JP2001299141A - ノックイン非ヒト哺乳動物 - Google Patents

ノックイン非ヒト哺乳動物

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JP2001299141A
JP2001299141A JP2000126776A JP2000126776A JP2001299141A JP 2001299141 A JP2001299141 A JP 2001299141A JP 2000126776 A JP2000126776 A JP 2000126776A JP 2000126776 A JP2000126776 A JP 2000126776A JP 2001299141 A JP2001299141 A JP 2001299141A
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gene
rag1
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human mammal
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JP2000126776A
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Shigeo Sakaguchi
薫雄 阪口
Naomi Kuwata
直美 鍬田
Hideya Igarashi
英哉 五十嵐
Takafumi Omura
孝文 大村
Shinichi Aizawa
慎一 相澤
Kumiko Kiyota
久美子 清田
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 RAG1をコードする遺伝子領域中にレポー
ター遺伝子が挿入されているノックインマウスを作出す
ることによって、自己免疫マウスのB−1細胞の抗体特
異性獲得の機構を解析する手段を提供すること。 【解決手段】 rag1遺伝子中にレポーター遺伝子が
挿入されてなる導入遺伝子を有する、ノックイン非ヒト
哺乳動物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、緑色蛍光タンパク
質(green fluorescent protein:GFP)遺伝子など
のレポーター遺伝子がRAG1をコードする遺伝子中に
挿入されているノックイン非ヒト哺乳動物に関する。よ
り詳細には、本発明は、レポーター遺伝子の発現産物を
検出することによりRAG1の発現状態を分析すること
ができる、ノックイン非ヒト哺乳動物に関する。
【0002】
【従来の技術】B細胞は、Ig遺伝子の再構成を調節す
る特異的分子機構によって造血前駆細胞から生成する
(Melchers, F.他,1973, Transplant.Rev. 14,76;及び
Alt,F.W.他,1980,Cell, 20,293)。リコンビナーゼ成分
であるRAG1及びRAG2の発現が調節されて、一次
リンパ器官で生成した1セットのB細胞クローンのレパ
ートリーが形成される。各種の最初の遺伝子ソースの再
構成の研究により、胎児腹腔内網および胎児肝臓に存在
するが成熟骨髄にはほとんど存在しない前駆細胞に由来
する機能的に別個の集団のB細胞がB−1細胞として存
在することが判明してきた(Hayakawa,K.他,1985, J.
Exp.Med. 161, 1554;及びKantor,A.B.他, 1993, Annu.
Rev.Immunol. 11:501)。骨髄に存在する再構成されて
いない前駆細胞の分化によって生涯補充され続ける通常
のB細胞(B−2細胞と称する)とは対照的に、B−1
細胞は成熟動物では自己補充によってその数が維持され
る(Kantor,A.B.他, 1993, Annu.Rev.Immunol. 11:50
1)。B−1レパトアは発生の初期の段階で固定され、
加齢に伴い少しずつ制限されていく。B−1プールへの
新たな参入はフィードバック機構のために妨げられ、ク
ローン集団は膨張して徐々に大きなプールの集団を占め
るようになる。これまでの研究により、自己抗体産生細
胞は、自己免疫になり易いマウスおよび自己抗体産生ト
ランスジェニックマウスにおいてB−1細胞から生成す
ることが示唆されている(Murakami,M.他,1992, Natur
e, 357,77;及びKasaian,M.T.他,1993, Autoimmunity,
15, 315)。
【0003】最近の研究によれば、正常および自己免疫
のNZBマウス由来の腹腔(Pc)B−1細胞における
rag遺伝子のmRNAの増加が実証された(Qin,X.F.
他、Nature, 397, 355)。この結論は、胎児肝臓または
腹腔網から補充される前に生成されるB−1細胞の抗体
能力はかなり制限されているという以前の知見とは一致
しない。B−1細胞においてrag遺伝子のmRNAが
増加しているという知見は、B−1プールにおける二次
的レパトア形成の機構の存在を示唆している。Ig再構
成が連続的に生じることにより、自己抗体産生B−1細
胞の生成が誘導される可能性が高いように思われた。し
かしながら、B−1細胞における免疫グロブリン遺伝子
再構成の誘導の機構は未だ十分には解明されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、RAG1を
コードする遺伝子領域中にレポーター遺伝子が挿入され
ているノックインマウスを作出することによって、自己
免疫マウスのB−1細胞の抗体特異性獲得の機構を解析
する手段を提供することを解決すべき課題とした。本発
明はさらに、RAG1をコードする遺伝子領域中にレポ
ーター遺伝子が挿入されているノックインマウスの利用
方法を提供することを解決すべき課題とした。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討した結果、レポーター遺伝子
であるgfp遺伝子の発現を安定的に維持できるように
RAG1をコードする遺伝子領域中にレポーター遺伝子
が挿入されているノックインマウスを作出することに成
功し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれ
ば、rag1遺伝子中にレポーター遺伝子が挿入されて
なる導入遺伝子を有する、ノックイン非ヒト哺乳動物が
提供される。
【0006】好ましくは、レポーター遺伝子は緑色蛍光
タンパク質(GFP)又はその変異体をコードする遺伝
子である。好ましくは、本発明のノックイン非ヒト哺乳
動物では、導入遺伝子が腹腔B−1細胞よりも腹腔B−
2細胞で高発現している。好ましくは、非ヒト哺乳動物
は、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサ
ギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシおよびサル
から成る群から選ばれる非ヒト哺乳動物である。
【0007】本発明の別の側面によれば、上記した本発
明のノックイン非ヒト哺乳動物の作製に用いるための、
rag1遺伝子中にレポーター遺伝子が挿入されてなる
導入遺伝子を導入した非ヒト哺乳動物の胚性幹細胞が提
供される。本発明のさらに別の側面によれば、本発明の
ノックイン非ヒト哺乳動物の細胞が提供される。該細胞
は好ましくは、胚性幹細胞、卵および精子からなる群か
ら選ばれる細胞である。本発明のさらに別の側面によれ
ば、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物の細胞の核が提
供される。
【0008】本発明のさらに別の側面によれば、本発明
のノックイン非ヒト哺乳動物、あるいは該動物の組織、
器官または細胞を用いて、レポーター遺伝子の発現を検
出することにより細胞内におけるrag1の発現状態を
分析する方法が提供される。本発明のさらに別の側面に
よれば、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物、或いは該
動物の組織、器官または細胞に試験化合物を投与し、レ
ポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする、R
AG1タンパク質の発現を調節する化合物のスクリーニ
ング方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施態様および実
施方法について説明する。(A)本発明のノックイン非ヒト哺乳動物の作製方法 本発明のノックイン非ヒト哺乳動物の対象動物はヒト以
外の哺乳動物であればその種類は特に限定されないが、
例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウ
サギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシおよびサ
ルから成る群から選ばれる動物であり、好ましくは、マ
ウス、ラット、モルモット、ハムスター又はウサギなど
の齧歯類動物であり、特に好ましくはマウスである。本
発明のノックイン非ヒト哺乳動物は、公知の遺伝子組換
え法(ジーン・ターゲティング法)を用いることによ
り、例えば以下の操作に従って作成することができる。
【0010】先ず、対象とする非ヒト哺乳動物が有する
RAG1をコードするDNAを単離し、そのエキソン部
分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺
伝子等の薬剤耐性遺伝子、及び、gfp遺伝子(緑色蛍
光タンパク質遺伝子)、lacZ遺伝子(β−ガラクト
シダーゼ遺伝子)、cat遺伝子(クロラムフェニコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)などのレポータ
ー遺伝子を挿入することによって、ターゲティングベク
ターを構築する。
【0011】本明細書においてレポーター遺伝子とは、
外部から測定可能な信号を発する能力をもつタンパク質
をコードする遺伝子を意味する。レポーター遺伝子は好
ましくは、蛍光性タンパク質をコードする遺伝子又は酵
素タンパク質をコードする遺伝子である。酵素タンパク
質の具体例としては、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ア
ルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフ
ェラーゼ、グルコースオキシダーゼ、クロラムフェニコ
ールアセチルトランスフェラーゼ、およびそれらの変異
体が挙げられる。蛍光性タンパク質の具体例としては、
緑色蛍光タンパク質またはその変異体が挙げられる。好
ましくは、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質又
はその変異体をコードする遺伝子である。
【0012】本発明においてはレポーター遺伝子は、野
生型緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子のみなら
ず、緑色蛍光タンパク質の変異体をコードする遺伝子を
使用してもよい。緑色蛍光タンパク質の変異体とは、例
えば、(1)野生型の緑色蛍光タンパク質の有するアミ
ノ酸配列において1以上(例えば1〜20個、好ましく
は1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好ま
しくは1〜5個の)のアミノ酸が欠失、置換または付加
されたアミノ酸配列を有し、野生型の緑色蛍光タンパク
質と同等以上の蛍光を発することができるタンパク質、
あるいは(2)野生型の緑色蛍光タンパク質の有するア
ミノ酸配列と一定以上の相同性(例えば、60%以上、
好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さ
らに好ましくは90%以上)を有し、野生型の緑色蛍光
タンパク質と同等以上の蛍光を発することができるタン
パク質を挙げることができる。
【0013】上記のような緑色蛍光タンパク質の変異体
の変異体をコードする遺伝子を得る方法としては、化学
合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などの当分野で
既知の任意の方法を用いることができる。例えば、野生
型の緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を得て、こ
れを基にし変異遺伝子のDNAを得ることができる。変
異導入は任意の方法により行うことができる。例えば、
野生型緑色蛍光タンパク質遺伝子または野生型緑色蛍光
タンパク質遺伝子を含む組み換えDNAに対し、変異原
となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方
法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。
【0014】遺伝子工学的手法の一つである部位特異的
変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法
であることから有用であり、Molecular Cloning, A Lab
oratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor
Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Mol
ecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)等に
記載の方法に準じて行うことができる。
【0015】本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を作成
するためには、上記したようなターゲティングベクター
を所望の非ヒト哺乳動物(例えば、マウスなど)の胚性
幹細胞(ES細胞)に導入し、細胞ゲノムDNAのra
g1遺伝子がターゲティングベクター中の変異配列に相
同組換えされた細胞を選択する。このような遺伝子組換
え細胞の選択は、例えば、薬剤耐性遺伝子としてネオマ
イシン耐性遺伝子を使用した場合には、G418を細胞
培地に添加してネオマイシン耐性遺伝子を持たない非組
換え細胞を除去することによって行うことができる。選
択された遺伝子組換え細胞のrag1遺伝子は、そのコ
ード配列中にgfp遺伝子が挿入されている。
【0016】上記で得られたES細胞を、RAG1をコ
ードするDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプロ
ーブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいは
ターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッテ
ィングベクター作製に使用したRAG1をコードするD
NA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたP
CR法により解析することにより、所望の相同組換えを
起こした細胞を選別することができる。
【0017】相同組換え法等によりrag1遺伝子をノ
ックインさせる元のES細胞としては、例えば、既に樹
立された公知のES細胞を用いてもよく、また公知の方
法〔Robertson, E. T., Teratocarcinomas and Embryon
ic Stem Cells: A PracticalApproach (ed. E.J. Rober
tson), IBL Press, Oxford. など〕に準じて新しく樹立
した細胞でもよい。また、ES細胞を樹立する場合、一
般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以
外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いること
により効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常、
雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに好ま
しい。
【0018】次に、このレポーター遺伝子が挿入された
rag1遺伝子を有するES細胞を用いて本発明のノッ
クイン非ヒト哺乳動物を作製する。非ヒト哺乳動物胚幹
細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、rag
1遺伝子が不活性化された細胞株をクローニングし、そ
の細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動
物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠
させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された
哺乳動物は正常なrag1の遺伝子座をもつ細胞とレポ
ーター遺伝子が挿入されているrag1の遺伝子座をも
つ細胞の両方から構成されるキメラ哺乳動物である。該
キメラ哺乳動物の生殖細胞の一部が変異した遺伝子座を
もつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配する
ことにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に
変異を加えた遺伝子座をもつ細胞で構成された個体を、
例えば、毛色の判定等により選別することにより得られ
る。このようにして得られた個体は、通常、レポーター
遺伝子がノックインされているrag1遺伝子をヘテロ
に有する個体であり、このようなヘテロの個体同志を交
配し、それらの産仔からレポーター遺伝子がノックイン
されているrag1遺伝子をホモに有する個体を得るこ
とができる。卵細胞を使用する場合は、例えば公知のマ
イクロインジェクション法で、卵細胞核内にDNA溶液
を注入することによりターゲッティングベクターを染色
体内に導入したノックイン非ヒト哺乳動物を得ることが
でき、遺伝子相同組換えによりrag1遺伝子中にレポ
ーター遺伝子が挿入されているものを選択できる。
【0019】このようにしてrag1遺伝子がノックイ
ンされている個体は、交配により得られた哺乳動物個体
も該DNAがノックインされていることを確認した後、
通常の飼育環境で継代飼育を行なうことができる。さら
に、生殖系列の取得および保持についても常法に従えば
よい。即ち、ノックインDNAを保有する雌雄の哺乳動
物を交配することにより、該ノックインDNAを相同染
色体の両方に持つホモ接合型非ヒト哺乳動物を取得する
ことができる。本発明のノックインされたrag1遺伝
子を有する非ヒト哺乳動物細胞(好ましくは胚幹細胞)
は、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を作出する上
で、非常に有用である。
【0020】本発明のノックイン非ヒト哺乳動物では、
rag1遺伝子の発現の程度をレポーター遺伝子の発現
を追跡することで追跡することができる。例えば、レポ
ーター遺伝子として蛍光性タンパク質(例えば、緑色蛍
光タンパク質(GFP)やその変異体)をコードする遺伝
子を使用した場合には、蛍光強度を測定することにより
RAG1の発現の程度を評価することができる。蛍光強
度の測定は公知の定法に従って行うことができる。
【0021】あるいは、レポーター遺伝子として 酵素
タンパク質をコードする遺伝子を使用した場合にはその
酵素の基質を用いて染色することによりRAG1の発現
状態を観察することができる。例えば、rag1遺伝子
のDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダー
ゼ遺伝子(lacZ)で置換した場合、本来、RAG1
が発現する組織で、RAG1の代わりにβ−ガラクトシ
ダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−
クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X
−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる
試薬を用いて染色することにより、簡便にRAG1の哺
乳動物生体内における発現状態を観察することができ
る。具体的には、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物ま
たはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、
リン酸酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−ga
lを含む染色液で、約30分〜1時間反応させた後、組
織標本を1mMのEDTA/PBS溶液で洗浄すること
によって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色
を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコー
ドするmRNAを検出してもよい。
【0022】このような本発明のノックイン非ヒト哺乳
動物は、RAG1の発現を活性化または不活化する物質
をスクリーニングする上で極めて有用であり、rag1
遺伝子の発現の異常に起因する各種疾患の原因究明また
は治療薬の開発に大きく貢献することができる。また、
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物は、rag1遺伝子
の発現変化を伴う疾病のモデルとなり得るので、これら
の疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0023】(B)本発明のノックイン非ヒト哺乳動物
の利用方法 自己免疫疾患の病因・誘因の1つとしてウイルスあるい
は細菌感染が挙げられる。腹腔のB−1細胞ではRAG
1分子の発現が高く、また高頻度に抗体遺伝子の再構成
が誘導されている。腸管や泌尿生殖器系からの異物や病
原菌の侵入によってB−1細胞が活性化され、抗体遺伝
子の再構成が再び起こることが自己反応性クローン出現
の原因であると考えられる。この現象は自己免疫疾患発
症の機序と密接な関連をもつものと考えられ、この機序
の解明することにより自己免疫疾患の発症や進行の制御
に役立つものと期待される。
【0024】本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を用い
ることにより、腹腔内でのB−1細胞のRAG1の発現
誘導を高感度に検出することができ、インビボ及びイン
ビトロの両方でB−1細胞の自己反応性クローンへの転
化を調べることが可能である。即ち、本発明のノックイ
ン非ヒト哺乳動物を利用することにより、実際の自己反
応性B−1細胞出現の危険因子を同定し、自己免疫疾患
の制御及び治療の方法を確立することが可能になる。上
記のようにして作成したノックイン非ヒト哺乳動物は、
具体的には以下に述べる試験方法に用いることができ
る。
【0025】(1)腹腔B−1細胞でのRAG1分子の
出現と免疫グロブリン遺伝子再構成 本発明のRAG1/GFPヘテロマウスを用いた場合、
単一対立遺伝子への導入にもかかわらず、RAG1の発
現について十分検出可能なレベルのシグナルがGFPの
発現として得られる。このマウスの様々な週齢でB−1
細胞の出現とRAG1発現の頻度をクローンレベルで確
認することができる。B−1細胞の出現とRAG1発現
の頻度は、加齢とともに変化するのか、LPSの経口投
与や直接の注入で腹腔内の炎症を起こし、その際のB−
1細胞の活性化でRAG1の発現が亢進するのかを検証
する。これまでの報告では、B−2細胞と比較してB−
1細胞でははるかに高頻度の再構成が誘導されているの
で、RAG1発現B−1細胞をFACSで選別して細胞
内での再構成活性を検出することが可能である。
【0026】(2)腹腔B−1細胞でのRAG及び再構
成誘導の危険因子の解析 本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を用いて、RAG1
の発現がどのような刺激でおこるのかを調べることがで
きる。具体的には、例えば、本発明のノックインマウス
での刺激、ノックインマウス由来の脾臓B細胞でのイン
ビトロ刺激、ノックインマウス由来の腹腔B−1細胞で
のインビトロ刺激を検討する。従来報告されている抗原
刺激であるIL5又はLPSによる刺激が最も有効な刺
激であるかどうかを調べ、そのシグナルはどのような伝
達経路を介して行われているのかを明らかにする。ま
た、その伝達経路はどのようなサイトカインにより制御
されているのかを明らかにする。これらの結果に基づい
て、哺乳動物での腹腔B−1細胞でのRAG1誘導機構
が解明され、その制御手段の確立が可能になる。
【0027】(3)自己免疫疾患哺乳動物における腹腔
B−1細胞のRAG1発現亢進の分子機序の解析 NZBマウスではインビボで腹腔B−1細胞でのRAG
1発現上昇が見られると報告されている。バッククロス
によりNZBマウスでの発現を検証し、この場合に、ど
のような細胞分化のステージから発現上昇が起こるの
か、並びにその頻度を解明する。特には、加齢による変
化を解析する。また、マウスを様々な飼育条件で飼育さ
せ、腹腔B−1細胞の出現とRAG1発現を追跡して調
べる。さらに、多様な治療薬やサイトカインなどを投与
して、RAG1誘導の制御の効率的な指針を示すための
基礎的解析及び方法論の確立を行う。
【0028】上記した通り、本発明のノックイン非ヒト
哺乳動物は、自己免疫疾患の原因の解明やその予防法や
治療法を確立するための実験動物として有用である。以
下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、
本発明は実施例によって限定されることはない。
【0029】
【実施例】1.材料と方法 (a)ターゲッティングベクターの構築 rag1遺伝子を含む9.0kbのClaI-ClaIゲノムD
NA断片をrag1遺伝子を保持するゲノムEMBL3
SP6/T7ファージクローンから単離し、pBluescrip
t II KS(-)(Stratagene, La Jolla, CA)にサブクロー
ニングした。ウサギβ−グロビンポリA遺伝子を含む
0.9kbのEcoRI/StuI断片をpCXN2
(Yagi,T他、1993, Anal.Biochem.214, 77)から単離
し、pEGFP(GFP)(CLONTECH, Heidelberg, Ge
rmany)のEcoRI-StuI部位にライゲートした。rag1
開始コドン付近の配列は、5’−GCTTAGCCAA
CATGG−3’(配列番号1)である。rag1遺伝
子の5’フランキング領域のEspI部位(EspI-CAACATG
G)を使用して、GFPの5’配列の新たに生成したEsp
I部位に連結した。先ず、pBluescript II KS(-)のBamHI
−EcoRI部位(pBluescriptアダプターと命名)に新たな
EspI-CA-Ncol配列を調製し、そこにNcoI-HindIII部位を
用いてNcoI-HindIIIpEGFPポリA断片をライゲーシ
ョンした。次に、1.3kbのEspI-ApaIGFP断片を
取得し、内因性のrag1EspI部位とpBluescript IIの
ApaI部位を有するrag1遺伝子中にライゲーションし
た。rag1遺伝子のEspIからATGコドンまでの4塩基
の配列(CAAC)をGFPの4塩基の配列(CAC
C)と置換し、非コード領域の5’フランキング配列内
に1個のヌクレオチドの相違を生じさせた。rag1遺
伝子の5’−フランキング領域(長腕)、GFP遺伝子
のコード領域、neo遺伝子カセット、rag1遺伝子
の3’フランキング領域(短腕)を順番に含む構築物を
pMCDT−Aネガティブ選択ベクターに挿入した。
【0030】(b)トランスフェクション及びGFPノ
ックインESクローンのスクリーニング TT2細胞をrag1/gfpノックイン胚幹(ES)
細胞として使用した(Yagi,T他、1993, Anal.Biochem.2
14, 77)。TT2細胞を常法により培養し、トリプシン
で処理し、HBS(25mMのHEPES(pH7.0
5);137mMのNaCl;5mMのKCl、0.7
mMのNa2HPO4;6mMのデキストロース)中に
2.5×107細胞/mlの濃度になるように再懸濁し
た。細胞懸濁物(0.4ml)を、Bio−Rad遺伝
子パルサー(250V、960μF)を用いて12nM
のSalIで線状化したDNA(上記(a)で構築したター
ゲッティングベクター)と一緒に室温で0.4cmのパ
ッチ長を有するキュベット中で室温にてエレクトロポレ
ートした。細胞を10分間放置してから、9cm皿に3
×106細胞をプレーティングした。G418(正味量
150〜200〜200μg/ml、GIBCO BRL、Rockv
ille, MD)を36〜48時間後に添加し、9〜10日間
選択した。rag1/gfpESクローンは、フォワー
ドプライマー(neo1:5’−TCGTGCTTTA
CGGTATCGCCGCTCCCGATT−3’)
(配列番号2)及びリバースプライマー(コントロール
2;5’−CTGGCCTCACTAAACGGCTC
AGGCAATCTC−3’)(配列番号3)を用いる
PCRによって同定した。陽性ESクローンはさらに精
製したゲノムDNAを用いたサザンブロット分析により
調べた。DNA試料はBamHI及びNcoIで二重切断し、ア
ガロースゲル電気泳動で分離した。ナイロン膜にトラン
スファーした後、ブロットをAMプローブ又は3UTプ
ローブの何れかとハイブリダイズさせた。AM及び3U
Tプローブは各々、1933bp〜3115bpの領域
及び3489bp〜4706bpの領域に対応するra
g1cDNAから調製した。DNA断片はAlkPhos DIRE
CT(Amersham Pharmacia Biotech, Buckinghamshire, E
ngland)を取扱説明書に従って使用して可視化した。
【0031】(c)EGFPノックインマウスの樹立 一つの変異rag1対立遺伝子を含む4種のESクロー
ンをICRマウスの胚盤胞に注入した。雄キメラマウス
をC57BL/6雌とつがいにし、ESバックグラウン
ドの胚芽系列の伝達を子孫の毛色で判定した。先ず、3
系統のF1マウスを得た。F1マウス同士を交配するこ
とにより、F2マウスを作成した。ヘテロ接合又はホモ
接合の変異を有する子孫を尾部ゲノムDNAを用いたサ
ザンブロット分析により判定した。F2子孫の遺伝子型
は、フォワードプライマー(RAG1−5−2;5’−
AGGTAGCTTAGCCAACATGG−3’)
(配列番号4)及びリバースプライマーR6及びGFP
3(Han,S.他, 1996, Science 274, 2094)を用いてゲ
ノムPCRによりスクリーニングした。
【0032】(d)フローサイトメトリー分析 マウス(生後の週齢は様々)の骨髄及び脾臓由来の単一
細胞懸濁物を定法に従って調製した。表面染色は以下の
モノクローナル抗体を用いて行った;PE−抗マウスB
220(RA3−6B2、Pharmingen, San Diego, C
A);ビオチン標識−抗−mCD43(S7);ビオチ
ン標識−抗−マウスlgM(R6−60.2,Pharming
en);ビオチン標識−抗−マウスCD5(53−7.3
(Pharmingen)。ストレプトアビジン−RED670
(GIBCO BRL, Rockville, MD)をビオチン化抗体と組み
合わせて二次抗体として使用した。データはFACSc
anで回収し、Cell Quest Softwareを用いて解析した
(Becton Dickinson, San Jose,CA)。
【0033】(e)全RNAの調製及びRT(逆転写)
−PCR 骨髄のB220陽性細胞を磁気細胞分離機MACS(Mi
ltenyi Biotec, Auburn, CA)を用いて単離した。マイ
クロビーズをモノクローナル抗体RA3−6B2と混合
した。B220陽性細胞をFACSvantage(Be
cton Dickinson)によりGFP陽性または陰性のフラク
ションに分別した。Thy1.2Dynabeads
(登録商標)(DYNAL(登録商標), Oslo, Norwa
y)によりT細胞を除去した後、細胞をPE−B220
で染色し、GFP陽性又は陰性のフラクションに分別し
た。全RNAをRneasy Mini Kit(QIAGEN, Valencia, C
A)を用いて分別した細胞(0.4〜2.0×105)か
ら調製し、逆転写をGeneAmp(PE Applied Biosystems,
Foster City, CA)を用いて行った。RT−PCRのた
めに、cDNAを、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(P
E Applied Biosystems)を用いて、95℃で9分間、9
4℃で1.5分間、60℃で1.5分間及び72℃で2
分間の1サイクル、続いて、94℃で45秒間、60℃
で45秒間及び72℃で45秒間の35、40又は45
サイクルで増幅した。cDNAを、rag1遺伝子につ
いてはセンスF3及びアンチセンスR6(Han,S.他, 19
96, Science 274, 2094)、gfp遺伝子についてはセ
ンスF3及びアンチセンス(GFP3;5’−GCTC
AGGTAGTGGTTGTCGG−3’)(配列番号
5)、hprt遺伝子についてはセンス(HPRT5;
5’−GCTGGTGAAAAGGACCTC−3’)
(配列番号6)およびアンチセンス(HPRT3;5’
−CACAGGACTAGAACACCTGC−3’)
(配列番号7)により増幅した。RT−PCR産物を
1.5%アガロースゲルで分離し、rag1プラスミド
DNA又は標的構築物から増幅した同種のcDNAとハ
イブリダイズさせた。
【0034】(f)ライゲーション仲介PCR(LM−
PCR) LM−PCRのために、分別した細胞(0.5〜1×1
6細胞)から定法に従いゲノムDNAをSDS/プロ
テアーゼ消化及びフェノール/クロロホルム抽出により
粗精製した。DNAを定法に従い20pMでBWリンカ
ーにライゲーションした(Schlissel,M.他、1993, Gene
s Dev. 7, 2520)。PCRはAmpliTaq Gold DNAポリメ
ラーゼを使用して行った。PCRの第一工程では、リン
カープライマーBW−1H及びMuO2を使用し、続い
てネスティッドPCRではBW−1H及びMuOを使用
した。試料を、95℃で9分間、94℃で1.5分間、
66℃で1.5分間及び72℃で2分間の1サイクル、
続いて、94℃で40秒間、66℃で40秒間及び72
℃で1分間の20サイクル、そして最後に72℃で10
分間の伸長反応で増幅した。1μlのアリコートを第2
サイクルで追加の40サイクルのネスティッドPCRの
ために使用した。PCR試料をアガロースゲル上で電気
泳動により分離し、ナイロン膜に移し、それを、IgM
遺伝子のマウスゲノム領域を有するプラスミドDNAを
用いてフォワードプライマー(LMPCR1;5’−A
TCCTACAGATGGGCCC−3’)(配列番号
8)及びリバースプライマー(LMPCR2;5’−C
TCCACATCCTGCCTTA−3’)(配列番号
9)のPCR産物とハイブリダイズさせた。プローブは
プライマーMuO及びJH1の間の内部配列にハイブリ
ダイズする。PCR条件はCD14特異的プライマーを
用いてモニターした。
【0035】2.結果と考察 (A)rag1遺伝子にGFPをノックインさせたマウ
スの作出 rag1遺伝子の1つの内因性対立遺伝子のコード領域
中にgfp遺伝子をノックインさせると(図1)、リン
パ系列細胞で同一の組織特異性パターンおよび細胞周期
段階依存性パターンにおいてGFPとRAG1の両方を
発現する可能性がある。PCRによりスクリーニングし
た2系統のマウスをサザン分析により確認した(図
2)。3UTプローブとAMプローブはNcoI/BamHI消
化による6.1kbのバンドとともに観察されたように
rag1遺伝子中への適切な挿入を示した。野生型DN
Aは8.2kbのバンド上にrag1遺伝子を示した。
PCRによりrag1遺伝子のコード領域へのgfp遺
伝子の挿入を確認した(図1C)。内因性515bpバ
ンドはホモ接合gfp/gfpマウスでは検出されなか
ったが、ヘテロ接合マウスでは内因性515bpのバン
ドと標的化された626bpの両方を示した。RT−P
CRによりホモ接合gfp/gfpマウスがrag1遺
伝子のmRNAを発現しない代りにgfp遺伝子のmR
NAを発現することを確認した(図1D)。従って、こ
れらのマウス系統はrag1が欠損しており、gfp遺
伝子で置き換わっていることが実証された。
【0036】B220+細胞はプロ−B(G2;B22
+CD43+)、プレ−B(G3;B220+CD4
-)、及び未成熟又は再循環B細胞(G4;B220
highCD43-)から構成される(図2A)。ヘテロ接
合rag1+/gfp+マウスの骨髄は正常の比率のB
細胞発生[G2(20%)、G3(50%)及びG4
(20%)]を示している。GFP陽性細胞は1.39
%(G1)、65.63%(G2)、89.68%(G
3)及び55.25%(G4)である(図2A)。次
に、GFP陽性細胞がIg遺伝子の再構成を仲介する能
力について調べた。ヘテロ接合のrag1+/gfp+
ウスのB220+細胞をBM+及びBM-としてGFPに
より分離した。内因性rag1mRNAはGFP+細胞
で多量に検出された(図2B)。リコンビナーゼ活性は
GFP+細胞及びGFP-細胞のLM−PCRにより測定
した(図2C)。DJ再構成の発生を示すPCR産物は
様々なサイズでGFP+細胞で検出された。BM-細胞お
よびGFP-B220+脾臓細胞はシグナルを示さなかっ
た。野生型同腹子由来の骨髄細胞はDJ再構成の単一バ
ンドを示したが、相同的に置換された(gfp+/gf
+)マウスは再構成を示さなかった。これらの結果
は、GFP発現が内因性rag1プロモーターの下で制
御されていることを示し、GFP-細胞はIg遺伝子再
構成を経ていることが示唆される。
【0037】(B)腹腔B−1細胞は正常マウスでRA
G1シグナルを発現しない B−1細胞におけるRAG1の発現を調べた。腹腔B細
胞は2種類の細胞:B220lowIgMhighCD5+(B
−1a又はB−1)細胞及びB220highIgMlow
D5-(B−2)細胞から構成される。RAG1/GF
PはB−2細胞で検出される(図3A)。B−2細胞
は、骨髄から新たに再構成されたB細胞移入物を多分継
続的に供給され、それは検出レベル以下でGFPタンパ
ク質崩壊以前に検出される。これらの新たに再集団を構
成する細胞は腹腔におけるB−2プールの約15〜45
%を構成する。B−2集団におけるGFP+細胞はra
g1又はgfp遺伝子の転写物を発現せず(データは示
さず)、RAG1/GFPのシグナルは、RT−PCR
による測定よりも新たに生成したB細胞をより感度よく
追跡できる。B−1細胞中にはRAG1/GFP+細胞
が存在しない(1.5%未満)。これは、マウスが新生
初期段階にあり、検出限界未満までGFPタンパク質を
崩壊するのに十分な期間に渡り腹腔におけるrag1遺
伝子の発現なしに維持される場合に、B−1プールが多
分形成されるという考え方と一致する。マウスIgVH
及びIgVL(Qin,X他、Nussenzweig. 1999. Nature 39
7:355)のイディオタイプ陰性B−1細胞においてra
g1mRNAが増加していることが実証されているの
で、非常に少数のB−1細胞がRAG1/GFP発現を
示すという知見は意外である。B−1細胞の働きを制御
するために同一の抗体を使用した結果、細胞はCD5を
も示し、6週齢のマウス由来の腹腔B−1細胞はSPF
条件下で非常に低レベルのRAG1を示した(図3
A)。B−1細胞を自己補充によりプールで維持し、腹
腔ではリコンビナーゼ活性は減少していた。
【0038】老齢マウス由来のB−1細胞は、新たに生
成したB−1細胞の再集団化又はGC領域で見られるよ
うな二次的Ig遺伝子再構成の活性化の何れかにより、
B−1プールの加齢の間にRAG1の誘導を示している
可能性がある(Han,S.,他、Science 274:2094、及びHik
ida,M.,他、Science 274:2092)。そこで、B−1細胞
におけるRAG1/GFP発現の制御に及ぼす加齢の影
響を評価した。6月齢のマウス由来の腹腔B−1細胞は
RAG1/GFPの誘導を示さなかった(図3B)。B
−2プールにおけるRAG1/GFP発現は若年マウス
では33.15%と検出されるが、RAG1/GFP発
現は若年マウス及び老年マウスの両方の腹腔B−1細胞
では存在しない。RT−PCRではB−1細胞中にはr
ag1転写物もrag2転写物も検出されなかった。L
PSの投与により腹腔B−1細胞は活性化し、トランス
ジェニックマウスモデルにおける自己抗体産生又は自己
免疫症状の悪化が誘導された(Murakami, M.,他、J.Ex
p.Med. 180:111)。LPSの経口投与により腹腔細胞は
コントロールマウスの約56%増加した(3.20から
4.98)。しかしながら、B−1細胞でRAG1/G
FP発現の増加は検出されなかった(表1)。さらに、
腹腔への直接投与によってRAG1/GFP発現に対す
るLPSの作用を調べた。LPSによる刺激はインビボ
で腹腔B−1細胞におけるRAG1/GFPの再発現を
誘導しなかったが、B−2集団におけるGFP+細胞の
わずかな増加が検出された(LPSの経口投与で17.
48%から20.04%、インビボ腹腔内投与で10.
85%から12.16%)。これらの結果は、Ig遺伝
子組換えは正常マウスでは抑制されているので、自己補
充により維持される腹腔B−1細胞プールが抗体特異性
において多分安定であることを示唆している。
【0039】
【表1】
【0040】表1の脚注: a: LPSの経口投与及び腹腔内投与は既報の通り行
った(Murakami,M.,他、J.Exp.Med.180:111)。効果は
PBS投与のコントロールと比較して腹膜細胞の増加に
より各マウスで確認した。結果は、平均と1×S.E.
(ある場合とない場合が)で示した。RAG1/GFP
陽性細胞の百分率を材料と方法に記載したように腹腔B
−1細胞とB−2細胞をゲートした後に示す。 b: 腹腔から回収された細胞の数(×106
【0041】gfpトランスジェニック及びノックイン
マウスを用いて成熟B細胞におけるRAG2発現の同様
の追跡実験が報告されている(Yu,W.,他、Nature 400:6
82、Yu,W.,他、Science 285:1080、及びMonroe,R.,他、
Immunity 11:201)。これらマウスは、RAG2が脾臓
の未成熟B細胞ではより低いレベルで見られることを示
したが、抗原投与によりRAG2の再発現を容易には誘
導されない。様々なB細胞活性化剤を用いてインビトロ
でB−1細胞を刺激した後にRAG1/GFPを調べた
が、試みは全て検出レベルでのRAG1の誘導について
失敗に終わった(データは示さず)。これらの結果は、
RAGの頻繁な発現及びT依存性Agにより刺激による
GCにおける二次的Ig遺伝子再構成の誘導に関する最
近の知見とは一致しない(Han,S.,他、Science 274:209
4及びHikida,M.,他、Science 274:2092)。
【0042】rag1/gfpノックインマウスは、シ
ングルコピーのrag1−プロモーターがRAG1発現
B−1細胞をインビボでマークするのに十分なGFPの
発現を仲介することを実証した。これらの結果は、腹腔
B−1細胞におけるrag1遺伝子のアップレギュレー
ションに関する以前の報告とは対照的な重要な情報であ
る(Qin,X.F.,他、Nature 397:355)。
【0043】
【発明の効果】本発明により、自己免疫マウスのB−1
細胞の抗体特異性獲得の機構を解析するのに有用なノッ
クイン非ヒト哺乳動物が提供される。本発明のノックイ
ン非ヒト哺乳動物は、内因性rag1遺伝子の発現と同
様に導入遺伝子を発現することができ、またその検出の
感度が高い。本発明のノックイン非ヒト哺乳動物では、
(1)GFPの発現が安定で検出するまでの蓄積効果と
して十分な発現を維持できること、並びに(2)導入遺
伝子の5’プロモーター領域には1ヌクレオチドだけの
変異でベクターを構築することができたために、発現レ
ベルの維持を達成できていると考えられる。
【0044】また、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物
が得られる以前は、末梢リンパ組織でのRAG1及びR
AG2の発現は、抗体による染色とRT−PCR法で調
べられていた。しかし、本発明のノックインマウスでは
これらの従来の知見とは異なる知見が得られている。例
えば、従来の知見によれば、マウスを免疫すると脾臓に
胚中心が形成され、その領域では特にRAG1、RAG
2の発現が上昇し、免疫グロブリン遺伝子の再構成が再
び起こるということが定説であった。しかし、本発明の
ノックインマウスでは、このようなRAG1の胚中心領
域での発現上昇は観察されない。本発明のノックインマ
ウスから得られる結果は、胚中心領域でのRAG1の発
現上昇は変化しないという知見であり、従来の知見の見
直しが必要である。
【0045】また、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物
の細胞の分化及び発達はヘテロマウスでは正常であるこ
とが、従来のノックアウトマウスで十分に確認されてい
る。本発明のノックイン非ヒト哺乳動物では、ホモ動物
を作成することもできる。ホモ動物を使用することで、
細胞の追跡比較をより詳細に示すことも可能である。本
発明のノックイン非ヒト哺乳動物を、その他の遺伝的背
景の異なるマウス、例えば、自己免疫疾患マウスである
MRL/lpr、New Zealand Black(NZB)、New Z
ealand White(NZW)、BXSBとのバッククロスを
行うことによりこれらのマウスのRAG1誘導の異常を
早期に検出することが可能になる。
【0046】さらにRAG1はRAG2とは異なり、脳
神経細胞での発現が報告されている。本発明のRAG1
/GFPノックインマウスでは、脳神経細胞での発現を
小脳の神経細胞を用いて検出することができ、その発現
の程度はかなり低レベルであった。神経細胞の単離を行
い発現をフローサイトメトリーで調べると発現細胞は検
出できるが、その頻度は低く、これまで脳神経細胞での
RAG1遺伝子の機能が進展していない原因が明らかに
なった。本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を用いるこ
とにより、高感度にRAG1発現神経細胞を検出するこ
とが可能になる。
【0047】
【配列表】SEQUENCE LISTING <110> Sumitomo Electric Industries,Ltd. <120> A knock in non-human mammalian animal <130> 99416MA <160> 9
【0048】<210> 1 <211> 15 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> a sequence around the initiation codon of ra
g 1 gene <400> 1 gcttagccaa catgg 15
【0049】<210> 2 <211> 30 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 2 tcgtgcttta cggtatcgcc gctcccgatt 30
【0050】<210> 3 <211> 30 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 3 ctggcctcac taaacggctc aggcaatctc 30
【0051】<210> 4 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 4 aggtagctta gccaacatgg 20
【0052】<210> 5 <211> 19 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 5 gctcaggtag ggttgtcgg 19
【0053】<210> 6 <211> 18 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 6 gctggtgaaa aggacctc 18
【0054】<210> 7 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 7 cacaggacta gaacacctgc 20
【0055】<210> 8 <211> 17 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 8 atcctacaga tgggccc 17
【0056】<210> 9 <211> 17 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 9 ctccacatcc tgcctta 17
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はrag1/gfpノックインマウスの作
製を示す。図1(A)ではターゲティングベクターを、
rag1ローカスと相同組換えした対立遺伝子と比較す
る。DTAは選択用のジフテリア毒素Aである。A+T
はG−CSFのmRNA脱安定化配列であり、pauは
MVMの停止シグナルを示す(Yagi,T.,他、Anal.Bioch
em.214:77)。斜線の領域はRAG1コード領域であ
る。PCRは、neo1:5’−TCGTGCTTTA
CGGTATCGCCGCTCCCGATT−3’(配
列番号2)及びコントロール2;5’−CTGGCCT
CACTAAACGGCTCAGGCAATCTC−
3’(配列番号3)を用いて行った。図1(B)は、ゲ
ノムDNAのサザン分析を示す。DNAをNcoI及びBamH
Iで消化し、AM及び3UTとハイブリダイズさせた。
プローブは野生型の8.2kbと標的化された対立遺伝
子の6.1kbの位置にバンドを示す。図1(C)は、
マウス尾DNAのPCRを示す。ゲノムDNAをRAG
1−5−2、R6及びGFP3のプライマーを用いて増
幅した。正常遺伝子及び標的化対立遺伝子は、RAG1
−5−2及びR6の組み合わせ(515bp)又はRA
G1−5−2及びGFP3(626bp)の組み合わせ
の何れかで検出された。図1(D)は、骨髄を用いたR
T−PCRを示す。RNAをcDNAに転写に、rag
1、gfp及びhprtのプライマーで増幅した。
【図2】図2はRAG1及びDNA破断のためのマーカ
ーとしてのGFP発現を示す。図2(A)において、G
FPは、B220及びCD43の発現を伴う骨髄細胞で
検出される。B220陰性細胞はGFPを発現しない。
G3はG2よりも高いレベルのGFPを発現する。G4
の半分はGFP陰性であった。図2(B)において、r
ag1及びgfpのmRNAを確認した。骨髄又は脾臓
のGFP陽性細胞から単離した全RNAをRT−PCR
により評価した。コントロールHPRTはサイクルに比
例して増加した。細胞の集団は以下の通りである:GF
+B220+骨髄細胞(BM+)、GFP-B220+
髄細胞(BM-)、GFP-B220+脾臓細胞(SP
-)。図2(C)は骨髄及び脾臓細胞におけるシグナ
ル破断のLM−PCRを示す。DNAは、GFP+B2
20+骨髄細胞(レーン1)、GFP-骨髄細胞(レーン
2)、GFP-B220+脾臓細胞(レーン3)、野生型
マウス骨髄細胞(レーン4)、ホモ接合型ノックインマ
ウス骨髄細胞(レーン5)から精製した。
【図3】図3は、腹腔におけるB−1又はB−2細胞の
GFP発現を示す。図3(A)では、腹腔細胞は若年マ
ウス(4〜8週齢)から単離し、B220、IgM及び
CD5に対するモノクローナル抗体で染色した。B−1
及びB−2は、B−1細胞としてはIgMhighB220
low又はCD5+B220lowの発現でゲートし、B−2
細胞としてはIgMlowB220high又はCD5-B22
hi ghの発現でゲートした。ゲートされた細胞のGFP
を示す。数字はGFP陽性細胞の百分率を示す。図3
(B)では、若年又は老年マウスからの腹腔B−1及び
B−2細胞におけるGFP+細胞を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12R 1:91) C12N 5/00 B (C12Q 1/02 15/00 ZNAA C12R 1:91) C12R 1:91) (72)発明者 五十嵐 英哉 熊本県熊本市本荘2−2−1 熊本大学医 学部免疫学講座内 (72)発明者 大村 孝文 熊本県熊本市本荘2−2−1 熊本大学医 学部免疫学講座内 (72)発明者 相澤 慎一 熊本県熊本市本荘2−2−1 熊本大学医 学部附属遺伝発生医学研究施設形態発生部 門内 (72)発明者 清田 久美子 熊本県熊本市本荘2−2−1 熊本大学医 学部免疫学講座内 Fターム(参考) 4B024 AA11 BA80 CA04 DA02 EA04 FA20 GA11 HA11 HA15 HA20 4B063 QA01 QQ08 QQ79 QQ96 QR66 QS33 QX02 4B065 AA90X AA91X AB01 AC10 AC20 BA03 CA24 CA46

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 rag1遺伝子中にレポーター遺伝子が
    挿入されてなる導入遺伝子を有する、ノックイン非ヒト
    哺乳動物。
  2. 【請求項2】 レポーター遺伝子が緑色蛍光タンパク質
    (GFP)又はその変異体をコードする遺伝子である、
    請求項1に記載のノックイン非ヒト哺乳動物。
  3. 【請求項3】 導入遺伝子が腹腔B−1細胞よりも腹腔
    B−2細胞で高発現している、請求項1又は2に記載の
    ノックイン非ヒト哺乳動物。
  4. 【請求項4】 非ヒト哺乳動物が、マウス、ラット、モ
    ルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、
    ブタ、ヤギ、ウシおよびサルから成る群から選ばれる非
    ヒト哺乳動物である、請求項1から3の何れか1項に記
    載のノックイン非ヒト哺乳動物。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載のノ
    ックイン非ヒト哺乳動物の作製に用いるための、rag
    1遺伝子中にレポーター遺伝子が挿入されてなる導入遺
    伝子を導入した非ヒト哺乳動物の胚性幹細胞。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれか1項に記載のノ
    ックイン非ヒト哺乳動物の細胞。
  7. 【請求項7】 細胞が、胚性幹細胞、卵および精子から
    なる群から選ばれる細胞である、請求項6に記載の細
    胞。
  8. 【請求項8】 請求項1〜4のいずれか1項に記載のノ
    ックイン非ヒト哺乳動物の細胞の核。
  9. 【請求項9】 請求項1〜4のいずれか1項に記載のノ
    ックイン非ヒト哺乳動物、あるいは該動物の組織、器官
    または細胞を用いて、レポーター遺伝子の発現を検出す
    ることにより細胞内におけるrag1の発現状態を分析
    する方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の
    ノックイン非ヒト哺乳動物、或いは該動物の組織、器官
    または細胞に試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の
    発現を検出することを特徴とする、RAG1タンパク質
    の発現を調節する化合物のスクリーニング方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006009297A1 (ja) * 2004-07-20 2006-01-26 Yasumitsu Nagao Es細胞を用いたキメラ作製

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