JP2001321821A - 熱延鋼帯の冷却装置 - Google Patents

熱延鋼帯の冷却装置

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JP2001321821A JP2000136079A JP2000136079A JP2001321821A JP 2001321821 A JP2001321821 A JP 2001321821A JP 2000136079 A JP2000136079 A JP 2000136079A JP 2000136079 A JP2000136079 A JP 2000136079A JP 2001321821 A JP2001321821 A JP 2001321821A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高温の圧延鋼帯を冷却水で冷却するのにあたっ
て、特にオン−オフ応答特性に優れた冷却構造を有する
圧延鋼帯の冷却装置を提供する。 【解決手段】熱延鋼帯の製造設備における最終仕上げ圧
延機2Eの後方に設けられ、高温の熱延鋼帯を搬送する
鋼帯搬送路3と、この鋼帯搬送路の上方部位でかつ鋼帯
搬送路を横断する方向に亘って設けられ冷却水供給源か
ら冷却水供給管10を介して供給される冷却水を集溜す
るノズルヘッダー7と、冷却水供給管に設けられ冷却水
の供給と供給停止を制御する冷却水供給制御装置11
と、ノズルヘッダーに鋼帯搬送路の幅方向と対向して設
けられ熱延鋼帯に対して冷却水を噴射散水するノズル8
と、ノズルヘッダー内に収容され冷却水供給管から供給
される冷却水を一時的に保持しかつ溢れ出た分をノズル
ヘッダーに受け入れさせるタンク9とを具備した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱間圧延されて高
温化している熱延鋼帯を冷却する冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】熟間圧延された鋼帯は高温化しているの
で冷却の必要があるが、近年の材質制御の要求から、大
水量を用いて鋼帯を焼入れ処理する、いわゆる急冷却が
一般的に行われている。
【0003】圧延直後の鋼帯を冷却装置に通板して冷却
を行うと、冷却装置の入り側での鋼帯の長手方向の温度
分布は、図7に示すような変化を有している。すなわ
ち、搬送される鋼帯の先端と後端では約30℃の温度差
がみられる。
【0004】均一な材質を得るには、冷却停止温度を鋼
帯内で均一化することが重要であるが、そのためには冷
却装置の入口での温度差を打ち消すべく、冷却を鋼帯の
長手方向に亘って制御する必要がある。
【0005】薄肉鋼帯の場合は、仕上げ圧延機から出た
ところで鋼帯搬送速度が650mpm程度であり、鋼帯
の先端と後端、中央部との均一な冷却および急冷却を実
現するためには、鋼帯先端が仕上げ圧延機を出たあと冷
却水を噴射して冷却を開始するまでの時間がより短くて
すむノズルヘッダーを備えなければならない。
【0006】すなわち、冷却水の供給指示が出されてか
ら実際に冷却水を鋼帯に噴射散水するまでの時間がごく
短く、かつ冷却水の供給停止指示が出されてから実際に
冷却水の噴射が停止するまでの時間がごく短い、オン−
オフ応答特性の優れたノズルヘッダーが求められてい
る。
【0007】このような要望を満たせるノズルヘッダー
として、従来、特公昭58−5730号や、特公昭57
−3736号あるいは特公昭63−9887号等が主張
している。
【0008】上記特公昭58−5730号は、ヘッダー
への冷却水供給を停止するのと同時に、水槽内の冷却水
の落下と遮断を行い得るようにした冷却装置である。こ
の冷却水の落下と遮断を行う手段は、ノズル出口に設け
た回転柱体を回動して、冷却水のオンオフ制御を行って
いる。
【0009】また、特公昭57−3736号では、水槽
の内部に設けたシール装置によって水中からシールする
ノズルが提案されている。特公昭63−9887号で
は、ノズルの下流に可動域を設けるとともに、ノズル出
口にノズルを遮蔽可能な逆蔽蓋を設け、冷却水の落下を
遮断している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭
58−5730号や特公昭58−3736号等のノズル
出口や水槽内部で水流を遮蔽する方式では、長年の使用
によってシール部分が損傷し、シールが不完全となって
充分な遮蔽効果が得られなくなる虞れがある。
【0011】また、特公昭58−3736号のスリット
ノズルの出口に開閉可能な蓋を設ける方式では、開閉の
ための設備が複雑で、設備費が高くなる。また、この場
合も、長年の使用によってシール部分からの水漏れが頻
発し、冷却ムラの原因となり易い。
【0012】さらに、特公昭63−9887号に記載さ
れるように、ノズル下流部に可動枠を設けて冷却水の落
下を防止する手段は、可動させる機構が複雑で設備費が
高いという問題がある。
【0013】本発明は、上述の事情を考慮してなされた
ものであり、その目的とするところは、最終仕上げ圧延
機から出た高温の圧延鋼帯を冷却水で冷却するのにあた
って、特に冷却水のオン−オフ応答特性に優れた冷却構
造を有する圧延鋼帯の冷却装置を提供しようとするもの
である。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の目的を満
足するためになされていて、熱間圧延された熱延鋼帯を
鋼帯搬送路に沿って搬送し、この状態でノズルから冷却
水を噴射して冷却するが、冷却水の供給と停止であるオ
ンーオフの応答特性を高めるために、ノズルヘッダー内
に冷却水を一時的に溜めるタンクを収容している。
【0015】このような構成を採用することにより、冷
却水の供給を停止した際に、ノズルヘッダー内のタンク
によってノズルから漏れ出る冷却水量がごく少なく、ま
た、次に冷却水を送水するのとほぼ同時にノズルでの冷
却水の噴射散水が開始され、いわゆるオン−オフ応答特
性に優れる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施態様を、図面
にもとづいて詳細に説明する。図1は、熱延鋼帯の製造
設備を概略的に示している。すなわち、粗圧延機で圧延
された粗バー1は、ローラテーブルからなる鋼帯搬送路
3上を搬送されて、連続的に複数の連続仕上げ圧延機2
で所定の厚みまで圧延され、最終仕上げ圧延機2E後方
のランナウトテーブル4に導かれる。このランナウトテ
ーブルのほとんど大部分は後述する冷却装置5を構成し
ていて、ここで冷却されたあと、後方の巻き取り機6で
巻き取られて熱延コイルとなる。
【0017】つぎに、上記冷却装置5につき、図2ない
し図4にもとづいて詳細に説明する。なお、図2は冷却
装置5の概略の斜視図であり、図3は冷却装置の平面
図、図4は冷却装置を断面にした正面図である。
【0018】すなわち、上記冷却装置5は基本的に、ノ
ズルヘッダー7と、ノズル8と、ノズルヘッダー7内に
収容されるスリット付タンク9と、上記ノズルヘッダー
7に接続される冷却水供給管10と、この冷却水供給管
の中途部に設けられる冷却水供給制御手段である制御装
置11とから構成される。
【0019】上記ノズルヘッダー7は、断面が矩形状
で、両側端面が閉塞される箱体であって、鋼帯搬送路3
の上方部位で、かつ搬送路を横断する方向に亘って配置
される。ノズルヘッダー7の長手方向は鋼帯搬送路3に
搬送される熱延鋼帯Pの幅方向に対応し、かつノズルヘ
ッダー7の長手方向全長は、熱延鋼帯Pの幅寸法と実質
的に同一の長さに形成される。
【0020】上記ノズルヘッダー7の一方の端面には、
中途部に制御装置11を備えた冷却水供給管10が接続
されていて、この冷却水供給管の他端部は図示しない冷
却水供給源に連通される。
【0021】このノズルヘッダー7の下面部には、千鳥
状に多数の孔部が設けられた多孔板からなるノズル8が
嵌め込まれる。したがって、このノズル8は、搬送され
る圧延鋼帯Pの幅方向と実質的に同一の長さに亘って設
けられる。
【0022】上記タンク9の長手方向は上記ノズルヘッ
ダー7の長手方向に対応し、タンク9の長手方向寸法は
ノズルヘッダー7の長手方向寸法と板厚分を除いてほぼ
同一に形成されていて、この両側端はノズルヘッダー7
の両側端面に密に接触している。
【0023】タンク9の断面はノズルヘッダー7と同
様、矩形状をなすが、ノズルヘッダーの上下面部と左右
両側面部よりも所定寸法だけ小さく形成される。このこ
とから、スリット付きタンク9の長手方向の両側部を除
く上下面部と左右両側面部は、ノズルヘッダー7の上下
面部および左右両側面部と、それぞれ所定の空間が形成
されている。そして、タンク9の上面部には長手方向に
亘ってスリット9aが設けられている。
【0024】上記ノズルヘッダー7の端面に接続される
上記冷却水供給管10は、その直径がタンク9の断面寸
法よりも小さく、かつタンクの断面積内に対向して接続
されている。
【0025】したがって、冷却水供給管10から供給さ
れる冷却水は、一旦はタンク9内に導かれて充満し、さ
らにタンク上面部のスリット9aから溢れ出てノズルヘ
ッダー7内を満たすこととなり、冷却水はスリット9a
からノズルヘッダー内に自由に出入りできるようになっ
ている。
【0026】上記制御装置11は、たとえば電気信号に
よって開閉動作を行う制御弁であり、すなわち電磁開閉
弁が用いられている。したがって、この電磁開閉弁であ
る制御装置11にオン−オフの電気信号を送ることによ
り、冷却水供給管10からの冷却水の供給と供給停止を
なす。
【0027】このようにして構成される冷却装置5であ
って、制御装置11にオン信号を送って内蔵する流路を
開放すると、冷却水供給源から冷却水が冷却水供給管1
0を通りスリット付きタンク9を介してノズルヘッダー
7に供給される。
【0028】冷却水はノズルヘッダー7内に充満し、か
つこの下面部のノズル8から均一な圧力で噴出散水され
る。この散水方向に鋼帯搬送路3が位置し、かつ高温の
熱延鋼帯が搬送されるところから、ノズル8から噴射散
水する冷却水によって熱延鋼帯の表面全体が冷却され
る。すなわち、ノズル8は多孔噴流ノズルとなる。
【0029】制御装置11にオフ信号を送ってこの流路
を閉成すれば、タンク9とともにノズルヘッダー7内へ
の冷却水の供給は停止される。したがって、ノズル8か
らの冷却水の噴射散水作用も停止する。
【0030】この停止時において、ノズルヘッダー7内
にスリット付きタンク9を収容したので、ほとんどの冷
却水が一時的にタンク9内に溜められることになり、タ
ンク9とノズルヘッダー7との間に残された冷却水のみ
がノズル8から漏れ出る。
【0031】このように、ノズルヘッダー7内にスリッ
ト付きタンク9を収容して、このタンク内に冷却水を一
時的に溜めるようにしたので、冷却水の供給を停止した
際にノズル8から漏れ出る冷却水の量を最小限に抑制で
きる。
【0032】再び、制御装置11にオン信号を送って冷
却水供給を開始すると、既にタンク9内に冷却水が満杯
状態で溜まっているために、供給開始とほとんど同時に
タンクのスリットから冷却水が溢れノズルヘッダー7を
介してノズル8から冷却水が噴射散水される。
【0033】したがって、冷却水の供給および停止のオ
ンーオフ応答特性に優れ、ノズル8から漏れ出る量を極
力抑制した冷却装置5を得られることとなる。
【0034】(第1の実施例)つぎに、第1の実施例に
ついて説明する。たとえば、ノズルヘッダー7として幅
寸法1330mm、長さ寸法400mm、高さ寸法20
0mmに設定し、幅寸法1250mmの熱延鋼帯Pに対
してノズル8から噴射される冷却水の噴射反応時間を、
比較例とともに測定することによりノズルのオン−オフ
応答特性の比較を行った。
【0035】なお、本実施倒で用いたノズル8は、ボッ
クス状のノズルヘッダー7の下面に内径が4mmの小孔
を30×60mmピッチの千鳥状に設けられものであ
り、冷却水はその孔部から噴射される多孔板噴流ノズル
である。
【0036】制御装置11の開放とともに冷却水供給管
10内の冷却水はノズルヘッダー7に導かれ、さらにタ
ンク9を満たしたあと、このスリット9aから溢れ出て
タンク9とノズルヘッダー7との空間を満たし、ノズル
8から噴射散水される。
【0037】そして、本実施例においてノズル8と、制
御装置11および冷却水供給管10は、冷却対象の熱延
鋼帯Pに対して水平に配置している。したがって、制御
装置11をオフしたとき、この制御装置11からノズル
8に至るまでの配管の静圧差によって、ノズル8から漏
れ出す冷却水を抑制できる。
【0038】従来構造である比較例として、たとえば図
6(A)(B)に示すように、下面部に多孔板からなる
ノズル8Zを備えた同一寸法形状のノズルヘッダー7Z
と、ここに接続される冷却水供給管10Zとからなる冷
却装置を用意した。
【0039】ノズル8Zにおける孔部の内径とピッチは
実施例のノズル8と同一としているが、比較例では本実
施例のようにタンク9を収容していないところから、冷
却水供給管10Zから制御装置11Zを介してノズルヘ
ッダー7Zに流れ込む冷却水は、直接ノズル8Zから噴
射するようになっている。
【0040】このような構成をもとに、本実施例と比較
例それぞれにノズル8,8Zから噴射される冷却水の噴
射反応時間を測定して、ノズルのオン−オフ応答特性の
比較を行った。
【0041】本発明における実施例と比較例(従来構
造)における冷却水供給と停止のオン−オフ応答特性の
比較結果を表1にまとめた。
【0042】
【表1】
【0043】本実施例ではノズルヘッダー7内に一時的
に冷却水を溜めるタンク9を収容したので、ノズル孔部
内径4mmの場合に、冷却水の供給を停止したときにノ
ズル内から冷却水が漏れ出る時間を測定した結果は0.
5秒と極めて短く、ノズル8から漏れ出す冷却水量はわ
ずかであって、ノズルヘッダー7とタンク9との隙間に
存在する冷却水もほとんど漏れ出さなかった。
【0044】一方、従来構造である比較例で示した装置
で、同様に冷却水の供給を停止したときにノズル8Z内
から冷却水が漏れ出る時間を測定した結果は16秒であ
った。また、このとき、ノズルヘッダー7Z内の冷却水
がすべて漏れ出した。
【0045】すなわち、本実施例においてはノズルヘッ
ダー7内において冷却水を一時的に保持することが可能
なタンク9を収容することによって、ノズルヘッダー7
と冷却水供給管10との間で幅方向に生じる静圧差を抑
制できる。
【0046】これに対して従来技術では、ノズルヘッダ
ー7Z内部と冷却水供給管10Zとの間に何も存在しな
いため、幅方向で生じる静圧差を抑制できず、ノズルヘ
ッダー7Z内部に残留する冷却水が全て漏れ出てしま
う。
【0047】また、冷却水の供給を停止(オフ)した場
合に、本実施例ではノズル8内から漏れ出す可能性のあ
る冷却水は、ノズル8とノズルヘッダー7内のタンク9
との隙間に溜まっている冷却水のみであるが、比較例で
はノズルヘッダー7Z内の全冷却水および制御装置11
Zからノズルヘッダー間の冷却水供給管10A内の冷却
水も全て流出する可能性があるため、本実施例がオフ特
性に優れている。
【0048】そして、再度噴射する際に、本実施例では
ノズルヘッダー7とタンク9との隙間に冷却水が満たさ
れればノズル8から水が噴射散水されるので、噴射待ち
時間が極めて短くオン特性に優れている。
【0049】また、本実施例では漏れ出る可能性のある
冷却水の量が少なく、そのヘッド(水頭圧)が小さいた
め、ノズル8の孔部内径が4mmの場合には毛細管現象
によりノズル出口からの冷却水の漏れを防止できる。一
方、比較例では、毛細管現象による圧力では流下しよう
とする冷却水の流出をせき止められず、ノズル8Zから
の冷却水の漏出が避けられない。
【0050】第1の実施例と比較例のノズルヘッダーを
同一サイズとしたノズルにおいて、ノズルの孔部内径を
5mmとした場合の冷却水供給のオフ特性実験を行っ
た。その結果、各条件において制御装置をオフすると同
時に、ノズルヘッダー内に残存する冷却水が漏れ出し
た。ただし、本実施例ではノズル8とノズルヘッダー7
内に設けたタンク9との隙間に残存する冷却水のみが漏
れ出たため、比較例におけるノズル8Zに比べて冷却水
の漏れ出す時間が短縮された。
【0051】すなわち、ノズルの孔部内径5mmにおい
て、冷却水供給を停止してからノズル内の冷却水が漏れ
出すまでの時間は、実施例では5秒であり、比較例では
10秒であって、本実施例の方が比較例よりもオフ特性
に優れることとなる。
【0052】ついで、同一条件でのオン特性を下記の通
り調べた。すなわち、制御装置を開放して冷却水がノズ
ルから実際に噴射されるまでの時間を測定した。制御装
置を開放してノズルから噴射されるまでの所要時間は、
本実施例において0.9秒と極めて短かった。
【0053】これは、ノズルヘッダー7内に冷却水を一
時的に保持するタンク9を備えることによって、冷却水
の供給を停止(オフ)した場合に冷却水がタンク9内に
一時的に保持されるため、次回、再び冷却水の供給を行
う際のノズル8から冷却水が噴射されるまでの時間は、
ノズルヘッダー7とタンク9との隙間を満たすまでの時
間となる。したがって、ノズルヘッダー内に冷却水を保
持するタンクを有していない比較例に比べて、本実施例
では噴射時間が短縮する。
【0054】また、内径4mmの多孔噴流ノズル8で
は、冷却水供給を遮断する時にノズル8内から漏れ出す
冷却水がほとんどないために、再び冷却水の供給を開始
した場合には制御装置11の開放とほぼ同時に鋼帯Pへ
噴射散水できる。
【0055】一方、内径5mmの多孔噴流ノズル8の場
合は、冷却水供給を停止する時にノズルヘッダー7とタ
ンク9との隙間に存在する冷却水が漏れ出てしまうた
め、再び冷却水の供給を開始した場合にノズル8とタン
ク9との隙間の領域を冷却水が満たすまでにわずかに時
間がかかり、孔部内径が4mmのノズル8に比べて噴射
開始時間(2秒)が遅れている。
【0056】これに対して、比較例で冷却水が噴射され
るまでの時間、および冷却水の供給を停止してからノズ
ル8Z内の冷却水が漏れ出るまでの時間を測定したとこ
ろ、冷却水がノズル8Zから噴射するまでの時間は3.
3秒であった。
【0057】これは、冷却水の供給を遮断した場合に、
上述したようにノズルヘッダー7Z内の冷却水がすべて
漏れ出てしまうため、再び冷却水の供給を開始とした場
合に、ノズル8Zから冷却水が噴射されるまでにノズル
ヘッダー7Z内を冷却水が満たすまでの時間が加算され
てしまうためである。
【0058】本実施例において、噴射時間は冷却水供給
管10から供給される冷却水の流量およびノズルヘッダ
ー7と冷却水を一時的に保持するタンク9間の空間の体
積で一義的に決まる。
【0059】つまり、ノズルヘッダー7とタンク9との
間の空間部を満たすまでの時間が噴射開始時間となる。
よって、噴射開始時間はノズルヘッダー7内に収容する
タンク9の容積および噴射流量を変化することによって
制御が可能となる。
【0060】また、本発明の主旨から考えると、ノズル
ヘッダー7内の総体積に対するタンク9内の体積の割合
が大きければ、言い換えれば、タンク9とノズルヘッダ
ー7内壁との間の空間領域が小さければ、さらにオンー
オフ応答特性が良くなる。
【0061】同時に、ノズル8と冷却水を一時的に保持
するタンク9との隙間に存在する冷却水のヘッド(水頭
差)が小さいので、多孔噴流ノズルの孔部の表面張力に
よってノズルヘッダー内の冷却水が流出し難い。さら
に、ノズルヘッダー7内部の総体積の1/2以上のタン
ク容積があれば冷却水の流出防止効果がある。
【0062】以上の条件を満足させるために、たとえば
図5(A)に示すように、多孔板からなるノズル8Aを
下面部に嵌め込んだノズルヘッダー7Aの断面が矩形状
である場合に、タンク9Aの断面形状を矩形とする。ま
た、図5(B)に示すように、ノズルヘッダー7Bの断
面が円形である場合には、タンク9Bの断面を円形とす
ることが、効率的なノズル設計となる。
【0063】そして、それぞれタンク9A,9Bの上面
部に長手方向(すなわち、圧延鋼帯Pの幅方向)に亘っ
てスリット9a,9aを設けることは、ノズル
8A,8Bの長手方向(すなわち、圧延鋼帯Pの幅方
向)に亘って均一に冷却水を噴射するために効果的であ
り、かつスリット状に形成したことで圧力損失を極力防
げる。さらに、流出防止効果を確実にするためには、タ
ンク9A,9Bの上面部を水平とし、多孔板ノズル8
A,8Bの噴射孔部の位置も水平とすることが望まし
い。ただし、圧損を増やさないようなスリット状と似た
形として多数の孔をタンクに設けてもよい。
【0064】図5(B)は、ノズルヘッダー7B内にタ
ンク9Bを収容することを前提として、ノズル8Bとし
て複数のスプレーノズルを用いている。なお、この場合
においても、ノズル内径の設定は4mmもしくはそれ以
下とするとよい。
【0065】上記ノズルヘッダー7Bおよびタンク9B
はともに断面形状が円形であり、タンク9Bのスリット
9aは上部の軸方向に沿って設けられることには変
りがない。
【0066】このような冷却装置においても、先に図2
ないし図4に示す多孔板ノズル8と同様に、スプレーノ
ズル8Bのオン−オフ特性は極めて良好であった。な
お、上記スプレーノズルとしてこれら以外に、フラット
ラミナーノズルや、円管ラミナーノズルなどを用いても
よい。
【0067】ただし、冷却水供給停止時におけるノズル
からの冷却水の流出については、ノズル出口とノズルヘ
ッダー内に収容するタンクの上縁との水頭差が小さい方
が流出し難いことは、言うまでもない。
【0068】たとえば、図5(A)に示す冷却装置での
水頭差はHであり、図5(B)に示す冷却装置での
水頭差ではHである。これらの点を考慮すると、本
発明の実施例で用いた多孔板ノズルが最も水頭高さの差
が小さい構造であり、したがって最も効果的な本発明の
実施形態であると言える。
【0069】(第2の実施例)第2の実施例は、本発明
の冷却装置を多段に複数配置し、鋼帯の先端から後端ま
での温度制御性を改善させた例である。ここで、第1の
実施例に用いたノズル(噴射オン時間が0.9秒)で、
その長さ寸法を420mm、幅寸法を2000mmとし
て、20バンク鋼帯の上下部に配置しており、それぞれ
のノズルは独立して冷却水の供給と流量の制御が可能と
なっている。
【0070】このような冷却装置を備えたうえで、連続
圧延機で圧延された板厚3mm、幅寸法1800mmの
鋼帯を600mpmで搬送し、通過させることにより冷
却を施す。
【0071】このときの各ノズルにおける冷却水の噴射
タイミングは、鋼帯の先端部が冷却装置を通過するのと
同時に定常的な冷却が開始されるように調整した。従来
のように、予め冷却水が噴射された冷却装置内に鋼帯先
端を通過させる方法では、鋼帯先端が流体の圧力によっ
て力を受け、通板性が悪くなり、通板異常や板のばたつ
きが発生し、安定通板が阻害されていた。
【0072】これに対してこの実施例では、噴射時間が
0.9秒と非常に短いために鋼帯が冷却装置を通過する
のとほぼ同時に冷却を開始するのが可能となるので、鋼
帯の安定通板を確保しつつ先端から安定した冷却が可能
となる。また、従来ノズル(噴射時間3.2秒)に比べ
て鋼帯先端部での冷却非定常部が短くなり、温度制御性
が向上して、品質が安定し、歩留まりも向上する。
【0073】また、鋼帯の長手方向の温度制御について
は、圧延した鋼帯の長手方向に温度差が生じている場
合、従来のノズルでは噴射時間が長い(3.2秒)ため
に局部的な温度ムラを解消するように冷却装置のオンー
オフを制御することは難しいが、上述の実施例のノズル
を用いることにより、鋼帯の温度ムラに応じて冷却装置
のオンーオフ制御が可能になり温度制御性が格段に向上
する。
【0074】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、冷
却水の供給指示をなしてから熱延鋼帯への冷却水の供給
が実際に行われるまでの時間の短縮化を図り、冷却水供
給停止指示を出してから鋼帯上への冷却水の供給が実際
に停止するまでの時間短縮化を得る。
【0075】したがって、ノズルからの不必要な冷却水
の漏れ出を回避して、熱延鋼帯に対する冷却の制御性を
大幅に改善することができ、長期間使用しても損傷する
ことがなく、構造も簡易的であり有用である。
【0076】また、温度制御性として、応答性のよいノ
ズルを用いることにより、鋼帯の長手方向の冷却温度を
均一にすることが可能となり、鋼帯内の材質のばらつき
が低減し、均質な材料が得られるなどの、種々の効果を
奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す、熱延鋼帯の製造設備
の概略の構成図。
【図2】同実施形態を示す、熱延鋼帯冷却装置一部の概
略の斜視図。
【図3】同実施形態を示す、熱延鋼帯冷却装置の断面し
た概略の平面図。
【図4】同実施形態を示す、熱延鋼帯冷却装置の断面し
た概略の正面図。
【図5】実施例において使用した、互いに異なる熱延鋼
帯冷却装置の構成図。
【図6】比較例としての、熱延鋼帯冷却装置の断面した
平面図と正面図。
【図7】圧延直後の鋼帯を冷却装置に通板して冷却を行
う際の、同装置の入り側での鋼帯の長手方向の温度分布
図。
【符号の説明】
5…冷却装置、 7…ノズルヘッダー、 8…ノズル、 9…スリット付タンク、 11…制御装置(冷却水供給制御手段)、 10…冷却水供給管、 P…熱延鋼帯。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 今田 貞則 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K043 AA01 CB01 EA07 GA06

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱延鋼帯の製造設備における最終仕上げ圧
    延機の後方に設けられ、高温の熱延鋼帯を搬送する鋼帯
    搬送路と、 この鋼帯搬送路の上方部位で、かつ鋼帯搬送路を横断す
    る方向に亘って設けられ、冷却水供給源から冷却水供給
    管を介して供給される冷却水を集溜するノズルヘッダー
    と、 上記冷却水供給管に設けられ、冷却水の供給と供給停止
    を制御する冷却水供給制御手段と、 上記ノズルヘッダーに鋼帯搬送路の幅方向と対向して設
    けられ、熱延鋼帯に対して冷却水を噴射散水するノズル
    と、 上記ノズルヘッダー内に収容され、上記冷却水供給管か
    ら供給される冷却水を一時的に保持し、かつオーバーフ
    ローした分をノズルヘッダーに受け入れさせるタンク
    と、を具備したことを特徴とする熱延鋼帯の冷却装置。
  2. 【請求項2】上記タンクは、その容積が、上記ノズルヘ
    ッダーの容積の約半分以上に設定されることを特徴とす
    る請求項1記載の熱延鋼帯の冷却装置。
  3. 【請求項3】上記ノズルは、その内径が4mmもしくは
    それ以下に設定される孔部を備えたことを特徴とする請
    求項1および請求項2のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷
    却装置。
  4. 【請求項4】上記ノズルは、多数の小孔からなる多孔噴
    流ノズルであることを特徴とする請求項1ないし請求項
    3のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却装置。
  5. 【請求項5】上記ノズルは、冷却水を噴霧状にして散水
    するスプレーノズルであることを特徴とする請求項1な
    いし請求項3のいずれかに記載の熱延鋼帯の冷却装置。
  6. 【請求項6】上記冷却供給管と上記冷却水供給制御装置
    および上記ノズルは、互いにほぼ水平を揃えて配置され
    ることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか
    に記載の熱延鋼帯の冷却装置。
  7. 【請求項7】上記冷却水供給管と上記冷却水供給制御手
    段は、上記ノズルに対して低い位置に配置されているこ
    とを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記
    載の熱延鋼帯の冷却装置。
  8. 【請求項8】上記ノズルを、熱延鋼帯の長手方向に沿っ
    て複数段に配置し、それぞれ独立して冷却水供給および
    流量制御する手段を設けたことを特徴とする請求項1記
    載の熱延鋼帯の冷却装置。
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