JP2002004009A - 油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管およびその製造方法 - Google Patents
油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管およびその製造方法Info
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Abstract
低温靭性、優れた耐CO2腐食性を有する油井用高強度マ
ルテンサイト系ステンレス鋼管およびその製造方法を提
供する。 【解決手段】 C:0.05%以下、Si:0.50%以下、Mn:
0.30〜1.50%、P:0.03%以下、S:0.005 %以下、C
r:11.0〜17.0%、Ni:2.0 〜7.0 %、Mo:3.0 %以
下、Al:0.05%以下、V:0.20%以下、N:0.15%以
下、O:0.005 %以下を含み、かつCr+Mo+0.3Si −40
C−10N−Ni−0.3Mn ≦10 を満足する組成と、残留オ
ーステナイトを10%以下含む焼戻マルテンサイト組織と
する。
Description
ガスの油井、ガス井に使用される油井用マルテンサイト
系ステンレス鋼管に関し、特に炭酸ガス(CO2)、塩素イ
オン(Cl- )などを含む極めて腐食環境の厳しい油井、
ガス井で使用するに好適な、優れた耐食性、低温靭性お
よび降伏強さ:860MPa(125ksi)以上を有する油井用高
強度マルテンサイト系ステンレス鋼管に関する。
想される石油資源の枯渇化を考慮して、従来は省みられ
なかったような深層油田や、開発が一旦は放棄されてい
た腐食性の強いサワーガス田等の開発が、世界的規模で
盛んになっている。このような油田、ガス田は、一般に
深度が極めて深く、またその雰囲気は高温でかつ、CO
2 、Cl- 等を含む厳しい腐食環境となっている。したが
って、このような油田、ガス田で採掘に使用される油井
管は、高強度で、しかも耐食性を兼ね備えた材質が要求
される。
食性に優れた13%Crを含むマルテンサイト系ステンレス
鋼材が使用されるのが一般的である。使用環境の悪化に
伴い、13%Crのマルテンサイト系ステンレス鋼材にも、
より優れた耐食性等の特性を具備することが要求されて
いた。このような要求に対し、例えば、特開昭62-54063
号公報には、耐食性、耐応力腐食割れ性を改善した油井
管用マルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。
特開昭62-54063号公報に記載された油井管用マルテンサ
イト系ステンレス鋼では、炭化物を減少するために極低
C化し、P、Sの粒界への偏析を防止するために、P、
Sの低減、さらにはCaの添加を行うことにより耐応力腐
食割れ性が、またN、Moの添加を行うことにより耐食性
が、向上するとしている。
b、V、Zrの1種または2種以上を含有し、(Cr+M
o):10.5%以上に調整し、さらに単一なマルテンサイ
ト組織となるようにCr、Mo、Si、Ni含有量を調整した油
井用マルテンサイト系ステンレス鋼材が提案されてい
る。特開平2-243740号公報に記載された油井用マルテン
サイト系ステンレス鋼材では、上記したような構成とす
ることにより耐硫化物応力腐食割れ性が向上するとして
いる。しかし、特開昭62-54063号公報、特開平2-243740
号公報に記載された鋼材の強度は、たかだか降伏強さYS
で110ksi(758MPa)以下である。
高強度の油井管が要求されている。そして最近では、寒
冷地における油田開発も活発になってきており、高強度
に加えて優れた低温靭性を有することを要求されること
も多い。しかし、通常のマルテンサイト系ステンレス鋼
では、強度が95ksi を超えると靭性が極めて低下して使
用に耐えなくなるという問題があった。特開昭62-54063
号公報、特開平2-243740号公報に記載された鋼材の強度
は、降伏強さYSで110ksi(758MPa)以下の強度であり、
特開昭62-54063号公報、特開平2-243740号公報に記載さ
れた鋼材では、降伏強さYSで125ksi(860MPa)以上の高
強度とかつ高靱性をともに満足することは期待できな
い。
井、ガス井では、冷間加工を施した高価な2相ステンレ
ス鋼を用いざるを得なかった。このようなことから、油
井管用として、安価な13%Cr系で、優れた耐CO2 腐食性
を有し、しかも低温靭性に優れた高強度マルテンサイト
系ステンレス鋼管の開発が強く望まれていた。
来技術の問題に鑑み、13%Crを含むマルテンサイト系ス
テンレス鋼管であって、CO2 、Cl- 等を含む過酷な腐食
環境下においても優れた耐CO2 腐食性等の耐食性を示
し、かつ降伏強さYSで125ksi(860MPa)以上の高強度と
優れた低温靭性を有する油井用高強度マルテンサイト系
ステンレス鋼管およびその製造方法を提供することを目
的とする。
課題を達成するために、まず耐CO2 腐食性の点で油井管
に好適であると考えられている13%Crマルテンサイト系
ステンレス鋼管に着目し、このマルテンサイト系ステン
レス鋼管に降伏強さYSで860MPa以上の高強度と優れた低
温靭性を、耐食性とともに具備させるための方策につい
て鋭意研究した。
て、Cを従来より著しく低減し、Ni、Mo、Vを増量含有
し、さらにS、Si、Al、Oを低減するとともに、Cr、M
o、Si、C、N、Ni、Mnの含有量を一定の関係式を満足
するように調整することによって、良好な熱間加工性、
耐食性が確保されるとともに、YSで860MPa以上の高強度
でかつ優れた低温靭性が得られることを見出した。
れたものである。すなわち、第1の本発明は、mass%
で、C:0.05%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.30〜1.50
%、P:0.03%以下、S:0.005 %以下、Cr:11.0〜1
7.0%、Ni:2.0 〜7.0 %、Mo:3.0 %以下、Al:0.05
%以下、V:0.20%以下、N:0.15%以下、O:0.005
%以下を含み、かつ次(1)式 Cr+Mo+0.3Si −40C−10N−Ni−0.3Mn ≦10 ………(1) (ここに、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mn:各元素の含有
量(mass%))を満足し、残部Feおよび不可避的不純物
よりなる組成と、残留オーステナイトを面積率で10%以
下含有する組織とを有することを特徴とする耐食性、低
温靭性に優れ、降伏強さ:860MPa以上を有する油井用高
強度マルテンサイト系ステンレス鋼管であり、また、第
1の本発明では、前記組成に加えてさらに、mass%で、
Nb:0.20%以下を含有することが好ましく、また、第1
の本発明では、前記各組成に加えてさらに、mass%で、
Cu:3.5 %以下を含有することが好ましく、また、第1
の本発明では、前記各組成に加えてさらに、mass%で、
Ca:0.0005〜0.01%を含有することが好ましく、また、
第1の本発明では、前記各組成に加えてさらに、mass%
で、Ti:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.01%以
下、W:3.0 %以下のうち1種または2種以上を含有す
ることが好ましい。
05%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.30〜1.50%、P:0.
03%以下、S:0.005 %以下、Cr:11.0〜17.0%、Ni:
2.0〜7.0 %、Mo:3.0 %以下、Al:0.05%以下、V:
0.20%以下、N:0.15%以下、O:0.005 %以下を、次
(1)式 Cr+Mo+0.3Si −40C−10N−Ni−0.3Mn ≦10 ………(1) (ここに、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mn:各元素の含有
量(mass%))を満足するように含む組成を有する鋼素
材を、熱間加工により鋼管としたのち、該鋼管に焼戻し
温度を 500〜590 ℃とする焼戻処理を施すことを特徴と
する耐食性、低温靭性に優れる降伏強さ:860MPa以上級
油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方
法であり、第2の本発明では、前記焼戻処理前に、890
〜950 ℃に加熱したのち冷却する焼入処理を施してもよ
い。
ステンレス鋼管は、降伏強さYSが125ksi以上(860MPa以
上)の高強度を有し、低温靱性に優れた鋼管である。ま
ず、本発明鋼管の組成限定理由について説明する。なお
以下、mass%は単に%と記す。 C:0.05%以下 Cは、マルテンサイト系ステンレス鋼管の強度を確保す
るために必要な元素であるが、本発明ではNiを含有する
ため、多量に含有すると焼戻し時に鋭敏化が起こりやす
くなる。このため、本発明ではCは0.05%以下とした。
また、耐食性の観点からはCはできるだけ低減するのが
好ましいが、強度の確保を考慮して、Cは0.001 〜0.03
%の範囲とするのが好ましい。
素であるが、0.50%を超えると耐CO2 腐食性を低下さ
せ、さらに熱間加工性をも低下させる。このため、Siは
0.50%以下に限定した。 Mn:0.30〜1.50% Mnは、マルテンサイト系ステンレス鋼管の強度を確保す
るために必要な元素であり、本発明では0.30%以上の含
有を必要とするが、1.50%を超えて含有すると靭性に悪
影響を及ぼす。このため、Mnは0.30〜1.50%の範囲に限
定した。
および耐硫化物応力腐食割れ性をともに劣化させる元素
であり、できるだけ低減するのが望ましいが、極端な低
減は製造コストの上昇を招く。このため、Pは、工業的
に比較的安価に実施可能でかつ耐CO2 腐食性、耐CO2 応
力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性
を劣化させない範囲である0.03%以下とした。
製造過程における生産性向上のためにも、できるだけ低
減するのが望ましいが、極端な低減は製造コストの上昇
を招く。0.005 %以下に低減すれば、通常の工程での鋼
管製造が可能となることから、Sの上限を0.005 %とし
た。なお、好ましくは0.003 %以下である。
ために主要な元素であり、耐食性の観点からは11.0%以
上の含有を必要とするが、17.0%を超えて含有すると熱
間加工性が劣化する。このことから、Crは11.0〜17.0%
の範囲に限定した。
CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性および耐
硫化物応力腐食割れ性を高める元素であり、また、固溶
強化により鋼管の強度を増加させる元素でもある。Cを
低減する本発明では、Niは強度増加を主目的に添加され
るが、2.0 %未満の含有ではその効果が認められず、一
方、7.0 %を超える含有はマルテンサイト組織の安定性
を損なう。このことから、Niは2.0 〜7.0 %の範囲に限
定した。
であり、0.5 %以上含有するのが望ましいが、3.0 %を
超えて含有するとδフェライトの発生を招き、耐CO2 腐
食性、耐CO2 応力腐食割れ性および熱間加工性を低下さ
せる。また、Moは高価な元素であり3.0 %を超える含有
は経済的に不利となる。このようなことから、Moは3.0
%以下に限定した。なお好ましくは1.5 %以下である。
超える含有は靭性に悪影響を及ぼす。このため、Alは0.
05%以下に限定した。好ましくは0.02〜0.04%である。 V:0.20%以下 Vは、強度を増加させ、また耐応力腐食割れ性を改善す
る作用を有する元素であるが、0.20%を超える含有は、
靭性を劣化させる。このため、Vは0.20%以下に限定し
た。好ましくは0.03〜0.10%である。
以上含有するのが望ましいが、0.15%を超える含有は、
種々の窒化物を形成して靭性を劣化させる。このため、
Nは0.15%以下の範囲に限定した。 O:0.005 %以下 Oは、本発明鋼管の性能を十分発揮させるために、極め
て重要な元素であり、できるだけ低減するのが好まし
い。すなわち、O含有量が多いと各種の酸化物を形成し
て熱間加工性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性、耐硫
化物応力腐食割れ性および靭性を著しく低下させる。こ
のため、Oは0.005 %以下に限定した。
にNb、あるいはCa、あるいはCuを単独あるいは複合して
含有できる。またさらに上記した組成に加えて、Ti、Z
r、B、Wの1種または2種以上を選択して含有でき
る。またさらに上記した組成に加えて、Nb、あるいはC
a、あるいはCuを単独あるいは複合して含有し、さらにT
i、Zr、B、Wの1種または2種以上を選択して含有で
きる。
る作用を有する元素であるが、0.20%を超えての含有
は、逆に靭性を低下させる。このため、Nbは0.20%以下
に限定するのが好ましい。 Ca:0.0005〜0.01% Caは、SをCaS として固定しS系介在物を球状化し、介
在物の周囲のマトリックスの格子歪を小さくして、水素
のトラップ能を下げ、耐水素割れ性を向上させる元素で
ある。このような効果は0.0005%以上の含有で顕著とな
るが、0.01%を超え含有は、CaO の増加を招き、耐CO2
腐食性、耐孔食性を低下させる。このため、Caは0.0005
〜0.01%に限定するのが好ましい。なお、より好ましく
は0.001〜0.005 %である。
抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を高める元素であり、
添加する場合には0.3 %以上含有するのが望ましいが、
3.5 %を超えて含有すると、高温でCuS が粒界析出し、
熱間加工性が低下する。このことから、Cuは3.5 %以下
に限定するのが好ましい。
01%以下、W:3.0 %以下の1種または2種以上 Ti、Zr、B、Wは、いずれも強度を上昇させ、耐応力腐
食割れ性を改善する作用を有し、本発明では、必要に応
じ選択して含有できる。Tiは0.3 %を、Zrは0.2 %を、
Bは0.01%、Wは3.0 %を、それぞれ超えて含有すると
靭性を劣化させるため、Tiは0.3 %、Zrは0.2 %、Bは
0.01%、Wは3.0 %を、それぞれ上限とするのが好まし
い。また、Bは0.0005%未満では上記した効果が少ない
ため、0.0005%以上とするのがより好ましい。すなわ
ち、Tiは0.3 %以下、Zrは0.2 %以下、Bは0.01%以
下、Wは3.0 %以下に限定するのが好ましい。
避的不純物である。本発明では、さらに、Cr、Mo、Si、
C、N、Ni、Mnの含有量を上記した組成範囲内でかつ、
次(1)式 Cr+Mo+0.3Si −40C−10N−Ni−0.3Mn ≦10 ………(1) ここに、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mn:各元素の含有量
(mass%)を満足するように調整する。(1)式左辺の
A値=Cr+Mo+0.3Si −40C−10N−Ni−0.3Mn が10
を超えると、所望の強度が満足されても低温靱性が劣化
する。このため、本発明では、A値を10以下に限定し
た。
を面積率で10%以下含有する焼戻しマルテンサイト組織
を有する。残留オーステナイト量が面積率で10%を超え
ると高強度を安定して確保することが困難となる。つぎ
に、本発明鋼管の製造方法について、説明する。上記し
た組成の鋼素材を熱間加工により鋼管とする。本発明で
は鋼素材の製造方法についてはとくに限定する必要はな
い。転炉、電気炉等の通常公知の溶製方法で上記した組
成の溶鋼を溶製し、あるいはさらに2次精錬等を付加し
たのち、連続鋳造法等の通常公知の鋳造方法で鋼素材と
するのが好ましい。
についてはとくに限定する必要はなく、通常の継目無鋼
管の製造工程を用いて継目無鋼管とすればよい。継目無
鋼管の製造工程としては、マンドレルミル方式、プラグ
ミル方式等の熱間加工による製造工程が好ましい製造工
程である。なお、継目無鋼管以外の電縫鋼管、UOE鋼
管の製造工程を用いて鋼管としてもよい。
工のまま、あるいは890 〜950 ℃の温度範囲に加熱して
冷却する焼入れ処理を施されたのち、焼戻し温度を 500
〜590 ℃とする焼戻処理を施される。焼戻し温度が500
℃未満、あるいは590 ℃を超えると、安定してオーステ
ナイトを面積率で10%以下析出させることができず、高
強度と優れた低温靱性を具備することができない。焼戻
し温度が500 ℃未満では、オーステナイトが析出せず、
また590 ℃を超えると析出するオーステナイト量が多く
なりすぎ強度が低下する。なお、焼戻し処理における冷
却はとくに限定する必要はなく空冷、あるいは水冷いず
れでもよい。
熱温度が890 ℃未満では、組織の均一化が不十分になる
場合があり、950 ℃を超えると結晶粒の粗大化が生じ、
靱性劣化の原因になる場合がある。このため、焼入れ処
理の加熱温度は890 〜950 ℃の温度範囲とするのが好ま
しい。なお、焼入れ処理における冷却はとくに限定する
必要はなく空冷、あるいは水冷いずれでもよい。
後、100 キロ鋼塊とし、研究用モデルシームレス圧延機
により外径3.3 インチ(83.8mmφ)、肉厚0.5 インチ
(12.7mm)のパイプ(鋼管)を作製した。次いで各パイ
プから試験片素材を切り出し、920 ℃で1時間加熱後、
空冷し、さらに540 〜620 ℃で30分間の焼戻しを施し
た。
性、低温靭性、耐食性を調査した。 (1)組織 各パイプから試験片を採取し、管長手方向と直交する断
面(C断面)で走査型電子顕微鏡を用いて組織を観察し
た。また、組織中の残留オーステナイト(γ)量は、X
線回折装置を用いて、管のC方向断面から試験片(10mm
厚×10mm×10mm)を採取し、γの(220 )からの回折強
度と、αの(211 )からの回折強度との比から算出し
た。 (2)引張特性 各パイプから、JIS 10号試験片を鋼管の長手方向から採
取し、引張試験を実施し、降伏強さYS、引張強さTSを求
めた。 (3)低温靱性 低温靱性は、シャルピー衝撃試験を実施し評価した。各
パイプからJIS 4号試験片を採取して、試験温度:−20
℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギー VE
-20 を求めた。 (4)耐食性 各パイプから、厚さ3mm×幅30mm×長さ40mmの腐食試験
片を機械加工によって採取し、オートクレープ中で腐食
試験を実施し、耐食性を評価した。腐食試験の条件は、
CO2 ガス:30気圧、温度:150 ℃の20質量%NaCl水溶液
中で2週間浸漬する条件とした。腐食試験後、試験片の
重量を測定し、腐食減量を求めた。また、腐食試験後の
試験片表面を10倍のルーペで孔食の有無を観察した。
片表面の孔食発生の有無で耐食性を評価した。これらの
結果を表2に示す。
強度を有し、−20℃での吸収エネルギー VE-20 が100
J以上と高強度でかつ優れた低温靱性を有し、しかも腐
食速度が0.1mm/y 未満で、孔食の発生も見られず耐CO2
腐食性にも優れた鋼管となっている。一方、本発明の範
囲を外れる比較例では、YS:860MPa以上の高強度が得ら
れないか、あるいは低温靱性が劣化しているか、あるい
は腐食速度が0.1mm/y 以上か、孔食の発生が認められる
かして耐CO2 腐食性が劣化している。
低温靭性、耐炭酸ガス腐食性に優れ、炭酸ガスを含む寒
冷地の油井環境で油井管として十分使用可能であること
がわかる。
環境で使用される油井管として十分に使用できる高強
度、高靱性でかつCO2 、Cl- を含む高温の厳しい腐食環
境下においても十分な耐食性を有する高強度マルテンサ
イト系ステンレス鋼管を安価に安定して提供でき、産業
上格段の効果を奏する。
Claims (7)
- 【請求項1】 mass%で、 C:0.05%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:0.30〜1.50%、 P:0.03%以下、 S:0.005 %以下、 Cr:11.0〜17.0%、 Ni:2.0 〜7.0 %、 Mo:3.0 %以下、 Al:0.05%以下、 V:0.20%以下、 N:0.15%以下、 O:0.005 %以下 を含み、かつ下記(1)式を満足し、残部Feおよび不可
避的不純物よりなる組成と、残留オーステナイトを10%
以下含有する組織とを有することを特徴とする耐食性、
低温靭性に優れる油井用高強度マルテンサイト系ステン
レス鋼管。 記 Cr+Mo+0.3Si −40C−10N−Ni−0.3Mn ≦10 ………(1) ここに、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mn:各元素の含有量
(mass%) - 【請求項2】 前記組成に加えてさらに、mass%で、N
b:0.20%以下を含有することを特徴とする請求項1に
記載の耐食性、低温靭性に優れる油井用高強度マルテン
サイト系ステンレス鋼管。 - 【請求項3】 前記組成に加えてさらに、mass%で、C
u:3.5 %以下を含有することを特徴とする請求項1ま
たは2に記載の耐食性、低温靭性に優れる油井用高強度
マルテンサイト系ステンレス鋼管。 - 【請求項4】 前記組成に加えてさらに、mass%で、C
a:0.0005〜0.01%を含有することを特徴とする請求項
1ないし3のいずれかに記載の耐食性、低温靭性に優れ
る油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管。 - 【請求項5】 前記組成に加えてさらに、mass%で、T
i:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.01%以下、
W:3.0 %以下のうち1種または2種以上を含有するこ
とを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の耐
食性、低温靭性に優れる油井用高強度マルテンサイト系
ステンレス鋼管。 - 【請求項6】 mass%で、 C:0.05%以下、 Si:0.50%以下、 Mn:0.30〜1.50%、 P:0.03%以下、 S:0.005 %以下、 Cr:11.0〜17.0%、 Ni:2.0 〜7.0 %、 Mo:3.0 %以下、 Al:0.05%以下、 V:0.20%以下、 N:0.15%以下、 O:0.005 %以下 を、下記(1)式を満足するように含む組成を有する鋼
素材を、熱間加工により鋼管としたのち、該鋼管に焼戻
し温度を 500〜590 ℃とする焼戻処理を施すことを特徴
とする耐食性、低温靭性に優れる油井用高強度マルテン
サイト系ステンレス鋼管の製造方法。 記 Cr+Mo+0.3Si −40C−10N−Ni−0.3Mn ≦10 ………(1) ここに、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mn:各元素の含有量
(mass%) - 【請求項7】 前記焼戻処理前に、890 〜950 ℃に加熱
したのち冷却する焼入処理を施すことを特徴とする請求
項6に記載の耐食性、低温靭性に優れる油井用高強度マ
ルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
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JP2000182934A JP4449174B2 (ja) | 2000-06-19 | 2000-06-19 | 油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法 |
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