JP2001355084A - 磁気シートを利用した塗装欠陥部の防食方法。 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 安価で防食効果が長期間持続し、かつ下地処
理を必要とせず、容易に施工が可能な防食対象物におけ
る塗膜欠陥部の防食方法を提供する。 【解決手段】 塗装された防食対象物の塗膜欠陥部を、
裏面がバックヨークで補強された磁気シートによって被
覆することを特徴とする塗膜欠陥部の防食方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、塗装された鉄鋼構
造物等の防食対象物の塗膜欠陥部の防食方法に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】鉄橋、
鉄塔等の鉄鋼構造物の腐食防止のために、該鉄鋼構造物
表面に塗装が施工される。しかし、塗装では、ピンホー
ル、膜厚不足等の塗膜欠陥を避けることは事実上不可能
であり、また塗膜は経時的に劣化し、水分の浸透、酸素
の拡散が増加し、塗膜下に腐食が発生する。

【０００３】このため塗膜は定期的な再塗装により補修
されるが、補修が現場施工となるために、塗装、下地処
理作業が天候に左右され工程管理が難しい。またサンド
ブラスト処理による完全な下地処理は行わず、グライン
ダやワイヤーブラシによる下地処理で補修塗装が行われ
ることが多いために比較的早期に補修部の塗膜に浮き、
剥離及び腐食が発生する等の問題点があった。

【０００４】上記したように、現在行われている鉄鋼構
造物等の防食対象物の塗膜の補修方法には、補修作業
が天候に左右されるため工程管理が難しい、完全な下
地処理ができないため補修塗膜に浮き、剥離及び腐食が
早期に発生する等の問題点があった。

【０００５】従って、本発明の目的は、安価で防食効果
が長期間持続し、かつ下地処理を必要とせずに容易に施
工が可能な防食対象物における塗膜欠陥部の防食方法を
提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、検討の結
果、防食対象構造物の塗膜欠陥部を、裏面がバックヨー
クで補強された磁気シートによって被覆することによっ
て、上記目的が達成し得ることを知見した。

【０００７】本発明は、上記知見に基づきなされたもの
で、塗装された防食対象物の塗膜欠陥部を、裏面がバッ
クヨークで補強された磁気シートによって被覆すること
を特徴とする塗膜欠陥部の防食方法を提供するものであ
る。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。図１は、本発明の第１の実施形態を示す概略断面
図である。図１において、１はバックヨーク、２は磁気
シート、３はシート状金属材料、４は導通用金属体、５
は塗膜、６は塗膜欠陥部、１０は防食対象物をそれぞれ
示す。

【０００９】磁気シート２は、ゴム又はプラスチックに
磁性粉末を含有させたものであり、例えば塩素化ポリエ
チレンにフェライト系磁性粉末を６０重量％以上混合さ
せたもの等が挙げられる。この磁気シート２の裏面に
は、バックヨーク１が磁力により取り付けられ補強され
ている。このバックヨーク１は、塗装、樹脂等の有機材
料で被覆、又は亜鉛、アルミニウム、マグネシウムやそ
れらの合金からなる金属材料で被覆された鋼板であるこ
とが望ましい。このようにバックヨーク１を塗装、有機
材料又は金属材料で被覆することによって、鋼板の腐食
防止と美観を保つことができる。

【００１０】図１においては、厚さ０．１〜０．５ｍｍ
のシート状金属材料３が上記磁気シート２に接着剤等で
貼着されており、塗膜欠陥部６に配置された導通金属体
４と電気的に接続し、シート状金属材料３と防食対象物
１０とが電気的に導通されている。このことによって塗
膜欠陥部６は電気防食される。

【００１１】図２は、本発明の第２の実施形態を示す概
略断面図である。図２において、図１と同一の符号は同
様のものを示し、７はリボン状金属材料である。

【００１２】この図２においては、幅１〜２０ｍｍ、長
さ１０〜５００ｍｍ、厚さ０．１〜０．５ｍｍのリボン
状金属材料７が塗膜欠陥部６に充填され、リボン状金属
材料７と防食対象物１０とが電気的に導通されている。
このことによって塗膜欠陥部６は電気防食される。

【００１３】図３は、本発明の第３の実施形態を示す概
略断面図である。図３において、図１と同一の符号は同
様のものを示し、８は粒状金属材料である。

【００１４】この図３においては、φ０．５ｍｍ以下の
粒状金属材料８が塗膜欠陥部６に充填され、粒状金属材
料８と防食対象物１０とが電気的に導通されている。こ
のことによって塗膜欠陥部６は電気防食される。

【００１５】この図１〜３に示されるように、上記防食
対象物１０が、防食対象物よりも電位の低いシート状、
リボン状又は粒状の金属材料を介して電気的に導通され
ている。ここに用いられる防食対象物よりも電位の低い
金属材料としては、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム
又はそれらの合金のいずれかの金属であることが望まし
い。

【００１６】図４は、本発明の第４の実施形態を示す概
略断面図である。図４において、図１と同一の符号は同
様のものを示し、９は防湿用シール材である。

【００１７】この図４においては、塗装面の防湿用シー
ル材９が磁気シート２により圧着、敷設されており、腐
食原因である湿気、酸素等の腐食因子の塗膜欠陥部６へ
の侵入を防止する。

【００１８】本発明においては、例えば図１に示される
ように、塗装、樹脂等の有機材料による被覆、又は亜
鉛、アルミニウム、マグネシウムやそれらの合金からな
る金属材料で被覆されたバックヨーク１、磁気シート
２、シート状金属材料３及び導通用金属体４からなる防
食材の工場生産が可能となり、施工現場ではワイヤーブ
ラシによる３種ケレンさえも必要とせずに、磁気シート
２の吸着力により塗膜欠陥部６を被覆するのみで塗膜欠
陥部６の防食が達成される。

【００１９】また、図４に示されるように、磁気シート
２により塗膜欠陥部６の周囲に防湿用シール材９を圧着
して湿気や酸素等の腐食要因の塗膜欠陥部６への侵入を
防止することで、塗膜欠陥部６の防食を達成すると共
に、低電位のシート状金属材料３を使用した場合におい
ては、該低電位金属材料の消耗を著しく低減して長期耐
用の補修材となる。

【００２０】さらに、バックヨーク１を塗装又は樹脂で
被覆することにより、低電位金属材料の消耗とバックヨ
ークの腐食が同時に防止されると共に、防食施工部外の
旧塗膜の色調との色調調整ができるため、美観を重要視
する補修対象物への適用が可能となった。

【００２１】

【実施例】以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説
明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは
ない。

【００２２】〔実施例１〕防食対象物の塗膜欠陥部に、
図１に示す防食方法を施した。この防食方法を評価する
ために、温度２５℃、湿度８０％の恒温・恒湿槽内の大
気環境及び温度２５℃、湿度８０％の恒温・恒湿槽内と
水温２５℃の海水中で同一間隔の乾燥繰り返し環境にお
いて、９０日間の曝露試験を行った。結果を表１に示
す。

【００２３】〔実施例２〕防食対象物の塗膜欠陥部に、
図２に示す防食方法を施した。この防食方法を施した塗
膜欠陥部を実施例１と同様に評価した。結果を表１に示
す。

【００２４】〔実施例３〕防食対象物の塗膜欠陥部に、
図３に示す防食方法を施した。この防食方法を施した塗
膜欠陥部を実施例１と同様に評価した。結果を表１に示
す。

【００２５】〔実施例４〕防食対象物の塗膜欠陥部に、
図４に示す防食方法を施した。この防食方法を施した塗
膜欠陥部を実施例１と同様に評価した。結果を表１に示
す。

【００２６】〔比較例１〕図５に示されるように、防食
対象物の塗膜欠陥部に何ら防食を施さなかった。この無
処理の塗装欠陥部を実施例１と同様に評価した。結果を
表１に示す。

【００２７】

【表１】

【００２８】表１から明らかなように、実施例１〜４は
比較例１に比べて、防食対象物の塗膜欠陥部に対して著
しい防食効果を有する。

【００２９】

【発明の効果】本発明の塗装欠陥部の防食方法は、防食
効果が長期間持続し、かつ下地処理を必要とせず、防食
対象物に容易に施工が可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明の塗装欠陥部の防食方法の第１
の実施形態を示す概略断面図である。

【図２】図２は、本発明の塗装欠陥部の防食方法の第２
の実施形態を示す概略断面図である。

【図３】図３は、本発明の塗装欠陥部の防食方法の第３
の実施形態を示す概略断面図である。

【図４】図４は、本発明の塗装欠陥部の防食方法の第４
の実施形態を示す概略断面図である。

【図５】図５は、無処理の塗装欠陥部の概略断面図であ
る。

【符号の説明】

１：バックヨーク ２：磁気シート ３：シート状金属材料 ４：導通用金属体 ５：塗膜 ６：塗膜欠陥部 ７：リボン状金属材料 ８：粒状金属材料 ９：防湿用シール材 １０：防食対象物

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 塗装された防食対象物の塗膜欠陥部を、
   裏面がバックヨークで補強された磁気シートによって被
   覆することを特徴とする塗膜欠陥部の防食方法。
2. 【請求項２】 上記バックヨークの一部あるいは全体
   が、塗装、有機材料で被覆、又は亜鉛、アルミニウム、
   マグネシウムやそれらの合金からなる金属材料で被覆さ
   れた鋼板である請求項１に記載の塗膜欠陥部の防食方
   法。
3. 【請求項３】 上記磁気シートと上記防食対象物の間
   に、該防食対象物よりも電位の低い金属材料を介在さ
   せ、かつ該金属材料が該防食対象物と電気的に導通され
   ている請求項１又は２に記載の塗膜欠陥部の防食方法。
4. 【請求項４】 上記金属材料が、亜鉛、アルミニウム、
   マグネシウム又はそれらの合金のいずれかの金属である
   請求項３に記載の塗膜欠陥部の防食方法。
5. 【請求項５】 上記金属材料が、厚さ０．１〜０．５ｍ
   ｍのシート状で、上記防食対象物との電気的導通を確保
   する際、塗膜欠陥部に配置された導通金属体を介して電
   気的に上記防食対象物と上記シート状金属材料とを導通
   させる請求項３又は４に記載の塗膜欠陥部の防食方法。
6. 【請求項６】 上記金属材料が、幅１〜２０ｍｍ、長さ
   １０〜５００ｍｍ、厚さ０．１〜０．５ｍｍのリボン状
   又はφ０．５ｍｍ以下の粒状であり、上記塗膜欠陥部に
   充填されており、上記防食対象物と該リボン状又は粒状
   の金属材料とが電気的に導通される請求項３又は４に記
   載の塗膜欠陥部の防食方法。
7. 【請求項７】 上記磁気シート面と塗装面との間に防湿
   用シール材が圧着、敷設されている請求項１又は２に記
   載の塗膜欠陥部の防食方法。