JP3231654B2 - ヒト腸管由来のビフィズス菌を利用した卵製品の製造方法 - Google Patents

ヒト腸管由来のビフィズス菌を利用した卵製品の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用全野】この出願の発明は、ヒトの健康に
好ましい影響を与えていることが知られるヒト腸管内に
存在するビフィズス菌を利用した卵製品の製造方法とそ
の方法によって製造された卵製品等に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】微生物は古くから食品製造に利用されて
きたが、従来の微生物利用は主として風味や貯蔵性の向
上を目的としていた。しかし、近年、ヒトの消化管内に
棲息する乳酸菌やビフィズス菌の生理的な作用が科学的
に検討され、これらの微生物が宿主であるヒトに対して
好ましい作用(有害微生物排除、整腸、免疫賦活など)
を有していることが明らかにされている。このため、こ
のような腸管由来の乳酸菌やビフィズス菌を利用した食
品素材、発酵乳製品、生菌製剤等が数多く開発されてい
る。これらの製品に関連した技術としては、例えば、乳
酸菌を利用した生菌製剤(特開平5−292947号公
報)、ビフィズス菌を利用した発酵乳製品(特開平4−
273734号公報)などが知られており、腸管由来微
生物の機能利用に対して注目が集められている。
【0003】また、この出願の発明者によって、腸管由
来の乳酸菌の食肉製品への利用も提案されている(特願
平7−259334号;特開平9−74995号)。一
方、卵製品への微生物利用の例は、他の動物性食品であ
る乳製品や食肉製品に比べると乏しく、産業的には乾燥
卵を製造する際に、変色防止を目的とした液状卵の糖類
除去に酵母や乳酸菌などの発酵作用が利用されてきた程
度である。従って、乳酸菌やビフィズス菌を利用した卵
製品の製造に関する試みは少なく、以下が知られている
程度である。すなわち、Lin とCunningham(Journal of
Food Science,49.1444−1452.1984)は豆乳や脱脂乳
などを液状卵白と混合し、これにヨーグルト用スタータ
ー乳酸菌であるブルガリア菌(Lactobacillus bulgaricu
s) とサーモフィラス菌(Streptococcus thermophilus)
を接種し、ヨーグルト様製品を試作している。また、液
状卵の有害微生物制御の観点から、Raccach とBaker(Jo
urnal of Food Science, 44,90−92, 1979)は液状全卵
に食肉製品用のスターター乳酸菌を接種することによ
り、汚染細菌であるシュードモナス菌(Pseudomonas) の
増殖を抑制できることを実験的に示している。
【0004】一方、マヨネーズ様食品の製造について
は、特公昭62−11591号公報は乳酸菌で発酵させ
た乳製品を、特公平7−102102号公報は乳酸菌や
ビフィズス菌で発酵させた野菜処理物を、それぞれ材料
として配合する技術が提案されている。また、卵を直接
発酵させることによる食品を製造する技術としては、ス
トレプトコッカス(Streptococcus)属およびラクトバチ
ラス(Lactobacillus) 属の乳酸菌を液状卵に接種、発酵
させ、これをマーガリン、ヨーグルト様食品、冷菓類の
原料として利用する技術が知られている(特開昭53−
50362号公報、特公昭58−13138号公報、特
公昭59−20339号公報)。しかし、今日に至るま
でヒト腸管由来の乳酸菌やビフィズス菌を用いて液状卵
を直接発酵させ、付加価値の高い食品を製造する技術は
全く知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のとおり、腸管由
来の乳酸菌やビフィズス菌を直接利用した発酵卵製品は
これまでに製品化されていないだけではなく、文献上の
記載も見あたらない。その理由の一つとしては、卵中の
糖類含量が著しく少ないために、腸管由来の微生物が十
分に増殖を行えないことが挙げられる。また、Cardwe11
とSrikajonkeid(Journal of Dairy Science,69,225,
1986)は、脱脂乳に卵白を0 .5 %以上添加するとヨー
グルト用乳酸菌であるブルガリア菌(Lactobacillus bul
garicus)による発酵が阻害されることを報告しており、
卵中には乳酸菌の増殖を抑制する因子が存在することも
示唆されている。
【0006】また、乳製品など多くの発酵食品では、人
為的な微生物利用が行われる以前から、自然発酵によっ
て得られる食品(発酵乳、漬け物など)が古くから存在
し、世界各地で食されてきた。このため、これらの自然
発酵食品を改良する形で工業的生産が行われるようにな
った例が多い。しかし、卵製品ではこのような伝統的な
自然発酵食品が存在しなかったために、微生物利用その
ものに対する関心が低く、積極的な検討が十分に行われ
てこなかった原因ともなっていた。
【0007】そこで、乳酸菌やビフィズス菌などの腸管
由来微生物を利用した発酵卵製品を新たに製品化しよう
とする場合には、以下の課題を解決することが必要であ
る。第1には、糖含量の低い卵において乳酸菌やビフィ
ズス菌を活発に増殖させ、良好に発酵を行わせることで
ある。すなわち、卵に含まれる遊離の糖質(主としてグ
ルコース)は全卵で約0.6%(卵黄で約0.7%)で
あり、これは乳酸菌やビフィズス菌が盛んに利用されて
いる発酵乳製品の原料である牛乳の糖含量(約4.5
%)に比べると著しく少ない。このため、糖類をエネル
ギー源として増殖する乳酸菌やビフィズス菌を液状卵に
接種しても十分な発酵は行われない。従って、乳酸菌や
ビフィズス菌が旺盛に増殖できるようなエネルギー源を
卵に補給する必要がある。
【0008】第2には、エネルギー源が十分に補給され
た卵(液状卵)において旺盛な増殖能を有するととも
に、発酵卵製品に良好な風味を与えるような適切な菌株
の選択も必要となる。増殖能については、例えば、糖含
量の多い牛乳においても良好な増殖を行えない乳酸菌や
ビフィズス菌が多く存在することが古くから知られてい
る。また、この出願の発明者によって食肉製品への腸管
由来乳酸菌の利用に関する発明が提案(特願平7−25
9334号:特開平9−74995号)されたが、糖の
添加によりエネルギー源が十分な原料を用いた場合で
も、増殖性に優れ、嗜好性などの面においても良好な品
質を備えた発酵食肉製品を製造可能な菌株はごく限られ
たものであることが示されている。また風味の点につい
ては、通常、微生物が増殖した卵は激しい硫黄臭を呈す
るため、液状卵を発酵させる場合、不快臭を伴わない菌
株の選択が非常に重要である。
【0009】第3には、発酵過程を伴う食品は製造に要
する設備と時間のために、製造コストのかさむことが否
めない。卵製品においても発酵を行った場合、同様のコ
スト増が予測される。そこで、これを補うために良好な
嗜好性を有すると共に他の明確な付加価値を製品に付与
する必要がある。
【0010】この出願の発明は、以上のとおりの事情に
鑑みてなされたものであって、ヒト腸管由来の微生物を
卵中で活発に増殖させて発酵させ、嗜好性等の品質面に
も優れ、かつ付加価値の高い発酵卵製品を製造する方法
と、この方法によって得られた新規な卵製品等を提供す
ることを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の目的を達成するものとして、糖類を添加した液状卵に
ヒト腸管由来のビフィズス菌を添加して発酵させること
を特徴とする卵製品の製造方法を提供する。
【0012】また、この出願の発明は、上記方法により
製造された卵製品であって、ヒト腸管由来のビフィズス
菌の生菌を含有していることを特徴とする卵製品を提供
する。
【0013】さらにこの出願の発明は、上記の卵製品を
主原料あるいは副原料として製造された卵加工食品をも
提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】この出願の発明の方法は、ビフィ
ズス菌がエネルギー源として利用可能な糖類、あるいは
それらの糖類を含む素材を添加した液状卵(液状全卵あ
るいは液状卵黄)を用い、適切に選択された菌株を使用
することにより、ヒト腸管由来のビフィズス菌を用いて
液状卵を発酵させることに成功し、完成されたものであ
る。
【0015】この出願の発明の方法において原料の液状
卵に添加する糖類は、食品学的に許容されるものであっ
て、ビフィズス菌がエネルギー源として利用できるもの
であれば特段の制限はなく、マンノース、フルクトー
ス、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マンニト
ール等を適宜に選択して用いることができる。また、糖
類を添加する割合は、通常、原料液状卵の重量に対して
1.0%程度であるが、菌株の種類等により適宜に増減
することができる。
【0016】この出願の発明で使用するヒト腸管由来の
ビフィズス菌は、糖類を添加した液状卵において速やか
な増殖を示すと共に、風味良好な製品となる菌株を選択
する点が重要である。しかし、このような菌株はある程
度広範囲なスクリーニング作業を実施することにより得
られるため、特別な菌株だけに限定されることはない。
なお、ビフィズス菌と同様の効果はヒト腸管由来の乳酸
菌の場合にも得られることが発明者によって確認されて
いる。ただし、発酵乳製品によく利用されている腸管由
来の乳酸菌であるラクトバチラス・アシドフィラス(Lac
tobacillus acidophilus)群に属する菌株は、糖類を添
加した場合でも液状卵における増殖が緩慢であったり、
風味が劣ったりするものが多いため、この発明に使用す
る菌株として適したものであるとは言えない。
【0017】上記のことから、スクリーニングの対象は
従来、発酵乳製品にスターターとして利用されてきた菌
株に限定して行うべきではない。なお、この出願の発明
で使用するヒト腸管由来のビフィズス菌は、腸管内容物
を分離源とした菌株に限定されるものではない。すなわ
ち、他の分離源から得た菌株であっても、胃酸や胆汁酸
に対する十分な耐性を示し、ヒトが摂取後に腸内細菌と
なりうる菌株を全て含むものである。この発明において
使用するビフィズス菌としては、ビフィドバクテリウム
(Bifidobacterium) 属に属する細菌を使用することがで
きる。ただし、この属名はこの発明の出願時点における
学術的分類に基づくものであり、将来において属名の変
更が生じた場合はこの限りではない。
【0018】また、この出願の発明に使用する卵は、鶏
卵やウズラ卵、アヒル卵等であるが、これらの一般的な
食用卵に限定されるものではなく、他の鳥類の卵すべて
を対象として実施することができる。
【0019】この出願の発明の方法によって製造された
発酵液状卵は、短期間であれば冷蔵により、長期間であ
れば冷凍あるいは凍結乾燥により、ビフィズス菌の生存
を維持した状態で保存することができる。なお、加熱殺
菌を行わない液状卵は微生物汚染を受けやすいため、従
来は保存期間がきわめて短かったが、この発明の発酵液
状卵は微生物汚染を受けにくいため、保存期間を長くし
た場合も安全性が保たれる。
【0020】さらに、この発明の発酵液状卵は、必要に
応じて他の素材を添加し、加工することにより、他の卵
製品や加工食品の製造に利用できる。このような加工食
品としては、マヨネーズ様食品などのドレッシング類を
例示することができる。マヨネーズは卵(卵黄)を主原
料とする食品であるが、その製造には(酢酸)を原料と
して添加してい。ビフィズス菌を利用したこの発明の発
酵液卵を利用した場合、微生物の生産する有機酸(酢
酸)により、製造過程で食酢を添加する必要がなくなる
利点がある。その他、アイスクリームなどの冷菓類も貯
蔵中のビフィズス菌の生菌数維持が良好に行えることか
ら、発酵液状卵の利用に適した加工食品である。
【0021】次に試験例を示してこの出願の発明を詳し
く説明する。 <試験例1> この試験は、糖類を添加した液状卵がヒト腸管由来のビ
フィズス菌を利用して発酵可能であることを示すために
行った。また、参考のために乳酸菌についても発酵可能
であることを示すために試験を行った。 (1)試料の調製 ほとんどのビフィズス菌がエネルギー源として利用可能
な糖であるグルコースを1%量添加した液状卵(液状全
卵および液状卵黄)を調製した。
【0022】ヒト腸管由来の乳酸菌としてはラクトバチ
ラス(Lactobacillus) 属に属する65株を用い、ビフィ
ズス菌としてはビフィドバクテリウム(Bifidobacteriu
m) 属に属する28株を供試菌株とした。 (2)試験方法 供試菌株を上記液状卵に添加(液状卵1g当たり約10
6個)し、37℃で24時間培養し、菌の増殖の程度を
調べた。なお、乳酸菌およびビフィズス菌は、増殖に伴
い乳酸や酢酸といった有機酸を生産し、培養液のpHを
低下させるため、このpHの低下を指標にして増殖程度
を判定した。 (3)試験結果 供試菌株65株中、液状卵のpHを4.5以下に低下さ
せることができたのは、参考例乳酸菌の場合のラクトバ
チラス(Lactobacillus) 属の4株、そして、ビフィドバ
クテリウム(Bifidobacterium) 属の1株であった。これ
らのうち、ラクトバチラス(Lactobacillus) 属の4株中
で発酵後の液状卵の香りが最も良好であったラクトバチ
ラス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サリシニウス
(Lactobacillus salivarius subsp. salicinus) K23
1と、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium) 属の1
株であるビフィドバクテリウム・インファンティス(Bif
idobacterium infantis)K188を選択し、以下の試験
例および実施例に用いた。
【0023】なお、糖類を添加した液状卵で増殖できる
腸管由来のビフィズス菌はここで得られた菌株以外にも
存在すると考えられるため、この出願の発明は特定の菌
株を限定して利用するものではない。ただし、増殖が速
く、好ましい風味を与える菌株を選択することが製品製
造上は重要である。さらに、生理的効果の高い株の使用
は製品の付加価値を高めることができる。また、上記の
菌株による液状卵の発酵には特別な方法を必須とはしな
いが、腸管由来のビフィズス菌の多くは酸素の存在が増
殖の妨げになるため、発酵は適当な方法で嫌気的(炭酸
ガス置換等)に行うことが望ましい。 <試験例2> この試験は、液状卵に添加する糖類の量を変えることに
より、参考例としての乳酸菌の場合とともに、ビフィズ
ス菌の増殖を調節し、液状卵の発酵程度が制御可能かを
調べるために行った。 (1)試料の調製 液状卵黄にグルコースを0〜2.0%となるように添加
し、ラクトバチラス・サリバリウス・サブスピーシーズ
・サリシニウス(Lactobacillus salivarius subsp. sal
icinus) K231およびビフィドバクテリウム・インフ
ァンティス(Bifidobacterium infantis)K188を接種
(液状卵1g当たり約106個)、培養(37℃、12
〜72時間)した。 (2)試験方法 培養後の液状卵黄のpHを測定することにより、増殖程
度を判定した。 (3)試験結果 参考例ラクトバチラス・サリバリウス・サブスピーシー
ズ・サリシニウス(Lactobacillus salivarius subsp. s
alicinus) K231の結果は表1に示した通りであり、
ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacte
rium infantis)K188の結果は表2に示した通りであ
る。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】表1および表2の結果からも明らかなよう
に、培養開始から一定時間経過後、液状卵中におけるグ
ルコースの消失により、pHの低下が停止した。従っ
て、この出願の発明の方法において、グルコースなど糖
類の添加量を変えることによって、発酵程度を容易にコ
ントロール可能である。表1では液状卵黄の場合の結果
を示したが、液状全卵を用いた場合もほぼ同様な結果が
得られた。また、液状卵に添加する糖類についてはグル
コース以外のものでも同様の結果が得られた。具体的に
は、参考例乳酸菌ラクトバチラス・サリバリウス・サブ
スピーシーズ・サリシニウス(Lactobacillus salivariu
s subsp. salicinus) K231では、マンノース、フル
クトース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マ
ンニトールの液状卵への添加が有効であり、ビフィドバ
クテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infan
tis)K188では、フルクトース、ガラクトース、スク
ロース、ラクトースが有効であった。液状卵への糖類の
補給は、乳製品(粉乳など)、糖蜜、果汁、野菜汁など
高濃度の糖類を含む素材の利用によっても可能である。 <試験例3> この試験は、参考例乳酸菌やビフィズス菌を用いて調製
した発酵液状卵の貯蔵を検討するために行った。 (1)試験の調製 液状卵黄にグルコースを1%となるように添加し、参考
例ラクトバチラス・サリバリウス・サブスピーシーズ・
サリシニウス(Lactobacillus salivarius subsp. salic
inus) K231およびビフィドバクテリウム・インファ
ンティス(Bifidobacterium infantis)K188の各々を
接種(液状卵1g当たり約106個)、培養(37℃、
24時間)し、発酵液状卵黄を得た。 (2)試験方法 上記の発酵液状卵黄をそれぞれ4℃で冷蔵保存、−55
℃で冷凍保存、凍結乾燥後室温(25℃)保存し、一定
期間経過後に乳酸菌及びビフィズス菌の生存を調べた。 (3)試料結果 3種の保存方法ともに、14日間経過後においても乳酸
菌およびビフィズス菌の生存が認められた。ただし、冷
蔵保存の場合、7日間以上の保存では生菌数の減少が大
きくなるため、短期間の保存には冷蔵保存が、長期間の
保存には冷凍あるいは凍結乾燥による保存が適すること
も判明した。
【0027】以上のとおりのこの試験結果から、適切な
方法の選択により発酵液状卵における乳酸菌やビフィズ
ス菌の生存を保存期間中に維持することができることが
確認された。
【0028】次に実施例を示してこの発明をさらに詳細
かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例に限定さ
れるものではない。
【0029】
【実施例】実施例1 卵製品としてマヨネーズ様食品を製造した。 (1)製造方法 新鮮な鶏卵より得た液状卵黄300gに3gのグルコー
スを加え、これにビフィドバクテリウム・インファンテ
ィス(Bifidobacterium infantis)K188を接種(約5
×108 個)し、培養(37℃、24時間)して得た発
酵液状卵黄(pH4.5)をミキサーで攪拌しながら、
700gの市販サラダオイル(なたね油と大豆油を原材
料とする食用調合油)を徐々に添加し、マヨネーズ様食
品を製造した。また、比較のために、酢酸でpH4.5
に調整した液状卵黄を使用して、マヨネーズ様食品を製
造した。なお、通常のマヨネーズの製造に添加する食塩
や香辛料などは、官能試験を実施する際に試料間の差を
判定する妨げとなるため、添加しなかった。 (2)製造結果 ビフィズス菌により発酵させた液状卵黄を利用して製造
したマヨネーズ様食品の風味は良好であり、比較のため
に製造した酢酸を用いて製造したものに比べ遜色がなか
った。30名のパネラーにより行った2種のマヨネーズ
の官能試験(順位法)の結果では、総合評価において2
者間で有意な差は認められなかった。なお、有為差はな
かったものの、ビフィドバクテリウム・インファンティ
ス(Bifidobacterium infantis)K188により調製した
発酵液状卵黄から製造したマヨネーズ様食品は高い評価
を得た。これはビフィズス菌が有機酸として酢酸を生産
するため、通常のマヨネーズと共通した風味を与えるこ
とが一因と考えられる。また、ビフィズス菌により発酵
させた液状卵黄を利用したマヨネーズ様食品は製造後1
4日間以上冷蔵(4℃)保存した場合もビフィズス菌の
生存が確認された。
【0030】さらにまた、ビフィズス菌により発酵させ
た液状卵黄を利用したマヨネーズ様食品1g当たりに、
人為的にサルモネラ菌(Salmone1la enteritidis NIAH10
590)、大腸菌(Escherichia coli JCM5491)、黄色ブドウ
球菌(Staphy lococcus aureus JCM2413)といった有害細
菌を1000個接種したところ、冷蔵(4℃)および室
温(25℃)に放置した場合ともに、これらの有害細菌
は24時間以内に検出されなくなった。この結果はビフ
ィズス菌を含むマヨネーズ様食品にはある種の殺菌作用
があることを意味しているが、これは主としてビフィズ
ス菌が液状卵黄中に生産した酢酸などの有機酸に起因す
るものと考えられる。したがって、このような効果はこ
こで用いた以外のビフィズス菌を利用した場合も同様に
期待できるものである。なお、この実施例では液状卵黄
を用いたが、液状全卵を利用したマヨネーズ様食品の場
合も、同様の結果が得られた。また、原料である発酵液
状卵に直接、サルモネラ菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌を
同様に接種した場合も、保存中に速やかにこれらの有害
細菌は消失することを確認している。したがって、ビフ
ィズス菌を利用した発酵液状卵およびこれを原料とした
加工食品は有害細菌の汚染を受けにくく、食品術生学的
に安全性の高い製品であることが確認された。 実施例2 ヒト腸管由来のビフィズス菌を用いて調製した発酵液状
卵を利用した加工食品としてアイスクリームを製造し
た。 (1)製造方法 実施例1と同様にして得た発酵液状卵黄(pH4.5)
の40gに、牛乳350ml,生クリーム200ml,
砂糖40gを用いてアイスクリームミックスを調製し、
アイスクリーマーによりアイスクリームを製造した。ま
た、比較のために、未処理の液状卵黄を使用したアイス
クリームを製造した。 (2)製造結果 ビフィズス菌により発酵させた液状卵黄を利用して製造
したアイスクリームの風味は良好であり、コントロール
に比べ遜色がなかった。30名のパネラーにより行った
2種のアイスクリームの官能試験(順位法)の結果で
は、総合評価においてビフィドバクテリウム・インファ
ンティス(Bifidobacterium infantis)K188とコント
ロールの間には有意な差は認められなかった。また、ビ
フィズス菌により発酵させた液状卵黄を利用したアイス
クリームは製造後28日間以上冷凍保存した場合も、製
品中にビフィズス菌の生存が確認された。
【0031】なお、腸管由来のビフィズス菌を利用して
得られる発酵液状卵は、上記の例以外にも、加工食品の
主原料あるいは副原料として幅広く使用可能であるが、
製品に生きたビフィズス菌の効果を期待する場合、加熱
等による殺菌工程を経ないものが適している。
【0032】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、この発明
によって、ヒト腸管由来のビフィズス菌を卵中で活発に
増殖、発酵させて新規な卵製品を製造する方法が提供さ
れる。さらにこの方法によって、嗜好性等の品質面にも
優れ、しかも有害微生物の増殖が抑制された安全性の高
い卵製品および卵加工食品が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/32

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 糖類を添加した液状卵にヒト腸管由来の
    ビフィズス菌を添加して発酵させることを特徴とするヒ
    ト腸管由来のビフィズス菌を利用した卵製品の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1の方法により製造された卵製品
    であって、ヒト腸管由来のビフィズス菌の生菌を含有し
    ていることを特徴とする卵製品。
  3. 【請求項3】 請求項2の卵製品を主原料あるいは副原
    料として製造された卵加工食品。
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