【発明の詳細な説明】ギンゴライドの新規グリコシル化誘導体、その医薬としての使用及びこれを含有 する医薬組成物
本発明はギンゴライド(ginkgolide)の新規グリコシル化誘導体並びにその医薬
としての使用に関する。かかる誘導体は、特に、医薬組成物中で使用し得る。
ギンゴライドの特性[抗PAF(“血小板活性化因子”(“Platelet Activati
ng Factor”)活性、フリーラジカルの形成の抑制、グルココルチコイドの放出
の抑制等]は公知である(特に、特許出願DE-3514054,EP 0431535;Armi,Ogwueg
bu,Boujrad,Drieu,Papadopoulos,Endocrinology,137(12),5707-5718参照)。し
かしながら、その医薬的活性はその水中への低い溶解性によって制限されている
。本発明者はこれらのギンゴライドをグリコシル化する(glycosylate)ことによ
り、新規な水溶性生成物が得られ、従って、医薬組成物中でより容易に使用する
ことができ、しかも、ギンゴライドの当初の生物学的活性が保持され、或いは、
この活性が改善されることさえあることを知見した。
本発明は、特に、ギンゴライドA、B、C、J又はM[その構造は下記に示さ
れている;これらの化合物はイチョウ(Ginkgo biloba)の葉の抽出物から単離し
得る:GINKGOLIDES Chemistry,Biology,Pharmacology and Clinic-al Perspecti
ves,P.Blaquet,J.R.Prous編,Science Publishers,特に、Vol.1(1988)及びVol.2(
1989)参照]のモノ−、ジ−、又は、適当ならば、トリ−又はテトラグリコシル化
誘導体に関する。本発明は、また、ギンゴライドのアルコキシル化誘導体、即ち
、ヒドロキシル基の代わりに、線状又は分岐鎖状アルコキシ基を少なくとも1個
含有する誘導体(これらの化合物はフランス特許出願FR 88.14392に記載されて
いる)のグリコシル化誘導体に関する。 本発明は、一般式(I)
(式中、W、X、Y及びZは、独立して、H、OH、線状又は分岐鎖状アルコキシ
基又はO-GS基を表す;GS-OHは単糖類又は二糖類又はこれらの誘導体又は同族体
の一つを表すが、但し、W、X、Y又はZの少なくとも一つはO-GS基を表すもの
とする)で表される化合物に関する。
本発明は、好ましくは、一般式(I)
(式中、XがOH又はO-GS基を表し、GS-OHが単糖類又は二糖類又はこれらの誘導
体又は同族体の一つを表し、
−WがOH又はO-GS基を表し、YがHを表し、ZがHを表すか、又は
−WがOH又はO-GS基を表し、YがOH又はO-GS基を表し、ZがHを表すか、又は
−WがOH又はO-GS基を表し、YがOH又はO-GS基を表し、ZがOH又はO-GS基を表
すか、又は
−WがOH又はO-GS基を表し、YがHを表し、ZがOH又はO-GS基を表すか、又は
−WがHを表し、YがOH又はO-GS基を表し、ZがOH又はO-GS基を表すか、又は
−WがOH又はO-GS基を表し、Yが線状又は分岐鎖状アルコキシ基を表し、Zが
Hを表すが、但し、W、X、Y又はZの少なくとも一つはO-GS基を表すものとす
る)で表される化合物に関する。
本発明は、特に、一般式(I)
(式中、XがOH又はO-GS基を表し、GS-OHは単糖類又は二糖類又はこれらの誘導
体又は同族体の一つを表し、
−WがOH又はO-GS基を表し、YがHを表し、ZがHを表すか、又は
−WがOH又はO-GS基を表し、YがOH又はO-GS基を表し、ZがHを表すか、又は
−WがOH又はO-GS基を表し、Yが線状又は分岐鎖状アルコキシ基を表し、Zが
Hを表すが、但し、W、X、Y又はZの少なくとも一つはO-GS基を表すものとす
る)で表される化合物に関する。
本明細書において、線状又は分岐鎖状アルコキシ基という用語は、炭素鎖が線
状であるか又は分岐鎖状でありかつ1〜6個の炭素原子を含有するアルコキシ基
を意味する。単糖類又は二糖類の誘導体又は同族体という用語は、N-アセチルグ
ルコサミン、N-アセチルアロサミン(N-acetylalosamine)、ガラクトサミン、マ
ンノサミン(mannosamine)、N-トシルヒドラゾン等のごとき化合物を意味する。
好ましくは、O-GSは、GS-OHがアベクオース、ラムノース、アラビノース、リ
ボース、キシロース、2-デオキシリボース、グルコース、ガラクトース、マンノ
ース、2-デオキシグルコース、フルクトース、フコース、N-アセチルグルコサミ
ン、N-アセチルアロサミン、ガラクトサミン、マンノサミン、サッカロース、ラ
クトース、マルトース、セロビオース及びトレハロースからなる群の一部を形成
するように選択される。更に好ましくは、O-GSは、GS-OHがグルコース及びラク
トースからなる群の一部を形成するように選択される。
従って、本発明は、グギンゴライドのグリコシル化誘導体、特に、ギンゴライ
ドA及びBのグリコシル化誘導体に関する;本発明に適当なグリコシル基は前記
したものである。
本発明によれば、ギンゴライド又はアルコキシル化ギンゴライドのグリコシル
化誘導体(即ち、ギンゴライド又はそのアルコキシル化誘導体のOH基の少なくと
も一つ上で行われるグリコシル化から得られるもの)を得る方法が提供される。
この方法は、主として、以下に示す一般式(III)
(式中、W’、X’、Y’及びZ’は、独立して、H、OH、線状又は分岐鎖状ア
ルコキシ又はO-GX基を表し、GXは、好ましくは中性又は塩基性媒体中で除去し
得る、ヒドロキシ基の保護基である;但し、W’、X’、Y’及びZ’の少なく
とも一つはOHを表す)の化合物と、以下に示す一般式(II)のグリコシルジアジリ
ンとを反応させるグリコシル化工程をからなる;反応は、好ましくは,THF中で、
好ましくは20〜60℃の温度で行われる。
化合物(II)は糖、GPOHのジアジリン誘導体であり、そのヒドロキシ基の全て
は、アノマー炭素(anomeric carbon)によって担持されているものを除いて、例
えばベンジル又はシリル基によって保護されており、アノマー位置(anomeric po
sition)のヒドロキシ基及び同一の炭素原子によって担持されている水素原子は
アジ基によって置換されている。
前記の方法はヒドロキシ基についての、一つ又はそれ以上の保護及び/又は脱
保護工程も包含している。これらの工程については、利用し得る標準的な方法が
使用され(Greene,T.,Protective Groups in Organic Synthesis 10-86(John Wil
ey & Sons,1981)、塩基性又は中性媒体中で除去し得る保護基を選択することが
好ましい。
グリコシル化反応においては、過剰のグリコシルジアジリンを使用した場合に
は、ギンゴライドAについてはモノ−及びジグリコシル化誘導体の混合物が得ら
れ、ギンゴライドBについてはモノ−、ジ−及びトリグリコシル化
誘導体の混合物が得られるであろう。
生成物の混合物が得られる全ての場合において、これらの生成物の分離は当業
者に既知の方法(特に、シリカ上での濾過又は適当な溶離剤を使用する高性能液
体クロマトグラフィー又は適当な溶剤からの結晶化又は再結晶)に従って行われ
る。
ギンゴライドのグリコシル化に使用し得る糖又は糖誘導体は、特に、アベクオ
ース、ラムノース、アラビノース、リボース、キシロース、2-デオキシリボース
、グルコース、ガラクトース、マンノース、2-デオキシグルコース、フルクトー
ス、フコース、サッカロース、ラクトース、マルトース、セロビオース、トレハ
ロース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルアロサミン(N-acetylallosamine)
、ガラクトサミン、マンノサミン、これらの誘導体、特に、対応するジアジリン
、又は、N-トシルヒドラゾンのごときN-アリールスルホニルヒドラゾン又はこれ
らの塩であり得る。
使用される方法がグリコシルジアジリンの付加(Briner,K.,Vasella,A.,Helv.
Chem.Acta,72,1371(1989)に記載の一般的方法)である場合、特に、下記のジア
ジリンを使用し得る:
1-アジ-2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-1-デオキシ-D-グルコピラノース又は1-
アジ-1-デオキシ-2,3,5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-マンノフラノース(Briner
,K,Vasella,A.,Helv.Chem.Acta,75(2),621-637(1992)の記載により合成);
1-アジ-2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-1-デオキシ-D-ガラクトピラノース(Bri
ner,K,Vasella,A.,Helv.Chem.Acta,73(6),1764-1779(1990)の記載により合成);
1-アジ-2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-1-デオキシ-D-マンノピラノース(Vase
lla,A.,Witzig,C.,Waldraff,C.,Uhlmann,P.,Briner,K,他、Helv.Chem.Acta,76(8
),2847-2875(1993)の記載により合成);
2-アセトアミド-1,5-アンヒドロ−1−アジ-3-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリ
デン-1,2-ジデオキシ-D-アリトール(Vasella,A.,Dahr,P,Witzig,C.,Helv.Chem.A
cta,76(4),1767-1778(1993)及びLinden,A.,Vasella,A.,Witzig,C.,
Helv.Chem.Acta,75(5),1572-1577(1992)の記載により合成);
1,5-アンヒドロ-1-アジ-2-デオキシ-3,4,6-トリ-O-ピバロイル-D-グルシト
ール(Takahashi,Y.,Vasella,A.,Helv.Chem.Acta,75(5),1563-1571(1992)の記載
により合成);
1,5-アンヒドロ-1-アジ-2,3,4,6-テトラ-O-ピバロイル-D-グルシトール又は
2-アセトアミド-1,5-アンヒドロ-1-アジ-3-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリデン-1,2
-ジデオキシ-D-グルシトール(Vasella,A.,Witzig,C.,Waldraff,C.,Uhlmann,P.,B
riner,K,他、Helv.Chem.Acta,76(8),2847-2875(1993)の記載により合成);
1,5-アンヒドロ-1-アジ-2,3-ジ-O-ベンジル-4,6-O-ベンジリデン-D-マンニ
トール(Uhlmann,P.,Briner,K,他、Helv.Chem.Acta,76(8),2847-2875(1993)の記
載により合成);
1,5-アンヒドロ-1-アジ-2,3-ジ-O-ベンジル-4,6-O-(4-メトキシベンジリデ
ン)-D-グルシトール(Vasella,A.,Witzig,C.,Waldraff,C.,Uhlmann,P.,Briner,K,
他、Helv.Chem.Acta,76(8),2847-2875(1993)の記載により合成);
2-アセトアミド-1,5-アンヒドロ-1-アジ-3,4,6-トリ-O-ベンジル-2-デオキ
シ-D-グルシトール(Vasella,A.,Witzig,C.,Waldraff,C.,Uhlmann,P.,Briner,K,
他、Helv.Chem.Acta,76(8),2847-2875(1993)の記載により合成);
1-アジ-1-デオキシ-2,3,4,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-グルコピラノース(U
hlmann,P.,Harth,E.,Naughton,A.B.,Vasella,A.,Helv.Chem.Acta,77(8),2335-23
40(1994)の記載により合成);
(Z)-N'-2,3,5-トリ-O-ベンジル-D-(リボフラノシリデン)トルエン-4-スルホ
ノヒドラジド、又は、(Z)-N'-2,3,5-トリ-O-ベンジル-D-(アラビノフラノシリデ
ン)トルエン-4-スルホノヒドラジド(Mangholz,Z.E.,Vasella,A.,Helv.Chem.Acta
,78(4),1020-1035(1995)の記載により合成);
1-アジ-2,3,6-トリ-O-ベンジル-4-O-[2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-D-ガラク
トピラノシル]-1-デオキシ-D-グルコピラノース(Briner,K,Vasella,A.,Helv.Che
m.Acta,72,1371(1982)の記載により合成)。
勿論、当業者であれば、必要に応じ、同一のタイプの他の化合物を選択し
得る。
グリコシル化反応に使用し得る溶剤としては1,4-ジオキサン、THF、トルエン
、塩化メチレン又は1,2-ジクロルエタンが挙げれる。THFを使用することが好ま
しい。
反応条件は熱的又は光分解的条件(photolytic condition)であり得る。熱的条
件に関しては、操作は好ましくは25〜60℃の範囲の温度で行われる。光分解条件
に関しては、操作は、典型的には-80℃〜-60℃の低温で、通常、溶剤としてTHF
を使用して行われる。光分解(photolysis)に関しては、フィリップス(Philips)
社製、HPK-125高圧水銀ランプを使用することが好ましい。典型的には、照射は
約1時間、又は必要に応じ、それ以上行われるであろう。
ギンゴライドAのモノグルコシル化誘導体について、可能な合成経路は下記の
通りである:
10-O-アセチル-ギンゴライドA(1)(ギンゴライドAをピリジン中で、過剰の無
水酢酸と周囲温度で25時間反応させることにより調製)を、30℃で1時間30分、
約1.3当量のグルコシルジアジリン2で処理する;反応はTHF中で行われる。蒸発
させ、再結晶させた後、3を取得し、これをMeOH中でNH3で処理して脱アセチル
生成物4を製造する。ついで、標準的な方法に従って、MeOH中で10%Pd/Cを用い
て水素化することにより4の脱ベンジルを行う。かくして、3-O-(β-D-グルコピ
ラノシル)ギンゴライドA(5)が得られる。脱ベンジル工程と脱アセチル工程は交
換し得ることに留意すべきである。
ギンゴライドAのモノグルコシル化誘導体の合成と同様の方法で、前記したも
の以外のグリコシルジアジリンを使用するか、又は、(文献に記載の)標準的条
件下でグリコシル化反応を行うことにより、ギンゴライドAのモノグリコシル化
誘導体の合成を行い得る。
例えば、3-O-[(4-O-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシル]ギン
ゴライドAは下記の経路で取得し得る: ギンゴライドA(1)をTHF中のジアジリン27の溶液中で1時間処理する。かくし
て、28が90%の収率で得られる。28を10%Pd/Cの存在下での水素化により脱ベン
ジルして、29を生成させる。最後に、29を標準的な方法(例えばNH3/MeOH)を使用
して脱アセチル化して、3-O-[(4-O-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラ
ノシル]ギンゴライドA(30)を製造する。当然、前記したごとく、2つの工程は
交換し得る。
ギンゴライドAのジグリコシル化誘導体を得ることを希望する場合には、10-
アセチル-ギンゴライドA(1)ではなしにギンゴライドAを使用し、そして、他の
グリコシル化反応を選択した場合には、過剰のグリコシルアジリン又はグリコシ
ル化剤を使用すれば十分である。
本発明によるギンゴライドBの誘導体を製造するための可能な経路は下記の通
りである。
ギンゴライドB(6)のモノグルコシル化誘導体を得るためには、ギンゴライド
1当量当り、約1〜1.35当量のグルコシルジアジリン2を使用して、グリコシル
化反応についての光分解条件を選択することが好ましい。モノグリコシル化誘導
体7、8、9及び10を脱ベンジルして、それぞれ、化合物19、20、21及び22を得
る反応は、前記で化合物4の脱ベンジルについて述べたと同様に行われる。
ギンゴライドBのモノグリコシル化誘導体は、2以外のグリコシルジアジリン
から同様の方法により、又は、他のグリコシル化剤を使用してかつ文献に記載の
グリコシル化反応を使用して得られる。グリコシル化反応の後の脱保護は同様で
ある。
ギンゴライドBのジグリコシル化誘導体を得ることを希望する場合には、例え
ば、下記の合成経路を使用し得る: ギンゴライドB(6)のジグリコシル化誘導体を得るためには、6をTHF中で、30
℃で1時間、1当量のグルコシルジアジリン2と反応させ、ついで更に1当量の
グルコシルジアジリン2を添加し、同一の条件下で17時間反応させる。かくして
、ジグルコシル化誘導体11、12、13、14及び15の混合物が得られる。これらの誘
導体はMeOH中での10%Pd/Cを使用する水素化により脱ベンジルし得る。
ギンゴライドBのジグリコシル化誘導体は、2以外のグリコシルジアジリンか
ら同一の方法で、又は、他のグリコシル化剤から出発して、文献に記載のグリコ
シル化反応を使用して取得し得る。グリコシル化反応の後の脱保護工程は前記と
同一である。
ギンゴライドBのトリグルコシル化誘導体を得るためには、下記の合成経路が
使用されるであろう。 ギンゴライドB(6)のトリグルコシル化誘導体は、6と、少なくとも3.5当量の
グルコシルジアジリン2とをTHF中で25℃で反応させることにより得られる;2
の添加は、例えば、24時間の間隔を置いて2回に分けて行われる。ついでこれら
を約1日反応させることにより、主として、1,3,10-0-(2,3,4,6-テトラ-O-ベン
ジル-β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(18)が得られる。1,3-O-(2,3,4,6-
テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)-10-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル
-α-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(16)と、1-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベン
ジル-α-D-グルコピラノシル)-3,10-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-β-D-グル
コピラノシル)ギンゴライドB(17)も得られる。ついで、MeOH中で10%Pd/Cを使
用して水素化することにより18を脱ベンジルすることができ、かくして、1,3,10
-O-(β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(26)が得られる。同様の方法を使用
して16と17を脱ベンジルして、対応する脱ベンジル誘導体を得ることができる。
ギンゴライドBのトリグリコシル化誘導体は、2以外のグリコシルジアジリン
から出発することにより、或いは、他のグリコシル化剤を使用してかつ文献に記
載のグリコシル化反応を使用して同様の方法で取得し得る。グリコシル化反応の
後の脱保護工程は前記と同一である。
ギンゴライドCはギンゴライドA又はBについて使用した方法と同様の方法で
グリコシル化し得る。所望のグリコシル化の程度(モノ−、ジ−又はトリグリコ
シル化誘導体)に応じて、化学量論量のグリコシルジアジリン又はグリコシル化
剤が選択されるであろう。
同様の方法で、前記した方法をギンゴライドJ又はMに適用して、これらのグ
リコシル化誘導体を製造するか、又は、ギンゴライドのアルコキシ化誘導体に適
用して、対応するグリコシル化化合物を製造し得る。
本発明の化合物は有用な薬理学的性質を有しており、例えば、血管障害、特に
、心臓血管障害の処置に使用し得る。従って、本発明は、医薬としての、ギンゴ
ライドA、B、C、J及びMのグリコシル化誘導体の全て並びにこれらの化合物
の少なくとも1種を活性成分として含有する医薬組成物を目的とする。
従って、本発明は、本発明の化合物を、選択された投与方法(例えは径口、静
脈内、腹腔内、筋肉内、径皮又は皮下投与)に適当な、製剤学的に許容される担
体と組合せて含有する医薬組成物に関する。医薬組成物は固体、液体、リポソー
ム又は脂質ミセル(lipidic micell)の形であり得る。
本発明の医薬組成物は、例えば、粉末、ピル、顆粒、錠剤、リポソーム、ゼラ
チンカプセル又は座薬のごとき固体の形であり得る。ピル、錠剤又はゼラチンカ
プセルは、医薬組成物を、該組成物を消化されない形で服用者の小腸に移行させ
るのに十分な時間、服用者の胃の中の胃酸又は酵素の作用から保護することので
きる物質で被覆し得る。本発明の化合物は持続放出性プロセス(例えば持続放出
性組成物又はインフュージョンポンプ)に従って投与し得る。適当な固体担体は
、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、
タルク、ショ糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース
、メチルセルロース、ナトリウムカリボキシメチルセルロース、ポリビニルピロ
リドン及びワックスであり得る。従って、本発明の化合物を含有する医薬組成物
は、例えば、溶液、エマルジョン、懸濁液又は持続放出性製剤のごとき液体の形
でも存在し得る。適当な液体担体は、例えば、水、有機溶剤例えばポリエチレン
グリコールのごときグリセロール又はグリコール及びこれらと任意の割合の水と
の混合物であり得る。
本発明は、更に、血管障害、特に、心臓血管障害の処置のための医薬を製造す
るためのこれらの誘導体の使用に関する。
上記した疾患又は障害の処置を意図した場合の、本発明の化合物の投与量は投
与方法、処置されるべき対象者の体重並びに対象者の状態によって変動し、担当
医師又は獣医によって正確に決定される。担当医師又は獣医によって決定される
かかる投与量を、本明細書では“有効治療量”と称する。
他の方法で定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は
、本発明が属する通常の技術者によって通常、理解されているものと同一の意義
を有する。同様に、本明細書で参照されている全ての刊行物、特許出願、全ての
特許及び他の参考文献は、参照として本明細書に包含される。
下記の実施例は上記の手順を例示するためのものであり、本発明を限定す
るものではない。実施例
以下の実施例の全てにおいて、既に述べた化合物については、前記した番号が
使用されている。NMRにおけるシフトはppmで与えられている。実施例1:
3-O-(β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドA(5):
1.1. 10-O- アセチル-ギンゴライドA(1):
ピリジン(0.75ml)中のギンゴライドA(85mg,0.208ミリモル)をAc2O(82μl,0.8
7ミリモル)で処理し、撹拌下、25℃で20時間反応させた。エタノールの添加後、
蒸発させついでフラッシュクロマトグラフイー(溶離剤ヘキサン/アセトン6:4)に
かけて、1を得た(88mg,94%)。
1.2. 10-O- アセチル-3-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル )ギンゴライドA(3):
工程1.1.で得られた1(59mg,0.131ミリモル)をTHF(6.0ml)中で1-アジ-2,3,4,6
-テトラ-O-ベンジル-1-デオキシ-D-グルコピラノース(2)(95mg,0.172ミリモル)
の溶液で処理し、30℃で1時間30分撹拌した。蒸発させ、ついで結晶化させて(
ヘキサン/CH2Cl2/AcOEt混合物)、3を得た(108.5mg,85%)。HPLC(ヘキサン/AcO
Et 4:1)を使用して、更に9.8mgの3(8%)を母液から回収した。 元素分析:C 68.87%,H 6.21%(理論値:C,69.12%,H6.21%)
1.3. 3-O-(2,3,4,6- テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)ギンゴライド A(4):
工程1.2.で得られた3(110mg,0.11ミリモル)をMeOH(5ml)及びCH2Cl2(2ml)中
で、MeOH(1.2ml)中のNH3の飽和溶液で処理し、25℃で1時間30分撹拌した。蒸発
、フラッシュクロマトグラフィー(溶離剤ヘキサン/アセトン3:2)及びHPLCを行っ
て、48mg(46%)の4を得た。
1.4. 3-O-( β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドA(5):
工程1.3.で得られた4(47mg,0.05ミリモル)を10%Pd/C(90mg)と混合し、3気圧
の圧力下、72時間、MeOH(10ml)中で水素化した。濾過、蒸発及びフラッシュクロ
マトグラフィー(溶離剤AcOEt/MeOH/H2O 8.5:1.5:1)を行って、5(25mg,84%)を
得た。
実施例2: ギンゴライドB(6)の、1、2又は3.5当量の1-アジ-2,3,4,6-テトラ-
O-ベンジル-1-デオキシ-D-グルコピラノース(2)による処理:
2.1. 1当量のアジリンによる処理:
THF(4.0ml)中のギンゴライドB(6)(134mg,0.31ミリモル)を-75℃に冷却し、TH
F(1.5ml)中の1-アジ-2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-1-デオキシ-D-グルコピラノー
ス(2)(177mg,0.32ミリモル)の溶液で処理し、-70℃で1時間、照射した(フィリ
ップス社製、HPK-125高圧水銀ランプ)。ついで、混合物を23℃に加熱し、蒸発
させた。シリカ上での濾過(溶離剤AcOEt)及びHPLC(溶離剤ヘキサン/AcOEt 2:1)
を行って、7(140.3mg,47%)、8(23.0mg,8%)、9(82.4mg,27%)及び10(29.8mg
,10%)を得た。
2.2. 2当量のアジリンによる処理:
THF(2.0ml)中のギンゴライドB(6)(97.2mg,0.229ミリモル)を、THF(1.0ml)中
に1-アジ-2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-1-デオキシ-D-グルコピラノース(2)(135m
g,0.245ミリモル)を溶解させた溶液で30℃処理し、ついで1時間後、THF(0.9ml)
中に2(119.0mg,0.216ミリモル)を溶解させた第2の溶液で処理した。ついで、
反応媒体を30℃で17時間撹拌した。蒸発、シリカ上での濾過(溶離剤AcOEt)及
びHPLC(溶離剤ヘキサン/AcOEt 2:1)を
行って、7(26.3mg,12%)、9(35.8mg,17%)、10(34.9mg,16%)、11(20.7mg,6%
)、12(32.6mg,10%)、13(8.9mg,3%)、14(15.6mg,5%)、15(5.6mg,2%)、16と17
の混合物(8.1mg,2%)及び18(6.7mg,2%)を得た。
2.3 3.5 当量のアジリンによる処理:
ギンゴライドB(6)(27.0mg,0.064ミリモル)を、THF(1.3ml)中の1-アジ-2,3,4,
6-テトラ-O-ベンジル-1-デオキシ-D-グルコピラノース(2)(60.0mg,0.109ミリモ
ル)の溶液で25℃で処理し、ついで24時間後、THF(1.3ml)中に2(60mg,0.109ミリ
モル)を溶解させた第2の溶液で処理した。ついで、反応媒体を25℃で20時間撹
拌した。蒸発、シリカ上での濾過(溶離剤AcOEt)及びHPLC(溶離剤ヘキサン/AcO
Et 4:1)を行って、11(21.9mg,24%)、16(18.4mg,15%)、17(16.0mg,13%)及び18
(51mg,42%)を得た。
2.4. 生成物7〜18についてのIR及びNMRデーター
1-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(7)
:
1-0-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-α-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(8)
:
10-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(9
): 10-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-α-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(1
0):
3-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)-10-O-(2,3,4,6-テ
トラ-O-ベンジル-α-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(11):
3,10-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB
(12):
1-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-α-D-グルコピラノシル)-3-O-(2,3,4,6-テ
トラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(13): 1,3-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(
14):
3-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-α-D-グルコピラノシル)-10-O-(2,3,4,6-テ
トラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(15):
1,3-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)-10-O-(2,3,4,6-
テトラ-O-ベンジル-α-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(16):
1-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-α-D-グルコピラノシル)-3,10-O-(2,3,4,6-
テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(17):
1,3,10-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-β-D-グルコピラノシル)ギンゴライド
B(18):
2.5. 1-O- (β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(19):
例えば工程2.1.又は2.2.で得られた7(73.0mg,0.077ミリモル)と10%Pd/C(100
mg)の混合物をMeOH(3.0ml)中で、3.5気圧の圧力下、17時間水素化した。濾過及
び蒸発を行って、19(42.7mg,94%)を得た。2.6. 1-O- (α-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(20):
例えば工程2.1.で得られた8(20.1mg,0.021ミリモル)と10%Pd/C(50mg)の混合
物をMeOH(3.0ml)中で、2.1気圧の圧力下、17時間水素化した。濾過及び蒸発を行
って、20(6.5mg,52%)を得た。
2.7. 10-O-( β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(21):
例えば工程2.1.又は2.2.で得られた9(32.0mg,0.034ミリモル)と10%Pd/C(100
mg)の混合物をMeOH(3.0ml)中で、3.5気圧の圧力下、17時間水素化した。濾過、
蒸発及びフラッッシュクロマトグラフィー(750gシリカ、溶離剤AcOEt/MeOH/H2O
8.5:1.5:1)を行って、21(19.8mg,88%)を得た。2.8. 10-O-( α-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(22):
例えば工程2.1.又は2.2.で得られた10(45.1mg,0.048ミリモル)と10%Pd/C(50m
g)の混合物をMeOH(3.0ml)中で、2.1気圧の圧力下、17時間水素化した。濾過及び
蒸発を行って、22(27.5mg,98%)を得た。
2.9. 3-O- (β-D-グルコピラノシル)-10-O-(α-D-グルコピラノシル)ギンゴラ イドB(23):
例えば工程2.2.又は2.3.で得られた11(36.1mg,0.025ミリモル)と10%Pd/C(50m
g)の混合物をMeOH(3.0ml)及びアセトン(1.5ml)中で、1.2気圧の圧力下、21時間
水素化した。濾過及び蒸発を行って、23(18.3mg,99%)を得た。
2.10. 3,10-O-( β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(24):
例えば工程2.2.で得られた12(37.9mg,0.026ミリモル)と10%Pd/C(50mg)の混合
物をMeOH(3.0ml)及びアセトン(1.0ml)中で、2.3気圧の圧力下、21時間水素化し
た。濾過及び蒸発を行って、24(18.3mg,95%)を得た。
2.11. 1,3-O- (β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(25):
例えば工程2.2.で得られた14(17.1mg,0.012ミリモル)と10%Pd/C(50mg)の混合
物をMeOH(3.0ml)及びアセトン(1.5ml)中で、1.2気圧の圧力下、21時間水素化し
た。濾過及び蒸発を行って、25(8.5mg,97%)を得た。
2.12. 1,3,10-O-( β-D-グルコピラノシル)ギンゴライドB(26):
例えば工程2.3.で得られた16(53.0mg,0.027ミリモル)と10%Pd/C(50mg)の混合
物をMeOH(3.0ml)及びアセトン(1.5ml)中で、1.2気圧の圧力下、21時間水素化し
た。濾過及び蒸発を行って、26(23.5mg,97%)を得た。 実施例3: 10-O-アセチル-3-O-[(4-O-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコ
ピラノシル]ギンゴライドA(30):
3.1. 10-O- アセチル-3-O-[2,3,6-トリ-O-ベンジル-4-O-(2,3,4,6-テトラ-O-ベ ンジル-β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシル]ギンゴライドA(28) :
ギンゴライドA(1)(7mg,15μモル)を、1-アジ-2,3,6-トリ-O-ベンジル-4-O-[2
,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-D-ガラクトピラノシル]-1-デオキシ-D-グルコピラノ
ース(27)(50mg,51μモル;他のグリコシルジアジリンについて述べたと同様の方
法で調製)のTHF(1ml)中の溶液で処理し、25℃で1時間撹拌した。蒸発及びBPLC(
溶離剤ヘキサン/アセトン3:2)を行って、28(20mg,90%)を得た。
3.2. 10-O- アセチル-3-O-[4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノ シル]ギンゴライドA(29):
28(20mg,14μモル)を10%Pd/C(100mg)の存在下、MeOH(5ml)中で、3気圧の圧
力下、17時間水素化した。濾過及び蒸発を行って、29(11mg,100%)を得た。3.3. 3-O-[4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノシル]ギンゴラ
イドA(30):
標準的方法(例えばメタノール中での水酸化アンモニウムによる処理;工程1.
3.参照)を使用して29を脱アシルすることにより30を得た。
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