JP2002061085A - 耐摩耗性と疲労特性に優れたワイヤロープ、鋼線および鋼材 - Google Patents

耐摩耗性と疲労特性に優れたワイヤロープ、鋼線および鋼材

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JP2002061085A
JP2002061085A JP2000243083A JP2000243083A JP2002061085A JP 2002061085 A JP2002061085 A JP 2002061085A JP 2000243083 A JP2000243083 A JP 2000243083A JP 2000243083 A JP2000243083 A JP 2000243083A JP 2002061085 A JP2002061085 A JP 2002061085A
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steel wire
wire rope
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Sumie Suda
澄恵 須田
Atsushi Inada
淳 稲田
Nobuhiko Ibaraki
信彦 茨木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼線同士、または鋼線とシーブ面の摩擦によ
る磨耗を低減し、かつ曲げ疲れ強さを向上させた、耐磨
耗性と疲労特性に優れたワイヤロープ、該ワイヤロープ
に用いられる鋼線および該鋼線の製造に用いられる鋼材
を提供する。 【解決手段】 C:0.30〜1.2%(質量%の意
味、以下同じ),Si:0.40%以下(0%は含まな
い),Mn:0.20〜1.20%を満たし、パテンテ
ィング処理されたまま、あるいは該パテンティング処理
後に酸洗され、その後に伸線加工されることなくワイヤ
ロープの外層線として用いられることを特徴とする鋼
線、該鋼線の製造に用いられる鋼材と該鋼線を外層線に
用いることを特徴とするワイヤロープである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ワイヤロープおよ
び鋼線に関し、更に詳しくはエレベーターロープなどに
用いられる耐摩耗性と疲労特性に優れたワイヤロープお
よび該ワイヤロープに用いられる鋼線に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】重量物を保持するために用いられるワイ
ヤロープは、高強度であることが要求される。特に、ワ
イヤロープをエレベーターロープとして使用する場合、
ワイヤロープはエレベーターのロープ保持部のシーブ面
との間で繰返し曲げを受けるため、曲げ疲れ強さを向上
させることが必要である。他方、ワイヤロープとの摩擦
に伴うシーブ面の摩耗の問題もあり、このシーブを保安
点検作業レベルで交換することは実際上不可能であるた
め、ワイヤロープの硬度をある程度抑制してシーブの寿
命を延ばすように設計されている。他方、ワイヤロープ
は複数の鋼線を撚り合わせた構造であるため、鋼線同士
の接触による摩耗の問題もあり、ワイヤロープの硬度を
低下させることは自ずと制約がある。
【0003】更に近年、建物の高層化に伴ってエレベー
ターが高速化し、これがエレベーターロープの耐久性に
影響を与えている。すなわち、高速下での使用において
は、エレベーターロープの受ける荷重が増大すると共
に、鋼線同士の接触、シーブとロープの接触およびシー
ブ面での曲げひずみによる発熱が増大しており、これら
がロープやシーブの摩耗や疲労を促進しているのであ
る。
【0004】このため、ワイヤロープの更なる高強度
化、耐疲労性の向上が要求されるが、これをワイヤロー
プを構成する鋼線の伸線加工で達成しようとすると、鋼
線ひいてはワイヤロープの硬度の増大が避け難く、結果
として該ワイヤロープと接触するシーブの摩耗を更に促
進することになる。
【0005】かかる問題を解決すべく、従来はワイヤロ
ープを構成する鋼線のうち、シーブ面との接触の無い内
層線のみをさらに伸線加工して高強度化を図り、シーブ
面と接触する外層線については伸線加工を抑えて硬度の
増大を抑制する方法が採用されているが、この場合、鋼
線同士の摩擦により、硬度の低い外層線の摩耗が促進さ
れるといった問題が生じてくる。
【0006】そこで、鋼線を伸線加工しないで、ワイヤ
ロープおよびシーブの摩耗量を低減させつつ、曲げ疲れ
強さを向上させることが求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を
解決すべくなされたものであり、鋼線同士、または鋼線
とシーブ面の摩擦によるこれらの摩耗を低減しかつ曲げ
疲れ強さを向上させた、耐摩耗性と疲労特性に優れたワ
イヤロープ、該ワイヤロープの外層線に用いられる鋼線
および該鋼線の製造に用いられる鋼材を提供するもので
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発
明に係るワイヤロープは、C:0.30〜1.2%(質
量%の意味、以下同じ),Si:0.40%以下(0%
は含まない),Mn:0.20〜1.20%を満たすパ
テンティング処理した鋼線、あるいは該パテンティング
処理後に酸洗した鋼線を、伸線加工することなく外層線
として用いるところに要旨を有するものである。
【0009】また、上記課題を解決した本発明に係る鋼
線は、C:0.30〜1.2%,Si:0.40%以下
(0%は含まない),Mn:0.20〜1.20%を満
たし、パテンティング処理され、あるいは該パテンティ
ング処理後に酸洗され、その後に伸線加工されることな
く上記ワイヤロープの外層線として用いられるところに
要旨を有するものである。
【0010】なお、本発明において、上記鋼線が更にC
r:0.6%以下,Ni:0.7%以下,V:0.5%
以下,Cu:0.2%以下,B:0.01%以下よりな
る群から選択される少なくとも一種を含有するものであ
る場合や、該鋼線が更にP:0.050%以下,S:
0.050%以下,Al:0.005%以下に夫々抑え
られているものである場合は、本発明の上記課題を解決
する上で一層好ましい態様である。
【0011】また、本発明に係る鋼材は、C:0.30
〜1.2%,Si:0.40%以下(0%は含まな
い),Mn:0.20〜1.20%を満たし、パテンテ
ィング処理され、あるいは該パテンティング処理後に酸
洗され、その後に伸線加工されることなく上記ワイヤロ
ープの外層線として用いられる上記本発明の鋼線の製造
に用いられるところに要旨を有するものである。
【0012】なお、本発明において、上記鋼材が更にC
r:0.6%以下,Ni:0.7%以下,V:0.5%
以下,Cu:0.2%以下,B:0.01%以下よりな
る群から選択される少なくとも一種を含有するものであ
る場合や、該鋼材が更にP:0.050%以下,S:
0.050%以下,Al:0.005%以下に夫々抑え
られているものである場合は、本発明の上記課題を解決
する上で一層好ましい態様である。
【0013】なお、本発明に係る上記鋼線の化学組成
は、典型的には上記元素の他は残部Feおよび不可避不
純物からなるが、その他の化学成分についても、本発明
の効果を阻害しない範囲内で含有されていてもよい。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明者らは、ワイヤロープの疲
労強度と耐摩耗性を向上させる方法について検討したと
ころ、伸線加工によって強度を高めた従来のワイヤロー
プでは、シーブ面との摩擦熱によって転位密度が下がる
といったいわゆる回復現象を起こし、それによってワイ
ヤロープの疲労や摩耗が促進されることが判明した。ま
た、既述のようにワイヤロープの外層線を伸線加工する
ことで硬度が増大し、該外層線との摩擦によるシーブ面
の摩耗が進むことや、ワイヤロープの内層線のみを伸線
加工することで外層線との間に硬度差が生じ、これらの
摩擦による外層線の摩耗が進むことも判明した。
【0015】本発明は、上記の事実に着目してなされた
ものであり、鋼材の化学成分を制御すると共に、鋼線を
伸線加工によって転位強化させるのではなく、パテンテ
ィング処理したままでワイヤロープの外層線として撚り
線することによって曲げ疲れ強さおよび耐摩耗性を改善
したものである。
【0016】従って、本発明の鋼線およびワイヤロープ
は、現在のエレベーターのような高速下で使用しても、
シーブ面−ワイヤロープ間の摩擦熱による転位の回復現
象が従来のワイヤロープ場合に比べて少なく、曲げ疲れ
強さの低下や摩耗量の増大を抑制し得る。
【0017】また、ワイヤロープの硬度が高くなりシー
ブ面との硬度差が増大すると、シーブ面の摩耗量が増大
するが、本発明の鋼線およびこれを用いたワイヤロープ
はパテンティング処理後に伸線加工を行わないことで加
工硬化を抑制しており、その結果シーブ面の摩耗量も低
減し得ると共に、従来法のような外層線と内層線との間
の硬度差がないことから、鋼線同士の摩擦による摩耗も
低減し得る。
【0018】なお、上記の各効果は、鋼線をパテンティ
ング処理した後にスケール除去のために酸洗した場合で
あっても同様である。
【0019】また、本発明のパテンティング処理は、鉛
パテンティング処理、流動層パテンティング処理、塩浴
パテンティング処理、エアパテンティング処理のいずれ
であっても良い。
【0020】以下に、本発明の鋼線およびワイヤロープ
に用いられる本発明の鋼材の化学成分について説明す
る。
【0021】C:0.30〜1.2% Cは、パテンティング処理後の強度を増大させるのに有
効な元素である。C量の下限は0.30%以上、好まし
くは0.35%以上、さらに好ましくは0.4%以上、
特に好ましくは0.5%以上である。C量が上記範囲を
下回ると鋼線の元となる圧延材中の初析フェライトを低
減させることが困難となる。但し、C量が多くなりすぎ
ると中心偏析を生じやすくなり、圧延材中のオーステナ
イト粒界にネット状の初析セメンタイトが生成して伸線
工程時に断線が発生しやすくなる。このため、C量の上
限は1.2%以下、好ましくは1.0%以下である。
【0022】Si:0.40%以下(0%は含まない) Siは、溶製時に脱酸剤として作用する他、鋼の焼入れ
性を高めて圧延材中の初析フェライト量を低減させる点
で有効な元素である。但し、Si量が多すぎるとメカニ
カルデスケーリング(以下、「MD」と略記する)性が
低下する。このため、Si量の上限は0.40%以下、
好ましくは0.35%以下である。また、Si量の下限
については、含有されていれば特に制限はないが、上記
の効果をより有効に発揮させるためには、0.01%以
上、好ましくは0.015%以上が推奨される。
【0023】Mn:0.2〜1.2% MnもSiと同様に、溶製時に脱酸剤として作用する
他、鋼の焼入れ性を高めて圧延材中の初析フェライト量
を低減させる点で有効な元素である。これらの効果を有
効に発揮させるためには、0.2%以上、好ましくは
0.4%以上含有させる。但し、Mnは偏析しやすい元
素であり、過剰に含有させるとMnの偏析部にマルテン
サイトやベイナイトなどが生じやすくなって、伸線加工
性が劣化する。このため、Mn量の上限は1.2%以
下、好ましくは1.1%以下、より好ましくは0.9%
以下である。
【0024】Cr:0.6%以下 Crは、パーライト組織を微細化し、鋼線の強度や伸線
加工性等を向上させるのに有効な元素である。しかし、
Cr量が多すぎると熱間圧延の際、鋼材中にマルテンサ
イトやベイナイトなどが生じる恐れがあるほか、MD性
も低下するため、0.6%以下とすることが推奨され
る。より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.
4%以下である。
【0025】Ni:0.7%以下 Niは、鋼線の靭性を高めるのに有効な元素であるが、
過剰に添加してもその効果は飽和するため、0.7%以
下、好ましくは0.5%以下とすることが推奨される。
【0026】V:0.5%以下 Vは、微細な炭窒化物を生成して結晶粒を微細化させる
他、鋼の焼入れ性を高めて圧延材の機械的性質のばらつ
きを低減させ得る点で有効な元素である。但し、V量が
多すぎると炭窒化物の生成量が過剰となると共に、その
粒子系も大きくなるため、0.5%以下、好ましくは
0.4%以下とすることが推奨される。
【0027】Cu:0.2%以下 Cuは、耐食性を高めると共に、MD時のスケール剥離
性を向上させ、ダイスの焼き付きなどのトラブルを防止
し得る点で有効な元素である。但し、Cu量が多すぎる
と熱間圧延時に線材にブリスターが発生し、該ブリスタ
ー下にマグネタイトが生成するため、MD性が低下す
る。更に、CuはSと反応して粒界にCuSを偏析する
ため、線材製造工程で鋼塊や線材などに疵を発生させ
る。このため、Cu量は0.2%以下、好ましくは0.
15%以下が推奨される。
【0028】B:0.01%以下 Bは、パテンティング処理後に強度を増大させるのに有
効な元素であるが、過剰に添加しても、その効果は飽和
するため、0.01%以下、好ましくは0.005%以
下とすることが推奨される。
【0029】P:0.050%以下,S:0.050%
以下 PとSは、共に鋼の靭性、延性を低下させる不純物元素
であり、伸線工程や撚り線工程での断線を防止するため
に、極力抑えられていることが好ましい。P量、S量と
も0.050%以下、好ましくは0.04%以下、より
好ましくは0.02%以下が夫々推奨される。
【0030】Al:0.005%以下 Alは、Al23やMgO−Al23などの酸化物を生
成し、鋼線製造時やワイヤロープの撚り線時に断線を引
き起こすと共に、鋼線およびワイヤロープの疲労特性を
劣化させるため、0.05%以下、好ましくは0.03
%以下に抑えられていることが推奨される。
【0031】本発明の鋼材は、上記の化学組成を満足
し、本発明の鋼線の製造に用いられるものである。
【0032】次に、本発明の鋼線およびワイヤロープの
製造方法について説明する。
【0033】本発明の鋼線は、上記成分組成を満足する
本発明の鋼材を用い、加熱、熱間圧延後、最終線径まで
伸線を行ない、パテンティング処理を行なうことによっ
て、またはパテンティング処理を行った後に更に酸洗す
ることによって得ることができる。各工程の条件(温
度、時間など)は特に限定されず、通常用いられる鋼線
の製造条件を適宜採用することができる。具体的には、
例えば、900〜1300℃に加熱し、その後熱間圧延
し、圧延終了後900℃前後で巻取りをする。その後、
最終線径まで伸線した後、オーステナイト化し、500
〜560℃付近でパテンティング処理することにより本
発明の鋼線を得ることができる。
【0034】このようにして得られた本発明の鋼線を外
層線として、通常用いられる方法および条件で撚り線す
ることで本発明のワイヤロープを得ることができる。
【0035】本発明のワイヤロープは、既述の通り、パ
テンティング処理後に伸線加工をすることなくその曲げ
疲れ強さ向上を達成するものであるため、従来のワイヤ
ロープの高強度化で生じていた内層線の硬度の増大を抑
制し得る。このため、内層線−外層線間の硬度差が無
く、これら鋼線同士の摩擦による摩耗を低減できる。よ
って、本発明のワイヤロープは上記のエレベーターロー
プに限られず、曲げ疲れ強さの向上、ワイヤロープとシ
ーブの摩耗の低減、および鋼線同士の摩擦による摩耗の
低減が要求されるクレーン用ワイヤロープや、強度の向
上と鋼線同士の摩擦による摩耗の低減が要求されるプレ
ストレストコンクリート鋼撚り線などにも好ましく用い
られる。
【0036】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べ
る。但し、下記実施例は本発明を制限するものではな
く、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施するこ
とは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0037】表1および2に示す成分組成の鋼を通常の
溶製法により溶製し、スラブとした後、通常の加熱、熱
間圧延を行ない、これを伸線工程で最終線径である0.
8mmまで加工し、その後、鉛パテンティング処理(加
熱温度:910℃、鉛温度:550℃、線速:11m/
min)を行って鋼線を得た(No.1〜15,17〜
20)。この内、No.4,5,13については、更に
酸洗処理(15質量%HCl中で7分)を行った。ま
た、No.16については、最終線径に達する前に上記
の鉛パテンティング処理を行ない、その後上記最終線径
まで伸線加工をして鋼線を得た。
【0038】このようにして得られた鋼線を、下記に示
す回転曲げ疲れ強さ試験に供すると共に、JIS 3号
6×19ワイヤロープ(19本線6撚り)に撚り線し、
下記に示す摩耗試験に供した。
【0039】[回転曲げ疲れ強さ試験]島津製作所製T
YPE4中村式回転曲げ疲労試験機を用い、回転数:3
600rpmおよび1000rpm、サンプル長:65
0mmの条件で試験を行ない、疲れ限度の曲げ疲れ強さ
を求めた。
【0040】[摩耗試験]図1に示す摩耗試験機を用い
て、ワイヤロープおよびシーブの摩耗量を測定した。試
験には、径:10mm、長さ:1.5mのワイヤロープ
1を用いた。これを支持ローラ3,5およびその間に設
けた可動ローラ4に通し、一端を固定具2で固定した。
支持ローラ3と5の間隔は1mとした。可動ローラ4の
下部にはモーターによって回転するクランク部材6が備
えつけてあり、ワイヤロープ1の他端に荷重を付加して
該クランク部材6を回転させると可動ローラ4が上下
し、これによりワイヤロープ1と可動ローラ4に摩耗が
生ずる。
【0041】負荷荷重50kgf/mm2(490MP
a)、可動ローラ4の上下動の繰返し回数60回/mi
nで105回繰返し運転したときのワイヤロープおよび
シーブの摩耗量を測定した。なお、シーブの摩耗量は、
本試験においてワイヤロープ1と接触する可動ローラ4
の摩耗量とした。
【0042】これらの結果を表3に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】表3のNo.1〜11は、本発明の要件を
満足する実施例であり、曲げ疲れ強さおよび耐摩耗性が
優れていた。
【0047】これに対し、No.12〜16は本発明の
要件を満足しない比較例であり、以下に示す不具合を有
している。
【0048】No.12はC量が本発明の下限値を下回
る例であり、回転数3600rpmおよび1000rp
mのいずれにおいても曲げ疲れ強さが低下した。また、
No.13はC量が本発明の上限値を超える例であり、
伸線工程時に断線した。
【0049】No.14はSi量が本発明の上限値を超
える例であり、いずれの回転数においても曲げ疲れ強さ
が低下した。
【0050】No.15はMn量が本発明の上限値を超
える例であり、曲げ疲れ強さが低下すると共に、シーブ
の摩耗量が増大した。
【0051】No.16は本発明の要件を満たさない比
較例であり、パテンティング処理後に伸線加工を行なっ
たため、高速(3600rpm)での曲げ疲れ強さが低
下すると共に、シーブの摩耗量が増大した。
【0052】なお、表2のNo.17は、請求項1およ
び5の要件は満たすが、Cr量が請求項3および7の上
限値を超える参考例である。この場合、鋼線が伸線工程
時に断線した。
【0053】また、表2のNo.18〜20は請求項
1,3,5および7の要件は満たすが、請求項4および
8の要件を満たさない参考例である。No.18はP量
が、No.19はS量が、No.20はAl量が夫々請
求項4および8の上限値を超える例であるが、このため
曲げ疲れ強さがいずれの回転数においても低下した。
【0054】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されており、
加工硬化と使用時の発熱による転位の回復現象を抑えつ
つ曲げ疲れ強さを向上し得たため、耐摩耗性と疲労特性
に優れたワイヤロープと、その外層線に用いられる鋼
線、および該鋼線の製造に用いられる鋼材を提供するこ
とができた。本発明のワイヤロープは上記特性から、寿
命が長くシーブの摩耗量や鋼線同士の摩耗量も少ないた
め、エレベーターロープ、クレーン用ロープやプレスト
レストコンクリート鋼撚り線などに好ましく用いられ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のワイヤロープの摩耗試験に用いた摩耗
試験機の説明図である。
【符号の説明】
1 ワイヤロープ 2 固定具 3,5 支持ローラ 4 可動ローラ 6 クランク部材
フロントページの続き (72)発明者 茨木 信彦 神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会社神戸 製鋼所神戸製鉄所内 Fターム(参考) 3B153 AA08 CC52 FF02 FF04 FF11 GG01 GG03 GG05 GG40 3F305 BB02 BB14

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C :0.30〜1.2%(質量%の意
    味、以下同じ),Si:0.40%以下(0%は含まな
    い),Mn:0.20〜1.20%,を満たすパテンテ
    ィング処理した鋼線を、伸線加工することなく外層線と
    して用いたことを特徴とする耐摩耗性と疲労特性に優れ
    たワイヤロープ。
  2. 【請求項2】C :0.30〜1.2%,Si:0.4
    0%以下(0%は含まない),Mn:0.20〜1.2
    0%,を満たし、パテンティング処理の後に酸洗した鋼
    線を、伸線加工することなく外層線として用いたことを
    特徴とする耐摩耗性と疲労特性に優れたワイヤロープ。
  3. 【請求項3】 前記鋼線が更に、Cr:0.6%以下,
    Ni:0.7%以下,V:0.5%以下,Cu:0.2
    %以下,B:0.01%以下よりなる群から選択される
    少なくとも一種を含有するものである請求項1または2
    に記載のワイヤロープ。
  4. 【請求項4】 前記鋼線が更に、P:0.050%以
    下,S:0.050%以下,Al:0.005%以下に
    夫々抑えられている請求項1〜3のいずれかに記載のワ
    イヤロープ。
  5. 【請求項5】C :0.30〜1.2%(質量%の意
    味、以下同じ),Si:0.40%以下(0%は含まな
    い)Mn:0.20〜1.20%,を満たし、パテンテ
    ィング処理の後に伸線加工されることなく請求項1に記
    載のワイヤロープの外層線に用いられることを特徴とす
    る耐摩耗性と疲労特性に優れた鋼線。
  6. 【請求項6】C :0.30〜1.2%,Si:0.4
    0%以下(0%は含まない)Mn:0.20〜1.20
    %,を満たし、パテンティング処理の後に酸洗され、そ
    の後伸線加工されることなく請求項2に記載のワイヤロ
    ープの外層線に用いられることを特徴とする耐摩耗性と
    疲労特性に優れた鋼線。
  7. 【請求項7】 Cr:0.6%以下,Ni:0.7%以
    下,V:0.5%以下,Cu:0.2%以下,B:0.
    01%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を
    含有するものである請求項5または6に記載の鋼線。
  8. 【請求項8】 P:0.050%以下,S:0.050
    %以下,Al:0.005%以下に夫々抑えられている
    請求項5〜7のいずれかに記載の鋼線。
  9. 【請求項9】C :0.30〜1.2%(質量%の意
    味、以下同じ),Si:0.40%以下(0%は含まな
    い)Mn:0.20〜1.20%,を満たし、請求項5
    または6に記載の耐摩耗性と疲労特性に優れた鋼線の製
    造に用いられることを特徴とする鋼材。
  10. 【請求項10】 Cr:0.6%以下,Ni:0.7%
    以下,V:0.5%以下,Cu:0.2%以下,B:
    0.01%以下よりなる群から選択される少なくとも一
    種を含有するものである請求項9に記載の鋼材。
  11. 【請求項11】 P:0.050%以下,S:0.05
    0%以下,Al:0.005%以下に夫々抑えられてい
    る請求項9または10に記載の鋼材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010202920A (ja) * 2009-03-02 2010-09-16 Nippon Steel Corp 高強度鋼線用線材、高強度鋼線及びこれらの製造方法
CN111638142A (zh) * 2020-04-17 2020-09-08 江苏兴达钢帘线股份有限公司 一种提高单丝旋转弯曲疲劳的装置及其方法

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