JP2001343511A - X線集光素子及びx線集光方法 - Google Patents

X線集光素子及びx線集光方法

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JP2001343511A
JP2001343511A JP2000161402A JP2000161402A JP2001343511A JP 2001343511 A JP2001343511 A JP 2001343511A JP 2000161402 A JP2000161402 A JP 2000161402A JP 2000161402 A JP2000161402 A JP 2000161402A JP 2001343511 A JP2001343511 A JP 2001343511A
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ray
rays
reflection surface
groove
reflection
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Kazuhiko Omote
和彦 表
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Rigaku Denki Co Ltd
Rigaku Corp
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Rigaku Denki Co Ltd
Rigaku Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 細長いブロック状の本体に細長い凹状の溝を
形成して、この溝の内面を回転放物面または回転楕円面
とすることにより、全反射を利用したX線集光素子の製
造を容易にし、かつ、集光能力を高める。 【解決手段】 X線集光素子10は、細長い石英ガラス
製の角柱棒のひとつの側面11に細長い溝12を加工し
たものである。角柱棒の長さLは160mm、幅Wは1
0mm、厚さtは20mmである。溝12の内面が反射
面14であり、この反射面14の形状は回転放物面の一
部からなる。この反射面14でX線が全反射する。反射
面14のその長手方向に垂直な断面形状は半円である。
溝12の内面には銅がコーティングされていて銅層16
が形成されている。この銅層16の表面が反射面14と
なる。銅の特性X線をこのX線集光素子に入射させる
と、銅以外の特性X線が反射面から発生するのを防ぐこ
とができる。また、銅層16の代わりにニッケル層を使
うとCuKβ線をカットできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は回転放物面または
回転楕円面からなる反射面でX線を全反射させるように
したX線集光素子及びX線集光方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】X線の全反射を利用したX線集光素子は
広く知られている。そして、反射面の断面形状を放物線
または楕円の形状にすればその断面内においてX線が集
光して、X線集光能力が高まることが知られている。さ
らに、反射面を回転放物面または回転楕円面の形状にす
れば、3次元空間上でX線が集光して、X線集光能力が
さらに高まることが知られている。反射面を回転楕円面
または回転放物面の形状にしたX線集光素子としては、
特開昭63−192000号公報、特開平1−1854
98号公報、特開平8−101299号公報、特開平1
1−84092号公報などに記載されたものが知られて
いる。ところで、これらの公知技文献のうち、回転楕円
面または回転放物面を備えるX線集光素子をどのように
して製作するのかについて、これを具体的に開示したも
のはあまり多くない。
【0003】特開平8−101299号公報は、回転楕
円面を備えるX線集光素子の具体的な製作方法を開示し
ている。この公知文献では、板状の複数の鏡面体を組み
合わせることで概略回転楕円面を形成しており、具体的
には、各鏡面体に力を加えて変形させることで、全体と
して、回転楕円面に近似した反射面を形成している。
【0004】また、特開平11−84092号公報で
は、回転放物面を備えるX線集光素子の具体的な製作方
法を開示している。この公知文献では、まず。雌金型の
表面をNC3次元加工機で回転放物面形状に形成してい
る。この雌金型を電気炉に入れて、その表面に、一端を
封じたガラス管を配置し、その後、このガラス管を加熱
・溶融させた状態でガラス管の他端から不活性ガスで均
等加圧して賦形し、次いで、自然冷却している。
【0005】一方、内面に薄膜を形成した円筒状のX線
集光素子としては、特開平2−42398号公報に記載
のものが知られている。このX線集光素子はガラス円筒
製であり、その内周面に重原子と軽原子の薄膜を交互に
積層している。内周面の形状は円錐面である。このX線
集光器は、その内面において回折や全反射を繰り返すこ
とでX線が入口から出口に伝搬するようになっている。
このX線集光器を製造するには、ガラス円筒をその軸を
含む平面で2等分して内周面を露出させ、スパッタリン
グ法で積層膜を形成してから、これらを一体化してい
る。なお、このX線集光器の内周面の形状としては、円
錐面形状のほかに、回転放物面形状としてもよいことが
記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した特開平8−1
01299号公報に記載のX線集光素子は、複数の板状
の鏡面体をそれぞれ変形させて全体として概略回転楕円
面となるようにしているので、各鏡面体に変形駆動機構
を取り付ける必要があり、構造がきわめて複雑である。
【0007】また、特開平11−84092号公報に記
載のX線集光素子は、加熱・溶融したガラス管を雌金型
の内周面に不活性ガスの圧力で押し付けることによって
ガラス管の内面に回転放物面を形成している。これによ
ると、ガラス管の外面は金型に接触して回転放物面とな
るが、ガラス管の内面は必ずしもそのような形状になっ
ている保証はない。ガラス管が一様な肉厚であると仮定
すれば、ガラス管の内面も回転放物面になると想定して
いるものである。したがって、ガラス管の肉厚はかなり
薄いものに限定される。ゆえに、このX線集光素子の取
り扱いは、破損しないように慎重を要する。また、ガラ
ス管の内面の形状は自由表面であるから、その形状精度
はあまり高くないと推定され、高い集光能力が期待でき
ない。
【0008】さらに、特開平2−42398号公報に記
載のX線集光素子は、ガラス円筒をその軸を含む平面で
2等分してから内周面に積層膜を形成して、そのあとで
両者を一体化している。この方法は、内周面に積層膜を
形成する方法としては、容易に実施できる利点がある。
しかし、この公知文献は、ガラス管の内周面の形状を精
度の良い回転放物面や回転楕円面にするための方法は開
示していない。この公知文献の実施形態では、内周面を
円錐面形状にしたガラス円筒を準備して、これを2等分
して積層膜を形成しているだけであり、内周面を円錐面
形状にしたガラス円筒自体の製造方法については触れて
いない。この公知文献に係るX線集光素子は、その内面
においてX線が「回折や全反射を繰り返す」ことでX線
が入口から出口に伝搬することを意図しているものであ
るから、内周面の形状を精度良く形成することについて
あまり考慮していないようである。したがって、特開平
2−42398号公報を参考にしても、内周面を回転楕
円面または回転放物面の形状にしたX線集光素子を容易
に精度良く製造するための有益な情報については得ると
ころがない。
【0009】この発明の目的は、内周面を回転楕円面ま
たは回転放物面の形状にしたX線集光素子を容易にかつ
精度良く製造できるようにした構造を提供することにあ
る。この発明の別の目的は、そのようなX線集光素子の
構造において、全反射の能力を高めるようにした工夫を
提供することにある。この発明のさらに別の目的は、こ
のようなX線集光素子を用いたX線集光方法を提供する
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】内周面を回転楕円面また
は回転放物面の形状にした従来のX線集光素子は、その
素材として、いずれも、パイプ状(例えば、ガラス管)
または板状のものを用いているが、この発明では、従来
にない発想として、細長いブロック状の材料を利用する
ことにした。この細長いブロック状の本体のひとつの側
面に凹状の溝を形成して、この溝の内面をX線の全反射
面としたものである。そして、この反射面の形状を回転
放物面または回転楕円面の一部からなるようにしてい
る。このようにすることで、回転放物面または回転楕円
面の加工が容易になり、構造が簡単で、反射面の形状精
度が高くて、かつ、集光能力の高いX線集光素子を得る
ことができる。反射面のその長手方向に垂直な断面形状
は半円、または、半円よりも円周角が小さい円弧とする
ことができる。
【0011】さらに、反射面の表面にはX線発生装置の
ターゲットの材質と特定の関係にある金属層を形成する
のが好ましい。具体的には、ターゲットの材質と同じ材
質の金属層を形成するか、あるいは、ターゲットを構成
する元素よりも原子番号が一つまたは二つだけ小さい元
素の金属層を形成するのが好ましい。ターゲットの材質
と同じ材質の金属層を形成すると、全反射の臨界角が大
きくなり、かつ、臨界角近傍まで高い反射率を得ること
ができ、さらに、ターゲットの特性X線以外の特性X線
が反射面から発生するのを防ぐことができる。この方法
によれば、例えば、銅のターゲットを使う場合は銅層を
反射面に形成することになり、モリブデンのターゲット
を使う場合はモリブデン層を反射面に形成することにな
る。
【0012】また、反射面の表面にターゲットを構成す
る元素よりも原子番号が一つまたは二つ小さい元素の金
属層を形成することも有効である。こうすると、ターゲ
ットから発生する特性X線のうちのKα線だけを効率良
く反射する一方で、Kβ線は金属層に吸収させることで
その反射強度を減らすことができる。この方法によれ
ば、X線集光素子で全反射させることでKα線だけを選
択的に取り出すことが可能になる。実際には、Kβ線を
減らすことについて、ターゲットの材質と反射面の材質
との実用的な組み合わせが存在し、銅のターゲットを使
う場合はニッケル層(ターゲットよりも原子番号が一つ
小さい)を反射面に形成するのが最適である。また、モ
リブデンのターゲットを使う場合は、Kβ線を減らすた
めに、原理的にはニオブ層(ターゲットよりも原子番号
が一つ小さい)とジルコニウム層(ターゲットよりも原
子番号が二つ小さい)とを使うことが可能であるが、反
射面の形成のし易さなどの実用性からジルコニウム層が
最適である。
【0013】X線発生装置のターゲットの材質として一
般に使われているのは、銅またはモリブデンが大半であ
るから、以上のような観点からは、X線集光素子の反射
面に形成する金属層としては、銅、ニッケル、モリブデ
ン及びジルコニウムのいずれかとするのが最適である。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、この発明のひとつの実施
形態を示す斜視図である。このX線集光素子10は、細
長い石英ガラス製の角柱棒のひとつの側面11に細長い
溝12を加工したものである。石英ガラスは、金属に比
べて、その表面がなめらかになるので、全反射用のX線
集光素子の素材として優れている。角柱棒の長さLは1
60mm、幅Wは10mm、厚さtは20mmである。
厚さtを20mmと厚くしているのは、溝12を加工し
たときに加工歪によって溝の内面(反射面となる)の曲
率が変化するのを防ぐためである。溝12の内面が反射
面14であり、この反射面14の形状は回転放物面の一
部からなる。この回転放物面の形状については後述す
る。この反射面14でX線が全反射する。ブロック状の
石英ガラスの側面に回転放物面の形状をした溝を加工す
ることは可能である。具体的には、(1)第1段階とし
て、半径の異なる複数の円板状の加工工具を並べて回転
させることで溝を加工していき、加工が進むにつれて、
半径の異なる加工治具に交換する。加工工具の半径の違
いから溝には段差が生じる。(2)第2段階として、半
径の異なる複数の球面状の加工工具を回転させること
で、上述の段差を無くすように溝を加工していき、回転
放物面となるように精密に加工する。これらの作業で
は、レーザ光等で形状を確認しながら、慎重に作業を進
めていく。
【0015】図2(a)は図1のX線集光素子10をそ
の長手方向から見た正面図である。反射面14のその長
手方向に垂直な断面形状は半円である。溝12の内面に
は銅がコーティングされていて銅層16が形成されてい
る。この銅層16の表面が反射面14となる。銅層16
は例えば真空蒸着により100nmの膜厚になるように
堆積している。
【0016】図1において、X線集光素子10の左側の
端部における反射面14の半円の半径は3.67mmで
あり、一方、右側の端部における半円の半径は2.78
mmである。したがって、左側から右側に向かって半円
の半径は徐々に小さくなっていく。正面から見た図2
(a)では、半径が徐々に小さくなっていく反射面14
が見えている。
【0017】図2(b)はX線ビームが正面方向から入
射した状態を示す拡大正面図である。斜線の領域18が
X線ビームの照射断面であり、この図では、照射断面の
寸法は1mm×1mmである。反射面14がこの領域1
8に重なるように、X線ビームに対してX線集光素子の
位置を調整することになる。
【0018】図2(c)はX線ビームの照射断面の寸法
を1mm×10mmにした状態を示す拡大正面図であ
る。この場合は、縦長の照射領域20となり、反射面1
4がこの照射領域20にできるだけ多く重なるようにX
線集光素子を位置調整する。
【0019】図3はX線集光素子10の反射面14の形
状を説明する説明図である。図に示すようなXY座標軸
を考えて、XY平面上に図のような放物線22を設定す
る。この放物線22は焦点FがXY座標軸の原点にあ
る。放物線22の頂点(図3の右端)の座標は、x=マ
イナスp/2、y=0(ゼロ)である。このようにpを
定義すると、この実施形態ではp=0.018mmであ
る。したがって、この放物線22は実際には極めて偏平
な形状をしている。反射面14はこの放物線22をX軸
の回りに回転したときにできる回転放物面の一部で構成
されている。焦点FからX線集光素子10までの最短距
離dは215mmであり、X線集光素子10の長さLは
160mmである。X線集光素子10の側面11(溝を
形成してある面)とX軸とは同一の平面(紙面に垂直な
平面)上に位置している。
【0020】このX線集光素子10に対して図3の左側
から平行X線ビーム24がX軸に平行に反射面14に入
射すると、反射面14で全反射して、その反射X線26
は焦点Fに集光する。X軸に対する反射X線26のなす
角度は、入射X線24に対する反射X線26のなす角度
2θに等しい。反射面14のどの位置に入射X線24が
当たっても、入射X線が反射面14となす角度θは常に
全反射の臨界角以下になり、全反射する。そして、その
反射X線26は常に焦点Fに集光する。したがって、図
3の左側に、平行X線ビームを出射するX線源を配置
し、焦点Fの位置に試料を配置すれば、試料上の微小領
域にX線が集光する。
【0021】上述の平行X線ビーム24を得るには、例
えば、X線管の焦点から出射されたX線ビームを放物面
多層膜モノクロメータ(例えば、特開平11−2877
73号公報に開示されているもの)で反射させればよ
い。
【0022】図5は反射面14でX線が全反射する状況
を示す拡大図である。入射X線24は反射面14に対し
て入射角θで入射する。入射角θが全反射の臨界角θc
よりも小さいときにX線は全反射することになり、その
とき、反射X線26は反射面14に対して角度θをなし
て出ていく。銅層からなる反射面14にCuKα線を入
射させた場合の全反射臨界角θcは約0.4度である。
したがって、反射面14に対する入射X線24の入射角
θが0.4度以下になるように、このX線集光素子は設
計されている。この実施形態では、X線集光素子10と
入射X線24とが図3に示すような位置関係にあるとき
に、X線集光素子10の長手方向の中点において、入射
角θ=0.316度となる。この入射角θの値はX線集
光素子の長手方向に沿って変化する。図3の左端ではθ
=0.281度であり、右方向にいくにつれてθが大き
くなっていって、右端ではθ=0.371度である。
【0023】次の表1は、X線集光素子10の反射面1
4のXY平面上でのxy座標(mm)と、その位置にお
ける反射面の曲率半径r(mm)と、設計上のX線入射
角θ(度)を示している。この表1から分かるように、
反射面上のすべての地点において、入射角θが上述の全
反射臨界角θc(約0.4度)よりも小さくなってい
る。
【0024】
【表1】
【0025】図4はX線集光素子10と焦点Fの間にコ
リメータ28を配置した状態を示す断面図である。X線
集光素子10で全反射したX線はコリメータ28の先端
の孔30を通過して焦点Fに集光する。孔30の内径
は、例えば、0.2mm、0.1mm、0.05mmの
ものを準備しておいて、そのいずれかを選択できるよう
にする。試料上の集光領域を非常に狭くしたければ、小
さい孔径のコリメータを使うことになる。この孔30は
X線集光素子10で全反射したX線だけが通過するよう
な位置に配置されている。したがって、試料上において
焦点F以外の地点にX線が照射されることがない。この
実施形態では、反射X線26の発散角αは約0.18度
である。焦点F上のX線照射サイズは入射X線の平行度
に依存する。例えば、入射X線の平行度が100分の5
度の場合は、X線照射サイズは0.2mm程度である。
平行度が100分の1度の場合は、X線照射サイズは
0.04mm程度である。このX線集光素子を使うと試
料上のX線強度が飛躍的に増加する。X線集光素子を使
わないで平行X線ビーム24を単にコリメータで絞って
試料上の直径0.2mm程度の領域にX線を照射した場
合のX線強度と比較して、このX線集光素子を使って試
料上にX線を照射した場合のX線強度は100倍くらい
になる。したがって、このX線集光素子のゲインは約1
00である。
【0026】次に、X線集光素子10の反射面に銅層1
6を設けた効果を説明する。図7はX線が反射面で全反
射するときの反射率を示すグラフである。横軸は反射面
に入射するX線の入射角θであり、縦軸は反射率であ
る。ここで、反射率とは、入射X線の強度に対する反射
X線の強度の比率である。このグラフは、入射X線がC
uKα線であるときの反射率を示しているが、この反射
率の値は、反射面の材質に依存する。一番左側の曲線3
2は反射面が石英ガラス(SiO2)のときの反射率で
あり、中央の曲線34は反射面が銅(Cu)、右側の曲
線36は反射面が金(Au)の場合の反射率である。
【0027】図7の曲線34で示すように、銅の全反射
の臨界角θcは約0.4度である。そして、反射面が銅
の場合には、臨界角θcの付近で反射率の変化が急峻に
なる。すなわち、臨界角θcの近くまで反射率が1に近
い。これに対して、X線集光素子の本体の材質である石
英ガラスで反射する場合は、図7の曲線32のようにな
り、このときの全反射の臨界角は約0.2度となる。こ
の値は、銅の場合の臨界角よりもずっと小さい。したが
って、石英ガラス上に銅層を形成することによって、全
反射の臨界角が大きくなり、全反射可能な入射角範囲を
広くとることができる。反射面の材質を銅にするために
は、X線集光素子の全体を最初から銅で作ることも考え
られるが、そうすると、溝を加工したときの反射面の粗
さが目立ち、石英ガラスのような滑らかな反射面が得ら
れない。これに対して、この実施形態のように、石英ガ
ラスの滑らかな反射面の上に、銅層をスパッタリング
法、蒸着法などの薄膜形成法で形成すると、より滑らか
な反射面が得られる。
【0028】ところで、図7に示すように、金の反射面
(曲線36)の場合は、全反射の臨界角は約0.5度と
なり、銅よりも臨界角が大きくなる。ただし、吸収効果
によって曲線の肩がなまっており、臨界角よりも小さい
入射角のところから反射率が低下していく。したがっ
て、金の反射面の場合、必要な特性X線を全反射させ、
不要な白色X線はカットする、という効果は、銅の場合
よりも劣る。
【0029】また、特定の元素に起因する特性X線をX
線集光素子の入射X線として使う場合において、X線集
光素子の反射面の材質を、上述の特定の元素と同じ材質
にすれば、反射面の材質に起因する特性X線が反射面で
生じたとしても、入射X線と同じ特性X線となるのでノ
イズにはならない。
【0030】したがって、X線発生装置のターゲットの
材質とX線集光素子の反射面の材質を同じにすれば、X
線集光素子の反射面での反射率を大きくできて、かつ、
ノイズとなる特性X線が反射面において生じないという
利点がある。この実施形態のX線集光素子は、入射X線
としてCuKα線を使うことを想定しているので、反射
面に銅層を形成しており、これによって、上述のような
利点が期待できる。X線分析装置では、X線源として銅
の特性X線を使う(X線発生装置のターゲットの材質を
銅にする)ことが一般的であるから、反射面に銅層を形
成したX線集光素子を標準的に準備することは意味があ
る。また、X線源としてモリブデンの特性X線を使うこ
ともよく行われているが、その場合は、反射面にモリブ
デン層を形成したX線集光素子が有効である。
【0031】以上の実施形態では、X線発生装置のター
ゲットと同じ材質の金属層を反射面に形成しているが、
Kβ線をカットするという観点からは、ターゲットを構
成する元素よりも原子番号の一つまたは二つ小さい元素
の金属層を反射面に形成してもよい。以下に、この実施
形態を説明する。X線発生装置のターゲットの材質を銅
(原子番号は29)にした場合、それよりも原子番号の
一つ小さいニッケル(原子番号28)の層をX線集光素
子の反射面に形成することがKβ線をカットするのに有
効である。図9は銅の特性X線CuKαとCuKβがニ
ッケル層で全反射するときの反射率のグラフである。C
uKαは入射角θ=0.4度付近で反射率が急峻に変化
している。これに対して、CuKβは、CuKαと比較
してNi層に吸収されやすいので、上述の全反射の臨界
角(約0.4度)よりもかなり小さい入射角から反射率
が大きく低下していく。したがって、ニッケル層の反射
面を有するX線集光素子に銅の特性X線を入射すると、
CuKβをカットして、ほぼCuKαだけを取り出すこ
とができる。試料に対してできるだけ単色性の高い(す
なわち、波長分散の小さい)X線を照射することが必要
なX線分析においては、このようにCuKβをカットす
ることは非常に有効であり、そのような場合に、ニッケ
ル層を形成したX線集光素子が役に立つ。なお、図9の
CuKα線の反射率のグラフは、図7の銅層の場合の曲
線34とほぼ同じである。
【0032】また、X線発生装置のターゲットの材質と
してモリブデン(原子番号は42)を使う場合は、Kβ
線をカットする観点からは、ターゲットよりも原子番号
の二つ小さいジルコニウム(原子番号は40)をX線集
光素子の反射面の材質とするのが最適である。
【0033】次に、回転放物面の代わりに回転楕円面を
使ったX線集光素子の実施形態を説明する。図6は反射
面の形状を回転楕円面にしたX線集光素子の形状を説明
する説明図である。XY平面において図のような楕円3
8を設定する。この楕円38は二つの焦点F1、F2が
X軸上にあり、一方の焦点F1がXY座標軸の原点にあ
り、他方の焦点F2はx=D、y=0(ゼロ)の座標位
置にある。楕円38とその長軸(X軸)とが交わる二つ
の交点をC1、C2とすると、一方の交点C1の座標は
x=マイナスp/2、y=0(ゼロ)であり、他方の交
点C2の座標はx=D+(p/2)、y=0(ゼロ)であ
る。このようにDとpを定義すると、この実施形態では
p=0.0125mm、D=700mmである。したが
って、この楕円38は実際には極めて偏平な形状をして
いる。
【0034】反射面40はこの楕円38をX軸の回りに
回転したときにできる回転楕円面の一部で構成されてい
る。第1焦点F1からX線集光素子42までの最短距離
d1は215mmであり、X線集光素子10の長さLは
160mmであり、第2焦点F2からX線集光素子42
までの最短距離d2は325mmである。このX線集光
素子も、見かけは、図1のX線集光素子とほぼ同じであ
り、細長いブロック状の石英ガラスの本体のひとつの側
面に溝を形成したものである。そして、この溝の内周面
が回転楕円面の一部で構成されており、その表面には銅
層が形成されている。
【0035】図6において、X線集光素子42の側面4
3(溝を形成してある面)とX軸は同一の平面(紙面に
垂直な平面)上に位置している。第1焦点F1の位置に
X線源を配置すると、X線源から出たX線44は、X線
集光素子42の反射面40で全反射して、その反射X線
46は第2焦点F2に集光する。したがって、第2焦点
F2の位置に試料を配置すれば、試料上の微小領域にX
線が集光する。
【0036】次の表2は、X線集光素子42の反射面4
0のXY平面上でのxy座標(mm)と、その位置にお
ける反射面の曲率半径r(mm)と、設計上のX線入射
角θ(度)を示している。この場合も、反射面上のすべ
ての地点において、入射角θが上述の銅層の全反射臨界
角θc(約0.4度)よりも小さくなっている。
【0037】
【表2】
【0038】次に、この発明のX線集光素子を二つ組み
合わせて使う例を説明する。図8(a)は図2(a)に
示すX線集光素子を二つ向かい合わせて組み合わせた状
態を示す正面図である。二つのX線集光素子10a、1
0bは、その反射面14a、14bが互いに向かい合う
ように組み合わされている。図2(b)は反射面の付近
を示す拡大図である。入射X線ビームの照射領域48が
このように大きい場合には、二つのX線集光素子10
a、10bを組み合わせることで、全反射するX線を増
やすことができて、これによりX線強度をかせぐことが
できる。この場合は、図10に示すように、X線集光素
子10a、10bの出口側に、コリメータ54と共に、
ダイレクト・ビーム・ストッパ50を配置する。これに
より、反射面14a、14bを経由しないX線が焦点F
に到達するのを防ぐことができる。
【0039】この発明は上述の形態に限定されず、次の
ような変更が可能である。図2(b)において、反射面
14のその長手方向に垂直な断面形状は半円になってい
るが、X線集光素子の側面11の位置を一点鎖線50の
位置にすることもできる。こうすると、反射面14のそ
の長手方向に垂直な断面形状は半円よりも中心角の小さ
い円弧になる。半円の中心角は180度であり、図2
(b)の一点鎖線50の位置を側面11の位置にする
と、そのときの反射面14の断面の円弧形状の中心角
は、長手方向の位置によっても変化するが、約100〜
130度になる。
【0040】
【発明の効果】この発明のX線集光素子は、細長いブロ
ック状の本体に細長い凹状の溝を形成して、この溝の内
面を回転放物面または回転楕円面の一部として、これを
X線の全反射面としたので、加工が容易で、形状精度が
高くて、構造が簡単で、かつ、集光能力が高い。また、
反射面の表面に特定の金属層を形成することで、全反射
の臨界角を大きくしたり、目的の特性X線だけを取り出
せるようにしたりできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のひとつの実施形態を示す斜視図であ
る。
【図2】図1のX線集光素子の正面図である。
【図3】X線集光素子の反射面の形状を説明する説明図
である。
【図4】X線集光素子と焦点の間にコリメータを配置し
た状態を示す断面図である。
【図5】反射面でX線が全反射する状況を示す拡大図で
ある。
【図6】反射面を回転楕円面にした実施形態の形状を説
明する説明図である。
【図7】X線が反射面で全反射するときの反射率を示す
グラフである。
【図8】X線集光素子を二つ向かい合わせて組み合わせ
た状態を示す正面図である。
【図9】ニッケル層で銅の特性X線が反射するときの反
射率を示すグラフである。
【図10】図8に示す実施形態を光軸に沿った平面で切
断した断面図である。
【符号の説明】
10 X線集光素子 11 側面 12 溝 14 反射面 16 銅層 22 放物線 24 入射X線 26 反射X線

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 X線を全反射させる集光素子において、
    細長いブロック状の本体に、細長い凹状の溝が形成され
    ていて、この溝の内面がX線の反射面であり、この反射
    面が回転放物面または回転楕円面の一部からなることを
    特徴とするX線集光素子。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のX線集光素子におい
    て、前記反射面の表面に、銅、ニッケル、モリブデン及
    びジルコニウムのいずれかの層が形成されていることを
    特徴とするX線集光素子。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載のX線集光素子
    において、前記反射面のその長手方向に垂直な断面形状
    が半円であることを特徴とするX線集光素子。
  4. 【請求項4】 請求項1または2に記載のX線集光素子
    において、前記反射面のその長手方向に垂直な断面形状
    が半円よりも中心角が小さい円弧であることを特徴とす
    るX線集光素子。
  5. 【請求項5】 X線集光素子の反射面でX線を全反射さ
    せてX線を集光するX線集光方法において、次の特徴を
    有するX線集光方法。 (a)前記X線集光素子は、細長いブロック状の本体
    に、細長い凹状の溝が形成されていて、この溝の内面が
    X線の反射面であり、この反射面が回転放物面または回
    転楕円面の一部からなる。 (b)前記反射面の表面に特定元素の金属の層が形成さ
    れていて、前記特定元素は、集光するX線を発生するX
    線発生装置のターゲットを構成する元素に等しくなって
    いる。
  6. 【請求項6】 X線集光素子の反射面でX線を全反射さ
    せてX線を集光するX線集光方法において、次の特徴を
    有するX線集光方法。 (a)前記X線集光素子は、細長いブロック状の本体
    に、細長い凹状の溝が形成されていて、この溝の内面が
    X線の反射面であり、この反射面が回転放物面または回
    転楕円面の一部からなる。 (b)前記X線集光素子に入射するX線は銅の特性X線
    を含んでおり、前記X線集光素子の反射面にはニッケル
    層が形成されている。
  7. 【請求項7】 X線集光素子の反射面でX線を全反射さ
    せてX線を集光するX線集光方法において、次の特徴を
    有するX線集光方法。 (a)前記X線集光素子は、細長いブロック状の本体
    に、細長い凹状の溝が形成されていて、この溝の内面が
    X線の反射面であり、この反射面が回転放物面または回
    転楕円面の一部からなる。 (b)前記X線集光素子に入射するX線はモリブデンの
    特性X線を含んでおり、前記X線集光素子の反射面には
    ジルコニウム層が形成されている。
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