JP2001234269A - 動的特性に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物およびその製造方法 - Google Patents

動的特性に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物およびその製造方法

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JP2001234269A
JP2001234269A JP2000039876A JP2000039876A JP2001234269A JP 2001234269 A JP2001234269 A JP 2001234269A JP 2000039876 A JP2000039876 A JP 2000039876A JP 2000039876 A JP2000039876 A JP 2000039876A JP 2001234269 A JP2001234269 A JP 2001234269A
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aluminum alloy
casting
eutectic
alloy die
die casting
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Kenji Tsushima
島 健 次 津
Masahiko Shioda
田 正 彦 塩
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車の車体部品等に適用し衝突時のような
高歪速度域の状態を考慮したときでも、高強度と高い伸
びが安定的に両立して得られる安価な動的特性に優れた
アルミニウム合金ダイカスト鋳物を提供する。 【解決手段】 重量比で、Si:10〜12.5%、M
g:0.2〜0.6%、Fe:0.25%以下、Sr:
0.003〜0.01%を含み、場合によってはさらに
Ti:0.01〜0.25%、B:0.0001〜0.
001%を含み、残部Alおよび不純物からなり、溶体
化処理後時効処理を施されたアルミニウム合金ダイカス
ト鋳物であって、共晶Siの円相当径の平均値が1.5
μm以下でかつ共晶Siの円形度係数の平均値が0.8
5以上である動的特性に優れたアルミニウム合金ダイカ
スト鋳物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動的特性に優れた
アルミニウム合金ダイカスト鋳物およびその製造方法に
関し、さらに詳しくは、自動車の車体部品であるAピラ
ー,Bピラー,Cピラー,ルーフ,スペースフレームの
継手等、高速変形時に高強度と大きな伸びが必要とされ
る部材をダイカスト鋳造により得ることが可能な、動的
特性に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物およびそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ダイカスト鋳造法は、薄肉鋳物の鋳造が
可能であること、寸法精度が高いこと、生産性が高いこ
と、形状の自由度が高いこと、等の特徴を有しているこ
とにより、自動車用のエンジン部品やトランスミッショ
ン部品に広く使用されている。また、近年では、車体を
構成するスペースフレームの継手等に、真空ダイカスト
法で鋳造した後熱処理を施して引張強さ、0.2%耐
力、伸び等の機械的性質を向上させたアルミニウム合金
ダイカスト鋳物が使用されて来ている。
【0003】さらには、JIS規格 AC4CH、AS
TM規格 A356等の靭性に優れた合金を重力鋳造
法、低圧鋳造法、溶湯鍛造法で鋳造後、熱処理を施し、
自動車のロードホイール、足回り部品、クロスメンバー
等の靭性が必要とされる部品に適用することは広く行わ
れているところである。このようなアルミニウム合金鋳
物の強度や靭性の向上策として、特開平5−5148号
公報、特開平9−272942号公報、特開平6−65
666号公報、特開平7−62479号公報等に開示さ
れているものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、自動車の車
体部品であるAピラー,Bピラー,Cピラーやルーフ等
は、衝突時の安全性確保のために、高歪速度域下におい
ても安定的に高強度と大きな伸びが得られることが重要
であるが、従来の技術では、アルミニウム鋳物やアルミ
ニウムダイカスト鋳物の静的な強度や伸びについては言
及されているものの、1000/sレベルの高歪速度域
での強度や伸びについて言及したものは見あたらない。
【0005】また、自動車の車体部品でるAピラー,B
ピラー,Cピラーやルーフ等にアルミニウム合金を適用
して軽量化を図る方法としては、これら部材へアルミニ
ウム板材のプレス品やアルミニウム押出し材を適用する
ことが試みられているが、これらの手法は、形状の自由
度が低いこと、コストが高いこと、などといった問題点
があった。
【0006】
【発明の目的】本発明は、このような事情に鑑みてなさ
れたものであって、自動車の車体部品であるAピラー,
Bピラー,Cピラー,ルーフ,スペースフレームの継手
等の自動車用車体部品へ適用しても、衝突時のような高
歪速度域下で、安定的に高い強度と高い伸びが両立して
得られる安価なアルミニウムダイカスト鋳物を得ること
を目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の動的特性に優れたアルミニウム合金ダイカ
スト鋳物およびその製造方法は、以下の構成とした。
【0008】請求項1に記載のアルミニウム合金ダイカ
スト鋳物は、重量比で、Si:10〜12.5%、M
g:0.2〜0.6%、Fe:0.25%以下、Sr:
0.003〜0.01%を含み、残部Alおよび不純物
からなり、溶体化処理後時効処理を施されたアルミニウ
ム合金ダイカスト鋳物であって、共晶Siの円相当径の
平均値が1.5μm以下でかつ共晶Siの円形度係数の
平均値が0.85以上であることを特徴とする動的特性
に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物からなるも
の。
【0009】請求項2に記載のアルミニウム合金ダイカ
スト鋳物は、重量比で、Si:10〜12.5%、M
g:0.2〜0.6%、Fe:0.25%以下、Ti:
0.01〜0.25%、Sr:0.003〜0.01%
を含み、さらにB:0.0001〜0.001%を含
み、残部Alおよび不純物からなり、溶体化処理後時効
処理を施されたアルミニウム合金ダイカスト鋳物であっ
て、共晶Siの円相当径の平均値が1.5μm以下でか
つ共晶Siの円形度係数の平均値が0.85以上である
ことを特徴とする動的特性に優れたアルミニウム合金ダ
イカスト鋳物からなるもの。
【0010】請求項3に記載のアルミニウム合金ダイカ
スト鋳物は、ダイカスト鋳造後の溶体化処理に際して5
40℃〜565℃に加熱し、その温度に15分〜60分
保持後急冷してなるものとしたことを特徴とする請求項
1または請求項2に記載の動的特性に優れたアルミニウ
ム合金ダイカスト鋳物からなるもの。
【0011】請求項4に記載のアルミニウム合金ダイカ
スト鋳物は、共晶Siの円相当径の最大値が4μm以下
でかつ共晶Siの円形度係数の最小値が0.40以上で
あることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれ
かに記載の動的特性に優れたアルミニウム合金ダイカス
ト鋳物からなるもの。
【0012】請求項5に記載のアルミニウム合金ダイカ
スト鋳物は、歪速度1000/sの時の全伸びを歪速度
0.001/sの時の全伸びで除した時の値が0.75
以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の
いずれかに記載の動的特性に優れたアルミニウム合金ダ
イカスト鋳物からなるもの。
【0013】請求項6に記載のアルミニウム合金ダイカ
スト鋳物は、歪速度1000/sの時の降伏後の最大応
力を歪速度0.001/sの時の降伏後の最大応力(引
張強さ)で除した時の値が1.20以上であることを特
徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の動
的特性に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物からな
るもの。
【0014】請求項7に記載のアルミニウム合金ダイカ
スト鋳物は、適用部品が、自動車用車体部品であるAピ
ラー,Bピラー,Cピラー,ルーフ,スペースフレーム
の継手のうちから選ばれるものであることを特徴とする
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の動的特性に
優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物からなるもの。
【0015】請求項8に記載のアルミニウム合金ダイカ
スト鋳物の製造方法は、ダイカスト鋳造後、溶体化処理
条件として540℃〜565℃に加熱し、その温度に1
5分〜60分保持後急冷する溶体化処理を行うことを特
徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の動
的特性に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物の製造
方法からなるもの。
【0016】
【発明の作用】以下、本発明の合金成分(重量比)およ
び熱処理条件等の限定理由について説明する。
【0017】1)Si:10〜12.5% Siは鋳造時の湯流れ性に大きく影響を与える元素であ
る。したがって、自動車用車体部品のような大型でかつ
薄肉のダイカスト鋳物に適用するには、良好な湯流れ性
を確保することが必要であるため、Si含有量の下限値
を10%とした。また、Si含有量が12.5%を超え
ると、初晶Siが晶出し始めるために、鋳物の伸びが著
しく低下する。このため、Si含有量の上限値を12.
5%とした。
【0018】2)Mg:0.2〜0.6% Mgは、溶体化処理後の時効処理によってMgSiを
析出し、強度の向上に寄与する元素である。しかしなが
ら、0.2%未満ではその効果は小さく、0.6%を超
えるとMg 2 Siの析出量が増加し、伸びが低下
するので、0.2〜0.6%を範囲とした。
【0019】3)Fe:0.25%以下 Feは、ダイカスト鋳造時の金型への焼付きを防止する
のに有効な元素である。しかしながら、Fe含有量が増
加すると針状のFe系金属間化合物の晶出量が増加し、
靭性が低下するので0.25%以下とした。
【0020】4)Sr:0.003〜0.01% SrはAl−Si系合金を鋳造した際に晶出する共晶S
iを粒状化し、靭性の向上に寄与する元素である。しか
しながら、0.003%未満ではその効果が小さく、
0.01%を超えて添加されると、溶湯の流動性が低下
し、自動車用車体部品のような大型でかつ薄肉のダイカ
スト鋳物に適用するに際して湯境い等の鋳造欠陥が発生
しやすくなるため、0.003〜0.01%の範囲とし
た。
【0021】5)Ti:0.01〜0.25%、B:
0.0001〜0.001% TiおよびBは、初晶α(Al)相を微細化し、ダイカ
スト鋳物の機械的性質を向上させるのに有効な元素であ
る。しかしながら、Ti:0.01%未満、B:0.0
001%未満ではその効果が小さく、Ti:0.25%
超過、B:0.001%超過ではTiAl 3 粒子
やTiB 2 粒子が粗大化し、初晶α(Al)相を
微細化効果が減少するため、Ti:0.01〜0.25
%、B:0.0001〜0.001%の範囲とした。
【0022】6)溶体化処理温度:540℃〜565
℃、溶体化保持時間:15分〜60分共晶Siの粒状化
は、Si元素の拡散に基づく現象であるから、溶体化処
理温度が高い程、また、溶体化処理時間が長い程、より
粒状に近づく。しかしながら、溶体化処理温度が高い、
あるいは、溶体化保持時間が長い場合は、共晶Siの粗
大化が同時に起こるため、共晶Siの微細・粒状化を両
立することが困難となる。すなわち、溶体化処理温度が
540℃未満の場合、共晶Siの円形度係数の平均値を
0.85μm以上とするためには、長時間の溶体化保持
時間が必要となり、共晶Siの円相当径が所望の値を超
えてしまい、伸びが低下する。また、溶体化処理温度5
65℃でかつ溶体化保持時間が60分以上の溶体化処理
を実施した場合も同様に、共晶Siの円相当径が所望の
値を超えてしまい、伸びが低下する。そして、溶体化処
理温度が565℃を超えると不純物の偏析等の影響によ
り、部分的な溶融部が生じてしまうために、565℃を
溶体化処理温度の上限値とした。
【0023】このように、優れた動的特性を得るために
必要な共晶Siの円相当径(平均値で1.5μm以下)
と共晶Siの円形度係数((平均値で0.85以上)を
両立させることが可能な溶体化処理条件として、溶体化
処理温度:540℃〜565℃、溶体化保持時間:15
分〜60分を選定した。
【0024】7)共晶Siの円相当径の平均値が1.5
μm以下でかつ共晶Siの円形度係数の平均値が0.8
5以上 共晶Siの微細化と粒状化が両立されているものとする
ためには、共晶Siのの円相当径の平均値が1.5μm
以下でかつ共晶Siの円形度係数の平均値が0.85以
上であるものとすることが必要である。
【0025】8)共晶Siの円相当径の最大値が4μm
以下でかつ共晶Siの円形度係数の最小値が0.40以
上 共晶Siの微細化状態を得るには共晶Siの円相当径の
平均値が1.5μm以下であるものとすることが必要で
あるが、最大値においても4μm以下であるものとする
ことが望ましく、また、共晶Siの粒状化状態を得るに
は共晶Siの円形度係数の平均値が0.85以上である
ものとすることが必要であるが、最小値においても0.
40以上であるものとすることが望ましい。
【0026】9)歪速度1000/s(動的状態)の時
の全伸びを歪速度0.001/s(静的状態)の時の全
伸びで除した時の値が0.75以上 自動車の衝突時を考慮した場合のような高歪速度領域に
おいても伸びの低下率が小さく、高い伸びが継続して得
られるようにするためには、歪速度1000/sの時の
全伸びを歪速度0.001/sの時の全伸びで除した時
の値が0.75以上であるものとすることが望ましい。
【0027】10)歪速度1000/s(動的状態)の
時の降伏後の最大応力を歪速度0.001/s(静的状
態)の時の降伏後の最大応力(引張強さ)で除した時の
値が1.20以上 自動車の衝突時を考慮した場合のような高歪速度領域に
おいても降伏後の最大応力の上昇率が大きく、降伏後の
最大応力が大きいものであるようにするためには、歪速
度1000/sの時の降伏後の最大応力を歪速度0.0
01/sの時の降伏後の最大応力(引張強さ)で除した
時の値が1.20以上であるものとすることが望まし
い。
【0028】
【発明の効果】本発明による動的特性に優れたアルミニ
ウム合金ダイカスト鋳物は、請求項1に記載しているよ
うに、重量比で、Si:10〜12.5%、Mg:0.
2〜0.6%、Fe:0.25%以下、Sr:0.00
3〜0.01%を含み、残部Alおよび不純物からな
り、溶体化処理後時効処理を施されたアルミニウム合金
ダイカスト鋳物であって、共晶Siの円相当径の平均値
が1.5μm以下でかつ共晶Siの円形度係数の平均値
が0.85以上であるものとしたから、共晶Siの微細
化と粒状化が両立されているため、自動車の衝突を考慮
したような高歪速度域においても高強度と高い伸びが両
立して得られるものとなり、車体の安価な軽量化を実現
しうる動的特性に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳
物が提供されるという著しく優れた効果がもたらされ
る。
【0029】そして、請求項2に記載しているように、
重量比で、Si:10〜12.5%、Mg:0.2〜
0.6%、Fe:0.25%以下、Ti:0.01〜
0.25%、Sr:0.003〜0.01%を含み、さ
らにB:0.0001〜0.001%を含み、残部Al
および不純物からなり、溶体化処理後時効処理を施され
たアルミニウム合金ダイカスト鋳物であって、共晶Si
の円相当径の平均値が1.5μm以下でかつ共晶Siの
円形度係数の平均値が0.85以上であるものとするこ
とによって、請求項1の構成にもとづく効果を得ること
ができると共にTiおよびBを含有しているものとした
から、機械的特性がさらに改善された動的特性に優れた
アルミニウム合金ダイカスト鋳物を提供できるという著
しく優れた効果がもたらされる。
【0030】そしてまた、請求項3に記載しているよう
に、ダイカスト鋳造後の溶体化処理に際して540℃〜
565℃に加熱し、その温度に15分〜60分保持後急
冷してなるものとすることによって、共晶Siの微細化
と粒状化が両立した動的特性に優れたアルミニウム合金
ダイカスト鋳物を提供できるという著しく優れた効果が
もたらされる。
【0031】さらにまた、請求項4に記載しているよう
に、共晶Siの円相当径の最大値が4μm以下でかつ共
晶Siの円形度係数の最小値が0.40以上であるもの
とすることによって、共晶Siの微細化と粒状化が両立
されている動的特性に優れたアルミニウム合金ダイカス
ト鋳物を提供できるという著しく優れた効果がもたらさ
れる。
【0032】さらにまた、請求項5に記載しているよう
に歪速度1000/sの時の全伸びを歪速度0.001
/sの時の全伸びで除した時の値が0.75以上である
ものとすることによって、自動車の衝突時を考慮したよ
うな高歪速度域においても高い伸びが得られる動的特性
に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物を提供できる
という著しく優れた効果がもたらされる。
【0033】さらにまた、請求項6に記載しているよう
に、歪速度1000/sの時の降伏後の最大応力を歪速
度0.001/sの時の降伏後の最大応力(引張強さ)
で除した時の値が1.20以上であるものとすることに
よって、自動車の衝突時を考慮したような高歪速度域に
おいても高い強度が得られる動的特性に優れたアルミニ
ウム合金ダイカスト鋳物を提供できるという著しく優れ
た効果がもたらされる。
【0034】さらにまた、請求項7に記載しているよう
に、適用部品が、自動車用車体部品であるAピラー,B
ピラー,Cピラー,ルーフ,スペースフレームの継手の
うちから選ばれるものとすることによって、車体の安価
な軽量化を実現することが可能であるという著しく優れ
た効果がもたらされる。
【0035】本発明による動的特性に優れたアルミニウ
ム合金ダイカスト鋳物の製造方法では、請求項8に記載
しているように、ダイカスト鋳造後、溶体化処理条件と
して540℃〜565℃に加熱し、その温度に15分〜
60分保持後急冷するようにしたから、共晶Siの微細
化と粒状化が両立されているものとすることができ、自
動車の衝突を考慮したような高歪速度域においても高強
度と高い伸びを有する動的特性に優れたアルミニウム合
金ダイカスト鋳物を製造することが可能であるという著
しく優れた効果がもたらされる。
【0036】
【実施例】以下、実施例に基づき、本発明の内容を具体
的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない
ことはいうまでもない。
【0037】1)アルミニウム合金ダイカスト材の組成 表1に示す組成の材料を使用して評価を行った。
【0038】2)溶解・ダイカスト条件 表1に示す組成の材料を720℃の温度で溶解した後、
介在物の除去と脱ガスを目的として、アルゴンガスによ
るバブリング処理を実施した。
【0039】ダイカスト鋳造には、型締め力320トン
の真空ダイカスト装置を使用し、金型に粒体離型材を塗
布した後、鋳造圧力:60MPa、高速射出速度:3.
5m、スリーブ内真空度:0.96気圧、真空バルブ部
の真空度:0.95気圧で、ダイカスト鋳造を行った。
鋳造時の溶湯温度は680℃であり、鋳造に使用した型
の製品部形状は、図1に示す箱型形状のものである。
【0040】3)熱処理条件 ダイカスト鋳造により得られた図1に示す形状の鋳物製
品に対し、表2に示す各条件で溶体化処理を実施した。
ここで、溶体化処理時間とは、鋳物製品が所定の温度に
到達してからの保持時間を指すものである。
【0041】溶体化処理を終了した鋳物製品は、直ちに
室温の水中に投入することにより急冷した。
【0042】今回、人工時効処理は、150℃の温度に
8時間保持後空冷とする条件を採用した。
【0043】4)組織調査 上記の熱処理を施した鋳物製品の断面組織観察を実施
し、画像解析を行なうことにより、共晶Siの円相当径
と円形度係数を測定した。
【0044】組織調査の結果を表3に示す。また、実施
例と比較例での代表的な断面組織写真を図2および図3
に示す。
【0045】これらより、共晶Siの円相当径は、溶体
化保持時間が同じであれは溶体化処理温度が高いものの
方が大きく、溶体化処理温度が同じであれば溶体化保持
時間が長いもののほうが大きくなる傾向にあることが分
かる。
【0046】また、共晶Siの円形度係数は、溶体化保
持時間が同じであれば溶体化処理温度が高いものの方が
大きく、溶体化処理温度が同じであれば溶体化保持時間
の長いものの方が大きくある傾向にあることが分かる。
【0047】共晶Siの粗大化と粒状化は、いずれもS
i元素の拡散に基づいた現象であるために、このような
結果となったものである。
【0048】この結果より、本発明の溶体化処理条件に
おいては、共晶Siの微細化と粒状化が両立されている
ことが分かる。
【0049】5)引張試験 図1に示した形状の鋳物製品から、図4に示す形状のテ
ストピースを切出し、引張試験に供した。歪速度0.0
01/s(以下、「静的」という)での引張試験には、
インストロン型の万能試験機を使用した。
【0050】また、歪速度1000/s(以下、「動
的」という)での引張試験には、図5に示すOne−B
ar Method高速引張試験機を使用した。
【0051】表4に静的および動的両方の引張試験結果
を示す。ここで、動的な引張試験の場合の応力−歪線図
は図6に示すような形状となり、降伏応力が、降伏後の
最大応力(静的な引張試験の場合の引張強さに相当)を
超えるため、「降伏後の最大応力」という表記で材料の
強度を表わした。
【0052】これらより、静的な場合と比較して、動的
な場合には、降伏後の最大応力は増加するが、伸びは低
下するという傾向にあることが明らかとなった。しかし
ながら、本発明によるアルミニウムダイカスト鋳物にお
いては、静的な場合に対する動的な場合の降伏後の最大
応力の上昇率は比較例のアルミニウム合金ダイカスト鋳
物よりも大きく、伸びの低下率は小さいことが分かる。
これを解り易くするために、動的な場合の値/静的な場
合の値(静動比)として示したものが、表5である。
【0053】以上より、本発明によるアルミニウム合金
ダイカスト鋳物においては、自動車の衝突を想定したよ
うな高歪速度域においても、優れた強度(降伏後の最大
応力)と伸びの両立が図られていることが分かる。
【0054】これは、共晶Siの微細・粒状化が図られ
ているために、粒界,デンドライトアーム間に存在する
共晶Si粒子を起点とした破壊が発生し難くなっている
こと、あるいは、共晶Siによる高速変形中の結晶粒の
すべりが阻害され難くなっていることによるものと思わ
れる。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳造に使用した型の製品部形状を示す説明図
(図1の(A))および図1の(A)のI−I線断面説
明図である。
【図2】本発明の実施例に示したアルミニウムダイカス
ト鋳物の断面組織写真である。
【図3】本発明の比較例に示したアルミニウムダイカス
ト鋳物の断面組織写真である。
【図4】静的および動的引張試験に供した試験片形状を
示す説明図である。
【図5】One−Bar Method高速引張試験機
の概略構成を示す説明図である。
【図6】動的な引張試験の場合の代表的な応力−歪線図
を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 604 C22F 1/00 604 611 611 630 630A 630K 684 684 691 691B 691C

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で、Si:10〜12.5%、M
    g:0.2〜0.6%、Fe:0.25%以下、Sr:
    0.003〜0.01%を含み、残部Alおよび不純物
    からなり、溶体化処理後時効処理を施されたアルミニウ
    ム合金ダイカスト鋳物であって、共晶Siの円相当径の
    平均値が1.5μm以下でかつ共晶Siの円形度係数の
    平均値が0.85以上であることを特徴とする動的特性
    に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物。
  2. 【請求項2】 重量比で、Si:10〜12.5%、M
    g:0.2〜0.6%、Fe:0.25%以下、Ti:
    0.01〜0.25%、Sr:0.003〜0.01%
    を含み、さらにB:0.0001〜0.001%を含
    み、残部Alおよび不純物からなり、溶体化処理後時効
    処理を施されたアルミニウム合金ダイカスト鋳物であっ
    て、共晶Siの円相当径の平均値が1.5μm以下でか
    つ共晶Siの円形度係数の平均値が0.85以上である
    ことを特徴とする動的特性に優れたアルミニウム合金ダ
    イカスト鋳物。
  3. 【請求項3】 ダイカスト鋳造後の溶体化処理に際して
    540℃〜565℃に加熱し、その温度に15分〜60
    分保持後急冷してなるものとしたことを特徴とする請求
    項1または請求項2に記載の動的特性に優れたアルミニ
    ウム合金ダイカスト鋳物。
  4. 【請求項4】 共晶Siの円相当径の最大値が4μm以
    下でかつ共晶Siの円形度係数の最小値が0.40以上
    であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいず
    れかに記載の動的特性に優れたアルミニウム合金ダイカ
    スト鋳物。
  5. 【請求項5】 歪速度1000/sの時の全伸びを歪速
    度0.001/sの時の全伸びで除した時の値が0.7
    5以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4
    のいずれかに記載の動的特性に優れたアルミニウム合金
    ダイカスト鋳物。
  6. 【請求項6】 歪速度1000/sの時の降伏後の最大
    応力を歪速度0.001/sの時の降伏後の最大応力
    (引張強さ)で除した時の値が1.20以上であること
    を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載
    の動的特性に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物。
  7. 【請求項7】 適用部品が、自動車用車体部品であるA
    ピラー,Bピラー,Cピラー,ルーフ,スペースフレー
    ムの継手のうちから選ばれるものであることを特徴とす
    る請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の動的特性
    に優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物。
  8. 【請求項8】 ダイカスト鋳造後、溶体化処理条件とし
    て540℃〜565℃に加熱し、その温度に15分〜6
    0分保持後急冷する溶体化処理を行うことを特徴とする
    請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の動的特性に
    優れたアルミニウム合金ダイカスト鋳物の製造方法。
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