JP2001303912A - 立体カム用シム及び弁開閉用立体カム機構 - Google Patents

立体カム用シム及び弁開閉用立体カム機構

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JP2001303912A
JP2001303912A JP2000130129A JP2000130129A JP2001303912A JP 2001303912 A JP2001303912 A JP 2001303912A JP 2000130129 A JP2000130129 A JP 2000130129A JP 2000130129 A JP2000130129 A JP 2000130129A JP 2001303912 A JP2001303912 A JP 2001303912A
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shim
cam
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semi
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Hiroji Tokoro
博治 所
Mayu Terasawa
真夕 寺澤
Hirofumi Tani
裕文 谷
Shuji Nakano
修司 中野
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】立体カムに接触するシムの表側表面と裏側表面
の硬度比を所定範囲とし、立体カムとの衝突に対するシ
ムの耐衝撃性を高め、シムの耐久性を改善する。 【解決手段】シムである追従接触片のカム接触面に対す
る半円柱面の適正な硬度比は、衝撃値及び引張強さの両
方の特性が共に高い範囲である0.4〜0.85の範囲
である。カム接触面表面は高い硬度を維持し、これに対
して半円柱面表面の硬度を硬度比で0.4〜0.85の
範囲で低くなるように追従接触片を表面硬化処理する。
即ち、耐摩耗性を損なわずに高速回転時の立体カムへの
追従性不良が長い期間継続しても耐久性が低下しない追
従接触片を得ることができる。従って、半円柱面の靭性
が高められるので、立体カムとの衝突に対する追従接触
片の耐衝撃性が高められ、そのため耐久性が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関のバルブ
を駆動する立体カムと接触する立体カム用シム及び弁開
閉用立体カム機構に関する。
【0002】
【従来の技術】図12に示すように、特公平7−458
03号公報では、低回転用カムプロフィルから高回転用
カムプロフィルを軸方向に連続的に変化させた立体カム
100を備えたカムシャフト101と、立体カム100
のカムプロフィルに基づいて往復動することによりバル
ブ102を開閉する直打式バルブリフタ103とを備え
た弁開閉用立体カム機構が開示されている。
【0003】直打式バルブリフタ103は、その頂部1
04に嵌合された座部材(サドル)105と,座部材1
05に設けられた半円筒内面座105Aと、半円筒内面
座105Aに揺動可能に嵌合されて立体カム100の回
転に伴う接触線角度の変化に追従しながら立体カム10
0に接触する立体カム用シムとしての追従接触片106
とを備えている。
【0004】また、図13及び図14に示すように、特
開平10−196329号公報では、右側の低回転用カ
ムプロフィルから左側の高回転用カムプロフィルまでの
カムプロフィルを軸方向に連続的に変化させた立体カム
2が、カムシャフト1に配置されている。
【0005】立体カム2は、低回転用カムプロフィルに
おいても高回転用カムプロフィルにおいても同一半径で
あるベース円部2aと,円錐面のように傾斜しているノ
ーズ部2bとからなる。カムシャフト1の端部には、内
燃機関の回転数等の運転状況に応じてカムシャフト1を
軸方向へ連続的に変位させる変位装置3が連結されてい
る。
【0006】カムシャフト1の下方には、立体カム2の
カムプロフィルに基づいて上下方向に往復動することに
よりバルブ4を開閉する直打式バルブリフタ10が配置
されている。直打式バルブリフタ10は、円板状の端壁
部11とこの端壁部11から下方へ延びる円筒状の側壁
部13とからなる倒立カップ状のリフタ本体14を備え
ている。なお、側壁部13は、図示しないシリンダヘッ
ドに形成されたリフタガイド穴に上下摺動可能にガイド
される。
【0007】端壁部11には、立体カム用シムである追
従接触片21の長手方向の移動を規制する追従接触機構
17が設けられている。以下、この追従接触機構17に
ついて、詳述する。端壁部11の上面中央部には、立体
カム2の軸線とは直角方向に長い隆起部18が一体的に
形成されている。隆起部18には、隆起部18と同一方
向に延びる半円筒内面座19が凹設されている。半円筒
内面座19の両端は、突き抜けるように開放されてい
る。
【0008】半円筒内面座19の長手方向略中央部に
は、係合凹部20が形成されている。また、半円筒内面
座19には、半円筒内面座19に揺動(ロール運動)可
能に接触する半円柱面22と,立体カム2に接触する平
らな接触面23とを含む、半割り円柱状の追従接触部2
1が揺動可能に嵌合されている。半円柱面22の長手方
向略中央部には扇形の係合突部24が一体的に形成され
ており、この係合突部24が係合凹部20に係合して揺
動可能に挟まれている。
【0009】そして、追従接触部21は、小角度の揺動
により、立体カム2の回転に伴う接触線角度の変化に追
従しながら、接触面23において立体カム2に接触する
ようになっている。この際、立体カム2は、追従接触部
21の接触面23をその長手方向に摺接していく。ま
た、係合凹部20が係合突部24を挟むことにより追従
接触部21の長手方向の移動を規制しているので、追従
接触部21は半円筒内面座19から外れない。
【0010】図12乃至図14に示す追従接触片106
及び21の表面硬化処理としては、追従接触片106及
び21の材料となる浸炭用鋼に浸炭焼入れ・焼戻しが行
われる。更に、上記表面硬化処理後に軟窒化処理を追従
する場合もあるが、いずれも処理を簡単にするため、硬
化層は追従接触片106及び21の全表面に形成され
る。
【0011】一方、特開平11−193705号公報で
は、従来型カム機構(カム軸方向にカムプロフィルが変
化しない通常の直打式動弁系の立体カムを備える機構)
の円板形シムの表側表面に硬化層を形成する技術が開示
されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図12及び
図13に示すカムシャフト101及び1を高速で回転さ
せると、ある回転数以上でバルブ102及び4、バルブ
リフタ103及び10等の往復動部品は立体カム100
及び2に追従できずに分離・衝突する。この衝突が最も
激しいのは、図15に示すように、立体カム2の揚程期
間末期である。なお、図15は、図13に示す従来例を
用いたものである。
【0013】追従接触片21が立体カム2へ衝突する位
置は、追従接触片21の中心P1から若干外れた位置で
ある。追従接触片21は、立体カム2と衝突する位置を
支点P2にして、追従接触片21の両側から作用する慣
性力P3により谷状に曲がる。最も大きな引張力を受け
るのは、追従接触片21における支点P1(半円柱面2
2側)の反対側でかつ半円柱面22の頂部22Aであ
る。
【0014】追従接触片21には、立体カム2との接触
面23の耐摩耗性を高めるための硬化層が、全表面にわ
たって0.1mm〜0.5mmの深さで形成されてい
る。また、上述したように、追従接触片21では、その
半円柱面22の頂部22Aに、大きな衝撃力によって曲
げモーメントが作用する。従って、追従接触片21の頂
部22Aでは、その硬化層が脆いために、耐久性が低下
するという問題があった。
【0015】一方、従来型カム機構における円板形シム
の表面硬化処理が、図12乃至図14に示す追従接触片
106及び21にそのまま適用できないのは、追従接触
片106及び21では曲げモーメントを受ける断面形状
部分における断面係数が小さいためである。即ち、追従
接触片106及び21は上記大きな衝撃力に対処できる
ように靭性を高くした方が良く、そのため追従接触片2
1の頂部22Aに厚い硬化層を形成しない方が有利だか
らである。
【0016】また、特開平11−193705号公報の
技術は、シムの表側表面の硬度を高めて耐摩耗性を向上
させることを目的としているが、シムの裏側表面の硬度
については特定されていない。即ち、特開平11−19
3705号公報の技術は、立体カムとの衝突に対するシ
ムの耐衝撃性を高めて耐久性を向上させるものではな
い。
【0017】そこで、本発明は、上記事情を考慮し、立
体カムに接触する立体カム用シムの表側表面と裏側表面
の硬度比を所定の範囲とすることによって、立体カムと
の衝突に対する立体カム用シムの耐衝撃性を高め、立体
カム用シムの耐久性を改善する。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る
立体カム用シムは、バルブを駆動する立体カムに接触す
る表側表面の硬度と,裏側表面の少なくとも一部の硬度
との比を0.4〜0.85の範囲とすることを特徴とす
る。ここで、硬度比の範囲を0.4〜0.85としたの
は、以下の理由からである。立体カム用シムの表側表面
に対する裏側表面の硬度比を0.85以下に設定する
と、衝撃値が高くなるので、内燃機関の高速回転時の立
体カムへの追従性不良が長い期間継続しても耐久性が低
下することがない。
【0019】また、硬度比0.4は、浸炭されていない
部分の標準的な焼入れ・焼戻しで得られる下限である。
そして、硬度比が0.4よりも低くなると、引張強さが
低下するので、強度不足となる。即ち、硬度比が0.4
以下になると、立体カム用シムの変形に対する耐久性が
低下する。従って、立体カム用シムの表側表面に対する
裏側表面の適正な硬度比は、衝撃値及び引張強さの両方
の特性が共に高い範囲である0.4〜0.85の範囲と
なる。本発明において、上記硬度比のより好ましい範囲
は0.45〜0.85であり、さらに好ましい範囲は
0.5〜0.8である。
【0020】本発明の請求項1に係る立体カム用シムに
おいては、表側表面が高い硬度を維持し、これに対して
裏側表面の硬度を硬度比で0.4〜0.85の範囲で低
くなるように表面硬化処理する。即ち、本発明の請求項
1に係る立体カム用シムによれば、立体カムに対する耐
摩耗性を損なわずに、内燃機関の高速回転時の立体カム
への追従性不良が長い期間継続しても耐久性が低下しな
い立体カム用シムを得ることができる。従って、本発明
の請求項1に係る立体カム用シムによれば、立体カム用
シムの裏側表面の靭性が高められるので、立体カムとの
衝突に対する立体カム用シムの耐衝撃性が高められ、そ
のため耐久性が向上する。
【0021】また、バルブを駆動する立体カムに接触す
るフラット状の表側表面と,前記表側表面に連続して形
成される曲面状の裏側表面とを備える立体カム用シムに
おいて、前記表側表面の硬度と,前記裏側表面の少なく
とも一部の硬度との比を0.4〜0.85の範囲とする
と共に、前記裏側表面の少なくとも一部が、前記バルブ
の開閉時に前記立体カムが前記表側表面と接触する方向
については前記バルブの揚程期間末期に前記立体カムが
前記表側表面に接触する近傍に対応する部分を含み、前
記表側表面から前記裏側表面の頂部までの高さ方向につ
いては前記頂部から前記表側表面までの高さにおける引
張応力が作用する範囲近傍を含むように構成しても良
い。この場合には、立体カム用シムの裏側表面の少なく
とも一部(最小範囲)を、バルブが閉じる時に立体カム
が表側表面と接触する側の長手方向中央位置から長手方
向全長に対する比で0.15に対応する部分と略等し
く、表側表面から裏側表面の頂部までの高さ方向につい
ては頂部から表側表面までの高さにおける引張応力が作
用する範囲近傍例えば約0.6の範囲としたので、立体
カム用シムの耐衝撃性を向上しつつ、立体カム用シムの
裏側表面の靭性を高める部分が必要最小限となる。即
ち、本実施形態によれば、立体カム用シムの裏側表面に
対する仕上げ加工などの硬化層除去処理の範囲を最小限
にできる。
【0022】また、請求項1乃至3のいずれか1項に係
る発明において、薄膜状の硬化層を前記表側表面及び裏
側表面の表面に形成させても良い。この場合には、硬化
層は薄いので、耐衝撃性を損うことがない。さらに、内
燃機関のバルブタイミングを調整する弁開閉用立体カム
機構に、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の立体カ
ム用シムを設けるようにしても良い。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、図1乃至図6に基づいて、
本発明の一実施形態である立体カム用シム及び弁開閉用
立体カム機構について説明する。本実施形態の弁開閉用
立体カム機構は、図13に示す従来例と略同様の弁開閉
用立体カム機構である。図1は本実施形態の弁開閉用立
体カム機構の要部を示す断面図、図2Aは図1に示す追
従接触片の側面図である。なお、図1において、図13
に対応する部分には同一符号を付してその詳細説明は省
略する。
【0024】図1及び図2に示すように、立体カム用シ
ムとしての追従接触片30は、立体カム2と接触するフ
ラット状のカム接触面31と,リフタ本体14の半円筒
内面座19と接触する略半円断面状の半円柱面32とを
有する。なお、追従接触片30の材質は、浸炭用鋼であ
る。
【0025】半円柱面32の長手方向中央部には扇形の
係合突部34が形成されており、この係合突部34が係
合凹部20に係合することによって追従接触片30は半
円筒内面座19に対する長手方向の移動が規制される。
図2に示すように、係合突部34は、その追従接触片3
0のカム接触面31側に偏心しており、半円柱面32の
頂部33下面と略一致している。なお、図1に示すよう
に、リフタ本体14は、その側壁部13がシリンダヘッ
ド26に形成されたリフタガイド穴28に上下摺動可能
にガイドされている。
【0026】ところで、図1に示すカムシャフト1が許
容範囲の上限を超えて回転すると、立体カム2への追従
不良によって大きな衝撃力が追従接触片30の半円柱面
32に作用するため、耐衝撃性を高くする必要がある。
一方、追従接触片30のカム接触面31は、立体カム2
に接触するので、高い耐摩耗性が要求される。
【0027】そのため、追従接触片30は、そのカム接
触面31の硬度を高く保ちつつ半円柱面32の硬度をカ
ム接触面31の硬度よりも低くしている。ここで、追従
接触片30の表側表面であるカム接触面31の硬度と,
追従接触片30の裏側表面である半円柱面32の硬度と
の比を0.4〜0.85の範囲とした。これは、追従接
触片30の半円柱面32の靭性を高め、立体カム2との
衝突に対する追従接触片30の耐衝撃性を向上させ、追
従接触片30の耐久性を改善するためである。
【0028】以下、図3及び図4に基づいて、硬度比の
範囲を0.4〜0.85とした理由を詳述する。なお、
図3は均質な試験片で測定された構造用鋼の焼入れ後の
焼戻し温度による機械的性質の変化を示し、図4はクロ
ムモリブデン鋼を材料とした追従接触片30におけるカ
ム接触面31の硬度をHv800程度に維持して、半円
柱面32の硬度を変化させた場合の引張強さ及び衝撃値
を示す。
【0029】鋼の耐摩耗性は硬度で決まるため、図3に
示すように、耐摩耗性を向上させるには焼戻し温度が低
い方が良い。一方、焼戻し温度が低いと、伸び,絞り,
衝撃値が小さくなるので、脆くなる。
【0030】立体カム2と接触する追従接触片30のカ
ム接触面31は、高い耐摩耗性が必要なため、浸炭焼入
れ・焼戻しによってカム接触面31の全表面の硬度を高
くする。一方、リフタ本体14に形成された半円筒内面
座19と接触する追従接触片30の半円柱面32は、そ
の接触面積が広いため、面圧が低く摩耗することがな
い。さらに、半円柱面32には上述したように立体カム
2への追従性不良によって長手方向と幅方向の中央位置
付近に大きな衝撃力によって曲げモーメントが作用する
ので、追従接触片30のカム接触面31と同じような硬
化層が形成されると、脆くなるために耐久性が低い。従
って、追従接触片30のカム接触面31は耐摩耗性を高
くするために硬度を高くすると共に、追従接触片30の
半円柱面32は衝撃値を高めるために硬度を低くする必
要がある。
【0031】図4に示すように、カム接触面31に対す
る半円柱面32の硬度比を0.85以下に設定すると、
衝撃値が高くなるので、高速回転時の立体カム2への追
従性不良が長い期間継続しても耐久性が低下することが
ない。また、硬度比0.4は、浸炭されていない部分の
標準的な焼入れ・焼戻しで得られる下限である。そし
て、硬度比が0.4よりも低くなると、引張強さが低下
するので、強度不足となる。即ち、硬度比が0.4以下
になると、追従接触片30の変形に対する耐久性が低下
する。
【0032】従って、カム接触面31に対する半円柱面
32の適正な硬度比は、図4に示すように、衝撃値及び
引張強さの両方の特性が共に高い範囲である0.4〜
0.85の範囲となる。本実施形態において、上記硬度
比のより好ましい範囲は0.45〜0.85であり、さ
らに好ましい範囲は0.5〜0.8である。
【0033】なお、図4で示される硬度比に対する衝撃
値・引張強さの特性は、材料をクロムモリブデン鋼とし
た例であるが、浸炭焼入れに適した鋼材であれば同様に
適用できる。即ち、浸炭焼入れに適した鋼材であれば、
硬度の絶対値は変化するが、硬度比を0.4〜0.85
にすることによって同様な効果が得られる。
【0034】ニッケルクロムモリブテン鋼で追従接触片
30を製作した場合の硬度比に対する衝撃値・引張強さ
の特性を、図4中の硬度比0.45の1点に示す。カム
接触面31の硬度約Hv700に対して半円柱面32の
硬度を硬度比で0.45低く設定することにより、衝撃
値及び引張強さの両方の特性が共に高い。即ち、追従接
触片30の材料をニッケルクロムモリブテン鋼に変更す
る場合でも、高速回転時の立体カム2への追従性不良が
長い期間継続しても耐久性の低下が防止される。
【0035】表1に基づき、上記硬度比の処理条件につ
いて説明する。なお、表1は、追従接触片30の半円柱
面32における浸炭焼入れの有無,及び焼戻し温度と、
カム接触面31に対する半円柱面32の硬度比との関係
を示す。硬度比0.6以上は、浸炭焼入れ後の焼戻し工
程において、追従接触片30の半円柱面32の温度を追
従接触片30のカム接触面31よりも高くした。硬度比
0.5以下は、半円柱面32のみに浸炭防止処理を施
し、その後に追従接触片30を浸炭焼入れ・焼戻した。
【0036】
【表1】
【0037】半円柱面32の硬度をカム接触面31の硬
度に対して硬度比で0.4〜0.85に低くする方法に
ついて、説明する。この表面硬化処理方法としては、第
1に半円柱面32を防浸炭メッキした後に追従接触片3
0全体を浸炭焼入れ・焼戻しする方法、第2に半円柱面
32を防浸炭メッキしないで、焼戻し温度をカム接触面
31よりも半円柱面32を高くする方法がある。上記第
2の表面硬化処理方法としては、例えば半円柱面32の
みに対し高周波加熱処理を施すなどの手段を用いる。
【0038】また、図5に示すように、浸炭焼入れ・焼
戻しによる硬度は、追従接触片30の表面側が高く内部
が低い。従って、表面硬化処理方法の第3としては、追
従接触片30の全表面を浸炭焼入れ・焼戻しした後に、
半円柱面32の仕上げ加工(切削加工)を行い、加工代
を選定することによって適正な硬度を得ることもでき
る。なお、図5は、追従接触片30の深さに対する硬度
比の関係を示す図である。
【0039】引続き、高速回転時の立体カム2への追従
性不良の場合における、追従接触片30の半円柱面32
表面に対する引張応力が大きく作用する範囲について説
明する。図6に示すように、追従接触片30に強い衝撃
力が作用して変形が生じるのは、長手方向中央位置(図
2B乃至Dでは、P1)からバルブを開く時に立体カム
2が接触する側の点L1と,バルブを閉じるときに立体
カム2が接触する側の点L2の範囲で、長手方向全長に
対する比では約0.1と約0.15である。なお、図6
は、追従接触片30に強い衝撃力が作用した場合におけ
る、追従接触片30の変形の大きさを示す図である。
【0040】また、高速回転時の立体カム2への追従性
不良の場合において、追従接触片30が谷形状に曲げら
れる(図15参照)ことから、半円柱面32の頂部33
から半径に対する比で約0.6の範囲で引張力が作用す
る。即ち、引張応力の範囲が頂部33側の約0.6の範
囲であり、圧縮応力の範囲がカム接触面31側の約0.
4である(図2A参照)。ここで、引張応力及び圧縮応
力の範囲の比が6:4になるのは、本実施形態の追従接
触片30は図2Aに示されるように略半円柱状に形成さ
れているからである。そのため、追従接触片の形状を変
更することにより、上記引張応力及び圧縮応力の範囲の
比が若干変動する。
【0041】従って、図2C及び図2Dに示すように、
追従接触片30の半円柱面32表面において、カム接触
面31に対して硬度を低くする最小範囲A1(図2C及
び図2Dの破線参照)は、追従接触片30の長手方向に
おける点L1乃至点L2の範囲でかつ追従接触片30の
径方向における頂部33側の約0.6の範囲である(図
2A参照)。
【0042】即ち、半円柱面32の硬度をカム接触面3
1の硬度に対して低くする範囲を、半円柱面32の最小
範囲A1としても、半円柱面32の全表面から最小範囲
A1までの範囲にわたって変化させる場合と同じ効果が
得られることになる。半円柱面32に対して部分的に硬
度を低くする方法は、上述した第1乃至第3の表面硬化
処理方法のうちの半円柱面32に対する処理を、少なく
とも半円柱面32の最小範囲A1に対して部分的に行
う。
【0043】本実施形態において、追従接触片30のカ
ム接触面31表面は高い硬度を維持し、これに対して半
円柱面32表面の硬度を硬度比で0.4〜0.85の範
囲で低くなるように表面硬化処理したので、立体カム2
に対する耐摩耗性を損なわずに、高速回転時の立体カム
2への追従性不良が長い期間継続しても耐久性が低下し
ない追従接触片30を得ることができる。即ち、本実施
形態によれば、追従接触片30の半円柱面32の靭性が
高められるので、立体カム2との衝突に対する追従接触
片30の耐衝撃性が高められ、そのため耐久性が向上す
る。
【0044】また、本実施形態において、半円柱面32
表面の少なくとも一部(最小範囲A1)を、追従接触片
30の長手方向については立体カム2と追従接触片30
がバルブの閉じる直前で接触する近傍に対応する部分
で、追従接触片30の高さ方向については追従接触片3
0の半円柱面32表面の頂部33からカム接触面31表
面方向へ追従接触片30高さの約0.6の範囲としたの
で、追従接触片30の耐衝撃性を向上しつつ、追従接触
片30の半円柱面32表面の靭性を高める部分が必要最
小限となる。即ち、本実施形態によれば、半円柱面32
に対する仕上げ加工などの硬化層除去処理の範囲を最小
限にできる。
【0045】なお、例えば上記表面硬化処理後における
追従接触片30の全表面に、立体カム2に対するカム接
触面31の耐摩耗性を更に向上させるための例えば浸窒
処理による薄膜状の硬化層を形成しても良い。この場合
の硬化層は薄い(例えば、表面硬度層の平均的な硬度を
有する深さが0.05mm以下)ので、耐衝撃性を損う
ことがない。
【0046】また、上記実施形態ではリフタ本体14に
半円筒内面座19を設けた例であるが、例えば追従接触
片30の半円柱面32をリフタ本体14の頂面凹部14
Aに嵌合する座部材(サドル)40の半円筒内面座41
に装着するように構成したものであっても、同様に適用
でき、上記実施形態と同一の作用効果が得られる。
【0047】さらに、追従接触片30のその他の変形例
を、図8乃至図11に示す。図8の変形例は、追従接触
片30の係合突部34の位置を、図2に示す実施形態に
おける追従接触片30の長手方向中央からバルブが開く
時に立体カム2が接触する側に移動させたものである。
図9の変形例は、図8の変形例において、係合突部34
を半円柱面32と同心で形成したものである。
【0048】図10の変形例は、係合突部34を半円柱
面32と同心で、かつ追従接触片30の長手方向中央に
形成したものである。図11の変形例においては、追従
接触片30の長手方向へのズレは図12の座部材105
にて、長手方向両端で規制されるものである。即ち、本
発明に係る立体カム用シムとしての追従接触片は、その
長手方向の移動を規制する構造,形状,寸法などを変え
た変形例、及び図8乃至図11に示す変形例などにも同
様に適用でき、図1に示す例と同様の作用効果を発揮す
る。なお、図7乃至図11において、図1または図2に
対応する部分には同一符号を付してその詳細説明は省略
する。
【0049】上記各実施形態では立体カム用シムを追従
接触片30とした例であるが、本発明の立体カム用シム
は従来型カム機構(カム軸方向にカムプロフィルが変化
しない通常の直打式動弁系の立体カムを備える機構)に
用いる円板形の立体カム用シムなどにも同様に適用でき
る。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
立体カム用シムの表側表面は高い硬度を維持し、これに
対して立体カム用シムの裏側表面の硬度を硬度比で0.
4〜0.85の範囲で低くなるように表面硬化処理する
ので、立体カムに対する耐摩耗性を損なわずに、内燃機
関の高速回転時の立体カムへの追従性不良が長い期間継
続しても耐久性が低下しない立体カム用シムを得ること
ができる。従って、本発明によれば、立体カム用シムの
裏側表面の靭性が高められるので、立体カムとの衝突に
対する立体カム用シムの耐衝撃性が高められ、そのため
耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施形態の弁開閉用立体カム機
構の要部を示す断面図である。
【図2】図1に示す追従接触片の図であり、図2Aは側
面図,図2Bは平面図,図2Cは正面図,図2Dは底面
図ある。
【図3】均質な試験片で測定された構造用鋼の焼入れ後
の焼戻し温度による機械的性質の変化を示す図である。
【図4】クロムモリブデン鋼を材料とした追従接触片に
おけるカム接触面の硬度をHv800程度に維持して、
半円柱面の硬度を変化させた場合の引張強さ及び衝撃値
を示す図である。
【図5】追従接触片の深さに対する硬度比の関係を示す
図である。
【図6】追従接触片30に強い衝撃力が作用した場合に
おける、追従接触片30の変形の大きさを示す図であ
る。
【図7】図1に示す例に、さらに座部材(サドル)を設
けた他の実施形態における断面図である。
【図8】追従接触片のその他の変形例を示す図である。
【図9】追従接触片のその他の変形例を示す図である。
【図10】追従接触片のその他の変形例を示す図であ
る。
【図11】追従接触片のその他の変形例を示す図であ
る。
【図12】従来例に係る弁開閉用立体カム機構を示す斜
視図である。
【図13】他の従来例に係る弁開閉用立体カム機構を示
す斜視図である。
【図14】図13に示す追従接触片がリフタ本体から離
れた状態の斜視図である。
【図15】立体カムの揚程期間末期において、追従接触
片が受ける力を説明する図である。
【符号の説明】
1 カムシャフト 2 立体カム 3 変位装置 4 バルブ 14 リフタ本体 19 半円筒内面座 20 係合凹部 30 追従接触片(立体カム用シム) 31 カム接触面 32 半円柱面 33 頂部 34 係合突部 36 最小範囲
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寺澤 真夕 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 谷 裕文 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 中野 修司 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3G016 AA06 AA19 BB05 CA20 DA01 EA02 EA24 FA17 FA19 GA05 3G018 AB07 BA04 DA00 DA81 DA82 GA27

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バルブを駆動する立体カムに接触する表
    側表面の硬度と,裏側表面の少なくとも一部の硬度との
    比を0.4〜0.85の範囲とすることを特徴とする立
    体カム用シム。
  2. 【請求項2】 バルブを駆動する立体カムに接触するフ
    ラット状の表側表面と,前記表側表面に連続して形成さ
    れる曲面状の裏側表面とを備える立体カム用シムにおい
    て、 前記表側表面の硬度と,前記裏側表面の少なくとも一部
    の硬度との比を0.4〜0.85の範囲とすると共に、 前記裏側表面の少なくとも一部が、前記バルブの開閉時
    に前記立体カムが前記表側表面と接触する方向について
    は前記バルブの揚程期間末期に前記立体カムが前記表側
    表面に接触する近傍に対応する部分を含み、前記表側表
    面から前記裏側表面の頂部までの高さ方向については前
    記頂部から前記表側表面までの高さにおける引張応力が
    作用する範囲近傍を含むことを特徴とする立体カム用シ
    ム。
  3. 【請求項3】 請求項2において、前記バルブの揚程期
    間末期に前記立体カムが前記表側表面と接触する方向の
    範囲を、前記バルブが閉じる時に前記立体カムが前記表
    側表面に接触する側の長手方向中央位置から長手方向全
    長に対する比で0.15に対応する部分の近傍とし、 前記表側表面から前記裏側表面の頂部までの高さ方向の
    範囲を、前記頂部から前記表側表面への高さに対する
    0.6の範囲近傍とすることを特徴とする立体カム用シ
    ム。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項におい
    て、薄膜状の硬化層を前記表側表面及び裏側表面の表面
    に形成することを特徴とする立体カム用シム。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の
    立体カム用シムを備えた、内燃機関のバルブタイミング
    を調整する弁開閉用立体カム機構。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1298350A2 (en) 2001-09-28 2003-04-02 JATCO Ltd Torque converter
JP2011190772A (ja) * 2010-03-16 2011-09-29 Ntn Corp 動弁装置におけるラッシュアジャスタ

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