JP2001302533A - 肝機能増強剤 - Google Patents

肝機能増強剤

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JP2001302533A JP2000121593A JP2000121593A JP2001302533A JP 2001302533 A JP2001302533 A JP 2001302533A JP 2000121593 A JP2000121593 A JP 2000121593A JP 2000121593 A JP2000121593 A JP 2000121593A JP 2001302533 A JP2001302533 A JP 2001302533A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ヒトまたは動物において安全かつ有効であ
る、肝機能増強剤を提供する。 【解決手段】 甘蔗由来のエキスを有効成分とする肝機
能増強剤ならびにこの肝機能増強剤を含む食品および飼
料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒトまたは動物の
ための肝機能増強剤に関する。本発明はまた、ヒトまた
は動物の肝機能を増強させる食品および飼料に関する。
【0002】
【従来の技術】肝臓は何らかの異常があったとしてもな
かなか症状が現れず、「沈黙の臓器」と呼ばれている。
国内の肝臓病患者全てを合わせると300〜500万人
といわれており、調査報告により数値に違いがあるが、
非常に多い数字であることには違いない。
【0003】また、肝臓病は日本人全体の死因の中では
第8位であるが、35歳から65歳の働き盛りの年齢層
の死亡原因を見ると、ガン、心臓病、脳卒中に次いで肝
硬変、肝ガン、劇症肝炎等の肝臓病が第4位に位置して
おり、死亡原因の上位であるといえる。
【0004】肝疾患の原因にはいくつかあり、その原因
により疾患の種類が異なる。肝臓の疾患としてもっとも
多いのがウイルス性肝炎であり、肝臓病患者全体の70
〜80%を占めるといわれている。その他としては、ア
ルコールの飲み過ぎや薬物の乱用による肝疾患、肥満に
よる脂肪肝が挙げられる。
【0005】ウイルス性肝炎の原因となるウイルスは、
10年ほど前まではA型、B型、C型が知られていた
が、現在ではこのほかにD、E、F、G、TTV等の合
わせて8種類が存在することがわかっており、最近注目
されている分野である。具体的に説明すると、A型肝炎
は経口感染し慢性化せず無症状で終わる人もいるが、ま
れに劇症肝炎となって治療が必要になる。衛生状態のよ
い日本ではほとんど見かけられなくなったが、海外旅行
などで感染する場合が増えている。B型は昔は輸血や集
団予防接種が感染原因であったが、現在では大部分が性
行為により感染している。通常は急性肝炎ですみ、慢性
化することは少ないといわれているが、2〜3%の人は
劇症肝炎になり、死亡するといわれている。また、キャ
リアの状態が長く続くと慢性肝炎に移行し、ウイルス性
肝硬変にまで症状が進むケースもあり、肝硬変にかかる
と肝ガンにかかる危険性も高くなる。C型肝炎の感染経
路については現在もいろいろな説があり、輸血、鍼治
療、覚醒剤の回し打ち、過去の医療行為、性行為、母子
感染の可能性が挙げられている。その他のウイルスにつ
いては現在のところまだよくわかっていない。
【0006】アルコールが原因となる肝障害の初期は脂
肪肝であり、さらに慢性的にアルコールを摂取している
とアルコール性肝炎になり、やがては肝線維症、慢性肝
炎、肝硬変になるといわれている。近年、アルコールの
とりすぎ、不規則な食事、脂質のとりすぎ、偏食、スト
レスなどが複合的に作用し、肥満や肝障害が増加してい
る。
【0007】このように、飽食の時代である現在、アル
コールの過剰摂取や栄養バランスの崩れによる肥満、海
外旅行の一般化、不特定多数の間での性行為等、様々な
原因から肝障害が増加し、注目されている。
【0008】ヒトの場合、肝障害はウイルスおよび不適
切な食生活が原因して起こることが多く、これらの原因
にストレスが加わると特に起こりやすくなる。このこと
は動物にも当てはまり、水・畜産業界でも、ウイルスの
他に養殖魚や家畜、家禽の飼料やストレスが原因で、肝
障害が増加している。特に、水産業界では、養魚飼料に
含まれる魚やその他の脂質が酸化されやすく、これら過
酸化脂質を摂取することにより魚の肝障害が現れる。ま
た肝機能が低下すると体力の低下、発育不良を起こし、
魚病の蔓延化、高い斃死率を引き起こすことが少なくな
い。また、家庭で飼育される熱帯魚にも、餌由来の肝障
害抑制、および愛玩動物に対する健康志向から肝機能向
上が求められている。このようなことから、最近では肝
機能を向上させるといわれている各種漢方や強肝成分を
養殖魚や熱帯魚に与えることがあり、グルタチオン、イ
ンチンコウ、サンシシ、サイコ、ウコン、甘草、タウリ
ン、胆汁末、パントテン酸カルシウム、イノシトール、
ビタミンB6などを添加した魚用混合飼料が販売されて
いる。また、家畜、家禽にしても、飼料の酸化による過
酸化脂質の摂取、およびコレステロールの過剰摂取にス
トレスが加わることにより、脂肪肝およびその他の肝障
害が現れる。しかし、家畜や家禽に対し、飼料に添加し
て使用できるような安全性の高い肝機能増強剤は販売さ
れていない。
【0009】従来より肝疾患、肝障害に対する薬剤の研
究が多数行われ、医薬品または健康食品として報告また
は製品化されている。これらの肝障害抑制効果または肝
機能増強効果を確認するには、いくつかの方法がある
が、動物実験による肝障害モデルを使用した方法が一般
的である。
【0010】従来よく使われていた肝障害モデルとし
て、四塩化炭素を用いた肝細胞壊死型肝障害モデルがあ
る。四塩化炭素は、1回筋注することにより動物の種を
問わず急性肝障害を起こし、ラットの場合、12〜24
時間後にはGOTおよびGPTなどのトランスアミナー
ゼが肝細胞から血中に急激に移行するが、その後肝細胞
の壊死の進行が止まると、血中のトランスアミナーゼ量
は低下し、約72時間後には正常値に戻る。四塩化炭素
を2回以上筋注すると肝硬変になりその症状は非可逆的
であるため、通常肝障害抑制剤の効果を確認するために
は、1回接種による急性肝障害モデルを用いる。このモ
デルで肝障害に対して効果のある剤として、具体的に
は、特定のシステイン誘導体を有効成分として含有する
肝障害抑制剤(特開昭55−051021号公報)、肝
臓、胎盤、イースト等から得られるムコプロチドより成
る肝臓疾患用剤(特開昭54−110309号公報)が
報告されているが、前者は化合物であり、後者は動物性
抽出物である。後者の肝臓疾患用剤はアリルアルコール
による肝障害にも効果があることが記載されている。ま
た、植物由来の肝機能改善剤としては、エルバ・デ・サ
リーニョの溶媒または水抽出物(特開平6−9415号
公報)、甘草抽出液の乳酸発酵物(WO92/0139
3号公報)、グリチルリチン抽出後の甘草残渣を有効成
分とする強肝剤(特開平9−143085号公報)が報
告されている。植物抽出物ではないが、植物中に存在す
るフィチン酸及びその塩を有効成分とする肝疾患治療予
防剤(特開平2−15032号公報)も報告されてい
る。
【0011】最近よく用いられる肝障害モデルとして、
ヒトのウイルス性肝炎に類似する組織像を実験的に作り
出すことができる、D−ガラクトサミンを用いた急性肝
炎モデルがある。この物質を投与すると、肝臓で特異的
に代謝され、その過程により肝障害を生ずる。このモデ
ルに対する肝障害抑制効果を持つ化合物として、分子中
に(2−ピリジル)メチルチオ構造を有するベンツイミ
ダゾール化合物またはその塩を含有して成る肝疾患治療
剤(特開平8−283158号公報)、1,4−ジヒド
ロピリジン化合物(特開昭58−159490号公
報)、および2,2’−ジチオビスベンズイミダゾール
を有効成分として含有する肝疾患治療剤(特開平4−2
08223号公報)が報告されている。ベンツイミダゾ
ール化合物に関してはD−ガラクトサミンに関する効果
のみを確認しているが、1,4−ジヒドロピリジン化合
物および2,2’−ジチオビスベンズイミダゾールに関
しては四塩化炭素肝障害に対する効果も確認されてい
る。植物由来の強肝剤として、田七人参より得たギンセ
ノサイドRe/ギンセノサイドRg1から成る肝臓保護
薬(特開平9−241164号公報)が報告されてい
る。この成分はD−ガラクトサミンに関する効果以外
に、四塩化炭素肝障害およびPropionibacterium acnes
/リポ多糖誘発肝障害モデルにおいても効果が確認され
ている。
【0012】胆汁の生成は肝臓の重要な機能の一つであ
り、肝細胞から十二指腸にいたる胆道の異常により十二
指腸への胆汁流出が阻害されると、胆汁がうっ滞し、胆
汁の主要成分であるビリルビン、胆汁酸、コレステロー
ルなどが血中に逆流し、増加するようになる。このよう
な病態を胆汁うっ滞といい、黄疸、肝腫、灰白色便、濃
緑尿などを主な特徴とする。胆汁うっ滞は胆石や腫瘍に
より肝外胆管の機械的通過障害に起因する肝外胆汁うっ
滞と先天性胆管閉塞症や、ウイルスや薬物性肝障害など
による胆内胆汁うっ滞がある。それぞれ多くのモデルが
開発されているが、その内の1つとしてα−ナフチルイ
ソチオシアネート(ANIT)を用いる方法がよく用い
られる。ANITによる肝障害は、小葉内胆管に炎症と
閉塞を起こし、肝内性胆汁うっ滞を起こす、胆管系障害
モデルとして知られている。このモデルに対する効果の
ある肝疾患用剤として、ヤマモモの樹皮を乾燥した楊梅
皮の溶媒抽出物が報告されており(特開昭63−222
119号公報)、これは四塩化炭素肝障害モデルに対す
る効果も確認されている。
【0013】その他の植物由来の肝障害抑制剤として、
コショウに含まれるアルカロイドのアセトアミノフェン
急性肝障害モデルに対する効果(特開平5−26264
6号公報)、ケブラ・ペドラの溶媒または水抽出物の高
コレステロール飼料による高脂血症モデルに対する効果
(特開平9−241176号公報)、セテサングリア全
草の熱水抽出物の高コレステロール食マウス肝障害モデ
ルに対する効果(特開平5−294841号公報)、ト
ベラ科植物の水溶性抽出物の肝疾患患者に対する効果
(特開平2−96532号公報)等が報告されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】従来報告されてきた肝
機能増強剤あるいは肝疾患予防治療剤には、化合物及び
動植物由来の天然成分があるが、そのほとんどが医薬品
として治療に用いられる医薬品である。ヒトや魚類用飼
料に用いられる化合物や漢方由来の成分は、元来医薬品
であるためその副作用の問題があり、肝障害予防のため
長期にわたって安全に摂取し続けられるわけではない。
また、価格が比較的高い。
【0015】健康食品に用いられる肝機能増強剤は、漢
方由来の成分やビタミン類を医薬品におけるより少ない
量で含有することで構成されているものが多く、有効で
安全な食品レベルの天然成分を含むものはほとんどな
い。
【0016】また、従来の天然由来成分の肝障害抑制効
果及び肝機能増強剤は、いくつかの肝障害モデルのうち
1、2のモデルに対する試験しか行っていないものが多
く、特定の肝障害ではない広範囲の肝機能増強に用いる
には、効果に疑問がある。
【0017】以上のことから、複数の肝障害モデルに対
し効果があり、安全であり、低コストで生産できる天然
由来の肝機能増強剤が求められている。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題点に鑑み、ヒトをはじめとする動物に安全な、低コス
トで調製できる、複数の肝障害モデルに対し効果がある
肝機能増強剤を得るべく鋭意検討を重ねてきたが、古来
より食品として使用されている甘蔗を処理して得られる
エキスが、複数の肝障害抑制効果を発揮することを見い
だし、本発明を完成した。
【0019】すなわち、本発明は甘蔗由来のエキスを有
効成分とする肝機能増強剤である。
【0020】本発明は特に、甘蔗汁、甘蔗の溶媒抽出液
及び甘蔗由来の糖蜜より選ばれる原料を固定担体を用い
たカラムクロマトグラフィーで処理することにより得ら
れる画分を有効成分とする肝機能増強剤である。
【0021】あるいは、本発明は、甘蔗由来のバガスを
原料とし、水、親水性溶媒、またはこれらの混合液を用
いて抽出して得られるエキスを有効成分とする肝機能増
強剤である。
【0022】甘蔗は本来蔗糖を得るためにその原料植物
として栽培されるが、本発明はカラムクロマトグラフィ
ーにより甘蔗汁、甘蔗由来の糖蜜および甘蔗の溶媒抽出
液より選ばれる原料からエキスを抽出する方法、または
通常廃棄している甘蔗を圧搾した残渣であるバガスから
抽出する方法をとるため、本発明のエキスを抽出しても
蔗糖は従来と変わらない収率で甘蔗汁から回収すること
ができるため、従来の蔗糖製造を妨げることはない。つ
まり、本発明のエキスは甘蔗から蔗糖を除いた部分から
得ることができるため、低コストで製造でき、また資源
の有効利用にもなる。
【0023】本発明において、「肝機能増強剤」とは、
ウイルス、薬剤、アルコール、食事内容などが原因とし
て引き起こされる、脂肪肝、肝炎、胆汁うっ滞、肝細胞
の変性壊死等の肝障害を予防、治療、または症状を低減
する効果を包含する。
【0024】なお、本明細書においては、強肝作用また
は効果、肝機能増強作用または効果、肝障害抑制作用ま
たは効果、および肝疾患予防治療作用または効果を、特
に区別せず、同義としている。
【0025】本発明において、動物とはヒト以外の脊椎
動物を意味し、哺乳類、鳥類および魚類を含む。例え
ば、ウシ、ブタ、馬などの家畜、ニワトリ、ウズラ等の
家禽、ハマチ、タイ、ヒラメ、フグ、カンパチ、アユ、
ウナギ、マス、コイ、金魚などの魚類、イヌ、ネコなど
のコンパニオン・アニマルが挙げられる。
【0026】本発明において、甘蔗由来のエキスとは、
甘蔗を原料として得られたエキスである。
【0027】1つの実施態様においては、甘蔗由来のエ
キスは、甘蔗汁、甘蔗の溶媒抽出液および甘蔗由来の糖
蜜より選ばれる原料(以下で、単に原料ということがあ
る)を固定担体を用いたカラムクロマトグラフィーで処
理して得られる画分である。更に好ましくは、原料を、
固定担体として合成吸着剤が充填されたカラムに通液
し、該合成吸着剤に吸着された成分を、水、メタノー
ル、エタノールおよびこれらの混合物から選ばれる溶媒
で溶出することによって得られる画分、あるいは原料
を、固定担体としてのイオン交換樹脂が充填されたカラ
ムでの親和力の差を利用したカラムクロマトグラフィー
処理により分離して得られる画分のうち、波長420n
mの光を吸収する画分である。
【0028】従来、甘蔗由来の原料、中間製品及び製品
の色価の評価は、波長420nmの光の吸光度により行
われている。この吸光度は、サンプルのpHにより若干
影響されるので、通常、pHを中性付近に調整してから
吸光度を測定している。本発明において、吸光度は、サ
ンプルのpHを6〜8の範囲に調整した後に測定される
ものとする。実施例にあるように、得られた画分の凍結
乾燥粉末0.25gを0.5mMリン酸バッファー(p
H7.5)で溶解して全量を100mlにし、1cmセ
ルを用いて波長420nmでの吸光度を測定したとき、
吸光度が0.8以上の画分に本発明の高い効果が認めら
れる。しかし、波長420nmの吸光度は甘蔗由来の色
素の量を示す値であって有効成分自体の量を示す値であ
るかどうかは不明であること、また原料となる甘蔗の産
地や種類により甘蔗自体に含まれる色素の絶対量が異な
ることから、異なる甘蔗に由来する種々のエキスの間で
効果と吸光度が必ずしも比例関係にあるわけではない。
1つの原料から得られる複数の画分の吸光度を測定し、
相対的に吸光度が高い画分が本発明の画分である。
【0029】固定担体として合成吸着剤をカラムに充填
してカラムクロマトグラフィーを行う場合は、肝機能増
強効果の有効成分の合成吸着剤に対する親和性が非常に
強いため、原料をカラムに通液したとき有効成分が合成
吸着剤に吸着される。その後、溶媒で溶出を行うと、合
成吸着剤に吸着された成分が脱着され溶出される。一
方、固定担体としてイオン交換樹脂を用いた場合には、
肝機能増強効果の有効成分と樹脂との親和性は吸着ほど
強いわけではない。有効成分とその他の成分のイオン交
換樹脂に対する親和性の強さに差がある。原料をカラム
に供給し、その後溶離液として水を流すことにより、有
効成分とその他の成分の溶出速度の違いに基づいて両者
を分離することができる。
【0030】あるいは、別の実施態様においては、甘蔗
由来のエキスは、甘蔗由来のバガスを水、親水性溶媒、
及びこれらの混合物より選ばれた溶液で溶出することに
より得られるエキスであり、更に好ましくは、甘蔗から
糖汁を圧搾した残渣であるバガスを、水、エタノール、
及びこれらの混合物より選ばれる溶液で抽出することに
より得られるエキスである。
【0031】ここで、本発明における甘蔗汁は、甘蔗
(サトウキビ)を圧搾して得られる圧搾汁、甘蔗を水で
浸出して得られる浸出汁、または原糖製造工場における
石灰処理した清浄汁、濃縮汁を包含する。
【0032】本発明における甘蔗の溶媒抽出液とは、甘
蔗を汎用の有機溶媒で抽出した溶液を濃縮、乾固後、水
に再溶解した抽出液等を意味する。直上の有機溶媒とし
ては、例えばメタノールやエタノール等のアルコール類
が挙げられ、これらを単独でも組み合わせて使用しても
良い。更に、これらの溶媒と水を組み合わせて使用して
も良い。
【0033】本発明における甘蔗由来の糖蜜とは、結晶
化工程で得られた砂糖結晶と母液の混合物を遠心分離に
かけ、砂糖結晶と分離して得られる振蜜を意味し、例え
ば、原糖製造工場における1番蜜、2番蜜、製糖廃蜜、
および精製糖製造工場における洗糖蜜、1〜7番蜜、精
糖廃蜜等が挙げられる。また、これらの糖蜜を原料とし
てアルコール発酵を行った分離液のように、糖蜜を脱糖
処理したものも同様に用いることができる。
【0034】また、本発明において、バガスとは典型的
には原糖工場における製糖過程で排出されるバガスをい
う。なおここでいう原糖工場における製糖過程で排出さ
れるバガスには、最終圧搾機を出た最終バガスだけでは
なく、第1圧搾機を含む以降の圧搾機に食い込まれた細
裂甘蔗をも含む。好ましくは、原糖工場において圧搾工
程により糖汁を圧搾した後に排出されるバガスを用い
る。圧搾工程より排出されるバガスは、甘蔗の種類、収
穫時期などにより、その含まれる水分、糖分及びその組
成比が異なるが、本発明においては、これらのバガスを
任意に用いうる。また、原糖工場と同様に、例えば、黒
糖工場において排出される甘蔗圧搾後に残るバガスを使
用しても良い。あるいは、実験室レベルの小規模な実施
では、甘蔗から糖液を圧搾した後のバガスを用いても良
い。
【0035】このような甘蔗由来のエキスは、より具体
的には例えば次にようにして得ることができる。
【0036】まず、カラムクロマトグラフィー処理によ
り得る方法について述べる。
【0037】甘蔗汁、甘蔗の溶媒抽出液、または甘蔗由
来の糖蜜(以下、単に原料ということがある)を、固定
担体を充填したカラムに通液する。上記原料は、そのま
ま、または水で任意の濃度に調整して、用いることがで
きる。なお、異物除去のために、カラムで処理する前
に、原料をろ過することが好ましい。ろ過の手法は特に
限定されず、食品工業で広く使用されているスクリーン
ろ過、ケイソウ土ろ過、精密ろ過、限外ろ過等の手段を
好ましく使用できる。
【0038】固定担体としては、合成吸着剤及びイオン
交換樹脂が好ましい。
【0039】まず、固定担体として合成吸着剤を用いる
方法の好ましい態様は、以下の通りである。
【0040】合成吸着剤としては、好ましくは有機系樹
脂を用いることができ、例えば、芳香族系樹脂、アクリ
ル酸系メタクリル樹脂、アクリロニトリル脂肪族系樹脂
等が使用できる。更に好ましくは芳香族系樹脂であり、
特に無置換基型の芳香族系樹脂が使用できる。合成吸着
剤として、例えばスチレン−ジビニルベンゼン系樹脂の
芳香族系樹脂などが使用でき、芳香族系樹脂としては、
例えば疎水性置換基を有する芳香族系樹脂、無置換基型
の芳香族系樹脂、無置換基型に特殊処理を施した芳香族
系樹脂等の多孔性樹脂が使用できる。より好ましくは無
置換基型に特殊処理を施した芳香族系樹脂が使用でき
る。そのような合成吸着剤は市販されており、例えばダ
イヤイオン(商標)HP−10、HP−20、HP−2
1、HP−30、HP−40、HP−50(以上、無置
換基型の芳香族系樹脂、三菱化学株式会社製);SP−
825、SP−800、SP−850、SP−875、
SP−70、SP−700(以上、無置換基型に特殊処
理を施した芳香族系樹脂、三菱化学株式会社製);SP
−900(芳香族系樹脂、三菱化学株式会社製);アン
バーライト(商標)XAD−2、XAD−4、XAD−
16、XAD−2000(以上、芳香族系樹脂、株式会
社オルガノ製);ダイヤイオン(商標)SP−205、
SP−206、SP−207(以上、疎水性置換基を有
する芳香族系樹脂、三菱化学株式会社製);HP−2M
G、EX−0021(以上、疎水性置換基を有する芳香
族系樹脂、三菱化学株式会社製);アンバーライト(商
標)XAD−7、XAD−8(以上、アクリル酸系エス
テル樹脂、株式会社オルガノ製);ダイヤイオン(商
標)HP1MG、HP2MG(以上、アクリル酸系メタ
クリル樹脂、三菱化学株式会社製);セファデックス
(商標)LH20、LH60(以上、架橋デキストラン
の誘導体、アマシャム ファルマシア バイオテク株式
会社製)等が挙げられる。中でもSP−850が特に好
ましい。
【0041】固定担体の量は、カラムの大きさ、溶媒の
種類、固定担体の種類などによって変化する。原料の固
形分に対して、0.01〜5倍湿潤体積量が好ましい。
【0042】原料を上記カラムに通すことにより、原料
中の肝機能増強効果を有する成分は固定担体に吸着さ
れ、蔗糖、グルコース、フラクトースおよび無機塩類の
大部分がそのまま流出する。
【0043】固定担体に吸着された成分を、溶媒により
溶出する。ここで、肝機能増強効果を有する成分を効率
よく溶出するには、その前に残留する蔗糖、グルコー
ス、フラクトースおよび無機塩類を水洗により充分洗い
流すことが好ましい。これにより、吸着されている目的
の効果を有する成分を効率よく回収することができる。
溶出溶媒は、水、メタノール、エタノールおよびこれら
の混合物から選ばれることが好ましく、さらに好ましく
は水とアルコールの混合溶媒、特に好ましくはエタノー
ル−水混合溶媒が使用される。室温において効率よく目
的の効果を有する成分を溶出するためには、50/50
〜60/40(体積/体積)エタノール−水混合溶媒が
好ましい。さらに、カラム温度を上げることにより、エ
タノール−水混合溶媒のエタノール混合比を減らすこと
ができる。この場合、カラム内は常圧もしくは加圧され
た状態である。肝機能増強効果を有する成分は、前記溶
媒で溶出される画分に存在する。溶出速度はカラムの大
きさ、溶媒の種類、固定担体の種類などによって変化す
るので特に限定されないが、SV=0.1〜10hr -1
が好ましい。なお、SV(Space velocity、空間速度)
は、1時間当たり樹脂容積の何倍量の液体を通液するか
という単位である。
【0044】前記肝機能増強効果を有する成分は、好ま
しくは次のようにして得ることができるが、下記に限定
されない。すなわち、原料の固形分に対して0.01〜
5倍湿潤体積量の無置換基型の芳香族系樹脂を充填した
カラムに、カラム温度60〜97℃にて原料を通液した
後、カラム内を水洗し、次いでカラムに吸着されている
成分を、カラム温度20〜40℃にて50/50〜60
/40(体積/体積)エタノール−水混合溶媒で溶出さ
せ、溶出開始時点から集めた溶出液の量が前記樹脂の4
倍湿潤体積量以内に溶出する画分を回収する。
【0045】一方、固定担体としてイオン交換樹脂を用
いる方法の好ましい態様は、以下の通りである。
【0046】イオン交換樹脂は、イオン交換の性質の観
点から、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とに分類
されるが、本発明では好ましくは陽イオン交換樹脂が使
用できる。更に好ましくは強酸性型の、ナトリウムイオ
ン型またはカリウムイオン型の陽イオン交換樹脂が使用
できる。またイオン交換樹脂は、樹脂の形態の観点から
は、ゲル型樹脂と、ポーラス型、マイクロポーラス型、
ハイポーラス型などの多孔性樹脂に分類されるが、本発
明では好ましくはゲル型のイオン交換樹脂が使用でき
る。更に好ましくは、強酸性型でナトリウムイオン型ま
たはカリウムイオン型であるゲル型の陽イオン交換樹脂
が使用できる。そのようなイオン交換樹脂は市販されて
おり、例えばダイヤイオン(商標)系としてSK1B、
SK104、SK110、SK112、SK116(以
上、三菱化学株式会社製)、UBK530、UBK55
0(以上、三菱化学株式会社製)、アンバーライト(商
標)系としてアンバーライトIR120BN、IR12
4、XT1006、IR118、アンバーリスト31、
クロマトグラフ用アンバーライトCG120、CG60
00(以上、オルガノ株式会社製)、ダウエックス(商
標)系として、HCR−S、HCR−W2、HGR−W
2、モノスフィアー650C、マラソンC600、50
W×2、50W×4、50W×8(以上、ダウ・ケミカ
ル日本株式会社製)、ムロマック50WX(室町化学工
業株式会社製)、ピュロライト(商標)系としてC−1
00E、C−100、C−100×10、C−120
E、PCR433、PCR563K、PCR822、P
CR833、PCR866、PCR883、PCR89
2、PCR945(以上、エイエムピー・アイオネクス
株式会社製)等が挙げられる。中でも、UBKシリーズ
が特に好ましい。
【0047】固定担体の量は、カラムの大きさ、固定担
体の種類などによって変化する。原料の固形分に対し
て、好ましくは2〜10,000倍、より好ましくは5
〜500倍湿潤体積量である。
【0048】原料を上記カラムに通し、次に溶離液とし
て水を用いてクロマトグラフィー処理し、得た多数の画
分のうち波長420nmの光を吸収する画分を分取して
目的とするエキスを得ることができる。以下において、
この方法をイオンクロマト分離ということがある。
【0049】通液条件は、原料の組成および固定担体の
種類などによって変化する。溶離液として脱気処理した
水を用い、単塔式回分分離法の場合、流速はSV=0.
3〜1.0hr-1、サンプルの供給量は液量として樹脂
の1〜20%、温度は40〜70℃が好ましい。この分
離法により得た画分の夫々について、波長420nmで
の吸収、電気伝導度(塩分の量の尺度)、蔗糖、グルコ
ースおよびフラクトースの濃度を分析し、時系列的にグ
ラフに表すと、波長420nmでの吸光度のピーク、電
気伝導度のピーク、蔗糖および還元糖のピークの順にピ
ークが現れる。後記の図1における画分3〜14に相当
する画分を、波長420nmの光を吸収する画分として
分取する。特に画分3〜8が好ましい。また、蔗糖が出
きった後の画分18〜30については、画分をそのまま
用いて測定した波長420nmでの吸光度は低いもの
の、これらを合わせて濃縮したサンプルについては、製
造例8のサンプル8に示すように、吸光度が高い。つま
り、画分18〜30は濃度が低くても、固形分当りの有
効成分の純度が比較的高い。従って非蔗糖画分全体(画
分1〜9と画分18〜30とを合わせたもの)は、有効
成分の濃度は画分3〜8のみより低いが、同様に本発明
のエキスとして使用することができる。擬似移動床式連
続分離法の場合、原料液供給量、溶離液流量、各画分抜
き出し流量を原料の組成、固定担体の種類、樹脂量に合
わせて設定するため、一般的な通液条件を示すことがで
きない。
【0050】原糖工場において2番蜜を原料として擬似
移動床式連続分離法により得られる本画分の組成は、原
料の種類およびイオン交換樹脂の分離能により変化する
が、固形分当たりの蔗糖が6%以下、非糖分が90%以
上、見掛純糖率が10%である。見掛純糖率は、ブリッ
クス(Bx.)度(ブリックス度計で測定した固形百分
率)に対する糖度(糖度計で測定した純蔗糖規定量に対
する直接旋光度)の百分率である。
【0051】また、単塔式回分分離法により得られる本
画分は、2番蜜を原料として得られた画分の場合、固形
分(凍結乾燥固形分)当たりのポリフェノール量が約5
%、電気伝導度灰分(塩分)が約44.7%、糖分は約
5%である。
【0052】肝機能増強効果の有効成分である物質は、
波長420nmの吸収のピーク部分の画分に多く含まれ
ることは明らかであるが、有効成分自体が420nmの
吸収を持つかどうかは現在のところ明らかではない。
【0053】次に、バガスを抽出することにより甘蔗由
来のエキスを得る方法について述べる。
【0054】バガスを水、親水性溶媒、これらの混合物
からなる群より選択される溶液で抽出することによっ
て、バガス抽出物が得られる。親水性溶媒としては、例
えばメタノール、エタノール等の低級アルコール類、ア
セトンなどのケトン類、酢酸メチルや酢酸エチルなどの
酢酸エステル類を用いることができる。より好ましく
は、親水性溶媒としてエタノールを使用する。抽出のた
めの好ましい溶媒は、60/40体積比以下の比で、よ
り好ましくは50/50体積比以下の比でエタノールを
含む、エタノール−水混合溶媒である。抽出温度は、効
率よく抽出するためには、50〜100℃が好ましい。
抽出時間は、バガスの原料、種類、状態などによっても
異なってくるが、通常1〜3時間である。抽出方法は、
一般的な汎用性のある方法が使用でき、例えばバガスと
抽出溶媒を共に容器に入れて抽出する方法、抽出溶媒を
循環させて抽出する方法、連続式に抽出する方法が挙げ
られる。抽出のための装置しては、例えば、デスメット
式押出機、ルルギ式押出機等を任意に使用することがで
きる。バガスから抽出されたエキスは糖含量が多いの
で、バガスエキスを上記と同様のカラムクロマトグラフ
ィー処理に付すことにより糖を除去しても良い。
【0055】上記のように甘蔗から種々の方法で得られ
たエキスを、慣用の手段(減圧下での溶媒除去、凍結乾
燥など)により濃縮して、本発明の効果を有する成分を
得ることができる。このようにして得られた肝機能増強
効果を有する成分は、固形分20%以上に濃縮した液状
または粉末状で保存することができる。保存は、特に液
状の場合、冷凍保存、もしくは腐敗防止のためにアルコ
ールを入れて冷蔵保存することが好ましい。
【0056】本発明の甘蔗由来のエキスは、マウスを用
いた甘蔗由来のエキスの経口投与による動物実験の結
果、四塩化炭素急性肝障害モデル、フェノバルビタール
+四塩化炭素急性肝障害モデル、ガラクトサミン急性肝
障害モデル、α−ナフチルイソチオシアネート急性肝障
害モデルの4つの肝障害モデルに関して肝機能増強効果
を示した(後述の実施例1〜4)。よって、本発明にお
ける甘蔗由来のエキスは広い範囲での肝機能増強効果を
示すと考えられる。従って本発明は、ヒトあるいは動物
などの肝機能を増強することにより、各種の肝疾患の予
防、治療のために使用できる。
【0057】本発明の肝機能増強剤の投与時期は、特に
限定されない。
【0058】本発明の肝機能増強剤の投与量は、甘蔗由
来のエキスの抽出方法、形態、対象とする動物の種類、
健康状態、成長の度合い等によって異なり、特に限定さ
れないが、例えば後述の製造例1〜8で得た甘蔗由来の
エキス粉末の場合には、体重1Kg当たり1日に1〜1
000mg、好ましくは50〜1000mgである。
【0059】本発明に係る甘蔗由来のエキスの投与形態
は特に限定されないが、例えば経口的、静脈内、筋肉
内、皮下、皮内、腹腔内、直腸内、舌下、経皮、点眼な
どの方法で投与することができる。
【0060】本発明に係る甘蔗由来のエキスを投与する
際のエキスの形状は特に限定されず、液状または粉末状
のエキスをそのまま投与してもよく、また通常用いられ
る製剤用担体によって、公知の方法により固形剤とする
ことも液剤とすることもでき、また製剤化の有無に関わ
らず食品、飼料、飲水などに混合することもできる。
【0061】経口用固形製剤を調製する場合には、エキ
スに賦形剤、結合剤、粘結剤、崩壊剤、滑沢剤、着色
剤、矯味矯臭剤、抗酸化剤、溶解補助剤などを加えた
後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセ
ル剤などとする。
【0062】上記賦形剤としては、例えばデンプン、コ
ーンスターチ、デキストリン、小麦粉、小麦ミドリン
グ、ふすま、米ぬか、米ぬか油粕、大豆かす、大豆粉、
大豆油かす、きな粉、ブドウ糖、乳糖、白糖、マルトー
ス、植物油、動物油、硬化油、高級飽和脂肪酸、その他
の脂肪酸、酵母、マンニトール、結晶セルロース、二酸
化珪素、無水珪素、珪酸カルシウム、珪酸、リン酸一水
素カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二水素カル
シウムなどが用いられる。
【0063】結合剤としては、例えばポリビニルピロリ
ドン、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビア
ゴム、トラガント、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリ
ウム、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロー
スナトリウム、プロピレングリコール、ポリアクリル酸
ナトリウム等が用いられる。
【0064】滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグ
ネシウム、タルク、ステアリン酸などが用いられる。
【0065】着色剤、着香料としては、医薬品、食品、
飼料に添加することが許可されているものであればよ
く、特に限定されない。
【0066】抗酸化剤としては、例えばアスコルビン
酸、α−トコフェロール、エトキシキン、ジブチルヒド
ロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙
げられ、医薬品や食品、飼料に添加することが許可され
ているものであればよい。また、錠剤、顆粒剤は必要に
応じてコーティングすることは差し支えない。
【0067】注射製剤を製造する場合には、必要に応じ
て主薬にpH調製剤、緩衝剤、懸濁化剤、溶解補助剤、
安定化剤、等張化剤、抗酸化剤、保存剤などを添加し、
常法により製造することができる。この際必要に応じ、
凍結乾燥剤とすることも可能である。この注射剤は静脈
内、皮下、筋肉内などに投与することができる。
【0068】懸濁化剤としては例えば、メチルセルロー
ス、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロー
ス、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセ
ルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモ
ノラウレートなどを挙げることができる。
【0069】溶解補助剤としては、例えばポリオキシエ
チレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸
アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート
などが用いられる。
【0070】保存剤としては、例えばパラオキシ安息香
酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸等が
用いられる。
【0071】本発明はまた、前記した肝機能増強剤を含
む食品および飼料を提供する。食品および飼料は固体で
も液体でも良い。食品としては、例えば菓子類、清涼飲
料、機能性調味料、健康食品などが挙げられる。飼料と
しては、例えばドッグフード、キャットフードなどのペ
ット用飼料、家畜用飼料、養殖魚介類用飼料等が挙げら
れる。
【0072】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
解説する。実施例で使用する物質の投与量に関する記
載、例えば「10mg/kg」または「10mg/kg
体重」は、体重1kg当たり10mgを投与したという
意味である。
【0073】製造例1 原糖製造工場の製造工程にて得られた甘蔗の圧搾汁(固
形分18.6%)約1000リットルを、ジュースヒー
ターで80℃に加温し、管型限外ろ過(MH25型、有
効膜面積2m2×3本、分画分子量10万、ダイセル化
学工業株式会社製)でろ過処理して、約750リットル
の処理液を得た。合成吸着剤SP−850(商標、三菱
化学株式会社)15リットルを、ウォータージャケット
付きのカラム(カラムサイズ:内径17.0cm、高さ
100cm)に充填し、これに前記の圧搾汁ろ過処理液
を、流速75リットル/時間(SV=5hr-1)の速度
で通液した。なお、圧搾汁ろ過処理液通液中は、ウォー
タージャケットに、65℃の水を常に循環させた。次
に、45リットルのイオン交換水を流速30リットル/
時間(SV=2hr-1)でカラムに通液して洗浄した。
イオン交換水で洗浄後、カラムから溶出した画分につい
ての糖類の検出を行ったところ、ハンドレフブリックス
(Bx.)計(アタゴ株式会社製、N−1E型)におい
て、Bx.が約0になっているのが確認された。その
後、溶出溶媒として30リットルの55%エタノール水
溶液(エタノール/水=55/45(体積/体積))を
流速30リットル/時間(SV=2hr-1)にてカラム
に通液して、合成吸着剤に吸着した成分を溶出させた。
なお、溶出溶媒およびその後のイオン交換水通液中は、
ウォータージャケットに、25℃の水を常に循環させ
た。55%エタノール水溶液でカラムから溶出した溶出
液および、その後のイオン交換水を20分間流して得ら
れた溶出液を混合し、濃縮機にて約20倍に減圧濃縮し
た後、1晩凍結乾燥して、茶褐色の粉末(甘蔗由来のエ
キス)435gを得た。
【0074】製造例2 原糖製造工場の製造工程にて得られた清浄汁(固形分1
1.5%)約620リットルを限外ろ過処理せずにその
まま使用した以外は、製造例1と同様にしてカラム処理
を行った。得られた溶出液を濃縮機にて約20倍に減圧
濃縮した後、1晩凍結乾燥して、茶褐色の粉末(甘蔗由
来のエキス)210gを得た。
【0075】製造例3 原糖製造工場で得られた乾燥バガス1kgをナイロンネ
ット製の袋に入れ、袋ごとタンクに入れ、80℃の水を
25リットル添加し、1時間撹拌抽出した。得られた抽
出液をコットンフィルターでろ過し、異物を除去した。
濾液を遠心式薄膜濃縮機で減圧濃縮した後、一晩凍結乾
燥して、26.31gの茶褐色の粉末(甘蔗由来のエキ
ス)を得た。
【0076】製造例4 原糖製造工場で得られた生バガス2kgを使用した以外
は、製造例3と同様にエキスを抽出した。得られた抽出
液はコットンフィルターでろ過し、異物を除去し、半量
は遠心式薄膜濃縮機で減圧濃縮した後、一晩凍結乾燥し
て、16.24gの茶褐色の粉末(甘蔗由来のエキス)
を得た。また、残りの異物を除去した濾液は、0.45
μmのセルロースアセテートフィルターで除菌のためろ
過した後、遠心式薄膜濃縮機で減圧濃縮した後、一晩凍
結乾燥して、15.45gの茶褐色の粉末(甘蔗由来の
エキス)を得た。
【0077】製造例5 原糖工場で得られた乾燥バガス350gをナイロンネッ
ト製の袋に入れ、袋ごとステンレス製寸胴鍋に入れ、5
0/50(体積/体積)エタノール−水混合溶媒5.2
5リットルを添加し、室温で2時間抽出した。得られた
抽出液は濾紙(東洋濾紙No.2、アドバンテック東洋
株式会社製)でろ過し、異物を除去し、濾液をエバポレ
ーターで減圧濃縮した後、一晩凍結乾燥して、6.72
gの茶褐色の粉末(甘蔗由来のエキス)を得た。
【0078】製造例6 原糖工場で得られた乾燥バガス500gをナイロンネッ
ト製の袋に入れ、袋ごとステンレス製寸胴鍋に入れ、5
0/50(体積/体積)エタノール−水混合溶媒7.5
リットルを添加し、室温で24時間抽出した。得られた
抽出液は濾紙(東洋濾紙No.2、アドバンテック東洋
株式会社製)でろ過し、異物を除去し、濾液をエバポレ
ーターで減圧濃縮した後、一晩凍結乾燥して、9.95
gの茶褐色の粉末(甘蔗由来のエキス)を得た。
【0079】製造例7 原糖工場において、結晶缶にて2回蔗糖結晶を回収し、
遠心分離により結晶を除いた振蜜である2番蜜を原料と
して、陽イオン交換樹脂を充填した分離糖を用いた擬似
移動床式連続分離法により、イオン交換カラムクロマト
分離を行った。原料の調製からイオン交換クロマト分離
までの工程は連続的に行われるため、各工程の液の固形
分濃度や組成は時間と共に若干変動するが、以下の濃度
や組成は定常運転における測定値である。2番蜜はブリ
ックス(Bx.)が約85であった。この濃度はカラム
クロマト処理を行うには高いため、ブリックス約50に
希釈した。これに、消石灰、炭酸ソーダを添加して不純
物を凝集させ、ケイソウ土ろ過を行った。得られたろ液
は、ブリックス47.3、糖度(Pol.)23.6、
純糖率(Purity)49.9、還元糖分2.5%で
あった。ろ液をイオン交換クロマトグラフィーの原料と
して用いた。陽イオン交換樹脂としてUBK530(三
菱化学株式会社)を用いた擬似移動床式連続分離法によ
るイオン交換クロマトグラフィーを行った。樹脂を充填
した分離塔は8分割されており、1塔当たりの樹脂量は
6.5m3である。原料液と溶離液(水)の供給、およ
び蔗糖画分と非蔗糖画分の抜き出し位置を一定時間毎に
切り替えることにより、連続的に供給、抜き出しを行っ
た。定常時の既定値は、供給流量3m3/時間、溶離水
流量13.5m3/時間、非蔗糖画分抜き出し流量1
2.13m3/時間、蔗糖画分抜き出し流量4.37m3
/時間、切り替え時間267秒であった。このクロマト
グラフィー処理により、蔗糖画分と非蔗糖画分が分離さ
れた。これらは夫々、後述の図1における画分10〜1
7、および画分1〜9と画分18〜30とを合わせたも
のに相当する。蔗糖画分は蔗糖が固形分当たり約87%
(HPLC分析による)でブリックスは約35であり、
この画分を、清浄汁と混合して製糖本工程に戻し、再び
蔗糖を回収する操作を行った。また、得られた非蔗糖画
分は、蔗糖分が約0.3%(HPLC分析による)でブ
リックスが約8であった。この非蔗糖画分を濃縮缶によ
り濃縮し、ブリックス40.0、糖度(Pol.)2.
3、純糖率(Purity)5.8、還元糖分5.4%
とした。この非蔗糖画分を、後の試験に用いるため、1
晩凍結乾燥処理に付した。得られた凍結乾燥粉末0.2
5gを0.5mMリン酸バッファー(pH7.5)で1
00ml溶液にし、波長420nmでの吸光度を測定し
た。吸光度は1.11であった。
【0080】製造例8 原糖工場で得られた2番蜜処理液を原料として、単塔式
回分分離法によるイオン交換カラムクロマトグラフィー
処理を行った。原料として使用した2番蜜処理液は、2
番蜜を希釈後、炭酸ソーダによる清浄処理、ケイソウ土
ろ過を行ったものである。この原料液の分析値は、ブリ
ックス47.4、糖度(Pol.)23.2、純糖率
(Purity)48.9、還元糖分3.2%であっ
た。この原料を用いて、FPLCシステム(ファルマシ
ア株式会社製)を用いた単塔式回分分離法によるイオン
交換クロマトグラフィーによる分画分離を行った。カラ
ムにゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂UBK530、ナ
トリウムイオン型(商標、三菱化学株式会社)500m
lを充填した。カラムは内径26mm、高さ1000m
mで、フローアダプター付きであった。通液条件は、溶
離液として脱気した蒸留水を用い、流速SV=0.5h
-1(4.17ml/分)、温度60℃で行った。約2
5mlの原料をカラムに供与した。分画条件は、原料供
与30分後から溶出液の回収を開始し、試験管1本当た
り3.6分間(約15ml/本)回収し、全部で30本
回収した。得られた30画分についての波長420nm
の吸光度、電気伝導度、および糖濃度を測定し、図1に
示した。ここで、吸光度測定のためには、0.5mMリ
ン酸バッファー(pH7.5)2mlに各画分0.1m
lを加えて試料とした。電気伝導度測定のためには、各
画分を蒸留水で0.5%に希釈して試料とした。糖濃度
はHPLCにより測定された。各ピークの分析を行うた
め、波長420nmの吸光ピーク部分を4つに、また蔗
糖のピーク部分を3つに、蔗糖のピーク以降を1つにま
とめた。すなわち、画分3および4を合わせてサンプル
1に、画分5および6を合わせてサンプル2に、画分7
および8を合わせてサンプル3に、画分9および10を
合わせてサンプル4に、画分11および12を合わせて
サンプル5に、画分13および14を合わせてサンプル
6に、画分15および画分16を合わせてサンプル7
に、画分17〜30を合わせてサンプル8とした。画分
1および2は溶出される成分がほとんどないため、廃棄
した。各サンプルを1晩凍結乾燥して、粉末とした。得
られた凍結乾燥粉末0.25gを0.5mMリン酸バッ
ファー(pH7.5)に溶解して100mlとし、波長
420nmでの吸光度を測定した。また、凍結乾燥固形
分の分配比率、電導度灰分(塩分)、蔗糖、グルコース
およびフラクトース含量、ポリフェノール量も測定し
た。電導度灰分は、電気伝導度と既知の硫酸灰分の関係
の検量線から係数を求め算出したものであり、蔗糖、グ
ルコースおよびフラクトース含量はHPLC分析により
求めたものを、それぞれ各サンプルの固形分重量に対す
る比(%)として示した。ポリフェノール含量は、カテ
キン水溶液を標準溶液として検量線を引き、フェノール
試薬で反応させて波長765nmの吸光度を測定するフ
ォリン−チオカルト法により測定し、カテキン換算の値
として示した。凍結乾燥固形分の分配比率は、全サンプ
ルの固形分重量の合計に対する各サンプルの固形分重量
の比(%)である。各サンプルの分析結果を以下の表1
に示した。サンプル8の吸光度は0.86と比較的高か
ったが、これはテーリングした成分を集めて濃縮したも
のだからである。他のサンプルは2画分ずつを一緒にし
たものであるのに対し、サンプル8は14画分を合わせ
たものである。従って、420nmの吸光度は高いが、
この画分だけを本効果の画分として回収するのは効率が
悪い。糖分含量から、サンプル1〜3および8が非蔗糖
分画分に相当し、サンプル4〜7が蔗糖分画分に相当す
ることがわかる。
【0081】
【表1】
【0082】甘蔗由来のエキスの急性毒性試験 製造例1で得られたエキス粉末を使用して、ラットを用
いた単回経口投与毒性試験を行った。Sprague-Dawley系
SPFラット(Crj:CD(SD))の雌雄各16匹を5週令で
入手し、約1週間検疫・馴化飼育した。飼育条件は、温
度23±3℃、相対湿度50±20%、換気回数1時間
10〜15回、照明1日12時間であり、固形飼料(C
FR−1(商品名)、オリエンタル酵母株式会社)及び
飲料水を自由に摂取させて飼育した。その後、健康な動
物を選び、6週令で試験に供した。投与時の体重範囲は
雄で157〜171g、雌で123〜133gであっ
た。投与前一晩(約16時間)絶食させたラットに、蒸
留水で所定の濃度になるように調製した甘蔗由来の画分
を一定の投与容量(10ml/kg体重)にて1回強制
経口投与した。対照群の動物には滅菌蒸留水のみを同様
に投与した。投与量は、200mg/kgおよび100
0mg/kgの2用量とし、これに対照群を加えて計3
群を使用した。1群の動物数は雌雄共に5匹とした。絶
食後の再給餌は、投与6時間後に開始し、その後14日
間、上記飼育条件にて飼育した。結果を以下の表2に示
す。
【0083】
【表2】
【0084】投与後14日間が経過した後、雌雄とも最
大投与量の1000mg/kgでも、ラットの死亡は認
められなかったので、致死量は1000mg/kgを上
回るものと推定される。飼育中いずれのラットにおいて
も異常は認められず、さらに各被検液投与群の雌雄の体
重は、対照群とほぼ同等であった。また、いずれのラッ
トにおいても、解剖学的検査の結果、体外表、頭部、胸
部および腹部の器官・組織に異常は見られなかった。
【0085】以上の結果から、製造例1で得られたエキ
ス粉末をラットに単回経口投与毒性試験を行ったときの
毒性は極めて弱いものと考えられる。
【0086】実施例1(D−ガラクトサミン急性肝障害
モデルに対する作用) 製造例1〜7で得られた甘蔗由来のエキスまたはウコン
エキス粉末(丸善製薬株式会社製)をそれぞれ1回投与
当り500mg/kgの用量で、1群5匹のSlc:ICR雄
性5〜6週令マウス(体重25〜30g)に1日1回、
5日間連続経口投与し、5日目にD−ガラクトサミン5
g/kgを生理食塩液に1匹分当たり0.2mlになる
ように溶解したものを、腹腔内投与した。この際、ウコ
ンエキスは0.5mlの蒸留水に溶解して用い、甘蔗由
来のエキスはそのまま用いた。エキス投与開始から6日
目に全採血し、得られた血液を遠心分離し、血漿中の肝
機能検査値(GOT、GPT)を測定した。また、陰性
対照群として、エキスの代わりに同容量の蒸留水を経口
投与しかつD−ガラクトサミンを投与しない群を設定し
た。陽性対照群として、エキスの代わりに同容量の蒸留
水を経口投与し、エキス投与群と同様に肝障害を惹起さ
せた群を設定した。結果を以下の表3に示した。甘蔗由
来のエキスを投与した群の肝機能検査値は、どれも陰性
対照群の値に近く、陽性対照群と比較し肝障害が軽減さ
れた。また、ウコンエキスを投与した群も対照と比較し
肝機能が改善されたが、甘蔗由来のエキスを投与した群
よりその効果は低かった。以上のことから、甘蔗由来の
エキスはD−ガラクトサミン急性肝障害モデルに対する
肝機能増強作用を示すことが明らかになった。
【0087】
【表3】
【0088】実施例2(四塩化炭素急性肝障害モデルに
対する作用) 製造例1〜3および5〜6で得られた甘蔗由来のエキス
をそれぞれ1回投与当たり100〜500mg/kg
(0.5mlになるように注射用蒸留水に溶解したも
の)の用量で、1群5匹のSlc:ICR雄性5〜6週令マウ
ス(体重25〜30g)に1日1回、5日間連続投与
し、5日目のエキス投与の6時間前に肝障害負荷とし
て、四塩化炭素(CCl4)0.001ml(オリーブ
オイルに懸濁して0.5mlにしたもの)を経口投与し
た。エキス投与開始から6日目に全採血し、得られた血
液を遠心分離し、血漿中の肝機能検査値(GOT、GP
T)を測定した。また、陰性対照群として、エキスの代
わりに同容量の蒸留水を経口投与しかつ四塩化炭素を投
与しない群を設定した。陽性対照群として、エキスの代
わりに同容量の蒸留水を経口投与し、エキス投与群と同
様に肝障害を惹起させた群を設定した。結果を以下の表
4に示した。エキス投与群の値は、陰性対照群の値と陽
性対照群の値の中間の値を示し、エキスの投与量に依存
して陰性対照群の値に近づいており、肝細胞保護作用が
見られた。以上のことから、甘蔗由来のエキスは四塩化
炭素急性肝障害モデルに対する肝機能増強作用を示すこ
とが明らかになった。
【0089】
【表4】
【0090】実施例3(フェノバルビタール+四塩化炭
素急性肝障害モデル) 製造例1、3、5および6で得られた甘蔗由来のエキス
をそれぞれ1回投与当たり500mg/kg(0.5m
lになるように注射用蒸留水に溶解したもの)の用量
で、1群5匹のSlc:ICR雄性5〜6週令マウス(体重2
5〜30g)に1日1回、5日間連続経口投与した。ま
た、肝障害負荷として、0.5%フェノバルビタールナ
トリウム−生食液を0.5ml、エキス投与開始日から
1日1回、4日間連続経口投与し、また四塩化炭素0.
05ml(オリーブオイルに懸濁して0.5mlにした
もの)を5日目のエキス投与の6時間前に経口投与し
た。エキス投与開始から6日目に全採血し、得られた血
液を遠心分離し、血漿中の肝機能検査値(GOT、GP
T)を測定した。また、陰性対照群として、エキスの代
わりに同容量の蒸留水を経口投与しかつフェノバルビタ
ールナトリウムおよび四塩化炭素を投与しない群を設定
した。陽性対照群として、エキスの代わりに同容量の蒸
留水を経口投与し、エキス投与群と同様に肝障害を惹起
させた群を設定した。結果を以下の表5に示した。甘蔗
由来のエキスを投与した群の肝機能検査値は、どれも陰
性対照群の値に近く、陽性対照群と比較し肝機能が改善
された。以上のことから、甘蔗由来のエキスはフェノバ
ルビタール+四塩化炭素急性肝障害モデルに対する肝機
能増強作用を示すことが明らかになった。
【0091】
【表5】
【0092】実施例4(α−ナフチルイソチオシアネー
ト急性肝障害モデルに対する作用) 製造例1、3、5および6で得られた甘蔗由来のエキス
をそれぞれ1回投与当たり500mg/kg(0.5m
lになるように注射用蒸留水に溶解したもの)の用量
で、1群5匹のSlc:ICR雄性5〜6週令マウス(体重2
5〜30g)に1日1回、5日間連続経口投与し、5日
目にオリーブオイル0.51mlに懸濁したα−ナフチ
ルイソチオシアネート(ANIT)100mg/kgを
経口投与した。エキス投与開始から6日目に全採血し、
得られた血液を遠心分離し、血漿中の肝機能検査値(G
OT、GPT)を測定した。また、陰性対照群として、
エキスの代わりに同容量の蒸留水を経口投与しかつAN
ITを投与しない群を設定した。陽性対照群として、エ
キスの代わりに同容量の蒸留水を経口投与し、エキス投
与群と同様に肝障害を惹起させた群を設定した。結果を
以下の表6に示した。甘蔗由来のエキスを投与した群の
肝機能検査値はどれも陰性対照群の値に近く、陽性対照
群と比較し肝機能が改善された。以上のことから、甘蔗
由来のエキスはANIT急性肝障害モデルに対する肝機
能増強作用を示すことが明らかになった。
【0093】
【表6】
【0094】
【発明の効果】本発明によれば、甘蔗由来のエキスをヒ
トまたは動物に例えば経口的に与えることにより、ヒト
または動物の肝障害を予防、治療および低減することが
できる。しかも、甘蔗由来のエキスは植物由来であり、
古来より、ヒトが黒糖などの含蜜糖として食してきた天
然物に含まれるため、ヒトおよび動物の健康を害するこ
となく安全で、しかも低コストである。また、天然物で
あるにもかかわらずその肝機能増強効果は高く、少量で
作用するため、産業上非常に有用である。
【0095】
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例8で行ったイオン交換樹脂を用いた分離
により得た画分の吸光度、電気伝導度および糖濃度を示
すグラフ。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】甘蔗由来のエキスを有効成分とする肝機能
    増強剤。
  2. 【請求項2】甘蔗由来のエキスが、甘蔗汁、甘蔗の溶媒
    抽出液及び甘蔗由来の糖蜜より選ばれる原料を、固定担
    体を用いたカラムクロマトグラフィーで処理することに
    より得られる画分である請求項1記載の肝機能増強剤。
  3. 【請求項3】甘蔗由来のエキスが、甘蔗汁、甘蔗の溶媒
    抽出液および甘蔗由来の糖蜜より選ばれる原料を、固定
    担体としての合成吸着剤を充填したカラムに通液し、該
    合成吸着剤に吸着された成分を、水、メタノール、エタ
    ノールおよびこれらの混合物から選ばれる溶媒で溶出す
    ることにより得られる画分である請求項2記載の肝機能
    増強剤。
  4. 【請求項4】甘蔗由来のエキスが、甘蔗汁、甘蔗の溶媒
    抽出液及び甘蔗由来の糖蜜より選ばれる原料を、固定担
    体としてのイオン交換樹脂を充填したカラムでの親和力
    の差を利用したカラムクロマトグラフィー処理により分
    離して得られる画分のうち、波長420nmの光を吸収
    する画分である請求項2記載の肝機能増強剤。
  5. 【請求項5】イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂である
    請求項4記載の肝機能増強剤。
  6. 【請求項6】陽イオン交換樹脂が、強酸性陽イオン交換
    樹脂である請求項5記載の肝機能増強剤。
  7. 【請求項7】強酸性陽イオン交換樹脂がナトリウムイオ
    ン型もしくはカリウムイオン型である請求項6記載の肝
    機能増強剤。
  8. 【請求項8】イオン交換樹脂がゲル型である請求項4〜
    7のいずれか一項記載の肝機能増強剤。
  9. 【請求項9】カラムクロマトグラフィー処理が擬似移動
    床式連続分離法で行われる請求項4〜8のいずれか一項
    記載の肝機能増強剤。
  10. 【請求項10】甘蔗由来のエキスが、バガスを水、親水
    性溶剤、またはこれらの混合物で抽出して得られるもの
    である請求項1記載の肝機能増強剤。
  11. 【請求項11】親水性溶媒がエタノールである請求項1
    0記載の肝機能増強剤。
  12. 【請求項12】抽出のための親水性溶媒が、60/40
    体積比以下の比でエタノールを含むエタノール−水混合
    溶媒である請求項10記載の肝機能増強剤。
  13. 【請求項13】請求項1〜12のいずれか一項記載の肝
    機能増強剤を含む食品。
  14. 【請求項14】請求項1〜12のいずれか一項記載の肝
    機能増強剤を含む飼料。
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