JP2002068840A - 黒鉛系複合材及びその製造方法 - Google Patents

黒鉛系複合材及びその製造方法

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JP2002068840A JP2000257822A JP2000257822A JP2002068840A JP 2002068840 A JP2002068840 A JP 2002068840A JP 2000257822 A JP2000257822 A JP 2000257822A JP 2000257822 A JP2000257822 A JP 2000257822A JP 2002068840 A JP2002068840 A JP 2002068840A
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Susumu Nishikawa
進 西川
Yukinori Echigo
幸憲 越後
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 連続鋳造用モールド、溶融金属攪拌羽根に適
用できるものと製法。 【解決手段】 ものは、原料の炭素材と複合物とを含む
混合物を加圧成形し、焼成して得られる黒鉛系複合材に
おいて、黒鉛中に窒化アルミニウムを含有し、窒化アル
ミニウムの含有量が、8〜50体積%である。窒化アル
ミニウムのほかに、炭化けい素および炭化ほう素を含有
している。炭化けい素の含有量が6〜35体積%、炭化
ほう素の含有量が6〜35体積%の範囲にあり且つ双方
の合計が54体積%以下の範囲で含まれている。ニッケ
ルを0.5〜5体積%、含有している。製法は、原料の
混合物を、加圧成形し、焼成して得られる黒鉛系複合材
の製造方法において、混合物が、炭素材と、ニッケル
と、窒化アルミニウム又は窒化アルミニウム、炭化けい
素、炭化ほう素とであり、焼成する温度が窒化アルミニ
ウムの分解温度以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温の溶融金属と
接触する耐熱性部材に使用される黒鉛系複合材に関す
る。
【0002】
【従来の技術】この種の材料には、溶融金属に対する耐
食性、高温強度、耐熱衝撃性などが要求される。そし
て、例えば、連続鋳造用モールドや溶融金属の攪拌羽根
に使用する場合には、材料表面と溶融金属との摩擦があ
るため、静置状態での使用と比較してより過酷な条件を
満足しなければならない。一般に、鉄系やアルミニウム
系の溶融金属に対する耐食性が良好な材料としては、窒
化ほう素、窒化アルミニウム、黒鉛などがあり、前記連
続鋳造用モールドや溶融金属の攪拌羽根には、黒鉛が使
用されている。
【0003】前記従来の耐食性が良好な材料について説
明すると、窒化ほう素は、溶融金属に対する耐食性、耐
熱衝撃性ともに優れているが、低熱伝導材料であるた
め、例えば、連続鋳造用のモールドとして適用した場
合、モールド内で溶融金属を冷却して凝固させる速度を
速くできないため、生産性の面で問題がある。これに対
して窒化アルミニウムは、高熱伝導材料であり、鉄系、
アルミニウム系の溶融金属に対する耐食性は優れている
が、熱衝撃に弱い。従って、いずれも単体での使用は困
難である。
【0004】黒鉛は、耐熱衝撃性が優れた高熱伝導材料
であるため、前記連続鋳造用モールドとしては適当な材
料と考えられるが、窒化アルミニウム、窒化ほう素に比
べて良好な耐食性を維持する溶融金属の成分に制限があ
り、つまり成分により溶融金属の融点が高くなるとそれ
だけ高温度の鋳造となり、その高温の溶融金属との反応
により溶損が生じるようになる。例えば、鉄系溶融金属
の連続鋳造用モールド内では溶融金属を連続的に冷却、
凝固させながら鋳造するため、モールドの溶融金属と接
触する位置では黒鉛の溶損が生じやすく、連続鋳造品の
外観、形状不良の原因となる問題がある。また、溜炉内
の溶融金属の攪拌羽根に黒鉛を適用した場合、攪拌羽根
は高温の溶融金属中を高速で回転することにより、溶融
金属中に黒鉛と反応を起こしやすい成分が含まれている
と、黒鉛表面の剥離が生じる問題もある。
【0005】黒鉛は高温条件下で安定で強度があり、耐
熱衝撃性も良好なことから高温用部材に多く用いられて
いるが、高温での酸化消耗が問題であるため、炭化けい
素、炭化ほう素、ほう化ジルコニウムや、酸化物、窒化
物などのセラミックスを複合させることにより、高温耐
酸化性を改善することができるとともに、強度も黒鉛単
体より高い黒鉛系複合材料が得られている。黒鉛系複合
材の高温耐酸化性は、複合したセラミックスが酸化され
て複合材表面にガラス皮膜を形成することによるもので
あり、表面のガラス皮膜が内部の黒鉛の酸化消耗を防止
するのである。これはモールドや攪拌翼に使用できる
が、黒鉛製のものを使用できないようなところには使用
できない。
【0006】黒鉛複合材は、黒鉛単体より高強度な材料
が多いが、このことは黒鉛に複合されるセラミックスの
焼結や、配合されたセラミックスと黒鉛の反応による結
果生じるものである。黒鉛の耐酸化性を改善するために
複合されるセラミックスは、複合する量が多くなると耐
酸化性が改善されるが、複合材に含まれる黒鉛量が減少
することにより、黒鉛の有効な特性としての耐熱衝撃
性、高熱伝導性、機械加工性が低下してしまう問題があ
る。
【0007】黒鉛複合材料の耐熱衝撃性、高熱伝導性、
機械加工性を良くするためには、複合材中の黒鉛は結晶
質であることが望ましいが、原料の炭素材質によって黒
鉛の結晶化の難易が異なる。炭素材単独で3000℃で
高温熱処理したときに容易に黒鉛化するものは易黒鉛化
性炭素と呼ばれ、炭化ほう素、ほう化ジルコニウムなど
の黒鉛化促進効果のある化合物を添加して約2100℃
以上の高温の熱処理により黒鉛化が促進される。黒鉛化
は熱処理温度が高温であるほど促進されるが、熱処理温
度が高くなると複合されるセラミックスは焼結が進み、
そのセラミックスの耐熱温度以上になると急激に又は徐
々に分解が始まる。
【0008】黒鉛系複合材において複合されるセラミッ
クスの焼結が進み、結合が強固になると、複合材中の黒
鉛が結晶質であってもその耐熱衝撃性、高熱伝導性、機
械加工性が低下してしまう。また、複合されるセラミッ
クスが熱処理により分解すると、緻密な複合材が得られ
ない。例えば、炭化けい素は2000〜2100℃で焼
結が進行する。窒化アルミニウムは2000℃以上で徐
々に分解が始まる。また、異なる材料のセラミックスの
反応による焼結の進行、分解も起こる。したがって、モ
ールドや攪拌羽根に使用できるものが作れなかった。つ
まり、炭化けい素は焼結が進むと硬くなり、機械加工で
きないとか、脆くなって強度が低下するといった問題が
生じるのである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来の黒鉛系複合材に
おいて、複合されるセラミックスは黒鉛の高温での酸化
消耗の防止を目的として添加されているのが一般的であ
る。しかし、前述した高温の溶融金属と摩擦のある接触
をさせて使用するような連続鋳造用モールド、溶融金属
攪拌羽根などの部材としては、現状では、黒鉛単体の他
に適切なものがなく、より優れたものが要求されてい
る。この要求に対し、一つの方向として、黒鉛単体の耐
熱性部材の溶融金属に対する耐食性、強度を改善すると
共に、耐熱衝撃性、高熱伝導性、機械加工性を低下させ
ることのないセラミックスを複合させることが考えられ
る。このためには、高温の酸化消耗を防止でき、溶融金
属に対する耐食性の良好な材料を複合し、複合材の焼結
及び分解が進行しない温度で焼成し、且つその温度範囲
で炭素材を黒鉛化する必要がある。本発明は、連続鋳造
用モールド、溶融金属攪拌羽根などの部材に適用できる
黒鉛よりも優れた黒鉛系複合材を提供することを課題と
する。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の手段は、原料の
炭素材と複合物とを含む混合物を加圧成形し、焼成して
得られる黒鉛系複合材において、黒鉛中に窒化アルミニ
ウムを含有していることを特徴とする(請求項1)。
【0011】この手段では、黒鉛に窒化アルミニウムを
複合したことにより、黒鉛の耐熱衝撃性、熱伝導性が良
好な点を生かし、窒化アルミニウムの耐食性が良好な点
を生かすことができる黒鉛系複合材とすることができ
る。この黒鉛系複合材は、連続鋳造用モールドや溶湯攪
拌羽根に適用すると、従来の黒鉛によるものと比べて、
耐食性、強度が向上する。特に、連続鋳造モールドで
は、窒化ほう素単独で使用した場合と比較して熱伝導が
高いことにより、冷却速度が速いため、鋳造速度を速く
することが可能である。
【0012】前記手段において、前記窒化アルミニウム
の含有量が、8〜50体積%である構成とするのが良い
(請求項2)。窒化アルミニウムを8〜50体積%に限
定したのは、8体積%未満では、溶融金属に対する耐食
性が黒鉛と同等程度に低下するからであり、50体積%
を超えると、溶融金属に対する耐熱衝撃性が低下するか
らである。
【0013】また、前記本発明の手段において、前記窒
化アルミニウムのほかに、炭化けい素および炭化ほう素
を含有している構成とするのがよい(請求項3)。この
構成では、高温で黒鉛系複合材表面にほうけい酸ガラス
を生成し、これが酸化防止皮膜となるので、高温耐酸化
性が向上する。
【0014】また、前記本発明の手段において、前記炭
化けい素の含有量が6〜35体積%、前記炭化ほう素の
含有量が6〜35体積%の範囲にあり且つ双方の合計が
54体積%以下の範囲で含まれている構成とするのが良
い(請求項4)。
【0015】炭化けい素及び炭化ほう素をいずれも6体
積%以上としたことは、炭化けい素又は炭化ほう素のど
ちらかの添加量が6体積%未満では、炭化けい素と炭化
ほう素が高温酸化雰囲気で酸化することにより生成する
ほうけい酸ガラスが複合材表面に十分な皮膜を形成しな
いため、高温耐酸化性の効果が低下する。炭化けい素と
炭化ほう素の添加量が多くなると、酸化防止皮膜として
の複合材表面のほうけい酸ガラスの形成が容易になる
が、炭化けい素又は炭化ほう素のどちらかの添加量が3
5体積%以上では、全体に占める黒鉛の割合いが少なく
なり、黒鉛による利点が低減する。すなわち、耐熱衝撃
性、熱伝導、機械加工性が低下する。従って、炭化けい
素は6〜35体積%、炭化ほう素は6〜35体積%の範
囲にあり且つ双方の合計が54体積%以下の範囲で含ま
れている構成とする。
【0016】前記本発明の手段において、焼成前の状態
で金属ニッケル、ほう化ニッケル、酸化ニッケルの中の
単一又は複数を0.5〜5体積%、含有しこれを焼成し
たものである構成とするのが良い。(請求項5)。この
ほう化ニッケル、金属ニッケル、又は酸化ニッケルを含
有している構成は、製造方法に関連し、これらは目的の
黒鉛系複合材を得るために炭素材の黒鉛化促進物質とし
て使用したものである。
【0017】本発明の黒鉛系複合材の製造方法は、原料
の混合物を、加圧成形し、焼成して得られる黒鉛系複合
材の製造方法において、前記混合物が、易黒鉛化炭素材
と、セラミックスと、黒鉛化促進物質とを含み、前記セ
ラミックスが、窒化アルミニウム、又は窒化アルミニウ
ムと炭化けい素と炭化ほう素とであり、前記焼成する温
度が窒化アルミニウムの分解温度以下であることを特徴
とする(請求項6)。
【0018】この製造方法における焼成温度の制限は、
窒化アルミニウムの分解が起こらない範囲であるから、
黒鉛系複合材の原料として混合した窒化アルミニウムが
完成した黒鉛系複合材中にそのまま存在する。そしてこ
の焼成温度でも、黒鉛化促進物質を混入してあることに
より炭素材が黒鉛化するから、黒鉛系複合材が得られ
る。この焼成温度の範囲は具体的には、1600〜20
00℃である。すなわち、1600℃未満であると、黒
鉛化促進物質を含有することによる炭素材の黒鉛化促進
の十分な効果が得られず、2000℃以上になると複合
材中に含まれる窒化アルミニウムの分解が起こることに
より、出来上がる黒鉛系複合材中に必要な窒化アルミニ
ウムの量が低減しあるいはなくなる。つまり、窒化アル
ミニウムを複合した特徴である溶融金属に対する良好な
耐食性及び高熱伝導性が発揮されないものとなるので、
これを防止するのである。なお、この方法では、原料と
して混合したものの体積%は、それぞれの体積%が黒鉛
系複合材となった後もそのまま維持されている。
【0019】前記本発明の黒鉛系複合材の製造方法にお
いて、前記黒鉛化促進物質が、金属ニッケル、ほう化ニ
ッケル、又は酸化ニッケルであり、これらの中の単一又
は複数を0.5〜5体積%含まれている構成とするのが
良い(請求項7)。
【0020】金属ニッケル、ほう化ニッケル、又は酸化
ニッケルの含有量は、0.5体積%未満では黒鉛化の促
進効果が向上せず、耐熱衝撃性、機械加工性が改善され
ない。一方、含有量が5体積%以上では、焼成により金
属ニッケル、ほう化ニッケル、又は酸化ニッケルが、窒
化アルミニウム、炭化けい素、炭化ほう素と反応する量
が多くなることから、強度及び耐食性の低下を引き起こ
す。従って、金属ニッケル、ほう化ニッケル、又は酸化
ニッケルの含有量は0.5〜5体積%とする。ニッケル
の酸化物である酸化ニッケルを添加すると、焼成により
酸化ニッケルが、炭素、窒化アルミニウム、炭化けい
素、炭化ほう素と反応して複合材から炭酸ガスが発生す
ることにより緻密な複合材を得ることができない。その
結果、高温耐酸化性の効果が低下する。この場合、ニッ
ケルをほう化物又は酸化物で添加したときの炭素材の黒
鉛化促進効果には大きな差はないため、黒鉛系複合材が
酸化雰囲気以外で用いられる場合は、耐酸化性は問題と
ならない。また、複合材の製造工程で、炭素材とセラミ
ックスを混合する際、金属ニッケルを添加すると、混合
処理により金属ニッケルが酸化され酸化ニッケルを生成
し、酸化ニッケルを添加したものと同様の結果となる。
つまり、酸化ニッケルの使用も可能であるが、この黒鉛
系複合材が酸化性雰囲気で使用される場合は、ニッケル
はそのほう化物である、ほう化ニッケルの状態で添加す
ることが望ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の黒鉛系複合材の実施形態
は、窒化アルミニウム、ほう化ニッケル、炭化けい素、
炭化ほう素等と黒鉛とを複合したものであり、これらを
連続鋳造用モールド及び溶融金属攪拌羽根に使用するも
のとしたものである。これらの幾つかの実施例及び比較
例について、耐熱衝撃性、耐食性、機械加工性、黒鉛の
結晶性、耐酸化性に関する試験結果を以下に説明する。
【0022】ここで耐熱衝撃性は、アルミニウム系、鉄
系夫々の溶融金属に浸漬し割れの発生を観察した。耐食
性は、機械加工してモールドとし、鉄系金属を連続鋳造
した後、モールドの溶損と外観及びその連続鋳造品の外
観を比較した。また、溶融金属攪拌羽根としてアルミニ
ウム系溶融金属を攪拌した後前記モールドの場合と同様
に攪拌羽根の溶損と外観を比較した。黒鉛化は、X線回
折により格子定数d002を測定した。黒鉛のd002
は3.354Åであり、この値に近いほど黒鉛が結晶質
であるといえる。耐酸化性は、900℃大気中で30時
間保持した後の黒鉛系複合材の重量変化を測定した。機
械加工性は、切削における硬さ、つまり切削しやすさに
ついて黒鉛と比較しし、黒鉛を1として5段階で評価し
た結果を示す。
【0023】各実施例及び比較例の黒鉛系複合材は、い
ずれも次のようにして製造したものである。まず、原料
を混合後、必要に応じてバインダを添加し、成形圧98
MPaで成形する。この成形体を、不活性ガス雰囲気、
例えばアルゴンガス雰囲気下で、1800℃で焼成して
黒鉛系複合材としたものである。原料の炭素材には易黒
鉛化炭素材のコークスを使用した。
【0024】実施例及び比較例の第1グループを表1に
示す。成分含有率は、表1に示す通りであり、比較例1
を基本配合とし、比較例2は金属ニッケルを0.5体積
%、窒化アルミニウムを5体積%配合してある。また、
窒化アルミニウムの添加量は、比較例2、実施例1、実
施例2、実施例3、比較例3と順次増加させた。実施例
4は実施例1と同量の金属ニッケル、窒化アルミニウム
配合で、炭化けい素及び炭化ほう素が添加されていない
ものである。比較例5は黒鉛単独のもので市販されてい
る黒鉛質炭素材であり、高温で焼成され結晶性の高いも
のである。比較例6は実施例と同じ易黒鉛化炭素材を2
000℃で調整したものである。なお、原料段階での成
分配合割合はニッケルを含まない場合には焼成して複合
材料とされた後も同じ割合である。同表1に前記試験結
果も示してある。なお、以下に示す表中の○印は割れや
溶損がなく良好なことを示す。
【0025】
【表1】
【0026】表1に見られるように、基本配合である比
較例1と比較して、実施例1、2、3、4は、金属ニッ
ケルと窒化アルミニウムを添加し、窒化アルミニウムの
添加量を変化させたものであるが、いずれも耐熱衝撃
性、耐食性に飛躍的な改善が確認された。比較例2、3
は、実施例1、2、3と同じ原料の組合わせであるが、
比較例2については黒鉛化の促進が確認され、耐熱衝撃
性が確認されたが、耐食性の改善効果が低く、溶損が生
じた。比較例3については、黒鉛化の促進は確認された
が、鉄系の溶融金属に対する耐熱衝撃性は改善されなか
った。比較例6は比較例5の市販品のような結晶性の高
いものが得られていないで、硬くて機械加工がかなり困
難であり、耐熱衝撃性、耐食性試験では割れ、溶損が生
じた。なお、他の実施例、比較例の機械加工性は評価が
3以下で、問題はない。
【0027】次に実施例及び比較例の第2グループとし
て、窒化アルミニウムの添加量を一定とし、金属ニッケ
ルの添加量を変化させたものを、表2に示す。つまり、
表1の実施例1を基本配合として、金属ニッケルの添加
量を実施例5(5体積%)、比較例4(8体積%)と増
加させた。
【0028】
【表2】
【0029】表2に見られるように、基本配合である実
施例1と比較し、実施例4も同様に耐熱衝撃性、耐食性
において良好な結果が認められた。しかし比較例4は、
基本配合と比較して耐食性が急激に低下し、連続鋳造用
モールド及び溶融金属攪拌羽根として満足できる耐食性
が得られないことが確認された。
【0030】次に実施例及び比較例の第3グループとし
て、金属ニッケルに代えてニッケルのほう化物または酸
化物を添加して黒鉛系複合材としたもの、および窒化ア
ルミニウム、ニッケルの含有量を一定として、炭化けい
素及び炭化ほう素の添加量を変化させた黒鉛系複合材と
したものを、表3に示す。実施例1(基本配合)の金属
ニッケルに代えて実施例6はほう化ニッケルを、実施例
7は酸化ニッケルを原料として組み合わせて添加してい
る。実施例4は実施例1と同量の金属ニッケル、窒化ア
ルミニウム配合で、炭化けい素及び炭化ほう素を添加し
ていないものである。実施例8、実施例9は、炭化けい
素又は炭化ほう素を複合材中の黒鉛の含有量が50%以
下にならない範囲まで添加したものである。
【0031】
【表3】
【0032】表3に見られるように、ニッケルの添加状
態にかかわらず、黒鉛化の促進効果が確認された。更
に、窒化アルミニウムを添加したものは黒鉛化の促進効
果により耐熱衝撃性が改善され、耐食性に優れ、連続鋳
造モールド、溶融金属攪拌羽根として適していることが
確認された。また、ほう化ニッケルを添加した実施例
6、炭化けい素又は炭化ほう素の添加量を増やした実施
例8、9及び比較例1は、高温耐酸化性にも優れている
ことが確認された。
【0033】以上のように、黒鉛系複合材において、窒
化アルミニウムを複合することにより、溶融金属の連続
鋳造用モールド及び攪拌羽根の特性として要求される、
耐食性が黒鉛よりも向上することが認められた。また、
黒鉛化促進物質としてニッケルを添加すること、又は炭
化けい素、炭化ほう素の添加量を増やすことにより高温
耐酸化性も良好なことが認められた。
【0034】
【発明の効果】請求項1、請求項2に記載の発明は、金
属溶湯攪拌羽根や連続鋳造用モールドに適用でき、機械
加工性に問題はなく、耐熱衝撃性は黒鉛と同等で、耐食
性、および強度が黒鉛よりも向上する効果を奏する。請
求項3、請求項4、請求項5に記載の発明は、前記効果
に加え高温耐酸化性が黒鉛よりも向上する効果を奏す
る。請求項6、請求項7に記載の発明は、金属溶湯攪拌
羽根や連続鋳造用モールドに適用できる、優れた、黒鉛
と窒化アルミニウムを複合した黒鉛系複合材、又は黒鉛
と窒化アルミニウムと炭化けい素および炭化ほう素とを
複合した黒鉛系複合材が得られる効果を奏する。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料の炭素材と複合物とを含む混合物を
    加圧成形し、焼成して得られる黒鉛系複合材において、
    黒鉛中に窒化アルミニウムを含有していることを特徴と
    する黒鉛系複合材。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の黒鉛系複合材におい
    て、前記窒化アルミニウムの含有量が、8〜50体積%
    であることを特徴とする黒鉛系複合材。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の黒鉛系複合材におい
    て、前記窒化アルミニウムのほかに、炭化けい素および
    炭化ほう素を含有していることを特徴とする黒鉛系複合
    材。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の黒鉛系複合材におい
    て、前記炭化けい素の含有量が6〜35体積%、前記炭
    化ほう素の含有量が6〜35体積%の範囲にあり且つ双
    方の合計が54体積%以下の範囲で含まれていることを
    特徴とする黒鉛系複合材。
  5. 【請求項5】 請求項1、請求項2、請求項3、又は請
    求項4に記載の黒鉛系複合材において、焼成前の状態で
    金属ニッケル、ほう化ニッケル、酸化ニッケルの中の単
    一又は複数を0.5〜5体積%、含有していることを特
    徴とする黒鉛系複合材。
  6. 【請求項6】 原料の混合物を、加圧成形し、焼成して
    得られる黒鉛系複合材の製造方法において、前記混合物
    が、易黒鉛化炭素材と、セラミックスと、黒鉛化促進物
    質とを含むみ、前記セラミックスが、窒化アルミニウ
    ム、又は窒化アルミニウムと炭化けい素と炭化ほう素と
    であり、前記焼成する温度が窒化アルミニウムの分解温
    度以下であることを特徴とする黒鉛系複合材の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の黒鉛系複合材の製造方
    法において、前記黒鉛化促進物質が、金属ニッケル、ほ
    う化ニッケル、又は酸化ニッケルであり、これらの中の
    単一又は複数を0.5〜5体積%含まれていることを特
    徴とする黒鉛系複合材の製造方法。
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