JP2002051675A5 - - Google Patents
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Description
【発明の名称】スピニングリールのロータ制動装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】スピニングリールのリール本体に回転自在に装着されたロータを、糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動するベールアームの揺動に応じて制動するスピニングリールのロータ制動装置であって、
前記ベールアームの前記糸巻取姿勢から前記糸開放姿勢への揺動に連動して前記ロータ内から前記リール本体側に移動自在に前記ロータに装着された移動部材と、
前記移動部材の移動方向に沿って形成され前記ベールアームが糸開放姿勢にあるときに前記移動部材が接触可能な制動面と、前記制動面と連続して前記移動部材の移動方向上流側に設けられ、前記移動方向上流側が下流側より前記移動部材から遠ざかるように傾斜する導入面とを有し、前記リール本体に設けられた弾性体製の制動部材と、
を備えたスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項2】前記制動面は前記制動部材の外周面に平坦な円周面で形成され、前記導入面は、前記制動面の前部に前方側に向けて徐々に縮径する傾斜面で形成されており、
前記移動部材は、先端部が前記ベールアームに係止され、前記ベールアームの揺動に連動して前記糸巻取姿勢に対応する前記リール本体から離反した第1位置と、前記糸開放姿勢に対応する前記リール本体に接近し前記導入面を経て前記制動面に接触する第2位置とに後端部が少なくとも前後移動自在に前記ロータに設けられている、請求項1に記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項3】前記移動部材は、先端部が前記ベールアームの揺動中心の近傍に向けて揺動軸芯に沿うように屈曲し、後端部が前記ロータの回転軸芯に向けて屈曲し、その間が前記ロータの回転軸芯に沿って配置された部材であり、前記後端部が前記ロータに前後移動自在に係止され、前記先端部が前記ベールアームに形成された係合凹部に揺動方向に移動自在に係止されている、請求項2に記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項4】前記導入面は、前方側に向けて徐々に縮径する円錐台形状のテーパ面で形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項5】前記導入面は、前方側に向けて徐々に縮径する丸みを帯びたアール面で形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項6】前記移動部材の前記制動面に接触する後端面は丸みを帯びている、請求項1から5のいずれかに記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項7】前記ベールアームに先端部が回動自在に係止され、前記ベールアームを前記糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに振り分けて付勢するトグルばね機構と、
前記リール本体の前部に設けられ、前記ロータが糸巻取方向に回転したとき、前記第2位置に移動した前記移動部材の突出した後端部に接触して前記移動部材を前記第2位置に向けて移動させる切換部とをさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項8】前記制動面は前記制動部材の前端面に平坦な環状面で形成され、前記導入面は、前記制動面の前部外周側に後方側に向けて徐々に拡径する傾斜面で形成されており、
前記移動部材は、
先端部が前記ベールアームに係止され、前記ベールアームの揺動に連動して前記糸巻取姿勢に対応する前記リール本体から離反した第1位置と前記糸開放姿勢に対応する前記リール本体に接近する第2位置とに移動自在に装着された連動部と、
前記連動部の前記第1位置と第2位置との移動に連動して径方向移動するように前記ロータに設けられ、前記連動部が第1位置から第2位置に移動すると前記導入面を経て前記制動面に接触する移動部とを有する、請求項1に記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータ制動装置、特に、スピニングリールのリール本体に回転自在に装着されたロータを、糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動するベールアームの揺動に応じて制動するスピニングリールのロータ制動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にスピニングリールのロータには、釣り糸をスプールに案内するためのベールアームが設けられている。ベールアームは、釣り糸を巻き取る際に釣り糸をスプール外周に導く糸巻取姿勢と、スプールから釣り糸を繰り出す際に邪魔にならないように糸巻取姿勢から倒された糸開放姿勢とをとり得る。ベールアームを糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに維持するとともに、ロータの糸巻取方向の回転に連動して糸開放姿勢から糸巻取姿勢に戻すために、ロータにはベール反転装置が設けられている。
【0003】
従来のベール反転装置として、特開平10−4839号公報に開示された装置が知られている。このベール反転装置は、ベールアームの揺動中心の近傍に先端が係止され、ロータに装着されたトグルばねと、ベールアームの揺動中心の近傍に先端が係止され、基端がリール本体に向けて前後移動する移動部材と、移動部材に接触するようにリール本体に設けられた切換突起とを有している。トグルばねは、ベールアームを2つの姿勢に振り分けて付勢し、ベールアームを2つの姿勢で保持する。移動部材は、糸開放姿勢にベールアームが揺動すると、切換突起に接触する位置に後退する。そして、ロータが糸巻取方向に回転すると、切換突起に接触して前進する。この前進によりトグルばねが収縮し、トグルばねによってベールアームが糸巻取姿勢に戻る。
【0004】
このようなスピニングリールでは、キャスティングを行って釣り糸を繰り出すときには、ロータの逆転を禁止した状態で、釣り糸を人指し指の腹で引っ掛けた後ベールアームを糸開放姿勢に反転させる。このときには、釣り糸を引っ掛けやすいようにラインローラが釣り竿側になるようにロータを回転させる。そして、釣り竿を振り下ろしその途中で釣り糸を人指し指から放して仕掛けが着水するのを待つ。仕掛けが着水した後、仕掛けが適当に沈んだところでハンドルを僅かに巻き取りベール反転装置によりベールアームを糸巻取姿勢に戻す。
【0005】
また、キャスティング後や船釣り時等に仕掛けの自重により釣り糸を繰り出すときには、ベールアームを糸開放姿勢に反転した後人差し指の先端部でスプール先端を押さえて釣り糸に人差し指の腹を接触させ糸ふけを防止するサミングといわれる操作を行う。このときには、ベールアームが邪魔にならないような位置にロータを回転させる。
【0006】
前記従来のスピニングリールでは、ベールアームを糸開放姿勢にしているとき、逆転防止機構により逆転が禁止されていれば糸繰り出し方向にロータが回転することはない。しかし、糸巻取方向にはロータが回転することがある。近年、ロータは、高巻き上げ効率を達成するために回転バランスが向上しているので軽く回転しやすくなっている。このため、回転バランスを向上させたスピニングリールでは糸巻取方向に簡単に回転しやすい。ロータが回転すると、キャスティングやサミングのそれぞれに適した回転位相にロータを回転させてもロータの回転位相が容易にずれることがある。
【0007】
これを防止するために、前記従来の構成では、リール本体に接触してロータを制動する制動部材が移動部材に装着されている。制動部材は、移動部材が接触位置に移動すると、リール本体の前面に接触して圧縮されロータを制動する。このようにベール反転時にロータを弾性的に制動すると、ロータの回転を防止できるとともに、必要に応じてロータの糸巻取方向へ回転させることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の構成では、移動部材に装着された制動部材がリール本体に接触して圧縮されることによりロータを制動している。このため、製作誤差や取付誤差等により移動部材の接触位置が前後に変動すると、制動部材の圧縮量が変動する。圧縮量が変動すると、ロータの制動力が変動し、ロータを安定して制動できなくなる。
【0009】
そこで、制動部材をリール本体に設けるとともに、移動部材を制動部材の圧縮方向と交差する方向に制動部材の端部から外側面に向けて移動させて制動部材に接触させることが考えられる。これにより、移動部材の移動量の変動に関わらずロータを安定して制動できるようになる。しかし、このように構成すると、移動部材が制動部材の端部に接触するときに、移動部材がスムーズに移動しにくくなるおそれがある。移動部材がスムーズに移動しなくなると、ベールアームを糸巻取姿勢から糸開放姿勢に滑らかに切り換えしにくくなる。
【0010】
本発明の課題は、糸開放姿勢の時にロータを制動可能なスピニングリールのロータ制動装置において、移動部材の移動量の変動に関わらずロータを安定して制動でき、かつ制動部材への接触時に移動部材をスムーズに移動できるようにすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明1に係るスピニングリールのロータ制動装置は、スピニングリールのリール本体に回転自在に装着されたロータを、糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動するベールアームの揺動に応じて制動する装置であって、移動部材と、制動部材とを備えている。移動部材は、ベールアームの糸巻取姿勢から糸開放姿勢への揺動に連動してロータ内からリール本体側に移動自在にロータに装着された部材である。制動部材は、移動部材の移動方向に沿って形成されベールアームが糸開放姿勢にあるときに移動部材が接触可能な制動面と、制動面と連続して移動部材の移動方向上流側に設けられ、移動方向上流側が下流側より記移動部材から遠ざかるように傾斜する導入面とを有し、リール本体に設けられた弾性体製の部材である。
【0012】
このロータ制動装置では、ベールアームが糸巻取姿勢から糸開放姿勢に揺動すると、それに連動して移動部材が導入面側から制動面に接触してロータが制動される。ここでは、制動面の移動方向上流側に上流側が下流側より移動部材から遠ざかるように導入面が形成され、かつ制動面が移動部材の移動方向に沿って形成されているので、移動部材の移動量が変動しても制動力が変化せず、ロータを安定して制動できるとともに、制動面に向けて徐々に移動部材に近づく導入面側から制動面に接触するので、移動部材の移動がスムーズになる。
【0013】
発明2に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明1に記載の装置において、制動面は制動部材の外周面に平坦な円周面で形成され、導入面は、制動面の前部に前方側に向けて徐々に縮径する傾斜面で形成されており、移動部材は、先端部がベールアームに係止され、ベールアームの揺動に連動して糸巻取姿勢に対応するリール本体から離反した第1位置と、糸開放姿勢に対応するリール本体に接近し導入面を経て前記制動面に接触する第2位置とに後端部が少なくとも前後移動自在にロータに設けられている。この場合には、ベールアームが糸巻取姿勢から糸開放姿勢に揺動すると、移動部材を第1位置から第2位置に移動し、導入面側から制動面に接触する。ここでは、移動部材の前後移動により制動部材の外周面に形成された制動面に接触するように構成したので、移動部材の構成が簡素である。
【0014】
発明3に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明2に記載の装置において、移動部材は、先端部がベールアームの揺動中心の近傍に向けて揺動軸芯に沿うように屈曲し、後端部がロータの回転軸芯に向けて屈曲し、その間がロータの回転軸芯に沿って配置された部材であり、後端部がロータに前後移動自在に係止され、先端部がベールアームに形成された係合凹部に揺動方向に移動自在に係止されている。ここでは、屈曲して形成された移動部材の先端部をベールアームに係止し、後端部を前後移動自在に係止するだけで、ベールアームの揺動運動を移動部材の後端部の前後運動に簡単に変換できる。
【0015】
発明4に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明1から3のいずれかに記載の装置において、導入面は、前方側に向けて徐々に縮径する円錐台形状のテーパ面で形成されている。この場合には、導入面の形状が簡素であるので、導入面の形成が容易である。
【0016】
発明5に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明1から3のいずれかに記載の装置において、導入面は、前方側に向けて徐々に縮径する丸みを帯びたアール面で形成されている。この場合には、導入面が丸みを帯びたアール面で形成されているので、移動部材が移動しながら導入面から制動面に接触するときによりスムーズに移動でき、ベールアームの姿勢の切り換えがより滑らかになる。
【0017】
発明6に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明1から5のいずれかに記載の装置において、移動部材の制動面に接触する後端面は丸みを帯びている。この場合には、制動部材に接触する移動部材の後端面が丸みを帯びているので、移動部材が移動しながら制動部材に接触するときや制動部材から離反するときにスムーズに移動でき、両姿勢での姿勢の切り換えが滑らかになる。
【0018】
発明7に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明2から6のいずれかに記載の装置において、ベールアームに先端部が回動自在に係止され、ベールアームを糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに振り分けて付勢するトグルばね機構と、リール本体の前部に設けられ、ロータが糸巻取方向に回転したとき、第2位置に移動した移動部材の突出した後端部に接触して移動部材を第1位置に向けて移動させ切換部とをさらに備える。この場合には、ベールの反転装置とロータの制動装置とで構成要素を兼用でき、コンパクトなスピニングリールを実現できる。
【0019】
発明8に係るスピニングリールのロータ制動装置では、発明1に記載の装置において、制動面は制動部材の前端面に平坦な環状面で形成され、導入面は、制動面の前部外周側に後方側に向けて徐々に拡径する傾斜面で形成されており、移動部材は、先端部がベールアームに係止され、ベールアームの揺動に連動して糸巻取姿勢に対応するリール本体から離反した第1位置と糸開放姿勢に対応するリール本体に接近する第2位置とに移動自在に装着された連動部と、連動部の第1位置と第2位置との移動に連動して径方向移動するようにロータに設けられ、連動部が第1位置から第2位置に移動すると導入面を経て制動面に接触する移動部とを有する。この場合には、制動部材の前端面に制動面が形成されているので、制動面の平面度を高く維持しやすくなり、制動力をより安定させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1において、本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、ハンドル1と、ハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。
【0021】
リール本体2は、内部に空間を有するリールボディ2aと、リールボディ2aの空間を塞ぐためにリールボディ2aに着脱自在に装着される蓋部材2bとを有している。
【0022】
リールボディ2aは、たとえばマグネシウム合金製であり、上部に前後に延びるT字形の竿取付脚2cが一体形成されている。図2に示すように、リールボディ2aの空間内には、ロータ3をハンドル1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。リールボディ2a及び蓋部材2bの前端には、円形のフランジ部2dと、フランジ部2dより小径で先端が開口する円筒部2eと形成されている。円筒部2eの断面は、図5に示すように、円の一部が切り欠かれたD字状に形成されている。
【0023】
蓋部材2bは、たとえばマグネシウム合金製の部材であり、3カ所でリールボディ2aにビス止めされている。フランジ部2dにおいて、リールボディ2aと蓋部材2bとの分割部分には、図5及び図6に示すように、後述する切換部材52が着脱自在に装着されている。
【0024】
ロータ駆動機構5は、図2に示すように、ハンドル1が回転不能に装着されたハンドル軸10と、ハンドル軸10とともに回転するフェースギア11と、このフェースギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。ピニオンギア12は筒状に形成されており、その前部12aはロータ3の中心部を貫通しており、ナット13によりロータ3と固定されている。ピニオンギア12は、その軸方向の中間部と後端部とが、それぞれ軸受14a,14bを介してリール本体2に回転自在に支持されている。
【0025】
オシレーティング機構6は、スプール4の中心部にドラグ機構71を介して連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。
【0026】
〔ロータの構成〕
ロータ3は、図2に示すように、ロータ本体16と、ロータ本体16の先端に糸開放姿勢と糸巻取姿勢とに揺動自在に装着されたベールアーム17と、ベールアーム17を糸巻取姿勢に戻すためにロータ本体16に装着されたベール反転機構18とを有している。
【0027】
ロータ本体16は、リールボディ2aにスプール軸15回りに回転自在に装着された円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1及び第2ロータアーム31,32とを有している。円筒部30と両ロータアーム31,32とは、たとえばマグネシウム合金製であり一体成形されている。
【0028】
円筒部30の前部には前壁33が形成されており、前壁33の中央部にはボス部33aが形成されている。ボス部33aの中心部には貫通孔が形成されており、この貫通孔をピニオンギアの前部12a及びスプール軸15が貫通している。
前壁33の前部にロータ3の固定用のナット13が配置されている。
【0029】
第1及び第2ロータアーム31,32は、図2〜図4に示すように、円筒部30の後部外周面にそれぞれ配置された第1及び第2接続部31a,32aと、第1及び第2接続部31a,32aからそれぞれ外方に凸に湾曲しつつ前方に延びる第1及び第2アーム部31b,32bと、両接続部31a,31bと両アーム部31b,32bとの両外方部分をそれぞれ覆う第1及び第2カバー部材31c.32cとを有している。第1及び第2接続部31a,32aは、円筒部30と周方向に滑らかにそれぞれ連続して形成されている。
【0030】
第1及び第2アーム部31b,32bは、第1及び第2接続部31a,32aと滑らかに連続して形成され円筒部30と間隔をあけて前方に延びている。第1及び第2アーム部31b,32bは、先端部から円筒部30との接続部分に向けて滑らかに湾曲している。両接続部31a,31bと両アーム部31b,32bとの両外方部分には、開口31d,32dがそれぞれ形成されており、第1及び第2カバー部材31c,32cは、開口31d,32dをそれぞれ外周側から塞いでいる。この第1カバー部材31cと第1接続部31a及び第1アーム部31bとの間には、収納空間48が形成されている。
【0031】
第1アーム部31bの先端の外周側には、第1ベール支持部材40が揺動自在に装着されている。第1アーム部31bには、図4に示すように、ベール反転機構18を装着するための長孔36及び装着孔37と、第1ベール支持部材40を装着するためのねじ孔付きのボス部38とが形成されている。
【0032】
第2アーム部32bの先端内周側には、第2ベール支持部材42が揺動自在に装着されている。
【0033】
第1ベール支持部材40は、第1アーム31bの先端にねじ込まれた取付ピン39により第1ロータアーム31に取り付けられる。この取付ピン39は引っかかりが少ない六角孔付きボルトからなり、その頭部に釣り糸が引っかかりにくくなっている。
【0034】
第1ベール支持部材40の先端には、図3に示すように、釣り糸をスプール4に案内するためのラインローラ41と、ラインローラ41を挟んで第1ベール支持部材40に固定された固定軸カバー47とが装着されている。ラインローラ41は、第1ベール支持部材40の先端に回転自在に装着されている。固定軸カバー47は、先端がとがった変形円錐形状である。固定軸カバー47の先端部と第2ベール支持部材42との間には線材を略U状に湾曲させた形状のベール43が固定されている。これらの第1及び第2ベール支持部材40,42、ラインローラ41、ベール43及び固定軸カバー47により釣り糸をスプール4に案内するベールアーム17が構成される。ベールアーム17は、図3(a)に示す糸案内姿勢と、図3(b)に示す糸案内姿勢から反転した糸開放姿勢との間で揺動自在である。
【0035】
〔ベール反転機構の構成〕
ベール反転機構18は、収納空間48内に配置されている。ベール反転機構18は、ベールアーム17を糸開放姿勢から糸案内姿勢にロータ3の回転に連動して復帰させるとともに、両姿勢でその状態を保持する。
【0036】
ベール反転機構18は、図3〜図6に示すように、収納空間48内で第1アーム部31bに揺動自在に装着されたトグルばね機構50と、収納空間48内に移動自在に装着された移動部材51と、移動部材51に接触可能にフランジ部2dに着脱自在に装着された切換部材52と、ロータ3を制動するためのロータ制動機構54とを有している。
【0037】
トグルばね機構50は、図3に示すように、ベールアーム17が糸巻取姿勢となる第1位置と糸開放姿勢となる第2位置とを取り得るように第1ロータアーム31内に配置され、ベールアーム17を糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに保持するための機構である。トグルばね機構50は、一端が第1ベール支持部材40に係止され、他端が第1アーム部31bに沿って延びるロッド55と、ロッド55が進退自在に装着されるとともに第1アーム部31bに中間部が揺動自在に取り付けられたガイド部材56と、ロッド55を進出側に付勢するコイルばね57とを有している。
【0038】
ロッド55は、図4に示すように、その先端部55aが外周側に折り曲げられ、第1ベール支持部材40に形成された係合穴40aに係止されている。またロッド55の外周面には、ばね係止用の突起部55bが形成されている。
【0039】
ガイド部材56は前端が開口する有底角筒状の部材であり、装着孔37に係合するように突出する揺動軸56aを軸方向の中間部に有している。揺動軸56aは、ロータ3の径方向に沿って配置されており、ガイド部材56は、揺動軸56aを中心に第1ロータアーム31に揺動自在に取り付けられている。
【0040】
トグルばね機構50は、揺動軸56aの軸芯と第1ベール支持部材40の揺動軸芯とを結ぶ線分に対して、糸巻取姿勢と糸開放姿勢とでロッド55の第1ベール支持部材40に対する係止位置が異なる方向に位置するように配置されている。これにより、トグルばね機構50は、ベールアーム17を両姿勢に振り分けて付勢して両姿勢で保持できる。
【0041】
移動部材51は、たとえば、ステンレス合金などの金属製の線材の両端を90度異なる方向に折り曲げて形成された部材である。移動部材51は、図3(a)に示す離反位置と図3(b)に示す接触位置とに、第1アーム部31bに略前後移動自在に装着されている。移動部材51は、図3〜図6に示すように、その先端部51aが外周側に折り曲げられ、第1ベール支持部材40に揺動方向に沿って形成された円弧状の係合凹溝40bの揺動方向の端部のいずれに係止されている。中間部51bは、ロッド55より径方向内側で第1アーム部31bに沿って延びている。後端部51cは、中間部51bから内周側に折り曲げられ、さらにロータ3の中心(回転軸芯)に向けて折り曲げられている。このように後端部51cをロータ3の中心に向けると、切換部材52に接触して押圧されたときに、力の伝達がスムーズになる。また、先端部51aを円弧状の係合凹溝40bの端部に係止することにより、揺動時のベールアームの揺動量より移動部材51の移動量を係合凹溝40bの円弧方向の長さ分少なくすることができる。後端部51cは、長孔36を貫通し、ロータ制動機構54を構成する制動部材65の前端面に僅かに重なり合う位置まで内方に延びており、その後端面が僅かに丸みを帯びている。長孔36の幅は、移動部材51の直径とほぼ同じ寸法である。このため、移動部材51の後端部51cは、ベールアーム17の揺動に連動して長孔36に沿って前後に移動する。
【0042】
移動部材51の係合凹溝40bでの係止端は、ベールアーム17が糸開放姿勢にあるとき、後端部51cとベールアーム17の揺動中心とを結ぶ線分より糸巻取姿勢側に位置している。つまり、移動部材51は、接触位置(図3(b))にあるときの後端部51cの軸芯と第1ベール支持部材40の揺動軸芯とを結ぶ線分から同じ方向に離反位置と接触位置とで第1ベール支持部材40への係止位置が存在するように配置されている。これにより、移動部材51の後端部51cが切換部材52により押圧されたとき、第1ベール支持部材40を糸巻取姿勢側に復帰させることができる。この接触位置にあるとき、後端部51cの端面は、制動部材65の前端面より奥側で外周面よりやや内方に食い込んでいる。このため、移動部材51の移動量が僅かに変動しても常に同じ制動力が得られる。
【0043】
ロータ制動機構54は、糸開放姿勢にベールアーム17が揺動したときロータ3を制動するものであり、移動部材51と、円筒部2eの基端部に装着された制動部材65とを有している。すなわち、移動部材51は、ベール反転機構18を構成するとともに、ロータ制動機構54も構成する。
【0044】
制動部材65は、ベールアーム17が糸開放姿勢にあるとき、ロータ3の回転を制動するために設けられている。制動部材65は、断面が矩形の、たとえばスチレン‐ブタジエン‐ゴム(SBR)、アクリロニトリル‐ブタジエン‐ゴム、ブタジエン‐ゴム、イソプレン‐ゴム、クロロプレン‐ゴム、シリコーン‐ゴム、ウレタン‐ゴム等の合成ゴムからなる弾性体製のリング状の部材である。制動部材65の外周面には、切換部材52を回避する部分を除いて平坦な円周面で構成された制動面65aが形成されている。制動部材65は、断面がD字状の円筒部2eの基端外周面に装着されている。したがって、制動部材65は、正面視D字状に装着されている。この制動部材65の直線部は、切換部材52を迂回するために設けられている。制動部材65の制動面65aの先端端縁には、導入面65bが制動面65aと連続して形成されている。導入面65bは、糸開放姿勢への揺動に連動した移動部材51の移動方向上流側が下流側より遠ざかるように形成されており、本実施形態では、制動面65aと連続して丸みをおびたアール面で形成されている。このように制動面65aに連続して傾斜した導入面65bを形成すると、移動部材51が制動部材65に接触するとき、丸みを帯びた移動部材51の先端が制動部材65の導入面65bを経て制動面65aに滑らかに接触する。このため、ベールアーム17の姿勢の切り換えがスムーズになる。円筒部2eの外周面には、フランジ部2dと間隔を隔てて環状突起2fが形成されており、制動部材65は、フランジ部2dと環状突起2fとの間に両者に接触して装着されている。
【0045】
切換部材52は、たとえばナイロン66やポリアセタールなどの合成樹脂製の部材であり、図5及び図6に示すように、リールボディ2aと蓋部材2bとの分割部分でフランジ部2dに着脱自在に装着されている。リールボディ2aと蓋部材2bとの分割部分には、矩形の切り欠き53が形成されている。切換部材52は、傾斜面60aを有するカム部60と、カム部60と一体形成されたくびれ部61と、鍔部62とを有している。傾斜面60aは、図6に矢印で示すロータ3の糸巻取回転方向の下流側が上流側によりロータ3に向けて前方に突出する傾斜面である。くびれ部61は、切り欠き53にはめ込まれる大きさを有しており、フランジ部2dの肉厚と略同じ寸法の隙間をカム部60と鍔部62との間に形成している。鍔部62は、くびれ部61より大きな断面を有しており、フランジ部2dの裏面に接触する。
【0046】
このように構成された切換部材52は、リールボディ2aに蓋部材2bを装着するとき、たとえばリールボディ2a側の切り欠き53にくびれ部61をはめ込み、蓋部材2bをリールボディ2aにビス止めするだけで、リール本体2に固定できる。このため、固定のための別の部材を用いずに簡単にリール本体2に切換部材52を固定できる。また、リール本体2が腐食しやすいマグネシウム合金製であっても、移動部材51が接触する切換部材52はリール本体2と別部材であるので、ベールアーム17が反転するときにリール本体2が傷つくことがない。このため、傷による腐食の進行を防止できる。さらに、リール本体2に装着される切換部材52は、誘電体である合成樹脂製であるため、切換部材52をリール本体2に接触させてもリール本体2が電解腐食しない。
【0047】
このような構成のトグルばね機構50は、図3(a)に示すような第1位置と、図3(b)に示すような第2位置とをとることが可能である。第1位置は、ベールアーム17の糸巻取姿勢に対応し、第2位置はベールアーム17の糸開放姿勢に対応している。また、移動部材51は、図3(a)に示す離反位置と、図3(b)に示す接触位置とに後端部51cが長孔36に案内されて前後移動することができる。この離反位置が糸巻取姿勢に対応し、接触位置が糸巻取姿勢に対応する。接触位置では、移動部材51の後端部51cの端面が制動部材65の前端面より奥側で制動面65aが僅かに圧縮されるように接触する。このため、移動部材51の移動位置、つまり接触位置が軸方向に変動しても制動力は変動しない。また、接触位置でロータ3が糸巻取方向に回転すると、移動部材51の後端部51cの周面は切換部材52の傾斜面60aに接触し、移動部材51は離反姿勢に向けて前方に押圧される。
【0048】
ロータ3の円筒部30の内部には、図2に示すように、ロータ3の逆転を禁止・解除するための逆転防止機構70が配置されている。逆転防止機構70をローラ型のワンウェイクラッチを有しており、ワンウェイクラッチを作用状態と非作用状態とに切り換えることにより、ロータ3の逆転を禁止・解除する。
【0049】
スプール4は、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端にドラグ機構71を介して装着されている。スプール4は、外周に釣り糸が巻かれる糸巻き胴部4aと、糸巻き胴部4aの後部に一体で形成されたスカート部4bと、糸巻き胴部4aの前端に一体で形成されたフランジ部4cとを有している。
【0050】
〔リールの操作及び動作〕
キャスティング時には逆転防止機構70によりロータ3を逆転禁止状態にしてベールアーム17を糸開放姿勢に反転させる。ベールアーム17を糸開放姿勢に反転させると、第1ベール支持部材40及び第2ベール支持部材42は後方側に倒れ、ベール反転機構18は、図3(b)に示すような第2位置に配置される。ベールアーム17が糸開放姿勢に倒れた状態では、スプール4からの釣り糸を容易に繰り出すことが可能である。
【0051】
この糸巻取姿勢から糸開放姿勢への揺動において、トグルばね機構50では、第1ベール支持部材40の回転によってロッド55が図3(a)において徐々に退入しつつ反時計方向に揺動し、図3(b)に示す第2位置にいたる。このとき、死点を超えるまでは退入する。死点を超えると、ロッド55がコイルばね57の付勢力により進出してベールアーム17を糸開放姿勢側に切り換えるとともにその姿勢で保持する。
【0052】
ベールアーム17が糸開放姿勢に揺動すると、係合凹溝40bの揺動方向上流側の端部に移動部材51の先端部51aが接触すると、移動部材51は、離反位置から接触位置に向けて移動を開始する。そして第2位置に至ると、移動部材51の後端部51cの端面は、制動部材65の導入面65bを経て制動面65aに僅かに食い込んで弾性的に接触する。この結果、ロータ3が制動されその回転位相が保持される。このとき、移動部材51の後端部51cの端面が制動部材65の制動面65aに僅かに食い込んで弾性的に接触しているので、移動部材51の接触位置が軸方向にずれても、接触状態が変動せず、制動力が変化しない。また、移動部材51が制動部材65と弾性的に接触して摩擦によりロータ3が制動されているだけであるので、ロータ3を手で回転させたりハンドル1により回転させれば簡単に回転位相を調整できる。すなわち、ロータ3が摩擦力により制動され回転位相が維持されるので、ベールアーム17を糸開放姿勢にしたときにロータ3が回転することはない。したがって、キャスティング時やサミング時にロータ3の不意の回転による不具合を解消できる。しかも、ロータ3は摩擦により制動されているだけであるので、ロータ3に力を加えれば簡単に回して回転位相を調整することができる。
【0053】
この状態で釣り竿を握る手の人差し指で釣り糸を引っかけながら釣り竿をキャスティングする。すると釣り糸は仕掛けの重さにより勢いよく放出される。
【0054】
キャスティング後に、ベールアーム17を糸開放姿勢に維持したままの状態でハンドル1をたとえば左手で糸巻取方向に回転させると、ロータ駆動機構5によりロータ3が糸巻取方向に回転する。ロータ3が糸巻取方向に回転すると、ベールアーム17がベール反転機構18により糸巻取姿勢に復帰する。
【0055】
具体的には、図5及び図6において、移動部材51がロータ3とともに時計方向に回転する。すると、移動部材51の後端部51cの周面がリール本体2側に固定された切換部材52の傾斜面60aに当接する。これにより、移動部材51が前方に押圧され、図6に二点鎖線で示す離反位置に切り換えられ、第1ベール支持部材40を糸巻取姿勢に揺動させる。これに伴ってトグルばね機構50のガイド部材56が図3(b)に示す第2位置から図3(a)に示す第1位置に向けて揺動する。そして、死点を超えると、コイルばね57の付勢力よりロッド55が進出し、ベールアーム17を糸巻取姿勢に切り換えるとともにその姿勢で保持する。ベールアーム17が糸巻取姿勢に復帰すると、第1ベール支持部材40及び第2ベール支持部材42は、図1及び図2に示すように、それぞれ前方側に起立している。ベールアーム17が糸巻取姿勢に戻ると、ベールアーム17により釣り糸がスプール4に案内されてスプール4の外周に巻き付けられる。
【0056】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、トグルばね機構50をロッド55とガイド部材56とコイルばね57とで構成したが、図7に示すように、トグルばね機構80をロッド81とロッド81の外周側に配置されたコイルばね82とで構成してもよい。
【0057】
トグルばね機構80のロッド81は、先端に第1ベール支持部材40の係合孔40aに係止されるように第1ベール支持部材40に向けて折れ曲がった係止部81aを有している。また、ロッド81は、中間部にコイルばね82の先端部を係止するための係止突起81bを有し、後端部に僅かに湾曲した湾曲部81cを有している。係止突起81bには、コイルばね82の先端が当接するワッシャ83が装着されており、これにより、コイルばね82の先端部からロッド81に力が均一に伝達される。
【0058】
コイルばね82は、アーム部31bに装着された、たとえばナイロン66などの合成樹脂製の案内シート84に接触して案内される。案内シート84は、コイルばね82の一面を案内するとともに係止するように折れ曲がった壁面部84aを有している。壁面部84aは、コイルばね82の側部及び基端部に接触し得る高さを有している。これにより、コイルばね82が伸縮しやすくなるとともに、コイルばね82が伸縮する際にアーム部31bが傷つかなくなる。
【0059】
コイルばね82のワッシャ83に係止される先端部は他の部分より巻径が小さくなっている。これにより先端部以外でコイルばね82とロッド81との間で大きな隙間が生じ、コイルばね82の内部でロッド81が姿勢を変えてもコイルばね82が変形しにくくなる。また、アーム部31bには、第1カバー部材31cを装着するためのねじ穴付きのボス部85が形成されている。このような構成のトグルばね機構80を有するベール反転機構でも、揺動時にコイルばね82による第1ベール支持部材40の付勢方向が変化するので、前記実施形態と同様な効果が得られる。
【0060】
なお、このような実施形態において、コイルばね82の基端部内周面に接触するボス部や基端部外周面を覆うカバー部等を設けてコイルばね82の基端部を係止するようにしてもよい。また、これらのボス部やカバー部を第1ベール支持部材40の揺動軸と平行な軸回りに揺動するようにアーム部31bに装着してもよい。たとえば、ボス部の基端面に円弧凸部を形成するとともにアーム部31b内に円弧凸部に係合する円弧凹部を形成し、これによりボス部を揺動自在に構成することが考えられる。
【0061】
(b)前記実施形態では、制動部材を合成ゴム製にしたが、弾性を有するものであれば、金属、合成樹脂、コルク等の木材、皮革材等でもよい。
【0062】
(c)前記実施形態では、移動部材51を金属製の線材で構成したが、移動部材はこれに限定されず、後端部が前後移動して制動部材の制動面に接触するものであればどのような形態でもよい。
【0063】
(d)前記実施形態では、ベール反転機構18を第1ロータアーム31側に装着したが、第2ロータアーム32側に装着してもよい。また、一方のロータアームにロータ制動機構54を除くベール反転機構18を設け、他方のロータアームにロータ制動機構54を設けてもよい。
【0064】
(e)前記実施形態では、切換部材52の傾斜面60aが糸巻取回転方向上流側から下流側に向けて突出量が増加する傾斜面で構成されていたが、図8及び図9に示すように、傾斜面60aに加えて傾斜面60aの突出部分から糸巻取回転方向下流側に向けて突出量が減少する傾斜面60bを形成してもよい。このような突出量が減少する傾斜面60bを形成すると、切換部材52が山形の傾斜面となる。この結果、ベールアーム17が糸開放姿勢にあるとき、無理に逆転(糸繰り出し方向の回転)が加わって移動部材51が切換部材52に接触しても、ベール反転機構18の移動部材51が傾斜面60bで切換部材52に滑らかに案内され、損傷しにくくなる。なお、このような2つの傾斜面60a,60bを有する切換部材52は、リール本体2と一体形成された切換部材にも適用できる。
【0065】
(f)前記実施形態では、移動部材51の後端部51cが長孔36によって前後に案内されているが、長孔36を完全な前後方向ではなく左右に少し振れて配置し、後端部51cを斜めに案内してもよい。このように斜めに後端部51cを案内すると、糸開放姿勢のとき、後端部51cをロータ3の中心に向けることができる。また、後端部51cをロータ3の中心に向けると、後端部51cをさらにロータ3の中心に向けて折り曲げる必要がなくなる。
【0066】
(g)前記実施形態では、移動部材51の後端部51cの先端に丸みを付けたが、後端部51cの先端を湾曲させて制動部材65の制動面65aに接触させてもよい。
【0067】
(h)前記実施形態では、切換部材52をフランジ部2dに着脱自在に装着したが、フランジ部2dに一体形成してもよい。
【0068】
(i)前記実施形態では、導入面65bをアール面で構成したが前方に行くにつれて縮径するテーパ面で構成してもよい。
【0069】
(j)前記実施形態では、移動部材51が前後に移動したが、図10に示すように、移動部材151の後端部151cを径方向に移動させてもよい。この場合、制動部材165の制動面165aは前端面に形成される。また、導入面165bは、アール面ではなく、制動面165aの径方向外方に後方に行くにつれて拡径するテーパ面で形成されている。なお、この場合、移動部材151に、ベールアーム17の揺動に応じて移動する連動部(図示せず)と連動部の移動により径方向に移動する移動部151aとを設け、移動部151aの後端部151cを径方向に移動させればよい。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、制動面の移動方向上流側に上流側が下流側より移動部材から遠ざかるように導入面が形成され、かつ制動面が移動部材の移動方向に沿って形成されているので、移動部材の移動量が変動しても制動力が変化せず、ロータを安定して制動できるとともに、制動面に向けて徐々に移動部材に近づく導入面側から制動面に接触するので、移動部材の移動がスムーズになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を採用したスピニングリールの右側面図。
【図2】その左側面断面図。
【図3】第1ロータアームの平面図。
【図4】第1ロータアームの断面拡大図。
【図5】ベール反転機構を示すリールボディの正面図。
【図6】ベール反転機構を示すリールボディの底面部分図。
【図7】他の実施形態の図3に相当する図。
【図8】他の実施形態の図5に相当する図。
【図9】他の実施形態の図6に相当する図。
【図10】他の実施形態の図4に相当する図。
【符号の説明】
2 リール本体
3 ロータ
17 ベールアーム
18 ベール反転機構
50,80 トグルばね機構
51,151 移動部材
51a 先端部
51b 中間部
51c,151c 後端部
52 切換部材
55,81 ロッド
56 ガイド部材
57,82 コイルばね
60a 傾斜面
65 制動部材
65a 制動面
65b 導入面
【特許請求の範囲】
【請求項1】スピニングリールのリール本体に回転自在に装着されたロータを、糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動するベールアームの揺動に応じて制動するスピニングリールのロータ制動装置であって、
前記ベールアームの前記糸巻取姿勢から前記糸開放姿勢への揺動に連動して前記ロータ内から前記リール本体側に移動自在に前記ロータに装着された移動部材と、
前記移動部材の移動方向に沿って形成され前記ベールアームが糸開放姿勢にあるときに前記移動部材が接触可能な制動面と、前記制動面と連続して前記移動部材の移動方向上流側に設けられ、前記移動方向上流側が下流側より前記移動部材から遠ざかるように傾斜する導入面とを有し、前記リール本体に設けられた弾性体製の制動部材と、
を備えたスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項2】前記制動面は前記制動部材の外周面に平坦な円周面で形成され、前記導入面は、前記制動面の前部に前方側に向けて徐々に縮径する傾斜面で形成されており、
前記移動部材は、先端部が前記ベールアームに係止され、前記ベールアームの揺動に連動して前記糸巻取姿勢に対応する前記リール本体から離反した第1位置と、前記糸開放姿勢に対応する前記リール本体に接近し前記導入面を経て前記制動面に接触する第2位置とに後端部が少なくとも前後移動自在に前記ロータに設けられている、請求項1に記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項3】前記移動部材は、先端部が前記ベールアームの揺動中心の近傍に向けて揺動軸芯に沿うように屈曲し、後端部が前記ロータの回転軸芯に向けて屈曲し、その間が前記ロータの回転軸芯に沿って配置された部材であり、前記後端部が前記ロータに前後移動自在に係止され、前記先端部が前記ベールアームに形成された係合凹部に揺動方向に移動自在に係止されている、請求項2に記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項4】前記導入面は、前方側に向けて徐々に縮径する円錐台形状のテーパ面で形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項5】前記導入面は、前方側に向けて徐々に縮径する丸みを帯びたアール面で形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項6】前記移動部材の前記制動面に接触する後端面は丸みを帯びている、請求項1から5のいずれかに記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項7】前記ベールアームに先端部が回動自在に係止され、前記ベールアームを前記糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに振り分けて付勢するトグルばね機構と、
前記リール本体の前部に設けられ、前記ロータが糸巻取方向に回転したとき、前記第2位置に移動した前記移動部材の突出した後端部に接触して前記移動部材を前記第2位置に向けて移動させる切換部とをさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【請求項8】前記制動面は前記制動部材の前端面に平坦な環状面で形成され、前記導入面は、前記制動面の前部外周側に後方側に向けて徐々に拡径する傾斜面で形成されており、
前記移動部材は、
先端部が前記ベールアームに係止され、前記ベールアームの揺動に連動して前記糸巻取姿勢に対応する前記リール本体から離反した第1位置と前記糸開放姿勢に対応する前記リール本体に接近する第2位置とに移動自在に装着された連動部と、
前記連動部の前記第1位置と第2位置との移動に連動して径方向移動するように前記ロータに設けられ、前記連動部が第1位置から第2位置に移動すると前記導入面を経て前記制動面に接触する移動部とを有する、請求項1に記載のスピニングリールのロータ制動装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータ制動装置、特に、スピニングリールのリール本体に回転自在に装着されたロータを、糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動するベールアームの揺動に応じて制動するスピニングリールのロータ制動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にスピニングリールのロータには、釣り糸をスプールに案内するためのベールアームが設けられている。ベールアームは、釣り糸を巻き取る際に釣り糸をスプール外周に導く糸巻取姿勢と、スプールから釣り糸を繰り出す際に邪魔にならないように糸巻取姿勢から倒された糸開放姿勢とをとり得る。ベールアームを糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに維持するとともに、ロータの糸巻取方向の回転に連動して糸開放姿勢から糸巻取姿勢に戻すために、ロータにはベール反転装置が設けられている。
【0003】
従来のベール反転装置として、特開平10−4839号公報に開示された装置が知られている。このベール反転装置は、ベールアームの揺動中心の近傍に先端が係止され、ロータに装着されたトグルばねと、ベールアームの揺動中心の近傍に先端が係止され、基端がリール本体に向けて前後移動する移動部材と、移動部材に接触するようにリール本体に設けられた切換突起とを有している。トグルばねは、ベールアームを2つの姿勢に振り分けて付勢し、ベールアームを2つの姿勢で保持する。移動部材は、糸開放姿勢にベールアームが揺動すると、切換突起に接触する位置に後退する。そして、ロータが糸巻取方向に回転すると、切換突起に接触して前進する。この前進によりトグルばねが収縮し、トグルばねによってベールアームが糸巻取姿勢に戻る。
【0004】
このようなスピニングリールでは、キャスティングを行って釣り糸を繰り出すときには、ロータの逆転を禁止した状態で、釣り糸を人指し指の腹で引っ掛けた後ベールアームを糸開放姿勢に反転させる。このときには、釣り糸を引っ掛けやすいようにラインローラが釣り竿側になるようにロータを回転させる。そして、釣り竿を振り下ろしその途中で釣り糸を人指し指から放して仕掛けが着水するのを待つ。仕掛けが着水した後、仕掛けが適当に沈んだところでハンドルを僅かに巻き取りベール反転装置によりベールアームを糸巻取姿勢に戻す。
【0005】
また、キャスティング後や船釣り時等に仕掛けの自重により釣り糸を繰り出すときには、ベールアームを糸開放姿勢に反転した後人差し指の先端部でスプール先端を押さえて釣り糸に人差し指の腹を接触させ糸ふけを防止するサミングといわれる操作を行う。このときには、ベールアームが邪魔にならないような位置にロータを回転させる。
【0006】
前記従来のスピニングリールでは、ベールアームを糸開放姿勢にしているとき、逆転防止機構により逆転が禁止されていれば糸繰り出し方向にロータが回転することはない。しかし、糸巻取方向にはロータが回転することがある。近年、ロータは、高巻き上げ効率を達成するために回転バランスが向上しているので軽く回転しやすくなっている。このため、回転バランスを向上させたスピニングリールでは糸巻取方向に簡単に回転しやすい。ロータが回転すると、キャスティングやサミングのそれぞれに適した回転位相にロータを回転させてもロータの回転位相が容易にずれることがある。
【0007】
これを防止するために、前記従来の構成では、リール本体に接触してロータを制動する制動部材が移動部材に装着されている。制動部材は、移動部材が接触位置に移動すると、リール本体の前面に接触して圧縮されロータを制動する。このようにベール反転時にロータを弾性的に制動すると、ロータの回転を防止できるとともに、必要に応じてロータの糸巻取方向へ回転させることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の構成では、移動部材に装着された制動部材がリール本体に接触して圧縮されることによりロータを制動している。このため、製作誤差や取付誤差等により移動部材の接触位置が前後に変動すると、制動部材の圧縮量が変動する。圧縮量が変動すると、ロータの制動力が変動し、ロータを安定して制動できなくなる。
【0009】
そこで、制動部材をリール本体に設けるとともに、移動部材を制動部材の圧縮方向と交差する方向に制動部材の端部から外側面に向けて移動させて制動部材に接触させることが考えられる。これにより、移動部材の移動量の変動に関わらずロータを安定して制動できるようになる。しかし、このように構成すると、移動部材が制動部材の端部に接触するときに、移動部材がスムーズに移動しにくくなるおそれがある。移動部材がスムーズに移動しなくなると、ベールアームを糸巻取姿勢から糸開放姿勢に滑らかに切り換えしにくくなる。
【0010】
本発明の課題は、糸開放姿勢の時にロータを制動可能なスピニングリールのロータ制動装置において、移動部材の移動量の変動に関わらずロータを安定して制動でき、かつ制動部材への接触時に移動部材をスムーズに移動できるようにすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明1に係るスピニングリールのロータ制動装置は、スピニングリールのリール本体に回転自在に装着されたロータを、糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに揺動するベールアームの揺動に応じて制動する装置であって、移動部材と、制動部材とを備えている。移動部材は、ベールアームの糸巻取姿勢から糸開放姿勢への揺動に連動してロータ内からリール本体側に移動自在にロータに装着された部材である。制動部材は、移動部材の移動方向に沿って形成されベールアームが糸開放姿勢にあるときに移動部材が接触可能な制動面と、制動面と連続して移動部材の移動方向上流側に設けられ、移動方向上流側が下流側より記移動部材から遠ざかるように傾斜する導入面とを有し、リール本体に設けられた弾性体製の部材である。
【0012】
このロータ制動装置では、ベールアームが糸巻取姿勢から糸開放姿勢に揺動すると、それに連動して移動部材が導入面側から制動面に接触してロータが制動される。ここでは、制動面の移動方向上流側に上流側が下流側より移動部材から遠ざかるように導入面が形成され、かつ制動面が移動部材の移動方向に沿って形成されているので、移動部材の移動量が変動しても制動力が変化せず、ロータを安定して制動できるとともに、制動面に向けて徐々に移動部材に近づく導入面側から制動面に接触するので、移動部材の移動がスムーズになる。
【0013】
発明2に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明1に記載の装置において、制動面は制動部材の外周面に平坦な円周面で形成され、導入面は、制動面の前部に前方側に向けて徐々に縮径する傾斜面で形成されており、移動部材は、先端部がベールアームに係止され、ベールアームの揺動に連動して糸巻取姿勢に対応するリール本体から離反した第1位置と、糸開放姿勢に対応するリール本体に接近し導入面を経て前記制動面に接触する第2位置とに後端部が少なくとも前後移動自在にロータに設けられている。この場合には、ベールアームが糸巻取姿勢から糸開放姿勢に揺動すると、移動部材を第1位置から第2位置に移動し、導入面側から制動面に接触する。ここでは、移動部材の前後移動により制動部材の外周面に形成された制動面に接触するように構成したので、移動部材の構成が簡素である。
【0014】
発明3に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明2に記載の装置において、移動部材は、先端部がベールアームの揺動中心の近傍に向けて揺動軸芯に沿うように屈曲し、後端部がロータの回転軸芯に向けて屈曲し、その間がロータの回転軸芯に沿って配置された部材であり、後端部がロータに前後移動自在に係止され、先端部がベールアームに形成された係合凹部に揺動方向に移動自在に係止されている。ここでは、屈曲して形成された移動部材の先端部をベールアームに係止し、後端部を前後移動自在に係止するだけで、ベールアームの揺動運動を移動部材の後端部の前後運動に簡単に変換できる。
【0015】
発明4に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明1から3のいずれかに記載の装置において、導入面は、前方側に向けて徐々に縮径する円錐台形状のテーパ面で形成されている。この場合には、導入面の形状が簡素であるので、導入面の形成が容易である。
【0016】
発明5に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明1から3のいずれかに記載の装置において、導入面は、前方側に向けて徐々に縮径する丸みを帯びたアール面で形成されている。この場合には、導入面が丸みを帯びたアール面で形成されているので、移動部材が移動しながら導入面から制動面に接触するときによりスムーズに移動でき、ベールアームの姿勢の切り換えがより滑らかになる。
【0017】
発明6に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明1から5のいずれかに記載の装置において、移動部材の制動面に接触する後端面は丸みを帯びている。この場合には、制動部材に接触する移動部材の後端面が丸みを帯びているので、移動部材が移動しながら制動部材に接触するときや制動部材から離反するときにスムーズに移動でき、両姿勢での姿勢の切り換えが滑らかになる。
【0018】
発明7に係るスピニングリールのロータ制動装置は、発明2から6のいずれかに記載の装置において、ベールアームに先端部が回動自在に係止され、ベールアームを糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに振り分けて付勢するトグルばね機構と、リール本体の前部に設けられ、ロータが糸巻取方向に回転したとき、第2位置に移動した移動部材の突出した後端部に接触して移動部材を第1位置に向けて移動させ切換部とをさらに備える。この場合には、ベールの反転装置とロータの制動装置とで構成要素を兼用でき、コンパクトなスピニングリールを実現できる。
【0019】
発明8に係るスピニングリールのロータ制動装置では、発明1に記載の装置において、制動面は制動部材の前端面に平坦な環状面で形成され、導入面は、制動面の前部外周側に後方側に向けて徐々に拡径する傾斜面で形成されており、移動部材は、先端部がベールアームに係止され、ベールアームの揺動に連動して糸巻取姿勢に対応するリール本体から離反した第1位置と糸開放姿勢に対応するリール本体に接近する第2位置とに移動自在に装着された連動部と、連動部の第1位置と第2位置との移動に連動して径方向移動するようにロータに設けられ、連動部が第1位置から第2位置に移動すると導入面を経て制動面に接触する移動部とを有する。この場合には、制動部材の前端面に制動面が形成されているので、制動面の平面度を高く維持しやすくなり、制動力をより安定させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1において、本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、ハンドル1と、ハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。
【0021】
リール本体2は、内部に空間を有するリールボディ2aと、リールボディ2aの空間を塞ぐためにリールボディ2aに着脱自在に装着される蓋部材2bとを有している。
【0022】
リールボディ2aは、たとえばマグネシウム合金製であり、上部に前後に延びるT字形の竿取付脚2cが一体形成されている。図2に示すように、リールボディ2aの空間内には、ロータ3をハンドル1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。リールボディ2a及び蓋部材2bの前端には、円形のフランジ部2dと、フランジ部2dより小径で先端が開口する円筒部2eと形成されている。円筒部2eの断面は、図5に示すように、円の一部が切り欠かれたD字状に形成されている。
【0023】
蓋部材2bは、たとえばマグネシウム合金製の部材であり、3カ所でリールボディ2aにビス止めされている。フランジ部2dにおいて、リールボディ2aと蓋部材2bとの分割部分には、図5及び図6に示すように、後述する切換部材52が着脱自在に装着されている。
【0024】
ロータ駆動機構5は、図2に示すように、ハンドル1が回転不能に装着されたハンドル軸10と、ハンドル軸10とともに回転するフェースギア11と、このフェースギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。ピニオンギア12は筒状に形成されており、その前部12aはロータ3の中心部を貫通しており、ナット13によりロータ3と固定されている。ピニオンギア12は、その軸方向の中間部と後端部とが、それぞれ軸受14a,14bを介してリール本体2に回転自在に支持されている。
【0025】
オシレーティング機構6は、スプール4の中心部にドラグ機構71を介して連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。
【0026】
〔ロータの構成〕
ロータ3は、図2に示すように、ロータ本体16と、ロータ本体16の先端に糸開放姿勢と糸巻取姿勢とに揺動自在に装着されたベールアーム17と、ベールアーム17を糸巻取姿勢に戻すためにロータ本体16に装着されたベール反転機構18とを有している。
【0027】
ロータ本体16は、リールボディ2aにスプール軸15回りに回転自在に装着された円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1及び第2ロータアーム31,32とを有している。円筒部30と両ロータアーム31,32とは、たとえばマグネシウム合金製であり一体成形されている。
【0028】
円筒部30の前部には前壁33が形成されており、前壁33の中央部にはボス部33aが形成されている。ボス部33aの中心部には貫通孔が形成されており、この貫通孔をピニオンギアの前部12a及びスプール軸15が貫通している。
前壁33の前部にロータ3の固定用のナット13が配置されている。
【0029】
第1及び第2ロータアーム31,32は、図2〜図4に示すように、円筒部30の後部外周面にそれぞれ配置された第1及び第2接続部31a,32aと、第1及び第2接続部31a,32aからそれぞれ外方に凸に湾曲しつつ前方に延びる第1及び第2アーム部31b,32bと、両接続部31a,31bと両アーム部31b,32bとの両外方部分をそれぞれ覆う第1及び第2カバー部材31c.32cとを有している。第1及び第2接続部31a,32aは、円筒部30と周方向に滑らかにそれぞれ連続して形成されている。
【0030】
第1及び第2アーム部31b,32bは、第1及び第2接続部31a,32aと滑らかに連続して形成され円筒部30と間隔をあけて前方に延びている。第1及び第2アーム部31b,32bは、先端部から円筒部30との接続部分に向けて滑らかに湾曲している。両接続部31a,31bと両アーム部31b,32bとの両外方部分には、開口31d,32dがそれぞれ形成されており、第1及び第2カバー部材31c,32cは、開口31d,32dをそれぞれ外周側から塞いでいる。この第1カバー部材31cと第1接続部31a及び第1アーム部31bとの間には、収納空間48が形成されている。
【0031】
第1アーム部31bの先端の外周側には、第1ベール支持部材40が揺動自在に装着されている。第1アーム部31bには、図4に示すように、ベール反転機構18を装着するための長孔36及び装着孔37と、第1ベール支持部材40を装着するためのねじ孔付きのボス部38とが形成されている。
【0032】
第2アーム部32bの先端内周側には、第2ベール支持部材42が揺動自在に装着されている。
【0033】
第1ベール支持部材40は、第1アーム31bの先端にねじ込まれた取付ピン39により第1ロータアーム31に取り付けられる。この取付ピン39は引っかかりが少ない六角孔付きボルトからなり、その頭部に釣り糸が引っかかりにくくなっている。
【0034】
第1ベール支持部材40の先端には、図3に示すように、釣り糸をスプール4に案内するためのラインローラ41と、ラインローラ41を挟んで第1ベール支持部材40に固定された固定軸カバー47とが装着されている。ラインローラ41は、第1ベール支持部材40の先端に回転自在に装着されている。固定軸カバー47は、先端がとがった変形円錐形状である。固定軸カバー47の先端部と第2ベール支持部材42との間には線材を略U状に湾曲させた形状のベール43が固定されている。これらの第1及び第2ベール支持部材40,42、ラインローラ41、ベール43及び固定軸カバー47により釣り糸をスプール4に案内するベールアーム17が構成される。ベールアーム17は、図3(a)に示す糸案内姿勢と、図3(b)に示す糸案内姿勢から反転した糸開放姿勢との間で揺動自在である。
【0035】
〔ベール反転機構の構成〕
ベール反転機構18は、収納空間48内に配置されている。ベール反転機構18は、ベールアーム17を糸開放姿勢から糸案内姿勢にロータ3の回転に連動して復帰させるとともに、両姿勢でその状態を保持する。
【0036】
ベール反転機構18は、図3〜図6に示すように、収納空間48内で第1アーム部31bに揺動自在に装着されたトグルばね機構50と、収納空間48内に移動自在に装着された移動部材51と、移動部材51に接触可能にフランジ部2dに着脱自在に装着された切換部材52と、ロータ3を制動するためのロータ制動機構54とを有している。
【0037】
トグルばね機構50は、図3に示すように、ベールアーム17が糸巻取姿勢となる第1位置と糸開放姿勢となる第2位置とを取り得るように第1ロータアーム31内に配置され、ベールアーム17を糸巻取姿勢と糸開放姿勢とに保持するための機構である。トグルばね機構50は、一端が第1ベール支持部材40に係止され、他端が第1アーム部31bに沿って延びるロッド55と、ロッド55が進退自在に装着されるとともに第1アーム部31bに中間部が揺動自在に取り付けられたガイド部材56と、ロッド55を進出側に付勢するコイルばね57とを有している。
【0038】
ロッド55は、図4に示すように、その先端部55aが外周側に折り曲げられ、第1ベール支持部材40に形成された係合穴40aに係止されている。またロッド55の外周面には、ばね係止用の突起部55bが形成されている。
【0039】
ガイド部材56は前端が開口する有底角筒状の部材であり、装着孔37に係合するように突出する揺動軸56aを軸方向の中間部に有している。揺動軸56aは、ロータ3の径方向に沿って配置されており、ガイド部材56は、揺動軸56aを中心に第1ロータアーム31に揺動自在に取り付けられている。
【0040】
トグルばね機構50は、揺動軸56aの軸芯と第1ベール支持部材40の揺動軸芯とを結ぶ線分に対して、糸巻取姿勢と糸開放姿勢とでロッド55の第1ベール支持部材40に対する係止位置が異なる方向に位置するように配置されている。これにより、トグルばね機構50は、ベールアーム17を両姿勢に振り分けて付勢して両姿勢で保持できる。
【0041】
移動部材51は、たとえば、ステンレス合金などの金属製の線材の両端を90度異なる方向に折り曲げて形成された部材である。移動部材51は、図3(a)に示す離反位置と図3(b)に示す接触位置とに、第1アーム部31bに略前後移動自在に装着されている。移動部材51は、図3〜図6に示すように、その先端部51aが外周側に折り曲げられ、第1ベール支持部材40に揺動方向に沿って形成された円弧状の係合凹溝40bの揺動方向の端部のいずれに係止されている。中間部51bは、ロッド55より径方向内側で第1アーム部31bに沿って延びている。後端部51cは、中間部51bから内周側に折り曲げられ、さらにロータ3の中心(回転軸芯)に向けて折り曲げられている。このように後端部51cをロータ3の中心に向けると、切換部材52に接触して押圧されたときに、力の伝達がスムーズになる。また、先端部51aを円弧状の係合凹溝40bの端部に係止することにより、揺動時のベールアームの揺動量より移動部材51の移動量を係合凹溝40bの円弧方向の長さ分少なくすることができる。後端部51cは、長孔36を貫通し、ロータ制動機構54を構成する制動部材65の前端面に僅かに重なり合う位置まで内方に延びており、その後端面が僅かに丸みを帯びている。長孔36の幅は、移動部材51の直径とほぼ同じ寸法である。このため、移動部材51の後端部51cは、ベールアーム17の揺動に連動して長孔36に沿って前後に移動する。
【0042】
移動部材51の係合凹溝40bでの係止端は、ベールアーム17が糸開放姿勢にあるとき、後端部51cとベールアーム17の揺動中心とを結ぶ線分より糸巻取姿勢側に位置している。つまり、移動部材51は、接触位置(図3(b))にあるときの後端部51cの軸芯と第1ベール支持部材40の揺動軸芯とを結ぶ線分から同じ方向に離反位置と接触位置とで第1ベール支持部材40への係止位置が存在するように配置されている。これにより、移動部材51の後端部51cが切換部材52により押圧されたとき、第1ベール支持部材40を糸巻取姿勢側に復帰させることができる。この接触位置にあるとき、後端部51cの端面は、制動部材65の前端面より奥側で外周面よりやや内方に食い込んでいる。このため、移動部材51の移動量が僅かに変動しても常に同じ制動力が得られる。
【0043】
ロータ制動機構54は、糸開放姿勢にベールアーム17が揺動したときロータ3を制動するものであり、移動部材51と、円筒部2eの基端部に装着された制動部材65とを有している。すなわち、移動部材51は、ベール反転機構18を構成するとともに、ロータ制動機構54も構成する。
【0044】
制動部材65は、ベールアーム17が糸開放姿勢にあるとき、ロータ3の回転を制動するために設けられている。制動部材65は、断面が矩形の、たとえばスチレン‐ブタジエン‐ゴム(SBR)、アクリロニトリル‐ブタジエン‐ゴム、ブタジエン‐ゴム、イソプレン‐ゴム、クロロプレン‐ゴム、シリコーン‐ゴム、ウレタン‐ゴム等の合成ゴムからなる弾性体製のリング状の部材である。制動部材65の外周面には、切換部材52を回避する部分を除いて平坦な円周面で構成された制動面65aが形成されている。制動部材65は、断面がD字状の円筒部2eの基端外周面に装着されている。したがって、制動部材65は、正面視D字状に装着されている。この制動部材65の直線部は、切換部材52を迂回するために設けられている。制動部材65の制動面65aの先端端縁には、導入面65bが制動面65aと連続して形成されている。導入面65bは、糸開放姿勢への揺動に連動した移動部材51の移動方向上流側が下流側より遠ざかるように形成されており、本実施形態では、制動面65aと連続して丸みをおびたアール面で形成されている。このように制動面65aに連続して傾斜した導入面65bを形成すると、移動部材51が制動部材65に接触するとき、丸みを帯びた移動部材51の先端が制動部材65の導入面65bを経て制動面65aに滑らかに接触する。このため、ベールアーム17の姿勢の切り換えがスムーズになる。円筒部2eの外周面には、フランジ部2dと間隔を隔てて環状突起2fが形成されており、制動部材65は、フランジ部2dと環状突起2fとの間に両者に接触して装着されている。
【0045】
切換部材52は、たとえばナイロン66やポリアセタールなどの合成樹脂製の部材であり、図5及び図6に示すように、リールボディ2aと蓋部材2bとの分割部分でフランジ部2dに着脱自在に装着されている。リールボディ2aと蓋部材2bとの分割部分には、矩形の切り欠き53が形成されている。切換部材52は、傾斜面60aを有するカム部60と、カム部60と一体形成されたくびれ部61と、鍔部62とを有している。傾斜面60aは、図6に矢印で示すロータ3の糸巻取回転方向の下流側が上流側によりロータ3に向けて前方に突出する傾斜面である。くびれ部61は、切り欠き53にはめ込まれる大きさを有しており、フランジ部2dの肉厚と略同じ寸法の隙間をカム部60と鍔部62との間に形成している。鍔部62は、くびれ部61より大きな断面を有しており、フランジ部2dの裏面に接触する。
【0046】
このように構成された切換部材52は、リールボディ2aに蓋部材2bを装着するとき、たとえばリールボディ2a側の切り欠き53にくびれ部61をはめ込み、蓋部材2bをリールボディ2aにビス止めするだけで、リール本体2に固定できる。このため、固定のための別の部材を用いずに簡単にリール本体2に切換部材52を固定できる。また、リール本体2が腐食しやすいマグネシウム合金製であっても、移動部材51が接触する切換部材52はリール本体2と別部材であるので、ベールアーム17が反転するときにリール本体2が傷つくことがない。このため、傷による腐食の進行を防止できる。さらに、リール本体2に装着される切換部材52は、誘電体である合成樹脂製であるため、切換部材52をリール本体2に接触させてもリール本体2が電解腐食しない。
【0047】
このような構成のトグルばね機構50は、図3(a)に示すような第1位置と、図3(b)に示すような第2位置とをとることが可能である。第1位置は、ベールアーム17の糸巻取姿勢に対応し、第2位置はベールアーム17の糸開放姿勢に対応している。また、移動部材51は、図3(a)に示す離反位置と、図3(b)に示す接触位置とに後端部51cが長孔36に案内されて前後移動することができる。この離反位置が糸巻取姿勢に対応し、接触位置が糸巻取姿勢に対応する。接触位置では、移動部材51の後端部51cの端面が制動部材65の前端面より奥側で制動面65aが僅かに圧縮されるように接触する。このため、移動部材51の移動位置、つまり接触位置が軸方向に変動しても制動力は変動しない。また、接触位置でロータ3が糸巻取方向に回転すると、移動部材51の後端部51cの周面は切換部材52の傾斜面60aに接触し、移動部材51は離反姿勢に向けて前方に押圧される。
【0048】
ロータ3の円筒部30の内部には、図2に示すように、ロータ3の逆転を禁止・解除するための逆転防止機構70が配置されている。逆転防止機構70をローラ型のワンウェイクラッチを有しており、ワンウェイクラッチを作用状態と非作用状態とに切り換えることにより、ロータ3の逆転を禁止・解除する。
【0049】
スプール4は、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端にドラグ機構71を介して装着されている。スプール4は、外周に釣り糸が巻かれる糸巻き胴部4aと、糸巻き胴部4aの後部に一体で形成されたスカート部4bと、糸巻き胴部4aの前端に一体で形成されたフランジ部4cとを有している。
【0050】
〔リールの操作及び動作〕
キャスティング時には逆転防止機構70によりロータ3を逆転禁止状態にしてベールアーム17を糸開放姿勢に反転させる。ベールアーム17を糸開放姿勢に反転させると、第1ベール支持部材40及び第2ベール支持部材42は後方側に倒れ、ベール反転機構18は、図3(b)に示すような第2位置に配置される。ベールアーム17が糸開放姿勢に倒れた状態では、スプール4からの釣り糸を容易に繰り出すことが可能である。
【0051】
この糸巻取姿勢から糸開放姿勢への揺動において、トグルばね機構50では、第1ベール支持部材40の回転によってロッド55が図3(a)において徐々に退入しつつ反時計方向に揺動し、図3(b)に示す第2位置にいたる。このとき、死点を超えるまでは退入する。死点を超えると、ロッド55がコイルばね57の付勢力により進出してベールアーム17を糸開放姿勢側に切り換えるとともにその姿勢で保持する。
【0052】
ベールアーム17が糸開放姿勢に揺動すると、係合凹溝40bの揺動方向上流側の端部に移動部材51の先端部51aが接触すると、移動部材51は、離反位置から接触位置に向けて移動を開始する。そして第2位置に至ると、移動部材51の後端部51cの端面は、制動部材65の導入面65bを経て制動面65aに僅かに食い込んで弾性的に接触する。この結果、ロータ3が制動されその回転位相が保持される。このとき、移動部材51の後端部51cの端面が制動部材65の制動面65aに僅かに食い込んで弾性的に接触しているので、移動部材51の接触位置が軸方向にずれても、接触状態が変動せず、制動力が変化しない。また、移動部材51が制動部材65と弾性的に接触して摩擦によりロータ3が制動されているだけであるので、ロータ3を手で回転させたりハンドル1により回転させれば簡単に回転位相を調整できる。すなわち、ロータ3が摩擦力により制動され回転位相が維持されるので、ベールアーム17を糸開放姿勢にしたときにロータ3が回転することはない。したがって、キャスティング時やサミング時にロータ3の不意の回転による不具合を解消できる。しかも、ロータ3は摩擦により制動されているだけであるので、ロータ3に力を加えれば簡単に回して回転位相を調整することができる。
【0053】
この状態で釣り竿を握る手の人差し指で釣り糸を引っかけながら釣り竿をキャスティングする。すると釣り糸は仕掛けの重さにより勢いよく放出される。
【0054】
キャスティング後に、ベールアーム17を糸開放姿勢に維持したままの状態でハンドル1をたとえば左手で糸巻取方向に回転させると、ロータ駆動機構5によりロータ3が糸巻取方向に回転する。ロータ3が糸巻取方向に回転すると、ベールアーム17がベール反転機構18により糸巻取姿勢に復帰する。
【0055】
具体的には、図5及び図6において、移動部材51がロータ3とともに時計方向に回転する。すると、移動部材51の後端部51cの周面がリール本体2側に固定された切換部材52の傾斜面60aに当接する。これにより、移動部材51が前方に押圧され、図6に二点鎖線で示す離反位置に切り換えられ、第1ベール支持部材40を糸巻取姿勢に揺動させる。これに伴ってトグルばね機構50のガイド部材56が図3(b)に示す第2位置から図3(a)に示す第1位置に向けて揺動する。そして、死点を超えると、コイルばね57の付勢力よりロッド55が進出し、ベールアーム17を糸巻取姿勢に切り換えるとともにその姿勢で保持する。ベールアーム17が糸巻取姿勢に復帰すると、第1ベール支持部材40及び第2ベール支持部材42は、図1及び図2に示すように、それぞれ前方側に起立している。ベールアーム17が糸巻取姿勢に戻ると、ベールアーム17により釣り糸がスプール4に案内されてスプール4の外周に巻き付けられる。
【0056】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、トグルばね機構50をロッド55とガイド部材56とコイルばね57とで構成したが、図7に示すように、トグルばね機構80をロッド81とロッド81の外周側に配置されたコイルばね82とで構成してもよい。
【0057】
トグルばね機構80のロッド81は、先端に第1ベール支持部材40の係合孔40aに係止されるように第1ベール支持部材40に向けて折れ曲がった係止部81aを有している。また、ロッド81は、中間部にコイルばね82の先端部を係止するための係止突起81bを有し、後端部に僅かに湾曲した湾曲部81cを有している。係止突起81bには、コイルばね82の先端が当接するワッシャ83が装着されており、これにより、コイルばね82の先端部からロッド81に力が均一に伝達される。
【0058】
コイルばね82は、アーム部31bに装着された、たとえばナイロン66などの合成樹脂製の案内シート84に接触して案内される。案内シート84は、コイルばね82の一面を案内するとともに係止するように折れ曲がった壁面部84aを有している。壁面部84aは、コイルばね82の側部及び基端部に接触し得る高さを有している。これにより、コイルばね82が伸縮しやすくなるとともに、コイルばね82が伸縮する際にアーム部31bが傷つかなくなる。
【0059】
コイルばね82のワッシャ83に係止される先端部は他の部分より巻径が小さくなっている。これにより先端部以外でコイルばね82とロッド81との間で大きな隙間が生じ、コイルばね82の内部でロッド81が姿勢を変えてもコイルばね82が変形しにくくなる。また、アーム部31bには、第1カバー部材31cを装着するためのねじ穴付きのボス部85が形成されている。このような構成のトグルばね機構80を有するベール反転機構でも、揺動時にコイルばね82による第1ベール支持部材40の付勢方向が変化するので、前記実施形態と同様な効果が得られる。
【0060】
なお、このような実施形態において、コイルばね82の基端部内周面に接触するボス部や基端部外周面を覆うカバー部等を設けてコイルばね82の基端部を係止するようにしてもよい。また、これらのボス部やカバー部を第1ベール支持部材40の揺動軸と平行な軸回りに揺動するようにアーム部31bに装着してもよい。たとえば、ボス部の基端面に円弧凸部を形成するとともにアーム部31b内に円弧凸部に係合する円弧凹部を形成し、これによりボス部を揺動自在に構成することが考えられる。
【0061】
(b)前記実施形態では、制動部材を合成ゴム製にしたが、弾性を有するものであれば、金属、合成樹脂、コルク等の木材、皮革材等でもよい。
【0062】
(c)前記実施形態では、移動部材51を金属製の線材で構成したが、移動部材はこれに限定されず、後端部が前後移動して制動部材の制動面に接触するものであればどのような形態でもよい。
【0063】
(d)前記実施形態では、ベール反転機構18を第1ロータアーム31側に装着したが、第2ロータアーム32側に装着してもよい。また、一方のロータアームにロータ制動機構54を除くベール反転機構18を設け、他方のロータアームにロータ制動機構54を設けてもよい。
【0064】
(e)前記実施形態では、切換部材52の傾斜面60aが糸巻取回転方向上流側から下流側に向けて突出量が増加する傾斜面で構成されていたが、図8及び図9に示すように、傾斜面60aに加えて傾斜面60aの突出部分から糸巻取回転方向下流側に向けて突出量が減少する傾斜面60bを形成してもよい。このような突出量が減少する傾斜面60bを形成すると、切換部材52が山形の傾斜面となる。この結果、ベールアーム17が糸開放姿勢にあるとき、無理に逆転(糸繰り出し方向の回転)が加わって移動部材51が切換部材52に接触しても、ベール反転機構18の移動部材51が傾斜面60bで切換部材52に滑らかに案内され、損傷しにくくなる。なお、このような2つの傾斜面60a,60bを有する切換部材52は、リール本体2と一体形成された切換部材にも適用できる。
【0065】
(f)前記実施形態では、移動部材51の後端部51cが長孔36によって前後に案内されているが、長孔36を完全な前後方向ではなく左右に少し振れて配置し、後端部51cを斜めに案内してもよい。このように斜めに後端部51cを案内すると、糸開放姿勢のとき、後端部51cをロータ3の中心に向けることができる。また、後端部51cをロータ3の中心に向けると、後端部51cをさらにロータ3の中心に向けて折り曲げる必要がなくなる。
【0066】
(g)前記実施形態では、移動部材51の後端部51cの先端に丸みを付けたが、後端部51cの先端を湾曲させて制動部材65の制動面65aに接触させてもよい。
【0067】
(h)前記実施形態では、切換部材52をフランジ部2dに着脱自在に装着したが、フランジ部2dに一体形成してもよい。
【0068】
(i)前記実施形態では、導入面65bをアール面で構成したが前方に行くにつれて縮径するテーパ面で構成してもよい。
【0069】
(j)前記実施形態では、移動部材51が前後に移動したが、図10に示すように、移動部材151の後端部151cを径方向に移動させてもよい。この場合、制動部材165の制動面165aは前端面に形成される。また、導入面165bは、アール面ではなく、制動面165aの径方向外方に後方に行くにつれて拡径するテーパ面で形成されている。なお、この場合、移動部材151に、ベールアーム17の揺動に応じて移動する連動部(図示せず)と連動部の移動により径方向に移動する移動部151aとを設け、移動部151aの後端部151cを径方向に移動させればよい。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、制動面の移動方向上流側に上流側が下流側より移動部材から遠ざかるように導入面が形成され、かつ制動面が移動部材の移動方向に沿って形成されているので、移動部材の移動量が変動しても制動力が変化せず、ロータを安定して制動できるとともに、制動面に向けて徐々に移動部材に近づく導入面側から制動面に接触するので、移動部材の移動がスムーズになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を採用したスピニングリールの右側面図。
【図2】その左側面断面図。
【図3】第1ロータアームの平面図。
【図4】第1ロータアームの断面拡大図。
【図5】ベール反転機構を示すリールボディの正面図。
【図6】ベール反転機構を示すリールボディの底面部分図。
【図7】他の実施形態の図3に相当する図。
【図8】他の実施形態の図5に相当する図。
【図9】他の実施形態の図6に相当する図。
【図10】他の実施形態の図4に相当する図。
【符号の説明】
2 リール本体
3 ロータ
17 ベールアーム
18 ベール反転機構
50,80 トグルばね機構
51,151 移動部材
51a 先端部
51b 中間部
51c,151c 後端部
52 切換部材
55,81 ロッド
56 ガイド部材
57,82 コイルばね
60a 傾斜面
65 制動部材
65a 制動面
65b 導入面
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