下地基板101上に光電変換層1
0、透明電極膜18、集電電極19を形成してSi太陽
電池110を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は結晶質シリコン太陽
電池およびその製造方法に関し、特に、テクスチャ構造
を有するシリコン太陽電池の下地基板および下地基板に
テクスチャ構造を施す方法に関する。
【0002】
【従来の技術】シリコン太陽電池は、時計、小型計算機
または街灯などの電源として幅広く利用されている。そ
の代表的なものとして結晶質シリコン太陽電池(以下、
単に「Si太陽電池」とする)が挙げられる。図13
は、従来のSi太陽電池の一例を模式的に示す断面図で
ある。図13に示すSi太陽電池は、支持体1上に金属
反射層2、拡散防止層3が順次製膜されてなる下地基板
100と、この下地基板100上にn型半導体である結
晶質シリコンからなるn層5、真性半導体である結晶質
シリコンからなるi層6、p型半導体である結晶質シリ
コンからなるp層7が順次積層されてなる光電変換層1
0と、この光電変換層10上に製膜されたITO等から
なる透明電極膜8と、この透明電極8上に形成されたA
l等からなる集電電極9とから概略構成されるものであ
る。
【0003】上記Si太陽電池においては、太陽光は透
明電極膜8側を透過して光電変換層10に入射する。そ
して、入射した光は金属反射層2により反射されて光電
変換層10にて吸収され電力に変換され、下地基板10
0および集電電極9に外部負荷を加えることにより電力
を外部に取り出すことができる。
【0004】このような太陽電池における光電変換層
は、p層5、i層6、n層7からなるpin接合より構
成された間接遷移型半導体である結晶質Siからなるた
め光吸収性が小さい。そのため、このようなSi太陽電
池においては、光電変換層における光入射率を向上させ
たり、光閉じ込め効果を向上させたりする工夫が必要で
ある。このような工夫として、従来、下地基板100表
面に凹凸を形成し(テクスチャ構造)、その凹凸による
乱反射によって光路長を増加させ、太陽光利用効率を高
め、光電変換効率を向上させることが行われている。こ
のようなテクスチャ構造は、通常、下地基板100を製
造するときの基板の温度等の製膜条件を調整することに
より形成されるものであり、図12および13に示すよ
うに、その断面形状が三角形状で、凹凸部分の高低差は
0.1〜0.3μm程度、底辺が0.2〜0.6μm程
度のものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うなテクスチャ構造を有する下地基板100を用いたS
i太陽電池においては、テクスチャ構造の凹部、凸部の
頂点部分を起点にして、結晶質Siの結晶粒界aが発生
し易く、このような結晶粒界aにより、結晶質Siに存
在する光キャリアがトラップされてその移動が妨げられ
たり、再結合により光キャリアが消滅したりして電力変
換率が低下するという問題があった。このような結晶粒
界aの密度は、凹部の傾斜角度が急峻なほど増加する傾
向にあり、Si太陽電池における光電変換効率を低下さ
せるものであった。
【0006】本発明は前記事情に鑑みてなされたもの
で、結晶質Siの結晶粒界密度を増大させることなく、
光閉じ込め効果の向上を図り、それによってより高い光
電変換効率を有するSi太陽電池およびその製造方法を
得ることを目的とする。また、上記目的を達成するため
に、結晶質粒界密度を低減することができ、かつ光閉じ
込み効果の得られるSi太陽電池用下地基板およびその
製造方法を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するた
めに、本発明のSi太陽電池用下地基板は、支持体上に
金属反射層と拡散防止層が順次積層されている下地基板
であって、上記拡散防止層表面が、イオンミリング法に
よりイオンビームを斜めに照射することによりスプーン
カット形状の凹部が複数形成された凹凸形状であること
を特徴とする。また、本発明のSi太陽電池用下地基板
は、支持体上に金属反射層と拡散防止層が順次積層され
ている下地基板であって、上記金属反射層が、イオンミ
リング法によりイオンビームを斜めに照射することによ
りスプーンカット形状の凹部が複数形成された凹凸形状
を有し、この凹部の形状に沿って上記拡散防止層が形成
されていることを特徴とする。上記下地基板において
は、上記拡散防止層上または金属反射層状に形成された
凹部の深さが、5nm〜500nmであることが好まし
い。また、上記金属反射層においては、2層以上の構造
とすることもできる。
【0008】本発明のSi太陽電池は、上記Si太陽電
池用下地基板上に、光電変換層、透明電極膜、集電電極
が順次形成してなるものである。また、上記拡散防止層
上に凹部が形成された下地基板は、支持体上に金属反射
層と拡散防止層を順次形成し、次いで前記拡散防止層の
表面に、イオンミリング法によりイオンビームを入射角
が5〜85°となるように照射してスプーンカット形状
の凹部を複数形成して、その表面を凹凸形状とすること
により製造することができる。
【0009】また、上記金属反射層上に凹部が形成され
た下地基板は、支持体上に金属反射層を積層し、次いで
前記金属反射層上にイオンミリング法によりイオンビー
ムを入射角が5〜85°となるように照射してスプーン
カット形状の凹部を複数形成し、その表面を凹凸形状と
したのち、この金属反射層上に拡散防止層を積層するこ
とにより製造することができる。
【0010】さらに、金属層が2層構造であり、金属反
射層上に凹部を形成した下地基板は、支持体上に、第1
金属反射層を積層し、次いで前記第1金属反射層の表面
に、イオンミリング法により、イオンビームを入射角が
5〜85°となるように照射してスプーンカット形状の
凹部を複数形成し、その表面を凹凸形状としたのち、こ
の第1金属反射層上に、第2金属反射層と拡散防止層を
順次積層することによって製造することができる。
【0011】そして、本発明のSi太陽電池は、上記製
造方法によりシリコン太陽電池用下地基板を製造し、こ
の下地基板上に光電変換層、透明電極膜、集電電極を順
次形成することにより製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳しく説明
する。図1は、本発明のSi太陽電池用下地基板の第1
の実施形態を模式的に示したものである。この下地基板
101は、支持体11上に、金属反射層12が形成さ
れ、この金属反射層12上に、表面が凹凸形状の拡散防
止層13が形成されてなるものである。上記支持体11
は、特に限定されず、例えば、ガラス、ステンレス、樹
脂、セラミックス等である。厚さは、通常1mm〜10
0mmとされる。
【0013】上記金属反射層12は、光を反射するため
に設けられるもので、Ni、Cr、TiおよびCuのう
ち1または2以上の金属からなり、厚さは50nm〜5
μmである。また、この反射金属層12は、図3に示す
ようにもののように、上記金属群からなる第1金属反射
層32上に、Agからなる第2金属反射層34を設けた
2層構造のものを用いることができる。このとき、第1
金属反射層32の厚さは、50nm〜5μm、第2金属
反射層34の厚さは50nm〜5μmとされる。
【0014】上記拡散防止層13は、入射した光の拡散
を防いで、光電変換層に入射する光を増加させる、すな
わち光の閉じ込み効果を高めるために設けられるもの
で、ZnOまたはその他の酸化物からなるものである。
そして、この拡散防止層13表面は、イオンミリング法
により、スプーンカット形状の凹部が複数形成されて凹
凸形状となっている。ここでスプーンカット形状とは、
緩やかな傾斜を有し角部がない滑らかな曲面からなる凹
部形状を示す。スプーンカットとは文字通り先の丸いス
プーンで削った形状と似ていることからこのようにい
う。このようなスプーンカット形状の凹部の深さ、すな
わち凹凸形状における山頂部と谷底部の高低差は、5n
m〜500nmであることが好ましい。このような範囲
であれば、Si太陽電池を形成したときに、拡散防止層
13による光の封じ込め効果を低減させることなく、光
電変換層における結晶粒界密度を減少させることができ
る。
【0015】次に、本発明の第2の実施の形態について
説明する。この例は、上記凹部を金属反射層上に形成
し、その上に拡散防止層を製膜したものである。図2
は、このような第2の実施の形態の一例を模式的に示す
断面図である。この下地基板102は、支持体21上
に、金属反射層22が形成され、この金属反射層22上
に上記スプーン形状の凹部が形成され、この凹部に沿う
ように拡散防止層23が製膜されて、表面が凹凸形状と
されたものである。この例においては、支持体21、反
射金属層22、拡散防止層23の構成材料および製膜方
法は上記第1の実施の形態と同様にされる。
【0016】金属反射層22上に形成された凹凸形状
は、上記第1の実施の形態における拡散防止層13上に
形成した凹凸形状と同様にされ、スプーンカット形状の
凹部が複数形成され、凹部の深さは5nm〜500nm
とされる。そして、この金属反射層22の凹凸形状に沿
って拡散防止層23が製膜されるので拡散防止層23の
表面形状も上記金属反射層22と同様の凹凸形状とな
る。
【0017】また、上記金属反射層22においては、2
層以上の構造とすることも可能で、この場合、例えば、
上記金属反射層を第1金属反射層とし、その上にAgか
らなる第2金属反射層を製膜したものであってもよい。
図4は、金属反射層を2層構造としたもので、この場
合、基板41上に形成された第1金属反射層42上に、
上記スプーン形状の複数の凹部が形成され、その凹凸形
状に沿って、第2金属反射層44、拡散防止層43が製
膜されている。
【0018】このように、表面にスプーンカット形状の
凹部が形成され、凹凸形状とされたSi太陽電池用下地
基板101、102、103、104であれば、凹部が
角部のない滑らかな曲面よりなるので、結晶質Siを積
層する際に、従来凹部頂角において発生していた結晶質
Siの結晶粒界を減少させることができる。よって、得
られた結晶質Siからなる光電変換層において結晶粒界
密度を減少させることができ、Si太陽電池における光
電変換効率を向上させることができる。また、上記下地
基板101、102、103、104においては、凹部
の深さが5nm〜500nmである凹凸形状を有するの
で、Si太陽電池としたときに光の封じ込み効果も高
く、光電変換率を向上させることができる。
【0019】次いで、このような下地基板の製造方法を
説明する。まず図1に示す下地基板101を例に挙げて
説明する。まず、支持体11を室温〜500℃の所定の
温度に保持しながら、支持体11の表面上に、5nm〜
5μmの厚さとなるように、Ni、Cr、TiおよびC
uのうち1または2以上の金属からなる金属反射層12
を形成する。その製造方法としては、支持体11上に上
記金属を積層できる方法であればよく、例えば、真空蒸
着法、スパッタリング法、CVD法等を用いることがで
きる。これらのうち、プロセスが比較的簡便であるため
真空蒸着法が望ましい。また、金属反射層が図3に示す
ような2層構造である場合は、上記方法と同様にして、
第1金属反射層32を製膜し、これに続いてAgを蒸着
して第2金属反射層34を製膜して金属反射層を形成す
る。
【0020】次いで、金属反射層12が形成された支持
体11を、室温〜500℃の所定の温度に保持しなが
ら、上記金属反射層12上に、拡散防止層13を厚さ1
0nm〜1000nmとなるように積層する。この時の
積層方法としては、特に限定されないが、イオンプレー
ティング法を用いることができる。
【0021】次いで、この拡散防止層13表面上にイオ
ンミリング法によるエッチングにより凹凸を形成する。
イオンミリング法とは、不活性ガスを用いてプラズマを
発生させ、プラズマに対して電界を印加することによ
り、不活性ガスのイオンを引き出して基板に照射してエ
ッチングする方法である。図5は、このとき用いられる
装置の一例を示した概略構成図である。この装置204
は、少なくとも、基板202を固定するとともに回転さ
せる回転装置203と、イオンビームを照射するための
プラズマ源200aと、イオン引き出し電極200b
と、前記プラズマ源200aに供給されるイオン源ガス
201とを備えてなるものである。このような装置20
4においては、イオン引き出し電極に負電圧を印加する
とプラズマ源200aで発生したプラズマに含まれるイ
オンが、イオン引き出し電極200bとの間の電界によ
って加速され、イオンビームとなって所定の入射角θで
基板202上に照射される。また、装置204内は真空
状態とすることができる。
【0022】このような装置204を用いて拡散防止層
13上に凹部を形成する。まず、上記下地基板101を
基板202として回転装置203上に固定する。次い
で、イオン源ガス201をプラズマ源200aに供給し
てイオンビームを発生させる。そして、基板202を回
転装置203により回転させながら、上記イオンビーム
を入射角θとなるように斜め方向から基板202上に照
射する。そして、イオンビームの照射位置を変えながら
照射を繰り返すことにより、基板202表面に複数の凹
部を形成する。上記入射角とはイオンビームの照射方向
と基板202表面のなす角θを示す。この入射角θは5
〜85°の範囲であることが好ましい。この範囲であれ
ば、基板202上に、滑らかな曲面よりなるスプーンカ
ット形状の凹部を形成することができる。上記入射角θ
が5°未満であるとエッチング効率が低下し、85°を
超えると凹部の谷部の角度が急になり、光電変換層にお
ける結晶粒界を増加させることになる。
【0023】このときに基板202表面に、イオンビー
ムのエッチングにより形成される凹部の深さは、イオン
ビームの入射角θと、その照射時間により調整すること
ができる。この時の凹部の深さは、上述のように5nm
〜500nmが好ましく、このような範囲となるよう
に、イオンビームの入射角θと照射時間を適宜調整す
る。また、イオン電流やイオン電圧により規定されるイ
オンビームの強さは特に限定されず、適宜調整すること
ができる。また、基板の回転速度は、特に限定されない
が、1rpm〜10rpmが好ましい。また、上記イオ
ン源ガス201としては、Arガス、Heガス、Neガ
ス、Krガス、Xeガス等の希ガスまたは、これらのガ
スと酸素の混合ガスを用いることができる。
【0024】次に、図2に示す下地基板102の製造方
法について説明する。この例の場合、イオンミリング法
により金属反射層22に凹凸を形成する。まず、上記下
地基板101の製造方法と同様にして基板21上に、金
属反射層22を厚さ50nm〜5μmとなるように形成
する。次いで、この金属反射層22表面上に、上記下地
基板101の拡散防止層13におけるイオンミリング法
と同様にして、イオンビームを斜めより照射して凹部を
形成する。
【0025】次いで、上記金属反射層22上に、拡散防
止層23を製膜する。このように製膜された拡散防止層
23は、金属反射層22表面の凹凸形状に沿って形成さ
れる。このとき、拡散防止層23の膜厚としては、10
nm〜100nmが好ましい。
【0026】また、金属反射層22を図4に示すものの
ように2層構造とする場合には、上記凹凸を形成した金
属反射層を第1金属反射層42とし、この上に、第2金
属反射層44を製膜する。この時の製膜方法としては、
第1金属反射層42と同様のものが挙げられる。このよ
うに製膜された第2金属反射層44は、金属反射層22
表面の凹凸形状に沿って形成される。このとき、第2金
属反射層44の膜厚としては、50nm〜5μmが好ま
しい。そして、この第2金属反射層44上に、上記下地
基板102と同様にして拡散防止層43を製膜し、表面
が凹凸形状である下地基板104とする。
【0027】このようなイオンミリング法を用いた下地
基板の製造方法によれば、イオンビームを5〜85°の
入射角θで照射するので、拡散防止層または金属反射層
22上に滑らかな曲面からなる凹部を複数形成すること
ができる。
【0028】このような製造方法により製造される下地
基板は、Si太陽電池の下地基板として用いられる。S
i太陽電池は、上記下地基板上に、光電変換層、透明電
極膜、集電電極を順次形成することによって得ることが
できる。図6は、上記下地基板101上に、結晶質Si
からなるn層15、i層16、p層17を順次製膜して
なる光電変換層10と、ITO等からなる透明電極層1
8と、集電電極19を形成してなるものである。また、
図7は、上記下地基板104上に、結晶質Siからなる
n層45、i層46、p層47を順次製膜してなる光電
変換層40と、透明電極層48と、集電電極49形成し
てなるものである。
【0029】以下、このような太陽電池の製造方法につ
いて、図6を利用して説明する。まず、上記拡散防止層
13上に、Pがドープされた結晶質Siからなりn型半
導体特性を有するn層15を積層する。次いで、前記n
層上に真性半導体である結晶質シリコンからなるi層1
6を積層する。次いで、前記i層16上に、Bがドープ
された結晶質Siからなりp型半導体特性を有するp層
17を積層する。このときの結晶質Siの積層方法とし
ては、プラズマCVD法等一般的な方法が挙げられる。
【0030】ついで、このようにして形成されたn層1
5、i層16、p層17からなる光電変換層10上にI
TO、SnO2、ZnO等の透明材料からなる透明電極
18を積層する。この時の積層方法としては。イオンプ
レーティング法、スパッタリング法、CVD法等一般的
な方法が用いられる。
【0031】ついで、上記透明電極膜上に、Alなどか
らなる集電電極19を、真空蒸着法、スクリーン印刷法
などの方法により所望の形状に形成する。
【0032】このように、表面がスプーンカット形状の
凹部からなる凹凸形状を有する下地基板を用いて製造さ
れたSi太陽電池においては、結晶質Siからなる光電
変換層内の結晶粒界aの生成が抑制されるため、結晶質
Siの結晶粒界密度が減少する。よって、光電変換層内
において、結晶粒界aにより光キャリアがトラップされ
てその移動が妨げられたり、再結合により光キャリアが
消滅したりするといった現象が低減され、その光電変換
効率が向上する。
【0033】
【実施例】以下、本発明を実施例を示して詳しく説明す
る。 (実施例1)図6に示す構造のSi太陽電池を作製し
た。まず、ガラスからなる支持体11上に、Niを真空
蒸着法により積層し、厚さ1000nmの金属反射層1
2を積層した。次いで、上記金属反射層12上に、Zn
Oをイオンプレーティング法により積層し、厚さ500
nmの拡散防止層13を積層した。次いで、上記拡散防
止層13上にイオンミリング法にてスプーンカット状の
凹部を形成した。このときのイオン源としては、Arガ
スを用い、イオン電流0.3A、イオン加速電圧を50
0Vとした。次いで、上記拡散防止層13上に、プラズ
マCVD法により結晶質Siからなるn層15、i層1
6、p層17を順に積層して光電変換層10を形成し
た。この時、n層15の厚さは30nm、i層16の厚
さは1000nm、p層17の厚さは30nmとした。
次いで、上記光電変換層10上にイオンプレーティング
法にて、ITOからなる透明電極膜18を、厚さ100
nmとなるように積層した。次いで、上記透明電極膜1
8上の所定の位置に、真空蒸着法にてAlを蒸着して、
集電電極19を形成した。
【0034】(比較例1)上記基板表面にエッチング処
理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして比較
例1のSi太陽電池を作製した。
【0035】このとき、凹部の深さを5nm〜500n
mの範囲で変化させて、上記Si太陽電池を作製し、そ
れぞれのSi太陽電池における光電変換効率を測定し、
比較例1のSi太陽電池における光電変換効率を1とし
たときの値(規格化変換効率)を算出した。このとき、
イオンビームの入射角は5°に保ち、凹部の深さはイオ
ンビームの照射時間を変えることにより調整した。具体
的な数値は表1に示す通りである。イオンビームの照射
時間が短いときは元の基板の表面形状が比較的反映され
やすく、凹部の深さは比較的大であるが、照射時間が長
くなるに従い、基板の表面浸食が進み、凹部の深さも小
さくなる。それぞれの比較結果を図8に示すグラフに示
す。
【0036】
【表1】
【0037】また、上記拡散防止層上に、イオンビーム
の入射角θを5〜85°の範囲で変化させて深さが10
nmの凹部を形成して、上記Si太陽電池を作製し、そ
れぞれのSi太陽電池における光電変換効率を測定し、
比較例1のSi太陽電池における光電変換効率を1とし
た規格ときの値(規格化変換効率)を算出した。このと
きのイオン入射角θと照射時間の数値は表2に示すとお
りである。イオンビームの入射角θが大きいときは実効
的な入射エネルギー密度が高いため、表面浸食速度が大
きく照射時間は短く、入射角θが小さいときはその逆で
照射時間は長くなる。結果を図9のグラフに示す。
【0038】
【表2】
【0039】(実施例2)図7に示す構造のSi太陽電
池を作製した。上記実施例1と同様にして、ガラスから
なる支持体41上に、厚500nmの第1金属反射層4
2を積層した。次いで、上記第1金属反射層42上に、
イオンミリング法にてスプーンカット状の凹部を形成し
た。このときのイオン源としては、Arガスを用い、イ
オン電流0.3A、イオン加速電圧を500Vとした。
次いで、上記金属反射層42上に、Agを真空蒸着法に
より製膜して第2金属反射層44を形成した。次いで、
この第2金属反射層44上に、ZnOをイオンプレーテ
ィング法により積層し、厚さ500nmの拡散防止層4
3を積層した。次いで、上記拡散防止層43上に、上記
実施例1と同様にして、n層45、i層46、p層47
を順に積層して光電変換層40を形成し、この光電変換
層40上に透明電極膜48および集電電極49を形成し
た。
【0040】(比較例2)上記下地基板104表面にエ
ッチング処理を施さなかったこと以外は実施例2と同様
にして比較例2のSi太陽電池を作製した。
【0041】このとき、凹部の深さを変化させて、上記
Si太陽電池を作製し、それぞれのSi太陽電池におけ
る光電変換効率を測定し、比較例2のSi太陽電池にお
ける光電変換効率を1としたときの値(規格化変換効
率)を算出した。このとき、イオンビームの入射角は5
°に保ち、凹部の深さはイオンビームの照射時間を変え
ることにより調整した。このときの具体的な数値は表3
に示すとおりである。結果を図10に示すグラフに示
す。
【0042】
【表3】
【0043】また、イオンビームの入射角θを5〜85
°の範囲で変化させ、深さが10nmの凹部を形成し
て、上記Si太陽電池を作製し、それぞれのSi太陽電
池における光電変換効率を測定し、比較例1のSi太陽
電池における光電変換効率を1とした規格ときの値(規
格化変換効率)を算出した。このときのイオンビームの
入射角と照射時間の数値は表4に示す通りである。結果
を図11のグラフに示す。
【0044】
【表4】
【0045】グラフの結果より、上記実施例1および2
のSi太陽電池においては、下地基板の表面に、凹凸形
状を形成しなかった比較例1および2に比べて、高い光
電変換効率が得られることがわかる。また、凹部の深さ
が5nm〜500nmの範囲である場合、またイオンビ
ームの入射角θが5〜85°である場合において高い変
換効率を示すことがわかる。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のSi太陽
電池用下地基板によれば、その上に結晶粒界密度の低い
光電変換層を形成することができるとともに、光閉じ込
み効果を有するので、Si太陽電池の光電変換効率を向
上させることができる。そして、このような下地基板を
用いたSi太陽電池であれば、光電変換層における結晶
粒界密度が低く、また光電変換層と下地基板との界面に
おける光の封じ込み効果により光電変換効率が高い。ま
た、本願発明のSi太陽電池下地基板の製造方法によれ
ば、下地基板表面に深さが5nm〜500nmで、傾斜
が緩やかで角部のない滑らかな曲面よりなる凹部を形成
することができ、上記効果を有する下地基板を得ること
ができる。さらに、本願発明のSi太陽電池の製造方法
によれば、結晶粒界の少ない結晶質Siからなる光電変
換層を形成することができ、光電変換効率の高いSi太
陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のSi太陽電池用下地基板の一実施形
態を示した断面図である。
【図2】 本発明のSi太陽電池用下地基板の一実施形
態を示した断面図である。
【図3】 本発明のSi太陽電池用下地基板の一実施形
態を示した断面図である。
【図4】 本発明のSi太陽電池用下地基板の一実施形
態を示した断面図である。
【図5】 本発明のSi太陽電池用下地基板に凹凸を形
成する際に用いられる装置の一例を示した概略構成図で
ある。
【図6】 本発明のSi太陽電池の一実施形態を示した
断面図である。
【図7】 本発明のSi太陽電池の一実施形態を示した
断面図である。
【図8】 実施例1における凹部の深さと規格化変換効
率との関係を示したグラフである。
【図9】 実施例1におけるイオンビームの入射角と規
格化変換効率との関係を示したグラフである。
【図10】 実施例2における凹部の深さと規格化変換
効率との関係を示したグラフである。
【図11】 実施例2におけるイオンビームの入射角と
規格化変換効率との関係を示したグラフである。
【図12】従来のSi太陽電池用下地基板の一例を示し
た断面図である。
【図13】従来のSi太陽電池の一例を示した断面図で
ある
【符号の説明】
11、21、31、41・・・支持体 12、32、・・・金属反射層 13、23、33、43・・・拡散防止層 32、42・・・第1金属反射層 34、44・・・第2金属反射層 15、45・・・n層 16、46・・・i層 17、47・・・p層 10、40・・・光電変換層 101、102、103、104・・・下地基板 110、140・・・Si太陽電池
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西宮 立享 長崎県長崎市深堀町五丁目717番1号 三 菱重工業株式会社長崎研究所内 (72)発明者 山口 賢剛 長崎県長崎市深堀町五丁目717番1号 三 菱重工業株式会社長崎研究所内 Fターム(参考) 5F051 AA02 BA04 CB12 CB22 FA03 FA04 FA23 GA14

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持体上に金属反射層と拡散防止層が順
    次積層されている下地基板であって、 上記拡散防止層表面が、イオンミリング法によりイオン
    ビームを斜めに照射することによりスプーンカット形状
    の凹部が複数形成された凹凸形状であることを特徴とす
    るシリコン太陽電池用下地基板。
  2. 【請求項2】 支持体上に金属反射層と拡散防止層が順
    次積層されている下地基板であって、 上記金属反射層が、イオンミリング法によりイオンビー
    ムを斜めに照射することことによりスプーンカット形状
    の凹部が複数形成された凹凸形状を有し、この凹部の形
    状に沿って上記拡散防止層が形成されていることを特徴
    とするシリコン太陽電池用下地基板。
  3. 【請求項3】 上記凹部の深さが、5nm〜500nm
    であることを特徴とする請求項1または2に記載のシリ
    コン太陽電池用下地基板。
  4. 【請求項4】 上記金属反射層が、2層以上の金属膜に
    より形成されていることを特徴とする請求項1〜3のい
    ずれか一項に記載のシリコン太陽電池。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか一項に記載のシ
    リコン太陽電池用下地基板上に、光電変換層、透明電極
    膜、集電電極が順次形成されていることを特徴とするシ
    リコン太陽電池。
  6. 【請求項6】 支持体上に金属反射層と拡散防止層を順
    次形成し、次いで前記拡散防止層の表面に、イオンミリ
    ング法によりイオンビームを入射角が5〜85°となる
    ように照射してスプーンカット形状の凹部を複数形成し
    て、その表面を凹凸形状とすることを特徴とするシリコ
    ン太陽電池用下地基板の製造方法。
  7. 【請求項7】 支持体上に金属反射層を積層し、次いで
    前記金属反射層上にイオンミリング法によりイオンビー
    ムを入射角が5〜85°となるように照射してスプーン
    カット形状の凹部を複数形成し、その表面を凹凸形状と
    したのち、この金属反射層上に拡散防止層を積層するこ
    とを特徴とするシリコン太陽電池用下地基板の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 支持体上に、第1金属反射層を積層し、
    次いで前記第1金属反射層の表面に、イオンミリング法
    により、イオンビームを入射角が5〜85°となるよう
    に照射してスプーンカット形状の凹部を複数形成し、そ
    の表面を凹凸形状としたのち、この第1金属反射層上
    に、第2金属反射層と拡散防止層を順次積層することを
    特徴とするシリコン太陽電池用下地基板の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項5〜8のいずれか一項に記載のシ
    リコン太陽電池用下地基板の製造方法により下地基板を
    製造し、この下地基板上に光電変換層、透明電極膜、集
    電電極を順次形成することを特徴とするシリコン太陽電
    池の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100543535B1 (ko) * 2003-05-07 2006-01-20 준 신 이 누설전류 저감 기법을 이용한 다결정 실리콘 태양전지의 제조방법
JP2009231500A (ja) * 2008-03-21 2009-10-08 Mitsubishi Electric Corp 太陽電池用基板とその製造方法および太陽電池の製造方法
JP2013516071A (ja) * 2009-12-23 2013-05-09 バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド プラズマシース変調によるワークピースのパターニング

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