JP2001512475A - 抗病原性合成ペプチドおよびこれらを含む組成物 - Google Patents

抗病原性合成ペプチドおよびこれらを含む組成物

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Abstract

(57)【要約】 ペプチド、束になったペプチドの複合体、ペプチドまたはランダムペプチドコポリマーの混合物から選択される非溶血性細胞溶解性物質は、病原性細胞(体内では自然に存在せず、かつ病原性生物および悪性細胞を含む細胞)に対する細胞溶解活性を有すること;および非溶血性であること、すなわち、赤血球に対する細胞溶解作用がないこと、により表される選択的細胞溶解活性を有する。ペプチドは、パーダキシンやメリチンのような天然のペプチドおよびこれらの断片の環状誘導体(ここで、L−アミノ酸残基は対応するD−アミノ酸残基により置換されるか、または種々の比の、少なくとも1つの正に荷電したアミノ酸と少なくとも1つの疎水性アミノ酸からなる線状ペプチドのジアステレオ異性体よりなり、そして、少なくとも1つのアミノ酸残基がD−アミノ酸である)でもよい。非溶血性細胞溶解性物質を含む薬剤組成物は、細菌、真菌、ウイルス、マイコプラズマおよび原生動物感染症を含む病原体により引き起こされるいくつかの疾患の治療、および癌の治療のために使用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】 抗病原性合成ペプチドおよびこれらを含む組成物 発明の分野 本発明は、新規な非溶血性細胞溶解性ペプチド、これらを含む組成物、および 疾患または障害の治療および農業におけるこれらの使用に関する。 発明の背景 以下の本文において、先行技術資料が参照されるが、その完全な詳細は、請求 の範囲の前の明細書の最後の「引用文献」の項に見いだすことができる。 利用可能な抗微生物薬に対する微生物の耐性の増大により、代替抗微生物化合 物の開発に多くの研究が集中することになった。 高度に特異的な細胞介在性免疫応答に加えて、またはこれと相補的に、脊椎動 物および他の生物は、別個の群の広域スペクトル細胞溶解性(例えば、抗菌性) ペプチドから構成される防御系を有する。 細胞溶解素としても知られている、このような細胞溶解性ペプチドの脂質−ペ プチド相互作用に関する研究では、その細胞溶解活性に対する両親媒性αらせん 構造の重要性を強調しがちである。この結論は主として、哺乳動物細胞または細 菌単独のいずれか、または両方の型の細胞に対して作用する細胞溶解素による研 究に基づいている。このファミリーの細胞溶解性ペプチドの主要な群は、宿主防 御の短い線状ペプチド(≦40アミノ酸)であり、これらにはジスルフィド架橋 が全くない(ボーマン(Boman)、1995)。これらのペプチドでは、鎖の長 さ、疎水性および電荷の全体的な分布は、相当に多様であるが、脂質二重層と会 合した共通構造、すなわち、両親媒性αらせん構造を共有している(セグレスト (Segrest)ら、1990)。 既知の細胞溶解素の例としては、(i)細菌のみに細胞溶解性である抗菌性ペ プチド、例えば、アカスジシンジュサン(cecropia moth)か ら単離されたケクロピン(cecropins)(スタイナー(Steiner)ら、1981) 、カエルの皮膚から単離されたマゲイニン(magainins)(ザスロフ(Zasloff) 、1987)およびダーマセプチン(dermaseptins)(モーア(Mor)ら、19 91);(ii)黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)から単離されたδ −溶血素(ドープル(Dhople)とナガラジ(Nagaraj)、1993);および(i ii)哺乳動物細胞と細菌の両方を溶解する、ハチ毒のメリチン(ハーバーマン( Habermann)とジェンシュ(Jentsch)、1967)および神経毒のパーダキシン (pardaxin)(シャイ(Shai)ら、1988)のような、細胞選択的でない細胞 溶解素を含む。 抗菌性ペプチドは、最初に無脊椎動物において、そして次にヒトを含む脊椎動 物において発見された。相補的または追加的な防御系として、この二次的な化学 的免疫系は、誘導により迅速に合成されるあるレパートリーの小さいペプチドを 生物に供給するが、このペプチドは、時折の偏性病原体による侵入に対して、さ らには片利共生微生物の抑制されない増殖に対して作用する(ボーマン(Boman )、1995)。これまで、100を超える異なる抗菌性ペプチドが単離され性 状解析されている。最も大きなファミリー、そして恐らく最も研究されているフ ァミリーは、正に荷電し、かつ両親媒性αらせん構造を採っているペプチドを含 む。種々の未変性抗菌性ペプチドで行われた多くの研究は、細胞溶解活性に関し て、両親媒性αらせん構造および正味の正電荷の重要性を強調しがちである。正 電荷は、正常真核細胞に比較して病原性細胞膜に高濃度で見い出される負に荷電 した膜とのペプチドの相互作用を促進し(アンドルー(Andreu)ら、1985) 、そして両親媒性αらせん構造は、溶解活性に必須である(チェン(Chen)ら、 1988)。このような相互作用は、エネルギー変換膜の透過性を増大させるこ とにより、標的生物のエネルギー代謝を破壊すると唱えられている(オカダ(Ok ada)とナトリ(Natori)、1984)。これらの両親媒性構造のため、これら の抗菌性ペプチドは、「樽−樽板(barrel-stave)」機構によりイオンチャ ネル/孔を形成することにより、膜を透過することが示唆されている(リッツォ (Rizzo)ら、1987)。このモデルにより、膜貫通型両親媒性αらせんは、 外向きの疎水性表面が膜の脂質成分と相互作用し、同時に内側に面した親水性表 面が孔を生成する束を形成する。あるいは、ペプチドは、膜の表面に平行に結合 し、「カーペット」様に膜の表面を覆って界面活性剤のように膜を溶解する(シ ャイ(Shai)、1995)。 広範な研究にもかかわらず、短い線状非細胞選択性ペプチド(例えば、パーダ キシンおよびメリチン)の作用の正確な様式は、未だ知られておらず、そして同 様な構造的特徴が、哺乳動物細胞および細菌に対するその細胞毒性に必要である かどうかは明白でない。 パーダキシン(33量体ペプチド)は、紅海モーセソール(Red Sea MosesSol e)のパーダキルス・マーモラツス(Pardachirus marmoratus)(シャイ(Shai )ら、1988)および西太平洋の孔雀ソール(PeacocSole)のパーダキルス・ パヴォニヌス(Pardachirus pavoninus)(トンプソン(Thompson)ら、198 6)から精製された興奮性神経毒である。パーダキシンは、その濃度に応じて種 々の生物学的活性を有する(シャイ(Shai)の総説、1994)。10-7M未満 の濃度では、パーダキシンは、カルシウム依存的に神経伝達物質の放出を誘導す る。10-7M〜10-5Mのより高い濃度では、このプロセスはカルシウム非依存 性であり、10-5M以上で細胞溶解が誘導される。パーダキシンはまた、インビ トロで種々の生理学的調製物の活性に影響を及ぼす。その生物学的役割は、上皮 の浸透度調節系のイオン輸送の妨害、および電位差依存的でわずかにカチオンに 選択的なイオンチャネルを形成することによるシナプス前活性にある。その構造 および種々の生物物理学的研究に基づき、膜へのパーダキシンの挿入に関する「 樽−樽板」機構が提案された(シャイ(Shai)の総説、1994)。パーダキシ ンは、らせん−ヒンジ−らせん構造を有する:N−らせんは残基1〜11を含み 、そしてC−らせんは残基14〜26を含む。このらせんは、13位に位置する プロリン残基により分離している。この構造モチーフは、細菌に対して特異的に 作用しうる抗菌性ペプチド(例え ば、ケクロピン)、および種々の細胞を溶解しうる細胞毒性ペプチド(例えば、 メリチン)の両方において見い出されている。 メリチン(26量体両親媒性ペプチド)は、ミツバチのアピス・メリフェラ( Apis mellifera)の毒の主要な成分であり(ハーバーマン(Habermann)とジェ ンシュ(Jentsch)、1967)、そして最も研究された膜要求ペプチドの1つ である(デンプセイ(Dempsey)、1990)。メリチンは、哺乳動物細胞にと って非常に細胞毒性であるが、同時に非常に強力な抗菌性物質である(スタイナ ー(Steiner)ら、1981)。メリチン誘導性溶血の分子機構を理解するため 、および膜タンパク質の構造およびリン脂質膜とのこのようなタンパク質の相互 作用の一般特性を研究するためのモデルとして、膜とのメリチンの相互作用の性 質を決定するための多くの研究が行われてきた。目下の記述された証拠の多くは 、メリチンの異なる作用には異なる分子機構が根底にあることを示している。そ れにもかかわらず、両親媒性αらせん構造は、その種々の活性の必要条件である ことが証明されている(ペレス(Perez)ら、1994)。 メリチンの構造は、種々の方法を用いて調査されている。X線結晶学およびメ タノール溶液中のNMRの結果は、この分子が、120°の角度で交差する2つ のαらせんセグメント(残基1〜10および13〜26)からなることを示して いる。これらのセグメントは、ヒンジ(11〜12)により結合して、親水性側 と疎水性側が反対方向に向かっている屈曲αらせんロッドを形成する。4つのこ のようなモノマーのメリチン分子が、疎水性相互作用により集合して、四量体を 形成している(アンダーソン(Anderson)ら、1980;バッゾ(Bazzo)ら、 1988;ターウィリガー(Terwilliger)とアイセンバーグ(Eisenberg)、1 982;ターウィリガー(Terwilliger)とアイセンバーグ(Eisenberg)、19 82)。膜表面との最初の相互作用により、四量体がモノマーに解離し、これら は、膜への挿入前にはαらせんコンホメーションを保持していることが見い出さ れた(オルテンバッハ(Altenbach)とハ ッベル(Hubbell)、1988)。 メリチンは、パーダキシンとの幾つかの類似点を共有する。パーダキシンもメ リチンも、間にプロリンヒンジを有する2つのらせんからなっている。さらには 、これらは、そのN−らせんに著しい相同性を示しており、そこは大部分疎水性 である(トンプソン(Thompson)ら、1986)。しかしパーダキシン(正味電 荷+1)は、−2の電荷を有するそのC末端側に、さらに7個のアミノ酸残基を 含有するが、一方メリチン(正味電荷+6)は、アミド基で終わり、かつ正に荷 電したテトラペプチド配列Lys−Arg−Lys−Argを含有する。パーダ キシンとメリチンの間には幾つかの機能的な相違がある。パーダキシンは、双性 イオン性リン脂質と負に荷電したリン脂質の両方に同様に結合する(ラパポート (Rapaport)とシャイ(Shai)、1991)が、一方メリチンは、双性イオン性 リン脂質よりも負に荷電したリン脂質に良好に結合する(バテンバーグ(Batenb urg)ら、1987;バテンバーグ(Batenburg)ら、1987)。また、パーダ キシンは、正の協同性でリン脂質に結合する(ラパポート(Rapaport)とシャイ (Shai)、1991)が、一方メリチンは、負の協同性で結合する(バテンバー グ(Batenburg)ら、1987;バテンバーグ(Batenburg)ら、1987)。パ ーダキシンもメリチンもグラム陽性細菌とグラム陰性細菌に対する強力な抗菌性 ペプチドであるが、パーダキシンは、ヒト赤血球に対してメリチンよりも40〜 100倍溶血性が弱い(オレン(Oren)とシャイ(Shai)、1996)。 L−置換からD−置換にしたパーダキシンの類似体は、ヒト赤血球を溶解しう ることが証明された(ポウニー(Pouny)とシャイ(Shai)、1992)。後に なって(以下に報告される結果を参照のこと)、ポウニー(Pouny)とシャイ(S hai)、1992に開示されたペプチドの2つ、すなわち、D−Pro7−パーダ キシンとD−Leu18Leu19−パーダキシンは、溶血性ではあったが、抗菌活 性が非常に低いことが証明された。L−置換からD−置換にしたマゲイニンの類 似体もまた、抗菌 活性が欠けていることが発見された(チェン(Chen)ら、1988)。 用語解説 以下において、本文を能率的に読むため、および本発明のよりよい理解を促進 するために、造り出された幾つかの用語を使用する。しかし、これらの用語の完 全な理解のためには、以下の完全な説明を時々参照すべきであることに注意され たい。本明細書におけるこれらの用語とその意味は以下の通りである: 本明細書で使用される「異種ペプチド」とは、D−およびL−アミノ酸残基の 両方を含むペプチドを意味する。 本明細書で使用される「同種ペプチド」とは、自然のL−アミノ酸残基のみ、 またはD−アミノ酸残基のみのいずれかを含むペプチドを意味する。 本明細書で使用される「同種L−ペプチド」および「同種D−ペプチド」とは 、それぞれ専ら、L−アミノ酸残基またはD−アミノ酸残基のいずれかからなる 同種ポリペプチドを意味する。 本明細書で使用される「異種Lベースのペプチド」および「異種Dベースのペ プチド」とは、それぞれ、主としてL−アミノ酸残基を含む異種ペプチド(例え ば、1つまたはそれ以上のL−アミノ酸残基が、対のD−エナンチオマーにより 置換されている同種L−ペプチドから誘導されたペプチド)、および1つまたは それ以上のD−アミノ酸残基が、対のL−エナンチオマーにより置換されている D−アミノ酸残基を主として含む異種ペプチドを意味する。 本明細書で使用される「らせんペプチド」とは、その長さの大部分にわたって 連続したαらせんストレッチを有するペプチドを意味する。らせんペプチドのら せん部分は、専らL−アミノ酸残基またはD−アミノ酸残基のいずれかから構成 される。 本明細書で使用される「非らせんペプチド」とは、αらせん構造がないか、ま たはその長さに沿って分散している非連続的αらせん構造を有するペプチドを意 味する。本発明の非らせんペプチドには、αらせんス トレッチがあってもよく、それが末端にある場合には細胞の膜の半幅より短い長 さ、例えば、約10〜15未満のアミノ酸残基を有し、そして非末端αらせんで あるならば、細胞の膜の全幅より短い長さ、例えば、約20〜25未満のアミノ 酸残基を有する。非らせんペプチドは、αらせん破壊部分(以下を参照のこと) を有する同種ペプチドであっても、または異種ペプチドであってもよい。 本明細書で使用される「αらせん破壊部分」とは、αらせん構造中に挿入され るとその連続性を中断する部分を意味する。このような部分は、例えば、アミノ 酸残基のプロリンまたはグリシン、α−メチル置換α−アミノ酸、環状および非 環状の両方の非αアミノ酸(例えば、6−アミノ−ヘキサン酸、3−アミノ−1 −シクロヘキサン酸、4−アミノ−1−シクロヘキサン酸)であっても、または 反対のエナンチオマーのアミノ酸残基のストレッチからなるαらせんストレッチ に挿入されたL−またはD−エナンチオマーであってもよい。 本明細書で使用される「病原性細胞」とは、癌細胞および細菌、真菌、原生動 物、ウイルスおよびマイコプラズマのような病原性生物、さらには寄生原生動物 (例えば、リーシュマニア(Leishmania)およびマラリア原虫(Plasmodium)) のような病原性生物に感染した哺乳動物細胞を含む、体内では自然に存在しない 細胞を意味する。 本明細書で使用される「選択的細胞溶解活性」とは、病原性細胞の細胞溶解の 誘導におけるある物質の活性を意味し、この選択性は、この物質が、赤血球のよ うな正常非病原性細胞の細胞溶解に必要な濃度よりもはるかに低濃度で病原性細 胞の細胞溶解を誘導することにより表される。 本明細書で使用される「非溶血性」とは、病原性細胞(例えば、微生物細胞、 癌細胞など)のような他の細胞の細胞溶解を引き起こすのに必要な濃度よりも、 はるかに高濃度で赤血球の溶血を引き起こす物質を意味する。 「ジアステレオマー」は、本明細書では「異種ペプチド」の同義語として使用 される。 発明の要約 本発明は、ペプチド、束になったペプチドの複合体、ペプチドもしくはランダ ムペプチドコポリマーの混合物から選択される非溶血性細胞溶解性物質を提供し 、この物質は、病原性細胞(体内では自然に存在せず、かつ病原性生物および悪 性細胞を含む細胞)に対する細胞溶解活性を有すること;および非溶血性である こと、すなわち、赤血球に対する細胞溶解作用がないか、または該細胞溶解活性 を表す濃度よりも実質的に高い濃度で赤血球に対する細胞溶解作用を有すること 、により表される選択的細胞溶解活性を有し、該非溶血性細胞溶解性物質は: (1)+1より大きな正味の正電荷を有し、L−アミノ酸残基とD−アミノ酸残 基の両方を有するか、またはL−アミノ酸残基とD−アミノ酸残基の1つまたは 両方を有し、αらせん破壊部分を含むペプチドの環状誘導体; (2)+1より大きな正味の正電荷を有する、L−アミノ酸残基とD−アミノ酸 残基の両方を有し、L−アミノ酸残基のみを有する対応するアミノ酸配列は自然 には存在しないようなアミノ酸の配列を有するペプチド、およびその環状誘導体 ; (3)各ペプチドが、+1より大きな正味の正電荷を有し、L−アミノ酸残基と D−アミノ酸残基の両方を有するか、またはL−アミノ酸残基とD−アミノ酸残 基の1つまたは両方を有し、αらせん破壊部分を含む、複数の2つまたはそれ以 上の非溶血性細胞溶解性ペプチド、またはこれらの環状誘導体(該ペプチドは、 各ペプチドに共有結合したリンカー分子を使用して束になっている)、からなる 複合体; (4)各ペプチドが、+1より大きな正味の正電荷を有し、L−アミノ酸残基と D−アミノ酸残基の両方を有するか、またはL−アミノ酸残基とD−アミノ酸残 基の1つまたは両方を有し、αらせん破壊部分を含む、複数の2つまたはそれ以 上の非溶血性細胞溶解性ペプチド、またはこれらの環状誘導体、からなる混合物 ;および (5)異なる比の疎水性、正に荷電した、およびD−アミノ酸からなる ランダムコポリマー、 よりなる群から選択される。 1つの実施態様において、上記(1)の環状誘導体は、例えばパーダキシンお よびメリチンまたはこれらの断片のような非選択的細胞溶解性の天然のペプチド から誘導される。これらの環状ジアステレオ異性体は、ペプチドの通常の環化法 により得られる。1つの実施態様において環状ジアステレオ異性体は、環化のた めにN−末端に1〜3個のLys残基が付加され、N−末端およびC−末端の両 方にシステイン残基が付加されたパーダキシンの1〜22断片から誘導される。 ペプチドの正味の正の電荷は、本来のアミノ酸組成、遊離のカルボキシル基の 中和、および/または正に荷電したアミノ酸残基または正に荷電した化学的基の 付加による。 別の実施態様において、本発明は上記(2)で定義したような非溶血性細胞溶 解性ペプチドおよびその環状誘導体であって、 (a)種々の比の、少なくとも1つの疎水性アミノ酸と少なくとも1つの正に荷 電したアミノ酸よりなり、そしてその配列において、少なくとも1つのアミノ酸 残基が、D−アミノ酸である、非天然合成ペプチドであること; (b)このペプチドが、+1より大きな正味の正電荷を有すること;および (c)正に荷電したアミノ酸に対する疎水性アミノ酸の比は、このペプチドが病 原性細胞に対して細胞溶解性ではあるが、赤血球の細胞溶解は引き起こさないよ うな比であること、 という特徴を有する、上記ペプチドを提供する。 正に荷電したアミノ酸の例は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンであり、 疎水性アミノ酸の例は、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、バリン 、フェニルアラニン、プロリン、チロシンおよびトリプトファンである。正味の 正電荷は、アミノ酸組成によるが、正に荷電した化学基の付加も考慮することが できる。加えて、セリン、トレオニ ン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンおよびシステインのような極性アミ ノ酸を付加して、分子の疎水性および/または毒性を低下させることができる。 1つの好ましい実施態様において、このペプチドは、ロイシン、アラニンまたは バリンのような1つの疎水性アミノ酸、およびリジンまたはアルギニンのような 1つの正に荷電したアミノ酸からなる。この合成の非天然のペプチドは、少なく とも6個、特に10個またはそれ以上のアミノ酸残基を有する。1つの好ましい 実施態様において、この合成ジアステレオマーは、ロイシン、アラニンまたはバ リンおよびリジンからなる12量体ペプチドであり、配列の少なくとも3分の1 は、D−アミノ酸よりなる。 また別の実施態様において、本発明は、例えば、各ペプチドに共有結合したリ ンカーまたは「鋳型」分子の使用により、複合したか、または「束になった」、 本発明の複数の2つまたはそれ以上の非溶血性細胞溶解性ペプチドからなる、上 記(3)で定義したような非溶血性細胞溶解性複合体を提供する。この束は、2 つまたはそれ以上、好ましくは5つの、同じペプチドまたは異なるペプチドの分 子よりなる。リンカー/鋳型は、本発明のペプチドまたは通常使用されるリンカ ー、例えば、OH、SH、COOH、NH2、CH2Brのような活性基を有する 、ポリエステル、ポリアミド、ポリペプチド、ポリアミノ酸(例えば、ポリリジ ン)のようなポリマーであってよい。 さらに別の実施態様において、本発明は、各1当量の目的の疎水性アミノ酸、 正に荷電したアミノ酸およびD−アミノ酸よりなる混合物を、ペプチド合成のた めの固相法の各カップリング工程で加えることにより得られる、上記(4)で定 義した非溶血性細胞溶解性混合物を提供する。こうして、リジン、ロイシンおよ びD−ロイシンの混合物で312個の異なるペプチドの混合物が得られ、そして 混合物は、HF切断、水による抽出および凍結乾燥後ここから得られた。 さらなる実施態様において、本発明は、異なる比の疎水性アミノ酸、正に荷電 したアミノ酸およびD−アミノ酸(例えば、Lys:Leu: D−Leuの1:1:1、2:1:1および3:1:1(モル)コポリマー)か らなる、上記(5)で定義した非溶血性細胞溶解性ランダムコポリマーを提供す る。 好ましくは、非溶血性細胞溶解性ペプチドは、αらせん構造がないか、または 細胞膜の幅にまたがるには長さが不足のαらせん構造を有するかのいずれかであ る。したがつて本発明のペプチドは、膜貫通孔の一部を形成することができる長 さの、全D−または全L−アミノ酸残基の連続したストレッチを含有しない。こ のような長さは、典型的には約20〜22個のアミノ酸(ストレッチが、ペプチ ドの非末端部分にある場合)、および約半分、すなわち、10〜11個のアミノ 酸(ストレッチが、ペプチドの末端にある場合)である(このような場合に、2 つのペプチドはその末端どうしを連結して、細胞膜にまたがることができるため である)。 D−またはL−アミノ酸残基のストレッチの中断は、反対のエナンチオマーの アミノ酸によるストレッチ中の1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換により、ま たは連続するストレッチにプロリン、グリシン、α−メチル−α−アミノ酸また は非α−アミノ酸のようなαらせん破壊部分を入れることにより行われる。 本発明のペプチドおよび本発明の複合体、混合物およびコポリマー内に含まれ るペプチドは、+1より大きな正味の正電荷を有する。正味の正電荷は、本発明 の元のアミノ酸組成、遊離COOH基の中和(例えば、アミド化による)による か、または正に荷電したアミノ酸または化学基の付加によることもある。選択的 細胞溶解活性は、正味の正電荷を増大させる(例えば、分子の任意の位置に、正 に荷電したアミノ酸および/または正に荷電した基を付加する)ことにより時に は増強しうることが見い出された。例えば、ポリアミン基、アルキルアミノ基ま たはアミノアルキルアミノ基などは、その末端の一方に、典型的にはそのカルボ キシル末端に付加できる。好ましいこのような基は、アミノエチルアミノ基−N H−CH2−NH2(以降「TA」と称する)である。 非選択的細胞溶解性天然ペプチド(例えば、パーダキシンおよびメリチン)か ら誘導されるペプチドは、両親媒性であり、このことは、これらが主に疎水性ア ミノ酸残基からなる一方の表面と、主に親水性アミノ酸残基からなる反対の表面 を有することを意味している。ペプチドの両親媒性は、当該分野で公知の方法に より立証することができる。このような方法の一例は、シッファー(Shiffer) とエドモンドソン(Edmondson)の輪投影法(wheel projection)(ここで、配 列内の各アミノ酸がその隣接するアミノ酸残基から100°の角度で転置される (一周当たり3.6アミノ酸)ように、その配列にしたがい円形にアミノ酸残基 を書く)の使用である。多くの親水性のアミノ酸がその輪の一方の側に集中し、 かつ疎水性アミノ酸がその輪の反対側に集中すると、このペプチドは両親媒性で あると考えられる。 非選択的細胞溶解性天然ペプチドから誘導されていない本発明のペプチド(例 えば、疎水性アミノ酸、正に荷電したアミノ酸およびD−アミノ酸からなる合成 ジアステレオマー)は、両親媒性ではない。これらは、+1より大きな正味の正 電荷を有し、かつ生じるペプチドが病原性細胞には細胞溶解性であるが溶血性で はないような、正に荷電したアミノ酸に対する疎水性アミノ酸の適切な比を有す る。これらのペプチドは、本明細書に記載される抗菌性および溶血性試験を使用 して、本発明により非常に容易にスクリーニングすることができる。1つの実施 態様において、ロイシンとリジンからなるペプチドでは、適切なLeu:Lys 比は、6アミノ酸残基のジアステレオマーについては64%:36%であり、そ して12アミノ酸残基のジアステレオマーについては66%:34%であろう。 理論に束縛されるわけではないが、しかし細胞溶解活性は、膜の表面上での多 くのペプチドの凝集の結果であり、そしてこのようなペプチドと共に細胞膜の障 害を引き起こすと考えられる。したがって、上述のように、本発明では、例えば 、混合物としてまたは各ペプチドに共有結合したリンカー分子の使用により、複 合した(または束になった)複数の ペプチドを使用することもまた企図される。 個々のペプチドは、典型的には少なくとも6個、好ましくは10個またはそれ 以上のアミノ酸残基からなる。本発明の複合体では、各個別のペプチドは、典型 的には5個以上のアミノ酸残基の長さを有する。 本発明はまた、活性物質として本発明の非溶血性細胞溶解性ペプチド、および 薬剤学的に許容しうる担体を含む薬剤組成物を提供する。本組成物は、グラム陽 性細菌およびグラム陰性細菌、ウイルス、真菌、マイコプラズマ、および寄生原 生動物(例えば、リーシュマニア症を引き起こすリーシュマニア(Leishmania) およびマラリアを引き起こすマラリア原虫(Plasmodium))のような異なる病原 性生物により引き起こされる疾患または障害の治療に使用される。好ましい実施 態様において、抗病原性組成物は、抗微生物性、特に抗菌性組成物である。加え て、本発明の組成物は、悪性細胞に対して有用であり、癌の治療に使用すること ができる。 また、該溶血性非細胞溶解性ペプチドを、必要とする対象に投与することを含 む治療方法が、本発明により提供される。本発明の方法および上記組成物は、ヒ トと獣医学の両方に適用可能である。 さらに、ヒトまたはヒト以外の動物における疾患または障害の治療のための薬 剤組成物、特に抗菌性組成物の調製における、該非溶血性細胞溶解性ペプチドの 使用も、本発明により提供される。 さらに別の実施態様において、本発明の選択的ペプチドは、微生物の駆除用の 殺菌剤として、すなわち、コンタクトレンズの湿潤用の溶液中で使用することが でき、例えば、化粧品または食品業界において保存料として、および農業におい て農薬(例えば、殺真菌剤、殺菌剤)として、または農業産物(例えば、果実お よび豆)の保存のために使用してもよい。 図面の簡単な説明 図1は、アミノエチルアミノパーダキシン(TApar)由来ペプチドの円偏 光二色性(CD)スペクトルを示す。スペクトルは、40% 0×10-5Mのペプチド濃度でとった。記号:TApar( );[D]P7 −TApar(・・・); par(・−・−); 図2は、ヒト赤血球(hRBC)に対するTApar由来ペプチドの溶血活性 の用量作用曲線を図示している。この挿入図は、低濃度での測定結果を示す。記 号:黒四角、メリチン;黒三角、TApar;黒丸、[D]P7−TApar; 白丸、[D]L1819−TApar;白四角、[D]P71819−TApar ;白三角、ダーマセプチン。 図3A〜Bは、TApar由来ペプチドにより誘導された、小胞の拡散ポテン シャルの最大消失を示す。ペプチドは、蛍光染料のdiS−C2−5およびバリ ノマイシンで前もって平衡化した、卵ホスファチジルコリン/ホスファチジルセ リン(PC/PS)(図3A)またはPC(図3B)よりなる単層小胞(smallu nilamellar vesicles)(SUV)を含有する等張性K+不含緩衝液に加えた。蛍 光回収は、ペプチドを小胞と混合して10〜20分後に測定した。記号:黒三角 、TApar;黒丸、[D]P7−TApar;白丸、[D]L1819−TAp ar;白四角、[D]P71819−TApar; 図4A〜Cは、未処理(図4A)、または最小阻止濃度(MIC)より低濃度 (4B)またはMIC濃度(4C)の[D]P71819−TAparで処理し て、ネガティブ染色した大腸菌(E.coli)細胞の電子顕微鏡写真を示す; 図5は、メリチンとメリチン由来ジアステレオマーのCDスペクトルを示す。 スペクトルは、40%TFE/水中の0.8〜2.0×10-5Mのペプチド濃度−メリチン、(・・・・);[D]−V5,8,I17,K21−メリチン−C OOH、(−−−−)。 図6は、hRBCに対するメリチン由来ジアステレオマーの溶血活性の用量作 用曲線を図示している。記号:黒丸、メリチン;白丸、[D]−V5,8,I17, K21−メリチン−COOH;黒三角、[D]−V5,8,I17,K21−メリチン。 図7A〜Cは、未処理(図7A)、またはMICより低濃度(7B)またはM IC濃度(7C)の[D]−V5,8,I17,K21−メリチンで処理して、ネガテ ィブ染色した大腸菌(E.coli)の電子顕微鏡写真を示す。 図8A〜Bは、メリチンとメリチン由来ジアステレオマーにより誘導された、 小胞の拡散ポテンシャルの最大消失を示す。ペプチドは、蛍光染料のdiS−C2 −5およびバリノマイシンで前もって平衡化した、PC(8A)またはPC/ PS(8B)よりなるSUVを含有する等張性K+不含緩衝液に加えた。蛍光回 収は、ペプチドを小胞と混合して10〜20分後に測定した。記号:黒丸、メリ チン;黒三角、[D]−V5,8,I17,K21−メリチン。 図9A〜Bは、励起波長を280nmに、発光波長を340nmに設定した、PC /PS小胞(黒三角)またはPC小胞(白三角)での滴定による[D]−V5,8 ,I17,K21−メリチン(全濃度0.5μM)の蛍光の増大を示す。実験は、5 0mM Na2SO4、25mM HEPES−SO4 -2(pH6.8)中で25℃で 実施した(図9A);そして結合等温線は、図9AからCf(溶液中の遊離ペプ チドの平衡濃度)に対するXb *(60%の脂質当たりの結合ペプチドのモル比) をプロットすることにより誘導した(図9B)。 図10A〜Bは、臭素化リン脂質による環境感受性トリプトファンのクエンチ ングを示す。メリチン(図10A)および[D]−V5,8,I17,K21−メリチ ン(10B)は、PC/PS(1:1、w/w)SUVを含有する緩衝液に加え た。SUVは、25%の6,7Br−PC(−・−・−)、または9,10Br −PC(−−−−)、または11,1 2Br−PC(・・・・)を含有した。2分間インキュベーション後、トリプト ファンの発光スペクトルを、280nmで励起を設定した分光蛍光計を用いて記録 した。比較のため、Br−PCを含 図11は、RP−HPLC保持時間に及ぼすLeu/Lysジアステレオマー の疎水性の作用を示す。 図12は、hRBCに対するLeu/Lysジアステレオマーの溶血活性の用 量作用曲線を示す。挿入図は、低濃度での測定結果を示す。記号:白四角、メリ チン;黒四角、[D]−L3,4,8,10−K39;黒丸、[D]−L3,4,8,10−K4 8;白三角、[D]−L3,4,8,10−K57;黒三角[D]−L3,4,8,10−K75 。 図13A〜Bは、Leu/Lysジアステレオマーにより誘導された、小胞の 拡散ポテンシャルの最大消失を示す。ペプチドは、蛍光染料のdiS−C2−5 およびバリノマイシンで前もって平衡化した、PC(図13A)またはPE/P G(13B)よりなるSUVを含有する等張性K+不含緩衝液に加えた。蛍光回 収は、ペプチドを小胞と混合して3〜10分後に測定した。記号:黒四角、[D ]−L3,4,8,10−K39;黒丸、[D]−L3,4,8,10−K48;黒三角、[D] −L3,4,8,10−K57;十字入り丸、[D]−L3,4,8,10−K75。 図14A〜Hは、未処理、およびMICの80%の種々のLeu/Lysジア ステレオマーで処理して、ネガティブ染色した大腸菌(E.coli)の電子顕微鏡 写真を示す。図14A、対照;図14B、[D]−L3,4,8,10−K39で処理し た大腸菌;図14C、[D]−L3,4,8,10−K48で処理した大腸菌;図14D 、[D]−L3,4,8,10−K57で処理した大腸菌;図14E、[D]−L3,4,8, 10 −K75で処理した大腸菌;図14F、対照;図14G、[D]−L3,4,8,10 −K48で処理した大腸菌;図14H、[D]−L3,4,8,10−K57で処理した 大腸菌。 発明の詳細な説明 異種Lベースのペプチドは、非病原性細胞(すなわち、赤血球)には ほとんどまたは全く作用せずに、病原性細胞(例えば、細菌)を選択的に破壊す ることにより表される、選択的細胞溶解活性を有することが、本発明者により見 い出された。この知見は、細胞(細菌のような病原性細胞であろうと正常哺乳動 物細胞であろうと)中の細胞溶解性ペプチドの細胞溶解活性は、αらせん立体配 置に関連した単一の基礎となる機構から生じるという当該分野において優勢な説 から考えて、非常に驚くべきことである。 細胞選択性の基となる分子機構を理解するために行なったパーダキシンとメリ チン(2つの既知の非細胞選択的細胞溶解素)のD−アミノ酸を組み込んだ類似 体(ジアステレオマー)による機能的および構造的研究から、生じたジアステレ オマーは、αらせん構造を保持せず、このため、哺乳動物細胞に及ぼす細胞溶解 作用を失ったことが判った。しかしこのジアステレオマーは、高い抗菌活性を保 持しており、これは、グラム陽性およびグラム陰性細菌の両方の完全な細胞溶解 により明示された。すなわち、パーダキシンとメリチンのαらせん構造は、哺乳 動物細胞に対する細胞毒性には重要であるが、抗菌活性には必要条件ではないこ とが判った。しかし別の研究において、単一のD−アミノ酸を非溶血性抗菌性ペ プチドのマゲイニンに組み込んだところ、ほぼ全体としてその抗菌活性は失われ た(チェン(Chen)ら、1988)。本発明においてパーダキシンおよびメリチ ンのジアステレオマーで得られた結果では、疎水性および正味の正電荷が、非選 択的細胞溶解性ペプチドに選択的抗菌活性を与え、両親媒性αらせん構造は必要 ではないことが示唆される。しかしパーダキシンとメリチンのジアステレオマー は、L−アミノ酸の長いストレッチ(14〜17aa長)を含んでおり、このこ とにより、残った低いらせん性でも膜結合と不安定化には充分である可能性が生 じる。 線状細胞毒性ペプチドの疎水性と正味の正電荷の調節が、選択的抗菌活性を与 えるのに充分であるかどうかを調査するために、我々は、種々の比のロイシンと リジンからなり、かつその配列の3分の1がD−アミ ノ酸からなる、短いモデルペプチド(12aa長)のジアステレオマーを検討す ることにした。ペプチド長とD−アミノ酸の位置は、αらせん構造を形成するこ とができない1〜3個のL−アミノ酸の非常に短い連続ストレッチを有する短い ペプチドが作成されるようにした。このジアステレオマーは、(1)細菌および ヒト赤血球に対するその細胞毒性、(2)その構造、および(3)細菌の細胞壁 の形態およびモデルのリン脂質膜と相互作用して動揺させるその能力に関して評 価した。データは、疎水性と正電荷の調節が、抗菌活性と細胞溶解選択性を与え るのに充分であることを示している。さらには、生じた抗菌性ペプチドは、非致 死濃度でテトラサイクリンのような利用可能な抗菌性薬剤と相乗的に作用し、そ して、未変性抗菌性ペプチドの活性を劇的に低下させるヒト血清の不活化に対し て全く抵抗性である。さらに短いジアステレオマー(6aaおよび8aa長)を 調製して試験し、非溶血性で細胞溶解性であることが判った。 ある種の細胞溶解性非らせんペプチドが、抗病原活性を有するという知見は、 このような非らせんポリペプチドを含む抗病原性薬剤の調製への道を開く。非ら せんペプチドが、L−アミノ酸とD−アミノ酸の両方からなる異種ペプチドであ る場合、抗病原性薬剤は、一方で分解(例えば、プロテアーゼによる)に対して 同種L−ペプチドよりも抵抗性が大きく、そして他方で全同種D−ペプチドのよ うに完全に分解抵抗性ではないというさらなる利点を有する。分解に対する抵抗 性は、毒性副作用を伴う可能性のある身体からの緩慢なクリアランスという点か らは不都合であるかもしれない。非αらせん抗病原性ペプチドは、種々の治療法 に使用することができる。 同種D−ペプチドは、対応する同種L−ペプチドと本質的に同一の細胞溶解活 性を有することが知られているため(ベッサレ(Bessalle)ら、1990)、異 種Dベースのペプチドが、異種Lベースのペプチドと同じ抗病原性を有すること は明らかである。 ある種の非αらせんペプチドが、赤血球に対する細胞溶解活性なしに 細菌に対する細胞溶解活性を有するという知見は、その細胞膜の組成において細 菌細胞が赤血球とは異なるという事実の結果である。細胞膜の組成の相違はまた 、種々の病原性細胞(癌細胞など)と正常細胞の間にも見い出すことができる。 すなわち、この知見に基づき、本発明の物質は、非病原性の正常体細胞に対して ほとんどまたは全く活性がなく、体内の1つの分類の細胞(例えば、細菌細胞、 寄生体の細胞、真菌細胞、原生動物細胞、または癌細胞)に対する選択的細胞溶 解活性を有する種々の薬剤の開発への道を開く。 病原性細胞に対して選択的細胞溶解活性を有するが、正常非病原性細胞に対し てははるかに低い細胞溶解活性を有するか、または全く細胞溶解活性を持たない 本発明の非溶血性細胞溶解性ペプチドは、全くまたはほとんど毒性副作用なしに 、種々の治療応用に使用することができる。 1つの群の本発明のペプチドは、広範な細胞溶解活性を有するαらせん構造の 同種ペプチドから誘導された、非αらせん異種ペプチドから誘導される。したが って本発明は、1つの実施態様により、ある配列を有するD−およびL−アミノ 酸残基の両方を含む異種ペプチド環状誘導体を提供するが、ここで、L−アミノ 酸残基のみまたはD−アミノ酸残基のみを含み、該異種ペプチドと同じアミノ酸 配列を有する同種非環化ペプチドは、αらせん立体配置を有し、かつ種々の細胞 で表される広域スペクトル細胞溶解活性を有するものである;該異種環状ペプチ ドは、該同種ペプチドが細胞溶解活性である細胞の内の少数のみに細胞溶解活性 を有する。例えば、異種環状ペプチドの細胞溶解活性は、病原性細胞のみで表さ れ、一方赤血球のような正常細胞に対する細胞溶解活性は持たない。 本発明の非溶血性細胞溶解性環状ペプチドの例は、αらせん構造を含みかつ細 胞溶解活性を有する天然ペプチドから誘導されるペプチドである。本発明の非ら せんペプチドは、D−アミノ酸が、分子のN−およびC−らせんに沿って組み込 まれ、かつ正味の正電荷が、正に荷電したアミノ酸残基(例えば、リジン、アル ギニン、ヒスチジン)(例えば、N 末端で)、および/または正に荷電した基(例えば、アミノエチルアミノのよう なアミノアルキルアミノ基)(例えば、分子のC末端で)の付加によるか、また は遊離カルボキシル基の中和(例えば、これらをアミド基に変換することによる )により達成される、天然ペプチドの全配列または部分配列に本質的に対応する 配列を有する。このような天然ペプチドの例は、メリチンとパーダキシン、およ びその断片である。 例えば、非αらせん環状ペプチドは、33量体ペプチドであるパーダキシンか ら、または26量体ペプチドであるメリチンから誘導することができ、非αらせ ん環状ペプチドは、それぞれ、パーダキシンまたはメリチンの全配列に対応する 配列を含む、33量体または26量体ペプチドであってもよく、あるいはパーダ キシンまたはメリチンの部分配列(例えば、8〜23量体メリチン配列)に対応 する配列を有する非らせん環状ペプチドであってもよい。パーダキシンから誘導 される異種環状ペプチドの場合に、本発明の異種環状ペプチドは、わずか10ア ミノ酸残基および10〜24の間のアミノ酸残基を含むパーダキシンの部分配列 に対応する部分配列を含んでもよい。 別の群の本発明のペプチドは、天然相同体を持たない配列を有し、少なくとも 1つの疎水性アミノ酸および少なくとも1つの正に荷電したアミノ酸よりなり、 そして配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基がD−アミノ酸である、非らせん ペプチドである。 抗菌性ペプチドの構造−機能研究を解明するために使用されるモデルペプチド による以前の研究では、3つのパラメーターに焦点を当てた;らせん構造、疎水 性および電荷(アンザイ(Anzai)ら、1991;アガワ(Agawa)ら、1991 )。これらのパラメーターの1つの各変化は、同時に他の2つの変化を引き起こ すため、全体の抗菌活性に対する各パラメーター単独の寄与を明らかにすること が困難になった。本発明では、らせん構造の影響を除外したため、ロイシンとリ ジンの比を変えることにより2つのパラメーターだけ、すなわち、疎水性と正味 の正電荷の検討が可能になった。この目的のため、わずか1〜3個の連続L− アミノ酸のストレッチ(短すぎてαらせん構造を形成できない)を含有する短い モデルペプチド(12aa長)のジアステレオマーを検討のために選択した。 CD分光学により、低度のα構造を保持している本発明のメリチンとパーダキ シンのジアステレオマーとは異なり、これらのLeu/Lysジアステレオマー はαらせん構造が全く欠けていることが判った(データは示していない)。それ にもかかわらず、Leu/Lysジアステレオマーは、未変性の抗菌性ペプチド (例えば、ダーマセプチンS)、または抗生物質のテトラサイクリンと同様か、 またはそれより大きい強力な抗菌活性を示す。さらに、最も強力なペプチドの[ D]−L3,4,8,10−K4 L8および[D]−L3,4,8,10−K5 L7(本発明 の例3の、それぞれ、ペプチド23および24)は、非常に細胞溶解に感受性の ヒト赤血球に対して溶血活性がなかった。[D]−L3,4,8,10−K3 L9(ペ プチド22)はαらせん構造を欠いているが、未変性細胞溶解性ペプチドのパー ダキシンに迫る相当な溶血活性を有することに注意されたい。これは、疎水性と 正電荷の間の均衡が、両親媒性αらせん構造を埋め合わせることを示すものであ ろう。 しかし正電荷の増大が、溶血活性を激烈に低下させ、一方抗菌活性は保存される ということは、両親媒性αらせん構造が、抗菌活性には必要でないことを証明し ている。 負に荷電したリン脂質膜および双性イオン性リン脂質膜の両方とのLeu/L ysジアステレオマーの相互作用を検討して、細菌に対するその選択的細胞毒性 の根拠を解明しようとした。負に荷電したPE/PG小胞を使用して、大腸菌( E.coli)の脂質組成を模倣し(ショー(Shaw)、1974)、双性イオン性P C小胞でヒト赤血球の外側リーフレットを模倣した(バークレイジ(Verkleij) ら、1973)。赤血球(図12)および大腸菌(E.coli)(表5)に及ぼす Leu/Lysペプチドの生物学的活性は、モデル膜を透過するその能力とよく 相関する。 PC小胞を透過した唯一のペプチドが、顕著な溶血活性を有する唯一のペプチド であった。これらの結果は、細菌の膜のリン脂質組成が、このファミリーの抗菌 性ペプチドによる透過においてある役割を果たすことを示唆している。 負に荷電しているが双性イオン性ではないリン脂質小胞に結合して透過する、抗 菌性で非溶血性ペプチドの能力は、未変性抗菌性ペプチドの特徴であり(ガジッ ト(Gazit)ら、1994)、そしてこの能力は、細菌表面が、リポ多糖類(グ ラム陰性細菌のLPS)および多糖類(グラム陽性細菌のテイコ酸)を含み、そ してその内膜が、ホスファチジルグリセロール(PG)を含んでいる(これら全 ては、負に荷電している)が、一方、赤血球のような正常真核生物細胞は、その 外側リーフレット上に双性イオン性リン脂質PCを主に発現するという事実に帰 される。 抗菌性ペプチドのマゲイニンは、非溶血性ペプチドであるが、一方メリチン、 パーダキシン、および[D]−L3,4,8,10−K4 L8の配列と類似しているが 専らL−アミノ酸からなる配列のモデルペプチドは、主としてこれらの高い疎水 性により、溶血性である。マゲイニンのαらせん構造が、3つのD−アミノ酸の 導入により中断されると、生じるジアステレオマーは、その正味の正電荷が未変 性マゲイニンの電荷と同様であっても、抗菌活性はなかった(チェン(Chen)ら 、1988)。したがって、未変性マゲイニンのαらせん構造、疎水性および正 味の正電荷の間に既に存在する最適な均衡が、選択的抗菌活性を可能にしており 、そしてこれらの性質の1つのどのような変化によっても、マゲイニンの抗菌活 性は喪失してしまうのであろう。これとは対照的に、疎水性は、メリチン、パー ダキシンおよび本発明のLeu/Lysジアステレオマーにおけるαらせんの消 失を埋め合わせるのに主要な役割を果たすと考えられる。 本発明の結果は、短く単純で容易に操作される抗菌性ペプチドのレパートリー の設計のための新規な方策を示唆している。ジアステレオマーモデルのLeu/ Lysペプチドのそれぞれは、独特のスペクトルの活 性を有する(表5)。ジアステレオマー抗菌性ペプチドのレパートリーの存在に より、標的細胞にとって最も有効なペプチドを選択することができる。さらに、 別々にまたは一斉に作用する、多様な形態のジアステレオマーペプチドの同時投 与もまた、選択的生存価を有し、そしてより広い範囲の感染性微生物に対する良 好な遮蔽物を提供する。全てのLeu/Lysジアステレオマーは、グラム陰性 細菌に比較してグラム陽性細菌に対する抗菌活性の上昇を示した。従来の抗生物 質に対する黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)、腸球菌(enterococci )、および肺炎双球菌(pneumococci)のようなグラム陽性細菌の耐性の上昇を 考えるとき、これらの結果は重要である(ラッセル(Russel)ら、1995)。 加えて、未変性抗菌性ペプチドのダーマセプチンSとは異なり、[D]−L3,4, 8,10 −K5 L7(ペプチド24)は、プールされたヒト血清の存在下でその抗 菌活性を保持していた。 ジアステレオマーペプチドは、既知の抗菌性ペプチドにまさる幾つかの利点を 有するであろう:(1)このペプチドには、αらせん分解性の細胞溶解素により 誘導される多様な病理学的および薬理学的作用がないであろう。例えば、ブドウ 球菌のδ毒素、抗菌性ペプチドのアラメチシン(alamethicin)、コブラの直接 分解性因子(direct lytic factor)およびパーダキシンは、孔形成およびアラ キドン酸カスケードの活性化により、種々の細胞に幾つかの組織病理学的作用を 及ぼす。しかし、パーダキシンのジアステレオマーは、これらの活性を発揮しな い。加えて、多くの両親媒性αらせんペプチドは、カルモジュリンに結合して幾 つかの細胞応答を導き出し、そしてメリチンを含め全D−アミノ酸のαらせんは 同様な活性を有する(フィッシャー(Fisher)ら、1994)。中断したαらせ ん構造を有するジアステレオマーは、カルモジュリンに結合すると予想されない ; (2)局所のD−アミノ酸置換により、完全なD−アミノ酸置換により獲得され る全体的保護とは反対に、タンパク分解性酵素による抗菌性ペプチドの制御され たクリアランスが起こる(ウェード(Wade)ら、19 90)。分解に対する細胞溶解性ペプチドの全体的抵抗は、治療用途にとって不 都合である。さらに、D,L−アミノ酸を含有する短い断片の抗原性は、その全 体がLまたはD−アミノ酸の親分子に比較して、劇的に変化する(ベンキラン( Benkirane)ら、1993);(3)ジアステレオマーにより誘導される細菌増 殖の全体的阻害は、電子顕微鏡検査(図14)により示されるように、細菌の細 胞壁の全体的溶解を伴う。したがって、細菌は、このような破壊機構を引き起こ す薬剤に対する耐性を容易にはつくり出せない;(4)[D]−L3,4,8,10−K 5 L7(ペプチド24)は、電子顕微鏡検査(図14)により示されるように 、そのMICより低濃度で細菌の細胞壁を動揺させる能力を有する。細菌の細胞 壁に浸透する能力がないため活性がない臨床的に使用される抗生物質の、ペプチ ド24との同時投与は、細菌のこの抵抗機構に対する解決策を与えるかもしれな い。 本発明はここで、幾つかの非限定的な図面および例を参照して説明される。 実験方法 (i)材料。 ブチルオキシカルボニル−(アミノ酸)−(フェニルアセトアミ ド)メチル樹脂は、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)(フォ スターシティー、カリホルニア州)から購入し、ブチルオキシカルボニル(Bo c)アミノ酸は、ペニンシュララボラトリーズ(Peninsula Laboratories)(ベ ルモント、カリホルニア州)から入手した。ペプチド合成のために使用した他の 試薬は、トリフルオロ酢酸(TFA、シグマ(Sigma))、N,N−ジイソプロ ピルエチルアミン(DIEA、アルドリッチ(Aldrich)、ニンヒドリンで蒸留 )、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、フルカ(Fluka))、1−ヒド ロキシベンゾトリアゾール(HOBT、ピアース(Pierce))およびジメチルホ ルムアミド(ペプチド合成等級、バイオラブ(Biolab))を含むものであった。 卵ホスファチジルコリン(PC)およびウシ脊髄からのホスファチジルセリン( PS)(ナトリウム塩−I等級)は、リピッ ドプロダクツ(Lipid Products)(サウスナットフィールド(South Nutfield) 、英国)から購入した。卵ホスファチジルグリセロール(PG)およびホスファ チジルエタノールアミン(PE)(V型、大腸菌(Eschrichia coli)から)は 、シグマ(Sigma)から購入した。 コレステロール(純度特級)は、メルク(Merck)(ダームシュタット(Damstad t)、ドイツ)から供給され、エタノールから2回再結晶した。3,3’−ジエ チルチオジカルボシアニンヨウ化物[diS−C2−5]は、モレキュラープロ ーブス(Molecular Probes)(ユージーン、オレゴン州)から入手した。未変性 メリチンはシグマ(Sigma)から購入した。市販のメリチンは、通常痕跡量のホ スホリパーゼA2を含み、これが、リン脂質の急速な加水分解を引き起こす。し たがって、特に注意を払って、RP−HPLCを使用してメリチンから全てのホ スホリパーゼA2を除去した。他の全ての試薬は分析用等級のものとした。 緩衝液は、二回ガラス蒸留水で調製した。 (ii)ペプチド合成および精製。 ペプチドは、ブチルオキシカルボニル−(ア ミノ酸)−(フェニルアセトアミド)メチル樹脂(0.05m当量)で固相法に より合成した(メリフィールド(Merrifield)ら、1982)。樹脂結合ペプチ ドは、フッ化水素(HF)により樹脂から切断し、HF留去後に無水エーテルで 抽出した。これらの粗ペプチド調製物は、RP−HPLCにより示されるように 、1つの主要ピークを含んでいたが、これは、50〜70重量%純粋なペプチド であった。合成したペプチドは、C18逆相バイオラッド(Bio-Rad)準分取用カ ラム(孔サイズ300Å)でRP−HPLCによりさらに精製した。1.8ml/ 分の流速で、両者とも0.05%のTFA(v/v)を含有する水中の10〜6 0%アセトニトリルの線形勾配を使用して、カラムを40分で溶出した。分析用 HPLCにより均質(〜95%)であることが示された精製ペプチドは、アミノ 酸分析に付し、そして質量分析法に付してこれらの配列を確認した。 (iii)ペプチドのアミノ基転移。 上記(ii)のように樹脂結合した ペプチドは、DMF中の30%エチレンジアミンにより3日間でアミノ基転移さ せて、次に樹脂を濾過し、保護ペプチド(すなわち、アミノエチルアミノ(TA )ペプチド)をエーテルで沈殿させ、HFで保護基を脱離した。合成TAペプチ ドは、0.1%TFA中の25〜80%アセトニトリルの線形勾配を使用して、 40分でC18カラムの逆相HPLCにより精製し(均質性>95%)、次にアミ ノ酸分析に付してその組成を確認した。 (iv)ペプチドのアミド化。 樹脂結合ペプチド(20mg)は、メタノール中の 飽和アンモニウム溶液(30%)とDMSO(1:1、v/v)の1:1、v/ vよりなる混合物で3日間処理することにより、[D]−V5,8,I17,K21− メリチンのC末端に位置するグルタミン残基のカルボン酸基のアミド化を行った 。 すなわち、全ての保護基が結合したままであるが、そのC末端残基が1つのアミ ド基により修飾されたペプチドが得られた。メタノールとアンモニアは、窒素流 下で留去し、そして保護ペプチドは、DMSOで樹脂から抽出し、無水エーテル で沈殿させた。次に生成物をHF切断に付し、上述のようにRP−HPLCを使 用してさらに精製に付した。 (v)脂質小胞の調製。 PC/コレステロール(10:1、w/w)またはP C/PS(1:1、w/w)分散液の音波破砕により、単層小胞(SUV)を調 製した。簡単に述べると、乾燥脂質とコレステロール(10:1、w/w)をC HCl3/MeOH混合物(2:1、w/w)に溶解した。次に溶媒を窒素流下 で留去し、脂質(7.2mg/mlの濃度)を1時間真空にして、次に渦流を起こし て適切な緩衝液に再懸濁した。次に生じた脂質分散液を、清澄になるまで浴型音 波破砕機(G1125SP1音波破砕機、ラボラトリーサプライズカンパニー社 (Laboratory Supplies Company Inc.)、ニューヨーク州)で5〜15分間音波 破砕した。生じた調製物の脂質濃度は、リン分析により測定した(バートレット (Bartlett)、1959)。小胞は、以下のようにJEOL JEM 100B 電子顕微鏡(ジャパンエレクトロンオプティクスラボ ラトリー社(JapanElectron Optics Laboratory Co.)、東京、日本)を使用し て視覚化した。一滴の小胞を、炭素コーティングした格子に沈積させ、酢酸ウラ ニルでネガティブ染色した。この格子の検討により、小胞が20〜50nmの平均 直径を有する単層であることが証明された(パパハドジョポウロス(Papahadjop oulos)とミラー(Miller)、1967)。 (vi)血清の調製。 5名の志願者から採血し、室温で4時間凝固させた。次に 血液を1500gで15分間遠心分離し、血清を取り出してプールした。56℃ で30分間加熱することにより血清補体を不活化した。 (vii)CD分光学。 ペプチドのCDスペクトルは、(+)−10−ショウノ ウスルホン酸で装置を較正後、ジャスコ(Jasco)J−500A分光偏光計で測 定した。スペクトルは、0.5mmの経路長の蓋付き石英光学セルで23℃で走査 した。スペクトルは、250〜190nmの波長で得られた。各ペプチドについ て20nm/分の走査速度で8回の走査を行った。ペプチドは、40%トリフルオ ロエタノール(TFE)(αらせん構造を強力に促進する溶媒)中の1.5×1 0-5〜2.0×10-5Mの濃度で走査した。らせん率(グリーンフィールド(Gr eenfield)とファスマン(Fasman)、1969;ウー(Wu)ら、1981)は、 以下:[ここで、[θ]222は、222nmでの実験的に観察された平均残基楕円率であ り、そして[θ]0 222と[θ]100 222の値(222nmでの0%および100%ら せん含量に対応する)は、それぞれ、2000および32000度・cm2/dmolと 見積もった]のように計算した(ウー(Wu)ら、1981)。 (viii)ペプチドの抗菌活性。 ジアステレオマーの抗菌活性は、以下のように 100μLの最終容量で滅菌96ウェルプレート(ヌンク(Nun c)F96マイクロタイタープレート)中で検討した:106コロニー形成単位( CFU)/mlLB(ローリア(Lauria)ブロス)培地の濃度で細菌を含有する懸 濁液のアリコート(50μl)を、2倍連続希釈でペプチドを含有する、50μ Lの水またはPBS中の66%正常ヒトプール血清に加えた。増殖阻害は、マイ クロプレート(Microplate)自動リーダーE1309(バイオテックインストラ メンツ(Bio-tek Instruments))で492nmの吸光度を測定することにより求 め、次に18〜20時間37℃でインキュベートした。抗菌活性は、最小阻止濃 度(MIC)(18〜20時間のインキュベーション後に100%増殖の阻害が 観察された濃度)として表される。使用した細菌は、大腸菌(Escherichia coli )D21、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)ATCC27853、アシネトバ クターカルコアセティクス(Acinetobacter calcoaceticus)Ac11、ネズミ チフス菌(Salmonella typhimurium)LT2、巨大菌(Bacillus megaterium) Bm11、ミクロコッカスルテウス(Micrococcus luteus)ATCC9341、 枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC6051であった。 (ix)ヒト赤血球の溶血。 ペプチドは、ヒト赤血球(hRBC)に対するその 溶血活性について試験した。EDTAを加えた新鮮hRBCは、800gで10 分間の遠心分離によりPBS(35mMリン酸緩衝液/0.15M NaCl、p H7.3)で3回濯ぎ、PBSに再懸濁した。次にPBSに溶解したペプチドは 、50μLのPBS中のストックhRBCの溶液に加えて、100μLの最終容 量とした(最終赤血球濃度、5%、v/v)。生じた懸濁液を37℃で30分間 撹拌下でインキュベートした。次に試料を800gで10分間遠心分離した。ヘ モグロビンの放出は、540nmで上清の吸光度を測定することによりモニターし た。ゼロ溶血(ブランク)および100%溶血の対照は、それぞれ、PBSおよ びトリトン1%に懸濁したhRBCとした。 (x)電子顕微鏡による細菌に及ぼすペプチドの作用の視覚化。 LB培地中に 大腸菌(E.coli)(106CFU/ml)を含有する試料を、 MIC、およびMIC未満の1つの希釈の種々のペプチドと共に16時間インキ ュベートし、次に3000gで10分間遠心分離した。ペレットを再懸濁して、 細菌を含有する1滴を、炭素コーティングした格子に沈積させ、次に2%リンタ ングステン酸(PTA)(pH6.8)でネガティブ染色した。格子はJEOL JEM 100B電子顕微鏡を使用して検査した。 (xi)ペプチドにより誘導される膜透過。 膜透過は、以前に報告された(シャ イ(Shai)ら、1991)ように、拡散ポテンシャル測定法(ロエ(Loew)ら、 1983;シムズ(Sims)ら、1974)を利用して評価した。典型的な実験に おいて、ガラス管で、K+含有緩衝液(50mM K2SO4、25mM HEPES −SO4 -2、pH6.8)中の4μlのリポソーム懸濁液(33μMの最終リン 脂質濃度)を、1mlの等張性K+不含緩衝液(50mM Na2SO4、25mM H EPES−SO4 -2、pH6.8)に希釈し、次に蛍光性ポテンシャル感受性染 料のdiS−C2−5を加えた。バリノマイシン(1μlの10-7M)を懸濁液 に加えて、小胞内の負の拡散ポテンシャルを徐々に引き起こすようにし、これが 染料の蛍光のクエンチングをもたらした。一旦蛍光が安定化したら(3〜10分 間かかった)、ペプチドを加えた。蛍光の上昇により反映される、ひき続いて起 こる拡散ポテンシャルの消失は、励起を620nmに、発光を670nmに設定した パーキンエルマー(Perkin Elmer)LS−50B分光蛍光計でモニターして、利 得を100%に調整した。蛍光回収の百分率Ftは、以下: Ft=(It−Io/If−Io)×100 (ここで、Io=初期蛍光、If=バリノマイシンの添加前に観察された全蛍光、 そしてIt=時間tでペプチド添加後に観察された蛍光)のように定義された。 (xii)小胞へのペプチドの結合。 双性イオン性(PC)または負に荷電した リン脂質(PC/PS)からなる小胞との[D]−V5,8,I17,K21−メリチ ンの相互作用は、SUV滴定実験でペプチドの内部トリプ トファンの発光強度の変化を測定することにより性状解析した。簡単に述べると 、SUVを、50mMNa2SO4、25mM HEPES−SO4 -2(pH6.8) を含有する緩衝液に溶解した固定量のペプチド(0.5μM)に24℃で加えた 。2mlの最終反応容量を含有する1cmの経路長の石英キュベットを全ての実験に 使用した。蛍光強度は、5nmスリットを使用して励起を280nmに設定し、2. 5nmスリットを使用して発光を340nmに設定したパーキンエルマー(Perkin-E lmer)LS−5分光蛍光計で脂質/ペプチドモル比の関数として測定(4回の別 の実験)した。結合等温線は、下記式: Xb=KPf (ここで、Xbは、全脂質(CL)当たりの結合ペプチド(Cb)のモル比として 定義され、KPは、分配係数に対応し、そしてCfは、溶液中の遊離ペプチドの平 衡濃度を表す)を使用して、分配平衡として分析した。 実用的な目的のため、ペプチドは当初SUVの外側リーフレットのみに分配して いる(60%)と仮定した。したがって、分配等式は、以下: Xb *=KP *f (ここで、Xb *は、全脂質の60%当たりの結合ペプチドのモル比として定義さ れ、そしてKP *は、推定表面分配係数である)となる。遊離ペプチドCfに対す るXb *のプロットから生じた曲線は、通常の結合等温線として参照される。 (xiii)トリプトファンクエンチング実験。 周囲環境に感受性のトリプトファ ンは、膜におけるペプチドの局在を評価するために、以前から臭素化リン脂質( Br−PC)と組合せて使用されてきた(ボーレン(Bolen)とホロウェイ(Hol loway)、1990;デクルーン(De Kroon)ら、1990)。トリプトファン 蛍光のクエンチャーとして使用したBr−PCは、短距離で作用し、膜を激烈に は動揺させないため、ペプチドの膜挿入のプロービングに適している。それぞれ 1つのトリプトフアン残基を含有するメリチンとそのジアステレオマーは、20 μl(50μM)のBr−PC/PS(1:1、w/w)SUVを含有する 2mlの緩衝液(50mM Na2SO4、25mM HEPES−SO4 -2、pH6. 8)に加える(0.5μMの最終濃度)ことにより、100:1の脂質/ペプチ ド比を確立した。室温で2分インキュベーション後、トリプトファンの発光スペ クトルは、励起を280nm(8nmスリット)に設定したパーキンエルマー(Perk in-Elmer)LS−50B分光蛍光計を使用して記録した。PC/PS(1:1、 w/w)からなり、25%の6,7Br−PC、または9,10Br−PC、ま たは11,12Br−PCのいずれかを含有するSUVを使用した。各ペプチド に関して3回の別の実験を実施した。対照実験において、Br−PCを含まない PC/PS(1:1、w/w)SUVを使用した。例1.パーダキシン由来ジアステレオマーの合成および生物学的活性 1.1 合成。 哺乳動物細胞および細菌に対するその細胞毒性におけるポリカ チオン性細胞溶解素のαらせん構造の役割を試験するために、実験方法のセクシ ョン(ii)および(iii)に記載されるように、一連のパーダキシン由来ペプチ ドを合成し、そしてその構造、hRBCに対する溶血活性、抗菌活性および細菌 の形態に及ぼす効果について性状解析した。 パーダキシン(par)は、以下の配列: の33量体ペプチドである。 正電荷を導入するためのパーダキシン分子の修飾は、パーダキシンの酸性C末 端を削除するか、またはエチレンジアミン(TA)とのC末端のGlu残基の両 方のカルボキシル基の反応によりパーダキシンまたはその断片の酸性C末端を正 の末端に変換することにより、および/またはLysのような正に荷電したアミ ノ酸残基をN末端に付加することにより行った[パーダキシンジアステレオマー では、TAparまたはパーダキシン断片の7位のPro残基をD−Proによ り置換(本明細書 では[D]P7で示される)することにより、TAparまたはパーダキシン断 片の18および19位の2つのLeu残基をD−Leuにより置換(本明細書で は[D]L1819)することにより、または両方の置換(本明細書では[D]P71819)により、N−らせんおよび/またはC−らせんが改変されている] 。D−アミノ酸は、N−およびC−らせんの中央に導入した。 以下のパーダキシン由来ジアステレオマーは、非溶血性であり、選択的細胞溶 解活性を示すことが判った(太字および下線の残基はD−アミノ酸である)。ペ プチドは、以降本明細書では太字の数字により表される。 以下のパーダキシン誘導体を合成したが、これらは本明細書に後述の表1に示 されるように溶血性であることが判った。 1.2 ペプチドの二次構造の決定。 ペプチド1、8、12、14の二次構造 は、実験方法、セクション(vii)に記載されたように、40%TFE(αらせ ん構造を強力に促進する溶媒)、およびPBS(35mMリン酸緩衝液/0.15 M NaCl、pH7.0)中のCDスペクトルから評価した。 パーダキシン由来ジアステレオマーのCDスペクトルを図1に示す (図中、 および [1](−・−・))。予想されるように、40%TFE中での208および2 22nmでの最小値により示されるように、多くのD−アミノ酸が組み込まれるほ どペプチドのαらせん含量の劇的な低下が観察された。8(TApar)(50 %αらせん)と1([D]P71819−TApar)(4%)の間では90% を超えるαらせん含量の低下があった。12([D]P7−TApar)と14 ([D]L1819−TApar) のαらせん含量は、それぞれ25%と15%であった。7位のプロリンは、構造 にねじれを導入しないが、NMR分光学により明らかにされるようにむしろN− らせんの形成に関与していることに注意されたい(ザゴースキー(Zagorski)ら 、1991)。PBSでは、パーダキシンは、〜12%αらせん含量の低い値を 与え、一方D−アミノ酸残基を含む全ての類似体で、特異的な構造に帰すことの できない非常に低いシグナルを与えた(データは示していない)。 1.3 溶血活性および抗菌活性。 次にパーダキシン由来ペプチド1〜17は 、それぞれ、実験方法、セクション(ix)および(xviii)に記載されたように 、非常に感受性の高いヒト赤血球に対する溶血活性、および異なる種の細菌の増 殖を阻害するその能力について試験した。加えて、細胞毒性ハチ毒のメリチン、 抗菌性ペプチドのダーマセプチンS、および抗生物質のテトラサイクリンを対照 として使用した。 図2は、ペプチド1、8、12、14の溶血活性の用量作用曲線を示す。TA parに導入されたD−アミノ酸が、その溶血活性を劇的に低下(対応する類似 体のαらせん含量の低下分と相関する)させていることが判る。αらせん含量が 最も高いペプチド8のTAparは、最も溶血性であり、一方αらせん含量が最 も低いペプチド1の[D]P71819−TAparは、試験した最高濃度(5 0μM)まででは事実上溶血活性が欠けている。RBCを溶解する能力のないこ とは、ダーマセプチン(図2を参照のこと)、マゲイニンおよびケクロピンのよ うな多くの天然抗菌性ペプチドの特徴である。 表1は、代表的なセットの試験細菌(グラム陰性細菌2種、大腸菌(Escheric hia coli)とアシネトバクターカルコアセティクス(Acinetobactercalcoacetic us)、およびグラム陽性細菌2種、巨大菌(Bacillus megaterium)と枯草菌(B acillus subtilis)を含む)に対するペプチド1〜17のMIC(μM)、さら に50μMペプチドでの溶血%を与える。表2は、幾つかの細菌種に対する、ペ プチド1、8、12、14、およびメリチン、ダーマセプチンSおよびテトラサ イクリンのMI C(μM)を与える。データにより、ジアステレオマー類似体1〜7のαらせん 含量と溶血活性の劇的低下にもかかわらず、これらは全て、親ペプチドのパーダ キシンの強力な抗菌活性をほぼ保持しており、この活性は、既知の未変性抗菌性 ペプチドに匹敵することが明らかになった。 1.4 パーダキシン由来ペプチドにより誘導される膜不安定化。 これまで研 究された全てのαらせんの正に荷電した天然の抗菌性ペプチドに共通の性質は、 双性イオン性リン脂質とよりも、負に荷電したリン脂質と大きく相互作用して透 過するこれらの能力である。これらの知見のその生物学的標的膜への関連は、細 菌の表面が、リポ多糖類(グラム陰性細菌のLPS)、および多糖類(グラム陽 性細菌のテイコ酸)(両方とも酸性である)を含有し、一方正常哺乳動物細胞( 例えば、赤血球)は、その外側リーフレット上に主として双性イオン性リン脂質 のPCを発現するという事実にある。PCおよびPC/PSリン脂質小胞(実験 方法、セクションvにより調製)の両方に及ぼすペプチドの膜透過活性を評価す るための拡散ポテンシャルの消失は、実験方法、セクションxiに記載されたよう に測定した。ペプチド1、8、12、14に関する図3に示される結果は、パー ダキシン中に導入されたD−アミノ酸が、リン脂質膜を透過するペプチドの能力 に有意に影響しなかったことを示している。しかし、溶血活性は全くないが抗菌 活性を保持している唯一のジアステレオマーであるペプチド1は、双性イオン性 リン脂質よりも、負に荷電したリン脂質を有意に透過しやすい。ペプチド1は、 αらせん構造を欠いているが、それ自体未変性抗菌性ペプチドと同様にふるまう 。ペプチド12および14で顕著な中間的な活性がなかったことは、これら両方 ともが、疎水性相互作用による両方の型の小胞への強力な結合を促進するのに充 分な、疎水性N−らせんまたは未処理の両親媒性C−らせんのいずれかを有する という事実により説明することができよう。 1.5 電子顕微鏡を使用する細菌の細胞溶解の視覚化。 未処理の細菌および 処理細菌の形態に及ぼすパーダキシン由来ペプチドの作用は、実験方法、セクシ ョンxxに記載されたように、ネガティブ染色電子顕微鏡を使用して視覚化した。 ペプチドは、抗菌性測定法(上記例1.3を参照のこと)に使用されたのと同じ 条件下で、これらのMIC濃度またはそれ以下で細菌に加えた。18時間インキ ュベーション後に試料を取り出し、直ちに固定して透過型電子顕微鏡により検査 した。図4は、一 例として非溶血性類似体の1([D]P71819−TApar)により得られ た写真を示す。MICではペプチド1は細菌を完全に溶解することが見い出され 、小断片のみが観察できた(図4C)。しかしMICより低い濃度では、細菌の 細胞壁にパッチが観察された(図4B)。これらのパッチは、細胞分解過程に関 与する初期工程を示しているかもしれない。例2.メリチン由来ジアステレオマーの合成および生物学的活性 2.1 合成。 哺乳動物細胞および細菌に対するその細胞毒性におけるαらせ ん構造の役割をさらに試験するため、およびこの効果の基になる機構への洞察を 得るため、メリチン(mel)の4つのジアステレオマーを合成した。 メリチンは、以下の配列: の26量体ペプチドである。 正電荷を導入するためのメリチン分子の修飾は、エチレンジアミンとのC末端 のカルボキシル基の反応により、メリチンまたはその断片の酸性C末端を正の末 端に変換することにより行った[メリチンジアステレオマーでは、メリチンの5 および8位の2つのVal残基、17位のIle残基および21位のLys残基 を、それぞれD−Val、D−11eおよびD−Lysで置換することにより、 N−らせんおよびC−らせんが改変されている(本明細書では[D]−V581721)]。 以下のメリチン由来ジアステレオマーは、非溶血性であり、選択的細胞溶解活 性を示すことが判った(太字および下線の残基はD−アミノ酸である): ペプチド18〜21は次に、その構造、生物学的機能、および細菌および双性 イオン性リン脂質または負に荷電したリン脂質のいずれかからなるモデル膜との 相互作用に関して性状解析した。 2.2 CD分光学。 ペプチド18および19のαらせん構造の含量は、40 %TFE(αらせん構造を強力に促進する溶媒)中のこれらのCDスペクトルか ら求めた。予想されるように、208および222nmでの最小値により示される ように、ジアステレオマーのαらせん含量はメリチンの含量よりもはるかに低か った(80%低下)(図5)。メリチンのαらせん含量は、73%であり、これ に対してジアステレオマーの18および19では、それぞれ15%および7%で あった。 2.3 メリチンジアステレオマー18〜21の抗菌活性および溶血活性。 hRBCに対するペプチド18〜21の溶血活性、および異なる種の細菌の増殖 を阻害するこれらの能力を検討した。抗菌性測定法では抗生物質のテトラサイク リンを対照とした。ペプチドの溶血活性についての用量作用曲線が得られた(図 6)。表3は、代表的なセットの試験細菌に対するMICを与える。メリチンへ のD−アミノ酸の導入は、その溶血活性を劇的に低下させ、そしてその低下は、 対応する類似体のαらせん含量の低下分に平行したことが判る。αらせん含量が 最も高いメリチン は、最も溶血性であり、一方試験した最高濃度(50μM)までで、αらせん含 量が最も低いペプチド18および19は、事実上溶血活性がなかった。しかし、 メリチンジアステレオマー18および19の溶血活性の劇的な低下にもかかわら ず、これらは親ペプチドの強力な抗菌活性をほぼ保持していた。さらには、ペプ チド19の抗菌活性は、18の活性よりもわずかに低いのみであり、このことは 、メリチンのC末端のアミド基が、抗菌活性に顕著に寄与していないことを示し ている。これとは対照的に、遊離カルボン酸C末端を有するケクロピンは、アミ ド化C末端を有する未変性ケクロピンよりも著しく低い抗菌活性を有することが 知られている(リー(Li)ら、1988)。2.4 細菌の溶解の電子顕微鏡による検討。 未処理の細菌および処理細菌の 形態に及ぼすペプチド18の作用は、透過型電子顕微鏡を使用して視覚化した。 図7に示されるように、MICでペプチド18は細菌の完全な溶解を引き起こし た(図7C)。しかしMICより低い濃度では、細菌の細胞壁にパッチが観察さ れた(図7B)。これらのパッチは、細胞溶解過程における最初の工程を表すも のであろう。 2.5 リン脂質膜との相互作用の様式。 ペプチド18および19の生物学的 活性は同様であるため、モデルリン脂質膜とのペプチド18の相互作用の様式の みをメリチンと比較して、観察される膜選択性の根本原理を解明しようとした。 この目的のために、PCおよびPC/PS小胞の両方で造り出される拡散ポテン シャルを消失させるペプチドの能力を測定し、両方の型の小胞とのペプチドの分 配係数、および膜に結合しているときにはペプチドの局在を求めた。 2.5.1 ペプチドにより誘導される膜透過性。 種々の濃度のメリチンおよ びペプチド18を、蛍光染料のdiS−C2−5とバリノマイシンで前処理した 小胞と混合した。蛍光回収の動態を経時的にモニターして、ペプチド濃度の関数 として到達した最大レベルを求めた。図8に示されるように、メリチンもペプチ ド18もPC/PS小胞では同様な膜透過活性であり、このことは、メリチンへ のD−アミノ酸の導入が、負に荷電したリン脂質(PS/PC)膜に透過する生 じたジアステレオマーの能力に影響しないことを証明した。しかし、メリチンは PC小胞でも非常に活性であったが、ジアステレオマーはPC小胞での膜透過活 性は(試験した最高濃度までで)全くなかった。 2.5.2 結合試験。 ジアステレオマー18がPC小胞に透過できないのは 、これがPCに結合することができないためか、あるいはPC小胞には結合する が、一旦結合したら、膜の漏出を誘導する構造に組織化することができないため である。これら2つの可能性を区別するために、結合試験を行った。ペプチド1 8の19位の1つのTrp残基を内部蛍光プローブとして使用して、PCおよび PC/PS小胞へのその結合を追跡した。固定濃度 (〜0.5μM)のペプチドを目的の小胞(PCまたはPC/PS)で滴定し、 結合が起これば蛍光強度の増大が観察された。脂質:ペプチドモル比の関数とし て、生じるTrpの蛍光強度の増大をプロットすると、通常の結合曲線が得られ た(図9A)。PC/PSとのペプチド18の結合曲線は、ほぼ全てのペプチド 分子が、100:1の脂質:ペプチドモル比で小胞に結合したことを明らかにし ている。しかしPC小胞では、試験した最大の脂質:ペプチドモル比でさえも、 Trpの蛍光の正味の増大は観察されなかったが、このことは、ペプチドがPC 小胞に結合しないことを示している。結合等温線は、Cf(溶液中の遊離ペプチ ドの平衡濃度)に対してX* b(60%の全脂質当たりの結合ペプチドのモル比) をプロットすることにより作製した(図5B)。表面分配係数は、ゼロのCf値 に対する曲線の最初の傾きを外挿することにより推定した。ペプチド18の推定 表面分配係数KP *は、1.1±0.2×104-1であった(4回の測定から得 られた)。この値は、ホスファチジルグリセロール/ホスファチジルコリンへの メリチンの結合について報告された値(4.5±0.6×104-1)と類似し ている(ベシアスクビリ(Beschiaschvili)とシーリグ(Seelig)、1990) 。 ペプチドの結合等温線の形は、膜内のペプチドの組織化に関する情報を提供し うる(シュバルツ(Schwarz)ら、1987)。ペプチド18の結合等温線は、 下降しているが、これは、負の協同性を示している。この負の協同性の可能な説 明は、低濃度ではPS/PCへのペプチド18の結合が、電荷作用なしの分配平 衡に比較して、リン脂質の頭部の基の負電荷により増強されることである。加え て、膜への結合により、ペプチドは負の膜表面電荷を部分的に中和する。しかし 、一旦膜表面電荷が中和されると、同類電荷の反発が優勢な因子になるため、さ らなるペプチド18の結合は困難になる。負に荷電したリン脂質膜へのメリチン の結合の試験において同様な結果が得られた(バテンバーグ(Batenburg)ら、 1987;ベシアスクビリ(Beschiaschvili)とシーリグ(Seelig)、1990 )。 興味深いことに、PC小胞にも強力に結合する(クチンカ(Kuchinka) とシーリグ(Seelig)、1989)メリチンとは異なり、ペプチド18は、PC 小胞には結合しなかった。 2.6 トリプトファンのクエンチング実験。 タンパク質またはペプチドの配 列に元々存在するトリプトファン残基は、膜内のペプチドの局在についての内部 プローブとして作用させることができる。メリチンは、C−らせんのN末端側の 19位にトリプトファン残基を含有する。メリチンとペプチド18の両方により 、トリプトファン蛍光の最大クエンチングは、6,7−Br−PC/PS小胞で 観察された(図10)。次に大きなクエンチングは、9,10−Br−PC/P Sで観察され、最も少ないクエンチングは、11,12−Br−PC/PSで観 察された。これらの結果は、小胞への結合によりペプチドがリン脂質の頭部の基 の近くに配置されることを示している。例3.モデルLys/Leuジアステレオマーの合成および生物学的活性 3.1 Lys/Leuジアステレオマーの設計。 リジンとロイシンの種々の 比よりなる短い線状モデルの12量体ペプチドの6つのジアステレオマーを合成 して、(1)疎水性と正味の正電荷の間の均衡が、選択的な細菌の溶解に必要な 充分な基準であるかどうかを試験し、そして(2)この作用の基になる機構への 洞察を得ようとした。 第1シリーズのモデルLys/Leu 12量体ペプチド22〜25において 、これらの配列の3分の1は、D−アミノ酸残基からなる。D−アミノ酸の位置 は、αらせん構造の最大の分裂のために作成された全てのペプチドにおいて不変 のままであった。D−アミノ酸は、ペプチドにそって配置され、1〜3個の連続 L−アミノ酸の非常に短いストレッチのみが残った。下記ペプチドを合成した: 第2シリーズのモデルLys/Leu 12量体ペプチド26〜27では、以 下のように、これらの配列の3分の2がD−アミノ酸残基からなり、その位置は ペプチド23および24のちょうどL−アミノ酸残基の位置である: 第3シリーズのモデルLys/Leuペプチドでは、6量体および8量体ジア ステレオマーを合成した(それぞれ、ペプチド28および29): 合成した本発明のさらなるLys/Leuジアステレオマー: 3.2 Lys/Leuジアステレオマーの合成。 実験方法、セクション(ii )に記載されたように、ペプチドを合成した。次にその構造、生物学的機能、お よび細菌および双性イオン性リン脂質または負に荷電したリン脂質のいずれかか らなるモデル膜との相互作用に関してペプチドを性状解析した。 3.3 疎水性。 ペプチド22〜25の疎水性と正味の正電荷は、表4にリス トされる。疎水性の平均値は、疎水性スケールのコンセンサス値を使用して計算 した(アイゼンバーグ(Eisenberg)ら、1984)。図11に示されるように 、ペプチドの疎水性と保持時間の間には正の相関が見い出され、このことは、こ の構造が、固定相との全体的な疎水性相互作用に顕著に寄与しないことを示唆し ている。 3.4 CD分光学。 ジアステレオマー22〜25のαらせん構造の含量は、 40%TFE中のそのCDスペクトルから求めた。予想されるように、D−アミ ノ酸の組み込み後には、全てのジアステレオマーでシグナルが観察されなかった が、このことは、どんな特異的な二次構造も存在しないことを証明している(デ ータは示していない)。最近の研究において、ペプチド23の配列と同一の配列 を有するが、L−アミノ酸だけからなるペプチドは、メタノール中およびDMP C小胞中で約40 %のαらせん構造を有することが見い出されたことに注意されたい(コーナット (Cornut)ら、1994)。 3.5 ペプチド22〜29の抗菌活性および溶血活性。 hRBCに対するペ プチド22〜29の溶血活性を試験した。ペプチド22〜25の溶血活性につい ての用量作用曲線を図12に示すが、ここで、メリチンの溶血活性を対照とした 。 ジアステレオマーの疎水性(表4)と溶血活性の間に正の相関が見い出された。 疎水性の最も高いペプチド22([D]−L3,4,8,10−K39)は、最も溶血性 のペプチドであった。しかしその溶血活性は、メリチンに比較して非常に低い( >60倍弱い活性)。他の全てのペプチドは、試験した最高濃度(100μM) まで著しい溶血活性は示さなかった。ペプチド22〜29の溶血活性は、表5に 示される。ペプチド23([D]−L3,4,8,10−K48)は、メリチンによる顕 著な溶血に必要な濃度の>100倍の濃度で溶血性でないが、その全部がL−ア ミノ酸である型は、最近の研究でメリチンと同様な溶血活性(〜5倍弱い)を有 することが証明されたことに注意されたい(コーナット(Cornut)ら、1994 )。 ペプチド22〜29は、代表的なセットの細菌に対する抗菌活性についても試 験したが、ここで、テトラサイクリン、ダーマセプチンS、およびメリチンを対 照として使用した。結果のMICは、表5に示される。データは、ジアステレオ マー22〜29の抗菌活性が、疎水性と正に荷電したアミノ酸の間の均衡により 調節されることを示している。最も疎水性のペプチド22と最も親水性のペプチ ド25の両方とも、最も低い範囲の抗菌活性を示した(表5)。しかし、ペプチ ド23および24は、試験した細菌の大部分に対して高い抗菌活性を示したが、 前者の方がわずかに強力であった。さらに、各ペプチドは、抗菌活性の独特のス ペクトルを持ち、そしてそれぞれがグラム陰性細菌に比べてグラム陽性細菌に対 して活性が高かった。 3.6 血清中のテトラサイクリンとLys/Leuジアステレオマー の間の相乗作用。 抗生物質のテトラサイクリンとジアステレオマーの間の相乗 作用的関係の可能性を調査するために、一定の等モル濃度(1μM)のペプチド 24([D]−L3,4,8,10−K57)の存在下で、緑膿菌(Pseudomonasaerugin osa)(ATCC27853)に対して2倍連続希釈でテトラサイクリンを試験 した。この混合物の抗菌活性は、実験方法、セクション(xii)に記載されたよ うに測定した。 テトラサイクリンとジアステレオマー24の間に相乗作用が観察された。テト ラサイクリンは、緑膿菌(P.aeruginosa)に対してほとんど活性を示さない。 しかしペプチド24の1μM溶液(緑膿菌(P.aeruginosa)に対する溶解活性 に必要な濃度の10倍低い濃度)と混合すると、テトラサイクリンの活性の8倍 上昇が観察された(表6)。相乗作用の可能な説明は、ペプチドが細菌の細胞壁 を僅かに破壊し、これにより細菌中へのテトラサイクリンの分配が改善されたと いうことである。この説は、そのMIC未満でペプチド24が細菌の細胞壁の形 態的な変化を引き起こすことを示す電子顕微鏡検査により支持される(図14) 。加えて、ペプチド24および未変性抗菌性ペプチドのダーマセプチンの、緑膿 菌(P.aeruginosa)と大腸菌(E.coli)に対する抗菌活性に及ぼすプールした ヒト血清の作用は相当異なることが見い出された(表6)。ダーマセプチンは血 清の存在下では8〜10倍活性が弱かったが、ペプチド24は、その抗菌活性を 保持した。 3.7 ペプチド誘導性膜透過。 種々の濃度のペプチドは、蛍光染料のdiS −C2−5およびバリノマイシンで前処理した小胞と混合した。蛍光回収の動態 をモニターして、ペプチド濃度の関数として最大蛍光レベルを求めた(図13) 。 PC/コレステロール小胞(10:1)は赤血球外側リーフレットのリン脂質組 成のモデルとし(バークレイジ(Verkleij)ら、1973)、そしてPE/PG 小胞(7:3)は、大腸菌(E.coli)のリン脂質組成を模倣するために使用し た(ショー(Shaw)、1974)。モデルリン脂質膜を透過するペプチドのポテ ンシャルと、赤血球と大腸菌(E.coli)に対するその溶解活性との間に正の相 関が見い出された。溶血性ペプチド22だけが、双性イオン性リン脂質小胞を透 過した。さらに、PE/PG小胞を透過するペプチドの能力は、大腸菌(E.coli )に対するペプチドの抗菌活性と相関する(表5)。抗菌活性が最も低いペプチ ド25はまた、他の3つのペプチド22〜24に比較してPE/PG小胞 を透過する能力も著しく低くなっていた。 3.8 細菌の細胞溶解の電子顕微鏡試験。 処理大腸菌(E.coli)の形態に 及ぼすジアステレオマー22〜25の作用は、透過型電子顕微鏡を使用して視覚 化した。全てのペプチドが、MICで細菌の細胞溶解を引き起こした(データは 示していない)。しかしそのMICの80%に相当する濃度でペプチドを使用す ると、使用したペプチドに応じて処理細菌の形態に幾らかの相違が観察された。 最も疎水性のペプチド22は、細胞壁と細胞膜に最も大きな損傷を引き起こし、 一方最も疎水性の小さいペプチド25は、局所的な動揺を引き起こしただけだっ た(図14)。 例4.モデルLys/AlaおよびLys/Valジアステレオマーの合成およ び生物学的活性。 4.1 ジアステレオマーの設計。 線状細胞毒性ペプチドの疎水性と正味の正 電荷の調節が、選択的抗菌活性を付与するのに充分であるかどうかをさらに試験 するために、それぞれ、Lys/AlaまたはLys/Val残基からなる、2 つのさらに別のモデルの12量体ペプチドの33および34〜37(これらの配 列の少なくとも3分の1は、D−AlaまたはD−Val残基である)を合成し た: 4.2 合成。 Lys/AlaおよびLys/Valジアステレオマ ーは、実験方法、セクション(ii)に記載されたように合成した。 4.3 抗菌活性および溶血活性。 ペプチド33および34は、大腸菌(E.co li)と巨大菌(B.megaterium)、およびhRBCに対して試験した。表7の結 果は、両方のモデルジアステレオマーが抗菌性で非溶血性であることを示してい る: 例5.さらなるモデルジアステレオマーの合成 2つ、3つまたはそれ以上の異なるアミノ酸の6、8、12、14、16、1 9、25、26および30残基の配列からなる、本発明の下記のモデルジアステ レオマーを合成した: 例6.環状ジアステレオマーの合成および生物学的活性。 6.1 設計。 N−およびC末端の両方にシステイン残基を有するパーダキシ ン断片のジアステレオマーの下記の環状誘導体を合成した: N−およびC末端の両方にシステイン残基を有する異なるアミノ酸残基のジア ステレオマーの下記の環状誘導体を合成した: 6.2 環状ジアステレオマーの合成。 ペプチドのNおよびC末端の両方にシ ステイン残基を有する、環状ペプチドは、実験方法、セクション(ii)に記載さ れたように固相法により合成した。HF切断およびRP−HPLC精製後、PB S(pH7.3)中に低濃度でペプチドを可 溶化して、12時間後に環化を終了した。この環状ペプチドは、RP−HPLC でさらに精製して、アミノ酸分析に付してその組成を確認し、SDS−PAGE によりそのモノマー状態を確認した。 6.3 抗菌活性および溶血活性。 ペプチド86〜88は、大腸菌(E.coli )と巨大菌(B.megaterium)、およびhRBCに対して試験した。表8の結果 は、3つ全ての環状パーダキシン由来ジアステレオマーが抗菌性で非溶血性であ ることを示している: 例7.束になったLys/Leuペプチドジアステレオマーの合成および生物学 的活性。 7.1 設計。 鋳型としてペプチド23を、そしてモノマーとしてC末端に追 加のシステイン残基を有するペプチド23または24(それぞれ、23Cおよび 24C)を使用して、下記の束配列を生成した: 7.2 合成。 鋳型結合ジアステレオマーを生成するために、1:1モル比の DCCとブロモ酢酸をDMSO中で25℃で1時間反応させた。鋳型(ペプチド 23)を反応混合物に加えて、12時間撹拌し、次にDMSOを凍結乾燥した。 残ったブロモ酢酸を無水エーテルで抽出した。次に、過剰のC末端にシステイン 残基を有するジアステレオマー23Cおよび24Cと鋳型をPBS(pH7.3 )中で25℃で1時間反応させた。鋳型結合ジアステレオマー92および93は 、RP−HPLCでさらに精製し、SDS−PAGEで試験してその凝集状態を 確認した。 7.3 抗菌活性および溶血活性。 鋳型結合ジアステレオマー92および93 は、大腸菌(E.coli)と巨大菌(B.megaterium)、およびhRBCに対して試 験した。表9の結果は、両方の束配列が抗菌性で非溶血性であることを示してい る: 例8.親水性Lys/Leu 12量体ペプチドジアステレオマーの混合物の合 成および生物学的活性。 ペプチドは、上記実験方法、セクション(ii)に記載 されたように、固相法により合成した。各カップリング工程で、各1当量のリジ ン、ロイシンおよびD−ロイシンからなる混合物を反応物に加えた。合成により 、312個の異なるペプチドの混合物が生じた。HF切断後、親水性ペプチドを2 回蒸留水(ddw)で抽出して凍結乾燥した。 Lys/Leu 12量体ペプチドジアステレオマーの親水性混合物は、大腸 菌(E.coli)D21(MIC:15μg/ml)と巨大菌(B.megaterium)Bm1 1 D21(MIC:3μg/ml)、およびhRBC(100μMで溶血0%)に 対して試験した。予想されるように、この親水性混合物は、抗菌活性があるが、 非溶血性であった。 例9.Lys/Leu/D−Leuランダムコポリマーの合成および生物学的活 性。 異なるサイズのポリマーのジアステレオマーを生成するために、開始剤の 遊離アミノ酸よりも過剰のN−カルボキシ無水物残基をDMF中で25℃で4時 間重合させた(カッチャルスキー(Katchalski)とセーラ(Sela)、1958) 。異なる比のリジン、ロイシンおよびD−ロイシンからなるポリマーは、異なる 比のリジン−N−カルボキシ無水物、ロイシン−N−カルボキシ無水物およびD −ロイシン−N−カルボキシ無水物を使用して生成した。このような3種のポリ マーおよびその抗菌活性と溶血活性は、表10に示される。 例10.ジアステレオマーの抗真菌活性 以下のように、100μLの最終容量 にして、滅菌96ウェルプレート(ヌンク(Nunc)F96マイクロタイタープレ ート)中でパーダキシン由来ペプチド1および16(上記例1を参照のこと)の 抗真菌活性を試験した:培地(サブロー(S abouraud's)グルコースブロス培地)中に1×106コロニー形成単位(CFU )/mlの濃度で真菌を含有する50マイクロリットルの懸濁液を、水に連続2倍 希釈したペプチドを含有する50μLの水に加えた。増殖の阻害は、30℃で4 8時間のインキュベーション時間の後に、マイクロプレート(Microplate)自動 リーダーE1309(バイオテックインストラメンツ(Bio-tek Instruments) )で492nmの吸光度を測定することにより求めた。抗真菌活性は、最小阻止濃 度(MIC)(48時間のインキュベーション後、増殖の100%阻害が観察さ れた濃度)として表した。使用した真菌は、カンジダアルビカンス(Candida al bicans)(IP886−65)とクリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptoco ccus neoformans)(IP960−67)とした。表11に示されるように、ペ プチド1および16の両方とも抗真菌活性を示した。 例11.ジアステレオマーの抗癌活性。 Lys/Leuジアステレオマー23 および24(上記例3を参照のこと)の抗癌活性は、マウス腺癌に対して試験し た。ダルベッコー修飾イーグル培地で96ウェルマイクロタイタープレートに5 〜10000個/ウェルで細胞を接種した。細胞の付着後、20μlの標準生理 食塩水中の希釈ペプチド溶液をウェルに移して、20〜150μMの最終濃度範 囲とした。ペプチドと共に1時間のインキュベーション後、癌細胞の生存力は、 トリパンブルー(Trypan blue)(0.1%、w/v)生命染色測定法により測 定した。対 照実験では、ペプチド溶媒を単独で細胞に加えた。抗癌活性は、最小阻止濃度( MIC)(1時間のインキュベーション後に増殖の100%阻害が観察された濃 度)として表した。表12の結果は、両方のペプチドが、悪性細胞に対して活性 であることを示している。例12.リーシュマニアメキシカーナ(Leishmania mexicana)に対するジアス テレオマーの活性。 メリチン由来ジアステレオマーペプチド20(上記例2を 参照のこと)およびLeu/Lysジアステレオマーペプチド23(上記例3を 参照のこと)はリーシュマニア(Leishmania)に対して試験した。測定されるリ ーシュマニアメキシカーナ(Leishmania mexicana)NR株のプロマスティゴー ト(promastigotes)は、10%ウシ胎児血清を補足したRPMI1640培地 で27℃で培養した。寄生体は、1200×gで4℃で10分間の遠心分離によ り回収して、PBS(50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7) で2回洗浄した。洗浄したプロマスティゴートは、血球計で計測し、1×106 寄生体/mlに調整した。この懸濁液のアリコートは、100μlの最終容量で、 種々の濃度のジアステレオマーの非存在下または存在下で26℃で24時間のイ ンキュベーション後に生存(運動)細胞を計測することにより測定した。抗リー シュマニア(Leishmania)活性は、最小阻止濃度(MIC)(24時間のインキ ュベーション後100%死滅が観察された濃度)として表した。ペプチド23で はMICは17μMであり、ペプチド20ではMICは32μMであることが判 った。 例13.ジアステレオマー23の抗ウイルス活性 センダイウイルス (Z株)は、10〜11日齢の孵化鶏卵の尿膜包で増殖させ、注入の48時間後 に回収して精製した。このウイルスは、160mM NaCl、20mM トリシン (pH7.4)からなる緩衝液に再懸濁して、−70℃で保存した。ウイルスの 血球凝集活性は、血球凝集単位(HAU)で測定した。1マイクロリットルは、 〜60000HAUを含んでいた。新鮮ヒト血液を血液銀行から入手して、4℃ で1ヶ月まで保存した。使用前に、赤血球をPBS(pH7.2)で2回洗浄し 、同じ緩衝液で目的濃度(%、v/v)まで希釈した。ビリオン、赤血球および ペプチドを異なる順の添加および種々の量で混合した。最終インキュベーション は、常に37℃で60分とし、次いで5700gで10分間遠心分離して無傷の 細胞を取り出した。全ての場合に二重測定試料を使用して、各試料の上清から2 つのアリコートをとって96ウェルプレートの2つのウェルに入れた。ヘモグロ ビン放出の量を、540nmのELISAプレートリーダーでウェルの吸光度を測 定することによりモニターした。抗ウイルス活性は、最小阻止濃度(MIC)( インキュベーション後、ヘモグロビンの放出が観察されなかった濃度)として表 した。Lys/Leuジアステレオマーペプチド23ではMICは80μMであ ることが判った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 33/02 C07K 7/52 C07K 7/52 A61K 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY ,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM ,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E S,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU,ID ,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ, LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT ,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL, TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,V N,YU,ZW

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.病原性細胞(体内では自然に存在せず、かつ病原性生物および悪性細胞を含 む細胞)に対する細胞溶解活性を有すること;および非溶血性であること、すな わち、赤血球に対する細胞溶解作用がないか、または該細胞溶解活性を表す濃度 よりも実質的に高い濃度で赤血球に対する細胞溶解作用を有すること、により表 される選択的細胞溶解活性を有する、ペプチド、束になったペプチドの複合体、 ペプチドもしくはランダムペプチドコポリマーの混合物から選択される非溶血性 細胞溶解性物質であって、該非溶血性細胞溶解性物質は: (1)+1より大きな正味の正電荷を有し、L−アミノ酸残基とD−アミノ酸残 基の両方を有するか、またはL−アミノ酸残基とD−アミノ酸残基の1つまたは 両方を有し、αらせん破壊部分を含むペプチドの環状誘導体; (2)+1より大きな正味の正電荷を有する、L−アミノ酸残基とD−アミノ酸 残基の両方を有し、L−アミノ酸残基のみを有する対応するアミノ酸配列は自然 には存在しないようなアミノ酸の配列を有するペプチド、およびその環状誘導体 ; (3)各ペプチドが、+1より大きな正味の正電荷を有し、L−アミノ酸残基と D−アミノ酸残基の両方を有するか、またはL−アミノ酸残基とD−アミノ酸残 基の1つまたは両方を有し、αらせん破壊部分を含む、複数の2つまたはそれ以 上の非溶血性細胞溶解性ペプチド、またはこれらの環状誘導体(該ペプチドは、 各ペプチドに共有結合したリンカー分子を使用して束になっている)、からなる 複合体; (4)各ペプチドが、+1より大きな正味の正電荷を有し、L−アミノ酸残基と D−アミノ酸残基の両方を有するか、またはL−アミノ酸残基とD−アミノ酸残 基の1つまたは両方を有し、αらせん破壊部分を含む、複数の2つまたはそれ以 上の非溶血性細胞溶解性ペプチド、またはこれらの環状誘導体、からなる混合物 ;および (5)異なる比の疎水性、正に荷電した、およびD−アミノ酸からなる ランダムコポリマー、 よりなる群から選択される、上記物質。 2.請求の範囲第1項(1)記載の環状ペプチドであって、D−アミノ酸残基と L−アミノ酸残基は、L−アミノ酸残基のみまたはD−アミノ酸残基のみからな りかつ該ペプチドと同じアミノ酸配列を有する均一な非環式ペプチドが、αらせ ん配置を有しかつ種々の細胞に対して広い細胞溶解活性スペクトルを有するよう な配列を有する、上記ペプチド。 3.パーダキシンもしくはメリチンまたはこれらの断片から誘導される環状ジア ステレオ異性体である、請求の範囲第2項に記載の環状ペプチド。 4.+1より大きい正味の正電荷は、本来のアミノ酸組成によるか、または遊離 カルボキシル基の中和、または正に荷電したアミノ酸残基および/または正に荷 電した化学基の付加による、請求の範囲第3項に記載の環状ペプチド。 5.N−末端にLys残基が付加されているかおよび/またはC−末端にアミノ エチルアミノ基が付加されている、パーダキシンまたはその断片の環状ジアステ レオ異性体から選択される、請求の範囲第4項に記載の環状ペプチド。 6.配列: 86.以下の配列の環状K1[D]P71819[1−22]−par: 87.以下の配列の環状K12[D]P71819[1−22]−par: 88.以下の配列の環状K123[D]P71819[1−22]−par を有する、本明細書においてペプチド86〜88と呼ぶ環状パーダキシン由来ペ プチドから選択される、請求の範囲第5項に記載の環状ペプチド。 7.L−アミノ酸残基とD−アミノ酸残基の両方を有し、L−アミノ酸残基のみ を有する対応するアミノ酸配列は自然には存在しないようなアミノ酸の配列を有 する、請求の範囲第1項(2)に記載のペプチド。 8.請求の範囲第7項に記載のペプチドであって、 (a)種々の比の、少なくとも1つの疎水性アミノ酸と少なくとも1つの正に荷 電したアミノ酸よりなり、そしてその配列において、少なくとも1つのアミノ酸 残基がD−アミノ酸である、非天然合成ペプチドであること; (b)このペプチドが、+1より大きな正味の正電荷を有すること;および (c)正に荷電したアミノ酸に対する疎水性アミノ酸の比は、このペプチドが病 原性細胞に対して細胞溶解性ではあるが、赤血球の細胞溶解は引き起こさないよ うな比であること、 という特徴を有する、上記ペプチド 9.正に荷電したアミノ酸は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンから選択さ れ、疎水性アミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、グリシン、アラニン、バリン 、フェニルアラニン、プロリン、チロシンおよびトリプトファンから選択される 、請求の範囲第8項に記載のペプチド。 10.請求の範囲第9項に記載のペプチドであって、+1より大きい正味の正電 荷は、アミノ酸組成によるかまたは正に荷電した化学基の付加により、または疎 水性がセリン、トレオニン、メチオニン、アスパラギ ン、グルタミンおよびシステインのような極性アミノ酸の付加により、低下して いる上記ペプチド。 11.疎水性アミノ酸は、ロイシン、アラニンまたはバリンであり、正に荷電し たアミノ酸はリジンである、少なくとも6個のアミノ酸残基を有する、請求の範 囲第10項に記載のペプチド。 12.ロイシンとリジンからなる6量体、8量体または12量体のジアステレオ 異性体であり、その配列の少なくとも3分の1はD−アミノ酸からなるが、本明 細書において23と呼ぶペプチド: は除く、請求の範囲第11項に記載のペプチド。 13.配列: の本明細書において24〜29(それぞれ、配列番号24〜29)と呼ぶペプチ ドから選択される、請求の範囲第12項記載のLeu/Lysジアステレオ異性 体。 14.配列: の本明細書において92〜95と呼ぶペプチドから選択される、請求の範囲第7 項〜第13項までのいずれか1項に記載の非天然の合成ペプチドの環状誘導体。 15.各ペプチドに共有結合したリンカー分子を介して束になった、請求の範囲 第1〜第14項までのいずれか1項に記載の複数の2つまたはそれ以上の非溶血 性細胞溶解性ペプチドからなる、請求の範囲第1項(3)に記載の束になったペ プチドの複合体。 16.束は2つまたはそれ以上(好ましくは5個)の分子の同じペプチドまたは 異なるペプチドからなり、リンカーは前記請求の範囲のいずれか1項に記載のペ プチドまたは常用されるリンカーである、請求の範囲第15項記載の複合体。 17.本明細書において96および97と呼ぶ束になったLys/Leuジアス テレオ異性体: 96.以下の配列の([D]−L3,4,8,10−K48C)5[D]−L3,4,8,10− K4897.以下の配列の([D]−L3,4,8,10−K57C)5[D]−L3,4,8,10− K49から選択される、請求の範囲第16項に記載の複合体。 18.ペプチドは請求の範囲第1項〜第14項までのいずれか1項で定義される ものである、複数の2つまたはそれ以上の非溶血性細胞溶解性ペプチドからなる 、請求の範囲第1項(4)に記載の混合物。 19.Lys/Leuの12量体ペプチドジアステレオ異性体の混合物を含む、 請求の範囲第18項に記載の混合物。 20.異なる比の疎水性、正に荷電した、およびD−アミノ酸からなる、請求の 範囲第1項(5)に記載の非溶血性細胞溶解性ランダムコポリマー。 21.1:1:1、2:1:1または3:1:1(モル)の比のリジン、ロイシ ンおよびD−ロイシンからなる、請求の範囲第20項に記載の非溶血性細胞溶解 性ランダムコポリマー。 22.請求の範囲第1項〜第21項までのいずれか1項に記載の非溶血性細胞溶 解性物質と薬剤学的に許容される担体とを含む薬剤組成物。 23.病原性生物により引き起こされる感染症の治療のための、請求の範囲第2 2項に記載の薬剤組成物。 24.病原性生物は、細菌、真菌、原生動物、マイコプラズマおよびウイルスか ら選択される、請求の範囲第23項に記載の薬剤組成物。 25.病原性生物は、細菌である、請求の範囲第24項に記載の薬剤組成物。 26.癌の治療のための、請求の範囲第22項に記載の薬剤組成物。
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