JPH1056915A - Ldlレセプター遺伝子不活性化動物 - Google Patents

Ldlレセプター遺伝子不活性化動物

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JPH1056915A
JPH1056915A JP9155510A JP15551097A JPH1056915A JP H1056915 A JPH1056915 A JP H1056915A JP 9155510 A JP9155510 A JP 9155510A JP 15551097 A JP15551097 A JP 15551097A JP H1056915 A JPH1056915 A JP H1056915A
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JP
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gene
cells
ldl
mouse
cell
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JP9155510A
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Inventor
Osamu Shiho
理 志甫
Mayumi Nishida
真由美 西田
Mitsugi Nakada
貢 中田
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Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Takeda Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高脂血症治療モデルに有用な病体モデル動物の
作製。 【解決手段】LDL−R遺伝子が不活性化された非ヒト
哺乳動物胚幹細胞およびこれを用いて得られるLDL−
R遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物の提供。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 〔発明の詳細な説明〕
【発明の属する技術分野】本発明は、LDLレセプター
(以下、LDL−Rと略称することがある)遺伝子が不
活性化された非ヒト哺乳動物の胚幹細胞およびLDL−
R遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物に関する。
【0002】
【従来の技術】発生工学的技術の発展ならびに分子生物
学の知識の急激な蓄積に伴い、遺伝子を人為的に操作
し、さらに動物個体へ導入することが可能になり〔Gord
on, J.W.ら, プロシーディングス オブ ナショナル
アカデミー オブ サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sc
i.) USA, 77:7380−7384,1980〕、元
来その生物に備わっていない外来性の遺伝形質を人為的
に付加、あるいは生物が持っている内在性の遺伝形質の
発現を抑制する方法も開発されるにいたり、様々な形質
転換動物が作り出されている。このような形質転換動物
は、遺伝子工学等の技術によって単離され、クローン化
された様々な遺伝子の機能を明らかにする上で、従来
は、株化細胞や初代培養細胞など体外培養細胞を用いて
いたため、遺伝子の機能解析について得られる知見が限
られていたが、かかる遺伝子の機能解析を個体レベルで
研究することが可能となる点で上述の形質転換動物は重
要である。特に、クローン化された遺伝子の生物体内で
の生理学的機能の解析や遺伝子疾患のモデル系として、
この形質転換動物を利用した実験や研究が盛んになって
きている。胚幹細胞(Embryonic stem cell:ES細
胞)は、受精後の初期胚である胚盤胞の内部に存在する
内部細胞塊から樹立され、未分化状態を保ったまま増
殖、培養可能な細胞株である。この細胞は、生体のあら
ゆる種類の細胞に分化することができる多分化能を有し
ており、正常初期胚に注入すると胚体の形成に参加して
キメラ動物を形成することができる〔Evans M.J. およ
びKaufman M.H., ネイチャー(Nature),第292巻,
154頁(1981)〕。この性質を利用して、様々な
遺伝子変異動物の作出が試みられてきた。その歴史は1
981年のEvans 及び Kaufman によるES細胞の樹立
に始まり、BradleyらによるESキメラマウスの作製
〔ネイチャー,第309巻,255頁(1984)〕に
より本格的な研究が開始された。Thomas 及び Capecchi
がES細胞の遺伝子相同組換え〔セル(cell)第51
巻,503頁(1987)〕に、続いてKoller らのグ
ループなど3組の研究グループがES細胞形質のGermli
ne Transmission に次々に成功し〔プロシーディングス
オブ ナショナル アカデミーオブ サイエンス(Pr
oc. Natl. Acad. Sci.)USA, 第86巻,8927頁
(1989)〕、遺伝子欠損マウスの作製とこれを用い
た研究が急速に進展してきた。
【0003】現在までに樹立が報告されているES細胞
には、Evans 及び Kaufman のEK細胞〔ネイチャー,
第309巻,255頁(1984)〕の他に、Doetschm
anのES−D3細胞〔ジャーナル オブ エンブリオロ
ジー アンド エクスペリメンタル モルフォロジー
(J. Embryol. Exp. Molph.)第87巻,27頁(19
81)〕、Robertson のCCE細胞〔ネイチャー,第3
23巻,445頁(1986)〕、Ledermann 及び Bur
kiのBL/6III細胞〔エクスペリメンタルセル リサ
ーチ(Exp. Cell Res.)第197巻,254頁〕等があ
るが、これらの大部分が129系のマウスより樹立され
たものである。ES細胞は特定の遺伝子を修飾する遺伝
子ターゲティング等において利用価値が非常に高いにも
かかわらず、その樹立や未分化状態を保ったままでの継
代維持が困難であるため、利用が制限されているという
のが現状である。ES細胞を用いた動物疾患モデルの作
製を一般化するためには、絶えず良好なES細胞を樹
立、供給していく体制を確立することが望まれている。
このようなES細胞を用いて作出された遺伝子発現不全
動物としては、Hooper等 ネイチャー(Nature), 第3
26巻,292頁(1987年)及びKnehn等ネイチャ
ー(Nature),第326巻,295頁(1987年)の
自然突然変異ES細胞を用いたHPRT遺伝子欠損マウ
ス、Donehower等 ネイチャー(Nature),第356巻,
215頁(1992年)の癌抑制遺伝子の一つであるp
53を欠失したp53欠失マウス、Zijlstra等 ネイチ
ャー(Nature),第344巻,742頁(1990年)
のβ2ミクログロブリン遺伝子変異マウス、免疫疾患モ
デルマウスの一つであるSinkai等 セル(Cell),第6
8巻,855頁(1992年)のRAG−2(V(D)J
recombination activation gene)変異マウス、Glimc
her等 サイエンス(Science),第253巻,1417
頁(1991年)及びCosgrove等 セル(Cell),第6
6巻,1051頁(1991年)のMHC classII変
異マウス、発育関連疾患モデルマウスの一つとしてMacM
ahon等 セル(Cell),第62巻,1073頁(199
0年)のint−1遺伝子欠損マウス及びSoriano等 セル
(Cell),第64巻,693頁(1991年)の大理石
病様症状を呈するsrc遺伝子欠損マウスなどがそれぞれ
報告されている。
【0004】LDL−Rは血漿中からIDL(choleste
rol-rich intermediate density lipoproteins)とLD
L(low density lipoproteins)を取り除くことによっ
て血漿中のコレステロール濃度をコントロールしている
(Brown, M. S. 等、サイエンス、232巻、34頁、
1986)。IDLおよびLDLの肝臓への取り込み
は、LDL−Rのハイ アフィニティー(high affinit
y)リガンドの apo Eの含量に依存しているが、インテ
スティナル カイロミクロン(Intestinal chylomicro
n)の トリグリセライド−デプレテッド コレステロー
ル−リッチ レムナント(triglyceride-depleted chole
strol-rich remnant)も カイロミクロン レムナント
(chylomicron remnant)レセプター、LRP(LDL
receptor related protein)だけでなく、LDL−Rを
介しても肝臓へ取り込まれることが分かっている(Brow
n, M. S. 等、Curr. Opin. in Lipidol.、2巻、65
頁、1991)。LDL−R遺伝子の発現不全は、ヒト
(Hobbs, H. H. 等、Hum. Mutat. 1巻、445頁、1
992)、ワタナベウサギ(Watanabe, Y. 等、Atheros
cleorosis. 56巻、71頁、1985)あるいはリー
サスモンキー(Scanu, A. M. J. Lipid Res. 29巻、
1671頁、1988)において、高コレステロール血
症を引き起こすことが知られている。特に、ヒトやワタ
ナベウサギでは、若年から発症する重傷の動脈硬化症の
起因遺伝子であることが分かっているばかりでなく、I
DL、LDLのクリアランスの遅延とIDLからLDL
への転換の促進も認められている(Souter, A. K. 等、
Atheroscleorosis 43巻、217頁、1982、Kita,
T. 等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79巻、56
93頁、1982)。LDL−R遺伝子以外にも高脂血
症に係わる遺伝子の存在が示唆されているが、これらの
遺伝子は同定が難しく明らかにはされていない。
【0005】マウス及びラットではLDLの代謝が他の
動物と異なっている(Spady, D. K.等、Annu. Rev. Nut
r. 13巻、355頁、1993)ことから、マウスや
ラットでは一般に高脂血症や動脈硬化症が起きにくいと
されてきた。しかし、これらの汎用されている実験動物
で、高脂血症モデルを作製することは病態の解析や本疾
患に対する治療薬の開発にとって非常に重要である。そ
こで、本発明者らはマウスにおいてそのLDL−R遺伝
子を相同組換え法によって特異的に修飾し、LDL−R
遺伝子の発現が抑制されたマウスを作製することに成功
し、かかるマウスが高脂血症モデルとして有用であるこ
とを確認した。本技術はラットをはじめ他のヒト以外の
哺乳動物にも応用可能であり、本発明はヒト以外のすべ
ての哺乳動物のLDL−R遺伝子発現抑制による高脂血
症モデルを提供するものである。また、翻って高脂血症
患者の治療におけるLDL−R遺伝子導入による遺伝子
治療の評価にも本モデル動物を応用できる。さらに、動
脈硬化症についてもその原因は多岐にわたっているが、
高脂血症はその中で最も有力な危険因子である。本モデ
ル動物は加齢に伴い、また、高脂肪食で飼育することに
より動脈硬化症を呈するものであり、この意味でも有用
性が高い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、遺伝子転移操
作を用いて病態モデル動物の作出に応用しうるES細胞
を提供、またはこのようなES細胞を用いてLDL−R
遺伝子不全非ヒト哺乳動物を作出することができれば、
高脂血症などの治療薬を見い出すのに有用なスクリーニ
ング系の確立、高脂血症患者などの治療のためにLDL
−R遺伝子を導入する遺伝子治療の評価などが可能にな
ると考えられる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討を重ね、ヒト白血病抑制因子
(Leukemia Inhibitory Factor;LIF)を産生するネ
オマイシン耐性、ハイグロマイシン耐性のマウス胎仔線
維芽細胞由来のSTO細胞〔ザ ニュー バイオロジス
ト(The New Biologist)第3巻,861(199
1)〕をフィーダー細胞として用い、培地中にLIFを
通常使用量の5倍量加える条件下で、BDF1(C57
BL/6 X DBA/2)マウス及びC57BL/6
マウスの初期胚からキメラ形成能を有するES細胞株を
それぞれ樹立することに成功し、このES細胞が高率に
生殖系列キメラ形成能を有することを確認した。さらに
樹立したES細胞株を用いて、遺伝子相同組換え法によ
りLDL−R遺伝子欠損マウスを作出し、この知見に基
づいて検討を重ね、本発明を完成させた。
【0008】すなわち本発明は、(1)外来性レポータ
ー遺伝子を有し、LDLレセプター遺伝子が不活性化さ
れた非ヒト哺乳動物胚幹細胞、(2)レポーター遺伝子
が大腸菌βガラクトシダーゼ遺伝子である上記(1)記
載の胚幹細胞、(3)ネオマイシン耐性でかつチミジン
キナーゼ非感受性である上記(1)記載の胚幹細胞、
(4)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である上記(1)記
載の胚幹細胞、(5)ゲッ歯動物がマウスである上記
(4)記載の胚幹細胞、(6)上記(1)記載の胚幹細
胞を用いて得られるLDLレセプター遺伝子発現不全非
ヒト哺乳動物、(7)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物であ
る上記(6)記載の動物、および(8)ゲッ歯動物がマ
ウスである上記(7)の動物などを提供するものであ
る。
【0009】本発明におけるLDL−R遺伝子が不活性
化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動
物のLDL−Rゲノム遺伝子に人為的に変異を加えるこ
とにより遺伝子の発現能を抑制するもしくは該遺伝子が
コードしているLDL−R蛋白の活性を実質的に喪失さ
せることにより、遺伝子が実質的にLDL−Rの発現能
を有さない(以下、LDL−Rノックアウト遺伝子と称
することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(ES細
胞)をいう。ここで、非ヒト哺乳動物としては、個体発
生及び生涯のサイクルが短くかつ繁殖が比較的容易なマ
ウス、ラット等のゲッ歯動物が動物モデルを作出するの
に用いるうえで好ましいが、特にこれに限定されるもの
ではなく、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ等もこれ
に含まれる。上記でいうLDL−Rゲノム遺伝子に人為
的に変異を加える方法としては、遺伝子工学的手法によ
り該遺伝子配列の一部又は全部の削除、他遺伝子を挿入
または置換させることによって行ない得る。具体例とし
ては、本発明のLDL−R遺伝子不活性化ES細胞(L
DL−RノックアウトES細胞)は、例えば、目的とす
る非ヒト哺乳動物のLDL−Rゲノム遺伝子を単離し、
そのエキソン部分(好ましくはエキソン5部分)に外来
性薬剤耐性遺伝子あるいは外来性レポーター遺伝子等を
挿入することによりエキソンの機能を抑制または破壊す
る、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転
写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナ
ルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成
できなくすることによって結果的に遺伝子を破壊するよ
うに構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ター
ゲッティングベクターと略する)を例えば自体公知の相
同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたE
S細胞についてLDL−R遺伝子上あるいはその近傍の
DNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーシ
ョン解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA
配列とターゲッティングベクター作製に使用したLDL
−R遺伝子以外の近傍領域のDNA配列をプライマーと
したポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)
法による解析により、LDL−R遺伝子が実質的にLD
L−Rの発現能を有さないLDL−RノックアウトES
細胞を選別して得ることができる。上記「薬剤耐性遺伝
子」は抗生物質などの薬剤耐性に関与する遺伝子を示
し、導入される遺伝子が細胞において発現したかを選抜
するマーカーとして利用される。具体的には、ネオマイ
シン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、アンピ
シリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、スト
レプトマイシン耐性遺伝子などがあげられ、ネオマイシ
ン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、特にネオ
マイシン耐性遺伝子が好ましい。上記「レポーター遺伝
子」とは、遺伝子発現の指標になる遺伝子群のことを示
し、通常、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺
伝子が利用されることが多く、遺伝的バックグラウン
ドがないもの、遺伝子発現を定量的に行える高感度の
方法があるもの、形質転換細胞への影響が少ないも
の、発現部位の局在性が示せるものなどが好ましく用
いられる(植物細胞工学、2:721、1990)。ま
た、上記「薬剤耐性遺伝子」なども同様の目的で使用さ
れるが、「レポーター遺伝子」は、単に導入される遺伝
子が細胞において発現したかどうかだけではなく、どの
組織でいつ発現したかを調べることができ、しかも定量
的に発現量を精確に調べることができる点において、異
なるものである。具体的には、lacZ(大腸菌β−ガラ
クトシダーゼ遺伝子)、CAT(クロラムフェニコール
アセチルトランスフェラーゼ遺伝子、GUS(β−グル
クロニダーゼ遺伝子)、ルシフェラーゼ遺伝子、エクオ
リン遺伝子、タウマリン遺伝子などがあげられ、なかで
もlacZ、CAT、特に、lacZが好ましい。LDL−R
ゲノム遺伝子に人為的に変異を加える好ましい方法とし
ては目的とする非ヒト哺乳動物のLDL−Rゲノム遺伝
子を単離し、そのエキソン部分(好ましくはエキソン5
部分)に外来性ネオマイシン耐性遺伝子または/および
外来性lacZを挿入することによりエキソンの機能を破
壊し、LDL−R遺伝子が実質的にLDL−Rの発現能
を有さないLDL−RノックアウトES細胞を作出する
方法などがあげられる。この操作において、LDL−R
ゲノム遺伝子は、例えば既報のヒトLDL−RcDNA
配列〔ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリ
第266巻,10406頁(1991)〕など公知のc
DNA配列に基づき、センスプライマーとアンチセンス
プライマーを用いたPCR法などの公知方法によって単
離することができる。
【0010】相同組換え法等によりLDL−R遺伝子を
不活化させる元のES細胞としては、例えば前述のよう
な既に樹立されたものを用いてもよく、また公知のEran
s とKaufman の方法に準じて新しく樹立したものでもよ
い。例えば、マウスのES細胞の場合、現在一般的には
129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景
がはっきりしていないので、これに変わる純系で免疫学
的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目
的で、例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6
の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善した
BDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF
1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BD
F1マウスは採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるとい
う利点に加えてC57BL/6マウスを背景に持つの
で、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウス
を作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロス
する事でその遺伝的背景をC57BL/6マウスに変え
る事が可能である点で有利に用いうる。これらLDL−
Rノックアウト遺伝子が相同組換え法等により導入され
たES細胞を選抜するためには、上述の外来性レポータ
ー遺伝子、外来性薬剤耐性遺伝子など含むマーカー遺伝
子をLDL−Rノックアウト遺伝子に自体公知の方法で
組み込み、ES細胞内で発現させることによってなさ
れ、例えば、外来性レポーター遺伝子として大腸菌βガ
ラクトシダーゼ遺伝子を有し、LDLレセプターが不活
性化されたES細胞、ネオマイシン耐性でかつチミジン
キナーゼ非感受性であるLDLレセプターが不活性化さ
れたES細胞などが好ましく、特に、大腸菌βガラクト
シダーゼ遺伝子を有し、ネオマイシン耐性でかつチミジ
ンキナーゼ非感受性であるLDLレセプターが不活性化
されたES細胞が好ましく用いられる。
【0011】また、ES細胞を樹立する場合、一般には
受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、本発明におい
てはこれ以外に8細胞期胚を採卵し、胚盤胞まで培養し
て用いることにより、効率よく多数の初期胚を取得でき
ることを見い出している。また、雌雄いずれのES細胞
を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キ
メラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手
間を削減するためにも、できるだけ早く雌雄の判別を行
うことが望ましい。ES細胞の雌雄の判定方法として
は、例えばPCR法によりY染色体上の性決定領域の遺
伝子を増幅、検出する方法をその1例として挙げること
ができる。この方法を使用すれば、従来核型分析をする
のに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コ
ロニー程度のES細胞数(50個)で済むので、培養初
期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別
で行うことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能に
したことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。ま
た、第二次セレクションとしては、例えばG−バンディ
ング法による染色体数の確認等により行うことができ
る。得られるES細胞の染色体数は正常数であることが
望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場
合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細
胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細
胞)をクローニングすることが望ましい。
【0012】このようにして得られた胚幹細胞株の増殖
性は通常大変良いが、個体発生できる能力を失いやすい
ので、注意深く継代培養することが必要である。例え
ば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上
でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養
器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気あるいは
5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培
養するなどの方法で培養し、継代時には例えばトリプシ
ン/EDTA溶液(好ましくは、0.025%トリプシ
ン、1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに
用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられ
る。このような継代は通常1−3日毎に行うが、この
際、細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けら
れた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。本
発明のLDL−R遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物は、L
DL−R遺伝子の不活性化により、正常なLDL−R遺
伝子を有する同種の動物に対して、その遺伝子発現量が
50%以下に減退させられた非ヒト哺乳動物であり、例
えば、後述の実施例に示すように該動物のmRNA量を
公知方法を用いて測定し、間接的にその発現量を比較す
ることにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、病態動物モデル系の作製の
面から固体発生及び生物サイクルが比較的短く、また繁
殖が容易なマウス、ラット等のゲッ歯動物が好ましい
が、特にこれらに限らず例えば、ウサギ,ブタ,ウシ,
ヤギ,ヒツジ,イヌ,ネコ等もこれに含まれる。
【0013】本発明のLDL−R遺伝子発現不全(LD
L−Rノックアウト)非ヒト哺乳動物は、例えば、述の
ようにして作製したターゲッティングベクターを、マウ
ス胚幹細胞あるいはマウス卵細胞に自体公知の方法(例
えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム
法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェク
ション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラ
ン法など)によって導入し、これによりLDL−R遺伝
子が不活性化されたターゲッティングベクターのDNA
配列が、遺伝子相同組換えによりマウス胚幹細胞あるい
はマウス卵細胞の染色体上のLDL−R遺伝子と入れ換
わることにより、LDL−R遺伝子をノックアウトさせ
ることができる。LDL−R遺伝子がノックアウトされ
た細胞は、LDL−R遺伝子上あるいはその近傍のDN
A配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション
解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列
とターゲッティングベクターに使用したマウスLDL−
R遺伝子以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとし
たPCR法による解析で判定することができる。非ヒト
哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えに
よりLDL−R遺伝子の不活性化された細胞株をクロー
ニングし、その細胞を適当な時期、例えば8細胞期の非
ヒト哺乳動物胚あるいは胚盤胞に注入し、作製したキメ
ラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植す
る。作出された動物は正常なLDL−R遺伝子座をもつ
細胞と人為的に変異したLDL−R遺伝子座をもつ細胞
との両者から構成されるキメラ動物であり、該キメラ動
物の生殖細胞の一部は変異したLDL−R遺伝子座をも
つ。このようなキメラ個体と正常個体を交配することに
より得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を
加えたLDL−R遺伝子座をもつ細胞で構成された個体
が得られ、例えばコートカラーの判定等により、これを
選別することができる。このようにして得られた個体
は、通常LDL−Rヘテロ発現不全個体であり、LDL
−Rヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔か
らLDL−Rホモ発現不全個体を得ることができる。
【0014】卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞
核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入
することにより、ターゲッティングベクターを染色体内
に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得るこ
とができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物
は、遺伝子相同組換えによってLDL−R遺伝子座に変
異のあるものを選択することにより得られる。このよう
にしてLDL−R遺伝子がノックアウトされている個体
は、交配により得られた動物個体も該遺伝子がノックア
ウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継
代を行うことができる。さらに、生殖系列の取得および
保持についても常法に従えばよい。すなわち該不活化遺
伝子の保有する雌雄の動物を交配することにより、該不
活化遺伝子を相同染色体の両方に持つホモザイゴート動
物を取得し、この雌雄の動物を交配することにより、す
べての子孫が該不活化遺伝子を有するように繁殖継代す
る。本発明のLDL−R遺伝子が不活性化された非ヒト
哺乳動物胚幹細胞は、LDL−R遺伝子発現不全非ヒト
哺乳動物を作出する上で、非常に有用であり、また、本
発明のLDL−R発現不全マウスではLDL−Rによる
肝臓へのIDL、LDLの取り込みが低下し、その結
果、血漿中IDL、LDL濃度が増加する。さらに本マ
ウスは加齢に伴ない、また、高脂肪食を与えることによ
り動脈硬化症を呈することから、高脂血症だけでなく動
脈硬化モデル動物としても有用である。また、本発明の
LDL−R遺伝子が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹
細胞を用いて得られるLDL−R遺伝子発現不全非ヒト
哺乳動物は、家族性高コレステロール血症のモデルとし
て有用であるが、適当な食餌と組み合わせることによ
り、種々の疾患治療薬のスクリーニングに応用すること
ができる。例えば、高脂血症治療薬のスクリーニン
グ、粥状動脈硬化治療薬のスクリーニング、冠動脈
硬化治療薬のスクリーニング、脳動脈硬化治療薬のス
クリーニング、黄色腫治療薬のスクリーニングなどが
あげられる。さらに、上記のスクリーニングに加えて、
各々の病体に関する研究から、体成分、例えば、血液中
のリポ蛋白の組成を調べることにより、臨床症状を予測
するための新しい臨床検査法を開発することができる。
また、動脈硬化をはじめとする上記病体の新しい診断
法、特に、無侵襲的な方法を開発するために、本発明の
LDL−R遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物を利用するこ
とができ、ひいては、臨床への適用が可能になると期待
できる。これらの他に、病態の解明あるいは解析を行う
過程で得られる新しい知見に基づいて、新しいスクリー
ニング法や診断法の開発も可能になると期待できる。
【0015】本明細書および図面において、塩基、アミ
ノ酸、溶媒等を略号で表示する場合、IUPAC−IU
B Commision on Biochemical Nomenclature による略
号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであ
り、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体
があり得る場合、特に明示しなければL−体を示すもの
とする。なお、上記略号は、それに相当する化合物のペ
プチド結合を形成しうる残基を示す場合もある。 DNA :デオキシリボ核酸 cDNA :相補的デオキシリボ核酸 A :アデニン T :チミン G :グアニン C :シトシン RNA :リボ核酸 mRNA :メッセンジャーリボ核酸
【0016】本願明細書の配列表の配列番号は、以下の
配列を示す。 [配列番号1]実施例1記載のPCR法によるプライマ
ーML14の塩基配列を示す。 [配列番号2]実施例1記載のPCR法によるプライマ
ーML15の塩基配列を示す。 [配列番号3]実施例1記載のPCR法によるプライマ
ーML19の塩基配列を示す。 [配列番号4]実施例1記載のPCR法によるプライマ
ーML22の塩基配列を示す。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、実施例を挙げて本発明を
より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定される
ものではない。
【0018】
【実施例】
実施例1ES細胞由来LDL−RゲノムDNAの取得とターゲテ
ィングベクターの構築 1)ロングアンドアキュレイトポリメラーゼチェインリ
アクション(LA PCR)用鋳型DNAの調製 液体窒素中で凍結保存してある3×106個のマウス胚
幹細胞(ES細胞:BDM−3株)を37℃で融解後、
10mlの冷ES用培地(ESM):20%非働化牛胎仔
血清(FCS、Flow社製)、0.1mM非必須アミノ酸
(NEAA、GIBCO社製)、1.0mMピルビン酸ナ
トリウム、0.1mM2−メルカプトエタノール、0.1m
M核酸、103U/mlリコンビナントマウス白血病阻害
因子rmLIFを含むダルベッコ変法イーグル培地(DM
EM、日水製薬製)に懸濁し1000rpmで5分遠心
後、上清を除去した。事前に37℃に保温した6ml E
SMに沈殿を再懸濁後、ゼラチンコートした6cmセルカ
ルチャーディッシュ(Falcon社製)に播種し、37
℃、5%CO2存在下で数日間培養した。細胞が飽和細
胞密度に達した時点で培地を除去し、抽出用緩衝液(1
00mMトリス塩酸p.H.8.5、5mM EDTA、0.2
%SDS、200mM NaCl、100μg/ml protena
se K、(ベーリンガー社製))2mlを加え、37℃で
細胞が溶解するまで1時間インキュベーションした。溶
解後、500μlずつをエッペンドルフチューブに移
し、等量のフェノール/イソアミルアルコールを加え穏
やかに振盪後、5000rpmで5分間遠心し、上清を新
しいチューブに移し等量のイソプロパノールを加えDN
Aを析出させた後、4℃、14000rpm、5分遠心し
上清を取り除いた。100%の冷EtOHをDNAに添
加し、洗浄後、10分間真空乾燥し、チューブあたり3
00μlの無菌脱イオン水を加えてDNAを溶解した。
【0019】2)ターゲティングベクターの構築 前述の方法で調製したDNAをテンプレートとしてロン
グアンドアキュレイトポリメラーゼチェインリアクショ
ン法(LAPCR)を行い、ターゲティングベクターの
構築に必要な断片を以下の条件で取得した。PCRに用
いたプライマーはポルビノ(Polvino, W.J.)ら[ソ
マティックセル モレキュラー ジェネティックス(Som
atic Cell and Molecular Genetics)、第18巻、
第443頁−450頁(1992年)]およびホッファ
ー(Hoffer, M.J.V.)ら[バイオケミカル アンド
バイオフィジカル リサーチコミュニケーションズ(Bi
ochem.Biophys.Res.Commun.)、第191巻、第
880頁−886頁(1993年)]が報告したLDL
−RcDNA塩基配列、およびBALB/cマウス系統ゲ
ノムライブラリー(CLONTEC社製)を用い、プラ
ークハイブリダイゼーション法によりエキソン5付近の
断片2.5Kbpをクローニングした後、pBluescript II
KS+(STRATAGENE社製)にサブクローニ
ングしたpSB2.5のシークエンスデータに基づき、デ
ザインした(図1)。図1中のExonまたはExはエキソン
を示し、N,B,S,KはそれぞれNot I,Bam H
I,Sal I,Kpt Iの切断箇所を示す。各プライマー
の5’末端にはターゲティングベクター構築の際、プラ
スミドに断片をサブクローニングするために必要な制限
酵素配列を挿入した[具体的には、配列番号1で示され
るプライマーML14の5’末端から3ないし8番目の
塩基配列(GGATCC)がBam HIの制限酵素配列を
示し、配列番号2で示されるプライマーML15の5’
末端から3ないし8番目の塩基配列(GTCGAC)が
Sal Iの制限酵素配列を示し、配列番号3で示される
プライマーML19の5’末端から3ないし10番目の
塩基配列(GCGGCCGC)がNot Iの制限酵素配
列を示し、配列番号4で示されるプライマーML22の
5’末端から3ないし8番目の塩基配列(GGTAC
C)がKpn Iの制限酵素配列を示す]。PCRはゲノ
ムDNA1μl、10×LA PCR緩衝液5μl、2.5
mM dNTPs 5μl、フォワード プライマー(forward
primer)20pmole、reverse primer(リバース プラ
イマー) 20pmole、LA Tapポリメラーゼ(5U/
μl:宝酒造社製)0.5μlに無菌脱イオン水を加え
て、total 50μlの系で94℃、20秒・68℃、1
0分、30サイクルのシャトルPCRで行った。これに
よりエキソン(Exon)5の5’側(NotI−BamHI断
片)2.8Kbpと3’側(Sall−Kpnl断片)3.6Kbp
のゲノムDNAを増幅した。PCR増幅NotI−BamH
I断片2.8KbpとpMC1 neo polyA(STRATAG
ENE社製)より調製したNeoカセットXhol−BamH
I断片1.1KbpをpBluescript II KS+にサブクロ
ーニング後、PCR増幅Sal I−Kpn I断片3.6Kb
pを連結し、pNFR4を得た。pNFR4をNot IとK
pn Iで切断することにより、エキソン5がネオマイシ
ン耐性遺伝子に置換されたターゲティングコンストラク
ト7.5Kbpを調製することが出来た(図2)。図2中
N,B,X,S,K,HはそれぞれNot I,Bam H
I,Xho I,Sal I,Kpt I,Hind IIIの切断箇所
を示す。
【0020】実施例2ES細胞用フィーダー細胞の調製 フィーダー細胞は、サワイ(Sawai,S.)ら、ザ ニュ
ーバイオロジスト(The New Biologist)第3巻、第
861頁−869頁(1991年)によるLIF産生、
ネオマイシン耐性およびハイグロマイシン耐性マウス胎
仔線維芽細胞NHL−7(大阪大学 近藤寿人先生より
分与)を用いた。まず10%非働化牛胎仔血清(FC
S、日本製薬製)、0.1mM非必須アミノ酸(NEA
A、GIBCO社製)を含むダルベッコ変法イーグル培
地(DMEM、GIBCO社製)で培養し、細胞がコン
フルエントになる直前の約70−80%コンフルエント
まで培養した時点で、最終濃度が10μg/mlになるよ
うマイトマイシンC(協和発酵工業製)を添加し、37
℃で2.5時間培養した後、1mM EDTA含有ダルベ
ッコリン酸緩衝生理食塩液(PBS(−))で2回洗浄
し、0.025%トリプシンを含む1mM EDTA(P
BS(−))処理によりシングルセルに懸濁したのち培
地を添加し、200×g、5分間遠心してNHL−7細
胞を採取した。2×105個/mlの濃度に懸濁し、0.1
%ゼラチン(シグマ社製)でコートした96穴および2
4穴リンブロカルチャープレート(Flow社製)、60m
m,100mm径のセルカルチャーディッシュ(Falcon社
製)および25cm2フラスコにそれぞれ100μl,1m
l,3ml,10ml,30mlの細胞懸濁液を播種し、細胞
シートを形成させた。
【0021】実施例3エレクトロポレーション 凍結保存してあるES細胞株BDM−3(継代数8)2
×106個を37℃で融解後、25cm2フラスコ(Falco
n社製)に1×106個ずつ播種した。25cm2フラスコ
には上記のとおりマウス胎仔線維芽細胞NHL−7の細
胞シートを形成させたものを用いた。3日後に75cm2
フラスコ(Falcon社製)フィーダー上にES細胞を継
代し、3×108個程度に増殖した時点でトリプシン処
理を行い、シングルセルに解離した細胞を冷HBS(2
5mM HEPES p.H.7.05、137mM塩化ナトリ
ウム、5mM塩化カリウム、0.7mM Na2HPO4、1
g/lグルコース)に懸濁した。2.5×107個のES
細胞と6pmoleのターゲティングベクターをジーンパル
サーキュベット(BIO−RAD社製0.4cm electrod
e gap)に加え、懸濁後すみやかにジーンパルサー(B
IO−RAD社製)にセットし、960μF 250V
抵抗∞でES細胞へのターゲティングベクターのエレク
トロポレーションを行った。薬剤耐性ES株の選択 エレクトロポレーション後のES細胞は、ES細胞用培
地(ESM)で50倍に希釈し、10cmセルカルチャー
ディッシュ(Falcon社製)内のフィーダー上に3×1
6個ずつ播種し、37℃、5%CO2存在下で培養し
た。エレクトロポレーションの24時間後にESMで1
回培地交換を行い、48時間後に200μg/ml G41
8(GIBCO社製)およびガンシクロビル入りESM
でネオマイシン耐性およびチミジンキナーゼ非感受性株
の選択を開始した。適宜培地交換を行い、10日目前後
にコロニーを顕微鏡下で無菌的にピックアップした。ピ
ックアップしたコロニーはトリプシン処理によりシング
ルセルに解離して、1/2量を96穴マイクロプレート
(Falcon社製)フィーダー上に播種し、コロニーを再
度形成した時点で、10%DMSO入りESMで一時的
に凍結保存した。残りの1/2量はゼラチン(シグマ社
製)でコートした24穴リンブロ(FLOW社製)上に
播種しコンフルエントにした後、実施例1記載の方法で
のDNAの調製に使用した。
【0022】LDL−R欠損細胞株の判定 G418耐性コロニーより調製したゲノム遺伝子10μ
gをBamHIとHind IIIで切断後、ゲノム遺伝子のエク
ソン2の塩基配列を含む約1.5KbpのプローブAを用
いてサザンハイブリダイゼーションを行い、相同組換え
の有無を判定した。相同組換え株からは、ノックアウト
由来の5.0Kbpと野生型由来の7.6Kbpのバンドが確
認できた。相同組換え株については凍結保存中の96穴
マイクロプレートから融解し、順次フィーダー細胞上で
継代培養して細胞数を増し、3×106個/チューブで
再凍結した。LDL−R欠損細胞株の取得率 計 4.9×107個のES細胞、BDM−3にエレクト
ロポレーションし、1594個のG418耐性株を得
た。このうち674クローンをクローニングし、各々1
/2量を96穴マイクロプレートで培養後、10%DM
SO含ESMを用いて凍結した。これと平行して前述の
方法でDNAを抽出し、プローブA(図2)を用いてサ
ザンハイブリダイゼーションを行い解析した結果、下表
1に示されるとおり、4株(1−90、3−53、3−
70、5−71株)が相同組換え体であった。
【表1】 そのうち3株(3−53、3−70、5−71株)につ
いては、染色体数(2n=40)の正常率をGバンディ
ング法、ホーガン(Hogan,B.)らManipulating the
Mouse Embryo:ラボラトリー マニュアル(コール
ド スプリングハーバー ラボラトリー発行)(198
6年)記載の方法により調べた。下表2に示されるとお
り、正常率は3−53、3−70、5−71株で各々8
7.5%、30.0%、92.5%であった。
【表2】 相同組換え株は継代培養で増殖させた後、3×106
/チューブで凍結保存した。
【0023】実施例4インジェクション用細胞株の調製 サザンハイブリダイゼーションで陽性と判定された凍結
保存中の相同組換え株のなかで、染色体数の正常率が高
かった3−53株および5−71株を37℃で融解後、
25cm2フラスコフィーダー上に播種した。3日間、毎
日ESMの交換を行い培養し、6cm径セルカルチャーデ
ィッシュフィーダー上に1/2量ずつ継代した。3日
後、ESMを除去し1mM EDTA−PBSで2回洗浄
後、0.25%トリプシン溶液(GIBCO社製)で細
胞をシングルセルに解離し、ESMを添加して反応を停
止した。この細胞懸濁液をゼラチンコートした10cm径
セルカルチャーディッシュに播種し、37℃、5%CO
2存在下で30分から1時間培養しフィーダー細胞を極
力ディッシュに付着させた。その後、上清を集めて4℃
で30分間放置した後、顕微鏡下で胚操作用ガラス製マ
イクロピペットを用いてES細胞のみを回収し、インジ
ェクションに供した。
【0024】キメラマウスの作製 まず初日に5国際単位(iu)の血清性性腺刺激ホルモン
(PMSG:帝國臓器製薬製)、46−48時間後に5
国際単位(iu)の胎盤性性腺刺激ホルモン(hCG:帝
國臓器製薬製)をそれぞれ腹腔内投与することにより過
排卵誘起した後、同系統の雄マウスと交配したICR雌
マウスを2.5日後に屠殺、開腹し、採取した子宮を、
10%FCS、20mM HEPES含有DMEMで灌流
することにより8細胞期胚を採取した。事前に60mm径
のペトリディッシュに入れた流動パラフィンでおおった
20mM HEPES含有LIF非含有ESMのマイクロ
ドロップ内に8細胞期胚およびES細胞をそれぞれプー
ルした。次にトクナガおよびツノダ(Tokunaga, T.a
nd Tsunoda, Y.)Dev.Growth Differ.,第34
巻、第561頁−566頁(1992年)に記載された
方法に従ってマイクロインジェクションを行ない、8細
胞期胚の透明帯内にES細胞を8−15個ずつ注入し
た。インジェクション後の卵は、精管結紮マウスと交配
した2.5日目の偽妊娠ICR雌マウスの左右の子宮角
に約10個ずつ移植した。ES細胞3−53株は279
個の卵に注入し60匹の産仔を、5−71株は540個
の卵に注入し72匹の産仔を得た。このうちキメラマウ
スは、3−53株由来が雄6匹、雌2匹で、5−71株
由来が雄7匹、雌5匹であった。得られた雄のキメラマ
ウスは、生後約6から8週齢で精子DNA中にターゲテ
ィングベクター由来のDNAが存在するかどうかを、マ
ン(Mann,G.B.)らIJ.Reprod. and Fertil.,
第99巻、第505頁−512頁(1993年)の報告
に従いPCR法により調べ、存在が確認できた個体は生
殖系列キメラマウスとしてICR雌マウスと交配し産仔
を得た。ES細胞由来の産仔はコートカラー(アグー
チ)により判定した。ES細胞由来のコートカラーを示
す産仔の尾からDNAを抽出して、LDL−R欠損細胞
株の判定時と同様の方法でサザンハイブリダイゼーショ
ンを行い、ヘテロ欠損マウス個体を選別した(図3)。
【表3】
【0025】生殖系列キメラマウスおよびLDL−R欠
損マウスの作製 雄キメラマウスのうち生殖系列への移行が見られたマウ
スは、それぞれ3−53株で3匹、5−71株で1匹で
あった(表3)。サザンハイブリダイゼーション法でE
S細胞由来のコートカラーを示す産仔よりヘテロ欠損マ
ウスを選別した。3−53株由来の産仔18匹より雄3
匹、雌4匹のヘテロ欠損マウスが得られた。これらのヘ
テロ欠損マウス同士の交配により、LDL−R遺伝子ホ
モ欠損個体15匹、ヘテロ欠損個体23匹、野生型個体
13匹の産仔が得られた。その比率はメンデル則に従い
ほぼ1:2:1であった。
【0026】実施例5LDL−Rヘテロ欠損マウスにおける血中総コレステロ
ールの測定 10週齢においてマウスの眼底静脈より70μl採血
し、総コレステロール値をアレイン(Allain, C.
C.)らClin.Chem.,第20巻、第470頁−475頁
(1974年)のコレステロールオキシダーゼ法を利用
したキット(コレステロールE−HAテストワコー;和
光純光製)により測定した。その結果、下表4に示され
たとおり、総コレステロール平均値はLDL−R遺伝子
ホモ欠損雄マウス187mg/dl、ヘテロ欠損雄マウス1
33mg/dl、野生型雄マウス101mg/dlであり、ホモ
欠損マウス>ヘテロ欠損マウス>野生型の順で高い傾向
にあった。以上のことから、本発明のホモ欠損マウスは
抗高脂血症剤などの薬効評価モデルとして有用であると
考えられる。
【表4】 実施例6LDL−Rホモ欠損マウスにおける血中総コレステロー
ルの測定 実施例5と同様の方法により、25〜35週齢のホモ欠
損マウスと、15〜25週齢の野生型マウスについて血
中総コレステロールを測定した(図4)。ホモ欠損マウ
スにおける総コレステロール平均値(mean±SD)
は、雄は278±32mg/dl(n=25)、雌は2
63±100mg/dl(n=19)であり、雌雄間に
有意差は認められなかった。一方、野生型マウスにおけ
る総コレステロール平均値(mean±SD)は、雄は
132±22mg/dl(n=10)に対して、雌は8
9±6mg/dl(n=10)で、雄の方が有意(p<
0.001)に高い値を示した。ホモ欠損マウスと野生
型マウスの比較においては、雌雄ともにホモ欠損マウス
が有意(p<0.001)に高い値を示した。なお、こ
れらのマウスに1%コレステロール食を2週間給餌した
時の血中総コレステロール値は、ホモ欠損マウスの雄は
平均で1.8倍、雌は3.4倍に上昇し、雄より雌のほ
うが高い反応性を示した。一方、野生型マウスでは雄は
1.5倍、雌は2倍の増加を示したが、雌雄ともにホモ
欠損マウスに比べて低い上昇率であった。以上のことか
ら、本発明のホモ欠損マウスは抗高脂血症剤などの薬効
評価モデルとして有用であると考えられる。
【0027】
【発明の効果】本発明のLDL−R遺伝子が不活性化さ
れた非ヒト哺乳動物胚幹細胞または該胚幹細胞を用いて
作出されるLDL−R遺伝子不全非ヒト哺乳動物は、高
脂血症患者などの治療におけるLDL−R遺伝子導入に
よる薬物スクリーニング系の確立、遺伝子治療の評価な
どに利用し得る。
【0028】
【配列表】
配列番号(SEQ ID NO):1 配列の長さ(SEQUENCE LENGTH):30 配列の型(SEQUENCE TYPE):核酸(nucleic acid) 鎖の数(STARADEDNESS):一本鎖(single) トポロジー(TOPOLOGY):直鎖状(linear) 配列の種類(MOLECULAR TYPE):他の核酸(other nucl
eic acid) アンチセンス(ANTI-SENCE):No 配列:CCGGATCCCT TAATTGCAGT TAGAGGGCTG GCAAGATGGC 30
【0029】配列番号(SEQ ID NO):2 配列の長さ(SEQUENCE LENGTH):30 配列の型(SEQUENCE TYPE):核酸(nucleic acid) 鎖の数(STARADEDNESS):一本鎖(single) トポロジー(TOPOLOGY):直鎖状(linear) 配列の種類(MOLECULAR TYPE):他の核酸(other nucl
eic acid) アンチセンス(ANTI-SENCE):No 配列:CCGTCGACCC TTTGCCCCTC ATGCAGCAGG AACGAGTTCC 30
【0030】配列番号(SEQ ID NO):3 配列の長さ(SEQUENCE LENGTH):33 配列の型(SEQUENCE TYPE):核酸(nucleic acid) 鎖の数(STARADEDNESS):一本鎖(single) トポロジー(TOPOLOGY):直鎖状(linear) 配列の種類(MOLECULAR TYPE):他の核酸(other nucl
eic acid) アンチセンス(ANTI-SENCE):No 配列:ATGCGGCCGC TGTCTGTCAC CTGTCAGTCC AATCAATTCA GCT 33
【0031】配列番号(SEQ ID NO):4 配列の長さ(SEQUENCE LENGTH):30 配列の型(SEQUENCE TYPE):核酸(nucleic acid) 鎖の数(STARADEDNESS):一本鎖(single) トポロジー(TOPOLOGY):直鎖状(linear) 配列の種類(MOLECULAR TYPE):他の核酸(other nucl
eic acid) アンチセンス(ANTI-SENCE):No 配列:CCGGTACCCC ACAGCCTTGC AGACCCTGGT GTGTGGGTCC 30
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で調製したプライマーの構築図。
【図2】実施例1で得られたターゲティングベクターの
構築図。
【図3】実施例4で得られたLDL−R遺伝子発現不全
マウスのサザンハイブリダイゼーションによる解析結
果。
【図4】実施例6で行われた血中総コレステロール値の
解析結果。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】外来性レポーター遺伝子を有し、LDLレ
    セプター遺伝子が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細
    胞。
  2. 【請求項2】レポーター遺伝子が大腸菌βガラクトシダ
    ーゼ遺伝子である請求項1記載の胚幹細胞。
  3. 【請求項3】ネオマイシン耐性でかつチミジンキナーゼ
    非感受性である請求項1記載の胚幹細胞。
  4. 【請求項4】非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である請求項
    1記載の胚幹細胞。
  5. 【請求項5】ゲッ歯動物がマウスである請求項4記載の
    胚幹細胞。
  6. 【請求項6】請求項1記載の胚幹細胞を用いて得られる
    LDLレセプター遺伝子発現不全非ヒト哺乳動物。
  7. 【請求項7】非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である請求項
    6記載の動物。
  8. 【請求項8】ゲッ歯動物がマウスである請求項7記載の
    動物。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002000847A3 (en) * 2000-06-28 2002-07-18 Thromb X N V Pluripotent embryonic stem (es) cell lines, improved methods for their production, and their use for germ line transmission and for the generation of genetically modified animals
JP2013118859A (ja) * 2011-12-08 2013-06-17 Primetech Kk 高脂血症モデルブタ

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