JP2002028454A - スパイラル型膜エレメントおよびスパイラル型膜モジュールの運転方法 - Google Patents

スパイラル型膜エレメントおよびスパイラル型膜モジュールの運転方法

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JP2002028454A JP2000217940A JP2000217940A JP2002028454A JP 2002028454 A JP2002028454 A JP 2002028454A JP 2000217940 A JP2000217940 A JP 2000217940A JP 2000217940 A JP2000217940 A JP 2000217940A JP 2002028454 A JP2002028454 A JP 2002028454A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長期間にわたって高い透過流束を維持しつつ
低コストで安定した濾過運転を行うことができるスパイ
ラル型膜エレメントおよびスパイラル型膜モジュールの
運転方法を提供することである。 【解決手段】 スパイラル型膜モジュール100は、背
圧強度の高い分離膜を有するスパイラル型膜エレメント
1を備える。濾過運転時には圧力容器10の原水入口1
3から導入された原水7が全量濾過され、透過水出口1
4から透過水が取り出される。ここで、一時的に濾過運
転を停止し、圧力容器10内に原水および透過水を封入
した状態で所定時間保持する。それにより、スパイラル
型膜エレメント1の膜面に付着した汚染物質が剥離す
る。洗浄時には、洗浄水を透過水出口14を通して集水
管5の端部から導入し、0.05〜0.3MPaの背圧
で逆流洗浄を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、逆浸透膜分離装
置、限外濾過膜分離装置、精密濾過膜分離装置等の膜分
離装置に用いられるスパイラル型膜エレメントおよびス
パイラル型膜モジュールの運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、浄水処理および排水処理への膜分
離技術の適用が広がり、従来困難であった液質への膜分
離技術の応用がなされている。特に、膜分離技術を用い
た産業排水の回収および再利用が強く求められている。
【0003】このような膜分離に使用される膜エレメン
トの形態としては、単位体積当たりの膜面積(体積効
率)の点から中空糸型膜エレメントが多く使用されてい
る。しかし、中空糸型膜エレメントは、膜が折れやす
く、膜が折れると、原水が透過水に混ざり、分離性能が
低下するという欠点を有している。
【0004】そこで、中空糸型膜エレメントに代えて、
スパイラル型膜エレメントを適用することが提案されて
いる。このスパイラル型膜エレメントは、中空糸型膜エ
レメントと同様に単位体積当たりの膜面積を大きくと
れ、しかも分離性能を維持でき、信頼性が高いという利
点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】排水は多くの懸濁物
質、コロイド性物質または溶存性物質を含むため、この
ような排水に膜分離を行うと、これらの懸濁物質、コロ
イド性物質または溶存性物質が汚染物質として膜面に堆
積し、水の透過速度の低下を引き起こす。特に、全量濾
過を行う場合においては汚染物質が膜面に堆積しやす
く、水の透過速度の低下が顕著であり、安定した濾過運
転を続けることが困難である。
【0006】膜面への汚染物質の堆積を防止するために
は、クロスフロー濾過が行われる。このクロスフロー濾
過は、原水を膜面に対して平行に流すことにより、膜面
と流体との界面で生じる剪断力を利用して膜面への汚染
物質の堆積を防止するものである。このようなクロスフ
ロー濾過においては、汚染物質の膜面への堆積を防ぐた
めに充分な膜面線速を得ることが必要であり、そのため
には充分な流量の原水を膜面に対して平行に流す必要が
ある。しかしながら、膜面に平行に流す原水の流量を大
きくすると、スパイラル型膜エレメント当たりの回収率
が低くなるうえ、原水を供給するポンプが大きいものと
なり、システムコストも非常に大きくなる。
【0007】一方、膜面に堆積した汚染物質を逆流洗浄
により取り除くことも行われる。逆流洗浄は、中空糸型
膜エレメントでは一般的に行われている。
【0008】スパイラル型膜エレメントへの逆流洗浄の
適用は、例えば特公平6−98276号公報に提案され
ている。しかし、従来のスパイラル型膜エレメントの分
離膜は、背圧強度が低いため、逆流洗浄において分離膜
に背圧が加わると、分離膜が破損するおそれがある。そ
のため、上記の公報によると、スパイラル型膜エレメン
トに0.1〜0.5kg/cm2 (0.01〜0.05
MPa)という低い背圧で逆流洗浄を行うことが好まし
いとされている。
【0009】しかし、本発明者の実験によると、スパイ
ラル型膜エレメントにおいてこのような背圧で逆流洗浄
を行った場合、汚染物質の除去を充分に行うことが困難
であり、長時間にわたって高い透過流束を維持すること
はできなかった。
【0010】一方、本発明者は、特開平10−2256
26号公報に背圧強度が2kgf/cm2 以上の分離膜
の構造および製造方法を提案している。しかしながら、
このような背圧強度を有する分離膜を用いてスパイラル
型膜エレメントを作製した場合に、実際にどのような背
圧で逆流洗浄を行うことが可能となるか、また、どのよ
うな範囲の背圧で逆流洗浄を行った場合に長期間にわた
って高い透過流束を維持できるかについては十分に検証
されていなかった。さらに、上記のような背圧強度の高
い分離膜を有するスパイラル型膜エレメントの運転方法
およびこのようなスパイラル型膜エレメントを備えたス
パイラル型膜モジュールの運転方法については検証され
ていなかった。
【0011】このような背圧強度の高い分離膜を用いた
場合でも、最適な洗浄条件および洗浄方法を適用しかつ
最適な運転方法により濾過運転を行わなければ、スパイ
ラル型膜エレメントおよびスパイラル型膜モジュールに
おいて長期間にわたって透過流束の低下を生じることな
く安定した濾過運転を続けることができない。
【0012】本発明の目的は、長期間にわたって高い透
過流束を維持しつつ低コストで安定した濾過運転を行う
ことができるスパイラル型膜エレメントおよびスパイラ
ル型膜モジュールの運転方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段および発明の効果】本発明
に係るスパイラル型膜エレメントの運転方法は、有孔中
空管の外周面に袋状の分離膜が巻回されてなり、0.0
5MPaよりも高く0.3MPa以下の背圧で逆流洗浄
が可能なスパイラル型膜エレメントの運転方法であっ
て、運転期間中に一時的に運転を停止してスパイラル型
膜エレメントを液中に浸漬した状態で所定時間保持する
ものである。
【0014】本発明に係るスパイラル型膜エレメントの
運転方法においては、スパイラル型膜エレメントを液中
に浸漬した状態で所定時間保持することにより、スパイ
ラル型膜エレメントの膜面に付着した汚染物質を剥離さ
せ、スパイラル型膜エレメントの膜機能を回復させるこ
とが可能となる。それにより、信頼性が高く安定した運
転を行うことが可能となる。このような操作は、特に設
備を必要とせず容易に行うことができるとともに、洗浄
用薬品を用いることなく汚染物質を剥離させることがで
きるため、低コストでの実施が可能である。
【0015】本発明に係るスパイラル型膜エレメントの
運転方法の第1の態様として、運転期間中の濾過運転時
にスパイラル型膜エレメントの端部から原液を供給する
とともに有孔中空管の少なくとも一方の開口端から透過
液を取り出し、濾過運転を停止してスパイラル型膜エレ
メントを液中に浸漬した状態で所定時間保持してもよ
い。
【0016】この場合、原液がスパイラル型膜エレメン
トの端部から供給されるとともに、濾過が行われ、汚染
物質がスパイラル型膜エレメントの膜面で捕捉される。
【0017】さらに、濾過運転を停止してスパイラル型
膜エレメントを液中に所定時間浸漬することにより、濾
過運転に伴いスパイラル型膜エレメントの膜面に付着し
た汚染物質を剥離させることが可能となる。
【0018】なお、上記のスパイラル型膜エレメントの
運転方法において、常時または定期的に一部の原液をス
パイラル型膜エレメントの軸方向に流してもよい。それ
により、膜面上に働く剪断力により原液中の汚染物質が
スパイラル型膜エレメントの膜面に付着することを抑制
でき、より安定した運転を行うことが可能となる。
【0019】スパイラル型膜エレメント内を軸方向に流
した原液の少なくとも一部を再びスパイラル型膜エレメ
ントの供給側に戻すことが好ましい。このように原液を
循環させることにより、高い回収率で透過液を得ること
が可能となる。
【0020】本発明に係るスパイラル型膜エレメントの
運転方法の第2の態様として、運転期間中の逆流洗浄時
に有孔中空管の少なくとも一方の開口端から洗浄液を導
入してスパイラル型膜エレメントの少なくとも一端部か
ら洗浄液を排出させることにより0.05MPaよりも
高く0.3MPa以下の背圧で分離膜を逆流洗浄し、逆
流洗浄を停止してスパイラル型膜エレメントを液中に浸
漬した状態で所定時間保持してもよい。
【0021】逆流洗浄時には、洗浄液が有孔中空管の少
なくとも一方の開口端から導入される。その洗浄液は、
有孔中空管の外周面から袋状の分離膜の内部に導出さ
れ、その分離膜を濾過時と逆方向に透過する。それによ
り、分離膜が逆流洗浄され、分離膜の膜面に堆積した汚
染物質が分離膜から剥離される。
【0022】この場合、0.05MPaよりも高く0.
3MPa以下の背圧で分離膜を逆流洗浄するので、短時
間に必要量の洗浄液を流すことができる。それにより、
分離膜の膜面に堆積した汚染物質を効果的に除去するこ
とができる。その結果、膜面に汚染物質が堆積しやすい
全量濾過においても、長期間にわたって高い透過流束を
維持しつつ安定した濾過運転を行うことが可能となる。
【0023】このように、濾過を安定して行うことがで
きるため、効率よく透過液を得ることが可能となる。ま
た、原液を供給するポンプに大きなものを用いる必要が
なく、システムの規模を小さくすることが可能となる。
それにより、システムコストが低減される。
【0024】さらに、逆流洗浄を停止してスパイラル型
膜エレメントを液中に所定時間浸漬することにより、濾
過に伴いスパイラル型膜エレメントの膜面に付着した汚
染物質をより効果的に剥離させることが可能となる。
【0025】上記の第1の態様において、スパイラル型
膜エレメントを液中に浸漬した状態で所定時間保持した
後、濾過運転を再開してもよい。この場合、スパイラル
型膜エレメントを液中に所定時間浸漬することにより、
スパイラル型膜エレメントの膜面に付着した汚染物質を
剥離させることができるため、再開した濾過運転におい
て、高い信頼性および安定性が得られる。
【0026】あるいは、スパイラル型膜エレメントを液
中に浸漬した状態で所定時間保持した後、有孔中空管の
少なくとの一方の開口端から洗浄液を導入してスパイラ
ル型膜エレメントの少なくとも一端部から洗浄液を排出
させることにより0.05MPaよりも高く0.3MP
a以下の背圧で分離膜を逆流洗浄してもよい。この場
合、スパイラル型膜エレメントを液中に所定時間浸漬し
た後に逆流洗浄を行うため、スパイラル型膜エレメント
の膜面に付着した汚染物質を容易にかつ確実に剥離させ
ることが可能となる。それにより、信頼性が高く安定し
た濾過運転を行うことが可能となる。
【0027】また、上記の第2の態様において、スパイ
ラル型膜エレメントを液中に浸漬した状態で所定時間保
持した後、逆流洗浄を再開してもよい。この場合、スパ
イラル型膜エレメントを液中に所定時間浸漬した後に逆
流洗浄を行うため、スパイラル型膜エレメントの膜面に
付着した汚染物質を容易にかつ確実に剥離させることが
可能となる。それにより、信頼性が高く安定した濾過運
転を行うことが可能となる。
【0028】あるいは、スパイラル型膜エレメントを液
中に浸漬した状態で所定時間保持した後、スパイラル型
膜エレメントの端部から原液を供給するとともに有孔中
空管の少なくとも一方の開口端から透過液を取り出すこ
とにより濾過運転を行ってもよい。この場合、スパイラ
ル型膜エレメントを液中に所定時間浸漬することによ
り、スパイラル型膜エレメントの膜面に付着した汚染物
質を剥離させることができるため、浸漬後の濾過運転に
おいて、高い信頼性および安定性が得られる。
【0029】また、上記の第1および第2の態様におい
て、スパイラル型膜エレメントを液中に浸漬した状態で
所定時間保持した後、スパイラル型膜エレメントの軸方
向に原液を流すことによりフラッシングを行ってもよ
い。この場合、フラッシングによりスパイラル型膜エレ
メントの膜面に付着した汚染物質を容易に剥離させるこ
とができるとともに、スパイラル型膜エレメントから剥
離した汚染物質を容易にかつ確実に外部へ排出すること
が可能となる。
【0030】さらに、スパイラル型膜エレメントを液中
に浸漬する際に、殺菌作用または汚染物質剥離作用を有
する薬品を含む液をスパイラル型膜エレメントに供給
し、薬品を含む液中にスパイラル型膜エレメントを浸漬
してもよい。これにより、スパイラル型膜エレメントの
膜面において繁殖した雑菌を殺菌することが可能になる
か、またはスパイラル型膜エレメントの膜面に付着した
汚染物質をより効果的かつ確実に剥離させることが可能
となる。
【0031】本発明に係るスパイラル型膜モジュールの
運転方法は、1または複数のスパイラル型膜エレメント
が原液入口を有する圧力容器内に収容されてなるスパイ
ラル型膜モジュールの運転方法であって、スパイラル型
膜エレメントは、有孔中空管の外周面に袋状の分離膜が
巻回されてなり、0.05MPaよりも高く0.3MP
a以下の背圧で逆流洗浄が可能であり、運転期間中に一
時的に運転を停止して圧力容器内に液を封入した状態で
所定時間保持するものである。
【0032】本発明に係るスパイラル型膜モジュールの
運転方法においては、圧力容器内に液を封入してスパイ
ラル型膜エレメントを液中に浸漬することにより、スパ
イラル型膜エレメントの膜面に付着した汚染物質を剥離
させ、スパイラル型膜エレメントの膜機能を回復させる
ことが可能となる。それにより、スパイラル型膜モジュ
ールにおいて、信頼性が高く安定した運転を行うことが
可能となる。このような操作は、特に設備を必要とせず
容易に行うことができ、低コストでの実施が可能であ
る。
【0033】液は、殺菌作用または汚染物質剥離作用を
有する薬品を含んでもよい。これにより、スパイラル型
膜エレメントの膜面において繁殖した雑菌を殺菌するこ
とが可能になるか、またはスパイラル型膜エレメントの
膜面に付着した汚染物質をより効果的かつ確実に剥離さ
せることが可能となる。
【0034】分離膜は多孔性シート材の一面に透過性膜
体が接合されてなり、透過性膜体は多孔性シート材の一
面に投錨状態で接合されてなってもよい。このような分
離膜においては、多孔性シート材と透過性膜体との接合
が強化され、分離膜の背圧強度が向上する。それによ
り、0.05MPaよりも高く0.3MPa以下の背圧
でスパイラル型膜エレメントの分離膜の破損を生じるこ
となく十分に逆流洗浄することが可能となる。
【0035】特に、分離膜の背圧強度は0.2MPa以
上であることが好ましい。これにより、高い背圧での逆
流洗浄が可能となり、膜洗浄を十分に行うことによって
長期間安定した膜分離処理を行うことができる。
【0036】特に、多孔性シート材は合成樹脂からなる
織布、不織布、メッシュ状ネットまたは発泡焼結シート
からなることが好ましい。
【0037】さらに、多孔性シート材は、厚みが0.0
8mm以上0.15mm以下でかつ密度が0.5g/c
3 以上0.8g/cm3 以下の不織布からなることが
好ましい。
【0038】これにより、0.2MPa以上の背圧強度
を得るとともに、補強シートとしての強度を確保しつ
つ、透過抵抗の増大および透過性膜体の剥離を防止する
ことができる。
【0039】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施の形態にお
けるスパイラル型膜モジュールの例を示す模式的な断面
図である。
【0040】図1に示すように、スパイラル型膜モジュ
ール100は、圧力容器(耐圧容器)10内にスパイラ
ル型膜エレメント1が収納されてなる。圧力容器10
は、筒形ケース11および1対の端板12a,12bに
より構成される。一方の端板12aには原水入口13が
形成され、他方の端板12bには原水出口15が形成さ
れている。また、他方の端板12bの中央部には透過水
出口14が設けられている。なお、圧力容器の構造は図
1の構造に限定されず、後述するような筒形ケースに原
水入口および原水出口が設けられたサイドエントリ形状
の圧力容器を用いてもよい。
【0041】外周面の一端部近傍にパッキン17が取り
付けられたスパイラル型膜エレメント1を筒形ケース1
1内に装填し、筒形ケース11の両方の開口端をそれぞ
れ端板12a,12bで封止する。集水管5の一方の開
口端は端板12bの透過水出口14に嵌合され、他方の
開口端にはエンドキャップ16が装着される。圧力容器
10の内部空間は、パッキン17により第1の液室18
と第2の液室19とに分離される。
【0042】スパイラル型膜モジュール100の原水入
口13は、配管25を通して原水タンク500に接続さ
れている。配管25にはバルブ30aが介挿されてお
り、さらに、このバルブ30aの下流側に、バルブ30
bが介挿された配管26が接続されている。一方、原水
出口15には、バルブ30cが介挿された配管27が接
続されており、さらにバルブ30dが介挿された配管2
7aが配管27のバルブ30c上流側に接続されてい
る。この配管27aを介して原水出口15は原水タンク
500に接続される。透過水出口14には、バルブ30
eが介挿された配管28が接続されており、このバルブ
30eの上流側に、バルブ30fが介挿された配管29
が接続されている。
【0043】図5は、図1のスパイラル型膜モジュール
に用いられるスパイラル型膜エレメントの一部切欠き斜
視図である。
【0044】図5に示すように、スパイラル型膜エレメ
ント1は、合成樹脂のネットからなる透過水スペーサ3
の両面に分離膜2を重ね合わせて3辺を接着することに
より封筒状膜(袋状膜)4を形成し、その封筒状膜4の
開口部を集水管5に取り付け、合成樹脂のネットからな
る原水スペーサ6とともに集水管5の外周面にスパイラ
ル状に巻回することにより構成される。スパイラル型膜
エレメント1の外周面は外装材で被覆される。
【0045】このスパイラル型膜エレメント1において
は、後述する構造を有する分離膜2を用いることによ
り、0.05〜0.3MPaの背圧で逆流洗浄を行うこ
とが可能となる。
【0046】図2および図3は、本発明に係るスパイラ
ル型膜モジュールの運転方法の一例を示す模式的断面図
である。本例の運転方法においては図1のスパイラル型
膜モジュールを用いており、図2は濾過時の運転方法を
示し、図3は洗浄時の運転方法を示す。
【0047】図2に示すように、濾過時には、配管25
のバルブ30aおよび配管28のバルブ30eを開くと
ともに、配管26のバルブ30b、配管27のバルブ3
0c、配管27aのバルブ30dおよび配管29のバル
ブ30fを閉じる。
【0048】原水タンク500から取水された原水7
は、配管25を通して原水入口13から圧力容器10の
内部に供給される。スパイラル型膜モジュール内におい
て、供給された原水7は原水入口13から圧力容器10
の第1の液室18に導入され、さらに、スパイラル型膜
エレメント1の一端部からスパイラル型膜エレメント1
の内部に供給される。
【0049】図5に示すように、スパイラル型膜エレメ
ント1において、一方の端面側から供給された原水7
は、原水スペーサ6に沿って集水管5と平行な方向(軸
方向)に他方の端面側に向かって直線状に流れる。原水
7が原水スペーサ6に沿って流れる過程で、原水側と透
過水側の圧力差によって原水7の一部が分離膜2を透過
する。この透過水8が透過水スペーサ3に沿って集水管
5の内部に流れ込み、集水管5の端部から排出される。
一方、分離膜2を透過しなかった残りの原水7aは、ス
パイラル型膜エレメント1の他方の端面側から排出され
る。
【0050】集水管5の端部から排出された透過水8
は、図2に示すように、透過水出口14から配管28を
通して圧力容器10の外部へ取り出される。一方、スパ
イラル型膜エレメント1の他方の端面側から排出された
原水7aは、第2の液室19に導出される。この場合、
原水出口15に接続された配管27のバルブ30cおよ
び配管27aのバルブ30dを閉じているため、スパイ
ラル型膜エレメント1における分離膜2の透過が促進さ
れて全量濾過が行われる。
【0051】上記のような濾過過程で、原水中に含まれ
る懸濁物質、コロイド性物質または溶存性物質が汚染物
質としてスパイラル型膜エレメント1の分離膜2の膜面
に堆積する。特に、全量濾過においては分離膜2の膜面
に汚染物質が堆積しやすい。このような汚染物質の堆積
は水の透過速度の低下を引き起こすため、以下に示す洗
浄を行って汚染物質を除去する。
【0052】上記のスパイラル型膜モジュール100の
濾過運転時において、一旦配管25のバルブ30aを閉
じて原水7の供給を停止するとともに、透過水出口14
からの透過水8の取り出しを停止する。このように濾過
運転を一時停止し、圧力容器10内に原水7,7aおよ
び透過水8を封入した状態で所定時間保持する(液封入
停止)。このようにして、所定時間液封入停止を行った
後、再び配管25のバルブ30aを開いて原水7をスパ
イラル型膜エレメント1に供給するとともに、透過水出
口14から透過水8を取り出し、濾過運転を再開する。
なお、配管27のバルブ30cを開いて一部の原水7a
を取り出しつつ濾過運転を行う場合においては、配管2
5のバルブ30aにあわせて配管27のバルブ30cを
開閉する。
【0053】以上のように、スパイラル型膜モジュール
の運転期間においては、上記の濾過運転および液封入停
止を繰り返して行う。
【0054】濾過運転時に液封入停止されたスパイラル
型膜モジュール100においては、スパイラル型膜エレ
メント1の分離膜の原水側の圧力と透過水側の圧力とが
ほぼ大気圧に保持されており、原水側および透過水側に
おいて液の流れが形成されない。このような液封入停止
により、スパイラル型膜モジュールの連続濾過運転に伴
ってスパイラル型膜エレメント1の膜面に付着した汚染
物質を剥離させることができる。それにより、汚染物質
の付着により低下したスパイラル型膜エレメント1の膜
機能が回復する。
【0055】なお、上記のような濾過運転時における液
封入停止は定期的に行ってもよく、あるいは不定期的に
行ってもよい。不定期的に行う例として、例えば、スパ
イラル型膜モジュールにおいて透過水流量に低下が見ら
れた際に、液封入停止を行う。
【0056】次に、図3に示すように、洗浄時には、ま
ず配管25のバルブ30a、配管28のバルブ30eお
よび配管27aのバルブ30dを閉じるとともに、配管
26のバルブ30b、配管29のバルブ30fおよび配
管27のバルブ30cを開き、逆流洗浄を行う。
【0057】逆流洗浄時には、配管29および配管28
を通して洗浄水21が透過水出口14から集水管5の開
口端に供給され、洗浄水21が集水管5の内部に導入さ
れる。なお、洗浄水21としては、例えば透過水を用い
る。集水管5の内部に導入された洗浄水21は、集水管
5の外周面から分離膜2の内部へ導出され、濾過時と逆
方向に分離膜2を透過する。この際に、分離膜2の膜面
に堆積した汚染物質が分離膜2から剥離する。スパイラ
ル型膜エレメント1の外周面は外装材で被覆されている
ので、分離膜2を透過した洗浄水21は、原水スペーサ
6に沿ってスパイラル型膜エレメント1の内部を軸方向
に流れ、スパイラル型膜エレメント1の両端部から第1
の液室18および第2の液室19に排出される。さらに
洗浄水21は、原水入口13および原水出口15から配
管26および配管27を通してそれぞれ外部へ取り出さ
れる。
【0058】この場合、分離膜2に0.05〜0.3M
Paの背圧が加わるように透過水出口14側の圧力、原
水入口13側の圧力および原水出口15側の圧力を設定
する。それにより、短時間に必要量の洗浄水21を流す
ことができ、分離膜2の膜面に堆積した汚染物質を効果
的に剥離させることが可能になる。また、剥離した汚染
物質がスパイラル型膜エレメント1の端部から排出され
るまでの間に原水スペーサ6に捕捉されるのを抑制し、
汚染物質を効果的に除去することが可能となる。
【0059】なお、本例においては原水入口13から取
り出された洗浄水21の全量を排水として系外へ排出し
ているが、この洗浄水21の一部を排水として系外へ排
出するとともに、一部を原水7として再利用してもよ
い。例えば、配管26のバルブ30bの下流側にさらに
配管を設けるとともにこの配置を原水タンク500に接
続することにより、洗浄水21の一部を原水タンク50
0に戻してもよい。
【0060】また、本例においては原水出口15から取
り出された洗浄水21の全量を排水として系外へ排出し
ているが、この洗浄水21の一部を排水として系外へ排
出するとともに、一部を原水7として再利用してもよ
い。例えば、配管27のバルブ30cを開くとともに配
管27aのバルブ30dを開き、洗浄水21の一部を配
管27aを通して原水タンク500に戻してもよい。
【0061】また、図3の例では、逆流洗浄時にスパイ
ラル型膜エレメント1の両端部から洗浄水21が排出さ
れ、それぞれ原水入口13および原水出口15から配管
26および配管27を通して外部に取り出されている
が、洗浄水21がスパイラル型膜エレメント1の一端部
から第1の液室18に排出され、原水入口13から配管
26を通して外部に取り出されるように透過水出口14
側の圧力および原水入口13側の圧力を設定してもよ
い。この場合、配管27のバルブ30cを閉じ、原水出
口15を閉じておく。あるいは、洗浄水21がスパイラ
ル型膜エレメント1の他端部から第2の液室19に排出
され、原水出口15から配管27を通して外部に取り出
されるように透過水出口14側の圧力および原水出口1
5側の圧力を設定してもよい。この場合、配管26のバ
ルブ30bを閉じ、原水入口13を閉じておく。
【0062】上記の逆流洗浄時に液封入停止を行っても
よい。この場合、配管26のバルブ30bを閉じて洗浄
水21の排出を停止するとともに、集水管5への洗浄水
21の導入を停止し、圧力容器10内に洗浄水21を封
入した状態で所定時間保持する。このようにして、所定
時間液封入停止を行った後、配管26のバルブ30bを
開いて洗浄水21を排出するとともに、集水管5に洗浄
水21を導入し、逆流洗浄を再開する。
【0063】逆流洗浄時に液封入停止されたスパイラル
型膜モジュール100においては、スパイラル型膜エレ
メント1の分離膜の原水側の圧力と透過水側の圧力とが
ほぼ大気圧に保持されており、原水側および透過水側に
おいて液の流れが形成されない。このような液封入停止
により、スパイラル型膜エレメント1の膜面に付着した
汚染物質をより効果的に剥離させることが可能となる。
【0064】上記のようにして逆流洗浄を行った後、配
管26のバルブ30bおよび配管29のバルブ30fを
閉じるとともに配管25のバルブ30aを開く。それに
より、原水タンク500から取水された原水31が配管
25を通して原水入口13から圧力容器10内に供給さ
れ、第1の液室18に導入される。原水31は、スパイ
ラル型膜エレメント1の一端部から内部に供給され、原
水スペーサ6に沿ってスパイラル型膜エレメント1の内
部を軸方向に流れた後、他端部から排出される。それに
より、分離膜2から剥離した汚染物質が原水31ととも
にスパイラル型膜エレメント1の一端部から他端部へ押
し流され、スパイラル型膜エレメント1の内部に残存す
る洗浄水21とともにスパイラル型膜エレメント1の他
端部から第2の液室19に排出される。さらに、汚染物
質は原水31とともに原水出口15から配管27を通し
て圧力容器10の外部へ取り出される。
【0065】このように、逆流洗浄後に濾過時の原水の
供給方向と同方向に原水31を流すフラッシングを行う
ことにより、スパイラル型膜エレメント1内で分離膜2
から剥離した汚染物質を系外に速やかに排出することが
できる。それにより、分離膜2から剥離した汚染物質が
再び分離膜2に付着することを防止することができる。
【0066】上記のような洗浄時の運転方法によれば、
濾過時に分離膜2に堆積した汚染物質を効果的に除去す
ることが可能となるため、膜面に汚染物質が堆積しやす
い全量濾過においても、長期間にわたって透過流束の低
下を生じることなく安定して運転を行うことが可能とな
る。
【0067】なお、本例においては逆流洗浄後に原水3
1を軸方向に流すフラッシングを行っているが、逆流洗
浄前に原水31を軸方向に流すフラッシングを行っても
よい。この洗浄方法によれば、スパイラル型膜エレメン
ト1の膜面に捕捉された汚染物質のほとんどがフラッシ
ングにより除去され、さらに洗浄水21を導入すること
により、スパイラル型膜エレメント1の膜面に残存する
汚染物質を除去することができる。したがって、この場
合においても、上記の逆流洗浄と同様の効果が得られ
る。
【0068】あるいは、逆流洗浄と並行して原水31を
軸方向に流すフラッシングを行ってもよい。例えば上記
において、洗浄時に配管25,26,27,29のバル
ブ30a,30b,30c,30fを同時に開き、透過
側から洗浄水21を供給するとともに原水側から原水3
1を供給してもよい。この場合、上記のように逆流洗浄
後に原水31を流す場合に得られる効果と同様の効果が
得られる。
【0069】また、本例においては原水31を原水入口
13から供給して原水出口15から取り出しているが、
原水を原水出口15から供給して原水入口13から取り
出し、スパイラル型膜エレメント1の内部において濾過
時の原水の供給方向と逆方向に原水を流してもよい。こ
の場合、上記のように濾過時の原水の供給方向と同方向
に原水31を流す場合に得られる効果と同様の効果が得
られる。
【0070】なお、濾過時の原水の供給方向と同方向に
原水を流す場合においては、特にスパイラル型膜エレメ
ント1の第2の液室19に近い側に堆積した汚染物質を
容易に除去して排出することが可能である。これに対
し、濾過時の原水の供給方向と逆方向に原水を流す場合
においては、特にスパイラル型膜エレメント1の第1の
液室18に近い側に堆積した汚染物質を容易に除去して
排出することが可能である。
【0071】また、濾過時の原水の供給方向と同方向お
よび逆方向に順に原水を流してもよい。この場合、スパ
イラル型膜エレメント1の全体に分布した汚染物質を均
一に除去して排出することが可能となる。
【0072】また、本例においては原水出口15から取
り出された原水31の全量を排水として系外へ排出して
いるが、原水31の一部を排水として系外へ排出すると
ともに、一部を原水として再利用してもよい。例えば上
記において、配管27のバルブ30cを開くとともに配
管27aのバルブ30dを開き、原水31の一部を配管
27aを通して原水タンク500に戻してもよい。
【0073】以上のように、図2および図3に示す本例
の運転方法によれば、スパイラル型膜エレメント1の膜
面に堆積した汚染物質を充分に除去することができるた
め、図1のスパイラル型膜モジュール100において高
い透過流束を維持しつつ安定して全量濾過を行い、効率
よく透過水8を得ることが可能となる。この場合、全量
濾過が行われるので、原水7を供給するポンプに大きな
ものを用いる必要がなく、システムの規模を小さくする
ことが可能となる。それにより、システムコストが低減
される。
【0074】上記のように、濾過運転時または逆流洗浄
時においてスパイラル型膜モジュール100の液封入停
止を行うことにより、スパイラル型膜エレメント1の膜
面に付着した汚染物質を剥離させ、より信頼性が高く安
定した運転を行うことが可能となる。このような液封入
停止は、配管25,26のバルブ30a,30bの開閉
操作等により行うことができるため、特に設備を必要と
せず、操作が容易である。また、洗浄用薬品を含まない
液を用いて汚染物質を剥離させることができるため、洗
浄用薬品にかかるコストを削減でき、低コストでの実施
が可能である。
【0075】ここで、上記のスパイラル型膜モジュール
100の濾過運転時または逆流洗浄時において液封入停
止を行う時間は1分以上24時間以下とすることが好ま
しい。液封入停止が1分未満の場合、封入する時間が短
いため、スパイラル型膜エレメント1の膜面から汚染物
質を充分に剥離させることができない。また、液封入停
止が24時間を超える場合、汚染物質の剥離効果がある
程度を超えると向上しなくなるとともに、本来の目的の
濾過運転時間が圧縮されるので適切でない。さらに、液
の滞溜により雑菌等が繁殖するので好ましくない。
【0076】また、上記のスパイラル型膜モジュール1
00の濾過運転時および逆流洗浄時における液封入停止
において、圧力容器10内に封入する液は原水または透
過水に限定されるものではない。原水または透過水以外
の液、例えば、純水を封入してもよい。この場合、濾過
運転時および逆流洗浄時において圧力容器10内に純水
を供給し、この純水を圧力容器10内に封入する。この
ように純水を封入した場合においても、原水または透過
水を封入した場合と同様、汚染物質をスパイラル型膜エ
レメント1の膜面から剥離させることができる。
【0077】上記のスパイラル型膜モジュール100で
は、濾過運転中に液封入停止を行い、または逆流洗浄中
に液封入停止を行っているが、液封入停止を行う時期は
特に限定されるものではなく、運転期間中の上記以外の
時期に行ってもよい。
【0078】例えば、濾過運転後に液封入停止を行い、
その直後に逆流洗浄を行ってもよい。あるいは、濾過運
転後に液封入停止を行い、液封入停止後に原水によるフ
ラッシングを行い、その後に濾過運転を再開してもよ
い。なお、フラッシングについては、逆流洗浄時におい
て前述した方法と同様の方法により行う。また、逆流洗
浄後に液封入停止を行い、その直後に濾過運転を再開し
てもよい。
【0079】あるいは、濾過運転時または逆流洗浄時に
おいて液封入停止を行った後、さらに薬品を含む原水ま
たは透過水をスパイラル型膜モジュール100に供給
し、スパイラル型膜エレメント1を薬品を含む液に浸漬
(薬液浸漬)してもよい。この場合、殺菌作用または汚
染物質剥離作用を有する薬品、例えば濃度10〜100
00ppmの次亜塩素酸ナトリウム、濃度0.1〜10
ppmのクロラミン、濃度10〜10000ppmの過
酸化水素,pH1〜3の硫酸、pH1〜3の塩酸、pH
10〜13の水酸化ナトリウム、濃度10〜10000
ppmの過酢酸、濃度0.1〜50%のイソプロピルア
ルコール、濃度0.2〜2%のクエン酸または濃度0.
2〜2%のシュウ酸を用いる。このようなスパイラル型
膜エレメント1の薬液浸漬により、スパイラル型膜モジ
ュール100内、特にスパイラル型膜エレメント1の膜
面に付着した汚染物質をより効果的に剥離させることが
可能になるとともに、雑菌の繁殖をより効果的に抑制す
ることが可能となる。このような薬液浸漬を行った後、
濾過運転または逆流洗浄を行う。
【0080】図4は本発明に係るスパイラル型膜モジュ
ールの運転方法の他の例を示す模式的断面図である。図
4は濾過時の運転方法を示しており、本例においても図
1のスパイラル型膜モジュール100を用いる。なお、
本例における洗浄時の運転方法は、前述の図3の運転方
法と同様である。
【0081】図4に示すように、濾過時には、配管25
のバルブ30a、配管28のバルブ30eおよび配管2
7aのバルブ30dを開くとともに、配管26のバルブ
30b、配管27のバルブ30cおよび配管29のバル
ブ30fを閉じる。
【0082】この場合、図2の例と同様、原水タンク5
00から取水された原水7は、配管25を通して原水入
口13から圧力容器10の第1の液室18に導入され
る。さらに、原水7はスパイラル型膜エレメント1の一
端部からスパイラル型膜エレメント1の内部に供給され
る。
【0083】図5に示すように、スパイラル型膜エレメ
ント1において、一部の原水は分離膜2を透過して集水
管5の内部に流れ込み、透過水8として集水管5の端部
から排出される。一方、分離膜2を透過しなかった残り
の原水7aは、スパイラル型膜エレメント1の他方の端
面側から排出される。
【0084】集水管5の端部から排出された透過水8
は、図4に示すように、透過水出口14から配管28を
通して圧力容器10の外部へ取り出される。一方、スパ
イラル型膜エレメント1の他方の端面側から排出された
原水7aは、第2の液室19に導出された後、原水出口
15から配管27aを通して外部へ取り出され、原水タ
ンク500に戻される。このように、本例においては、
一部の原水7aを原水出口15から外部に取り出しつつ
スパイラル型膜モジュールにおいて濾過を行う。それに
より、スパイラル型膜エレメント1の外周面と圧力容器
10の内周面との間の空隙における液の滞溜を抑制する
ことが可能になる。また、スパイラル型膜エレメント1
の内部において、一端部から他端部に向かう軸方向の原
水の流れが形成されるため、原水中の汚染物質の沈降を
抑制しつつ、汚染物質の一部を原水7aとともに圧力容
器10の外部に排出することが可能となる。
【0085】なお、上記においては常時バルブ30dを
開いて原水7aを外部に取り出しているが、間欠的にバ
ルブ30dを開いて原水7aを取り出してもよい。この
場合においても、常時原水7aを取り出す場合と同様、
分離膜2に汚染物質が付着するのを抑制することが可能
となる。
【0086】また、上記においては圧力容器の外部に取
り出した原水7aの全量を原水タンク500に戻してい
るが、取り出した原水7aの一部を系外へ排出してもよ
い。例えば、バルブ30dを開くとともにバルブ30c
を開き、配管27を通して原水7aの一部を系外へ排出
してもよい。
【0087】本例においても、洗浄時には、図3に示す
洗浄時の運転方法により高い背圧で逆流洗浄を行うとと
もに原水31の導入を行う。それにより、濾過時に分離
膜2に堆積した汚染物質を効果的に除去することが可能
となる。
【0088】以上のように、本例における運転方法によ
れば、膜面に堆積した汚染物質の除去を充分に行うこと
ができるため、長期間にわたって透過流束の低下を生じ
ることなく安定して運転を行うことが可能となる。
【0089】特に、本例においては、図4に示すように
濾過時に一部の原水7aを圧力容器10の外部に取り出
すことにより、原水中の汚染物質の膜面への沈降を抑制
しつつ汚染物質の一部を原水7aとともに圧力容器10
の外部に排出することが可能となるため、より安定した
濾過運転を行うことが可能となる。この場合、原水出口
15から外部へ取り出した原水7aを配管27aを通し
て循環させるため、高い回収率で透過水8を得ることが
可能である。また、原水7を供給するポンプに大きなも
のを用いる必要がなく、システムの規模を小さくするこ
とが可能となる。それにより、システムコストが低減さ
れる。
【0090】また、この場合においても、図2において
前述したように、スパイラル型膜モジュール100の濾
過運転時に液封入停止を行う。それにより、スパイラル
型膜モジュール100の連続濾過運転に伴ってスパイラ
ル型膜エレメント1の膜面に付着した汚染物質を剥離さ
せることができ、汚染物質の付着により低下したスパイ
ラル型膜エレメント1の膜機能を回復させることができ
る。
【0091】運転期間中に一定時間濾過運転を行った
後、図3において前述した洗浄方法と同様の方法によ
り、スパイラル型膜エレメント1の逆流洗浄を行う。
【0092】上記の逆流洗浄時においても、図3におい
て前述したように、洗浄水21を用いて液封入停止を行
ってもよい。それにより、スパイラル型膜エレメント1
の膜面に付着した汚染物質をより効果的に剥離させるこ
とが可能となる。
【0093】上記のように、濾過運転時または逆流洗浄
時においてスパイラル型膜モジュールの液封入停止を行
うことにより、スパイラル型膜エレメント1の膜面に付
着した汚染物質を剥離させ、より信頼性が高く安定した
運転を行うことが可能となる。このような液封入停止
は、配管25,26のバルブ30a,30b(図4)の
開閉操作等により行うことができるため、特に設備を必
要とせず、操作が容易である。また、洗浄用薬品を含ま
ない液を用いて汚染物質を剥離させることができるた
め、洗浄用薬品にかかるコストを削減でき、低コストで
の実施が可能である。なお、濾過運転時または逆流洗浄
時における液封入停止の時間、液封入停止を行うタイミ
ングおよび封入する液に関しては、図2および図3にお
いて前述した通りである。
【0094】なお、上記においては、1本のスパイラル
型膜エレメントを備えたスパイラル型膜モジュールの運
転を行う場合について説明したが、本発明に係る運転方
法は、複数のスパイラル型膜エレメントを備えたスパイ
ラル型膜モジュールにおいても適用可能である。
【0095】図6は本発明に係るスパイラル型膜モジュ
ールの運転方法のさらに他の例を示す模式的断面図であ
る。
【0096】図6に示すように、本例のスパイラル型膜
モジュール100は、圧力容器110内に複数のスパイ
ラル型膜エレメント1が収容されてなる。圧力容器11
0は、筒形ケース111および1対の端板120a,1
20bにより構成される。筒形ケース111の底部には
原水入口130が形成され、上部には原水出口131が
形成されている。このように、圧力容器110はサイド
エントリ形状を有する。原水出口131はエアー抜きに
も用いられる。また、端板120a,120bの中央部
には透過水出口140が設けられている。
【0097】インターコネクタ116により集水管5が
直列に連結された複数のスパイラル型膜エレメント1が
筒形ケース111内に収容され、筒形ケース111の両
方の開口端がそれぞれ端板120a,120bで封止さ
れる。なお、ここでは図5のスパイラル型膜エレメント
1を用いている。両端部のスパイラル型膜エレメント1
の集水管5の一端部が、アダプタ115を介してそれぞ
れ端板120a,120bの透過水出口140に嵌合さ
れる。各スパイラル型膜エレメント1の外周面の一端部
近傍にはパッキン170が取り付けられており、このパ
ッキン170により、圧力容器110の内部空間が複数
の液室に分離される。
【0098】スパイラル型膜モジュール100の原水入
口130は、配管55を通して原水タンク500に接続
されている。配管55にはバルブ60aが介挿されてお
り、さらに、このバルブ30aの下流側にバルブ60b
が介挿された配管56が接続されている。一方、原水出
口131には、バルブ60cが介挿された配管57が接
続されており、さらに、バルブ60dが介挿された配管
57aが配管57のバルブ60c上流側に接続されてい
る。この配管57aを介して原水出口131は原水タン
ク500に接続されている。端板120a側の透過水出
口140には、バルブ60eが介挿された配管58aが
接続されており、このバルブ60eの上流側に、バルブ
60gが介挿された配管59aが接続されている。一
方、端板120b側の透過水出口140には、バルブ6
0fが介挿された配管58bが接続されており、このバ
ルブ60fの上流側に、バルブ60hが介挿された配管
59bが接続されている。
【0099】スパイラル型膜モジュール100の濾過時
には、配管55のバルブ60a、配管58aのバルブ6
0eおよび配管58bのバルブ60fを開くとともに、
配管56のバルブ60b、配管59aのバルブ60g、
配管59bのバルブ60h、配管57のバルブ60cお
よび配管57aのバルブ60dを閉じる。
【0100】原水タンク500から取水された原水7
は、配管55を通して原水入口130から圧力容器11
0の内部に供給される。スパイラル型膜モジュール10
0内において、原水入口130から供給された原水7
は、端板120a側の端部に位置するスパイラル型膜エ
レメント1の一方の端面側からスパイラル型膜エレメン
ト1の内部に導入される。このスパイラル型膜エレメン
ト1においては、図5に示すように、一部の原水は分離
膜2を透過して集水管5の内部に流れ込み、透過水8と
して集水管5の端部から排出される。一方、分離膜2を
透過しなかった残りの原水7aは、他方の端面側から排
出される。この排出された原水7aは、後段のスパイラ
ル型膜エレメント1の一方の端面側からこのスパイラル
型膜エレメント1の内部に導入され、前述と同様にして
透過水8および原水7aに分離される。このように、直
列に連結された複数のスパイラル型膜エレメント1の各
々において膜分離が行われる。この場合、配管57のバ
ルブ60cおよび配管57aのバルブ60dを閉じてい
るため、図2の例と同様、各スパイラル型膜エレメント
1において分離膜2の透過が促進されてスパイラル型膜
モジュールにおいて全量濾過が行われる。
【0101】上記のスパイラル型膜モジュール100の
濾過運転時において、一旦原水7の供給を停止するとと
もに、透過水出口140からの透過水8の取り出しを停
止する。このように濾過運転を一時停止し、圧力容器1
10内に原水7および透過水8を封入した状態で所定時
間保持する。このようにして所定時間液封入停止を行っ
た後、再び原水7を供給するとともに、透過水出口14
0から透過水8を取り出し、濾過運転を再開する。
【0102】以上のように、図6のスパイラル型膜モジ
ュール100の運転期間においては、図2および図3に
示すスパイラル型膜モジュール100の運転方法と同
様、濾過運転および液封入停止を繰り返して行う。
【0103】濾過運転時に液封入停止されたスパイラル
型膜モジュール100においては、各スパイラル型膜エ
レメント1において、分離膜の原水側の圧力と透過水側
の圧力とが大気圧に保持されており、原水側および透過
水側において液の流れが形成されない。このような液封
入停止により、スパイラル型膜モジュール100の連続
濾過運転に伴って各スパイラル型膜エレメント1の膜面
に付着した汚染物質を剥離させることができる。それに
より、汚染物質の付着により低下した各スパイラル型膜
エレメント1の膜機能が回復する。
【0104】上記の濾過過程で、原水中に含まれる汚染
物質が各スパイラル型膜エレメント1の分離膜2の膜面
に堆積する。特に、上記のように複数のスパイラル型膜
エレメント1を備えたスパイラル型膜モジュール100
において全量濾過を行うと、分離膜2の膜面に汚染物質
が堆積しやすい。このような汚染物質の堆積は水の透過
速度の低下を引き起こすため、以下に示す洗浄を行って
汚染物質を除去する。
【0105】洗浄時には、まず配管55のバルブ60
a、配管58aのバルブ60e、配管58bのバルブ6
0fおよび配管57aのバルブ60dを閉じるととも
に、配管56のバルブ60b、配管57のバルブ60
c、配管59aのバルブ60gおよび配管59bのバル
ブ60hを開き、逆流洗浄を行う。
【0106】逆流洗浄時、端板120a側においては、
配管59aおよび配管58aを通して洗浄水21が透過
水出口140から集水管5の一端部に供給される。ま
た、端板120b側においては、配管59bおよび配管
58bを通して洗浄水21が透過水出口140から集水
管5の他端部に供給される。このようにして、洗浄水2
1が集水管5の両端部から集水管5の内部に導入され
る。集水管5の内部に導入された洗浄水21は、各スパ
イラル型膜エレメント1において集水管5の外周面から
分離膜2の内部へ導出され、濾過時と逆方向に分離膜2
を透過する。この際に、分離膜2の膜面に堆積した汚染
物質が分離膜2から剥離する。分離膜2を透過した洗浄
水21は、原水スペーサ6に沿ってスパイラル型膜エレ
メント1の内部を軸方向に流れ、各スパイラル型膜エレ
メント1の両端部から排出される。この排出された洗浄
水21は、原水入口130および原水出口131から配
管56および配管57を通してそれぞれ外部へ取り出さ
れる。
【0107】この場合、各スパイラル型膜エレメント1
の分離膜2に0.05〜0.3MPaの背圧が加わるよ
うに透過水出口140側の圧力、原水入口130側の圧
力および原水出口131側の圧力を設定する。それによ
り、短時間に必要量の洗浄水21を流すことができ、分
離膜2の膜面に堆積した汚染物質を効果的に剥離させる
ことが可能になる。また、剥離した汚染物質が各スパイ
ラル型膜エレメント1の端部から排出されるまでの間に
原水スペーサ6に捕捉されるのを抑制し、汚染物質を効
果的に除去することが可能となる。
【0108】なお、本例においては原水入口130から
取り出された洗浄水21の全量を排水として系外へ排出
しているが、この洗浄水21の一部を排水として系外へ
排出するとともに、一部を原水7として再利用してもよ
い。例えば配管56のバルブ60bの下流側にさらに配
管を設けるとともにこの配置を原水タンク500に接続
することにより、洗浄水21の一部を原水タンク500
に戻してもよい。
【0109】また、本例においては原水出口131から
取り出された洗浄水21の全量を排水として系外へ排出
しているが、この洗浄水21の一部を排水として系外へ
排出するとともに、一部を原水7として再利用してもよ
い。例えば配管57のバルブ60cを開くとともに配管
57aのバルブ60dを開き、洗浄水21の一部を配管
57aを通して原水タンク500に戻してもよい。
【0110】また、図6の例では、逆流洗浄時に、洗浄
水21が原水入口130および原水出口131から配管
56および配管57を通して外部に取り出されている
が、洗浄水21が原水入口130から配管56を通して
外部に取り出されるように透過水出口140側の圧力お
よび原水入口130側の圧力を設定してもよい。この場
合、配管57のバルブ60cを閉じ、原水出口131を
閉じておく。あるいは、洗浄水21が原水出口131か
ら配管57を通して外部に取り出されるように透過水出
口140側の圧力および原水出口131側の圧力を設定
してもよい。この場合、配管56のバルブ60bを閉
じ、原水入口130を閉じておく。
【0111】上記の逆流洗浄時に液封入停止を行っても
よい。この場合、集水管5への洗浄水21の導入を停止
するとともに、洗浄水21の外部への排出を停止し、圧
力容器110内に洗浄水21を封入した状態で所定時間
保持する。このようにして所定時間液封入停止を行った
後、再び集水管5に洗浄水21を導入するとともに、洗
浄水21を外部へ排出させ、逆流洗浄を再開する。
【0112】逆流洗浄時に液封入停止されたスパイラル
型膜モジュール100の各スパイラル型膜エレメント1
においては、分離膜の原水側の圧力と透過水側の圧力と
がほぼ大気圧に保持されており、原水側および透過水側
において液の流れが形成されない。このような液封入停
止により、スパイラル型膜エレメント1の膜面に付着し
た汚染物質をより効果的に剥離させることが可能とな
る。
【0113】上記のようにして逆流洗浄を行った後、配
管56のバルブ60b、配管59aのバルブ60gおよ
び配管59bのバルブ60hを閉じるとともに、配管5
5のバルブ60aを開く。それにより、原水タンク50
0から取水された原水31が配管55を通して原水入口
130から圧力容器110内に供給される。各スパイラ
ル型膜エレメント1において、原水31はスパイラル型
膜エレメント1の一端部から内部に導入され、原水スペ
ーサ6に沿ってスパイラル型膜エレメント1の内部を軸
方向に流れた後に他端部から排出される。それにより、
分離膜2から剥離した汚染物質が原水31によりスパイ
ラル型膜エレメント1の一端部から他端部へ押し流さ
れ、スパイラル型膜エレメント1の内部に残存する洗浄
水21とともにスパイラル型膜エレメント1の他端部か
ら排出される。さらに、汚染物質および洗浄水21は原
水31とともに原水出口131から配管57を通して圧
力容器110の外部へ取り出される。
【0114】このように、逆流洗浄後に濾過時の原水の
供給方向と同方向に原水31を流すフラッシングを行う
ことにより、各スパイラル型膜エレメント1内で分離膜
2から剥離した汚染物質を系外に速やかに排出すること
ができる。それにより、分離膜2から剥離した汚染物質
が再び分離膜2に付着することを防止することができ
る。
【0115】なお、本例においては逆流洗浄後に原水3
1を軸方向に流すフラッシングを行っているが、逆流洗
浄前に原水31を軸方向に流すフラッシングを行っても
よい。この洗浄方法によれば、スパイラル型膜エレメン
ト1の膜面に捕捉された汚染物質のほとんどがフラッシ
ングにより除去され、さらに洗浄水21を導入すること
により、スパイラル型膜エレメント1の膜面に残存する
汚染物質を除去することができる。したがって、この場
合においても、上記の逆流洗浄と同様の効果が得られ
る。
【0116】あるいは、逆流洗浄と並行して原水31を
軸方向に流してもよい。例えば上記において、洗浄時に
配管55,56,57,59a,59bのバルブ60
a,60b,60c,60g,60hを同時に開き、透
過側から洗浄水21を供給するとともに原水側から原水
31を供給してもよい。この場合、上記のように逆流洗
浄後に原水31を流す場合に得られる効果と同様の効果
が得られる。
【0117】また、本例においては原水31を原水入口
130から供給して原水出口131から取り出している
が、原水を原水出口131から供給して原水入口130
から取り出し、各スパイラル型膜エレメント1の内部に
おいて濾過時の原水の供給方向と逆方向に原水を流して
もよい。この場合、上記のように濾過時の原水の供給方
向と同方向に原水31を流す場合に得られる効果と同様
の効果が得られる。あるいは、濾過時の原水の供給方向
と同方向および逆方向に順に原水を流してもよい。この
場合、スパイラル型膜エレメント1の全体に分布した汚
染物質を均一に除去して排出することが可能となる。
【0118】また、本例においては原水出口131から
取り出された原水31の全量を排水として系外へ排出し
ているが、この原水31の一部を排水として系外へ排出
するとともに、一部を原水7として再利用してもよい。
例えば上記において、配管57のバルブ60cを開くと
ともに配管57aのバルブ60dを開き、原水31の一
部を配管57aを通して原水タンク500に戻してもよ
い。
【0119】上記のような洗浄時における運転方法によ
れば、濾過時に分離膜2に堆積した汚染物質を効果的に
除去することが可能となる。
【0120】以上のように、本例における運転方法によ
れば、膜面に堆積した汚染物質の除去を充分に行うこと
ができるため、汚染物質が膜面に堆積しやすい全量濾過
においても高い透過流束を維持しつつ安定して運転を行
い、効率よく透過水8を得ることが可能となる。この場
合、全量濾過が行われるので、原水7を供給するポンプ
に大きなものを用いる必要がなく、システムの規模を小
さくすることが可能となる。それにより、システムコス
トが低減される。
【0121】なお、上記においては、図6のスパイラル
型膜モジュール100を用いて図2の例のように全量濾
過を行う場合について説明したが、図6のスパイラル型
膜モジュール100を用いて図4の例のように一部の原
水7aを圧力容器110の外部に取り出しつつ濾過を行
ってもよい。
【0122】例えば、図6のスパイラル型膜モジュール
の濾過時において、常時または間欠的に配管57aのバ
ルブ60dを開き、圧力容器110内に供給された原水
7のうちスパイラル型膜エレメント1の分離膜2を透過
しなかった一部の原水7aを原水出口131から配管5
7aを通して圧力容器110の外部に取り出し、原水タ
ンク500に戻してもよい。それにより、各スパイラル
型膜エレメント1の外周部と圧力容器110の内周面と
の間の空隙における液の滞溜を抑制することが可能にな
る。また、各スパイラル型膜エレメント1の内部におい
て、一端部から他端部に向かう軸方向の原水の流れが形
成されるため、原水中の汚染物質の沈降を抑制しつつ汚
染物質の一部を原水7aとともに圧力容器の外部に排出
することが可能となる。
【0123】このような原水の一部を取り出しつつ濾過
を行う運転方法によれば、長時間にわたって透過流束の
低下を生じることなく、より安定して運転を行うことが
可能となる。この場合、外部へ取り出した原水7aを配
管57aを通して循環させるため、高い回収率で透過水
8を得ることが可能である。また、原水7を供給するポ
ンプに大きなものを用いる必要がなく、システムの規模
を小さくすることが可能となる。それにより、システム
コストが低減される。
【0124】また、濾過運転時または逆流洗浄時におい
てスパイラル型膜モジュール100の液封入停止を行う
ことにより、各スパイラル型膜エレメント1の膜面に付
着した汚染物質を剥離させ、より信頼性が高く安定した
運転を行うことが可能となる。なお、この場合の濾過運
転時または洗浄時における液封入停止のタイミング、液
封入停止を行う時間および封入する液に関しては、図2
および図3において前述した通りである。このような液
封入停止は、特に設備を必要とせず、また、操作が容易
である。さらに、洗浄用薬品を含まない液を用いて汚染
物質を剥離させることができるため、洗浄用薬品にかか
るコストを削減でき、低コストでの実施が可能である。
【0125】図7は、図5のスパイラル型膜エレメント
に用いられる分離膜の断面図である。分離膜2は、多孔
性補強シート(多孔性シート材)2aの表面に実質的な
分離機能を有する透過性膜体2bが密着一体化されて形
成されている。
【0126】透過性膜体2bは、1種類のポリスルホン
系樹脂、あるいは2種類以上のポリスルホン系樹脂の混
合物、さらにはポリスルホン系樹脂とポリイミド、フッ
素含有ポリイミド樹脂等のポリマーとの共重合体、もし
くは混合物から形成される。
【0127】多孔性補強シート2aは、ポリエステル、
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド等を素材と
する織布、不織布、メッシュ状ネット、発泡焼結シート
等から形成されており、製膜性およびコストの面から不
織布が好ましい。
【0128】多孔性補強シート2aおよび透過性膜体2
bは、透過性膜体2bを構成する樹脂成分の一部が多孔
性補強シート2aの孔の内部に充填された投錨状態で接
合されている。
【0129】多孔性補強シート2aに裏打ちされた分離
膜2の背圧強度は、0.2MPaを超え、0.4〜0.
5MPa程度に向上した。なお、背圧強度の規定方法に
ついては後述する。
【0130】多孔性補強シート2aとして不織布を用い
て背圧強度を0.2MPa以上得るためには、不織布の
厚みが0.08〜0.15mmであり、かつ密度が0.
5〜0.8g/cm3 であることが好ましい。厚みが
0.08mmより薄い場合または密度が0.5g/cm
3 より小さい場合には、補強シートとしての強度が得ら
れず、分離膜2の背圧強度を0.2MPa以上確保する
ことが困難である。一方、厚みが0.15mmより厚く
あるいは密度が0.8g/cm3 より大きい場合には、
多孔性補強シート2aの濾過抵抗が大きくなったり、不
織布(多孔性補強シート2a)への投錨効果が小さくな
って透過性膜体2bと不織布との界面で剥離が起こりや
すくなる。
【0131】次に、上記の分離膜2の製造方法について
説明する。まず、ポリスルホンに溶媒、非溶媒および膨
潤剤を加えて加熱溶解し、均一な製膜溶液を調製する。
ここで、ポリスルホン系樹脂は、下記の構造式(化1)
に示すように、分子構造内に少なくとも1つの(−SO
2 −)部位を有するものであれば特に限定されない。
【0132】
【化1】
【0133】ただし、Rは2価の芳香族、脂環族もしく
は脂肪族炭化水素基、またはこれらの炭化水素基が2価
の有機結合基で結合された2価の有機基を示す。
【0134】好ましくは、下記の構造式(化2)〜(化
4)で示されるポリスルホンが用いられる。
【0135】
【化2】
【0136】
【化3】
【0137】
【化4】
【0138】また、ポリスルホンの溶媒としては、N−
メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメ
チルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を用いるこ
とが好ましい。さらに、非溶媒としては、エチレングリ
コール、ジエチレングリコール、プロピレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、グリセリン等の脂肪族多
価アルコール、メタノール、エタノール、イソプロピル
アルコール等の低級脂肪族アルコール、メチルエチルケ
トン等の低級脂肪族ケトンなどを用いることが好まし
い。
【0139】溶媒と非溶媒の混合溶媒中の非溶媒の含有
量は、得られる混合溶媒が均一である限り特に制限され
ないが、通常5〜50重量%、好ましくは20〜45重
量%である。
【0140】多孔質構造の形成を促進し、または制御す
るために用いられる膨潤剤としては、塩化リチウム、塩
化ナトリウム、硝酸リチウム等の金属塩、ポリエチレン
グリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリ
ドン、ポリアクリル酸等の水溶性高分子またはその金属
塩、ホルムアミド等が用いられる。混合溶媒中の膨潤剤
の含有量は、製膜溶液が均一である限り特に制限されな
いが、通常1〜50重量%である。
【0141】製膜溶液中のポリスルホンの濃度は、通常
10〜30重量%が好ましい。30重量%を超えるとき
は、得られる多孔質分離膜の透水性が実用性に乏しくな
り、10重量%より少ないときは、得られる多孔質分離
膜の機械的強度が乏しくなり、充分な背圧強度を得るこ
とができない。
【0142】次に、上記の製膜溶液を不織布支持体上に
製膜する。すなわち、連続製膜装置を使用し、不織布等
の支持体シートを順次送り出し、その表面に製膜溶液を
塗布する。塗布方法としてはナイフコータやロールコー
タ等のギャップコータを用いて製膜溶液を不織布支持体
上に塗布する。例えば、ロールコータを使用する場合
は、2本のロールの間に製膜溶液を溜め、不織布支持体
上に製膜溶液を塗布すると同時に不織布の内部に充分含
浸させ、その後低湿度雰囲気を通過させ、雰囲気中の微
量水分を不織布上に塗布した液膜表面に吸収させ、液膜
の表面層にミクロ相分離を起こさせる。その後、凝固水
槽に浸漬し、液膜全体を相分離および凝固させ、さらに
水洗槽で溶媒を洗浄除去する。これにより、分離膜2が
形成される。
【0143】このように、上記の分離膜2は背圧強度が
高いため、図1および図6のスパイラル型膜エレメント
1に用いた場合に0.05〜0.3MPaの背圧で逆流
洗浄を行っても分離膜2の破損が生じることが防止され
る。
【0144】
【実施例】以下の実施例1、実施例2および比較例にお
いては、図7に示す構造を有する限外濾過膜を分離膜2
として含むスパイラル型限外濾過膜エレメントを作製
し、このスパイラル型限外濾過膜エレメントを備えた図
1のスパイラル型膜モジュールを用いて連続通水濾過試
験を行った。
【0145】ここで、実施例1、実施例2および比較例
のスパイラル型限外濾過膜エレメントに用いた限外濾過
膜は、以下のようにして作製した。
【0146】まずポリスルホン(アモコ社製、P−35
00)を16.5重量部、N−メチル−2ピロリドンを
50重量部、ジエチレングリコールを24.5重量部お
よびホルムアミドを1重量部で加熱溶解し、均一な製膜
溶液を得た。そして、コータギャップを0.13mmに
調整したロールコータを用いて厚み0.1mm、密度
0.8g/cm3 のポリエステル製不織布の表面に製膜
溶液を含浸塗布した。
【0147】その後、相対湿度が25%、温度が30℃
の雰囲気(低湿度雰囲気)中を所定の速度で通過させ、
ミクロ相分離を生じさせた後、35℃の凝固水槽中に浸
漬して脱溶媒および凝固させ、しかる後、水洗槽で残存
溶媒を洗浄除去することにより分離膜2を得た。ここ
で、実施例1および実施例2の分離膜2は、ミクロ相分
離時間(低湿度雰囲気を通過する時間)が4.5秒であ
る。
【0148】上記のようにして作製した限外濾過膜の透
水量は1700L/m2 ・hrであり、背圧強度は0.
3MPaであり、平均分子量100万のポリエチレンオ
キサイドの阻止率は99%であった。
【0149】なお、背圧強度は直径47mmの膜を背圧
強度ホルダ(有孔直径23mm)にセットし、多孔性補
強シート2a側より水圧を徐々に加え、透過性膜体2b
が多孔性補強シート2aから剥離するか、または透過性
膜体2bと多孔性補強シート2aとが同時に破裂すると
きの圧力で規定される。
【0150】また、ポリエチレンオキサイドの阻止率
は、濃度500ppmのポリエチレンオキサイド溶液を
圧力1kgf/cm2 にて透過させ、原液および透過液
の濃度から下式により求めた。
【0151】阻止率(%)[1−(透過液濃度/原液濃
度)]×100 このようにして作製した限外濾過膜を備えたスパイラル
型膜モジュールの連続通水濾過試験について、以下で説
明する。
【0152】実施例1、実施例2および比較例で用いた
スパイラル型限外濾過膜エレメントの仕様を表1に示
す。
【0153】
【表1】
【0154】[実施例1]実施例1では、工業用水(p
H6〜8、水温15〜30℃)を原水としてスパイラル
型限外濾過膜エレメントに供給し、連続通水濾過実験を
行った。3日に1回濾過を停止し、逆流洗浄後に逆流洗
浄に用いた洗浄液中に1時間浸漬した。逆流洗浄では、
洗浄液として透過水を用い、0.2MPaの背圧で60
L/分の洗浄液を供給した。運転条件を表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】[実施例2]実施例2では、実施例1と同
様に、工業用水(pH6〜8、水温15〜30℃)を原
水としてスパイラル型限外濾過膜エレメントに供給し、
連続通水濾過実験を行った。10日に1回濾過を停止
し、逆流洗浄後に洗浄液中に1時間浸漬した。逆流洗浄
では、洗浄液として次亜塩素酸ナトリウムを含む透過水
を用い、0.2MPaの背圧で60L/分の洗浄液を供
給した。封入液は、次亜塩素酸ナトリウムを含む透過水
である。運転条件を表3に示す。
【0157】
【表3】
【0158】[比較例]比較例では、実施例1,2と同
様に、工業用水(pH6〜8、水温15〜30℃)を原
水としてスパイラル型限外濾過膜エレメントに供給し、
連続通水濾過実験を行った。ただし、比較例では、逆流
洗浄後に濾過を停止しての液中での浸漬は行わなかっ
た。運転条件を表4に示す。
【0159】
【表4】
【0160】図8は実施例1、実施例2および比較例の
スパイラル型膜モジュールの膜間差圧の経時変化を示す
図である。実施例1では、3日に1回逆流洗浄後に逆流
洗浄液中に1時間浸漬状態にする運転を行った結果、膜
間差圧の上昇が抑えられ、膜間差圧0.1MPa以下で
の連続運転が可能であった。
【0161】実施例2では、10日に1回、100pp
mの次亜塩素酸ナトリウムを含む逆流洗浄液中に1時間
浸漬状態にする運転を行った結果、膜間差圧の上昇がさ
らに抑えられ、膜間差圧0.06MPa以下での連続運
転が可能であった。実施例2において、実施例1よりも
低い膜間差圧で運転することができたのは、殺菌作用の
ある次亜塩素酸ナトリウムで洗浄した効果により膜面上
での微生物の繁殖が抑えられたためであると考えられ
る。
【0162】これに対して、比較例では、濾過を停止し
て液中での浸漬は行わなかったので、急激な膜間差圧の
上昇が生じ、連続運転の継続が不可能であった。
【0163】以上の実施例1,2および比較例において
示すように、スパイラル型膜モジュールにおいて液封入
停止を行うことにより、スパイラル型限外濾過膜エレメ
ントの膜面に付着した汚染物質を剥離させ、膜間差圧の
上昇を抑制することが可能となる。それにより、信頼性
の高い安定した運転を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスパイラル型膜
モジュールの一例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明に係るスパイラル型膜モジュールの運転
方法の一例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明に係るスパイラル型膜モジュールの運転
方法の一例を示す模式的断面図である。
【図4】本発明に係るスパイラル型膜モジュールの運転
方法の他の例を示す模式的断面図である。
【図5】図1のスパイラル型膜モジュールに用いられる
スパイラル型膜エレメントの一部切欠き斜視図である。
【図6】本発明に係るスパイラル型膜モジュールの運転
方法のさらに他の例を示す模式的断面図である。
【図7】図5のスパイラル型膜エレメントに用いられる
分離膜の断面図である。
【図8】実施例1、実施例2および比較例のスパイラル
型膜モジュールの膜間差圧の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
1 スパイラル型膜エレメント 2 分離膜 3 透過水スペーサ 4 封筒状膜 5 集水管 6 原水スペーサ 7,31 原水 8 透過水 100 スパイラル型膜モジュール 10,110 圧力容器 13,130 原水入口 14,140 透過水出口 15,131 原水出口 21 洗浄水
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石原 悟 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電工株式会社内 Fターム(参考) 4D006 GA03 GA06 GA07 HA61 KA64 KC02 KC03 KC12 KC13 KC16 KD11 KD12 KD14 KD15 KD16 KD22 KD24 KD28 KD30 KE08Q KE08R MA03 PB08 4D050 AA12 AB06 BB04 BB06 BB09 BB20 BD01 CA09

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有孔中空管の外周面に袋状の分離膜が巻
    回されてなり、0.05MPaよりも高く0.3MPa
    以下の背圧で逆流洗浄が可能なスパイラル型膜エレメン
    トの運転方法であって、運転期間中に一時的に運転を停
    止して前記スパイラル型膜エレメントを液中に浸漬した
    状態で所定時間保持することを特徴とするスパイラル型
    膜エレメントの運転方法。
  2. 【請求項2】 前記運転期間中の濾過運転時に前記スパ
    イラル型膜エレメントの端部から原液を供給するととも
    に前記有孔中空管の少なくとも一方の開口端から透過液
    を取り出し、前記濾過運転を停止して前記スパイラル型
    膜エレメントを液中に浸漬した状態で所定時間保持する
    ことを特徴とする請求項1記載のスパイラル型膜エレメ
    ントの運転方法。
  3. 【請求項3】 前記運転期間中の逆流洗浄時に前記有孔
    中空管の少なくとも一方の開口端から洗浄液を導入して
    前記スパイラル型膜エレメントの少なくとも一端部から
    洗浄液を排出させることにより0.05MPaよりも高
    く0.3MPa以下の背圧で前記分離膜を逆流洗浄し、
    前記逆流洗浄を停止して前記スパイラル型膜エレメント
    を液中に浸漬した状態で所定時間保持することを特徴と
    する請求項1記載のスパイラル型膜エレメントの運転方
    法。
  4. 【請求項4】 前記スパイラル型膜エレメントを液中に
    浸漬した状態で所定時間保持した後、前記濾過運転を再
    開することを特徴とする請求項2記載のスパイラル型膜
    エレメントの運転方法。
  5. 【請求項5】 前記スパイラル型膜エレメントを液中に
    浸漬した状態で所定時間保持した後、前記有孔中空管の
    少なくとも一方の開口端から洗浄液を導入して前記スパ
    イラル型膜エレメントの少なくとも一端部から洗浄液を
    排出させることにより0.05MPaよりも高く0.3
    MPa以下の背圧で前記分離膜を逆流洗浄することを特
    徴とする請求項2記載のスパイラル型膜エレメントの運
    転方法。
  6. 【請求項6】 前記スパイラル型膜エレメントを液中に
    浸漬した状態で所定時間保持した後、前記逆流洗浄を再
    開することを特徴とする請求項3記載のスパイラル型膜
    エレメントの運転方法。
  7. 【請求項7】 前記スパイラル型膜エレメントを液中に
    浸漬した状態で所定時間保持した後、前記スパイラル型
    膜エレメントの端部から原液を供給するとともに前記有
    孔中空管の少なくとも一方の開口端から透過液を取り出
    すことにより濾過運転を行うことを特徴とする請求項3
    記載のスパイラル型膜エレメントの運転方法。
  8. 【請求項8】 前記スパイラル型膜エレメントを液中に
    浸漬した状態で所定時間保持した後、前記スパイラル型
    膜エレメントの軸方向に原液を流すことによりフラッシ
    ングを行うことを特徴とする請求項2または3記載のス
    パイラル型膜エレメントの運転方法。
  9. 【請求項9】 前記スパイラル型膜エレメントを液中に
    浸漬する際に、殺菌作用または汚染物質剥離作用を有す
    る薬品を含む液を前記スパイラル型膜エレメントに供給
    し、前記薬品を含む液中に前記スパイラル型膜エレメン
    トを浸漬することを特徴とする請求項1〜8のいずれか
    に記載のスパイラル型膜エレメントの運転方法。
  10. 【請求項10】 前記分離膜は多孔性シート材の一面に
    透過性膜体が接合されてなり、前記透過性膜体は前記多
    孔性シート材の一面に投錨状態で接合されたことを特徴
    とする請求項1〜8のいずれかに記載のスパイラル型膜
    エレメントの運転方法。
  11. 【請求項11】 1または複数のスパイラル型膜エレメ
    ントが原液入口を有する圧力容器内に収容されてなるス
    パイラル型膜モジュールの運転方法であって、前記スパ
    イラル型膜エレメントは、有孔中空管の外周面に袋状の
    分離膜が巻回されてなり、0.05MPaよりも高く
    0.3MPa以下の背圧で逆流洗浄が可能であり、運転
    期間中に一時的に運転を停止して前記圧力容器内に液を
    封入した状態で所定時間保持することを特徴とするスパ
    イラル型膜モジュールの運転方法。
  12. 【請求項12】 前記液は、殺菌作用または汚染物質剥
    離作用を有する薬品を含むことを特徴とする請求項11
    記載のスパイラル型膜モジュールの運転方法。
JP2000217940A 2000-07-18 2000-07-18 スパイラル型膜エレメントおよびスパイラル型膜モジュールの運転方法 Expired - Fee Related JP4583558B2 (ja)

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