JP2002032911A - 磁気記録媒体の保護膜の結合力を判定する方法、磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体の保護膜の結合力を判定する方法、磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置

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JP2002032911A
JP2002032911A JP2000215768A JP2000215768A JP2002032911A JP 2002032911 A JP2002032911 A JP 2002032911A JP 2000215768 A JP2000215768 A JP 2000215768A JP 2000215768 A JP2000215768 A JP 2000215768A JP 2002032911 A JP2002032911 A JP 2002032911A
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Mikio Suzuki
幹夫 鈴木
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Showa Denko KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】カーボンを主成分とする保護膜の有する潤滑剤
との結合力を迅速に測定し判定する方法、潤滑剤との結
合力が適切であるカーボンを主成分とする保護膜を有し
た磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置
を提供する。 【解決手段】非磁性基板上に少なくとも非磁性下地層
と、磁性層とを有するディスク上に、炭化水素を含む反
応ガスを原料としてプラズマCVD法により形成された
カーボンを主成分とする保護膜とその上に塗布された潤
滑剤とを含む磁気記録媒体において、該カーボンを主成
分とする保護膜の表面の赤外吸収曲線の炭素−水素結合
由来のピーク強度値によって該カーボンを主成分とする
保護膜が有する該潤滑剤との結合力を判定し、該カーボ
ンを主成分とする保護膜の表面の赤外吸収曲線の炭素−
水素結合由来のピーク強度値が0.055以下である磁
気記録媒体によって解決される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体のカ
ーボンを主成分とする保護膜と潤滑剤との結合力の判定
方法、磁気記録媒体、磁気記録媒体の製造方法および磁
気記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気記録再生装置の1種であるハードデ
ィスク装置は、現在その記録密度が年率60%で増えて
おり今後もその傾向は続くと言われている。高記録密度
に適した磁気記録用ヘッドの開発、磁気記録媒体の開発
が進められている。ハードディスク装置などに用いられ
る磁気記録媒体は、基本的に以下の構成になっている。
Al合金の上にNi−Pメッキした基板やガラスの基板
の上にスパッター法等で、CrもしくはCrW、CrM
oなどのCr合金をCo合金層の結晶配向用の非磁性下
地層として成膜し、その上に磁性層としてCo合金の薄
膜を成膜する、さらにカーボンを主成分とする保護膜を
成膜し、パーフルオロポリエーテルなどの潤滑剤を塗布
して潤滑膜を形成する。
【0003】近年では、磁気記録媒体を高記録密度化す
ることが要求されており、スペーシングロス(磁気記録
用ヘッドと磁性層との距離)を低減し得る磁気記録媒体
が望まれている。スペーシングロスを低減させるために
はカーボンを主成分とする保護膜を薄くし、さらに磁気
記録用ヘッドの浮上量を低減させることが検討されてい
る。カーボンを主成分とする保護膜の形成方法として
は、スパッタ法が一般的であるが、スパッタ法によって
形成されたカーボンを主成分とする保護膜は、スペーシ
ングロスの低減を図るため薄く(例えば100Å以下)
形成すると耐久性が不充分となることがある。このた
め、薄膜化した場合でも充分な耐久性を有するカーボン
を主成分とする保護膜を形成することができる方法とし
てプラズマCVD法の採用が検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】耐久性の評価の一つに
フライスティクション特性がある。フライスティクショ
ン特性とは、磁気記録媒体を回転させて磁気ヘッドを浮
上させた状態を所定時間維持した後にCSS(Cont
act−Start−Stop)させたときのスティク
ション値で表される特性のことである。フライスティク
ション特性が低下すると、ヘッドの飛行安定性が低下
し、カーボンを主成分とする保護膜とヘッドの接触によ
るヘッドクラッシュなどの不都合が生じやすくなる。特
に、高記録密度に対応した媒体を使用するためにヘッド
の浮上量を低下させた場合、よりフライスティクション
特性の良いものが求められている。
【0005】しかしながら、上記従来技術によって作製
された磁気記録媒体は、フライスティクション特性が低
下することがあった。磁気ヘッドに付着物が発生すると
フライスティクション特性が不充分になる。その原因の
一つにはカーボンを主成分とする保護膜と潤滑剤の結合
力が不充分なため、付着物として磁気ヘッドに潤滑剤が
付着しやすいことが考えられる。
【0006】カーボンを主成分とする保護膜と潤滑剤と
の結合状態の評価にはBondedRatio法(以下
「BR法」ともいう。)が従来から用いられていた。こ
の方法は、カーボンを主成分とする保護膜上に潤滑膜を
形成した磁気記録媒体を溶剤(例えば、旭硝子社製AK
225。)中に所定時間(例えば15分間)浸漬した後に
取り出す操作を行う。この時、塗布された潤滑剤の膜厚
をこの操作前の状態において測定しておき、さらにこの
操作後の潤滑剤の膜厚を測定する。その膜厚の比((操
作後の膜厚)/(操作前の膜厚)[%])を算出しその
値を判定するものである。すなわち、溶剤に浸漬させた
時に残留する潤滑剤の量により総合的な結合状態を評価
する方法である。しかし、ヘッドへの潤滑剤の付着が発
生した場合、該方法では付着の発生原因を適切に判断し
対処することができていないのが現状である。なぜな
ら、付着の発生を引き起こす要因と考えられる潤滑剤と
カーボンを主成分とする保護膜の結合状態が不充分であ
ることの原因が、潤滑膜の形成条件の変動(たとえば潤
滑剤の濃度、塗布条件)によるものであるのか、カーボ
ンを主成分とする保護膜の表面の有する潤滑剤への結合
力の低下によるものであるかを切り分けることができな
いからである。すなわち、該方法からの情報だけでは適
切な対応がとれないからである。また、該方法では、試
料である磁気記録媒体の準備、前処理、膜厚測定、浸
漬、膜厚測定と多くの工程を必要とし各工程の実施のた
めに少なくとも1時間以上の時間が必要であった。その
ため、その評価結果を製造条件に迅速にフィードバック
させることができなかった。該評価方法の結果は製造工
程上の品質管理の指標として用いることができなかっ
た。
【0007】本発明は、これらの状況を鑑みてなされた
もので、カーボンを主成分とする保護膜の有する潤滑剤
との結合力を迅速に測定し判定する方法、潤滑剤との結
合力が適切であるカーボンを主成分とする保護膜を有し
た磁気記録媒体、その製造方法および磁気記録再生装置
を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、カーボンを
主成分とする保護膜の表面特性について鋭意研究をおこ
ないその知見に基づいて本発明を完成するに至った。 1)上記課題を解決するための第1の発明は、非磁性基
板上に少なくとも非磁性下地層と、磁性層とを有するデ
ィスク上に、炭化水素を含む反応ガスを原料としてプラ
ズマCVD法により形成されたカーボンを主成分とする
保護膜とその上に塗布された潤滑剤とを含む磁気記録媒
体において、該カーボンを主成分とする保護膜の表面の
赤外吸収曲線の炭素−水素結合由来のピーク強度値によ
って該カーボンを主成分とする保護膜が有する該潤滑剤
との結合力を判定する方法である。 2)上記課題を解決するための第2の発明は、非磁性基
板上に少なくとも非磁性下地層と、磁性層とを有するデ
ィスク上に、炭化水素を含む反応ガスを原料としてプラ
ズマCVD法により形成されたカーボンを主成分とする
保護膜とその上に塗布された潤滑剤とを含む磁気記録媒
体であって、該カーボンを主成分とする保護膜の表面の
赤外吸収曲線の炭素−水素結合由来のピーク強度値が
0.055以下である磁気記録媒体である。 3)上記課題を解決するための第3の発明は、カーボン
を主成分とする保護膜の膜厚を次式で与えられる補正係
数で割った値を該保護膜の表面の赤外吸収曲線の炭素−
水素結合由来のピーク強度値で割った値が180以上で
あることを特徴とする2)に記載の磁気記録媒体であ
る。 補正係数=0.083×保護膜膜厚[nm]+0.17 4)上記課題を解決するための第4の発明は、該カーボ
ンを主成分とする保護膜の水接触角の値が80度以下で
あることを特徴とする2)または3)に記載の磁気記録
媒体である。 5)上記課題を解決するための第5の発明は、該カーボ
ンを主成分とする保護膜のラマン分光法によるB/A値
が1.6以下であることを特徴とする2)乃至4)のい
ずれか1項に記載の磁気記録媒体である。 6)上記課題を解決するための第6の発明は、該カーボ
ンを主成分とする保護膜の膜厚が9[nm]以下である
ことを特徴とする2)乃至5)のいずれか1項に記載の
磁気記録媒体である。 7)上記課題を解決するための第7の発明は、非磁性基
板上に少なくとも非磁性下地層と、磁性層とを有するデ
ィスク上に、炭化水素を含む反応ガスを原料としてプラ
ズマCVD法により形成されたカーボンを主成分とする
保護膜とその上に塗布された潤滑剤とを含む磁気記録媒
体を製造する製造方法において、該保護膜の表面の赤外
吸収曲線の炭素−水素結合由来のピーク強度値が0.0
55以下となるように該ディスクにバイアスを印加しな
がらプラズマCVD法によりカーボンを主成分とする保
護膜を形成する磁気記録媒体の製造方法である。 8)上記課題を解決するための第8の発明は、保護膜の
膜厚を次式で与えられる補正係数で割った値を該保護膜
の表面の赤外吸収曲線の炭素−水素結合由来のピーク強
度値で割った値が180以上となるようにカーボンを主
成分とする保護膜を形成することを特徴とする7)に記
載の磁気記録媒体の製造方法である。 補正係数=0.083×保護膜膜厚[nm]+0.17 9)上記課題を解決するための第9の発明は、印加する
バイアスをパルス直流バイアスとし、その平均電圧の値
を−450〜−60[V]の範囲とすることを特徴とす
る7)または8)に記載の磁気記録媒体の製造方法であ
る、 10)上記課題を解決するための第10の発明は、カー
ボンを主成分とする保護膜の形成時の形成表面の温度を
130℃以上とすることを特徴とする7)乃至9)のい
ずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造方法である。 11)上記課題を解決するための第11の発明は、7)
乃至10)のいずれか1項に記載の磁気記録媒体の製造
方法において、炭化水素として、低級飽和炭化水素、低
級不飽和炭化水素、低級環式炭化水素のうちから選ばれ
た1種または2種以上を用いることを特徴とする磁気記
録媒体の製造方法である。 12)上記課題を解決するための第12の発明は、磁気
記録媒体と、該磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気
ヘッドとを備えた、磁気記録再生装置であって、磁気記
録媒体が2)乃至6)のいずれか1項に記載の磁気記録
媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置である。
なお、本明細書中で、「カーボンを主成分とする」とは
カーボンを50at%を越えた割合で含む事を指す。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の、判定方法の一実施形態
を説明する。本発明の赤外吸収曲線の測定に用いる赤外
吸収曲線測定装置は、試料である磁気記録媒体を設置し
その位置を移動できるテーブルを内部に有する試料室
と、試料室内に窒素ガスを導入する手段と、試料にレー
ザー光を入射する光学系と、試料からの反射光を集光し
て検出器に導く手段と、検出した光を電気信号に変換す
る検出器と、検出器からの電気信号を信号処理する手段
と、信号処理したデータを数値解析する手段とを有す
る。検出器とその信号処理する手段との間、信号処理す
る手段と数値解析する手段との間は、信号ケーブルで接
続されている。数値解析する手段では、ベースライン補
正、ピーク面積、ピーク強度の算出の処理ができる。測
定装置は、その測定範囲の波数が4000cm-1〜40
0cm-1の範囲を含み、膜厚が9[nm]以下であるカ
ーボンを主成分とする保護膜の吸収曲線を測定できる装
置である。たとえば、MCT検出器を有した反射型FT
IR装置を用いることができる。例えば、MCT型検出
器を有するNicolet社製MAGNA−IRを用い
ることができる。
【0010】感度はたとえば次のように確認する。パー
フルオロポリエーテル系潤滑剤をディスク上に2[n
m]の膜厚で塗布したときに測定されるC−F結合(炭
素−フッ素結合。)の吸収曲線のピーク強度値(たとえ
ば1120〜1350cm-1の範囲に現れるピーク強度
値。)が0.008であることを確認する。潤滑剤の膜
厚は、たとえば通常実施するESCA法で確認する。
【0011】装置は、レーザー光の試料面に対する入射
角が低角度である光学系を有しているものが好ましい。
入射角は10度以下であるのが好ましい。入射角を10
度以下としたのは、その範囲であると入射したレーザー
光が充分にカーボンを主成分とする保護膜内で反射を繰
り返すことができるので、より精度良く赤外吸収曲線を
測定できるからである。また試料室が窒素で置換した状
態で測定できるものが大気中の炭化水素ガスの影響を除
去することができるので、より精度良く赤外吸収曲線を
測定できるので好ましい。また、検出器と信号処理の手
段との間は短く接続されているのが、より精度良く赤外
吸収曲線を測定できるので好ましい。その距離は、例え
ば20cm以下(より好ましくは15cm以下。)であ
るのが好ましい。極微弱である検出信号に対して、信号
ケーブルへの外乱などによるノイズの混入を防止し精度
良く赤外吸収曲線のデータを得ることができるためであ
る。
【0012】本発明の判定方法は、カーボンを主成分と
する保護膜を形成する前の磁気記録媒体の表面の赤外吸
収曲線を測定する工程と、カーボンを主成分とする保護
膜を形成後の磁気記録媒体の表面の赤外吸収曲線を測定
する工程と、カーボンを主成分とする保護膜を形成する
前の磁気記録媒体の表面の赤外吸収曲線とカーボンを主
成分とする保護膜を形成後の磁気記録媒体の表面の赤外
吸収曲線との差からカーボンを主成分とする保護膜の赤
外吸収曲線(以後「カーボンを主成分とする保護膜赤外
吸収曲線」ともいう。)を求める工程と、カーボンを主
成分とする保護膜赤外吸収曲線から炭素−水素結合のピ
ーク強度値を求める工程と、該ピーク強度値とあらかじ
め求めておいた基準値とを比較し判定する工程とを含む
ものである。
【0013】以下、具体的に説明する。カーボンを主成
分とする保護膜を形成する前の磁気記録媒体を測定装置
の試料室に設置し、該磁気記録媒体の試料室内に1分間
乾燥窒素ガスを導入して置換する。その後、磁気記録媒
体の半径20mmの位置で測定を行う。この時、レーザ
ー光の入射角は磁気記録媒体の測定面に対して10度、
分光器の分解能は8cm -1に設定する。吸収曲線の測定
の積算回数は512回、走査波数範囲を4000cm-1
〜400cm-1とする。以上の測定の所要時間は窒素ガ
スの導入の時間を含めて約8分間とすることができる。
次にカーボンを主成分とする保護膜を形成後の磁気記録
媒体を試料として入れ替えて、前述と同様に操作を繰り
返し測定をおこなう。所要時間は先の操作と同じであ
る。続いて取り込んだカーボンを主成分とする保護膜を
形成する前の磁気記録媒体の吸収曲線を吸光度0%のバ
ックグラウンドとし、それとカーボンを主成分とする保
護膜を形成した後の磁気記録媒体の吸収曲線の差を算出
してカーボンを主成分とする保護膜の赤外吸収曲線とす
る。次にベースラインの補正(3100cm-1〜400
0cm-1および2000cm-1〜2800cm-1の間で
60cm-1毎に選択した点、3100cm-1の点、28
00cm-1の点をつないで得られる線がピーク強度ゼロ
となるようにベースラインを補正する。3100cm-1
〜4000cm-1および2000cm-1〜2800cm
-1の間としたのは、炭素−水素結合ピークが現れないか
らである。)をおこなう。次に2800cm-1〜310
0cm-1の範囲に現われる赤外吸収曲線のピークの面積
を算出したものを炭素−水素結合由来のピーク強度値と
する。ピーク強度値は吸光度の値となる。2800cm
-1〜3100cm-1の範囲としたのは、炭素−水素結合
の伸縮振動を示すピークがこの吸収帯に強く現れるので
感度良く測定できるからである。また炭素−水素結合の
変角振動を示す800cm-1〜2000cm-1の吸収帯
には、潤滑剤、たとえばフォンブリン系潤滑剤のCF結
合の伸縮振動由来のピークが現れるため炭素−水素結合
の変角振動由来のピークの分離の精度が悪くなるからで
ある。
【0014】次ぎに、あらかじめ予備試験を実施して決
めておいた基準値と上記で求めたピーク強度値を比較し
判定する。たとえば基準値以下であれば結合力は充分で
あると判定することができる。たとえば、基準値は次の
ように決める。カーボンを主成分とする保護膜の形成条
件を変えることにより炭素−水素結合由来のピーク強度
値の異なったカーボンを主成分とする保護膜を形成しそ
の上に同一の潤滑剤を同一条件で塗布し潤滑層を形成し
た磁気記録媒体を用意する。それぞれの磁気記録媒体に
おいてフライスティクション試験を実施し、試験の結
果、付着物の付いた磁気記録媒体を特定する。該特定さ
れた磁気記録媒体の有する炭素−水素結合由来のピーク
強度値を基準値とする。このように決めた基準値を用い
ることにより、基準値以下であって付着物が発生した場
合、基準値以下であるのでカーボンを主成分とする保護
膜の結合力は正常と判定でき、付着物の発生の要因は潤
滑膜の形成条件(たとえば潤滑剤濃度、塗布条件)にあ
ると判定できる。
【0015】磁気記録媒体の製造工程は多くの場合、潤
滑膜の形成条件は潤滑剤の濃度、塗布条件、不純物混入
など変動しやすい要因が多くまた管理精度が微妙である
ので適切に要因を切り分けができることは付着物の発生
要因を排除するのに有用である。
【0016】また、ピーク強度値を求める所要時間は約
8分間とすることができる。よって、以上の測定から判
定までに必要とされる時間の合計は約20分間以内とす
ることができる。
【0017】BR法と組み合わせた判定方法の例を図4
に示す。この判定方法を用いた磁気記録媒体の製造方法
は、より適切に付着物発生要因を排除して製造できる。
図4に従って判定方法を説明する。付着物の発生が認め
られた場合BR法にて結合状態が不充分であることを確
認する(ステップ1)。次に、炭素−水素結合由来のピ
ーク強度値を判定する(ステップ2)。その結果炭素−
水素結合由来のピーク強度値が正常(たとえば基準値以
下)であった場合は、潤滑層の形成条件を変更して(ス
テップ3)、BR法の結合状態を正常な状態(ステップ
4)にする。一方ステップ2の結果、炭素−水素結合由
来のピーク強度値が異常(たとえば基準値を越えた)で
あった場合は、カーボンを主成分とする保護膜の形成条
件を変更して(ステップ5)炭素−水素結合由来のピー
ク強度値を正常とした後、ステップ3へ進む。この方法
を用いることにより、付着物発生の要因を確実に最短ス
テップで排除できる。
【0018】また、本発明の判定方法の所要時間は、カ
ーボンを主成分とする保護膜赤外吸収曲線の測定作業と
ピーク強度値算出作業にかかる時間および判定作業に要
する時間の合計時間で20分間以内となる。よって、本
発明の判定方法を用いれば、短時間で判定結果を得るこ
とができるのでその結果を製造工程にフィードバックす
ることができる。結果、フライスティクション特性の不
良品を出すことなく安定して磁気記録媒体を製造するこ
とができる。
【0019】また本発明の判定方法を用いた炭素−水素
結合由来のピーク強度値は、工程管理の指標とすること
ができ、その結果付着物の発生しない磁気記録媒体を製
造することができる。この指標を用いることにより、適
切な工程管理ができるので潤滑剤とカーボンを主成分と
する保護膜の結合が安定した品質の磁気記録媒体を容易
に得ることができる。
【0020】ここで炭素−水素結合由来のピーク強度値
で結合力が判定できるのは次のようなメカニズムと推定
する。潤滑剤はカーボンを主成分とする保護膜と結合す
る部位たとえば極性官能基を有している。一方、カーボ
ンを主成分とする保護膜は炭素−水素結合の他に、C=
C結合、C≡C結合を有している。炭素−水素結合は化
学的に安定であるので潤滑剤とは結合しにくい部位であ
る。上記のC=C結合C≡C結合は活性部位であり、潤
滑剤と結合しやすい部位である。そこで、潤滑剤と結合
する部位である上記C=C結合、C≡C結合を多く有す
るカーボンを主成分とする保護膜は、強い結合力を有し
ていると考えることができる。ここで上記C=C結合、
C≡C結合を多く有するカーボンを主成分とする保護膜
は、逆に炭素−水素結合の少ないものであると推定でき
る。一方、炭素−水素結合量は赤外吸収曲線の炭素−水
素結合由来のピーク強度値によって求めることができ
る。そこで、炭素−水素結合由来のピーク強度値の小さ
いカーボンを主成分とする保護膜は、炭素−水素結合量
が少ないことになるので、小さい結合力を有することに
なる。以上より、炭素−水素結合由来のピーク強度値で
結合力は判定できると推定する。
【0021】本発明の磁気記録媒体の一実施形態を説明
する。本発明の磁気記録媒体の例としては例えば図1に
示すものがあげることができる。この例の磁気記録媒体
は非磁性基板S上に非磁性下地層1と、磁性層2とを形
成したディスク上に、カーボンを主成分とする保護膜と
して水素化カーボン保護膜3を形成しその上に潤滑膜4
を形成したものである。
【0022】非磁性基板Sは、磁気記録媒体用基板とし
て一般に用いられるNiPメッキ膜が形成されたアルミ
ニウム合金基板(以下、「NiPメッキAl基板」とも
いう。)、ガラス基板、セラミック基板、可撓性樹脂基
板、またはこれらの基板にNiPまたは他の合金をメッ
キあるいはスパッタ法により蒸着させた基板等とするこ
とができる。非磁性基板Sの表面の平均粗さRaを1〜
20Å(好ましくは1〜15Å)としたものとするのが
好ましい。
【0023】非磁性下地層1としては、従来公知である
非磁性下地層、たとえばCr、Ti、Ni、Si、T
a、Wから選ばれるいずれかの単一組成膜、またはこれ
らのいずれかを主成分としその結晶性を損なわない範囲
で他の元素を含有させた合金からなる膜とすることがで
きる。非磁性下地層1の働きはCo合金からなる磁性層
2の結晶配向を制御することにあり、なかでも特に、C
rの単一組成、またはCrにMo、W、V、Ti、N
b、Siから選ばれるいずれか1種または2種以上を含
有させた材料を用いるのが好ましい。上記材料を用いる
場合、その組成は、CrzYとするのが好ましい。ここ
でY=Mo、W、V、Ti、Nb、Siから選ばれるい
ずれか1種または2種以上とする。Y含有量(z)は、
20at%以下とするのが好ましい。10at%以下と
するのがより好ましい。この含有量を20at%以下と
した磁気記録媒体は、非磁性下地層1の上に形成される
Co合金からなる磁性層2の配向性が良くなり、その結
果、保磁力やノイズ特性が良くなり、高記録密度により
適したものとなる。本明細書中で、合金において「主成
分」とは、含有量が60at%以上であることを意味す
る。
【0024】また非磁性下地層1の結晶粒径がCo合金
からなる磁性層2の結晶粒径に影響する場合がある。非
磁性下地層1の結晶粒径を細かくする場合は、非磁性下
地層1の材料をCrもしくはCr合金にB、Zrもしく
は Taなどを添加したものとすることで可能である。
【0025】非磁性下地層1の膜厚は、所定の保磁力が
得られる範囲であれば制限されるものではない。この厚
さは、100〜1000Åが好ましい範囲であり、15
0〜700Åとするとさらに好ましい。非磁性下地層1
の膜厚が上記の範囲を有する磁気記録媒体は、保磁力の
向上効果、SNRの向上効果が確認され、その結果高記
録密度に適した磁気記録媒体となる。
【0026】さらに非磁性下地層1は、単層構造をなす
ものとしても良いし、多層構造をなすものとしても良
い。多層構造の場合、材料は上述したもののうち互いに
同一または異なる組成を積層したものとすることもでき
る。たとえば、Cr層の上にCrMo合金層(Mo含有
量10at%以下)を積層したものすることができる。
【0027】Co合金からなる磁性層2は、Co合金の
組成としてはCo/Cr系、Co/Cr/Ta系、Co
/Cr/Pt系、Co/Cr/Pt/Ta系等の組成の
合金から選ばれるいずれかを含むものとすることができ
る。
【0028】本発明の磁気記録媒体の有する保磁力は3
000[エルステッド]、好ましくは3500[エルス
テッド]以上であるのが好ましい。
【0029】Co合金からなる磁性層2の膜厚は、従来
一般に用いられているBrd(残留磁化と膜厚の積[G
μm])のパラメータで30〜100[Gμm]の範囲
で、所定の記録再生信号出力が得られる膜厚とすること
ができる。
【0030】水素化カーボン保護膜3は、該保護膜の表
面の赤外吸収曲線の炭素−水素結合由来のピーク強度値
が0.055以下(より好ましくは0.05以下。さら
により好ましくは0.04以下。)である。ここで、水
素化カーボン保護膜の表面の赤外吸収曲線の炭素−水素
結合由来のピーク強度値を上記の範囲とするのは以下の
理由からである。該値が上記の範囲内であると、水素化
カーボン保護膜3が有する化学的に安定な炭素−水素結
合は少ないことになり、C−C結合の他に、逆に活性部
位であるC=C結合、C≡C結合を多く有することにな
り、潤滑剤との充分な結合力を有する状態となるからで
ある。そのような水素化カーボン保護膜3の上に潤滑剤
を塗布して潤滑層4を形成した磁気記録媒体は潤滑剤と
水素化カーボン保護膜3との結合が充分な状態となるか
らである。炭素−水素結合由来のピーク強度値は、前述
した方法により求めることができる。保護膜の膜厚は、
たとえば従来の蛍光X線膜厚計による測定などにより求
めることができる。
【0031】水素化カーボン保護膜3は、該保護膜の膜
厚を補正係数で割った値を該保護膜の表面の赤外吸収曲
線の炭素−水素結合由来のピーク強度値で割った値が1
80以上(より好ましくは200以上。さらにより好ま
しくは250以上。)であるのがより好ましい。ここで
該保護膜の膜厚を補正係数で割った値を該保護膜の表面
の赤外吸収曲線の炭素−水素結合由来のピーク強度値で
割った値としたのは、赤外吸収曲線の炭素−水素結合由
来のピーク強度値は、膜厚に依存するので補正係数で割
った膜厚で割ることによって正規化した値は適切に結合
力を表現することができるからである。膜厚を変えた場
合の膜厚と炭素−水素結合由来のピーク強度値との間に
は図6に示すような関係が有ることを膜厚を変えたもの
を測定して確認している。この関係より求めた補正係数
を用いることができる。例えば膜厚50Å(5[n
m]。)では補正係数は0.585、膜厚40Å(4
[nm]。)では補正係数は0.502とすることがで
きる。図6の関係より、各膜厚における補正係数は次式
を用いて求めることができる。 補正係数=0.083×保護膜膜厚[nm]+0.17
【0032】水素化カーボン保護膜3は、水接触角を8
0度以下(より好ましくは75度以下。)としたものが
好ましい。水接触角が80度以下である保護膜は潤滑剤
との結合力が充分であるために、磁気ヘッドに潤滑剤が
付着しにくいからである。
【0033】水素化カーボン保護膜3はカーボンを主成
分とした材料からなる。CVD法を用いて形成されたも
のである。水素化カーボン保護膜3はラマン分光法によ
るB/Aの値が1.6以下(より好ましくは1.4以
下。)であるものが好ましい。この範囲であるカーボン
を主成分とする保護膜は、膜が緻密で硬く摺動耐久性が
高いので保護膜からの磨耗粉が発生しにくくなり、磁気
ヘッドへの付着物の発生の誘発を抑えることができるか
らである。ここでB/Aの値とは、カーボンを主成分と
する保護膜のラマンスペクトルにおいて、Gピーク(た
とえば1520cm-1〜1580cm-1の範囲に現れる
ピーク。)における蛍光成分を除いた実質的なピーク値
Aと、蛍光成分を含んだ全体的なピーク値Bとの比率を
示すものである。
【0034】水素化カーボン保護膜3は、他の成分とし
ては窒素を含んで含んでいても良い。その含有量は、E
SCA測定法で測定た窒素炭素比が25%以下の含有量
であるのが好ましい。窒素を含んでいるものは、より緻
密で硬く摺動耐久性が高いので保護膜からの磨耗粉が発
生しにくくなり、磁気ヘッドへの付着物の発生の誘発を
抑えることができるからである。ここでESCA測定法
による窒素炭素比とは、ESCA(X線光電子分光測定
装置)を用いてもとめた保護膜表面の光電子スペクトル
から、以下の式に基づいて算出したものである。 窒素炭素比(%)=(N1sピーク面積)/(C1sピ
ーク面積)×100 潤滑膜4は、潤滑剤を塗布して形成したものである。潤
滑剤は、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤、フォンブ
リン系潤滑剤、デムナム系潤滑剤などから選ばれるいず
れかを含むものとすることができる。
【0035】前述の効果は、潤滑剤の種類をフォンブリ
ン系潤滑剤とするとより好ましい結果が得られる。これ
はフォンブリン系潤滑剤の末端が極性官能基であるの
で、その基が水素化カーボン保護膜3の活性部位に吸着
しやすいという理由からである。
【0036】水素化カーボン保護膜3の膜厚は9[n
m]以下とすることができる。さらに5[nm]以下、
より好ましく4[nm]以下であるのが好ましい。スペ
ーシングロスをより抑えることができ再生信号の出力を
大きくすることができるからである。
【0037】潤滑膜の膜厚は14〜28Åとすることが
できる。さらに14〜23Åであるのが好ましい。適度
な潤滑性得るため、過剰な潤滑剤がヘッドへ付着しない
ようにするするためである。
【0038】本発明の磁気記録媒体にあっては、カーボ
ンを主成分とする保護膜の膜厚を該保護膜の表面の赤外
吸収曲線の炭素−水素結合由来のピーク強度値で割った
値が750以上であるので、カーボンを主成分とする保
護膜と潤滑剤の結合が強力になる。その結果本発明の磁
気記録媒体にあっては、ヘッドの浮上量を低減させて使
用してもヘッドに潤滑剤が付着しにくくなるので、ヘッ
ドの浮上量を低減させて使用してもフライスティクショ
ン特性が低下しない磁気記録媒体となる。さらには、C
VD法を用いて形成しているのでカーボンを主成分とす
る保護膜の膜厚をより薄くまたより緻密性を高めてい
る。よって、本発明の磁気記録媒体は、より硬く薄い状
態であって、摺動耐久性潤滑性に優れ、磁気ヘッドに付
着物が発生しにくいカーボンを主成分とする保護膜を有
した磁気記録媒体となる。
【0039】さらに、磁気ヘッドに付着物が発生しにく
いのでヘッドの浮上量を低下させているので、またカー
ボンを主成分とする保護膜を薄膜化しているので、ヘッ
ドと磁気記録層である磁性層との距離を小さくしたもの
であるので本発明の磁気記録媒体を用いた場合はスペー
シングロスを低減させることができる。よって、再生信
号の出力を大きくすることができSNR(signal
to noiseratio)が良好となるために、
磁気記録媒体は従来の磁気記録媒体と比べてより高記録
密度に対応が可能な磁気記録媒体になる。
【0040】さらに、保磁力を3000[エルステッ
ド]以上好ましくは3500[エルステッド]以上、表
面平均粗さRaを20Å以下、より好ましくは10Å以
下としたものが好ましい。保磁力を3000[エルステ
ッド]以上としたものは高記録密度において再生信号出
力をより大きくすることができるからである。表面平均
粗さを20Å以下としたものはヘッドの浮上量をより低
下させることができるからである。それらの結果、本発
明の磁気記録媒体がより高記録密度に対応が可能にな
る。
【0041】次に本発明の磁気記録媒体の製造方法を説
明する。図2は本発明の磁気記録媒体の製造方法の一実
施例を実施するために用いられる製造装置の主要部とな
るプラズマCVD装置の構成図を示すものである。カー
ボンを主成分とする保護膜を形成するべきディスクDを
収容するCVD装置チャンバ10と、CVD装置チャン
バ10の両側の壁面内に相対向するように設置された電
極11、11と、これら電極11、11に高周波電力を
供給する高周波電源12、12と、カーボンを主成分と
する保護膜をディスク上に形成する時にCVD装置チャ
ンバ10内のディスクDに接続可能なバイアス電源13
と、ディスクD上に形成するべきカーボンを主成分とす
る保護膜の原料となるプロセスガス供給源14、14を
備えたものとされる。
【0042】CVD装置チャンバ10には、供給源1
4、14から供給されたプロセスガスをCVD装置チャ
ンバ10内に導入する導入管15、15と、CVD装置
チャンバ10内のガスを系外に排出する排気管16が接
続されている。それぞれの導入管15、15には、プロ
セスガス流量調節バルブ(図示せず)が設けられてお
り、ガス流量を調節することによって、CVD装置チャ
ンバ10内へ導入するガス流量を任意の値に設定するこ
とができるようになっている。排気管16には排気量調
節バルブ17が設けられており、排気量を調節すること
によって、CVD装置チャンバ10内のガス圧力を任意
の値に設定することができるようになっている。
【0043】高周波電源12、12としては、カーボン
を主成分とする保護膜の成膜時および酸素プラズマ放電
時に、たとえば、50〜1000Wの電力を供給するこ
とができるものを用いるのが好ましい。高周波電源1
2、12の周波数は本発明の作用の点からは特に規定は
しないが、Rf周波数を用いることができる。たとえば
13.56MHzとすることができる。
【0044】バイアス電源13としては、パルス直流電
源を用いることができる。または高周波電源を用いるこ
とができる。
【0045】次に、上記装置を用いた場合を例として、
本発明の磁気記録媒体の製造方法の一形態を説明する。
スパッタリング法、真空蒸着、イオンプレーティングな
どの方法を用いて、非磁性基板Sの両面に非磁性下地層
1、磁性層2を順に形成し、ディスクDを得る。
【0046】ディスクDを得る方法を具体的に説明す
る。非磁性基板Sとしては、磁気記録媒体用基板として
一般に用いられるNiPメッキ膜が形成されたアルミニ
ウム合金基板(以下、「NiPメッキAl基板」とい
う。)、ガラス基板、セラミック基板、可撓性樹脂基
板、またはこれらの基板にNiPまたは他の合金をメッ
キあるいはスパッタ法により蒸着させた基板等を用いる
ことができる。非磁性基板Sの表面の平均粗さRaを1
〜20Åとしたものを用いるのが好ましい。テクスチャ
ー加工などで所定の表面平均粗さRaを得ることができ
る。
【0047】上記のそれぞれの膜を形成するためのスパ
ッタリングの条件は例えば次のようにする。形成に用い
るチャンバ内は真空度が10-4〜10-7[Pa]となる
まで排気する。チャンバ内に基板を収容して、所望の保
磁力を得るように基板を加熱、例えば200〜250℃
に加熱した後、Arガスを導入して放電させてスパッタ
成膜をおこなう。このとき、供給するパワーは0.2〜
2.0[kW]とし、放電時間と供給するパワーを調節
することによって、所望の膜厚を得ることができる。
【0048】非磁性下地層1としては、従来公知である
非磁性下地層、たとえばCr、Ti、Ni、Si、T
a、Wから選ばれるいずれかからなる単一組成膜、また
はこれらのいずれかを主成分としその結晶性を損なわな
い範囲で他の元素を含有させた合金からなる膜を形成す
る。非磁性下地層1の働きはCo合金からなる磁性層2
の結晶配向を制御することにあり、なかでも特に、Cr
の単一組成、またはCrにMo、W、V、Ti、Nb、
Siから選ばれるいずれか1種または2種以上を含有さ
せた材料を用いるのが好ましい。上記材料を用いる場
合、その組成は、CrzYとするのが好ましい。ここで
Y=Mo、W、V、Ti、Nb、Siから選ばれるいず
れか1種または2種以上とする。Y含有量(z)は、2
0at%以下とするのが好ましい。10at%以下とす
るのがより好ましい。この含有量を20at%以下とす
ることにより、非磁性下地層1の上に形成されるCo合
金からなる磁性層2の配向性が良くなり、磁気記録媒体
は保磁力、ノイズ特性が良くなり高記録密度により好ま
しく適したものになる。
【0049】また非磁性下地層1の結晶粒径がCo合金
からなる磁性層2の結晶粒径に影響する場合がある。非
磁性下地層1の結晶粒径を細かくする場合は、BやZ
r, Taなどを非磁性下地層1のCr、Cr合金に添加
した材料を用いることで可能である。
【0050】非磁性下地層1の膜厚は、所定の保磁力が
得られる範囲であれば制限されるものではない。この厚
さは、100〜1000Åが好ましい範囲であり、15
0〜700Åとするとさらに好ましい。非磁性下地層1
の膜厚が上記の範囲の場合には、保磁力の向上効果、S
NRの向上効果が確認され、高記録密度に適した磁気記
録媒体を得ることができるので好ましい。
【0051】さらに非磁性下地層1は、単層構造をなす
ものとしても良いし、多層構造をなすものとしても良
い。多層構造の場合、材料は上述したもののうち互いに
同一または異なる組成を積層したものとすることができ
る。たとえば、Cr層の上にCrMo合金層(Mo含有
量10at%以下)などを用いることができる。
【0052】Co合金からなる磁性層2は、Co合金の
組成としてはCo/Cr系、Co/Cr/Ta系、Co
/Cr/Pt系、Co/Cr/Pt/Ta系等の組成の
合金から選ばれるいずれかを含む材料を用いることがで
きる。
【0053】Co合金からなる磁性層2の膜厚は、従来
一般に用いられているBrd(残留磁化と膜厚の積[G
μm])のパラメータで30〜100[Gμm]の範囲
で、所定の記録再生信号出力が得られるように調整する
ことができる。
【0054】成膜を効率良く安定に行うために必要に応
じて非磁性下地層1、磁性層2の成膜時に非磁性基板S
にバイアスを−400〜−100[V]印加することが
好ましい。
【0055】磁性層2まで成膜されたディスクDは、搬
送装置(図示せず)によりCVD装置チャンバ10内の
所定位置に搬入されるとともに、供給源から供給された
反応ガスを導入管15、15を通してCVD装置チャン
バ10内に導入しつつCVD装置チャンバ10内のガス
を排気管16を通して排出し、CVD装置チャンバ10
内でガスを流通させ、ディスクDの表面をこの反応ガス
に曝す。
【0056】この反応ガスとしては、炭化水素を含むも
の、例えば炭化水素と水素の混合ガスを主成分とするも
のを用いることができる。この混合ガスにおける炭化水
素と水素の混合割合は、炭化水素:水素を2:1〜1:
100(体積比)に設定するのがより硬い耐久性のある
カーボンを主成分とする保護膜を得るのに好ましい。な
お、本明細書中で、「混合ガスを主成分とする」とは当
該ガス成分を90vol%以上の割合で含む事を指す。
【0057】炭化水素としては、低級飽和炭化水素、低
級不飽和炭化水素、低級環式炭化水素のうちから選ばれ
た1種または2種以上を用いることが好ましい。低級飽
和炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、ブタ
ン、オクタン等を用いることができる。また低級不飽和
炭化水素としては、イソプレン、エチレン、プロピレ
ン、ブチレン、ブタジエン等を用いることができる。ま
た低級環式炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キ
シレン、スチレン、ナフタレン、シクロヘキサン、シク
ロヘキサジエン等を用いることができる。なお、ここで
いう低級とは炭素数が1〜10であることを指す。
【0058】炭化水素として低級炭化水素を用いるのが
好ましいとしたのは、炭化水素の炭素数が上記範囲上限
値を越えると、ガスとして供給するのが困難となること
に加え、放電時の炭化水素の分解が進行しににくくな
り、カーボンを主成分とする保護膜が強度に劣る高分子
成分を多く含むものとなるためである。
【0059】またこの際、排気量調節バルブ17を用い
てCVD装置チャンバ10内ガスの排気量を適宜調節す
る事によって、CVD装置チャンバ10内の内圧を0.
1〜10Paとするのが好ましい。また反応ガスの流量
は50〜500sccmとするのが好ましい。
【0060】同時に、高周波電源12、12を用いて好
ましくは50〜2000Wの高周波電力を電極11、1
1に供給しプラズマを発生させ、上記反応ガスを原料と
するプラズマ化学気相成長によりカーボンを主成分とす
る保護膜をディスクDの両面に形成する。カーボンを主
成分とする保護膜の膜厚は、30〜100Å好ましくは
30〜75Åとすることができる。電極11、11に電
力供給する際には、これらの電極11、11に供給する
電力の位相を互いにずらせるのが好ましい。これはこれ
らの電極11、11に供給する電力の位相を互いにずら
せることによって成膜レートの向上、カーボンを主成分
とする保護膜の耐久性の向上を図ることができるためで
ある。両電極11、11に供給する電力の位相差は90
゜〜270゜とするのが好ましく特に逆相(180゜)
とするのが好ましい。
【0061】また、カーボンを主成分とする保護膜形成
時には、バイアスとしてバイアス電源13を用いてパル
ス直流バイアスをディスクDに印加しつつ成膜を行うの
が好ましい。ディスクDに印加するパルス直流バイアス
は平均電圧が−450〜−60V、好ましくは−400
〜−150V、より好ましくは−350〜−200Vで
あるものとするのが好ましい。
【0062】この平均電圧が上記範囲内であると、カー
ボンを主成分とする保護膜の表面の赤外吸収曲線におい
て炭素−水素結合のピーク強度値は0.055以下(好
ましくは0.05以下。より好ましくは0.04以
下。)となるので好ましい。
【0063】この平均電圧が上記範囲下限値未満である
とディスクD表面へのプラズマ衝撃性が大きくなりすぎ
るため、上記反応ガスがプラズマにより活性化された励
起活性種がディスクD上に定着しにくくなるためにカー
ボンを主成分とする保護膜の緻密かが不充分となりやす
くなり、潤滑剤との結合力は大きくなるもののカーボン
を主成分とする保護膜の摺動耐久性が低下しやすくな
る。
【0064】また、この平均電圧が上記範囲上限値を越
えるとディスクD表面へのプラズマ衝撃性が小さくなり
すぎるため、カーボンを主成分とする保護膜中に炭素−
水素結合が増加するのでカーボンを主成分とする保護膜
が化学的に安定化されやすくなり、カーボンを主成分と
する保護膜と潤滑剤との結合力が低下しやすくなる。
【0065】また基板の温度を130℃以上(より好ま
しくは150℃〜220℃、さらに好ましくは170℃
〜220℃。)にしてカーボンを主成分とする保護膜を
成膜するのが好ましい。この基板温度が上記範囲下限値
未満であると基板の保持する熱量が小さいためにその熱
量による炭素−水素結合の解離(すなわち水素の熱脱
離)が起りにくくなるために、カーボンを主成分とする
保護膜中に炭素−水素結合が増加するのでカーボンを主
成分とする保護膜が化学的に安定化されやすくなり、カ
ーボンを主成分とする保護膜と潤滑剤との結合力が低下
しやすくなる。
【0066】このようにパルス直流バイアスの平均電圧
を上記範囲とすることによりプラズマ衝撃性を適切なも
のとし、また基板温度を上記範囲とすることにより炭素
−水素結合の解離(すなわち水素の熱脱離)が起こりや
すくなる。その結果、カーボンを主成分とする保護膜の
表面の赤外吸収曲線において炭素−水素結合のピーク強
度値は0.055以下(好ましくは0.05以下。より
好ましくは0.04以下。)となり潤滑剤との結合力が
強いカーボンを主成分とする保護膜とすることができ
る。このような状態のカーボンを主成分とする保護膜に
潤滑剤を塗布すると、カーボンを主成分とする保護膜と
潤滑剤との結合を高めることができヘッドへの潤滑剤の
付着を低減させることができる。
【0067】カーボンを主成分とする保護膜形成時には
バイアス電源13として高周波電源を用いディスクにパ
ルス直流バイアスに代えて高周波バイアスを印加するこ
ともできる。この場合には10〜300W(好ましくは
10〜150W)の高周波電力をディスクに印加するの
が好ましい。
【0068】ここで、バイアスをディスクDに印加する
のはディスク温度を高めて炭素−水素結合を解離させる
効果に加えて、プラズマにより直接表面が叩かれること
による炭素−水素結合を解離させる効果が得られやすい
ので、より効率良く炭素−水素結合を解離させることが
できるので、炭素−水素結合由来のピーク強度値を小さ
くすることができるからである。従来の熱電子放出型プ
ラズマ形成法におけるグリッド電圧を印加する加速法で
は、プラズマにより直接表面が叩かれることによる炭素
−水素結合を解離させる効果が得られず炭素−水素結合
由来のピーク強度値を充分に小さくすることができな
い。なおバイアスをディスクDに印加する際にはディス
クDに直接印加してもよいし図示せぬディスクキャリア
(ディスクDを保持して搬送する装置)を介してバイア
ス印加を行っても良い。
【0069】カーボンを主成分とする保護膜を形成した
上に潤滑膜を形成する。潤滑膜は従来公知の方法、たと
えばディッピング法、スピンコート法を用いて上記のカ
ーボンを主成分とする保護膜上に潤滑剤を塗布すること
で形成する。潤滑剤としてはフォンブリン系潤滑剤、デ
ムナム系潤滑剤等を材料として用いることができる。
【0070】一方、前述した、上記パルス直流バイアス
は正電圧波高値すなわちパルス部分の正領域における波
高値が10〜100V好ましくは20〜75Vであるも
のとすることが好ましい。この正電圧波高値が上記範囲
下限値未満であるとバイアス電圧が正の領域に至った時
点でディスク表面の負電荷蓄積を十分に打ち消すことが
できず励起活性種がディスク上に定着しにくくなるため
カーボンを主成分とする保護膜の緻密化が不十分となり
やすくカーボンを主成分とする保護膜の摺動耐久性が低
下しやすい。
【0071】パルス直流バイアスの正電圧波高値、パル
ス幅、周波数は、カーボンを主成分御する保護膜のラマ
ン分光法によるB/Aが1.6以下(好ましくは1.4
以下。)となるように調整される。
【0072】また正電圧波高値が上記範囲上限値を越え
るとディスクD表面において逆スパッタ現象が起きやす
くなりカーボンを主成分とする保護膜の緻密化が不十分
となりやすくカーボンを主成分とする保護膜の摺動耐久
性が低下しやすい。
【0073】このようにパルス直流バイアスの正電圧波
高値を上記範囲とすることによりバイアス電圧が正の領
域に至った時点でディスク表面の負電荷蓄積を打ち消
し、励起活性種のディスク上への定着を促進することが
できる。これによりカーボンを主成分とする保護膜を緻
密化し、その摺動耐久性を向上させることができる。
【0074】また上記パルス直流バイアスの周波数は1
kHz〜100GHz(好ましくは10kHz〜1GH
z)とするのが好ましい。上記周波数が上記範囲下限値
未満であるとバイアス電圧が正の領域に至った時点でデ
ィスクD表面の負電荷蓄積を十分に打ち消すことができ
ず励起活性種がディスクD上に定着しにくくなるためカ
ーボンを主成分とする保護膜の緻密化が不十分となりや
すくカーボンを主成分とする保護膜の摺動耐久性が低下
しやすい。また上記範囲上限値を越えるとディスクD表
面において逆スパッタ現象が起きやすくなりカーボンを
主成分とする保護膜の緻密化が不十分となりやすくカー
ボンを主成分とする保護膜の摺動耐久性が低下しやす
い。
【0075】また上記パルス直流バイアスのパルス幅は
1ns〜500μs(好ましくは10ns〜50μs)
とするのが好ましい。上記周波数が上記範囲下限値未満
であるとバイアス電圧が正の領域に至った時点でディス
クD表面の負電荷蓄積を十分に打ち消すことができず励
起活性種がディスクD上に定着しにくくなるためカーボ
ンを主成分とする保護膜の緻密化が不十分となりやすく
カーボンを主成分とする保護膜の摺動耐久性が低下しや
すい。また上記範囲上限値を越えるとディスクD表面に
おいて逆スパッタ現象が起きやすくなりカーボンを主成
分とする保護膜の緻密化が不十分となりやすくカーボン
を主成分とする保護膜の摺動耐久性が低下しやすい。
【0076】なお本明細書においてパルス直流バイアス
の正電圧波高値とは例えば図3中でしめすパルス直流バ
イアスの電圧波形においてパルス部分の正領域部分の波
高値Xを指す。またこの例においてパルス幅はパルス部
分の幅Yである。
【0077】実施形態の製造方法によって形成されるカ
ーボンを主成分とする保護膜3の表面の赤外吸収曲線の
炭素−水素結合由来のピーク強度値は0.055以下で
あるものとなる。このようなカーボンを主成分とする保
護膜の表面の特性を有することにより、潤滑剤とより強
力な結合力を有するカーボンを主成分とする保護膜とな
る。よって得られた磁気記録媒体は、カーボンを主成分
とする保護膜の有する潤滑剤との結合力が強力になり、
ヘッドの浮上量を低減させてもヘッドに潤滑剤が付着し
ないので、ヘッドの浮上量を低減させてもフライスティ
クション特性が低下しない磁気記録媒体となる。さらに
は、CVD法によりカーボンを主成分とする保護膜の膜
厚をより薄くより緻密性を高めてあるので、より硬く薄
くて摺動耐久性潤滑性に優れた、磁気ヘッドに付着物が
付着しにくいカーボンを主成分とする保護膜を有した磁
気記録媒体となる。これらの結果、スペーシングロスを
低減させることができる磁気記録媒体を製造することが
できて、従来の磁気記録媒体と比べてより高記録密度に
対応が可能な磁気記録媒体を製造することができる。
【0078】本発明に従って作製した磁気記録媒体を使
用した場合、ヘッドの浮上量をより低下させることがで
きるので、その浮上量に対応して磁気記録媒体の保磁力
Hcを高くすることが好ましい。例えば3000エルス
テッド以上、好ましくは3500エルステッド以上であ
るのがより高記録密度を実現するのにより好ましい。前
述した範囲で前述の下地膜、磁性膜の組成、膜厚、膜構
成、成膜条件を調整することにより所望の保磁力を得る
ことができる。
【0079】図5は、上記磁気記録媒体を用いた磁気記
録再生装置の例を示すものである。ここに示す磁気記録
再生装置は、図1に示す構成の磁気記録媒体20と、磁
気記録媒体20を回転駆動させる媒体駆動部21と、磁
気記録媒体20に情報を記録再生する磁気ヘッド22
と、この磁気ヘッド22を磁気記録媒体20に対して相
対運動させるヘッド駆動部23と、記録再生信号処理系
24とを備えている。記録再生信号処理系24は、外部
から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド
22に送ったり、磁気ヘッド22からの再生信号を処理
してデータを外部に送ることができるようになってい
る。本発明の磁気記録再生装置に用いる磁気ヘッド22
には、再生素子として異方性磁気抵抗効果(AMR)を
利用したMR(magnetoresistance)
素子だけでなく、巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用し
たGMR素子などを有したより高記録密度に適したヘッ
ドを用いることができる。
【0080】上記磁気記録再生装置によれば、カーボン
を主成分とする保護膜の表面の赤外吸収曲線の炭素−水
素結合由来のピーク強度値が0.055以下である磁気
記録媒体を用いているので、該ヘッドの浮上量を低減さ
せてもヘッドに潤滑剤が付着しにくくなる。その結果、
該装置内のヘッドの浮上量をより低下させることができ
るので、本発明の磁気記録再生装置はより高記録密度が
可能なものになる。また、フライスティクション特性が
優れた磁気記録再生装置となる。
【0081】
【実施例】以下、本発明の製造方法の実施例を具体的に
説明するが本発明は、これに限定されるものではない。 実施例1〜6、比較例1、2 NiPメッキAl基板(直径95mm、板厚0.8m
m)の表面に平均粗さRa6Åのテクスチヤ加工を施し
た後、成膜装置(アネルバ製「3010」)のチャンバ
ー内にセットした。チャンバー内を到達真空度2.0×
10-6Paまで排気した後、スパッタ−法を用いて、非
磁性下地層としてCrを350Åの厚さに形成し、その
上に磁性膜としてCo16Cr6Pt3Ta(Cr含有
率16at%、Pt含有率6at%、Ta含有率3at
%、残りはCo。)合金を250Åの厚さに形成した。
カーボンを主成分とする保護膜形成時の基板の温度が表
1になるように非磁性下地膜を成膜する前にヒータ加熱
方式を用いて基板を加熱した。なお基板温度はカーボン
を主成分とする保護膜を形成する直前にチャンバーの窓
より放射温度計を用いて確認した。
【0082】引き続き、CVD装置内に搬送して、磁性
膜の上にはカーボンを主成分とする保護膜として、ブタ
ジエン及び水素の3:10(体積比)の混合ガスを原料
とするプラズマCVD法を用いて水素化カーボン膜を5
nmの厚さに形成した。このとき、750[W]の高周
波(13.56[MHz])電力を電極に印加してプラ
ズマを発生させた。また、カーボンを主成分とする保護
膜の形成時にパルス直流バイアスを印加しその平均電
圧、正電圧波高値は表1に示した。また、パルス直流バ
イアスのパルス幅、周波数はそれぞれ500ns、15
0kHzとした。実施例6は、パルス直流バイアスに代
えて高周波バイアスを印加した。
【0083】次に、フォンブリン系潤滑剤であるZdo
l2000をディッピング法を用いてほぼ15Åの厚さ
に塗布することにより、カーボンを主成分とする保護膜
上に潤滑層を形成した。潤滑剤は同一のロットのものを
使用し、塗布時の潤滑剤の濃度(0.065質量%)、
潤滑剤を溶かした溶剤(旭硝子社製AK225)、その
他塗布条件は同一とした。
【0084】一方、潤滑剤を塗布する前に、カーボンを
主成分とする保護膜を形成する前後の磁気記録媒体の表
面の赤外吸収曲線を測定し、カーボンを主成分とする保
護膜赤外吸収曲線を算出した。その後炭素−水素結合由
来のピーク強度値を求めた。測定位置は、ディスクの半
径20mmとした。測定した結果を表1に示した。
【0085】Bonded Ratioの測定は以下の
ように実施した。作製した磁気記録媒体を溶剤(旭硝子
社製AK225)中に15分間浸漬した後に取り出す操
作を行い、この操作前の潤滑剤の膜厚に対する操作後の
潤滑剤の膜厚の比(%)を算出した。なお、潤滑剤の膜
厚は半径20mmの位置においてFTIRを用いて測定
した。測定した結果を表1に示した。
【0086】フライスティクション試験は、以下の方法
で実施した。まず、半径19.5mmの位置にヘッド
(実際の磁気記録再生装置で使用されるMRヘッド)を
置き、40℃、湿度80%の環境下で回転数7200r
pmで回転させる。その後、ヘッドの位置を半径44m
mに移動し、回転数7200rpmを維持した状態で1
8時間放置する。次にヘッドの位置を再度19.5mm
に移動させて磁気記録媒体の回転を停止して、その状態
で6時間磁気記録媒体を静置した。その後、1サイクル
(5秒間で回転数7200rpmまで立ち上げ、720
0rpmを1秒間維持し5秒間で回転を停止し1秒間静
置)のCSS(contact start sto
p)を実施してその時のダイナミックスティクション値
を測定した。
【0087】上記のフライスティクション試験を終了し
たヘッドへの潤滑剤の付着の状態を次ぎのように評価し
た。試験が終了したヘッドのディスク側の面を光学顕微
鏡(倍率240倍)で観察し、付着物のあるものを付着
物発生とカウントした。測定した結果を表1に示した。
【0088】
【表1】
【0089】実施例7〜12、比較例3、4 表2に示したように炭素−水素結合由来のピーク強度値
と膜厚を変えた以外は実施例1と同様に作製した。補正
係数は、次式によって求めた。 補正係数=0.083×保護膜膜厚[nm]+0.17
【0090】
【表2】
【0091】表1より以下のことがわかる。保護膜の表
面の赤外吸収曲線の炭素−水素結合由来のピーク強度値
が0.55以下であるものが付着物発生個数、フライス
ティクション値において良好であるのがわかる。パルス
直流バイアスの平均電圧、基板温度の好ましい条件がわ
かる。表2より、保護膜の膜厚を補正係数で割った値を
該保護膜の表面の赤外吸収曲線の炭素−水素結合由来の
ピーク強度値で割った値が180以上であるものが好ま
しいことがわかる。
【0092】
【発明の効果】本発明の判定方法によれば、磁気記録媒
体のカーボンを主成分とする保護膜の表面の赤外吸収曲
線の炭素−水素結合由来のピーク強度値によって該カー
ボンを主成分とする保護膜の有するその上に塗布する潤
滑剤との結合力を判定するので、ヘッド付着物が発生し
たときに発生要因が、保護膜の結合力であるか、潤滑層
の形成条件であるかを確実に切り分けられる。フライス
ティクション特性に優れた磁気記録媒体の製造に用いる
ことができる。
【0093】本発明の磁気記録媒体は、保護膜の表面の
赤外吸収曲線の炭素−水素結合由来のピーク強度値が
0.055以下であるのでフライスティクション特性が
向上しているので、高記録密度での使用が可能となる。
【0094】また、本発明の製造方法によれば上記判定
方法を用いているので上記磁気記録媒体の製造を容易に
することができる。
【0095】また、本発明の磁気記録再生装置によれ
ば、上記磁気記録媒体を用いるので、フライスティクシ
ョン特性が向上し高記録密度が可能とすることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の一例を示す断面図であ
る。
【図2】本発明の磁気記録媒体の製造方法の一実施形態
を実施するために用いられるプラズマCVD装置を示す
構成図である。
【図3】パルス直流バイアスの平均電圧値、正電圧波高
値を説明するための説明図である。
【図4】本発明の磁気記録媒体のカーボンを主成分とす
る保護膜の潤滑剤との結語力を判定する方法の一実施形
態の判定フロー図である。
【図5】図1に示す磁気記録媒体を用いた磁気記録再生
装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】図1に示す磁気記録媒体において保護膜の膜厚
を変えた場合の膜厚と炭素−水素結合由来のピーク強度
値との間の関係をしめす図である。
【符号の説明】
1 非磁性下地層 2 磁性層 3 水素化カーボン保護膜 4 潤滑層 10 チャンバ 11 電極 12 高周波電源 13 バイアス電源 14 プロセスガス供給源 15 導入管 16 排気管 17 排気量調節バルブ 20 磁気記録媒体 21 媒体駆動部 22 磁気ヘッド 23 ヘッド駆動部 24 記録再生信号処理系 S 非磁性基板 D ディスク

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非磁性基板上に少なくとも非磁性下地層
    と、磁性層とを有するディスク上に、炭化水素を含む反
    応ガスを原料としてプラズマCVD法により形成された
    カーボンを主成分とする保護膜とその上に塗布された潤
    滑剤とを含む磁気記録媒体において、該カーボンを主成
    分とする保護膜の表面の赤外吸収曲線の炭素−水素結合
    由来のピーク強度値によって該カーボンを主成分とする
    保護膜が有する該潤滑剤との結合力を判定する方法。
  2. 【請求項2】非磁性基板上に少なくとも非磁性下地層
    と、磁性層とを有するディスク上に、炭化水素を含む反
    応ガスを原料としてプラズマCVD法により形成された
    カーボンを主成分とする保護膜とその上に塗布された潤
    滑剤とを含む磁気記録媒体であって、該カーボンを主成
    分とする保護膜の表面の赤外吸収曲線の炭素−水素結合
    由来のピーク強度値が0.055以下である磁気記録媒
    体。
  3. 【請求項3】カーボンを主成分とする保護膜の膜厚を次
    式で与えられる補正係数で割った値を該保護膜の表面の
    赤外吸収曲線の炭素−水素結合由来のピーク強度値で割
    った値が180以上であることを特徴とする請求項2に
    記載の磁気記録媒体。 補正係数=0.083×保護膜膜厚[nm]+0.17
  4. 【請求項4】該カーボンを主成分とする保護膜の水接触
    角の値が80度以下であることを特徴とする請求項2ま
    たは3に記載の磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】該カーボンを主成分とする保護膜のラマン
    分光法によるB/A値が1.6以下であることを特徴と
    する請求項2乃至4のいずれか1項に記載の磁気記録媒
    体。
  6. 【請求項6】該カーボンを主成分とする保護膜の膜厚が
    9[nm]以下であることを特徴とする請求項2乃至5
    のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】非磁性基板上に少なくとも非磁性下地層
    と、磁性層とを有するディスク上に、炭化水素を含む反
    応ガスを原料としてプラズマCVD法により形成された
    カーボンを主成分とする保護膜とその上に塗布された潤
    滑剤とを含む磁気記録媒体を製造する製造方法におい
    て、該保護膜の表面の赤外吸収曲線の炭素−水素結合由
    来のピーク強度値が0.055以下となるように該ディ
    スクにバイアスを印加しながらプラズマCVD法により
    カーボンを主成分とする保護膜を形成する磁気記録媒体
    の製造方法。
  8. 【請求項8】保護膜の膜厚を次式で与えられる補正係数
    で割った値を該保護膜の表面の赤外吸収曲線の炭素−水
    素結合由来のピーク強度値で割った値が180以上とな
    るようにカーボンを主成分とする保護膜を形成すること
    を特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体の製造方
    法。 補正係数=0.083×保護膜膜厚[nm]+0.17
  9. 【請求項9】印加するバイアスをパルス直流バイアスと
    し、その平均電圧の値を−450〜−60[V]の範囲
    とすることを特徴とする請求項7または8に記載の磁気
    記録媒体の製造方法、
  10. 【請求項10】カーボンを主成分とする保護膜の形成時
    の形成表面の温度を130℃以上とすることを特徴とす
    る請求項7乃至9のいずれか1項に記載の磁気記録媒体
    の製造方法。
  11. 【請求項11】請求項7乃至10のいずれか1項に記載
    の磁気記録媒体の製造方法において、炭化水素として、
    低級飽和炭化水素、低級不飽和炭化水素、低級環式炭化
    水素のうちから選ばれた1種または2種以上を用いるこ
    とを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  12. 【請求項12】磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に情報
    を記録再生する磁気ヘッドとを備えた、磁気記録再生装
    置であって、磁気記録媒体が請求項2乃至6のいずれか
    1項に記載の磁気記録媒体であることを特徴とする磁気
    記録再生装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003303410A (ja) * 2002-04-08 2003-10-24 Hitachi Ltd 極薄カーボン保護膜を有する磁気ディスクおよび磁気ディスク装置
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