JP2001520508A - インスリン抵抗性の治療 - Google Patents

インスリン抵抗性の治療

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JP2001520508A JP50193597A JP50193597A JP2001520508A JP 2001520508 A JP2001520508 A JP 2001520508A JP 50193597 A JP50193597 A JP 50193597A JP 50193597 A JP50193597 A JP 50193597A JP 2001520508 A JP2001520508 A JP 2001520508A
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オレフスキー,ジェロールド,エム.
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Abstract

(57)【要約】 インスリン受容体のアミノ酸残基Ser1270のプロテインキナーゼC媒介リン酸化を阻害することによりインスリン抵抗を治療するための方法および組成物が提供される。プロテインキナーゼCによるセリンリン酸化の阻害に適した候補化合物を試験する方法も提供される。

Description

【発明の詳細な説明】 インスリン抵抗性の治療 連邦の資金援助を受けた研究である旨の記載 本発明の少なくとも一部は、米国立衛生研究所(NIH)から助成(助成番号N IH DK 33649)を受けるというかたちで、連邦政府の資金援助のもとになされた ものである。政府は、本発明に対してある程度の権利を有する可能性がある。 発明の背景 発明の分野 本発明は、インスリン抵抗性の治療に用いる方法ならびに組成物に関するも のである。関連技術の説明 インスリン抵抗性は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、肥満、高血圧、 心血管系疾患など、いくつかの疾病状態に伴って生じる。こうした状態うち、最 もよく調べられているのはNIDDMである。NIDDMは、インスリン依存性糖尿病(IDD M、I型糖尿病、あるいは若年型糖尿病と称されることもある)と区別するために 、成人型糖尿病あるいは、II型糖尿病と称されることもあり、通常、中年の肥 満者で発症し、糖尿病診断症例の80%ないし90%をしめる。NIDDMは、イン スリン抵抗性ばかりでなく、正常あるいは高めのインスリンレベル、高血糖、超 低密度リポタンパク質(VLDL)レベルの上昇、筋肉によるグルコース摂取量の低下 も伴う。NIDDMの場合、極端なストレス(たとえば、敗血症性ショックあるいは 心筋梗塞)にさらされた場合以外、IDDMに特徴的なケトアシドーシスは見られな い。NIDDMの患者は、神経、目、腎臓、冠状動脈の疾患をはじめとして、IDDMと 同様の合併症の多くを発症する傾向がある。 現在も蓄積されつつある科学的事実からは、NIDDMが2つの素因、すなわち 1)先天的な遺伝性の素因(Rifkinら,Diabetes Mellitus:Theory and Practice ,New York,Eisevier,1990所収,Rotterら,pp.378-413)と、2)後天的素因 (Moller編Insulin Resistance and Clinical Disorders.England,John Wile & Sons,Ltd.,1993所収,Seelyら,pp.187-252、Efendicら編,New Concepts i n the Pathogenesis of NIDDM.New York,Plenum Publishing Corp.,1993所収 ,Olefsky、DeGrootら編、DeGroot Text Book of Endocrinology第3版,Ph iladelphia,W.B.Saunders and Co.,1994所収,Olefsky)の組み合わせによっ て生じるということがわかる。NIDDMの遺伝性の素因は、この疾患の第一段階、 すなわち「前糖尿病」状態と称される段階の原因となっている。前糖尿病状態は 、高インスリン血症ならびに「一次」インスリン抵抗性が特徴的である。前糖尿 病状態のインスリン応答性は、正常耐糖能(NGT)、あるいは少なくとも耐糖能障 害(IGT)は十分維持しうるものである。 膵臓のβ細胞のインスリン産生能は、時間の経過とともに低下してくるので 、この補償メカニズムに各種の問題が生じてくる。こうしたインスリン分泌量の 低下が、もとから存在していた遺伝的バックグラウンドとあいまって、高血糖、 すなわち「二次」インスリン抵抗性が上昇し、最終的には糖尿病性NIDDM状態と なる。前糖尿病状態のNIDDMの場合に比べて糖尿病性NIDDMでインスリン抵抗性が 上昇していることからは、何かさらに別の非先天的な要因によって、前糖尿病状 態にみられる遺伝性のインスリン抵抗性誘導素因に加えて、インスリン抵抗性の 二次素因が生じていることが示唆される。このさらなる要因が高血糖である(Yki -Jarvinen,1990,Diabetologia,33:579-585、Yki-Jarvinen,1992,Endocrine Rev.,13:415-431)。 高血糖によってインスリン抵抗性が誘導される際の詳細なメカニズムはわか っていない。しかし、いくつかの観察結果から示唆されるのは、インスリン抵抗 性は、少なくとも部分的には、正常なインスリン受容体の機能が損なわれること によって生じているということである。第一に、高血糖のNIDDM状態の結果とし て、インスリン刺激性の各種作用、たとえば、インスリン受容体の自己リン酸化 、インスリン受容体によって媒介される各種のキナーゼ活性(チロシンキナーゼ 活性を含む)、インスリン刺激性ホスファチジルイノシトールキナーゼ活性、イ ンスリン刺激性DNA合成が低減する(Freidenbergら,1987,J.Clin.Invest. ,79:240-250、Caroら,1986,J.Clin.Invest.,78:249-258、Comiら,1987, J.Clin.Invest.,79:453-462、Caroら,1987,J.Clin.Invest.,79:1330-13 37)。このように、受容体がインスリンと結合しうるにもかかわらず、正常なイ ンスリン媒介性伝達シグナルが伝わらないのである。インスリン受容体のキナー ゼ活性の低下は、患者の高血糖のレベルとの相関が指摘されている(Nolanら,19 94 ,J.C1in.Endocrinol.Metab.,78:471-477、Brillonら,1989,Diabetes,38 :397-403、Maegawaら,1991,Diabetes,40:815-819)。 第二に、セリンおよび/またはトレオニン残基のリン酸化を生じるプロテイ ンキナーゼC(PKC)が、in vitroでのインスリン受容体の不活性化と関連づけら れている。高血糖条件下で細胞をインキュベートすると、転位ならびにPKCの活 性化が生じる(Mullerら,1991,Diabetes,40:1440-1448、Mosthafら,1993,Ex p.Clin.Endocrinol.,101(Supple 2):150-151)。ホルボールエステルでPKCに よるセリンリン酸化活性を誘導すると、インスリン受容体のキナーゼ活性が低下 する(Takayamaら,1988,J.Biol.Chem.,263:3440-3447)。高血糖によって誘導 されたインスリン受容体のキナーゼ活性の阻害は、広範囲の非特異的なPKC阻害 物質、たとえばスタウロスポリン、H7、ポリミキシンBとともに細胞をインキュ ベートすることによって抑制される(Mosthafら、上掲)。 PKCによって媒介されるリン酸化の具体的な部位はわかっていない。高血糖 誘導性のインスリン抵抗性についてもっといろいろなことがわかってくれば、具 体的な治療法を設計、開発するうえで大いに役立つはずである。 発明の開示 本発明は、高血糖の結果として、インスリン受容体の特定のセリン残基(Ser1270 )が、プロテインキナーゼC(PKC)によって異常なかたちでリン酸化されると いう発見に基づくものである。インスリン受容体のSer1270がリン酸化されても 、インスリンの結合に有意な影響が及ぶことはないものの、Ser1270がリン酸化 されると、インスリン受容体の自己リン酸化ならびにチロシンキナーゼ活性が抑 制され、インスリン刺激性の細胞内シグナル伝達が抑制される。セリンがリン酸 化されたインスリン受容体は、インスリンの結合に対して応答不能であるので、 インスリン抵抗性が生じることとなる。 本発明は、包括的には、組成物、その識別方法、ならびにプロテインキナー ゼC(PKC)によるインスリン受容体のSer1270残基のリン酸化を抑制するにあたっ てのその使用に関するものである。 本発明の一観点は、プロテインキナーゼC(PKC)によって媒介されたインス リン受容体のSer1270のリン酸化を抑制する活性を有するプロテインキナーゼC の拮抗物質に関するものである。 本発明は、候補となる化合物を、PKC拮抗物質としての活性について調べる 方法にも関するものである。この方法では、候補化合物を、i)プロテインキナー ゼC、ならびにii)プロテインキナーゼCの基質と接触させる。好適な基質は、 インスリン受容体由来のポリペプチドで、Ser1270をはさむアミノ酸配列を含む ものである。PKC拮抗物質としての活性を有する化合物は、候補化合物の存在下 でのポリペプチド基質のリン酸化のレベル検出することによって識別することが できる。 これと関連した観点として、本発明は、アミノ酸配列DDLHPSFPEVS(配列番号 1)を有するポリペプチドをコードする精製ポリヌクレオチド(ただし、このポ リヌクレオチドは、天然のインスリン受容体をコードするものではない)、なら びにこのポリヌクレオチドを含むベクターおよび形質転換宿主細胞にも関するも のである。 本発明は、さらに、本発明のPKC拮抗物質ならびに製剤上許容される担体か ら構成される治療用組成物にも関するものである。 本発明の治療用組成物は、PKC拮抗物質を含む治療用組成物を、PKCによって 媒介された患者のインスリン受容体のセリンリン酸化を抑制するのに十分な量投 与することによって、患者のインスリン抵抗性を治療する方法で使用することが できる。 本発明は、さらに、セリンリン酸化抵抗性のヒトインスリン受容体をコード するポリヌクレオチド、ならびにこのポリヌクレオチドを含むベクターおよび形 質転換宿主細胞にも関するものである。 セリンリン酸化抵抗性ヒトインスリン受容体をコードするポリヌクレオチド は、インスリン抵抗性の患者の治療方法において、セリンリン酸化抵抗性ヒトイ ンスリン受容体をコードするヌクレオチド配列と、このヌクレオチド配列に機能 可能なかたちで結合された真核生物のプロモーター配列とを含む構築物を用いて 、患者の細胞を遺伝的に形質転換することによって使用することができる。 本発明の一つの利点は、本発明のPKC拮抗物質は、インスリン受容体発現細 胞に送達するだけで、患者のインスリン感受性を復元しうることである。患者の インスリン感受性を復元するうえでは、PKCによって媒介されるインスリン受容 体のセリンリン酸化を完全に抑制する必要はないし、すべてのインスリン受容体 発現細胞でインスリン受容体の応答性を復元する必要もない。 本発明のいまひとつの利点は、PKCによるセリンリン酸化のポリペプチド基 質(すなわち、Ser1270を含むインスリン受容体ポリペプチド)が、PKCによって 媒介されるインスリン受容体のセリンリン酸化を抑制することを介してインスリ ン抵抗性を治療する薬剤を設計するにあたっての合理的な基礎となることである 。 本発明のさらに別の利点は、PKCによって媒介されたSer1270のリン酸化を抑 制しうるか否かか、PKCによるセリンリン酸化を抑制する活性を有する候補化合 物を識別するにあたっての迅速なスクリーニングアッセーの基礎となることであ る。 本発明の他の特徴や利点は、本発明の公的実施態様についての以下の記載、 ならびに特許請求の範囲から明らかなはずである。 図面の簡単な説明 図1は、インスリン受容体の概念図である。 図2A−Cは、ヒトインスリン受容体の細胞質ドメインのアミノ酸配列なら びにDNA配列を示す。 図3は、ヒトインスリン受容体の細胞内ドメインのアミノ酸配列(配列番号 5)、ならびにこの配列で使用したアミノ酸残基の番号を示す。 図4は、インスリンで刺激した細胞において、グルコース濃度の上昇が、イ ンスリン受容体の自己リン酸化(βサブユニット)、ならびにインスリン受容体 によって媒介されたインスリン受容体基質1(IRS-1)のチロシンリン酸化に及ぼ す作用を示すオートラジオグラフである。 図5は、正常濃度のグルコース(5mM)あるいは高濃度のグルコース(25mM)の 存在下で、最大濃度以下の濃度のインスリンによる細胞の刺激が、インスリン受 容体の自己リン酸化(βサブユニット)、ならびにインスリン受容体によって 媒介されたインスリン受容体基質1(IRS-1)のチロシンリン酸化に及ぼす作用を 示すオートラジオグラフである。 図6は、非刺激細胞あるいはIGF-1で刺激した細胞において、正常濃度のグ ルコース(5mM)あるいは高濃度のグルコース(25mM)が、インスリン受容体の自己 リン酸化(βサブユニット)、ならびにインスリン受容体によって媒介されたイ ンスリン受容体基質1(IRS-1)のチロシンリン酸化に及ぼす作用を示すオートラ ジオグラフである。 図7は、先端の43アミノ酸が欠落しているインスリン受容体(DCT)を発現 する細胞において、インスリンによる刺激、ならびにグルコース濃度の上昇が、 インスリン受容体の自己リン酸化(βサブユニット)、ならびにインスリン受容 体によって媒介されたインスリン受容体基質1(IRS-1)のチロシンリン酸化に及 ぼす作用を示すオートラジオグラフを集めたものである。 図8は、高濃度のグルコース単独(A)、ホルボールエステル(B)、あるい は高濃度のグルコースおよびインスリン(C)と接触させた細胞から得たインスリ ン受容体の二次元トリプシンホスホペプチド分析のオートラジオグラフである。 図9は、正常濃度のグルコース(5mM)、高濃度のグルコース(25mM)、あるい は高濃度のグルコース(25mM)およびPKC拮抗物質であるビスインドールマレイミ ドの存在下で、インスリンによる刺激が、インスリン刺激性のホスファチジルイ ノシトールキナーゼの活性に及ぼす作用を示すオートラジオグラフである。 図10は、ペプチド19−31の存在下あるいは不在化で、インスリンによ る刺激およびグルコース濃度の上昇が、DNAの合成に及ぼす作用を示すグラフ である。 図11は、正常濃度のグルコース(5mM)あるいは高濃度のグルコース(25mM) の条件下で、非刺激(基底)細胞あるいはインスリン刺激細胞において、PKC阻害 ペプチド19-31がDNAの合成に及ぼす作用を示すグラフである。 図12は、正常濃度のグルコース(5mM)あるいは高濃度のグルコース(25mM) の条件下で、非刺激細胞あるいはインスリンによる刺激を与えた細胞において、 MAPキナーゼキナーゼ(MEK)阻害物質がインスリン受容体の自己リン酸化、ならび にIRS-1のリン酸化に及ぼす作用を示すオートラジオグラフである。 図13は、正常濃度のグルコース(5mM)あるいは高濃度のグルコース (25mM)の条件下で、非刺激細胞(N)あるいはインスリンによる刺激を与 えた細胞(Ins)において、ペプチドSer-1035(配列番号5)あるいはペプチド Ser-1270(配列番号1)のマイクロインジェクションが、DNAの合成に及ぼす作 用を示すグラフである。 発明の詳細な説明 本発明は、高血糖(すなわち、グルコースが体液中に蓄積される代謝状態) が、プロテインキナーゼC(PKC)によるインスリン受容体の特定のセリン残基(Se r1270)の異常なリン酸化の原因となっていることを見いだしたことに基づくもの である。インスリン受容体のSer1270がリン酸化されても、インスリンのインス リン受容体への結合に有意な影響が及ぶことはないものの、Ser1270のリン酸化 は、インスリン受容体の自己リン酸化ならびにチロシンキナーゼ活性を阻害する 。インスリン受容体のキナーゼ活性は、インスリン刺激性細胞内シグナルの伝達 に際して必須なので、セリンがリン酸化されたインスリン受容体は、インスリン の結合に対して応答不能となる。したがって、インスリン受容体のセリンがPKC によってリン酸化されると、インスリン抵抗性が生じることとなり、こうしたイ ンスリン抵抗性が、糖尿病性のNIDDMの患者に見られるような高血糖に伴う状態 である。 インスリン受容体は、2つのモノマータンパク質から構成されるホモ二量体 タンパク質で、それぞれのモノマータンパク質は、αサブユニットとβサブユニ ットとから構成されている。図1は、インスリンのごく大ざっぱな概念図で、細 胞外ドメイン、貫膜ドメイン、細胞質ドメインの相対的な位置、また、インスリ ン受容体の自己リン酸化部位ならびに受容体中のDDLHPSFPEVS(配列番号1)配列 を示してある。インスリン受容体の詳細な三次元構造はわかっていない。ヒトイ ンスリン受容体の細胞質ドメインのアミノ酸配列ならびにDNA配列を図2A− Cに示す。 ”Ser1270”は、DDLHPSFPEVS(配列番号1)で定義される配列のセリン残基で、 配列中、Ser1270残基には下線を付して示してある。ここでの残基の番号は、図 3に示すヒトインスリン受容体の細胞内の細胞質ドメインのアミノ酸配列の番号 のつけ方にしたがったものである。 「プロテインキナーゼC」すなわち「PKC」は、各種タンパク質でセリンな らびにトレオニン残基のリン酸化を促進する酵素である。PKCは、実際には、少 なくとも8種の別々のPKCのアイソフォームを包括するものであり、この個々の アイソフォームは、細胞の種類に応じて各種の組み合わせをとる。たとえば、ラ ット1繊維芽細胞は、有意な量のPKCα、β、δ、zを含有している。 ンスリン濃度も正常ないし高レベルであることを特徴とする代謝不全状態を意味 する。高血糖をin vitroでモデル化する際には、インスリン受容体発現細胞を、 高濃度(20mM to 25mM)のグルコースならびに正常ないし準最大濃度のインスリン 中でインキュベートする。 プロテインキナーゼC(PKC)拮抗物質 プロテインキナーゼC(PKC)拮抗物質は、PKCによって媒介されるインスリン 受容体のSer1270残基のリン酸化、特に、高血糖によって誘導されたPKC媒介性の セリンリン酸化を抑制する活性を有する化合物である。「PKCによって媒介され るインスリン受容体のSer1270残基のリン酸化を抑制する活性」とは、PKC拮抗物 質が、PKCによって媒介されるインスリン受容体のセリンリン酸化を部分的ある いは完全に抑制して、高血糖条件下でのインスリンの結合に対するインスリン受 容体の応答性を保持することを意味する。 「インスリンの結合に対するインスリン受容体の応答性」とは、インスリン がインスリン受容体に結合した場合に通常見られる生物学的活性の少なくとも一 つを、インスリン受容体がインスリンの結合に対して示すことによって応答する ことを意味する。インスリンの結合によって刺激される生物学的活性としては、 たとえば、インスリン受容体の自己リン酸化、インスリン受容体媒介性のチロシ ンキナーゼおよびホスファチジルイノシトールキナーゼ活性、ならびにインスリ ン刺激性のDNA合成がある。 本発明のPKC拮抗物質は、PKCによって媒介されるインスリン受容体のSer127 0 残基のリン酸化を各種のメカニズムで抑制することができる。たとえば、PKC拮 抗物質は、PKCによって媒介されるSer1270残基のリン酸化を、PKCとの相互作用 によって(たとえば、PKCの触媒部位との可逆的あるいはほぼ不可逆的な結合を 介してPKCに結合することによって)抑制することもできるし、また、PKCによっ て媒介されるSer1270残基のリン酸化を、インスリン受容体との相互作用によっ て抑制することもできる。たとえば、PKC拮抗物質は、PKCによるSer1270残基の 認識あるいは近接をマスクするようなかたちで、インスリン受容体のペプチドモ チーフと結合することができる。「インスリン受容体のペプチドモチーフ」とは 、インスリン受容体のうちの、(PKCあるいはPKC拮抗物質のような)他の分子に よる相互作用の対象となるアミノ酸配列のことを意味する。PKCによるインスリ ン受容体のSer1270残基の認識は、PKC拮抗物質によってマスクすることが可能で 、具体的には、Ser1270を含むペプチドモチーフにPKC拮抗物質を結合させて、PK CのSer1270への近接を直接阻んだり、PKCのSer1270への近接が立体構造上阻まれ るようなかたちでPKC拮抗物質をインスリン受容体に結合させたり、あるいは、P KCによって認識されるペプチドモチーフの三次元構造(すなわちコンホメーショ ン)に変化が生じるようなかたちでPKC拮抗物質をインスリン受容体と結合させ て、Ser1270のリン酸化が促進されるようなPKCとインスリン受容体との相互作用 を阻んだりすることができる。Ser1270ペプチドモチーフのコンホメーションを 変えるようなかたちでPKC拮抗物質をインスリン受容体に結合させる場合、PKC拮 抗物質は、インスリン受容体の任意の部分(たとえば、インスリン受容体を構成 するホモ二量体のいずれかのタンパク質、そして/または、インスリン受容体単 量体のαおよび/またはβサブユニット)に対して結合させることができる。特 定の理論に拘束されるものではないものの、インスリン受容体と相互に作用する PKC拮抗物質は、βサブユニット、特に、βサブユニット中に存在するDDLHPSFPE VS(配列番号1)モチーフと相互に作用する傾向が強い。 PKC拮抗物質は、ペプチド様(peptidemimic)化合物とするが好ましい。ペプ チド様化合物は、特定の選ばれたペプチドの三次元構造(すなわち「構造モチー フ」)を基本とした三次元構造を有する合成化合物である。ペプチド様化合物は 、ペプチドであってもなくてもよいが、ペプチドが示すのと同様の、あるいはさ らに強い生物学的活性を(たとえば、そのペプチドが本来結合する触媒部位に 結合することによって)示すという点で、ペプチドに「類似(mimic)」している 。 本発明のペプチド様化合物は、そのペプチド様化合物のもととなったペプチ ドのPKC拮抗物質としての活性と実質的に同等、あるいはそれ以上のPKC拮抗物質 としての活性を有するのが好ましい。本発明のペプチド様PKC拮抗物質として好 適なのは、アミノ酸配列DDLHPSFPEVS(配列番号1)から誘導したもので、このペ プチド様化合物は、このペプチド様化合物のもととなったペプチドのPKC拮抗物 質としての活性と実質的に同等、あるいはそれ以上のPKC拮抗物質としての活性 を有している。 ペプチド様化合物は、治療上の用途に応じて各種の有利な特徴を有するもの とすることができ、たとえば、細胞透過性が改善されていても、各化合物の標的 分子との結合親和性および/または結合活性が増大していても、生物学的半減期 が伸びていても、経口投与性が改善されていてもよい。PKC拮抗物質としての活 性を有するペプチド様化合物を設計するにあたっては、当業界で周知のコンピュ ーターモデリングの手法を利用することもできる。ペプチド様化合物のさらなる 設計ならびに製造方法は、当業界で周知である。 本発明のPKC拮抗物質の例としては、さらに、インスリン受容体のアミノ酸 配列DDLHPSFPEVS(配列番号1)あるいは実質的に同一の配列を有する各種ペプチ ドが挙げられる。ここで、「実質的に同一の配列」とは、配列DDLHPSFPEVS(配列 番号1)に対して少なくとも50%、好ましくは85%、さらに好ましくは90 %、特に好ましくは95%のホモロジーを有するアミノ酸配列のことである。ア ミノ酸配列DDLHPSFPEVS(配列番号1)は、ヒトインスリン受容体(配列番号5) のアミノ酸残基1265-1275由来のものであるが、PKC拮抗物質は、Ser1270残基( あるいは類似物質)が含まれているのであれば、もっと長くても、あるいは短く てもかまわない。一般に、PKC拮抗物質がペプチドである場合には、ペプチドは 、天然のインスリン受容体配列の一部から構成されている。ここで、「天然のイ ンスリン受容体配列」とは、野生型インスリン受容体配列の全体を含む核酸配列 、あるいはこの核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を意味するものであ る。たとえば、インスリン受容体が、ヒトインスリン受容体である場合には、天 然の核酸配列とは、天然に生じるヒトインスリン受容体のアミノ酸配列全体をコ ードするものである。特に重要なのは、天然のヒトインスリン受容体のSer1270 残基ならびにSer1270をはさむアミノ酸残基を含むペプチドである(配列番号4 )。 配列DDLHPSFPEVS(配列番号1)と実質的に同一であるアミノ酸配列は、PKCに よるセリンリン酸化活性を抑制する際に、配列DDLHPSFPEVS(配列番号1)と実質 的に同一、あるいはそれ以上の活性(たとえば、DDLHPSFPEVS(配列番号1)が有 する活性の25%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは75%以上、 さらに好ましくは90%−100%あるいはそれ以上)を示すことが好ましい。 DDLHPSFPEVS(配列番号1)と実質的に類似したペプチドの例としては、アミノ酸 の置換(たとえば保存的置換)、欠失、アミノ酸類似物質(すなわち、合成アミ ノ酸の各種変異体)、あるいはもっと別の修飾、たとえば化学的修飾(たとえば 、メチル化、ハロゲン化等)を有するものの、PKCによって媒介されるインスリ ン受容体のセリンリン酸化を抑制する能力を保持しているものが挙げられる。保 存的置換としては、次の群、すなわちグリシン、アラニン;バリン、イソロイシ ン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セ リン、トレオニン;リシン、アルギニン;ならびにフェニルアラニン、チロシン 内部の置換が典型的である。また、PKC拮抗物質としての活性を有するペプチド は、D−アミノ酸による置換を含んでいてもよい。特に重要なのは、天然のイン スリン受容体のPKC結合親和性および/または結合活性(すなわち、ペプチドがP KCと結合する力、たとえば、PKCとの結合が可逆性か非可逆性かといった性質) と比べてペプチドのPKC結合親和性および/または結合活性が増大するようなペ プチドの修飾である。 「ペプチド」とは、一般に、D-および/またはL-アミノ酸の鎖を意味し、翻 訳後修飾あるいは化学修飾(たとえば、グリコシル化、リン酸化、メチル化、ハ ロゲン化)を有していてもよい。「ペプチド」は、そのもととなったポリペプチ ドより相当数少ない数のアミノ酸を含むものである。PKC拮抗物質としての活性 を有する本発明のペプチドは、通常、約2−100のアミノ酸残基、好ましくは 、約3−50のアミノ酸残基、さらに好ましくは、約3−25のアミノ酸残基、 さらに好ましくは、約5−20個のアミノ酸残基、通常、約5−15のアミノ酸 残基を含み、一般に、Ser1270残基あるいはその誘導体を含む約11のアミノ酸 残基を含んでいる。PKC拮抗物質としての活性を有する本発明のペプチドは、DDL HPSFPEVS(配列番号1)を含むことが好ましい。プロテインキナーゼ(PKC)拮抗物質の識別 本発明のPKC拮抗物質は、PKCによって媒介されたインスリン受容体のSer127 0 残基のリン酸化を、特に高血糖環境で抑制する能力によって識別される。 PKC拮抗物質は、たとえば、以下の能力、すなわち、1)in vitroの高血糖 モデル中で、PKCによって媒介されたインスリン受容体のセリンリン酸化を抑制 する能力、2)精製PKCを使用した無細胞アッセーで、PKCによって媒介されたPK C基質(たとえば、DDLHPSFPEVS(配列番号1)を含むインスリン受容体あるいは他 の基質)のセリンリン酸化を抑制する能力、あるいは3)in vitroの無細胞アッセ ーで、競合的なかたちでPKCに結合する能力によって識別することができる。PKC 拮抗物質となる化合物のこうした識別方法の例を、以下に詳細に説明する。I.全細胞を用いた、PKCによるセリンリン酸化抑制活性を調べるアッセー PKC拮抗物質となる化合物は、in vitroの高血糖状態をモデル化しているよ うなin vitroのアッセーで、インスリン受容体発現細胞を使用して識別すること ができる。PKC拮抗物質のアッセーで使用する哺乳動物細胞は、機能的インスリ ン受容体(すなわち、このインスリン受容体は、正常なインスリン受容体で見ら れるようなインスリン刺激性の活性を示す)を発現、あるいは過剰発現する任意 の哺乳動物細胞とすることができる。 PKC拮抗物質の候補化合物の活性は、この候補化合物を哺乳動物細胞の細胞 質に導入することによって調べる。候補化合物が哺乳動物細胞の細胞膜をたやす く透過しうる場合には、高グルコース環境に細胞を暴露する前、あるいは暴露中 に、候補化合物を哺乳動物細胞の入った培養液に、インスリンとともに、あるい はインスリンなしで加えることができる。細胞を高濃度のグルコースならびにイ ンシュリンと接触させる過程は、in vitroのこう血糖状態をin vitroでモデル化 した過程である。 調べる化合物が哺乳動物細胞の細胞膜をたやすく透過しえない場合は、この 哺乳動物細胞を候補化合物とともにインキュベートする前に、たとえば、非致死 量の洗剤のような孔形成性化合物での処理によって、哺乳動物細胞をわずかに透 過性としておくことができる。あるいは、候補化合物の方の膜透過性を増大させ ておくこともできる。たとえば、候補化合物をリポソームに封入して、化合物の 細胞までの送達と、細胞の細胞質内への導入の双方を促進することができる。膜 強化製剤の調製方法は当業界で周知である。(たとえば、Martinら,1982,J.Bi ol.Chem.257:286-288、Szokaら,1980,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9,467- 508,(1980)、Ostro,M.J.編,Liposomes From Biophysics to Therapeutics, Marcel Dekker,Inc.,New York,1987を参照されたい)。候補化合物は、当業界 で周知の方法を用いて、マイクロインジェクションで細胞の細胞質に直接導入す ることもできる。 機能的インスリン受容体を発現する哺乳動物細胞は、正常濃度のグルコース (たとえば、約5mMのグルコース)、あるいは高濃度のグルコース(たとえば、 20mM-25mMのグルコースの存在下)の環境で、インスリンを加えて、あるいは加 えずにインキュベートする。PKC拮抗物質となる化合物は、PKCによって媒介され たセリンリン酸化活性の変化を検出することによって識別する。細胞中でのPKC によって媒介されたセリンリン酸化活性は、数多くの方法でモニターすることが でき、たとえば、a)PKCによって媒介されたインスリン受容体のセリンリン酸化 を直接検出したり、b)インスリン受容体の自己リン酸化活性を検出したり、c)イ ンスリン受容体によって媒介されるチロシンキナーゼ活性を検出したり、d)イン スリン刺激性のホスファチジルイノシトールキナーゼ活性を検出したり、あるい はe)インスリン刺激性のDNA合成を調べたりすることによってモニターが可能 である。A)インスリン受容体のセリンリン酸化を直接検出する方法 PKCによって媒介されたインスリン受容体のセリンリン酸化については、細 胞を、アッセーの全期間にわたって、放射性核種、たとえば32Pとともにインキ ュベートすることによって直接調べることができる。放射性核種がリン酸化によ ってインスリン受容体に取り込まれたかどうか、また、インスリン受容体のどの アミノ酸が具体的にリン酸化されたのかについては、ホスホアミノ酸分析ならび にSDS-PAGE分析によって調べることができる。これらの方法は、すでに公表され ている(Andersonら,1991,J.Biol,Chem.,266:21760-21764、Sasaokaら,19 94,J,Biol.Chem.,269:13689-13694)。本発明のPKC拮抗物質の存在下では、 高グルコース条件下でのインスリン受容体のセリンリン酸化は、PKC拮抗物質不 使用の対照サンプルと比べて低減しているはずである。B)インスリン受容体の自己リン酸化活性を検出する方法 高グルコース濃度が、インスリン受容体の自己リン酸化に及ぼす作用、なら びに候補化合物がこうした作用を抑制する能力については、細胞をアッセーの全 期間にわたって32Pとともにインキュベートすることによって調べることができ る。放射性核種が自己リン酸化によってインスリン受容体に取り込まれたかどう かについては、上述したように、ホスホアミノ酸分析ならびにSDS-PAGE分析によ って調べることができる。本発明のPKC拮抗物質の存在下では、高グルコース条 件下でのインスリン受容体の自己リン酸化は、PKC拮抗物質不使用の対照サンプ ルと比べて増大しているはずである。C)インスリン受容体によって媒介されるチロシンキナーゼ活性を検出する方法 インスリン受容体のチロシンキナーゼ活性については、こうしたリン酸化活 性によって生じた基質のリン酸化を検出することによって調べることができる。 たとえば、インスリンが機能的インスリン受容体に結合すると、タンパク質IRS- 1(インスリン受容体基質−1)は、インスリン受容体によってチロシンリン酸 化される。したがって、チロシンリン酸化されたIRS-1のレベルは、インスリン 受容体のチロシンキナーゼ活性ならびに正常な機能と相関を有するものである。 IRS-1のチロシンリン酸化については、細胞をアッセーの全期間にわたって3 2 Pとともにインキュベートすることによってモニターすることができる。この放 射性核種がIRS-1に取り込まれたかどうかについては、上述したように、ホスホ アミノ酸分析ならびにSDS-PAGE分析によって、あるいは、当業界で周知の方法に したがって、抗ホスホチロシン抗体を使用することによって検出することができ る。本発明のPKC拮抗物質の存在下では、高血糖条件下でのIRS-1のリン酸化 は、PKC拮抗物質不使用の対照サンプルと比べて増大しているはずである。D)インスリン刺激性のホスファチジルイノシトール(PI-3)キナーゼ活性を検出 する方法 インスリンで細胞を刺激すると、ホスファチジルイノシトール(PI-3)キナー ゼ活性も刺激される。PI-3キナーゼ活性は、当業界で周知の方法にしたがって薄 層クロマトグラフィーで分析することによって検出することができる。PKC拮抗 物質の存在下では、高血糖条件下でのP1-3キナーゼ活性は、PKC拮抗物質不使用 の対照サンプルと比べて高いはずである。E)インスリン刺激性のDNA合成を検出する方法 インスリンによるインスリン受容体経由の細胞への刺激は、インスリン受容 体の自己リン酸化やIRS-1のチロシンリン酸化だけでなく、DNA合成の増大も 生じる。したがって、高血糖によって誘導されたインスリン媒介性のシグナル伝 達、すなわちインスリン受容体の機能の抑制については、インスリンの存在下な らびに不在下でDNA合成の相対的レベルを測定することによって調べることが できる。このアッセーでは、哺乳動物細胞を、正常濃度(たとえば5mM)のグルコ ースあるいは高濃度のグルコース(20mM-25mM)を含む培養液で、候補化合物を加 えて、あるいは加えずにインキュベートする。次に、細胞を最大濃度以下かつ有 効濃度のインスリン(すなわち10ng/ml)で刺激し、DNA合成用の分子プローブ 、たとえばブロモデオキシウリジン(BrDU)の取り込みを染色によって調べる。 正常な場合、約10%の細胞がBrDUを取り込む。正常レベルのグルコースの 存在下でインスリンが存在すると、約80%の細胞がBrDUで染色され、約5-10ng /mlのインスリンでは、最大作用の約半分のレベルとなる。25mMのグルコースと1 0ng/mlのインスリンが存在すると、BrDUの取り込みは、約50%低減する。たと えば、10ng/mlのインスリンの存在下、生理学的なグルコース条件(5mM)で、B rDUについて60%の細胞が陽性であった場合、10ng/mlのインスリン、高血糖(2 5mM)レベルのグルコースの存在下では、BrDU陽性細胞の率は約25%まで低減す るはずである。 候補化合物がPKC拮抗物質としての活性を有している場合、10ng/mlのイン スリンの存在下、高血糖条件下でのBrDU陽性細胞の率は、PKC拮抗物質である化 合物の不在下でのBrDU取り込みレベルに対して増大する。 表1は、上述のin vitroのアッセーの間に、PKC拮抗物質が、インスリン刺 激全細胞に、正常濃度あるいは高濃度のグルコース条件下で及ぼした作用をまと めたものである。 II.PKC拮抗物質の無細胞アッセー PKCによって媒介されるインスリン受容体のセリンリン酸化を、市販の精製PKC 、ならびにPKCによるセリンリン酸化に際しての基質を使用して、無細胞アッセ ーで調べた。「PKCの基質」は、PKCによって媒介されるセリンリン酸化の基質と なる任意の基質とすることができ、好ましくは、ポリペプチド、さらに好ましく は、インスリン受容体のアミノ酸配列DDLHPSFPEVS(配列番号1)を有するポリペ プチドとすることができる。PKCの基質として好適なのは、精製インスリン受容 体、好ましくはヒトインスリン受容体、あるいはアミノ酸配列DDLHPSFPEVS(配列 番号1)を含むその断片である。基質がペプチドあるいはポリペプチドである場 合には、PKCによって媒介されるセリンリン酸化は、上述のように、ホスホアミ ノ分析、および/またはSDS-PAGE分析によって検出することができる。候補化合 物がPKC拮抗物質としての活性を有している場合には、その候補化合物の存在下 では、基質のセリンリン酸化が、その候補化合物が不在である場合の基質のセリ ンリン酸化レベルと比べて低減する。III. 競合的なPKC結合アッセー PKC拮抗物質であるような化合物については、PKCによるセリンリン酸化のポ リペプチド基質、あるいはすでにPKC拮抗物質であることが識別されている物質 の濃度を増大させながら、この化合物が精製PKCに結合する能力を調べることに よって識別することができる。PKCのポリペプチド基質、ならびにPKC拮抗物質と しての活性を有する本発明のペプチドは、アミノ酸配列DDLHPSFPEVS(配列番号1 )、あるいはそのPKC結合性断片を含むのが好ましい。 競合的結合アッセーは、各種の免疫診断用検定法で使用される競合的結合ア ッセーと同様の方法で実施する。たとえば、PKCのポリペプチド基質を、蛍光色 素(たとえば蛍光色素)あるいは放射標識を付すなど化て、検出可能なかたちで標 識する。この検出可能標識PKCポリペプチド基質の既知量を、精製PKCならびに候 補化合物と混ぜる。次に、ポリペプチド基質−PKC複合体を単離し、この複合体 についての検出可能標識量を測定する。候補化合物の存在下で検出可能標識レベ ルが低減しているようであれば、この候補化合物は、PKC拮抗物質としての活 性を有している。 各種の免疫診断用検定法で使用される競合的結合アッセーの場合と同様、こ こに記載した競合的PKC結合アッセーについても、当業者であれば、各種の方法 で実施しうることが容易にわかるはずである。たとえば、このアッセーは、溶液 中で実施することも、固体支持体(たとえば、PKCを表面に結合させたマイクロ タイターウェル)を使用して実施することも可能である。NIDDM の動物モデル 本発明のPKC拮抗物質のin vivoでの効力は、NIDDMの動物モデルを使用する ことによって容易に調べることができる。NIDDMのこうした動物モデルは、ヒト のNIDDMのモデルとして当業界で周知であり、受け入れられている。 たとえば、ヒトのNIDDMのインスリン抵抗性は、正常ラットで、このラット にグルコースと低用量のソマトスタチンの輸液を8時間にわたって投与して高血 糖(約250mg/dl)とすることによってシミュレートすることができる。その結果、 ラットは有意にインスリン抵抗性となり、このことはグルコースクランプ法で測 定することができる。このように、ラットモデルで外的に誘導したインスリン抵 抗性は、比較的短い時間枠で発現させることができ、PKC拮抗物質の候補化合物 のinvivoでの効果を調べるうえで有用な高血糖動物モデルとなる。PKCアンタゴニストの源および/または合成 PKCアンタゴニストは、当技術分野で公知の種々の技術を使用して産生およ び/または単離できる。例えば、PKCアンタゴニストは、天然源(例えば、植 物または微生物)から単離し、化学合成を使用して生成させ、または化学化合物 のライブラリー(例えば、化学収集物および/またはMerckなどから市販されて いる結合ライブラリー)から同定することができる。PKCアンタゴニストがペ プチドの場合、該ペプチドは、化学合成または組換えDNA技術(例えば、本発 明のペプチドをコードするDNAの原核性または真核性宿主細胞での発現)によ って産生することができる。ペプチドなどの化学化合物の合成法は、精製および 単離法と同様に、当技術分野で周知である(例えば、ペプチドの精製に対しては 、Deutscher編、1990,”Guide to Protein Purification"(タンパク質精製の 指針)、Academic Press,Inc.,SanDiego,CAを参照。)。PKCセレンリン酸化基質またはPKCアンタゴニストとして使用するためのペ プチドの化学合成 PKCアンタゴニスト化合物ならびに本明細書に記載するアミノ酸配列に基づ くポリペプチド基質およびそれらの変形は、当技術分野で周知の化学合成法を使 用して合成できる(例えば、Peptide Synthesis Protocols(ペプチド合成プロ トコール)(Methods in Molecular Biology,35),PenningtonおよびDunn編、19 94,Humana Press,Totowa,New Jersey;Sold Phase Peptide Synthesis(固相 ペプチド合成),第2版、Stewart編,1984,PierceChemical Company,Rockfor d,IL. Peptides:Design,Synthesis and Biological Activity(ペプチド:設 計、合成および生物学的活性),BasavaおよびAnantharamaiah編、1994,Birkha user,Boston,MA;Jones,1994,The Chemical Synthesis of Peptides (ペプ チドの化学合成),Clarendon Press,Oxford,Eng1andを参照)。例えば、PK Cアンタゴニスト化合物は、Clark-Lewisら、P.N.A.S.,USA,90:3574-3577(199 3)およびC1ark-Lewisら、Biochemistry,30:3128-3135(1991)に記載のt−ブ チルオキシ−カルボニルおよびベンジル保護法を使用した標準的固相法によって 合成できる。フッ化水素で脱保護した後、タンパク質は空気酸化によってフォー ルディングされ、逆相HPLCによって精製される。純度は、逆相 HPLCおよび等電点電気泳動によって測定する。アミノ酸の混入は合成中にモ ニターし、最終組成物は、アミノ酸分析によって決定する。タンパク質の正確な 共有構造は、イオンスプレー質量分析を使用して確認できる(SCIEX APIII)。 合成後、PKCアンタゴニスト活性を有するペプチドは、例えば、当技術分野 で公知の方法に従って、N−末端アミノ酸およびC−末端アミノ酸のα炭素間に さらに炭素−炭素結合を形成することにより、環化することができる(例えば、 Mergler,1994,Meth.Mol.Biol.,90:287-301;Katesら、1995,Tetrahedron L ett.,34:1549-1552;Cavelier-Frontinら、1993,J.Mol.Struc.,286:125-130 ;Bradyら、1979,J.Org.Chem.,44(18):3101;McMurrayら、1994,Peptide Res .,7:195を参照)。PKC−媒介セリンリン酸化基質またはPKCアンタゴニストとして使用するた めのペプチドまたはポリペプチドを合成するための組換えDNA技術 PKC−媒介セリンリン酸化基質または本発明のPKCアンタゴニストとして 使用するためのペプチドまたはポリペプチドは、当技術分野で周知の通常の分子 クローン化および発現技術を使用して産生できる。ペプチドおよび/またはポリ ペプチドの組換え産生における第一工程として、関与するペプチドまたはポリペ プチドをコードするポリヌクレオチドを単離し、クローニングベクターに挿入す る。「精製ポリヌクレオチド」とは、本発明のポリヌクレオチドの誘導源である 生物の天然ゲノムにおいて、そのペプチドもしくはポリペプチドをコードする核 酸または該ペプチドもしくはポリペプチドをコードする核酸と天然に結合した他 のエピソームもしくは染色体DNAにフランキングした核酸配列を含まない核酸 (例えば、DNAまたはRNA)を意味する。すなわち、その用語は、例えば、 ベクター、自己複製プラスミドもしくはウイルス、または原核性もしくは真核性 のゲノムDNAに組み込まれる、あるいは他の配列とは無関係に別個の分子(例 えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ消化により産生されるcDNAまた はそのゲノムもしくはcDNA断片)として存在する、組換えDNAを含む。ま た、別のペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDN Aも含める。 関与する配列をコードするDNA断片の同定、クローン化および発現のための 方法は手順が慣例化しており、当技術分野で周知である(例えば、Sambrookら、 1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照)。例えば、インスリン受容 体ペプチドまたはポリペプチドをコードするDNAは、例えば米国特許No.4,80 0,159(Mullisら)に記載されている、合成オリゴヌクレオチドプライマーの標 準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を使用して、インスリン受容体をコ ードするDNAから単離できる。本発明で使用するためのペプチドまたはポリペ プチドの作製に使用されるDNAは、インスリン受容体をコードするどんなDN Aであってもよいが、ヒトインスリン受容体をコードするDNAが好ましい。特 に、ヒトインスリン受容体の細胞質ドメインをコードするDNAが好ましい。ヒ トインスリン受容体の二つのサブタイプのいずれも、細胞質ドメインを構成する 、同一またはほぼ同一のβ−サブユニットを有するので、本発明で使用できる( 図2A〜Cおよび3)。 ヒトインスリン受容体をコードする遺伝子は同定され、クローン化されている (Chen,1985,Nature,313:756-761)。インスリン受容体をコードするDNA のPCR増幅は、インスリン受容体残基Ser1270およびSer1270残基にフランキン グしているアミノ酸をコードするポリヌクレオチドが作製されるように設計でき る。PCR増幅法で使用するためのプライマーの配列は、例えばヒトインスリン 受容体のDNA配列に基づいて設計できる(配列番号4)。 ペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌクレオ チドがプロモーターに機能を発揮するように結合されるように、ベクターに挿入 する。哺乳類、酵母および細菌細胞の安定した形質転換に適する多数のベクター が、各所から幅広く提供されている(例えば、the American Type Culture Coll ection,Rockville,MD)。適する宿主細胞および安定に形質転換された宿主細 胞系を構築するための方法は周知である(例えば,Pouwelsら、1985,Cloning V ectors:A Laboratory Manual;Ausubelら、1989,Current Protocols in Molecul ar Biology,John Wiley & Sons,New York;およびSambrookら、前出)。宿主細 胞の選択、形質転換法および発現ビヒクルの選択は、選択した宿主系に依存する 。 「プロモーター」は、機能を発揮するように結合する、転写を行うのに十分な 最小の配列である。プロモーターは、プロモーターに依存する遺伝子発現を制御 可能にして、細胞型特異的、組織特異的または外部のシグナルもしくは物質によ って誘導可能するのに十分であるプロモーター要素(例えば、エンハンサー)を 含む。該要素は、天然遺伝子の5’または3’領域に位置することができる。「 機能を発揮するように結合した」とは、関与するDNA(例えば、関与するペプ チドまたはポリペプチドをコードするDNA)および調節配列が、適切な分子( 例えば、転写活性化タンパク質)がその調節配列に結合すると関与するDNAの 遺伝子発現が可能になるように結合し、従って、組換えタンパク質またはRNA 分子の産生を容易にすることを意味する。 PKC基質またはPKCアンタゴニストをコードするDNAを含むベクターは 、公知の技術を使用して構築され、当技術分野で周知の形質転換技術を使用して 原核細胞、酵母または真核細胞に導入される。「形質転換」は、新規DNA(す なわち、細胞にとって外来のDNA)を組み込むことによって細胞に誘導される 永久の遺伝子変化を意味する。細胞が哺乳類細胞の場合、永久の遺伝子変化は、 一般に、細胞のゲノムへのDNAの導入によって達成される。 「形質転換細胞」とは、組換えDNA法によって、本発明のペプチドまたはポ リペプチドをコードするポリヌクレオチドがその中に(またはその先祖に)導入 されている細胞を意味する。 宿主細胞において外来DNAまたはRNA配列の発現を得るための方法は、当 技術分野で周知である(例えば、Bormalら、1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA ,84:2150-2154; Sambrookら、前出;それらは各々、関与するDNAの発現に対 する方法および組成物に関して、参考として本明細書に組み入れる。)。 PKCセリンリン酸化基質として作用し得るポリペプチド、およびPKCアン タゴニスト活性を有するペプチドは、当技術分野で周知の発現クローン化法によ っても単離できる(例えば、Sambrookら、前出を参照)。例えば、DNA発現ラ イブラリー、すなわち、原核性プロモーターに機能を発揮するように結合した種 々のcDNA断片を含むクローンの集まり、で形質転換した細胞。PKCセリン リン酸化のためのポリペプチド基質の発現は、精製したPKCの存在下で放射性 核種を混入し、次いでホスホアミノ酸および/またはSDS−PAGE分析を行 うことにより検出できる。PKCアンタゴニスト活性を有するペプチドの発現は 、培養上清および/または細胞溶解物を、精製したPKCまたは公知のPKCア ンタゴニストを結合するその一部を使用してアッセイすることにより検出できる 。発現ライブラリーのペプチドがPKCまたはPKCの一部に結合する場合、そ のペプチドは、インスリン受容体のPKC−媒介セリンリン酸化の潜在的阻害活 性に対して選択する。 ペプチドまたはポリペプチドをコードするDNAのヌクレオチド配列は、当技 術分野で周知の方法を使用して決定できる(例えば、Sambrookら、前出を参照) 。配列を確認した後、得られたプラスミドクローンは、ペプチドまたはポリペプ チドをコードするDNAの発現に対する所望の宿主の形質転換に使用する。 組換えペプチドおよびポリペプチド(例えば、本明細書に記載のいずれかの発 現系によって産生)の発現は、ウェスタンブロット、組換え細胞抽出物の免疫沈 殿分析、組換え細胞抽出物におけるタンパク質のPKC−媒介セリンリン酸化も しくは組換え細胞抽出物のPKCアンタゴニスト活性の分析などの免疫学的手法 によってアッセイできる。PKCアンタゴニスト活性を有するペプチドの修飾 本発明のPKCアンタゴニストがペプチドの場合、PKCアンタゴニストは、 PKC結合アフィニティーおよび/またはアビディティー、治療効力、生物学的 半減期、膜透過性、標的特異性、薬物相溶性、薬物動力学、生物学的利用能およ びPKCアンタゴニストの治療効力を高める他の特性などの、該PKCアンタゴ ニストに望ましいいくつかの特性を高めるように修飾できる。化学的修飾を使用 して、望ましい薬物動力学および生物学的利用能特性を示すペプチド模倣物を合 成することができる。抗−PKCアンタゴニスト抗体の産生 PKCアンタゴニスト、特にPKCアンタゴニストであるペプチド、に特異的 に結合するポリクローナル抗体および/またはモノクローナル抗体は、当技術分 野で周知である、慣例の方法に従って作製することができる(例えば、Harlowお よびLane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab oratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Schrierら、1980,Hybridoma Techniq ues,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYを参照) 。抗−PKCアンタゴニスト抗体は、PKCアンタゴニストの精製および/また は特異的PKCアンタゴニストの活性を測定するためのアッセイ(例えば、in v itroアッセイにおけるPKCアンタゴニストの抗体結合および阻害による)にお いて使用できる。薬物組成物 本発明のPKCアンタゴニスト化合物は、薬物組成物にすることができる。「 薬物組成物」とは、診断または治療法において使用するための患者への投与に適 する組成物を意味する。一般に、本発明の薬物組成物は、PKCアンタゴニスト び製剤上許容される担体を含む。 「製剤上許容される担体」とは、PKCアンタゴニストを標的細胞に運ぶため のビビクルを意味し、該ビヒクルは細胞生存力と相溶性である。本発明のPKC アンタゴニストの投与での使用に適する製剤上許容される担体は、当業者に周知 である。製剤上許容される担体の選択は、投与されるPKCアンタゴニスト、投 与法および治療される状態などの種々の因子に依存する。 本発明のPKCアンタゴニストとともに使用するのに適した製剤上許容される 担体としては、それらに限定されないが、0.01〜0.1M、好ましくは0.05Mのコハ ク酸緩衝液または0.8%の食塩水が挙げられる。さらに、そのような製剤上許容さ れる担体は、水性または非水性の溶液、懸濁物およびエマルジョンであってもよ い。さらに、製剤上許容される担体としては、洗剤、リン脂質、脂肪酸または他 の液体担体が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチ レングリコール、植物油(オリーブ油など)および注入可能な有機エステル(オ レイン酸エチルなど)である。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液 、エマルジョンまたは懸濁物が挙げられ、食塩水および緩衝媒体を含める。非経 口用ビヒクルとしては、塩化ナトリウム水溶液、リンゲル溶液、デキストロース および塩化ナトリウム、乳酸化リンゲルまたは不揮発性油が挙げられる。 本発明のPKCアンタゴニストとともに使用するための製剤上許容される担体 としては、脂質担体が挙げられる。脂質担体は、滅菌溶液またはゲルの形態であ ってもよく、洗剤または洗剤含有生物学的界面活性剤であってもよい。非イオン 洗剤の例としては、ポリソルベート80(TWEEN80またはポリオキシエチレンソル ビタンモノオレエートとしても知られる)が挙げられる。イオン性洗剤の例とし ては、それに限定されないが、臭化アルキルトリメチルアンモニウムが挙げられ る。 製剤上許容される担体が脂質担体の場合、その脂質担体はリポソームであって もよい。リポソームは、その親水性内部にPKCアンタゴニストなどの所望の物 質を含み得るリン脂質膜結合小胞である。治療用リポソームを調製するための適 切な脂質および他の物質ならびに方法は、当技術分野で周知である(例えば、Ma rtin,F.J.およびPapahadjopoulos,D.,J.Biol.Chem.257:286-288(1982);Sz oka,F.およびPapahadjopou1os,D.,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9.467-508 ,(1980);ならびにOstro,M.J.編、Liposomes From Biophysics to Therapeutic s,Marcel Dekker,Inc.,New York,1987参照)。静脈内用ビビクルとしては、 流体および栄養補充液、リンゲルのデキストロースをベースとするもなどの電界 質補充液などが挙げられる。また、保存剤、他の製剤上活性な化合物および他の 添加物、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガスなどを存在させ てもよい。PKCアンタゴニストの投与 本発明のPKCアンタゴニストを使用した治療が可能な患者としては、糖尿病 前症および糖尿病の状態を含む、NIDDMのいずれかの段階にある患者が挙げ られる。糖尿病前症NIDDM患者のPKCアンタゴニストによる治療は、長期 にわたる高血糖および付随するPKC−媒介インスリン受容体セレンリン酸化の 誘導から生じる二次的なインスリン抵抗性の開始を防ぐのに役立つと考えられる 。 「インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)」は、インスリン抵抗性、正常〜 高められたレベルのインスリン、高血糖、高められたレベルの極低密度リポタン パク質(VLDL)および糖の筋吸収の低下を特徴とする糖代謝異常の遺伝病を 意味する。「インスリン抵抗性」は、患者が、正常〜高レベルのインスリンにも かかわらず、高い血糖値を有することを意味する。本発明の発見によれば、イン スリン抵抗性は、インスリン受容体のSer1270のリン酸化によって媒介される。 本発明の治療法は、治療量のPKCアンタゴニストを糖尿病前症または糖尿病 NIDDM患者に投与することを含む。「治療的に有効な量」は、プロテインキ ナーゼCによるインスリン受容体のセレンリン酸化を減少させて、患者の少なく とも部分的なインスリン応答性を回復し、血糖値の高血糖値以下(すなわち、空 腹時の血糖値(PG)が約140mg/dl以下、および/または75gの経口糖負荷試験 (OGTT)後が200mg/dl未満である)への調節を容易にするのに有効な組成物 の量を意味する。好ましくは、PKCアンタゴニストの治療的投与により、患者 の血糖値の、糖耐性の低下と同等の血糖値(すなわち、約140mg/dlのPG〜75g のOGTTの2時間後の200mg/dl)、より好ましくは正常な糖耐性と同等の血糖 値(すなわち、空腹時のPGが約140mg/dl未満であり、および/または75gの経 口糖負荷の2時間後の血糖値が約140mg/dl未満である。)への調節を容易にする 。 本発明の治療組成物に関して使用する場合の「単位用量」は、患者に対する1 回分の用量として適する、物理的に分離した単位を意味し、各単位は、必要な希 釈剤、すなわち担体またはビヒクルと結合して所望の治療効果を生じるように計 算された、予め決まった量の活性物質を含む。 投与法および投与するPKCアンタゴニストの量は、治療すべき病気および患 者の種々の変量(サイズ、体重、年齢、病気の程度および治療に対する応答性な ど)により広範囲に変わる。適切な投与法および用量を決める方法は、一般に、 担当医師がケースごとに決める。そのような決定は、当業者に周知である(例え ば、Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版、Gennaro編、Mack Publish ing Company,Easton,PA,1990参照)。 投与に適する特定の用量は、当業者であれば上記した因子に従って容易に決定 される(例えばRemington's Pharmaceutical Sciences,前出、を参照)。さらに 、ヒトにおける適切な用量の概算は、in vitroで測定したPKC阻害活性レベル および/または動物モデルでのインスリン抵抗性の低下に有効なPKCアンタゴ ニストの量の測定値から外挿して得ることができる。PKCアンタゴニストの投与法 PKCアンタゴニストの投与法としては、例えば、経口、静脈内注入、リポソ ームデリバリー、動脈内デリバリーおよび筋肉内デリバリーが挙げられる。各投 与法に対して、PKCアンタゴニストは、当業者によって決定される、その投与 法に適切な製剤上許容される担体において製剤化される。好ましくは、PKCア ンタゴニストは、インスリン受容体を発現する細胞を標的とするように投与する 。筋肉(特に骨格筋)、脂肪および肝細胞などの古典的なインスリン標的細胞が 、PKCアンタゴニストのデリバリーに適する標的細胞である。 PKCアンタゴニストはまた、放出が制御された製剤の形で投与することもで きる。PKCアンタゴニストの放出制御性薬物投与は、徐放および長期放出にお ける目的と同様の、薬物のデリバリー時間の延長を意味するだけでなく、薬物放 出動力学の予測可能性および再現性も含む。デリバリー系 PKCアンタゴニストの投与および細胞内デリバリーに適する種々のデリバリ ー系が当技術分野で周知である。例えば、PKCアンタゴニストは、分散デリバ リー系を使用して投与できる。本発明に従って使用できる分散系は、その小胞内 にPKCアンタゴニストを含む合成膜小胞である。「合成膜小胞」とは、通常は リポソームとして知られる、1個以上の同心室を有する構造を意味する。 リン脂質を水性媒体に分散させると、リン脂質は膨潤して水和し、自然に、脂 質二重層を分離する水性媒体の層を有する、多層板状の同心二重層小胞を形成す る。そのような系は、通常は、多層板状リポソームまたは多層板状小胞(MLV )と言い、約100nm〜約4μmの範囲の直径を有する。MLVを超音波処理すると 、直径が約20nm〜約50nmの範囲にある小さい単層板状小胞(SUV)が形成され 、SUVのコアには水性溶液が含まれる。合成膜小胞の組成物は、通常は、リン 脂質、特に相転移温度の高いリン脂質の組み合わせであり、通常は、ステロイド 、特にコレステロールとの組み合わせである。他のリン脂質や他の脂質も用いる 事が出来る。(Szokaら、1980,Annual Reviews of Biophysics and Bioenginee ring,9:467;Deamerら、Liposomes,Marcel Dekker,New York,1983,27;Hope ら、1986,Chem.Phys.Lipids,40:89) 本発明によれば、PKCアンタゴニストを含む治療組成物は、経口投与するこ ともできる。経口用組成物は、溶液、懸濁物、錠剤、ピル、カプセル、徐放性製 剤または粉末の形態にすることができる。デリバリー方式(直ちに、徐々に、ま たは制御された放出)および投薬形態の設計(固体、分散体または液体)に関係 なく、経口投与法により全身に運ぶための薬物組成物は、胃腸(GI)生理学の 固有の特徴の中で開発しなければならない。 本発明方法で使用される組成物のデリバリーに対する一つの系の例は、薬物を 含む浸透コアを、生物相溶性ポリマー、例えば酢酸セルロースから作った半透過 膜内にカプセル化することにより作った、浸透圧制御式胃腸デリバリー系である 。直径が制御されるデリバリーオリフィスを、レーザービームを使用して、薬物 の溶質の放出を制御し、薬物通過中の胃腸デリバリー系の構造的完全性を維持で きるコーティング膜に開ける。 半透過膜の外部表面も、半透過膜による胃腸流体の浸透を調節し、胃腸管のよ り低い部位への薬物のデリバリーを目的とするために、生物侵食可能なポリマー 、例えば腸コーティングの層で被覆することができる。 さらに、デリバリー系のコーティング膜は、水の流入速度を調節し、そうして 薬物のデリバリー速度をプログラムするために、透過性の異なる2個以上の半透 過膜のラミネート、または半透過膜とミクロポーラス膜とのラミネート(英国特 許No.1,556,149)で構成することもできる。 膜透過が制御される胃腸デリバリー系も本発明方法において有用である。ミク ロポーラス膜透過が制御される装置は、まず、水溶性薬物の結晶(または粒子) を適切な薬物賦形剤と組み合わせて圧縮してコア錠剤とし、次いで、その錠剤に 非GI侵食性ポリマー、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとのコポリマーの層で コーティングすることにより作る。ポリマーコーティングは、錠剤が胃腸流体と 接触すると多孔性を生じる少量の水溶性孔形成無機物質、例えばラウリル硫酸マ グネシウムを含む。あるいは、コア錠剤は、高配合量の可塑剤(例えば、フタル 酸ジオクチル)を含む非GI侵食性熱可塑性ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル )の層でコーティングしてもよい。 当技術分野で周知の別の系は、胃液抵抗性で腸を標的とする放出制御式胃腸デ リバリー装置である。この装置は、胃液に対して不安定な薬物を制御された速度 で腸の領域でのみ放出するように設計された装置であり、コア錠剤の薬物を、腸 液に不溶なポリマー(例えばエチルセルロース)と腸液に可溶なポリマー(例え ば、メチルセルロース(または、フタル酸ヒドロキシメチルセルロース))との 組み合わせでコーティングすることにより作る。 ゲル拡散制御式胃腸デリバリー系は、ゲル形成ポリマーから作る。それは、ま ず、治療用量の異性体を水溶性カルボキシメチルセルロース(CMC)の層に分 散させ、薬物充填CMC層を架橋カルボキシメチルセルロース(水不溶性である が、水に膨潤可能である)の層の間にサンドイッチした後、これらの層を圧縮し て多層板状装置を形成することにより作ることができる。 pH制御式胃腸デリバリー系は、まず、酸性(または塩基性)薬物を1種以上 の緩衝剤、例えば、クエン酸の第一、第二もしくは第三塩と混合し、適切な薬物 賦形剤とともに顆粒化して小さい顆粒を形成した後、その顆粒を胃腸液透過性フ ィルム形成ポリマー、例えばセルロース誘導体でコーティングすることにより作 る。他のGIデリバリー系、例えばイオン交換制御式胃腸デリバリー系および水 圧制御式胃腸デリバリー系などは、当業者には公知である。 上記以外の成分は、それらが生理学的に許容され、上皮細胞およびその機能に 有害でない限り、治療組成物に添加することができる。そのような添加物は、上 記した酵素阻害剤もしくは刺激剤、または分解酵素の上皮透過効率に悪影響を与 えたり、組成物の安定性を低下させるものであるべきでない。本発明の組成物に 添加できる成分の例としては、安定剤、保存剤、緩衝剤、界面活性剤、乳化剤、 風味剤、芳香剤などが挙げられる。 治療組成物の投与の期間および回数は、血糖値の大きさ(従って、インスリン 抵抗性の大きさ)、患者の耐性、患者の応答性および当技術分野で十分認識され ている他の因子などの種々の因子に応じて広く変化し得る。典型的用量は、1日 〜数日の期間にわたって、1単位用量〜連続接触用量まで可能である。すなわち 、接触は、種々の処方に従うことができる。処方例としては、時間を置いて投与 される1回以上の短時間単位用量ならびに5分〜数時間または数日もの長い時間 にわたって連続投与される用量が挙げられる。用量 PKCアンタゴニストの用量は、本明細書に記載する指針に基づいて決定され る(例えば、in vitroでのPKCセリンリン酸化阻害に有効なPKCアンタゴニ ストの量および/または本明細書に記載の高血糖誘導性インスリン抵抗性の動物 モデルでのインスリン感度の増加に有効であると測定された用量)。この指針を 慣例の実験と組み合わせて、個々の患者および治療する特定の細胞に必要な用量 を最適化する。投与に適する、治療的に有効な特定の量は、当業者であれば容易 に決定される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版、Genna ro編、Mack Publishing Company,Easton,PA,1990参照)。 基礎となる治療は、PKCによって媒介されるセリンリン酸化を低下させ、正 常な糖耐性(NGT)または少なくとも低下した糖耐性(IGT)状態の維持を 可能にするインスリン応答受容体群を患者に提供することである。in vitroでは 、有効な用量範囲は、インスリン受容体のPKC媒介セリンリン酸化の阻害の実 証によって決定される。これは、全身の水(体重x0.7)に等しい体積分布と仮 定して、所望の薬物濃度の達成に必要な用量(mg)を計算することにより、動物ま たはヒトのモデルに外挿する。LD50に対する情報が利用できる場合、これによ り、用量の上限が決定される。LD50で示される上限の10倍以下の用量を投与す るが好ましい。 投与されるPKCアンタゴニストの有効なレベルは、NIDDMに対する種々 の指標から推定できる。好ましくは、PKCアンタゴニスト処方の効力を、NI DDM患者の血糖レベルをモニターすることにより評価する。血糖のモニターは 慣例化しており、医師または患者自身によって容易に行うことができる。PKC アンタゴニストの投与による血糖レベルの低下は、治療に対して患者が応答した ことを示す。セリンリン酸化抵抗性インスリン受容体 本発明はまた、遺伝子治療法によってセリンリン酸化抵抗性インスリン受容体 をコードするポリヌクレオチドを患者に発現させることよる、患者のインスリン 抵抗性の治療法にも関する。 本明細書で使用する「セリンリン酸化抵抗性インスリン受容体」または「組換 えインスリン受容体」は、PKC−媒介セリンリン酸化による正常なインスリン 受容体生物活性の阻害を受けにくいインスリン受容体を意味する。すなわち、高 血糖条件下では、セリンリン酸化抵抗性インスリン受容体がインスリンに結合し 、セリンリン酸化を受けやすい天然のインスリン受容体によって示されるよりも 高められたレベルでインスリン刺激性インスリン受容体活性を示す。セリンリン 酸化抵抗性インスリン受容体としては、正常なインスリン受容体機能、特に高血 糖条件下で正常なインスリン受容体機能を保持する限り、天然のインスリン受容 体にアミノ酸の置換、付加、欠失、および/または挿入を含むその誘導体ならび に野生型タンパク質に対して切断されたインスリン受容体誘導体が挙げられる。 好ましくは、本発明の組換えインスリン受容体は、Ser1270残基の周りのイン スリン受容体ペプチドモチーフがPKCによってもはや認識されず、従って、Se r1270残基のPKC媒介セリンリン酸化を防ぐように、インスリン受容体の細胞 質ドメイン(例えば、βサブユニット)にアミノ酸の置換、挿入または欠失を含 む。好ましくは、アミノ酸の置換、挿入または欠失が、正常な糖または高血糖の 条件下で、インスリン刺激性インスリン受容体生物活性(例えば、インスリン受 容体自己リン酸化、インスリン受容体−媒介チロシンキナーゼ活性、インスリン −刺激性PI−3キナーゼ活性およびインスリン−刺激DNA合成)に実質的な 影響を及ぼさない。好ましくは、組換えインスリン受容体は、残基位置1270のセ リンに対するアミノ酸置換を含む。残基位置1270での置換に適するアミノ酸とし ては、天然に存在するどのアミノ酸も挙げられ、好ましくは、セリンのものと同 様の長さの側鎖を有し、および/またはインスリン受容体の三次元立体配置(特 に、インスリン受容体細胞質ドメインの立体配置)に実質的な影響を及ぼさない アミノ酸である。Ser1270での置換に対しては、アラニンが好ましいアミノ酸で ある。すなわち、本発明の組換えインスリン受容体は、Ser1270をコードするヌ クレオチドに対してアラニンをコードするコドン(例えば、GCT、GCC、G CA、GCG)が置換されていることを除いて、天然のヒトインスリン受容体と 同じヌクレオチド配列を有する(ヒトインスリン受容体細胞質ドメインのヌクレ オチド配列に対しては、図2A−Cを参照)。 インスリン受容体をコードするポリヌクレオチドは、本発明のセリンリン酸化 抵抗性インスリン受容体の生成に使用できる。好ましくは、そのポリヌクレオチ ドが、ヒトインスリン受容体をコードするDNAまたはそれと実質的に同一のD NA分子である。 「実質的に同一」は、参照アミノ酸または核酸配列に対して少なくとも50%、 好ましくは85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%の相同性を示すアミノ 酸または核酸配列を意味する。アミノ酸配列の場合、比較する配列の長さは一般 に、少なくとも16アミノ酸、好ましくは少なくとも20アミノ酸、より好ましくは 少なくとも25アミノ酸、最も好ましくは35アミノ酸である。核酸の場合、比較す る配列の長さは一般に、少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも60ヌ クレオチド、最も好ましくは110ヌクレオチドである。配列の同一性は、典型的 には、配列分析ソフトウェアを使用して測定する(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group,University of Wiscons i n Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,WI 53705)。そ のようなソフトウェアは、種々の置換、欠失、置換および他の修飾に対して相同 性の度合いを割り当てることにより、類似の配列を適合させる。 本発明の組換えインスリン受容体は、当技術分野で周知の組換え核酸技術を使 用して作製することができる(例えば、Sambrookら、前出、を参照)。例えば、 Ser1270に対するアミノ酸置換を有する組換えインスリン受容体は、当技術分野 で周知の部位特異的突然変異技術を使用して作製できる。 遺伝子治療での使用に適する、セリンリン酸化抵抗性インスリン受容体および 該受容体をコードするポリヌクレオチドは、上記したin vitroアッセイを使用し て試験できる。例えば、セリンリン酸化抵抗性インスリン受容体をコードするポ リヌクレオチドは、哺乳類の細胞で発現させることができ、そのインスリン受容 体の機能は、正常な糖および高血糖の条件下、in vitroアッセイで試験できる。 PKC−媒介セリンリン酸化による阻害を受けにくい組換えインスリン受容体は 、本発明の遺伝子治療法での使用に適する。好ましくは、組換えインスリン受容 体が、高血糖条件下で、天然のインスリン受容体(例えば、セリンリン酸化を受 けやすいインスリン受容体)の生物学的活性に対して実質的に高められたイン スリン刺激性生物学的活性を示す。リン酸化耐性インシュリン受容体の発現のための構築 インサートのDNAに作動可能に連結する真核性プロモーターを有するいかな る核酸構築体をも、セリンリン酸化耐性インシュリン受容体発現のための標的細 胞の形質転換に用いることができる。“構築体”は、本発明のポリヌクレオチド を有する組換え産生核酸分子である。本発明に従って用いることができるDNA 配列(又は対応するRNA配列)を有する構築体は、関心のあるDNA又はRN A配列を有するいかなる真核性発現ベクター、例えばプラスミド又はウイルスベ クター(例えば、アデノウイルス)、であってもよい。構築体を調製するための 核酸の操作方法は当該技術分野において公知である(例えば、前掲のSambrookら を参照のこと)。 様々な構築体(例えば、ウイルス構築体、細菌構築体、又は真核性および原核 性宿主において複製可能な構築体)を本発明に従って用いることができる。好ま しくは、構築体は真核性および原核性宿主の両者において複製可能である。真核 性および原核性宿主において複製可能な多くの構築体が当該技術分野において公 知であり、商業的に利用可能である。一般には、本発明に従って用いられる構築 体は、細菌性複製起点及び関心のあるDNAに作動可能に連結する真核性プロモ ーターを含んでなる。 好ましくは、この構築体は、標的細胞、好ましくは骨格筋細胞内で本発明の組 換えインシュリン受容体の発現を容易にするプロモーターを有する。好ましくは 、このプロモーターは強力な真核性プロモーターである。例示的な真核性プロモ ーターには、サイトメガロウイルス(CMV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MM TV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、及びアデノウイルスに由来するプロモ ーターが含まれる。より具体的には、例示的なプロモーターには、ヒトCMVの 最初期遺伝子に由来するプロモーター(Boshart et al.,Cell41:521-530,1985 )及びRSVの末端反復配列(LTR)に由来するプロモーター(Gorman et al .,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:6777-6781,1982)が含まれる。これらの2 つのプロモーターのうち、CMVプロモーターがRSVプロモーターよりも発現 レベルが高いために好ましい。 その構築体を含み、及び/又は発現する細胞の選択を補助するマーカー(例え ば、(アンピシリン耐性遺伝子のような)抗生物質耐性遺伝子又はβ−ガラクト シダーゼ)、細菌細胞においてその構築体を安定に複製するための複製起点(好 ましくは、高コピー数複製起点)、核局在化シグナル、又はそのDNA構築体、 それらによりコードされるタンパク質、もしくはそれらの両者の産生を容易にす る他の要素のような他の構成要素。 (例えば、骨格筋細胞における)真核性発現のため、この構築体は、本発明の 組換えインシュリン受容体をコードするDNAに作動可能に連結し、続いてポリ アデニル化配列に作動可能に連結する真核性プロモーターを最小限有する。ポリ アデニル化シグナル配列は、当該技術分野において公知の様々なポリアデニル化 シグナル配列のあらゆるものから選択することができる。好ましくは、このポリ アデニル化シグナル配列はSV40初期ポリアデニル化配列である。この構築体は l以上のイントロンを含んでいてもよく、これは関心のあるDNAの発現レベル を、特にその関心のあるDNAがcDNAである(すなわち、天然の配列のイン トロンを含まない)場合に高める。当該技術分野において公知の様々なイントロ ンのいかなるものをも用いることができる。例えば、イントロンは、本発明のセ リンリン酸化耐性インシュリン受容体をコードするDNAに対して5'の位置でそ の構築体に挿人されたヒトβ−グロビンイントロンであってもよい。 本発明の組換えインシュリン受容体をコードするDNAを有する構築体は、標 的細胞のゲノムに部位特異的に組込まれるように設計することもできる。例えば 、関心のあるDNA及びそれが作動可能に連結するプロモーターがサッカロミセ ス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)Ty3の位置特異的組込みマー カーに隣接するように構築体を作製することができる。この部位特異的組込みの ための構築体は、組込みマーカーを認識する位置特異的エンドヌクレアーゼをコ ードするDNAをさらに含む。このような構築体はTy3レトロトランスポゾン と様々な動物レトロウイルスとの相同性を利用する。このTy3レトロトランス ポゾンは、多くの異なるtRNA遺伝子の5'隣接領域への関心のあるDNAの挿 入を容易にし、それにより産生される組換え細胞に悪影響を及ぼすことなく関心 のあるDNAのより効率的な組込みを生じる。このような部位特異的構築体を調 製するための方法及び成分はUSPN5,292,662に記述されており、これはこのよう な 部位特異的挿入ベクターの構築及び使用に関して参照することによりここに組込 まれる。セリンリン酸化耐性インシュリン受容体の発現のためのベクター 形質転換のための“ベクター”には、セリンリン酸化耐性インシュリン受容体 をコードするポリヌクレオチドでの標的細胞(例えば、骨格筋細胞)の形質転換 を容易にするあらゆる生物学的もしくは化学的化合物が含まれる。例示的な生物 学的ベクターには、特別に弱毒化され、及び/又は複製能力に乏しいウイルスが 含まれる。例示的な化学的ベクターには、裸のポリヌクレオチド構築体、ウイル ス、プラスミド、リポソーム処方、及びポリ−L−リジンもしくはDEAC−デ キストランのようなポリカチオン性物質と複合化したポリヌクレオチド構築体が 含まれるがこれらに限定されるものではない。本発明の生物学的および化学的ベ クターを処方する方法は当該技術分野において公知である。 例えば、本発明の組換えインシュリン受容体をコードするポリヌクレオチドを 有するDNA−又はRNA−リポソーム複合処方は遺伝物質(DNA又はRNA )を結合する脂質を含んでなり、これによりその遺伝物質を細胞内に搬送するこ とを可能にする疎水性コートが付与されていてもよい。本発明に従って用いるこ とが可能なリポソームには、DOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールア ミン)、CUDMEDA(N−(5−コレストラム−3−β−オール 3−ウレ タニル)−N’,N’−ジメチルエチレンジアミン)が含まれる。本発明のポリ ヌクレオチドをリポソームを用いて導入する場合、まずin vitroで、形質転換し ようとする特定の型の細胞についてDNA:脂質比の最適値及びDNA及び脂質 の絶対濃度を細胞の死と形質転換効率との関数として決定することが好ましい。 その後、これらの値をin vivo形質転換において使用し、あるいはin vivo形質転 換において用いるために外挿することが可能である。これらの値のin vitro測定 は、当該技術分野において公知の技術を用いて容易に行うことができる。 ベクター処方は、界面活性剤、ゼラチン、カプセル、又は分解に対して保護す るための他の搬送ビヒクル、及び/又はターゲッティングリガンドもしくは特定 の細胞型へのベクターの狙い撃ち及び/又はその細胞型の形質転換を増強する他 の化合物をさらに含んでいてもよい。例えば、本発明の組換えインシュリン受容 体をコードするDNA又はRNAの化学処方を、宿主細胞の生物学的特性を変更 するため、その宿主細胞への搬送を容易にする担体分子(例えば、抗体又は受容 体リガンド)に結合させることが可能である。“化学処方”は、タンパク質又は 脂質又はそれらの誘導体のような担体分子への核酸化合物の結合を可能にするよ うな核酸の修飾を意味する。例示的なタンパク質担体分子には、標的細胞の細胞 又は受容体リガンドに特異的な抗体又は受容体リガンド、すなわち標的細胞に結 合する受容体と相互作用することが可能な分子が含まれる。 公知の技術を用いてベクターを調製し、機能的なセリンリン酸化耐性インシュ リン受容体のin vivo発現が可能な形質転換細胞を得る。この形質転換細胞は標 的細胞をRNA又はDNA含有処方と接触させることにより得られ、この接触に より標的細胞へのRNA又はDNAの移動及び取込み、並びに、好ましくは、真 核標的細胞のゲノムへのDNAの作動的挿人が可能となる。“作動的挿入”は、 関心のあるDNAが標的細胞のゲノムに導人され、その導入されたDNAの転写 及び翻訳を指向するDNA配列に隣接して位置する(すなわち、本発明の組換え インシュリン受容体の産生を容易にする)ことを意味する。 ベクターがウイルスベクターである場合、そのウイルスベクターは一般に、そ のウイルスの複製能力を不足させ、かつ本発明による組換えインシュリン受容体 を発現するように遺伝的に変更されている天然のウイルスに由来するウイルス粒 子を含んでなる。ひとたびそのウイルスがその遺伝物質を細胞に搬送すると、感 染性ウイルスをさらに産生することはないものの外来性組換え遺伝子を細胞、好 ましくはその細胞のゲノムに導入する。 多くのウイルスベクターが当該技術分野において公知であり、これには、例え ば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイ ルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクチニア及びポリオウイ ルスベクターが含まれる。適切なウイルスベクターの選択は様々な因子に依存し 、これには標的細胞型の増殖の相対速度、標的とする特定の細胞型、及び当該技 術分野における通常の技術を有する者によって認識される他の因子が含まれる。 例えば、標的細胞がゆっくりと複製し、及び/又は末期的に分化した細胞である 場 合、レトロウイルスはあまり好ましくなく(レトロウイルスが複製中の細胞を必 要とするため)、アデノウイルスがより好ましい(このウイルスがゆっくりと複 製し、及び/又は末期的に分化した細胞に効率的に感染するため)。 複製能力に乏しいウイルスをウイルスベクターとして用いる場合、途中でのウ イルスの複製に必須の失われた構成要素を供与するウイルス構築体を組換え細胞 系に導入することにより、DNA又は関心のあるDNAに対応するRNAのいず れかを有する感染性ウイルス粒子を産生することが可能である。好ましくは、こ の組換えウイルスベクターでの組換え細胞系の形質転換は、例えば組換え細胞系 のウイルス配列の導入ウイルスベクターへの相同組換えにより、複製−コンピテ ントウィルスを産生しないものである。 関心のあるDNAを有する複製能力に乏しいウイルス粒子の作製方法は当該技 術分野において公知であり、例えば、Rosenfeld et al.,Science 252:431-434 ,1991及びRosenfeld et al.,Cell68:143-155,1992(アデノウイルス);USPN 5,139,941(アデノ随伴ウイルス);USPN 4,861,719(レトロウイルス);並び にUSPN 5,356,806(ワクチニアウイルス)に記述されている。 宿主中で外来性DNA又はRNA配列を発現させる技術は当該技術分野におい て公知である(例えば、Kormal et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:2150 -2154,1987;Sambrookら、前掲(これらの各々は関心のあるDNAの真核性発 現のための方法及び組成に関して参照することによりここに組込まれる)を参照 のこと)。セリンリン酸化耐性インシュリン受容体をコードするポリヌクレオチドを有する ベクターの投与 患者の標的細胞、例えば、患者の骨格筋細胞のゲノムへの本発明のセリンリン 酸化耐性インシュリン受容体をコードするポリヌクレオチドの導入は、当該技術 分野において公知の様々な遺伝子治療法によって達成することができる。一般に は、遺伝子治療(すなわち、患者の細胞への関心のあるDNAの導入及び関心の あるタンパク質を産生するためのそこでの発現)はex vivo又はin vivo遺伝子治 療法によってなされる。in vivo遺伝子治療においては、標的細胞の形質転換は ポリヌクレオチドを患者に直接投与することにより行うことができる。ex vivo 遺伝子治療においては、ポリヌクレオチドを、in vitro培養物中の細胞、好まし くは患者に由来する細胞又は患者から単離された他の細胞培養物の形質転換に用 いる。続いて、これらの形質転換細胞を患者に移植する。in vivo及びex vivo遺 伝子治療の方法は当該技術分野において公知である(例えば、ex vivo遺伝子治 療法についてはUSPN5,399,346を参照のこと)。 in vivo形質転換法は、通常、DNAを標的細胞に導入する生物学的手段(例 えば、関心のあるDNAを有するウイルス)又はDNA標的細胞に導入するため の機械的手段(例えば、細胞へのDNAの直接注入、リポソーム融合、“遺伝子 銃”を用いる含気注入(例えば、Fynan et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci .USA90:11478-11482を参照のこと))を用いる。一般には、標的細胞のin vivo 形質転換に用いられる生物学的手段はウイルス、特には標的細胞に感染し、少な くとも関心のあるDNAを標的細胞のゲノムに組込むことが可能であるものの、 複製することができないウイルスである。このようなウイルスを複製能力に乏し いウイルス又は複製能力に乏しいウイルスベクターと呼ぶ。その代わりに、本発 明のポリヌクレオチドを有するウイルスを複製させ、又はある程度にまで複製さ せるものの、重大な症状又は罹患を感染宿主に引き起こさないようにしてもよい (すなわち、このウイルスは非病原性であるか、もしくは僅かな疾患症状しか引 き起こさない)。in vivo形質転換及び遺伝子治療において有用な例示的なウイ ルスベクターは当該技術分野において公知であるか、あるいは当該技術分野にお ける技術及び知識が与えられれば容易に構築することができる(例えば、アデノ ウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HS V)、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクチニアウイルス、及びポリオウイ ルスの非複製変異体/変種)。 生物学的手段を用いるin vivo遺伝子移入は、DNAを有するウイルスを、例 えば注入により、患者に直接投与することにより達成することができる。標的細 胞の感染、十分な数の標的細胞の形質転換及びセリンリン酸化耐性インシュリン 受容体の発現に有効なDNAの量及び/又は感染性ウイルス粒子の数は、in vit roでの形質転換の効率、in vitroで達成されるタンパク質発現のレベル、及び形 質転換に対する標的細胞の感受性のような因子に基づいて容易に決定することが できる。 例えば、本発明のセリンリン酸化耐性インシュリン受容体をコードするDNA を、例えば精製DNA、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウ イルス)、DNA−もしくはRNA−リポソーム複合体、又は標的宿主細胞への 搬送を容易にする担体分子に結合するDNAもしくはRNA含有化学処方として 被験体に搬送することができる。 本発明のセリンリン酸化耐性インシュリン受容体をコードするDNA又はRN A分子は被検体に局所的もしくは全身的のいずれかで投与することが可能であり 、この被検体はヒトであっても非ヒト動物(例えば、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ) であってもよい。例えば、標的細胞が骨格筋細胞である場合、DNAの投与は骨 格筋組織内又はその近傍への局所注射によって達成することができる。全身性投 与は、本発明のセリンリン酸化耐性インシュリン受容体をコードするDNAを有 するウイルスベクターを筋肉内注射することにより達成することができる。 遺伝子治療がex vivo法でなされる場合には、in vitro培養物(例えば、患者 組織生検に由来する細胞)を本発明の組換えインシュリン受容体をコードするポ リヌクレオチドで形質転換する。形質転換は当該技術分野において公知の様々な 方法のいかなるものによっても達成することが可能であり、これには組換え受容 体をコードするDNA又はRNAを有するウイルスベクターでのリポフェクショ ン及び感染が含まれる。 1以上の選択可能なマーカーを本発明のポリヌクレオチドと共に細胞に移人す る場合、in vitro培養物中の関心のあるDNAを有する細胞を同定し、そのマー カー(1種もしくは複数)について選択することにより濃縮することができる。 典型的には、マーカーはテトラサイクリン、ハイグロマイシン、ネオマイシン等 の抗生物質に対する耐性を付与する。他のマーカーにはチミジンキナーゼ等が含 まれ得る。 形質転換した標的細胞の関心のあるDNAを発現する能力は、当該技術分野に おいて公知の様々な方法によって評価することができる。例えば、検出可能に標 識した抗体を細胞表面上のインシュリン受容体に結合させることにより、細胞表 面上にセリンリン酸化耐性インシュリン受容体を発現するこれらの細胞の能力を 調べることができる。その代わりに、ノーザンブロットによりそのDNAの選択 された配列、好ましくは本発明のセリンリン酸化耐性インシュリン受容体に特有 の配列から誘導されるDNAプローブとハイブリダイズするmRNAを検出する ことにより、本発明のポリヌクレオチドの発現を調べることが可能である。当該 技術分野において公知の方法を用いて、本発明のポリヌクレオチドを正確に発現 する細胞をさらに同定し、in vitro培養物中で発現させることができる。 in vitroで形質転換細胞を増大させた後、それらの細胞を患者に、好ましくは 元来それらの細胞を誘導してきた組織に、当該技術分野において公知の方法によ り移植する。好ましくは、これらの細胞は血管新生の盛んな領域に、被検体に残 る手術の痕を最小限に留める様式で移植する。形質転換細胞の移植片の移植は、 例えば、移植片拒絶の古典的な徴候、すなわち、移植部位での炎症及び/又は剥 脱、及び発熱を調べることによって監視する。 一般には、組換えインシュリン受容体をコードするポリヌクレオチドの量又は 本発明のポリヌクレオチドを用いてin vitroで形質転換された細胞の数は、(例 えば、in vivo遺伝子治療における)形質転換に対する標的細胞の感受性、被検 体の大きさ及び重量、(例えば、ex vivo遺伝子治療における)移植細胞の生存 の成功並びに所望の発現レベルを含む多くの因子によって大きく変化する。例え ば、ヒトの骨格筋に注射されるDNAの量は、一般には約1μg−1,000mg、好ま しくは約100μg−500mg、より好ましくは約500μg−100mg、最も好ましくは約50 mgである。一般に、ヒトの遺伝子治療のためのDNAの量は動物モデルでの遺伝 子治療に有効なDNAの量から外挿することができる。例えば、ヒトにおける遺 伝子治療のためのDNAの量はラットでの遺伝子治療において有効なDNAの量 のおおよそ100倍である。 一般には、搬送される組換えインシュリン受容体をコードするポリヌクレオチ ドの量又は患者に移植される形質転換細胞の数は患者のインシュリン感受性を回 復するのに十分な量又は数である。患者のインシュリン感受性の回復は、患者の 全ての細胞でのセリンリン酸化耐性インシュリン受容体の発現を必要とはせず、 全ての(組織グルコース代謝が最大である)骨格筋細胞においてすら必要とはし ない。 用途 本発明の組成物及び方法は、インシュリン受容体のSer1270のPKC介在リン 酸化、又は患者の細胞におけるセリンリン酸化耐性インシュリン受容体の発現に より、患者におけるインシュリン耐性の減弱及び/又はインシュリン感受性の回 復に有用である。 本発明のin vitro法は、候補化合物をインシュリン受容体の残基Ser1270のP KC介在リン酸化の阻害において活性なものについてスクリーニングするのに有 用である。このようなin vitroスクリーニングは、潜在的に有用な化合物の迅速 な同定及び無効の化合物のさらなる研究からの排除において商業的に有用である 。 本発明のPKCアンタゴニストの他の用途は、医学的及び生化学的研究用途に おけるPKC阻害剤としてのものである。例えば、本発明のPKCアンタゴニス トは、in vitro又はin vivoのいずれかで観察された現象にPKCが介在するの かどうかを決定するための分子プローブとして用いることができる。広域ベース のPKC阻害活性を有する幾つかの化合物(例えば、H7、スタウロスポリン(s taurosporin)、ポリミキシンB(polymyxin B))は市販されており、成功した 、重要で実現可能な研究ツールである。 以下の例は説明を目的とするものであるが本発明を限定するものではない。こ れらは用いることができる典型的なものではあるが、当該技術分野における通常 の技術を有するものに公知の他の手順を代わりに用いることも可能である。 実施例 実施例1:材料及び方法 細胞培養物及び材料 野性型ヒトインシュリン受容体(HIRcB)又はβ−サブユニット(ΔCT )の末端43アミノ酸を欠く変異インシュリン受容体のいずれかが安定に形質移入 され、かつ過剰発現しているラット1線維芽細胞を、500nMメトトレキセートを含 有するDME/F12中で、従前記述される通りに培養した(McClain et al.,1 983,J.Biol.Chem.,263(18):8904-8911;Maegawa et al.,1988,J.Biol.Ch em.,263(18):8912-8917;McClain et al.,1987,J.Biol.Chem.,262(30):14 663-14671)。ブタインシュリンはライリー(Lilly)から購入した。強化化学発 光検出試薬はアマシャム社(Amersham Corp.)から得た。免疫ブロット HIRcB又はΔCT細胞を35mm6−ウェル皿で培養し、亜集密で実験に用い た。実験操作の約16−24時間前に血清含有培地を除去し、1mMグルコースを含む 血清非含有DMEM(シグマ(Sigma))と置き換えた。その後、適切な量のグ ルコースを指示された期間添加し、細胞を様々なリガンドで刺激した。培地を急 速に吸引することによりインキュベーションを停止した後、ホスファターゼ及び プロテアーゼ阻害剤を含む100μlのトリトンX−100溶解バッファを添加した。1 0分間のインキュベーションの後、10,000×gで遠心することにより可溶化液を清 透化し、5%メルカプトエタノールを含有するラエムリ(Laemmli)サンプルバッ ファをサンプルに添加した。これらのサンプルを100℃で5分間煮沸し、7.5%T /3%Cトリシン−SDS PAGEゲルにロードした。電気泳動の後、バイオ ーラッド(Bio-Rad)SDトランスブロットを用いてタンパク質を0.45μmニトロ セルロースに移した。 このメンブランをトリス緩衝生理食塩水(0.1%ツィーン20を含む50mMトリ ス、150mMNaCl、pH7.4)(バッファA)中の3%BSA中で1時間ブロック した。これらのブロックしたメンブランを、0.1%BSA及び0.1%ツィーン20を 含むトリス緩衝生理食塩水(TBS)中でアフィニティ精製ウサギ抗−ホスホチ ロシン抗体(0.5−1μg/ml)を用いて12時間プローブ処理し、TBS、0.1%ツ ィーン20、1mM EDTA(それぞれ4×100ml/10分)(バッファB)で洗浄した 後、抗−ウサギペルオキシダーゼ結合体(アマシャム 1/1000)を用いて1時間 プローブ処理した。その後、これらのメンブランをバッファBでさらに洗浄した 。結合した抗−ホスホチロシン抗体を、抗−ウサギペルオキシダーゼ及びECL試 薬を製造者の指示に従って用い、かつ予めフラッシュしたコダック(Kodak)X −Omat ARフィルムでのオートルミノグラフィを用いて検出した。このオ ートルミノグラフィ上のバンド強度を、スキャンアナリシス(Scananalysis)ソ フトウェア(エルスビュー・バイオソフト(Elseview Biosoft))を用いるヒュ ーレットーパッカード(Hewlett-Packard)スキャンジェットII(Scan Jet II) での濃度測定により定量化した。プロテインキナーゼC阻害剤ペプチドの微量注入 HIRcB又はΔCT細胞を酸洗浄ガラスカバーグラス上で培養して亜集密ま で成長させた後、1mMグルコースを含む血清非含有DME中で飢餓状態にした。 ペプチドを5mM NaPO4及び100mMKCl、pH7.4を含有する微量注入バッフ ァに溶解した。細胞をPKC阻害剤ペプチドと共にガラスキャピラリ針を用いて 微量注入した。この溶液約10フェムトリットルを各細胞に導入した。この注入に は1×106個分子のIgGを微量注入のマーカーとして含めた。 微量注入の2時間後、細胞をBrDU及び様々な濃度の成長因子と共に37℃で1 6時間インキュベートした。これらの細胞を酸アルコール(90%エタノール、5% 酢酸)を用いて22℃で20分間固定した後、マウスモノクローナル抗−BrDU抗 体と共に22℃で1時間インキュベートした。その後、微量注入したIgGを検出 するためにこれらの細胞をローダミン標識ロバ抗−マウスIgG抗体及びフルオ ロセインイソチオシアネート標識ロバ抗−ウサギIgG抗体と共に22℃で1時間 インキュベートし、微量注入した細胞を同定した。カバーグラスをマウントした 後、アキシオホト(Axiophot)蛍光顕微鏡(ゼイス(Zeiss))を用いて細胞の 分析及び写真撮影を行った。カバーグラス当り250−300個の細胞が微量注入され ていた。注入された細胞の免疫蛍光染色により、約75%の細胞がうまく微量注入 されていたことが示された。 細胞透過性PKC阻害剤ビスインドリルマレイミド(GF109203X;カルバイ オケム・バイオケミカルズ(Calbiochem Biochemicals)、サンディエゴ、CA )を用いる実験を、最初にこのPKC阻害剤を1mMの貯蔵濃度でDMSOに溶解 することにより行った。HIRcB又はΔCT細胞をカバーグラス上で成長させ 、上述の通り血清飢餓状態にした。その後、これらの細胞を高グルコース(25mM )中で最終濃度1μmのビスインドリルマレイミドと共に18時間インキュベート した。この期間中に、細胞をインシュリンで刺激し、次いでBrDUを添加した 。BrDUの取込みを、上述の通りマウス抗−BrDU抗体及びをローダミンに 結合した抗−マウス抗体を用いて可視化した。二次元ホスホペプチドマッピング HIRcB細胞を16時間血清飢餓状態にした後、2mCi/ml 32P−オルソリン 酸塩を含有するリン酸塩非含有DMEM中で3時間インキュベートした。次に、 これらの細胞を支持される通りに高グルコース(25mM)又はインシュリンで刺激 した。これらの細胞を溶解し、抗−ホスホチロシン抗体83−14を説朋される通り に用いてインシュリン受容体を免疫沈澱させた。洗浄した免疫沈澱をSDS電気 泳動で分析した。標識β−サブユニットをオートラジオグラフィーで可視化し、 ゲルから切り出して電気溶出によって回収した。 in vitroリン酸化に従う32P−標識IR及びIRS−1を含有するポリアクリ ルアミドゲル断片を20mMトリス−HCl、pH8.0、2mM EDTA、0.1%SDS 、及び0.1%2−メルカプトエタノールに4時間電気溶出した。溶離したタンパク 質を4容量のアセトンを用いて−80℃で60分間沈殿させた後、室温で10分間、10, 000gで遠心した。このペレットを乾燥させ、100μlの100mM N−エチルモルホリ ンアセテート(NMA)、pH8.2中10μgのTPCK処理トリプシン(ワーシン トン・ダイアグノスティック・システムズ(Worthington Diagnostic Systems) 、フリーホールド、NH)を37℃で24時間用いて消化した。10μgのTPCK処理 トリプシンをさらに添加し、消化を12時間継続した。これらのペプチドを、少な くとも3回、凍結乾燥し、水で戻し、再度凍結乾燥した。その後、この32P−標 識トリプシンペプチドを5μlの電気泳動バッファに再懸濁させ、薄層セルロース プレート上にのせた。ハンター(Hunter)薄層電気泳動システム(C.B.S.サイエ ンティフィック(C.B.S.Scientific)、デルマール、CA)を用いて1:3.5:40.5 ギ酸/酢酸/水、pH1.9中で高電圧電気泳動を行った。プレートを75:15:50 :60n−ブタノール/酢酸/ピリジン/水中で二次元の上行薄層クロマトグラフ ィーにかけ、乾燥させた後、予めフラッシュしたX−Omat ARフィルムを 用いて−80℃でオートラジオグラフィーにかけた。PI −3キナーゼ分析 インシュリン刺激ホスファチジルイノシトール(PI−3)キナーゼ活性につい ての検定を、抗−ホスホチロシン免疫沈澱を用いて説明される通りに行った(Sa dd et al.,1994,Mol.Endocrinol.,8(5):545-557)。HIRc細胞を、上述の ように高グルコースに晒してインシュリンで刺激した。その後、細胞を溶解し、 チロシンーリン酸化タンパク質をPY20(トランスダクション・ラブズ(Transd uction Labs)、レキシントン、KY)を用いて一晩沈殿させた。この溶解物に100 μlの抗−マウスアガロースを1時間添加した。遠心によってアガロースを沈殿さ せ、以下のバッファで3回洗浄した:i)50mMトリス;150mM NaCl;1% N P40/Na3PO4:ii)100mMトリス、pH7.5/500mM LiCl2/100μm Na3 PO4:及びiii)10mMトリス、pH7.5/100mM NaCl/1mM EDTA/100μ m Na3PO4。その後、大豆リン脂質(シグマ・ケミカル社、セントルイス、MO )及び32P−ATPを用いて結合した免疫沈澱を検定した。これらのリン酸化脂 質をクロロホルム:メタノール(1:1)で抽出した後、クロロホルム:MEOH :NH4OH:H2O(60:47:11.3:2)を用いてシリカゲル60プレート(EMサ イエンス(EM Science))で上行クロマトグラフィー処理することにより分離し た。標識リン脂質をオートラジオグラフィーで可視化し、切り出されたスポット をシンチレーションカウントすることにより定量化した。実施例2:IRS−1及びインシュリン受容体のインシュリン刺激チロシンリン 酸化の減弱化 細胞を5−25mMの範囲で濃度が増加するグルコースに晒すことにより、チロシ ン自己リン酸化及びIRS−1チロシンリン酸化が漸次減少した(図4)。IR S−1に対する効果が優勢であり、インシュリン受容体自己リン酸化に対する対 する効果はより少ない程度であるものと思われた。また、この効果は、インシュ リン刺激の用量−応答曲線のシフトにより、最大インシュリン濃度以下でも明ら かであった(図5)。実施例3:インシュリン受容体に対する高血糖誘発リン酸化の特異性 高グルコースがインシュリン受容体の機能を特異的に減弱させるかどうかを決 定するため、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)刺激IGF−1受容体及 びIRS−1リン酸化に対する高グルコースの効果をHIRc細胞において調べ た。HIRc細胞はIGF−1受容体の内在レベルが高い。β−サブユニットリ ン酸化及びIRS−1リン酸化の刺激は高グルコース及びIGF−1に晒すことに よっては影響を受けなかった(図6)。実施例4:インシュリン受容体の末端43アミノ酸は高血糖誘発リン酸化の基質残 基を含まない。 変異インシュリン受容体ΔCTを形質移入したラット線維芽細胞を用いて、高 グルコース介在インシュリン受容体阻害を容易にするインシュリン受容体の構造 的特徴を調べた(図7)。変異ΔCT受容体はインシュリン受容体の末端43アミ ノ酸(図3のアミノ酸1311−1355)を欠いている。この末端43アミノ酸には、P KC活性化ホルボールエステルPMAでのPMA刺激に応答してリン酸化される 残基Thr1348及びSer1327が含まれる。ΔCT発現細胞を濃度が増加するグルコー スに晒すことにより、IRS−1リン酸化に加えて、インシュリン受容体β−サ ブユニット自己リン酸化の用量依存性の減少が生じる(図7)。ΔCT細胞にお けるインシュリン受容体β−サブユニット自己リン酸化及びIRS−1リン酸化 の高血糖誘発減弱は、これらの効果に末端43アミノ酸が介在せず、具体的にはTh r1348及び/又はSer1327のリン酸化が介在しないことを示した。実施例5:高血糖誘発リン酸化にはPKCが介在する 高血糖症はインシュリン受容体のキナーゼ活性の減少及びプロテインキナーゼ Cの活性化を生じるが、グルコースの増加の効果はプロテインキナーゼCに依存 する機構によって進行する可能性がある。この問題に取り組むため、PMA、又 は高グルコース及びインシュリンに晒した細胞に由来するインシュリン受容体の 二次元トリプシンホスホペプチド分析を行った(図8)。ホルボールエステル刺 激はインシュリン受容体のリン酸化を1.5倍に増大した(図8)。二次元トリプ シ ンホスホペプチドマッピングによるリン酸化パターンの分析は、グルコース刺激 セリン/トレオニンリン酸化のパターンがPMAによって誘発されるものに類似 はするが同一ではないことを明らかにした。高グルコースは、1つの主要ペプチ ド及び2つの副次的ペプチドを含む3つの異なるペプチドのリン酸化を刺激した。 対照的に、PMAは4つの異なるペプチドのリン酸化を刺激し、そのうちの3つは 高グルコース条件下で観察されるものに類似する移動度で移動した。実施例6:インシュリン受容体ホスファチジルイノシトール(PI−3)に対す る高グルコースの効果 ホルボールエステルに応答してのプロテインキナーゼCの活性化はインシュリ ン刺激PI−3キナーゼの活性を阻害することが知られている。PI−3キナーゼ の活性を、グルコースとの予備インキュベーションの前後に、インシュリン刺激 細胞の抗−ホスホチロシン免疫沈澱において調べた。25mMグルコースに1時間晒 した細胞においては、インシュリン刺激PI−3キナーゼ活性は80%減少した( 図9)。プロテインキナーゼCの高度に特異的な阻害剤との細胞のインキュベー ションは高グルコースのこの効果を妨げた。実施例7:インシュリン刺激有糸分裂誘発に対する高グルコースの効果 インシュリン誘発DNA合成に対する高グルコースの効果を、まず細胞を高グ ルコースに1時間、次いでインシュリン及びBrDUにさらに18時間晒すことに より調べた。高グルコースは、BrDUの取込みによる測定で、インシュリン刺 激細胞におけるDNA合成を30%減少させた(図10)。細胞とPKC阻害剤ビ スインドリルマレイミドとの共存インキュベーション(データは示さず)、又は PKC阻害剤Arg−Phe−Ala−Arg−Lys−Gly−Ala−Leu−Arg−Gln−Lys−Asn− Val(ペプチド19−31)(アップステート・バイオテクノロジー社(Upstate Bio technology Inc.)、レイクプラシッド、ニューヨーク州)の微量注入はDNA 合成の阻害を部分的に逆転させた。実施例8:高血糖誘発インシュリン受容体リン酸化にはMAPキナーゼが介在す 無傷の細胞をPMAで刺激することにより、精製プロテインキナーゼCに晒さ れた精製インシュリン受容体におけるリン酸化された部位に加えて、その場での インシュリン受容体のリン酸化が生じた。これは、無傷の細胞においてキナーゼ がさらに活性化されたことを示唆する。プロテインキナーゼCの活性化はRaf キナーゼ→MAPキナーゼ→カスケードを生じる。MAPキナーゼ(ERK1及 びERK2)は、インシュリン受容体及び/又はIRS−1を負のフィードバック でリン酸化する可能性のあるセリン/トレオニンキナーゼである。このMAP→ キナーゼ介在セリン/トレオニンリン酸化はインシュリン刺激チロシンリン酸化 を減弱し得る。 MAPキナーゼカスケードの役割を、正常及び高グルコース濃度において細胞 をMAPキナーゼキナーゼ(MEK)の特異的阻害剤に晒すことにより調べた。 ERK2の活性化はSDSゲル電気泳動での移動度の変化によって確認した。M EK阻害剤の添加はインシュリン受容体及びIRS−1リン酸化の減衰を逆転さ せなかった(図12)。これらのデータは、ERKの活性化によってはインシュ リン受容体又はIRS−1チロシンリン酸化の減衰が生じないことを示す。実施例9:インシュリン受容体に由来するペプチドの微量注入 HIRcB細胞を正常(5mM)又は高(25mM)グルコースを含有するD−ME M培地中のガラスカバーグラス上で亜集密になるまで成長させ、血清飢餓状態に することにより24時間静止状態にした。当該技術分野において公知の方法で合成 した配列KTVNESASLRE(配列番号5)(セリン−1035)及びDDLHPSFPEVS(配列番 号1)(セリン−1270)を含む合成環状ペプチドをヒトインシュリン受容体から 誘導した。このペプチドを5mM NaPO4及び100mMKCl、pH7.2を含有する 微量注入バッファに最終濃度l0mMまで溶解した。全ての微量注入試薬には、非注 入細胞の同定を可能にするためウサギIgG(5mg/ml)を含めた。自動微量注 入システムを用いて105 IgGの導入を生じる約100ヘクトパスカルの典型的な 針圧でサンプルを細胞原形質に微量注入した。 微量注入のおよそ1時間後、100ng/mlインシュリン及び100mM BrDUを添加 することにより細胞を刺激した。細胞を37℃でさらに16時間インキュベートした 後固定し、モノクローナル抗−BrDU抗体を用いて染色した。注入した細胞を フルオロセインイソチオシアネート結合ロバ抗−ウサギIgGで同定した。核の BrDUの取込みをテトラメチルローダミンイソチオシアネート結合ロバ抗−マ ウスIgGで検出した。細胞を蛍光顕微鏡で分析した。各カバーグラス上で約30 0個の細胞に微量注入し、約90%がうまく微量注入されたことが免疫蛍光染色に より示された。 Ser−1035又はSer−1270ペプチドのいずれかを微量注入することにより、正常 グルコース条件下でのインシュリン刺激細胞におけるDNA合成は僅かに増加し 、高グルコース条件下でのインシュリン刺激DNA合成は大きく増加した(図1 3)。各々の場合において、Ser−1270ペプチド注入細胞におけるDNA合成の 増加がSer−1035ペプチド注入細胞におけるものを上回った。これらのデータは 、Ser−1270ペプチドに類似する配列を有するペプチドが高血糖条件によって誘 発されるPKC介在インシュリン受容体リン酸化を阻害することを示す。 前掲の本発明の説明は解説及び説明のための例である。本発明の精神及び範囲 から逸脱することなく様々な変更を行うことが可能であることは理解されるべき である。したがって、以下の請求の範囲はそのような変更の全てを包含するもの と解釈されることが意図されている。 上に言及される全ての刊行物は、細胞系、ベクター、方法論及びここに説明さ れる発明に関連して用いられる可能性のある前記刊行物に説明される他の技術を 説明及び開示するため、(各々が参照することにより個別に組込まれた場合と同 様の効果を伴って)参照することによりここに組込まれる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 43/00 111 C12N 1/15 C07K 7/06 1/19 C12N 1/15 1/21 1/19 9/99 1/21 C12Q 1/48 Z 5/10 1/68 A 9/99 C12N 15/00 ZNAA C12Q 1/48 5/00 A 1/68 A61K 37/02

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.インスリン受容体のセリン残基1270のプロテインキナーゼC媒介リン酸 化の阻害活性により特性付けられるプロテインキナーゼCアンタゴニスト。 2.アンタゴニストは、天然のヒトインスリン受容体ではないという条件で、プ ロテインキナーゼC基質の三次元構造モチーフを含み、この基質がヒトインス リン受容体のセリン残基1270を含むアミノ酸配列のペプチドモチーフを含 むものである、請求項1に記載のプロテインキナーゼCアンタゴニスト。 3.アンタゴニストの活性が自己リン酸化活性、チロシンキナーゼ活性、ホスフ ァチジルイノシトールキナーゼ活性およびインスリン刺激DNA合成よりなる 群から選択されるインスリンにより刺激されたインスリン受容体活性を維持す る、請求項1に記載のプロテインキナーゼCアンタゴニスト。 4.前記活性がアンタゴニストとプロテインキナーゼCとの相互作用により媒介 される、請求項1に記載のプロテインキナーゼCアンタゴニスト 5.アンタゴニストの相互作用がプロテインキナーゼCを不活性化する、請求項 4に記載のプロテインキナーゼCアンタゴニスト。 6.アンタゴニストの相互作用がプロテインキナーゼCの触媒結合部位で起こる 、請求項4に記載のプロテインキナーゼCアンタゴニスト。 7.阻害活性がアンタゴニストとインスリン受容体との相互作用により媒介され る、請求項1に記載のプロテインキナーゼCアンタゴニスト。 8.インスリン受容体との相互作用がインスリン受容体のペプチドモチーフへの 結合である、請求項7に記載のプロテインキナーゼCアンタゴニスト。 9.ペプチドモチーフがインスリン受容体のセリン残基1270を含む、請求項 8に記載のプロテインキナーゼCアンタゴニスト。 10.アンタゴニストがペプチドミメティック化合物である、請求項1に記載のプ ロテインキナーゼCアンタゴニスト。 11.アンタゴニストがペプチドである、請求項1に記載のプロテインキナーゼC アンタゴニスト。 12.ペプチドがアミノ酸配列DDLHPSFPEVS(配列番号1)を有する、請求項11に 記載のプロテインキナーゼCアンタゴニスト。 13.天然のインスリン受容体をコードするものではないという条件で、アミノ酸 配列DDLHPSFPEVS(配列番号1)を有するポリペプチドをコードする、精製さ れたポリヌクレオチド。 14.アミノ酸配列DDLHPSFPEVS(配列番号1)をコードする、請求項13に記載の 精製されたポリヌクレオチド。 15.配列番号2のヌクレオチド配列を有する、請求項14に記載の精製されたポリ ヌクレオチド。 16.請求項13に記載のポリヌクレオチドを含有する構築物。 17.請求項16に記載の構築物を含有する形質転換宿主細胞。 18.原核細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。 19.真核細胞である、請求項17に記載の宿主細胞。 20.プロテインキナーゼCアンタゴニスト活性に関して候補化合物を試験する方 法であって、 候補化合物を、プロテインキナーゼCおよびプロテインキナーゼCの基質と 接触させ、ここで、該基質はインスリン受容体のセリン残基1270を含むイ ンスリン受容体のアミノ酸配列を有するものであり、そして 該基質のリン酸化レベルを検出する、 ことを含んでなる方法。 21.検出が放射性核種の取込みによる、請求項20に記載の方法。 22.基質のリン酸化レベルが自己リン酸化活性、チロシンキナーゼ活性、ホスフ ァチジルイノシトールキナーゼ活性およびインスリン刺激DNA合成よりなる 群から選択されるインスリン受容体機能のレベルを検出することにより検出さ れる、請求項20に記載の方法。 23.候補化合物がペプチドミメティック化合物である、請求項20に記載の方法。 24.候補化合物がペプチドである、請求項20に記載の方法。 25.前記接触を無細胞系で行う、請求項20に記載の方法。 26.基質がアミノ酸配列DDLHPSFPEVS(配列番号1)を含むポリペプチドである 、 請求項20に記載の方法。 27.基質がインスリン受容体である、請求項26に記載の方法。 28.インスリン受容体が哺乳動物細胞において発現される、請求項27に記載の方 法。 29.前記接触をマイクロインジェクションにより行う、請求項28に記載の方法。 30.請求項20に記載の方法により同定されたPKCアンタゴニスト。 31.1)請求項1に記載のプロテインキナーゼCアンタゴニスト、および 2)生理学的に許容される担体、 を含んでなる治療用組成物。 32.インスリン抵抗性の患者に、該患者のインスリン受容体のプロテインキナー ゼCリン酸化を阻害するのに有効な量の請求項31に記載の治療用組成物を投与 することを含んでなる、インスリン抵抗性の治療方法。 33.インスリン抵抗性の患者がインスリン非依存型糖尿病に罹りやすい、請求項 32に記載の方法。 34.インスリン抵抗性の患者がインスリン非依存型糖尿病を有する、請求項32に 記載の方法。 35.セリンリン酸化抵抗性のヒトインスリン受容体をコードする、精製されたポ リヌクレオチド。 36.セリンリン酸化抵抗性のインスリン受容体が、天然のヒトインスリン受容体 のアミノ酸配列と比べて、1270の残基位置にアミノ酸置換を含む、請求項 35に記載のポリヌクレオチド。 37.セリンリン酸化抵抗性のインスリン受容体が1270の残基位置にアラニン を含む、請求項35に記載のポリヌクレオチド。 38.請求項35に記載のポリヌクレオチドを含有する構築物。 39.請求項35に記載のポリヌクレオチドを含有する形質転換宿主細胞。 40.インスリン抵抗性の患者を治療する方法であって、患者の細胞を、請求項35 に記載のポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドに機能的に連結された真核 細胞プロモーター配列とを含有する構築物を用いて遺伝的に形質転換すること を含んでなる方法。 41.細胞が骨格筋細胞である、請求項40に記載の方法。
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