JP2001172110A - 安定性の優れた平衡過酢酸組成物、及びその製造方法 - Google Patents

安定性の優れた平衡過酢酸組成物、及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ホスホン酸を含有する、過酢酸濃度が6〜15
重量%の安定性の優れた平衡過酢酸組成物を提供する。 【解決手段】 平衡過酢酸組成物中の臭素イオン濃度が
特定量以下になるように制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、安定性の優れた平
衡過酢酸組成物、及びその製造方法に関し、更に詳細に
は、臭素イオンを実質的に含まない、又は臭素イオン濃
度が特定量以下である、比較的高濃度の過酢酸を含有す
る、過酢酸、酢酸、過酸化水素、及び水からなる安定性
の優れた平衡過酢酸組成物、及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来技術】過酢酸は、低濃度でも強い殺菌力を有し、
種々の微生物に対して殺菌効果があることから、食品、
醸造、医療等の分野で、装置や機器類の消毒、或いは殺
菌に広く使用されている。過酢酸は、過酸化水素と酢酸
とを反応させることによって、過酢酸、酢酸、過酸化水
素、及び水からなる平衡過酢酸組成物として得ることが
できる。消毒や殺菌に用いられている過酢酸は、一般的
にはこの方法によって製造された平衡過酢酸組成物であ
る。近年は、製品の運搬費の削減面から比較的高濃度の
過酢酸を含有する平衡過酢酸組成物が求められるように
なってきている。
【0003】過酢酸は、鉄、銅等の金属不純物が混入す
ると速やかに分解してしまうことが知られており、過酢
酸組成物の製造には、出来るだけ不純物の少ない原材料
(過酸化水素、酢酸、及び水)が使用されているが、微
量の金属不純物の混入は避けられず、該組成物中には、
通常は過酢酸の分解を防ぐ目的で、ピロリン酸ナトリウ
ム等のポリリン酸塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジ
ホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等のホスホ
ン酸、又はその塩、ジピコリン酸、2,6-ピリジンジカル
ボン酸、ジエチレントリアミン五酢酸塩等の金属封鎖剤
が安定剤として添加されている。また、過酢酸組成物の
性能を高める目的で、該組成物中には界面活性剤、増粘
剤、或いは腐食防止剤等の種々の添加剤が添加されるこ
とがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、まず、
1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノト
リメチレンホスホン酸等のホスホン酸には、過酢酸を安
定化させる作用の他に、金属の腐食を防止する作用もあ
ることを見出した。本発明者等は、一の化合物で二以上
の複数の作用効果を発揮するホスホン酸の有用性に注目
し、ホスホン酸を含有する、比較的高濃度の過酢酸を含
有する安定性の優れた過酢酸組成物を提供することを目
的に、鋭意検討を重ねた結果、過酢酸組成物中の塩素イ
オン、臭素イオン、及びヨウ素イオン等ハロゲンイオ
ン、特に臭素イオンが、過酢酸、とりわけ高濃度の過酢
酸を含有する過酢酸組成物の不安定化に関与しているこ
と、また該臭素イオン濃度を特定量以下に抑えることに
よって、安定性の優れた高濃度の過酢酸を含有する平衡
過酢酸組成物を得ることができることを見出し、本発明
を完成した。
【0005】微量の金属不純物が、過酢酸を不安定化さ
せることについては先にも述べた通りよく知られている
ことであるが、極微量のハロゲンイオン、特に臭素イオ
ンが特異的に過酢酸を不安定化させること、また殊に高
濃度の過酢酸を含有する過酢酸組成物ほど悪影響を受け
ることについては今まで全く知られていなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】市販の過酸化水素、及び
酢酸は、一般には臭素イオンを殆ど含んでいないから、
臭素イオンはホスホン酸、又はその塩から過酢酸組成物
中に持ち込まれることになる。例えば、市販の1-ヒドロ
キシエチリデン-1,1-ジホスホン酸中には、40〜120ppm
の範囲の臭素イオンが含まれていることがある。安定性
の良い比較的高濃度の過酢酸を含有する、具体的には6
〜15重量%の過酢酸を含有する、過酢酸組成物を得るた
めには、臭素イオンを含まない、或いは臭素イオン濃度
の低いホスホン酸を選択して使用することが重要であ
る。臭素イオンを多く含むホスホン酸を用いるときに
は、ホスホン酸中の臭素イオンを除去、或いは低減させ
る処理を行った後に用いる必要がある。
【0007】即ち、本発明は、ホスホン酸、又はその塩
を含む過酢酸濃度が6〜15重量%の過酢酸組成物であっ
て、該組成物中の臭素イオン濃度が0.12ppm以下であ
る、過酢酸、酢酸、過酸化水素、及び水を含む安定性の
優れた平衡過酢酸組成物である。なお、この安定性の優
れた平衡過酢酸組成物は、ホスホン酸、又はその塩中の
臭素イオン濃度(Appm)とその添加量(B重量%)との
関係式が、0.05≦ B ≦5.0、及びA*B≦ 12を満足す
る条件下で製造することによって得ることができる。
【0008】
【発明の実施の態様】本発明の平衡過酢酸組成物は、基
本的には、過酸化水素、酢酸、水、及びホスホン酸等の
添加剤を混合することによって得ることができ、用いる
それぞれの物質の濃度は、所望する過酢酸濃度によって
異なり、一概には決められないが、過酸化水素は、10〜
90重量%のものが使用でき、酢酸は、60〜99重量%のも
のが使用できる。市販の過酸化水素、及び酢酸は、一般
には臭素イオンを殆ど含んでおらず、また反応に用いる
水は、イオン交換樹脂等を用いて陽イオン、及び陰イオ
ンの除去された脱イオン水を使用するので、反応に用い
る水の中にも、臭素イオンは殆ど含まれていない。過酢
酸組成物の製造に際しては、過酸化水素、酢酸、水等の
原材料、及び安定剤等の添加剤から持ち込まれる臭素イ
オンの総和が、該組成物中で0.12ppm以下になるように
調製する。
【0009】臭素イオンが過酢酸を不安定化させる機構
の詳細は不明であるが、過酢酸組成物中の臭素イオン濃
度に比例して過酢酸分解能が高まり、特に高濃度の過酢
酸を含有する過酢酸組成物ほど臭素イオンの不安定化作
用を受けやすくなり長期間にわたって安定に保存するこ
とができなくなる。
【0010】本発明の平衡過酢酸組成物中の過酢酸濃度
は、安全性の面から6〜15重量%であり、好ましくは9〜1
2重量%である。安定性に優れた平衡過酢酸組成物を得る
ためには、過酢酸組成物中の臭素イオン濃度を0.12ppm
以下に制御することが好ましく、0.08ppm以下に制御す
ることがより好ましく、更に好ましくは、0.04ppm以下
に制御する。過酢酸組成物中に添加されるホスホン酸、
又はその塩の含量は、0.05〜5重量%であり、ホスホン
酸、又はその塩を含む平衡過酢酸組成物を製造するに際
しては、ホスホン酸、又はその塩中の臭素イオン濃度
(Appm)とその添加量(Bwt%)との関係式が、0.05≦
B ≦5.0、及びA*B≦ 12を満足するようにして製造
すること必要がある。
【0011】本発明で用いるホスホン酸とは、1-ヒドロ
キシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリメチレ
ンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホ
ン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン
酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸又
はそれらの塩であり、好ましくは、1-ヒドロキシエチリ
デン-1,1-ジホスホン酸である。
【0012】この反応は、平衡反応であり、必要によ
り、硫酸、リン酸等の触媒酸を添加することによって反
応を促進させることができる。本発明で添加できる界面
活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルス
ルホン酸塩等の陰イオン界面活性剤である。また、増粘
剤は、CMC、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルアルコ
ール等である。なお、これら触媒酸、界面活性剤、増粘
剤等から臭素イオンが混入しないように注意することが
重要である。
【0013】
【実施例】比較例1〜3 80重量%酢酸 253g、35重量%過酸化水素 433g及び表1
に示す所定量の臭素イオンを含む市販の1-ヒドロキシエ
チリデン-1,1-ジホスホン酸 2.1g(添加率 0.3wt%)を
混合して、過酢酸、過酸化水素、及び酢酸の濃度が、そ
れぞれ10重量%、17重量%、及び20重量%である平衡過
酢酸組成物を得、有効酸素の分解率(28℃、40℃におけ
る1ケ月間の分解率)を測定した。その結果を表1に示
す。有効酸素の分解率の測定条件は以下に示す。(比較
例1、2及び3の平衡過酢酸組成物中に含まれる臭素イ
オン濃度は、それぞれ0.15ppm、0.26ppm、及び0.32ppm
である。)
【0014】
【表1】 比較例No ホスホン酸中の 1ケ月の分解率(%) 臭素イオン(ppm) 28℃ 40℃ ―――――――――――――――――――――――――――――― 1 50 16.0 47.8 2 85 27.8 83.2 3 107 34.7 100 40℃、1ケ月間で50%近く、或いはそれ以上も分解する過
酢酸組成物は、商品としての価値が低く、実用的ではな
い。
【0015】(有効酸素分解率の測定方法)試料0.1
グラムを0.1ミリグラムの単位まで精秤し、純水60
ml、希硫酸(1+9)10ml、1N沃化カリウム溶
液10ml、5%モリブデン酸アンモニウム溶液を加
え、0.1Nチオ硫酸ナトリウム標準液で滴定する。液
が淡黄色となった時、0.5%でんぷん溶液2〜3ml
を加え、青紫色が消えた点を終点とする。 〔計算方法〕 有効酸素(%)=(0.17*f*B)/S*16/3
4 B:0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液滴定数(ml) f:0.11Nチオ硫酸ナトリウム溶液ファクター S:試料採取量(g) 〔有効酸素分解率〕 有効酸素分解率(%)=(1ヶ月後の有効酸素濃度/試験
前の有効酸素濃度)*100
【0016】参考例1 80重量%酢酸 231g、35重量%過酸化水素 514g、水 252
g及び臭素イオンを50ppm含む1-ヒドロキシエチリデン-
1,1-ジホスホン酸 3g(0.3wt%)を混合して、過酢酸の
濃度が5重量%の平衡過酢酸組成物を得、該組成物の有
効酸素の分解率(28℃、40℃における1ケ月間の分解率)
を測定した。その結果を表2に示す。(参考例1の平衡
過酢酸組成物中に含まれる臭素イオン濃度は、0.15ppm
である。)尚、表2には、参考例1と同量の臭素イオン
(0.15ppm)を含む比較例1の結果も併せて示す。
【0017】
【表2】 過酢酸濃度 1ケ月の分解率(%) (重量%) 28℃ 40℃ ―――――――――――――――――――――――――――― 参考例1 5 7.1 26.6 (比較例1) 10 12.1 47.8 過酢酸濃度が低い場合には、本発明が規定する以上の臭
素イオン濃度を含んでいてもその過酢酸組成物の分解率
は小さい。
【0018】実施例1 80重量%酢酸 253g、35重量%過酸化水素 433g及び表3
に示す所定量の臭素イオンを含む1-ヒドロキシエチリデ
ン-1,1-ジホスホン酸を調製し、或いは選択し、該ジホ
スホン酸 2.1g(0.3wt%)を混合して、比較例1と同様
に過酢酸濃度10重量%の平衡過酢酸組成物を得、有効酸
素分解率を測定した。表3には各実験の諸条件を、表4
には有効酸素の分解率を示す。(ホスホン酸中の臭素イ
オン濃度(Appm)とその添加量(Bwt%)との関係式 A*B
の値も表3に示した。)
【0019】
【表3】 実験No ホスホン酸中のBr濃度 A*B PAA中のBrイオン濃度 (ppm) (ppm) ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 1 0 0 0 2 4.6 1.38 0.014 3 8.7 2.61 0.026 4 13.6 4.08 0.041 5 17.6 5.28 0.053 6 21.7 6.51 0.065 7 25.0 7.5 0.075 8 38.8 11.64 0.116
【0020】
【表4】 (表3の実験Noと表4の実験Noとは対応している。)
【0021】
【発明の効果】本発明の過酢酸組成物は、臭素イオンを
実質的に含まない、又は臭素イオン濃度が特定量以下で
ある、平衡過酢酸組成物であるために、安定性に優れて
おり、長期間にわたって過酢酸組成物を安定に保存でき
る。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年1月19日(2000.1.1
9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】
【表3】 実験No ホスホン酸中のBr濃度 A*B PAA中のBrイオン濃度 (ppm) (ppm) ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 1 0 0 0 2 4.6 1.38 0.014 3 8.7 2.61 0.026 4 13.6 4.08 0.041 5 17.6 5.28 0.053 6 21.7 6.51 0.065 7 25.0 7.5 0.075 8 38.8 11.64 0.116 PAA:過酢酸組成物

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホスホン酸、又はその塩を含む過酢酸濃
    度が6〜15重量%の過酢酸組成物であって、該組成物中の
    臭素イオン濃度が0.12ppm以下である、過酢酸、酢酸、
    過酸化水素、及び水を含む安定性の優れた平衡過酢酸組
    成物。
  2. 【請求項2】 ホスホン酸、又はその塩中の臭素イオン
    濃度(Appm)とその添加量(B重量%)との関係式が、
    0.05≦ B ≦5.0、及びA*B≦ 12を満足する条件下で
    製造することを特徴とする請求項1の平衡過酢酸組成物
    の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010184868A (ja) * 2009-02-10 2010-08-26 Mitsubishi Gas Chemical Co Inc 安定性に優れる過酢酸水溶液
CN102511478A (zh) * 2011-11-01 2012-06-27 苏州晶瑞化学有限公司 一种稳定的过氧乙酸溶液,其制备方法以及制备用稳定剂

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