JP2014053271A - 空気電池の空気極用炭素材料の製造方法、空気電池の空気極用炭素材料、及び当該炭素材料を含む空気電池 - Google Patents

空気電池の空気極用炭素材料の製造方法、空気電池の空気極用炭素材料、及び当該炭素材料を含む空気電池 Download PDF

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Abstract

【課題】空気電池の空気極に使用されてきた従来の炭素材料よりも、酸素還元反応の反応起点が多い、空気電池の空気極用炭素材料の製造方法、空気電池の空気極用炭素材料、及び当該炭素材料を含む空気電池を提供する。
【解決手段】空気電池の空気極に使用される炭素材料の製造方法であって、炭素原料をアルカリ処理し、当該炭素原料の少なくとも表面における酸素還元活性を活発化させる賦活工程、及び、前記賦活工程後の前記炭素原料を超音波処理し、空気電池の空気極用炭素材料を製造する超音波処理工程、を有することを特徴とする、空気電池の空気極用炭素材料の製造方法。
【選択図】図4

Description

本発明は、空気電池の空気極に使用されてきた従来の炭素材料よりも、酸素還元反応の反応起点が多い、空気電池の空気極用炭素材料、当該炭素材料を含む空気電池、及び空気電池の空気極用炭素材料の製造方法に関する。
空気電池は、金属単体又は金属化合物を負極活物質に、酸素を正極活物質に利用した、充放電可能な電池である。正極活物質である酸素は空気から得られるため、電池内に正極活物質を封入する必要がないことから、理論上、空気電池は、固体の正極活物質を用いる二次電池よりも大きな容量を実現できる。
空気電池の一種であるリチウム空気電池においては、放電の際、負極では式(I)の反応が進行する。
2Li→2Li+2e (I)
式(I)で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、空気極に到達する。そして、式(I)で生じたリチウムイオン(Li)は、負極と空気極に挟持された電解質内を、負極側から空気極側に電気浸透により移動する。
また、放電の際、空気極では式(II)及び式(III)の反応が進行する。
2Li+O+2e→Li (II)
2Li+1/2O+2e→LiO (III)
生じた過酸化リチウム(Li)及び酸化リチウム(LiO)は、固体として空気極に蓄積される。
充電時においては、負極において上記式(I)の逆反応、空気極において上記式(II)及び(III)の逆反応がそれぞれ進行し、負極において金属リチウムが再生するため、再放電が可能となる。
空気電池の空気極には、従来炭素材料が用いられてきた。しかし、炭素材料のどのような特性が空気極の容量を決定しているかについての知見は未だ得られていなかった。したがって、空気極に配合される炭素材料をいかに改良すれば、高性能な空気電池が得られるかについては、決め手となる指針が無かった。高性能なリチウム空気電池を得ることを目的とする技術として、特許文献1には、カーボン及びバインダーを構成要素とする正極と、金属リチウム又はリチウムイオンを放出することができる物質を構成要素とする負極とが設けられ、正極と負極との間に有機電解液が配置され、正極の一方の面が有機電解液に接触し、他方の面が空気に接触する構造を有するリチウム空気電池において、正極の構成要素として使用するカーボンが、アルカリ賦活処理によって比表面積が増大したカーボンであることを特徴とするリチウム空気電池が開示されている。
特開2010−182606号公報
特許文献1の段落[0036]には、炭素材料をアルカリ賦活処理する際の具体的な手順が記載されている。しかし、本発明者らが特許文献1に開示されたリチウム空気電池についてさらに検討したところ、空気極に使用する炭素材料を単にアルカリ賦活処理するのみでは、空気極中の炭素材料の比表面積が大きくならず、したがってリチウム空気電池の放電容量の向上に貢献しないことが明らかとなった。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、空気電池の空気極に使用されてきた従来の炭素材料よりも、酸素還元反応の反応起点が多い、空気電池の空気極用炭素材料の製造方法、空気電池の空気極用炭素材料、及び当該炭素材料を含む空気電池を提供することを目的とする。
本発明の空気電池の空気極用炭素材料の製造方法は、炭素原料をアルカリ処理し、当該炭素原料の少なくとも表面における酸素還元活性を活発化させる賦活工程、及び、前記賦活工程後の前記炭素原料を超音波処理し、空気電池の空気極用炭素材料を製造する超音波処理工程、を有することを特徴とする。
本発明の空気電池の空気電極用の炭素繊維材料の製造方法は、連通した三相界面サイトを有する多孔性の炭素繊維材料をアルカリ水溶液でアルカリ賦活処理して表面の酸素還元性を活発化させる賦活工程、前記賦活工程後の前記炭素繊維材料を水溶性有機溶媒中で超音波照射することにより、当該炭素繊維材料の表面からCO又はCO由来の官能基を低減し且つ微小黒鉛結晶壁を露出させる超音波処理工程、及び、超音波処理工程後の前記炭素繊維材料を乾燥する乾燥工程、を有することを特徴とする。
本発明の空気電池の空気極用炭素材料は、前記炭素材料の比表面積が850〜1,200m/gであり、昇温脱離法により測定したときのCO及びCOの総量が50μmol/g未満であることを特徴とする。
本発明の第1の空気電池は、少なくとも空気極、負極、並びに、当該空気極及び当該負極の間に介在する電解質層を備える空気電池であって、前記空気極が、上記空気電池の空気極用炭素材料を含むことを特徴とする。
本発明の第1の空気電池においては、前記負極がリチウム金属又はリチウム化合物を含有していてもよい。
本発明の空気電池の空気電極用の炭素繊維材料は、比表面積が850〜1,200m/gである連通多孔性の炭素繊維材料であって、前記炭素繊維材料の表面におけるCO又はCO由来の官能基が0.5μmol/g以下にして微小黒鉛結晶壁が露出していることを特徴とする。
本発明の第2の空気電池は、少なくとも空気極、負極、並びに、当該空気極及び当該負極の間に介在する電解質層を備える空気電池であって、前記空気極が、上記空気電池の空気電極用の炭素繊維材料を含むことを特徴とする。
本発明の第2の空気電池においては、前記負極がリチウム金属又はリチウム化合物を含有していてもよい。
本発明によれば、賦活工程中に生成した、炭素原料表面のガス化しやすい部分を、超音波処理工程において除去できるため、従来の炭素材料よりも酸素還元反応の反応起点が多く且つ比表面積が大きい炭素材料となる結果、このような炭素材料を空気電池の空気極に用いた場合には、当該炭素材料と、より多くの酸素分子との間の電子の授受が可能となり、従来の空気電池よりも高容量化を実現することができる。
賦活処理後の炭素原料、超音波処理を経て製造された本発明の炭素材料、及び、空気電池に使用された際の放電後の当該炭素材料について、細孔近傍の様子をそれぞれ模式的に示した断面図である。 本発明に使用される炭素材料の化学構造を示した模式図である。 本発明の空気電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。 実施例1、実施例3、比較例1、及び比較例4の炭素材料、及び、ケッチェンブラックの比表面積を比較した棒グラフ、並びに、これら炭素材料の細孔容積を比較したグラフを重ねて示したものである。 実施例7−実施例9、及び比較例12−比較例18の空気電池の放電容量、並びに、これらの空気電池に使用された炭素材料に関する、昇温脱離法におけるCO及びCOの発生量の関係を示したグラフである。 図5中、昇温脱離法におけるCO及びCOの発生量が0〜約80μmol/gの部分について拡大したグラフである。 炭素原料表面のガス化しやすい炭素部分の定量に用いた昇温装置の概略模式図である。 賦活処理後の炭素材料、及び、空気電池に使用された際の放電後の当該炭素材料について、細孔近傍の様子をそれぞれ模式的に示した断面図である。
1.空気電池の空気極用炭素材料の製造方法
本発明の空気電池の空気極用炭素材料の製造方法は、炭素原料をアルカリ処理し、当該炭素原料の少なくとも表面における酸素還元活性を活発化させる賦活工程、及び、前記賦活工程後の前記炭素原料を超音波処理し、空気電池の空気極用炭素材料を製造する超音波処理工程、を有することを特徴とする。
本発明の一態様である空気電池の空気電極に使用される炭素繊維材料の製造方法は、連通した三相界面サイトを有する多孔性の炭素繊維材料をアルカリ水溶液でアルカリ賦活処理して表面の酸素還元性を活発化させる賦活工程、前記賦活工程後の前記炭素繊維材料を水溶性有機溶媒中で超音波照射することにより、当該炭素繊維材料の表面からCO又はCO由来の官能基を低減し且つ微小黒鉛結晶壁を露出させる超音波処理工程、及び、超音波処理工程後の前記炭素繊維材料を乾燥する乾燥工程、を有することを特徴とする。
ここでいう「連通した三相界面サイト」とは、カーボン電極、リチウムイオン、及び酸素ガスが共存して電極反応が進行するサイトのことを指す。
上述したように、アルカリ賦活処理した炭素材料を空気極層に用いた空気電池は、放電容量が依然低かった。これは、従来技術においては、アルカリ賦活処理による炭素の表面構造の変化に関する十分な検討がなされておらず、空気電池の放電容量を向上させる炭素の表面構造について、ほぼ何の知見も得られていなかったことによる。
本発明者らは、炭素材料の表面構造に着目し検討を重ねたところ、アルカリ賦活処理後の炭素材料の表面には、ガス化しやすい炭素部分が存在することが明らかとなった。
図8(a)は、賦活処理後の炭素材料について、細孔近傍の様子を模式的に示した断面図である。賦活処理後の炭素材料は、ガス化しにくい炭素部分1と、ガス化しやすい炭素部分2からなる。当該炭素部分1と炭素部分2との境界には、微小黒鉛結晶壁1aが存在する。また、ガス化しやすい炭素部分2の表面には、カルボキシル基(−COOH)等の酸素含有官能基が存在する。図8(b)は、賦活処理後の炭素材料の細孔近傍について、空気電池に使用された際の放電後の様子を模式的に示した断面図である。ガス化しやすい炭素部分2の表面のカルボキシル基には、過酸化リチウム(Li)や酸化リチウム(LiO)等の放電生成物4が集中的に析出し、粗大な析出物に成長する。このような粗大な放電生成物4は、炭素材料の細孔を塞ぎ、細孔の容積3を減らすと共に、炭素材料表面の活性点を埋めるように析出するため、炭素材料表面における酸素還元活性が低減し、その結果空気電池の放電容量の低下を招く。
本発明者らは、さらに検討を重ねたところ、賦活処理工程後の炭素原料に対し、さらに超音波処理を行うことにより、炭素原料表面のガス化しやすい炭素部分を除去し、製造される炭素材料の比表面積及び細孔容積を増加できることを見出した。本発明者らは、鋭意努力の結果、賦活処理及び超音波処理を施した炭素材料を空気極に用いることにより、酸素還元反応の反応起点の数を増やすことができ、空気極の放電容量を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、(1)賦活工程、及び(2)超音波処理工程を有する。本発明は、必ずしも上記2工程のみに限定されることはなく、上記2工程以外にも他の工程を有していてもよい。
以下、上記工程(1)〜(2)について、順に説明する。
1−1.賦活工程
本工程は、炭素原料をアルカリ処理し、当該炭素原料の少なくとも表面における酸素還元活性を活発化させる工程である。
本発明に使用できる炭素原料としては、グラファイト、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、メソポーラスカーボン等の従来の炭素材料;ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、及びフェノール樹脂炭素繊維等の難黒鉛化炭素繊維;メゾフェーズピッチ系炭素繊維等の易黒鉛化炭素繊維;カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーン等の炭素ナノ繊維等が好ましい。これらの炭素繊維の多くは、黒鉛と同様にsp混成軌道を有する。例えば、高温で熱処理されたピッチ系炭素繊維は、単なる黒鉛と比較して極めて高い結晶性を有し、それに由来する炭素原子間の強い結合が、当該ピッチ系炭素繊維の強度及び弾性に影響を及ぼしている。一般に、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維は、不融化処理方法及び熱処理温度が、強度及び弾性率の向上に大きく影響を及ぼす。
本発明において賦活工程とは、より具体的には、炭素原料の表面に細孔を空け、カルボキシル基やアルデヒド基等の酸素含有官能基を付与する工程である。一般的に、炭素原料の表面に細孔を空ける手法としては、酸処理が知られている。
本発明においては、賦活工程にアルカリ処理を取り入れることにより、効率よく炭素原料表面の酸素還元活性を活発化させることができる。なお、本発明における炭素原料表面の酸素還元活性については、上記式(II)及び式(III)に示す酸素還元反応の活性を測定することにより、直接定量できる。
本工程には、アルカリ水溶液等のアルカリ溶液、及び公知の反応装置を適宜使用できる。本工程に使用できるアルカリ水溶液は、強アルカリ性のものが望ましく、濃度6mol/L以上の水酸化カリウム水溶液若しくは水酸化ナトリウム水溶液、又は濃度が20質量%以上のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましい。アルカリ処理時間及びアルカリ処理温度は、アルカリ処理に使用される炭素原料の量やサイズ、アルカリ溶液の種類及び濃度により適宜選択することができる。
例えば、炭素繊維原料としてケッチェンブラックを0.1〜10g用いた場合には、60〜95℃の処理温度で、1〜10時間アルカリ処理することが好ましい。
1−2.超音波処理工程
本工程は、上述した賦活工程後の炭素原料を超音波処理し、空気電池の空気極用炭素材料を製造する工程である。
上述したように、賦活した炭素原料においては、カルボキシル基等の酸素含有官能基近傍に粗大な放電生成物が析出し、炭素原料の細孔が塞がれ、炭素原料の比表面積が減ってしまう。超音波照射によって酸素含有官能基を除くことにより、放電生成物を表面に微細に且つ分散させて析出させることができる。
なお、後述する図4に示すように、超音波処理のみ施された炭素材料(比較例4)の比表面積は、超音波処理が施されていない炭素材料(ケッチェンブラック)の比表面積とほぼ変わらない。したがって、超音波処理のみでは本発明の目的を達成しえず、賦活処理と超音波処理を組み合わせることにより、本発明の目的である、空気電池の放電容量の向上が実現する。
本工程においては、超音波照射の効果をより高めるために、炭素原料を適宜溶媒又は分散媒中に分散させてもよい。
本発明に使用できる溶媒又は分散媒としては、極性の高い有機溶媒が好ましい。後述するように、分散媒としてエタノールを使用した実施例1の炭素材料、分散媒としてエタノールとアセトンの混合分散媒を使用した実施例2の炭素材料、分散媒としてアセトンを使用した実施例3の炭素材料の順に、CO及びCOの発生量が低くなり、且つ、使用した空気電池の放電容量が高くなる。特に、実施例1の炭素材料におけるCO及びCOの発生量は、実施例3の炭素材料におけるCO及びCOの発生量の3分の1である。また、実施例1の炭素材料を使用した空気電池の放電容量は、実施例3の炭素材料を使用した空気電池の放電容量よりも1割以上高い。これらの結果は、エタノールの方がアセトンよりも高い極性を有することと符合する。なお、本工程においては、極性溶媒と非極性溶媒との混合溶媒を用いてもよい。
本発明に使用できる溶媒又は分散媒は、水溶性であることが好ましく、また、沸点が100℃以下であることが好ましい。
本工程に使用できる溶媒又は分散媒としては、具体的には、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン等が好ましい。これらの溶媒又は分散媒の中でも、特に、賦活処理工程後の炭素材料の細孔の中に入り込みやすいという観点、超音波振動により酸素含有官能基を壊しやすく除去しやすいという観点、扱いやすいという観点、及び入手容易であるという観点から、エタノールを用いることが好ましい。
以下、上述した賦活処理を経たケッチェンブラックを用い、且つ、分散媒としてエタノールを用いる場合を例にとり、本工程を詳細に説明する。
まず、反応容器に、賦活処理後のケッチェンブラック及び分散媒を加え、超音波処理に供する。超音波の周波数や、超音波照射の時間は、炭素原料の量や種類に応じ、適宜選択できるが、例えば、超音波の周波数を1〜500kHz、超音波照射の時間を1分間〜1時間とすることが好ましい。
超音波処理後、反応溶液をろ過してろ過物を取り出し、乾燥させることにより、空気電池の空気極用炭素材料が得られる。乾燥温度は、分散媒を除去できる温度であれば特に限定されない。
以下、本発明の各工程における炭素材料の態様、及び本発明により製造された炭素材料の空気電池における働きについて、図を用いて説明する。
図1(a)は、図8(a)と同様に、賦活処理後の炭素材料について、細孔近傍の様子を模式的に示した断面図である。図1(b)は、超音波処理を経て製造された本発明の炭素材料について、細孔近傍の様子を模式的に示した断面図である。このように、超音波処理によって、カルボキシル基等の酸素含有官能基を壊し、ガス化しやすい炭素部分2を予め除去することができる。その結果、微小黒鉛結晶壁1aが炭素材料表面に露出すると共に、細孔の容積3が増える。図1(c)は、超音波処理後の炭素材料の細孔近傍について、空気電池に使用された際の放電後の様子を模式的に示した断面図である。露出した微小黒鉛結晶壁1aを主な活性点として酸素還元反応が進行し、当該各活性点において過酸化リチウム(Li)や酸化リチウム(LiO)等の放電生成物4が析出する。そのため、放電生成物4が微細に且つ炭素材料表面に分散して析出するため、放電容量が向上する。
以上のように、炭素原料を賦活処理し、さらに超音波処理することによって、後述する本発明に係る空気電池の空気極用炭素材料が製造できる。
2.空気電池の空気極用炭素材料
本発明の空気電池の空気極用炭素材料は、前記炭素材料の比表面積が850〜1,200m/gであり、昇温脱離法により測定したときのCO及びCOの総量が50μmol/g未満であることを特徴とする。
本発明の一態様である空気電池の空気電極に使用される炭素繊維材料は、比表面積が850〜1,200m/gである連通多孔性の炭素繊維材料であって、前記炭素繊維材料の表面におけるCO又はCO由来の官能基が0.5μmol/g以下にして微小黒鉛結晶壁が露出していることを特徴とする。
ケッチェンブラック等の従来の炭素材料を用いた場合に、空気電池の放電容量が依然低い理由として、炭素材料中の反応起点の数、及び反応場所の面積が、例えば、不活化された炭素材料よりも格段に小さいということが考えられる。ここでいう反応とは、主に上記式(II)及び(III)の少なくともいずれか1つに示す酸素還元反応である。
反応起点の数の指標としては、炭素材料の比表面積が例示できる。後述する実施例において示すように、比表面積が850m/g以上の炭素材料を用いた空気電池は、2,000mAh/g以上の放電容量を発揮する。このように従来よりも大きい比表面積を有する炭素材料を用いることにより、酸素還元反応の起点を多く確保できることが分かる。
また、後述する実施例において示すように、賦活処理を施された炭素材料(実施例1及び実施例3)の比表面積は、賦活処理を施されていない炭素材料(比較例4)の比表面積の1.2倍である。したがって、比表面積が850m/g以上であることは、従来の炭素材料では到底達成しえず、賦活処理等の表面処理をすることにより初めて可能になるものであるといえる。
炭素材料の比表面積は、900m/g以上であることがより好ましく、950m/g以上であることがさらに好ましい。炭素材料の比表面積は、1,100m/g以下であることがより好ましく、1,000m/g以下であることがさらに好ましい。
炭素材料の比表面積の測定方法は、公知の方法を採用できる。例えば、日本工業規格JISZ8830「気体吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に基づき、炭素材料の比表面積を測定してもよい。
反応起点の数の他の指標としては、昇温脱離法により測定したときのCO及びCOの総量が例示できる。
上述したように、炭素材料表面に、CO及びCO等のガスに変化しやすい炭素部分が残存している場合には、これらの炭素部分に放電生成物の固体が析出し、大きく成長しやすく、当該大きく成長した固体が炭素材料内の細孔を塞ぐことにより、放電容量の低下が引き起こされていた。本発明においては、CO及びCOの総量が極めて少ない炭素材料を用いることにより、放電生成物を炭素材料表面に分散させて成長させることができ、放電容量の増大を図ることができる。後述する実施例において示すように、昇温脱離法により測定したときのCO及びCOの総量が50μmol/g未満の炭素材料(実施例1−実施例3)を用いた空気電池は、2,000mAh/g以上の放電容量を発揮する。
また、後述する実施例において述べる通り、賦活処理及び超音波処理を施された炭素材料(実施例1−実施例3)に関するCO及びCOの総量は、賦活処理済みであるが超音波処理を施されていない炭素材料(比較例1)に関するCO及びCOの総量の1%以下である。したがって、昇温脱離法により測定したときのCO及びCOの総量が50μmol/g未満であることは、賦活処理をした炭素材料では到底達成しえず、賦活処理後にさらに超音波処理をすることにより初めて可能になるものであるといえる。
本発明に使用される炭素材料における、昇温脱離法により測定したときのCO及びCOの総量は30μmol/g以下であることがより好ましく、15μmol/g以下であることがさらに好ましい。また、当該CO及びCOの総量は0.1μmol/g以上であってもよい。
昇温脱離法によるCO及びCOの総量の測定方法の例を以下説明する。なお、以下の測定方法はあくまで一例であり、本発明に使用される炭素材料におけるCO及びCOの総量が、この方法により測定されたもののみに限定されるものではない。
まず、加熱炉等を備える昇温装置に炭素材料を設置する。次に、昇温装置内をヘリウム等の不活性雰囲気に置換した後、昇温装置内の温度を100℃以上とし、そのまま所定の時間保持することにより、炭素材料内に吸着した水を放出させる。続いて、昇温装置内の温度を昇温速度2〜6℃/分にて800〜1,500℃まで昇温し、そのまま所定の時間保持し、炭素材料から一酸化炭素や二酸化炭素を昇温脱離させる。脱離した一酸化炭素及び二酸化炭素を、ガスクロマトグラフィ−により定量する。
なお、昇温脱離後の炭素材料を、後述するエッジ面積の測定に引き続き用いてもよい。
本発明に使用される炭素材料は、細孔容積が2.45cm/g以上であることが好ましい。このように細孔容積の大きい炭素材料を使用した空気電池は、炭素材料表面により多くの放電析出物を分散させて蓄えることができ、高い放電容量を発揮できる。本発明に使用される炭素材料は、細孔容積が10.0cm/g以下であってもよい。
炭素材料の細孔容積の測定方法は、公知の方法を採用できる。例えば、日本工業規格JISZ8831−3「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第3部:ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法」に基づき、炭素材料の細孔容積を測定してもよい。
反応起点の数の他の指標としては、炭素材料の表面のエッジ面積が例示できる。炭素材料の表面のエッジ面積とは、炭素材料の表面において、炭素エッジ部が占める面積のことを指す。ここで、炭素エッジ部とは、エッジ炭素原子が占める部分のことを指す。
図2は、本発明に使用される炭素材料の化学構造を示した模式図である。なお、図2には、炭素原子層を3層有する炭素材料モデルが示されているが、当該炭素材料モデルは表面のエッジ面積を説明するために挙げた一例にすぎず、本発明に使用される炭素材料は、必ずしも図2に示されるものに限られない。
炭素材料200は、炭素原子層11が3層重なって構成されている。図2中の六角形は炭素原子からなる芳香族環を表す。
図中の黒丸11aは炭素原子層11中のエッジ炭素原子を、白丸11bは炭素原子層11中のエッジ炭素原子以外の炭素原子をそれぞれ表す。本発明におけるエッジ炭素原子とは、炭素原子層の端に位置する炭素原子であり、且つ、当該端が当該炭素原子を中心として180°未満となるものを指す。したがって、図2中に白丸で示すように、炭素原子層の端に位置していても、当該端が当該炭素原子を中心として180°以上となる炭素原子や、炭素原子層の内部に位置する炭素原子は、エッジ炭素原子とはならない。また、エッジ炭素原子であっても、炭素材料表面に存在せず、炭素材料の内部に埋もれている炭素原子は、炭素材料表面のエッジ面積の算出においては考慮に入れない。エッジ炭素原子は、炭素原子以外の原子とも結合できるのに対し、炭素原子層中のエッジ炭素原子以外の炭素原子は、炭素原子以外とは原則として結合を有しない。
上述したように、炭素材料の表面のエッジ面積とは、炭素材料の表面に位置するエッジ炭素原子が占める部分の面積のことである。エッジ炭素原子が占める部分の面積は、最も近いエッジ炭素原子間の距離に、炭素原子層間の距離を乗じたものである。ここで、炭素材料の表面に位置し、且つ最も近いエッジ炭素原子の組み合わせとして、黒丸11a及び黒丸11aで表されるエッジ炭素原子の組み合わせを例にとる。通常、炭素原子層中の炭素原子−炭素原子間の距離は0.142nmであるから、黒丸11a及び黒丸11aで表されるエッジ炭素原子間の距離11cは、(0.142×sin60°)×2=0.246nmである。さらに、炭素原子層の層間隔11dは通常0.335nmであるから、エッジ炭素原子が占める部分の面積11eは、0.246nm×0.335nm=0.0824nmとなる。この計算を、炭素原子層表面の全てのエッジ炭素原子について行うことにより、当該炭素材料の表面のエッジ面積が求まる。
本発明に使用される炭素材料の表面のエッジ面積は、80m/g以上であることが好ましく、90m/g以上であることがより好ましい。また、本発明に使用される炭素材料の表面のエッジ面積は、110m/g以下であることが好ましく、100m/g以下であることがより好ましい。
炭素材料の表面のエッジ面積の測定方法の例を以下説明する。なお、以下の測定方法はあくまで一例であり、本発明において規定される炭素材料の表面のエッジ面積は、以下の測定方法により測定されたもののみに限定されるものではない。
まず、加熱炉等を備える昇温装置に炭素材料を設置する。次に、昇温装置内をヘリウム等の不活性雰囲気に置換した後、昇温装置内の温度を100℃以上とし、そのまま所定の時間保持することにより、炭素材料内に吸着した水を放出させる。続いて、昇温装置内の温度を昇温速度2〜6℃/分にて800〜1,500℃まで昇温し、そのまま所定の時間保持し、炭素材料から一酸化炭素や二酸化炭素を昇温脱離させる。反応装置内の温度を400〜700℃まで下げた後、昇温脱離後の炭素材料に対し、水素を所定の時間供給することにより、炭素材料の表面のエッジ炭素原子に水素を結合させる。次に、水素の供給を止め、替わりに反応装置内をいったん不活性雰囲気に置換しつつ、室温まで冷却する。続いて、反応装置内の温度を昇温速度10〜30℃/分にて600〜1,000℃まで昇温する。次に、不活性ガスに酸素を混合して供給し、且つ、反応装置内の温度を昇温速度2〜6℃/分にて800〜1,200℃まで昇温することにより、エッジ炭素原子に結合した水素原子(H)を、水(HO)まで昇温酸化する。昇温酸化した際に放出された水分を、水分計により定量する。定量した水(HO)の質量モル濃度から水素(H)の質量モル濃度を求めることにより、下記式(A)より、炭素材料の表面のエッジ面積Sが算出される。なお、下記式(A)中の0.082の値は、図2中のエッジ炭素原子が占める部分の面積11eの値である。
S=(M×6.0×1023)×0.082 式(A)
(上記式(A)中、Sは炭素材料の表面のエッジ面積(m)、Mは水素の質量モル濃度(mol/g)をそれぞれ示す。)
上述した、比表面積の条件及び昇温脱離法により測定したときのCO及びCOの総量の条件をいずれも満たす炭素材料の典型例としては、上述した賦活処理及び超音波処理を経た炭素材料が例示できる。本発明の空気電池の空気極用炭素材料は、賦活処理及び超音波処理を経た炭素材料であることが好ましい。
本発明に係る空気電池の空気極用炭素材料は、CO及びCO等のガス化しやすい炭素部分がその表面に少ない。したがって、本発明に係る空気電池の空気極用炭素材料は、空気電池の空気極に用いられた際に、放電時に空気極表面に析出する固体を、従来の空気電池よりも極めて小さくできる。このような空気電池は、放電時により多くの放電生成物を炭素材料表面に析出させることができるため、従来の炭素材料を用いた空気電池よりも放電容量が大きい。
3.空気電池
本発明の空気電池は、少なくとも空気極、負極、並びに、当該空気極及び当該負極の間に介在する電解質層を備える空気電池であって、前記空気極が上記空気電池の空気極用炭素材料を含むことを特徴とする。
本発明の一態様である空気電池は、少なくとも空気極、負極、並びに、当該空気極及び当該負極の間に介在する電解質層を備える空気電池であって、前記空気極が上記空気電池の空気電極用の炭素繊維材料を含むことを特徴とする。
図3は、本発明の空気電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。なお、本発明の空気電池は、必ずしもこの例のみに限定されるものではない。
空気電池300は、空気極層22及び空気極集電体24を備える空気極26と、負極活物質層23及び負極集電体25を備える負極27と、空気極26及び負極27に挟持される電解質層21を備える。
以下、本発明の空気電池を構成する、空気極、負極、及び電解質層、並びに本発明の空気電池に好適に使用されるセパレータ及び電池ケースについて、詳細に説明する。
本発明に使用される空気極は空気極層を備え、通常、空気極集電体、及び当該空気極集電体に接続された空気極リードをさらに備える。
上記空気極層は、少なくとも上述した本発明に係る空気電池の空気極用炭素材料を含有する。さらに、必要に応じて、触媒、結着剤等を含有していても良い。
上記空気極層中の炭素材料の含有割合としては、空気極層全体の質量を100質量%としたとき、10〜99質量%であることが好ましく、20〜95質量%であることがより好ましい。炭素材料の含有割合が低すぎると、反応場が減少し、電池容量の低下が生じるおそれがある。一方、炭素材料の含有割合が高すぎると、後述する触媒の含有割合が相対的に減り、充分な触媒機能を発揮できないおそれがある。
上記空気極層に使用される触媒としては、例えば、酸素活性触媒が挙げられる。酸素活性触媒の例としては、例えば、ニッケル、パラジウム及び白金等の白金族;コバルト、マンガン又は鉄等の遷移金属を含むペロブスカイト型酸化物;ルテニウム、イリジウム又はパラジウム等の貴金属酸化物を含む無機化合物;ポルフィリン骨格又はフタロシアニン骨格を有する金属配位有機化合物;酸化マンガン等が挙げられる。
電極反応がよりスムーズに行われるという観点から、上述した炭素材料に触媒が担持されていてもよい。
上記空気極層は、少なくとも上記炭素材料を含有してれば良いが、さらに、当該炭素材料を固定化する結着剤を含有することが好ましい。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、スチレン・ブタジエンゴム(SBRゴム)等のゴム系樹脂等を挙げることができる。空気極層における結着剤の含有割合としては、特に限定されるものではないが、例えば、空気極層全体の質量を100質量%としたとき、1〜40質量%、中でも1〜10質量%であることが好ましい。
空気極層の作製方法としては、例えば、上記炭素材料を含む空気極層の原料等を、混合して圧延する方法や、当該原料に溶媒を加えてスラリーを調製し、後述する空気極集電体に塗布する方法等が挙げられるが、必ずしもこれらの方法に限定されない。スラリーの空気極集電体への塗布方法としては、例えば、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法等の公知の方法が挙げられる。
上記空気極層の厚さは、空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば2〜500μm、中でも5〜300μmであることが好ましい。
本発明に使用される空気極集電体は、空気極層の集電を行うものである。空気極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。空気極集電体の形状としては、例えば箔状、板状、及びメッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。中でも、本発明においては、集電効率に優れるという観点から、空気極集電体の形状がメッシュ状であることが好ましい。この場合、通常、空気極層の内部にメッシュ状の空気極集電体が配置される。さらに、本発明の空気電池は、メッシュ状の空気極集電体により集電された電荷を集電する別の空気極集電体(例えば箔状の集電体)を備えていても良い。また、本発明においては、後述する電池ケースが空気極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
空気極集電体の厚さは、例えば10〜1000μm、中でも20〜400μmであることが好ましい。
本発明に使用される負極は、好ましくは負極活物質を含有する負極活物質層を備え、通常、負極集電体、及び当該負極集電体に接続された負極リードをさらに備える。本発明においては、負極がリチウム金属又はリチウム化合物を含有してもよい。
本発明に使用される負極活物質層は、金属材料、合金材料、及び炭素材料からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む負極活物質を含有する。負極活物質に用いることができる金属及び合金材料としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素;アルミニウム等の第13族元素;亜鉛、鉄等の遷移金属;又は、これらの金属を含有する合金材料や化合物を例示することができる。
リチウム元素を含有する合金としては、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属酸化物としては、例えばリチウムチタン酸化物等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属窒化物としては、例えばリチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等を挙げることができる。また、負極活物質層には、固体電解質をコートしたリチウムを用いることもできる。
また、上記負極活物質層は、負極活物質のみを含有するものであっても良く、負極活物質の他に、導電性材料及び結着剤の少なくとも一方を含有するものであっても良い。例えば、負極活物質が箔状である場合は、負極活物質のみを含有する負極活物質層とすることができる。一方、負極活物質が粉末状である場合は、負極活物質及び結着剤を含有する負極活物質層とすることができる。なお、結着剤の種類及び含有割合については上述した通りである。
負極活物質層が含有する導電性材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料、ペロブスカイト型導電性材料、多孔質導電性ポリマー及び金属多孔体等を挙げることができる。炭素材料は、多孔質構造を有するものであっても良く、多孔質構造を有しないものであっても良い。多孔質構造を有する炭素材料としては、具体的にはメソポーラスカーボン等を挙げることができる。一方、多孔質構造を有しない炭素材料としては、具体的にはグラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンファイバー等を挙げることができる。
本発明に使用される負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅、ステンレス、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。負極集電体は、これらの内、SUS及びNiを用いることが好ましい。上記負極集電体の形状としては、例えば箔状、板状及びメッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。本発明においては、後述する電池ケースが負極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
本発明に使用される電解質層は、空気極層及び負極活物質層の間に保持され、空気極層及び負極活物質層との間で金属イオンを交換する働きを有する。
電解質層には、電解液、ゲル電解質、及び固体電解質等を用いることができる。これらは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
電解液としては、水系電解液及び非水系電解液を用いることができる。
非水系電解液の種類は、伝導する金属イオンの種類に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、リチウム空気電池に用いる非水系電解液としては、通常、リチウム塩及び非水溶媒を含有したものを用いる。上記リチウム塩としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO及びLiAsF等の無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(SOCF(Li−TFSA)、LiN(SO及びLiC(SOCF等の有機リチウム塩等を挙げることができる。上記非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル(AcN)、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びこれらの混合物等を挙げることができる。非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5〜3mol/Lである。
本発明においては、非水系電解液又は非水溶媒として、粘性の高いものを用いることが好ましい。粘性の高い非水系電解液又は非水溶媒としては、例えば、イオン性液体等が挙げられる。イオン性液体としては、例えば、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(PP13TFSA)、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(P13TFSA)、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(P14TFSA)、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEMETFSA)、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(TMPATFSA)等が挙げられる。
上記非水溶媒のうち、上記式(II)又は(III)で表される酸素還元反応を進行させるために、酸素ラジカルに安定な電解液溶媒を用いることがより好ましい。このような非水溶媒の例としては、アセトニトリル(AcN)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(PP13TFSA)、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(P13TFSA)、N−ブチル−N−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(P14TFSA)等が挙げられる。
水系電解液の種類は、伝導する金属イオンの種類に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、リチウム空気電池に用いる水系電解液としては、通常、リチウム塩及び水を含有したものを用いる。上記リチウム塩としては、例えばLiOH、LiCl、LiNO、CHCOLi等のリチウム塩等を挙げることができる。
本発明に使用されるゲル電解質は、通常、非水系電解液にポリマーを添加してゲル化したものである。例えば、リチウム空気電池の非水ゲル電解質は、上述した非水系電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)又はポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーを添加し、ゲル化することにより得られる。本発明においては、LiTFSA(LiN(CFSO)−PEO系の非水ゲル電解質が好ましい。
固体電解質としては、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、及びポリマー電解質等を用いることができる。
硫化物系固体電解質としては、具体的には、LiS−P、LiS−P、LiS−P−P、LiS−SiS、LiS−SiS、LiS−B、LiS−GeS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−SiS−P、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、LiPS−LiGeS、Li3.40.6Si0.4、Li3.250.25Ge0.76、Li4−xGe1−x等を例示することができる。
酸化物系固体電解質としては、具体的には、LiPON(リン酸リチウムオキシナイトライド)、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO、La0.51Li0.34TiO0.74、LiPO、LiSiO、LiSiO等を例示することができる。
ポリマー電解質は、伝導する金属イオンの種類に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、リチウム空気電池のポリマー電解質は、通常、リチウム塩及びポリマーを含有する。リチウム塩としては、上述した無機リチウム塩及び有機リチウム塩の少なくともいずれか1つを使用できる。ポリマーとしては、リチウム塩と錯体を形成するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
本発明の空気電池は、空気極及び負極の間に、セパレータを備えていてもよい。上記セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜;及びポリプロピレン等の樹脂製の不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。
セパレータに使用できるこれらの材料は、上述した電解液を含浸させることにより、電解液の支持材として使用することもできる。
本発明の空気電池は、通常、空気極、負極、電解質層等を収納する電池ケースを備える。電池ケースの形状としては、具体的にはコイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。電池ケースは、大気開放型の電池ケースであっても良く、密閉型の電池ケースであっても良い。大気開放型の電池ケースは、少なくとも空気極層が十分に大気と接触可能な構造を有する電池ケースである。一方、電池ケースが密閉型電池ケースである場合は、密閉型電池ケースに、気体(空気)の導入管及び排気管が設けられることが好ましい。この場合、導入及び排気する気体は、酸素濃度が高いことが好ましく、乾燥空気や純酸素であることがより好ましい。また、放電時には酸素濃度を高くし、充電時には酸素濃度を低くすることが好ましい。
電池ケース内には、電池ケースの構造に応じて、酸素透過膜や、撥水膜を設けてもよい。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
1.空気電池の空気極用炭素材料の製造
[実施例1]
1−1.賦活工程
リービッヒ冷却管を備える500mLの反応容器を、オイルバス内に設置した。当該反応容器内に、濃度8mol/LのKOH水溶液を200mL加え、炭素原料としてケッチェンブラック(KB lnternatinal製、商品名:KB ECP600JD;以下、KBと称する場合がある。)を5g投入し、マグネチックスターラーで攪拌した。オイルバスの温度を80℃に設定し、且つ、リービッヒ冷却管には冷却水を流すことにより、アルカリ水溶液を6時間還流し、アルカリ賦活処理されたKBを製造した。
1−2.超音波処理工程
エタノール(キシダ化学株式会社製、純度99.5%)を加えた50mLの反応容器中に、アルカリ賦活処理されたKB 200mgを浸漬させ、周波数100kHz、出力600Wの条件下で、15分間超音波処理をし、エタノール中にKBを分散させた。超音波処理後のKBをろ別後、50℃に保たれた乾燥機内において12時間乾燥させ、実施例1の空気電池の空気極用炭素材料(以下、実施例1の炭素材料と称する場合がある。)を製造した。
[実施例2]
実施例1と同様に賦活工程を行い、アルカリ賦活処理されたKBを製造した。超音波処理工程において、エタノールの替わりに、エタノール及びアセトン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%)の1:1混合分散媒を用いたこと以外は、実施例1と同様に超音波処理及び乾燥を行い、実施例2の空気電池の空気極用炭素材料(以下、実施例2の炭素材料と称する場合がある。)を製造した。
[実施例3]
実施例1と同様に賦活工程を行い、アルカリ賦活処理されたKBを製造した。超音波処理工程において、エタノールの替わりにアセトン(キシダ化学株式会社製、純度99.5%)を用いたこと以外は、実施例1と同様に超音波処理及び乾燥を行い、実施例3の空気電池の空気極用炭素材料(以下、実施例3の炭素材料と称する場合がある。)を製造した。
[比較例1]
実施例1と同様に賦活工程を行い、比較例1の空気電池の空気極用炭素材料(以下、比較例1の炭素材料と称する場合がある。)を製造した。すなわち、比較例1においては、超音波処理工程を行わなかった。
[比較例2]
賦活工程において、炭素原料としてKBの替わりにPITCH系炭素繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様にアルカリ賦活処理を行い、比較例2の空気電池の空気極用炭素材料(以下、比較例2の炭素材料と称する場合がある。)を製造した。なお、比較例2においては超音波処理工程を行わなかった。
[比較例3]
賦活工程において、炭素原料としてKBの替わりにPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様にアルカリ賦活処理を行い、比較例3の空気電池の空気極用炭素材料(以下、比較例3の炭素材料と称する場合がある。)を製造した。なお、比較例3においては超音波処理工程を行わなかった。
[比較例4]
超音波処理工程において、アルカリ賦活処理されたKB 200mgの替わりに、アルカリ賦活処理されていないKB 200mgを用いたこと以外は、実施例1と同様に超音波処理及び乾燥を行い、比較例4の空気電池の空気極用炭素材料(以下、比較例4の炭素材料と称する場合がある。)を製造した。すなわち、比較例4においては、賦活工程を行わなかった。
2.炭素材料の評価
2−1.昇温脱離法によるCO及びCOの発生量の測定
実施例1−実施例3及び比較例1−比較例4の炭素材料、並びに、ケッチェンブラック(KB ECP600JD)、活性炭S(株式会社クレハ製)、及びカーボンブラック(VulcanXC72)について、炭素材料中に含まれるガス化しやすい炭素の定量を行った。
図7は、炭素原料表面のガス化しやすい炭素部分の定量に用いた昇温装置の概略模式図である。昇温装置400は、シリカチューブ31及び加熱炉32を備える。シリカチューブ31は、ガス供給口31a及びガス排出口31bを備える。矢印33は供給ガスの供給方向を示す。また、矢印34は排出ガスの排出方向を示す。供給ガス及び排出ガスについては後に詳しく説明する。ガス供給口31a及びガス排出口31b近傍の所定の範囲には、テープヒーター35を巻いた。
図7に示すように、シリカチューブ31は全体的にUの字状に折れ曲がって配置され、当該折れ曲がった部分の近傍に炭素材料サンプル36が設置された。当該炭素材料サンプル36を固定するため、炭素材料サンプル36を挟むようにシリカチューブの両側からシリカウール37が適量充填された。また、加熱炉32は、シリカチューブ31の折れ曲がった部分全体を加熱できるように設置された。さらに、炭素材料サンプル36の温度を測定するために熱電対38が設置された。
まず、ガス供給口31aからヘリウムを供給し、シリカチューブ31内部をヘリウム雰囲気に置換した。次に、シリカチューブ31内の温度を100℃とし、そのまま1時間保持することにより、炭素材料サンプル36内に吸着した水を放出させた。続いて、シリカチューブ31内の温度を昇温速度4℃/分にて1,100℃まで昇温し、そのまま1時間保持し、ガス排出口31bより排出された一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO)を、マイクロガスクロマトグラフィ−により定量した。これらCO及びCOの発生量を、炭素材料中に含まれるガス化しやすい炭素の量の指標とした。
2−2.比表面積の定量
実施例1、実施例3、比較例1、及び比較例4の炭素材料、並びに、ケッチェンブラック(KB ECP600JD)について、比表面積の定量を行った。具体的には、日本工業規格JISZ8830に基づき、窒素ガスの物理吸着を用いた細孔分布計(Belsorp max、日本ベル株式会社製)により、炭素材料の比表面積を測定した。
2−3.細孔容積の定量
実施例1、実施例3、比較例1、及び比較例4の炭素材料、並びに、ケッチェンブラック(KB ECP600JD)について、細孔容積の定量を行った。具体的には、日本工業規格JISZ8831−3に基づき、窒素ガスの物理吸着を用いた細孔分布計(Belsorp max、日本ベル株式会社製)により、炭素材料の細孔容積を測定した。
3.空気極の作製
[実施例4]
まず、実施例1の炭素材料、及びPTFEバインダー(ダイキン製)を、炭素材料:PTFE=90質量%:10質量%の割合で混合し、当該混合物にさらに溶媒としてエタノールを所定量加えた。次に、当該混合物をロールプレスにより圧延し、60℃の温度条件下且つ真空条件下にて前乾燥させた。続いて、乾燥させた混合物を適宜切り出し、さらに120℃の温度条件下且つ真空条件下にて最終乾燥させ、実施例4の空気極を作製した。
[実施例5]
実施例4において、実施例1の炭素材料の替わりに、実施例2の炭素材料を用いたこと以外は、実施例4と同様に材料の混合、前乾燥、切り出し、最終乾燥を行い、実施例5の空気極を作製した。
[実施例6]
実施例4において、実施例1の炭素材料の替わりに、実施例3の炭素材料を用いたこと以外は、実施例4と同様に材料の混合、前乾燥、切り出し、最終乾燥を行い、実施例6の空気極を作製した。
[比較例5]
実施例4において、実施例1の炭素材料の替わりに、比較例1の炭素材料を用いたこと以外は、実施例4と同様に材料の混合、前乾燥、切り出し、最終乾燥を行い、比較例5の空気極を作製した。
[比較例6]
実施例4において、実施例1の炭素材料の替わりに、比較例2の炭素材料を用いたこと以外は、実施例4と同様に材料の混合、前乾燥、切り出し、最終乾燥を行い、比較例6の空気極を作製した。
[比較例7]
実施例4において、実施例1の炭素材料の替わりに、比較例3の炭素材料を用いたこと以外は、実施例4と同様に材料の混合、前乾燥、切り出し、最終乾燥を行い、比較例7の空気極を作製した。
[比較例8]
実施例4において、実施例1の炭素材料の替わりに、比較例4の炭素材料を用いたこと以外は、実施例4と同様に材料の混合、前乾燥、切り出し、最終乾燥を行い、比較例8の空気極を作製した。
[比較例9]
実施例4において、実施例1の炭素材料の替わりに、ケッチェンブラック(KB ECP600JD)を用いたこと以外は、実施例4と同様に材料の混合、前乾燥、切り出し、最終乾燥を行い、比較例9の空気極を作製した。
[比較例10]
実施例4において、実施例1の炭素材料の替わりに、活性炭S(株式会社クレハ製;以下、ACと称する場合がある。)を用いたこと以外は、実施例4と同様に材料の混合、前乾燥、切り出し、最終乾燥を行い、比較例10の空気極を作製した。
[比較例11]
実施例4において、実施例1の炭素材料の替わりに、カーボンブラック(VulcanXC72;以下、CBと称する場合がある。)を用いたこと以外は、実施例4と同様に材料の混合、前乾燥、切り出し、最終乾燥を行い、比較例11の空気極を作製した。
4.空気電池の作製
[実施例7]
空気極として、実施例4の空気極を使用した。
電解液として、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(関東化学製、PP13TFSA)に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(キシダ化学株式会社製)を0.32mol/kgの濃度となるように溶解させ、アルゴン雰囲気下で一晩攪拌混合したものを用意した。また、セパレータとしてポリプロピレン製不織布(JH1004N)を用意した。
負極として金属リチウム(極東金属製、厚さ:200μm、φ15mm)を用意した。
電池ケースとして、F型セル(北斗電工製)を用意した。
電池ケースの底から、金属リチウム、電解液を含浸させたセパレータ、膨張化炭素繊維アミノ化物を含む空気極の順に積層するように、電池ケース内に各部材を収納し、実施例7の空気電池を作製した。さらに電池ケース全体を500mLのガス置換コック付ガラスデシケータに収納して、電池ケース内の雰囲気を制御できるようにした。
以上の工程は、全て窒素雰囲気下のグローブボックス内で行った。
[実施例8]
実施例7において、実施例4の空気極の替わりに、実施例5の空気極を使用したこと以外は、実施例7と同様の部材を用いて、実施例8の空気電池を作製した。
[実施例9]
実施例7において、実施例4の空気極の替わりに、実施例6の空気極を使用したこと以外は、実施例7と同様の部材を用いて、実施例9の空気電池を作製した。
[比較例12]
実施例7において、実施例4の空気極の替わりに、比較例5の空気極を使用したこと以外は、実施例7と同様の部材を用いて、比較例12の空気電池を作製した。
[比較例13]
実施例7において、実施例4の空気極の替わりに、比較例6の空気極を使用したこと以外は、実施例7と同様の部材を用いて、比較例13の空気電池を作製した。
[比較例14]
実施例7において、実施例4の空気極の替わりに、比較例7の空気極を使用したこと以外は、実施例7と同様の部材を用いて、比較例14の空気電池を作製した。
[比較例15]
実施例7において、実施例4の空気極の替わりに、比較例8の空気極を使用したこと以外は、実施例7と同様の部材を用いて、比較例15の空気電池を作製した。
[比較例16]
実施例7において、実施例4の空気極の替わりに、比較例9の空気極を使用したこと以外は、実施例7と同様の部材を用いて、比較例16の空気電池を作製した。
[比較例17]
実施例7において、実施例4の空気極の替わりに、比較例10の空気極を使用したこと以外は、実施例7と同様の部材を用いて、比較例17の空気電池を作製した。
[比較例18]
実施例7において、実施例4の空気極の替わりに、比較例11の空気極を使用したこと以外は、実施例7と同様の部材を用いて、比較例18の空気電池を作製した。
5.空気電池の充放電試験
実施例7−実施例9、及び比較例12−比較例18の空気電池について、充放電試験を行い、放電容量を測定した。
まず、各空気電池を、60℃の温度条件下に3時間放置した。その後、充放電試験装置(ナガノ製、BTS2004H)を用いて、各空気電池の空気極層に純酸素(大陽日酸、99.9%)を供給しながら、60℃の温度条件、且つ、電流密度0.05mA/cm、放電終始電圧2.0V、充電終始電圧3.8Vの条件下で、充放電試験を行い、放電容量を測定した。
6.評価のまとめ
図4は、実施例1、実施例3、比較例1、及び比較例4の炭素材料、及び、ケッチェンブラックの比表面積を比較した棒グラフ、並びに、これら炭素材料の細孔容積を比較したグラフを重ねて示したものである。また、図5は、実施例7−実施例9、及び比較例12−比較例18の空気電池の放電容量、並びに、これらの空気電池に使用された炭素材料に関する、昇温脱離法におけるCO及びCOの発生量の関係を示したグラフである。また、図6は、図5中、CO及びCOの発生量が0〜約80μmol/gの部分について拡大したグラフである。また、下記表1は、実施例7−実施例9、及び比較例12−比較例18の空気電池について、空気極に使用した炭素材料の種類、当該炭素材料に関するCO及びCOの発生量(μmol/g)、比表面積(m/g)、及び細孔容積(cm/g)、並びに、空気電池の放電容量(mAh/g)をまとめた表である。
図4は、左の縦軸に比表面積(m/g)を、右の縦軸に細孔容積(cm/g)を、それぞれとったグラフである。棒グラフのデータは左の縦軸に、折れ線グラフのデータは右の縦軸に、それぞれ準ずる。いずれのグラフも、左から右に、ケッチェンブラック、比較例4の炭素材料、比較例1の炭素材料、実施例3の炭素材料、及び実施例1の炭素材料の各データを示す。
表1及び図4から分かるように、ケッチェンブラックの比表面積は774m/gであり、細孔容積は2.32cm/gである。また、超音波処理のみ実施した比較例4の炭素材料の比表面積は770m/gであり、細孔容積は2.30cm/gである。これらの結果から、賦活処理を経ず、超音波処理のみ行っても、賦活処理及び超音波処理をいずれも施さなかった場合と比較して、比表面積及び細孔容積にほとんど影響を及ぼさないことが分かる。
また、表1及び図4から分かるように、賦活処理のみ実施した比較例1の炭素材料の比表面積は829m/gであり、細孔容積は2.40cm/gである。したがって、賦活処理のみ行い、超音波処理を施さなかった炭素材料は、賦活処理及び超音波処理をいずれも施さなかった炭素材料と比較して、比表面積及び細孔容積がいずれも若干増大する。しかし、後述するように、比較例1においては、炭素材料のCO及びCOの発生量が著しく増える。
一方、表1及び図4から分かるように、賦活処理及び超音波処理を実施した実施例1及び実施例3の炭素材料の比表面積は900m/gを超え、細孔容積は2.50cm/gを超える。したがって、賦活処理及び超音波処理を両方実施することにより、賦活処理及び超音波処理をいずれも施さなかった場合と比較して、炭素材料の比表面積が1.2倍以上、細孔容積が1.1倍以上増加することが分かる。
図5は、縦軸に放電容量(mAh/g)を、横軸にCO及びCOの発生量(μmol/g)をそれぞれとったグラフである。
表1及び図5から分かるように、空気極にケッチェンブラックを用いた比較例16の空気電池の放電容量は800mAh/gであり、CO及びCOの発生量は290μmol/gである。また、空気極にACを用いた比較例17の空気電池の放電容量は850mAh/gであり、CO及びCOの発生量は405μmol/gである。また、空気極にCBを用いた比較例18の空気電池の放電容量は900mAh/gであり、CO及びCOの発生量は70μmol/gである。以上より、市販の炭素材料を単に空気極に用いた空気電池(比較例16−比較例18)は、いずれも放電容量が1,000mAh/g未満である。
また、表1及び図5から分かるように、空気極に超音波処理済みのケッチェンブラック(比較例4)を用いた比較例15の空気電池の放電容量は800mAh/gであり、CO及びCOの発生量は270μmol/gである。したがって、超音波処理のみを施した炭素材料を用いた空気電池は、従来の空気電池(比較例16−比較例18)とほぼ差がない。
さらに、表1及び図5から分かるように、空気極に賦活処理済みのケッチェンブラック(比較例1)を用いた比較例12の空気電池の放電容量は1,000mAh/gであり、CO及びCOの発生量は1,347μmol/gである。また、空気極に賦活処理済みのPITCH系炭素材料(比較例2)を用いた比較例13の空気電池の放電容量は600mAh/gであり、CO及びCOの発生量は866μmol/gである。また、空気極に賦活処理済みのPAN系炭素材料(比較例3)を用いた比較例14の空気電池の放電容量は500mAh/gであり、CO及びCOの発生量は898μmol/gである。以上より、賦活処理を行うことにより、従来の空気電池(比較例16−比較例18)と比較して空気電池の放電容量はやや向上するものの、CO及びCOの発生量が2倍以上多くなることが分かる。
一方、表1、図5及び図6から分かるように、空気極に、賦活処理済み且つエタノール分散媒中で超音波処理済みのケッチェンブラック(実施例1)を用いた実施例7の空気電池の放電容量は2,345mAh/gであり、CO及びCOの発生量は5μmol/gである。また、空気極に、賦活処理済み且つエタノール及びアセトンの混合分散媒中で超音波処理済みのケッチェンブラック(実施例2)を用いた実施例8の空気電池の放電容量は2,300mAh/gであり、CO及びCOの発生量は10μmol/gである。また、空気極に、賦活処理済み且つアセトン分散媒中で超音波処理済みのケッチェンブラック(実施例3)を用いた実施例9の空気電池の放電容量は2,000mAh/gであり、CO及びCOの発生量は15μmol/gである。したがって、従来の炭素材料を使用した比較例12−比較例18の空気電池と比較して、実施例7−実施例9の空気電池は、賦活処理済み且つ超音波処理済みの炭素材料を空気極に用いたことにより、放電容量が2倍以上向上し、且つ、CO及びCOの発生量が6%以下に抑えられたことが分かる。これらの結果は、賦活後に超音波処理を行うことにより、炭素材料表面のガス化しやすい炭素部分がほぼ除去でき、その結果、酸素還元反応の起点を増やすことができ、放電容量を向上できることを示す。
また、図6中に破線で示すように、実施例7−実施例9のデータから、以下の式(B)により表される近似直線が導き出される。
y=−34.5x+2560 式(B)
(上記式(B)中、yは放電容量(mAh/g)を表し、xはCO及びCOの発生量(μmol/g)を表す。)
比較例18の放電容量は900mAh/gであるから、式(A)のyに900を代入すると、x=48である。したがって、上記式(A)より、理論上は、CO及びCOの発生量が50μmol/g以下である炭素材料を空気極に用いることにより、従来の炭素材料を用いた空気電池よりも高い放電容量を発揮できる空気電池が製造される。
1 ガス化しにくい炭素部分
1a 微小黒鉛結晶壁
2 ガス化しやすい炭素部分
3 細孔の容積
4 放電生成物の固体
11 炭素原子層
11a,11a,11a エッジ炭素原子
11b エッジ炭素原子以外の炭素原子
11c エッジ炭素原子の原子間距離
11d 炭素原子層の層間隔
11e エッジ炭素原子が占める部分の面積
21 電解質層
22 空気極層
23 負極活物質層
24 空気極集電体
25 負極集電体
26 空気極
27 負極
31 シリカチューブ
31a ガス供給口
31b ガス排出口
32 加熱炉
33 供給ガスの供給方向を示す矢印
34 排出ガスの排出方向を示す矢印
35 テープヒーター
36 炭素材料サンプル
37 シリカウール
38 熱電対
200 炭素材料
300 空気電池
400 昇温装置

Claims (8)

  1. 空気電池の空気極に使用される炭素材料の製造方法であって、
    炭素原料をアルカリ処理し、当該炭素原料の少なくとも表面における酸素還元活性を活発化させる賦活工程、及び、
    前記賦活工程後の前記炭素原料を超音波処理し、空気電池の空気極用炭素材料を製造する超音波処理工程、を有することを特徴とする、空気電池の空気極用炭素材料の製造方法。
  2. 空気電池の空気電極に使用される炭素繊維材料の製造方法であって、
    連通した三相界面サイトを有する多孔性の炭素繊維材料をアルカリ水溶液でアルカリ賦活処理して表面の酸素還元性を活発化させる賦活工程、
    前記賦活工程後の前記炭素繊維材料を水溶性有機溶媒中で超音波照射することにより、当該炭素繊維材料の表面からCO又はCO由来の官能基を低減し且つ微小黒鉛結晶壁を露出させる超音波処理工程、及び、
    超音波処理工程後の前記炭素繊維材料を乾燥する乾燥工程、を有することを特徴とする、空気電池の空気電極用の炭素繊維材料の製造方法。
  3. 空気電池の空気極に使用される炭素材料であって、
    前記炭素材料の比表面積が850〜1,200m/gであり、
    昇温脱離法により測定したときのCO及びCOの総量が50μmol/g未満であることを特徴とする、空気電池の空気極用炭素材料。
  4. 少なくとも空気極、負極、並びに、当該空気極及び当該負極の間に介在する電解質層を備える空気電池であって、
    前記空気極が、前記請求項3に記載の空気電池の空気極用炭素材料を含むことを特徴とする、空気電池。
  5. 前記負極がリチウム金属又はリチウム化合物を含有する、請求項4に記載の空気電池。
  6. 比表面積が850〜1,200m/gである連通多孔性の炭素繊維材料であって、
    前記炭素繊維材料の表面におけるCO又はCO由来の官能基が0.5μmol/g以下にして微小黒鉛結晶壁が露出していることを特徴とする、空気電池の空気電極用の炭素繊維材料。
  7. 少なくとも空気極、負極、並びに、当該空気極及び当該負極の間に介在する電解質層を備える空気電池であって、
    前記空気極が、前記請求項6に記載の空気電池の空気電極用の炭素繊維材料を含むことを特徴とする、空気電池。
  8. 前記負極がリチウム金属又はリチウム化合物を含有する、請求項7に記載の空気電池。
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JP2017050294A (ja) * 2016-12-05 2017-03-09 冨士色素株式会社 組成物、該組成物を含有する多孔性層を有する電極、および該電極を有する金属空気二次電池
JP2018147897A (ja) * 2018-06-25 2018-09-20 冨士色素株式会社 組成物、該組成物を含有する多孔性層を有する電極、および該電極を有する金属空気二次電池

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