JP2001313093A - 空気電池 - Google Patents

空気電池

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一富 山本
Tomohiro Kobayashi
智浩 小林
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 空気電池を電極固定式かつ電解液固定式の二
次電池にする。 【解決手段】 空気電池は、空気極9を触媒を担持した
カーボンとして正極活物質に空気中の酸素を使用し、負
極2に800m2 /g以上の比表面積を有する活性炭、
カーボンナノチューブもしくはグラファイトナノファイ
バー、電解液にアルカリ水酸化物を使用する。充放電時
には負極2表面にH+ の吸着、放出が起こり、その時に
電荷が負極2表面と電解液の界面に形成される電気二重
層へ蓄積、放出される。放電では空気極9から供給され
るOH- と負極から供給されるH+が反応してH2 Oが
生成し、充電は水の分解反応を利用する。負極は化学的
に安定であり、サイクル安定性に優れた二次電池とな
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、充電が可能な空気
電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】空気電池は、一般的に正極活物質として
空気中の酸素、負極活物質として金属を用いる電池を総
称するものであって、空気中の酸素を電池内に取り込む
ための空気極には触媒作用を有する多孔質炭素材料、多
孔質金属材料、もしくは両者の複合材料が使用され、負
極には亜鉛、鉄あるいはアルミニウム、そして電解液に
は30%前後の水酸化カリウム水溶液、塩化アンモニウ
ム溶液もしくは塩化亜鉛溶液が使用される電池である。
これらは、その構成によりそれぞれ空気−亜鉛電池、空
気−鉄電池、空気−アルミニウム電池と呼ばれている。
【0003】空気電池の特徴は、正極活物質として空気
中の酸素を使用するため電池内に正極活物質を充填して
おく必要がなく、したがって電池セルへの負極活物質の
充填量を多くして大容量の電池を作成することができる
点である。放電では、空気中のO2 が空気極の触媒作用
でOH- となり負極活物質と反応する。現在市販されて
いる空気電池は、空気−亜鉛電池のみであるが、すべて
コイン型の一次電池であり、補聴器用やポケットベル
(登録商標)用として利用されている。
【0004】1970年代には、電気自動車用電源への
利用を目的として、空気電池の二次電池化が研究された
が実用には至らなかった。空気−亜鉛電池で二次電池化
が困難だった理由は、負極に使用している亜鉛が充電時
にデンドライト成長を起こすため短絡を生じたり、充放
電効率が悪く、さらに空気極に使用している炭素材料が
酸化消耗してしまうなど解決すべき課題が多かったため
である。
【0005】負極の亜鉛デンドライト防止に関しては、
機械式充電と呼ばれるような放電終了後亜鉛極を新しい
ものと交換する電極交換型の二次電池が開発されてい
る。さらに亜鉛粉末を電解液とともに循環し、放電生成
物の充電を外部で行い、再び電池内に戻す方式も検討さ
れている。一方、空気極の酸化消耗の防止に関しては、
三電極方式と呼ばれる技術が開発されている。これは、
放電では多孔質炭素材料が使用され、充電では非酸化性
の多孔質金属材料などを自動で切り替えて使用する方式
である。
【0006】さらに空気極へWC、Coなど酸素過電圧
を低下させする物質を添加したり、La0.5 Sr0.5
oO3 のような耐酸化性のある触媒を添加する方法も開
発されている。しかし、いずれにおいても電極固定式か
つ電解液固定式の二次電池を目指した解決手段ではな
い。
【0007】なお、空気−鉄電池および空気−アルミニ
ウム電池の二次電池も試作されたが、以下に記述する理
由から実用に至っていない。空気−鉄電池は、亜鉛のよ
うにデンドライト発生の問題がなく、エネルギー密度が
大きい反面、寿命が短く、電解液の定期交換が必要とさ
れる。空気−アルミニウム電池は、水溶液系電解液では
充電不可能なために基本的に機械式充電以外に二次電池
化が困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】近年、環境に対する配
慮からクリーンな電気エネルギーが求められている。空
気電池が電極固定式かつ電解液固定式で二次電池化され
ることは、電気自動車のみならず携帯用電子機器の電源
としても非常に好ましい。急速充電が可能ならば、用途
はより一層広がるものと考えられるが、負極活物質の化
学的性質が不安定なため実用レベルのサイクル安定性を
示す空気電池は未だ完成していない。
【0009】本発明は、空気電池の二次電池化における
上記課題を解決するものであって、電極固定式かつ電解
液固定式で、サイクル安定性に優れ、急速充電が可能な
空気電池を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の空気電池は、正
極活物質に空気中の酸素、負極に800m2 /g以上の
比表面積を有する炭素材料、電解液にアルカリ水酸化物
を使用することにより上記課題を解決している。空気電
池の放電では、空気極で大気中のO2 がOH- に還元さ
れ、電解液中でOH- が負極の金属と反応して金属水酸
化物になる。
【0011】このときの空気極と負極における反応式
は、次の通りである。 空気極: O2 +2H2 O+4e- →4OH- ・・・・・・(1) 負 極: 2M+4OH- →2M(OH)2 +4e- ・・・(2) (Mは2価金属を示す) 上記反応式に関して、視点を負極に置いた時には、負極
の金属が水で酸化されてH+ が発生し、H+ が空気極で
生成したOH- と反応して減極されると考えることがで
きる。
【0012】すなわち反応式は次の通りである。 空気極: O2 +2H2 O+4H+ +4e- →4OH- +4H+ →4H2 O・・(3) 負 極: 2M+4H2 O→2M(OH)2 +4H+ +4e- ・・・・・・・・(4) 空気電池を二次電池化するために、負極はH+ 吸蔵性も
しくは吸着性を有し、なおかつアルカリ水酸化物水溶液
と化学反応を起こさない物質が最適である。
【0013】これらの条件を満たす物質は、活性炭、カ
ーボンナノチューブ、もしくはグラファイトナノファイ
バー等の炭素材料である。そして、これら炭素材料は、
比表面積が800m2 /g以上でなければならない。比
表面積が800m2 /gより小さい場合にはH+ の吸着
量が小さすぎ、実用的な放電容量が得られない。比表面
積は一般的に大きいほど好ましい。
【0014】本発明の空気電池は、基本的にO2 のレド
ックス反応に対して触媒作用を有する空気極、比表面積
が800m2 /g以上の炭素材料の負極、空気極と負極
を分けるセパレータ、そしてアルカリ水酸化物水溶液で
調製された電解液で構成する。まず電池は組み上げた
後、最初に充電を行う。
【0015】充電では負に分極した炭素材料表面に水の
分解によって生成したH+ が吸着し、炭素材料表面と電
解液との固液界面に形成される電気二重層に電荷が蓄積
される。このとき、空気極からはO2 が発生する。一
方、放電ではH+ が炭素表面から離脱し、空気極で生成
したOH- と反応し水が生成する。このとき、電気二重
層に蓄積されていた電荷は放出される。
【0016】この反応は次の反応式に示すように水の分
解、生成反応である。 H+ +OH- ⇔H2 O・・・・(5) 活性炭は、炭素質を水蒸気や二酸化炭素と反応させるこ
とにより賦活し、微細孔が発達した構造となっている
が、原料および賦活条件によって比表面積、細孔分布、
表面性状が大きく変化するので、電池性能が向上する品
質のものを適宜選択する。一般にフェノール樹脂を原料
として調製した活性炭は高い比表面積を有する。形状
は、繊維状、球状、粒状のいずれでも良い。充電でH+
は微細孔内に吸着され、電気二重層に電荷が蓄積する。
【0017】カーボンナノチューブは、アーク放電やS
iCの真空加熱によって生成され、炭素網面一枚が筒状
になった単層チューブ形状となっている。チューブは直
径1.2nm位であり、比表面積は3000m2 /g以
上になる。充電でH+ はチューブ内外面に吸着され、電
気二重層に電荷が蓄積する。グラファイトナノファイバ
ーは、エチレンなどを金属触媒上で熱分解したとき生成
する直径100nm程度の繊維状炭素で、黒鉛結晶端面
が非常に多く表面に露出した構造である。H+ は黒鉛結
晶層間に吸着され、電気二重層に電荷が蓄積する。
【0018】炭素材料はH+ の吸着、放出の際に化学変
化を伴わない。したがって、高電流密度充電が可能であ
り、高いサイクル安定性を有する電池となる。空気極
は、耐酸化性とガス透過性が維持されていれば高電流密
度充電には何ら支障を与えない。空気極には、触媒を担
持したカーボンを使用するのが良い。触媒を担持するこ
とで反応式(1)で表される4電子還元が進行し、カー
ボンの酸化消耗も防止できる。電極構造は、電解液が大
気中の炭酸ガスを吸着しないように配慮し、また酸化還
元に対して分極抵抗の小さなものとすることが、高電流
密度放電を可能にするため必要である。
【0019】触媒には、白金の他、銀、二酸化マンガ
ン、ニッケル−コバルト複合酸化物、フタロシアニン系
化合物、WC、Co、FeWO、NiS、Co(OH)
2 、La0.5 Sr0.5 CoO3 、Pr0.2 Ca0.8 Mn
0.1 Fe0.9 La0.8 Rb0.2MnO3 などが知られて
おり、これらを単独もしくは組み合わせて使用できる
が、これらに限るものではない。またカーボンは、カー
ボンブラック、活性炭などが適当である。ただしカーボ
ンブラックは製法によって性質が異なり、例えば疎水性
が強いアセチレンブラックは空気極のガス供給部分、疎
水性が弱いカーボンブラックは酸化還元反応部分に使用
すると良い。
【0020】アルカリ水酸化物水溶液は、水酸化カリウ
ム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムの水溶液の中か
ら選択するのが好ましく、濃度は30〜40%が適当で
ある。ただし電気伝導度、化学的安定性を考慮し、電池
が最も良好な特性を示す濃度を任意に決定する。アルカ
リ水酸化物水溶液以外の塩化アンモニウム、塩化亜鉛な
どの弱酸性電解液は炭酸ガス吸収の影響がないという特
徴があるが、強負荷特性で劣り、充電時に塩素ガスを発
生するので使用に適さない。
【0021】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施の一形態であ
る空気電池の構成図である。この空気電池は、空気孔8
を設けたステンレス製の正極容器4に、空気拡散用不織
布5、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜6、集電網
7を設けた空気極9、セパレーター用不織布10、負極
2、負極容器1を重ね合わせ、正極容器4と負極容器1
との間をガスケット3で封止した構成となっている。
【0022】負極2には、800m2 /g以上の比表面
積を有する活性炭、カーボンナノチューブもしくはグラ
ファイトナノファイバーを使用する。いずれの材料も1
t/cm2 以上で所定の形状にプレス成形した後、電解
液に1h以上浸漬し、表面を十分濡らしておく。電解液
は加圧浸透させても構わない。また形状を維持するため
に、ポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤を使用す
ることに関しては何ら問題はないが、炭素材料表面を完
全に被覆する結着剤は放電容量低下を引き起こすので使
用できない。ただし活性炭織布の場合は、所定の大きさ
に切断し、電解液に浸漬した後そのまま使用する。
【0023】空気極9は、木、おがくず、フェノール樹
脂などを原料とした炭素材料を水蒸気もしくは空気雰囲
気で500〜1000℃で賦活した活性炭に白金、二酸
化マンガンなどの触媒を担持した物が最適である。粒径
は100μm以下で、比表面積は200〜1000m2
/gが適当であるが、これに限るものではない。白金、
二酸化マンガンなどの触媒は、これら塩類をあらかじめ
炭素材料に添加し、塩類の分解によって担持を行う。
【0024】触媒を担持した活性炭は、繊維状、球状、
粒状のいずれにおいても結着剤としてポリテトラフルオ
ロエチレンを重量比で5〜10%混合した後、150℃
で圧延ロールし、100μmのシート状に加工する。結
着剤は、ポリテトラフルオロエチレン以外に、ポリフッ
化ビニリデンなどの様にアルカリ水酸化物水溶液に対し
て耐食性があり、電気的に安定な材料なら使用できる
が、粒子を完全に覆ってしまうようなものは使用できな
い。またシートの強度を保つ範囲であれば結着剤の混合
比は任意に変えることが可能である。シート状に加工し
た活性炭は、ニッケル、ステンレスなどの集電網7(目
開き150μm)に4.9×104 Pa以上で圧着し空
気極9とする。
【0025】この空気極9の集電網7側には多孔質ポリ
テトラフルオロエチレン膜6を密着させ、大気の出入り
制御し、電解液の漏液防止を行う。さらに、多孔質ポリ
テトラフルオロエチレン膜6の上に触媒層へのO2 の均
一拡散を行うためポリプロピレン製の空気拡散用不織布
5を重ね合わせる。電解液は、一般に30%KOH溶液
を使用する。電池の特性向上が図れるのなら任意に変更
可能である。ただし、あまり希薄な溶液は電気伝導度が
低下し、急速充放電を不可能にする。
【0026】なお、上記各構成部材は、電池性能を低下
させない範囲で変更可能である。
【0027】
【実施例】〔実施例1〕負極2は、フェノール樹脂を原
料に使用して調製された比表面積1500m2/gを有
する活性炭織布から縦横30mm×30mm、厚さ0.
4mmのシートを切り出し、30%KOH水溶液に1h
浸漬したものを使用した。
【0028】空気極9は、ヤシガラを原料とした炭素材
料を水蒸気を導入しながら900℃で賦活した活性炭
で、触媒として白金と二酸化マンガンを担持した物を使
用した。触媒を担持した活性炭の平均粒径は90μm
で、比表面積は1000m2 /gであった。この活性炭
にポリテトラフルオロエチレンを重量比で5%混合した
後、150℃で圧延ロールし、100μmの厚みでシー
ト状に加工した。
【0029】シート状に加工した活性炭を縦横30mm
×30mmのシートに切断し、ステンレス製集電網7
(目開き150μm)に9.8×104 Paで圧着し空
気極9とした。この空気極9の集電網7側にはポリテト
ラフルオロエチレン膜6を密着させ、その上にポリプロ
ピレン製の不織布を重ね合わせた。電解液は、30%K
OH溶液を使用した。
【0030】以上の負極2、空気極9、電解液を使用
し、図1に示す通り、空気孔8を設けたステンレス製の
正極容器4に、空気拡散用不織布5、多孔質ポリテトラ
フルオロエチレン膜6、集電網7を設けた空気極9、セ
パレーター用不織布10、負極2、負極容器1の順で重
ね合わせ、空気電池を構成した。空気電池は、0〜1.
45Vの範囲で充電電流30A、放電電流2mAの充放
電を行い、サイクル安定性を調べた。
【0031】図2に放電容量のサイクル変化を示す。初
回放電容量は、30mAh/cm3で、50サイクル後
の放電容量は初回放電容量の100%を維持していた。 〔実施例2〕負極に使用した活性炭不織布の比表面積
が、800m2 /gであること以外、実施例1と同様に
空気電池を構成し、同様にサイクル安定性を調べた。
【0032】図2に放電容量のサイクル変化を示す。初
回放電容量は、10mAh/cm3で、50サイクル後
の放電容量は初回放電容量の100%を維持していた。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、空気電池を、電極固定
式かつ電解液固定式で、サイクル安定性に優れ、急速充
電が可能な二次電池とすることができ、電気自動車のみ
ならず携帯用電子機器用の電源として環境に対してクリ
ーンな電気エネルギーを供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である空気電池の構成図
である。
【図2】実施例1および実施例2における空気電池の放
電容量のサイクル変化を示す図である。
【符号の説明】
1 負極容器 2 負極 3 ガスケット 4 正極容器 5 空気拡散用不織布 6 多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜 7 集電網 8 空気孔 9 空気極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5H032 AA02 AS01 AS12 EE01 HH04 5H050 AA07 BA20 CA12 CB11 CB13 DA03 DA09 EA08 EA09 EA10 HA07

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 正極活物質に空気中の酸素、負極に80
    0m2 /g以上の比表面積を有する炭素材料、電解液に
    アルカリ水酸化物を使用することを特徴とする空気電
    池。
  2. 【請求項2】 炭素材料として活性炭、カーボンナノチ
    ューブ、もしくはグラファイトナノファイバーを使用す
    ることを特徴とする請求項1記載の空気電池。
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