JP2001330793A - パルス光生成装置 - Google Patents

パルス光生成装置

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JP2001330793A
JP2001330793A JP2000152609A JP2000152609A JP2001330793A JP 2001330793 A JP2001330793 A JP 2001330793A JP 2000152609 A JP2000152609 A JP 2000152609A JP 2000152609 A JP2000152609 A JP 2000152609A JP 2001330793 A JP2001330793 A JP 2001330793A
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Japan
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pulse
photonic crystal
light
photonic
pulse light
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JP2000152609A
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English (en)
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Tomoko Tanaka
智子 田中
Susumu Noda
進 野田
Aronkaan Chuteinan
アロンカーン チュティナン
Taku Asano
卓 浅野
Munetsugu Yamamoto
宗継 山本
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Kansai Technology Licensing Organization Co Ltd
ATR Adaptive Communications Research Laboratories
Original Assignee
Kansai Technology Licensing Organization Co Ltd
ATR Adaptive Communications Research Laboratories
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 パルス幅を変えられるパルス光生成装置を提
供する。 【解決手段】 パルス光生成装置10は、光源1と、フ
ォトニック結晶体2とを備える。フォトニック結晶体2
は、棒状のGaAsを一定間隔で2次元的もしくは3次
元的に配列した面心立方格子構造から成り、フォトニッ
クバンドを有する。光源1から出射された単一のパルス
成分を有するパルス光PH1は、フォトニックバンドの
上位バンドにエネルギー分布を有する。フォトニック結
晶体2に入射したパルス光PH1は、密に詰まったフォ
トニックバンドの上位バンドを伝搬し、各エネルギー値
を有する成分間に位相差が生じる。そして、位相差を生
じた成分間で干渉が生じ、フォトニック結晶体2からフ
ェムト秒オーダーのパルス幅を有するパルス光PH2が
出射される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、フォトニック結
晶を用いたパルス光生成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】植物が光を用いて二酸化炭素と水とによ
り炭水化物を生成する光合成、および生体内での情報伝
達等に関する化学反応は100フェムト秒(fs)程度
の極めて速い速度で起こる。そして、かかる反応の機構
を調べるためにフェムト秒の極短パルス光が用いられて
いる。
【0003】フェムト秒オーダーの極短パルス光は、衝
突モード同期(CPM:Colliding Puls
e Mode−locking)リング色素レーザやチ
タン・サファイア(Ti:Al23)レーザによって発
生させられる。衝突モード同期リング色素レーザは、可
飽和色素とレーザ色素とをリング共振器長Lの4分の1
の位置に設置した構成から成る。そして、時間t=0に
おいて、互いに逆方向に進行する2つのパルスを可飽和
色素に吸収させて可飽和色素中で衝突させる。その結
果、可飽和色素中で飽和効果を増強された2つのパルス
は、時間t=L/4c(c:光速度)の後、順次、レー
ザ色素により増幅されて外部へ取り出される。衝突モー
ド同期リング色素レーザは、50〜100fsのパルス
光を安定して発生する。
【0004】また、モード同期のチタン・サファイア
(Ti:Al23)レーザは、サファイア(Al23
結晶中にドープされたTi3+イオンの励起準位(22
と基底準位(2E)間遷移によってレーザ発振が起こ
る。222E遷移の吸収スペクトルは、波長490n
mにピークを有し、およそ波長400〜600nmの範
囲の光を吸収するものである。また、222E遷移の
発光スペクトルは、波長760nmにピークを有し、波
長600〜1100nmの範囲の光を発光するものであ
る。このレーザは、励起準位でのエネルギー緩和時間
(3.2μs)が共振器長往復時間(〜ns)に比べて
十分に長いことから、緩和発振が起り易い。そして、安
定なフェムト秒パルス(〜100fs)が定常的に得ら
れる。また、波長600〜1100nmの範囲の光を発
光するため、波長可変性も有する。
【0005】衝突モード同期リング色素レーザやサファ
イアレーザからは、パルス幅が一定のパルス光が出射さ
れる。
【0006】また、衝突モード同期リング色素レーザや
サファイアレーザによる極短パルス光を対象物に照射す
るために空気中または個体中を伝搬させると、パルス光
が伝搬する媒質の群速度の分散に起因してパルス幅が変
化してしまうという問題があるため、出射直後のパルス
幅を有するパルス光を対象物に照射するために、レーザ
からの光をグレーティングを用いて回折させ、群速度を
補正した後に回折した2つのパルス光を合成して所望の
パルス幅を実現した後に対象物に照射することが行われ
ている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、パルス幅が数
100フェムト秒の極短パルス光を用いて光合成や人体
内での有機物の反応を解析するには、パルス幅を変化さ
せられる方が便利であるが、従来の極短パルス光の発生
方法ではパルス幅を自由に変えられないという問題があ
った。
【0008】また、従来の方法では、光源から出射され
た直後のパルス幅を再合成して対象物に照射するには、
全長十数cmという大きな光学系が必要となり、不便で
あるという問題もあった。
【0009】そこで、本発明は、かかる問題を解決する
ためになされたものであり、その目的はパルス幅を変え
られるパルス光生成装置を提供することにある。
【0010】また、本発明の別の目的は、小さい光学系
により出射直後のパルス幅を変えずに対象物にパルス光
を照射できるパルス光生成装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】この発明によるパルス光
生成装置は、短パルス幅を有する単一のパルス成分から
成る第1のパルス光を出射する光源と、光源から出射さ
れた第1のパルス光を入射し、複数のパルス成分から成
る第2のパルス光を出射するフォトニック結晶体とを含
み、第1のパルス光は、フォトニック結晶体のフォトニ
ックバンドの上位バンドにエネルギー分布を有し、第2
のパルス光は、第1のパルス光の波長、もしくは第1の
パルス光がフォトニック結晶体に入射する方向に基づい
て決定されるパルス幅を有する。
【0012】光源から出射されたフェムト秒オーダーの
短パルス幅を有する単一のパルス成分から成る第1のパ
ルス光がフォトニック結晶体に入射すると、第1のパル
ス光はフォトニック結晶体の密に詰まった上位バンドに
エネルギー分布を有するため、各エネルギーによって異
なるフォトニックバンドを伝搬する。その結果、伝搬す
るフォトニックバンドによって光の伝搬速度が異なり、
速度差が生じた光が相互に干渉するため、速度差に応じ
て決定されるパルス幅を有する複数のパルス成分から成
る第2のパルス光がフォトニック結晶体から出射され
る。また、第1のパルス光の波長もしくはフォトニック
結晶体への入射方向を変えることによっても、入射光は
異なるフォトニックバンドを伝搬し、その伝搬速度差に
応じて決定されるパルス幅を有する第2のパルス光がフ
ォトニック結晶体から出射される。
【0013】従って、フォトニック結晶体に入射する第
1のパルス光の波長もしくは入射方向を変えることによ
りパルス幅の異なるパルス光を発生させることができ
る。
【0014】好ましくは、パルス光生成装置を構成する
フォトニック結晶体は、第1の屈折率を有する第1の物
質と、第1の屈折率より大きい第2の屈折率を有する第
2の物質とを2次元的もしくは3次元的に交互、且つ、
周期的に配列して成る。
【0015】屈折率の異なる2つの物質を2次元的もし
くは3次元的に交互、且つ、周期的に配列してフォトニ
ック結晶体が作製されるため、入射光は、その方向が変
化してもフォトニックバンドを伝搬する。つまり、いず
れの方向からフォトニック結晶体に入射しても、入射光
はフォトニックバンドを伝搬する。
【0016】従って、光源とフォトニック結晶体との相
対位置は限定されず、パルス光生成装置を容易に作製で
きる。
【0017】好ましくは、第2の物質は棒状形状から成
り、フォトニック結晶体は、第1の方向に第1および第
2の物質を交互、且つ、周期的に配列して成る第1の層
と、第1の方向と同一平面内における第1の方向に垂直
な第2の方向に第1および第2の物質を交互、且つ、周
期的に配列して成る第2の層とを第1および第2の方向
に垂直な第3の方向に交互に積層して成る。そして、第
1の層における棒状形状の長手方向は第2の方向であ
り、第2の層における棒状形状の長手方向は第1の方向
である。
【0018】棒状形状の第1および第2の物質を交互、
且つ、周期的に配列して層を構成し、隣接する層間で棒
状形状の長手方向が直交するように層を積層することに
よってフォトニック結晶体を作製する。
【0019】従って、簡単な形状の物質を用いてフォト
ニック結晶体を作製することができる。
【0020】特に、好ましくは、第1の物質は空気であ
り、第2の物質はGaAsである。隣接する層間におい
て、棒状形状の長手方向が直交するように棒状形状のG
aAsを周期的に配列してフォトニック結晶体が作製さ
れる。
【0021】従って、屈折率比が2.0以上のフォトニ
ック結晶体を容易に作製できる。好ましくは、パルス光
生成装置は、フォトニック結晶体に対する第1のパルス
光の入射方向を変更する変更手段をさらに含む。
【0022】変更手段は、第1のパルス光のフォトニッ
ク結晶体への入射方向を変更する。その結果、フォトニ
ック結晶体への入射方向に基づいて決定されるパルス幅
を有する第2のパルス光がフォトニック結晶体から出射
される。
【0023】従って、パルス幅の異なるパルス光を、適
宜、発生させることができる。特に、好ましくは、変更
手段は、フォトニック結晶体に含まれる基板に垂直な軸
の回りにフォトニック結晶体を回転させる回転手段から
成る。
【0024】フォトニック結晶体を回転させることによ
って第1のパルス光のフォトニック結晶体への入射方向
が変更する。その結果、フォトニック結晶体への入射方
向に基づいて決定されるパルス幅を有する第2のパルス
光がフォトニック結晶体から出射する。
【0025】従って、フォトニック結晶体を回転させる
ことによって容易にパルス幅の異なるパルス光が発生さ
れる。
【0026】特に、好ましくは、変更手段は、フォトニ
ック結晶体に含まれる基板に垂直な軸の回りにフォトニ
ック結晶体を回転させる回転手段と、基板に垂直、且
つ、第1のパルス光の光軸に並行な平面内においてフォ
トニック結晶体を中心にした円周に沿って光源を移動さ
せる移動手段とから成る。
【0027】回転手段によってフォトニック結晶体を回
転させ、移動手段によって光源をフォトニック結晶体の
回りに移動させる。その結果、第1のパルス光のフォト
ニック結晶体に対する相対位置が変更され、第1のパル
ス光のフォトニック結晶体への入射方向が変わる。そし
て、入射方向に基づいて決定されるパルス幅を有する第
2のパルス光がフォトニック結晶体から出射される。
【0028】従って、フォトニック結晶体の回転と、光
源の移動とによってパルス幅の異なるパルス光を、容易
に、発生させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一
または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さ
ない。
【0030】[実施の形態1]図1は、この発明による
パルス光生成装置の実施の形態1を示し、パルス光生成
装置10は、光源1と、フォトニック結晶体2とを備え
る。光源1は、同期モード型チタン・サファイア(T
i:Al23)レーザからの0.7〜1.0μmの波長
を有する光をパラメトリック光発生装置により1.2〜
2.0μmの波長を有する光に増幅し、さらに差周波発
生装置により5.0〜8.0μmの波長を有する光に増
幅して、パルス幅200フェムト秒(fs)の単一のパ
ルス成分から成るパルス光PH1を出射する。パルス光
PH1のエネルギーは1μJである。
【0031】フォトニック結晶体2は、後述するように
パルス光PH1を入射し、パルス光PH1の波長もしく
は入射方向に基づいて決定されるパルス幅を有する複数
のパルス成分から成るパルス光PH2を出射する。光源
1とフォトニック結晶体2との距離は、2mであり、究
極的には光源1とフォトニック結晶体2とを接触させて
パルス光生成装置10を作製しても良い。
【0032】従って、パルス光生成装置10は、単一の
パルス成分から成るパルス光PH1を、その波長または
入射方向に基づいて決定されるパルス幅を有する複数の
パルス成分から成るパルス光PH2に変換して対象物3
に照射するものである。
【0033】図2は、図1に示した光学素子10を構成
するフォトニック結晶体2の構造を示したものであり、
フォトニック結晶体1は、幅d1の棒状のGaAs20
Xを基板22に垂直な方向DR1に間隔d2で配置し、
幅d1の棒状のGaAs20Yを前記方向DR1に垂直
な方向DR2に間隔d3で配置し、幅d1の棒状のGa
As20Zを前記方向DR1および前記方向DR2に垂
直な方向DR3に間隔d3で配置した構造を有する。棒
状のGaAs20X,20Y,20Zは、辺の長さがd
1,d2の長方形の断面形状を有し、長手方向の長さは
d4である。その結果、フォトニック結晶体1は、前記
方向DR1に幅d1のGaAs20Xと幅d1の空気の
領域21Xとを交互、且つ、周期的に配列し、前記方向
DR2に幅d1のGaAs20Yと幅d3の空気の領域
21Yとを交互、且つ、周期的に配列し、前記方向DR
3に幅d1のGaAs20Zと幅d3の空気の領域21
Zとを交互、且つ、周期的に配列した構造を有する。な
お、フォトニック結晶体2に入射する光の波長が5〜8
μmの場合、d1は約1.2μmであり、d2は約1.
2μmであり、d3は約2.8μmであり、d4は約1
00μmである。
【0034】また、本発明においては、d1=d2=d
3であってもよい。すなわち、フォトニック結晶体2
は、屈折率3.3のGaAsと屈折率1.0の空気の領
域とが2次元的もしくは3次元的に交互、且つ、周期的
に配列された構造を有する。そして、配列の周期は、前
記DR1方向には4d2であり、前記DR2およびDR
3方向にはd1+d3である。そして、d1=d2=d
3の場合、周期は前記DR1,DR2,DR3において
2d1である。
【0035】1つのGaAs20Xと、それに隣接する
空気の領域21Xとでフォトニック結晶体2における1
周期を構成するが、この1周期は、フォトニック結晶体
2に入射する光の波長に基づいて決定される。従って、
1周期がd1+d3である場合、入射する光の波長は、
5〜10μmである。
【0036】また、フォトニック結晶体2は、棒状のG
aAsと空気の領域とを交互、且つ、周期的に配列して
成る層を、それに隣接する層間において棒状のGaAs
の長手方向が直交するように、基板13と垂直な方向D
R1に積層した構造を有するものとして把握することも
できる。そして、基板に垂直な方向DR1における積層
数は5〜8である。
【0037】フォトニック結晶体2においては、棒状の
GaAsの長手方向が基板13に並行な1つの方向DR
3を向いている2つの層14,15間においてGaAs
の配置位置が前記方向DR3に垂直な方向DR2に半周
期ずれ、棒状のGaAsの長手方向が前記方向DR3に
垂直な方向DR2を向いている2つの層16,17間に
おいてGaAsの配置位置が前記方向DR3に半周期ず
れている。すなわち、フォトニック結晶体2は、ダイヤ
モンド構造を有する。
【0038】図3を参照して、図2に示す構造を有する
フォトニック結晶体2のフォトニックバンドについて説
明する。横軸はkベクトルであり、縦軸はエネルギー準
位と考えられる。フォトニックバンドにおいては、エネ
ルギー的に下位のバンド27と上位のバンド28とが存
在し、下位のバンド27の最上位置と、上位のバンド2
8の最下位の位置との差がフォトニックバンドギャップ
Ephgである。そして、フォトニックバンドギャップ
Ephgの大きさは波数(横軸のkの値)によって異な
る。フォトニック結晶体2は、屈折率3.3のGaAs
と屈折率1.0の空気とで構成されるため、下位のバン
ド27と上位のバンド28との間に開きがあるが、フォ
トニックバンドにおいて下位のバンドと上位のバンドと
の間に開きを生じさせるためには、2.0以上の屈折率
比がある2つの物質でフォトニック結晶体2を構成する
ことが必要である。また、図3に示すようなフォトニッ
クバンドが現れるためには、図2に示したGaAsと空
気の領域とを交互、且つ、周期的に配列した層を少なく
とも5層以上積層することが必要である。
【0039】フォトニックバンドギャップEphg内に
は準位は存在せず、フォトニックバンドギャップEph
gのエネルギーに相当するエネルギーを有する光はフォ
トニック結晶体2を透過することができない。
【0040】フォトニック結晶体2は、図2に示すよう
な周期構造を有する結果、フォトニック結晶体2に入射
した光は屈折率の異なる2つの物質の界面で反射され、
その反射光と入射光とが相互に干渉することにより屈折
率の大きい物質中に光を局在化させる。つまり、フォト
ニック結晶は、屈折率を周期的に変化させることによ
り、入射した光を屈折率の大きい物質中に局在化させ、
光が伝搬する準位を形成するものである。その結果、図
3に示すフォトニックバンドが構成される。
【0041】フォトニック結晶体では、フォトニックバ
ンドギャップEphgより小さいエネルギーを有する光
が入射しても、その光はフォトニック結晶体を透過しな
い。フォトニック結晶体においては、計算されたフォト
ニックバンドにおいて準位の存在するエネルギーに相当
するエネルギーを有する光のみを透過する。すなわち、
図3に示すフォトニックバンドは、入射した光がフォト
ニック結晶体を伝搬する光路のようなものである。この
点が類似のバンド構造を有する結晶性半導体と異なる点
である。
【0042】図3に示すようなフォトニックバンドを有
するフォトニック結晶体2においては、フェムト秒オー
ダーの極短パルス幅を有する1つのパルス成分から成る
パルス光PH1を、複数のパルス成分から成るパルス光
PH2に変換することが期待される。そこで、透過方向
に対するミュアーの吸収境界条件および伝搬方向に対す
る周期境界条件を設定した3次元FDTD(Finit
e Difference Time Domain)
法により3次元フォトニック結晶における極短パルス光
の透過の振る舞いを解析した。中心周波数f、パルス幅
200fsのガウシャン分布を有するパルス光が3次元
フォトニック結晶を透過すると仮定し、中心周波数f
を、<Γ−X’>方向におけるフォトニックバンドギャ
ップより下の準位からフォトニックバンドギャップの上
の準位まで変化させた。また、入射光はフォトニック結
晶を構成する物質と何ら干渉しないと仮定した。その結
果、図4に示すような計算結果が得られた。図4におい
て、横軸は時間を示し、縦軸はパルス光の強度を示す。
フォトニックバンドギャップより上の周波数を有するパ
ルス光の形状は、その周波数に依存して劇的に変化す
る。これは、フォトニックバンドギャップより上のバン
ドの分散関係が非常にユニークであり、図3に示すよう
に複雑であるからである。一方、フォトニックバンドギ
ャップより長い波長を有するパルス光は、フォトニック
結晶を透過した後、その形状は殆ど変化しない。これ
は、低いバンドの群速度の分散関係は単純であり、電磁
波の透過に対して殆ど影響しないためである。
【0043】周波数f=0.8のパルス光に対しては、
テラ(T)Hzの周波数を有するパルス列が観測され得
る。パルス列のフーリエ成分は、数学的にテラ(T)H
zの周期を有するスペクトルの変調として表現可能であ
る。このことは、結晶における多重反射の結果でもな
く、結晶の全ての層からの反射の結果によるものでもな
い。これは、周波数0.8のパルス光だけに観測される
ことである。
【0044】そこで、上記の理論予測に基づいて、中赤
外周波数領域での3次元フォトニック結晶における極短
パルス光の透過について実験を行った。光源は、モード
同期型のチタン・サファイアレーザにより発生した光を
再生増幅光パラメトリック増幅差周波発生により得られ
たフェムト秒パルス光である。
【0045】実験に用いた光学系を図5に示す。出射さ
れたパルス光は、ZnSeビームスプリッタ32により
2つのビームに分割され、1つのビームは周波数f1
チョッパ35でチョップされた後、反射ミラー36,3
7を介してフォトニック結晶38を通過する。そして、
もう1つのビームは、周波数f0のチョッパ33でチョ
ップされた後、反射ミラー34を介してMach−Ze
hnder干渉計39に入射し、この干渉計39により
フォトニック結晶38を通過した光と合成される。合成
された2つのビームは、HgCdTe検出器40で検出
される。反射ミラー36,37は、チョッパ35を通過
したビームがフォトニック結晶37に入射するようにコ
ンピュータ42によりその角度が制御され、チョッパ3
3,35はロックインアンプ41により同期がとられて
いる。
【0046】図6は、図5に示す光学系を用いた実験結
果を示しており、図6においては、縦軸がパルス光の強
度、横軸が遅延時間であり、曲線k1が実験結果、曲線
k2が計算結果である。定性的には実験結果は計算結果
と良い一致を示す。Γ−X’方向における上位のバンド
端のバンド構造は平坦であり、そのような領域において
は、電磁波の速度、つまり、群速度は非常に小さく、ダ
イナミックに変化する。極短パルス光は、非常に広いス
ペクトル(中心周波数0.8に対して周波数の変動幅が
0.08)を持つので、上位のバンド端(周波数0.8
に相当)に適合する周波数を有するパルスは、いくつか
の上位バンドを活性化する。その結果、周波数0.8の
極短パルスは結晶中のいくつかのモードに沿って透過
し、モード間の干渉によって出力パルスは発振的な振る
舞いを示す。そして、出力パルスは、約300fsのパ
ルス幅を有する。一方、周波数0.94のパルスはフォ
トニック結晶中の1つのバンドだけを活性化するため、
フォトニック結晶を通過した後の光は発振的な振る舞い
を示さない。
【0047】すなわち、図2に示す結晶構造において、
基板22に垂直な方向DR1から光が入射すると、図3
に示すフォトニックバンドにおいて、Γ−X’領域30
のバンドに光が入射する。そして、光源1から出射され
るパルス幅200fsのパルス光PH1は、分布幅0.
08の周波数0.8を有するので、領域29で示される
広いエネルギー分布を有する。つまり、パルス光PH1
はフォトニックバンドの上位のバンドにエネルギー分布
を有する。その結果、パルス光PH1の各エネルギー値
を持った成分は、Γ−X’領域30に存在する複数のバ
ンド31のうち、エネルギー準位的に適合したバンドを
活性化し、その活性化したバンドに沿ってフォトニック
結晶体2を伝搬する。
【0048】その結果、エネルギー的に高い準位に存在
するバンドを伝搬する光は速く伝搬し、エネルギー的に
低い準位に存在するバンドを伝搬する光は遅く伝搬する
ため、位相差を有する複数の光が生成され、その位相差
を有する複数の光が相互に干渉する結果、複数のパルス
成分から成るパルス光PH2がフォトニック結晶体2か
ら出射される。そして、パルス光PH2のパルス幅は、
エネルギー分布を有する入射光PH1の各成分がどの程
度の位相差を有する光として相互に干渉するか、つま
り、フォトニックバンドのうち、どのバンドに沿ってフ
ォトニック結晶体2を伝搬するかによって決定される。
そして、位相差が大きい場合はパルス幅の広いパルス光
PH2がフォトニック結晶体2から出射され、位相差が
小さい場合はパルス幅の狭いパルス光PH2がフォトニ
ック結晶体2から出射される。
【0049】従って、パルス光生成装置10は、200
fsの極短パルス幅を有する単一のパルス成分から成る
パルス光PH1をフォトニック結晶体2のΓ−X’方向
から入射させることにより約300fsのパルス幅を有
する複数のパルス成分から成るパルス光PH2に変換す
ることができる。また、フォトニック結晶体2の寸法は
非常に小さいので、小さい光学系により所望のパルス幅
を有するパルス光を発生させることができる。
【0050】[フォトニック結晶体の作製]図7および
図8を参照して、フォトニック結晶体2の作製方法につ
いて説明する。GaAsウェハから成る基板22上にG
aAs43を結晶成長させる(図7の(a)参照)。こ
の場合、GaAs43の膜厚はフォトニック結晶体2の
基板22に垂直な方向DR1におけるGaAs20X,
20Y,20Zの長さd2に相当する膜厚であり、結晶
成長の方法は、液相成長法(LPE:LiquidPh
ase Epitaxy)、分子線結晶成長法(MB
E:Molecular Beam Epitaxy)
等の一般的な方法である。GaAsを結晶成長させた
後、電子ビームEBを矢印44の方向にスキャンさせて
膜状のGaAsを間隔d3でカッティングし(図7の
(b)参照)、幅d1、および長手方向の長さd4を有
する棒状のGaAs45,45,45,・・・を基板2
2上に作製する(図7の(c)参照)。棒状のGaAs
45,45,45,・・・を基板22上に作製したもの
を2個作り、棒状のGaAs45,45,45,・・・
の長手方向が直交するように棒状のGaAs45,4
5,45,・・・同士を重ねる(図8の(d)参照)。
この場合、棒状のGaAs45,45,45,・・・の
表面は洗浄されており、未結合手が存在するため、棒状
のGaAs45,45,45,・・・と棒状のGaAs
45,45,45,・・・とを接触させるだけGaAs
同士は結合する。その後、上側の基板を半導体プロセス
におけるウエットエッチングにより取除く(図8の
(e)参照)。
【0051】図7の(a)〜図8の(e)までの工程を
繰り返すことによって、図2に示すように棒状のGaA
sと空気とから成る層を基板22に垂直な方向DR1に
積層したフォトニック結晶体2が作製される。
【0052】図9を参照して、棒状のGaAsの各層に
おける配置について説明する。基板22上に第1層23
の棒状のGaAsが形成され、その上に第2層24の棒
状のGaAsが第1層23の棒状のGaAsと直交する
ように形成される。そして、第3層25の棒状のGaA
sは、第1層23の棒状のGaAsと同じ方向に配置さ
れるが、第3層25の棒状のGaAsの配置位置は、第
1層23の棒状のGaAsの配置位置から半周期ずれた
位置である。第4層26の棒状のGaAsは第2層24
の棒状のGaAsと同じ方向に配置されるが、第4層2
6の棒状のGaAsの配置位置は、第2層24の棒状の
GaAsの配置位置から半周期ずれた位置である。すな
わち、フォトニック結晶体2は、棒状のGaAsを面心
立方格子になるように配置することによって作製され
る。従って、フォトニック結晶体2の作製においては、
第1層23と第3層25との位置合わせ、および第2層
24と第4層26との位置合わせが重要である。この位
置合わせは、第3層25の棒状のGaAsを第2層24
上に載せた後、レーザ光を照射して観測される回折スポ
ットのうち、±1次光の回折光強度が最小になるように
行う。これにより面心立方格子構造のフォトニック結晶
体2を正確に作製できる。
【0053】[パルス光生成装置の応用例]図1に示す
パルス光生成装置10を用いると、単一のパルス成分か
ら成るパルス光から300fs程度のパルス幅を有する
パルス光を発生させることができるが、このパルス光を
図10に示す2つの準位間を移動して生成物が得られる
反応系に照射すると、新しい生成物を生成できることが
できる。すなわち、下位の準位46から上位の準位47
へ励起されて再び下位の準位46へ遷移することにより
反応が進行する反応系においては、通常は、下位の準位
46のエネルギー状態Aから光により上位の準位47の
エネルギー状態Bに励起され、上位の準位47において
エネルギー状態Eに移行した後に下位のエネルギー状態
Fに遷移することにより反応が進行する。
【0054】この反応系にパルス光生成装置10により
生成されたパルス光PH2を照射すると、最初のパルス
成分により下位の準位46のエネルギー状態Aから上位
の準位47のエネルギー状態Bに励起され、エネルギー
状態Bからの遷移時間が約300fsに相当するエネル
ギー状態Cに到達した時点で2つ目のパルス成分を照射
すると、照射されたパルス光はエネルギー状態Cとエネ
ルギー状態Dとのエネルギー差に相当するエネルギーを
有するため上位の準位47のエネルギー状態Cから下位
の準位46のエネルギー状態Dへの遷移が促進される。
これは、半導体レーザが発振する際に、半導体にバンド
ギャップに相当するエネルギーを有する光を照射すると
導電帯に励起された電子が照射された光に誘導されて価
電子帯への遷移が促進されて半導体のバンドギャップに
相当するエネルギーの光を放出する誘導放出に類似の現
象である。その結果、エネルギー状態Fとは異なるエネ
ルギー状態Dで反応を終了させることができ、従来とは
異なる新規な生成物を得ることができる。
【0055】実施の形態1によれば、パルス光生成装置
10は、パルス幅200fsの単一のパルス成分から成
るパルス光を入射してパルス幅300fs程度の複数の
パルス成分から成るパルス光を発生することができる。
また、フォトニック結晶体2の寸法は100〜200μ
mと小さいので、寸法の小さい光学系により極短パルス
幅を有するパルス光を発生させることができる。
【0056】[実施の形態2]図11は、この発明によ
る実施の形態2を示し、この実施の形態2によるパルス
光生成装置50は、図1に示すパルス光生成装置10に
回転手段500を追加したものである。回転手段500
は、軸4と、回転体5と、コイル5A,5B,5C,5
D(図12参照)と、磁石6A,6B,6C,6D(図
12参照)とから成る。軸4はフォトニック結晶体2の
基板22に垂直に取り付けられている。回転体5は、軸
4の一方端に取り付けられている。
【0057】図12を参照して、コイル5A,5B,5
C,5Dは回転体5の側面に90度間隔で取り付けられ
ており、磁石6A,6B,6C,6Dは、それぞれ、コ
イル5A,5B,5C,5Dに対向するように配置され
ている。また、磁石6A,6B,6C,6Dは、全て同
じ極性の磁石であり、例えばN極側がコイル側になるよ
うに設置される。コイル5A,5Cに紙面裏側から表側
に向かう電流を流し、コイル5B,5Dに紙面表側から
裏面側に向かう電流を流すと、コイル5A,5Cにはロ
ーレンツ力120が作用し、コイル5B,5Dにはロー
レンツ力121が作用する。そして、ローレンツ力12
0がローレンツ力121と釣り合った位置で回転体5の
回転が停止する。コイル5A,5Cに流す電流とコイル
5B,5Dに流す電流とを制御することにより、それぞ
れ、ローレンツ力120、およびローレンツ力121を
制御することができ、回転体5を矢印7の方向に任意の
角度だけ回転することができる。
【0058】図11は、回転体5が矢印7の方向に回転
することにより軸4も矢印7の方向に回転し、軸4に固
定されたフォトニック結晶体2が矢印7の方向に回転す
るパルス光生成装置50を示す。この図11において、
光源1から出射されたパルス光PH1が、面110から
フォトニック結晶体2に入射すると、すなわち、図2に
おいて層16,17を構成する棒状のGaAsの長手方
向からパルス光PH1がフォトニック結晶体2に入射す
ると、入射したパルス光PH1は図3のΓ−K領域また
はΓ−L領域のバンドに沿ってフォトニック結晶体2を
伝搬する。また、回転体5を回転させてパルス光PH1
が面111からフォトニック結晶体2に入射すると、す
なわち、図2において層14,15を構成する棒状のG
aAsの長手方向からパルス光PH1がフォトニック結
晶体2に入射すると、入射したパルス光PH1は図3の
K−X’領域のバンドに沿ってフォトニック結晶体2を
伝搬する。その結果、Γ−K領域またはΓ−L領域のバ
ンドと、K−X’領域のバンドとでは、異なるバンド構
造を有するため実施の形態1において説明したのと同じ
機構によりパルス幅の異なるパルス光PH3,PH4が
フォトニック結晶体2から出射される。また、パルス光
生成装置50を用いれば、図10で説明した反応経路を
変えることによる新規物質の生成を幅広く行うことがで
きる。
【0059】従って、実施の形態2によれば、パルス光
生成装置50は、フォトニック結晶体2に入射するパル
ス光PH1の方向に基づいて決定されるパルス幅を有す
るパルス光PH3,PH4を発生させることができる。
【0060】また、フォトニック結晶体2のサイズは小
さいので、任意のパルス幅を有するパルス光を小さい寸
法の光学系によって実現できる。
【0061】[実施の形態3]図13は、この発明によ
る実施の形態3を示し、この実施の形態3によるパルス
光生成装置70は、図11に示すパルス光生成装置50
に移動手段60を追加したものである。移動手段60
は、ガイド61と、歯車63(図14参照)と、モータ
(図示せず)とを含む。移動手段60は、フォトニック
結晶体2の基板22に垂直、且つ、光源1から出射され
るパルス光PH1の光軸L0に並行な平面(方向DR1
と方向DR2とで形成される平面)内においてガイド6
1に沿って光源1を移動させるものである。
【0062】図14を参照して、ガイド61は、光源1
とフォトニック結晶体2との距離Rを半径とする円周1
40に沿って配置されており、歯車63と噛み合う凹凸
610を有する。モータが歯車63をガイド61に沿っ
て矢印64の方向に回転させると歯車63と接続された
光源1は、矢印62の方向に移動し、光源1とフォトニ
ック結晶体2との相対位置が変化する。
【0063】移動手段60が光源1を位置P1から位置
P2に移動させると、光源1から出射されたパルス光P
H1は、面112からフォトニック結晶体2に入射す
る。位置P2は、位置P1における光源1とフォトニッ
ク結晶体2とを結ぶ線に対して45度の角度を成す線上
に存在するため、移動手段60は、フォトニック結晶体
2を中心として光源1を位置P1から矢印62の方向に
中心角が45度になるように移動させれば、パルス光P
H1が面112から45度の角度を成してフォトニック
結晶体2に入射する。
【0064】パルス光PH1が45度の角度を成して面
112からフォトニック結晶体2に入射することは、図
2において、層14を構成する棒状のGaAsと、層1
5を構成する半周期ずれた棒状のGaAsとを結ぶ方向
からフォトニック結晶体2に入射することに相当し、図
3のX−K領域のバンドを伝搬する。従って、フォトニ
ック結晶体2からは実施の形態1,2におけるパルス光
PH2,3,4とは異なるパルス幅を有するパルス光P
H5が出射される。この場合、光源1からのパルス光P
H1がフォトニック結晶体2に入射する方向が変わって
も、パルス光PH5が対象物3の方向へ出射されるよう
にできる。
【0065】位置P3は位置P2に対して対称の位置で
あるため、光源1を位置P3に移動させることは、光源
1を位置P2に移動させることと同じである。
【0066】移動手段60は、上述した距離(角度)に
限らず、任意の距離(角度)だけ光源1を移動させるこ
とができる。また、移動手段60により光源1を回転さ
せつつ回転手段500によりフォトニック結晶体2を回
転させれば、面110,111に入射するパルス光PH
1の角度も変化させることができる。その結果、さらに
異なったバンドに沿ってパルス光PH1を伝搬させるこ
とができ、パルス光生成装置70は、異なったパルス幅
を有する多くのパルス光を発生させることができる。
【0067】また、パルス光生成装置70を用いれば、
図10で説明した反応経路を変えることによる新規物質
の生成をさらに幅広く行うことができる。
【0068】移動手段60の代わりに、フォトニック結
晶体2を方向DR1と方向DR2とで構成される平面内
で回転させる回転手段を用いても、パルス光生成装置7
0を作製することができる。
【0069】実施の形態3によれば、フォトニック結晶
体2を回転させる平面(方向DR2と方向DR3とによ
り形成される平面)と垂直な平面内で光源1を移動させ
ることによりフォトニック結晶体2に入射するパルス光
PH1の方向をさらに変化させることができ、パルス光
生成装置70は、パルス幅の異なるパルス光を発生させ
ることができる。
【0070】実施の形態1,2,3においては、GaA
sと空気の領域とから構成されるフォトニック結晶体に
ついて説明したが、本発明は、これに限らず、GaAs
と空気以外の物質から構成されるフォトニック結晶体を
用いてもパルス光生成装置10,50,70を作製でき
る。GaAsと空気以外の物質からフォトニック結晶体
を構成する例としては、シリコン(Si)と二酸化珪素
(SiO2)とから構成したフォトニック結晶体が考え
られる。Siの屈折率は3.3、SiO2の屈折率は
1.5であり、SiとSiO2との屈折率比は2.2
と、フォトニック結晶体においてフォトニックバンドが
開くに十分な屈折率比2.0より大きいので、SiとS
iO2とから構成したフォトニック結晶体のフォトニッ
クバンドにおいてフォトニックバンドギャップは十分に
開く。SiとSiO2とから成るフォトニック結晶体
は、結晶成長させたSi基板中に酸素をイオン注入等に
より導入してSiを部分的に酸化させることにより2次
元または3次元的に作製することができる。
【0071】また、GaAsの代わりに金属、有機ポリ
マー、およびエルビウム,鉄等の希土類金属を導入した
ガラスまたはプラスチックを用いてもフォトニック結晶
体を作製することができる。
【0072】実施の形態1,2,3においては、1つの
波長を有するパルス光PH1からパルス光PH2,3,
4,5を生成する場合について説明したが、本発明は、
フォトニック結晶体2に入射するパルス光PH1の波長
を変えることによってパルス幅の異なるパルス光を発生
させることも含む。パルス光PH1の波長を変える1つ
の方法は、光源1を構成するチタン・サファイアレーザ
は波長600〜1100nmの範囲の光を出射するの
で、レーザ発振の条件を変えることによりチタン・サフ
ァイアレーザから出射されるレーザの波長を変えること
である。これにより波長の異なるパルス光PH1をフォ
トニック結晶体2に入射させることができる。フォトニ
ック結晶体2に入射するパルス光PH1の波長が変われ
ば、フォトニック結晶体2への入射光のエネルギーが変
わり、フォトニック結晶体2中を伝搬するバンドが異な
る。その結果、上述した機構によりパルス幅の異なるパ
ルス光がフォトニック結晶体2から出射される。
【0073】今回開示された実施の形態はすべての点で
例示であって制限的なものではないと考えられるべきで
ある。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求
の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味お
よび範囲内でのすべての変更が含まれることが意図され
る。
【0074】
【発明の効果】本発明によるパルス光生成装置は、短パ
ルス幅を有する単一のパルス成分から成る第1のパルス
光を出射する光源と、光源から出射された第1のパルス
光を入射し、複数のパルス成分から成る第2のパルス光
を出射するフォトニック結晶体とを含み、第1のパルス
光は、フォトニック結晶体のフォトニックバンドの上位
バンドにエネルギー分布を有し、第2のパルス光は、第
1のパルス光の波長、もしくは第1のパルス光がフォト
ニック結晶体に入射する方向に基づいて決定されるパル
ス幅を有するので、単一のパルス成分を有するパルス光
から所望のパルス幅を有するパルス光を生成することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1によるパルス光生成装
置の斜視図である。
【図2】 フォトニック結晶体の斜視図である。
【図3】 フォトニック結晶体のフォトニックバンド図
である。
【図4】 フォトニック結晶体におけるパルス透過のF
DTD計算の計算結果である。
【図5】 フォトニック結晶体におけるパルス透過の実
験を行う光学系を示す構成図である。
【図6】 フォトニック結晶体におけるパルス透過のF
DTD計算の計算結果と実験結果である。
【図7】 フォトニック結晶体の作製方法を示す工程図
である。
【図8】 フォトニック結晶体の作製方法を示す工程図
である。
【図9】 フォトニック結晶体における各層の位置合わ
せを説明するための斜視図である。
【図10】 エネルギー状態図である。
【図11】 本発明の実施の形態2によるパルス光生成
装置の斜視図である。
【図12】 図11の回転手段を説明するための平面図
である。
【図13】 本発明の実施の形態3によるパルス光生成
装置の斜視図である。
【図14】 図13の移動手段を説明するための平面図
である。
【符号の説明】
1 光源、2 フォトニック結晶体、3 対象物、4
軸、5 回転体、5A,5B,5C,5D コイル、6
A,6B,6C,6D 磁石、7 矢印、10,50,
70 パルス光生成装置、14,15,16,17
層、20X,20Y,20Z GaAs、21X,21
Y,21Z 空気、22 基板、23 第1層、24
第2層、25 第3層、26 第4層、27,28,3
1 フォトニックバンド、29 エネルギー分布帯、3
0 領域、32 ビームスプリッタ、33,35 チョ
ッパ、34,36,37 反射ミラー、38 フォトニ
ック結晶、39 Mach−Zehnder干渉計、4
0 HgCdTe検出器、41 ロックインアンプ、4
2 コンピュータ、43 GaAs膜、44 矢印、4
5 棒状GaAs、46,47 準位、60 移動手
段、61 ガイド、62,64 矢印、63 歯車、1
10,111,112 面、120,121 ローレン
ツ力、140 円周、500 回転手段、610 凹
凸。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01S 3/10 G02B 6/12 Z N (72)発明者 野田 進 京都市左京区吉田本町 京都大学 工学研 究科内 (72)発明者 チュティナン アロンカーン 京都市左京区吉田本町 京都大学 工学研 究科内 (72)発明者 浅野 卓 京都市左京区吉田本町 京都大学 工学研 究科内 (72)発明者 山本 宗継 京都市左京区吉田本町 京都大学 工学研 究科内 Fターム(参考) 2G065 AB02 AB14 BA02 BB37 BC04 DA05 2H041 AA21 AB14 AC04 AZ05 AZ08 2H047 KA03 QA02 RA00 5F072 AB20 FF09 KK30 QQ03 RR01 SS08

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 短パルス幅を有する単一のパルス成分か
    ら成る第1のパルス光を出射する光源と、 前記光源から出射された前記第1のパルス光を入射し、
    複数のパルス成分から成る第2のパルス光を出射するフ
    ォトニック結晶体とを含み、 前記第1のパルス光は、前記フォトニック結晶体のフォ
    トニックバンドの上位バンドにエネルギー分布を有し、 前記第2のパルス光は、前記第1のパルス光の波長、も
    しくは前記第1のパルス光が前記フォトニック結晶体に
    入射する方向に基づいて決定されるパルス幅を有する、
    パルス光生成装置。
  2. 【請求項2】 前記フォトニック結晶体は、 第1の屈折率を有する第1の物質と、 前記第1の屈折率より大きい第2の屈折率を有する第2
    の物質とを2次元的もしくは3次元的に交互、且つ、周
    期的に配列して成る、請求項1に記載のパルス光生成装
    置。
  3. 【請求項3】 前記第2の物質は棒状形状から成り、 前記フォトニック結晶体は、第1の方向に前記第1およ
    び第2の物質を交互、且つ、周期的に配列して成る第1
    の層と、 前記第1の方向と同一平面内における前記第1の方向に
    垂直な第2の方向に前記第1および第2の物質を交互、
    且つ、周期的に配列して成る第2の層とを前記第1およ
    び第2の方向に垂直な第3の方向に交互に積層して成
    り、 前記第1の層における前記棒状形状の長手方向は前記第
    2の方向であり、前記第2の層における前記棒状形状の
    長手方向は前記第1の方向である、請求項2に記載のパ
    ルス光生成装置。
  4. 【請求項4】 前記第1の物質は空気であり、 前記第2の物質はGaAsである、請求項3に記載のパ
    ルス光生成装置。
  5. 【請求項5】 前記フォトニック結晶体に対する前記第
    1のパルス光の入射方向を変更する変更手段をさらに含
    む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のパル
    ス光生成装置。
  6. 【請求項6】 前記変更手段は、前記フォトニック結晶
    体に含まれる基板に垂直な軸の回りに前記フォトニック
    結晶体を回転させる回転手段から成る、請求項5に記載
    のパルス光生成装置。
  7. 【請求項7】 前記変更手段は、前記フォトニック結晶
    体に含まれる基板に垂直な軸の回りに前記フォトニック
    結晶体を回転させる回転手段と、 前記基板に垂直、且つ、前記第1のパルス光の光軸に並
    行な平面内において前記フォトニック結晶体を中心にし
    た円周に沿って前記光源を移動させる移動手段とから成
    る、請求項5に記載のパルス光生成装置。
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