JP3864536B2 - 耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば産業機械等に使用される、耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、耐摩耗性の向上、軽量化等を目的に産業機械等に使用される鋼材の高強度化がますます要求される状況にある。熱処理による鋼材の高強度化を図る方法としてはマルテンサイト組織を利用することが最も一般的であり、従来の耐摩耗鋼等においても0.2〜0.45%の炭素(C)を含有したマルテンサイト鋼が利用されてきた。マルテンサイト相が高強度を有するのはマルテンサイト相中に過飽和に固溶したC原子による格子の歪が原因である。C含有率が増えると格子の歪も大きくなるので、C含有率を増加させることによってマルテンサイト鋼の強度は著しく上昇する。これに対し、Ni、Mn等の置換型元素は焼入性を上げることによってマルテンサイト相の生成を促進するが、マルテンサイト相そのものの硬度を上昇させる効果はない。
【0003】
そこで、従来の耐摩耗性マルテンサイト鋼では、所望の硬さに対応したC含有率とし、かつ主として肉厚で決まる質量効果に応じて必要な焼入性を確保するために上記のNi、Mn等の置換型合金元素を必要量含有させてきた。しかしながら、C含有率の増大のみによって硬さを上昇させるマルテンサイト鋼は、水素による遅れ破壊感受性がきわめて高く、かつ靭性も低いために重要部材には使用できない。
【0004】
このため、高価なNiを多量に含有させ、剪断型逆変態オーステナイト相中の高転位密度を活用した低炭素超高張力鋼の提案がなされた(特開平6−116637号公報)。しかし、耐摩耗性が要求される産業機械等に使用するには高価にすぎ、かつ耐摩耗性自体もそれほど高くない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の高炭素マルテンサイト鋼よりも耐遅れ破壊特性に優れ、かつ一定以上の靭性を有する高強度鋼を安価に供給することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、耐遅れ破壊特性の優れる鋼の製造方法を鋭意検討した結果、マルテンサイト相中の転位密度を上昇させることにより水素トラップサイトが増加し、同じ強度であっても耐遅れ破壊特性が向上することを確認することができた。この高転位密度のマルテンサイト相を得るためにはマルテンサイト変態前のオーステナイト相(以後、「γ」と記す)を、やはり高密度の転位を含む未再結晶γとする必要がある。ここで、「未再結晶γ」とは高転位密度を含むγであれば全て該当し、圧延によりγ粒が伸長した状態の未再結晶γのみならず、Ac1点近傍の急速加熱によって起きる剪断型逆変態で生じる高密度転位を含むγも該当する。この剪断型逆変態によって生成したγは、逆変態当初は高密度の転位を含むが次第に転位は合体等により消滅してゆく。したがって、高転位密度のマルテンサイト相を得るためには、Ac1点以上の温度域を短時間のうちに加熱し、γが再結晶する前に焼入れる必要がある。この急速加熱により剪断型逆変態オーステナイト相の結晶粒も微細化され、この結果、靭性も向上する。
【0007】
上記の2種類の未再結晶γから変態するマルテンサイト相は微細であり、その結果、高強度で靭性がよく、なおかつ耐遅れ破壊特性に優れている。また、通常のマルテンサイト相においては置換型合金元素は強度上昇に寄与しないが、未再結晶γからのマルテンサイト相では、Mn、Niをはじめとする合金元素はAc1点およびAc3点を低下させることによって、高転位密度を維持するのに有効である。したがって、本発明においては置換型合金元素はマルテンサイト相の硬度を上昇させる効果がある。
【0008】
本発明は上記の事項に基づいて完成されたもので、その要旨は下記の高張力鋼およびその製造方法にある。
【0009】
(1)質量%にて、C:0.12〜0.45%、Si:0.3%以下、Mn:2.1〜3.5%、Ni:6%以下、B:0.0005〜0.04%、Ti:0.03%以下、sol Al:0.08%以下およびN:0.006%以下を含み、さらにCu:0.6%以下、Cr:0.8%以下、Mo:2%以下、Nb:0.1%以下およびV:0.08%以下のうち1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、金属組織のうち70体積%以上がマルテンサイト相または焼戻しマルテンサイト相であり、当該マルテンサイト相または焼戻しマルテンサイト相のうち50体積%以上が未再結晶オーステナイト相から生成したマルテンサイト相または焼戻しマルテンサイト相であることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼([発明1]とする)。
【0010】
(2)上記(1)の化学組成を有する鋼を、Ac1点未満の温度からAc1点を超える加熱温度まで昇温速度4℃/s以上にて加熱後、冷却速度10℃/s以上にて200℃以下の温度域まで冷却することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼の製造方法([発明2]とする)。
【0011】
(3)Ac1点以下の温度域で圧延を施した後、Ac1点未満の温度からAc1点を超える温度に加熱すること、またはAc1点以上に加熱中もしくは加熱後圧延を施すことを特徴とする、上記(2)の耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼の製造方法([発明3]とする)。
【0012】
(4)さらに焼戻し処理を加えることを特徴とする、上記(2)または(3)の耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼の製造方法([発明4]とする)。
【0013】
上記(1)の「未再結晶γ」には、高転位密度を含むγであれば全て該当し、圧延によりγ粒が伸長した状態の未再結晶γのみならず、Ac1点近傍を急速加熱する際に起きる剪断型逆変態で生じる未再結晶γも該当する。
【0014】
上記(2)において加熱温度における保持時間はゼロでもよく、短いほうがよい。
【0015】
上記(2)における「Ac1点を超える加熱温度」とは、Ac1点を超えさえすればよく、Ac3点以上であってもよい。Ac1およびAc3は鋼の化学組成から計算によって簡便に求めることができ、実測した値と大きな相違はない。Ac1およびAc3を化学組成から求めるのはつぎの式による。
【0016】
Ac1(℃)=751-26.6C+17.6Si-11.6Mn-22.9Cu-23Ni+24.1Cr+22.5Mo-39.7V-5.7Ti+233Nb-169A
Ac3(℃)=937-476.5C+56Si-19.7Mn-16.3Cu-26.6Ni-4.9Cr+38.1Mo+124.8V+136.6Ti-19Nb+198
【0017】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明を上記のように限定した理由について説明する。
【0018】
1.化学組成
C:0.12〜0.45%
Cはマルテンサイト相の強度上昇に極めて有効であり、またAc3点を低温側に移行させ未再結晶γを維持するのに効果を発揮する。これらの理由から、Cは0.12%以上とする。しかし、0.45%を超えて過剰に含ませると鋼の靭性を劣化させるとともに、焼入れ後に残留γが残り、強度をかえって低下させてしまうので、0.45%を上限とする。
【0019】
Si:0.3%以下
Siは脱酸に有効な元素であるが、0.3%を超えると溶接熱影響部の靭性を低下させるため上限を0.3%とする。含有率は実質的に0でも良いが、Siを0にすると、Al脱酸のときAlの損失が大きくなるので、通常はSi脱酸をおこなって残存する程度の含有率、例えば0.01%程度が下限として望ましい。
【0020】
Mn:2.1〜3.5%
Mnは変態点の低下に有効な元素であり、未再結晶γから生成するマルテンサイト相の強度上昇に有効である。そのためには、2.1%以上とする。しかし、3.5%を超えると残留γが生成し強度が低下するため、上限を3.5%とする。
【0021】
Ni:6%以下
Niは靭性を改善し、かつAc3点を低下させるのに有効なので、特に高強度かつ高靭性とする場合には含ませることが望ましい。明瞭にAc3点を低下させるために1%以上とすることが望ましい。しかしながら、6%を超えると残留γが増大し強度を低下させるので6%以下とする。
【0022】
B:0.0005〜0.04%
Bは、焼入性を向上させるのみならず、Nb硼化物の析出により逆変態時の未再結晶γの再結晶の抑制に有効であり0.0005%以上が必要である。しかし、0.04%を超えると靭性が劣化するため、上限を0.04%とする。望ましい範囲は0.002〜0.02%である。
【0023】
本発明にかかる高強度鋼は、さらに、強度上昇、未再結晶γの再結晶の抑制や焼入性向上を狙いとして、上記の各化学成分に加えて、次のとおり、Cu:0.6%以下、Cr:0.8%以下、Mo:2%以下、Nb:0.1%以下およびV:0.08%以下のうち1種または2種以上を含有させる。
Cu:0.6%以下
Cuは強度上昇に有効なので特に一層の高強度化を図る場合には添加してもよい。しかし、0.6%を超えると靱性を劣化させるので、含ませる場合でも0.6%以下とする。靱性を劣化させずに強度を確保する場合には、0.2〜0.4%とすることが望ましい。
【0024】
Cr:0.8%以下
変態点の低下による強度上昇を目的として添加してもよい。靱性とのバランスを考えて、0.3〜0.7%とすることが望ましい。0.8%を超えると靭性が劣化するので、上限を0.8%とする。
【0025】
Mo:2%以下
Moは未再結晶γの再結晶の抑制に有効なので、添加してもよい。しかしながら2%を超えると靭性が劣化するので、上限を2%とする。
【0026】
Nb:0.1%以下
Nbは未再結晶γの再結晶防止に極めて有効な元素であるので、添加してもよい。0.01%未満では効果が不明瞭なので含ませる場合は、0.01%以上とすることが望ましい。しかし0.1%を超えると靭性が劣化するため、上限を0.1%とする。
【0027】
V:0.08%以下
Vは焼入性向上のために、添加してもよい。0.01〜0.05%程度含有させるのが望ましい。0.08%を超えると靭性が劣化するため、上限は0.08%とする。
【0028】
Ti:0.03%以下
Tiは微量でNをTiNとして固定し結晶粒を微細化し、同時に焼入性および剪断型逆変態γの生成に必要な固溶B量を確保する。このため、0.005%以上含むことが望ましい。Nb含有鋼の場合には、Nbによって助長される連続鋳造スラブ表面のひび割れを抑制するのに微量Tiが有効である。0.005%以上でこの効果を発揮するが、0.03%を超えると靭性が劣化するため、上限を0.03%とする。
【0029】
sol Al:0.08%以下
sol Alは、脱酸反応により酸化物を形成するAl以外のAlをさし、固溶Alおよび窒化物としてのAlからなる。本発明では、意図的にsol Alを残存させてもよいし、また、脱酸反応により酸化物のみを形成し、sol Alを含まなくてもよい。すなわち、sol Alが実質的に0でもよい。ただし、板厚が厚いために圧延の全圧下率[{(スラブ厚さ−製品板厚)/スラブ厚さ}×100(%)]を50%以上とれず圧下のみで凝固時のピンホ−ルの圧着が期待できない場合には、凝固後の鋼中のsol Alとして0.001%以上残存させることが望ましい。凝固後の鋼中のsol Alが0.001%未満では、凝固の進行中に酸素と結合してピンホールの発生を防止するのに必要なAlが不足する。
【0030】
N:0.006%以下
Nは、Alと結合し窒化物を生成し、結晶粒の微細化に有効であるが、過量のNは溶接部の靭性を損なうので、上限を0.006%とする。さらにNには溶接性の向上という効果がある。この効果を期待する場合には、0.0015%以上含有させてもよい。
【0031】
不可避不純物:
不可避不純物のうち、Pは0.01%以下とすることが望ましい。0.01%を超えると、偏析部にPのみならずC、Mn、S等を濃縮させ、硬さを高くして靱性と溶接性を劣化させる。
【0032】
Sは、0.007%以下とすることが望ましい。0.007%を超えると、偏析部に粗大なMnSを生成し、溶接低温割れの起点や水素性欠陥の起点となる。
【0033】
その他の不純物は通常の精錬により得られるレベルまで減少させることが望ましい。
【0034】
2.金属組織
金属組織のうちマルテンサイト相の体積率は強度を確保するために70%以上とする。上限はとくに定めないが100%マルテンサイト相であってもよい。このマルテンサイト相のうち未再結晶γから変態したマルテンサイト相は50体積%以上なければならない。上限は100%とすることが望ましい。
【0035】
マルテンサイト相は光学顕微鏡または電子顕微鏡で他の相、たとえばベイナイト相と容易に識別することができる。未再結晶γから変態したマルテンサイトは電子顕微鏡により転位密度を測定することにより判定することができる。また、X線回折線の半価幅を測定することによっても可能である。
【0036】
3.熱処理(〔発明2〕)
次に熱処理条件について説明する。
【0037】
上記組成の鋼をオーステナイト相の逆変態がおこるAc1点〜加熱温度間を急速に加熱することによって、高転位密度で、かつ通常より微細なオーステナイト粒が得られる。耐遅れ破壊特性を向上させるためには全肉厚にわたってこの昇温速度で加熱することが望ましいが、表層部分のみを急速加熱しても効果が得られる。ここでいう表層部分とは板厚の約10%程度の表裏面部分を指す。
【0038】
昇温速度は、上記のマルテンサイト相の50体積%以上を未再結晶γから変態させるために、γの再結晶が進行する時間的余裕を与えないように4℃/s以上とする。昇温速度は大きければ大きいほど良く、望ましくは10℃/s以上、さらに望ましくは20℃/s以上である。したがって、昇温速度の上限はとくに設けない。
【0039】
この昇温速度は、肉厚中心部でもよいし、上記表層部であってもよい。
【0040】
加熱温度については、逆変態したオーステナイト相体積率の確保のためAc1点とAc3点の中間温度以上とすることが望ましい。均一なγ組織とするため、さらに望ましくはAc3点以上とすることが望ましい。しかし、未再結晶γからのマルテンサイト変態により最高の平均硬度が得られるのはAc3点直下に加熱した時である。またγ結晶粒の再結晶と粗大化を防止するため、加熱温度の上限は、(Ac3点+80℃)以下とすることが望ましい。加熱は鋼の肉厚中心部において上記の加熱温度に達すればよい。加熱温度では剪断型逆変態で生成したγの再結晶の進行を阻止するため、保持時間をとらないことが望ましい。
【0041】
上記の急速加熱は、直接通電加熱、矩形断面のコイルによる高周波加熱等により実現することができる。高周波加熱の場合は表層部の急速加熱に適している。
【0042】
加熱後の冷却速度は、肉厚中心部においてもフェライト相が生成しないようにする必要があるため、10℃/s以上の冷却速度で200℃以下まで冷却する。この肉厚中心部の冷却速度の上限はとくに設けないが、たとえば70℃/s程度とするのがよい。冷却停止温度の下限もとくに設けないが、水素含有率が高い場合の遅れ破壊を防止するため、100℃程度とすることが望ましい。
【0043】
4.圧延条件(〔発明3〕)
上記〔発明2〕において、微細化と転位密度上昇の効果を高めるためには、熱処理素材として圧延加工を低温域で加えたものを用いる。この低温域の圧延加工は、Ac1点以下で実施することが効果的である。圧延加工温度の下限はとくに設けないが、圧延機の能力、平坦度確保等を考慮すると550℃程度とするのがよい。このときの加工度は上記の効果を十分発揮するために圧下率で10%以上とすることが望ましい。上限はとくに設けないが、平坦度を確保するために35%以下とすることが望ましい。
【0044】
5.焼戻し(〔発明4〕)
必要に応じて強度靭性バランスを整えるためにAc1点以下の適当な温度において焼戻処理をおこなってもよい。未再結晶γよりマルテンサイト中に導入された転位密度を必要以上に低下させないためにはこの焼戻温度は650℃以下とすることが望ましい。
【0045】
【実施例】
つぎに、実施例により発明1の効果を説明する(発明2を適用して得た発明1)。
供試鋼として、13種類の鋼を常法により溶製、鋳造および熱間圧延した鋼板を用いた。板厚は15〜50mmとした。
【0046】
表1はこれら13種類の鋼の化学組成およびAc1点、Ac3点およびCeqを示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表2は上記の鋼板に施した熱処理条件およびその結果得られた金属組織を示す。
【0049】
【表2】
【0050】
これらの鋼板の板厚中心部より試験片を採取し、下記に示す各試験を行った。
【0051】
引張試験:試験片JIS Z 2201(長手方向=圧延方向)、方法JIS Z 2241に準拠
衝撃試験:試験片JIS Z 2202(長手方向=幅方向)、評価:-20℃での衝撃値
遅れ破壊試験:3%NaCl中に電位差1.5Vのもと200時間浸漬しSSRT試験(Slow Strain Rate Tensile Test)により破断する応力を測定した。
【0052】
図1はこのSSRT試験の試験片を示す。この試験における破断応力が室温引張強さの1/2以上あれば合格と判定することができる。
【0053】
比較例である試験番号6は、鋼の組成は本発明の定義範囲内であるが、昇温速度が小さいためにマルテンサイト相のうち未再結晶部分の体積率が8%と小さくなり遅れ破壊試験における破断応力は室温強度の1/2を割り、かつ靭性も低かった。比較例7は、冷却速度が小さいために必要なマルテンサイト相体積率が得られず、強度、耐遅れ破壊特性および靭性の全てにおいて劣る結果となった。比較例8は、Cが低く昇温速度が小さいために靭性は比較的良好であるが、強度および耐遅れ破壊特性が劣化した。比較例9は、Cが高すぎたために、強度は良好、耐遅れ破壊特性は比較的良好であるが、靭性はきわめて劣る結果となった。比較例10は、Siが高く、かつ昇温速度が小さいために強度は良好であるが、耐遅れ破壊特性および靭性は低くなった。比較例11は、Mnが低く昇温速度が小さいために、優れた強度は得られるものの耐遅れ破壊特性がやや低下し、靭性は劣化した。比較例12は、Cuが過剰でかつ昇温速度が小さいために、強度は高いが耐遅れ破壊特性はやや低下し靭性が大きく劣化した。比較例13は、Niが過剰で、かつ昇温速度が大きいために、耐遅れ破壊特性がやや大きく劣化し、靭性も劣る結果となった。比較例14は、Moが過剰であり、かつ昇温速度が小さいために遅れ破壊特性および靭性も劣る結果となった。
【0054】
これに対して、本発明の定義範囲内の鋼の破断応力は、全ての試験番号において室温強度の1/2以上となっていた。また、引張試験において1400MPa以上の引張強さが得られ、かつ衝撃試験において−20℃で40J以上の衝撃値が得られた。
【0055】
【発明の効果】
本発明の定義範囲内の高張力鋼およびその製造方法によれば、耐遅れ破壊特性および靭性に優れる高強度鋼を安価に提供でき、産業機械等の素材として貢献することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】SSRT試験(Slow Strain Rate Tensile Test)の試験片を示す。
Claims (4)
- 質量%にて、C:0.12〜0.45%、Si:0.3%以下、Mn:2.1〜3.5%、Ni:6%以下、B:0.0005〜0.04%、Ti:0.03%以下、sol Al:0.08%以下およびN:0.006%以下を含み、さらにCu:0.6%以下、Cr:0.8%以下、Mo:2%以下、Nb:0.1%以下およびV:0.08%以下のうち1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、金属組織のうち70体積%以上がマルテンサイト相または焼戻しマルテンサイト相であり、当該マルテンサイト相または焼戻しマルテンサイト相のうち50体積%以上が未再結晶オーステナイト相から生成したマルテンサイト相または焼戻しマルテンサイト相であることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼。
- 請求項1に記載の化学組成を有する鋼を、Ac1点未満の温度からAc1点を超える加熱温度まで昇温速度4℃/s以上にて加熱後、冷却速度10℃/s以上にて200℃以下の温度域まで冷却することを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼の製造方法。
- Ac1点以下の温度域で圧延を施した後、Ac1点未満の温度からAc1点を超える温度に加熱すること、またはAc1点以上に加熱中もしくは加熱後圧延を施すことを特徴とする、請求項2に記載の耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼の製造方法。
- さらに焼戻し処理を加えることを特徴とする、請求項2または3に記載の耐遅れ破壊特性に優れる高強度鋼の製造方法。
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