JP2001192295A - 超電導体の製造炉、及び、超電導体の製造方法 - Google Patents

超電導体の製造炉、及び、超電導体の製造方法

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JP2001192295A
JP2001192295A JP2000105758A JP2000105758A JP2001192295A JP 2001192295 A JP2001192295 A JP 2001192295A JP 2000105758 A JP2000105758 A JP 2000105758A JP 2000105758 A JP2000105758 A JP 2000105758A JP 2001192295 A JP2001192295 A JP 2001192295A
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furnace
superconductor
crystal
crystallized
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Akira Oishi
大石  朗
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】複数核が生成されず高品質・単結晶である超電
導体が生成され、それの配向制御が可能である。 【解決手段】単結晶化対象材料の一部の第1温度を時間
を変数とする第1温度関数T1(t)に制御する第1温
度制御器1と、単結晶化対象材料の他の一部の第2温度
を時間を変数とする第2温度関数T2(t)に制御する
第2温度制御器3とからなり、その一部は結晶化部分で
あり、他の一部は溶融部分であり、第2温度関数T2
(t)と第1温度関数T1(t)とは互いに独立であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超電導体の製造
炉、及び、超電導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】臨界温度Tcが高い酸化物超電導材料、
特に、液体窒素温度で臨界電流密度Jcが優れているR
EBaCuO(RE:Yと希土類元素のうちの1つ、又
は2つ以上の組合せ)系酸化物は、超電導技術の実用化
の最有力候補である。このような超電導材料を用いる多
様な応用機器の研究・開発は、現在、実用化段階に至っ
ている。加工が非常に困難であるこのような酸化物は、
これをバルク状態のままで用いる試みが多くなされ、電
力貯蔵フライホイールシステム用超電導軸受、限流器、
電流リード、超電導磁石、超電導モータ、磁気遮蔽材等
にこのような材料を適用する研究・開発は、実用化段階
に入っている。
【0003】電力貯蔵フライホイールシステムでは、バ
ルク超電導体のコストは、その全体のコストの大半を占
めている。このように材料コストが高い超電導応用機器
の実用化のためには、性能面のみならずコスト面で優れ
ていることが求められる。
【0004】酸化物系超電導体、特に、REBaCuO
は、その結晶粒界が超電導の弱結合部位であるため、結
晶粒界が存在するバルクは、その全体に流れ得る超電導
電流が小さいものになり、本来の特性を発揮しない。従
って、結晶粒界が少ないバルク体を製造すること、究極
的には結晶粒界が存在しない大型の単結晶状のバルク体
を製造することが重要である。
【0005】このような結晶粒界の存否の問題点の他
に、異方性に関する問題点がある。超電導電流の上限で
ある臨界電流密度に著しい異方性が存在することは、酸
化物超電導体の特徴の他の1つである。酸化物超電導体
のほとんどでは、その超電導電流が結晶のc軸方向にも
っとも流れにくく、ab面内のいずれかの方向には最も
流れやすいことが知られている。このような特徴を持つ
超電導バルク体は、特定の方向、例えば、外部磁場に平
行な方向にそのc軸を配向させた単一の結晶粒から形成
されることにより、最も大きな磁気反発力を発生し得る
高品質のバルク体に到達することができると考えられて
いる。
【0006】一般に、φ10mm以下の比較的に小さい
バルク体は、これが均熱性が高い炉内でゆっくりと冷却
されることにより、うまくいけば単結晶状に成長したも
のとして製造され得る。しかし、比較的に大型であるバ
ルク体は、凝固、結晶成長の過程で融点以下の温度にな
る部位が生じて、本意でない複数の結晶核の発生と各々
の結晶核からの結晶成長が起こる。その結果として、そ
のバルク体は複数の結晶粒で形成され、バルク体内部に
最終凝固部が取り残されることになる。バルク径が更に
大きくなれば、そのような傾向は更に著しく、大きな温
度勾配を付与したり、種結晶を用いたりしても、単一の
結晶粒に成長させることは非常に困難になって、バルク
全体が単結晶になることはごくまれである。
【0007】高品質の大型単結晶状のバルク体を製造す
る方法として、超電導相REBaCuの融点が
REによって異なることを利用して、REが異なる複数
のREBaCuを融点が高い方から順次に積層
して多層構造化した結晶育成前駆体を準備し、比較的に
均熱性が高い炉内で徐冷することにより多結晶化を抑制
する大型単結晶状バルク体の製造方法が特開平5−17
0598号で知られている。高品質の単結晶状のバルク
体を低コストで製造する方法として、結晶育成前駆体を
溶融し凝固させる際にバルク体を載せるセッターの一部
を冷却し、そのセッターを通る熱伝導でバルク体の一部
分を局所的に冷却することにより、その全体を単結晶化
させる製造方法が特開平6−87695号で知られてい
る。
【0008】超電導REBaCuの融点がRE
によって異なることを利用する方法は、(1)多層化さ
れた結晶育成前駆体を準備するために多数のステップか
ら形成されるプロセスが必要であってそのプロセスコス
トが高くなること、(2)そのような多層成形体は、結
晶育成前駆体の成形プロセス又はその溶融過程で、組成
境界域で割れやすいこと、(3)多層成形体内部の一つ
の層内では融点の勾配が存在しないので、異結晶が生じ
る恐れがあること、等の問題点が解決されずに残存して
いる。ここで、組成を連続的に変化させる傾斜材料を用
いることは考えられるが、多数のステップが必要であっ
てそのプロセスコストが高くなることを回避することが
できない点は変わらず、工業的ではない。バルク体を載
せるセッターの一部を冷却する方法は、(1)結晶育成
前駆体の自重がセッターの接触部に集中するため、溶融
状態にある時にはその形状を保つことが困難であり、そ
れを回避するために接触面を大きくすれば複数の核生成
が生じてしまうこと、(2)自然発生核結晶成長させる
ため配向制御ができないので、製品の設計が制限される
こと、等の問題点が解決されずに残存する。
【0009】複数核が生成されない高品質の単結晶超電
導体の提供が望まれる。更に、それの配向制御が可能で
あることが望まれる。更に、そのように望まれる単結晶
超電導体の大型化と低コスト化が超電導利用機器の実用
化のために強く求められている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、複数
核が生成されず高品質・単結晶である超電導体が生成さ
れることができる超電導体の製造炉、及び、超電導体の
製造方法を提供することにある。本発明の他の課題は、
複数核が生成されず高品質・単結晶である超電導体が生
成されそれの配向制御が可能である超電導体の製造炉、
及び、超電導体の製造方法を提供することにある。本発
明の更に他の課題は、複数核が生成されず高品質・単結
晶である超電導体が生成されそれの配向制御が可能であ
り、且つ、超電導体の大型化とそれの製造の低コスト化
により超電導利用機器の実用化を進めることができる超
電導体の製造炉、及び、超電導体の製造方法を提供する
ことにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】その課題を解決するため
の手段が、下記のように表現される。その表現中に現れ
る技術的事項には、括弧()つきで、番号、記号等が添
記されている。その番号、記号等は、本発明の実施の複
数・形態又は複数の実施例のうちの少なくとも1つの実
施の形態又は複数の実施例を構成する技術的事項、特
に、その実施の形態又は実施例に対応する図面に表現さ
れている技術的事項に付せられている参照番号、参照記
号等に一致している。このような参照番号、参照記号
は、請求項記載の技術的事項と実施の形態又は実施例の
技術的事項との対応・橋渡しを明確にしている。このよ
うな対応・橋渡しは、請求項記載の技術的事項が実施の
形態又は実施例の技術的事項に限定されて解釈されるこ
とを意味しない。
【0012】本発明による超電導体の製造炉は、単結晶
化対象材料の一部の第1温度を時間を変数とする第1温
度関数T1(t)に制御する第1温度制御器(1)と、
単結晶化対象材料の他の一部の第2温度を時間を変数と
する第2温度関数T2(t)に制御する第2温度制御器
(3)とからなり、その一部は結晶化部分であり、他の
一部は溶融部分である。第1温度関数T1(t)と第2
温度関数T2(t)とは、互いに独立である。他の一部
は、結晶成長が生じると不都合である部位であり、前記
部位は凝固終期まで溶融状態特には融点以上に維持され
ることになる。
【0013】ここで、独立とは、第2温度関数T2
(t)が第1温度関数T1(t)に物理的に完全には従
属していないことを意味する。結晶化部分と溶融部分と
は、熱伝導により物理的に従属関係にあるが、物理的従
属関係を越えた制御が積極的に行われている。一部の結
晶化部分と他の一部の非結晶化部分とは、互いに熱的に
連続しているので、両部を完全に物理的に独立に温度制
御することは困難である。しかし、2つの加熱器のよう
な温度制御器を用いることによって、2領域の温度を別
々に制御することが容易である(2変数と2つの連立方
程式によって、両変数は確定する。)。このような意味
の別々の温度制御によって、所望の単結晶を得ることが
できる。
【0014】特に、温度制御器の一方又は両方として熱
輻射器が利用され、熱輻射により種結晶の存在領域を除
く部分の加熱を行うことにより、2領域の独立的温度制
御が容易である。局所的領域は炉内に複数が設定され、
複数の局所的領域にそれぞれに単結晶化対象材料が配置
されることにより、バルク体の量産化が促進される。
【0015】その一部は種結晶に接触している。種結晶
が元になって、既述の温度制御により全体を単結晶化す
ることができる。第1温度制御器(1)は炉内の温度を
大域的に制御することにより第1温度を制御し、第2温
度制御器(3)は炉内で単結晶化対象材料が配置されて
いる局所的領域の温度を局所的に制御することにより第
2温度を制御する。
【0016】本発明による超電導体の製造方法は、高温
化された単結晶化対象材料の一部である結晶化部分を冷
却すること、結晶化部分の冷却に基づく温度低下が熱伝
導により単結晶化対象材料の他の一部である溶融部分に
伝達されることから独立させて溶融部分を冷却すること
とからなる。その一部に種結晶を接触させることにより
結晶化部分の配向を制御することが好ましい。このよう
に、結晶成長が生じると不都合である部位(6)を融点
以上に加熱し、その部位(6)を凝固終期まで溶融状態
に維持することにより、大型単結晶を容易に生成するこ
とができる。例えば、結晶化が始まれば、下方からの加
熱を優先したり、第1温度制御器(1)及び第2温度制
御器(3)の温度パターンを種々に組み合わせて予備測
定し、複数のパターンのうちで結晶育成前駆体の内部で
適切な温度分布とその経時変化T1(t)とT2(t)
が適正に得られるものを選定する。この場合、そのよう
な適正なサンプルの選定のためには、必ずしもダミーサ
ンプルを用いた予備実験によらず、熱的パラメータ等を
用いたシミュレーション計算によっても合理的に選定す
ることができる。そのようなシミュレーションは、第1
領域(7)の天辺中央部を除く全外側面領域に第2温度
制御器(3)で加熱すること(図12,13参照)、第
2温度制御器(3)の配置領域を更に局所化して更に細
分化された局所領域ごとに発熱量を変えること(この場
合は加熱器が複数あることになる)によっても、結晶成
長が生じると不都合である部位(6)を融点以上に加熱
し、その部位(6)を凝固終期まで融点以上に維持する
ことを実行しながら行われる(図14,15参照)。な
お、第1温度T1(t)と第2温度T2(t)の組合せ
パターンは、第1温度制御器の第1加熱源温度T1’
(t)と2温度制御器の第2加熱源温度T2’(t)と
の組合せのパターンにそれぞれに対応するので、第1温
度T1(t)と第2温度T2(t)の独立制御は、実際
には第1加熱源温度T1’(t)と第2加熱源温度T
2’(t)との独立制御に対応することになる。このよ
うに第1領域と第2領域の境界面である等温面・凝固界
面が凝固終期まで単一に維持されるので、凝固しては困
る部分は最後まで融点以上に保持される。
【0017】
【発明の実施の形態】図に一致対応して、本発明による
超電導体の製造炉の実施の形態は、結晶育成炉に2種の
加熱器が設けられている。その第1加熱器1は、図1に
示されるように、結晶育成炉壁2の内部に埋め込まれた
第1ヒータにより形成されている。その第2加熱器3
は、結晶育成炉壁2の内部空間の中央領域に配置されて
いる局所的炉壁4の内部に埋め込まれた第2ヒータによ
り形成されている。結晶育成炉壁2の内部空間の自然状
態は、大気状態である。第1加熱器1と第2加熱器3
は、いずれもカンタル線に通電することにより発生する
ジュール熱が利用されるヒータである。このようなヒー
タに代えられて、熱線放射源、光学的加熱源が用いられ
得る。
【0018】局所的炉壁4の中に、結晶育成前駆体5が
挿入される。結晶育成前駆体5の天辺中央に種結晶8が
載置されて配置される。参照番号6で示される斜1点鎖
線部分は、まだ溶融状態であり未結晶領域である。参照
番号7で示される斜1点鎖線部分は、結晶育成前駆体5
が溶融され冷却されて凝固が完了し結晶化されている結
晶化領域である。
【0019】第1加熱器1は、結晶育成炉壁2の中の全
体領域を大域的に加熱してその全体領域の温度を大域的
に制御する制御機構を有している。そのような制御機構
は、結晶育成炉壁2の中に配置される単数又は複数の温
度センサー(図示されず)と、その温度センサーの出力
値を受けて第1加熱器1のヒータに供給する電流量を加
減するコントローラ(図示されず)とからなる慣用技術
である。そのコントローラは、時系列第1温度関数を記
憶しており、その関数の温度が温度センサーにより検出
されるようにその温度を制御することができる。
【0020】第2加熱器3は、局所的炉壁4の中の領域
である局所領域を加熱してその局所領域の温度を局所的
に制御する制御機構を有している。そのような制御機構
は、局所的炉壁4の中に配置される単数又は複数の温度
センサー(図示されず)と、その温度センサーの出力値
を受けて第2加熱器3のヒータに供給する電流量を加減
するコントローラ(図示されず)とからなる慣用技術で
ある。そのコントローラは、時系列第2温度関数を記憶
しており、その関数の温度が温度センサーにより検出さ
れるようにその温度を制御することができる。
【0021】図2は、結晶育成前駆体5が溶融された後
に冷却化され部分的に結晶化が進んでいる中間過程を示
している。この中間過程は、種結晶8に誘導され凝固し
て単結晶化している結晶化領域7と、未だ溶融していて
結晶化が進んでいない未結晶領域6とを示している。未
結晶領域6は、凝固終期まで、直方体の角部の形状とし
てそのまま保持される。結晶化領域7の温度は、未結晶
領域の温度よりも低くなるように制御されている。結晶
化完了時の単結晶体(未結晶領域6の残存部がない完全
凝固体)は、結晶育成前駆体5の直方体形状が概ねその
まま保持される。
【0022】第1加熱器1は、今後先行して結晶化が進
む先行結晶化領域(既述の結晶化領域で、以下第1領域
といわれる)7の温度(第1温度)を主に制御する。第
1温度は、時間を変数とする第1温度関数T1(t)に
制御される。第2加熱器3は、先行結晶化領域の結晶化
に遅れて結晶化する溶融状態の後行結晶化領域(既述の
未結晶領域で、以下第2領域といわれる)6の温度(第
2温度)を主に制御する。第2温度は、時間を変数とす
る第2温度関数T2(t)に制御される。第1領域7の
第1温度関数T1(t)の変動は、両領域の境界層を介
した熱伝導により、第2領域6の温度に影響するが、第
2温度関数T1(t)はそのような影響から独立に制御
される。従って、このような制御は、熱伝導に完全に従
属する物理的制御のみの制御ではなく、情報処理プロセ
スが混在するプログラム制御である。このような技術的
意義で、第1温度関数T1(t)と第2温度関数T2
(t)とは独立に制御される。
【0023】図3は、第1温度関数T1(t)と第2温
度関数T2(t)の独立制御方法の実施の形態を示して
いる。図3に示される温度制御は、6段階制御が第1温
度関数T1(t)と第2温度関数T2(t)に関して独
立的に実行されている。 ステップ1:第2温度関数T2(t)は、RTから10
70°Cまで300°C/hrの変化率で上昇する。そ
の間に、第1温度関数T1(t)は1050°Cまで同
じ変化率で上昇する。
【0024】ステップ2:第2領域6の1070°Cと
第1領域7の1050°Cは、それぞれに、一定に維持
され温度差は20°Cで一定である。第1領域に接触し
ている種結晶8は、第1領域7の結晶化部分に概ね同じ
温度に維持されている。以下、種結晶8は第1領域に属
しているものとして記述される。ステップ2では、状態
Iで示されるように、第1領域7と第2領域6との境界
は判然とせず、全領域が溶融状態にある。
【0025】ステップ3:第1領域7は、1000°C
まで急冷される。この急冷の区間では、第2領域6は1
040°Cまで急冷される。ステップ1とステップ2で
は、両温度の変化率は同期しているが、ステップ3では
両温度の変化率は同期していない。即ち、同一時系列範
囲では、両温度の変化率は常に異なっていて、第1温度
T1(t)は、第2温度T2(t)より常に低い。ステ
ップ3では、状態IIで示されるように、第1領域7は
種結晶8に誘導されて結晶化し、又は、結晶化する直前
にある。
【0026】ステップ4:第1領域7は、0.9°C/
hrの変化率で920°Cまで徐冷される。この徐冷の
区間では、第2領域6は、1040°Cに維持される恒
温保持区間と、2°C/hrで1000°Cまで徐冷さ
れる徐冷区間を持つ。このステップ4でも、両温度の変
化率は同期していない。ステップ4では、状態IIIで
示されるように、第1領域7でその結晶化部分が拡大
し、第2領域6は結晶化せず溶融状態にある。
【0027】ステップ5:第1領域7は、920°Cか
らRTまで60°C/hrの変化率で急冷される。第2
領域6は、1000°CからRTまで急冷される。ステ
ップ5では、両温度は概ね同期している。ステップ5で
は、状態IVで示されるように、全領域の大部分である
第1領域7で結晶化が進んでいて、残りの僅かの部分で
ある第2領域6は結晶化せずに溶融状態にある。
【0028】全時系列範囲で、第1温度T1(t)が第
2温度T2(t)よりも低く制御される必要は必ずしも
ない。このような非同期温度制御は、両加熱器の一方の
みでは困難であり、両加熱器1,3の使用によって容易
に可能になった。完全同期温度制御であっても、第1温
度T1(t)と第2温度T2(t)との温度落差を制御
するためには、少なくとも2系統の加熱器が必要であ
る。このような2系統の加熱系の存在により、図2に示
される温度分布に見られる単一の等温線(凝固界面)又
は図3に経時変化として示される温度分布に見られる単
一の等温線(凝固界面)が成立する。なお、図3中に点
線で示される水平の基準線は、融点を示している。
【0029】
【実施例】図3に示される時系列温度パターン制御が、
統一されて下記実施例に適用される。 実施例1:原料粉末Y、BaCO、CuOをモ
ル比でY:Ba:Cu=1.6:2.3:3.3になる
ように秤量し混合した後に、大気中、900°Cで24
hr仮焼した。次に、このような仮焼粉を十分に粉砕
し、白金粉末を質量換算で0.5%加えて再度混合し、
その混合粉体を一軸プレス機と静水圧プレス機とを用い
て、円盤状厚板(φ39mm×t17mm)に成形し、
更に、大気中で910°Cで10hr焼結して結晶育成
前駆体11を製作した。
【0030】このような結晶育成前駆体を炉壁内に入れ
て、溶融凝固を行った。種結晶としては、市販のMgO
単結晶の(001)面を研磨した研磨基板を2mm角の
正方形状にカットしたものが用いられ、研磨基板は、そ
の(001)面が結晶育成前駆体11の上面の中央部位
に接触するように配置された。
【0031】図4は、得られたバルク体の外観を示して
いる。その外観が示すように、中央に位置する種結晶か
ら放射方向に4つの稜線が延びていることが確認され
る。詳しい結晶解析の結果、図4の紙面の法線の方向に
YBaCuの[001]方位、すなわち、c軸
方位があること、稜線が延びている4つの方向にYBa
Cuの[110]、[1−10]、[−11
0]、[−1−10]のそれぞれの方位が配しているこ
と、最終凝固部と考えられるバルク体の底部の角を除い
て単一結晶粒であるとみなし得ることが分かった。ここ
で、方位[1−10]の”−”は、通常は、その右側の
数の真上添字として記載される記号である。
【0032】実施例2:十分に原料粉末Y、Ba
CO、CuOをモル比でY:Ba:Cu=1.8:
2.4:3.4になるように秤量し混合した後に、その
混合物をPt坩堝に充填し、1400°Cまで昇温して
溶融した後に、その坩堝内の溶融体を水冷銅板上に流し
込んで急冷凝固させた。次に、この急冷凝固体を十分に
粉砕し、その粉砕粉体を一軸プレス機と静水圧プレス機
とを用いて、円盤状厚板(φ39mm×t17mm)に
成形し、更に、大気中で910°Cで10hr焼結して
結晶育成前駆体11を製作した。
【0033】このような結晶育成前駆体を局所的炉壁4
の中に入れて、溶融凝固を行った。種結晶としては、S
mBaCuを用いて、その結晶の(110)面
が結晶育成前駆体の上面の中央部位に接触するように配
置された。
【0034】図5(a),(b)は、得られたバルク体
の底面の近傍の結晶方位の解析結果を示している。図5
(a),(b)が示すように、成長したバルク体のマト
リックス層YBaCuの(110)面は、種結
晶面に平行であり、その(200)面及び(020)面
はそれから45°ずれた方向にあり、バルク体は[11
0]配向の単結晶状であること、即ち、種結晶の結晶方
位を確実に受け継いでいることが分かる。
【0035】実施例3:原料粉末YBaCu
BaCuOをモル比でY:Ba:Cu=1.8:
2.4:3.4になるように秤量し混合した後に、その
混合物の全質量に対して0.5%のPt粉末を混合した
後に、一軸プレス機と静水圧プレス機とを用いて、扇形
厚板(t22mm)に成形して結晶育成前駆体11を製
作した。
【0036】図6,7は、局所的炉壁4と結晶育成前駆
体11の形状寸法を示している(単位はmm)。種結晶
としては、SmBaCuを用いて、その結晶の
(001)面がそのバルク体の扇面の中央部位に接触す
るように配置された。この実施例では、最終凝固部分以
外は単結晶状のマトリックス相YBaCuに1
μm程度のYBaCuO相が微細分散する組織が得
られていることが確認できた。
【0037】実施例4:十分に乾燥させた原料粉末YB
Cu、YBaCuOをモル比でY:B
a:Cu=1.6:2.3:3.3になるように秤量し
混合した後に、その混合物の全質量に対して0.5%の
Pt粉末を加えて更に混合した後に、一軸プレス機と静
水圧プレス機とを用い成形し、その後に、900°Cで
20hr焼結することにより最終的に長さ136mm、
幅30mm、高さ22mmの棒状の結晶育成前駆体11
を製作した。
【0038】図8,9は、局所的炉壁4と結晶育成前駆
体11の形状を示している。種結晶としては、MgOを
用いて、その結晶の(001)面がそのバルク体の上面
の中央部位に接触するように配置された。図10
(a),(b)は、得られたバルク体の中央から55m
m離れた底面の近傍の結晶方位の解析結果を示してい
る。この解析結果によれば、成長したバルク体のマトリ
ックス相YBaCuの(001)面は、種結晶
面に平行であり、(103)、(−103)、(01
3)、及び(0−13)のそれぞれの面が、種結晶接触
面から約45°ずれた方向に4回対称で存在し、その棒
状バルク体は概ね単結晶状であることが確認された。
【0039】このような実施例を通して、核生成が生じ
れば不都合な部位、即ち、種結晶に連続して単結晶が形
成されていない部位では、第2温度関数T2(t)がリ
アルタイムに制御されてそこでは溶融状態が維持され結
晶化が阻止されていることが明らかにされている。この
ように種結晶に連続して単結晶化が促進されることは、
第1温度関数T1(t)と第2温度関数T2(t)とが
完全に相互作用で物理的に従属して変化しているのでは
なく、物理的には非従属的に制御されているからである
と認識され得る。言い換えれば、離散的に核生成が起き
ないことは、元の種結晶部に連続する種結晶部の領域と
異なる領域では、その温度が融点以上に保持されている
ため、核生成そのものが生じない状態に保持されている
ことに起因していると考えることができる。
【0040】仮に炉内に温度勾配を有する装置を用いた
としても、外周部である第2領域の温度は、温度パター
ンの全域にわたって種結晶の温度と同期して変化するた
め、凝固途中でその外周部に融点以下の領域が発生し、
それに伴って、核生成と結晶成長が起こる。従って、図
11に示されるように、種結晶に誘導されて結晶化する
領域は結晶成長領域Aだけでなく、種結晶に誘導されず
に不都合に結晶化が進む結晶成長領域B1〜B4が生じ
て、成長Aを阻害しているのである。本発明によれば、
このような阻害が発生していない。
【0041】本発明による超電導体の製造炉によれば、
外周部である第2領域が融点以上の温度に加熱されるた
めに核生成そのものが生じることがなく、種結晶から発
生する結晶粒のみが大きく成長することができる。局所
的加熱ヒータは凝固の終期近くまで融点以上に保持され
るため、局所的加熱ヒータの近傍が最終部になる。
【0042】既述の実施例の前駆体は、円盤状厚板、扇
形厚板、長い矩形状棒状体が示されているが、いずれの
場合にも単結晶バルク体が形成が達成されている。これ
らの実施例は、本発明を制限することはなく、実施例に
示されたものより更に大きい寸法のバルク体、又は、他
の不規則曲面を有する形状(例示:鞍形、多角形厚板、
ドーナツ型円盤、回転楕円体等)のものも製造すること
ができることを示している。更に大寸法のバルクを製造
するためには、図12に示されるように、バルク上面の
種結晶の近傍を除く大部分に対して局所的加熱を行うこ
とができる追加加熱構造20が追加される。このような
局所的加熱領域の拡大は、図13に示されるように、種
結晶が置かれる部位の側方の上方部位を覆う保温構造体
として断熱煉瓦21によっても実現する。図12又は図
13に示される局所的加熱では、既述の第2領域に他の
第2領域6’が追加される。既述の実施例では、種結晶
としてSmBaCu、MgOが用いられている
が、適用される温度パターンの中で化学的に安定である
他の結晶を用いることができる。
【0043】更に、本発明の局所的炉は多数個が同時に
配置され得る。図14,15は、そのような炉の配置の
実施の形態を示している。炉内のマクロな温度分布では
なく、一つ一つのバルク体に対応した温度分布を作り出
すことが複数の局所的加熱用坩堝4−1〜4−nによっ
て実現される。厚さが適正である四角形状の坩堝形成体
23に、それぞれに円柱状空間を形成する複数の穴24
が互いに等間隔に形成されている。このような穴24
は、複数の坩堝4−1〜4−nを一体的に形成する。複
数の坩堝4−1〜4−nに、ディスク状の結晶育成前駆
体5がそれぞれに挿入されて配置される。このような局
所的領域の複数配置化は、量産性を一挙に高めることが
できる。
【0044】
【発明の効果】本発明による超電導体の製造炉は、簡易
な装置と方法であるが、核生成が生じると不都合な部位
を局所的に加熱して融点以上に保持することができ、低
コストで確実に単結晶化された高品質なバルク体を製造
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による超電導体の製造炉の実施
の形態を示す正面断面図である。
【図2】図2は、図1の一部を示す正面図である。
【図3】図3は、温度の時系列的制御を示すグラフであ
る。
【図4】図4は、得られたバルク体の外観を示す写真で
ある。
【図5】図5(a),(b)は、得られた単結晶の結晶
方位を示す回析結果を示すX線回折極点図である。
【図6】図6は、結晶育成前駆体と局所加熱炉の形状関
係を示す平面断面図である。
【図7】図7は、図6の正面断面図である。
【図8】図8は、結晶育成前駆体と局所加熱炉の他の形
状関係を示す平面断面図である。
【図9】図9は、図8の正面断面図である。
【図10】図10(a),(b)は、得られた他の単結
晶の結晶方位を示す解析結果を示すX線解析極点図であ
る。
【図11】図11は、従来の加熱方法により結晶を成長
させる時の結晶成長挙動を説明するための断面図であ
る。
【図12】図12は、局所加熱手段の他の実施の形態を
示す正面断面図である。
【図13】図13は、局所加熱手段の更に他の実施の形
態を示す正面断面図である。
【図14】図14は、局所加熱手段の更に他の実施の形
態を示す平面断面図である。
【図15】図15は、図14の正面断面図である。
【符号の説明】
1…第1温度制御器 3…第2温度制御器 T1(t)…第1温度関数T1 T2(t)…第2温度関数T2

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】単結晶化対象材料の一部の第1温度を時間
    を変数とする第1温度関数T1(t)に制御する第1温
    度制御器と、 前記単結晶化対象材料の他の一部の第2温度を時間を変
    数とする第2温度関数T2(t)に制御する第2温度制
    御器とからなり、 前記一部は結晶化部分であり、前記他の一部は溶融部分
    であり、 前記第2温度関数T2(t)と前記第1温度関数T1
    (t)とは互いに独立である超電導体の製造炉。
  2. 【請求項2】請求項1において、 前記第2温度関数T2(t)は、前記第1温度関数T1
    (t)に同期していない超電導体の製造炉。
  3. 【請求項3】請求項1において、 前記一部は種結晶に接触している超電導体の製造炉。
  4. 【請求項4】請求項1において、 前記第2温度は、前記第1温度よりも常に高い超電導体
    の製造炉。
  5. 【請求項5】請求項1において、 前記第1温度制御器は炉内の温度を大域的に制御するこ
    とにより前記第1温度を制御し、 前記第2温度制御器は前記炉内で前記単結晶化対象材料
    が配置されている局所的領域の温度を局所的に制御する
    ことにより前記第2温度を制御する超電導体の製造炉。
  6. 【請求項6】請求項5において、 前記第1温度制御器と前記第2温度制御器のうちの少な
    くとも一方は、熱輻射器である超電導体の製造炉。
  7. 【請求項7】請求項5において、 前記局所的領域は前記炉内に複数が設定され、前記複数
    の局所的領域にそれぞれに前記単結晶化対象材料が配置
    されている超電導体の製造炉。
  8. 【請求項8】請求項1〜7から選択される1請求項にお
    いて、 前記他の一部は、結晶成長が生じると不都合である部位
    であり、前記部位は凝固終期まで融点以上に維持される
    超電導体の製造炉。
  9. 【請求項9】高温化された単結晶化対象材料の一部であ
    る結晶化部分を冷却すること、 前記結晶化部分の前記冷却に基づく温度低下が熱伝導に
    より前記単結晶化対象材料の他の一部である溶融部分に
    伝達されることから独立させて前記溶融部分を冷却する
    こととからなる超電導体の製造方法。
  10. 【請求項10】請求項9において、更に、 前記一部に種結晶を接触させることにより前記結晶化部
    分の配向を制御することからなる超電導体の製造方法。
  11. 【請求項11】請求項9において、 前記結晶化部分の温度低下と前記溶融部分の温度低下と
    は同期していない超電導体の製造方法。
  12. 【請求項12】結晶成長が生じると不都合である部位を
    融点以上に加熱することと、 前記部位を凝固終期まで融点以上に維持することとから
    なる超電導体の製造方法。
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