JP2002063862A - 電子放出装置及びその駆動方法 - Google Patents

電子放出装置及びその駆動方法

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JP2002063862A
JP2002063862A JP2001236076A JP2001236076A JP2002063862A JP 2002063862 A JP2002063862 A JP 2002063862A JP 2001236076 A JP2001236076 A JP 2001236076A JP 2001236076 A JP2001236076 A JP 2001236076A JP 2002063862 A JP2002063862 A JP 2002063862A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エミッション広がりを抑制し、最大エミッシ
ョン量における広がり特性を改善することができる電子
放出装置を提供する。 【解決手段】 電子放出装置では、エミッタ5から放出
される電子をアノード電極6側に向かって収束させる収
束電界が形成され、収束電界における等電位面の傾斜が
エミッタ5に近接するほど大きくなる。更に、エミッタ
5の表面とゲート電極3の裏面との間の距離をt(gk)、
アノード電極6の裏面とエミッタ5の表面との間の距離
をt(ak)、アノード電極6の電位をVa、ゲート電極3の
電位をVg、ゲート電極3の厚さをt(g)、及び、ゲート電
極3の裏面とエミッタ5の表面との間の距離をt(gk)と
するとき、次式 {t(gk)/t(ak)}・Va<Vg<[{t(g)+t(gk)}/t(ak)]
・Va の関係を満足する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子放出装置及び
その駆動方法に関し、特に、エミッション広がり特性を
改善した電子放出装置及びその駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子放出装置は、エミッタから放出した
電子をアノード電極で捕獲して電気信号として認識し、
或いは、電子を捕獲した際の電子励起によってアノード
電極に塗布された蛍光体を発光させて光信号として認識
する機能を有する。電気信号を認識する装置としての応
用例には、一般に真空管とも呼ばれるアンプや発振器等
が挙げられる。一方、光信号を認識する装置としての応
用例には、ブラウン管や蛍光表示管、或いは、フィール
ド・エミッション・ディスプレィ(FED:FieldEmissio
n Display)と呼ばれる平面型のディスプレィ(電界放出
型画像表示装置)が挙げられる。
【0003】電子放出装置の従来例として、FEDにつ
いて説明する。図23は、従来のFEDの1絵素を模式
的に描いた断面図であり、電子を放出させて赤色の蛍光
体を励起して発光させる構造を示す。ここで、絵素とは
FEDで表示する画像を空間分割した場合の最小単位を
意味する。R(赤)、G(緑)、B(青)の光の3原色
表示方式でカラーの絵を表示するFEDでは、その内の
1つの色、例えばR(赤)を絵素と呼ぶ。
【0004】図23に示すように、基板1上には、厚さ
1μm程度のSiO2膜が絶縁膜2としてスパッタリン
グで堆積され、絶縁膜2上には、約200nm厚のアル
ミニウム膜がゲート電極3として堆積され、ゲート電極
3及び絶縁膜2を夫々貫通する円筒状のゲートホール4
が形成される。ゲートホール4の底部には、基板1上に
カソード材料が堆積されてエミッタ5が形成される。ま
た、基板1から上方に5mm程度離れた位置にはアノー
ド電極6が配置される。アノード電極6のゲートホール
4の直上に位置する部分には、赤色蛍光特性を有する蛍
光体7が塗布されている。
【0005】アノード電極6及び蛍光体7には5.1k
V程度の電圧が印加される。カソード材料から成るエミ
ッタ5には0V、ゲート電極3には100V程度の電圧
が印加される。このように、各部に電圧を印加すること
によって等電位面8が形成される。ここで、アノード電
極6とゲート電極3との間の距離は5mm、電圧は50
00Vであるので、双方の電極6、3間における電界
は、5000/5[V/mm]=1[kV/mm]となる。
【0006】一方、ゲート電極3とエミッタ5との間の
距離は1μm(1E-3[mm])、電圧は100Vであるの
で、双方の電極3、5間におけるゲート・エミッタ間電
界は、100/1E-3=100[kV/mm]となる。ゲー
ト・エミッタ間電界の値が、アノード電極6及びゲート
電極3間のゲート・アノード間電界の値の100倍ある
ので、ゲートホール4の内部及びその近傍は、等電位面
8におけるゲートホール4の中央部分が浮き上がって円
孔レンズとして機能する。この円孔レンズでは、ゲート
ホール4の中心軸付近で、エミッタ5に印加される電界
が弱くなると言える。換言すると、円孔レンズは電子を
発散させるパワーを有しており、中心軸(収束軸)から
外れた位置のエミッタ5から放出された電子は、軸から
離れる方向(広がる方向)に向かって電子軌道が曲げら
れる。ここで、円孔レンズの「パワー」とは、円孔レン
ズを構成する等電位面8が有する、電子を発散または収
束させるエネルギーを表す。
【0007】次に、円孔レンズ効果で電子放出軌道が曲
げられる現象を詳しく説明する。図23では、エミッタ
5を更に細かい領域に分け、各領域から放出される電子
の軌道を示す。ゲートホール4は軸対称な形状を有する
ので、ゲートホール4の底部に堆積したエミッタ5を、
軸に近い領域から周辺に向けて3つの領域に分ける。弓
矢の的状に同心円で区切った領域を中心側からa、b、
cと称する。領域aは軸を含む領域である。9は領域a
から放出される電子、10は領域bから放出される電
子、11は領域cから放出される電子を夫々示す。各電
子9、10、11は、領域a、b、cの順に外側に広が
っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の電子放出装
置では、放出された電子9〜11がアノード電極6に到
達するまでに、軸から離れる方向に広がるという問題が
あった。FEDでは絵素が細かく分割されて配列される
ので、電子が広がると、自身の絵素における蛍光体7で
はなく、隣接する絵素の蛍光体7に電子が飛び込むとい
う問題が生じる。別の色の絵素の蛍光体7に電子が飛び
込むと実際には違う色が生じ、また、同じ色の隣接する
絵素の蛍光体7に電子が飛び込むと空間分解能の不良が
生じる。
【0009】図24は、図23で示した従来の電子放出
装置の動作特性を示すグラフである。図24では、カソ
ード印加電界とエミッション電流量との関係を示す。グ
ラフに示すカソード印加電界は、ゲートホール4の底部
に堆積したエミッタ5に印加される。ここでは、ゲート
ホール中間高さ(1μmの絶縁膜構造では0.5μm高
さ)での電界の値を、カソード印加電界の値として用い
る。
【0010】カソード印加電界を徐々に上昇させると、
エミッション電流が流れ始める電界(しきい値電界)が
現れる。必要なエミッション量の最大値を最大電流量と
呼び、その電流量を得るのに必要なカソード印加電界を
最大電界と呼ぶ。FEDにおいてアナログ方式で画像を
表示するためには、入力信号に対応して、しきい値電界
と最大電界との間における任意の電界を印加して、所望
の輝度の蛍光を得ることが必要である。パルス幅駆動方
式では、一定電界、例えば最大電界を印加する時間を調
整することによって、所望の輝度の蛍光を得ることがで
きる。
【0011】エミッション(放出電子)の広がり特性に
限界がなければ、図24のエミッション特性に応じて電
子放出装置を駆動すればよいが、実際には、円孔レンズ
の効果によって限界以上にエミッションが広がる。ゲー
トホール開口部での電界の差が大きいほど(現象 )、
また、軸から外れた位置のカソード電極から放出された
電子ほど(現象 )、円孔レンズ効果で電子が広がる現
象が顕著になる。
【0012】図25は、ゲートホール開口部での電界の
差が大きい場合の現象 を説明するグラフである。アノ
ード電極6の電圧を一定にした状態でカソード印加電界
を大きくすると、(1)等電位面の歪みが増大する、(2)ゲ
ートホール開口部での速度が大きくなる等の現象が発生
する。現象(1)及び(2)によって、アノード電極6への到
達時のエミッション広がり範囲は一層広くなる。
【0013】上記広がり範囲を表す図25の「長さD」
として、図23に示した矢印Dで示す範囲を用いる。カ
ソード印加電界を増加させるには、ゲート電極電位を増
加させる。隣接する蛍光体に電子が飛び込む不都合が発
生するときには、広がり範囲“D”が既に限界を超えて
いることになる。厳しく考えれば、ブラックマトリクス
などの無効領域に飛び込んだ電子は蛍光体を励起しない
ので、所定の蛍光体に飛び込まない電子が発生するとい
うことは、既に広がりの限界を超えたことになる。状況
によって限界広がりは様々であるが、一定の限界がある
ことは確かである。この広がり範囲“D”を限界広がり
長さと呼び、その特性を与えるカソード印加電界を限界
電界と呼ぶ。
【0014】FEDやその他の応用に用いられる電子放
出装置では、限界電界以上のカソード印加電界を使用す
ることはできないので、最大電流量を得るために必要な
最大電界が限界電界以下でなければならない。従来のゲ
ートホール構造を有する電子放出装置では、外部に比べ
てゲートホール内の電界が強くなるように駆動していた
ので、必ず円孔レンズによる電子広がりの影響を受けて
いた。特に、最大電流量に近づくに従って広がりの度合
いも増加する傾向は好ましくない。このような傾向で
は、放出電子のごく僅かの割合の電子が規格外の領域に
飛び込んだ場合にその電子母数が大きいために、結果と
して十分に目立つ、若しくはノイズとして無視できない
量の電子が規格外に飛び込むことになる。
【0015】本発明は、上記に鑑み、エミッション広が
りを抑制し、最大エミッション量における広がり特性を
改善することができる電子放出装置及びその駆動方法を
提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の電子放出装置は、基板と、開口部を有し前
記基板上に配置されたゲート電極と、前記開口部内に形
成されたエミッタと、該エミッタから所定の間隔をあけ
て配設されたアノード電極とを備える電子放出装置にお
いて、前記エミッタから放出される電子がアノード電極
に到達する際の広がり範囲が所定の限界値以内になるよ
うなゲート電位が印加されることを特徴とする。
【0017】本発明の電子放出装置では、収束電界が、
カソード電極から放出される電子を収束させるレンズ
(円孔レンズ)として機能するので、電子の放出軌道を
広げずにエミッション広がりを抑制し、アノード電極へ
の電子の到達状態を良好に維持することができる。レン
ズの収束効果で曲げられた電子が、アノード電極の手前
で相互に交錯するオーバーフォーカスの状態になると、
電子がアノード電極に広がった分布をもって到達する。
しかし、オーバーフォーカス時による広がり特性は、等
電位面の歪みによって発散系のレンズが機能した従来の
電子放出装置の場合に比して大幅に狭くなる。これは以
下の理由による。つまり、ゲート電極とエミッタとの間
に与えられた電界が、アノード電極とゲート電極との間
に与えられた電界以下の状態では、最も電界が高く電界
放出量が多いのがレンズの軸中心近傍であり、軸から外
れるほど放出量が減少する。レンズの球面収差の影響に
よって、レンズの縁部(軸から外れた位置)ほど発散さ
せるパワーが大きく、また、電子放出量は軸中心で最も
多く軸中心から外れるほど少なくなる電子放出分布を有
する。これらにより、電子が広がる現象が抑制される。
一方、従来の電子放出装置における発散系のレンズで
は、軸の中心近傍のエミッタに作用する電界が最も弱
く、レンズ周辺を通過する電子が最も多くなり、電子の
広がりが促進されていた。本発明におけるオーバーフォ
ーカスによる広がり現象と、従来の電子放出装置におけ
る発散系のレンズによる広がり現象とを比較した場合、
同じ程度のパワーを有するレンズであるならば、オーバ
ーフォーカスの方が広がりが少ないのは自明のことであ
る。
【0018】本発明の電子放出装置は、基板と、開口部
を有し前記基板上に配置されたゲート電極と、前記開口
部に形成されたエミッタと、該エミッタから所定の間隔
をあけて配設されたアノード電極とを備える電子放出装
置において、前記エミッタから放出される電子を前記ア
ノード電極側に向かって収束させる収束電界が形成さ
れ、前記収束電界は、前記ゲート電極及びエミッタの相
互間に与えられるゲート・エミッタ間電界が、前記アノ
ード電極及びゲート電極の相互間に与えられるゲート・
アノード間電界よりも小さい値に設定されることによっ
て形成されることを特徴とする。本発明の電子放出装置
によると、エミッション広がりを抑制すると共に、電子
の収束作用をもつ電界を簡便に得ることができる。
【0019】また、前記ゲート・エミッタ間電界と前記
ゲート・アノード間電界との大小関係に加えて、前記ゲ
ート・エミッタ間電界が前記ゲート・アノード間電界よ
りも大きな値に設定される場合にも前記エミッタから前
記アノード電極に向かって電子が放出され、前記収束電
界における等電位面の傾斜が前記アノード電極に近接す
るほど大きくなることが好ましい。
【0020】この場合、所望の広がり特性の条件を最大
限に利用することができる。エミッタからの放出電子が
元来横方向速度を持たない、または無視できる程に小さ
いと仮定した場合には、等電位面の歪みによるレンズ効
果が無い状態が最も放出電子の直進性が良好で、アノー
ド電極に到達する電子の広がりが少ないことになる。レ
ンズ効果が無い状態とは、即ちゲート電極近傍での電界
強度に変化が無いことを意味する。この状態は、ゲート
・エミッタ間電界とゲート・アノード間電界とを相互に
等しくすることによって作り出すことができる。この状
態よりも、ゲート・エミッタ間電界を強めに設定する
と、僅かに発散系のレンズ効果が生じ、エミッタに加わ
る電界増加によって電界放出量も増加する。この僅かに
発散効果を有する状態においても、所望の広がり特性の
許容範囲内に収まる場合があるので、この範囲まで含め
て電子放出装置を作動させると、エミッタからの放出電
子量をより多く確保することができる。
【0021】また、前記ゲート電極の開口部内の前記エ
ミッタは、該開口部の内周面側が前記ゲート電極側に突
出するすり鉢状に構成されることが好ましい。この場
合、すり鉢状にくぼんだエミッタ形状によって収束電界
を良好に形成することができる。
【0022】好ましくは、前記エミッタが前記開口部の
内周よりも小さく形成される。或いは、これに代えて、
前記エミッタが環状に形成されることも好ましい態様で
ある。開口部底部のカソード電極から放出される電子が
所望のアノード電極への軌道範囲から外れることが制限
となって、それ以上の電界を与えられないことがある。
しかし、本構成によれば、開口部底部における内周面に
近接する部分、或いは、開口部の中心側におけるエミッ
タが除去されるので、上記制限を取り除くことができ、
より高い電界を開口部底部に作用させることができる。
【0023】更に好ましくは、前記エミッタは、相互に
エミッション特性が異なる複数種類のカソード材料から
構成される。この場合、例えば、通常のエミッション特
性を有するカソード材料と、電子放出しきい値電界が高
くしきい値以上の電界を加えたときでも電子放出の程度
が低いエミッション特性を有するカソード材料とを混在
させれば、カソード材料を1種類とするときよりも、所
望のエミッション特性及び広がり特性を選択するための
選択範囲が広がる。
【0024】また、複数の前記開口部が前記ゲート電極
に一列状に形成され、各開口部内の前記エミッタが相互
に一直線状を成すことが好ましい。これにより、エミッ
ションが無用に左右に広がる現象を回避することができ
る。
【0025】更に好ましくは、前記開口部が略矩形状の
孔として形成され、前記エミッタが、前記略矩形状孔の
長手方向に沿って帯状に形成される。この場合、各絵素
に対応する開口部を相互に隣接させ、各絵素に夫々対応
する蛍光体を、開口部の長手方向と直交する方向に相互
に離間させる構成が可能となる。
【0026】好ましくは、前記エミッタ及びゲート電極
から成る1組の絵素が相互に3組隣接して配置されてお
り、前記3組の絵素の内の中央部分に位置する第1の絵
素における前記エミッタが前記略矩形状孔の中央部分を
長手方向に沿って延在し、前記3組の絵素の内の一側に
位置する第2の絵素における前記エミッタが前記略矩形
状孔の前記第1の絵素に近接する側を長手方向に沿って
延在し、前記3組の絵素の内の他側に位置する第3の絵
素における前記エミッタが前記略矩形状孔の前記第1の
絵素に近接する側を長手方向に沿って延在する。
【0027】この場合、各絵素に夫々対応する蛍光体を
相互に離間させた構成において、例えば、緑絵素のエミ
ッタからの放出電子には直上にエミッション広がり範囲
を持たせ、赤絵素のエミッタからの放出電子には左上方
向にエミッション広がり範囲を持たせ、青絵素のエミッ
タからの放出電子には右上方にエミッション広がり範囲
を持たせることが可能になる。
【0028】また、前記ゲート電極が略矩形状に構成さ
れ、前記開口部が、前記ゲート電極における中央部と各
隅部とに夫々形成され、中央部に位置する前記開口部で
は、前記エミッタが前記開口部内における中間部を前記
ゲート電極の長手方向に沿って延在し、各隅部に位置す
る前記開口部では、前記エミッタが前記開口部内におけ
る外方側に寄せて形成されることが好ましい。この場
合、エミッション広がり範囲を良好に設定することがで
きる。
【0029】本発明の電子放出装置は、基板と、開口部
を有し前記基板上に配置されたゲート電極と、前記開口
部内に形成されたエミッタと、該エミッタから所定の間
隔をあけて配設されたアノード電極とを備える電子放出
装置において、前記エミッタから放出される電子を前記
アノード電極側に向かって収束させる収束電界が形成さ
れ、前記収束電界における等電位面が収束軸を有するレ
ンズ状に構成され、該レンズ状の等電位面が、前記エミ
ッタから放出される電子を前記収束軸と交わるジャスト
フォーカス状態にしてから前記収束軸と交錯するオーバ
ーフォーカス状態にして前記アノード電極に到達させる
ことを特徴とする。
【0030】本発明の電子放出装置によると、エミッシ
ョン広がりを抑制し、最大エミッション量における広が
り特性を改善することができる。
【0031】ここで、前記オーバーフォーカス状態の電
子が、前記開口部よりも小さい範囲で前記アノード電極
に向かうことが好ましい。この場合、ゲート開口面積よ
りも狭い範囲のアノード電極に放出電子を絞り込んで照
射することができる。アノード電極に前記ゲート開口面
積と同じ大きさ、若しくは大きな面積になるように蛍光
体が塗布されていれば、アノード電極に照射した電子を
全て蛍光体に入射させることができる。
【0032】本発明の電子放出装置の駆動方法は、前記
電子放出装置を駆動する駆動方法であって、前記アノー
ド電極とエミッタ間の電界をしきい値に設定することを
特徴とする。
【0033】本発明の電子放出装置の駆動方法による
と、ゲート変調電位がバイアスされない正電圧によって
実現することができ、複数のピクセルから成るディスプ
レィを用いる際に、各ピクセルのしきい値電界が相互に
異なるときには、最低電位のしきい値に設定することが
できる。ばらつきに関しては、外部の記憶手段に記憶し
ておきゲート変調に反映させることができる。
【0034】本発明の電子放出装置の駆動方法は、前記
電子放出装置を駆動する駆動方法であって、前記アノー
ド電極とエミッタ間の電界を、しきい値電界と最大電流
量電界との中間の電界に設定することを特徴とする。
【0035】本発明の電子放出装置の駆動方法による
と、印加頻度が最も高い電界にアノード・カソード間電
界を設定し、ゲート電位を正/負の両極に変調すること
によって、ゲート電位が0である時間を増大させ、駆動
消費電力を低減させることができる。また、最大電流量
電界としきい値電界との中間の電界に、アノード・カソ
ード間電界を設定することにより、ゲート電位変調振幅
を最小にすることができる。
【0036】本発明の電子放出装置の駆動方法は、前記
電子放出装置を駆動する駆動方法であって、前記アノー
ド電極とエミッタ間の電界を最大電流量電界に設定する
ことを特徴とする。
【0037】本発明の電子放出装置の駆動方法による
と、ゲート変調を負電位のみで行うことができるので、
ゲート変調回路の構成を簡素化させることができる。ま
た、ゲート変調回路が故障して0電位のみが発生する場
合や、断線して浮遊電位のみが発生する場合には、画面
が最大輝度となるので、すぐに故障が判明する利点が得
られ、緊急時の照明として活用することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】図面を参照して本発明を更に詳細
に説明する。図1は、本発明の第1実施形態例における
電子放出装置としてFEDの1絵素を模式的に描いた断
面図である。基板1上には、約1μm厚のSiO2膜か
ら成る絶縁膜2が堆積されている。絶縁膜2上には、ア
ルミニウム金属が約200nm堆積されてゲート電極3
が形成される。直径5μmの円筒形状のゲートホール4
が、ゲート電極3及び絶縁膜2を夫々貫通して形成され
る。ゲートホール4の底部には、基板1上にカソード材
料が堆積されてエミッタ(以下、カソード電極とも呼
ぶ)5が形成される。ここで、ゲートホール4を設ける
以前にエミッタ5を絶縁膜2下に埋設することができ、
ゲートホール4を設けた後にその底部に堆積することも
できる。
【0039】エミッタ5のカソード材料としては、カー
ボン・ナノチューブ(以下、CNTと呼ぶ)が挙げられ
る。CNTは、内径が数nmの筒状結晶で、長いもので
は全長が1mmを超えるものも存在するフラーレンの一
形態である。CNTの端部から100nm程度の長さだ
け捕集したものを、基板1の上の鉄金属膜(図示せず)
の上に堆積させている。この金属膜は、カソード電位を
与えるための配線に接続される。
【0040】ゲート電極3から約1mm上方にアノード
電極6が配置され、アノード電極6とゲート電極3との
間が真空状態にされる。この真空度は、エミッタ5が所
望の特性を維持できる程度に設定される。残留ガスが電
子によってイオン化してエミッタ5にダメージを与え、
或いは、基板1をチャージアップさせて放電破壊を起こ
す問題が生じる。例えば、1×10-4Pa以下の真空度に
設定することにより、上記問題を排除できる。
【0041】アノード電極6の一部には蛍光体7が塗布
されている。電子は、蛍光体7に飛び込んで励起して蛍
光させる。蛍光の輝度は電子の量とその速度に依存す
る。蛍光体7に電子が飛び込む面には、アルミニウムの
蒸着膜が50nm程度に堆積されている。このアルミニ
ウム膜は、電子の飛び込み面表面を電子ダメージやマイ
ナスイオンダメージから保護し、蛍光体7に対してアル
ミニウム膜と反対の面(観察面)に蛍光を反射させるた
めに設けられる。
【0042】例えば、アノード電極6及び蛍光体7に3
kV、ゲート電極3に2V、エミッタ5に0Vを夫々印加
した場合に、アノード電極6とゲート電極3との間、及
びアノード電極6とゲートホール4との間の等電位面8
は、ゲートホール4に対応する位置でくぼむ凹型の収束
レンズ形状となる(図1)。等電位面8を表す線は概念
的であり、必ずしも実際の等電位面と対応するものでは
ないが、くぼむ傾向は共通する。
【0043】ゲートホール4の底部のエミッタ5を同心
円で分割して領域a、b、cに分割すると、領域aから
放出される電子9はほぼ真上に向かって直進し、領域a
の外周側の領域bから放出される電子11は僅かにオー
バーフォーカスの状態で蛍光体7に飛び込む。領域bの
外周側の領域cから放出される電子10は、より手前で
フォーカスしたオーバーフォーカスの状態で蛍光体7に
飛び込む。これにより、全ての電子が蛍光体7の範囲内
に飛び込む。ここで、フォーカスは、ゲートホール4付
近の等電位面8を円孔レンズとして考えるとき、円孔レ
ンズの収束軸の存在を前提として定義する。この場合、
アンダーフォーカス、ジャストフォーカス、オーバーフ
ォーカスの3つの状態があるので、アンダーフォーカス
を「電子が収束軸と交錯する前の状態」、ジャストフォ
ーカスを「電子が収束軸と交わる状態」、オーバーフォ
ーカスを「電子が収束軸と交錯して更に進んだ状態」と
して夫々定義する。
【0044】図1の状態について図2を参照して更に詳
細に説明する。図2は、図1の電子放出装置についての
エミッション電流密度特性を示すグラフである。a〜c
の3領域に関して夫々にゲート電位依存性を示した。
【0045】図2において、収束軸に最も近い位置の領
域aでは、ゲート電極3の電位(ゲート電位)を変化さ
せたときの影響が最も小さい。約1mm離れた3kV電
圧のアノード電極6に向かってエミッタ5から電子が電
界放出される状態では、ゲート電極3に与える電圧を変
えることにより、(A)電子放出を抑制する、(B)電子放出
に影響を与えない、(C)電子放出を促進する、各制御を
切り替えることができる。
【0046】アノード電極6及びカソード電極5の各電
位が0Vの状態では、ゲート電極3に3Vの電圧を与えた
場合が、(B)の影響を与えない状態に対応する。この状
態で、ゲート電位が存在する場合を均等電界の状態と呼
ぶ。ゲート電位が3V未満の場合には抑制、3Vを超える
場合には促進となる。3つの領域a、b、cからのエミ
ッション特性は、均等電界の状態で全て等しくなる。こ
の状態でのエミッション電流密度を均等電界電流密度と
呼ぶ。3つの領域a〜cの各特性は、図2に示したよう
に、異なるしきい値を夫々有し、その大小関係が上記均
等電界で反転する。図1に示した例では、最大電流量を
得る最大電界を、ゲート電位2Vと設定した。この2Vと
は、均等電界よりもゲート電極3とエミッタ5との間の
電界が小さい場合である。
【0047】図1では、電子放出装置としてFEDの一
部構造(絵素の構成部分)のみを表したので、ここで全
体構成を簡単に説明する。FEDのディスプレィは、絵
素を2次元にマトリックス状に配列して実現している。
2次元に配列した絵素に夫々絵素信号を供給するために
種々の方法が考えられるが、一例として、単純マトリク
ス方式の場合を示す。この例では、短冊状のゲート電極
3を複数並べ、ゲート電極3と直交する方向にエミッタ
5を配列する。FEDでは、アノード電極6は母材がガ
ラス材料であり、ガラスの下面(真空側になる面)にI
TO導電膜が堆積される。ITO面には蛍光体、アルミ
ニウム膜の順で更に膜が堆積されている。
【0048】ここで、ゲート下面電位を基準とした電界
関係だけでは規定できない範囲で等電位面が凹型になる
場合を説明する。例えば、図23で説明した従来の電子
放出装置では、等電位面やオーバーフォーカスに関する
考察がないので、アノード電極ターゲット領域の大きさ
がゲートホール4の底部のカソード電極5の大きさより
も広がる可能性がある。
【0049】まず、等電位面について考察する。この場
合、図3に示すように、平行平板としてアノード電極6
とカソード電極5を配置してその間にゲートホール4を
設けたゲート電極3を配置した3極管構造を想定する。
ここで、カソード電極5の表面とゲート電極3の裏面と
の間の距離をt(gk)、アノード電極6の裏面とカソード
電極5の表面との間の距離をt(ak)、アノード電極6の
電位をVa、ゲート電極3の電位をVg、ゲート電極3の膜
厚をt(g)、ゲート電極3の裏面とカソード電極5の表面
との間の距離をt(gk)、アノード電極6の裏面とゲート
電極3の表面との間の距離をt(ag)、及び、カソード電
極5の電位をVkとする。なお、Vk=0[V]として以降
の式を簡素化する。
【0050】ゲート電極の膜厚t(g)>0の場合に、ゲー
トホール4近傍における等電位面が 凹型を形成するためには、次式Va/t(ak)≧Vg/t(gk) ……(1) を満たすことが必要である。ここで、(1)式を Vg≦{t(gk)/t(ak)}・Va ……(2) に変形する。
【0051】一方、ゲートホール4近傍の等電位面が凸
型を形成するためには、次式Va/t(a k)≧(Va-Vg)/t(ag) ……(3) を満たすことが必要である。アノード電極6とエミッタ
5とを上下逆にして考える場合に、(1)式と同じ状況
が得られる。ここで、(3)式に t(ag)=t(ak)-t(g)-t(gk) の関係式を代入して、次式 Vg≧[{t(g)+t(gk)}/t(ak)]・Va ……(4) を得る。
【0052】(2)式及び(4)式で定義されない領域
は、 {t(gk)/t(ak)}・Va<Vg<[{t(g)+t(gk)}/t(ak)]・Va ……(5) で示される。この領域における等電位面は、カソード電
極5からゲート電極3に向かって凸型になり、ゲート電
極3の厚みの範囲内で次第に凹型に移行する。凹凸型を
形成する等電位面の傾きの観点では、(2)式、(4)
式、(5)式の3つの領域に分類することができる。
【0053】図4は、(2)式、(4)式、(5)式に
よる上記3つの領域を表すグラフである。グラフでは、
(2)式、(4)式、(5)式による各領域がこの順で
接している。(2)式による領域では凹型、即ちカソー
ド電極5から放出された電子が、等電位面から収束レン
ズとしての作用を受ける。
【0054】ここで、理解を助けるため、境界領域であ
るVg={t(gk)/t(ak)}・Vaの状況について説明する。
例えば、ゲート電極3の膜厚が0であれば、等電位面は
カソード電極5及びアノード電極6に対して平行に形成
される。しかし実際には、ゲート電極3は膜厚を有する
ので、この膜厚が割り込む分だけ、ゲートホール4内に
おける等電位面がゲート電極4の上面にせり上がり、凹
型等電位面を形成する。
【0055】(2)式による領域では、カソード電極5
から見て凸型の等電位面を形成するが、アノード電極6
から見ると凹型の等電位面を形成する。即ち、(2)式
で表現した状況を上下逆にして考えた場合である。
【0056】(4)式による領域では、膜厚を有するゲ
ート電極3(ゲートホール4)の中に、Va/t(ak)(以
下、アノード電界と呼ぶ)と等しい電界が存在する。ゲ
ート電極3の裏面とカソード電極5の表面との間の電界
がアノード電界よりも強く等電位面が密なために、アノ
ード電界よりもカソード電極側の等電位面が凸型とな
る。
【0057】図5は、(5)式による等電位面のレンズ
作用をシミュレートした結果を表す図である。カソード
電極5から放出された電子では、ゲートホール4の中心
のX座標0.0から放出された電子9は同図上方のアノー
ド電極(図示せず)に対し一直線に進み、中心からやや
外側のX座標2.0から放出された電子11は収束タイプ
のレンズ効果により、凹型及び凸型双方の等電位面の付
合わせ面を通過してからは中心軸側にやや傾斜して進
む。電子11よりも更にゲート電極3側に近接するX座
標4.0から放出される電子10は、凹型及び凸型双方の
等電位面の付合わせ面まではやや中心軸から離れる方向
に曲がるが、付合わせ面を通過すると凹型の等電位面の
収束レンズ効果によって、中心軸側に収束するように進
路を曲げて進む。同図で、各等電位面の電位差は約0.
1Vである。
【0058】一方、アノード電界よりもアノード電極6
側の位置では、ゲート電極3表面とアノード電極6裏面
との間の電界がアノード電界よりも強く等電位面が密な
ため、等電位面が凹型となる。カソード電極5の中心か
らずれた位置から放出される電子は、凹型の等電位面に
対する垂直方向に沿って中心軸側に進んで収束し、高い
位置に到達するとオーバーフォーカスして外側に発散し
つつ進む。
【0059】次いで、アノード電極6に電子が到達する
範囲であるターゲット領域について考察する。まず、円
孔レンズが発散レンズとして機能する場合には、ゲート
ホール4底部のエミッタ領域よりもターゲット領域が広
くなるが、狭くなることはない。一方、円孔レンズが収
束レンズとして機能する場合には、ターゲット領域がエ
ミッタ領域よりも広くなる場合と、狭くなる場合と、エ
ミッタ領域と同じになる場合とがある。ターゲット領域
が広くなるか狭くなるかは、等電位面についての考察で
行った電界の定義だけでは決定できない。例えば、カソ
ード電極5に対しアノード電極6を1mm離して1kV
の電圧を印加した場合、及び、10mm離して10kV
の電圧を印加した場合の双方で1kV/mmの電界が得ら
れるが、収束レンズ系を通過した電子が、カソード・ア
ノード電極間の距離が1mmの場合にはオーバーフォー
カス前または直後でターゲット領域が狭くなり、カソー
ド・アノード電極間の距離が10mmの場合には十分に
オーバーフォーカスすることによりターゲット領域が広
くなる可能性がある。
【0060】以上を整理すると表1のようになる。
【0061】
【表1】
【0062】次に、本発明の第2実施形態例について説
明する。図6は、第1実施形態例で説明した電子放出装
置のFEDの1絵素を、放出電子の描き方を若干変えて
示す断面図、図7は、ゲート電極とカソード電極間の電
界がアノード電極とゲート電極間の電界よりも強い場合
の電子放出軌道を表した断面図である。図6及び図7で
は、収束(抑制)と発散(促進)の夫々の典型的な状態
を夫々示す。
【0063】図6では、ゲートホール4の底部に堆積し
たカソード電極5の外周側から放出される電子12と、
中心側から放出される電子9のみを示し、ゲート電極3
とカソード電極5との間の電界が、アノード電極6とゲ
ート電極3との間の電界よりも小さく設定される。これ
により、ゲートホール4内及びその近傍に形成される電
界が、アノード電極6に向かって放出される電子を収束
するレンズ効果を奏する。このため、電子がオーバーフ
ォーカスしてアノード電極6に飛び込む。このオーバー
フォーカス状態は必ず発生するのではなく、収束するレ
ンズ効果が顕著な場合にのみ発生する。均等電界の状態
に近ければ、アンダーフォーカスまたはジャストフォー
カスの状態で、電子がアノード電極6に飛び込む。
【0064】一方、図7では、ゲート電極3とカソード
電極5との間の電界が、アノード電極6とゲート電極3
との間の電界よりも大きく設定される。これにより、ゲ
ートホール4内及びその近傍に形成される電界が、アノ
ード電極6に向かって放出される電子を発散させるレン
ズ効果を奏する。このため、レンズ周辺側から放出され
る電子12が、外側に広がりつつアノード電極6に到達
する。
【0065】図8は、収束及び発散の各状態を網羅した
エミッション広がり特性を示すグラフである。同図で
は、領域a、b、c(図1参照)におけるアノード電極
6への到達時のエミッション広がり特性を示した。グラ
フの縦軸はアノード電極到達時のエミッション広がり範
囲を、横軸はゲート電極の電位を夫々示し、長さDとは
最大広がり範囲を測った場合の直径を示す(図23参
照)。
【0066】均等電界では、領域a、b、cから放出さ
れた電子は、レンズの作用を受けずにアノード電極6に
向けてほぼ直進する。広がり範囲Dの大きさが0でない
理由は、各領域a、b、c自身が夫々に大きさを有する
ことと、初速度が完全には0でないことである。グラフ
中で、ターゲット領域に対する限界広がり範囲を境界と
して曲線が太線から細線になる。
【0067】均等電界未満では、電子軌道が収束方向に
曲げられる。ゲート電位が低下してオーバーフォーカス
の度合いが強くなると、広がり範囲Dが大きくなる。広
がり範囲Dが大きくなる度合いは、周辺部に近い領域c
からのエミッションにおいて最も大きい。一方、均等電
界よりもゲート電位が大きい場合には、円孔レンズが発
散系レンズとして機能するので、ゲート電位の上昇に従
って急激に広がり範囲Dが大きくなる。中でも、領域c
において最も急激に大きくなる。
【0068】図8では、結果として均等電界付近で広が
り特性が極小となる。厳密には、ゲート電位が均等電界
よりも小さい場合に、適度に収束作用が働いて極小とな
る。図8に示されるように限界広がり範囲を設定する
と、その条件を満たすゲート電位の条件が決まる。図8
では、条件を満たす範囲について線を太く記載した。
a、b、cの各領域について太線の範囲内であるなら
ば、アノード電極6での広がり条件を満たす。本実施形
態例では、限界広がり範囲を超えない太線の範囲で電位
を設定することによって、良好なエミッション広がり特
性を得る。
【0069】図9は、広がり特性に関する条件範囲とエ
ミッション電流密度特性とを重ねて描いたグラフであ
る。グラフにおける上方の領域には、図8の結果を示し
た。領域a〜cの夫々に関して条件を満たす範囲を、最
上方の領域に両端矢印a〜cで示した。グラフにおける
下方には、ゲート電位に対するエミッション電流密度特
性を示した。
【0070】図8から得られた条件満足領域をグラフ上
方に太線で描いた。各領域について均等電界以下の範囲
では、各しきい値電界以上の全範囲で条件を満たしてお
り、均等電界よりも大きな領域では、最も低いゲート電
位で条件を外れる電位(cの条件範囲を示す両端矢印の
右端)までが条件を満たす。本実施形態例では、この範
囲までを駆動領域として利用する。3領域a、b、cを
総合したエミッション電流量を「総合」のラベルで示
す。この曲線に限っては電流密度ではなく、電流量とし
た。
【0071】本発明の第3実施形態例について説明す
る。図10は、図8と同様の均等電界付近で極小となる
広がり特性を示すグラフである。同グラフでは、限界広
がり範囲が図8の場合よりも厳しく設定される。この結
果として、太線で表す条件を満たす範囲が図8の場合よ
りも狭くなっている。
【0072】図11は、図9と同様の広がり特性に関す
る条件範囲と、エミッション電流密度特性とを相互に重
ねて描いたグラフである。同グラフでは、限界広がり範
囲を厳しく設定したことを反映して、総合のエミッショ
ン電流量に関してその下限と上限とが決まっているの
で、これ以下の電流量になるようにゲート電位を設定す
ると、広がり特性が不良になる。この特性の電子放出装
置では、蛍光体7の電子飛込み面を覆うアルミニウム蒸
着膜の膜厚を厚くして蛍光体7に到達するまでの電子の
減衰量を増加させ、或いは、蛍光特性に感度が低いしき
い値をもつ蛍光体7を使用する等の対策を施す。
【0073】次に、本発明の第4実施形態例について説
明する。図12は、図1に示した電子放出装置のエミッ
タ5における領域cを除去して、エミッタ5をゲートホ
ール4の内周よりも小さくした例である。図11のグラ
フを参照して、図12の電子放出装置の特性を説明す
る。本実施形態例では、領域cが削除されたことによ
り、蛍光体7に良好に飛び込む条件を満たす範囲が増大
する。
【0074】次に、本発明の第5実施形態例について説
明する。図13は、図1における領域bのみにカソード
材料を堆積して環状のエミッタ5とした例を示す断面図
である。図14は、領域bのみにエミッタ5を堆積した
際の特性を示すグラフである。領域bのみにエミッタ5
が存在することにより、最大エミッション電流密度を十
分に大きく確保し、且つ、最小エミッション電流量を十
分に小さく確保することができる。その結果として、階
調表示を広くすることができる。また、ゲート電位の変
化に対して感度が低い領域aが除去されたことにより、
ゲート電位の変化に対するエミッション電流密度量の変
化が急峻になる。これにより、小さな振幅のゲート電位
変化で広い階調を制御することができる。
【0075】次に、本発明の第6実施形態例について図
12を再度参照して説明する。本実施形態例では、領域
aのカソード材料として、領域bのカソード材料よりも
仕事関数が高いものを使用する。この結果として、蛍光
体7の中央部分を励起する電子の量が減少し、電子が蛍
光体7の全面に比較的均一に照射するので、蛍光体7の
一部が焼けて劣化する等の現象を防止することができ
る。
【0076】次に、本発明の第7実施形態例について説
明する。図15は、電子が放出される方向からFEDの
表示部分の一部を正面に観察した場合の図である。1つ
の画素13は、赤絵素14、緑絵素15及び青絵素16
の3色の蛍光体絵素から構成される。ブラックマトリク
ス17が絵素14〜16の隙間を埋めている。不良エミ
ッション広がり範囲18と許容エミッション広がり範囲
19とを楕円の範囲で夫々示す。双方の広がり範囲1
8、19とも、緑絵素15におけるエミッションの広が
り状況を示す。
【0077】不良エミッション広がり範囲18では、例
えば、赤にじみ20と青にじみ21が発生する等の目立
つ不良が発生する。FEDにおいては、僅かでも別の色
を混ぜて表示すると目立つ傾向があるので、許容できな
い。一方、許容エミッション広がり範囲19では、同色
にじみ22が発生するだけなので、空間分解能の劣化は
生じるが、色が損なわれることはなく、許容できる。
【0078】図15における解析を基に本実施形態例を
説明する。図16は、図15の許容エミッション広がり
範囲19で示した広がり特性を実現する電子放出装置の
例であり、電子が放出される方向からエミッタ5を正面
に観察している。図16で、3つのゲートホール(開口
部)4がゲート電極3に一列状に形成され、各ゲートホ
ール4内に形成されたエミッタ5が一直線状を成してい
る。つまり、ゲート電極3に3箇所設けられた例えば直
径10μmの円筒形状のゲートホール4の各底部には、
縦長の長方形に類似した形状にエミッタ5が塗布されて
いる。なお、ゲート電極3の下部には、図示しない絶縁
膜が配設される。
【0079】図16に示す形状にカソード材料が塗布さ
れて電極エミッタ5が構成されることにより、同図の左
右方向にエミッションが広がる現象が厳しく抑制され
る。反面、上下方向での抑制は緩くされる。その結果と
して、図15における許容エミッション広がり範囲19
でのエミッション広がり特性と同様の特性が得られる。
本実施形態例では、上下方向に広がっている分、空間電
荷効果でエミッションが無用に左右に広がることを回避
できる。
【0080】次に、本発明の第8実施形態例について説
明する。図17は、図15に示したR、G、Bの3色か
ら成る1絵素をもつFEDの要部を示す図である。図1
7では、図16と同じ方向からエミッタ5を観察してい
る。
【0081】図17に示すように、FEDでは、赤絵素
14、緑絵素15及び青絵素16の各絵素に関し、ゲー
トホール4が略矩形状の孔として形成され、エミッタ5
が、略矩形状孔の長手方向に沿って帯状に形成される。
エミッタ5及びゲート電極3から成る1組の絵素が相互
に3組隣接して配置されている。3組の絵素の内の中央
部分に位置する第1の絵素におけるエミッタ5が、略矩
形状のゲートホール4の中央部分を長手方向に沿って延
在する。3組の絵素の内の左側に位置する第2の絵素に
おけるエミッタ5が、ゲートホール4の第1の絵素に近
接する側を長手方向に沿って延在する。また、3組の絵
素の内の右側に位置する第3の絵素におけるエミッタ5
が、ゲートホール4の第1の絵素に近接する側を長手方
向に沿って延在する。
【0082】本実施形態例の特徴は、各絵素14〜16
に対応するゲートホール4が相互に隣接しているのに対
し、各絵素14〜16の蛍光体(図示せず)が相互に離
間していることである。この関係に対応させるため、緑
絵素15のエミッタ5からの放出電子には直上にエミッ
ション広がり範囲23を持たせ、赤絵素14のエミッタ
5からの放出電子には左上方向にエミッション広がり範
囲23を持たせ、青絵素16のエミッタ5からの放出電
子には右上方にエミッション広がり範囲23を持たせ
る。これらの広がり範囲特性を実現するために、本実施
形態例では、角を丸めた縦長の長方形状のゲートホール
4と、縦長の長方形形状のエミッタ5を採用した。同時
に、赤絵素14に対応するエミッタ5はゲートホール4
中央よりも右寄りに、緑絵素15に対応するエミッタ5
はゲートホール4の中央に、青絵素16に対応するエミ
ッタ5はゲートホール4の左寄りに配置した。
【0083】次に、本発明の第9実施形態例について説
明する。図18は、図15における緑絵素15に対応す
る電子放出装置を示す正面図である。図18では、ゲー
ト電極3が略矩形状に構成され、ゲートホール4が、ゲ
ート電極3における中央部と各隅部とに夫々形成され
る。中央部に位置するゲートホール4では、エミッタ2
6がゲートホール4内における中間部をゲート電極3の
長手方向に沿って延在し、各隅部に位置するゲートホー
ル4では、エミッタ24、25がゲートホール4内にお
ける外方側に寄せて形成される。つまり、5つのゲート
ホール4がゲート電極3に形成されており、各ゲートホ
ール4の底部にカソード材料が塗布されてエミッタ2
4、25が形成されている。本実施形態例では、ゲート
ホール4の位置に応じてカソード材料の塗布位置が異な
る。
【0084】上記構成において、中心から図の左方向に
ずれて配置された左寄りゲートホール4では、カソード
材料が左寄り部分だけに塗布される。逆に、右寄りゲー
トホール4では、右寄り部分のみにカソード材料が塗布
される。中央ゲートホール4では、図13と同様に、中
央部分にカソード材料が塗布されている。これにより、
エミッション広がり範囲が良好に設定される。ここで例
えば、右寄りゲートホール4の内で図の右上に位置する
ゲートホール4においても、上方向に配置されることに
対するゲート材料塗布への配慮はなされていない。これ
は、図15を用いて説明した許容エミッション広がり範
囲に関する考察の結果である。
【0085】以上のように、本発明の第1〜第9実施形
態例における電子放出装置によれば、簡素な構成を有す
るものでありながらも、エミッション広がり特性を向上
させることができる。FEDにおいては、僅かな割合で
も母数が大きいために、規格外に広がったエミッション
量自身が多くなって色にじみ等の深刻な画質劣化を引き
起こす。このため、最大エミッション量におけるエミッ
ション広がりが最も厳しく取り扱われる。本発明の第1
〜第9実施形態例では、最大エミッション量における広
がり特性向上に特に有利である。
【0086】また、各実施形態例における電子放出装置
を、進行波管アンプやブラウン管電子ビーム露光装置な
どの電子ビーム応用装置に適用する場合には、元来細い
ビームで複雑なレンズによる絞り込みが不要であり、レ
ンズの各種の収差の影響を受けにくく、レンズによる像
の拡大の懸念が少ない。このため、電子引出し部分から
細い電子ビームが得られ、非常に細い電子ビームを容易
に得ることができる。
【0087】更に、各実施形態例における電子放出装置
では、電界によって電子を取り出す方式を採用している
ので、カソード材料から成るエミッタの温度を上げる必
要がなく、熱による機械寸法のずれや、輻射熱の影響で
周辺構成部品が劣化する等の懸念がない。これにより、
電子放出装置を構成する材料の選択範囲が広がるととも
に、微細構造を採用することができる。
【0088】ここで、本発明の電子放出装置の駆動方式
について説明する。蛍光体を電子で励起して発光させる
ディスプレィでは、蛍光体の発光効率をk、電子電流量
をI、加速電圧をV、発光時間をt、1フレーム時間を
T、発光面積をs、ピクセル全体面積をSとするとき、
発光輝度Lが、次式 L=k×I×V×t/T×s/S ……(6) で表わされる。
【0089】図19は、アナログ変調方式を示す模式図
である。(6)式における発光効率kは、電子のエネル
ギーを光に変換する効率であり、電子電流量Iと加速電
圧Vとを掛け合わせたものが、電子のエネルギーであ
る。電子電流量Iは、ゲート・カソード間の印加電圧を
制御することによって変化させることができる。加速電
圧Vは、カソード電極とアノード電圧との間の電位差で
ある。カソード電極に対してアノード電圧は、例えば2
kV〜6kV程度で使用されることが多い。アナログ変
調方式では、カソード電圧に対するゲート電圧を変調す
ることによって電流量Iを変調して輝度階調を表現す
る。
【0090】図20は、パルス幅変調方式を示す模式図
である。(6)式におけるt/Tは、表示期間内でパル
ス状に電子照射する場合に考慮すべき要素である。ディ
スプレィにおいては、一定の表示期間であるフレームの
内の限られた期間内で、発光時間tだけ発光させる。t
/Tが短ければ、1フレーム時間Tにおける平均輝度が
低下する。人間の目には残像効果があるので、発光輝度
はこの平均輝度となる。プラズマディスプレィパネル
(PDP)及び液晶表示装置(LCD)の大半が、t/
Tを変化させるパルス幅変調によって輝度階調を変化さ
せている。
【0091】(6)式におけるkは一定として取り扱っ
たが、実際の蛍光体では、一定値以上の電流が入力され
ても輝度が増加しない飽和現象が存在する。電子放出に
おいては、電子放出を開始するしきい値電界強度が存在
する。しきい値電界よりも低い電界では電子放出は開始
されない。
【0092】上記性質を踏まえて電子放出装置の駆動方
法について説明する。ここでは、アナログ変調方式によ
って、(1)アノード・カソード間の電界をしきい値に
設定して行う駆動方式、(2)アノード・カソード間の
電界を、しきい値電界と最大電流量電界との中間電界に
設定して行う駆動方式、(3)アノード・カソード間の
電界を最大電流量電界に設定して行う駆動方式、を夫々
示す。
【0093】駆動方式(1)によると、ゲート変調電位
がバイアスされない正電圧によって実現できるメリット
がある。複数のピクセルから成るディスプレィを用いる
際に、各ピクセルのしきい値電界が相互に異なるときに
は、最低電位のしきい値に設定する。ばらつきについて
は、外部の半導体メモリに記憶しておいてゲート変調に
反映させることができる。
【0094】駆動方式(2)によると、種々の設定が可
能である。第1の設定例としては、印加頻度が最も高い
電界にアノード・カソード間電界を設定しておき、ゲー
ト電位を正/負の両極に変調する。これにより、ゲート
電位が0である時間を増大させ、駆動消費電力を低減さ
せることができる。第2の設定例としては、最大電流量
電界としきい値電界との中間の電界に、アノード・カソ
ード間電界を設定する。これにより、ゲート電位変調振
幅が最小になるメリットが得られる。
【0095】駆動方式(3)によると、ゲート変調を負
電位のみで行うことができるので、ゲート変調回路の構
成を簡素化させることができる。また、ゲート変調回路
が故障して0電位のみが発生する場合や、断線して浮遊
電位のみが発生する場合には、画面が最大輝度となるの
で、すぐに故障が判明する利点が得られ、緊急時の照明
として活用することができる。
【0096】駆動方式(1)〜(3)では、パルス幅変
調の場合にも上記と同様のことが言える。例えば、パル
ス幅変調方式により駆動方式(2)を行う場合に、輝度
頻度が高い電界でデューティ(duty)が50%にな
るように設定することにより、駆動負荷を軽減すること
ができる。パルス幅変調方式では、最小ビットパルスが
短く周波数が高くても、複数ビットを連続して同じ状態
に保持することにより、その分だけ実質的な周波数を低
下させ、駆動負荷(充放電現象)を低減できる。1フレ
ームの半分の期間がオンで他の期間がオフであるdut
y50%の状態で、負荷が最も小さくなる。
【0097】次いで、本電子放出装置の駆動方式を別の
視点から説明する。例えば、アノード電極に高電位を与
えてゲート電極に低電位を与える方式は、従来から頻繁
に活用されており、ゲート・カソード間に周辺よりも高
い電界を与えて電子を引き出す場合に好適に利用され
る。しかし、本発明ではこれとは逆に、ゲート・カソー
ド間に周辺よりも低い電界を与えて電子放出を抑制する
ことに特徴がある。この特徴を踏まえて、本電子放出装
置の駆動方法を更に説明する。
【0098】定常状態では、アノード・カソード間の電
界がしきい値を越えるので、ゲート電位で抑制しなけれ
ばならない。本駆動方法では、電圧の印加開始時(装置
起動時)や終了時に、アノード・カソード間電界がしき
い値電界以下の状態で初めてゲート電位の印加を停止す
る。
【0099】
【実施例】次に、本電子放出装置の駆動方法の実施例を
説明する。
【0100】[実施例1]しきい値電界が2V/μm、
定常アノード・カソード間電界が5kV/μmの場合
に、起動時のアノード・カソード間電界が1.9V/μ
m未満ではゲート印加を行わず、この値に至った時点で
ゲート・カソード間電界を1.9V/μmになるように
ゲート電位を印加する。次いで、アノード・カソード間
電界を5kV/μmまで上昇させる。終了時には、これ
と逆の手順で実行する。このような手順で実行すること
によって、ゲート電位印加時には、ゲート電極周辺の電
界が1.9V/μmになった状態でゲート電位を1.9
V/μmにすることができるので、放電事故が発生する
ことがなく、電子放出も発生することがない。
【0101】次に、CNTをカソード材料に用いた電子
放出基板の作製方法について説明する。図21はゲート
ホール内の構造を示す断面図であり、(a)〜(d)は
形成工程を段階的に夫々示す。
【0102】図21(a)に示すように、まず、ガラス
基板30上にアルミニウム金属製の薄膜(図示せず)を
形成してパターニングする。次いで、スピンコート法に
よって、ポリイミドフィルム31を膜厚50μmとなる
ように塗布する。更に、メッキ法によって、ポリイミド
フィルム31上に銅薄膜32を膜厚20μmとなるよう
に堆積した後、レジスト膜(図示せず)を塗布してパタ
ーニングし、銅薄膜32をエッチングしてゲート電極を
形成する。次いで、この銅薄膜32をマスクとしてポリ
イミドフィルム31を更にエッチングして絶縁膜を形成
する。これにより、直径50μmのゲートホール34が
得られる。
【0103】図21(b)に示すように、ゲート電極3
2表面とゲートホール34の底部とに、平面上で1μm
程度になるようにCNT含有レジスト膜35を夫々塗布
する。同図では、CNT含有レジスト膜35がゲートホ
ール34の端面でも連続しているように描いたが、端面
で段切れしている場合もある。ゲートホール34の底部
におけるCNT含有レジスト膜35の塗布形状は、図示
したように、液体時の表面張力の作用によって、すり鉢
状になる。
【0104】図21(c)に示すように、ゲート電極3
2の表面に塗布されたCNT含有レジスト膜35を、ケ
ミカル・メカニカル・ポリッシング(CMP)法を用い
て除去する。同図では、ゲートホール34の底部に塗布
されたCNT含有レジスト膜35は削られずに残存す
る。
【0105】図21(d)に示すように、大気中で、約
300℃で20分間の加熱処理を施すことにより、CN
T含有レジスト膜35の主成分である有機物を気化させ
て除去して、体積減少する。これにより、ゲートホール
34底部にCNTのみが、すり鉢状に固定されて残存す
る。
【0106】次に、CNTをカソード材料として用いた
電子放出基板の別の作製方法について説明する。図22
はゲートホール内の構造を示す断面図であり、(a)〜
(c)は形成工程を段階的に夫々示す。
【0107】図22(a)に示すように、まず、ガラス
基板30上にアルミニウム金属製の薄膜(図示せず)を
形成してパターニングする。次いで、スピンコート法に
よって、ポリイミドフィルム31を膜厚50μmとなる
ように塗布する。更に、メッキ法によって、ポリイミド
フィルム31上に銅薄膜32を膜厚20μmとなるよう
に堆積した後、レジスト膜(図示せず)を塗布してパタ
ーニングし、銅薄膜32をエッチングしてゲート電極を
形成する。次いで、この銅薄膜32をマスクとしてポリ
イミドフィルム31を更にエッチングして絶縁膜を形成
する。この場合、ポリイミドフィルム31をオーバーエ
ッチングすることによって、ゲート電極(32)の厚さ
内で直径50μm、底部で直径100μmのゲートホール
34が得られる。
【0108】図22(b)に示すように、ゲート電極3
2表面とゲートホール34の底部とに、平面上で1μm
程度になるようにCNT膜36を夫々塗布する。この場
合、CNT膜36は端面で段切れしている。ゲートホー
ル34の底部におけるCNT膜36の塗布形状は、図示
したように、液体時の表面張力の作用によって、すり鉢
状になる。
【0109】図22(c)に示すように、ゲート電極
(32)の表面に塗布されたCNT膜36をCMP法で
除去する。同図では、ゲートホール34の底部に塗布さ
れたCNT膜36は削られずに残存する。
【0110】以上、図21及び図22で説明したよう
に、ゲートホール34底部のエミッタ(カソード電極)
を、ゲートホール34の内周面側がゲート電極32側に
突出するすり鉢状に構成したので、すり鉢状にくぼんだ
エミッタ形状によって収束電界を良好に形成することが
できる。
【0111】以上、本発明をその好適な実施形態例に基
づいて説明したが、本発明の電子放出装置及びその駆動
方法は、上記実施形態例の構成にのみ限定されるもので
はなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更
を施した電子放出装置及びその駆動方法も、本発明の範
囲に含まれる。
【0112】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の電子放出
装置及びその駆動方法によると、エミッション広がりを
抑制し、最大エミッション量における広がり特性を改善
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態例における電子放出装置
としてFEDの1絵素を模式的に描いた断面図である。
【図2】図1の電子放出装置についてのエミッション電
流密度特性を示すグラフである。
【図3】特定の範囲で等電位面が凹型になる場合を説明
するための模式図である。
【図4】(2)式、(4)式、(5)式による3領域を
表すグラフである。
【図5】(5)式による等電位面のレンズ作用をシミュ
レートした結果を表す図である。
【図6】本発明の第2実施形態例における電子放出装置
としてFEDの1絵素を模式的に描いた断面図である。
【図7】第2実施形態例においてゲート電極とカソード
電極間の電界がアノード電極とゲート電極間の電界より
も強い場合の電子放出軌道を表した断面図である。
【図8】第2実施形態例における収束及び発散の各状態
を網羅したエミッション広がり特性を示すグラフであ
る。
【図9】第2実施形態例における広がり特性に関する条
件範囲とエミッション電流密度特性とを重ねて描いたグ
ラフである。
【図10】本発明の第3実施形態例における広がり特性
を示すグラフである。
【図11】第3実施形態例における広がり特性に関する
条件範囲とエミッション電流密度特性とを相互に重ねて
描いたグラフである。
【図12】本発明の第4及び第6実施形態例を説明する
ための電子放出装置の1絵素を模式的に描いた断面図で
ある。
【図13】本発明の第5実施形態例における電子放出装
置の1絵素を模式的に描いた断面図である。
【図14】第5実施形態例で領域bのみにエミッタを堆
積した際の特性を示すグラフである。
【図15】本発明の第7実施形態例におけるFEDの表
示部分の一部を示す正面図である。
【図16】第7実施形態例における広がり特性を実現す
る電子放出装置の例である。
【図17】本発明の第8実施形態例におけるR、G、B
の3色から成る1絵素をもつFEDの要部を示す図であ
る。
【図18】本発明の第9実施形態例におけるR、G、B
の3色から成る1絵素をもつFEDの要部を示す図であ
る。
【図19】アナログ変調方式を示す模式図である。
【図20】パルス幅変調方式を示す模式図である。
【図21】ゲートホール内の構造を示す断面図であり、
(a)〜(d)は形成工程を段階的に夫々示す。
【図22】ゲートホール内の構造を示す断面図であり、
(a)〜(c)は形成工程を段階的に夫々示す。
【図23】従来のFEDの1絵素を模式的に描いた断面
図である。
【図24】図23で示した従来の電子放出装置の動作特
性を示すグラフである。
【図25】ゲートホール開口部での電界の差が大きい場
合の現象(1)を説明するグラフである。
【符号の説明】
1:基板 2:絶縁膜 3:ゲート電極 4:ゲートホール 5:エミッタ 6:アノード電極 7:蛍光体 8:等電位面 9:領域aから放出される電子 10:領域bから放出される電子 11:領域cから放出される電子 12:周辺部から放出される電子 13:画素 14:赤絵素 15:緑絵素 16:青絵素 17:ブラックマトリクス 18:不良エミッション広がり範囲 19:許容エミッション広がり範囲 20:赤にじみ 21:青にじみ 22:同色にじみ 23:エミッション広がり範囲 24:左寄りゲートホール 25:右寄りゲートホール 26:中央ゲートホール 30:ガラス基板 31:ポリイミドフィルム 32:銅薄膜 34:ゲートホール 36:CNT膜

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板と、開口部を有し前記基板上に配置さ
    れたゲート電極と、前記開口部内の基板上にカソード材
    料を薄膜状に形成してなるエミッタと、該エミッタから
    所定の間隔をあけて配設され、所定の電位を印加される
    アノード電極とを備える電子放出装置において、 前記エミッタから放出される電子がアノード電極に到達
    する際の広がり範囲が所定の限界値以内になるようなゲ
    ート電位が印加されることを特徴とする電子放出装置。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記ゲート電極と前記
    エミッタ電極間に形成されるゲート・エミッタ間電界
    が、前記アノード電極と前記ゲート電極間に形成される
    ゲート・アノード間電界よりも小さい値に設定されるこ
    とを特徴とする電子放出装置。
  3. 【請求項3】前記エミッタは、前記カソード材料が前記
    開口部内ですり鉢状に形成されたものであることを特徴
    とする請求項1または請求項2に記載の電子放出装置。
  4. 【請求項4】前記エミッタは、前記カソード材料が前記
    開口部内に露出する基板上の外周部を除く開口部内周よ
    りも小さい領域に形成されたことを特徴とする請求項1
    または請求項2に記載の電子放出装置。
  5. 【請求項5】前記エミッタは、前記カソード材料が前記
    開口部内に露出する基板上の外周部と中央部を除き環状
    に形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2
    に記載の電子放出装置。
  6. 【請求項6】前記エミッタは、相互にエミッション特性
    が異なる複数種類のカソード材料から構成されることを
    特徴とする請求項1乃至5の内の何れか1項に記載の電
    子放出装置。
  7. 【請求項7】複数の前記開口部が前記ゲート電極に一列
    状に形成され、各開口部内の前記エミッタが相互に一直
    線状を成すことを特徴とする請求項1または請求項2に
    記載の電子放出装置。
  8. 【請求項8】前記開口部が略矩形状の孔として形成さ
    れ、前記エミッタが、前記略矩形状孔の長手方向に沿っ
    て帯状に形成されることを特徴とする請求項1または請
    求項2に記載の電子放出装置。
  9. 【請求項9】前記エミッタ及びゲート電極から成る1組
    の絵素が相互に3組隣接して配置されており、 前記3組の絵素の内の中央部分に位置する第1の絵素に
    おける前記エミッタが前記略矩形状孔の中央部分を長手
    方向に沿って延在し、前記3組の絵素の内の一側に位置
    する第2の絵素における前記エミッタが前記略矩形状孔
    の前記第1の絵素に近接する側を長手方向に沿って延在
    し、前記3組の絵素の内の他側に位置する第3の絵素に
    おける前記エミッタが前記略矩形状孔の前記第1の絵素
    に近接する側を長手方向に沿って延在することを特徴と
    する請求項8に記載の電子放出装置。
  10. 【請求項10】前記ゲート電極が略矩形状に構成され、
    前記開口部が、前記ゲート電極における中央部と各隅部
    とに夫々形成され、 中央部に位置する前記開口部では、前記エミッタが前記
    開口部内における中間部を前記ゲート電極の長手方向に
    沿って延在し、 各隅部に位置する前記開口部では、前記エミッタが前記
    開口部内における外方側に寄せて形成されることを特徴
    とする請求項1または請求項2に記載の電子放出装置。
  11. 【請求項11】基板と、開口部を有し前記基板上に配置
    されたゲート電極と、前記開口部内の基板上にカソード
    材料を薄膜状に形成してなるエミッタと、該エミッタか
    ら所定の間隔をあけて配設され、所定の電位を印加され
    るアノード電極とを備える電子放出装置において、 前記エミッタは、前記カソード材料が前記開口部内に露
    出する基板上の外周部を除く開口部内周よりも小さい領
    域に形成されたことを特徴とする電子放出装置。
  12. 【請求項12】基板と、開口部を有し前記基板上に配置
    されたゲート電極と、前記開口部内の基板上にカソード
    材料を薄膜状に形成してなるエミッタと、該エミッタか
    ら所定の間隔をあけて配設され、所定の電位を印加され
    るアノード電極とを備える電子放出装置において、 前記エミッタは、前記カソード材料が前記開口部内に露
    出する基板上の外周部と中央部を除き環状に形成された
    ことを特徴とする電子放出装置。
  13. 【請求項13】前記カソード材料としてカーボン・ナノ
    チューブを用いることを特徴とする請求項1乃至12の
    いずれか1項に記載の電子放出装置。
  14. 【請求項14】請求項1乃至13の内の何れか1項に記
    載の電子放出装置を駆動する駆動方法であって、 前記アノード電極とエミッタ間の電界をしきい値に設定
    することを特徴とする電子放出装置の駆動方法。
  15. 【請求項15】請求項1乃至13の内の何れか1項に記
    載の電子放出装置を駆動する駆動方法であって、 前記アノード電極とエミッタ間の電界を、しきい値電界
    と最大電流量電界との中間の電界に設定することを特徴
    とする電子放出装置の駆動方法。
  16. 【請求項16】請求項1乃至13の内の何れか1項に記
    載の電子放出装置を駆動する駆動方法であって、 前記アノード電極とエミッタ間の電界を最大電流量電界
    に設定することを特徴とする電子放出装置の駆動方法。
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