JP2001172960A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】明細書
【発明の名称】地盤の改良または強化工法
【特許請求の範囲】
【請求項1】地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する一方で、
前記排出泥土を調泥槽に貯留して沈降分離により上澄液と濃縮泥土とに分離した後、前記上澄液を取り出して貯液槽に供給し、前記調泥槽中の貯留物が所定の含水比になったならば前記上澄液の取り出しを停止させるとともに、前記調泥槽中の貯留物を取り出して自硬性材料と混練しこの混練物を前記自硬性改良材として再利用し、
前記貯液槽に取り出した上澄み液は、そのまま又は水を添加して前記地盤の弛緩用の液として再利用する、ことを特徴とする地盤の改良または強化工法。
【請求項2】前記調泥槽貯留物の体積および質量を測定する計測手段を設け、これら計測結果に基づいて前記調泥槽貯留物が所定の含水比になったことを検知または判断する、請求項1記載の地盤の改良または強化工法。
【請求項3】前記排出泥土を、砂礫分の分離除去処理および解泥処理の少なくとも一方を行った後に、前記調泥槽へ供給する、請求項1または2記載の地盤の改良または強化工法。
【請求項4】前記泥土の沈降分離に先立って、沈降分離を促進させる分離剤を泥土に添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤の改良または強化工法。
【請求項5】地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する方法において、
前記噴射管は、大径円形管を中心としてその周囲に一つまたは複数の小径円形管を並設してなり、前記大径円形管を前記地盤弛緩後の前記自硬性改良材の供給に用い、前記小径円形管を前記地盤の弛緩用液の供給に用いることを特徴とする、地盤の改良または強化工法。
【請求項6】前記小径円形管は複数とされ、その一部を前記地盤の弛緩用液の供給に用い、残部を前記弛緩用液による地盤の切削能力向上および泥土の地上へのエアリフトを行う圧縮空気の供給に用いる、請求項5に記載の地盤の改良または強化工法。
【請求項7】地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する方法において、
前記噴射管の先端部に少なくとも拡径噴出状態において管外側に突出する張出噴射部が設けられ、この張出噴射部に高圧水を噴射する噴射ノズルが設けられ、さらに噴射管の前記噴射ノズルより先端側に前記自硬性改良材の注出口が形成され、前記張出噴射部は流体圧シリンダに接続されるとともに当該流体圧シリンダを地上から操作することによって噴射管の軸心に沿う折り畳み位置と外方に突出する位置との間で拡縮するように構成されており、
前記噴射管を地盤中に挿入する時には前記張出噴射部を折り畳み収縮状態とし、前記噴射ノズルから弛緩用液を噴射して対象地盤を緩める時には前記張出噴射部を外方に突出させることを特徴とする、地盤の改良または強化工法。
【請求項8】前記流体圧シリンダが水圧を利用して駆動する水圧シリンダとされた、請求項7記載の地盤の改良または強化工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、軟弱地盤の改良または強化工法に係り、特に一旦緩ませた地盤中に粘度の高いセメント系などの自硬性材料をいわば押し込むように圧入することにより改良を図る工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の地盤改良工法としては、種々のものが知られている。その代表例は、薬液注入工法である。この工法は、周知のように、地盤中に挿入した注入管により低圧で薬液を注入するものである。また、この場合、地盤を乱すことなく、薬液を浸透圧入させることを基本思想としている。
【0003】
他方で、近年、いわゆるジェットグラウト工法に代表される高圧噴射工法が多く用いられるようになってきた。この高圧噴射工法は、地盤をグラウトまたは水のもつ高圧力により乱しながら同時に地盤中にグラウトを注入するものである。この高圧噴射工法は、極端にいえば地盤の攪拌工法とも言える。
【0004】
しかし、第1の薬液圧入工法では、浸透圧入を行うために、粘度の低い材料、主として水ガラス系の材料を用いるので、改良強度は低いとともに、耐久性に乏しい。さらに、改良強度が低い理由は、地盤を改良材により置換するのではなく浸透注入または割裂注入することをもって良しとするので、単位容積当たりの改良材の占める割合が低く不均一なことにも起因している。
【0005】
さらに問題点を付言すれば、通常砂質土層の場合には、浸透注入を行うことができるが、注入条件のわずかな差異により割裂注入の形態となり、浸透注入を行うことができないことが多々ある。他方、粘性土層に注入する場合、割裂注入となり、改良材が逸走することが多い。このために、目的の領域のみを確実に改良することが困難であり、しかも逸走に伴う材料ロスが多い。また、目的の改良径は均一にできず、トリー状(樹木状あるいは脈状)になることが多い。
【0006】
第2の高圧噴射工法では、地盤を極端に乱し、かつスライム(泥水)処理に多大な手間と費用を要する。さらに、切削および注入を均一に行おうとすれば、改良速度を低下させる必要があり、時間がかかる工法である。しかも、砂質地盤に対しては、強度として3MPa 以上、粘性地盤の場合には1MPa以上を目標にするが、地盤性状による強度のばらつきおよび改良体の位置による強度のばらつきが極めて大きいことが問題である。特に、粘性土地盤の場合、切削不十分なことによる土塊の抱き込みによるばらつきが大きい。
【0007】
そこで、本発明者らは、先の特願平3−129473号として、地盤中に挿入した噴射管の先端部外周面に設けた高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射して対象地盤を緩めながら、または緩めた後、緩んだ地盤中に硬練りの自硬性材料を圧入し弛緩泥土を置換充填して改良体を造成する工法を提案した。この工法によれば、従来廃棄するしかなかった排泥を圧入用自硬性材料の一部として混練し、改良部分に戻すことにより、廃土抑制を図ることができるだけでなく、信頼性の高い改良体を造成できるようになる利点がある。
【0008】
また、本発明者らは、特願平3−234322号として、先端部に少なくとも拡径噴出状態において管外側に突出する張出噴射部を設け、この張出噴射部に改良軸心に対して外方に向けて高圧水を噴射する噴射ノズルを設け、さらに噴射管の噴射ノズルより先端側に圧入用自硬性材料の注出口を形成した噴射管を用いて、地盤の弛緩径または改良径を大きくする技術や、特願平3−234323号として、噴射管の先端部に少なくとも拡径噴出状態において管外側に突出する張出噴射部を設け、この張出噴射部またはこれより下方の噴射管に、少なくとも張出噴射部の突出長さ分の地盤領域をカバーして高圧水を噴射する噴射ノズルを設け、さらに最下部噴射ノズルより先端側に自硬性材料の注出口を形成し、各噴射ノズルからの高圧水の到達距離は短いとしても、軸心を基準とした到達距離は長くでき、もって圧力を高くしまたはノズル径を小さくしなくとも、さらに吐出流量を増大させなくとも、少なくとも張出噴射部の突出長さ領域分は、確実に地盤を弛緩させることができる技術を提案し、さらにこれらの付加的機能として、図11および図12に示すように張出噴射部100を拡縮自在とする技術も提案した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる先行技術に関し、現実的な地上設備を設計したところ設備構成が複雑であり、作業が煩雑となる等の問題点が見出され、普及するまでには至っていない。
【0010】
また先行技術においては、噴射管として多重管たとえば二重管を用い、内管内を自硬性材料流通路とし、内管外面と外管内面との断面環状の隙間を弛緩用液の供給路とすることを提案したが、弛緩径を増大させるべく弛緩水を超高圧(約40MPa)で供給すると内管が押し潰されるおそれがあった。そのため、従来は管の肉厚を増大させることにより対処していたが、噴射管が重くなる等の問題点があった。
【0011】
さらに、張出噴射部を拡縮させる技術においては、前述図11および図12にそれぞれ収縮状態および拡出状態を示すように、噴射管101の外側に地上から拡出用外管102を押し込むことによって張出噴射部100を拡出させる例を提案しているが、作業性に難があった。
【0012】
したがって、本発明の主たる課題は、簡易、確実かつ現実的な地上排泥処理を可能とすること、超高圧での弛緩水供給を可能とすること、および張出噴射部の拡縮作業の簡易化および確実化を図ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明のうち、請求項1記載の発明は、地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する一方で、
前記排出泥土を調泥槽に貯留して沈降分離により上澄液と濃縮泥土とに分離した後、前記上澄液を取り出して貯液槽に供給し、前記調泥槽中の貯留物が所定の含水比になったならば前記上澄液の取り出しを停止させるとともに、前記調泥槽中の貯留物を取り出して自硬性材料と混練しこの混練物を前記自硬性改良材として再利用し、
前記貯液槽に取り出した上澄み液は、そのまま又は水を添加して前記地盤の弛緩用の液として再利用する、ことを特徴とする地盤の改良または強化工法である。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記調泥槽貯留物の体積および質量を測定する計測手段を設け、これら計測結果に基づいて前記調泥槽貯留物が所定の含水比になったことを検知または判断する、請求項1記載の地盤の改良または強化工法である。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記排出泥土を、砂礫分の分離除去処理および解泥処理の少なくとも一方を行った後に、前記調泥槽へ供給する、請求項1または2記載の地盤の改良または強化工法である。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記泥土の沈降分離に先立って、沈降分離を促進させる分離剤を泥土に添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤の改良または強化工法である。
【0017】
請求項5記載の発明は、地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する方法において、
前記噴射管は、大径円形管を中心としてその周囲に一つまたは複数の小径円形管を並設してなり、前記大径円形管を前記地盤弛緩後の前記自硬性改良材の供給に用い、前記小径円形管を前記地盤の弛緩用液の供給に用いることを特徴とする、地盤の改良または強化工法である。
【0018】
請求項6記載の発明は、前記小径円形管は複数とされ、その一部を前記地盤の弛緩用液の供給に用い、残部を前記弛緩用液による地盤の切削能力向上および泥土の地上へのエアリフトを行う圧縮空気の供給に用いる、請求項5に記載の地盤の改良または強化工法である。
【0019】
請求項7記載の発明は、地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する方法において、
前記噴射管の先端部に少なくとも拡径噴出状態において管外側に突出する張出噴射部が設けられ、この張出噴射部に高圧水を噴射する噴射ノズルが設けられ、さらに噴射管の前記噴射ノズルより先端側に前記自硬性改良材の注出口が形成され、前記張出噴射部は流体圧シリンダに接続されるとともに当該流体圧シリンダを地上から操作することによって噴射管の軸心に沿う折り畳み位置と外方に突出する位置との間で拡縮するように構成されており、
前記噴射管を地盤中に挿入する時には前記張出噴射部を折り畳み収縮状態とし、前記噴射ノズルから弛緩用液を噴射して対象地盤を緩める時には前記張出噴射部を外方に突出させることを特徴とする、地盤の改良または強化工法である。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記流体圧シリンダが水圧を利用して駆動する水圧シリンダとされた、請求項7記載の地盤の改良または強化工法である。
【0021】
<作用>
本発明は、「一旦地盤を緩めた後、その緩んだ泥土部分に高粘性の自硬性材料を圧入することによって、自硬性材料により弛緩部分が置換され(すなわち圧入した自硬性材料が当該部位に残るとともに弛緩泥土が噴射管周囲を通り地上に排出され)、非常に高品質(理想的な配合、緻密)な改良体が造成される」との知見に基礎を置いている。
【0022】
本発明にしたがって高圧水を噴射すると、対象地盤を緩めることができる。地盤の弛緩は、主に大きな土粒子とこれらの土粒子間を繋いでいるその周りの細かい土粒子との接合が分断されることにより行われる。また、この分断により空隙部分の割合が多くなり、続く改良材の圧入の道が形成される。
【0023】
この緩んだ対象地盤に対して、スランプ値が小さい改良材(自硬性材料)を圧入すると、地盤の緩んだ部分に改良材が押し込まれるように圧入される。この圧入により、緩んだ地盤を押し広げるように改良材が注入される。このとき、改良材のスランプ値が小さいので、改良材の逸走が防止されるとともに、緩んだ地盤部分が改良材により置換され、あたかもその地盤部分が改良材により充填されるようになる。よって、予め定めた配合のままの改良体が造成されることになる。また、改良材の押し込み圧力により、地盤部分が圧密されるとともに、軟弱な部分には多くの改良材が圧入される一方で、強度の高い部分に対しては、地盤の緩み度合いが少ないので、改良材の圧入量が少なく圧入され、もって全体としては均一な強度をもったかつ均一な改良径の改良体が造成される。
【0024】
他方で、前述のとおり本発明においては地盤を緩めるのに高圧水を用いるので、排出泥土は、高圧噴射工法にみられるようにセメントと土粒子との混合スライムでなく、水と土粒子との混合物となる。この点、高圧噴射工法に比べて排泥処理が容易となる利点がある。そして、本発明の主要ポイントはこの地上排泥処理にある。
【0025】
すなわち、本発明においては、排泥を調泥槽に貯留して沈降分離により上澄液と濃縮泥土とに分離した後、調泥槽中の貯留物の含水比を監視しながら上澄液を取り出して貯液槽に供給し、調泥槽中の貯留物が所定の含水比になったならば上澄液の取り出しを停止させるとともに、調泥槽中の貯留物を取り出して自硬性材料と混練しこの混練物を圧入用の自硬性改良材として供給し再利用し、貯液槽に取り出した上澄み液は、そのまま又は水を添加して地盤の弛緩用の液として供給し再利用する。したがって、簡易な方法で正確に自硬性改良材の配合管理ができ、理想的な配合の改良体を造成できるようになる。
【0026】
また、超高圧での弛緩水供給を可能とするとの課題は、請求項5記載のように、自硬性改良材の大径円形管の外側に、弛緩水供給専用として一つまたは複数の小径円形管を別途並設し、十分な強度を確保することにより解決される。
【0027】
さらに、張出噴射部の拡縮作業の簡易化および確実化を図るとの課題は、請求項7記載のように、張出噴射部の拡縮を流体圧シリンダにより行うように構成することで解決される。また、特に水圧シリンダを用いることで、油圧シリンダを用いる場合と比べてメンテナンスが容易となる利点がもたらされる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳説する。
<第1の実施形態;請求項1〜4記載の発明に関する>
図1および図2は、第1の実施形態を示しており、内管1Aと外管1Bとを有する同心2重管からなる噴射管1を用い、まずその噴射管1に回転力と押し込み力を作用させつつその先端の切削ビット2により地盤を切削しながら、所定深度まで噴射管1を地盤中に挿入する。図中1Cはスイベルを示している。
【0029】
次にこの噴射管1を回転しながら引き上げる過程で、先端より所定距離基部側の周壁に設けた噴射ノズル3から高圧水を噴射し、地盤の対象域を緩める。同時に先端に開口する注出口4から、スランプ値(JIS A 1101)が好ましくは10以上の高粘性地盤改良材Gを圧入する。かかる高粘性の地盤改良材Gが噴射管1先端から圧入されると、これに先立って形成された弛緩泥土Sは押し上げられ順次地上部に排出されるとともに、順次弛緩泥土部分Sが地盤改良材Gにより置換され、柱状の改良体が造成される。
【0030】
なお本例のように、2重管または複流路管を用いる場合、噴射管1を挿入させる過程で又は挿入過程および引上げ過程の両方において高圧水を噴射して地盤を緩めることもできる。また図示しないが、高圧水等を噴射する噴射管と地盤改良材Gを圧入する圧入管とを別々に用意しておき、先ず対象地盤に噴射管を挿入して深さ方向全体の弛緩を完了させ、次にこの噴射管を引き抜いた後にこれとは別の圧入管を挿入して改良材の圧入を行うようにすることも可能である。
【0031】
本発明において、高圧水の圧力としては、通常圧入管近傍にまたは注入ポンプの出側に設けられるゲージの圧力をいう。この圧力としては8〜40MPa、特に10MPa以上とすることが好ましい。噴射水量としては、5〜15リットル/分が望ましい。
【0032】
本発明ではかかる改良が行われる一方で、図1に示すように、地上部に順次排出される泥土を上澄液と濃縮泥土とに分離し、上澄液は弛緩用液の一部または全部として再利用し、濃縮泥土は改良材の一部として改良部分に戻す。すなわち、先ず、噴射管1の挿入孔の口元近傍に泥土ピット10を設け、改良材Gによる置換に伴って、高圧噴射管1と孔壁との間を上昇した泥土11を泥土ピット10へ自動的に流入させる。
【0033】
泥土ピット10内の排泥11はポンプ10P(バックホウでも可)により汲み上げ、振動ふるい12等の分離装置に供給して砂礫分を分離除去した後、解泥槽13へ供給し土塊を解きほぐす。なお、泥土ピット10の容積が十分に大きければ、砂礫分や土塊等の粗粒分はピット内で沈降分離されることになるので、かかる砂礫分の分離除去ならびに解泥を省略して、次述の分離剤混練機14または調泥槽15へ直接供給することができる。
【0034】
本例では、解泥槽13において解泥された泥土はポンプ13Pにより分離剤混練機14に供給され、分離剤混練機14おいて分離剤が添加混合された後、調泥槽15へ供給される。分離剤の添加は、細粒分が多い等、調泥槽15における沈降分離が困難な場合に有効であるが、そうでない場合等においては省略することも可能である。
【0035】
調泥槽15に供給した泥土は所定時間(数分程度)静置され沈降分離により上澄液と濃縮泥土とに分離される。しかる後、本発明では調泥槽15中の貯留物の密度または含水比を監視しながら上澄液を取り出して貯液槽16に供給し、調泥槽15中の貯留物が所定の含水比になったならば上澄液の取り出しを停止させる。
【0036】
監視に際しては、例えば調泥槽15に貯留物の体積を計測するための水位計(図示せず)および貯留物の質量を測定するためのロードセル15Aを設けておき、各計測結果に基づきコンピュータ等により貯留物密度を求める。貯留物密度は含水比と一定の相関があるので、これを含水比の指標として監視するか、あるいは、土粒子の比重を予め計測等しておき、これと、貯留物体積および貯留物密度より求まる比重とに基づいて貯留物の含水比を求め、これを監視する。
【0037】
その結果、所定の含水比となったならば、上澄液の取り出しを停止させるとともに貯留泥土をアジテータ槽17に投入し、そこから定量ポンプ18によって改良材混練機19に供給する。改良材混練機19に供給された泥土は別途供給される自硬性材料と混練され、この混練物がコンクリートポンプ等の圧入ポンプ20により自硬性改良材Gとして噴射管1に供給され再利用される。かくして簡易な方法で正確に自硬性改良材の配合管理ができ。またかかる排泥の再利用によって、その利用量に応じて排泥処分量が低減される。なお、泥土と混練する自硬性材料としては、セメントモルタル系、セメント粘土系、石灰系などの各種のものを用いることができる。このうち最も好ましいのはセメントモルタル系のもので、これに微粒子スラグ、ベントナイトなどの他の無機材料、発泡剤、気泡剤、分離防止剤、減水剤などの各種添加剤などを添加することができる。さらに、水ガラスやその硬化剤をある割合で添加することもできる。
【0038】
一方、貯液槽16に取り出した上澄み液は、そのまま又は水を添加してから高圧泥水ポンプ21により地盤弛緩用液として噴射管1へ供給され再利用される。なお、上澄液を切削用に利用すると、小さな粒子分を含んでいるので、切削性が良好となる利点がある。また、濃縮泥土を再利用すると、泥水処理がその分低減する。
【0039】
ところで、本例のように噴射および圧入の両機能をもった単一の噴射管1を用いると、施工性に優れる利点がある。この場合、外管1Bと内管1Aとの隙間を地盤弛緩用の液の供給に用い、内管1A内を改良材Gの供給とともに、それに先立つ穿孔時においては、削孔水の供給にも用いることができる。
【0040】
また、たとえば図3に示すような三重管30を用いることもできる。この三重管30は外管31、中管32および内管33を有し、外壁に噴射ノズル34を取付け、その周囲にエアAの環状吐出口35を形成したものである。狭い環状吐出口35から圧縮または高圧たとえば0.5MPa以上のエアAを吐出させると、泥土11はエアリフト効果により円滑に地上に排出されるとともに、地盤の切削能力が高まる。
【0041】
<第2の実施形態:請求項5、6記載の発明に関する>
上記第1の実施形態で例示した多重管構造の噴射管、例えば二重管噴射管1は、内管1Aの外面と外管1Bの内面との隙間を弛緩水の供給路とするものであるが、弛緩径を増大させるべく前述の泥水ポンプ21として近年開発された超高圧泥水ポンプを用いることを検討すると、内管1A外面に加わる圧が非常に高くなるため、内管1Aが押し潰されることが想定された。
【0042】
そこで、かかる超高圧の弛緩水供給をする場合においては、図4〜6に示す噴射管40を用いることを推奨する。この噴射管40は、大径円形管41を中心としてその周囲に必要数の小径円形管42,42…を例えば相互間隔を均等にしてバランス良く束ねて配し、これら小径円形管42,42…の先端は、大径円形管41における先端より所定距離基部側外面に設けた環状噴射ノズル43上部のエア流入口43Aおよび弛緩水流入口43Bにそれぞれ接続してなるものである。
【0043】
図示例では、大径円形管41の外面にフランジ部41Aを高さ方向に間隔をあけて一対設け、これらフランジ部41Aにより小径円形管42,42…を大径円形管41の周囲に結束固定している。また環状噴射ノズル43の外周面には、エア吹出口43Cおよび弛緩水吐出口43Dが高さ位置を異ならせて別々に形成されており、エア流入口43Aがエア吹出口43Cに及び弛緩水流入口43Bが弛緩水吐出口43Dにそれぞれ連通している。また、図示しないが弛緩水流入口43Bと連通する小径円形管42,42には前述の高圧泥水ポンプ21が、中心の大径円形管41に対しては自硬性改良材の供給ポンプ20(図1参照)が接続される。
【0044】
かくして、小径円形管の一部42,42が弛緩水の供給に用いられ、残部42,42は圧縮空気の供給に用いられ、大径円形管41は自硬性改良材の供給路として又は削孔水の供給路として用いられる。このように、弛緩水供給路用として専用の円形管42,42を別途設けることにより、超高圧での弛緩水供給に対応させることができる。
【0045】
<第3の実施形態:請求項7および8記載の発明に関する>
他方前述のように、本発明者らは、特願平3−234322号および特願平3−234323号において、噴射ノズルを有する張出噴射部を設けた噴射管により地盤の改良または強化を行う工法について提案したが、これらは噴射管の外側に地上から拡出用外管を押し込むことによって張出噴射部を拡出させるものであるため、作業性に難があった。
【0046】
そこで、新たに図7〜10に示す噴射管50も提案する。この噴射管50は、中心管51の先端部に少なくとも拡径噴出状態において管51外側に突出する張出噴射部として拡縮リンク機構羽根52が設けられ、この拡縮リンク機構羽根52の先端等の適所に高圧水を噴射する噴射ノズル(図示せず)が設けられ、さらに噴射管50の噴射ノズルより先端および中間の適所に自硬性改良材の注出口53が形成され、拡縮リンク機構羽根52は流体圧シリンダ54に接続されるとともに当該流体圧シリンダ54を地上から操作することによって噴射管50の軸心に沿う折り畳み位置と外方に突出する位置との間で拡縮するように構成されたものである。
【0047】
特に本例の流体圧シリンダ54は、図7および図9に詳しく示すように、拡縮リンク機構羽根52よりも基端側において、中心管51の先端側肉厚部分51A外面を隙間Sをもって取り囲むように短管54Aを配し、当該隙間Sの上下開口を蓋部材54B,54Bおよびシールリング54C,54Cによりそれぞれ気密に塞ぎ、中心管先端側肉厚部分51Aの長手方向に進退自在のシリンダケース部54Dを形成するとともに、当該隙間S内における中心管先端側肉厚部分51Aの外面に環状張出隔壁51Bを設けて、当該隙間Sを上下方向に二分割し、更にその張出隔壁51Bによって隔離形成された上側隙間S1および下側隙間S2に連通する連通路51C,51Dを中心管先端側肉厚部分51Aの管壁内にそれぞれ設けて構成されている。
【0048】
またこれら連通路51C,51Dは、例えば前述第2の実施形態と同様の小径円形管42,42からなる流体供給路を介して流体供給ポンプ(図示せず)に接続される。この場合、図8に示すように、小径円形管42,42…は少なくとも四本設けられ、そのうちの二本が流体供給用とされ、一本が弛緩液供給用とされ、残りの一本がエア供給用とされている。
【0049】
したがって例えば、連通路51Dを介して下側隙間S2に対して流体(例:水、油、エア)を所定圧で供給すれば、シリンダケース部54Dを中心管51に対して前進(下降)させることができ、逆に連通路51Cを介して上側隙間S1に対して流体を所定圧で供給すれば、シリンダケース部54Dを中心管51に対して後進(上昇)させることができる。なお、流体圧シリンダ54としては、駆動流体として油を用いるものが汎用されており好適であるように考えられがちであるが、本発明のように地盤中に挿入される場合には、水圧を利用して駆動する水圧シリンダとする方が、メンテナンスが非常に簡易となる等の利点があるため好ましい。
【0050】
図示例においては、かかる流体圧シリンダ54のシリンダケース部54Dと拡縮リンク機構羽根52の駆動力入力部とが接続され、シリンダケース部54Dの前進・後進によって拡縮リンク機構羽根52がそれぞれ拡出・収縮するようになっている。
【0051】
かくして、たとえば噴射管50を地盤中に挿入する時には所定深さまでは拡縮リンク機構羽根52を拡出させないでおくことで、円滑な挿入を可能とするとともに、所定の深さに達した時点で始めて図10に示すように拡縮リンク機構羽根52を拡出させ、その噴射ノズルから弛緩用液を中心から外方に向けて噴射して対象地盤の弛緩を行うことができる。
【0052】
なお上記例では、特願平3−234322号と同様に、噴射ノズルが改良軸心に対して外方に向けて高圧水を噴射する形態を採用しているが、特願平3−234323号と同様に、張出噴射部またはこれより下方の噴射管に噴射ノズルを設け、少なくとも張出噴射部の突出長さ分の地盤領域をカバーして高圧水を噴射するように構成することもできる(図示せず)。
【0053】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、簡易、確実かつ現実的な地上排泥処理が可能となる。また、超高圧での弛緩水供給が可能となる。さらに、張出噴射部の拡縮作業の簡易化および確実化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
第1の実施形態を示した工程概要図である。
【図2】
図1の要部を拡大して示した一部断面図である。
【図3】
他の噴射管構造を示した要部拡大縦断面図である。
【図4】
第2の実施形態の噴射管を、図5のIV-IV断面線に沿って一部断面で示した縦断面図である。
【図5】
第2の実施形態の噴射管の横断面図である。
【図6】
第2の実施形態の噴射管を用いた施工状態概要図である。
【図7】
第3の実施形態の噴射管を示す、一部縦断面正面図である。
【図8】
第3の実施形態の噴射管の横断面図である。
【図9】
図7の要部拡大図である。
【図10】
第3の実施形態の噴射管を用いた施工状態概要図である。
【図11】
従来の噴射管を示す概要図である。
【図12】
従来の噴射管の拡径噴出状態を示す概要図である。
【符号の説明】
1…噴射管、10…泥土ピット、11…排泥、12…振動ふるい、13…解泥槽、14…分離剤混練装置、15…調泥槽、16…貯液槽、17…アジテータ、18…定量ポンプ、19…混練装置、20…自硬性改良剤供給ポンプ、21…高圧泥水ポンプ、41…大径円形管、42…小径円形管、52…拡縮リンク機構羽根、54…流体圧シリンダ、W…水、G…改良材、S…弛緩部分。
【発明の名称】地盤の改良または強化工法
【特許請求の範囲】
【請求項1】地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する一方で、
前記排出泥土を調泥槽に貯留して沈降分離により上澄液と濃縮泥土とに分離した後、前記上澄液を取り出して貯液槽に供給し、前記調泥槽中の貯留物が所定の含水比になったならば前記上澄液の取り出しを停止させるとともに、前記調泥槽中の貯留物を取り出して自硬性材料と混練しこの混練物を前記自硬性改良材として再利用し、
前記貯液槽に取り出した上澄み液は、そのまま又は水を添加して前記地盤の弛緩用の液として再利用する、ことを特徴とする地盤の改良または強化工法。
【請求項2】前記調泥槽貯留物の体積および質量を測定する計測手段を設け、これら計測結果に基づいて前記調泥槽貯留物が所定の含水比になったことを検知または判断する、請求項1記載の地盤の改良または強化工法。
【請求項3】前記排出泥土を、砂礫分の分離除去処理および解泥処理の少なくとも一方を行った後に、前記調泥槽へ供給する、請求項1または2記載の地盤の改良または強化工法。
【請求項4】前記泥土の沈降分離に先立って、沈降分離を促進させる分離剤を泥土に添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤の改良または強化工法。
【請求項5】地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する方法において、
前記噴射管は、大径円形管を中心としてその周囲に一つまたは複数の小径円形管を並設してなり、前記大径円形管を前記地盤弛緩後の前記自硬性改良材の供給に用い、前記小径円形管を前記地盤の弛緩用液の供給に用いることを特徴とする、地盤の改良または強化工法。
【請求項6】前記小径円形管は複数とされ、その一部を前記地盤の弛緩用液の供給に用い、残部を前記弛緩用液による地盤の切削能力向上および泥土の地上へのエアリフトを行う圧縮空気の供給に用いる、請求項5に記載の地盤の改良または強化工法。
【請求項7】地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する方法において、
前記噴射管の先端部に少なくとも拡径噴出状態において管外側に突出する張出噴射部が設けられ、この張出噴射部に高圧水を噴射する噴射ノズルが設けられ、さらに噴射管の前記噴射ノズルより先端側に前記自硬性改良材の注出口が形成され、前記張出噴射部は流体圧シリンダに接続されるとともに当該流体圧シリンダを地上から操作することによって噴射管の軸心に沿う折り畳み位置と外方に突出する位置との間で拡縮するように構成されており、
前記噴射管を地盤中に挿入する時には前記張出噴射部を折り畳み収縮状態とし、前記噴射ノズルから弛緩用液を噴射して対象地盤を緩める時には前記張出噴射部を外方に突出させることを特徴とする、地盤の改良または強化工法。
【請求項8】前記流体圧シリンダが水圧を利用して駆動する水圧シリンダとされた、請求項7記載の地盤の改良または強化工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、軟弱地盤の改良または強化工法に係り、特に一旦緩ませた地盤中に粘度の高いセメント系などの自硬性材料をいわば押し込むように圧入することにより改良を図る工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の地盤改良工法としては、種々のものが知られている。その代表例は、薬液注入工法である。この工法は、周知のように、地盤中に挿入した注入管により低圧で薬液を注入するものである。また、この場合、地盤を乱すことなく、薬液を浸透圧入させることを基本思想としている。
【0003】
他方で、近年、いわゆるジェットグラウト工法に代表される高圧噴射工法が多く用いられるようになってきた。この高圧噴射工法は、地盤をグラウトまたは水のもつ高圧力により乱しながら同時に地盤中にグラウトを注入するものである。この高圧噴射工法は、極端にいえば地盤の攪拌工法とも言える。
【0004】
しかし、第1の薬液圧入工法では、浸透圧入を行うために、粘度の低い材料、主として水ガラス系の材料を用いるので、改良強度は低いとともに、耐久性に乏しい。さらに、改良強度が低い理由は、地盤を改良材により置換するのではなく浸透注入または割裂注入することをもって良しとするので、単位容積当たりの改良材の占める割合が低く不均一なことにも起因している。
【0005】
さらに問題点を付言すれば、通常砂質土層の場合には、浸透注入を行うことができるが、注入条件のわずかな差異により割裂注入の形態となり、浸透注入を行うことができないことが多々ある。他方、粘性土層に注入する場合、割裂注入となり、改良材が逸走することが多い。このために、目的の領域のみを確実に改良することが困難であり、しかも逸走に伴う材料ロスが多い。また、目的の改良径は均一にできず、トリー状(樹木状あるいは脈状)になることが多い。
【0006】
第2の高圧噴射工法では、地盤を極端に乱し、かつスライム(泥水)処理に多大な手間と費用を要する。さらに、切削および注入を均一に行おうとすれば、改良速度を低下させる必要があり、時間がかかる工法である。しかも、砂質地盤に対しては、強度として3MPa 以上、粘性地盤の場合には1MPa以上を目標にするが、地盤性状による強度のばらつきおよび改良体の位置による強度のばらつきが極めて大きいことが問題である。特に、粘性土地盤の場合、切削不十分なことによる土塊の抱き込みによるばらつきが大きい。
【0007】
そこで、本発明者らは、先の特願平3−129473号として、地盤中に挿入した噴射管の先端部外周面に設けた高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射して対象地盤を緩めながら、または緩めた後、緩んだ地盤中に硬練りの自硬性材料を圧入し弛緩泥土を置換充填して改良体を造成する工法を提案した。この工法によれば、従来廃棄するしかなかった排泥を圧入用自硬性材料の一部として混練し、改良部分に戻すことにより、廃土抑制を図ることができるだけでなく、信頼性の高い改良体を造成できるようになる利点がある。
【0008】
また、本発明者らは、特願平3−234322号として、先端部に少なくとも拡径噴出状態において管外側に突出する張出噴射部を設け、この張出噴射部に改良軸心に対して外方に向けて高圧水を噴射する噴射ノズルを設け、さらに噴射管の噴射ノズルより先端側に圧入用自硬性材料の注出口を形成した噴射管を用いて、地盤の弛緩径または改良径を大きくする技術や、特願平3−234323号として、噴射管の先端部に少なくとも拡径噴出状態において管外側に突出する張出噴射部を設け、この張出噴射部またはこれより下方の噴射管に、少なくとも張出噴射部の突出長さ分の地盤領域をカバーして高圧水を噴射する噴射ノズルを設け、さらに最下部噴射ノズルより先端側に自硬性材料の注出口を形成し、各噴射ノズルからの高圧水の到達距離は短いとしても、軸心を基準とした到達距離は長くでき、もって圧力を高くしまたはノズル径を小さくしなくとも、さらに吐出流量を増大させなくとも、少なくとも張出噴射部の突出長さ領域分は、確実に地盤を弛緩させることができる技術を提案し、さらにこれらの付加的機能として、図11および図12に示すように張出噴射部100を拡縮自在とする技術も提案した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる先行技術に関し、現実的な地上設備を設計したところ設備構成が複雑であり、作業が煩雑となる等の問題点が見出され、普及するまでには至っていない。
【0010】
また先行技術においては、噴射管として多重管たとえば二重管を用い、内管内を自硬性材料流通路とし、内管外面と外管内面との断面環状の隙間を弛緩用液の供給路とすることを提案したが、弛緩径を増大させるべく弛緩水を超高圧(約40MPa)で供給すると内管が押し潰されるおそれがあった。そのため、従来は管の肉厚を増大させることにより対処していたが、噴射管が重くなる等の問題点があった。
【0011】
さらに、張出噴射部を拡縮させる技術においては、前述図11および図12にそれぞれ収縮状態および拡出状態を示すように、噴射管101の外側に地上から拡出用外管102を押し込むことによって張出噴射部100を拡出させる例を提案しているが、作業性に難があった。
【0012】
したがって、本発明の主たる課題は、簡易、確実かつ現実的な地上排泥処理を可能とすること、超高圧での弛緩水供給を可能とすること、および張出噴射部の拡縮作業の簡易化および確実化を図ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明のうち、請求項1記載の発明は、地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する一方で、
前記排出泥土を調泥槽に貯留して沈降分離により上澄液と濃縮泥土とに分離した後、前記上澄液を取り出して貯液槽に供給し、前記調泥槽中の貯留物が所定の含水比になったならば前記上澄液の取り出しを停止させるとともに、前記調泥槽中の貯留物を取り出して自硬性材料と混練しこの混練物を前記自硬性改良材として再利用し、
前記貯液槽に取り出した上澄み液は、そのまま又は水を添加して前記地盤の弛緩用の液として再利用する、ことを特徴とする地盤の改良または強化工法である。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記調泥槽貯留物の体積および質量を測定する計測手段を設け、これら計測結果に基づいて前記調泥槽貯留物が所定の含水比になったことを検知または判断する、請求項1記載の地盤の改良または強化工法である。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記排出泥土を、砂礫分の分離除去処理および解泥処理の少なくとも一方を行った後に、前記調泥槽へ供給する、請求項1または2記載の地盤の改良または強化工法である。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記泥土の沈降分離に先立って、沈降分離を促進させる分離剤を泥土に添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の地盤の改良または強化工法である。
【0017】
請求項5記載の発明は、地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する方法において、
前記噴射管は、大径円形管を中心としてその周囲に一つまたは複数の小径円形管を並設してなり、前記大径円形管を前記地盤弛緩後の前記自硬性改良材の供給に用い、前記小径円形管を前記地盤の弛緩用液の供給に用いることを特徴とする、地盤の改良または強化工法である。
【0018】
請求項6記載の発明は、前記小径円形管は複数とされ、その一部を前記地盤の弛緩用液の供給に用い、残部を前記弛緩用液による地盤の切削能力向上および泥土の地上へのエアリフトを行う圧縮空気の供給に用いる、請求項5に記載の地盤の改良または強化工法である。
【0019】
請求項7記載の発明は、地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた噴射ノズルから高圧水または高圧水と圧縮空気とを噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに前記自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する方法において、
前記噴射管の先端部に少なくとも拡径噴出状態において管外側に突出する張出噴射部が設けられ、この張出噴射部に高圧水を噴射する噴射ノズルが設けられ、さらに噴射管の前記噴射ノズルより先端側に前記自硬性改良材の注出口が形成され、前記張出噴射部は流体圧シリンダに接続されるとともに当該流体圧シリンダを地上から操作することによって噴射管の軸心に沿う折り畳み位置と外方に突出する位置との間で拡縮するように構成されており、
前記噴射管を地盤中に挿入する時には前記張出噴射部を折り畳み収縮状態とし、前記噴射ノズルから弛緩用液を噴射して対象地盤を緩める時には前記張出噴射部を外方に突出させることを特徴とする、地盤の改良または強化工法である。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記流体圧シリンダが水圧を利用して駆動する水圧シリンダとされた、請求項7記載の地盤の改良または強化工法である。
【0021】
<作用>
本発明は、「一旦地盤を緩めた後、その緩んだ泥土部分に高粘性の自硬性材料を圧入することによって、自硬性材料により弛緩部分が置換され(すなわち圧入した自硬性材料が当該部位に残るとともに弛緩泥土が噴射管周囲を通り地上に排出され)、非常に高品質(理想的な配合、緻密)な改良体が造成される」との知見に基礎を置いている。
【0022】
本発明にしたがって高圧水を噴射すると、対象地盤を緩めることができる。地盤の弛緩は、主に大きな土粒子とこれらの土粒子間を繋いでいるその周りの細かい土粒子との接合が分断されることにより行われる。また、この分断により空隙部分の割合が多くなり、続く改良材の圧入の道が形成される。
【0023】
この緩んだ対象地盤に対して、スランプ値が小さい改良材(自硬性材料)を圧入すると、地盤の緩んだ部分に改良材が押し込まれるように圧入される。この圧入により、緩んだ地盤を押し広げるように改良材が注入される。このとき、改良材のスランプ値が小さいので、改良材の逸走が防止されるとともに、緩んだ地盤部分が改良材により置換され、あたかもその地盤部分が改良材により充填されるようになる。よって、予め定めた配合のままの改良体が造成されることになる。また、改良材の押し込み圧力により、地盤部分が圧密されるとともに、軟弱な部分には多くの改良材が圧入される一方で、強度の高い部分に対しては、地盤の緩み度合いが少ないので、改良材の圧入量が少なく圧入され、もって全体としては均一な強度をもったかつ均一な改良径の改良体が造成される。
【0024】
他方で、前述のとおり本発明においては地盤を緩めるのに高圧水を用いるので、排出泥土は、高圧噴射工法にみられるようにセメントと土粒子との混合スライムでなく、水と土粒子との混合物となる。この点、高圧噴射工法に比べて排泥処理が容易となる利点がある。そして、本発明の主要ポイントはこの地上排泥処理にある。
【0025】
すなわち、本発明においては、排泥を調泥槽に貯留して沈降分離により上澄液と濃縮泥土とに分離した後、調泥槽中の貯留物の含水比を監視しながら上澄液を取り出して貯液槽に供給し、調泥槽中の貯留物が所定の含水比になったならば上澄液の取り出しを停止させるとともに、調泥槽中の貯留物を取り出して自硬性材料と混練しこの混練物を圧入用の自硬性改良材として供給し再利用し、貯液槽に取り出した上澄み液は、そのまま又は水を添加して地盤の弛緩用の液として供給し再利用する。したがって、簡易な方法で正確に自硬性改良材の配合管理ができ、理想的な配合の改良体を造成できるようになる。
【0026】
また、超高圧での弛緩水供給を可能とするとの課題は、請求項5記載のように、自硬性改良材の大径円形管の外側に、弛緩水供給専用として一つまたは複数の小径円形管を別途並設し、十分な強度を確保することにより解決される。
【0027】
さらに、張出噴射部の拡縮作業の簡易化および確実化を図るとの課題は、請求項7記載のように、張出噴射部の拡縮を流体圧シリンダにより行うように構成することで解決される。また、特に水圧シリンダを用いることで、油圧シリンダを用いる場合と比べてメンテナンスが容易となる利点がもたらされる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳説する。
<第1の実施形態;請求項1〜4記載の発明に関する>
図1および図2は、第1の実施形態を示しており、内管1Aと外管1Bとを有する同心2重管からなる噴射管1を用い、まずその噴射管1に回転力と押し込み力を作用させつつその先端の切削ビット2により地盤を切削しながら、所定深度まで噴射管1を地盤中に挿入する。図中1Cはスイベルを示している。
【0029】
次にこの噴射管1を回転しながら引き上げる過程で、先端より所定距離基部側の周壁に設けた噴射ノズル3から高圧水を噴射し、地盤の対象域を緩める。同時に先端に開口する注出口4から、スランプ値(JIS A 1101)が好ましくは10以上の高粘性地盤改良材Gを圧入する。かかる高粘性の地盤改良材Gが噴射管1先端から圧入されると、これに先立って形成された弛緩泥土Sは押し上げられ順次地上部に排出されるとともに、順次弛緩泥土部分Sが地盤改良材Gにより置換され、柱状の改良体が造成される。
【0030】
なお本例のように、2重管または複流路管を用いる場合、噴射管1を挿入させる過程で又は挿入過程および引上げ過程の両方において高圧水を噴射して地盤を緩めることもできる。また図示しないが、高圧水等を噴射する噴射管と地盤改良材Gを圧入する圧入管とを別々に用意しておき、先ず対象地盤に噴射管を挿入して深さ方向全体の弛緩を完了させ、次にこの噴射管を引き抜いた後にこれとは別の圧入管を挿入して改良材の圧入を行うようにすることも可能である。
【0031】
本発明において、高圧水の圧力としては、通常圧入管近傍にまたは注入ポンプの出側に設けられるゲージの圧力をいう。この圧力としては8〜40MPa、特に10MPa以上とすることが好ましい。噴射水量としては、5〜15リットル/分が望ましい。
【0032】
本発明ではかかる改良が行われる一方で、図1に示すように、地上部に順次排出される泥土を上澄液と濃縮泥土とに分離し、上澄液は弛緩用液の一部または全部として再利用し、濃縮泥土は改良材の一部として改良部分に戻す。すなわち、先ず、噴射管1の挿入孔の口元近傍に泥土ピット10を設け、改良材Gによる置換に伴って、高圧噴射管1と孔壁との間を上昇した泥土11を泥土ピット10へ自動的に流入させる。
【0033】
泥土ピット10内の排泥11はポンプ10P(バックホウでも可)により汲み上げ、振動ふるい12等の分離装置に供給して砂礫分を分離除去した後、解泥槽13へ供給し土塊を解きほぐす。なお、泥土ピット10の容積が十分に大きければ、砂礫分や土塊等の粗粒分はピット内で沈降分離されることになるので、かかる砂礫分の分離除去ならびに解泥を省略して、次述の分離剤混練機14または調泥槽15へ直接供給することができる。
【0034】
本例では、解泥槽13において解泥された泥土はポンプ13Pにより分離剤混練機14に供給され、分離剤混練機14おいて分離剤が添加混合された後、調泥槽15へ供給される。分離剤の添加は、細粒分が多い等、調泥槽15における沈降分離が困難な場合に有効であるが、そうでない場合等においては省略することも可能である。
【0035】
調泥槽15に供給した泥土は所定時間(数分程度)静置され沈降分離により上澄液と濃縮泥土とに分離される。しかる後、本発明では調泥槽15中の貯留物の密度または含水比を監視しながら上澄液を取り出して貯液槽16に供給し、調泥槽15中の貯留物が所定の含水比になったならば上澄液の取り出しを停止させる。
【0036】
監視に際しては、例えば調泥槽15に貯留物の体積を計測するための水位計(図示せず)および貯留物の質量を測定するためのロードセル15Aを設けておき、各計測結果に基づきコンピュータ等により貯留物密度を求める。貯留物密度は含水比と一定の相関があるので、これを含水比の指標として監視するか、あるいは、土粒子の比重を予め計測等しておき、これと、貯留物体積および貯留物密度より求まる比重とに基づいて貯留物の含水比を求め、これを監視する。
【0037】
その結果、所定の含水比となったならば、上澄液の取り出しを停止させるとともに貯留泥土をアジテータ槽17に投入し、そこから定量ポンプ18によって改良材混練機19に供給する。改良材混練機19に供給された泥土は別途供給される自硬性材料と混練され、この混練物がコンクリートポンプ等の圧入ポンプ20により自硬性改良材Gとして噴射管1に供給され再利用される。かくして簡易な方法で正確に自硬性改良材の配合管理ができ。またかかる排泥の再利用によって、その利用量に応じて排泥処分量が低減される。なお、泥土と混練する自硬性材料としては、セメントモルタル系、セメント粘土系、石灰系などの各種のものを用いることができる。このうち最も好ましいのはセメントモルタル系のもので、これに微粒子スラグ、ベントナイトなどの他の無機材料、発泡剤、気泡剤、分離防止剤、減水剤などの各種添加剤などを添加することができる。さらに、水ガラスやその硬化剤をある割合で添加することもできる。
【0038】
一方、貯液槽16に取り出した上澄み液は、そのまま又は水を添加してから高圧泥水ポンプ21により地盤弛緩用液として噴射管1へ供給され再利用される。なお、上澄液を切削用に利用すると、小さな粒子分を含んでいるので、切削性が良好となる利点がある。また、濃縮泥土を再利用すると、泥水処理がその分低減する。
【0039】
ところで、本例のように噴射および圧入の両機能をもった単一の噴射管1を用いると、施工性に優れる利点がある。この場合、外管1Bと内管1Aとの隙間を地盤弛緩用の液の供給に用い、内管1A内を改良材Gの供給とともに、それに先立つ穿孔時においては、削孔水の供給にも用いることができる。
【0040】
また、たとえば図3に示すような三重管30を用いることもできる。この三重管30は外管31、中管32および内管33を有し、外壁に噴射ノズル34を取付け、その周囲にエアAの環状吐出口35を形成したものである。狭い環状吐出口35から圧縮または高圧たとえば0.5MPa以上のエアAを吐出させると、泥土11はエアリフト効果により円滑に地上に排出されるとともに、地盤の切削能力が高まる。
【0041】
<第2の実施形態:請求項5、6記載の発明に関する>
上記第1の実施形態で例示した多重管構造の噴射管、例えば二重管噴射管1は、内管1Aの外面と外管1Bの内面との隙間を弛緩水の供給路とするものであるが、弛緩径を増大させるべく前述の泥水ポンプ21として近年開発された超高圧泥水ポンプを用いることを検討すると、内管1A外面に加わる圧が非常に高くなるため、内管1Aが押し潰されることが想定された。
【0042】
そこで、かかる超高圧の弛緩水供給をする場合においては、図4〜6に示す噴射管40を用いることを推奨する。この噴射管40は、大径円形管41を中心としてその周囲に必要数の小径円形管42,42…を例えば相互間隔を均等にしてバランス良く束ねて配し、これら小径円形管42,42…の先端は、大径円形管41における先端より所定距離基部側外面に設けた環状噴射ノズル43上部のエア流入口43Aおよび弛緩水流入口43Bにそれぞれ接続してなるものである。
【0043】
図示例では、大径円形管41の外面にフランジ部41Aを高さ方向に間隔をあけて一対設け、これらフランジ部41Aにより小径円形管42,42…を大径円形管41の周囲に結束固定している。また環状噴射ノズル43の外周面には、エア吹出口43Cおよび弛緩水吐出口43Dが高さ位置を異ならせて別々に形成されており、エア流入口43Aがエア吹出口43Cに及び弛緩水流入口43Bが弛緩水吐出口43Dにそれぞれ連通している。また、図示しないが弛緩水流入口43Bと連通する小径円形管42,42には前述の高圧泥水ポンプ21が、中心の大径円形管41に対しては自硬性改良材の供給ポンプ20(図1参照)が接続される。
【0044】
かくして、小径円形管の一部42,42が弛緩水の供給に用いられ、残部42,42は圧縮空気の供給に用いられ、大径円形管41は自硬性改良材の供給路として又は削孔水の供給路として用いられる。このように、弛緩水供給路用として専用の円形管42,42を別途設けることにより、超高圧での弛緩水供給に対応させることができる。
【0045】
<第3の実施形態:請求項7および8記載の発明に関する>
他方前述のように、本発明者らは、特願平3−234322号および特願平3−234323号において、噴射ノズルを有する張出噴射部を設けた噴射管により地盤の改良または強化を行う工法について提案したが、これらは噴射管の外側に地上から拡出用外管を押し込むことによって張出噴射部を拡出させるものであるため、作業性に難があった。
【0046】
そこで、新たに図7〜10に示す噴射管50も提案する。この噴射管50は、中心管51の先端部に少なくとも拡径噴出状態において管51外側に突出する張出噴射部として拡縮リンク機構羽根52が設けられ、この拡縮リンク機構羽根52の先端等の適所に高圧水を噴射する噴射ノズル(図示せず)が設けられ、さらに噴射管50の噴射ノズルより先端および中間の適所に自硬性改良材の注出口53が形成され、拡縮リンク機構羽根52は流体圧シリンダ54に接続されるとともに当該流体圧シリンダ54を地上から操作することによって噴射管50の軸心に沿う折り畳み位置と外方に突出する位置との間で拡縮するように構成されたものである。
【0047】
特に本例の流体圧シリンダ54は、図7および図9に詳しく示すように、拡縮リンク機構羽根52よりも基端側において、中心管51の先端側肉厚部分51A外面を隙間Sをもって取り囲むように短管54Aを配し、当該隙間Sの上下開口を蓋部材54B,54Bおよびシールリング54C,54Cによりそれぞれ気密に塞ぎ、中心管先端側肉厚部分51Aの長手方向に進退自在のシリンダケース部54Dを形成するとともに、当該隙間S内における中心管先端側肉厚部分51Aの外面に環状張出隔壁51Bを設けて、当該隙間Sを上下方向に二分割し、更にその張出隔壁51Bによって隔離形成された上側隙間S1および下側隙間S2に連通する連通路51C,51Dを中心管先端側肉厚部分51Aの管壁内にそれぞれ設けて構成されている。
【0048】
またこれら連通路51C,51Dは、例えば前述第2の実施形態と同様の小径円形管42,42からなる流体供給路を介して流体供給ポンプ(図示せず)に接続される。この場合、図8に示すように、小径円形管42,42…は少なくとも四本設けられ、そのうちの二本が流体供給用とされ、一本が弛緩液供給用とされ、残りの一本がエア供給用とされている。
【0049】
したがって例えば、連通路51Dを介して下側隙間S2に対して流体(例:水、油、エア)を所定圧で供給すれば、シリンダケース部54Dを中心管51に対して前進(下降)させることができ、逆に連通路51Cを介して上側隙間S1に対して流体を所定圧で供給すれば、シリンダケース部54Dを中心管51に対して後進(上昇)させることができる。なお、流体圧シリンダ54としては、駆動流体として油を用いるものが汎用されており好適であるように考えられがちであるが、本発明のように地盤中に挿入される場合には、水圧を利用して駆動する水圧シリンダとする方が、メンテナンスが非常に簡易となる等の利点があるため好ましい。
【0050】
図示例においては、かかる流体圧シリンダ54のシリンダケース部54Dと拡縮リンク機構羽根52の駆動力入力部とが接続され、シリンダケース部54Dの前進・後進によって拡縮リンク機構羽根52がそれぞれ拡出・収縮するようになっている。
【0051】
かくして、たとえば噴射管50を地盤中に挿入する時には所定深さまでは拡縮リンク機構羽根52を拡出させないでおくことで、円滑な挿入を可能とするとともに、所定の深さに達した時点で始めて図10に示すように拡縮リンク機構羽根52を拡出させ、その噴射ノズルから弛緩用液を中心から外方に向けて噴射して対象地盤の弛緩を行うことができる。
【0052】
なお上記例では、特願平3−234322号と同様に、噴射ノズルが改良軸心に対して外方に向けて高圧水を噴射する形態を採用しているが、特願平3−234323号と同様に、張出噴射部またはこれより下方の噴射管に噴射ノズルを設け、少なくとも張出噴射部の突出長さ分の地盤領域をカバーして高圧水を噴射するように構成することもできる(図示せず)。
【0053】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、簡易、確実かつ現実的な地上排泥処理が可能となる。また、超高圧での弛緩水供給が可能となる。さらに、張出噴射部の拡縮作業の簡易化および確実化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
第1の実施形態を示した工程概要図である。
【図2】
図1の要部を拡大して示した一部断面図である。
【図3】
他の噴射管構造を示した要部拡大縦断面図である。
【図4】
第2の実施形態の噴射管を、図5のIV-IV断面線に沿って一部断面で示した縦断面図である。
【図5】
第2の実施形態の噴射管の横断面図である。
【図6】
第2の実施形態の噴射管を用いた施工状態概要図である。
【図7】
第3の実施形態の噴射管を示す、一部縦断面正面図である。
【図8】
第3の実施形態の噴射管の横断面図である。
【図9】
図7の要部拡大図である。
【図10】
第3の実施形態の噴射管を用いた施工状態概要図である。
【図11】
従来の噴射管を示す概要図である。
【図12】
従来の噴射管の拡径噴出状態を示す概要図である。
【符号の説明】
1…噴射管、10…泥土ピット、11…排泥、12…振動ふるい、13…解泥槽、14…分離剤混練装置、15…調泥槽、16…貯液槽、17…アジテータ、18…定量ポンプ、19…混練装置、20…自硬性改良剤供給ポンプ、21…高圧泥水ポンプ、41…大径円形管、42…小径円形管、52…拡縮リンク機構羽根、54…流体圧シリンダ、W…水、G…改良材、S…弛緩部分。
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