JP2001342544A - 室温及び加工発熱領域の変形抵抗の上昇が抑制された線状または棒状鋼、および機械部品 - Google Patents

室温及び加工発熱領域の変形抵抗の上昇が抑制された線状または棒状鋼、および機械部品

Info

Publication number
JP2001342544A
JP2001342544A JP2001042358A JP2001042358A JP2001342544A JP 2001342544 A JP2001342544 A JP 2001342544A JP 2001042358 A JP2001042358 A JP 2001042358A JP 2001042358 A JP2001042358 A JP 2001042358A JP 2001342544 A JP2001342544 A JP 2001342544A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ferrite
deformation resistance
present
steel
wire
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001042358A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3474545B2 (ja
Inventor
Hiroshi Momozaki
寛 百▲崎▼
Toyofumi Hasegawa
豊文 長谷川
Masato Shikaiso
正人 鹿礒
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2001042358A priority Critical patent/JP3474545B2/ja
Publication of JP2001342544A publication Critical patent/JP2001342544A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3474545B2 publication Critical patent/JP3474545B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 球状化焼鈍処理を省略したとしても熱間圧延
のままで冷間加工性に優れた線状または棒状鋼を提供す
る。 【解決手段】 圧延材の中心〜直径/8の範囲にあるフ
ェライト組織中に、窒化物および炭化物が混合若しくは
複合された状態で、平均で25個以上/25μm 2存在
する線状または棒状鋼である。この様な窒化物および炭
化物を析出させることにより、冷間加工時において加工
発熱によって生じる温度上昇域における変形抵抗を小さ
くすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷間加工性に優れ
た線状または棒状鋼(以下、鋼と略記する場合があ
る)、及び該鋼を用いて得られる機械部品に関するもの
である。本発明において「冷間加工性に優れた」とは、
「室温及び加工発熱領域の変形抵抗の上昇が抑制され
た」ことを意味する。即ち、本発明は、ボルト、ねじ、
ナット、ソケット、ボールジョイント、インナーチュー
ブ、トーションバー、クラッチケース、ケージ、ハウジ
ング、ハブ、カバー、ケース、受座金、タペット、サド
ル、バルグ、インナーケース、クラッチ、スリーブ、ア
ウターレース、スプロケット、コアー、ステータ、アン
ビル、スパイダー、ロッカーアーム、ボディー、フラン
ジ、ドラム、継手、コネクター、プーリー、金具、ヨー
ク、口金、バルブリフター、スパークプラグの他、機械
部品、電装部品等を、冷間鍛造、冷間圧造、冷間転造等
の冷間加工によって製造するに当たり、軟化熱処理を施
すことなく熱間圧延ままでも、室温及び加工発熱領域の
変形抵抗の上昇が抑制された線状または棒状鋼、及び機
械部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】冷間加工は、熱間加工や切削加工に比べ
て生産性が高いうえに鋼材の歩留まりも良好なことか
ら、ボルト、ねじ、ナット等の機械部品や電装部品を効
率よく製造する為の方法として汎用されている。
【0003】従って、この様な冷間加工に使用される鋼
は、本質的に冷間加工性に優れていることが要求され
る。具体的には、冷間加工時の変形抵抗が低く(加工比
重が低く)、且つ延性(伸び、絞り)が高いことが必要
である。鋼の変形抵抗が高いと冷間加工に使用する工具
の寿命が低下してしまい、一方、延性が低いと冷間加工
時に割れが発生し易くなり、不良品発生の原因になる。
【0004】従来は、圧延線材または棒鋼を酸洗いによ
り脱スケールし、皮膜処理した後、冷間引抜き加工によ
り伸線を行ってから(加工率10〜40%)、冷間加工
を行うのが一般的であった。しかしながら、この方法
は、冷間加工率が低く加工荷重が低い場合には有効であ
るが、加工率の上昇に伴い、加工荷重が高くなると冷間
加工用の工具寿命が短くなってしまい採用できなかっ
た。
【0005】そこで、冷間加工時の加工荷重が高い場合
や、冷間加工時に割れが発生する場合には、冷間加工前
に、低温焼鈍、焼鈍、球状化焼鈍等の熱処理が実施され
ており、それにより、鋼材を軟化し、且つ延性を高めた
状態で冷間加工するという方法が汎用されている。
【0006】ところが上記熱処理には、数時間〜数十時
間の長時間にわたる熱処理を要するという問題を抱えて
いる。従って、生産性の向上や省エネルギー対策、ひい
てはコストの低減化を目的として、球状化焼鈍処理等の
熱処理の省略が可能な、冷間加工性に優れた線状または
棒状鋼の開発が切望されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に着
目してなされたものであり、その目的は、球状化焼鈍処
理を省略したとしても熱間圧延のままで冷間加工性に優
れた線状または棒状鋼を提供すると共に、高強度を有す
るボルトやナットなどの機械部品を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し得た本
発明に係る室温及び加工発熱領域の変形抵抗の上昇が抑
制されたという意味における冷間加工性に優れた線材ま
たは棒状鋼とは、実質的にフェライト組織またはフェラ
イトとパーライトの混合組織を有し、圧延材の中心〜直
径/8の範囲にあるフェライト組織中のフェライト粒度
番号は4〜9番であり;圧延材の最表層にあるフェライ
ト組織中のフェライト粒度番号は4〜10番で、且つ前
記圧延材の中心〜直径/8の範囲にあるフェライト組織
中のフェライト粒度番号より大きくすることにより、フ
ェライト結晶粒の微細化が抑制されたものであるところ
に要旨を有するものである。
【0009】また、上記の線状または棒状鋼を用いて得
られる機械部品も本発明の範囲内に包含される。尚、本
発明では、前述したボルト、ねじ、ナット等の機械部品
や電装部品等を含めて、「機械部品」で代表させること
にしている。
【0010】ここで、転位セルの平均面積が0.18〜
0.50μm2である機械部品は本発明の好ましい態様
である。上記「転位セル」のうち「セル」とは、金属組
織を顕微鏡や電子顕微鏡でみたとき、細胞のような形に
みえるものを総称し、「転位セル」とは、転位が密にか
らまった部分が網目状に転位のほとんどない部分を囲ん
だ状態の加工組織を意味する。冷間加工や鍛造により鋼
材結晶中に転位が入るが、この転位は、均一にからみ合
うよりも不均一にセル構造になることにより、より安定
な状態になる。
【0011】尚、転位セルの平均面積を測定するに当た
っては後記する通り、所定の圧縮試験片を用い、TEM
(透過型電子顕微鏡、倍率15000倍)により、図6
に示す組織観察位置に存在する転位セルの面積の平均値
を算出することにより行う。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明者らは、熱間圧延のままで
冷間加工性に優れた鋼を提供すべく、特に「室温での変
形抵抗および加工発熱領域での変形抵抗を低減すること
により冷間加工性を向上させる」という観点に基づき、
鋭意検討してきた。冷間加工性のなかでも特に変形抵抗
に着目したのは、初期強度に支配される室温の変形抵抗
のみならず、固溶C及び固溶Nによる歪み時効の挙動が
加工発熱領域における変形抵抗にも影響を及ぼすからで
ある。
【0013】その結果、「室温での変形抵抗の低減およ
び加工発熱領域での変形抵抗の低減」という課題を両立
させる為には、冷間加工性のなかでも変形抵抗を支配し
ている固溶Cおよび固溶Nを固定化するに当たり、線状
または棒状鋼の内部組織を構成しているフェライト組織
またはフェライト・パーライト組織において、フェライ
ト結晶粒の微細化による強化を抑制すれば冷間加工時の
引張強度が低減され、室温での変形抵抗も小さくなり、
冷間加工性が向上することを突き止めた。この様に「初
期の引張強度を小さくして室温での変形抵抗を低減させ
ると共に、加工発熱領域での変形抵抗を低減するという
意味における冷間加工性向上という課題を達成する為に
は、フェライト結晶粒径は微細化させない方が有効であ
ること;その為には、圧延材の中心〜直径/8の範囲に
あるフェライト組織中のフェライト粒度番号は4〜9番
とし;圧延材の最表層にあるフェライト組織中のフェラ
イト粒度番号は4〜10番、且つ前記圧延材の中心〜直
径/8の範囲にあるフェライト組織中のフェライト粒度
番号より大きくすることが有効であること」については
従来知られておらず、本発明者らによって始めて見出さ
れた知見である。
【0014】尚、本発明と同様、球状化焼鈍処理を省略
したとしても冷間加工性に優れた鋼を製造する方法は、
これまでにも提案されているが、上述した本発明の技術
的思想は開示も示唆もされていない。
【0015】例えば特公昭61−35249には、圧
延条件や冷却条件を制御することにより固溶C及び固溶
Nを少なくし、歪時効に起因する加工硬化を抑制して変
形抵抗を小さくする方法が開示されている。但し、鋼中
の成分組成に関しては、歪時効による変形抵抗の増大を
防止するため、固溶Nによる歪時効を抑制する目的でA
lを添加し、NをAlNとして析出させる等の一般的な
記載がなされているに過ぎない。
【0016】また、特開昭57−63635には、A
c1変態点以下、Ac1変態点より50℃を下回らない温度
に5時間以上保持することによりセメンタイトを充分凝
集させると共に、Al量を制御して固溶Nを固定するこ
とにより、加工工具寿命の高められた冷間鍛造用棒鋼の
製造方法が開示されている。この公報は、「熱間圧延後
の温度を所定範囲に保持すればセメンタイトを凝集析出
せしめ、強度を低下させることができる」という知見に
基づいてなされたものであり、「フェライト粒の粗大化
が起ると、冷間鍛造時の割れ発生が起り易くなる」とい
う観点から、鋼中成分を制御し、鋼の粗大化を阻止する
Al等を含むことを必須要件とする点で、初期強度を低
下させて室温での変形抵抗を低減させるという観点から
フェライト粒を(微細化させるのではなく)粗大化さ
せ、その為に、圧延材の中心〜直径/8の範囲にあるフ
ェライト組織中のフェライト粒度番号を圧延材の最表層
にあるフェライト組織中のフェライト粒度番号との関係
で制御する本発明とは、全く異なる技術的思想を有する
ものである。
【0017】また、特開平8−260047には、冷
間鍛造で歪時効の原因となる固溶Nを少なくする為にN
及びAl/Nを特定して熱間圧延する工程と;熱間圧延
の最終段階において所定温度範囲で50%以上の塑性加
工を加える加工熱処理工程と;加工熱処理に続く冷却の
後、300〜400℃の温度範囲に3時間以上加熱する
過時効処理とを包含する冷間鍛造用棒鋼線材の製造方法
が開示されている。この公報は、「冷間圧延後の過時効
処理による耐歪時効性を高める為には、フェライト粒径
を小さくすることが有効であり、熱間加工の最終段階で
温度調整をして特定の加工度を与えることが、フェライ
ト粒の微細化及びこれによる歪時効の抑制・延性の改善
に臨界的効果をもたらす」等の知見に基づいてなされた
ものであり、「フェライト粒径を小さくすることが歪時
効の発生を抑制するのに非常に有効である」ことを実験
的に確認している。しかしながら、本発明者らが検討し
たところ、上記方法の如くフェライト粒径を小さくすれ
ば歪時効の発生は抑制され、150〜300℃の高温で
の変形抵抗は低減される反面、引張強度は上昇するた
め、室温での変形抵抗が上昇し、割れ等が顕著に発生し
て冷間加工性が低下することが分かった。本発明の如
く、「初期の強度を小さくし、室温での変形抵抗を低減
することにより冷間加工性を高める」という観点からす
れば、上記公報の様にフェライト粒径を微細化させる方
法は好ましくなく、むしろ、微細化とは逆に、フェライ
ト粒径を粗大化させる方が有効なのである。かかる意味
において、両者は全く異なる技術的思想を有するもので
ある。
【0018】以下、本発明を特定する各要件について説
明する。
【0019】上述した様に本発明の線状または棒状鋼
は、フェライト結晶粒の微細化による強度上昇を抑制す
ることにより冷間加工性を向上させたところに技術的思
想を有するものである。
【0020】かかる技術的思想を具現化する為には、線
状または棒状鋼の内部組織を以下の様に制御することが
推奨される。
【0021】実質的にフェライト組織またはフェライト
とパーライトの混合組織を有し、圧延材の中心〜直径/
8の範囲にあるフェライト組織中のフェライト粒度番号
は4〜9番であり、圧延材の最表層にあるフェライト組
織中のフェライト粒度番号は4〜10番で、且つ前記圧
延材の中心〜直径/8の範囲にあるフェライト組織中の
フェライト粒度番号より大きくする。
【0022】まず、本発明では、実質的にフェライト組
織またはフェライトとパーライトの混合組織を有するこ
とが必要である。本発明で目的とする、球状化材並みの
変形能と変形抵抗を確保するためには、上記組織とする
ことが不可欠だからである。尚、パーライトの分率が大
きくなるということは、変形抵抗の増大を招くことを考
慮すれば、C量により上昇することがあったとしても、
40%以下に抑えるのが推奨される。
【0023】本発明において、「最表層」とは、圧延材
の中心〜直径/8の範囲を除く表面部分の層を意味し、
フェライト粒度番号はJIS G 0552に記載のフ
ェライト結晶粒度試験法に基づいて測定されたものであ
る。この試験法によれば、フェライト粒度番号が大きく
なるとフェライト粒径は小さくなり、例えばフェライト
粒度番号4番は粒径90μmを、フェライト粒度番号9
番は16μmを、またフェライト粒度番号10番は11
μmを、夫々意味する。従って、上記フェライト粒度番
号をフェライト粒径に換算して表せば、圧延材の中心〜
直径/8の範囲にあるフェライト組織中のフェライト粒
径は16〜90μmであり、圧延材の最表層にあるフェ
ライト組織中のフェライト粒径は11〜90μmとな
る。
【0024】前述した通り、本発明の鋼は、フェライト
結晶粒の微細化による強度上昇を抑制することにより、
初期の引張強度を小さくし、室温および加工発熱領域の
変形抵抗を抑制したところに技術的思想を有するもので
ある。従って、本発明鋼の内部組織を構成しているフェ
ライト組織またはフェライト・パーライト組織のフェラ
イト粒径は、従来の如く微細化させて強度を向上させる
のではなく、微細化を抑制して強度上昇を抑制すべく、
その下限を特定した次第である。
【0025】尚、本発明では、圧延材の最表層にあるフ
ェライト組織中のフェライト粒度番号は、圧延材の中心
〜直径/8の範囲にあるフェライト組織中のフェライト
粒度番号以上に大きくなる。その理由は、圧延における
冷却は、水や空気等を鋼の表面に当てて冷やすため、自
然に最表層は中心部よりも冷却速度が大きくなり易く、
結晶粒が成長する時間が短くなってしまうからである。
ここで、圧延材最表層のフェライト粒度番号を、圧延材
の中心〜直径/8の範囲にあるフェライト粒度番号に比
べ、どれだけ大きくするかについては、圧延材のサイズ
や冷却条件等によっても相違するが、圧延材の中心〜直
径/8の範囲にあるフェライト粒度番号に比べ、概ね0
〜1番程度大きくすることが推奨される。
【0026】更に、上記関係を満足することを前提にし
たうえで、本発明では、圧延材の中心〜直径/8の範囲
にあるフェライト組織中のフェライト粒度番号を4〜9
番に、圧延材の最表層にあるフェライト組織中のフェラ
イト粒度番号を4〜10番に、夫々制御することが必要
である。この様に本発明では、フェライト粒度番号を、
圧延材の中心〜直径/8の範囲と、圧延材の最表層と
で、若干、その上限が異なっている(即ち、フェライト
粒径の下限が相違している)。その理由は、まず、圧延
材の中心〜直径/8の範囲では、固溶NがAlと結合し
て生成されるAlNのピンニング効果による結晶粒微細
化作用を抑制し、本発明において窒化物形成元素として
添加されるB及びZrによる作用(後記する)を有効に
発揮させる必要があり;一方、圧延材の最表層では、圧
延後の冷却によりAr1点以下まで急冷した後、復熱によ
り再結晶すると細粒化し易くなる為、最表層以外の部分
との関係では、フェライト粒径の下限を低くする必要が
あるという、両方の観点を考慮したことに基づくもので
あり、かかる観点から、最表層のフェライト粒径の下限
を厳しく設定した次第である。好ましくは圧延材の中心
〜直径/8の範囲にあるフェライト組織中のフェライト
粒径は16μm以上(フェライト粒度番号9番以下)、
圧延材の最表層にあるフェライト組織中のフェライト粒
径は11μm以上(フェライト粒度番号10番以下)で
ある。
【0027】この様に本発明では、フェライト結晶粒の
微細化に伴う強度上昇を抑制すべく、該フェライト粒径
の下限を上記の如く特定しているが、一方、フェライト
粒径があまり大きくなり過ぎると、冷間鍛造時における
割れ等の弊害を招く恐れがある。従って、本発明では、
その上限を、圧延材の中心〜直径/8の範囲においても
圧延材の最表層においても、フェライト粒度番号4番
(フェライト粒径90μm)に特定した次第である。好
ましくは、圧延材の中心〜直径/8の範囲にあるフェラ
イト組織中のフェライト粒径は64μm以下(フェライ
ト粒度番号5番以上)、圧延材の最表層にあるフェライ
ト組織中のフェライト粒径は45μm以下(フェライト
粒度番号6番以上)である。
【0028】次に、この様な所望の組織を得る為の好ま
しい鋼中成分について説明する。
【0029】前述した通り、本発明は、「初期の引張強
度を小さくして室温での変形抵抗を低減させると共に、
加工発熱領域での変形抵抗を低減するという意味におけ
る冷間加工性向上という課題を達成する為には、フェラ
イト結晶粒径は微細化させない方が有効である」という
観点から、圧延材の中心〜直径/8の範囲にあるフェラ
イト組織中のフェライト粒度番号を圧延材の最表層にあ
るフェライト組織中のフェライト粒度番号との関係で制
御するところに技術的意義を有するものであるが、かか
る組織に制御する為には、従来の如く、固溶C及び固溶
Nの固定化を目的として炭化物・窒化物形成元素を非選
択的且つ無作為に、或いは析出強化作用という観点から
添加するのではなく、フェライト結晶粒微細化による強
化抑制という観点から、添加する炭化物・窒化物形成元
素の種類を適切に選択することが有効である。従って、
鋼中成分については、Ti、Nb、V等のフェライト結
晶粒微細化元素を添加するのではなく、フェライト結晶
粒を微細化させない(むしろ粗大化させる)BやZrを
添加することが好ましい。
【0030】このうち、窒化物形成元素については、B
:0.0055%以下、Zr:0.035%以下の少
なくともいずれか一方を含み、且つ、N :0.000
5〜0.0070%を含有すると共に、B,Zr及びN
が下式を満足する様制御することが推奨される。 −0.0010≦[N]−1.3[B]−0.15[Z
r]≦0.0020 (式中、[ ]は、各元素の含有量を表す)
【0031】前述した通り、本発明では窒化物形成元素
として、Ti等のフェライト粒微細化元素を添加するの
ではなく、フェライト結晶粒を微細化させない(むしろ
粗大化させる)B及び/又はZrを添加するものであ
る。従って、上記元素は、従来の如く例えばBを焼入れ
向上元素として添加するのではなく、Nと結合してBN
/ZrNとして生成させ、冷間加工時の動的歪み時効を
抑制すると共に、Nの固溶強化を抑制し、必要以上のA
lNが析出する為にフェライト結晶粒が微細化して強度
が上昇するのを抑制することを目的として添加される。
かかる作用を有効に発揮させるためには、Bを0.00
05%以上(より好ましくは0.0010%以上)、Z
rを0.005%以上(より好ましくは0.010%以
上)添加することが推奨される。但し、Bを、0.00
55%を超えて添加すると、冷間加工性に悪影響を及ぼ
す様になる。より好ましくは0.0040%以下であ
る。同様にZrを、0.035%を超えて添加すると、
変形能が低下し、冷間加工性に悪影響を及ぼす様にな
る。より好ましくは0.025%以下である。
【0032】尚、上記B及びZrは、夫々単独で添加し
ても良く、或いは両方を添加しても良く、いずれにせ
よ、固溶Nの固定化のみを目的として添加される。従っ
て、上記元素は、基本的には、最終的に含有するNに応
じて適宜その含有量を調整することが好ましい。もし、
鋼中のNが0.0020%以下に常時抑えられるなら
ば、これらの元素を敢えて積極的に添加する必要はな
い。この程度の少量のN量が存在したとしても、冷間加
工性に悪影響を及ぼす恐れは少ないと考えられるからで
ある。
【0033】ここで、Nは、0.0005〜0.007
0%の範囲に制御することが推奨される。Nはフェライ
ト中に固溶し、冷間加工時における歪時効発生の原因と
なるので、できるだけ少ない方が好ましく、かかる観点
からその上限を0.0070%に定めた。より好ましく
は0.0050%以下である。一方、0.0005%未
満では、コストに見合う工業的な生産が困難となるため
である。より好ましくは0.0010%以上である。
【0034】更に本発明では、上記B,Zr及びNが下
式を満足することが推奨される。 −0.0010≦[N]−1.3[B]−0.15[Z
r]≦0.0020 (式中、[ ]は、各元素の含有量を表す)
【0035】これは、B及び/又はZrによる固溶Nの
固定化作用を有効に発揮させるために設けた式である。
まず、上式の下限値は、必要最小限のNを固定するB及
びZrを特定したものであり、下限値が−0.0010
以上であれば、BがNを固定する為に過剰に添加された
としても、焼入れ性に寄与することもなく、また、Zr
がNを固定する為に過剰に添加されたとしても、硫化物
や炭化物となって析出するため、冷間加工性の向上には
何ら悪影響を及ぼさないことを確認している。より好ま
しくは、上式の下限は−0.0005である。
【0036】また、上式の上限値は、添加されるN量の
上限をB量及びZr量との関係で特定したものであり、
上限値が0.0020を超えると、過剰のNがBr/Z
r以外のAlNの数が多くなり、フェライト結晶粒を微
細化してしまう。上式の上限値が0.0020以下であ
れば、たとえ、NがAlと結合してAlNを生成したと
しても、熱間圧延においてフェライト結晶粒を微細化さ
せることなく、しかも、熱間圧延のままであっても、球
状化焼鈍材並みに変形抵抗を低減させて変形能を確保す
ることができることを確認している。より好ましくは、
上式の上限は0.0015である。
【0037】以上が本発明に用いられる窒化物形成元素
に関与する元素についての説明であるが、更に本発明で
は、従来汎用されている炭窒化物形成元素に関し、以下
の様に制御することが推奨される。
【0038】Ti,Nb及びVの少なくとも一種を含
み、Nb及びVを合計で0.080%以下(0%を含
む)、Ti:0.020%以下(0%を含む) これらTi,Nb及びVの元素は、いずれも炭窒化物生
成元素であり、C及びNを固定するには有効であるが、
析出強化や結晶粒微細化による強化の為、強度が上昇す
ること;添加により、熱間圧延後の結晶粒微細化に寄与
することから、本発明の目的である「初期引張強度を小
さくし、室温での変形抵抗を小さくすることにより冷間
加工性を向上させる」うえでは、むしろ有害な元素であ
る。従って、上記元素の添加量はできるだけ少ない方が
好ましく、かかる観点から、Nb及びVを合計で0.0
80%以下(0%を含む)、Ti:0.020%以下
(0%を含む)に特定した次第である。特にTiは、上
記元素のなかでも最もNと結合し易く、Bと複合添加す
ると焼入れ性向上作用を発揮してしまうため、上記範囲
に制御することが推奨される。より好ましくは、Nb及
びVを合計で0.015%以下、Ti:0.010%以
下であり;更により好ましくは、Nb及びVを合計で
0.010%以下、Ti:0.005%以下である。
【0039】以上、本発明の技術的思想を具現化する為
の鋼中成分について説明したが、本発明では、更に、下
記元素を以下の様に制御することが推奨される。
【0040】C:0.001〜0.40% Cは、鋼材の必要強度を付与するために必須の元素であ
る。0.001%未満では所望の強度が得られず、ま
た、この様な低濃度に制御しようとすると工業的にコス
トが高くつき経済的でない。好ましくは0.003%以
上、より好ましくは0.005%以上、更により好まし
くは0.01%以上、特に好ましくは0.05%以上で
ある。一方、0.40%を超えるとパーライト分率が高
くなり、所望の変形能が得られない。好ましくは0.3
5%以下である。
【0041】Si:0.40%以下(0%を含む) Siは脱酸剤として有用な元素であるが、過剰に添加す
ると、固溶強化により冷間加工における加工荷重(変形
抵抗と概ね同義)が増加するのみならず、変形能の低下
を招く恐れがあるため、できるだけ少ない方が好ましい
という観点から、その上限を0.40%に定めた。0.
40%を超えて添加すると、変形能の低下が顕著に現れ
るからである。より好ましくは0.25%以下である。
【0042】Mn:0.15〜1.8% Mnは脱酸及び脱硫に有用であるのみならず、冷間加工
後の熱処理時における焼入れ焼戻し軟化抵抗を向上させ
るのに有用な元素である。この様な作用を有効に発揮さ
せるには、0.15%以上添加することが好ましい。よ
り好ましくは0.20%以上である。但し、過剰に添加
すると、熱間圧延後のフェライト・パーライト成長速度
が低下し、冷間加工性に有害なベイナイトが発生し易く
なるため、その上限を1.8%に定めた。より好ましく
は1.5%以下である。
【0043】上記のC,Si,Mn量は、あくまでも好
ましい範囲であって、上記範囲を外れたものは一切本発
明の範囲内に包含されないというものではないことは言
うまでもない。例えばJIS C 2503,JIS
G 4051,JIS G4106,JIS G 35
06,JIS G 3507等のJIS鋼種を本発明に
適用しても良く、JISに規定する成分範囲を外せない
という特段の事情がある場合には、JISに規定する範
囲内で添加することが推奨される。但し、冷間加工直後
の強度、及び冷間加工後・焼入れ焼戻し後の強度を合わ
せるのであれば、敢えてJISに規定する成分範囲を外
れても構わない。
【0044】sol.Al:0.01〜0.06% Alは脱酸に有用な元素である。しかし、Alは、Z
r,Ti,B,Nbの次に窒化物(AlN)を生成し易
い。このAlNが多くなると結晶粒の微細化を招くた
め、本発明の趣旨から言えば、AlNはできるだけ生成
させない方が好ましく、従って、Alの添加量もできる
だけ少ない方が良いが、上記趣旨に逸脱しない範囲で添
加しても良い。かかる観点から、本発明では下限を0.
01%に定めた。但し、過剰に添加すると、上記作用が
飽和してしまうのみならず、AlNの生成によるフェラ
イト結晶粒微細化作用が顕著になる為、その上限を0.
06%に定めた。より好ましくは0.015%以上、
0.05%以下である。
【0045】Cr:0.01〜0.50% Crは、熱間圧延時のフェライト・パーライト変態を促
進させ、強度上昇にあまり寄与することなく炭化物を析
出させるのに有効な元素であり、この様な作用を有効に
発揮させる為、下限を0.01%に定めた。より好まし
くは0.03%以上である。但し、0.50%を超えて
添加すると、引張強度が高くなり過ぎる。より好ましく
は0.30%以下である。
【0046】更に、以下の元素を添加することもでき
る。
【0047】P:0.001〜0.015%(0%を含
む) Pは焼入れ性向上元素として有効であり、この様な作用
を有効に発揮させ為に、下限を0.001%に定めた。
但し、0.015%を超えて添加すると、凝固時にミク
ロ偏析し、熱間圧延時には粒界に偏析して粒界を脆化さ
せ、結果的に冷間加工の際、割れる恐れが高くなる。よ
り好ましくは0.010%以下である。
【0048】S:0.015%以下(0%を含む) Sは、主にMnSの硫化物系介在物を形成し、熱間圧延
時に粒界に偏析して粒界を脆化させ、冷間加工の際、割
れる恐れがあることから、その上限を0.015%に定
めた。より好ましくは0.010%以下である。
【0049】本発明の鋼は上記成分を含有し、残部:実
質的に鉄であるが、上記成分以外にも、本発明の作用を
損なわない範囲で許容し得る許容成分を添加しても良い
し、不純物も含まれる。
【0050】次に、本発明に係る線材または棒材を製造
する方法について説明する。
【0051】本発明で目的とする所定の組織を得る為に
は、鋼片を800〜1100℃の範囲まで加熱し、75
0〜1100℃の範囲で所定の線径まで圧延した後、主
に水流によって600〜6000℃/分の冷却速度で5
00〜800℃まで冷却し、復熱によって回復した温度
(調整冷却開始温度)を750〜875℃に制御するこ
とが必要である。以下、各要件について説明する。
【0052】鋼片の加熱温度:800〜1100℃ この加熱温度は、フェライト結晶粒度の微細化を抑制
し、変形抵抗の低減を図る為に設定されたものである。
ここで、「鋼片の加熱温度」とは、放射温度計によって
測定されたものであり、厳密には、「鋼片の表面温度」
を意味する。1100℃を超えて加熱すると、フェライ
ト結晶粒径が大きくなり過ぎてしまい、延性が低下す
る。好ましくは1050℃以下、より好ましくは100
0℃以下である。一方、加熱温度が800℃未満になる
と、熱間変形抵抗が高くなり過ぎてしまい、圧延ロール
の摩耗、圧延モータのトリップ等を引き起こし、生産阻
害を招く恐れがある。好ましくは850℃以上である。
【0053】圧延温度:750〜1100℃ この温度は、圧延時においても上記鋼片加熱時と同様、
フェライト結晶粒度の微細化を抑制し、変形抵抗の低減
を図る為に設定されたものである。ここで、「圧延温
度」とは、放射温度計によって測定されたものであり、
厳密には、「鋼片の表面温度」を意味する。1100℃
を超えて圧延すると、フェライト結晶粒径が大きくなり
過ぎてしまい、延性が低下する。好ましくは1050℃
以下、より好ましくは1000℃以下である。一方、圧
延温度が750℃未満になると、フェライト結晶粒径が
小さくなるのみならず、再結晶しきれずにフェライト粒
内に不要な転位が残り易くなり、圧延後の強度が上昇す
る。好ましくは850℃以上である。尚、圧延ロールの
負荷増大、寸法精度の低下、表面疵の発生防止等を考慮
すれば、実用上は875〜975℃程度の圧延温度とす
ることが推奨される。
【0054】調整冷却開始温度:750〜875℃ 調整冷却開始温度とは、最終圧延後に、主に水を媒体と
して、600〜6000℃/分の冷却速度で最表面温度
が最低500〜800℃程度にまで冷却された後、冷却
帯(冷却コンベア)に巻取られながら、鋼片の保有する
熱(復熱)によって回復する温度を意味する。875℃
よりも高い温度では、スケールが厚くなり、その後の脱
スケール工程でトラブルが発生し易くなるのみならず、
冷却時間が長くなる為、生産性を阻害する。好ましくは
850℃以下である。一方、750℃よりも低くなる
と、冷却時に発生した表層部のマルテンサイトが復熱に
よって回復せず、焼戻しマルテンサイトが生成され、硬
くて脆い鋼になる為、冷間加工用には適さない。実操業
レベルで好ましいのは775℃以上である。
【0055】冷却速度:0.05〜5℃/秒(600℃
まで) これは、上記調整冷却開始温度に達してから、600℃
まで冷却する際における冷却速度を特定したものであ
る。本発明の如く、組織をフェライト組織またはフェラ
イト・パーライト組織に制御する為には、冷却速度を遅
くする程好ましいが、遅くなり過ぎると、パーライト
(フェライトとセメンタイトの層状組織)中のラメラー
間隔が広くなり、延性に乏しい組織となる恐れがあるた
め、その下限を0.05℃/秒に定めた。工業生産上、
品質安定性などを考慮すれば、0.2℃/秒以上、3℃
/秒以下とすることが推奨される。
【0056】尚、本発明によれば熱間圧延ままの線材や
棒鋼でも優れた冷間加工性が得られるが、この線材また
は棒鋼を、酸(塩酸、硫酸等)の浴槽に浸漬したり、機
械的に歪みを付与する等してスケールを除去した後、燐
酸亜鉛皮膜、燐酸カルシウム皮膜、石灰等の伸線前処理
を行い、金属石鹸などを潤滑剤として用いて伸線,冷間
圧延などを施した鋼線においても、同様の優れた冷間加
工性が得られる。
【0057】本発明には、上記線状または棒状鋼を用い
て得られる機械部品も包含されるが、ここで、転位セル
の平均面積が0.18〜0.50μm2であるものは好
ましい態様である。前述した通り、本発明では、固溶C
及び固溶Nを固定化するに当たり、フェライト結晶粒の
微細化抑制という観点から、線状または棒状鋼の内部組
織を構成しているフェライト組織またはフェライト・パ
ーライト組織のフェライト結晶粒を制御し、一方、鋼中
成分としては、フェライト結晶粒を微細化させない(む
しろ粗大化させる)炭化物・窒化物形成元素を特定して
いるが、これにより、冷間加工において鋼内部に導入さ
れる転位が上記の炭化物・窒化物形成元素や固溶C・固
溶Nによって固着されることなく進展するため、形成さ
れる転位セルが大きくなるのである。
【0058】但し、上記転位セルの平均面積が0.18
〜0.50μm2の範囲を外れると、室温での変形抵抗
及び加工発熱領域での変形抵抗が高くなり、冷間加工性
が低下してしまう。より好ましい下限は0.19μm2
(更により好ましくは0.20μm2)であり、より好
ましい上限は0.45μm2(更により好ましくは0.
40μm2)である。
【0059】以下、上記転位セルの平均面積を測定する
方法について説明する。まず、所定の圧縮率で圧縮した
試験片において、図6に示す組織観察位置からサンプル
を切出し、電解研磨により薄膜サンプルを作製する。こ
の薄膜サンプル中に存在する転位セルを、TEM(透過
型電子顕微鏡、倍率15000倍)により観察し、写真
撮影する。
【0060】次に、この転位セル写真から平均面積を算
出する。転位セルの形状は一般に長方形に近い為、より
精度よく転位セルの面積を求めるべく、長辺と短辺を掛
け合わせて面積を求めることとした。具体的には、転位
セルの長手方向とそれに直行する方向について直線(4
〜5μmに相当する長さ)を5本ずつ引き、これらの直
線によって切断される転位セルの数をカウントし、下記
式により転位セルの平均面積を求めた。 転位セルの平均面積S=(L1/I1)×(L2/I
2) 式中、L1:転位セルの長手方向に引いた直線の長さの
総和(5本分の長さ) L2:L1に直交する線の長さの総和(5本分の長さ) I1:L1によって切断された転位セル数の総和 I2:L2によって切断された転位セル数の総和 但し、転位セルをカウントする際、セルが明瞭でない場
合(転位によって囲まれたセルでない場合)はカウント
から除外し、直線もその部分を差引いた。
【0061】尚、転位セルの平均面積を本発明の範囲内
に制御する為には、前述した本発明の要件を満足する線
状または棒状鋼を、歪み0.2以上で伸線加工及び冷間
鍛造することが推奨される。伸線加工と冷間鍛造を合わ
せた歪量が0.2未満では導入される転位が少なくな
り、所望の強度が得られないからである。より好ましく
は0.4以上、更により好ましくは0.6以上である、
但し、歪量が3を超えると機械部品の成形が困難となる
為、その上限を3、より好ましくは2.5に制御するこ
とが推奨される。
【0062】ここで、伸線加工の歪み量は下式で算出さ
れるものとし、冷間鍛造における歪み量は、「鍛造、塑
性加工技術シリーズ4(コロナ社)」の第158頁表
5.2に記載された対数歪みを使用した。 ε=2In(D1/D2) 式中、εは歪み、D1は初期線径を、D2は伸線後の線
径を夫々意味する。
【0063】以下実施例に基づいて本発明を詳述する。
ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、
前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは
全て本発明の技術範囲に包含される。
【0064】
【実施例】表1に記載の成分組成からなる供試鋼(表中
の単位は質量%)を用い、表2〜4に示す種々の製造条
件により種々の線材(No.1〜19)を得た。ここで
No.A,B,Cは夫々、JIS G 3507に規定
するWRCH10K,SWRCH20K,SWRCH3
5Kの現用工程材である。また、A1はAの球状化焼鈍
処理省略を目的として溶製した本発明鋼、B1〜B4は
Bの球状化省略を目的として溶製した本発明鋼、C1は
Cの球状化省略を目的として溶製した本発明鋼を意味
し、B5〜B8は夫々、P及びS(B5),N及びZr
(B6),Ti(B7),Nb+Bの合計(B8)が本
発明の範囲を外れる比較鋼である。
【0065】次に、上記線材を、図1に示す様な圧縮試
験用試験片の形状(日本塑性加工学会が「鍛造、塑性加
工技術シリーズ4(コロナ社)p155」で推奨する形状
(鋼線の径×1.5)に切削し、これを据込み試験片と
して、据込み圧盤として同心円溝付の拘束型耐圧盤を使
用して据込み加工を行った。
【0066】尚、変形抵抗は圧縮率60%にて、室温の
場合と予備加熱300℃の場合の2水準で測定した。ま
た、変形能はNo.A,A1,B,B−1〜B8(N
o.1〜16)については圧縮率80%にて30個試験
し、割れの有無を判定し;一方、No.C及びC−1
(No.17〜19)は、現用鋼の変形能の観点から圧
縮率70%における試験を同様にして実施し、割れの有
無を判定した。
【0067】更に、No.1〜19の60%圧縮試験
片、及びNo.5,6の20〜80%圧縮試験片につい
て、前述の測定方法により転位セルの平均面積を夫々算
出した。尚、No.5及び6については、圧縮歪みと転
位セルの大きさ(平均面積)の関係を調べる為、圧縮率
を20〜80%(圧縮歪み0.27〜2.23)の範囲
で20%間隔で変化させ、転位セルの平均面積を同様に
算出した(各圧縮試験片につき、5個ずつ実施した)。
【0068】得られた結果を表2〜4に併記する。尚、
図2に、圧延材の中心〜直径/8の範囲にあるフェライ
ト組織中のフェライト粒度番号と変形抵抗(60%圧縮
率、室温)の関係を;図3に、圧延材の最表面にあるフ
ェライト組織中のフェライト粒度番号と変形抵抗(60
%圧縮率、室温)の関係を;図4に、圧延材の中心〜直
径/8の範囲にあるフェライト組織中のフェライト粒度
番号と変形抵抗(60%圧縮率、300℃)の関係を;
図5に、圧延材の最表面にあるフェライト組織中のフェ
ライト粒度番号と変形抵抗(60%圧縮率、300℃)
の関係を、夫々グラフ化して示す。尚、図2〜5におい
て、◇はフェライト粒度番号が本発明の要件を満足する
と共に、成分組成も本発明の好ましい要件を満足する本
発明鋼;△はフェライト粒度番号は本発明の要件を満足
するが、成分組成は本発明の好ましい要件を満足しない
参考鋼;○はフェライト粒度番号が本発明の要件を満足
しない比較鋼である。
【0069】また、図7に、転位セルの平均面積と変形
抵抗(60%圧縮率、室温)の関係を;図8に、転位セ
ルの平均面積と変形抵抗(60%圧縮率、300℃)の
関係を、夫々グラフ化して示す。更に図9に、No.5
及び6を用い、圧縮歪みと転位セルの平均面積(N=
5)との関係をグラフ化して示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】上記結果より、フェライト粒度番号を、圧
延材の中心〜直径/8の範囲では4〜9番、最表面では
4〜10番に制御することにより、球状化焼鈍すること
なしに、現用鋼の球状化並みの変形抵抗レベルまで概ね
低減することができた。更にフェライト粒度番号の制御
に加え、成分組成も本発明の好ましい範囲に制御したも
のは、現用鋼の変形抵抗よりも変形抵抗を低減すること
ができた。
【0075】また、冷間鍛造後の転位セルの平均面積を
現用鋼並みに大きくすることにより、球状化焼鈍するこ
となしに現用鋼の球状化並みの変形抵抗まで低減するこ
とができるのみならず、球状化焼鈍して得られる従来鋼
に比べ、圧縮後の硬さも上昇した。
【0076】これに対し、現用鋼において球状化焼鈍処
理を省略したNo.2,5及び18では、300℃の変
形抵抗が室温の変形抵抗に比べて増加し、更に転位セル
も微細化しており、これらは、加工発熱領域における冷
間鍛造には不向きであることが分かる。
【0077】また、図9より、本発明鋼(No.6)を
0.2以上の圧縮歪みで伸線加工及び冷間鍛造したとき
には、いずれのサンプルについても、圧縮率80%にお
いても0.20μm2以上の転位セル平均面積が得られ
たのに対し、比較鋼(No.5)では、圧縮率40%で
さえ、転位セルの平均面積が0.18μm2を下回るサ
ンプルが発生した。
【0078】参考までに、No.10及び16における
転位セルのTEM(透過型電子顕微鏡)写真を夫々図1
0及び図11に示す。このうちNo.10は、本発明の
要件を満足する鋼種B2を用いて鍛造した本発明例であ
るが、本発明の要件を満足する大きさな転位セル(平均
面積0.24μm2)が得られている。これに対し、B
8は本発明の要件を満足しない鋼種を用いて鍛造した比
較例であるが、転位セルの平均面積が小さいものであっ
た(0.12μm2)。
【0079】
【発明の効果】本発明は上記の様に構成されているの
で、球状化焼鈍処理を省略したとしても熱間圧延のまま
で冷間加工性に優れた線状または棒状鋼を効率よく提供
することができた。特に本発明の線状または棒状鋼は、
冷間加工時において、加工発熱によって生じる温度域
(概ね100〜350℃)における変形抵抗を小さくす
ることができる点で極めて有用である。更に上記本発明
の線状または棒状鋼を用いて得られる機械部品は、冷間
鍛造後の硬さが高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に用いた圧縮試験用試験片の形状を示す
図である。
【図2】圧延材の中心〜直径/8の範囲にあるフェライ
ト組織中のフェライト粒度番号と変形抵抗(60%圧縮
率、室温)の関係を示すグラフである。
【図3】圧延材の最表面にあるフェライト組織中のフェ
ライト粒度番号と変形抵抗(60%圧縮率、室温)の関
係を示すグラフである。
【図4】圧延材の中心〜直径/8の範囲にあるフェライ
ト組織中のフェライト粒度番号と変形抵抗(60%圧縮
率、300℃)の関係を示すグラフである。
【図5】圧延材の最表面にあるフェライト組織中のフェ
ライト粒度番号と変形抵抗(60%圧縮率、300℃)
の関係を示すグラフである。
【図6】転位セルの平均面積を測定する為の組織観察位
置を示す概略図である。
【図7】転位セルの平均面積と変形抵抗(60%圧縮
率、室温)の関係を示すグラフである。
【図8】転位セルの平均面積と変形抵抗(60%圧縮
率、300℃)の関係を示すグラフである。
【図9】圧縮歪みと転位セルの平均面積との関係を示す
グラフである。
【図10】No.10における、転位セルのTEM(透
過型電子顕微鏡)写真である。
【図11】No.16における、転位セルのTEM(透
過型電子顕微鏡)写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鹿礒 正人 神戸市灘区灘浜東町2番地 株式会社神戸 製鋼所神戸製鉄所内 Fターム(参考) 4K032 AA01 AA02 AA04 AA05 AA11 AA16 AA21 AA22 AA27 AA29 AA31 AA35 AA39 BA02 CA01 CA02 CC03 CC04 CD02

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的にフェライト組織またはフェライ
    トとパーライトの混合組織を有し、 圧延材の中心〜直径/8の範囲にあるフェライト組織中
    のフェライト粒度番号は4〜9番であり、 圧延材の最表層にあるフェライト組織中のフェライト粒
    度番号は4〜10番で、且つ前記圧延材の中心〜直径/
    8の範囲にあるフェライト組織中のフェライト粒度番号
    より大きくすることにより、フェライト結晶粒の微細化
    が抑制されたものであることを特徴とする室温及び加工
    発熱領域の変形抵抗の上昇が抑制された線状または棒状
    鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の線状または棒状鋼を用
    いて得られる機械部品。
  3. 【請求項3】 転位セルの平均面積が0.18〜0.5
    0μm2である請求項2に記載の機械部品。
JP2001042358A 2000-02-18 2001-02-19 機械部品 Expired - Fee Related JP3474545B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001042358A JP3474545B2 (ja) 2000-02-18 2001-02-19 機械部品

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000041735 2000-02-18
JP2000-41735 2000-03-30
JP2000-95509 2000-03-30
JP2000095509 2000-03-30
JP2001042358A JP3474545B2 (ja) 2000-02-18 2001-02-19 機械部品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001342544A true JP2001342544A (ja) 2001-12-14
JP3474545B2 JP3474545B2 (ja) 2003-12-08

Family

ID=27342420

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001042358A Expired - Fee Related JP3474545B2 (ja) 2000-02-18 2001-02-19 機械部品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3474545B2 (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007263739A (ja) * 2006-03-28 2007-10-11 Nippon Steel Corp 成形されたフェライト鋼板の局所域における歪み量の評価方法
JP2007263738A (ja) * 2006-03-28 2007-10-11 Nippon Steel Corp フェライト鋼板の加工硬化特性の評価方法
JP2007270343A (ja) * 2006-03-08 2007-10-18 Honda Motor Co Ltd 外輪部材の製造方法
JP2009120906A (ja) * 2007-11-14 2009-06-04 Kobe Steel Ltd 低温ねじれ特性に優れた線材・棒鋼およびその製造方法
WO2011108459A1 (ja) * 2010-03-02 2011-09-09 新日本製鐵株式会社 冷間鍛造性に優れた鋼線及びその製造方法
CN104946859A (zh) * 2015-05-21 2015-09-30 遵义天义利威机电有限责任公司 六角法兰螺母的热处理调制工艺
KR101630981B1 (ko) 2014-12-15 2016-06-16 주식회사 포스코 냉간가공성이 우수한 선형 또는 봉형 강 및 그 제조방법
KR101676187B1 (ko) 2015-09-04 2016-11-15 주식회사 포스코 냉간가공성이 우수한 선형 또는 봉형 강 및 그 제조방법
JP2019500489A (ja) * 2015-11-12 2019-01-10 ポスコPosco 冷間鍛造性に優れた線材及びその製造方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5486634B2 (ja) 2012-04-24 2014-05-07 株式会社神戸製鋼所 冷間加工用機械構造用鋼及びその製造方法

Cited By (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007270343A (ja) * 2006-03-08 2007-10-18 Honda Motor Co Ltd 外輪部材の製造方法
JP2007263739A (ja) * 2006-03-28 2007-10-11 Nippon Steel Corp 成形されたフェライト鋼板の局所域における歪み量の評価方法
JP2007263738A (ja) * 2006-03-28 2007-10-11 Nippon Steel Corp フェライト鋼板の加工硬化特性の評価方法
JP4580360B2 (ja) * 2006-03-28 2010-11-10 新日本製鐵株式会社 フェライト鋼板の加工硬化特性の評価方法
JP2009120906A (ja) * 2007-11-14 2009-06-04 Kobe Steel Ltd 低温ねじれ特性に優れた線材・棒鋼およびその製造方法
JP5026626B2 (ja) * 2010-03-02 2012-09-12 新日本製鐵株式会社 冷間鍛造性に優れた鋼線及びその製造方法
WO2011108459A1 (ja) * 2010-03-02 2011-09-09 新日本製鐵株式会社 冷間鍛造性に優れた鋼線及びその製造方法
CN102741441A (zh) * 2010-03-02 2012-10-17 新日本制铁株式会社 冷锻性优良的钢丝及其制造方法
KR101297539B1 (ko) 2010-03-02 2013-08-14 신닛테츠스미킨 카부시키카이샤 냉간 단조성이 우수한 강선 및 그 제조 방법
KR101630981B1 (ko) 2014-12-15 2016-06-16 주식회사 포스코 냉간가공성이 우수한 선형 또는 봉형 강 및 그 제조방법
CN104946859A (zh) * 2015-05-21 2015-09-30 遵义天义利威机电有限责任公司 六角法兰螺母的热处理调制工艺
KR101676187B1 (ko) 2015-09-04 2016-11-15 주식회사 포스코 냉간가공성이 우수한 선형 또는 봉형 강 및 그 제조방법
JP2019500489A (ja) * 2015-11-12 2019-01-10 ポスコPosco 冷間鍛造性に優れた線材及びその製造方法
US10988821B2 (en) 2015-11-12 2021-04-27 Posco Wire rod having excellent cold forgeability and manufacturing method therefor

Also Published As

Publication number Publication date
JP3474545B2 (ja) 2003-12-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4650006B2 (ja) 延性および伸びフランジ性に優れた高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP2007277696A (ja) 極軟質高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP2008069452A (ja) 高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP4600196B2 (ja) 加工性に優れた高炭素冷延鋼板およびその製造方法
JP6065121B2 (ja) 高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP5357439B2 (ja) 球状化焼鈍が省略可能な線状鋼または棒状鋼
JP2006291237A (ja) 冷間鍛造性と切削性に優れた機械構造用鋼
JP2000265240A (ja) 精密打抜き性に優れた炭素鋼板
WO2016158343A1 (ja) 冷間圧造性、および焼入れ焼戻し後の耐遅れ破壊性に優れたボルト用鋼線、並びにボルト
JP6569845B1 (ja) 高炭素熱延鋼板およびその製造方法
JP2001342544A (ja) 室温及び加工発熱領域の変形抵抗の上昇が抑制された線状または棒状鋼、および機械部品
JP4696853B2 (ja) 加工性に優れた高炭素冷延鋼板の製造方法および高炭素冷延鋼板
JP5796781B2 (ja) ばね加工性に優れた高強度ばね用鋼線材およびその製造方法、並びに高強度ばね
JP4696753B2 (ja) 打抜き加工性に優れた高炭素冷延鋼板の製造方法および高炭素冷延鋼板
JPH1161272A (ja) 成形性に優れた高炭素冷延鋼板の製造方法
JP3999457B2 (ja) 冷間加工性に優れた線材・棒鋼およびその製造方法
JPH09324212A (ja) 焼入性と冷間加工性に優れた高炭素熱延鋼帯の製造方法
JP2000008140A (ja) 線状または棒状鋼、および機械部品
JP2000119806A (ja) 冷間加工性に優れた鋼線材およびその製造方法
JP3474544B2 (ja) 室温及び加工発熱領域の変形抵抗の上昇が抑制された線状または棒状鋼
JP3779584B2 (ja) 変形能に優れた線状または棒状鋼、および機械部品
JP3579558B2 (ja) 耐焼割れ性に優れた軸受鋼
JPH11131137A (ja) 高炭素熱延鋼板の製造方法
JP2003129176A (ja) 伸線前の熱処理が省略可能な伸線加工性に優れた線状または棒状鋼、および軸受部品
WO2019203251A1 (ja) 熱延鋼板

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20030826

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20070919

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080919

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080919

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090919

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090919

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100919

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100919

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110919

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110919

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120919

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120919

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130919

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees