JP2002010756A - ヒト腸管由来の乳酸菌を利用した卵製品の製造方法 - Google Patents

ヒト腸管由来の乳酸菌を利用した卵製品の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヒト腸管由来の乳酸菌を卵中で活発に増殖さ
せて発酵させ、嗜好性等の品質面にも優れ、かつ付加価
値の高い発酵卵製品を製造する方法と、この方法によっ
て得られた新規な卵製品等を提供する。 【解決手段】 糖類を添加した液状卵にラクトバチラス
・アシドフィラス群に属する菌株を除くヒト腸管由来の
乳酸菌を添加して発酵させることを特徴とする卵製品の
製造方法と、この方法により製造された卵製品、並びに
この卵製品を主原料あるいは副原料として製造された卵
加工食品とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用全野】この出願の発明は、ヒトの健康に
好ましい影響を与えていることが知られるヒト腸管内に
存在する乳酸菌を利用した卵製品の製造方法とその方法
によって製造された卵製品等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】微生物は古くから食品製造に利用されて
きたが、従来の微生物利用は主として風味や貯蔵性の向
上を目的としていた。しかし、近年、ヒトの消化管内に
棲息する乳酸菌やビフィズス菌の生理的な作用が科学的
に検討され、これらの微生物が宿主であるヒトに対して
好ましい作用(有害微生物排除、整腸、免疫賦活など)
を有していることが明らかにされている。このため、こ
のような腸管由来の乳酸菌やビフィズス菌を利用した食
品素材、発酵乳製品、生菌製剤等が数多く開発されてい
る。これらの製品に関連した技術としては、例えば、乳
酸菌を利用した生菌製剤(特開平5−292947号公
報)、ビフィズス菌を利用した発酵乳製品(特開平4−
273734号公報)などが知られており、腸管由来微
生物の機能利用に対して注目が集められている。
【0003】また、この出願の発明者によって、腸管由
来の乳酸菌の食肉製品への利用も提案されている(特願
平7−259334号:特開平9−74995号)。一
方、卵製品への微生物利用の例は、他の動物性食品であ
る乳製品や食肉製品に比べると乏しく、産業的には乾燥
卵を製造する際に、変色防止を目的とした液状卵の糖類
除去に酵母や乳酸菌などの発酵作用が利用されてきた程
度である。従って、乳酸菌やビフィズス菌を利用した卵
製品の製造に関する試みは少なく、以下が知られている
程度である。すなわち、Lin とCunningham(Journal of
Food Science,49.1444−1452.1984)は豆乳や脱脂乳
などを液状卵白と混合し、これにヨーグルト用スタータ
ー乳酸菌であるブルガリア菌(Lactobacillus bulgaricu
s) とサーモフィラス菌(Streptococcus thermophilus)
を接種し、ヨーグルト様製品を試作している。また、液
状卵の有害微生物制御の観点から、Raccach とBaker(Jo
urnal of Food Science, 44,90−92, 1979)は液状全卵
に食肉製品用のスターター乳酸菌を接種することによ
り、汚染細菌であるシュードモナス菌(Pseudomonas) の
増殖を抑制できることを実験的に示している。
【0004】一方、マヨネーズ様食品の製造について
は、特公昭62−11591号公報は乳酸菌で発酵させ
た乳製品を、特公平7−102102号公報は乳酸菌や
ビフィズス菌で発酵させた野菜処理物を、それぞれ材料
として配合する技術が提案されている。また、卵を直接
発酵させることによる食品を製造する技術としては、ス
トレプトコッカス(Streptococcus)属およびラクトバチ
ラス(Lactobacillus) 属の乳酸菌を液状卵に接種、発酵
させ、これをマーガリン、ヨーグルト様食品、冷菓類の
原料として利用する技術が知られている(特開昭53−
50362号公報、特公昭58−13138号公報、特
公昭59−20339号公報)。しかし、今日に至るま
でヒト腸管由来の乳酸菌やビフィズス菌を用いて液状卵
を直接発酵させ、付加価値の高い食品を製造する技術は
全く知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のとおり、腸管由
来の乳酸菌やビフィズス菌を直接利用した発酵卵製品は
これまでに製品化されていないだけではなく、文献上の
記載も見あたらない。その理由の一つとしては、卵中の
糖類含量が著しく少ないために、腸管由来の微生物が十
分に増殖を行えないことが挙げられる。また、Cardwe11
とSrikajonkeid(Journal of Dairy Science,69,225,
1986)は、脱脂乳に卵白を0 .5 %以上添加するとヨー
グルト用乳酸菌であるブルガリア菌(Lactobacillus bul
garicus)による発酵が阻害されることを報告しており、
卵中には乳酸菌の増殖を抑制する因子が存在することも
示唆されている。
【0006】また、乳製品など多くの発酵食品では、人
為的な微生物利用が行われる以前から、自然発酵によっ
て得られる食品(発酵乳、漬け物など)が古くから存在
し、世界各地で食されてきた。このため、これらの自然
発酵食品を改良する形で工業的生産が行われるようにな
った例が多い。しかし、卵製品ではこのような伝統的な
自然発酵食品が存在しなかったために、微生物利用その
ものに対する関心が低く、積極的な検討が十分に行われ
てこなかった原因ともなっていた。
【0007】そこで、乳酸菌やビフィズス菌などの腸管
由来微生物を利用した発酵卵製品を新たに製品化しよう
とする場合には、以下の課題を解決することが必要であ
る。第1には、糖含量の低い卵において乳酸菌やビフィ
ズス菌を活発に増殖させ、良好に発酵を行わせることで
ある。すなわち、卵に含まれる遊離の糖質(主としてグ
ルコース)は全卵で約0.6%(卵黄で約0.7%)で
あり、これは乳酸菌やビフィズス菌が盛んに利用されて
いる発酵乳製品の原料である牛乳の糖含量(約4.5
%)に比べると著しく少ない。このため、糖類をエネル
ギー源として増殖する乳酸菌やビフィズス菌を液状卵に
接種しても十分な発酵は行われない。従って、乳酸菌や
ビフィズス菌が旺盛に増殖できるようなエネルギー源を
卵に補給する必要がある。
【0008】第2には、エネルギー源が十分に補給され
た卵(液状卵)において旺盛な増殖能を有するととも
に、発酵卵製品に良好な風味を与えるような適切な菌株
の選択も必要となる。増殖能については、例えば、糖含
量の多い牛乳においても良好な増殖を行えない乳酸菌や
ビフィズス菌が多く存在することが古くから知られてい
る。また、この出願の発明者によって食肉製品への腸管
由来乳酸菌の利用に関する発明が提案(特願平7−25
9334号:特開平9−74995号)されたが、糖の
添加によりエネルギー源が十分な原料を用いた場合で
も、増殖性に優れ、嗜好性などの面においても良好な品
質を備えた発酵食肉製品を製造可能な菌株はごく限られ
たものであることが示されている。また風味の点につい
ては、通常、微生物が増殖した卵は激しい硫黄臭を呈す
るため、液状卵を発酵させる場合、不快臭を伴わない菌
株の選択が非常に重要である。
【0009】第3には、発酵過程を伴う食品は製造に要
する設備と時間のために、製造コストのかさむことが否
めない。卵製品においても発酵を行った場合、同様のコ
スト増が予測される。そこで、これを補うために良好な
嗜好性を有すると共に他の明確な付加価値を製品に付与
する必要がある。
【0010】この出願の発明は、以上のとおりの事情に
鑑みてなされたものであって、ヒト腸管由来の微生物を
卵中で活発に増殖させて発酵させ、嗜好性等の品質面に
も優れ、かつ付加価値の高い発酵卵製品を製造する方法
と、この方法によって得られた新規な卵製品等を提供す
ることを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の目的を達成するものとして、糖類を添加した液状卵に
ラクトバチラス・アシドフィラス群に属する菌株を除く
ヒト腸管由来の乳酸菌を添加して発酵させることを特徴
とする卵製品の製造方法を提供する。
【0012】また、この出願の発明は、上記方法により
製造された卵製品であって、ラクトバチラス・アシドフ
ィラス群に属する菌株を除くヒト腸管由来の乳酸菌の生
菌を含有していることを特徴とする卵製品を提供する。
【0013】さらにこの出願の発明は、上記の卵製品を
主原料あるいは副原料として製造された卵加工食品をも
提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】この出願の発明の方法は、乳酸菌
がエネルギー源として利用可能な糖類、あるいはそれら
の糖類を含む素材を添加した液状卵(液状全卵あるいは
液状卵黄)を用い、適切に選択された菌株を使用するこ
とにより、ヒト腸管由来の乳酸菌を用いて液状卵を発酵
させることに成功し、完成されたものである。
【0015】この出願の発明の方法において原料の液状
卵に添加する糖類は、食品学的に許容されるものであっ
て、乳酸菌がエネルギー源として利用できるものであれ
ば特段の制限はなく、マンノース、フルクトース、ガラ
クトース、スクロース、ラクトース、マンニトール等を
適宜に選択して用いることができる。また、糖類を添加
する割合は、通常、原料液状卵の重量に対して1.0%
程度であるが、菌株の種類等により適宜に増減すること
ができる。
【0016】この出願の発明で使用するヒト腸管由来の
乳酸菌は、糖類を添加した液状卵において速やかな増殖
を示すと共に、風味良好な製品となる菌株を選択する点
が重要である。しかし、このような菌株はある程度広範
囲なスクリーニング作業を実施することにより得られる
ため、特別な菌株だけに限定されることはない。ただ
し、発酵乳製品によく利用されている腸管由来の乳酸菌
であるラクトバチラス・アシドフィラス(Lactobaci1lus
acidophilus)群に属する菌株は、糖類を添加した場合
でも液状卵における増殖が緩慢であったり、風味が劣っ
たりするものが多いため、この発明に使用する菌株とし
て適したものであるとは言えない。従って、スクリーニ
ングの対象は従来、発酵乳製品にスターターとして利用
されてきた菌株に限定して行うべきではない。
【0017】なお、この出願の発明で使用するラクトバ
チラス・アシドフィラス群に属する菌株を除くヒト腸管
由来の乳酸菌は、腸管内容物を分離源とした菌株に限定
されるものではない。すなわち、他の分離源から得た菌
株であっても、胃酸や胆汁酸に対する十分な耐性を示
し、ヒトが摂取後に腸内細菌となりうる菌株を全て含む
ものである。一方、ヨーグルト等発酵乳の製造の場合の
ように、製品中において生きた状態で存在しても、胃酸
や胆汁酸に対する耐性が十分に備わっていないため、製
品を摂取後、消化管を通過するときに死滅してしまい、
生菌として消化管内でヒトに対する作用を示すことがで
きない。乳酸菌はこの発明の範囲には入らない。この発
明において使用する乳酸菌は、具体的には、ラクトバチ
ラス・アシドフィラス群に属する菌株を除く腸管内の常
在乳酸菌であるラクトバチラス(Lactobacillus) 属およ
びエンテロコッカス(Enterococcus)属のものが主として
該当する。ただし、これらの属名はこの発明の出願時点
における学術的分類に基づくものであり、将来において
属名の変更が生じた場合はこの限りではない。
【0018】また、この出願の発明に使用する卵は、鶏
卵やウズラ卵、アヒル卵等であるが、これらの一般的な
食用卵に限定されるものではなく、他の鳥類の卵すべて
を対象として実施することができる。
【0019】この出願の発明の方法によって製造された
発酵液状卵は、短期間であれば冷蔵により、長期間であ
れば冷凍あるいは凍結乾燥により、乳酸菌の生存を維持
した状態で保存することができる。なお、加熱殺菌を行
わない液状卵は微生物汚染を受けやすいため、従来は保
存期間がきわめて短かったが、この発明の発酵液状卵は
微生物汚染を受けにくいため、保存期間を長くした場合
も安全性が保たれる。
【0020】さらに、この出願の発明の発酵液状卵は、
必要に応じて他の素材を添加し、加工することにより、
他の卵製品や加工食品の製造に利用できる。このような
加工食品としては、マヨネーズ様食品などのドレッシン
グ類を例示することができる。マヨネーズは卵(卵黄)
を主原料とする食品であるが、その製造には食酢(酢
酸)を原料として添加している。乳酸菌を利用したこの
発明の発酵液卵を利用した場合、それらの微生物の生産
する有機酸(乳酸)により、製造過程で食酢を添加する
必要がなくなる利点がある。その他、アイスクリームな
どの冷菓類も貯蔵中の乳酸菌の生菌数維持が良好に行え
ることから、発酵液状卵の利用に適した加工食品であ
る。
【0021】次に試験例を示してこの出願の発明を詳し
く説明する。 <試験例1>この試験は、糖類を添加した液状卵がヒト
腸管由来の乳酸菌を利用して発酵可能であることを示す
ために行った。 (1)試料の調製 ほとんどの乳酸菌がエネルギー源として利用可能な糖で
あるグルコースを1%量添加した液状卵(液状全卵およ
び液状卵黄)を調製した。
【0022】ヒト腸管由来の乳酸菌としてはラクトバチ
ラス(Lactobacillus) 属に属する65株を用い、供試菌
株とした。 (2)試験方法 供試菌株を上記液状卵に添加(液状卵1g当たり約10
6個)し、37℃で24時間培養し、菌の増殖の程度を
調べた。なお、乳酸菌は、増殖に伴い乳酸や酢酸といっ
た有機酸を生産し、培養液のpHを低下させるため、こ
のpHの低下を指標にして増殖程度を判定した。 (3)試験結果 供試菌株65株中、液状卵のpHを4.5以下に低下さ
せることができたのはラクトバチラス(Lactobacillus)
属の4株であった。これらのうち、ラクトバチラス(Lac
tobacillus) 属の4株中で発酵後の液状卵の香りが最も
良好であったラクトバチラス・サリバリウス・サブスピ
ーシーズ・サリシニウス(Lactobacillussalivarius sub
sp. salicinus) K231を選択し、以下の試験例およ
び実施例に用いた。
【0023】なお、糖類を添加した液状卵で増殖できる
腸管由来の乳酸菌はここで得られた菌株以外にも存在す
ると考えられるため、この出願の発明は特定の菌株を限
定して利用するものではない。ただし、増殖が速く、好
ましい風味を与える菌株を選択することが製品製造上は
重要である。さらに、生理的効果の高い株の使用は製品
の付加価値を高めることができる。また、上記の菌株に
よる液状卵の発酵には特別な方法を必須とはしないが、
腸管由来の乳酸菌の多くは酸素の存在が増殖の妨げにな
るため、発酵は適当な方法で嫌気的(炭酸ガス置換等)
に行うことが望ましい。 <試験例2>この試験は、液状卵に添加する糖類の量を
変えることにより乳酸菌の増殖を調節し、液状卵の発酵
程度が制御可能かを調べるために行った。 (1)試料の調製 液状卵黄にグルコースを0〜2.0%となるように添加
し、ラクトバチラス・サリバリウス・サブスピーシーズ
・サリシニウス(Lactobacillus salivarius subsp. sal
icinus) K231を接種(液状卵1g当たり約10
6個)、培養(37℃、12〜72時間)した。 (2)試験方法 培養後の液状卵黄のpHを測定することにより、増殖程
度を判定した。 (3)試験結果 ラクトバチラス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サ
リシニウス(Lactobacillus salivarius subsp. salicin
us) K231の結果は表1に示した通りである。
【0024】
【表1】 表1の結果からも明らかなように、培養開始から一定時
間経過後、液状卵中におけるグルコースの消失により、
pHの低下が停止した。従って、この発明の方法におい
て、グルコースなど糖類の添加量を変えることによっ
て、発酵程度を容易にコントロール可能である。表1で
は液状卵黄の場合の結果を示したが、液状全卵を用いた
場合もほぼ同様な結果が得られた。また、液状卵に添加
する糖類についてはグルコース以外のものでも同様の結
果が得られた。具体的には、ラクトバチラス・サリバリ
ウス・サブスピーシーズ・サリシニウス(Lactobacillus
salivarius subsp. salicinus) K231では、マンノ
ース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、ラク
トース、マンニトールの液状卵への添加が有効であっ
た。液状卵への糖類の補給は、乳製品(粉乳など)、糖
蜜、果汁、野菜汁など高濃度の糖類を含む素材の利用に
よっても可能である。 <試験例3>この試験は、乳酸菌を用いて調製した発酵
液状卵の貯蔵性を検討するために行った。 (1)試料の調製 液状卵黄にグルコースを1%となるように添加し、ラク
トバチラス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サリシ
ニウス(Lactobacillus salivarius subsp. salicinus)
K231を接種(液状卵1g当たり約106個)、培養
(37℃、24時間)し、発酵液状卵黄を得た。 (2)試験方法 上記の発酵液状卵黄をそれぞれ4℃で冷蔵保存、−55
℃で冷凍保存、凍結乾燥後室温(25℃)保存し、一定
期間経過後に乳酸菌の生存を調べた。 (3)試験結果 3種の保存方法ともに、14日間経過後においても乳酸
菌の生存が認められた。ただし、冷蔵保存の場合、7日
間以上の保存では生菌数の減少が大きくなるため、短期
間の保存には冷蔵保存が、長期間の保存には冷凍あるい
は凍結乾燥による保存が適することも判明した。
【0025】以上のとおりのこの試験結果から、適切な
方法の選択により発酵液状卵における乳酸菌の生存を保
存期間中に維持することができることが確認された。次
に実施例を示してこの発明をさらに詳細かつ具体的に説
明するが、この発明は以下の例に限定されるものではな
い。
【0026】
【実施例】実施例1 卵製品としてマヨネーズ様食品を製造した。 (1)製造方法 新鮮な鶏卵より得た液状卵黄300gに3gのグルコー
スを加え、これにラクトバチラス・サリバリウス・サブ
スピーシーズ・サリシニウス(Lactobacillus salivariu
s subsp. salicinus) K231を接種(約5×108
個)し、培養(37℃、24時間)して得た発酵液状卵
黄(pH4.5)をミキサーで攪拌しながら、700g
の市販サラダオイル(なたね油と大豆油を原材料とする
食用調合油)を徐々に添加し、マヨネーズ様食品を製造
した。また、比較のために、酢酸でpH4.5に調整し
た液状卵黄を使用して、マヨネーズ様食品を製造した。
なお、通常のマヨネーズの製造に添加する食塩や香辛料
などは、官能試験を実施する際に試料間の差を判定する
妨げとなるため、添加しなかった。 (2)製造結果 乳酸菌により発酵させた液状卵黄を利用して製造したマ
ヨネーズ様食品の風味は良好であり、比較のために製造
した酢酸を用いて製造したものに比べ遜色がなかった。
30名のパネラーにより行った2種のマヨネーズの官能
試験(順位法)の結果では、総合評価において2者間で
有意な差は認められなかった。乳酸菌により発酵させた
液状卵黄を利用したマヨネーズ様食品は製造後14日間
以上冷蔵(4℃)保存した場合も乳酸菌の生存が確認さ
れた。
【0027】さらにまた、乳酸菌により発酵させた液状
卵黄を利用したマヨネーズ様食品1g当たりに、人為的
にサルモネラ菌(Salmone1la enteritidis NIAH10590)、
大腸菌(Escherichia coli JCM5491)、黄色ブドウ球菌(S
taphy lococcus aureus JCM2413)といった有害細菌を1
000個接種したところ、冷蔵(4℃)および室温(2
5℃)に放置した場合ともに、これらの有害細菌は24
時間以内に検出されなくなった。この結果は乳酸菌を含
むマヨネーズ様食品にはある種の殺菌作用があることを
意味しているが、これは主として乳酸菌が液状卵黄中に
生産した乳酸などの有機酸に起因するものと考えられ
る。したがって、このような効果はここで用いた以外の
乳酸菌を利用した場合も同様に期待できるものである。
なお、この実施例では液状卵黄を用いたが、液状全卵を
利用したマヨネーズ様食品の場合も、同様の結果が得ら
れた。また、原料である発酵液状卵に直接、サルモネラ
菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌を同様に接種した場合も、
保存中に速やかにこれらの有害細菌は消失することを確
認している。したがって、乳酸菌を利用した発酵液状卵
およびこれを原料とした加工食品は有害細菌の汚染を受
けにくく、食品術生学的に安全性の高い製品であること
が確認された。 実施例2 ヒト腸管由来の乳酸菌を用いて調製した発酵液状卵を利
用した加工食品としてアイスクリームを製造した。 (1)製造方法 実施例1と同様にして得た発酵液状卵黄(pH4.5)
の40gに、牛乳350ml,生クリーム200ml,
砂糖40gを用いてアイスクリームミックスを調製し、
アイスクリーマーによりアイスクリームを製造した。ま
た、比較のために、未処理の液状卵黄を使用したアイス
クリームを製造した。 (2)製造結果 乳酸菌により発酵させた液状卵黄を利用して製造したア
イスクリームの風味は良好であり、コントロールに比べ
遜色がなかった。30名のパネラーにより行った2種の
アイスクリームの官能試験(順位法)の結果では、総合
評価においてラクトバチラス・サリバリウス・サブスピ
ーシーズ・サリシニウス(Lactobacillussalivarius sub
sp. salicinus) K231を用いて調製した発酵液状卵
黄から製造したアイスクリームはコントロールに対して
有意に評価が高かった。また、乳酸菌により発酵させた
液状卵黄を利用したアイスクリームは製造後28日間以
上冷凍保存した場合も、製品中に乳酸菌の生存が確認さ
れた。
【0028】なお、腸管由来の乳酸菌を利用して得られ
る発酵液状卵は、上記の例以外にも、加工食品の主原料
あるいは副原料として幅広く使用可能であるが、製品に
生きた乳酸菌の効果を期待する場合、加熱等による殺菌
工程を経ないものが適している。
【0029】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、この発明
によって、ヒト腸管由来の乳酸菌を卵中で活発に増殖、
発酵させて新規な卵製品を製造する方法が提供される。
さらにこの方法によって、嗜好性等の品質面にも優れ、
しかも有害微生物の増殖が抑制された安全性の高い卵製
品および卵加工食品が提供される。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 糖類を添加した液状卵にラクトバチラス
    ・アシドフィラス群に属する菌株を除くヒト腸管由来の
    乳酸菌を添加して発酵させることを特徴とするヒト腸管
    由来の乳酸菌を利用した卵製品の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1の方法により製造された卵製品
    であって、ラクトバチラス・アシドフィラス群に属する
    菌株を除くヒト腸管由来の乳酸菌の生菌を含有している
    ことを特徴とする卵製品。
  3. 【請求項3】 請求項2の卵製品を主原料あるいは副原
    料として製造された卵加工食品。
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Cited By (5)

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