JP2010516258A - C反応性タンパク質(crp)ノックアウトマウス - Google Patents

C反応性タンパク質(crp)ノックアウトマウス Download PDF

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Abstract

本発明は、C反応性タンパク質(CRP)をコードする遺伝子における変異を有するトランスジェニック非ヒト動物に関する。好ましくは、本発明は、ホモ接合型CRP欠損マウスを含む動物およびこのような動物を作製する技術に関する。本発明はまた、このような動物由来の器官、組織、細胞、細胞株および細胞下画分にも関する。完全または組織特異的CRPノックアウト動物を作製する技術もまた記載されている。本発明は、さらに、in vivoまたはex vivoでのCRPタンパク質の役割、特に、炎症経路およびヒト疾患の病因におけるその役割の研究のためのこのようなノックアウト動物の使用にも関する。

Description

関連出願の相互参照
本願は、先に出願された米国仮出願第60/858,858号(出願日:2007年1月20日)に基づく利益を主張する(参照によりその全体が本願に組み込まれる)。
本発明は、C反応性タンパク質(CRP)またはそのホモログをコードする遺伝子における変異、好ましくは生殖系列起源の変異を有するトランスジェニック非ヒト動物に関する。
本明細書に記載のCRPタンパク質またはポリペプチドは、ペントラキシンタンパク質ファミリーのメンバーである。これをCペプチドまたはタンパク質Cと混同してはならない。CRPは、カルシウム依存性リガンド結合血漿タンパク質ファミリーのメンバーであり、ヒトにおけるそのもう1つのメンバーは、血清アミロイドP成分(SAP)である。ヒトCRP分子(Mr115,135)は、それぞれが206アミノ酸残基を含む、5つの同一の非グリコシル化ポリペプチドサブユニットからなる。これらのプロトマーは、環状五量体対称を有する環状配置で非共有結合的に結合している。ヒトCRPの結晶構造により、五量体構造が明らかとなり、この高度に保存された血漿タンパク質が生物学的役割を発揮する分子機構への洞察を与えている(Shrive et al., Nat Structural Biol., vol. 3, pp. 346-354, 1996)。
CRPをコードする遺伝子は、いくつかの動物種間で遺伝学的によく保存されていることが見出されている。限定するものではないが、これらには以下を含む:
(A)ゼノパス・レービス(Xenopus laevis)(アフリカツメガエル)CRPタンパク質:238aa(GI:295526)
(B)マス・マスクルス(Mus musculus)(ハツカネズミ)CRPタンパク質:225aa(GI:295904)
(C)カビア(Cavia)(モルモット)CRPタンパク質:225aa(GI:300221)
(D)ラタス・ノルベギカス(Rattus norvegicus)(ノルウェーラット)CRPタンパク質:230aa(GI:203592)
(E)オリクトラガス・クニクラス(Oryctolagus cuniculus)(ウサギ)CRPタンパク質:225aa(GI:986939)
(F)サス・スクロファ(Sus scrofa)(ブタ)CRPタンパク質:222aa(GI:55742770)
(G)ホモ・サピエンス(Homo sapiens)(ヒト)CRPタンパク質:224aa(GI:30224)
CRP遺伝子のホモログは、限定するものではないが、上記の血清アミロイドPタンパク質(APCS)を含む。CRPとAPCSは、共にペントラキシンタンパク質ファミリーに属し、非共有結合的に結合した5つのサブユニットの特有な配置を含む。
ヒトCRP遺伝子は染色体1q21-q23にあり、おおよそ1.9kbにまたがり、単一のイントロンにより分断された2つのエクソンを含む。エクソン1は、シグナルペプチドおよび、成熟タンパク質の最初の2つのアミノ酸をコードする。これにGTリピート配列を含む278ヌクレオチド長のイントロンが続く。エクソン2は、残りの204アミノ酸および、それに続く終止コドンをコードする。
CRPは、体内で生じる炎症過程においてそのレベルが急激に上昇するため、急性期タンパク質クラスのメンバーである。この上昇は、IL-6の血漿中濃度の上昇によるものであり、IL-6は、マクロファージ、内皮細胞およびT細胞ばかりでなく、脂肪細胞によっても産生される。CRPは、微生物に存在するホスホリルコリンに結合する。これは、外来および損傷細胞への補体結合を助けると考えられており、CRPに対する受容体を発現しているマクロファージによる食作用を促進する。これはまた、感染に対する初期防御系として、自然免疫における重要な役割を果たしていると考えられている。
CRPはまた、補体カスケードの活性化による炎症反応の開始に関与すると考えられている。CRPは、ヒトにおける感染に対する自然免疫反応に関与していることが示されており、炎症性疾患および自己免疫疾患の根底にも関与しているとされている。最近、CRPは心血管疾患と関連づけられている。CRPベースラインレベルが、急性心筋梗塞などの冠動脈事象のレベル上昇と相関していることを示唆する疫学的根拠が存在する(Sabatine et al., Circulation 2007;115;1528-1536; Ridker et al., Tex Heart Inst J. 2005; 32(3): 384-386)。
CRPの薬理学的阻害剤および適切なげっ歯類モデルを共に欠くことから、心血管疾患における因果的役割をCRPに割り振ることには問題があった。ヒトCRPを過剰発現するマウスは設計されてはいるが(Danenberg et al., Circulation. 2003;108:512)、現在までのところ、CRP機能を失ったマウス系統の報告はない。
本発明は、内因性CRP遺伝子の発現が欠損した動物ならびに、例えばノックアウト技術を含む、このような動物の作製方法を提供する。
ルーチン分析法を用いることにより、本発明のCRPノックアウトマウスは、CRP mRNAおよびCRPタンパク質を共に欠損していることが確認された。表現型に関しては、ホモ接合型ノックアウト動物の免疫学的表現型は、野生型マウスとは少なくとも2つのレベルで異なっていることが見出された。第1に、本発明のホモ接合型ノックアウトマウスは、in vivoでの、LPS刺激によるTNFαおよびIL-10の産生の低下を示した。このように、本発明のCRPノックアウトマウスは、これらのサイトカインのレベルを上昇させる薬剤をスクリーニングするのに有用である。さらにまた、このように観察されるCRP欠損マウスにおけるサイトカイン産生の低下は、CRPが単に炎症のマーカーであるということだけではなく、LPSにより引き起こされる炎症反応を調節するために作用していることを示唆している。
第2に、本発明のCRPノックアウトマウスを用いた研究は、ホモ接合型ノックアウト動物が、抗CD3抗体に応答したINFγおよびIL-2産生の低下を特徴とすることも明らかにした。このようなサイトカイン産生の低下は、SEBまたはConAを用いるマイトジェン刺激後には観察されなかった。このことは、CRPが、恐らくT細胞受容体が誘導するサイトカイン産生をもたらすと思われるT細胞活性化に特定の役割を果たしていることを示唆している。CRPがT細胞応答に関与しているという観察は、予期せぬことであった。T細胞成熟に影響をおよぼすおよび/または間接的にT細胞/単球相互作用をもたらすことにより、CRPはこれらの効果を媒介する可能性がある。さらに、これらの効果は、T細胞シグナル伝達のモジュレーションにより媒介されることができる。
TNP-ficollでの免疫により誘導されるT細胞非依存性IgM抗体産生の増加により、体液性免疫反応におけるCRPの関与が明らかとなった。この観察は、ヒトCRPを過剰発現し、TNP-ficoll免疫後のIgM抗体産生の低下を示すヒトCRPトランスジェニックマウスからのデータにより支持される。これらのCRPノックアウトマウスにおいて観察されるサイトカイン産生への影響は、たとえヒトの場合よりも刺激によるCRPレベルがずっと低いにしても、CRPは炎症反応を実際に調節できることを示している。これらの所見は、CRP活性のモジュレーションが、アテローム性動脈硬化症などの根底にある、炎症性要素を有する心血管疾患の治療に有益であり得ることを示唆している。
従って、本発明は、in vivoでのCRP遺伝子機能の研究のための有益な手段として役立つノックアウト動物を提供する。このような機能の代表例は、限定するものではないが、自然免疫におけるCRPの役割、補体活性化ばかりでなく、自己免疫疾患、心血管疾患および他の炎症性疾患などの疾患の病因における炎症反応をも含む。このような炎症性疾患は、限定するものではないが、炎症性腸疾患(IBD)、コラーゲン誘発関節炎(CIA)、急性炎症、喘息などを含むことができる。
好ましくは、本発明の動物は哺乳動物である。これらは、限定するものではないが、上記のマウス、モルモット、ラット、ウサギ、ブタまたはヤギを含む。
最も好ましくは、本発明は、非ヒト哺乳動物、例えば内因性CRP遺伝子の発現が欠損したマウス、モルモット、ラットまたはウサギに関する。欠損は、以下のタンパク質の少なくとも1つの発現の変化を含むことができる:
(A)マス・マスクルス(Mus musculus)(ハツカネズミ)CRPタンパク質:225aa(GI:295904)
(B)カビア(Cavia)(モルモット)CRPタンパク質:225aa(GI:300221)
(C)ラタス・ノルベギカス(Rattus norvegicus)(ノルウェーラット)CRPタンパク質:230aa(GI:203592)
(D)オリクトラガス・クニクラス(Oryctolagus cuniculus)(ウサギ)CRPタンパク質:225aa(GI:986939)
本明細書において、用語“破壊”、“機能的不活性化”、“改変”および“欠損”は、CRPノックアウト動物の1種類の細胞、選択された細胞またはすべての細胞の内因性遺伝子によりコードされるCRPポリペプチドの発現および/または機能における部分的または完全な低下を含む。従って、本発明によれば、CRP遺伝子産物の発現または機能は、選択された細胞群(例えば組織または器官)または全動物において、完全にまたは部分的に破壊または低下させる(例えば50%、75%、80%、90%、95%またはそれ以上、例えば100%)ことができる。本明細書において、用語“機能的に破壊されたCRP遺伝子”は、ポリペプチド産物を発現できないかまたは、野生型タンパク質の全アミノ酸ポリペプチド鎖より短く、非機能性(部分的または完全に非機能性)である短縮型タンパク質を発現する修飾CRP遺伝子を含む。
用語“ノックアウト動物”は、前記動物の単一の細胞、選択された細胞またはすべての細胞における、内因性遺伝子(例えばCRP)によりコードされるポリペプチドの少なくとも一部の発現の部分的または完全な低下を含む動物のことを言う。動物は、内因性遺伝子の対立遺伝子の1つが破壊された“ヘテロ接合型”であることができる。また、動物は、内因性遺伝子の両方の対立遺伝子が破壊された“ホモ接合型”であることができる。
CRP遺伝子の破壊は、当業者に公知の種々の方法で達成することができる。例えば、相同組換えを用いる遺伝子ターゲッティング、突然変異誘発(例えば点突然変異)、RNA干渉およびアンチセンス技術を、CRP遺伝子を破壊するために用いることができる。
より具体的には、本発明は、そのCRP遺伝子のホモ接合型またはヘテロ接合型破壊のいずれかをゲノムが含むノックアウト哺乳動物、例えばノックアウトマウスを提供する。ゲノムがホモ接合型破壊を含むノックアウト哺乳動物は、CRP遺伝子の2つの非機能性(破壊された)対立遺伝子を含む体細胞および生殖細胞を特徴とし、ゲノムが異種破壊を含むノックアウト哺乳動物は、CRP遺伝子の野生型対立遺伝子1つおよび非機能性対立遺伝子1つを含む体細胞および生殖細胞を特徴とする。
遺伝子破壊のタイプは、全身的であることもでき(すなわち、動物のあらゆる細胞がその遺伝子を欠損している)、組織特異的であることもできる(すなわち、遺伝子の破壊が1以上の組織に限定されている)。さらに、当業者に公知の技術を用いて、特定の時点で破壊を達成することができる(すなわち、時期特異的ノックアウト)。
好ましくは、本発明の動物は、内因性CRP遺伝子が欠損した全身ノックアウトである。
CRP遺伝子のホモ接合型破壊を含む動物が特に好ましい。このような動物は、遺伝子型CRP-/-を特徴とする。上記のように、当業者に公知のノックアウト技術を用いて、全身的または組織特異的にCRP-/-遺伝子型を発現させることができる。
本明細書において、用語“遺伝子型”とは、動物の遺伝子構造のことを言う。特定の遺伝子型とは、1以上の具体的な遺伝子、例えばCRPのことを言う。より具体的には、用語遺伝子型は、無傷かつ機能性(例えば野生型すなわち+/+)のものあるか;またはヘテロ接合型(例えば+/-)もしくはホモ接合型(例えば-/-)ノックアウト遺伝子型のいずれかを付与する方法で破壊された(例えばノックアウト)ものであることができる、動物のCRP対立遺伝子の状態のことを言う。
最も好ましくは、本発明の動物は、マウスC反応性タンパク質(mCRP)をコードする遺伝子の生殖系列破壊を含むマウスである。該マウスは、破壊されたCRP対立遺伝子に関して、ヘテロ接合型(遺伝子型CRP+/-を特徴とする)またはホモ接合型(遺伝子型CRP-/-を特徴とする)であることができる。
特別の一実施形態において、本発明は、マウスCRPをコードする単一の対立遺伝子の生殖系列破壊を含むCRP+/-マウスに関する。
他の実施形態において、本発明は、マウスCRPをコードする両方の対立遺伝子の生殖系列破壊を含むCRP-/-マウスに関する。
CRP遺伝子は、1以上のエクソンを含むことができる。当該技術分野で周知のように、エクソンは、スプライシングを受けずにRNA分子に転写される遺伝子内の任意のDNA領域である。代表例として、マウスCRPのエクソン構造を図1に示す。図に示すように、マウスのCRP遺伝子は2つのエクソンを含む。従って、本発明において、1以上のエクソン領域の破壊を含むノックアウト動物が提供される。破壊は、エクソン1、エクソン2またはエクソン1および2の両方の完全または部分欠失を含むことができる。
好ましくは、本発明のトランスジェニックノックアウト動物は、成熟CRPタンパク質の一部をコードする主要エクソンの完全欠失を含む。マウスにおいては、主要エクソンはCRP遺伝子のエクソン2を含む。
本発明のトランスジェニック動物は、少なくとも1つの、野生型動物とは異なる表現型を特徴とする。野生型ノックアウト動物と本発明のヘテロ接合型(CRP+/-)ノックアウト動物の間で、あるいは野生型ノックアウト動物と本発明のホモ接合型(CRP-/-)ノックアウト動物の間で、このような異なる表現型を発現させることができる。さらに、ヘテロ接合型ノックアウト動物とホモ接合型ノックアウト動物の間で異なる表現型を発現させることができる。このような特性または形質は、分子的、生化学的、生理学的、病理学的および/または行動的レベルで異なることができる。
一実施形態において、本発明のノックアウトマウスは、野生型CRP遺伝子を有する動物と比較して改変された表現型であって、前記改変された表現型が、
(1)LPSチャレンジ後のサイトカイン産生の低下;
(2)α-CD3刺激後のT細胞のサイトカイン産生の低下;
(3)TNP-ficollでの免疫後のT細胞非依存性抗体産生の増加;または
(4)(1)、(2)および(3)の任意の組み合わせ
である前記改変された表現型を含む。
好ましい実施形態において、本発明のノックアウトマウスは、野生型CRP遺伝子を有する動物と比較して改変された表現型であって、前記改変された表現型が、
(1)LPSチャレンジ後のTNF-αおよびIL-10サイトカイン産生の低下;
(2)α-CD3刺激後のINF-γおよびIL-2産生の低下;
(3)IgM抗体産生の増加;または
(4)(1)、(2)および(3)の任意の組み合わせ
である前記改変された表現型を含む。
CRP欠損の潜在的な機能的役割を同定するために、本発明のマウスであるCRP欠損マウスに一連の炎症および免疫学的試験を行った。これらの研究において、野生型マウスと比較して、本発明のCRP-/-マウスでは、
(1)LPSチャレンジ後の、血漿TNF-αレベルの57%低下および血漿IL-10レベルの74%低下、
(2)α-CD3刺激後の、INF-γレベルの35%低下およびIL-2レベルの51%低下、ならびに/または
(3)TNP-ficollでの免疫後のT細胞非依存性IgM抗体産生の50%増加
が明らかになった。
遺伝および環境要因により、前述の値は絶対的なものではなく、表現型の差異を示すものであることは当業者には明らかであろう。従って、本発明のノックアウト動物を特徴づけるために、当業者は、前述の表現型の差異の1つ、2つ、3つ、または任意の組み合わせを当てにすることができる。本発明のノックアウト動物を特徴づけるために、このような表現型の差異を、独立して、あるいは上記の遺伝子スクリーニング技術(例えばmRNAまたはタンパク質発現研究)と共に用いることができる。
本発明はまた、本願のCRPノックアウト動物由来の器官、組織、細胞、細胞株または細胞下画分にも関する。好ましくは、このような構成要素は、CRPノックアウト遺伝子型に関してホモ接合型(CRP-/-)である動物に由来する。
器官の例は、限定するものではないが、脾臓、胸腺、肝臓、膵臓、心臓、肺、腎臓、膀胱、脳または血液を含む。
組織の例は、限定するものではないが、筋肉組織、結合組織、神経組織または上皮組織を含む。
細胞の例は、限定するものではないが、配偶子細胞(すなわち卵、精子)、碑細胞、胸腺細胞、血液細胞、上皮細胞、肝細胞、膵臓細胞、心筋細胞または神経細胞を含む。胚系列または成人系列の幹細胞もまた含む。
細胞株の例は、限定するものではないが、初代細胞、形質転換細胞および不死化細胞を含む。
本明細書において、遺伝子破壊は、調節配列CRPまたはそのコード配列のいずれかにおける1以上の変異を含むことができる。起こり得る結果には、例えば非翻訳遺伝子産物(無タンパク質)または不完全翻訳遺伝子産物(変異タンパク質)を含むことができる。従って、本明細書における“変異”は、CRP遺伝子機能の完全または部分喪失をもたらすことができる。
本発明はまた、機能性CRP遺伝子またはそのホモログを欠く非ヒト動物を作製する方法を提供する。
好ましくは、動物は哺乳動物である。
一実施形態において、CRPノックアウト哺乳動物を得る方法であって、部位特異的組換え酵素の認識部位に隣接するCRP遺伝子またはそのエクソンを有するトランスジェニック動物が、構成的活性型リコンビナーゼまたは誘導リコンビナーゼを発現するトランスジェニック動物と交配される前記方法が提供される。このような方法は当該技術分野で公知であり、代表例を以下に示す。
簡潔に言えば、ノックアウト胚を作製するための標準的方法論には、標的遺伝子の内因性核酸配列との相同組換えにより、適切な胚性幹細胞(ES)に組み込まれるようにデザインされたターゲティング構築物を導入することを必要とする。次いで、相同組換え(すなわち、ターゲティング構築物の組換え核酸配列と宿主細胞染色体のゲノム核酸配列との)を可能にする条件下でES細胞を培養する。当該分野で公知の標準法(例えば遺伝子組換え胚性幹(ES)細胞を微量注入することにより)を用いて、胎生期に、動物またはその親に、組換え対立遺伝子を含むノックアウト遺伝子型を含むことが同定された遺伝子組換え幹細胞を導入する。次いで、得られたキメラ胚盤胞を偽妊娠代理母の子宮内に挿入し、生存胎児へと発育させる。得られた生存胎児は、遺伝子組換えES細胞およびレシピエント胚盤胞由来の細胞の混合物を体組織および生殖系列組織が含む潜在的キメラ創始動物を含む。得られたキメラマウスの生殖系列への遺伝子改変幹細胞の寄与により、破壊された標的遺伝子を含む改変されたES細胞ゲノムがこれらの創始動物の子孫に伝達されることが可能となり、それによって、標的遺伝子における特定の欠損を含むように遺伝子組換えされた遺伝子をゲノムが含む“ノックアウト動物”の作製が容易となる。
いくつかの異なる方法でCRP遺伝子を破壊することができ、そのいずれも、本発明のCRPノックアウト動物を作製するために使用できることは、当業者には明らかであろう。例えば、本発明記載のノックアウトマウスは、遺伝子ターゲッティングの方法により作製することができる。本明細書において、用語“遺伝子ターゲッティング”は、改変(例えば破壊)の標的であるゲノム遺伝子座の核酸配列の対応する部分に位置し、それと組換え、それによって、計画された改変を内因性遺伝子に付与することができる外因性組換え核酸配列を導入するようにデザインされたターゲティング構築物(例えばベクター)の細胞(例えばES細胞)への導入の結果として生じる相同組換えの一種のことをいう。従って、相同組換えは、それによって、特定のDNA配列を外因性遺伝子組換え配列と置換することができるプロセス(例えば方法)である。より具体的には、トランスジェニック破壊の標的である遺伝子の内因性ヌクレオチド配列に相同または相補的なように遺伝子組換えされたターゲティングベクターの領域が、ターゲティングベクターのヌクレオチド配列が、内因性遺伝子の対応する位置に組み込まれる(例えば統合する)ように位置につくかまたは互いに組換えられる。
本発明はまた、本発明のノックアウト動物を作製するためのDNA配列およびそれから誘導されるベクターにも関する。一実施形態において、動物のCRP遺伝子に相同なDNA配列に隣接する選択マーカー配列を含むCRP DNAノックアウト構築物であって、前記構築物が前記動物に胎生期に導入されたとき、前記選択マーカー配列が前記マウスにおけるCRP遺伝子を破壊する前記構築物が提供される。
さらに、本発明は、野生型(内因性)CRP遺伝子の機能を破壊するようにデザインされたベクター構築物(例えばCRPターゲティングベクターまたはCRPターゲティング構築物)を提供する。一般用語において、有効なCRPターゲティングベクターは、内因性CRP遺伝子との相同組換えに有効な組換え配列を含む。例えば、選択マーカー遺伝子をコードする第2ヌクレオチド配列に作動可能に連結された標的配列に相同なゲノムヌクレオチド配列を含む置換ターゲティングベクターは、有効なターゲティングベクターの典型例である。相同組換えの結果としての、宿主細胞(例えば胚性幹細胞)の染色体DNAへのターゲッティング配列の組み込みにより、内因性遺伝子、例えばCRP遺伝子の標的配列への意図的な破壊、欠損または改変(例えば挿入、欠失または置換)が導入される。本発明の一側面は、CRPポリペプチドをコードする非ヒト遺伝子のヌクレオチド配列の全部または一部を置換し、それによってトランスジェニックCRPノックアウトを作製することである。このような構築物の概略例を図1に示す。
適切な長さの任意のCRPゲノムヌクレオチド配列および、破壊のために事前選択された、特定部位での相同組換えを促進する組成物を、CRPターゲティングベクターを構築するために用いることができることは、当業者には明らかであろう。配列の選択および使用のためのガイドラインは、例えば、Deng, C. and Capecchi, M., 1992, Mol. Cell. Biol., 12:3365-3371, and Bollag, R. et al., 1989, Annu. Rev. Genet., 23:199-225 に記載されている。例えば、CRP遺伝子遺伝子座の全部または一部に組換え核酸配列(例えば、CRPターゲティング構築物またはベクター)を挿入することにより、野生型CRP遺伝子を変異および/または破壊することができる。例えば、CRP遺伝子のエンハンサー、プロモーター、コード領域、開始コドン、非コード配列、イントロンまたはエクソン内の特定の部分と組換えるようにターゲティング構築物をデザインすることができる。また、ターゲティング構築物は、CRP遺伝子のエクソンの後に終止コドンを導入するようにデザインされた組換え核酸を含むことができる。
本発明の適切なターゲティング構築物は、当業者に公知の標準的分子生物学技術を用いて作製できる。例えば、適切なベクターの製造に有用な技術は、Maniatis, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. に記載されている(参照により、その開示は本願に組み込まれる)。適切なベクターは、Capecchi, M., 1989, Science, 244:1288-92 に記載されている挿入ベクター(参照により、その開示は本願に組み込まれる)またはBradley, et al., 1992, Biotechnology (NY), 10:534-539;およびAskew, G. et al., 1993, Mol. Cell. Biol., 13:4115-4124 (参照により、これらの開示も本願に組み込まれる)に記載されているプロモータートラップ戦略またはポリAトラップもしくは“tag-and-exchange”戦略に基づくベクターなどの置換ベクターを含む。
当該技術分野で公知の多数の適切なベクターを、適切なターゲティングベクターの基礎として用いることができることは、当業者には明らかであろう。実際、相同組換えを指示し、標的遺伝子を破壊するために必要な組換え核酸配列を提供することができる任意のベクターを使用することができる。例えば、pBR322、pACY164、pKK223-3、pUC8、pKG、pUC19、pLG339、pR290、pKC101または他のプラスミドベクターを使用できる。また、λ gt11ベクター系などのウイルスベクターは、ターゲティング構築物のバックボーン(例えばカセット)を提供できる。
本発明はまた、本発明のノックアウト動物に由来する器官、組織、細胞、細胞株、および/または細胞下画分などの構成要素を含む本発明のノックアウト動物の使用にも関する。
好ましくは、本発明において、新規治療および/または診断剤のスクリーニングにおける本発明のノックアウト動物の使用方法が提供される。
一実施形態において、本発明は、免疫調節剤のスクリーニング方法であって、
(a)本発明のCRPノックアウト動物である実験動物に前記試験化合物を投与し;
(b)前記試験化合物への前記実験動物の反応を測定し;
(c)対照動物に対して前記実験動物の反応を比較し;
(d)前記動物と前記対照動物との間で観察された反応の差異に基づいて薬剤を選択すること
を含む前記方法に関する。
本発明において、機能性CRP遺伝子を有する動物と比較して、CRP欠損(CRP-/-)動物は異なるサイトカイン産生を示すことが見出された。図に示すように、野生型マウスと比較して、CRP欠損マウスにおいて、特定のサイトカイン(例えば、IL-2、IL-10およびTNF-α)の血漿中濃度は低下していたのに対して、他のサイトカイン(例えば、IL-6)のレベルは上昇していた。
従って、本発明において、1以上のこのようなサイトカインのレベルを測定することを含む免疫調節化合物のスクリーニング方法が提供される。好ましくは、測定されるサイトカインは血漿サイトカインである。
好ましくは、免疫調節化合物は免疫増強剤である。しかしながら、対照および実験動物における異なる一連のサイトカインのレベルを測定することを含め、免疫抑制剤のアッセイに向けて方法を適合させることができる。
当該技術分野で公知のように、対照動物には、プラセボ化合物、例えば、緩衝液、塩、糖質または他の無毒の物質を投与されたCRP欠損(CRP-/-)動物(すなわち陰性対照)を用いることができる。さらに、既知の免疫調節剤(すなわち既知の免疫増強剤または免疫抑制剤)が投与されたCRP欠損(CRP-/-)動物である陽性対照動物もまた使用できる。
別の実施形態において、野生型動物もまた対照として用いることができる。
炎症性刺激、例えばリポ多糖(LPS)での処置を受けたCRP欠損動物は、野生型動物と比較してIL-2、IL-10およびTNF-αのレベルが低下していたことが見出された。野生型動物と比較して、CRP欠損動物においてIL-6産生は増加していた。
一実施形態において、前述のアッセイは、免疫増強剤のスクリーニング方法であって、
(a)本発明のCRPノックアウト動物である実験動物に試験免疫増強剤を投与し;
(b)IL-2、IL-10またはTNF-αである少なくとも1つのサイトカインの、前記実験動物におけるレベルを測定し;
(c)前記実験動物における前記IL-2、IL-10またはTNF-αのレベルを対照動物と比較し;
(d)前記実験動物における前記IL-2、IL-10またはTNF-αの、前記対照動物と比較した上昇に基づいて薬剤を選択すること
を含む前記方法に関する。
好ましくは、実験動物ばかりでなく対照動物もまた、試験化合物の投与の前に炎症性刺激を受けている。
他の実施形態において、前述のアッセイは、免疫抑制剤のスクリーニング方法であって、
(a)本発明のCRPノックアウト動物である実験動物に試験免疫抑制剤を投与し;
(b)IL-6である少なくとも1つのサイトカインの、前記実験動物におけるレベルを測定し;
(c)前記実験動物における前記IL-6のレベルを対照動物と比較し;
(d)前記実験動物における前記IL-6の、前記対照動物と比較した低下に基づいて薬剤を選択すること
を含む前記方法に関する。
特に好ましい実験動物は、1以上のサイトカイン(例えば、IL-2、IL-10、TNF-αおよびIL-6)の血漿中濃度が測定される哺乳動物である。このような哺乳動物の例は、限定するものではないが、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウシ、ウマなどを含む。
最も好ましくは、上記のスクリーニング方法は、方法(A)または(B)に関する:
(A)免疫増強剤のスクリーニング方法であって、
(a)LPSチャレンジCRP欠損(CRP-/-)マウスである実験動物に試験免疫増強剤を投与し;
(b)IL-2、IL-10またはTNF-αである少なくとも1つのサイトカインの、前記実験動物におけるレベルを測定し;
(c)IL-2、IL-10またはTNF-αである少なくとも1つのサイトカインの、前記実験動物におけるレベルを対照マウスと比較し;
(d)前記実験動物における前記IL-2、IL-10またはTNF-αの、前記対照マウスと比較した上昇に基づいて薬剤を選択すること
を含む前記方法。
(B)免疫抑制剤のスクリーニング方法であって、
(a)LPSチャレンジCRP欠損(CRP-/-)マウスである実験動物に試験免疫抑制剤を投与し;
(b)前記実験動物におけるIL-6レベルを測定し;
(c)前記実験動物における前記IL-6のレベルを対照マウスと比較し;
(d)前記実験動物における前記IL-6の、前記対照マウスと比較した低下に基づいて薬剤を選択すること
を含む前記方法。
本発明の動物由来の器官、組織、細胞、細胞株および細胞下画分もまた所望のin vitroアッセイに用いることができることは、当業者には明らかであろう。
本発明のCRPノックアウトマウスはまた、CRP欠損の生理学的結果(単数または複数)およびそれによる示唆、例えば上記疾患の病因に関する示唆のin vivo研究にも有用である。
トランスジェニック動物
CRPをコードするcDNAおよびその発現を調節する調節配列を認識することにより、例えば、所望の形でCRPの発現、翻訳または機能を変えることができる化合物を試験するためのトランスジェニック動物、特にトランスジェニックげっ歯動物を作製することができる。アデノウイルスベクター感染後の動物における一過性過剰発現のための本方法を下記の実施例に示す。
これに関して基本的に有用な2種類の動物が存在することは、当業者には明らかである。機能性CRPを発現しない動物およびCRPを過剰発現する動物であり、タンパク質をすでに発現している組織または低レベルしか天然に発現しない組織のいずれかにおいて用いる。
第1のグループにおける動物は、好ましくは、CRP遺伝子の“ノックアウト”をもたらす技術を用いて作製されるが、特定の組織のみに限定されるか、量の減少にとどまるなど、ノックアウトが不完全に行われることが好ましい。これらの動物は、好ましくは、機能性CRPをコードしないCRP遺伝子に対する相補的ヌクレオチド配列を含む構築物を用いて作製され、最も好ましくは、胚性幹細胞と共に用いてキメラを作製する。欠損遺伝子に関してヘテロ接合型である動物は、正常型ホモ接合体とCRP産生に欠損のある動物とを交配することにより得ることもできる。次いで、以下の実施例に示すように、これらの動物を他のトランスジェニックまたはノックアウト動物と交配することができる。
第2のグループにおける動物は、好ましくは、組織特異的プロモーター(多くは入手可能であり、文献に記載されている)または異常調節プロモーター(unregulated promoter)もしくは、天然プロモーターと比較して発現が増加するように修飾されたプロモーターを含む構築物を用いて作製される。CRPをコードするcDNAを用いる適切なライブラリーのスクリーニングに基づく標準法を用いて、CRP遺伝子の調節配列を得ることができる。これらの動物は、最も好ましくは、標準的なマイクロインジェクション技術を用いて作製される。
これらの操作は、マイクロインジェクションまたは当業者に公知の他の技術、例えばエレクトロポレーションを用いて、文献に記載されているように、cDNAまたはゲノムDNAを胚に挿入することにより実施される。対象とする目的(CRPをコードする遺伝子を不活化することまたはCRPをコードする遺伝子を過剰発現もしくは異なる組織で発現させること)に基づいてDNAが選択される。CRPをコードする遺伝子は、欠損CRPのためのDNA、例えばコード配列内に、後に選択目的に使用できる抗生物質マーカーを含むDNAとの相同組換えにより修飾できる。
動物源
トランスジェニック実験に適した動物は、一般的な販売元から購入することができる。これらには、遺伝子操作法の試験のためのマウスおよびラットなどの動物ばかりでなく、当業者に公知の技術を用いて遺伝子組換えを受けたブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギおよび他の動物などのより大型の動物も含む。主としてマウスおよびラットの操作に基づく、これらの技術の概略を以下に示す。
マイクロインジェクション法
胚操作法およびDNAマイクロインジェクション法については、Hoganら“Manipulating the mouse embryo,” Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1986) において詳細に記載されている(その教示は参照により本願に組み込まれる)。これらの技術は他の動物種の胚に容易に適用でき、成功率は異なる可能性はあるが、当業者には通常技法と考えられる。
トランスジェニック動物
マウスに用いる標準法を改変した方法を用いて、雌性動物に過排卵を誘発する。性周期を同期化させていない成熟雌を、ドナー雌と同時に精管切除雄と交配させて偽妊娠を誘発する。胚移植時にレシピエント雌を麻酔し、卵管を直接覆っている体壁を切開することにより卵管を露出させる。卵巣嚢を切開し、移植する胚を漏斗に挿入する。移植後に切開部を縫合する。
胚性幹(ES)細胞法
ES細胞へのcDNAの導入
ES細胞の培養方法およびその後のトランスジェニック動物作製方法である、種々の方法例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム/DNA沈澱法および直接注入によるES細胞へのDNAの導入は、Teratocarcinomas and embryonic stem cells, a practical approach, ed. E.J. Robertson, (IRL Press 1987) に詳細に記載されている(その教示は参照により本願に組み込まれる)。所望の、導入遺伝子を含むES細胞のクローンの選択は、いくつかの手段の1つを使って達成される。配列特異的遺伝子組み込みに関連する場合において、CRP遺伝子との組換えのための核酸配列またはその発現を調節する配列が、ネオマイシン耐性などのマーカーをコードする遺伝子と共沈する。トランスフェクションは、Potter et al Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 7161 (1984) に詳細に記載されているいくつかの方法の1つにより実施される。リン酸カルシウム/DNA沈澱法、直接注入およびエレクトロポレーションは好ましい方法である。これらの方法において、多数のES細胞を組織培養皿にプレーティングし、線状化核酸配列およびトランスフェクション試薬の混合物でトランスフェクトする。G418(200〜500pg/ml)などの抗生物質を加えた選択培地で細胞を培養する。抗生物質に耐性を示す細胞のコロニーを、クローニングリングを用いて単離し、広げる。薬剤耐性クローンからDNAを抽出し、プローブとして核酸配列を用いるサザンブロット実験を用いて、所望の核酸配列を含むクローンを同定する。実験によっては、対象とするクローンを同定するためにPCR法が用いられる。
ES細胞に導入するDNA分子は、Capecchi(1989)によって記載された相同組換えのプロセスにより染色体に組み込むこともできる。直接注入により、高い効率で組み込みが起こる。注入されたES細胞のプールから調製したDNAのPCRにより、所望のクローンが同定される。プールにおける陽性細胞は、細胞クローニング後のPCRにより同定される(Zimmer and Gruss, Nature 338, 150-153 (1989))。エレクトロポレーションによるDNA導入は、あまり効率が良くなく、選択ステップを必要とする。組換え事象の正の選択法(すなわちネオ耐性)および正と負の二重選択法(すなわちネオ耐性およびガンシクロビル耐性)ならびにその後のPCRによる所望クローンの同定は、Joyner et al., Nature 338, 153-156 (1989) and Capecchi, (1989) に記載されている(その教示は参照により本願に組み込まれる)。
胚回収およびES細胞注入
自然な性周期の雌または過排卵処置した雌を用いて雄と交配させ、ES細胞注入のための胚を回収する。交配に成功した後、適切な期の胚を回収する。交配させた雌の子宮角から胚を洗い流し、10%仔牛血清添加ダルベッコ変法基本培地に入れ、ES細胞を注入する。ガラスマイクロニードルを用いて、胚盤胞におおよそ10〜20個のES細胞を注入する。
偽妊娠雌への胚移植
性周期を同期化させていない成熟雌を精管切除雄とつがわせる。レシピエント雌を交配させ、交配2.5〜3.5日後(マウスの場合;より大型の動物についてはさらに遅い)にES細胞を含む胚盤胞の移植を行う。胚移植時にレシピエント雌を麻酔する。卵管を直接覆っている体壁を切開することにより卵巣を露出させ、卵巣および子宮を外に出す。ニードルを用いて子宮角に穴をあけ、それを通して胚盤胞を移植する。移植後、卵巣および子宮を体内に戻し、切開部を縫合する。さらに移植を行う場合、この手順を反対側で繰り返す。
トランスジェニック動物の同定
幼若動物から試料(例えば1〜2cmの尾)を採取する。より大型の動物に関しては、血液または他の組織を使用することができる。相同組換え実験におけるキメラを試験するために、すなわち標的ES細胞の動物への寄与を探すために、マウスにおいては毛色が用いられてきたが、より大型の動物においては血液を試験することもできる。トランスジェニック創始(F0)動物およびその子孫(F1およびF2)を検出するためにDNAを調製し、サザンブロットおよびPCRの両方で分析する。
トランスジェニック動物が同定された後、通常の交配により系統を樹立し、当該分野で公知の標準法を用いる組織採取および移植のドナーとして用いる。現在、キメラおよびトランスジェニック動物を作製するために最も頻繁に使用される技術は、遺伝子改変した胚性幹細胞または胚生殖細胞に基づく。トランスジェニック動物を得るのに適した技術は、当該技術分野で詳細に記載されている。完全にES細胞由来のトランスジェニック非ヒト動物を得るのに適した技術は、WO98/06834に記載されている(その教示は全体が参照により本願に組み込まれる)。
リコンビナーゼ
好ましくは、本発明は、胚性幹(ES)細胞技術を用いて本発明のCRPノックアウトマウスを得る方法を提供する。本発明のCRPノックアウトマウスを得る適切な好ましい方法の特徴は、一方では、CRP遺伝子が部位特異的組換え酵素(リコンビナーゼ)の認識部位に隣接することであり、他方では、対象とする組織すなわち肝臓において構成的活性型リコンビナーゼまたは誘導リコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスと、コンディショナルノックアウトマウスを交配することによりリコンビナーゼを提供することができることである。肝細胞、特に肝実質細胞に特異的なプロモーターを用いて肝臓特異的発現を達成することができる。適切なプロモーターの例は当該技術分野で公知である。
バクテリオファージP1 Creリコンビナーゼおよび酵母プラスミド由来flpリコンビナーゼは、特定の標的部位(creリコンビナーゼについてはlox P部位であり、flpリコンビナーゼについてはfrt部位である)でDNAを切断し、このDNAの第2切断部位への連結反応を触媒する、限定するものではない、部位特異的DNAリコンビナーゼ酵素の2つの例である。多数の適切な代替部位特異的リコンビナーゼが記載されてきており、本開示の方法に従ってそれらの遺伝子を使用することができる。このようなリコンビナーゼは、バクテリオファージλのIntリコンビナーゼ(Xisの有り無しで)(Weisberg, R. et. al., in Lambda II, (Hendrix, R., et al., Eds.), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y., pp. 211-50 (1983) (参照により本願に組み込まれる)); TpnIおよびβ-ラクタマーゼトランスポゾン(Mercier, et al., J. Bacteriol., 172:3745-57 (1990));Tn3リゾルバーゼ(Flanagan & Fennewald J. Molec. Biol., 206:295-304 (1989); Stark, et al., Cell, 58:779-90 (1989));酵母リコンビナーゼ(Matsuzaki, et al., J. Bacteriol., 172:610-18 (1990));枯草菌SpoIVCリコンビナーゼ(Sato, et al., J. Bacteriol. 172:1092-98 (1990));Flpリコンビナーゼ(Schwartz & Sadowski, J. Molec.Biol., 205:647-658 (1989);Parsons, et al., J. Biol. Chem., 265:4527-33 (1990); Golic & Lindquist, Cell, 59:499-509 (1989); Amin, et al., J. Molec. Biol., 214:55-72 (1990));Hinリコンビナーゼ(Glasgow, et al., J. Biol. Chem., 264:10072-82 (1989));免疫グロブリンリコンビナーゼ(Malynn, et al., Cell, 54:453-460 (1988));およびCinリコンビナーゼ(Haffter & Bickle, EMBO J., 7:3991-3996 (1988); Hubner, et al., J. Molec. Biol., 205:493-500 (1989)) (すべて参照により本願に組み込まれる)を含む。このような系は、Echols (J. Biol. Chem. 265:14697-14700 (1990)); de Villartay (Nature, 335:170-74 (1988)); Craig, (Ann. Rev. Genet., 22:77-105 (1988)); Poyart-Salmeron, et al., (EMBO J. 8:2425-33 (1989)); Hunger-Bertling, et al. (Mol Cell. Biochem., 92:107-16 (1990));およびCregg & Madden (Mol. Gen. Genet., 219:320-23 (1989)) により詳細に説明されている(すべてが参照により本願に組み込まれる)。
Creは均一に精製され、loxP部位とのその反応は十分に解析されている(Abremski & Hess J. Mol. Biol. 259:1509-14 (1984)(参照により本願に組み込まれる))。Creタンパク質は分子量35,000を有し、New England Nuclear/Du Pontから商業的に入手できる。cre遺伝子(Creタンパク質をコードする)はクローニングされ、発現されている(Abremski, et al. Cell 32:1301-11 (1983)(参照により本願に組み込まれる))。Creタンパク質は、同一または異なるDNA分子上に存在しうる2つのloxP配列間の組換えを媒介する(Sternberg, et al. Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 45:297-309 (1981))。loxP部位の内部スペーサー配列は非対称であるため、2つのloxP部位は互いに対して指向性を示すことができる(Hoess & Abremski Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:1026-29 (1984))。従って、同じDNA分子上の2つの部位が直接反復配向である場合、Creはこれらの部位間のDNAを削除する(Abremski, et al. Cell 32:1301-11 (1983))。しかしながら、もしこれらの部位が互いに逆位である場合、その間のDNAは組換え後に削除されず単に逆転するだけである。従って、直接配向で2つのloxP部位を有する環状DNA分子は、組換えされて2つのより小さな環を生成するが、逆配向で2つのloxP部位を有する環状分子は、単にloxP部位に隣接するDNA配列を逆転させるだけである。さらに、異なるDNA分子上に標的が存在する場合、リコンビナーゼ作用は、標的部位に対して遠位の領域の相互交換をもたらしうる。
リコンビナーゼは、ノックアウトモデルにおいて遺伝子機能を解析するための重要な応用を有する。本明細書記載の構築物が標的遺伝子を破壊するために用いられる場合、標的遺伝子の翻訳開始部位の下流(3′)に正の選択マーカーが挿入されたときに融合転写産物が産生されうる。融合転写産物は、未知の結果を伴うタンパク質発現をもたらす場合がある程度考えられる。正の選択マーカー遺伝子の挿入は、隣接遺伝子の発現に影響を与えうることが示唆されている。所定の表現型が遺伝子の不活性化と関連するか、隣接遺伝子の転写と関連するかを識別することはできないので、これらの効果は、ノックアウト事象後の遺伝子機能の決定を困難にする恐れがある。どちらの潜在的問題も、リコンビナーゼ活性を活用することにより解決される。正の選択マーカーが同じ配向のリコンビナーゼ部位に隣接する場合、対応するリコンビナーゼの添加により正の選択マーカーの除去がもたらされる。このようにして、正の選択マーカーにより引き起こされる効果または融合転写産物の発現は避けられる。
好ましい実施形態において、本発明のノックアウト構築物は、LoxPである、Creリコンビナーゼを利用する認識部位を含む。リコンビナーゼは、構成的活性型プロモーターまたは組織特異的プロモーターの転写調節下に置くことができる。
組織特異的または時期特異的なCRP遺伝子の欠失は、当業者に公知の技術を用いて達成できる。Vasioukhinら(1999)に記載されているような、成熟マウスにおける両方の遺伝子の欠失を可能にする誘導遺伝子欠失系もまた使用しうる。
本発明の組織特異的ノックアウトマウスを得るために、好ましい実施形態によれば、上記の誘導loxP/Cre系が用いられる。今日まで、この系は、in vivoでの、最も信頼性のある時空間制御部位特異的体細胞遺伝子欠失の実験セットアップと考えられている。対象とする遺伝子(単数または複数)(本発明の場合はCRP)の欠失は、誘発剤の全身注入または局所投与のいずれかに誘発されることができる。このような技術は当該技術分野で公知である(Vasioukhin et al., 1999)。
本発明の組織特異的ノックアウトマウスを作製するために、loxP/Cre系に代えて、他の時空間制御部位特異的体細胞遺伝子欠失系を用いることができる。本発明のコンディショナルノックアウトマウスを設計するためのこのような代替法の例は、Flp-FRTおよびphiC31-att部位特異的リコンビナーゼ系である。loxP/Cre系と同様に、これらの系は、部位特異的組換え酵素の認識部位に隣接する対象とする遺伝子(単数または複数)を有し、対象とする組織において構成的活性型リコンビナーゼまたは誘導リコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスとコンディショナルノックアウトマウスを交配することにより組換え酵素を提供するという必要条件を満たしている(Branda and Dymecki, 2004)。
定義
特記しない限り、本明細書で用いられるすべての学術用語は、本発明の属する技術分野における当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書記載の方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法および材料を説明する。本発明の目的上、以下の用語は以下のように定義される。
本明細書において使用される用語“動物”は、ヒト以外のすべての脊椎動物を含む。この用語はまた、胎生期および胎児期を含むすべての発育段階における個々の動物も含む。“トランスジェニック動物”は、標的組換えまたはマイクロインジェクションまたは組換えウイルス感染などの細胞下レベルでの周到な遺伝子操作により直接または間接に改変されるかまたは受け取った遺伝情報を含む1以上の細胞を含む任意の動物である。
用語“トランスジェニック動物”は、古典的な異種交配またはin vitro受精を含むと解されずに、1以上の細胞が改変されたかまたは組換えDNA分子を受け取った動物を含むと解される。この分子は、具体的に特定の遺伝子座を標的にするものであることができ、染色体内に無作為に組み込むこともでき、染色体外複製DNAであることもできる。
用語“生殖細胞系列トランスジェニック動物”は、生殖系列細胞に遺伝子変異または遺伝情報が導入され、それによって子孫に遺伝情報を伝達する能力が付与されたトランスジェニック動物のことを言う。このような子孫が、実際に改変または遺伝情報の一部または全部を有する場合、それはトランスジェニック動物でもある。胚操作およびマイクロインジェクションにより、トランスジェニック動物を、特にマウスなどの動物で作製する方法は、当該技術分野では普通に行われており、例えば、米国特許第4,736,866号;第4,870,009号;第4,873,191号;およびHogan, B., Manipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986) に記載されている(参照によりその全体が本願に組み込まれる)。他のトランスジェニック動物の作製のために同様な方法が用いられる。例えばマイクロインジェクション、レトロウイルス感染により受精卵母細胞の雄性前核に核酸を導入し、卵母細胞を偽妊娠雌代理動物中で発育させることによりトランスジェニック動物を作製できる。トランスジェニック創始動物は、そのゲノム中の導入遺伝子の存在および/または動物の組織または細胞内でのトランスジェニックmRNAの発現に基づいて同定できる。次いで、導入遺伝子を有するさらなる動物を繁殖させるためにトランスジェニック創始動物を用いることができる。さらに、他の導入遺伝子を有する他のトランスジェニック動物を繁殖させるために、導入遺伝子を有するトランスジェニック動物をさらに繁殖させることができる。
本明細書において、用語“遺伝子”は、1つのタンパク質(例えばポリペプチド鎖)の合成に必要な遺伝情報(例えば核酸配列)をコードするDNA配列のことを言う。アミノ酸配列を直接コードする配列である“コード配列”に加えて、遺伝子は必須の非コード配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサーならびに非必須の隣接するイントロン配列も含む。遺伝子はまた、例えば他のタンパク質に対する認識配列を形成する非発現DNAセグメントを含むこともできる。遺伝子は、対象とする供給元からのクローニングまたは既知配列もしくは予測配列情報からの合成を含む種々の供給源から得ることができ、かつ所望のパラメータを有するようにデザインした配列を含むことができる。
用語“CRP遺伝子”は、CRPタンパク質をコードするDNA配列を含む特定の遺伝子のことを言う。
当業者には明らかなように、遺伝子配列は、集団における個体間で異なる“部位”(配列位置)を含むことができる。従って、遺伝子には配列の変動の余地がある。各バリアント配列は、該遺伝子の“対立遺伝子”と呼ばれる。従って、本明細書において、用語"対立遺伝子"は、遺伝子のいくつかの代替形のいずれかのことを言う。
一般的には、特定の配列、通例機能性タンパク質をコードする配列が、参照または“野生型”配列として採用される。用語“野生型”は、参照対立遺伝子、一般的には機能性タンパク質をコードする対立遺伝子または健常者に存在する対立遺伝子を含むことを意味する記述用語である。野生型配列とは異なる対立遺伝子は、“対立遺伝子バリアント”と呼ばれる。相同染色体は、減数分裂中に対合し、実質的に同一の遺伝子座を含む染色体である。用語“遺伝子座”は、染色体上の遺伝子の部位(例えば位置)を含む。
用語"ホモログ"は、所定の遺伝子に対して構造および進化的起源が類似している遺伝子のことを言う。
用語“生殖系列”は、遺伝子変異または遺伝的変異が生殖系列細胞に導入され、それによって子孫に遺伝情報を伝達する能力が付与された状態のことを言う。このような子孫が実際に改変または遺伝的変異の一部または全部を有する場合、それらはまたトランスジェニック動物でもある。
当業者には明らかなように、トランスジェニック動物に関連した用語“全身”または“完全”は、全ての細胞に遺伝的修飾が存在することを意味する。同様に、“組織特異的”は、所定の遺伝子の発現を特定のプロモーターが亢進する組織における実質的に全面的な転写の開始のことを言う。
遺伝情報の改変は、レシピエントが属する動物種に対して異物であるか、もしくは特定のレシピエント個体に対してのみ異物であることができ、あるいはレシピエントが既に有している遺伝情報であることができる。最後の場合には、改変または導入された遺伝子は、ネイティブ遺伝子とは異なって発現されることができる。
“遺伝子ターゲッティング”は、ゲノムDNAのフラグメントが細胞に導入されるときに起こる相同組換えの一種であり、そのフラグメントは内因性相同配列の部分に位置し、それと組換えされる。
“ノックアウトマウス”は、遺伝子ターゲッティングの方法により不活化された特定の遺伝子をそのゲノム内に含むマウスである。ノックアウトマウスは、ヘテロ接合体マウス(すなわち、1つの欠損対立遺伝子および1つの野生型対立遺伝子)およびホモ接合型変異体(すなわち2つの欠損対立遺伝子)の両方を含む。
“変異”は、動物の遺伝物質における検出可能な変化であり、その変化はその動物の子孫に伝達される。変異は、通例1以上のデオキシリボヌクレオチドの変化であり、その修飾は、例えばヌクレオチドの添加、欠失、転化または置換により得られる。
"細胞株"は、適切な培地および条件下で無限に増殖する、永続的に樹立された特定の細胞培養物である。細胞株はまた、例えば受容体を見出すことができる"細胞下"画分に分画することもできる。例えば、受容体を発現する細胞は、細胞の細胞核、小胞体、ベシクルまたは膜表面に分画することができる。
本明細書において、用語"ベクター"は、細胞内に取り込まれるか、またはマイクロインジェクションまたは他の技術により細胞に挿入されうるような順で配置され適切な構成要素を含む核酸配列のことを言う。このような配列は、全体または一部分において、細胞内に天然に存在することもでき、天然に存在しないこともできる。一般的には、ベクターは、プロモーター(単数または複数)、ベクターでトランスフェクトされた細胞または生物(宿主)内に伝達され、そこで発現される対象の構造遺伝子ならびに、宿主における遺伝子導入および/または発現に必要な他の配列、例えば翻訳開始配列およびポリアデニル化配列を含む転写配列のプロセシングおよび翻訳を可能にする配列を含む。本発明において、用いられるベクターは、環状であることも線状であることもできるが、胚に挿入してトランスジェニック哺乳動物を作製するためには、好ましくは線状である。
“マーカー遺伝子”は、集団内で、処理された細胞の大部分からの、まれにトランスフェクトされた細胞の単離を容易にする選択マーカーである。このようなマーカーの非包括的なリストは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、キサンチン/グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、単純ヘルペスチミジンキナーゼおよびジフテリア毒素を含む。
本発明の種々の特徴および付随する利点は、添付図面と共に考慮されるときより良く理解されるため、それらはさらに十分に明らかとなるであろう。図面中、いくつかの図面を通じて、同じ参照文字は同じか同様な部分を示す。
CRP-/-マウスを作製するために用いられるCRP遺伝子の標的欠失の概略図である。Creリコンビナーゼのfloxed対立遺伝子への作用により、内因性CRP遺伝子からエクソン2が欠失している。 野生型対照と比較して、3匹のCRP-/-マウス由来の肝臓溶解物中にCRP mRNAの発現が見られなかったことを示す図である。マウスCRP用にデザインしたプライマーに基づくmRNA発現を測定するためにqRT-PCRを用いた。 肝臓溶解物についての抗マウスCRP抗体を用いたウェスタンブロット分析を示す図である。3匹の野生型対照由来の溶解物と比較して、3匹のCRP-/-マウス由来の溶解物はCRPタンパク質の発現を示さなかった。 パネル(A)および(B)である。CRP欠損(CRP-/-)マウスにおけるLPS誘発血漿TNF-αサイトカイン産生を示す。 野生型およびCRP欠損(CRP-/-)マウスにおけるLPS誘発血漿IL-6サイトカイン産生を示す図である。 パネル(A)および(B)である。野生型およびCRP欠損(CRP-/-)マウスにおけるLPS誘発血漿IL-10サイトカイン産生を示す。 CRP欠損(CRP-/-)マウスにおけるTNP-Ficoll誘発抗TNP IgM産生を示す図である。 パネル(A)および(B)である。CRP欠損(CRP-/-)マウスにおける抗CD3抗体誘発血漿インターフェロンガンマ(IFN-γ)サイトカイン産生を示す。 野生型およびCRP欠損(CRP-/-)マウスから得られた脾細胞における抗CD3抗体誘発血漿インターフェロンガンマ(IFN-γ)サイトカイン産生を示す図である。SEBおよびConAを対照として用いた。 パネル(A)である。野生型およびCRP欠損(CRP-/-)マウスにおける抗CD3抗体誘発血漿インターロイキン-2(IL-2)サイトカインレベルを示す。 野生型およびCRP欠損(CRP-/-)マウスから得られた脾細胞における抗CD3抗体誘発血漿インターロイキン-2(IL-2)サイトカインレベルを示す図である。SEBおよびConAを対照として用いた。
さらに詳細は無くとも、当業者は、前述の説明を用いて本発明を最大限に利用できると考えられる。従って、以下の好ましい特定の実施形態は、単に例示であると解釈されるべきであって、決して本発明の残りの部分を限定するものと解釈されるべきではない。上記および図中におけるすべての出願、特許および出版物のすべての開示は、その全体が参照により本願に組み込まれる。
前述の説明および以下の実施例において、温度は、すべて未補正で摂氏温度で示してある。特記しない限り、部および百分率はすべて重量基準による。
限定するものではない以下の実施例を参照して、本発明を以下に説明する。
動物
研究機関の動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)により制定された内部プロトコルおよびNIHガイドラインに従って、すべての動物実験を行った。
条件変異CRPマウスの作製
Lexicon Genetics, Inc.と共同して、CRP変異マウスを作製した。Lambda KOS系を用いて条件ターゲティングベクターを得た。loxP隣接エクソン2ヘテロ接合型マウスを、プロタミン-Creリコンビナーゼトランスジェニック系統と交配させた。遺伝子タイピングのためにPCRプライマーを用いた。プライマーBI.25-3(5’-GAA GTA TCT GAC TCC TTG GG-3’)およびBI.25-33(5’-ATG TAA CCT GGG AGA GGA C-3’)により、野生型対立遺伝子に関しては159塩基対フラグメントが生じ、loxPが導入された(floxed)対立遺伝子に関しては243塩基対フラグメントが生じるが、プライマーBI.25-33およびBI.25-27(5’-AAA GGG AGA GTA TCA GAA CC-3’)では、cre切除対立遺伝子に関する281塩基対フラグメントが検出される。欠失エクソン2ヘテロ接合型マウスを交配させてホモ接合型ノックアウトマウスを作製した。通常の無菌げっ歯類飼料およびボトル水を自由に摂取させた。8〜20週齢のマウスを分析に用いた。3匹の、野生型(B6.129)およびCRP-/-マウスから肝臓を採取し、液体窒素で瞬間凍結し、ホモジナイズし、溶解して、CRP mRNA用にデザインしたプライマーに基づくqRT-PCRを行った。同じ溶解物をゲル電気泳動および、抗マウスCRP抗体を用いたウェスタンブロット分析に用いてマウスCRPタンパク質を検出した。
免疫ブロット
3匹の、野生型(B6.129)およびCRP-/-マウスから肝臓を採取し、液体窒素で瞬間凍結し、ホモジナイズし、溶解して、CRP mRNA用にデザインしたプライマーに基づくqRT-PCRを行った。同じ溶解物をゲル電気泳動および、抗マウスCRP抗体を用いたウェスタンブロット分析に用いてマウスCRPタンパク質を検出した。
LPS誘発TNF-αおよびIL-10産生
LPS L-2280)200ngおよびd-ガラクトサミン1mgのパイロジェンフリー生理食塩水溶液0.2mlを動物に静脈内投与した。LPS/D-ガラクトサミン投与1時間後に、イソフルラン吸入により各マウスを麻酔し、後眼窩穿刺により採血した。14000rpmで〜5分間血液を遠心分離し、血漿を採取して、市販のマウスELISAキットを用いてTNF-αおよびIL-10をアッセイした。
α-CD3はサイトカイン産生を誘発した
ハムスターα-マウスCD3 1μgのDPBS溶液0.2mlを腹腔内注入により投与し、インターロイキン2(IL-2)および他のサイトカインの産生を刺激した。α-CD3の投与3時間後に、イソフルラン吸入によりマウスを麻酔し、後眼窩穿刺により採血した。14000rpmで〜5分間血液を遠心分離し、血漿を採取して、市販のマウスELISAキットを用いてIL-2、IL-4およびインターフェロンガンマ(IFN-γ)をアッセイした。
種々のマイトジェン刺激による脾細胞のin vitroサイトカイン産生
非操作野生型およびノックアウトマウスからの脾細胞を遠心分離し、再懸濁して5x106細胞/ml完全培地にした。この細胞標品200μl/ウェル(5x106細胞)を、以下の刺激物:プレートに結合させた1.25μg/mlα-マウスCD3抗体、1.25μg/ml可溶性α-マウスCD3抗体、1.25μg/mlコンカナバリンA、6.25μg/ml SEB、250μg/ml LPSまたは6.25ng/mlホルボール12‐ミリスタート13‐アセタート(PMA)625ng/mlイオノマイシンの1つと共に96ウェル平底培養プレートに加えた。24、48または72時間のサイトカインにプレートをセットアップし、マウスIL-2、IL-4およびIFN-γELISAキットを用いてサイトカインをアッセイした。
TNP-ficollを用いるT細胞非依存性抗体産生
後眼窩穿刺によりマウスを前採血し(バックグラウンド)、次いでTNP-Ficoll 10μgを腹腔内に注入した。チャレンジ7日後に、イソフルラン吸入により麻酔した。後眼窩穿刺により全血を採取し、ELISAによりTNPに対する抗体に関して血漿を分析した。
結果
トランスジェニック動物の作製
Lexicon Genetics, Inc(The Woodlands, TX)と共同してCRP変異マウスを作製した。Lambda KOS系を用いて条件ターゲティングベクターを得た(Wattler et. al. BioTechniques 26:1150-1160, 1999)。エクソン1および2特異的プライマーCrp-1[5’-GCAGCATCCATAGCCATGG-3’]およびCrp-3[5’-GAAGTATCTGACTCCTTGGG-3’]を用いるPCRにより、96スーパープールにアレイ化したLambda KOSファージライブラリーをスクリーニングした。PCR陽性ファージスーパープールをプレーティングし、プライマーCrp-1およびCrp-3をプローブとして得た338bpアンプリコンを用いるフィルターハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。ライブラリースクリーニングから2つのpKOSゲノムクローン、pKOS-68およびpKOS-83を単離し、配列および制限酵素分析により確認した。以下の配列を有する遺伝子特異的アームを用いた:
(5’-AGGACCAGATGACCCTTGATCCCAAACTCTAC-3’)および
(5’-GCAGGAGGTAGTATGGCTTGGATATGATTCTG-3’)。
URA3マーカーを含む酵母選択カセットに、PCRにより遺伝子特異的アームを付加した。酵母選択カセットおよびpKOS-68を酵母に同時形質転換し、相同組換えを行って、エクソン2を含む1688bp領域を酵母選択カセットと置換したクローンを単離した。この1688bpフラグメントを、独立してPCRにより増幅し、隣接するLoxP部位およびNeo選択カセット(Crp-pLFNeo)を導入する中間体ベクターpLF-Neoにクローニングした。続いて、Crp-pLFNeo選択カセットと酵母カセットを置換して、エクソン2に隣接するLoxP部位を有する条件Crpターゲティングベクターを完成した。129/SvEvBrd(Lex-1)ES細胞に、NotIで線状化したターゲティングベクターをエレクトロポレーションで導入した。G418/FIAU耐性ES細胞クローンを単離し、正しくターゲットされたクローンを同定し、プライマーCrp-30[5’-CTTCAAAGCCTCTCAATTGCT-3’]およびCrp-29[5’-TTGTATTGCTCTGCCAGTCAA-3’]を用いるPCRにより作製された278bp5’外部プローブ(30/29)ならびにプライマーCrp-31[5’-GGAGGTAGTTCCAATTTTGG-3’]およびCrp-32[5’-AAAGGATGTGACTAGCTTGG-3’]を用いるPCRにより増幅した284bp3’外部プローブ(31/32)を用いるサザン分析により確認した。プローブ30/29を用いるサザン分析により、Nhe I消化ゲノムDNAにおける15.7Kb野生型バンドおよび17.7Kb変異体バンドが検出され、プローブ31/32でもまた、Nhe I消化ゲノムDNAにおける15.7Kb野生型バンドおよび17.7Kb変異体バンドが検出された。2つの標的ES細胞クローンをC57BL/6(アルビノ)胚盤胞にマイクロインジェクションした。得られたキメラをC57BL/6(アルビノ)雌と交配させ、Crp条件変異に関してヘテロ接合型であるマウスを作製した。これらのマウスとプロタミン-Creリコンビナーゼトランスジェニック系統(O’Gorman et.al.PNAS94:14602-14607、1997)とを交配させることによりエクソン2が欠失した。遺伝子タイピングのために3つのPCRプライマーを用いた。プライマーBI.25-3(5’-GAA GTA TCT GAC TCC TTG GG-3’)およびBI.25-33(5’-ATG TAA CCT GGG AGA GGA C-3’)により野生型対立遺伝子の159塩基対フラグメントおよびfloxed対立遺伝子の243塩基対フラグメントが得られるが、プライマーBI.25-33およびBI.25-27(5’-AAA GGG AGA GTA TCA GAA CC-3’)では切除対立遺伝子の281塩基対フラグメントが検出される。欠失エクソン2ヘテロ接合型マウスを交配させてホモ接合型ノックアウトマウスを作製した。通常の無菌げっ歯類飼料(LabDietのPicoLab rodent20、インディアナ州リッチモンド)およびボトル水を自由に摂取させた。8〜20週齢のマウスを分析に用いた。
概略図を図1に示す。
組織サンプルにおけるCRP発現の分析
製造業者の使用説明書により、TAQMANプローブを用いて発現研究を行った。以下のプローブ:
Mm02601590_g1(CRP1)
Mm00432680_g1(CRP2)
を含むTAQMANアッセイオンデマンド(assay-on-demand)マウスCRPプローブをABI社(Applied Biosystem, Inc.)に注文した。
これらのプローブ配列は共にエクソン・イントロン境界のためにデザインされている。遺伝子発現のプロービングに続いて、数値をマウスGAPDHレベル(プローブMm99999915_g1を用いて)で正規化した。結果を図2に示す。ホモ接合型ノックアウト動物から得られた組織サンプルは、野生型動物から得られた同一組織の試料と比較してCRP発現はほとんど検出されなかった。これらの研究は、トランスジェニックCRPノックアウト動物が遺伝子レベルでCRP遺伝子を欠損していたことを示している。
免疫ブロット分析を用いて、タンパク質レベルで、これらの研究が確認された。3匹の、野生型(B6.129)およびCRP-/-マウスから肝臓を採取し、液体窒素で瞬間凍結し、ホモジナイズし、溶解して、CRP mRNA用にデザインしたプライマーに基づくqRT-PCRを行った。同じ溶解物をゲル電気泳動および、抗マウスCRP抗体を用いたウェスタンブロット分析に用いてマウスCRPタンパク質を検出した。結果を図3に示す。野生型マウスの肝臓において、CRPタンパク質は常に発現されていたが、ホモ接合型ノックアウト動物から得られた肝細胞は測定可能なタンパク質の発現を示さなかった。これらの研究は、トランスジェニックCRPノックアウト動物において、CRPタンパク質の発現が欠損していたことを示している。
CRPノックアウト動物の表現型を研究するために、宿主域の解析を行った。一研究においてCRP欠損(CRP-/-)マウスをLPSで刺激し、血漿TNF-αサイトカインレベルを分析した。野生型動物と比較して、CRP-/-マウスは、in vivoでLPS刺激後にTNF-α産生が有意に低下していたことが見出された。雌(n=5)および雄(n=8)マウスは、共にレベルの低下を示した。データをMean+/-SEM(#p<0.05、野生型に対して)で示した。結果を図4(A)および(B)に示す。
野生型動物およびCRP欠損(CRP-/-)動物の免疫学的表現型間のさらなる差異が、LPSチャレンジ動物における血漿IL-6レベルに関して観察された。LPSは、CRP欠損(CRP-/-)マウスにおける血漿IL-6サイトカイン産生を誘発した。CRP-/-マウスは、in vivoでLPS刺激後にIL-6産生が有意に増加していたことが見出された。雌および雄マウスは共にレベルの上昇を示した。結果を図5に示す。
CRP欠損(CRP-/-)マウスは、in vivoでLPS刺激後にIL-10産生が有意に低下していたことがさらに見出された。図6(A)および(B)に示すように、雌(n=4)および雄(n=8)マウスは共に、野生型動物と比較してIL-10レベルが低下していた。差異は有意であった。データをMean+/-SEM(#p<0.05、野生型に対して)で示した。
図7に示す結果からわかるように、野生型と比較して、CRP-/-マウスにおいて、TNP ficollでの免疫後にT細胞非依存性抗体産生(IgM)が有意に上昇していた。
次のステップとして、野生型およびCRP欠損動物における抗CD3抗体の効果を分析した。図8のパネル(A)および(B)に示すように、抗CD3抗体への暴露によりCRP欠損(CRP-/-)マウスにおける血漿インターフェロンガンマ(IFN-γ)サイトカイン産生が低下した。in vivoでの抗CD3刺激後に、CRP-/-マウスはINFγ産生の有意の低下を示した。雌(n=4)および雄(n=4)マウスは共にレベルの低下を示した。
脾細胞を用いてin vitroで同様な研究を行った。その結果を図9に示す。図に示すように、抗CD3抗体で処理した脾細胞は、CRP欠損(CRP-/-)マウスから得た脾細胞よりも、インターフェロンガンマ(IFN-γ)サイトカイン産生が増加していた。CRP-/-マウスからの脾細胞は、野生型マウスと比較して、in vitroで抗CD3刺激によるINFγ産生が有意に低下していた。雌(n=4)および雄(n=4)マウスからの脾細胞は、共にレベルの低下を示した。SEBおよびConAに誘発される活性化は共にINFγ産生に差異を生じなかったので、この低下は抗CD3刺激に特異的であった。データはMean+/-SEM(#p<0.05、野生型に対して)で示した。
次に、野生型およびCRP欠損(CRP-/-)マウスにおいて、血漿インターロイキン-2(IL-2)サイトカインレベルに対する抗CD3抗体の効果を調べた。in vivoで抗CD3刺激後に、CRP-/-マウスはIL-2産生の有意の低下を示した。雌(n=6)および雄(n=6)マウスは共にレベルの低下を示した。結果を図10に示す。
血漿インターロイキン-2(IL-2)サイトカイン産生に対する抗CD3抗体の効果を、野生型およびCRP欠損(CRP-/-)マウス由来の脾細胞を用いてin vitroで分析した。脾細胞における抗CD3抗体誘発血漿インターロイキン-2(IL-2)サイトカインレベルがCRP欠損(CRP-/-)マウスから得られたことが見出された。CRP-/-マウスからの脾細胞は、野生型マウスと比較して、in vitroで抗CD3刺激によるIL-2産生の有意の低下を示した(図11)。雌(n=4)および雄(n=4)マウスからの脾細胞は共にレベルの低下を示した。SEBおよびConAに誘発される活性化は共にINF-γ産生に差異を生じなかったので、この低下は抗CD3刺激に特異的であった。データはMean+/-SEM(#p<0.05、野生型に対して)で示した。
さらに詳細は無くとも、当業者は、前述の説明を用いて本発明を最大限に利用できると考えられる。従って、前述の好ましい特定の実施形態は、単に例示であると解釈されるべきであって、決して本発明の残りの部分を限定するものと解釈されるべきではない。
前述の説明および本実施例において、温度は、すべて未補正で摂氏温度で示してある。特記しない限り、部および百分率は、すべて重量基準による。
前述の実施例は、本発明の一般的または具体的に記載された反応剤および/または運転条件と前述の実施例において用いられるものとを置き換えることにより同様に首尾よく繰り返すことができる。
前述の説明から、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確かめることができ、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明に種々の変更および修飾を行って、種々の用途および条件に本発明を適合させることができる。
前述の情報および当該技術分野で入手可能な情報を用いて、当業者は本発明を最大限に利用できると考えられる。本明細書に記載されている本発明の精神と範囲から逸脱することなく、変更および修飾を行うことができることは、当業者には明らかであろう。本明細書に記載のトピックの表題は、本願において特定の情報が見出せることの案内を意味するものであって、このようなトピックに関する情報が見出せる本願における唯一の供給元であることを意味するものではない。上記のすべての出版物および特許は、参照により本願に組み込まれる。

Claims (29)

  1. 破壊された、C反応性タンパク質(CRP)またはそのホモログをコードする遺伝子を含むトランスジェニック動物。
  2. 前記CRP遺伝子または前記そのホモログのヘテロ接合型またはホモ接合型破壊を含む、請求項1記載の動物。
  3. 前記CRP遺伝子または前記そのホモログのホモ接合型破壊を含む、請求項1記載の動物であって、前記ホモ接合型破壊が前記動物における機能性CRPタンパク質または前記そのホモログの発現を妨げる、前記請求項1記載の動物。
  4. 前記CRP遺伝子または前記そのホモログが、全身的または組織特異的に破壊された、請求項3記載の動物。
  5. 前記CRP遺伝子または前記そのホモログが全身的に破壊された、請求項3記載の動物。
  6. 前記CRP遺伝子または前記そのホモログの生殖系列変異または欠失を含む、請求項3記載の動物。
  7. 前記CRP遺伝子または前記そのホモログの組織特異的変異または欠失を含む、請求項3記載の動物。
  8. 前記CRP遺伝子または前記そのホモログの1以上のエクソンのホモ接合型破壊を含む、請求項3記載の動物。
  9. 野生型CRP遺伝子を有する動物と比較して改変された表現型を含む請求項3記載の動物であって、前記改変された表現型が、
    (1)LPSチャレンジ後のサイトカイン産生の低下;
    (2)α-CD3刺激後のT細胞のサイトカイン産生の低下;
    (3)TNP-ficollでの免疫後のT細胞非依存性抗体産生の増加;または
    (4)(1)、(2)および(3)の任意の組み合わせ
    である、前記請求項3記載の動物。
  10. 前記改変された表現型が、
    (1)LPSチャレンジ後のTNF-αおよびIL-10サイトカイン産生の低下;
    (2)α-CD3刺激後のINF-γおよびIL-2産生の低下;
    (3)IgM抗体産生の増加;または
    (4)(1)、(2)および(3)の任意の組み合わせ
    を含む、請求項9記載の動物。
  11. 線虫、ゼブラフィッシュ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌまたはウシである、請求項3記載の動物。
  12. マウスである、請求項3記載の動物。
  13. 請求項1記載の動物由来の器官、組織、細胞、細胞株または細胞下画分。
  14. 前記動物の胚から単離される、請求項13記載の細胞または細胞株。
  15. 前記CRP遺伝子の機能的発現を欠く、請求項3記載の動物由来の器官、組織、細胞、細胞株または細胞下画分。
  16. 前記動物の肝臓由来の、請求項15記載の器官、組織、細胞、細胞株または細胞下画分。
  17. 請求項3記載の動物を得る方法であって、部位特異的組換え酵素の認識部位に隣接するCRP遺伝子またはそのエクソンを有するトランスジェニック動物が、構成的活性型リコンビナーゼまたは誘導リコンビナーゼを発現するトランスジェニック動物と交配される前記方法。
  18. 認識部位がLoxPであり、リコンビナーゼがCreである、請求項16記載の方法。
  19. リコンビナーゼが組織特異的プロモーターの転写調節下にある、請求項16記載の方法。
  20. エクソンが前記CRP遺伝子のエクソン2全体を含む、請求項16記載の方法。
  21. 動物のCRP遺伝子に相同なDNA配列に隣接する選択マーカー配列を含むCRP DNAノックアウト構築物であって、前記構築物が前記動物に胎生期に導入されたとき、前記選択マーカー配列が前記マウスにおけるCRP遺伝子を破壊する前記構築物。
  22. 請求項21記載のCRP DNAノックアウト構築物を含むベクター。
  23. 図1に示されるようにCRP標的対立遺伝子を含む、請求項21記載のCRP DNAノックアウト構築物。
  24. 炎症性疾患治療薬のスクリーニング方法であって、
    (a)請求項3記載の動物である実験動物に試験化合物を投与し;
    (b)前記試験化合物への前記実験動物の反応を測定し;
    (c)機能性CRP遺伝子を有する対照動物に対して前記実験動物の反応を比較し;
    (d)前記動物と前記対照動物との間で観察された反応の差異に基づいて薬剤を選択すること
    を含む前記方法。
  25. 前記実験動物がCRPノックアウト動物であり、前記対照動物が前記CRP遺伝子の野生型またはヘテロ接合型欠失を含む、請求項24記載の方法。
  26. 免疫増強剤のスクリーニング方法であって、
    (a)CRPノックアウト動物である実験動物に試験免疫増強剤を投与し;
    (b)IL-2、IL-10またはTNF-αである少なくとも1つのサイトカインの、前記実験動物におけるレベルを測定し;
    (c)前記実験動物における前記IL-2、IL-10またはTNF-αのレベルを対照動物と比較し;
    (d)前記実験動物における前記IL-2、IL-10またはTNF-αの、前記対照動物と比較した上昇に基づいて薬剤を選択すること
    を含む前記方法。
  27. 実験動物が、炎症性刺激を受けた動物をさらに含む、請求項27記載の方法。
  28. 免疫抑制剤のスクリーニング方法であって、
    (a)CRPノックアウト動物である実験動物に試験免疫抑制剤を投与し;
    (b)IL-6である少なくとも1つのサイトカインの、前記実験動物におけるレベルを測定し;
    (c)前記実験動物における前記IL-6のレベルを対照動物と比較し;
    (d)前記実験動物における前記IL-6の、前記対照動物と比較した低下に基づいて薬剤を選択すること
    を含む前記方法。
  29. 実験動物が、炎症性刺激を受けた動物をさらに含む、請求項28記載の方法。
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