JP2001172738A - 溶接性及び母材靭性に優れた高張力鋼板 - Google Patents

溶接性及び母材靭性に優れた高張力鋼板

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JP2001172738A
JP2001172738A JP35660699A JP35660699A JP2001172738A JP 2001172738 A JP2001172738 A JP 2001172738A JP 35660699 A JP35660699 A JP 35660699A JP 35660699 A JP35660699 A JP 35660699A JP 2001172738 A JP2001172738 A JP 2001172738A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶接性(耐低温割れ性及びHAZ靭性)に優
れると共に、良好な母材靭性(特にvE-80≧47J、
好ましくはvE-100≧47J)も兼ね備えた高張力鋼板
を提供する。 【解決手段】 C:0.010〜0.06%,Mn:
1.0〜3.0%,Cr:0.1〜2.0%,Mo:
0.1〜1.5%,B:0.0006〜0.0050
%,Nb:0.010〜0.05%を含有し、下式
(1)で表されるKPがKP≧3.4を満足する高張力
鋼板である。 KP=[Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo] … (1) (式中、[ ]は各元素の含有量(%)を意味する)を
提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶接性(耐低温割
れ性及びHAZ靭性)に優れると共に、良好な母材靭性
(特にvE-80≧47Jレベル、好ましくはvE-100
47Jレベルの高靭性)も兼ね備えた高張力鋼板に関す
る。本発明の高張力鋼板は、特に高度の母材靭性が要求
される海洋構造物等に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】780MPa級以上の高張力鋼板では、
母材強度の確保という観点から合金成分を多量に添加す
る為、小入熱溶接条件では冷却速度が速い為、HAZ
(溶接熱影響部)が硬化して溶接割れ(低温割れ)を生
じ易く、かかる溶接割れの防止を目的として、溶接施工
時に100℃程度の予熱が行う必要がある。従って、こ
の予熱工程を省略できれば施工効率が大きく上昇し、且
つコストダウンにもつながる為、耐低温割れ性に優れた
780MPa級以上の高張力鋼板の提供が切望されてい
る。
【0003】ところで、耐低温割れ性の指標としては下
式で定義されるPcm(%)というパラメーターが用い
られている。 Pcm=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+
[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+
[Mo]/15+[V]/10+5×[B] (式中、[ ]は各元素の含有量を示す)
【0004】そして、従来は上記Pcmを制御すること
により耐低温割れ性を改善すると共に、合金成分の含有
量制限に伴う母材強度低下を、製造方法を改良する等し
て補っていた。これにより、780MPa級以上の高張
力鋼板において、母材製造時の焼入れにおける冷却速度
が比較的速い薄物(≦34mm)では予熱フリーを達成
できたが、冷却速度が遅い厚物(≧40mm)では予熱
フリーと母材強度の両立を達成することができなかっ
た。また、Cuの析出を利用して母材強度を確保する方
法も開示されているが、冷却速度が遅い厚物では充分な
母材強度が得られなかった。
【0005】この様に小入熱溶接においてHAZ部は高
温に加熱され、且つ冷却速度が速い為、硬化して低温割
れを起こし易い。一方、母材は板厚が厚くなる程冷却速
度が遅くなる為、圧延後の焼入れで強度が確保し難くな
る。従って、780MPa級以上の高張力鋼板での厚物
では、小入熱溶接時の低温割れを防止する為、冷却速度
が速い場合に硬くならない様にした上で、鋼板製造時の
焼入れ過程において冷却速度が遅い場合に如何に強度を
確保するかが最重要課題となる。
【0006】更に近年、特に海洋構造物等の分野におい
ては、母材靭性の更なる向上が切望されており、母材靭
性vE-80≧47J、vE-100≧47Jといった極めて
高度の靭性を確保すべく検討が進められている。
【0007】一般に母材靭性の改善に当たっては、焼入
れ性を高めることが提案されているが、焼入れ性の増大
は耐割れ性を劣化することが知られている為、好ましい
手段ではない。また、特開平6−240353には引張
強さが780MPa級で、溶接性にも優れた低温靭性の
良好な高張力鋼板が提案されているが、これは、一段目
の加工熱処理で微細な炭化物及び窒化物の分散を有する
ベイナイト組織とすることにより、再加熱の際に微細な
オーステナイト粒を得るもので、これにより母材靭性の
向上を図るものである。ところが上記方法は、圧延後に
2回の加工熱処理からなる操作を1回以上繰返し行った
後、焼戻し処理するものであり、繁雑な製造工程を経な
ければならず、しかも、得られる母材靭性にしても、例
えばvE -80≧47J、vE-100≧47Jレベルといっ
た極めて高度の靭性を確保するまでには至っていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
着目してなされたものであり、その目的は、溶接性(耐
低温割れ性及びHAZ靭性)に優れると共に、良好な母
材靭性(特にvE-80≧47J、好ましくはvE-100
47J)も兼ね備えた高張力鋼板を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し得た本
発明に係る溶接性及び母材靭性に優れた高張力鋼板と
は、C:0.010〜0.06%,Mn:1.0〜3.
0%,Cr:0.1〜2.0%,Mo:0.1〜1.5
%,B:0.0006〜0.0050%,Nb:0.0
10〜0.05%を含有し、下式(1)で表されるKP
がKP≧3.4を満足するものであるところに要旨を有
するものである。 KP=[Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo] … (1) (式中、[ ]は各元素の含有量(%)を意味する)
【0010】本発明において、更にTi:0.03%以
下,Zr:0.05%以下,及びHf:0.10%以下
よりなる群から選択される少なくとも一種を含有し、下
式(2)で表されるKNが−1≦KN≦4.0を満足す
る高張力鋼板や;更にSi:1.0%以下(0%を含ま
ない),Cu:2.0%以下(0%を含む),Ni:6
%以下(0%を含む),V:0.10%以下(0%を含
む),Al:0.20%以下(0%を含む),N:0.
020%以下(0%を含む)に制御された高張力鋼板
や;更にCa:0.0005〜0.005%を含有する
高張力鋼板は、溶接性及び靭性が一層高められるので好
ましい態様である。 KN=([N]/14−[Ti]/48−[Zr]/91−[Hf]/178) ×104 …(2) (式中、[ ]は各元素の含有量(%)を意味する)
【0011】
【発明の実施の形態】前述した通り、490〜590M
Pa級の高張力鋼板では、Pcmの制御により耐低温割
れ性の改善と母材強度の確保を両立させることができた
が、780MPa級以上の高張力鋼板ではPcmによる
成分制御を行ったとしても、特に厚物において両特性の
両立を図ることは困難であった。そこで本発明では成分
設計に当たり、これまで耐低温割れ性の指標とされてき
たPcmではなく、全く別のパラメータにより耐低温割
れ性を制御することができないか鋭意検討した。その結
果、鋼組織を考慮した上式(1)で表されるKPを用
い、更にC量を極低減化し、Bを添加することにより耐
低温割れ性と母材強度とを両立できることが明らかにな
ると共に、一方、極めて高度の母材靭性を確保する為に
は、Nbを所定量添加し、旧γ粒径を微細化することが
有効であることを見出し、本発明を完成したのである。
【0012】まず、本発明における耐低温割れ性の改善
法について説明する。上述した通り、本発明では、Cを
極低Cにすると共に、焼入れ性向上元素であるMn,C
r及びMoを積極的に添加し、当該焼入れ性向上元素よ
って定められるKP値を適切に制御すると共に、更にB
を添加することにより耐低温割れ性の向上を図るもので
ある。これらの成分を適切に添加することにより、ベイ
ナイトのCCT線(図4のCCT線図を参照)が短時間
側且つ低温度側に移動すると共に、フェライトのCCT
線が長時間側に移動する(実線→破線へと移動)。
【0013】従って、従来によれば、高冷却速度ではマ
ルテンサイト、低冷却速度ではフェライトまたは高温ベ
イナイトを生成するために、硬さの冷却速度感受性が大
きく、小入熱溶接時のHAZ部の硬さ低減(耐低温割れ
性の改善)と母材強度の確保が両立できず、予熱フリー
の達成が困難であったが、本発明によれば、高冷却速
度、低冷却速度のいずれにおいても低温ベイナイトを生
成し、硬さの冷却速度感受性が低下し、溶接時のHAZ
部の硬さ低減(耐低温割れ性の改善)と母材強度確保を
両立ならしめたのである。
【0014】尚、上述した耐低温割れ性向上に対するア
プローチは、本発明の出願前に明らかになったものであ
り、これについては既に出願を済ませている(特願平1
0−336268)。この先願発明は、特に780MP
a級以上の高張力鋼板において、大入熱溶接時にHAZ
靭性が劣化し、実際の溶接施工時では入熱制限(5kJ
/mm以下)を行う必要があるという実状に鑑み検討さ
れたものであり、本発明の如く、溶接時におけるHAZ
部の硬さ低減(耐低温割れ性の改善)と母材強度確保の
両立は勿論のこと、大入熱溶接時におけるHAZ靭性を
改善する為には、前述の方法を採用することが有効であ
ることを見出し、出願されたものである。従って、上記
先願発明も本願発明も、共に小入熱溶接時における耐低
温割れ性及びHAZ靭性の向上を目指すものである点で
は一致するが、上記先願発明では、通常入熱溶接時に加
え、更に大入熱溶接時におけるHAZ靭性向上を目的と
して鋭意検討されたものであるのに対し、本発明では、
通常入熱溶接時における優れたHAZ靭性を確保しつ
つ、更にvE-80≧47J、vE-100≧47Jといった
極めて高度の母材靭性を確保する目的で検討されたもの
である点で、両者は相違する。実際のところ、先願発明
ではvE-40の母材靭性を評価しているに過ぎず、本発
明の如くvE-100レベルの苛酷な条件下における母材靭
性の改善については全く考慮していなかった。そして、
本発明によれば、極めて高度の母材靭性を確保する為に
は、更にNbを適切に制御することが有効であることを
見出したところに特徴の一つを有するものであり、先願
発明では開示されていなかった新しい技術的思想が付加
されている点で、本願発明は、先願発明とは異なる発明
であると言える。即ち、本発明は、「小入熱溶接時にお
ける耐低温割れ性及びHAZ靭性の向上」という課題に
対しては、先願発明のアプローチをそのまま踏襲してい
くと共に、本発明独自に提起された「極めて高度の母材
靭性確保」という課題に対しては、新たに見出したNb
添加による旧γ粒径の微細化により達成した次第であ
り、両者は解決すべき課題及び達成手段が異なるもので
ある。
【0015】以下、耐低温割れ性向上に寄与する成分及
びKP値について説明する。
【0016】C:0.010〜0.06% Cは、溶接時におけるHAZ部の耐低温割れ性と母材強
度確保を両立させる為に必要な元素である。Cが0.0
6%を超えると高冷却速度側で低温ベイナイトではなく
マルテンサイトが生成する様になり、耐低温割れ性が改
善されない。好ましくは0.055%以下である。尚、
0.010%未満では必要最小限の母材強度が得られな
い。好ましくは0.030%以上である。
【0017】Mn:1.0〜3.0% Cr:0.1〜2.0% Mo:0.1〜1.5% これらの元素は焼入れ性を改善する作用を有し、高冷却
速度〜低冷却速度で低温ベイナイトを生成し易くすると
共に、前述の通り、極低Cとし、同時に所定のB量を添
加することにより溶接時におけるHAZ部の耐低温割れ
性と母材強度の確保を両立させることができる点で有用
である。
【0018】まず、Mn,Cr及びMoの含有量は、夫
々1.0%以上,0.1%以上,0.1%以上であるこ
とが必要である。これらの含有量に満たないと所望の焼
入れ性改善作用が発揮されず、母材強度が不足する。好
ましくはMn:1.25%以上,Cr:0.3%以上、
Mo:0.3%以上である。但し、Mn,Cr及びMo
の含有量が、夫々3.0%,2.0%,1.5%を超え
ると母材の靭性が低下する。好ましくはMn:2.5%
以下,Cr:1.5%以下、Mo:1.3%以下であ
る。
【0019】更に、これらの元素で定められるKP値は
3.4以上であることが必要である。KP値が3.4未
満では、上記作用を有効に発揮させることができず、高
温ベイナイトまたはフェライトが生成する様になり、7
80MPa以上の母材強度が得られなくなる(後記する
図1を参照)。KP値は大きい程良く、好ましくは4.
0以上である。尚、その上限は、Mn,Cr,Moの各
添加量の上限に基づいて定められる範囲であれば特に制
限されないが、母材靭性等を考慮すれば7以下、より好
ましくは6以下に制御することが推奨される。
【0020】B:0.0006〜0.0050% Bは焼入れ性改善元素で、低冷却速度で低温ベイナイト
を生成させ易くすると共に、前述の通り、極低Cとし、
同時に適量のMn,Cr,Moを添加することにより熱
溶接時におけるHAZ部の耐低温割れ性と母材強度確保
を両立させることができる点で有用である。Bが0.0
006%未満では、焼入れ性改善効果が期待できず、母
材強度が不足してしまう。好ましくは0.0007%以
上である。但し、Bが0.0050%を超えると、かえ
って焼入れ性が低下し、母材強度が不足する。好ましく
は0.0030%以下である。
【0021】以上が、主に耐低温割れ性等の溶接性向上
に寄与する成分及び要件である。そして、本発明のもう
一つの課題である極めて高度の母材靭性を得る為には、
Nbを0.010〜0.05%の範囲で添加することが
必要であり、これによりvE -80≧47J、好ましくは
vE-100≧47Jという極めて高レベルの母材靭性が達
成されるのである。
【0022】Nb添加により極めて優れた母材靭性が得
られるのは、Nb添加によりγ粒径が微細化され、変態
後のベイナイトブロックサイズが微細化されることに起
因するものと考えられる。尚、490〜590MPa級
の高張力鋼板では、γ粒の微細化による母材靭性の改善
が一般に行われているが、これは、フェライト組織が主
体である鋼板において有用な方法であり、780MPa
級の高張力鋼板では、ベイナイト組織及びマルテンサイ
ト組織が主体となる為、γ粒径を微細化した場合は焼入
れ性が劣化し、むしろ母材靭性が劣化すると考えられて
いた。これに対し、本発明では前述の如く低C及びKP
値の制御による高焼入れ性を確保し、これがNb添加に
よるγ粒微細化作用と相俟って、結果的に高度の母材靭
性を達成できたものと思料される。この様なNb添加に
よる靭性向上作用を有効に発揮させる為には0.010
%以上の添加が必要である。好ましくは0.020%以
上、より好ましくは0.030%超である。但し、Nb
の添加量が0.05%を超えるとHAZ靭性等が低下す
る。好ましくは0.040%以下である。
【0023】以上が本発明の課題を解決する為に不可欠
な要素・成分であり、残部:鉄及び本発明の作用を損な
わない許容成分である。
【0024】尚、本発明では、更に一層優れた特性の付
与を目指して、Ti:0.03%以下,Zr:0.05
%以下,及びHf:0.10%以下よりなる群から選択
される少なくとも一種を含有し、上式(2)で表される
KNが−1≦KN≦4.0を満足する様制御することが
推奨される。
【0025】上記Ti,Zr,Hfの元素は、不純物と
して含まれるNを固定する作用を有し、溶接時における
HAZ部でNが固溶Bと結合し、Bが消費されてB添加
による作用が損なわれるのを防止する作用もある。更
に、Ti等の窒化物は溶接時におけるHAZ部のγ粒を
微細化し、HAZ靭性改善にも寄与する。かかる観点か
ら、これらの元素は鋼中のN含有量に応じ、必要があれ
ば積極的に添加することが推奨される。その場合、上記
元素のうちTiは必ず含まれる様に添加し、他の元素
(Zr,Hf)は必要に応じてTiと共に添加すること
が好ましい。具体的には、Ti:0.03%,Zr:
0.05%,Hf:0.10%を超えると母材の靭性が
劣化するので、これ以下に制御することが推奨される。
【0026】更に上記元素を添加する場合には、上式
(2)で定義されるKN値が−1〜4.0であることが
好ましい。例えばN量が多いにもかかわらず上記元素の
添加量が少ない為、KN値が4.0を超えるときには、
B添加による作用が有効に発揮されず、HAZ靭性が低
下する(後記する図2を参照)。一方、上記元素の添加
量が多すぎてKNが−1未満になると、母材の靭性が劣
化する。より好ましくは0.0以上、3.0以下であ
る。
【0027】更に本発明では、一層優れた溶接性・母材
靭性の向上を目指して、下記元素を積極的に添加するこ
とが推奨される。
【0028】Si:1.0%以下 Siは脱酸剤として有用な元素であり、この様な作用を
有効に発揮させる為には、0.05%以上添加すること
が好ましい。但し、1.0%を超えて添加すると溶接性
及び母材靭性が低下するので、その上限を1.0%とす
ることが好ましい。より好ましくは0.50%以下であ
る。
【0029】Cu:2.0%以下 Cuは固溶強化及び析出強化により母材強度を向上させ
ると共に、焼入れ性向上作用も有する元素である。但
し、2.0%を超えて添加するとHAZ靭性が低下する
為、その上限を2.0%とすることが好ましい。より好
ましくは1.5%以下である。
【0030】Ni:6%以下 Niは母材靭性向上に有用な元素であるが、6%を超え
て添加するとスケール疵が発生し易くなる為、その上限
を6%とすることが好ましい。より好ましくは4%以下
である。
【0031】V:0.10%以下 Vは少量添加により焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高め
る作用がある。但し、0.10%を超えて添加するとH
AZ靭性が低下する為、その上限を0.10%とするこ
とが好ましい。より好ましくは0.07%以下である。
【0032】Al:0.20%以下 Alは脱酸元素であると共に、Nを固定し、固溶Bを増
加させることによりBの焼入れ性を高める元素である。
この様な作用を有効に発揮させる為には0.01%以上
添加することが好ましい。但し、0.20%を超えて添
加すると靭性が劣化するので、その上限を0.20%と
することが好ましい。より好ましくは0.10%以下で
ある。
【0033】N:0.020%以下 NはBと結合して固溶Bを減少させ、Bの焼入れ性向上
作用を阻害し、母材の靭性及びHAZ靭性を低下させ
る。Nの含有量が0.020%を超えるとその作用が顕
著になる為、Ti等の添加によるKN値制御によるHA
Z靭性・母材靭性の向上、Al添加による焼入れ性向上
効果を有効に発揮させることができない。より好ましく
は0.010%以下である。
【0034】Ca:0.0005〜0.005% CaはMnSを球状化し、介在物の形態制御による異方
性を低減する効果を有する元素である。この様な作用を
有効に発揮させる為には0.0005%以上添加するこ
とが好ましい。但し、0.005%を超えて過剰に添加
すると母材靭性が低下するのでその上限を0.005%
とすることが好ましい。
【0035】次に、本発明の鋼板を製造する方法につい
て説明する。
【0036】本発明の鋼板は、上記成分組成を満足する
鋼を用い、加熱、熱間圧延、及び焼入れした後、焼戻し
することにより所望の高張力鋼板を得ることができる。
各工程の条件(温度、時間等)は特に限定されず、通常
用いられる高張力鋼板の製造条件を適宜採用することが
できる。具体的には、例えば約1000〜1200℃で
2時間以上加熱した後、熱間圧延を行い、900〜95
0℃で圧延を完了し、その後冷却する。次いで約880
〜950℃で10分以上保持した後、水冷することが推
奨される。また、焼戻し工程では、約550〜650℃
で約5〜15分保持して行うことが推奨される。この様
に本発明によれば、高張力鋼板の製造に当たり、通常実
施される製造条件を適用することにより、溶接性及び母
材靭性に優れた高張力鋼板が得られ、前述の特開平6−
240353の如く、圧延後に2回の加工熱処理からな
る操作を1回以上繰返し行った後、焼戻し処理するとい
った繁雑な製造工程を経る必要がない点で、極めて有用
である。
【0037】以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述
べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものでは
なく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する
ことは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0038】
【実施例】表1〜2に示す成分組成の鋼を通常の溶製法
により溶製し、スラブとした後、1100〜1150℃
で2時間保持した後、熱間圧延し、900〜950℃で
圧延を完了して徐冷した。その後、再加熱し、900℃
で15分保持した後、水冷し、表3〜4に記載の焼戻し
条件で所定の板厚からなる高張力鋼板を製造した。
【0039】この様にして得られた各鋼板について、下
記要領で母材特性[強度及び靭性(vE-100)]を評価
し、本発明で基準とする母材特性レベル(強度≧780
MPa、vE-100≧471)をクリアしたものについて
は、更に溶接性(耐低温割れ性及びHAZ靭性)を評価
した。
【0040】[母材特性試験] 引張試験:各鋼板の板厚1/4部位からJIS4号試
験片を採取し、引張試験を行うことにより0.2%耐力
及び引張強さを測定した。本発明では、引張強さ≧78
0MPaを合格とした、 衝撃試験:各鋼板の板厚1/4部位からJIS4号試
験片を採取し、シャルピー衝撃試験を行うことにより吸
収エネルギー(vE-100)を得た。本発明では、vE
-100≧47Jを合格とした。
【0041】[溶接性試験] HAZ靭性:入熱5kJ/mm(サブマージ溶接法)
で溶接を行い、図4に示す部位からJIS4号試験片を
採取してシャルピー試験を行い、ボンド部の吸収エネル
ギー(vE-10)を求めた。本発明では、vE-10≧47
Jを合格とした、 耐低温割れ性:JIS Z 3158に記載のy形溶
接割れ試験法に基づいて、入熱1.7kJ/mmで被覆
アーク溶接を行い、ルート割れ防止予熱温度を測定し
た。本発明では25℃以下を合格とした。
【0042】これらの結果を表3〜4に併記する。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】表3及び表4より以下の様に考察すること
ができる。
【0048】まず、表1の鋼板は本発明の要件を満足す
る実施例であり、表3に示す通り、いずれの鋼板も母材
特性及び溶接性に優れていた。
【0049】これに対し、表2の鋼板は本発明の要件を
満足しない比較例であるが、これらは表4に示す不具合
を有している。
【0050】まず、No.23はC量が本発明の下限値
を下回る例であり、所望の母材強度が得られなかった。
また、No.24はC量が本発明の上限値を超える例で
あり、耐低温割れ性が低下した。
【0051】No.25はSi量が本発明の上限値を超
える例であり、所望の母材靭性が得られなかった。
【0052】No.26はKP値が本発明の下限値を下
回る例であり、所望の母材強度が得られなかった。
【0053】No.27はMn量が本発明の下限値を下
回る例であり、所望の母材強度が得られなかった。ま
た、No.28はMn量が本発明の上限値を超える例で
あり、母材靭性が低下した。
【0054】No.29はNi量が本発明の上限値を超
える例であり、耐低温割れ性が低下した。
【0055】No.30はCr量が本発明の上限値を超
える例であり、所望の母材靭性が得られなかった。
【0056】No.31はMo量が本発明の上限値を超
える例であり、所望の母材靭性が得られなかった。
【0057】No.32はNb量が本発明の上限値を超
える例であり、HAZ靭性が低下した。また、No.3
3はNb量が本発明の下限値を下回る例であり、母材靭
性が低下した。
【0058】No.34はCu量が本発明の上限値を超
える例であり、母材靭性が低下した。
【0059】No.35はV量が本発明の上限値を超え
る例であり、HAZ靭性が低下した。
【0060】No.36/No.37はB量が本発明の
下限値/上限値を下回る/超える例であり、いずれも所
望の母材強度が得られなかった。
【0061】No.38はTi量が本発明の上限値を超
える例であり、母材靭性が低下した。
【0062】No.39はKN値が本発明の下限値を下
回る例であり、母材靭性が低下した。また、No.43
はKN値が本発明の上限値を超える例であり、HAZ靭
性が低下した。
【0063】No.40はZr量が本発明の上限値を超
える例であり、母材靭性が低下した。
【0064】No.41はHf量が本発明の上限値を超
える例であり、母材靭性が低下した。
【0065】No.42はCa量が本発明の上限値を超
える例であり、母材靭性が低下した。
【0066】No.44はN量が本発明の上限値を超え
る例であり、HAZ靭性が低下した。
【0067】図1は、上記結果に基づき、母材強度(引
張強さ)とKP値の関係をグラフ化したものであるが、
KP値を3.4以上に制御することにより780MPa
以上の引張強度が得られることが分かる。
【0068】図2は、上記結果に基づき、入熱5kJ/
mmの溶接時のHAZ靭性(vE-1 00)とKN値の関係
をグラフ化したものえあるが、KN値を−1.0〜4.
0の範囲に制御することにより47kJ以上のHAZ靭
性が得られることが分かる。
【0069】
【発明の効果】本発明法は以上の様に構成されており、
溶接性(耐低温割れ性及びHAZ靭性)に優れると共
に、良好な母材靭性(特にvE-80≧47J、好ましく
はvE-10 0≧47J)も兼ね備えた高張力鋼板を提供す
ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】母材強度とKP値の関係を示すグラフである。
【図2】HAZ靭性とKN値の関係を示すグラフであ
る。
【図3】サブマージアーク溶接時のボンド靭性の試験片
採取位置を示す概略説明図である。
【図4】本発明の成分設計の考え方を説明するための模
式的なCCT線図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C :0.010〜0.06%(質量%の
    意味、以下同じ),Mn:1.0〜3.0%,Cr:
    0.1〜2.0%,Mo:0.1〜1.5%,B :
    0.0006〜0.0050%,Nb:0.010〜
    0.05%を含有し、 下式(1)で表されるKPがKP≧3.4を満足するも
    のであることを特徴とする溶接性及び母材靭性に優れた
    高張力鋼板。 KP=[Mn]+1.5×[Cr]+2×[Mo] … (1) (式中、[ ]は各元素の含有量(%)を意味する)
  2. 【請求項2】 更にTi:0.03%以下,Zr:0.
    05%以下,及びHf:0.10%以下よりなる群から
    選択される少なくとも一種を含有し、 下式(2)で表されるKNが−1≦KN≦4.0を満足
    するものである請求項1に記載の高張力鋼板。 KN=([N]/14−[Ti]/48−[Zr]/91−[Hf]/178) ×104 …(2) (式中、[ ]は各元素の含有量(%)を意味する)
  3. 【請求項3】 更にSi:1.0%以下 (0%を含
    まない),Cu:2.0%以下 (0%を含む),N
    i:6%以下 (0%を含む),V :0.10
    %以下 (0%を含む),Al:0.20%以下 (0
    %を含む),N :0.020%以下(0%を含む)を
    含有するものである請求項1または2に記載の高張力鋼
    板。
  4. 【請求項4】 更にCa:0.0005〜0.005%
    を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の
    高張力鋼板。
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