JP2001198603A - 接着性に優れた金属板および接着構造物 - Google Patents

接着性に優れた金属板および接着構造物

Info

Publication number
JP2001198603A
JP2001198603A JP2000003709A JP2000003709A JP2001198603A JP 2001198603 A JP2001198603 A JP 2001198603A JP 2000003709 A JP2000003709 A JP 2000003709A JP 2000003709 A JP2000003709 A JP 2000003709A JP 2001198603 A JP2001198603 A JP 2001198603A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
adhesive
bonding
metal plate
free energy
present
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000003709A
Other languages
English (en)
Inventor
Takeshi Tomiyasu
健 富安
Kenji Ikishima
健司 壱岐島
Hiroshi Kumagai
寛 熊谷
Kosuke Haraga
康介 原賀
Naoki Tani
尚記 谷
Koichi Taguchi
広一 田口
Kimihiko Yoda
公彦 依田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Denka Co Ltd
Mitsubishi Electric Corp
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
Sumitomo Metal Industries Ltd
Denki Kagaku Kogyo KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Electric Corp, Sumitomo Metal Industries Ltd, Denki Kagaku Kogyo KK filed Critical Mitsubishi Electric Corp
Priority to JP2000003709A priority Critical patent/JP2001198603A/ja
Publication of JP2001198603A publication Critical patent/JP2001198603A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Coating With Molten Metal (AREA)
  • Metal Rolling (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 プライマ処理等の接着用前処理を行わないこ
とで板金組み立て工程の生産性向上に貢献するととも
に、材料を直接に接着接合して安定して強固な接合強度
を得る構造接着用金属板、接着方法を提供し、それによ
り信頼性の高い接着構造物を提供する。 【解決手段】 被接着面の中心線平均傾斜(Rθa)の値を
0.035 以上の表面粗さとすることにより剪断方向に集中
しがちな残留応力の方向を分散させ取り除いてやるか、
あるいは、被接着面の表面自由エネルギーを40 mJm-2
上とする。接着剤は2液主剤型アクリル系接着剤であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、接着性に優れた金
属板およびそれを利用した接着構造物に関する。より詳
述すれば、本発明は、プライマー処理等の接着用前処理
を何ら行うことなく、直接に金属板に接着接合すること
により強固な接合強度が得られる構造用の金属板および
そのようにして得られた接着構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】板金組立の接合工程には、今日一般的に
用いられている手段として、接着剤を用いた接着接合と
溶接法を用いた溶接接合とがあり、その作業性および接
合性能を考えた場合、接着接合が有利であると考えられ
ている。
【0003】ここに金属材料の接着接合を考えた場合、
金属材料の被接着面は、表面化学状態が接着剤との高い
親和性を有することが好ましい。
【0004】例えば、冷延鋼板、無処理めっき鋼板等の
ように、それ自体防錆機能を持たず、塗装して使用され
る金属材料については、一般に、材料メーカからの出荷
時にその表面に防錆油が塗布される。このとき得られる
防錆油膜により、外気と遮断されている金属材料の表面
化学状態は比較的安定して良好であり、脱脂洗浄後に容
易に優れた接着接合が可能である。しかも、脱脂洗浄し
なくとも、防錆油の上から接着を行う、油面接着の技術
が確立されており、高い信頼性と生産性とで接着接合が
行い得る。
【0005】しかしながら、例えば、クロメート処理鋼
板、耐指紋鋼板、ステンレス鋼板等のようにそれ自体で
防錆機能を有し、無塗装で使用される金属材料について
は、一般に、防錆油が塗布されない。このため、金属材
料表面は直接外気に曝されており、製造されてから接着
されるまでの履歴および時間経過による表面化学状態の
変化は、多かれ少なかれ、避けられない。このことか
ら、表面に防錆油を塗布しない上述のような金属材料に
対して接着剤を使って接着する非油面接着を行う場合、
特殊な接着前処理を実施しなければ、高い信頼性が得ら
れなかった。
【0006】例えば、ステンレス鋼板の接着接合に際し
ては、極めて安定であるが故に接着剤との親和性に乏し
い不働態化表面を活性化することが必要となり、そのた
めに接着接合の直前に接着前処理を実施するが、その例
として、従来技術には次のようなものがある。
【0007】まず、硫酸・シュウ酸混合水溶液でステン
レス鋼板表面を処理して不働態化表面を活性化する技術
は、優れた接着性が得られることから、航空機の組立て
工程等ですでに実用化されている。
【0008】一方、予めステンレス鋼板表面を有機系薄
膜でプライマ塗装し、接着性を高める方法が試みられて
いる。たとえば、特公平6−57872 号公報では、シラン
系カップリング剤によってステンレス鋼板表面を処理
し、フッ素系塗膜との密着性を改善する方法が開示され
ている。
【0009】特開平8−311424号公報では、ステンレス
鋼板の表面にポリアクリル酸の薄膜を形成して、次い
で、紫外線照射で表面を活性化した後に、接着する技術
が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来技術は、何れも接着を行う直前に表面も活性化処理
する工程またはプライマを塗布してから乾燥する工程等
を採用しており、かかる工程は別ラインでの処理となり
また塗布層の乾燥に時間を要することから、著しく生産
性を阻害する。
【0011】ここに、本発明の一般的課題は、板金組み
立て工程の生産性向上に貢献するとともに、信頼性の高
い接着構造物を実現可能とする接着用金属板を提供する
ことである。
【0012】本発明のより具体的課題は、金属材料の表
面性状を改良することにより、プライマ処理等の接着用
前処理を行わずとも、材料を直接に接着接合しても安定
して強固な接合強度が得られる、構造材として用いる接
着用金属板およびそれにより得られた接着構造物を提供
することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述のよ
うな課題を達成すべく種々検討を重ね、次のような知見
を得た。
【0014】すなわち、接着剤の硬化の過程において
は、成分の移動や化学変化を伴い、時間の経過とともに
被着材表面と適合した接着界面が形成される。この接着
界面の大部分は接着剤が未硬化時に形成され、硬化が進
行すると、特に接着剤層のガラス転移温度を超えて雰囲
気温度で硬化すると極端に、界面の形成速度が低下す
る。
【0015】従って、接着性が芳しくない材料とは、接
着剤との親和性が低い表面を有することから接着界面の
形成が遅く、接着剤の可使 (未硬化) 時間内に充分な接
着界面が形成できない故に実用的でない材料であると考
えることができる。
【0016】換言すれば、親和性が低い材料について
も、たとえ接着剤の硬化直後の接着強度は低くとも、養
生時間の長期化に伴い接着強度が徐々に増加してゆき、
ついには有限の時間内に充分な接着強度を示すようにな
る場合が多い。この現象は養生雰囲気が接着剤層のガラ
ス転移温度未満の低温雰囲気であっても、必要な時間が
経過すれば観測される。
【0017】この現象の機構について、本発明者らは、
接着剤の硬化と共に接着界面に発生し、残留する剪断応
力が、養生時間を経て、緩和されることにより、改めて
接着界面の接着形成が進行するからであると考えた。
【0018】この知見から、本発明者らは、接着剤の硬
化途上で接着界面に発生、増大していく剪断応力を取り
除いてやることにより、接着界面の形成を促進させ得る
と考えるに至った。
【0019】ここに、本発明は次の通りである。 (1) 被接着面の中心線平均傾斜(Rθa)の値が0.035 以上
である表面粗さを有する、剪断方向に集中する残留応力
の方向を分散させ解放することを特徴とする、接着剤と
の接着性に優れた非油面接着用の金属板。 (2) 被接着面の表面自由エネルギーが40 mJm-2以上であ
る、接着剤との親和性を高めることを特徴とする、接着
剤との接着性に優れた非油面接着用の金属板。 (3) 2液主剤型アクリル系接着剤である接着剤を用いて
接着を行うことを特徴とする上記(1) または(2) の非油
面接着用金属板の接着方法。 (4) 上記(1) もしくは(2) 記載の金属板を接着接合する
ことにより組み立てた接着構造物。
【0020】さらに別の面からは、本発明は、金属板の
接着接合を行うに当たって、被接着面の中心線平均傾斜
(Rθa)または表面自由エネルギーを計測し、それぞれの
値が0.035 以上または40 mJm-2以上のときに、接着剤、
好ましくは2液主剤型アクリル系接着剤を使って金属板
を接着接合することを特徴とする金属板の接着方法であ
る。
【0021】なお、上記「金属板」は、例えば棒材、板
材、管材などのいわゆる金属材であればよく、特に制限
はないが、金属板が一般的であり、好ましいことから、
したがって、本発明ではそれらを「金属板」でもって総
称する。また、本発明はステンレス鋼板等のそれ自体で
防錆機能を有する金属材料に適用して特に効果がある
が、冷延鋼板等であっても非油面接着を行う限り、所定
の効果は発揮される。
【0022】このように、本発明の特徴は、被着面の表
面粗さを制御することにより、剪断方向に集中しがちな
残留応力の方向を分散させ取り除いてやることにより、
あるいはさらに接着剤との親和性を改善することによ
り、接着界面の形成を促進させることにある。
【0023】具体的には、下記条件(i) 、(ii)の何れか
を満足することで接着界面の形成を促進させることにあ
る。
【0024】条件(i) :被接着面の表面粗さを中心線平
均傾斜(Rθa)の値が0.035 以上となるようにする。
【0025】条件(ii):被接着面の表面自由エネルギー
を40 mJm-2以上とする。ただし、条件(i) は接着界面の
応力を解放することで接着性を確保する処方に関する条
件であり、条件(ii)はさらに材料表面の接着剤との親和
性を改善することにより接着性を確保する処方に関する
条件である。
【0026】本発明の具体的態様にあっては、接着剤が
2液主剤型アクリル系接着剤であることにより、高い接
合強度、信頼性および好適な作業性が得られる。これを
条件(iii) という。
【0027】かくして、本発明によれば、予め上述の要
件(i) 、(ii)の少なくともいずれか一方を満足すること
を測定により確認してから接着接合を行うことにより、
最終的な接着構造物に十分な強度、信頼性を付与するこ
とができる。
【0028】換言すれば、本発明は、接着接合に当たっ
て被接着材の中心平均傾斜(Rθa)および/または表面自
由エネルギーを計測し、そのときの被接着材の接着性を
判断・評価する方法である。
【0029】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
てさらに具体的に説明する。
【0030】金属板の材種 本発明にかかる金属板の材料の種類は、非油面接着を行
うものであれば、特に限定を設けない。各種めっき鋼板
のクロメート仕上げ品、ステンレス鋼板、不動態化処理
を施したアルミニウム合金板、チタン合金板、マグネシ
ウム合金板等の、塗装しなくとも耐食性が確保できる材
料の使用は、塗装省略による生産性向上が可能となり、
好適である。もちろん、塗装して用いられる冷延鋼板、
無処理めっき鋼板等についても本発明の適用は可能であ
る。
【0031】高張力鋼板等の高強度材の使用は、薄肉軽
量化による製品性能向上やコストダウンが可能となり、
好適である。
【0032】金属板の被着面 本発明にかかる金属板において良好な接着性を確保する
ためには、金属板の被接着面が前述の条件(i) あるいは
条件(ii)の何れかまたは双方を満足すればよい。
【0033】但し、条件(i) は接着界面の応力を解放す
ることで接着性を確保する処方に関する条件であり、条
件(ii)はさらに材料表面の接着剤との親和性により接着
性を確保する処方に関する条件である。条件(i) もしく
は条件(ii)も満足できない場合、接着性は不芳である。
【0034】本発明における中心線平均傾斜(Rθa)につ
いては、東京精密・の定めるサーフコム1500Aの規格に
基づき、0.035 以上、好ましくは0.045 以上と規定す
る。
【0035】ここに、中心線平均傾斜(Rθa)は、次の如
く定義され、その具体的測定方法は次の通りである。 定義: Rθa =2π(Ra/R λa) ここに、Raは、中心線平均粗さ(μm) R λa は、中心線平均波長 (μm) 。
【0036】表面粗さの測定方法 触針式表面粗さ測定機を用い粗さ曲線測定を行って、こ
れに基づいてJIS に準拠してRaおよび Rλaをそれぞれ
求め、上式から Rθaを求める。
【0037】本発明における中心線平均傾斜と概念が一
致する規格としては、ISO 4287/1に定めるΔa(但し、断
面曲線と粗さ曲線とを区別していない) 、ANSI B46.1に
定める (Δa)、DIN 4762に定める (Δa)等が挙げられ、
本発明における条件との対応関係がほぼ直接みられる。
なお、JIS 規格には該当する概念は存在しない。
【0038】また、表面形状の測定法について、本発明
においては粗さ曲線(R) を基にした粗さ曲線の他に、断
面曲線(P) 、ろ波うねり曲線(WC)、ろ波中心線うねり曲
線 (WCC)、ろ波中心線うねり曲線(WCC) 、転がり円うね
り曲線(WE)、転がり円中心線うねり曲線(WEC) が挙げら
れるが、接着性に有効な表面形状が傾斜であることにつ
いては同様である。
【0039】本発明における粗さパラメーターの記述は
中心線平均値により行ったが、自乗平均値による記述も
可能である。
【0040】表面粗さの制御 金属板表面の粗さを制御するには、粗さを管理したスキ
ンパスロールのマットを転写させる方法、溶融めっき鋼
板の場合は凝固する前の溶融状態のめっきにスプレーで
ミストを衝突させることにより凹凸化させる方法や、合
金化溶融亜鉛めっきの場合はめっき浴中の合金化抑制元
素を制御し、不均一に合金化させることにより表面を凹
凸化させる方法等が挙げられる。
【0041】表面自由エネルギーとその測定方法 接着剤と金属表面との親和性についての議論は、一般
に、濡れ( 接触角) による表面自由エネルギー的考察に
基礎を置く。本発明においては、表面自由エネルギーの
標準液体と金属板との接触角を測定し、接触角の測定値
から金属板の表面自由エネルギーを計算する。
【0042】接触角測定法: 金属板材料洗浄条件:塩化メチレンによる超音波洗浄を
2分間行う 接触角測定法:表面自由エネルギーの標準液体を用い
て、液適法による前進接触角を測定した 表面自由エネルギーの標準液体:超純水、ジヨードメタ
ンの2種類を用いた表面自由エネルギー計算法: 上記接触角の測定値と、以下の3式と、標準液体の表面
自由エネルギー文献値とを用いて計算した。
【0043】 γs =γsa+γa cosθ ・・・・・・・・・ (式1) 金属表面:γs =γs p +γs d ・・・・・・ (式2−1) 標準液体:γa =γa p +γa d ・・・・・・ (式2−2) γsa=γs +γa −2{ (γs p γa p )1/2+ (γs d γa d )1/2} ・・・・・・ (式3) 但し、γs :金属板の全表面自由エネルギー、 γs d :金属板の表面自由エネルギーの分散成分、 γs p :金属板の表面自由エネルギーの極性成分、 γa :液体の全表面自由エネルギー、 γa d :液体の表面自由エネルギーの分散成分、 γa p :液体の表面自由エネルギーの極性成分、 γsa :界面張力 θ :接触角 である。
【0044】
【表1】 表面自由エネルギー成分の文献値 * γa p γa d γa mJm -2 mJm -2 mJm -2
【0045】 純水 22.0 50.2 72.2 ジヨードメタン 48.5 2.3 50.8 *):R.A.Gledhill and A.J.Kinloch:J.Adhesion, 6(1974),P315。
【0046】表面自由エネルギーの制御 すでに述べたように、本発明は金属材料の表面の自由エ
ネルギーと接着接合との関連を見いだして完成したもの
であり、40 mJm-2以上の表面自由エネルギーを有する表
面とすることで、安定して所定特性の接着接合が実現で
きる。好ましくは 42mJm-2以上である。
【0047】長期に渡って外気に曝される金属板の表面
自由エネルギーを、塗油や保護シート等の処置を行わな
い場合、高い値で完全に維持することは困難である。確
かに、製造直後の金属板の表面は活性で、表面自由エネ
ルギーは接着に好適な十分に高い値を示す場合が多い
が、デリバリー期間等での時間経過に伴い、遅かれ早か
れ低下していく傾向が存在するからである。
【0048】本発明にしたがって、接着に際して被接着
面の表面自由エネルギーを40 mJm-2以上とするために
は、具体的には製造後、可及的速やかに接着接合を行う
か、製造から余り長時間経過した材料には、超音波の洗
浄を行うなどして表面の活性化を図ればよい。
【0049】このように、接着直前に材料の表面自由エ
ネルギーの状態を確認することにより、接着接合を確実
化することは実用上からは大きな利益がある。簡便法と
しては、例えば、40 mJm-2の濡れ性標準試薬を滴下し、
濡れ広がる/ はじかれるの目視により、容易に接着接合
性が判断可能である。
【0050】もちろん、表面自由エネルギーは適宜手段
でもって実験を行ってから、得られたデータ、例えば濡
れ角のデータに基づいて計算で求めてもよい。
【0051】接着方法 本発明にかかる金属板の接着においては、本発明に従う
表面状態を設けた側を、接着剤を用いて相手材に接着さ
せる。相手材は特に制限されないが、当然、接着性が高
いものが好ましい。
【0052】例えば、本発明の条件を満足する表面を有
する同種、異種金属板 (裸鋼板、亜鉛系等のめっき鋼
板、さらに化成処理を施した化成処理鋼板、樹脂塗装を
施した塗装鋼板、鋼以外の金属材) との貼合、合成樹脂
材との貼合、木材との貼合などが例示される。
【0053】本発明にしたがって金属板を接着する場
合、接着接合と、リベット、スポット溶接、ボルト締結
等の点接合とを併用することが好ましい。接着未硬化時
の接着接合部を固定する効果があるほか、継続的に荷重
が掛かる構造物の耐久性向上、火災等の不測の事態で高
温に曝される場合に構造物の分解を防ぐ効果があるから
である。
【0054】接着剤 本発明の鋼板の接着接合に用いる接着剤は特に限定され
ない。例えば、酢酸ビニル系、ウレタン系、マスチック
系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、エチレン酢
酸ビニル系、アクリル系、フェノール系、エポキシ系、
シアノアクリレート系、シリコーン系等の各種接着剤を
使用することができる。
【0055】本発明によれば、このように多様な接着剤
を用いて、高い接着強度と接着耐久性を確保することが
できるので、相手材や用途、使用環境に合わせて適当な
接着材を選択することが可能であるが、特に、接着性能
と作業性とを高度に両立した2液主剤型アクリル系接着
剤が好ましい。
【0056】2液主剤型の場合は、混合比が多少は変動
しても、硬化強度の変動が非常に小さいという特徴が存
在し、被着材が条件(i) もしくは(ii)を満足しさえすれ
ば、設計通りの強度が確実に得られることから、特に、
接合強度の信頼性要請の厳しい構造接着に適している。
また、このことから、逆に、接着材の計量がラフでも確
実な接着が可能であることによる作業性の利点、常温硬
化であることから、加熱炉が不要であることによる設備
上の利点、特に巨大な構造物の組立に適するという利点
が存在する。このタイプの構造用接着剤としては、剪断
強度と剥離強度とを高度に両立させたSGA(Second Gener
ation Acrylic Adhesive) と呼ばれる2液主剤型アクリ
ル系接着剤が好ましい。
【0057】接着構造物 一般に、性能面から、接着構造物は以下の理由から好適
である。構造物の構造強度( 構造物の剛性) を確保する
ためには、構造部材の剛性に応じ接合強度が必要である
が、接着接合を採用した場合、必要な接着強度により接
着面積の設計接合強度を適宜変更し確保できることか
ら、接合強度の板厚による制限が免れない溶接接合と比
較すると、高剛性且つ軽量化の設計が可能となる。この
ことから、特に、溶接では困難だった薄板材の構造物の
場合においても、高い接着強度が発揮される。更に、接
着接合の場合は、異種材料の接合も実施しやすいことか
ら、設計の自由度が拡がる利点が存在する。
【0058】工程面において、接着接合は以下の理由か
らは好適である。シーム溶接等の従来の溶接接合におい
ては、接合時に発生する熱による歪みの発生、HAS 部の
材質の脆化、スパッタの付着等による外観の劣化等の不
都合が発生した。これらに伴い、歪み取り作業、焼なま
し、スパッタ除去作業などの工程が必要となり生産性が
著しく低下する。一方、接着接合においては、接合時に
熱発生が微小であるから、上記のような溶接工程におけ
る問題点が解消され、著しく生産性が向上する。
【0059】かくして、本発明にかかる接着構造物とし
ては、上述のような金属材料を上述のような接着手段で
組立られるものであれば、特に制限はないが、具体的に
は、配電盤筐体、車両用空調室外機筐体等の重電機分野
での筐体が例示される。アルミニウム材料の場合、さら
には合成樹脂材との複合材料の場合を考えるとさらに多
くの用途が考えられ、本発明のように表面性状でもって
接着接合の信頼性が予測できれば、その用途は従来のそ
れよりもさらに拡大する可能性がある。次に、実施例に
よって本発明の作用効果をさらに具体的に説明する。
【0060】
【実施例】本例では、本発明にしたがって各種金属板に
ついて接着試験および表面特性評価を実施し、接着用の
構造材料として有効な表面特性を明らかにした。本例に
おける接着性の評価は次のようにして行った。
【0061】接着性測定法:接着貼合後、24時間以上72
時間以内の養生を経て、JIS K6854に準ずる以下の方式
の接着性測定を実施した。
【0062】接着剤は2液主剤型アクリル系接着剤 (ハ
ードロックM372 −20:電気化学工業・製) を使用し
た。 (i) T剥離試験:200 mm×25mmの2枚の鋼板サンプル
を、重ね合わせ面積150 mm×25mmで接着貼合した接着試
験片を25℃の環境下で、50mm min- 1 の速度で引張り、
剥離面を観察し、表2の分類によって示される破壊の種
類を下掲表3にしたがって区別する事により、表3の基
準で接着性を評価した。
【0063】
【表2】 破壊の種類 記号 破壊の種類 判定 AF 接着界面破壊 不良 CF 接着剤層の凝集破壊 良好 MF 被着材破壊 不良
【0064】
【表3】接着性判定基準 破壊の種類の面積率 判定 CF:100 %〜75%、AF、MF: 0〜 20 % ○ CF: 74 %〜50%、AF、MF:20〜 30 % △ CF: 49 %〜 0%、AF、MF:50〜100 % × 一方、接着を行った金属板の表面特性は次のようにして
測定した。
【0065】a)表面粗さ:JIS B 0651に従う触針式表面
粗さ測定機 [東京精密 (株) 社製] を使用して、表4の
条件で粗さ曲線測定を実施した。
【0066】
【表4】 表面粗さ測定条件 測定法: 3次元粗さ測定 測定面積:100 mm2 (10mm×10mm) 測定間隔:X:0.01mm、Y:0.1 mm 駆動速度:0.6mms-1 触針先端:1μm 測定加重:0.07gf 評価特性 *:中心線平均粗さ(Ra)、中心線平均傾斜(Rθa)、 中心線平均波長(Rλa) * Rθa =2π(Ra/ Rλa)。
【0067】b)表面自由エネルギー:金属板と表面自由
エネルギー標準液との接触角を測定し、前述の方法に従
って表面自由エネルギーを算出した。金属材料の表面洗
浄は塩化メチレンによる超音波脱脂により行った。有機
皮膜を有する材料についてはエタノールによる超音波脱
脂により行った。表面自由エネルギーの標準液として
は、超純水とジヨードメタンとを用いた。
【0068】本例における結果を表5、6に、特に、表
面特性値と凝集破壊の割合(%) で示す接着性との関係を
図1に示す。図1より、接着界面の応力緩和に有効な材
料表面の中心線平均傾斜が0.035 以上を示すときと、接
着剤との親和性を表す材料の表面自由エネルギーが40mJ
m -2以上の時とに、接着性が良好であることが判る。
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】これらの結果から、本発明によれば、単に
金属板の中心線平均傾斜または表面自由エネルギーを規
定するという簡便な手段でもって、確実にかつ安定して
金属板の接着接合が可能となり、接着接合による構造物
の設計の自由度も一層拡大し、それらの総合的効果とし
て、接着接合の適用範囲の拡大と信頼性の向上には著し
いものがある。
【0072】したがって、実用上からの観点からは、本
発明の実際上の意義、価値には著しいものがあることが
分かる。
【0073】
【発明の効果】本発明により、プライマ処理等の接着用
前処理を行わずとも、金属材料を直接接着接合すること
により安定して強固な接合強度が得られる。このことか
ら、板金組み立て工程の生産性向上に貢献するととも
に、信頼性の高い接着構造物を提供することが可能とな
った。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例によって得られた、各種表面処理鋼板の
表面特性と常態接着性を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 富安 健 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (72)発明者 壱岐島 健司 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (72)発明者 熊谷 寛 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金属工業株式会社内 (72)発明者 原賀 康介 東京都千代田区丸の内2丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 谷 尚記 東京都千代田区丸の内2丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 (72)発明者 田口 広一 群馬県渋川市中村1135番地 電気化学工業 株式会社渋川工場内 (72)発明者 依田 公彦 群馬県渋川市中村1135番地 電気化学工業 株式会社渋川工場内 Fターム(参考) 4E002 AA07 AA08 AD10 BB09 CB03 4F100 AB01A AB03 AK25B BA02 BA07 CB02B DD07A EH46 GB41 JK14A JL11 YY00A 4K027 AA05 AA21 AB09

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被接着面の中心線平均傾斜(Rθa)の値が
    0.035 以上である表面粗さを有する、剪断方向に集中す
    る残留応力の方向を分散させ解放することを特徴とす
    る、接着剤との接着性に優れた非油面接着用の金属板。
  2. 【請求項2】 被接着面の表面自由エネルギーが40 mJm
    -2以上である、接着剤との親和性を高めることを特徴と
    する、接着剤との接着性に優れた非油面接着用の金属
    板。
  3. 【請求項3】 2液主剤型アクリル系接着剤である接着
    剤を用いて接着を行うことを特徴とする請求項1または
    2の非油面接着用金属板の接着方法。
  4. 【請求項4】 請求項1もしくは2記載の金属板を接着
    接合することにより組み立てた接着構造物。
JP2000003709A 2000-01-12 2000-01-12 接着性に優れた金属板および接着構造物 Pending JP2001198603A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000003709A JP2001198603A (ja) 2000-01-12 2000-01-12 接着性に優れた金属板および接着構造物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000003709A JP2001198603A (ja) 2000-01-12 2000-01-12 接着性に優れた金属板および接着構造物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001198603A true JP2001198603A (ja) 2001-07-24

Family

ID=18532610

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000003709A Pending JP2001198603A (ja) 2000-01-12 2000-01-12 接着性に優れた金属板および接着構造物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001198603A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018535313A (ja) * 2015-09-30 2018-11-29 ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフトThyssenKrupp Steel Europe AG Znガルバニール処理保護コーティングを有する平鋼製品およびその製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018535313A (ja) * 2015-09-30 2018-11-29 ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフトThyssenKrupp Steel Europe AG Znガルバニール処理保護コーティングを有する平鋼製品およびその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4971821B2 (ja) 鋼材とアルミニウム材との異材接合方法
EP3259380A1 (fr) Procede de fabrication d'une piece phosphatable a partir d'une tôle revêtue d'un revêtement a base d'aluminium et d'un revêtement de zinc
JP2005305504A (ja) 鋼材とアルミニウム材との異材接合体とその接合方法
JP4425159B2 (ja) 異材の抵抗スポット溶接方法
WO2018047577A1 (ja) 表面処理溶融亜鉛めっき鋼板およびそれを用いた接着継手
JP5138957B2 (ja) 鋼材とアルミニウム材との異材接合体
JPH0655277A (ja) 鋼材とアルミニウム系材料の接合方法
WO2015154233A1 (en) Systems and methods for reinforced adhesive bonding
JP2001198603A (ja) 接着性に優れた金属板および接着構造物
CN112643181A (zh) 减轻镀锌钢电阻焊中液态金属脆化开裂的焊接凸缘预处理
JP6393592B2 (ja) 異種金属接合継手および異種金属の接合方法
JP2008149374A (ja) 鋼材とアルミニウム材との異材接合体とそのスポット溶接方法
Özenç et al. Effect of surface pre-treatment and temperature on the adhesive strength of hybrid aluminum joints
Burt Adhesive Bonding
JPS59178188A (ja) アルミニウム表面の拡散接合方法および拡散接合製品
JP2005297054A (ja) プロジェクション溶接方法及びプロジェクション溶接継手並びにプロジェクション溶接構造体
JP2989132B2 (ja) ポリアミド積層アルミニウム板の製造方法
EP0225691B1 (en) Aluminium metal products and the formation of adhesively-bonded structures
JP2001099113A (ja) めっき鋼板、塗装鋼板の機械的接合方法および接合用材料
JP2013202871A (ja) アルミニウム合金塗装板
JP5890218B2 (ja) アルミニウム合金塗装板
Janoško et al. Adhesive bonding of dissimilar materials
Guzanová et al. Change of load-bearing capacity of adhesive joints of unequal materials after climatic test
Stahl et al. Surface Pre-Treatment of Batch-Galvanized Components for Adhesively Bonded Assemblies
JP2013202872A (ja) アルミニウム合金塗装板

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Effective date: 20050125

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

A521 Written amendment

Effective date: 20050309

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

A02 Decision of refusal

Effective date: 20050412

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02