JP2001357559A - 光情報記録媒体用反射層、光情報記録媒体及び光情報記録媒体の反射層用スパッタリングターゲット - Google Patents

光情報記録媒体用反射層、光情報記録媒体及び光情報記録媒体の反射層用スパッタリングターゲット

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JP2001357559A JP2000402557A JP2000402557A JP2001357559A JP 2001357559 A JP2001357559 A JP 2001357559A JP 2000402557 A JP2000402557 A JP 2000402557A JP 2000402557 A JP2000402557 A JP 2000402557A JP 2001357559 A JP2001357559 A JP 2001357559A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高反射率を有することは勿論のこと、特に耐
硫化性に優れており、更にはディスク基板(ポリカーボ
ネート基板等)及びディスクを構成する他の薄膜に対す
る密着性も良好な新規な光情報記録媒体用反射層を提供
する。 【解決手段】 Znを1.5原子%以上含有するAg基
合金で構成されている光情報記録媒体用反射層である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐硫化性、更には
ディスク基板(ポリカーボネート基板等)及びディスク
を構成する他の薄膜に対する密着性(以下、「基板等に
対する密着性」で代表させる場合がある)にも優れた光
情報記録媒体用反射層(光ディスク用反射層)、光情報
記録媒体及び光情報記録媒体の反射層用スパッタリング
ターゲットに関するものである。本発明の反射層は高い
反射率をも有している為、CD−RW、DVD−RA
M、DVD−RW、DVD+RW等の相変化型光ディス
ク(繰返し記録・再生が可能な光ディスク);CD−
R、DVD−R等の追記型光ディスク等に好適に用いら
れる。
【0002】
【従来の技術】光ディスクには幾つかの種類があるが、
ディスクに直接記録することができる記録可能領域を備
えた光記録媒体の代表例としては、相変化型ディスク及
び追記型ディスクが挙げられる。
【0003】このうち相変化型の光ディスクは、レーザ
ー光のパワーと照射時間をコントロールし、記録薄膜層
に結晶相と非晶質相の2相状態を形成することによりデ
ータを記録し、両相の反射率変化を検出することにより
データの検出(再生)を行うものである。この記録再生
方式では繰返し記録・再生が可能であり、かかる方式を
採用する光ディスクとしては、CD−RW、DVD−R
AM、DVD−RW、DVD+RW等が挙げられる。
【0004】上記相変化型の光ディスクは、基板と、該
基板上に誘電体薄膜層、記録薄膜層、反射薄膜層、及び
保護膜層等の各種薄膜層が積層してなるものである。こ
のうち反射薄膜層は放熱薄膜層を兼ねていることから、
当該反射薄膜層用材料には、反射率、熱伝導率、熱衝撃
に対する耐久性、耐食性、基板等に対する密着性等の諸
特性が良好であることが要求されている。特に高密度記
録においては、記録密度向上の観点から、反射放熱層の
熱伝導率が大きいことが不可欠である。ところが、かか
る要求特性を満足する反射層用材料は未だ提供されてい
ないのが実情である。
【0005】例えば反射薄膜層材料として汎用されてい
るAl合金は、記録再生に使用されるレーザー波長(7
80nm、650nm)に対し、比較的高い反射率及び
耐食性(化学的耐食性)を有しているが、反射率の点で
は未だ不充分であり、また熱伝導率が低いという欠点も
抱えている。従って、Al合金を反射薄膜層に使用した
のでは、当該反射層に要求される諸特性を具備させるこ
とは困難であり、その結果、ディスクの構造や設計に制
約が生じるという不具合があった。
【0006】そこでAl合金に代わり、Au,Ag,C
uを反射薄膜用材料として使用することが提案されてい
るが、夫々以下に掲げる問題を抱えている。例えば純A
uまたはAuを主成分とする合金では、高反射率、高耐
食性及び高熱伝導率を達成することができるが、Auは
極めて高価であり、実用的でない。一方、純Ag若しく
は純Cu、またはAg若しくはCuを主成分とする合金
は安価であるが、いずれも耐食性に劣るという欠点を抱
えている。また、純CuまたはCuを主成分とする合金
では、耐食性、特に耐酸化性に劣るという問題があり、
その結果、ディスクの信頼性(耐久性)低下を招く恐れ
がある。更に純AgまたはAgを主成分とする合金では
耐食性、なかでも耐硫化性に劣るという問題がある。
【0007】このうち最後に掲げた耐硫化性は、相変化
型、追記型(後記する)のいずれの光ディスクにおいて
も要求される特性である。上記相変化型の光ディスクで
は、誘電体薄膜層と反射薄膜層は直接接する様になって
いる。このうち誘電体薄膜には、一般にZnS−SiO
2膜が使用されている為、反射薄膜層に純AgまたはA
gを主成分とする合金を使用すると、長期間の使用によ
り当該誘電体薄膜中のSと反射薄膜中のAgが界面で反
応してAgSが生成される。その結果、反射薄膜層に要
求される種々の特性が劣化し、最終的にディスクの記録
再生特性が著しく損なわれてしまう。
【0008】また、上記Au,Ag,Cuの各材料を用
いたときには、いずれも基板等に対する密着性に劣ると
いう問題もある。光ディスクの反射放熱層は繰返し記録
に伴い、ヒートサイクルによる熱的衝撃により、当該反
射放熱層の界面と接している他の薄膜と付着力が低下す
る。その結果、実効的な熱伝導の低下や熱伝導のムラが
生じ、最終的にはジッター等が増加し、ディスクの記録
再生特性が著しく劣化する様になってしまう。
【0009】一方、追記型光ディスクは、レーザー光の
パワーにより記録薄膜層(有機色素層)の色素を発熱・
変質させ、グルーブ(基板に予め刻まれている溝)を変
形させることによりデータを記録し、変形箇所の反射率
と未変形箇所の反射率との差を検出することによりデー
タの検出(再生)を行うものである。この記録再生方式
では、一度記録されたデーターが書換えられないこと
(一回限りの記録と繰返し再生)が特徴であり、かかる
方式を採用する光ディスクとしては、CD−R、DVD
−R等が挙げられる。
【0010】そして、前記相変化型ディスクに見られた
のと同様の問題が、追記型ディスクの反射薄膜層におい
ても生じている。
【0011】上記追記型の光ディスクでは、反射薄膜層
用材料として、Au又はAuを主成分とする合金が汎用
されている。これらの材料は、記録再生に使用されるレ
ーザー波長(780nm、650nm)に対し、有機色
素層が存在しても70%以上の高反射率を達成すること
ができる。しかしながらAuは極めて高価であり、コス
ト上昇の主な原因となっている。
【0012】そこで、上記材料に代わり、Ag,Cu,
Alを反射薄膜材料として用いることが提案されてい
る。ところが純Ag、純Cuを主成分とする合金では、
前述の如く耐食性に劣るという欠点がある。また、純A
gまたはAgを主成分とする合金では、耐食性、特に耐
硫化性が問題となる。追記型の光ディスクは相変化型の
光ディスクと異なり、ZnS−SiO2を主成分とする
誘電体薄膜層は存在しないが、有機色素層中にS添加材
料を使用する場合がある。かかる場合には、記録薄膜層
と反射薄膜層が直接接することになるから、当該反射薄
膜中のAgがSと反応して硫化し、その結果、反射率が
低下し、最終的にディスクの記録再生特性が著しく劣化
する恐れがある。また、純Al若しくはAlを主成分と
する合金では反射率が低く、有機色素層が存在すると7
0%以上の高反射率を達成することができないという問
題もある。
【0013】この様に相変化型、追記型のいずれにおい
ても、光ディスクの反射薄膜層には、反射率、熱伝導
率、熱衝撃に対する耐久性、耐食性、及び基板等に対す
る密着性の諸特性に優れることが要求されるにもかかわ
らず、これらの要求特性全てを満足する金属薄膜層は未
だ提供されていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑
みてなされたものであり、その目的は、高反射率を有す
ることは勿論のこと、特に耐硫化性に優れており、更に
はディスク基板(ポリカーボネート基板等)及びディス
クを構成する他の薄膜に対する密着性も良好な新規な光
情報記録媒体用反射層、光情報記録媒体、及び光情報記
録媒体の反射層用スパッタリングターゲットを提供する
ことにある。
【0015】
【課題を解決する為の手段】上記課題を解決し得た本発
明の光情報記録媒体用反射層は、Znを1.5%以上含
有するAg基合金で構成されているところに要旨を有す
るものである。ここで、上記Ag基合金が、更にCu,
Ti,Nd,W,Mo,Sn,およびGeよりなる群か
ら選択される少なくとも1種の元素を合計で0.5〜5
%含有するものは基板等に対する密着性が高めらるので
好ましい態様であり;また、上記Ag基合金が、更にC
u,Ni,Au,Y,およびNdよりなる群から選択さ
れる少なくとも1種の元素を合計で0.5〜3%含有す
るものは反射特性及び耐酸化性が高められるので好まし
い態様である。
【0016】また、上記光情報記録媒体用反射層を備え
た光情報記録媒体、及び上記Ag基合金で構成された光
情報記録媒体の反射層用スパッタリングターゲットも本
発明の範囲内に包含される。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明者らは、光情報記録媒体用
反射層に要求される諸特性のうち、特に耐硫化性、更に
はディスク基板(ポリカーボネート基板等)及びディス
クを構成する他の薄膜に対する密着性をも向上させるべ
く鋭意検討してきた。前述した通り、従来の反射層材料
では、相変化型の光ディスクにおいて耐食性(特に耐硫
化性)の向上を目指してAl合金を;追記型の光ディス
クにおいて、反射率及び耐食性(特に化学的安定性)の
向上を目指して純Auまたは純Agを使用しているが、
所望の特性は未だ得られていないからである。
【0018】具体的には本発明者らは、Agに種々の元
素を添加して作製したAg基合金スパッタリングターゲ
ットを用い、スパッタリング法により種々の成分組成か
らなるAg基合金薄膜を形成し、反射薄膜層としての特
性を評価した。その結果、所定量のZnを含有するAg
基合金薄膜は耐硫化性に極めて優れること;更に上記A
g−Zn合金において、Cu,Ni,Au,Y,及びN
dよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を添
加すると、反射特性及び耐食性(特に耐酸化性)が一層
向上すること;また、上記Ag−Zn合金において、C
u,Ti,Nd,W,Mo,Sn,及びGeよりなる群
から選択される少なくとも1種の元素を添加すると密着
性が著しく向上することを見出し、本発明を完成した。
【0019】一般に反射率は、Agに合金元素を添加す
ると、純Agの場合に比べ、減少する傾向にある。しか
しながら、本発明の如く合金の成分組成や添加量を適切
に調整した場合には、反射率の減少を許容可能範囲内に
制御することができるのみならず、従来に比べ、耐硫化
性や密着性等の諸特性を高水準で達成し得ることができ
たのである。
【0020】以下、本発明の光情報記録媒体用反射層を
構成する要件について説明する。
【0021】まず、本発明の反射層は、Znを1.5%
以上含有するAg基合金で構成されている。即ち、本発
明の最重要ポイントは、Ag基合金にZnを1.5%以
上添加すると耐硫化性が著しく向上することを明らかに
したところにある。
【0022】本発明者らの検討結果によれば、まず、A
g−Zn合金薄膜では、Zn添加量が多いほど耐硫化性
は向上することが明らかになった。詳細にはZn添加量
が0〜1.5%の範囲では、Zn量が多いほど耐硫化性
も向上し、Zn添加による耐硫化性上昇効果が極めて顕
著に見られるが、上記効果はZn添加量が1.5%を超
えると鈍化し始め、5%を超えると殆ど飽和する為、こ
れ以上添加しても経済的に無駄である。但し、反射特性
との関係を考慮するとその上限を5%(より好ましくは
3%)に定めることが好ましい。Ag−Zn合金薄膜の
反射率を調べると、Zn添加量が多いほど反射率は小さ
くなる傾向にあるからである(後記する実施例を参
照)。従って、高い反射率を維持しつつ、更に優れた耐
硫化性も確保する為には、Znの添加量を1.5〜5%
の範囲に制御することが好ましい。
【0023】尚、従来の光情報記録媒体用反射層におい
ても、Ag−Zn基合金を用いた例はある。しかしなが
ら、本発明の如くZnを所定量添加することにより耐硫
化性が高められるという認識までは、いずれの内容を精
査しても全くない。
【0024】例えば特開平10-11799には、光反
射層としてAgを主成分とする光記録媒体が開示されて
いる。但し、当該公報を精査しても、Znは不純物であ
るという認識しかなく、「反射率を低下させない」とい
う大原則に基づき、添加量を定めたに過ぎない。また、
特開平11−154354には、反射放熱層にAg及び
Cuを添加し、更にはZnを添加し得る光記録媒体が開
示されている。上記公報では、Znの添加によりAg−
Cu基反射放熱層の耐食性が改善される旨の記載はある
が、更にもう一歩踏み込んで、本発明の如くZnが耐硫
化性の改善に有効であるという認識までは示唆すらされ
ていない。
【0025】この様に光情報記録媒体の分野において、
耐硫化性向上の目的でZnを添加することが有効である
という知見は従来知られておらず、本発明者らによって
始めて見出されたものであり、この点に本発明の技術的
意義が存在する。
【0026】尚、本発明では、光情報記録媒体用反射層
に要求される基本特性[即ち、反射率及び耐食性(耐酸
化性)]の更なる向上を目的として、更に、Cu,N
i,Au,Y,Ndよりなる群から選択される少なくと
も1種の元素を合計で0.5〜3%(より好ましくは
0.5〜2%)含有することが好ましい。これら元素の
合計添加量が0.5%未満では上記作用が十分発揮され
ず、一方、上記元素の合計添加量が3%を超えると、逆
に当該作用が低下し、光情報記録媒体用反射層としての
性能が劣化下してしまう。
【0027】尚、各元素の好ましい添加量は、上記元素
間で効果発現領域が異なる為、若干相違する。具体的に
は、Cu:0.5〜2%、Ni:0.5〜2%、Au:
0.5〜1.5%、Y:1〜3%、Nd:1〜3%の範
囲内に制御することが推奨される。上記範囲内では、純
Ag薄膜を用いたのと同程度の高反射率を維持できるか
らである。
【0028】尚、上記元素は単独で若しくは2種以上併
用しても良いが、少なくともAuを添加することが推奨
される。Auは添加量が多くなるにつれ、特に耐硫化性
が向上することが実験により明らかになったからであ
る。しかしながらAuは高価であり、多量の添加はコス
ト上昇を招くことを考慮すれば、前述の如く0.5〜
1.5%の範囲内に制御することが好ましく、これによ
り、所望の特性を、最小限の費用で発揮させることがで
きる。
【0029】更に本発明では、基板等に対する密着性の
向上を目的として、上記Ag−Zn基合金において、更
にCu,Ti,Nd,W,Mo,Sn,及びGeよりな
る群から選択される少なくとも1種の元素を合計で0.
5〜3%(より好ましくは0.5〜2%)の範囲で添加
することが好ましい。これら元素の合計添加量が0.5
%未満では上記作用が十分発揮されず、一方、上記元素
の合計添加量が3%を超えると、逆に当該作用が低下
し、光情報記録媒体用反射層としての性能が劣化下して
しまう。
【0030】尚、各元素の好ましい添加量は、上記元素
間で効果発現領域が異なる為、若干相違する。具体的に
は、Cu:0.5〜3%、Ti:0.5〜2.0%、N
d:1.0〜3.0%、W:0.5〜1.0%、Mo:
0.5〜1.0%、Sn:0.5〜2.0%、Ge:
0.5〜3.0%の範囲内に制御することが推奨され
る。
【0031】本発明の光情報記録媒体用反射層は、上記
成分を含有し、残部Agであるが、更に本発明の作用を
損なわない範囲で、上記成分以外の他の成分を添加して
も良い。例えば硬度向上等の特性付与を目的として、P
d,Pt等の貴金属や遷移元素(前述したものを除く)
を積極的に添加しても良い。また、O2,N2等のガス成
分や、溶解原料であるAg−Zn基合金に予め含まれて
いる不純物が含まれていても構わない。
【0032】本発明では、上記成分組成からなるAg基
合金はスパッタリング法により形成されたものであるこ
とが推奨される。本発明に用いられる元素[耐硫化性向
上元素(Zn),密着性向上元素(Cu,Ti,Nd,
W,Mo,Sn,Ge)、反射特性及び耐酸化性向上元
素(Cu,Ni,Y,Nd)]は、平衡状態ではAgに
対する固溶限が極めて小さい(尚、Auは全率固溶す
る)が、スパッタリング法により形成された薄膜では、
スパッタリング法固有の気相急冷によって非平衡固溶が
可能になる為、その他の薄膜形成法でAg基合金薄膜を
形成した場合に比べ、上記合金元素がAgマトリックス
中に均一に存在し、その結果、耐硫化性や密着性が著し
く向上するからである。
【0033】また、スパッタリングの際には、スパッタ
リングターゲット材として、溶解・鋳造法で作製したA
g基合金(以下、「溶製Ag基合金ターゲット材」とい
う)を使用することが好ましい。かかる溶製Ag基合金
ターゲット材は組織的に均一であり、また、スパッタ率
及び出射角度が均一な為、成分組成が均一なAg基合金
薄膜(反射金属層)が安定して得られる結果、より高性
能の光ディスクが製作されるからである。尚、上記溶製
Ag基合金ターゲット材の酸素含有量を100ppm以
下に制御すれば、膜形成速度を一定に保持し易くなり、
Ag基合金薄膜膜の酸素量も低くなる為、当該Ag基合
金薄膜の反射率及び耐食性(特に耐硫化性)を著しく高
めることが可能になる。
【0034】以下実施例に基づいて本発明を詳述する。
ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、
前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは
全て本発明の技術範囲に包含される。
【0035】
【実施例】実施例1 本実施例では、各種Ag二元基合金薄膜の反射率、及び
高温高試験前後の反射率変化量を調べた。
【0036】まず、表1に示す種々の成分組成からなる
Ag二元基合金ターゲット(各種合金元素を2.0%含
有)を用い、DCマグネトロンスパッタリングにより、
透明ポリカーボネート樹脂基板(基板サイズ:直径50
mm、厚さ1mm)上に厚さ1000Åの各種Ag二元
基合金薄膜(反射薄膜層)を形成した試料を作製した。
次に、上記試料について、測定波長:800〜200n
mの範囲における反射率(分光反射率)を測定した。反
射率は反射薄膜層側から測定した。表1に、各種Ag基
合金薄膜における、波長800nmの反射率及び波長3
90nmの反射率を併記する。
【0037】
【表1】
【0038】表より、No.1〜11のAg二元基合金
はいずれも波長800nmで90%以上、波長390n
mで70%以上の高い反射率を示し、No.12〜17
のAg二元基合金と同程度の優れた反射率を有すること
が分かった。このうちSn,Cu,Ni,Au,Y,N
dの各元素を添加したAg二元基合金は、特に初期反射
率(スパッタリングで成膜した直後の薄膜の反射率)が
高かった。
【0039】次に上記試料を用い、環境加速(負荷)試
験として高温高湿試験(温度80℃、湿度90%RHに
て48時間実施)を行い、反射薄膜層の耐食性(耐酸化
性)を評価した。具体的には、高温高湿試験終了後の各
試料について反射薄膜層の反射率(分光反射率)を測定
し、試験前後の反射率の差(即ち、試験終了後の反射率
の減少量)を算出することにより耐食性(耐酸化性)を
評価した。表2に、各種Ag基合金薄膜を高温高湿試験
に付したときの、波長800nmの反射率変化量及び波
長390nmの反射率変化量を示す。
【0040】
【表2】
【0041】実験に供した試料のうち、特にZn,T
i,Cu,Ni,Au,Y,Ndの各元素を含有するA
g基合金は反射率の減少量が少なく、耐食性(耐酸化
性)に極めて優れることが分かる。
【0042】尚、上記表1及び表2の結果を勘案する
と、高反射率及び高耐食性(高耐酸化性)の確保という
観点からすれば、特に、Ag−Cu基、Ag−Ni基、
Ag−Au基、Ag−Y基、Ag−Nd基各合金薄膜の
使用が好ましいことが分かる。
【0043】実施例2 本実施例では、Ag二元基合金薄膜中の合金添加量を種
々変化させたときの初期反射率及び高温高湿試験前後の
反射率変化量を調べた。
【0044】まず、実施例1のなかで特に反射率及び耐
食性の点で優れている各種薄膜、即ち、Ag−Cu基、
Ag−Ni基、Ag−Au基、Ag−Y基、Ag−Nd
基の5種の薄膜について、合金元素の添加量を変化させ
つつ、測定波長800〜200nmの範囲における反射
率(分光反射率)を測定した。反射率は反射薄膜層側か
ら測定した。図1に、合金添加量と波長700nmにお
ける初期反射率の関係を示す。
【0045】図1より、いずれのAg基合金薄膜につい
ても、合金元素添加量が0〜1%の範囲では初期反射率
が約99%以上と、純Ag薄膜と同程度若しくはそれ以
上の極めて高い反射率を有していた。尚、合金元素添加
量が1%を超えると初期反射率は徐々に低下し始める
が、5%添加しても約95%以上の高い初期反射率を維
持していた。
【0046】次に上記試料について、実施例1と同様の
方法により反射薄膜層の耐食性(耐酸化性)を評価し、
耐食性と合金元素添加量の関係を調べた。図2に、高温
高湿試験前後のAg基合金薄膜について、波長700n
mの反射率と合金元素添加量との関係を示す。
【0047】図2より、いずれのAg基合金薄膜も純A
gに比べ、反射率の減少量が小さくなることから、合金
化により、耐食性(耐酸化性)が向上することが分か
る。尚、耐食性は合金元素添加量が1%付近で最大とな
り、添加量が1%を超えると概ね低下する傾向にある
が、合金の種類によっては3%以上添加すると、純Ag
に比べて耐食性が低下するものも見られたことを考慮す
れば、合金元素添加量は0.5〜3%の範囲内に制御す
ることが好ましい。
【0048】実施例3 本実施例では、各種Ag二元基合金薄膜について硫化水
素(H2S)雰囲気暴露試験を実施し、耐硫化性を評価
した。
【0049】まず、表3に示す各種Ag二元基合金ター
ゲット(合金元素を2.0%含有)を用い、実施例1と
同様の方法により種々のAg二元基合金薄膜(反射薄膜
層)を形成した試料を作製した後、測定波長800〜2
00nmの範囲における反射率(分光反射率)を測定し
た。次に、上記試料について、環境加速試験として硫化
水素雰囲気暴露試験[雰囲気:大気+H2S(50pp
m)、温度50℃、湿度90%RH]を実施し、反射薄
膜層の耐硫化性を評価した。具体的には、試験終了後の
試料について反射薄膜層の反射率(分光反射率)を測定
し、試験前後の反射率の差(即ち、試験終了後の反射率
の減少量)を算出することにより耐硫化性を評価した。
表3に、硫化水素雰囲気暴露試験前後のAg基合金薄膜
について、波長800nmの反射率変化量及び波長39
0nmの反射率変化量を併記する。
【0050】
【表3】
【0051】表3より、Znを含有するAg基合金薄膜
(No.1)は、他のAg基合金薄膜に比べ、反射率減
少量が最も少ないことから、Ag−Zn基合金は耐硫化
性に極めて優れていることが分かる。
【0052】実施例4 本実施例では、Ag−Zn合金薄膜を硫化水素雰囲気暴
露試験に付し、反射率変化量を調べた。
【0053】まず、実施例1と同様の方法により、Zn
添加量を種々変化させたAg−Zn二元基合金薄膜(反
射薄膜層)を形成した試料を作製した後、測定波長80
0〜200nmの範囲における反射率(分光反射率)を
測定した。図3に、Zn添加量と波長700nmにおけ
る初期反射率の関係を示す。
【0054】図3より、Ag−Zn合金薄膜では、Zn
添加量の増加に伴い、初期反射率は低下する傾向にある
が、Znを5%添加しても85%以上の高い反射率を有
していた。
【0055】次に上記試料について、実施例3と同様の
方法により反射薄膜層の耐硫化性を評価し、耐硫化性と
Zn添加量の関係を調べた。図4に、硫化水素雰囲気暴
露試験前後のAg−Zn合金薄膜について、波長700
nmの反射率減少量とZn添加量との関係を示す。
【0056】図4より、Zn添加量の増加に伴い、反射
率減少量は徐々に減少していくことから、Znの添加に
より耐硫化性は向上することが分かる。詳細には、Zn
添加量が0〜1.5%では、Zn添加による耐硫化性向
上効果は極めて顕著に見られるが、当該効果は、Zn添
加量が1.5%を超えると鈍化し始め、5%を超えると
殆ど飽和した。
【0057】以上、図3〜図4の結果を勘案すると、A
g−Zn合金薄膜中のZn添加量を1.5〜5%の範囲
に制御すれば、高い初期反射率を維持しつつ、しかも耐
硫化性も向上することが分かった。
【0058】実施例5 本実施例では、パターニングテストにより各種Ag基合
金薄膜の密着性を評価した。
【0059】まず、実施例1と同様の方法により表4に
示す各種Ag二元基合金薄膜(反射薄膜層)を形成した
試料を作製した。次に、上記試料全面を、フォトリソグ
ラフィー及びウェットエッチングにより幅10μmのス
トライプ形状に加工し、加工後のストライプパターンの
剥離の有無を光学顕微鏡で観察することにより、密着性
を評価した。その結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】表4のうちCu,Ti,W,Mo,Sn,
Ge,Ndの各成分を含有するAg二元基合金では、基
板全面にわたって剥離は一切認められず、密着性に極め
て優れることが分かる。
【0062】実施例6 本実施例では、ピーリングテストにより各種Ag基合金
薄膜の密着性を評価した。
【0063】まず、実施例5の試料のうち密着性が良好
であると認められた試料について、使用する樹脂基板の
大きさを、基板サイズ:12.7×12.7mmに変化
させたこと以外は実施例5と同様にして各種Ag二元基
合金薄膜を形成した試料を作製した。次に、上記試料に
ついてピーリングテストを実施し、剥離時の荷重(引張
強度)を測定することにより密着性を定量的に評価し
た。具体的には、試料の基板側と薄膜側に夫々金属製治
具を貼付けて固定し、両金属製治具について、引張試験
機により引張試験を行い、薄膜と基板が界面から剥離さ
れる時点の荷重(引張強度)を測定する。尚、金属製治
具の貼付固定には通常、接着剤が使用されるが、本実施
例では、接着時に熱がかかることを避ける為、接着剤と
して、常温硬化タイプの2液性エポキシ樹脂を使用し
た。また、比較の為に、他の元素を含有するAg二元基
合金薄膜についても同様に試験した。これらの結果を表
5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】表5のうち前記実施例5より密着性良好と
認められたNo.1〜7のAg二元基合金は、いずれも
引張強度が90kgf/cm2以上と極めて高い密着性
を示している。これに対し、他のAg二元基合金では、
いずれも引張強度が低く、密着性に劣っていた。
【0066】この様にピーリングテストの結果からも、
Ag−Cu基、Ag−Ti基、Ag−W基、Ag−Mo
基、Ag−Sn基、Ag−Ge基、Ag−Nd基の各合
金基は密着性に極めて優れることが確認された。
【0067】実施例7 表6に示す種々のAg四元基合金ターゲットを用い、実
施例6と同様にして厚さ1000ÅのAg−3.0%Z
n−0.85%Sn−1.0%Auの四元基合金薄膜
(反射薄膜層)を形成した試料を作製した。尚、上記A
g四元基合金ターゲットには下記3種類のターゲットを
使用した。 (1)真空溶解法で作製したAg−3.0%Zn−0.
85%Sn−1.0%Au四元基合金 (2)粉末冶金法で作製したAg−3.0%Zn−0.
85%Sn−1.0%Au四元基合金 (3)薄膜の組成がAg−3.0%Zn−0.85%S
n−1.0%Au合金となる様に調整したモザイク状タ
ーゲット(純Agターゲット上にAn,Sn,Auのチ
ップ:板状小片を埋込んだ複合型ターゲット)
【0068】上記試料について、実施例1と同様にして
初期反射率を測定すると共に、高温高湿試験(温度80
℃、湿度90%RH)を実施し、試験前後の反射率減少
量を算出することにより反射薄膜層の耐食性(耐酸化
性)を評価した。得られた結果を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】表6より、上記(1)〜(3)の各種ター
ゲットを使用して成膜したAg四元基合金薄膜はいずれ
も、初期反射率が高く、しかも反射率変化量は小さかっ
た。なかでも上記(1)のターゲットではその傾向が顕
著に見られたことから、当該溶製Ag基合金スパッタリ
ングターゲットの使用が最も適していることが分かる。
【0071】尚、本実施例と同様の実験を、Ag−Zn
合金に、Cu,Ti,Nd,W,Mo,Sn,Geの少
なくとも1種;Cu,Ni,Au,Y,Ndの少なくと
も1種を添加した試料についても実施しており、その結
果、表6と同様の効果が得られたことを確認している。
【0072】実施例8 本実施例では、Ag−Zn基合金に第三成分を添加した
三元基合金薄膜の初期反射率、耐食性(耐酸化性)及び
耐硫化性を調べた。
【0073】具体的には、実施例1と同様の方法によ
り、図5に示す各種Ag三元基合金薄膜(第三成分とし
て、Cu,Y,Ni,Nd,Auの各元素を0〜6%の
範囲で変化させて添加したもの)を形成した試料を作製
し、各種合金薄膜と初期反射率との関係を調べた。図5
に、第三成分の添加量と波長700nmの初期反射率と
の関係を示す。
【0074】図5より、いずれの合金においても、第三
成分の添加により反射率は徐々に低下する傾向が見られ
るが、当該第三成分を5%添加した場合であっても85
%以上の高い反射率を維持することができた。従って、
第三成分として上記元素の添加は有用であることが分か
る。
【0075】次に、上記試料について、実施例1と同様
の方法により反射層薄膜の耐食性(耐酸化性)を評価し
た。図6に、高温高湿試験前後の波長700mmにおけ
る反射率変化量と、第三成分の添加量との関係を示す。
【0076】図6より、上記第三成分を添加したとして
も反射率減少量は変化しないか非常に小さいことから、
第三成分の添加により耐食性(耐酸化性)は向上するこ
とが分かった。
【0077】更に、上記試料について、実施例3と同様
の方法により反射薄膜層の耐硫化性を評価した。図7
に、硫化水素雰囲気暴露試験前後の波長700mmにお
ける反射率減少量と第三成分の添加量との関係を示す。
【0078】図7より、第三成分の添加に伴い、Ag三
元基合金の反射率減少量は徐々に減少していることか
ら、上記三元基合金にするとAg−3%Znの2元基合
金に比べ、耐食性(耐酸化性)が向上することが分か
る。尚、その効果は元素の種類によって異なり、第三成
分がAuのときに耐硫化性向上効果が最も顕著に見ら
れ、次いで、Y,Nd,Ni,Cuの順に向上効果が認
められた。
【0079】実施例9 本実施例では、Ag三元基合金薄膜の密着性を評価し
た。
【0080】具体的には実施例1と同様の方法により、
表7に示す各種Ag三元基合金薄膜を形成した試料を作
製した後、実施例5と同様の方法により、パターニング
テストによる密着性試験を実施した。表7に、上記Ag
三元基合金薄膜に対するストライプパターンの剥離状況
を併記する。
【0081】
【表7】
【0082】表7より、Cu,Ti,W,Mo,Sn,
Geの各元素を添加したAg基合金薄膜では、基板全面
にわたって剥離は一切認められず、密着性に極めて優れ
ていることが分かる。
【0083】実施例10 本実施例では、実施例9とは別の評価方法により、Ag
三元基合金薄膜の密着性を評価した。
【0084】具体的には実施例1と同様の方法により、
図8に示す各種Ag−Zn−Xの三元基合金薄膜(X
は、Ti,W,Mo,Sn,Ge,Ndの各元素)を形
成した試料を作製した後、実施例6と同様の方法により
ピーリングテストを実施し、密着性を定量的に評価し
た。その結果を図8に併記する。
【0085】図8より、第三元素の添加に伴い、Ag基
合金の密着強度(剥離する際の引張強度)は増加し、A
g−Zn二元基合金及び純Agに比べ、密着性が向上す
ることが分かった。密着性上昇作用はTiが最も大き
く、次いで、W,Sn,Nd,Mo,Geの順に見られ
た。
【0086】
【発明の効果】本発明の光情報記録媒体用反射層は上記
の様に構成されているので、高反射率を有することは勿
論のこと、特に耐硫化性に優れており、更にはディスク
基板(ポリカーボネート基板等)及びディスクを構成す
る他の薄膜に対する密着性も良好であることから、光情
報記録媒体(相変化型および追記型光ディスク)の性能
や信頼性を格段に高めることができた。また、本発明の
スパッタリングターゲットは、上記光情報記録媒体用反
射層をスパッタリングにより形成するときに好適に使用
され、形成される反射薄膜層の成分組成が安定しやすく
なるというメリットの他、耐硫化性、反射率、密着性等
の諸特性にも優れた反射薄膜層が効率よく得られるとい
うメリットも奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2のAg基合金反射薄膜層につ
いて、合金元素添加量と初期反射率の関係を示すグラフ
である。
【図2】図2は、実施例2のAg基合金反射薄膜層につ
いて、合金元素添加量と反射率減少量の関係を示すグラ
フである。
【図3】図3は、実施例4のAg基合金反射薄膜層につ
いて、Zn添加量と初期反射率の関係を示すグラフであ
る。
【図4】図4は、実施例4のAg基合金反射薄膜層につ
いて、Zn添加量と反射率減少量の関係を示すグラフで
ある。
【図5】図5は、実施例8のAg−Zn合金反射薄膜層
について、第三成分の添加量と初期反射率の関係を示す
グラフである。
【図6】図6は、実施例8のAg−Zn合金反射薄膜層
について、第三成分の添加量と反射率減少量の関係を示
すグラフである。
【図7】図7は、実施例8のAg−Zn合金反射薄膜層
について、第三成分の添加量と反射率減少量の関係を示
すグラフである。
【図8】図8は、実施例10のAg−Zn合金反射薄膜
層について、第三成分の添加量と引張強度の関係を示す
グラフである。
フロントページの続き Fターム(参考) 4K029 AA11 BA22 BC01 BC07 BD00 CA05 DC04 DC39 5D029 MA13 MA17 5D121 AA05 EE03 EE14

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Znを1.5%(原子%の意味、以下同
    じ)以上含有するAg基合金で構成されていることを特
    徴とする耐硫化性に優れた光情報記録媒体用反射層。
  2. 【請求項2】 前記Ag基合金が、更にCu,Ti,N
    d,W,Mo,Sn,およびGeよりなる群から選択さ
    れる少なくとも1種の元素を合計で0.5〜5%含有す
    ることにより密着性が高められたものである請求項1に
    記載の光情報記録媒体用反射層。
  3. 【請求項3】 前記Ag基合金が、更にCu,Ni,A
    u,Y,およびNdよりなる群から選択される少なくと
    も1種の元素を合計で0.5〜3%含有することにより
    反射特性及び耐酸化性が高められたものである請求項1
    または2に記載の光情報記録媒体用反射層。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の光情報
    記録媒体用反射層を備えた光情報記録媒体。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載のAg基
    合金で構成されていることを特徴とする光情報記録媒体
    の反射層用スパッタリングターゲット。
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