JP2001512219A - クラッチ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 シフト歯（１９）を有するスリーブ（１７）と、スリーブ（１７）の両側に配置され、ロック歯（３０、３１）並びに摩擦面（２４、２５）を有してスリーブ（１７）に対して相対的に一定限の回転角だけ回動可能である２つのシンクロナイザーリング（２８、２９）と、シンクロナイザーリング（２８、２９）と協働し、連結歯（２２、２３）並びに対応摩擦面（２６、２７）を有している２つのクラッチ体（２０、２１）とから構成されるクラッチであって、スリーブ（１７）は常に１つの変速機部材（３）と相対回転不能に結合されていて、シフト状態ではシフト歯（１９）並びに連結歯（２２、２３）を介してクラッチ体（２０、２１）の一方と噛み合い式に連結される形式のものを対象とする。外周に沿って案内される特に幅の小さなスリーブ（１７）の場合に、スリーブ（１７）とシンクロナイザーリング（２８、２９）との間に一定限の回転角を可能にするために、シンクロナイザーリング（２８、２９）が周面に分配された多くの突起（３２、３３）を有しており、これらの突起は外周部沿いに案内されるスリーブ（１７）の溝（４４）に遊びをもって嵌まって一定限の回転角を有しており、一方のシンクロナイザーリング（２８）のいくつかの突起（３２）は他方のシンクロナイザーリング（２９）の範囲内に達する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 本発明は、請求項１中の上位概念に示す構成のクラッチに関する。

【０００２】 トラクションフォースの遮断下で切り替えられる変速機、即ち、入力軸が切り
替え過程でクラッチによって原動機から遮断される変速機においてはそのつどの
変速段を冒頭に述べた形式のクラッチを介して切り替える。その際にはスリーブ
のシフト歯が例えば歯車又は変速機ケーシングのような変速機部材に固定された
１つのクラッチ体の連結歯に押し込まれる。トルクはシフト状態では１つの変速
機部材からクラッチ体、連結歯、シフト歯、スリーブ及びスリーブガイドを経て
別の変速機部材、例えば歯車又は回転軸へ伝達されるか又は変速機ケーシングに
受け止められる。シフトされた変速段は変速比、ひいては変速機の入力軸と出力
軸との間の回転数比を決定する。連結されない方の変速機部材、例えば自由回転
する常時噛み合い歯車、他の変速段は、シフトされた変速機部材に対して固有の
変速比に相応して生ずる回転数差で回転する。１つの変速段から別の変速段へ切
り替わる際には、スリーブのシフト歯がシフトされるクラッチ体の連結歯に噛み
合う前に、連結し合う部分がほぼ等しい回転数に達する必要がある。

【０００３】 このためには同期装置が役立てられる。同期装置は主として摩擦面、例えば摩
擦円錐面、クラッチ体、対応摩擦面、例えば対応円錐面、ロック歯を有するシン
クロナイザーリングから構成されている。シンクロナイザーリングはスリーブと
共に回転するが、２つのストッパ間でこれらストッパに対して相対的に一定限の
回転角だけ回動することができ、これによって１つのロック機構、例えばシンク
ロナイザーリングのロック歯がロック位置を占めることになる。

【０００４】 スリーブをシフトすべきクラッチ体への方向で移動させると、シンクロナイザ
イーリングの対応円錐面が可撓な係合部材を介してクラッチ体の摩擦円錐面に圧
着される。その際シンクロナイザーリングはスリーブに対して相対的に回動し、
シフト歯の端部の斜面がロック歯の相応のロック面に当たる。これによってスラ
スト力がシンクロナイザーリング及び摩擦面へ及ぼされる。同時にシフト力が斜
面を介して戻し力をシンクロナイザーリングへ及ぼす。この戻し力は連結部分の
同期回転に伴って摩擦面に働く周方向力を上回り、シンクロナイザーリングを中
間位置、即ちスリーブを途中を飛ばして移動できる位置へ動かす。

【０００５】 この種のクラッチは既に公知であり、とりわけヨーロッパ特許公報ＥＰ−０１
８４０７７Ｂ１の減速装置における変速機用として知られている。スリーブが内
側のスリーブ保持体上に摺動可能に配置されており、シンクロナイザーリングが
スリーブ保持体に対して相対的にストッパによって限定された回転角だけ回動可
能に軸方向で案内されている。スリーブ保持体とシンクロナイザーリングとの間
には接線ばねが配置されていて、中立位置のこれら両方の部材を回転方向に抗し
てストッパに圧着する。

【０００６】 ドイツ国特許公報ＤＥ−３４４４５６２Ａ１によれば、ロック歯を有してない
シンクロナイザーリングを備えた遊星歯車段用のクラッチが知られている。この
シンクロナイザーリングはその駆動歯でほぼ軸方向全長にわたってスリーブのシ
フト歯に噛み合い、一定限の相対回転は許されない。

【０００７】 本発明の課題は、冒頭に述べた形式のクラッチにおいて、スリーブがその外周
沿いに案内されていて、極めて細く製作されている場合においても、ロックの同
期化を可能にすることである。この課題を本発明は請求項１の特徴事項に示す構
成によって解決した。

【０００８】 本発明の場合、シンクロナイザーリングはその突起でスリーブの溝に嵌まり、
それもシンクロナイザーリングとスリーブとの間に一定限の回転角が許容される
ような遊びをもって嵌まる。これによってシンクロナイザーリング上のロック歯
がロック位置を占めることができる。スリーブを、細く製作されている場合特に
、一方のシフト位置において他方のシンクロナイザーリングの突起との噛み合い
状態に保つために、外周面に一様に分配された突起の内のいくつかが他方のシン
クロナイザーリング側へ長くされていて、両方のシンクロナイザーリング相互間
の間隙を越えて他方のシンクロナイザーリング範囲内へ入り込む。

【０００９】 両方のシンクロナイザーリングの突起は常にスリーブの同じ溝に嵌まり、一方
のシンクロナイザーリングの突起は他方のシンクロナイザーリングの突起が短く
されているのと同じ値だけ長くされている。

【００１０】 溝に嵌まり合う突起が突き当たらないで、周方向の幅の一部にわたって長くさ
れていて、他方の突起の同様に長くされた部分に対する接触面を有している実施
態様も可能である。このような連結によれば、一方のシクロナイザーリングのロ
ック歯は、他方のシンクロナイザーリングのロック歯がシフトの際に道を空け次
第、ロック位置へ動かされることになる。これによってスリーブは１つのシフト
位置から別のシフト位置へ当該シンクロナイザーリングのロック歯に当たること
なく動くことができる。

【００１１】 連結部材がシンクロナイザーリングに機械的に不動に結合されているので、例
えばばね部材の場合のような同期機構のバウンド又は締付けが発生することはな
い。

【００１２】 シンクロナイザーリングは、スリーブが例えばリングばねのような係合部材を
介して軸方向でシンクロナイザーリングへ作用してその摩擦円錐面をクラッチ体
の対応円錐面に圧着させることによってロック位置を占める。次いで、周方向に
働く摩擦力によってシンクロナイザーリングは一定限の回転角だけ回動され、そ
の結果、連結すべき変速機部材の同期回転数までスリーブのシフト行程はロック
歯によってロックされる。リングばねは軸方向で極めて細く製作されており、従
って長くされた突起は単に小さな間隙だけをブリッジすればよい。

【００１３】 本発明の別の実施態様によれば、シンクロナイザーリングは、シンクロナイザ
ーリングの突起相互間又はシンクロナイザーリングの突起とスリーブの溝との間
で働く接線ばねによって、同期化の終了までロック位置に保持される。従って、
リングばねは省略され、シンクロナイザーリング相互間の中間スペースを最小限
に節減することができる。また、シンクロナイザーリングは単に一方向にのみ回
動すればよく、従って半分の回転角で済む。ロック歯も片側だけ面取りすればよ
く、相応に強化できることになる。

【００１４】 図面及び請求の範囲には多くの特徴的事項が示されている。これらの特徴事項
は課題解決の意味で効果的に別の組み合わせも可能である。

【００１５】 クラッチ１は、内歯車３、遊星歯車４及び太陽歯車７から成る遊星歯車段２を
切り替えるために使われる。遊星歯車４は遊星キャリア８内でころ軸受６を介し
て遊星ピン５上に支承されている。太陽歯車７は図示してない入力軸に結合され
ており、変速機ケーシング９内にころ軸受１０を介して支承された遊星キャリア
８はやはり図示してない出力軸に結合されている。

【００１６】 クラッチ１は図示してないシフトフォーク用の溝１８を有するスリーブ１７を
備えている。スリーブ１７はシフト歯１９も有している。図示の状態ではシフト
歯１９がシンクロナイザーリング２９のロック歯３１によってクラッチ体２１の
連結歯２３に噛み合っている。

【００１７】 スリーブ１７は駆動歯１１によって内歯車３に相対回転不能に結合されており
、内歯車３は同時にスリーブ１７の案内としても役立っている。軸方向でスリー
ブ１７は内歯車３内で止めリング１５によって位置固定されている。クラッチ体
２１は駆動歯１３及び止めリング１６を介して変速機ケーシング９内に位置固定
されている。これによって、図示のシフト状態では内歯車３がスリーブ１７及び
クラッチ体２１を介して変速機ケーシング９に連結されている。

【００１８】 クラッチ１には連結歯２２を有する別のクラッチ体２０も備えており、このク
ラッチ体２０は駆動歯１２及び止めリング１４を介して遊星キャリア８に固定さ
れていてシンクロナイザーリング２８と協働する。スリーブ１７が第１図の位置
から右へ移動されると、別の変速段もしくは歯車組へ切り替えられて内歯車３が
遊星キャリア８と一緒に回転する。

【００１９】 シンクロナイザーリング２８、２９は周面にスリーブ１７の溝４４に嵌まる多
くの、通例では６つの突起３２、３３を有している。溝４４の幅は突起３２、３
３よりも大きく、従って、スリーブ１７とシンクロナイザーリング２８、２９と
の相互間の一定限の回転角が許容される。両方のシンクロナイザーリング２８、
２９の突起３２、３３はスリーブ１７の同じ溝４４に嵌まり、スリーブのストッ
パ３８、３９と側面３６、３７が協働する。

【００２０】 突起３２、３３のいくつかは軸方向で両端範囲が短くされているか長くされて
おり、一方のシンクロナイザーリング２８の短い突起３２が他方のシンクロナイ
ザーリング２９の長い突起３３と協働し、また逆の長短関係でも協働し、長い突
起は対置するシンクロナイザーリング範囲内へ入り込んでシンクロナイザーリン
グ相互間の空隙をブリッジする。このようにして、幅の小さなスリーブ１７の場
合並びにすべてのシフト位置においても突起３２、３３が溝４４に嵌まったまま
となる。

【００２１】 図１から図３に示す実施例の場合、シンクロナイザーリング２８、２９相互間
に１つのリングばね４０が設けられており、このリングばねはスリーブ１７の中
立位置の時にスリーブの係合溝４１に嵌まる。スリーブ１７が中立位置から動か
されると、このリングばね４０がシンクロナイザーリング２８、２９へスラスト
力を及ぼして摩擦円錐面２４、２５及び対応円錐面２６、２７を介して周方向力
を生ぜしめ、この周方向力がロック歯３０、３１をロック位置へ動かす。中立位
置以外のシフト位置用に係合溝を設けてもよい。

【００２２】 図４から図６までに示す実施例の場合、接線ばね４２がロック歯３０、３１を
ロック位置へ動かす。各シンクロナイザーリング２８、２９いずれにも周方向で
一様に分配された多くの接線ばね４２が使われており、この接線ばねはスリーブ
１７と突起３２、３３との間に配置され、ガイドスリーブ４３を介して突起３２
、３３の孔４５内に案内されている。

【００２３】 図７に示す実施例においては両方のシンクロナイザーリング２８、２９の突起
３２、３３がその全幅の一部のみ長くされ、長くされた範囲に接触面３４、３５
を有しており、この接触面が互いに支え合う。突起３２、３３の側面３６、３７
はストッパ３８、３９相互間の一定限の回動を可能にする。突起３２、３３を介
してシンクロナイザーリング２８、２９が互いに連結され、一方のシンクロナイ
ザーリング２９はシフト歯１９の進入路の開放又は閉鎖次第で他方のシンクロナ
イザーリング２８のロック歯３０をロック位置へ回動させる。

【００２４】 スリーブ１７が図示のシフト位置（図１）から右へ動かされると、シフト歯１
９がシンクロナイザーリング２８のロック歯３０に当たる。これによってシンク
ロナイザーリング２８の摩擦円錐面２４が対応円錐面２６に圧着される。シフト
歯１９及びロック歯３０の端部の面取りによって（図２）、周方向の分力が与え
られ、この分力はスリーブ１７とクラッチ体２０との間に同期回転が生じ次第シ
ンクロナイザーリング２８をロック位置外へ回動させる。同期回転に伴ってシフ
ト歯１９はクラッチ体２０の連結歯２２に噛み合い、かくして内歯車３は遊星キ
ャリア８と連結されることになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明のクラッチの部分縦断面図。

【図２】 図１中のII−II線により円筒区分を部分的に展開して示した図。

【図３】 図２中のIII−III線による部分横断面図。

【図４】 接線ばねを有する実施例を図１から図３までと同様に示した断面図。

【図５】 接線ばねを有する実施例を図１から図３までと同様に示した断面図。

【図６】 接線ばねを有する実施例を図１から図３までと同様に示した断面図。

【図７】 図５の例に対して突起形状の異なる実施例を示す図。

【符号の説明】

１ クラッチ ２ 遊星歯車段 ３ 内歯車 ４ 遊星歯車 ５ 遊星ピン ６ ころ軸受 ７ 太陽歯車 ８ 遊星キャリア ９ 変速機ケーシング １０ ころ軸受 １１ 駆動歯 １２ 駆動歯 １３ 駆動歯 １４ 止めリング １５ 止めリング １６ 止めリング １７ スリーブ １８ 溝 １９ シフト歯 ２０ クラッチ体 ２１ クラッチ体 ２２ 連結歯 ２３ 連結歯 ２４ 摩擦円錐面 ２５ 摩擦円錐面 ２６ 対応円錐面 ２７ 対応円錐面 ２８ シンクロナイザーリング ２９ シンクロナイザーリング ３０ ロック歯 ３１ ロック歯 ３２ 突起 ３３ 突起 ３４ 接触面 ３５ 接触面 ３６ 側面 ３７ 側面 ３８ ストッパ ３９ ストッパ ４０ リングばね ４１ 係合溝 ４２ 接線ばね ４３ ガイドスリーブ ４４ 溝 ４５ 孔

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 シュテファン、レナー ドイツ連邦共和国ボドマン‐ルートビッヒ スハーフェン、イム、ブリール、２ Ｆターム(参考） 3J056 AA13 AA34 CA03 GA05 【要約の続き】 の溝（４４）に遊びをもって嵌まって一定限の回転角を 有しており、一方のシンクロナイザーリング（２８）の いくつかの突起（３２）は他方のシンクロナイザーリン グ（２９）の範囲内に達する。

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シフト歯（１９）を有するスリーブ（１７）と、スリーブ（１７）の両側に配
   置され、ロック歯（３０、３１）並びに摩擦面（２４、２５）を有してスリーブ
   （１７）に対して相対的に一定限の回転角だけ回動可能である２つのシンクロナ
   イザーリング（２８、２９）と、シンクロナイザーリング（２８、２９）と協働
   し、連結歯（２２、２３）並びに対応摩擦面（２６、２７）を有している２つの
   クラッチ体（２０、２１）と、を備えたクラッチであって、スリーブ（１７）が
   、常に１つの変速機部材（３）と相対回転不能に結合されていて、シフト状態で
   はシフト歯（１９）並びに連結歯（２２、２３）を介してクラッチ体（２０、２
   １）の一方と噛み合い式に連結される形式のものにおいて、 シンクロナイザーリング（２８、２９）は周面に分配された多くの突起（３２
   、３３）を有しており、これらの突起は外周に沿って案内されるスリーブ（１７
   ）の溝（４４）に遊びをもって嵌まって一定限の回転角を有しており、一方のシ
   ンクロナイザーリング（２８）のいくつかの突起（３２）は他方のシンクロナイ
   ザーリング（２９）の範囲内に達していることを特徴とする、クラッチ。
2. 【請求項２】 両方のシンクロナイザーリング（２８、２９）の突起（３２、３３）は、スリ
   ーブ（１７）の同じ溝（４４）に嵌まり、互いに向き合う端部側が交互に短くか
   長くされていることを特徴とする、請求項１に記載のクラッチ。
3. 【請求項３】 長くされている突起（３２、３３）の範囲に接線ばね（４２）が配置されてい
   ることを特徴とする、請求項２に記載のクラッチ。
4. 【請求項４】 両方のシンクロナイザーリング（２８、２９）の突起（３２、３３）はスリー
   ブ（１７）の同じ溝（４４）に嵌まって互いに連結され、一方の側がシフト状態
   の時に他方のシフトされてない側のシンクロナイザーリング（２８）のロック歯
   （３０）がロック位置を占めることを特徴とする、請求項１から請求項３までの
   いずれか１項に記載のクラッチ。
5. 【請求項５】 一方のシンクロナイザーリング（２８、２９）の突起（３２、３３）がその全
   幅の一部だけ軸方向で他方のシンクロナイザーリング（２８、２９）の突起（３
   ２、３３）の範囲内にまで延びていて、この範囲内に接触面（３４、３５）を有
   していることを特徴とする、請求項４に記載のクラッチ。
6. 【請求項６】 シンクロナイザーリング（２８、２９）相互間に１つのリングばねが配置され
   ており、リングばねはスリーブ（１７）の中立位置でスリーブの１つの溝に係合
   し、長くされている突起（３２、３３）によって外周側を覆われることを特徴と
   する、請求項１、請求項２又は請求項５に記載のクラッチ。
7. 【請求項７】 シンクロナイザーリング（２８、２９）が単に一方向でのみロック位置へ回動
   可能なように一定限の回転角が設定されていることを特徴とする、請求項１から
   請求項６までのいずれか１項に記載のクラッチ。