JP2001302840A - ポリビニルアルコールスポンジ、これを用いた固定化担体、及びその製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコールスポンジ、これを用いた固定化担体、及びその製造方法

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Masao Fujita
真夫 藤田
Toshiyuki Uchida
稔幸 内田
Daichu O
大中 王
Junichi Kubo
純一 久保
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多孔性を有し、十分な強度を有し、しかも親
水性で微生物親和性に優れた乾燥可能なPVAスポンジ
を提供する。 【解決手段】 1〜1000μmの細孔を有し、空隙率
を50〜98%とし、ポリビニルアルコールの水酸基の
置換度を30%以下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ポリビニルアル
コールスポンジ、これを用いた固定化担体、及びその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリビニルアルコール(以下、「PV
A」と略する。)系のスポンジは、親水性高分子のPV
Aから製造され、高い吸水性、保水性を有し、化粧用、
浴用、自動車洗浄用のスポンジとして使用されている。
また、PVA系の粒状体は、親水性であるため微生物固
定化担体として使用され、排水処理用の流動床担体とし
て利用されている。この排水処理用担体としてのPVA
粒状体としては、PVA含水ゲルとPVAスポンジが知
られている。
【0003】上記PVA含水ゲルは、特開昭64−41
88号公報に、球状粒子を得て、その後凍結して網目構
造を形成させることにより得られる旨が開示されてい
る。しかし、このPVA含水ゲルは、親水性であるもの
の、微生物を固定化させるための細孔が小さい、機械的
強度が十分でない、生産性が高くない、また、乾燥でき
ないため運搬コストが高い等の問題を有する。
【0004】これに対し、特開平11−92568号公
報に、アセタール化度が50〜85%のPVAスポンジ
が開示されている。これは、数十μmの細孔を有し、十
分な機械的強度を有し、乾燥可能という特徴を有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記P
VAスポンジは、アセタール化度が高いために親水性や
微生物親和性が低下することや、アセタール化にホルム
アルデヒドを使用するために環境汚染や作業環境が悪化
することが問題となる。
【0006】そこで、この発明は、多孔性を有し、十分
な強度を有し、しかも親水性で微生物親和性に優れた乾
燥可能なPVAスポンジを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、1〜100
0μmの細孔を有し、空隙率が50〜98%であり、ポ
リビニルアルコールの水酸基の置換度を30%以下とす
ることにより、上記の課題を解決したのである。
【0008】置換度を30%以下とすることにより、P
VAスポンジの親水性と微生物親和性とを向上させるこ
とができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態を説明
する。
【0010】この発明にかかるポリビニルアルコールス
ポンジ(PVAスポンジ)は、表面及び内部に1〜10
00μmの細孔を有し、空隙率が50〜98%であり、
PVAの水酸基の置換度が30%以下のスポンジであ
る。
【0011】上記の表面及び内部に設けられる細孔と
は、PVAスポンジの樹脂表面から内部にかけて生じる
細孔をいう。また、上記表面の細孔とは、PVAスポン
ジの表面上に表れる細孔をいい、この形状が後述する円
筒状の場合は、その外表面だけでなく、円筒内部の空洞
部の表面も含まれる。上記細孔は、上記のとおり1〜1
000μmがよく、10〜300μmが好ましい。1μ
mより小さいと、微生物の粒子内部への移動が起こりに
くくなり、粒子内部を十分に利用できない。1000μ
mより大きいと、強度が不十分となる。
【0012】上記空隙率とは、PVAスポンジの見かけ
体積に対するPVAスポンジの気孔が占める割合をい
い、50〜98%がよく、70〜95%が好ましい。5
0%より少ないと、気孔の量が少なくなり、多孔質体と
しての性能が十分でなくなる。また、98%より多い
と、十分な強度が得られない。
【0013】上記の置換度とは、PVAの水酸基全体に
対する、他の官能基と反応した水酸基の割合をいう。こ
の置換度は、30%以下がよく、1〜20%が好まし
い。30%を超えると、得られるPVAスポンジの親水
性が低下するからである。
【0014】上記PVAスポンジに耐熱水性や高強度を
付与するために、後述するような架橋剤を用いることが
できる。
【0015】次に、この発明にかかるPVAスポンジの
製造方法について説明する。
【0016】まず、PVA水溶液に多孔化剤を添加す
る。次いで、成形して所定の成形物を得る。そして、P
VAを凝析する塩を含む水溶液中でスポンジ化すること
により、PVAスポンジが製造される。
【0017】上記多孔化剤とは、細孔を形成させるため
のものをいう。この多孔化剤の種類としては、界面活性
剤等のように上記PVA水溶液に気泡を形成させること
ができるもの、炭酸カルシウム等のように酸性条件で発
泡するもの、アルカリ条件で発泡するもの、熱で発泡す
るもの、澱粉等のように酸性条件下で取り除くことので
きるもの、紙パルプ等のように生分解性を有するもの、
寒天ゲル等のように熱溶融するもの等があげられる。ま
た、その種類、使用量により孔の大きさや空隙率を変え
ることができる。また、適宜上記の多孔化法を併用でき
る。
【0018】上記多孔化剤の添加量は、多孔化剤の種類
に合わせて設定される。例えば澱粉の場合、PVA水溶
液中のPVAに対して、5〜200重量%がよく、10
〜100重量%が好ましい。また、炭酸カルシウムの場
合、0.1〜50重量%がよく、0.2〜20重量%が
好ましい。これらの範囲を外れると、上記の空隙率を達
成できないからである。
【0019】上記のPVAを凝析させる塩の水溶液の例
としては、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カ
リウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム
等の水溶液があげられる。
【0020】上記のPVAを凝析させる塩を含む水溶液
の温度は、塩の種類によって異なる。例えば、硫酸ナト
リウムの場合は、50〜90℃がよい。50℃より低い
と、脱水に時間がかかると共に、得られるPVAスポン
ジの表面及び内部に形成する細孔が上記より小さくなる
からである。また、90℃より高いと、脱水時間が短縮
されるが、作業上好ましくない。
【0021】上記のPVAを凝析させる塩を含む水溶液
を用いるのは、PVA成形体をこの水溶液に入れること
により、PVAの結合水が脱水され、PVAの結晶化が
促進されるからである。
【0022】得られるPVAスポンジの形状は、特に限
定されるものでなく、シート状、粒状、球状、ひも状、
チューブ状、さらに、裁断によってサイコロ状、円柱
状、中空円筒状等の任意の形状とすることができる。
【0023】上記のPVAスポンジは、そのまま使用し
てもよいが、耐熱水性や高強度を付与するために架橋剤
を用い、PVAスポンジを架橋させてもよい。この架橋
剤の例としては、アルデヒド化合物、エポキシ化合物、
N−メチロール化合物、ジカルボン酸、ハロゲン化合
物、イソシアネート化合物等があげられる。アルデヒド
化合物の具体例としては、グリオキザール、テレフタル
アルデヒド、マロンジアルデヒド、グルタルアルデヒド
等があげられる。エポキシ化合物の具体例としては、エ
ピクロロヒドリン、グリシジルエーテル類、例えばエチ
レングリコールジグリシジルエーテルやグリシドール、
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等、さら
にエポキシ樹脂等があげられる。N−メチロール化合物
の具体例としては、ジメチロール尿素、ジメチロールエ
チレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、ジメチロー
ルウロン、ジメチロールトリアゾン、ジメチロール−4
−メトキシ−5,5−ジメチルプロピレン尿素、ジメチ
ロールジヒドロキシエチレン尿素、ジメチロールアルキ
ルカーバメート、メチル化ジメチロールジメトキシエチ
レン尿素、1,3−ジメチル−4,5−ジヒドロキシエ
チレン尿素、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロー
ルメラミン、メチル化トリメチロールメラミン、メチル
化ヘキサメチロールメラミン等があげられる。
【0024】上記ジカルボン酸の具体例としては、グル
タル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、酒石
酸、クエン酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸等があ
げられる。ハロンゲン化合物の例としては、N−エチル
ビス(2−クロロエチル)アミン、フェニルホスホン酸
ジクロリド、エチルホスホン酸ジクロリド等があげられ
る。イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシ
アネート、ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイ
ソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナ
フタレンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソ
シアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
等があげられる。
【0025】上記架橋剤がエポキシ化合物の場合、その
添加量は、PVA水溶液中のPVAに対して、1〜20
0重量%がよく、10〜100重量%が好ましい。1重
量%より少ないと、耐熱水性に乏しくなるおそれがあ
る。また、200重量%より多いと、得られるPVAス
ポンジの親水性が低下する。
【0026】このようにして得られた架橋されたPVA
スポンジは、耐熱水性等の耐水性や高強度を発揮するこ
とができる。また、PVAには十分な水酸基が残存して
いるため、親水性や微生物親和性を保持している。さら
に必ずしも、ホルマリンを使用せずに済むので、作業環
境の悪化や環境汚染を減少させることができる。このた
め、このPVAスポンジを微生物固定化担体として使用
することができる。
【0027】さらにまた、得られるPVAスポンジは、
乾燥可能であり、保存安定性に優れ、運搬コストも低減
できる。
【0028】
【実施例】以下、この発明を実施例を用いてより詳細に
説明する。まず、空隙率及び置換度の測定方法について
説明する。
【0029】空隙率 対象担体の比重を測定し、下記の式から空隙率を算出し
た。 空隙率(%)=(1−比重/真比重)×100 比重 :対象担体の比重の測定値 真比重:1.25(ポリビニルアルコールの比重(文献
値))
【0030】置換度 実施例1及び2において(架橋剤を用いない場合) 得られたスポンジ状粒子を一定量秤量し、水100ml
に入れ、加熱溶解する。冷却後、0.1N水酸化ナトリ
ウム水溶液25mlを加え、2時間以上静置し、0.1
N硫酸25mlを添加する。フェノールフタレインを指
示薬として0.1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、
ブランクとの差によりPVA中のアセチル基の量を算出
し、置換度を測定した。 実施例3及び比較例2において(架橋剤としてエチレ
ングリコールジグリシジルエーテルを用いた場合) プロトンNMR測定を行い、エチレングリコールジグリ
シジルエーテルのエポキシ基由来のメチンプロトンのピ
ーク強度(3.9ppm付近、以下の式において”a”
と表記)と、PVA主鎖のメチンプロトンのピーク強度
(1.35ppm付近、以下の式において”b”と表
記)を測定し、下記の式から算出した。 置換度(%)=(a/b×0.5)×100 実施例4において(架橋剤としてジメチロール尿素を
用いた場合) プロトンNMR測定を行い、ジメチロール尿素のメチロ
ール基由来のメチレンプロトンのピーク強度(3.00
ppm付近、以下の式において”c”と表記)と、PV
A主鎖のメチレンプロトンのピーク強度(1.35pp
m付近、以下の式において”d”と表記)を測定し、下
記の式から算出した。 置換度(%)=(c/d)×100
【0031】(実施例1)10%PVA水溶液(ナカラ
イテスク社製)60g、馬鈴薯澱粉(ナカライテスク社
製)5g、水35g、ほう酸0.1g(ナカライテスク
社製)を70℃で混合し、原料液を調製する。この原料
液をチューブポンプにより1%水酸化ナトリウム水溶液
(ナカライテスク社製)に滴下した。得られた粒子(以
下、「粒子1」と称する。)を10%硫酸+15%硫酸
ナトリウム中に70℃、2時間浸漬し、水洗、乾燥して
スポンジ状粒子(粒径4mm)6gを得た。
【0032】得られたスポンジ状粒子は、表面に50μ
m、内部に80μmの孔が観察された。このスポンジ状
粒子の置換度は1.5%,空隙率は90%であった。ま
た、このスポンジ状粒子は水を吸収し、圧縮により変形
すると水が搾り出され、圧縮を解けば元の形に復元し
た。
【0033】(実施例2)実施例1の馬鈴薯澱粉をアル
ミニウム粉末(ナカライテスク社製)0.012gに代
えた以外は、実施例1と同様にスポンジ状粒子(粒径4
mm)6gを得た。
【0034】得られたスポンジ状粒子は、表面に100
μm、内部に1000μmの孔が観察された。このスポ
ンジ状粒子の置換度は1.5%,空隙率は95%であっ
た。また、このスポンジ状粒子は水を吸収し、圧縮によ
り変形すると水が搾り出され、圧縮を解けば元の形に復
元した。
【0035】(実施例3)実施例1で得られた乾燥スポ
ンジ状粒子6gに、エチレングリコールジグリシジルエ
ーテル(ナカライテスク社製)2gと水20gとの混合
液を含浸させ、次いで、50℃で乾燥した後、120
℃、4時間熱処理して架橋スポンジ状粒子7gを得た。
この架橋スポンジ状粒子に含まれるPVA中の水酸基の
置換度は9%、空隙率は88%であった。
【0036】得られた架橋スポンジ状粒子は、表面に5
0μm、内部に80μmの孔が観察された。また、この
架橋スポンジ状粒子は水を吸収し、圧縮により変形する
と水が搾り出され、圧縮を解けば元の形に復元した。
【0037】(実施例4)実施例2で得られた乾燥スポ
ンジ状粒子6gに、ジメチロール尿素(ナカライテスク
社製)0.6gと水25gとの混合液を含浸させ、次い
で、70℃で乾燥して架橋スポンジ状粒子6.5gを得
た。この架橋スポンジ状粒子に含まれるPVA中の水酸
基の置換度は6%、空隙率は93%であった。
【0038】得られた架橋スポンジ状粒子は、表面に1
00μm、内部に1000μmの孔が観察された。ま
た、この架橋スポンジ状粒子は水を吸収し、圧縮により
変形すると水が搾り出され、圧縮を解けば元の形に復元
した。
【0039】(比較例1)実施例1で製造された粒子1
を水洗した。この粒子1は、表面、内部共に細孔は観察
されなかった。また、乾燥すると極度に収縮し、水を含
ませても復元しなかった。
【0040】(比較例2)実施例1で製造された粒子1
をエチレングリコールグリシジルエーテル(上記と同
様)2gと1%水酸化ナトリウム水溶液(上記と同様)
との混合液に浸漬して50℃、2時間反応させ、その
後、水洗した。得られた粒子は置換度9%で、表面、内
部共に細孔は観察されなかった。また、乾燥すると極度
に収縮し、水を含ませても復元しなかった。
【0041】
【発明の効果】この発明によれば、PVAには十分な水
酸基が残存しているため、親水性や微生物親和性を保持
し、微生物固定化担体として使用することができる。
【0042】また、得られるPVAスポンジは、乾燥可
能であり、保存安定性に優れ、運搬コストも低減でき
る。
【0043】さらに、ホルマリン以外の所定の架橋剤で
架橋するので、耐熱水性等の耐水性を発揮させることが
できると共に、作業環境の悪化や環境汚染を減少させる
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 王 大中 福井県坂井郡金津町自由ケ丘1丁目8番10 号 レンゴー株式会社福井研究所内 (72)発明者 久保 純一 福井県坂井郡金津町自由ケ丘1丁目8番10 号 レンゴー株式会社福井研究所内 Fターム(参考) 4B033 NA11 NB35 NB46 NB62 NB64 NB68 NC04 4F074 AA42 AD04 AD20 BA07 BA08 BA22 BB01 CB03 CB04 CB05 CB33 CB34 CB43 DA02 DA03 DA59 4J100 AD02P CA01 CA31 DA32 EA05 EA12 EA13 HA53 HC09 HC39 JA18 JA57

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1〜1000μmの細孔を有し、空隙率
    が50〜98%であり、ポリビニルアルコールの水酸基
    の置換度が30%以下であるポリビニルアルコールスポ
    ンジ。
  2. 【請求項2】 架橋剤により処理された請求項1に記載
    のポリビニルアルコールスポンジ。
  3. 【請求項3】 上記架橋剤がN−メチロール化合物又は
    エポキシ化合物である請求項2に記載のポリビニルアル
    コールスポンジ。
  4. 【請求項4】 形状が球状又は中空円筒状である請求項
    1乃至3のいずれかに記載のポリビニルアルコールスポ
    ンジ。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載のポリ
    ビニルアルコールスポンジからなる微生物固定化担体。
  6. 【請求項6】 ポリビニルアルコール水溶液と多孔化剤
    とを含む混合液を成形し、ポリビニルアルコールを凝析
    する塩を含む水溶液中で処理してスポンジ化するポリビ
    ニルアルコールスポンジの製造方法。
  7. 【請求項7】 上記ポリビニルアルコールスポンジを架
    橋剤で架橋する請求項6に記載のポリビニルアルコール
    スポンジの製造方法。
  8. 【請求項8】 上記架橋剤は、N−メチロール系架橋剤
    又はエポキシ系架橋剤である請求項7に記載のポリビニ
    ルアルコールスポンジの製造方法。
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