JP2002029701A - 水素供給装置および該水素供給装置を備える燃料電池装置、並びに水素検出方法 - Google Patents

水素供給装置および該水素供給装置を備える燃料電池装置、並びに水素検出方法

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JP2002029701A
JP2002029701A JP2000207738A JP2000207738A JP2002029701A JP 2002029701 A JP2002029701 A JP 2002029701A JP 2000207738 A JP2000207738 A JP 2000207738A JP 2000207738 A JP2000207738 A JP 2000207738A JP 2002029701 A JP2002029701 A JP 2002029701A
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hydrogen
odorant
fuel cell
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hydrogen supply
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Teruo Maruyama
照雄 丸山
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Toyota Motor Corp
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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
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    • Y02E60/30Hydrogen technology
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水素の漏洩をいち早く検出し、水素を取り扱
う装置における安全性を高める。 【解決手段】 燃料電池装置10は、燃料電池30に燃
料ガスとして供給するための水素を、水素ボンベ20に
蓄える。水素ボンベ20に蓄えられる水素は、付臭剤で
ある硫黄化合物を所定の濃度で含有している。付臭剤を
含有する水素は、燃料電池30に供給されるのに先立っ
て脱臭部28において脱硫される。水素ボンベ20から
脱臭部28までの水素の流路において水素が漏洩したと
きには、水素が含有する付臭剤の臭気によって、水素の
漏洩を感知することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素供給装置およ
び該水素供給装置を備える燃料電池装置、並びに水素検
出方法に関し、詳しくは、水素を供給する水素供給装置
と、この水素供給装置から供給される水素を燃料ガスと
して用いる燃料電池を備える燃料電池装置と、水素の漏
洩を検出するための水素検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、水素ガスを燃料ガスとして燃料電
池に供給し、電気化学反応によって発電を行なう構成が
知られている。ここで、水素ガスは可燃性であって、そ
の取り扱いには充分な注意を要するが、上記燃料電池を
備える装置など、水素ガスを取り扱う装置では、水素ガ
スの漏洩時を想定した対策によって、充分な安全性を確
保することが望まれる。例えば、特開平7−32507
5号公報には、漏れだした水素から水を生成し、生じた
水の量に基づいて漏れだした水素量を検出する水素検出
装置が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来知
られる水素検出装置は、検出対象であるガスを燃焼反応
などに供する必要があり、装置の構造が比較的複雑であ
る。したがって、このような装置において故障が発生し
た場合も想定して、さらなる安全性の確保が望まれてい
た。また、従来知られる水素検出装置は、水素の供給を
受ける装置である燃料電池などが稼働中に、水素検出の
動作を行なうものであった。水素の供給を受ける装置が
稼働していないときにも、この装置に水素を供するため
に設けた水素供給装置から水素が漏れ出すおそれがあ
り、このような場合にも、水素の漏洩を検出可能として
さらに安全性を向上することが望まれていた。
【0004】本発明の水素供給装置は、こうした問題を
解決し、水素を取り扱う装置における水素の漏洩をいち
早く検出し、安全性を高めることを目的としてなされ、
次の構成を採った。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本
発明の第1の水素供給装置は、水素を消費する所定の装
置に対して水素を供給する水素供給装置であって、水素
を貯蔵する水素貯蔵手段と、前記水素貯蔵手段に貯蔵し
た水素を取り出して、該水素を、前記所定の装置に対し
て供給する水素供給手段とを備え、前記水素供給手段
は、臭気によってその存在が認識可能となる付臭剤を貯
蔵する付臭剤貯蔵手段と、前記水素貯蔵手段から取り出
した水素に、前記付臭剤貯蔵手段から取り出した付臭剤
を所定の割合で混合する付臭剤混合手段とを備えること
を要旨とする。
【0006】以上のように構成された本発明の第1の水
素供給装置は、水素貯蔵手段に水素を貯蔵し、貯蔵した
水素を取り出して、水素を消費する所定の装置に対して
水素を供給する。また、臭気によってその存在が認識可
能となる付臭剤を貯蔵する付臭剤貯蔵手段を備えてお
り、前記水素貯蔵手段から取り出した水素に、前記付臭
剤貯蔵手段から取り出した付臭剤を所定の割合で混合す
る。
【0007】このような本発明の第1の水素供給装置に
よれば、水素貯蔵手段から取り出された水素に付臭剤が
混合されるため、前記水素供給装置において水素の漏洩
が起きたときには、付臭剤の臭気によって速やかに水素
の漏洩を感知することができる。したがって、直ちに必
要な処置をとることが可能になり、水素供給装置におけ
る安全性を高めることができる。また、水素供給装置が
水素の漏洩を検知する水素センサを備えており、このセ
ンサが故障した場合などにも、臭気によって水素の漏洩
を感知することができるため、充分な安全性を確保する
ことができる。
【0008】なお、本発明の第1の水素供給装置におい
て、水素貯蔵手段が水素を貯蔵する方法としては、気体
の状態で貯蔵する他、水素吸蔵合金に吸蔵させることに
よって貯蔵したり、液体の状態で貯蔵するなど、種々の
態様をとることができる。
【0009】本発明の第1の水素供給装置において、前
記付臭剤貯蔵手段は、前記付臭剤を、前記付臭剤混合手
段で前記付臭剤が水素に混合される割合よりも高い割合
で、水素に混合した状態で貯蔵し、前記付臭剤混合手段
は、水素に混合した状態の前記付臭剤を、前記水素に混
合することとしてもよい。
【0010】このような構成とすれば、予め水素に混合
された付臭剤を用いるため、水素貯蔵手段から取り出し
た水素に付臭剤を混合する動作が容易になる。また、水
素に混合する付臭剤の濃度を管理することが容易とな
る。
【0011】また、本発明の第1の水素供給装置におい
て、前記水素貯蔵手段は、水素吸蔵合金を備え、該水素
吸蔵合金に水素を吸蔵させることで水素の貯蔵を行なう
こととしてもよい。
【0012】本発明の第2の水素供給装置は、水素を消
費する所定の装置に対して水素を供給する水素供給装置
であって、水素を貯蔵する水素貯蔵手段と、前記水素貯
蔵手段に貯蔵した水素を前記所定の装置に対して供給す
る水素供給手段とを備え、前記水素貯蔵手段は、前記水
素を、臭気によってその存在が認識可能となる付臭剤を
所定の割合で混合した状態で貯蔵することを要旨とす
る。
【0013】以上のように構成された本発明の第2の水
素供給装置は、水素貯蔵手段に、臭気によってその存在
が認識可能となる付臭剤を所定の割合で混合した状態で
水素を貯蔵し、貯蔵したこの水素を、水素を消費する所
定の装置に対して供給する。
【0014】このような本発明の第2の水素供給装置に
よれば、水素貯蔵手段に貯蔵される水素には付臭剤が混
合されているため、前記水素供給装置において水素の漏
洩が起きたときには、付臭剤の臭気によって速やかに水
素の漏洩を感知することができる。したがって、直ちに
必要な処置をとることが可能になり、水素供給装置にお
ける安全性を高めることができる。また、水素供給装置
が水素の漏洩を検知する水素センサを備えており、この
センサが故障した場合などにも、臭気によって水素の漏
洩を感知することができるため、充分な安全性を確保す
ることができる。
【0015】本発明の第1および第2の水素供給装置に
おいて、前記付臭剤は、t−ブチルメルカプタンである
こととしてもよい。
【0016】また、本発明の第1および第2の水素供給
装置において、前記水素供給手段は、前記所定の装置に
対して水素を供給するのに先立って、前記水素に混合さ
れた前記付臭剤を構成する成分のうちの少なくとも一部
の特定成分を、前記水素から除去する付臭剤除去手段を
さらに備えることとしてもよい。
【0017】このような構成とすれば、水素供給装置か
ら水素の供給を受ける上記所定の装置において、付臭剤
に起因する不都合が生じるおそれがある場合にも、この
不都合を引き起こす特定成分を除去することにより、不
都合が生じるのを防止することができる。したがって、
水素供給装置から水素の供給を受ける上記所定の装置が
どのような装置であるかということに関わりなく、用い
る付臭剤を選択することができる。
【0018】このような水素供給装置において、前記付
臭剤除去手段は、前記付臭剤を構成する前記特定成分と
共に化学反応を引き起こす除去剤を備え、該化学反応を
進行させることによって、前記特定成分の除去を行なう
こととしてもよい。
【0019】ここで、前記付臭剤は硫黄化合物であり、
前記除去剤は、前記付臭剤から硫黄分を取り除く脱硫剤
であることとしても良い。
【0020】硫黄化合物の中には、大気中に拡散して1
000倍程度に希釈されたときにも臭気によってその存
在を感知することが可能であり、直ちに異臭であると認
識できる臭気を有しており、付臭剤として優れている物
質が知られている。硫黄は、種々の貴金属触媒に吸着し
てその作用を阻害することが知られているが、上記脱硫
剤によって硫黄分を取り除くことにより、付臭剤として
用いる硫黄化合物が触媒作用を阻害するのを防止するこ
とができる。従って、水素供給装置から水素の供給を受
ける装置が、燃料電池のように貴金属触媒を備える装置
である場合にも、水素に付臭剤を混合することによって
不都合を生じることがない。
【0021】また、このような水素供給装置において、
前記除去剤は酸化亜鉛系の脱硫剤であることとしても良
い。このような脱硫剤を用いることで、付臭剤として用
いた硫黄化合物の濃度を充分に低減することができる。
【0022】また、このような水素供給装置において、
前記付臭剤除去手段は、前記除去剤の温度を調節する温
度調節手段を備えることとしてもよい。化学反応によっ
て前記特定成分の除去を行なう場合には、前記除去剤の
温度を調節することで、上記化学反応の活性を充分に高
くすることができる。このように化学反応が進行する効
率を高めることによって、上記付臭剤除去手段をより小
型化することが可能となる。
【0023】また、本発明の第1および第2の水素供給
装置において、前記水素供給装置において水素が流通す
べき部位の外側に、所定の濃度範囲にある水素を検知可
能な水素センサをさらに備えることとしてもよい。これ
により、水素センサによっても水素の漏洩を検知可能と
なり、水素供給装置における安全性をさらに充分に確保
することができる。
【0024】本発明の燃料電池装置は、水素を含有する
燃料ガスと酸素を含有する酸化ガスの供給を受け、電気
化学反応によって起電力を得る燃料電池を備える燃料電
池装置であって、請求項1ないし11いずれか記載の水
素供給装置を備え、前記燃料電池は、前記水素供給装置
から水素を供給されて該水素を消費する前記所定の装置
であり、該水素を前記燃料ガスとして用いることを要旨
とする。
【0025】このような本発明の燃料電池装置によれ
ば、水素供給装置においては付臭剤が混合された水素が
流通するため、前記水素供給装置において水素の漏洩が
起きたときには、付臭剤の臭気によって速やかに水素の
漏洩を感知することができる。したがって、直ちに必要
な処置をとることが可能になり、水素を燃料ガスとして
用いる燃料電池を備えた燃料電池装置の安全性を充分に
確保することができる。
【0026】本発明の水素検出方法は、水素を取り扱う
装置において水素の漏洩を検出する水素検出方法であっ
て、臭気によってその存在が認識可能となる付臭剤を、
前記装置内に形成された水素流路を通過する水素に含有
させ、前記付臭剤の臭気によって前記水素流路からの水
素の漏洩を検出可能とすることを要旨とする。
【0027】このような本発明の水素検出方法によれ
ば、水素流路を通過する水素が付臭剤を含有するため、
上記水素流路から水素が漏洩したときには、付臭剤の臭
気によって速やかに水素の漏洩を感知することができ
る。ここで、付臭剤を含有する水素が通過する水素流路
は、上記水素を取り扱う装置内に形成された水素流路の
うちの一部であっても良く、付臭剤を含有する水素が通
過する流路において水素の漏洩が起きたときには、上記
した効果を得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】以上説明した本発明の構成・作用
を一層明らかにするために、本発明の実施の形態を、実
施例に基づき以下の順序で説明する。 1.第1実施例の燃料電池装置10の構成 2.水素への付臭と脱臭について 3.第2実施例の燃料電池装置110の構成 4.第3実施例の燃料電池装置210の構成
【0029】(1)第1実施例の燃料電池装置10の構
成:図1は、本発明の好適な一実施例である燃料電池装
置10の構成の概略を表わす説明図である。燃料電池装
置10は、水素ボンベ20,減圧弁22,流量調整弁2
4,加湿器26,脱臭部28,燃料電池30,ポンプ4
0,ブロワ42,制御部50,水素センサ44を主な構
成要素とする。以下、これら各要素について説明する。
【0030】水素ボンベ20は、水素ガスを高圧で貯蔵
する貯蔵装置である。なお、本実施例の燃料電池装置1
0が備える水素ボンベ20が貯蔵する水素には、付臭剤
として、t−ブチルメルカプタン(TBM)が100p
pb〜数ppmの濃度で予め混合されている。以下、こ
のように付臭剤を混合した水素を、付臭剤添加水素と呼
ぶ。減圧弁22は、水素ボンベ20と接続する流路に設
けられており、この流路を介して水素ボンベ20から供
給される付臭剤添加水素を、所定の圧力にまで機械的に
減圧させる。流量調整弁24は、水素ボンベ20と接続
する上記流路において減圧弁22よりもさらに下流側に
設けられており、減圧弁22で減圧された付臭剤添加水
素の流量を、所望の流量に調整する。流量調整弁24
は、制御部50に接続されており、制御部50によって
駆動状態(流量調整の状態)が制御される。
【0031】加湿器26は、所定の流路を介して流量調
整弁24と接続しており、所望の流量に調整された付臭
剤添加水素を加湿する。加湿器26による加湿の方法と
しては、例えば、バブリングによって加湿を行なうこと
としても良いし、あるいは、液体は透過しないが気体は
透過する通気性膜を介して付臭剤添加水素と水とを接触
させて、付臭剤添加水素の加湿を行なうこととしても良
い。
【0032】脱臭部28は、所定の流路を介して加湿器
26と接続しており、加湿した付臭剤添加水素の脱臭を
行なう。すなわち、脱臭部28は、水素に添加した上記
付臭剤から硫黄分を除去する脱硫によって、脱臭を行な
う。本実施例の脱臭部28は、付臭剤を脱硫するため
に、酸化亜鉛を備えている。また、脱臭部28は、図示
しないヒータおよび温度センサを備えており、脱臭部2
8内の温度を、脱硫に適した250℃〜300℃の温度
範囲に保っている。すなわち、温度センサの検出信号が
制御部50に入力されると共に、この検出信号に基づい
て制御部50はヒータを駆動して、脱臭部28の内部温
度が上記所望の温度範囲内となるように調節する。な
お、ヒータは、燃料電池30の発電で生じた電気エネル
ギを用いることとしても良いし、燃料電池装置10に図
示しない2次電池をさらに設け、この2次電池から電力
の供給を受けることとしてもよい。
【0033】このような脱臭部28に付臭剤添加水素が
供給されると、付臭剤を構成する分子中の硫黄が酸化亜
鉛と反応して硫化亜鉛となり、脱臭部28内に留まる。
このように硫黄が取り除かれることで付臭剤は炭化水素
となり、水素と共に脱臭部28から排出される。なお、
酸化亜鉛を用いた脱硫は、酸化亜鉛の周囲に水素が存在
すると上記反応が進行しやすいという性質を有してお
り、本実施例では、水素ガス中に混合した付臭剤の脱硫
を行なうため、脱硫が良好に進行する。
【0034】燃料電池30は、固体高分子電解質型の燃
料電池であり、電解質膜、アノード、カソード、および
セパレータとを備える単セルを複数積層して構成されて
いる。電解質膜は、例えばフッ素系樹脂などの固体高分
子材料で形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であ
る。アノードおよびカソードは、共に炭素繊維を織成し
たカーボンクロスにより形成されている。また、電解質
膜と、アノードあるいはカソードとの間には、電気化学
反応を促進する触媒を備える触媒層が設けられている。
このような触媒としては、白金、あるいは白金と他の金
属から成る合金が用いられる。セパレータは、カーボン
を圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンなど、ガス
不透過性を有する導電性部材により形成されている。ま
た、このセパレータは、上記アノードおよびカソードと
の間に、燃料ガスおよび酸化ガスの流路を形成する。燃
料電池30は、燃料ガスとしての水素と酸化ガスとして
の圧縮空気とを上記流路に供給されて、電気化学反応を
進行することで起電力を発生する。
【0035】燃料電池30は、脱臭部28と所定の流路
によって接続されており、水素ボンベ20から供給され
た付臭剤添加水素は、加湿され、脱臭された後、この流
路を介して燃料電池30のアノード側に供給され、電気
化学反応に利用される。また、燃料電池30のカソード
側は、制御部50によって駆動されるブロワ42と、所
定の流路によって接続されており、このブロワ42で圧
縮された空気が供給される。圧縮空気は、酸化ガスとし
て燃料電池30のカソード側で電気化学反応に利用され
る。以下に、燃料電池30で進行する電気化学反応を示
す。(1)式はアノード側における反応、(2)式はカ
ソード側における反応を示し、電池全体では(3)式に
示す反応が進行する。
【0036】 H2 → 2H++2e- …(1) (1/2)O2+2H++2e- → H2O …(2) H2+(1/2)O2 → H2O …(3)
【0037】燃料電池30のアノード側で電気化学反応
に供された後の残りの水素は、所定の燃料ガス排出流路
を介して燃料電池30から排出されるが、この燃料ガス
排出流路は、脱臭部28と燃料電池30のアノード側と
を接続する既述した流路に合流する。また、上記燃料ガ
ス排出流路にはポンプ40が設けられており、燃料電池
30のアノード側から排出された水素は、ポンプ40に
よって加圧された後、脱臭部28を経由して新たに供給
される水素と共に、再び燃料ガスとして燃料電池30の
アノード側に供給され、電気化学反応に利用される。な
お、ポンプ40は、制御部50と接続しており、制御部
50によってその駆動状態が制御される。
【0038】水素センサ44は、燃料電池装置10にお
いて、水素が流通する流路外の所定の位置に設けられて
おり、大気中の水素濃度を検出する装置である。水素セ
ンサ44としては、半導体式、接触燃焼式、熱線半導体
式など、水素濃度を検出するための周知の方法に基づく
センサの中から任意に選択することができる。水素セン
サ44は、制御部50と接続しており、水素濃度に関す
る検出信号を制御部50に入力する。
【0039】制御部50は、マイクロコンピュータを中
心とした論理回路として構成され、CPU、ROM、R
AMおよび入出力ポートなどからなる(図示せず)。こ
こで、CPUは、予め設定された制御プログラムに従っ
て所定の演算などを実行し、ROMは、CPUで各種演
算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御デー
タなどが予め格納されており、RAMは、同じくCPU
で各種演算処理を実行するのに必要な各種データが一時
的に読み書きされ、入出力ポートは、既述した水素セン
サなどからの信号を入力すると共に、CPUでの演算結
果に応じて、燃料電池30の運転に関わる各部に駆動信
号を出力するものであり、制御部50によって燃料電池
装置10を構成する各部の駆動状態が制御される。
【0040】燃料電池30は、所定の負荷に接続されて
おり(図示せず)、この負荷に対して電力を供給する。
制御部50は、上記負荷が要求する動力の大きさに関す
る情報を入力し、これに基づいて流量調整弁24やブロ
ワ42などに駆動信号を出力する。例えば、燃料電池装
置10を電気自動車に搭載し、車両の駆動用電源として
用いる場合には、制御部50は、車両のアクセル開度を
検出するアクセルポジションセンサの検出信号を入力
し、この信号に基づいて要求される負荷の大きさを判断
すると共に、流量調整弁24およびブロワ42などに駆
動信号を出力することで、必要量の燃料ガスおよび酸化
ガスを燃料電池30に供給し、所望量の電力を発電させ
る。
【0041】(2)水素への付臭と脱臭について:以上
のように構成された本実施例の燃料電池装置10によれ
ば、水素ボンベ20内に貯蔵する水素として、付臭剤添
加水素を用いるため、水素が貯蔵されるボンベや水素が
流通する流路から水素が漏洩したときに、付臭剤の臭気
によって水素の漏洩を感知することが可能となるという
効果を奏する。上記したように、本実施例の燃料電池装
置10は、水素センサ44を備えており、水素の漏洩が
あったときには、この水素センサ44によって水素の漏
洩を検知することができるが、水素センサ44が故障し
たときや、水素センサ44が動作しないとき、あるいは
水素センサ44が水素の漏洩を検出していることに使用
者が気づかないときにも、付臭剤の臭気によって水素の
漏洩を感知することが可能であるため、水素が漏洩した
時にも速やかに必要な措置をとることができ、燃料電池
装置10を取り扱う際の安全性を向上させることができ
る。
【0042】例えば、本実施例の燃料電池装置10を電
気自動車に搭載し、車両の駆動用電源として用いる場合
には、水素センサ44によって所定値以上の濃度の水素
が検知され、検出信号が制御部50に入力されると、運
転席の近傍に水素漏洩を知らせる警告灯を点灯させた
り、警報を発したりする構成とすることで、使用者に対
して水素の漏洩を知らせることが可能である。このよう
に水素センサ44を設けることとしても、水素センサ4
4が故障した場合の他、燃料電池装置10を駆動してい
ないとき、例えば、車両のスタートスイッチ(イグニシ
ョンスイッチに対応し、燃料電池装置10の起動を指示
するスイッチ)をオンにしていないときには、水素セン
サ44による検知や警告が行なわれず、上記スタートス
イッチをオンにしたときに初めて、水素センサ44の検
知に基づく警告が行なわれることになる。また、燃料電
池装置10が起動しているときであっても、水素漏洩に
関わる警告が、上記した警告灯や警報のように車両の運
転席近傍でなされる場合には、使用者が車外にいるとき
には警告に気づくことが遅れるおそれがある。本実施例
の燃料電池装置10のように、水素に付臭剤を添加する
ことにより、水素センサ44がたとえ故障してしまった
場合にも速やかに水素の漏洩を感知することが可能とな
り、また、燃料電池装置10の起動状態に関わりなく、
燃料電池装置10の近傍にいる使用者によって速やかに
水素の漏洩を感知することができるため、直ちに必要な
処置をとることが可能となり、燃料電池装置10を取り
扱う際の安全性を高めることができる。
【0043】また、本実施例の燃料電池装置10は、付
臭剤を予め水素に混合した上で水素ボンベ20内に貯蔵
しているため、燃料電池装置10内の水素の流路を流通
する水素において、常に所望の濃度の付臭剤を添加した
状態とすることができ、水素の漏洩を充分に感知可能と
して安全性を確保することができる。
【0044】ここで、水素に混合する付臭剤としては、
水素が流路から漏洩して大気中に拡散し、例えば100
0倍程度に希釈されても、その臭気によって充分に感知
可能なものを選択する。付臭剤としては、例えば、上記
実施例で説明したt−ブチルメルカプタン(TBM)の
他、テトラヒドロチオフェン(THT)や、ジメチルサ
ルファイド(DMS)、メチルメルカプタン、エチルメ
ルカプタンなどを選択することができ、これらを単独
で、または複数種のものを混合して、あるいはさらに他
種の物質を混合して用いることができる。
【0045】このように、付臭剤として用いることがで
きる物質は、その多くは分子中に硫黄を含有している。
本実施例の燃料電池30を構成する固体高分子型燃料電
池は、電気化学反応を促進するための触媒として、白金
などの貴金属系の触媒を備えているが、硫黄は貴金属に
吸着し易いという性質を有しており、貴金属触媒を備え
る燃料電池に供給するガス中に硫黄化合物が含有される
と、この硫黄化合物が触媒上に吸着し、触媒の作用(電
気化学反応)を阻害してしまうおそれがある。
【0046】本実施例の燃料電池装置10では、脱臭部
28を設け、燃料電池30に供給するのに先立って付臭
剤添加水素から硫黄を除去するため、硫黄化合物が触媒
上に吸着して電気化学反応を阻害するのを防止すること
ができる。既述したように、付臭剤を構成する分子中に
含まれる硫黄は、脱臭部28において、脱臭剤である酸
化亜鉛と反応して硫化亜鉛を生じ、上記脱臭剤の表面に
蓄積される。硫化亜鉛の蓄積量が増えると、脱臭部28
が脱臭(脱硫)する性能が低下するため、上記燃料電池
装置10においては、脱臭(脱硫)する性能が低下して
しまう前に、脱臭部28が備える脱臭剤の交換を行なう
こととすればよい。脱臭する性能が低下してしまう前に
脱臭剤を交換する構成としては、例えば、所定時間燃料
電池装置10を運転するごとに脱臭剤の交換を行なうこ
ととしたり、脱臭部28から排出される水素ガスの分析
を定期的に行なって、所定の濃度以上の付臭剤が検出さ
れるようになったら脱臭剤を交換する等とすればよい。
【0047】さらに、本実施例の燃料電池装置10で
は、脱臭部28にヒータを設け、このヒータによって脱
臭部28内を加熱して内部温度を所定の温度範囲(25
0〜300℃)としているため、付臭剤中に含まれる硫
黄と酸化亜鉛とから硫化亜鉛を生じる反応の活性を充分
に確保して、効果的に脱臭(脱硫)を行なうことができ
る。さらに、上記したように加熱によって脱硫反応の活
性を充分に確保することにより、脱臭剤が脱臭を行なう
効率を高め、より少ない脱臭剤で充分な脱臭効果を得る
ことができるため、脱臭部28をより小型化することが
可能となる。なお、脱硫反応の活性を確保するための加
熱の構成は、ヒータ以外を用いることとしても良く、燃
料電池装置あるいは燃料電池装置と共に設けられた所定
の装置において、充分な熱を発生する高温部が設けられ
ているときには、この高温部が発生する熱を利用するこ
ととしても良い。
【0048】また、上記実施例では、酸化亜鉛を用いて
脱臭(脱硫)を行なったが、異なる方法で脱臭を行なう
こととしても良い。例えば、酸化亜鉛に代えて酸化鉄を
用いることとしても良いし、あるいはこれらを混合して
用いたり、酸化亜鉛や酸化鉄などの金属酸化物に他の物
質をさらに混合して脱臭剤を構成し、脱硫を行なうこと
としても良い。あるいは、このように金属酸化物と反応
させることにより脱硫する方法以外に、脱臭部に活性炭
を充填し、付臭剤を活性炭に吸着させることによって脱
臭(付臭剤を除去)することとしても良い。活性炭を用
いた吸着によって脱臭する場合には、上記実施例のよう
に脱臭部28内を加熱する必要はない。
【0049】なお、付臭剤は、既述したように分子中に
硫黄を含有するものに限るものではなく、アゾ化合物な
ど他種の付臭剤を用いることとしても良い。その際、既
述した付臭剤と同様に、大気中に拡散して(例えば10
00倍程度に)希釈されたときにも充分に感知可能であ
ると共に、水素中で充分に安定であり、また、異臭であ
ると直ちに認識可能であって、毒性が充分に低い等の条
件を満たす付臭剤を選択することが望ましい。また、付
臭剤として用いる物質が、上述した実施例と同様に、電
気化学反応などに不都合を生じるおそれがあるものであ
れば、燃料電池に供給するのに先立って脱臭することと
すればよい。ここで、脱臭とは、付臭剤中に含まれる不
都合を引き起こすおそれがある成分を取り除いたり、付
臭剤そのものを除去したり、あるいは、化学反応などを
利用して、不都合を生じない物質に付臭剤を変化させる
こと等を指す。もとより、付臭剤が、電気化学反応を阻
害するなどの不都合を生じない物質である場合には、脱
臭部を設けないこととしても差し支えない。
【0050】また、上記したような付臭剤の臭気による
水素漏洩の感知は、付臭剤を脱硫するまで、すなわち、
水素ボンベ20から脱臭部28までの流路において水素
の漏洩が起こったときに、可能となる。したがって、脱
臭部28と燃料電池装置10のアノード側とを接続する
流路長を短くするほど、臭気によって感知できない水素
の漏洩が生じる可能性を抑えることができ、望ましい。
【0051】(3)第2実施例の燃料電池装置110の
構成:既述した第1実施例の燃料電池装置10では、予
め付臭剤を混合した付臭剤添加水素を、水素ボンベ20
に貯蔵して用いることとしたが、燃料電池装置内で燃料
電池に供給する水素に対して、付臭剤をその都度添加す
ることとしても良い。このような構成の燃料電池装置を
第2実施例として以下に説明する。図2は、第2実施例
の燃料電池装置110の構成の概略を表わす説明図であ
る。燃料電池装置110は、燃料電池装置10と類似す
る構成を備えており、以下の説明では、第1実施例の燃
料電池装置10と共通する部材には同じ番号を付して、
詳しい説明は省略する。
【0052】燃料電池装置110は、水素ボンベ20に
代えて水素ボンベ120を備える。水素ボンベ120
は、第1実施例の水素ボンベ20とは異なり、付臭剤を
含有しない純度の高い水素を貯蔵している。水素ボンベ
120内に貯蔵された水素は、この水素ボンベ120に
接続する流路に設けられた減圧弁22において、所定の
圧力に減圧された後、マスフロコントローラ123によ
って、燃料電池30での発電量に応じた所望の流量に調
整される。マスフロコントローラ123は、所定の流路
によって加湿器26に接続されており、マスフロコント
ローラ123で所望の流量に調節された水素は、加湿器
26に供給される。
【0053】燃料電池装置110は、水素ボンベ120
の他に、付臭剤ボンベ160を備えている。付臭剤ボン
ベ160は、充分に高濃度(例えば、10〜100pp
m)の付臭剤(本実施例では、t−ブチルメルカプタ
ン)を含有する付臭剤含有水素を貯蔵している。付臭剤
ボンベ160に接続する流路は、上記マスフロコントロ
ーラ123と加湿器26とを接続する流路に接続してお
り、水素ボンベ120から供給される水素は、この接続
部において所定量の付臭剤含有水素が混合されて、付臭
剤含有水素よりも含有する付臭剤の濃度が低い水素(以
下、付臭剤添加水素と呼ぶ)となって、加湿器26に供
給される。なお、付臭剤ボンベ160と接続する流路に
は、減圧弁164およびマスフロコントローラ162が
設けられている。減圧弁164は、付臭剤ボンベ160
から供給される付臭剤含有水素を所定の圧力にまで減圧
し、マスフロコントローラ162は、上記付臭剤添加水
素中の付臭剤の濃度が所定の値となるように、水素に混
合する付臭剤含有水素の流量を調節する。
【0054】ここで、マスフロコントローラ123およ
び162は、それぞれが設けられた流路を通過するガス
(水素あるいは付臭剤含有水素)の流量を計測すると共
に、この計測値と所定の設定値とを比較した結果に基づ
いて弁の開放状態を調節して、ガスの流量を上記設定値
に近づける装置である。マスフロコントローラ123お
よび162は、制御部50に接続しており、上記設定値
に関する情報を制御部50から入力される。
【0055】制御部50は、燃料電池30の発電量(燃
料電池30に接続される負荷の大きさ)に関する情報を
入力して、これに基づいて算出される燃料電池30に供
給すべき燃料ガス量に関する情報を、マスフロコントロ
ーラ123に出力する。マスフロコントローラ123
は、制御部50から入力された上記燃料ガス量に関する
情報から上記設定値を算出し、この設定値に基づいて水
素流量を調節する。また、制御部50は、上記燃料電池
30の発電量に関する情報に基づいて、水素に混合すべ
き付臭剤含有水素量を算出し、これに関する情報をマス
フロコントローラ162に出力する。マスフロコントロ
ーラ162は、制御部50から入力された上記付臭剤含
有水素量に関する情報から上記設定値を算出し、この設
定値に基づいて付臭剤含有水素流量を調節する。例え
ば、燃料電池装置110を電気自動車に搭載し、駆動用
電源として用いる場合には、制御部50は、アクセル開
度やアクセル開速度を入力し、これに基づいて、燃料電
池30で発電すべき量や、燃料電池30に供給すべき燃
料ガス量や、水素に混合すべき付臭剤含有水素量を算出
することとすればよい。
【0056】なお、水素に混合する付臭剤含有水素の量
は、水素に付臭剤含有水素が混合されて成る付臭剤添加
水素が、大気中に拡散して1000倍程度に希釈された
ときに、付臭剤の臭気によって水素の存在を感知可能と
なるように調節される。上記したように、付臭剤ボンベ
160内に貯蔵される付臭剤含有水素が10〜100p
pmの濃度の付臭剤(TBM)を含有している場合に
は、水素量の100分の1程度の所定の割合の付臭剤含
有水素が水素に混合されるようマスフロコントローラ1
62における上記設定値を設定して、付臭剤添加水素中
の付臭剤濃度を100ppb〜数ppmとすればよい。
【0057】水素に付臭剤含有水素が混合されて成る付
臭剤添加水素は、加湿器26で加湿された後、脱臭部2
8において脱臭(付臭剤の脱硫)が行なわれ、燃料電池
30のアノード側に供給されて、電気化学反応に供され
る。
【0058】以上のように構成された第2実施例の燃料
電池装置110は、第1実施例と同様に、水素が通過す
る所定の流路から水素が漏洩したときに、付臭剤の臭気
によって水素の存在を感知することができるため、燃料
電池装置110における安全性をより向上させることが
できる。ここで、第2実施例の燃料電池装置110で
は、付臭剤ボンベ160に貯蔵した付臭剤含有水素を混
合してから、脱臭部28で脱臭を行なうまでの水素の流
路において、水素の漏洩が起こったときに、付臭剤の臭
気によって水素が漏洩したことを感知可能となる。した
がって、脱臭部28と燃料電池30のアノード側とを接
続する流路長をより短くすると共に、付臭剤含有水素が
水素に混合される位置と水素ボンベ120との距離をよ
り短くする構成とするならば、付臭剤の臭気によって感
知できない水素の漏洩が生じる可能性をより低くするこ
とができ、望ましい。
【0059】また、第2実施例の燃料電池装置110の
ように、水素を貯蔵する水素ボンベ120と、付臭剤含
有水素を貯蔵する付臭剤ボンベ160とが別個に設けら
れている場合にも、上記したようにマスフロメータによ
って付臭剤の混合量を調節することで、流路内を通過す
る水素が含有する付臭剤の濃度を所望の一定値(の範
囲)に保つことができる。
【0060】既述したように、酸化亜鉛を脱臭剤として
用いる場合のように付臭剤との反応物が脱臭部内に蓄積
される場合には、脱臭剤の交換を行なって脱臭部の性能
を維持する必要がある。ここで、第1および第2実施例
のように、水素中の付臭剤濃度を一定に保つことで、脱
臭剤を交換すべき時期が予測可能となる。燃料電池装置
の運転状態に応じて定期的に脱臭剤を交換する、あるい
は、燃料電池30の発電量の積算量が所定の値に達した
ときに脱臭剤を交換する等の構成とすれば良く、脱臭剤
の交換に関わる管理が容易となる。
【0061】なお、第2実施例の燃料電池装置110に
おいても、第1実施例と同様に、付臭剤および脱臭剤は
種々のものが適用可能であって、用いる付臭剤および脱
臭剤に応じた種々の変形が可能である。
【0062】(4)第3実施例の燃料電池装置210の
構成:既述した第1および第2実施例の燃料電池装置で
は、燃料電池に供給する燃料ガスとして用いる水素は、
水素ボンベに貯蔵することとしたが、異なる構成とする
こともできる。水素を、水素吸蔵合金に吸蔵させること
によって蓄える構成を、第3実施例として以下に説明す
る。図3は、第3実施例の燃料電池装置210の構成の
概略を表わす説明図である。燃料電池装置210は、燃
料電池装置10および110と類似する構成を備えてお
り、以下の説明では、既述した実施例の燃料電池装置と
共通する部材には同じ番号を付して、詳しい説明は省略
する。また、図3では、燃料電池装置210が、車両の
駆動用電源として電気自動車に搭載されている様子を表
わしている。
【0063】燃料電池装置210には、水素ボンベに代
えて、水素吸蔵合金を備える水素貯蔵部220が設けら
れている。水素吸蔵合金に吸蔵させることによって水素
貯蔵部220に貯蔵した水素は、水素吸蔵合金を加熱す
ることによって、水素吸蔵合金の内部から取り出され
る。水素の取り出しの際に水素吸蔵合金を加熱する構成
については後述する。
【0064】水素吸蔵合金から取り出された水素は、水
素貯蔵部220に接続する流路に設けられた減圧弁22
によって所定の圧力に減圧された後、流量調整弁224
によって、燃料電池30での発電量に応じた所望の流量
に調整される。ここで、水素吸蔵合金から取り出される
のは純度の高い水素であって、本実施例では、水素吸蔵
合金から水素を取り出した後に、この水素に対して付臭
剤の添加を行なう。燃料電池装置210は、水素に添加
する付臭剤(本実施例ではTBM)を貯蔵する付臭剤貯
蔵部260を備えている。TBMは、常温では液体であ
り、本実施例の付臭剤貯蔵部260は、このような液状
のTBMを貯蔵している。
【0065】付臭剤貯蔵部260に接続する流路261
は、上記減圧弁22と流量調整弁224とを接続する流
路262に接続しており、この接続部において、流路2
62を通過する水素に対して所定の濃度(100ppb
〜数ppm)となるように付臭剤を添加し、流路262
を通過する水素を付臭剤添加水素と成す。流路262と
流路261との接続部にはエゼクタ266が設けられて
おり、このエゼクタ266によって、所定の割合の付臭
剤が水素に添加される。エゼクタ266は、減圧弁22
側から供給される水素が通過する流路262内に発生す
る陰圧を利用して、付臭剤貯蔵部260に接続する流路
261から、上記発生した陰圧に応じた量の付臭剤を流
路262側に吸い込むことにより、水素と付臭剤との混
合を行なう。付臭剤(TBM)は、気体に触れると容易
に気化する性質を有しており、上記したように流路26
2側に吸い込まれたときには速やかに気化して水素と混
合し、付臭剤添加水素となる。
【0066】流量調整弁224は加湿器26に接続して
おり、流量調整弁224によって流量を調節された付臭
剤添加水素は、この加湿器26で加湿される。その後、
既述した実施例と同様に、脱臭部28において脱臭(付
臭剤の脱硫)が行なわれ、脱臭された水素は、燃料電池
30に燃料ガスとして供給される。燃料電池30におい
て電気化学反応に供された後に燃料電池30から排出さ
れる残りの水素は、既述した実施例と同様に、ポンプ4
0によって加圧され、新たに脱臭部28側から供給され
る水素と共に再び燃料ガスとして燃料電池30に供給さ
れる。
【0067】本実施例の燃料電池装置210では、水素
貯蔵部220が備える水素吸蔵合金から水素を取り出す
際に、燃料電池30で生じた熱を利用している。燃料電
池30は、既述した(1)〜(3)式に示した電気化学
反応を進行することで起電力を得るが、この電気化学反
応に伴って燃料電池30では熱が生じる。そこで、通常
は燃料電池では、内部に冷却水の流路を設け、生じた熱
を冷却水によって外部に排出し、燃料電池の運転温度を
所定の範囲内に保っている。本実施例の燃料電池装置2
10は、燃料電池30の内部と水素貯蔵部220の内部
との間を循環する冷却水流路278を備えており、燃料
電池30で生じた熱を上記冷却水を介して水素貯蔵部2
20に伝え、伝えた熱によって水素吸蔵合金を加熱する
ことで水素を取り出している。冷却水流路278内を循
環する冷却水は、燃料電池30を冷却することで昇温
し、水素吸蔵合金を加熱することで降温する動作を繰り
返す。
【0068】また、冷却水流路278には流路変更弁2
72,276が設けられており、これらの弁を切り替え
ることによって、加熱器270あるいは放熱器274を
経由するよう、冷却水の流路を変更することができる。
加熱器270はヒータを備えており、このヒータを駆動
することによって、流路内を通過する冷却水を所望の程
度に加熱することができる。放熱器274は、冷却ファ
ンを備えたラジエータとして構成されており、冷却ファ
ンを制御することで、流路内を通過する冷却水を所望の
程度に冷却することができる。水素貯蔵部220におい
て水素を取り出すために要する熱量に比べて、燃料電池
30で生じる熱量が過剰となるときには、流路変更弁2
76を切り替えて、冷却水が放熱器274を通過するよ
うに流路を変更し、過剰な熱を放熱器274によって廃
棄する。また、水素吸蔵合金から水素を取り出す際に、
冷却水を介して燃料電池30から伝えられる熱では不足
する場合には、流路変更弁272を切り替えて、冷却水
が加熱器270を通過するように流路を変更し、燃料電
池30側から排出された冷却水が水素貯蔵部220内に
導入されるのに先立って、冷却水を加熱する。
【0069】既述したように、本実施例の燃料電池装置
210は、駆動用電源として電気自動車に搭載されてい
るが、燃料電池30における電気化学反応によって生じ
た電力は、電気自動車が備えるモータ280に供給さ
れ、モータ280において回転駆動力を発生させる。こ
の回転駆動力は、電気自動車の車軸を介して、車両の前
輪および/または後輪に伝えられ、車両を走行させる動
力となる。このモータ280は、制御装置282の制御
を受ける。制御装置282は、アクセルペダル282a
の操作量を検出するアクセルペダルポジションセンサ2
82bなどとも接続されている。
【0070】図3では記載を省略したが、本実施例の燃
料電池装置210もまた、既述した実施例と同様に、制
御部50およびこれに検出信号を入力する水素センサ4
4を備えている。ブロワ42,ポンプ40,流量調整弁
224,流路変更弁272,276などは、制御部50
から出力される駆動信号に従って駆動される。また、上
記制御装置282は、制御部50とも接続しており、こ
の制御部50との間でモータ280の駆動などに関する
種々の情報のやり取りをしている。
【0071】なお、本実施例の電気自動車は、図示しな
い2次電池を備えており、電気自動車の坂道登坂時や高
速走行時などのように負荷が増大した場合には、この2
次電池によってモータ280に供給する電力を補い、高
い駆動力を得ることが可能となっている。燃料電池装置
210の起動時には、加熱器270が備えるヒータおよ
び流路変更弁272は上記2次電池から電力の供給を受
けて動作し、冷却水流路278内を循環する冷却水を速
やかに加熱することによって、水素貯蔵部220が備え
る水素吸蔵合金から水素を取り出し可能とする。また、
このとき、脱臭部28が備えるヒータも上記2次電池か
ら電力の供給を受けて脱臭部28内を昇温し、燃料電池
装置210の起動時に付臭剤添加水素が燃料電池30側
に供給され始めると、速やかに脱臭(脱硫)の動作を開
始し、付臭剤中の非所望の成分が燃料電池30に供給さ
れてしまうのを防ぐ。
【0072】燃料電池装置210を構成する各部が充分
に昇温して定常状態に達した後は、アクセルペダルポジ
ションセンサ282bから制御装置282を介して伝え
られる信号に基づいて、負荷が要求する動力の大きさが
判断され、既述したブロワやポンプやヒータや弁などの
各部の駆動状態が制御部50によって制御され、必要量
の燃料ガスおよび酸化ガスが燃料電池30に供給され
て、所望量の電力が発電される。
【0073】以上のように構成された本実施例の燃料電
池装置210によれば、第1および第2実施例と同様
に、水素が通過する所定の流路から水素が漏洩したとき
に、付臭剤の臭気によって水素の存在を感知することが
できるため、燃料電池装置210における安全性をより
向上させることができる。ここで、第3実施例の燃料電
池装置210では、付臭剤貯蔵部260に貯蔵した付臭
剤を水素に混合してから、脱臭部28で脱臭を行なうま
での水素の流路において、水素の漏洩が起こったとき
に、付臭剤の臭気によって水素が漏洩したことを感知可
能となる。したがって、脱臭部28と燃料電池30のア
ノード側とを接続する流路長をより短くすると共に、エ
ゼクタ266と減圧弁22との距離をより短くする構成
とするならば、付臭剤の臭気によって感知できない水素
の漏洩が生じる可能性をより低くすることができ、望ま
しい。
【0074】また、第3実施例の燃料電池装置210で
は、付臭剤(TBM)は液体の状態で貯蔵するため、付
臭剤を貯蔵する貯蔵部をより小型化することができる。
また、このように付臭剤を液体の状態で貯蔵する場合に
も、上記したようにエゼクタ266を用いて付臭剤の混
合量を調節することで、流路内を通過する水素が含有す
る付臭剤の濃度を所望の一定値(の範囲)に保つことが
できる。もとより、第2実施例と同様に、高濃度の付臭
剤含有水素を貯蔵する付臭剤タンクを備える構成とし、
水素吸蔵合金から取り出した水素に対して付臭剤含有水
素を混合することとしても良い。また、第1および第2
実施例と同様に、水素に混合する付臭剤の濃度を一定に
保つことで、脱臭剤の交換に関わる管理が容易となると
いう効果が得られる。
【0075】なお、第3実施例の燃料電池装置210に
おいても、第1および第2実施例と同様に、付臭剤およ
び脱臭剤は種々のものが適用可能であって、用いる付臭
剤および脱臭剤に応じた種々の変形が可能である。
【0076】既述した実施例では、燃料電池装置におい
て、水素は、気体の状態、あるいは水素吸蔵合金に吸蔵
させた状態で貯蔵したが、水素の貯蔵の形態はこれらに
限るものではなく、液体の状態など異なる状態で貯蔵す
ることとしても良い。燃料電池に供給するのに先立って
水素を気体として取り出すことができれば良く、本発明
を適用することによって、付臭剤の臭気によって水素の
漏洩が感知可能となる効果が得られる。
【0077】また、既述した実施例では、付臭剤添加水
素が(脱臭された後に)供給されるのは固体高分子型燃
料電池としたが、異なる種類の燃料電池を用いることと
しても良い。さらに、付臭剤添加水素を供給する装置
は、燃料電池に限るものではなく、水素を消費する他種
の装置に対して付臭剤添加水素を供給することとしても
良い。このとき、上記水素を消費する装置において、付
臭剤が不都合を生じるおそれがある場合には、既述した
実施例と同様に脱臭部を設け、付臭剤あるいは付臭剤中
に含まれる不都合を引き起こすおそれのある成分を取り
除いた後に、あるいは、不都合を引き起こすおそれのな
い物質に変化させた後に、上記水素を消費する装置に供
給することとすればよい。
【0078】以上本発明の実施例について説明したが、
本発明はこうした実施例に何等限定されるものではな
く、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる
様態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な一実施例である燃料電池装置1
0の構成の概略を表わす説明図である。
【図2】第2実施例の燃料電池装置110の構成の概略
を表わす説明図である。
【図3】第3実施例の燃料電池装置210の構成の概略
を表わす説明図である。
【符号の説明】
10,110,210…燃料電池装置 20…水素ボンベ 22,164…減圧弁 24…流量調整弁 26…加湿器 28…脱臭部 30…燃料電池 40…ポンプ 42…ブロワ 44…水素センサ 50…制御部 120…水素ボンベ 123,162…マスフロコントローラ 160…付臭剤ボンベ 220…水素貯蔵部 224…流量調整弁 260…付臭剤貯蔵部 261,262…流路 266…エゼクタ 270…加熱器 272,276…流路変更弁 274…放熱器 278…冷却水流路 280…モータ 282…制御装置 282a…アクセルペダル 282b…アクセルペダルポジションセンサ

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素を消費する所定の装置に対して水素
    を供給する水素供給装置であって、 水素を貯蔵する水素貯蔵手段と、 前記水素貯蔵手段に貯蔵した水素を取り出して、該水素
    を、前記所定の装置に対して供給する水素供給手段とを
    備え、 前記水素供給手段は、 臭気によってその存在が認識可能となる付臭剤を貯蔵す
    る付臭剤貯蔵手段と、 前記水素貯蔵手段から取り出した水素に、前記付臭剤貯
    蔵手段から取り出した付臭剤を所定の割合で混合する付
    臭剤混合手段とを備える水素供給装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の水素供給装置であって、 前記付臭剤貯蔵手段は、前記付臭剤を、前記付臭剤混合
    手段で前記付臭剤が水素に混合される割合よりも高い割
    合で、水素に混合した状態で貯蔵し、 前記付臭剤混合手段は、水素に混合した状態の前記付臭
    剤を、前記水素に混合する水素供給装置。
  3. 【請求項3】 前記水素貯蔵手段は、水素吸蔵合金を備
    え、該水素吸蔵合金に水素を吸蔵させることで水素の貯
    蔵を行なう請求項1または2記載の水素供給装置。
  4. 【請求項4】 水素を消費する所定の装置に対して水素
    を供給する水素供給装置であって、 水素を貯蔵する水素貯蔵手段と、 前記水素貯蔵手段に貯蔵した水素を前記所定の装置に対
    して供給する水素供給手段とを備え、 前記水素貯蔵手段は、前記水素を、臭気によってその存
    在が認識可能となる付臭剤を所定の割合で混合した状態
    で貯蔵することを特徴とする水素供給装置。
  5. 【請求項5】 前記付臭剤は、t−ブチルメルカプタン
    である請求項1ないし4いずれか記載の水素供給装置。
  6. 【請求項6】 前記水素供給手段は、前記所定の装置に
    対して水素を供給するのに先立って、前記水素に混合さ
    れた前記付臭剤を構成する成分のうちの少なくとも一部
    の特定成分を、前記水素から除去する付臭剤除去手段を
    さらに備える請求項1ないし5いずれか記載の水素供給
    装置。
  7. 【請求項7】 前記付臭剤除去手段は、前記付臭剤を構
    成する前記特定成分と共に化学反応を引き起こす除去剤
    を備え、該化学反応を進行させることによって、前記特
    定成分の除去を行なうことを特徴とする請求項6記載の
    水素供給装置。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の水素供給装置であって、 前記付臭剤は硫黄化合物であり、 前記除去剤は、前記付臭剤から硫黄分を取り除く脱硫剤
    であることを特徴とする水素供給装置。
  9. 【請求項9】 前記除去剤は酸化亜鉛系の脱硫剤である
    ことを特徴とする請求項8記載の水素供給装置。
  10. 【請求項10】 前記付臭剤除去手段は、前記除去剤の
    温度を調節する温度調節手段を備える請求項7ないし9
    いずれか記載の水素供給装置。
  11. 【請求項11】 前記水素供給装置において水素が流通
    すべき部位の外側に、所定の濃度範囲にある水素を検知
    可能な水素センサをさらに備える請求項1ないし10い
    ずれか記載の水素供給装置。
  12. 【請求項12】 水素を含有する燃料ガスと酸素を含有
    する酸化ガスの供給を受け、電気化学反応によって起電
    力を得る燃料電池を備える燃料電池装置であって、 請求項1ないし11いずれか記載の水素供給装置を備
    え、 前記燃料電池は、前記水素供給装置から水素を供給され
    て該水素を消費する前記所定の装置であり、該水素を前
    記燃料ガスとして用いることを特徴とする燃料電池装
    置。
  13. 【請求項13】 水素を取り扱う装置において水素の漏
    洩を検出する水素検出方法であって、 臭気によってその存在が認識可能となる付臭剤を、前記
    装置内に形成された水素流路を通過する水素に含有さ
    せ、前記付臭剤の臭気によって前記水素流路からの水素
    の漏洩を検出可能とする水素検出方法。
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