JP2001236957A - リチウム一次電池用二酸化マンガン及びその製造方法 - Google Patents

リチウム一次電池用二酸化マンガン及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 作業環境性等を改善させると共に、ナトリウ
ム溶出量を減少させ、また電池の低温特性や保存特性を
向上させたリチウム一次電池用二酸化マンガン及びその
製造方法を提供する。 【解決手段】 電解法による電解後、水酸化ナトリウム
中和を行って得られた電解二酸化マンガンであって、ナ
トリウムを0.05〜0.2重量%含有することを特徴
とするリチウム一次電池用二酸化マンガン。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム一次電池
用二酸化マンガン及びその製造方法に関し、詳しくはリ
チウム又はリチウム合金を負極活物質とするリチウム一
次電池の正極活物質の改良に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】リチウ
ム又はリチウム合金を負極活物質とするリチウム一次電
池の正極活物質としては二酸化マンガン、フッ化炭素等
が代表的なものとして知られており、これらは既に実用
化されている。
【0003】このような正極活物質の中で二酸化マンガ
ンは、安価、豊富であることから正極活物質として賞用
されている。
【0004】二酸化マンガンを正極活物質として用いる
場合、電解二酸化マンガンを熱処理、例えば特公昭57
−4064号公報に示されるように、350〜430℃
で熱処理した上で使用するのが一般的である。
【0005】また、熱処理する電解二酸化マンガンとし
ては、アンモニア中和品が用いられる。電解二酸化マン
ガン自体はマンガン電池、アルカリマンガン電池用の正
極材料として使用され、マンガン電池用にはアンモニア
中和した二酸化マンガン、アルカリマンガン乾電池用に
はナトリウム中和品が用いられる。ナトリウム中和した
電解二酸化マンガンを熱処理したものは、ナトリウムが
0.3〜0.5重量%程度含まれている。このナトリウ
ムを含んだ二酸化マンガンをリチウム一次電池に使用し
た場合、リチウム一次電池の放電性能が著しく低下す
る。これは、二酸化マンガン中のナトリウムが負極のリ
チウムを汚染し、電極反応を妨害するためである。
【0006】このため、焼成時に、水分と共にアンモニ
アが揮散するアンモニア中和が採用されている。しか
し、アンモニア中和においては、アンモニア揮散時に、
刺激臭を発するという作業環境性の悪化が指摘されてい
る。また、アンモニア中和工程を持っていない場合、既
存の製造工程をリチウム一次電池用二酸化マンガンの製
造にそのまま適用できないという問題がある。
【0007】さらに、アンモニア中和した二酸化マンガ
ンは、熱処理によってBET比表面積の低下が著しいた
め、リチウム一次電池用に用いた場合に、低温特性や保
存特性が低下するという問題がある。
【0008】本発明は、以上の事情に鑑みなされたもの
であり、その目的とするところは、作業環境性等を改善
させると共に、ナトリウム溶出量を減少させ、また電池
の低温特性や保存特性を向上させたリチウム一次電池用
二酸化マンガン及びその製造方法を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究を
行ったところ、電解法で得られた電解二酸化マンガンを
ナトリウム中和する際、ナトリウム含有量を一定範囲量
とすることによって、上記目的が達成し得ることを知見
した。
【0010】本発明は、上記知見に基づきなされたもの
で、電解法による電解後、水酸化ナトリウム中和を行っ
て得られた電解二酸化マンガンであって、ナトリウムを
0.05〜0.2重量%含有することを特徴とするリチ
ウム一次電池用二酸化マンガンを提供するものである。
【0011】また、本発明は、本発明のリチウム一次電
池用二酸化マンガンの好ましい製造方法として、電解法
による電解によって得られた電解二酸化マンガンに対
し、二酸化マンガン1kg当たり水酸化ナトリウム2.
0〜5.0gの水溶液を用いて中和処理した後、加熱処
理し、ナトリウム含有量を0.05〜0.2重量%とす
ることを特徴とするリチウム一次電池用二酸化マンガン
の製造方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリチウム一次電池用二酸化マンガンは、電解法
による電解によって得られた電解二酸化マンガンであ
る。上述のように、電解二酸化マンガンは、安価、かつ
豊富であるという利点がある。
【0013】この電解二酸化マンガン中のナトリウム含
有量は0.05〜0.2%重量である。ナトリウム含有
量が0.2重量%を超えた場合には、リチウム一次電池
の正極活物質とした時に、ナトリウムがリチウムと置換
析出して電池の保存特性が低下する。また、ナトリウム
含有量が0.05重量%未満では、脱酸が充分なされ
ず、保存特性が低下する。
【0014】本発明の二酸化マンガンのナトリウム溶出
量が20g/l以下であることが望ましい。ナトリウム
の溶出量が20g/lを超えると、上記のようにナトリ
ウムがリチウムと置換析出して電池の保存特性が低下す
る。
【0015】本発明のナトリウム中和した二酸化マンガ
ンは、アンモニア中和した二酸化マンガンに比較して、
熱処理時のBET比表面積の低下が少ないという利点が
ある。430℃、4時間熱処理した場合に、アンモニア
中和した二酸化マンガンは、BET比表面積が50m2
/gから20m2 /gに低下するが、ナトリウム中和し
た二酸化マンガンは、BET比表面積が50m2 /gか
ら30m2 /gの低下に止まる。このことは、同一のB
ET比表面積が必要であるならば、ナトリウム中和した
二酸化マンガンのほうが、より高温で熱処理が可能であ
ることを意味し、電池の低温特性や保存特性を向上させ
ることができる。
【0016】次に、本発明の製造方法について説明す
る。本発明では、電解法にる電解によって二酸化マンガ
ンを得る。例えば、電解液として所定濃度の硫酸マンガ
ン水溶液を用い、陰極にカーボン板、陽極にチタン板を
用い、加温しつつ、一定の電流密度で電解を行い、陽極
に二酸化マンガンを電解、析出させる。次に、電解、析
出した電解二酸化マンガンを陽極から剥離し、粉砕した
後、中和する。特に、特公平6−1698号公報に報告
されているような、リンを0.05〜2.0重量%含有
する二酸化マンガンを用いるとさらに好ましい。
【0017】中和は、水酸化ナトリウム溶液を用いて、
ナトリウム(ソーダ)中和を行う。水酸化ナトリウムが
二酸化マンガン1kgあたり2.0〜5.0gに相当す
る水溶液で中和することで二酸化マンガン中のナトリウ
ム量を調整する。水酸化ナトリウム溶液の濃度は、通常
100〜150g/lである。ここでは、中和剤とし
て、水酸化ナトリウムを用いたが、ナトリウム換算で同
等の炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムを用いてもよ
い。
【0018】ナトリウム中和された電解二酸化マンガン
は、水洗、乾燥した後、熱処理を行う。このようにし
て、ナトリウムを0.05〜0.2重量%含有する上記
したリチウム一次電池用電解二酸化マンガンが得られ
る。
【0019】
【実施例】以下、本発明を実施例等に基づき具体的に説
明する。
【0020】〔実施例1〜2及び比較例1〜3〕電解法
により得られた電解二酸化マンガンにはリンを0.25
重量%含有するものを用い、この電解二酸化マンガンに
対し、水酸化ナトリウムの濃度が表1の割合になるよう
に添加し、中和処理を行った。続いて濾過、乾燥の後、
430℃で4時間加熱処理を行い、二酸化マンガンを調
製した。得られた二酸化マンガン中のナトリウム含有量
を表1に示す。また、比較例3として従来のアンモニア
中和品も作成した。
【0021】上記で得られた二酸化マンガンを正極活物
質として、CR123A型電池を作成した。電解液とし
ては、プロピレンカーボネート及び1,2−ジメトキシ
エタンの1:1混合溶液にLiCF3 SO3 溶解したも
のを用いた。負極材としては、リチウム電極を用いた。
【0022】これらの電池を用いて、電流900mAで
3秒放電し、27秒休止するというサイクルを繰り返し
た時の放電特性及び負極リチウムの変色の有無を表1に
まとめた。
【0023】また、ナトリウム中和した実施例1〜2及
び比較例1の二酸化マンガンについては、下記方法によ
って、JIS−pH、電導度、溶出Na、溶出SO4
測定した。結果を表1に示す。
【0024】<測定方法> (1)JIS−pH JIS K 1407に準拠して行った。 (2)電導度 市販の卓上電導度計を用いて行った。 (3)溶出Na ICP分析によって行った。 (4)溶出SO4 ICP分析によって行った。
【0025】
【表1】
【0026】表1の結果から、実施例1〜2は、比較例
3の従来品と同等の性能を有していることが判る。な
お、通常のナトリウム中和品である比較例1及び中和工
程で中和剤を含ませなかった比較例2ではサイクル特性
に劣る。また、従来品である比較例3では、熱処理時ア
ンモニア臭を発生した。また、ナトリウム中和した二酸
化マンガンである実施例1〜2及び比較例1の対比で
は、実施例1〜2は比較例1に比して、溶出Naが少な
い。
【0027】〔試験例〕実施例1〜2及び比較例1と同
様にして得られた二酸化マンガンのナトリウム含有量に
対するJIS−pH、電導度、溶出Na、溶出SO4
関係を図1〜4にそれぞれ示す。図1〜4から、二酸化
マンガンのナトリウム含有量が低下するに伴って、JI
S−pH、溶出Naは低下し、溶出SO4 は増加するこ
とが判る。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のリチウム
一次電池用二酸化マンガンは、作業環境性等を改善させ
ると共に、ナトリウム溶出量を減少させ、また電池の低
温特性や保存特性を向上させることができる。また、本
発明の製造方法によって、上記二酸化マンガンが良好な
作業性をもって、工業的規模で、しかも簡便に得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、二酸化マンガンのナトリウム含有量に
対するJIS−pHの関係を示すグラフ。
【図2】図2は、二酸化マンガンのナトリウム含有量に
対する電導度の関係を示すグラフ。
【図3】図3は、二酸化マンガンのナトリウム含有量に
対する溶出Naの関係を示すグラフ。
【図4】図4は、二酸化マンガンのナトリウム含有量に
対する溶出SO4 の関係を示すグラフ。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年12月22日(2000.12.
22)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正内容】
【0024】<測定方法> (1)JIS−pH JIS K 1467に準拠して行った。 (2)電導度 市販の卓上電導度計を用いて行った。 (3)溶出Na ICP分析によって行った。 (4)溶出SO4 ICP分析によって行った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5H024 AA03 AA12 BB01 BB07 BB11 CC03 FF15 FF16 FF18 FF19 5H050 AA19 BA06 CA05 CB12 DA09 EA01 EA02 GA02 GA13 GA14 HA01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電解法による電解後、水酸化ナトリウム
    中和を行って得られた電解二酸化マンガンであって、ナ
    トリウムを0.05〜0.2重量%含有することを特徴
    とするリチウム一次電池用二酸化マンガン。
  2. 【請求項2】 リンを0.5〜2.0重量%含有する請
    求項1に記載のリチウム一次電池用二酸化マンガン。
  3. 【請求項3】 電解法による電解によって得られた電解
    二酸化マンガンに対し、二酸化マンガン1kg当たり水
    酸化ナトリウム2.0〜5.0gの水溶液を用いて中和
    処理した後、加熱処理し、ナトリウム含有量を0.05
    〜0.2重量%とすることを特徴とするリチウム一次電
    池用二酸化マンガンの製造方法。
  4. 【請求項4】 上記電解によって得られた二酸化マンガ
    ンがリンを0.5〜2.0重量%含有する請求項3に記
    載のリチウム一次電池用二酸化マンガンの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2に記載の二酸化マンガン
    を正極活物質として用いたリチウム一次電池。
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