JP2002013024A - 高強度ポリエステル繊維およびその製造方法 - Google Patents
高強度ポリエステル繊維およびその製造方法Info
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Abstract
的に除去したポリエステル組成物を固相重合し、繊維状
に成型することにより、実質的に金属化合物を含有しな
いポリエステル繊維を得る。 【課題】口金汚れ、濾圧上昇、糸切れなどの問題が解消
されたポリエステル繊維の製造方法。また、環境負荷が
少なく、過酷な高次加工工程でも原糸性能を十分に保持
し、優秀な性能を持つ最終製品を提供するポリエステル
繊維。 【解決手段】実質的に金属化合物を含有しないポリエス
テル組成物を繊維状に成型するポリエステル繊維の製造
方法。さらには、重縮合触媒として固体触媒を用い、固
液不均一系にて重合反応を行った後、固体触媒を除去し
たポリエステルを固相重合し、繊維状に成型するポリエ
ステル繊維の製造方法。
Description
る分子量の低下が小さく、機械的強度の保持率が良好な
高強度ポリエステル繊維に関する。詳しくは実質的に金
属元素を含有せず、ゴム補強用繊維として加工する時な
どに問題になる分子量低下を抑制し、機械的強度保持率
が良好なポリエステル繊維に関する。また溶融紡糸時の
分子量低下が小さく、高分子量ポリエステル繊維を高効
率で生産可能な高強度ポリエステル繊維の製造方法に関
する。
ゆえに、衣料用途、ゴム補強用途、建築資材用途、運輸
包装用途、フィルター用途をはじめ広く種々の分野で用
いられている。なかでもポリエチレンテレフタレ−ト繊
維は機械的強度、化学特性、寸法安定性などに優れ、好
適に使用されている。
はそのエステル形成性誘導体とジオールとのエステル化
反応あるいはエステル交換反応、及び重縮合反応により
製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタ
レート(以下、PETと略す)は、テレフタル酸または
そのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製
造される。一般にポリエステルは、重縮合反応速度が遅
いため、これらポリエステルの高分子量ポリマーを製造
する商業的なプロセスでは、製造を効率化するために重
縮合触媒を用い、特定の金属化合物が触媒として広く用
いられている。
反応や加水分解反応を促進することが知られており、特
にポリエステル中に最も多く含有される金属化合物であ
る重縮合触媒はポリエステルの重縮合反応を促進する反
面、同時に熱分解反応も促進するのが一般的である。そ
こで、PETの重縮合触媒としては重合触媒能に優れる
が、熱劣化を促進しない化合物を選択することが重要で
あり、このことから熱分解速度が比較的遅いアンチモン
化合物やゲルマニウム化合物が使用され、中でもその価
格の安さからアンチモン化合物が好適に使用され、さら
に熱劣化を抑制するために、特開昭46−5384号公
報に述べられているようなリン化合物を添加されるのが
一般的である。しかしながら、この方法を始めとして古
くから様々な方法が検討されているが、熱劣化や加水分
解の抑制効果は不十分である。
される産業用繊維においては、一般に固相重合して重合
度を高めたPETを用いて溶融紡糸するため、特に熱や
水による分子量低下が顕著となる。すなわち、タイヤコ
ードに使用されるようなPET原糸は7cN/dtex
を越える引張強度が要求されるが、このような機械的特
性を満足させるためには、一般に固有粘度(以下IV)
が0.9以上のPET繊維とする必要がある。このよう
な高粘度の繊維を得るためには液相重合で得られたPE
T組成物を固相重合する必要があるが、高重合度化した
PETの溶融時のIV低下が大きいため、原料としてI
Vが1.0〜1.5程度のPET組成物を使用する必要
がある。ところが、固相重合は液相重合よりも反応温度
が低いため長時間の反応プロセスとなり、PET組成物
を製造するにあたって時間的・経済的に最も負担が大き
い工程となっている。したがって、固相重合時間を短縮
できる、溶融時のIV低下が小さな製造方法が望まれて
いた。
ための手段として高IVのPETを使用することが古く
から提案されているが、長時間の固相重合でIVが1.
5を越えるようなPETを溶融紡糸しても、得られる繊
維のIVは1.0程度であり、繊維の機械的特性も従来
の繊維とほとんど変わらない。そこで高IVのPET組
成物を原料に溶融紡糸を行う際、IV低下をできる限り
抑制してPET繊維を得ようとする技術がいくつか開示
されている。例えば、J.Appl.Polm.Sci.,30,3325(1985)
には、2,2'-ヒ゛ス(2-オキサソ゛リン)などの環状イミノエーテル
がポリエステルの鎖連結剤として使用されており、分子
量低下を抑制する働きがあることが述べられている。こ
のような方法であると、確かにポリエステルの分子量低
下を抑制、または分子量低下分を補償する鎖連結が行わ
れるが、重縮合時や溶融紡糸時に発泡が起こり、糸切れ
や製品の機械的特性を低下させる。また、該化合物の分
散が不完全なままに反応を起こすと局所的に高分子量成
分のポリエステルが生成し、これが異物となってパック
内フィルターの目詰まりを引き起こしたり、紡糸・延伸
時の糸切れの原因となったりする。また、Polymer,37,4
421(1996)には、1ーメチルナフタレンなどの高融点の溶剤を20%程
度ポリエステル溶融体に混入し、通常の紡糸温度より2
0〜30℃程度低温で紡糸することによってIVの低下
を抑制している。しかしながら、このような溶剤をポリ
エステルに混入して紡糸する方法は環境負荷が大きく、
使用する溶剤の回収、分離などにコストがかかり、工業
的生産には好適ではない。このように紡糸工程で1.5
を越えるような高い分子量のポリエステルを得ようとい
う試みは幾つかなされているものの、満足のいく方法は
得られていないのが現状である。
媒は、溶融紡糸時以外の工程でも熱分解や加水分解を促
進することが知られている。例えば、高強度PET繊維
はゴム補強用繊維として使用されるが、ゴムの加硫工程
でゴム中に含まれるアミン類などの添加剤によって加水
分解を受け、強度が低下することが知られている。ま
た、抄紙用カンバスの材料として用いられる場合も長時
間で熱水処理をうけるため、加水分解による製品強度の
低下が問題になる。これら加水分解を促進する触媒とし
てPETのカルボキシル末端のプロトンが作用すること
が知られている。このPETの加水分解を抑制する手段
としてはカルボキシル末端をエポキシやカルボジイミド
などの化合物で封鎖して、強度の低下率を抑制する方法
が広く採用されており、例えば特公昭38−15220
号公報や特公昭44−27911号公報などに述べられ
ている。また、PETに含有される金属が触媒として作
用することも広く知られており、これら金属の触媒能を
抑制するキレート化合物を添加する処方などがいくつか
開示されている。しかしながらこれらの方法は、添加し
た化合物が紡糸機内部で長時間滞留する結果として熱劣
化による変性を受けやすく、繊維内部に残存して繊維物
性を著しく低下させる。また、これらの添加剤が繊維の
結晶性を阻害し、熱収縮率が高くなったり、耐熱性を低
下するなどゴム補強用繊維としての性能をかえって悪化
させるほか、非晶部が増大する結果としてアミン類の浸
透を促進し、目的とする加水分解抑制効果を十分得るこ
とができない。
めとする金属化合物を用いた場合、上記熱劣化や加水分
解に伴う問題以外にも好ましくない点が指摘されてい
る。
ステルを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触
媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。
この堆積が進行するとフィラメントに欠点が生じる原因
となるため、適時除去する必要が生じる。アンチモン触
媒残渣の堆積が生じるのは、アンチモンがポリマー中で
アンチモングリコラートの形で存在しており、これが口
金近傍で変成を受け、一部が気化、散逸した後、アンチ
モンを主体とする成分が口金に残るためであると考えら
れている。このような口金は定期的な清掃が必要となる
が、清掃を行う場合には製品の巻き取りを中止する必要
が生じ、その間のポリマーは製品となることなく廃棄さ
れるため、環境面・コスト面で問題となっていた。ま
た、清掃作業は機械化することが困難で、高温下での手
作業となるため、作業員の安全確保や人件費の観点から
改善が望まれていた。
比較的大きな粒子状となりやすく、紡糸パック内のフィ
ルターに捕捉されて濾圧上昇を引き起こし、パック交換
を頻繁に行う必要が生じるなど連続作業を阻む原因とな
っている。
ったアンチモン触媒残渣は、ポリマーに混入して口金か
ら吐出される。紡糸・延伸・高次加工時には繊維に張力
がかかるが、触媒残渣はその張力が集中する因子となり
易く、糸切れや毛羽発生の原因となって製糸安定性や高
次加工通過性を阻んでいる。また、最終製品において
は、触媒残渣が張力に対する応力集中因子となるため、
産業用繊維の最も基本的な特性である強度を低下させる
という大きな問題がある。
極めて少ないか、あるいは含有しないポリエステル繊維
が求められている。
合物に代わる重縮合触媒の検討例が幾つかなされてい
る。
は、アルミニウム化合物を重縮合触媒として使用してポ
リエステル組成物を製造する技術が開示されている。該
技術は、アンチモン化合物に代わってアルミニウム化合
物を触媒として使用するというものである。確かに該公
報に開示されている方法によってアンチモン化合物を使
用せずに高重合度のポリエステルを得ることが可能であ
るが、該化合物を重縮合触媒として用いたPETは紡糸
機内での熱劣化が大きいため、製糸安定性に劣る。さら
に溶融紡糸された繊維は機械強度が低く、産業用繊維と
して用いることは難しい。
アンチモン、ゲルマニウム、アルミニウムなどの化合物
と異なり、系に不溶解な不均一触媒を用いる技術とし
て、WO90/03408等を挙げることができる。こ
れらの技術は、重縮合触媒としての活性を有する結晶質
ナトリウムアルミノシリケートモレキュラーシーブ(ゼ
オライト)をスリップ添加剤及び触媒の両者として用い
ることにより、重縮合反応における反応性が高まり、反
応時間が短くなることが提案されている。しかしなが
ら、該化合物による反応性の改善は行われているもの
の、最終的に得られるポリマー中に該ゼオライト触媒が
系に不溶解のまま多量に残留することにより、色調の悪
化による透明度の損失等を招くほか、繊維の機械強度・
製糸安定性ともに低く、十分な改善がなされているとは
言い難い。
の製造技術がUSP−4、150、214号公報に開示
されている。該技術は、IVが0.1〜0.4の低重合
体PETを高温で揮発するエステル化触媒を用いて準備
し、これを固相重合して所望の重合度のPETを得るも
のである。しかしながら、このような低重合度PETを
溶融紡糸可能な重合度にするためには、長時間の固相重
合が必要となり、工業的な方法としては適当でない。ま
た、一般に固相重合中はペレットが固体状態で攪拌混合
されるため多くの粉末がペレットから脱落して発生する
が、上記技術で必要な長時間の固相重合では大量の粉末
が発生して、ペレットの搬送などそのハンドリングを著
しく阻害する。さらに、この粉末中ではエチレングリコ
ールの拡散速度がペレットより速くなるため、一般に粉
末の重合度はペレットの重合度より高くなる。したがっ
て上記技術で必要な長時間の固相重合を行うと、発生し
た粉末の重合度が著しく高くなり、紡糸時に十分溶融せ
ずに異物になるなど、工程安定化を大きく悪化させるば
かりか、繊維そのものの機械強度を大きく低下させ、産
業用途に用いられるような高強度繊維を製造することは
困難である。また、該公報に述べられているように、低
重合度のものからIVが1.0を越えるような高重合度
のポリマーを得ようとすると、低重合度のポリマーの結
晶化速度が速いため一般に困難であり、該公報にもIV
が0.7までの実施例が述べられているのみである。さ
らに、該公報には繊維製造工程への寄与は述べられてお
らず、もちろん金属元素を含有しないポリエステル繊維
の有用性についての記載はない。
化合物を合成する技術は、例えば特開平11−1400
26号公報に述べられており、該公報にはエステル化触
媒として固体触媒を用い、固液不均一系にて反応を行う
技術が開示されている。該公報には、カルボン酸及び/
またはその無水物とアルコールとを反応させてカルボン
酸エステルを製造する方法において、メソポーラス構造
のチタノシリケート触媒を用いることにより、エステル
化反応性の向上及び、触媒の回収・再使用の利点が提案
されている。しかしながら、上記技術はエステル化反応
に固体触媒を用いた技術であり、ポリエステル製造にお
ける重縮合反応性や繊維製造工程への寄与は述べられて
いない。
強度ポリエステルでは、繊維に含まれる金属化合物に起
因する繊維の機械的特性の低下や、例えばゴム補強繊維
として加工される時の強度低下が避けられなかった。
造方法では、原料の溶融時の分子量低下が著しく、また
繊維に含まれる金属化合物に起因する糸切れが避けられ
なかった。
工程安定化や最終製品の品位を向上させるポリエステル
繊維およびその製造方法を提供することを目的とする。
多い金属元素量が2ppm以下であることを特徴とする
高強度ポリエステル繊維によって達成される。また、重
合触媒として固体触媒を用い、固液不均一系にて重合反
応を行った後、固体触媒を実質的に除去したポリエステ
ル組成物を固相重合し、繊維状に成型することを特徴と
する高強度ポリエステル繊維の製造方法によって達成さ
れる。
ン酸及びジオールから合成されるポリマーであって、特
に限定はない。
は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメ
チレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレ
ンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレン
ジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2
−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシ
レート、ポリプロピレンテレフタレートなどが挙げられ
る。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポ
リエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタ
レートからなるポリエステル共重合体において好適であ
る。
成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フ
タル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸などのジカ
ルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレ
ングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレン
グリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレン
グリコールなどのジオキシ化合物、p−(β−オキシエ
トキシ)安息香酸などのオキシカルボン酸およびそのエ
ステル形成性誘導体などを共重合してもよい。
の化合物、例えば各種のリン化合物等の着色防止剤や粒
子等を添加、含有しても良い。なお、本発明のポリエス
テル繊維は実質的に金属元素を含まないため、熱劣化を
起こしにくく、着色防止剤や酸化防止剤を従来より減ら
せるというメリットがある。
含有量が多い金属元素量が2ppm未満である。ここで
いう金属元素とは、元素周期律表の水素を除くI族、す
べてのII族、ホウ素を除くIII族、炭素およびケイ素を
除くIV族、窒素とリンおよび砒素を除くV族の典型元
素、すべての遷移元素、希土類のことを指す。これら元
素およびその化合物を含むポリエステルは熱劣化や加水
分解を起こしやすいため、繊維製造工程で熱劣化が促進
されて繊維の機械物性が低くなる。また、ゴム加硫工程
などでの加水分解が起こりやすいため、補強用繊維とし
ての性能を低下させる。アンチモン、チタン、ゲルマニ
ウムは、比較的加水分解や熱分解触媒能が小さい重縮合
触媒であることが知られているものの、満足なものでは
ない。これに対し本発明のポリエステルは加水分解や熱
劣化が起こりにくいため、繊維の製造工程の安定性に優
れ、繊維の機械物性も高い。さらに該ポリエステル繊維
は耐加水分解性や耐熱分解性が高いため、ゴム加硫工程
などの高次加工工程での機械強度の低下も少なく、最終
製品の信頼性を高めることができる。
多い金属元素量が2ppm以下であるが、一般に高強度
を求められる産業用ポリエステル繊維中に含有される金
属元素の中で最も多いものは、重縮合触媒に用いられる
ものであり、同時に使用される金属化合物の種類も、多
くて3種類程度である。使用される金属としてはアンチ
モン、ゲルマニウム、チタンがほとんどであり、マンガ
ン、亜鉛、スズ等が用いられることもある。これら触媒
は重縮合反応の逆反応または副反応として、加水分解反
応や熱分解反応を著しく促進し、重縮合または製糸工程
で混入が不可避に起こる不純物金属元素に比べて、特に
ポリエステルの分子量低下を引き起こすものである。
/dtex以上であることが好ましく、7.5cN/d
tex以上であるとさらに好ましい。ゴム補強用繊維を
代表する産業用繊維には高い強度が要求され、7cN/
dtex以上、さらに好ましくは7.5cN/dtex
以上の強度を有することが好ましい。
0.9以上であることが好ましい。ゴム補強用繊維を代
表する産業用繊維には高い強度が要求され、その要求を
満たすためには0.9以上の固有粘度を有する繊維であ
ることが好ましい。
キシル末端は、20eq/t以下であることが好まし
い。カルボキシ末端が20eq/tを超える量である
と、耐加水分解性・耐熱性が低くなるため、ゴム加硫工
程などの高次加工工程での機械強度の低下が大きくな
り、最終製品の信頼性が低下する。一方、20eq/t
以下であれば、良好な耐熱・耐加水分解性の繊維を得る
ことができる。
によって製造される。すなわち、常法のエステル化反応
によって、ジカルボン酸とジオールを無触媒下で反応さ
せ、低重合度ポリエステルを得ることが好ましい。この
際、ジカルボン酸のエステル誘導体とジオールから低重
合度ポリエステルを得る方法を使用しても構わないが、
一般にエステル交換触媒を使用しないと十分な反応速度
を得ることができないため、触媒をポリマーに残存させ
ないという本発明の主旨から、無触媒下で直接ジカルボ
ン酸とジオールを反応させる方法をとることが好まし
い。
媒としてポリエステル溶融物に不溶な触媒を用いること
によって十分に高重合度化させた後、該触媒をポリマー
から取り除く。重縮合触媒としてポリエステルに可溶な
ものを使用すると、反応終了後にポリエステルから触媒
を取り除くことが困難となる。また、無触媒下で重縮合
を行う場合には、十分な重合度のポリマーを得るために
長時間の反応を行う必要があり、熱によってポリマーが
劣化を起こして製品の品位を低下させるほか、生産効率
が悪くなるため好ましくない。
とは、触媒が重縮合反応を促進する能力を発揮する段階
で系に不溶解で、固体状態にあるものを指す。したがっ
て重縮合反応系は液体状態のポリエステル溶融体と、固
体状態の触媒が共存する不均一系となる。このようなポ
リエステル溶融体に不溶解な状態で重縮合触媒能力を有
するものを用いれば、反応終了時に触媒を系から除去す
ることが可能であり、最終的に触媒を含有しないポリマ
ーを得ることができる。一方、触媒そのものがポリエス
テル溶融物に可溶である場合はもちろん、ポリエステル
溶融物に添加された後に反応を起こす結果、ポリエステ
ル溶融物に溶解して触媒能を発揮するものは、ポリエス
テル溶融体に可溶な触媒である。このような触媒を用い
た場合には系が均一となるため触媒を分離することが困
難であり、最終的に得られるポリマーの中には触媒が残
存することとなる。例えば従来PETの重縮合触媒とし
て用いられる三酸化アンチモンは、ポリエステル溶融体
に添加される段階では固体状態であるが、系の中でエチ
レングリコールと反応してグリコラートとなる結果溶解
し、重縮合触媒としての能力を発揮することになるが、
このような触媒はポリエステル溶融体に可溶な触媒であ
り、重縮合反応の終了後に系から分離することが困難と
なる。
溶な触媒を取り除く方法は特に限定されないが、例えば
バッチ重合の場合は、反応器からポリマーを吐出する部
分に触媒を取り除くフィルターを設置すればよい。ま
た、連続重合装置の場合であっても、装置を構成する反
応器のポリマー出口に触媒の流出を防ぐフィルターを設
けるなどすればよい。また、必要であれば流路や反応機
内を複数の小部屋に区切り、部屋の出口部にフィルター
を設置しても良い。触媒が存在する容器内は、攪拌して
反応の均一性を高めることが好ましい。
な触媒の組成や形状、添加量は適宜調整されれば良く、
特に限定されるものではない。しかしながら、その重合
触媒能力や熱に対する安定性から、チタンが表面に存在
するメゾもしくはミクロポーラスな物質が好ましい。例
えばその基本構造にチタンが含有されるものが挙げら
れ、Ti−HMS、Ti−MCM41、Ti−MSU−
1などに代表されるメゾポーラスな構造を持つチタノシ
リケートまたはTS−1に代表されるミクロポーラスな
構造を持つチタノシリケート化合物を挙げることができ
る(フジテクノシステム発行 多孔質体の性質とその応
用技術、1999)。チタノシリケートを用いる場合は
重縮合活性を高くするために、チタンのモル比が0.1
%以上であるものを使用することが好ましい。また、チ
タン化合物を担持する場合には、例えばアルミノシリケ
ートなどのゼオライトと、塩化チタノセンのジクロロメ
タン溶液を拡散させ、トリエチルアミンよるシラノール
基の活性化を行うことによって、ゼオライトの内壁にチ
タン錯体を担持させることができる。使用する担体はゼ
オライトが好ましいがこれらに限定されず、炭素繊維、
グラファイトなど任意のメゾもしくはミクロポーラスな
物質を利用することができ、その微細孔の大きさは5n
m以上の平均値を持つことが好ましい。
の形態は特に限定されないが、その生産性から、打錠成
型されたものが好ましい。打錠成型するに際しては、ポ
リマーに悪影響をおよぼさない範囲でバインダーを使用
することも差し支えない。また、固体触媒の大きさにつ
いても特に限定はないが、小さすぎるとポリマーとの分
離が困難となり、一方大きすぎると、重縮合反応の活性
部分となっている触媒表面積の低下を招くため、平均粒
径は0.1〜10mmの範囲が好ましい。
の添加量は、十分な重縮合触媒能を得るために適宜調整
されるが、例えばチタノシリケートであれば、含有され
るチタンの量が最終的に得られるポリエステルに対し
て、0.001重量%以上となるように添加することが
好ましい。0.001重量%未満であると、十分な触媒
活性を得ることが難しくなる。また同様に、例えばミク
ロまたはメゾポーラスな物質にチタン化合物を担持させ
る場合でも、表面におけるチタンの比が担体骨格の構成
元素に対して0.001重量%以上となるよう調整され
ることが好ましい。
な触媒を取り除いたポリエステル組成物は、一旦吐出・
冷却してチップ化する。得られるポリエステル組成物の
重合度は均一な粒径の成型品が製造可能な領域であれば
よく、例えばPETであれば固有粘度0.5以上0.9
未満である。
造するために固相重合する。固相重合の方法は従来知ら
れているような方法で構わず、例えばPETであれば、
真空下で220〜240℃にて処理すれば良く、連続・
バッチいずれの方法で行っても良く、また反応容器内の
温度を均一にするために攪拌が行われることが好まし
い。固相重合によって得られるポリエステル組成物のI
Vは1.0以上、好ましくは1.1以上が好ましい。本
発明の方法によれば、溶融時の重合度低下が小さいた
め、従来より低いIVの組成物であっても溶融紡糸の結
果得られる繊維のIVは従来糸並みとすることができ、
固相重合時間の短縮に貢献することができる。また、I
Vが1.5を越えるような組成物であっても溶融時の重
合度低下が小さいため、溶融紡糸の結果得られる繊維の
IVを高くすることができ、従来より高強度の繊維を製
造することが可能となる。
ポリエステルは、繊維状に成型される。この際、高重合
度ポリエステルは溶融紡糸機に導入され、常法により計
量、濾過された後、口金より吐出され、フィラメントな
どに成型されることが好ましい。吐出されたポリマーは
冷却・固化され、給油されて用途に応じた紡糸速度で引
き取られ、巻き取られるか、または巻き取られることな
く直接紡糸延伸される。この際、必要であれば250℃
以上に加熱された加熱筒によって、口金直下にて遅延冷
却が行われることが好ましい。また、延伸は多段延伸で
行われることが好ましく、一段延伸目はガラス転移点〜
ガラス転移点+30℃程度の温度で延伸され、延伸後に
は200℃以上の温度で熱処理され、1〜5%程度の弛
緩が行われることが好ましい。また、必要に応じて交絡
を掛けられるなどすることがある。巻き取られた糸はそ
のまま製品になることもあるし、延伸や捲縮加工など、
用途に応じた加工を受け、織・編物、ミシン糸、ロー
プ、コード、網など、各種衣料用、産業用繊維として好
適に使用される。特にゴム補強用や抄紙用キャンバスな
ど高温下で使用される用途であると、従来の金属元素を
含有する繊維に比べて耐熱性・耐加水分解性が高いた
め、優れた性能の製品を得ることが可能となる。
法では、固相重合したポリエステルの溶融時の重合度低
下が小さいため、それほど高い重合度の組成物原料とし
なくても高い重合度の繊維を得ることができ、固相重合
時間を短縮することができる。また従来より高い重合度
の組成物を用いれば、重合度低下が小さい分、高い重合
度のポリエステル繊維を製造することが可能となり、繊
維の機械物性を高めることが可能となる。
方法は、溶融紡糸機内部での熱劣化が小さいために異物
などの発生が少なく、また口金堆積物を抑制することが
できるため、糸切れが少なく、工程安定性に優れてい
る。
する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測
定した。 (1)ポリエステル繊維の固有粘度(IV) オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定し
た。
繊維のIVの差をΔIVとして示した。 (2)ポリエステル繊維中の金属含有量 IPC発光分光分析装置により求めた。繊維をエタノー
ルで洗浄・乾燥した後、検出下限は約0.1ppmであ
った。 (3)ポリエステル繊維のカルボキシル末端基量 Mauriceらの方法[Anal.Chim.Act
a,22,p363(1960)]によった。 (4)ポリエステル繊維のジエチレングリコール量 ポリエステル繊維をアルカリ溶解し、溶液を液体クロマ
トグラフィーにてジエチレングリコール量(DEG量)
を測定した。 (5)ポリエステル繊維の強伸度 東洋ボールドウイン(株)社製テンシロン引張り試験器
により、試長250mm、引張り速度300mm/分で
S−S曲線を求め強伸度を算出した。 (6)乾熱収縮率 試料をカセ状にとって20℃、65%RHにて24時間
以上放置したのち、試料の0.1g/dの荷重をかけて
測定した長さL0の試料を、150℃のオーブン中に3
0分間処理した後、取り出して4時間以上放冷した。そ
の後、再び0.1g/dの荷重をかけて長さL1を測定
し、以下の式で収縮率Sを測定した。
長焦点顕微鏡を用いて観察した。堆積物がほとんど認め
られない状態を○、堆積物は認められるものの操業可能
な状態を△、堆積物が認められ頻繁に糸切れが発生する
状態を×として判定した。 (8)パック内圧 紡糸機に設置された圧力計にて、パック取付から21日
後のパック内部の圧力を測定し、その差圧を示した。 (9)糸切れ 吐出ポリマー1t当たりの紡糸時糸切れ回数を測定し
た。 (10)耐蒸熱性 耐圧ステンレスポットに糸と水を入れて蓋をした後、1
70℃に加熱して4時間処理した。処理後、糸を取り出
してCOOH末端量(eq/t)を測定して、以下の式
によって加水分解性を評価した。
量−処理後COOH末端量)/処理前COOH末端量
×100 (11)IRT(ゴム中耐熱性) コードをゴムに埋め込み、150℃で6時間加硫後の強
力保持率で評価した。
法に従い、調整した。窒素雰囲気下でテトラエトキシシ
ラン62.5g(300ミリモル)およびエタノール1
15ミリリットルをフラスコ(500ミリリットル)に
秤量し室温下300rpmで攪拌した。これにテトラ−
i−プロピルチタネート2.56g(9ミリモル)とイ
ソプロピルアルコール46ミリリットルの混合物を室温
下10分間かけて添加した。ついでこの混合物を70℃
まで加熱し3時間保持した後、室温まで冷却した。
15.0gをセパラブルフラスコに秤量し400rpm
で攪拌した中に、上記調整したバイメタリックアルコキ
サイド溶液を約1時間かけて添加した。ついで4時間攪
拌を継続させた後に約1日静置した。得られた沈殿物を
濾別し、水で1回洗浄した後、80℃で減圧乾燥した。
得られた固体を窒素雰囲気下500℃で1時間焼成した
後、引き続き空気流通下650℃で4時間焼成し、チタ
ノシリケート17.5gを得た。
セットして10t/cm2の圧力を5分間かけた後、円
筒状の成型体を粉砕した。粉砕されたチタノシリケート
の粒状物をふるいにかけ、約1mmの粒径のペレットを
集めた。
酸とエチレングリコールから常法に従って製造した、触
媒を含有しないオリゴマーを250℃で溶融し、該溶融
物に上記チタノシリケートのペレットを0.5wt%添
加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しなが
ら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温する
とともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終
圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌
トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し
重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ち
にカッティングしてポリエステルのペレットを得た。な
お、反応容器底面には50メッシュの金網が設置されて
おり、ポリマー吐出時には該金網によって固体触媒ペレ
ットを回収した。
化を行った後、真空下・230℃にて10時間の固相重
合を行った結果、固有粘度1.21のポリマーを得た。
乾燥した後、エクストルーダ型紡糸機に供給し、紡糸温
度295℃で溶融紡糸した。このときフィルターとして
絶対濾過精度25μmの金属不織布を使用し、0.6m
mφの丸孔を144備えた口金を用いた。口金から吐出
した糸を300℃・30cmの加熱フードで遅延徐冷
し、25℃・30m/分のチムニー冷却風を当てて冷却
固化し、オイリングローラーにて給油した後、引き取り
速度500m/分で引き取り、一旦巻き取ることなく9
0℃、120℃にて合計延伸倍率5.3倍の2段延伸を
行い、230℃にて熱セット、3%のリラックス処理を
行って巻き取った。
撚りをS方向に49T/10cm、上撚りをZ方向に4
9T/10cmかけて生コードとした。次にこのコード
をリツラー社製コンピュートリーターを用いて接着剤を
ディップして処理コードを作製した。処理条件は乾燥温
度160℃、定長処理、熱処理温度240℃の緊張処
理、後処理温度は240℃の弛緩処理であった。この緊
張率および弛緩率を調整することによって処理コードの
中間伸度を3〜4%とした。
性、ポリマー特性はとも良好であり、溶融紡糸工程にお
いては、パック圧力上昇、口金汚れ、紡糸時糸切れは比
較例5、6に比べていずれも低かった。また、得られた
繊維の溶融粘度の低下も小さく、強度も優れていた。さ
らに、耐蒸熱性、IRTともに比較例1、2に比べ、優
れていた。
る以外は実施例1と同様の方法によった。実施例2、3
は良好な繊維の化学・物理的特性を有し、溶融紡糸工程
においても比較例1、2に比べて優れた製糸安定性を有
していた。また、耐蒸熱性、IRT共に優れており、過
酷な条件下で成型されても最終製品として優秀な性能を
発現できることがわかった 実施例4〜5 チタノシリケートの粒状物の大きさを変更する以外は実
施例1と同様の方法によった。実施例4、5は良好な繊
維の化学・物理的特性を有し、溶融紡糸工程においても
比較例1、2に比べて優れた製糸安定性を有していた。
また、耐蒸熱性、IRT共に優れており、過酷な条件下
で成型されても最終製品として優秀な性能を発現できる
ことがわかった。
i−プロピルチタネートを0.17g(0.6ミリモ
ル)、実施例7ではテトラ−i−プロピルチタネート
4.27g(15ミリモル)を使用する以外は実施例1
と同様の方法によった。実施例6、7は良好な繊維の化
学・物理的特性を有し、溶融紡糸工程においても比較例
1、2に比べて優れた製糸安定性を有していた。また、
耐蒸熱性、IRT共に優れており、過酷な条件下で成型
されても最終製品として優秀な性能を発現できることが
わかった。
の方法によった。実施例8、9は良好な繊維の化学・物
理的特性を有し、溶融紡糸工程においても優れた製糸安
定性を有していた。また、耐蒸熱性、IRT共に優れて
おり、過酷な条件下で成型されても最終製品として優秀
な性能を発現できることがわかった。
ル配位子)のジクロロメタン溶液にトリメチルアミンを
添加し、更にモービル社製MCM41ゼオライトを加
え、攪拌した。18時間後に不溶物を分離し、ジクロロ
メタンで洗浄した。この方法で得られたチタン化合物担
持ゼオライトを用いる以外は実施例1と同様の方法によ
った。実施例8、9は良好な繊維の化学・物理的特性を
有し、溶融紡糸工程においても優れた製糸安定性を有し
ていた。また、耐蒸熱性、IRT共に優れており、過酷
な条件下で成型されても最終製品として優秀な性能を発
現できることがわかった。
化ゲルマニウムの所定量を添加した以外は、実施例1と
同様の方法によった。比較例1、2はカルボキシル末端
量やDEG量が多く、また強度が低いなど、満足のいく
化学・物理的特性の繊維を得ることができなかった。ま
た、溶融紡糸工程においても、パック圧上昇が速く、口
金汚れが激しいことなどに起因して糸切れが多く、製糸
安定性は悪かった。また、耐蒸熱性、IRT共に劣って
おり、過酷な条件下で成型されると原糸の有する性能が
低下することがわかった。
て溶融した以外は、実施例1と同様の方法によって実施
例11、12を行った。また、 固相重合時間を変更し
て到達IVが異なるPETを用いて溶融した以外は、比
較例1と同様の方法によって比較例3を行った。実施例
11は、比較例3と同様の原料IV出会ったにも関わら
ず、溶融時のIVドロップが小さいために繊維のIVが
高くなった。また、実施例12は比較例1に比べて原料
IVが小さいにも関わらず、溶融時のIV低下が小さい
ために繊維のIVは比較例1と同等のIVとなった。そ
の結果、実施例11、12は良好な繊維の化学・物理的
特性を有し、溶融紡糸工程においても優れた製糸安定性
を有していた。また、耐蒸熱性、IRT共に優れてお
り、過酷な条件下で成型されても最終製品として優秀な
性能を発現できることがわかった。
繊維として加工される時などに加えられる熱や水による
分子量低下が小さいため、最終製品中でも高い機械特性
を保持することができる。そのため、ゴム補強用繊維の
他、シートベルト、エアバッグなど高温下で使用される
製品の原料としても好適に使用することができる。さら
に、ドライヤーキャンパスや漁網など、水や蒸気と接す
る材料としても、優れた耐久性を発現することができ
る。
れば、溶融紡糸時の分子量低下が小さく、またパックの
濾圧上昇や口金汚れを抑制することができるため、ポリ
エステル繊維を高効率で生産することが可能となる。
Claims (6)
- 【請求項1】最も含有量の多い金属元素の含有率が2p
pm以下であることを特徴とする高強度ポリエステル繊
維。 - 【請求項2】強度が7cN/dtex以上であることを
特徴とする請求項1記載の高強度ポリエステル繊維。 - 【請求項3】固有粘度が0.9以上であることを特徴と
する請求項1または2記載の高強度ポリエステル繊維。 - 【請求項4】カルボキシ末端が20eq/t以下である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の高
強度ポリエステル繊維。 - 【請求項5】ポリエステルがポリエチレンテレフタレー
トであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項
記載の高強度ポリエステル繊維。 - 【請求項6】ポリエステル溶融体に不溶な触媒を用い、
固液不均一系にて重縮合反応を行った後、該触媒を実質
的に除去したポリエステル組成物を固相重合し、繊維状
に成型することを特徴とする高強度ポリエステル繊維の
製造方法。
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