JP2001216837A - 固体高分子電解質膜および該固体高分子電解質膜の製造方法並びに燃料電池。 - Google Patents

固体高分子電解質膜および該固体高分子電解質膜の製造方法並びに燃料電池。

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JP2001216837A
JP2001216837A JP2000023578A JP2000023578A JP2001216837A JP 2001216837 A JP2001216837 A JP 2001216837A JP 2000023578 A JP2000023578 A JP 2000023578A JP 2000023578 A JP2000023578 A JP 2000023578A JP 2001216837 A JP2001216837 A JP 2001216837A
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polymer electrolyte
solid polymer
region
membrane
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Takehiko Nakajima
毅彦 中島
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 固体高分子電解質膜において、イオン伝導性
と膜強度との両方を充分に満足させる。 【解決手段】 固体高分子電解質膜を製造する際に、炭
化水素や過フッ化炭化水素などを含有する高分子から成
るベースフィルムを用意し(ステップS100)、この
ベースフィルムを、所定の形状および配列の穴あき部を
有するマスクで覆ってマスキングした後に(ステップS
110)、放射線重合法によって側鎖の形成を行なう
(ステップS120〜130)。さらにスルホン化の処
理を行なって(ステップS140)、側鎖にスルホン酸
基を導入することによって、上記マスクの穴あき部に対
応する領域だけにスルホン酸基が導入された固体高分子
電解質膜を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体高分子電解質
膜および該固体高分子電解質膜の製造方法並びに燃料電
池に関し、詳しくは、イオン交換基を備え、イオンを選
択的に透過する高分子イオン交換膜からなる固体高分子
電解質膜および該固体高分子電解質膜の製造方法並びに
該固体高分子電解質膜を備える燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】燃料電池は、電気化学反応により燃料の
有する化学エネルギを直接電気エネルギに変換する装置
であり、高いエネルギ効率が実現可能であると期待され
ている。このような燃料電池の中でも、固体高分子型燃
料電池は、より低い温度で運転可能であって、安全性や
小型化の観点からも多くの利点を有し、種々の用途が検
討されている。この固体高分子型燃料電池は、電解質と
して固体高分子電解質膜を備えるが、固体高分子電解質
膜としては、従来、イオン伝導性を実現するイオン交換
基としてスルホン酸基を備え、ペルフルオロカーボンス
ルホン酸ポリマとして構成される樹脂(例えば、ナフィ
オン、デュポン社製)が用いられてきた。このナフィオ
ン膜は、湿潤状態で高いイオン(プロトン)伝導性を示
すが、非常に高価であるため、燃料電池全体のコストを
押し上げることになり、燃料電池の普及を妨げる要因と
なるおそれがあった。そこで、固体高分子電解質膜のコ
ストを抑えるために、より安価な材料である炭化水素を
構成成分として含む固体高分子電解質膜が検討されてい
る。
【0003】このような固体高分子電解質膜としては、
オレフィン炭化水素とオレフィンパーフルオロカーボン
の共重合体からなる主鎖と、スルホン酸基を有する架橋
された炭化水素側鎖とから構成されるものが提案されて
いる(例えば、特開平11−111310号公報等)。
このような構成により、従来知られるナフィオン膜に比
べてはるかに低コストに、イオン伝導性を有する固体高
分子電解質膜を得ることが可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ように固体高分子電解質膜を構成しても、充分に高いイ
オン伝導性を実現するためには、この固体高分子電解質
膜が備えるイオン交換基であるスルホン酸基の量を、充
分に多くする必要がある。固体高分子電解質膜が備える
スルホン酸基量を増やすと、それに伴って固体高分子電
解質膜のイオン伝導性は向上するが、膜内においてスル
ホン酸基は水分子を集める性質を有するため、スルホン
酸基量を増加することによって膜の含水量が増加し、こ
れによって膜の機械的強度の低下が引き起こされてしま
う。このような固体高分子電解質膜の強度の低下は、こ
の固体高分子電解質膜を備える燃料電池の短寿命化を引
き起こすおそれがあり望ましくない。
【0005】本発明の固体高分子電解質膜および該固体
高分子電解質膜の製造方法並びに燃料電池は、こうした
問題を解決し、固体高分子電解質膜においてイオン伝導
性と膜強度との両方を充分に満足させることを目的とし
てなされ、次の構成を採った。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本
発明の第1の固体高分子電解質膜は、イオン伝導性を有
する固体高分子電解質膜であって、前記イオン伝導性を
実現するイオン交換基を備える高分子から成る第1の領
域と、前記イオン交換基を備えない高分子からなる第2
の領域とを備えることを要旨とする。
【0007】このような構成とすれば、前記第1の領域
において、イオン伝導性を充分に確保することができる
と共に、前記第2の領域において、前記イオン交換基が
存在することで固体高分子電解質膜において損なわれる
おそれがあるイオン伝導性以外の性質を、充分に確保す
ることができる。したがって、イオン伝導性と、イオン
交換基を備えることで損なわれるおそれのある他の性質
との両方を、固体高分子電解質膜において、全体として
確保することが可能となる。
【0008】本発明の第1の固体高分子電解質膜におい
て、前記第1の領域は、所定の主鎖にイオン交換基を有
する側鎖が付加した構造を有するグラフト共重合体を備
えることとしてもよい。
【0009】また、このような本発明の第1の固体高分
子電解質膜において、前記共重合体の前記主鎖、およ
び、前記第2の領域を構成する前記高分子は、炭化水素
モノマと過フッ化炭化水素モノマとを共重合させて成る
こととしてもよい。このような構成とすれば、固体高分
子電解質膜を、安価な原料を用いて製造することが可能
となる。
【0010】また、このような本発明の第1の固体高分
子電解質膜において、前記側鎖は、芳香族炭化水素を重
合の成分として含有し、該芳香族炭化水素が備える水素
原子を前記イオン交換基で置換して成ることとしてもよ
い。
【0011】本発明の第2の固体高分子電解質膜は、イ
オン伝導性を有する固体高分子電解質膜であって、前記
イオン伝導性を実現するイオン交換基を備える高分子か
ら成り、単位面積当たりの前記イオン交換基の含有量が
互いに異なっている複数の領域を備えることを要旨とす
る。
【0012】このような構成とすれば、単位面積当たり
の前記イオン交換基の含有量がより多い領域において、
イオン伝導性を充分に確保することができると共に、単
位面積当たりの前記イオン交換基の含有量がより少ない
領域において、前記イオン交換基が存在することで損な
われるおそれがあるイオン伝導性以外の性質を充分に確
保することができる。したがって、イオン伝導性と、イ
オン交換基を備えることで損なわれるおそれのある他の
性質との両方を、固体高分子電解質膜において、全体と
して確保することが可能となる。なお、ここで単位面積
当たりのイオン交換基の含有量とは、例えば、固体高分
子電解質膜を構成する高分子と、固体高分子電解質膜に
含有されるイオン交換基との、重量比などによって表わ
すことができる。
【0013】本発明の第1または第2の固体高分子電解
質膜において、前記イオン交換基はスルホン酸基である
こととしてもよい。
【0014】このような構成とすれば、本発明の第1の
固体高分子電解質膜における前記第2の領域、あるい
は、本発明の第2の固体高分子電解質膜における前記イ
オン交換基の含有量がより少ない領域において、固体高
分子電解質膜の強度を充分に確保することができる。ス
ルホン酸基は水分子を集める性質があり、またこのよう
な固体高分子電解質膜がイオン伝導性を示すためには、
固体高分子電解質膜が備えるスルホン酸基が水分子を周
囲に集める必要があるが、このように固体高分子電解質
膜の含水量が増加することは、固体高分子電解質膜の
(機械的な)強度の低下につながる。上記したように、
スルホン酸基を備えない領域あるいはスルホン酸基の含
有量がより少ない領域を備えることによって、固体高分
子電解質膜全体として、充分な強度を確保することがで
きる。
【0015】本発明の固体高分子電解質膜の製造方法
は、イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜の製造方
法であって、(a)高分子から成る膜を用意する工程
と、(b)前記(a)工程で用意した前記膜の一部の領
域に対して、前記イオン伝導性を実現するイオン交換基
を導入する工程とを備えることを要旨とする。
【0016】このような固体高分子電解質膜の製造方法
によれば、前記一部の領域だけに前記イオン交換基を備
える固体高分子電解質膜を得ることができる。
【0017】本発明の固体高分子電解質膜の製造方法に
おいて、前記(b)工程は、前記膜における前記一部の
領域において、該膜を構成する前記高分子に対して側鎖
を付加してグラフト共重合体を形成し、前記側鎖に前記
イオン交換基を導入する工程を備えることとしてもよ
い。このような方法によれば、前記膜の一部の領域に対
して前記イオン交換基を導入する動作を、容易に実行す
ることができる。
【0018】このような固体高分子電解質膜の製造方法
において、前記(b)工程は、放射線重合法を用いて前
記グラフト共重合体を形成することとしてもよい。
【0019】このような固体高分子電解質膜の製造方法
において、前記(b)工程は、(b−1)放射線を遮断
可能であって、前記膜における前記一部の領域以外の領
域を被覆可能な形状を有するマスクを用いて、前記膜を
マスキングする工程と、(b−2)前記マスキングした
前記膜に対して、放射線を照射する工程と、(b−3)
前記放射線を照射した膜を所定の重合反応に供し、前記
形状を有する前記マスクによって被覆されなかった領域
を構成する前記高分子において側鎖を形成する工程と、
(b−4)少なくとも、前記(b−3)工程で形成した
側鎖に対して、前記イオン交換基を導入する工程とを備
えることとしても良い。
【0020】このような構成とすれば、放射線の照射に
先立って前記膜をマスキングする際に用いる前記マスク
の形状に応じた一部の領域に対して、前記イオン交換基
を導入することができる。
【0021】また、本発明の固体高分子電解質膜の製造
方法において、前記マスクは、少なくとも該マスクが被
覆する領域において、前記膜を所定の伸展状態で保持可
能であり、前記(b−3)工程は、前記膜をマスキング
した状態のまま、前記重合反応に供することとしてもよ
い。
【0022】このような構成とすれば、前記重合反応後
において、前記膜の平滑性を維持することができる。す
なわち、前記側鎖を付加する重合反応を行なうと、前記
膜の内部で応力が発生して前記膜においてしわを生じて
しまうが、前記マスクによって前記膜を所定の伸展状態
で保持することによって、このようなしわの発生を抑え
ることができる。
【0023】本発明の固体高分子電解質膜の製造方法に
おいて、前記(b)工程は、(b−5)前記膜に対して
放射線を照射する工程と、(b−6)前記膜における前
記一部の領域以外の領域を被覆可能な形状を有し、該被
覆した領域に充分に密着して前記膜を保持可能な被覆部
材を、前記放射線を照射した膜に対して取り付ける工程
と、(b−7)前記被覆部材を取り付けた膜を所定の重
合反応に供し、前記形状を有する前記被覆部材によって
被覆されていない領域を構成する前記高分子において、
前記側鎖を形成する工程と、(b−8)少なくとも、前
記(b−7)工程で形成した側鎖に対して、前記イオン
交換基を導入する工程とを備えることとしても良い。
【0024】このような構成とすれば、固体高分子電解
質膜において、放射線の照射の後に前記膜に取り付けた
前記被覆部材の形状に応じた一部の領域に対して、前記
イオン交換基を導入することができる。
【0025】このような固体高分子電解質膜の製造方法
において、前記(b−7)工程は、前記膜に前記被覆部
材を取り付けた状態のまま、前記重合反応に供すること
としてもよい。
【0026】このような構成とすれば、前記重合反応後
において、前記膜の平滑性を維持することができる。す
なわち、前記側鎖を付加する重合反応を行なうと、前記
膜の内部で応力が発生して前記膜においてしわを生じて
しまうが、前記被覆部材によって前記膜を所定の伸展状
態で保持することによって、このようなしわの発生を抑
えることができる。
【0027】本発明の固体高分子電解質膜の製造方法に
おいて、前記(b)工程は、(b−9)前記膜に対して
放射線を照射する工程と、(b−10)前記放射線を照
射した膜を所定の重合反応に供し、前記膜を構成する前
記高分子において側鎖を形成する工程と、(b−11)
前記膜における前記一部の領域以外の領域を被覆可能な
形状を有し、該被覆した領域に充分に密着して前記膜を
保持可能な被覆部材を、前記重合反応に供した膜に対し
て取り付ける工程と、(b−7)前記被覆部材を取り付
けた膜に対して、前記イオン交換基を導入する処理を施
し、前記形状を有する前記被覆部材によって被覆されて
いない領域を構成する前記高分子において、少なくとも
前記側鎖に対して前記イオン交換基を導入する工程と、
を備えることとしても良い。
【0028】このような構成とすれば、固体高分子電解
質膜において、前記重合反応の後に前記膜に取り付けた
前記被覆部材の形状に応じた一部の領域に対して、前記
イオン交換基を導入することができる。
【0029】本発明の固体高分子電解質膜の製造方法に
おいて、前記(b)工程において前記側鎖に導入するイ
オン交換基は、スルホン酸基であることとしても良い。
【0030】このような構成とすれば、前記一部の領域
だけにスルホン酸基を備える固体高分子電解質膜を得る
ことができる。特に、スルホン酸基は水分子を周囲に集
める性質があるため、このようなスルホン酸基を備える
ことによって固体高分子電解質膜はその含水量が増加す
る。固体高分子電解質膜におけるこのような含水量の増
加は、固体高分子電解質膜の強度の低下を引き起こす
が、上記したように前記一部の領域だけにスルホン酸基
を備える固体高分子電解質膜を製造できることによっ
て、スルホン酸基を備えない領域では膜の強度を確保す
ることが可能となり、膜全体でイオン(プロトン)伝導
性と強度との両方を充分に備える固体高分子電解質膜を
得ることができる。
【0031】本発明の第1の固体高分子型燃料電池は、
請求項1ないし6記載の固体高分子電解質膜を備えるこ
とを要旨とする。
【0032】また、本発明の第2の固体高分子型燃料電
池は、イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜と、燃
料電池内部でガス流路を形成する部材とを含む部材を積
層して成る固体高分子型燃料電池であって、前記ガス流
路を形成する部材は、前記ガス流路を形成する凹状に形
成された領域と、隣接する部材と接触する凸状に形成さ
れた面とを備え、前記固体高分子電解質膜は、積層され
て前記燃料電池を構成する際に、前記ガス流路を形成す
る部材における前記凸状に形成された面に対応する領域
が、前記凹状に形成された領域に対応する領域に比べ
て、面積当たりのイオン交換基の含有量が多いことを要
旨とする。
【0033】このような本発明の第2の固体高分子型燃
料電池によれば、この燃料電池が備える固体高分子電解
質膜において、前記ガス流路を形成する部材が備える前
記凸状に形成された面に対応する領域が、より多くのイ
オン交換基を備えている。したがって、その表面により
多くのガスが供給されてより活発に電気化学反応が進行
するような固体高分子電解質膜の領域において、充分な
イオン伝導性を確保することができる。また、この燃料
電池が備える固体高分子電解質膜において、前記ガス流
路を形成する部材が備える前記凹状に形成された領域に
対応する領域が、より少ないイオン交換基を備えてい
る。したがって、燃料電池内部で積層による押圧力を受
けるような固体高分子電解質膜の領域、すなわち、イオ
ン伝導性をそれほど要求されない領域において、イオン
交換基を備えることで固体高分子電解質膜の性質が変化
してしまうのを抑えることができる。
【0034】このような固体高分子型燃料電池におい
て、前記イオン交換基は、スルホン酸基であることとし
ても良い。このような構成とすれば、燃料電池内部で積
層による押圧力を受けるような固体高分子電解質膜の領
域において、固体高分子電解質膜の強度が低下してしま
うのを抑えることができ、燃料電池全体の耐久性を向上
させることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】以上説明した本発明の構成・作用
を一層明らかにするために、以下本発明の実施の形態を
実施例に基づき説明する。本実施例では、固体高分子電
解質膜において局部的にイオン伝導性を備えることを特
徴としているが、まず、この固体高分子電解質膜を備え
る燃料電池の構成について説明する。図1は、本実施例
の電解質膜21を備える燃料電池の構成単位である単セ
ル20の断面の様子を表わす説明図である。以下に、単
セル20の構成について説明する。
【0036】(1)単セル20の構成:単セル20から
なる燃料電池15は、固体高分子型燃料電池である。図
1に示すように、単セル20は、電解質膜21と、電解
質膜21を挟持してサンドイッチ構造をなす一対の触媒
電極であるアノード22およびカソード23と、このサ
ンドイッチ構造をさらに挟持するセパレータ30a,3
0bとから構成されている。ここで、セパレータ30
a,30bは、ガス拡散電極であるアノード22および
カソード23との間に、燃料ガス及び酸化ガスの流路を
形成する。アノード22とセパレータ30aとの間には
燃料ガス流路24Pが形成されており、カソード23と
セパレータ30bとの間には酸化ガス流路25Pが形成
されている。
【0037】電解質膜21は、固体高分子材料により形
成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状
態で良好な電気伝導性を示す。この電解質膜21の製造
方法およびその性質については後に詳しく説明する。電
解質膜21の表面には、触媒としての白金または白金と
他の金属からなる合金を含有する触媒ペーストが塗布さ
れている。
【0038】ガス拡散電極であるアノード22およびカ
ソード23は、炭素繊維からなる糸で織成したカーボン
クロスや、カーボンペーパ、あるいはカーボンフエルト
など、充分なガス拡散性および導電性を有する部材によ
って構成される。セパレータ30a,30bは、充分な
導電性と強度と耐食性とを有する材料によって形成され
る。本実施例では、カーボン材料をプレス成形すること
によってセパレータ30a,30bを形成したが、充分
な耐食性を実現可能であれば、金属など他の材料によっ
てセパレータ30a,30bを形成することとしてもよ
い。
【0039】セパレータ30a,30bは、ガス不透過
の導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過
とした緻密質カーボンや、金属製部材などにより形成さ
れる。セパレータ30a,30bはその表面に、所定の
形状のリブ部を形成しており、既述したように、隣接す
るガス拡散電極との間で燃料ガス流路24Pあるいは酸
化ガス流路25Pを形成する。
【0040】以上のように構成された単セル20では、
燃料ガス流路24Pを介して水素を含有する燃料ガスが
供給され、酸化ガス流路25Pを介して酸素を含有する
酸化ガスが供給されると、電解質膜21の表面に配設さ
れた上記触媒上で電気化学反応が進行する。以下に、こ
の電気化学反応を表わす式を示す。
【0041】 H2 → 2H++2e- …(1) 2H++2e-+(1/2)O2 → H2O …(2) H2+(1/2)O2 → H2O …(3)
【0042】(1)式はアノード側における反応を示
し、(2)式はカソード側における反応を示し、(3)
式は燃料電池全体で行なわれる反応を示す。(1)式に
示すアノード側の反応で生じたプロトンは、電解質膜2
1内をカソード側に伝えられて(2)式に示す反応に供
される。プロトンが電解質膜21内を移動する際には、
プロトンは、電解質膜21が備えるスルホン酸基から他
のスルホン酸基へと移動するが、このようなプロトンの
移動が行なわれるためには、スルホン酸基の周りにある
程度以上の水分子が集まっており、移動するプロトンが
水分子との間で所定の親和性を保つことが必要である。
【0043】(2)電解質膜21の製造方法:以下に、
電解質膜21の製造方法について説明する。本実施例の
電解質膜21は、イオン伝導性を実現するイオン交換基
を局所的に備えることを特徴としているが、まず、高分
子から成る膜に対してイオン交換基を導入する動作につ
いて説明する。図2は、イオン交換基を導入する工程の
一部を表わす説明図である。本実施例では、炭化水素を
含有する高分子から成るベースフィルムを用い、このベ
ースフィルムを構成する高分子を、放射線重合法によっ
てグラフト共重合体と成し、放射線重合法によって形成
される側鎖にイオン交換基(スルホン酸基)を導入す
る、すなわち、側鎖が備える水素原子の一部をスルホン
酸基で置換している。ベースフィルムに放射線を照射す
る様子を図2(A)に、グラフト共重合によって側鎖が
形成される様子を図2(B)に、側鎖にスルホン酸基を
導入する様子を図2(C)に示す。
【0044】このようなスルホン酸基導入の動作を行な
う際に、本実施例では、所定の形状の穴あき部62を所
定の配置で設けたマスク60を用いている。マスク60
の形状の例を、図4(A)および図4(B)に示す。こ
のような形状のマスク60を、上記放射線照射に先だっ
てベースフィルム上に配設する(マスキングを行なう)
ことによって、マスク60が備える穴あき部62に対応
する領域だけに実質的に放射線を照射し、この領域だけ
に側鎖を形成してスルホン酸基を導入することが可能と
なる。以下、電解質膜21の製造の動作を、具体的に説
明する。図3は、電解質膜21の製造工程を表わす説明
図である。
【0045】最初に、ベースフィルムを用意する(ステ
ップS100)。このベースフィルムは、上記したよう
に炭化水素を含有する高分子から成るが、本実施例で
は、エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体か
らなる膜(膜厚50μm)を、ベースフィルムとして用
いる。次に、このベースフィルムに対してマスキングを
施す(ステップS110)。ここでは、金属製プレート
から成り、設けられた穴あき部62の面積の合計が、ベ
ースフィルム面積の2分の1となるような穴あき部62
を、図4に示したように所定のパターンで備えるマスク
60を用いる。なお、本実施例では、マスク60は金属
製のものを用いることとしたが、樹脂など他の部材によ
って同様のマスクを形成することとしてもよい。放射線
を充分に遮断可能であって、穴あき部62に対応する領
域以外の実際に覆われている領域では、ベースフィルム
を構成する高分子において、照射した放射線によって活
性点が生じるのを充分に防止可能であるような材質から
成り、厚みを備えていればよい。
【0046】次に、マスキングを施したベースフィルム
に対して放射線の照射を行なう(ステップS120)。
具体的には、250kVの加速電圧で、600kGyの
電子線を照射する。この放射線照射の処理によって、ベ
ースフィルムを構成する高分子の所々で、後述するグラ
フト重合のための活性点が生じる。
【0047】放射線照射に引き続いてベースフィルムを
重合反応に供することによって、上記活性点から側鎖が
形成されて(ステップS130)、ベースフィルムを構
成する高分子はグラフト共重合体となる。具体的には、
ベンゼンとスチレンと1,4−ブタンジオールジアクリ
レートとを5:4:2の比(体積比)で混合した70℃
の混合溶液に、上記放射線を照射したベースフィルムを
3時間浸漬する。これによって、上記それぞれの活性点
より、スチレンと1,4−ブタンジオールジアクリレー
トとからなる共重合体が、側鎖として形成される。
【0048】次に、上記側鎖を形成したベースフィルム
を、クロロスルホン酸と反応させ、側鎖が備える芳香環
をスルホン化して(ステップS140)、電解質膜21
を完成する。すなわち、ステップS110においてベー
スフィルム上に配設したマスク60が備える穴あき部6
2に対応する所定の領域にだけ、スルホン酸基が導入さ
れた電解質膜21を得ることができる。
【0049】なお、ステップS110でベースフィルム
上に取り付けたマスク60は、ステップS130におけ
る側鎖の形成に先だって取り外しても良く、ステップS
130後に取り外しても良い。特に、マスク60が、こ
のマスク60をベースフィルムに取り付けたときにベー
スフィルムを所定の伸展状態に保つことができる場合に
は、ステップS130の側鎖の形成の工程においても、
マスク60をベースフィルムに取り付けたままにしてお
くことが望ましい。すなわち、側鎖を形成する重合反応
が進行すると、ベースフィルム内部では、重合反応の影
響で応力が発生し、重合反応後にはベースフィルムはし
わが寄った状態となってしまう。マスク60によってベ
ースフィルム全体を保持することによって、ベースフィ
ルムの伸展状態を保つことができる。もとより、重合反
応で生じるしわが許容範囲であれば側鎖形成の工程の前
にマスク60を取り外しても良く、側鎖形成の工程の後
にベースフィルムのしわを軽減する工程(プレスなど)
を加えても良く、あるいは、側鎖形成の工程だけでなく
ステップS140におけるスルホン化の工程も、マスク
60を取り付けたまま行なっても差し支えない。
【0050】また、上記実施例では、側鎖をスルホン化
する際にクロロスルホン酸を用いたが、濃硫酸や発煙硫
酸や三酸化硫黄など、他のスルホン化剤を用いることと
しても良い。ベースフィルムの耐性や、側鎖におけるス
ルホン化の反応性などを考慮して適宜選択すれば良く、
また、上記スルホン化剤と共に用いる溶媒の種類やスル
ホン化剤の濃度も、同じく適宜選択することができる。
【0051】(3)燃料電池の構成:このようにして製
造された電解質膜21は、既述した他の部材と共に所定
の順序で積層することによって単セル20を構成するこ
とができる。この単セル20を複数個積層することによ
って、燃料電池15を構成することができる。図5は、
単セル20の分解斜視図である。
【0052】図1では、各セパレータ30a,30bの
片面においてだけガス流路を成すリブ部が形成されてい
るように表わされているが、実際の燃料電池では、図5
に示すように、各セパレータ30a,30bは、その両
方の面にそれぞれリブ54およびリブ55を形成してい
る。セパレータ30a,30bのそれぞれの片面に形成
されたリブ54は隣接するアノード22との間で燃料ガ
ス流路24Pを形成し、セパレータ30a,30bの他
面に形成されたリブ55は隣接する単セルが備えるカソ
ード23との間で酸化ガス流路25Pを形成する。した
がって、セパレータ30a,30bは、ガス拡散電極と
の間でガスの流路を形成すると共に、隣接する単セル間
で燃料ガスと酸化ガスとの流れを分離する役割を果たし
ている。このように、セパレータ30a,30bは、実
際に組み立てられる燃料電池では、形態上、あるいは働
きの上で区別はなく、以後、セパレータ30と総称す
る。
【0053】なお、各セパレータの表面に形成されたリ
ブ54,55の形状は、ガス流路を形成してガス拡散電
極に対して燃料ガスまたは酸化ガスを供給可能であれば
良い。本実施例では、各セパレータの表面に形成された
リブ54,55は平行に形成された複数の溝状の構造と
した。図1では、単セル20の構成を模式的に表わすた
めに、燃料ガス流路24Pと酸化ガス流路25Pとを平
行に表わしたが、燃料電池を組み立てる際に実際に用い
るセパレータ30では、各セパレータ30の両面で、リ
ブ54とリブ55とがそれぞれ直交する方向となるよう
に、リブ54,55を形成した(図5参照)。
【0054】また、セパレータ30の周辺部には、4つ
の穴構造が設けられている。燃料ガス流路24Pを形成
するリブ54を連絡する燃料ガス孔50,51と、酸化
ガス流路25Pを形成するリブ55連絡する酸化ガス孔
52,53である。燃料電池15を組み立てたときに
は、各セパレータ30が備える燃料ガス孔50,51は
それぞれ、燃料電池内部をその積層方向に貫通する燃料
ガス供給マニホールドおよび燃料ガス排出マニホールド
を形成する。また、各セパレータ30が備える酸化ガス
孔52,53は、同じく燃料電池内部をその積層方向に
貫通する酸化ガス供給マニホールドおよび酸化ガス排出
マニホールドをそれぞれ形成する。
【0055】図6に、燃料電池15の外観を表わす説明
図を示す。実際に燃料電池15を構成するときには、上
記電解質膜21の表面に既述した触媒ペーストを塗布
し、その両側をガス拡散電極(アノード22およびカソ
ード23)で挟持した上で加圧プレスを行なって成る構
造(電極アセンブリ)を作製し、この電極アセンブリ間
にセパレータ30を配設しつつこれらを積層することに
よって、単セル20を複数個積層した構造を得ることが
できる。さらに、その両端に集電板44,45、絶縁板
42,43、エンドプレート40,41を配置して、図
6に示すスタック構造からなる燃料電池15を完成す
る。集電板44,45にはそれぞれ出力端子44A,4
5Aが設けられており、燃料電池で生じた起電力を出力
可能となっている。
【0056】エンドプレート40は、図6に示すように
2つの穴構造を備えている。一つは燃料ガス孔46、も
う一つは酸化ガス孔47である。エンドプレート40と
隣接する絶縁板42および集電板44は、エンドプレー
ト40が備える2つの穴構造と対応する位置に同様の2
つの穴構造を形成している。この燃料ガス孔46は、セ
パレータ30の備える燃料ガス孔50の中央部に開口し
ている。なお、燃料電池を動作させるときには、燃料ガ
ス孔46と図示しない燃料ガス供給装置とが接続され、
水素リッチな燃料ガスが燃料電池内部に供給される。同
様に、酸化ガス孔47は前記セパレータ30の備える酸
化ガス孔52の中央部に対応する位置に形成されてい
る。燃料電池を動作させるときには、この酸化ガス孔4
7と図示しない酸化ガス供給装置とが接続され、酸素を
含有する酸化ガスが燃料電池内部に供給される。ここ
で、燃料ガス供給装置と酸化ガス供給装置は、それぞれ
のガスに対して、必要に応じて所定量の加湿および加圧
を行なって燃料電池に供給する装置である。
【0057】また、エンドプレート41は、エンドプレ
ート40とは異なる位置に2つの穴構造を備えている。
絶縁板43、集電板45もまたエンドプレート41と同
様の位置に、それぞれ2つの穴構造を形成している。エ
ンドプレート41が備える穴構造の一つである燃料ガス
孔(図示せず)は、セパレータ30の備える燃料ガス孔
51の中央部に対応する位置に開口しており、燃料電池
を動作させるときには、図示しない燃料ガス排出装置が
接続される。また、エンドプレート41が備えるもう一
つの穴構造である酸化ガス孔(図示せず)は、セパレー
タ30の備える酸化ガス孔53の中央部に対応する位置
に開口しており、燃料電池を動作させるときには、図示
しない酸化ガス排出装置が接続される。
【0058】次に、以上のような構成を備えた燃料電池
15における燃料ガスおよび酸化ガスの流れについて説
明する。燃料ガスは、上記した所定の燃料ガス供給装置
から、エンドプレート40に形成された燃料ガス孔46
を経て燃料電池内部に導入される。燃料電池内部で燃料
ガスは、燃料ガス供給マニホールドを介して各単セル2
0が備える燃料ガス流路24Pに供給され、各単セル2
0が備える電解質膜21上に備えられた触媒上において
進行する電気化学反応に供される。燃料ガス流路24P
から排出された燃料ガスは、燃料ガス排出マニホールド
に集合してエンドプレート41の燃料ガス孔に達し、こ
の燃料ガス孔から燃料電池の外部へ排出されて、所定の
燃料ガス排出装置に導かれる。
【0059】同様に酸化ガスは、上記した所定の酸化ガ
ス供給装置から、エンドプレート40に形成された酸化
ガス孔47を経て燃料電池内部に導入される。燃料電池
内部で酸化ガスは、酸化ガス供給マニホールドを介して
各単セル20が備える酸化ガス流路25Pに供給され、
各単セル20のが備える電解質膜21上に備えられた触
媒上において進行する電気化学反応に供される。酸化ガ
ス流路25Pから排出された酸化ガスは、酸化ガス排出
マニホールドに集合してエンドプレート41の酸化ガス
孔に達し、この酸化ガス孔から上記所定の酸化ガス排出
装置に排出される。
【0060】本実施例の固体高分子電解質膜によれば、
電解質膜21の限られた領域だけが、スルホン酸基を備
えているため、電解質膜21において、イオン伝導性
(プロトン伝導性)と強度との両方を充分に確保するこ
とが可能となる。すなわち、既述したように、電解質膜
においてその含有するスルホン酸基量を増やすと、電解
質膜のイオン伝導性を向上させることができるが、これ
によって電解質膜の含水量が増えるために、電解質膜の
強度が低下してしまうが、本実施例の電解質膜21のよ
うに、限られた領域だけにスルホン酸基を導入すること
によって、このスルホン酸基を導入した領域で充分なイ
オン伝導性を確保するとともに、スルホン酸基を導入し
ない領域において充分な強度を確保することができる。
【0061】ここで、電解質膜におけるスルホン酸基の
含有量とイオン伝導性(伝導度)との関係を説明する。
図7は、本実施例と同様のベースフィルムにおいて同様
に側鎖を形成し、この側鎖にスルホン酸基を導入(側鎖
が備える水素原子の一部をスルホン酸基で置換)して電
解質膜を製造したときの、スルホン酸基の含有量と、そ
のときの電解質膜の伝導度との関係を表わす説明図であ
る。ここで、横軸であるスルホン酸基の含有量は、ベー
スフィルムの重量当たりの導入されたスルホン酸基量と
する。図7に示すように、全体の傾向としては、電解質
膜中のスルホン酸基量が多いほど電解質膜の伝導度は高
くなる。ここで、電解質膜中のスルホン酸基量がある程
度の量(図7の横軸において値aと示した量の付近)ま
では、電解質膜の伝導度はあまり高くならないが、電解
質膜中のスルホン酸基量が上記ある程度の量を超える
と、電解質膜の伝導度は、スルホン酸基量の増加に伴っ
て急激に上昇するようになる。したがって、電解質膜中
のスルホン酸基量が上記したある程度の量を超えると、
電解質膜中のスルホン酸基量の増加の程度に比べて、伝
導度の上昇の程度が非常に大きくなる。
【0062】図7において、従来固体高分子電解質膜と
して用いられてきたナフィオン膜の伝導度に対応する値
を、縦軸上に値dと表わす。また、ナフィオン膜の2倍
の伝導度に対応する値を、同じく縦軸上に値2dと表わ
す。図7にその性質を示した電解質膜では、上記伝導度
が値dおよび値2dを示すときのスルホン酸基量は、い
ずれも、上記したある程度の量(値aと示した量)を超
えている。したがって、このような電解質膜では、その
伝導度が値dからその2倍である値2dとなるようにス
ルホン酸基量を増やすとしても、伝導度の増加が2倍で
あるにもかかわらず、両者のスルホン酸基量の差は、そ
れほど大きくならない。すなわち、本実施例の電解質膜
を製造する際に、ベースフィルムの半分の面積をマスキ
ングし、固体高分子電解質膜全体の伝導性を確保するた
めに、マスキングしなかった領域の伝導性が膜全体に要
求する伝導性の2倍となるようにスルホン酸基を導入し
たとしても、導入するスルホン酸基の増加量は僅かで済
み、スルホン酸基を導入した領域においても、より多く
のスルホン酸基を導入することによる影響(強度の低下
など)を低く抑えることができる。
【0063】ここで、燃料電池15を構成する各単セル
20において、電気化学反応が進行する触媒を備える領
域は、既述したように上記触媒を備える触媒ペーストを
電解質膜上に塗布することによって形成されるが、この
触媒ペーストは、イオン伝導性の高分子を含有してお
り、上記触媒ペーストによって電解質膜21上に形成さ
れる触媒層は、全体としてイオン伝導性を有している。
したがって、触媒上で電気化学反応によって生じたイオ
ン(プロトン)は、上記触媒層によって伝えられ、電解
質膜における最寄りのスルホン酸基を備える領域に到達
する。そのため、例えばマスクパターンを充分に細かく
すると共に、上記したように、スルホン酸基を導入する
領域の面積の割合に応じて、その導入する領域における
伝導度を充分に確保することとすれば、部分的にスルホ
ン酸基を備えない領域を設けていても、電解質膜全体で
所望の伝導度を確保することができる。
【0064】したがって、本実施例のように、ベースフ
ィルムに対してマスキングを行ない、固体高分子電解質
膜において部分的にスルホン酸基を導入することによ
り、スルホン酸基を導入しない領域においてはその強度
を極めて強いものにすることができると共に、スルホン
酸基を導入する領域では、ある程度の膜強度の低下は伴
うものの、充分な伝導性を確保することができる。この
ように、部分的にスルホン酸基を導入する構成とすれ
ば、電解質膜全体で所定の伝導度を得ようとする際に、
電解質膜全体の強度をより充分に確保することが可能と
なる、あるいは、所定の電解質膜強度を得ようとする際
に、スルホン酸基を導入量を増加して、伝導度(イオン
伝導性)をより向上させることができる。
【0065】また、上記したように、所望の伝導度を確
保しても電解質膜21の強度をより充分なものとするこ
とができるため、電解質膜21をより薄型化することも
可能となる。電解質膜21を薄型化することによって、
これを用いて構成される燃料電池15の内部抵抗をより
小さく抑えることが可能となり、電池性能を向上させる
ことができる。
【0066】電解質膜において局部的にスルホン酸基を
導入するために用いるマスク60の形状の例を図4に示
したが、マスク60の形状(穴あき部62の形状および
配置)は、異なるものとしても良い。図4に示したよう
に同じ大きさの穴あき部62を規則的に設けるというパ
ターンを有するマスクを、ベースフィルム全体に適用す
る必要もない。特に、後述するように、固体高分子電解
質膜を燃料電池内に組み込んだときの他部材との間の位
置関係などに応じて、固体高分子電解質膜において、特
に強度が要求される領域と特に伝導性が要求される領域
とによって、スルホン酸基の導入量を変更することとす
れば、燃料電池に組み込む電解質膜として要求される強
度を充分に満たしつつ、燃料電池の電池性能に関わるよ
り高い伝導性を実現して、燃料電池の耐久性および性能
を向上させることができる。
【0067】電解質膜を燃料電池内に組み込んだときの
他部材との間の位置関係などに応じてマスクの形状を設
定する構成としては、例えば、燃料電池内に組み込んだ
ときに、プロトンの移動に特に関わる領域と、部材の保
持に関わる領域、すなわち、積層したときに、セパレー
タ30の凹部(燃料ガス流路あるいは酸化ガス流路を形
成するリブ54,55の凹部)に対応する領域と、凸部
(同じくリブ54,55の凸部)に対応する領域とで、
マスクパターン(における目の粗さ)や、スルホン酸基
を導入する面積と導入しない面積との割合を変える構成
を挙げることができる。
【0068】セパレータ30と共に積層されて燃料電池
を構成する電解質膜21において、セパレータ30の上
記凹部に対応する領域は、単セル内ガス流路(燃料ガス
流路24Pあるいは酸化ガス流路25P)から、ガス拡
散電極を介して、この電解質膜上に備えられた触媒に対
してガスが効率よく供給される領域であり、上記触媒上
では電気化学反応が活発に進行し、この反応で生じたプ
ロトンが活発に電解質膜21の内部を通過する。したが
って、電解質膜21におけるこのような領域では、スル
ホン酸基を導入する面積の割合(上記領域内において、
各穴あき部62に対応する面積を合計した面積の、この
領域全体の面積に対する割合)を大きくすることによっ
て、電池性能を確保することができる。このような凹部
に対応する領域におけるスルホン酸基を導入する面積の
割合およびマスクのパターンは、このような領域に要求
される強度に応じて、上記スルホン酸基を導入する面積
の割合ができる限り大きくなるように定めることが望ま
しい。
【0069】電解質膜21において、セパレータ30の
凸部に対応する領域は、セパレータ30と共に積層され
て燃料電池を構成するときには、上記凸部から押圧力を
受けて電解質膜21の保持のために働く領域である。ま
た、このような領域では、単セル内ガス流路を通過する
ガスの一部が、ガス拡散電極内を拡散することによって
供給され、このような領域上に備えられた触媒において
進行する電気化学反応に供される。このように、凸部に
対応する領域は、電解質膜を保持するための押圧力を受
けるために強い機械的な強度を要求されるものの、上記
凹部に対応する領域に比べて電気化学反応への寄与が小
さい領域である。したがって、このような領域では、上
記スルホン酸基を導入する面積の割合を小さくすること
によって、電解質膜に必要な強度を備え、燃料電池の耐
久性を高めることが望ましい。また、このような領域は
電気化学反応への寄与が小さいため、この領域において
強度を確保するためにスルホン酸基の導入量を少なくし
ても、燃料電池の電池性能が非所望の程度に低下してし
まうことがない。このような凸部に対応する領域におけ
る上記スルホン酸基を導入する面積の割合およびマスク
のパターンは、このような領域に要求される強度に応じ
て適宜定めればよい。
【0070】もとより、電解質膜全体で充分なイオン伝
導性を確保することができるならば、上記凸部に対応す
る領域は、スルホン酸基を導入しないこととしても良
い。このように、所定の範囲にわたってスルホン酸基を
導入しない領域を設ける場合には、この領域は、強度が
低下することがなく、側鎖を形成する重合反応の際に既
述したようにしわが寄って平滑性が失われることがな
い。したがって、その後の膜のハンドリングが容易にな
る。
【0071】上記したように、所定の領域内において、
上記スルホン酸基を導入する面積の割合を定めることに
よって、その領域の強度と伝導度を設定することができ
るが、個々の穴あき部62の面積をより小さくすること
によって、スルホン酸基の導入量を、上記所定の領域全
体においてより均一な状態としても良い。例えば、マス
ク60を、目の細かいメッシュ状に形成され、目の細か
さ(縦横に配設されてメッシュを構成する各繊維部分の
太さ)が異なる複数の領域からなるように作製しておけ
ば、スルホン酸基の含有割合の異なる複数の領域を備え
る電解質膜を得ることができる。
【0072】また、上記実施例では、マスク60を金属
プレートによって作製し、マスク60で実質的に覆われ
る領域には放射線照射を行なってもその影響を受けない
ような構成としたが、所定の割合で放射線を透過する材
質から成るマスクを用いることとしても良い。このよう
なマスクを用いることによっても、スルホン酸基の含有
割合の異なる複数の領域を備える電解質膜を得ることが
できる。
【0073】また、上記実施例では、固体高分子電解質
膜の製造方法として、放射線照射に先立ってマスキング
を行なったが、異なる構成とすることもできる。例え
ば、放射線照射は膜全体に対して行ない、その後膜をマ
スキングしてグラフト重合の反応に供することとしても
良い。すなわち、図3に示した電解質膜の製造工程にお
いて、ステップS110を、ステップS120の前にで
はなく、後に行なうこととしてもよい。このような構成
としても、マスクの形状に応じて、局所的にスルホン酸
基を導入した電解質膜を得ることができ、既述した効果
が得られる。
【0074】なお、このような構成では、ベースフィル
ム全体に放射線が照射されるため、この放射線照射によ
ってベースフィルム全体で重合反応の活性点が形成され
るが、マスキングすることによって、マスクで覆われて
いる領域で重合反応が実際に進行するのを妨げている。
したがって、放射線照射の後にマスキングを行なう場合
には、マスクは、互いに対応する形状の穴あき部を備え
る2枚のマスクによって、両側からベースフィルムを挟
み込むなどの方法で、ベースフィルム表面に充分に密着
させ、マスクで覆う領域内に重合反応の反応溶液が浸透
するのを妨げる構成とする。もとより、放射線照射に先
立ってマスキングを行なう場合には、必ずしもこのよう
に対応する形状の穴あき部を備える2枚のマスクによっ
てベースフィルムの両側から挟み込む必要はなく、少な
くともベースフィルムの一方の面(放射線の照射を受け
る面)を覆えばよい。放射線照射の後、すなわち側鎖の
重合反応に先立ってマスキングを行なう場合にも、重合
反応の工程において、ベースフィルムはマスクによって
所定の伸展状態が保たれるため、重合反応によって膜内
に生じる応力によってしわを生じるのを抑え、平滑状態
を保つ効果を得ることができる。
【0075】あるいは、放射線の照射(図3におけるス
テップS120)および側鎖の形成(同じくステップS
130)は、ベースフィルム全体に対して行ない、ステ
ップS140のスルホン化の工程に先立ってマスキング
を行なうこととしてもよい。このような構成において
も、上記した側鎖の形成に先立ってマスキングを行なう
構成と同様に、マスクで覆う領域内にスルホン化のため
の溶液が浸透するするのを防ぐことができるように、マ
スキングの方法(マスクの構造)を選択すればよい。こ
のような構成とすることによって、上記実施例と同様
に、マスクの形状に応じて所望の領域だけにスルホン酸
基を導入した電解質膜を得ることができる。
【0076】なお、ベースフィルムを構成するために使
用可能な高分子材料によっては、放射線の照射によって
強度が低下するもの、および、強度が向上するものがあ
る。したがって、既述した実施例のように、放射線照射
に先立ってマスキングを行なう構成は、放射線の照射に
よってベースフィルムの強度が低下する材料から成るベ
ースフィルムを用いる場合に特に有効である。また、放
射線照射の後にマスキングを行なう構成は、放射線照射
によってベースフィルムの強度が向上する材料から成る
ベースフィルムを用いる場合に特に有効である。
【0077】放射線照射により強度が低下する高分子と
は、放射線の照射によってフッ素などの構成原子が抜き
取られることによって分子構造の一部が壊れ(崩壊
し)、強度が低下する性質を有するものであり、崩壊型
高分子として分類される。また、放射線照射により強度
が向上する高分子とは、放射線の照射によって水素原子
が抜き取られ、分子間で架橋を形成することによって強
度が向上する性質を有するものであり、架橋型高分子と
して分類される。種々の高分子についてこのような分類
を行なった例を、図8に示す。図8に示したような崩壊
型高分子によってベースフィルムを構成する際には、放
射線照射に先立ってマスキングを行なうことによって、
マスクで覆われた領域の強度が、放射線照射によって低
下してしまうのを防ぐことができる。図8に示したよう
な架橋型高分子によってベースフィルムを構成する際に
は、ベースフィルム全体に放射線を照射し、この放射線
照射の後にマスキングを行なうことによって、電解質膜
全体の強度をより高めることができる。
【0078】上記実施例では、ベースフィルムは、エチ
レンとテトラフロロエチレン(四フッ化エチレン)との
共重合体から成ることとしたが、図8に示すように、ポ
リエチレンは架橋型高分子に分類され、ポリ四フッ化エ
チレン(PTFE)は崩壊型高分子に分類される。図3
に示した製造工程では、放射線の照射の前にマスキング
を行なうこととしたが、一般に、放射線の照射によって
水素原子が抜けて架橋が起こる反応と、フッ素原子が抜
けて崩壊が起こる反応とでは、架橋が起こる反応の方が
優先して起こるため、上記実施例において、全体に放射
線を照射した後にマスキングを行なうこととしても良
い。また、一般的に崩壊型とされているPTFEであっ
ても、温度など放射線の照射条件を調節することによっ
て架橋反応を起こさせることも可能であり、電解質膜を
製造する際のマスキングの時期は、ポリマの性質の他、
製造工程の条件や工程作業の利便性などを考慮して適宜
選択すればよい。
【0079】既述したように、スルホン化剤によるスル
ホン化の反応は、芳香環において行なわれるため、上記
実施例では、図3のステップS140において形成する
側鎖を、芳香環を有するスチレンおよび1,4−ブタン
ジオールジアクリレートを用いて形成した。ここで、
1,4−ブタンジオールジアクリレートは、ポリマの分
子構造に可撓性を与えることができる動きの自由度が高
い構造(エーテル結合)を有しているため、側鎖を構成
する成分として1,4−ブタンジオールジアクリレート
を加えることは、各側鎖の動きの自由度を高め、電解質
膜の伝導性を高めるために有利に働く。
【0080】ここで、スルホン酸基を備える側鎖の自由
度と、イオン伝導性との関係について説明する。燃料電
池で電気化学反応が進行するのに伴って生じたプロトン
は、固体高分子電解質膜内においては、アノード側から
カソード側に向かって、スルホン酸基からスルホン酸基
へと移動する。このように電解質膜が備えるスルホン酸
基から他のスルホン酸基へとプロトンが移動する際に
は、既述したように、スルホン酸基の周りにある程度以
上の水分子が集まっており、移動するプロトンが水分子
との間で所定の親和性を保つことが必要である。個々の
スルホン酸基は、周囲に水分子を集める性質を有してお
り、また、このスルホン酸がある程度の動きの自由度を
有しているときには、近傍にあるスルホン酸基同士は互
いに近づこうとする。上記したように、本実施例の電解
質膜21では、動きの自由度が高い構造を有する側鎖を
備えるため、電解質膜21は、その微視的な構造とし
て、側鎖に導入されたスルホン酸基が、近傍に存在する
もの同士互いに近づくことができる。水分子を引き寄せ
るスルホン酸基同士がこのように集まることによって、
本実施例の電解質膜21では、互いに近づいたスルホン
酸基の周囲に充分量の水分子が集まり、このように水分
子が集まることによって充分に高いプロトン伝導性を実
現することができる。なお、含水率が高まるとそれに伴
って膜強度が低下するおそれがあるが、本実施例の電解
質膜21では、既述したようにスルホン酸基は部分的に
導入されているため、膜全体で含水量が高まりすぎて強
度が低下しすぎることがない。
【0081】上記した1,4−ブタンジオールジアクリ
レートと同様に、側鎖の成分として混合することで側鎖
の動きの自由度を高め、イオン伝導性を確保する上で有
利に働く分子としては、他に、エチレングリコールメタ
クリレートを挙げることができる。なお、1,4−ブタ
ンジオールジアクリレートやエチレングリコールメタク
リレートは、側鎖間に架橋を形成する架橋剤として働く
性質も有している。このように側鎖間に架橋が形成され
ることは、スルホン酸基同士が近づいてその周りに充分
量の水分子が集合するのを妨げ、イオン伝導性を確保す
る上では不利であるが、混合割合などを適宜調節するこ
とによって、側鎖の自由度を高めることによる効果を充
分に確保して、イオン伝導性を向上させる効果を充分に
得ることができる。もとより、スチレンのみによって側
鎖を構成して電解質膜を製造しても、部分的にスルホン
酸基を導入することによる所定の効果を得ることができ
る。さらに、1,4−ブタンジオールジアクリレートや
エチレングリコールメタクリレートを用いる場合よりも
側鎖に自由度を与える働きが弱い物質、また、架橋を行
なう作用が強い物質、例えばジビニルベンゼンなどを加
える用いる場合にも、局所的にスルホン酸基を導入する
ことによって電解質膜の伝導度を確保するという既述し
た効果を得ることができる。
【0082】上記実施例では、スルホン酸基を導入する
ためのベースフィルムとして、炭化水素とペルフルオロ
カーボン(過フッ化炭化水素)とを重合して成る高分子
を用いたが、ベースフィルムを作製する際のこれらの混
合割合は、任意に設定することができる。炭化水素の割
合が高いほど安価にベースフィルムを製造することがで
き、ペルフルオロカーボンの割合が高いほど、得られる
電解質膜の耐久性(耐酸性や耐溶剤性など)および耐熱
性を高めることができる。もとより、強度やコストなど
が許容範囲であれば、炭化水素のみ、あるいはペルフル
オロカーボンのみによって、ベースフィルムを作製する
こととしても、局所的にスルホン酸基を導入することに
よる既述した効果を得ることができる。なお、このよう
な炭化水素からなるベースフィルム、あるいは、炭化水
素とペルフルオロカーボンとからなるベースフィルム
は、汎用性のある樹脂フィルムとして低コストで入手可
能であるため、固体高分子電解質膜を製造するコストを
より抑えることができる。
【0083】また、固体高分子電解質膜を製造する際
に、スルホン酸基を導入するために用いるベースフィル
ムは、上記した炭化水素やペルフルオロカーボンの以外
に、他の炭化水素化合物、例えば図8に示した高分子の
ように炭化水素の塩化物や酸化物などを重合することに
よって、あるいはこれら炭化水素化合物を原料中に加え
て重合することによって形成することとしてもよい。膜
状に成形可能で、上記した実施例のように部分的にイオ
ン交換基を導入可能であって、イオン交換基を導入して
燃料電池内に組み込んだときに、充分な耐久性(強度、
耐熱性、耐酸性など)を有していればよい。なお、既述
した実施例では、イオン交換基であるスルホン酸基は、
芳香環を備える側鎖だけに導入されたが、ベースフィル
ムを構成する高分子が芳香環を有することとし、既述し
たスルホン酸基導入の工程によって、ベースフィルムに
もスルホン酸基が導入されることとしてもよい。
【0084】また、上記実施例の固体高分子電解質膜の
製造方法は、イオン交換基としてスルホン酸基を備える
電解質膜を製造する際に、膜上のベースフィルムに対し
てスルホン酸基の導入を行なうため、従来知られるナフ
ィオン膜の製造方法に比べて、膜を成形する工程を簡素
化できる。ナフィオン膜は、製造時には、その原料モノ
マを重合させて端部に「−SO2F 」という構造を有す
る高分子を合成し、溶融成形法によって膜上に加工した
後に、アルカリを作用させて上記端部構造をスルホン化
することによって完成する。これは、重合反応時にスル
ホン酸基を有していると、溶融形成ができないためであ
る。本実施例の固体高分子電解質膜の製造方法のよう
に、炭化水素や炭化水素化合物から成る高分子を用いる
と、膜を成形した後にさらにスルホン化の工程を加える
必要がなく、膜を成形する工程全体を容易に行なうこと
ができる。
【0085】上記実施例では、固体高分子電解質膜にお
いて、グラフト重合によって形成した側鎖にスルホン酸
基を導入する際に、固体高分子電解質膜の所定の領域に
だけ(所定のパターンに従って)スルホン酸基を導入す
るために、マスキングを用い、マスキングを行なう前あ
るいは後に、グラフト重合のための放射線照射を行なっ
たが、他の方法を用いることとしても良い。所望のパタ
ーンに従い所望の領域にだけ、スルホン酸基を導入した
構造が得られればよい。グラフト重合を形成するための
他の方法として、例えば、光化学的重合や、熱重合など
があるが、それぞれ、光増感基をベースフィルムに導入
したり、ベースフィルムを部分的に加熱することによ
り、本発明に適用することが可能となる。
【0086】上記実施例では、プロトン伝導性の固体高
分子電解質膜について説明したが、同様の方法によって
イオン交換基を導入可能であれば、プロトン以外のイオ
ンを伝導する固体高分子電解質膜に適用しても良い。特
に、イオン交換基を導入することによって膜の強度が低
下するなどの変化を起こす場合には、このようなイオン
交換基を有する固体高分子電解質膜において、イオン伝
導性と、強度などの他の性質との両方を確保するために
有用である。
【0087】以上本発明の実施例について説明したが、
本発明はこうした実施例に何等限定されるものではな
く、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる
様態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な一実施例である固体高分子電解
質膜を備える単セル20の構成を表わす説明図である。
【図2】本実施例の固体高分子電解質膜を製造する原理
を表わす説明図である。
【図3】本実施例の固体高分子電解質膜を製造する製造
工程を表わす説明図である。
【図4】マスク60の構成を表わす説明図である。
【図5】単セル20からなる燃料電池15の構成を表わ
す分解斜視図である。
【図6】燃料電池15の外観を表わす斜視図である。
【図7】固体高分子電解質膜中のスルホン酸基量と、電
解質膜の伝導度との関係を表わす説明図である。
【図8】種々の高分子について架橋型と崩壊型とに分類
した例を表わす説明図である。
【符号の説明】
15…燃料電池 20…単セル 21…電解質膜 22…アノード 23…カソード 24P…燃料ガス流路 25P…酸化ガス流路 30…セパレータ 30a,30b…セパレータ 40,41…エンドプレート 42,43…絶縁板 44,45…集電板 44A,45A…出力端子 46…燃料ガス孔 47…酸化ガス孔 50,51…燃料ガス孔 52,53…酸化ガス孔 54,55…リブ 60…マスク 62…穴あき部

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオン伝導性を有する固体高分子電解質
    膜であって、 前記イオン伝導性を実現するイオン交換基を備える高分
    子から成る第1の領域と、前記イオン交換基を備えない
    高分子からなる第2の領域とを備えることを特徴とする
    固体高分子電解質膜。
  2. 【請求項2】 前記第1の領域は、所定の主鎖にイオン
    交換基を有する側鎖が付加した構造を有するグラフト共
    重合体を備えることを特徴とする請求項1記載の固体高
    分子電解質膜。
  3. 【請求項3】 前記共重合体の前記主鎖、および、前記
    第2の領域を構成する前記高分子は、炭化水素モノマと
    過フッ化炭化水素モノマとを共重合させて成ることを特
    徴とする請求項2記載の固体高分子電解質膜。
  4. 【請求項4】 前記側鎖は、芳香族炭化水素を重合の成
    分として含有し、該芳香族炭化水素が備える水素原子を
    前記イオン交換基で置換して成る請求項2または3記載
    の固体高分子電解質膜。
  5. 【請求項5】 イオン伝導性を有する固体高分子電解質
    膜であって、 前記イオン伝導性を実現するイオン交換基を備える高分
    子から成り、 単位面積当たりの前記イオン交換基の含有量が互いに異
    なっている複数の領域を備えることを特徴とする固体高
    分子電解質膜。
  6. 【請求項6】 前記イオン交換基はスルホン酸基である
    請求項1ないし5いずれか記載の固体高分子電解質膜。
  7. 【請求項7】 イオン伝導性を有する固体高分子電解質
    膜の製造方法であって、(a)高分子から成る膜を用意
    する工程と、(b)前記(a)工程で用意した前記膜の
    一部の領域に対して、前記イオン伝導性を実現するイオ
    ン交換基を導入する工程とを備えることを特徴とする固
    体高分子電解質膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記(b)工程は、前記膜における前記
    一部の領域において、該膜を構成する前記高分子に対し
    て側鎖を付加してグラフト共重合体を形成し、前記側鎖
    に前記イオン交換基を導入する工程を備える請求項7記
    載の固体高分子電解質膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記(b)工程は、放射線重合法を用い
    て前記グラフト共重合体を形成する請求項8記載の固体
    高分子電解質膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項9記載の固体高分子電解質膜の
    製造方法であって、 前記(b)工程は、 (b−1)放射線を遮断可能であって、前記膜における
    前記一部の領域以外の領域を被覆可能な形状を有するマ
    スクを用いて、前記膜をマスキングする工程と、 (b−2)前記マスキングした前記膜に対して、放射線
    を照射する工程と、 (b−3)前記放射線を照射した膜を所定の重合反応に
    供し、前記形状を有する前記マスクによって被覆されな
    かった領域を構成する前記高分子において側鎖を形成す
    る工程と、 (b−4)少なくとも、前記(b−3)工程で形成した
    側鎖に対して、前記イオン交換基を導入する工程とを備
    える固体高分子電解質膜の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項10記載の固体高分子電解質膜
    の製造方法であって、 前記マスクは、少なくとも該マスクが被覆する領域にお
    いて、前記膜を所定の伸展状態で保持可能であり、 前記(b−3)工程は、前記膜をマスキングした状態の
    まま、前記重合反応に供することを特徴とする固体高分
    子電解質膜の製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項9記載の固体高分子電解質膜の
    製造方法であって、前記(b)工程は、 (b−5)前記膜に対して放射線を照射する工程と、 (b−6)前記膜における前記一部の領域以外の領域を
    被覆可能な形状を有し、該被覆した領域に充分に密着し
    て前記膜を保持可能な被覆部材を、前記放射線を照射し
    た膜に対して取り付ける工程と、 (b−7)前記被覆部材を取り付けた膜を所定の重合反
    応に供し、前記形状を有する前記被覆部材によって被覆
    されていない領域を構成する前記高分子において、前記
    側鎖を形成する工程と、 (b−8)少なくとも、前記(b−7)工程で形成した
    側鎖に対して、前記イオン交換基を導入する工程とを備
    える固体高分子電解質膜の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記(b−7)工程は、前記膜に前記
    被覆部材を取り付けた状態のまま、前記重合反応に供す
    ることを特徴とする請求項12記載の固体高分子電解質
    膜の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項9記載の固体高分子電解質膜の
    製造方法であって、前記(b)工程は、 (b−9)前記膜に対して放射線を照射する工程と、 (b−10)前記放射線を照射した膜を所定の重合反応
    に供し、前記膜を構成する前記高分子において側鎖を形
    成する工程と、 (b−11)前記膜における前記一部の領域以外の領域
    を被覆可能な形状を有し、該被覆した領域に充分に密着
    して前記膜を保持可能な被覆部材を、前記重合反応に供
    した膜に対して取り付ける工程と、 (b−7)前記被覆部材を取り付けた膜に対して、前記
    イオン交換基を導入する処理を施し、前記形状を有する
    前記被覆部材によって被覆されていない領域を構成する
    前記高分子において、少なくとも前記側鎖に対して前記
    イオン交換基を導入する工程と、を備える固体高分子電
    解質膜の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記(b)工程において前記側鎖に導
    入するイオン交換基は、スルホン酸基であることを特徴
    とする請求項7ないし14いずれか記載の固体高分子電
    解質膜の製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項1ないし6記載の固体高分子電
    解質膜を備える固体高分子型燃料電池。
  17. 【請求項17】 イオン伝導性を有する固体高分子電解
    質膜と、燃料電池内部でガス流路を形成する部材とを含
    む部材を積層して成る固体高分子型燃料電池であって、 前記ガス流路を形成する部材は、前記ガス流路を形成す
    る凹状に形成された領域と、隣接する部材と接触する凸
    状に形成された面とを備え、 前記固体高分子電解質膜は、積層されて前記燃料電池を
    構成する際に、前記ガス流路を形成する部材における前
    記凸状に形成された面に対応する領域が、前記凹状に形
    成された領域に対応する領域に比べて、単位面積当たり
    のイオン交換基の含有量が多いことを特徴とする固体高
    分子型燃料電池。
  18. 【請求項18】 前記イオン交換基は、スルホン酸基で
    ある請求項17記載の固体高分子型燃料電池。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002008680A (ja) * 2000-06-21 2002-01-11 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 複合化架橋電解質
JP2002025582A (ja) * 2000-07-06 2002-01-25 Toyota Central Res & Dev Lab Inc パターン化電解質膜
WO2002059996A1 (fr) * 2001-01-26 2002-08-01 Toray Industries, Inc. Film electrolytique de polymere et procede de fabrication dudit film et pile a combustible de polymere solide utilisant ledit film
WO2004027909A1 (ja) * 2002-09-20 2004-04-01 Kaneka Corporation プロトン伝導性高分子膜およびその製造方法
JP2005267866A (ja) * 2004-03-16 2005-09-29 Kaneka Corp プロトン伝導性高分子膜およびその製造方法並びにそれを使用した固体高分子形燃料電池
JP2007179989A (ja) * 2005-12-28 2007-07-12 Polymatech Co Ltd イオン伝導性高分子電解質膜およびその製造方法

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